(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のポリヌクレオチドを含む請求項4〜6のいずれかに記載の第1の発現ベクターと、第2のポリヌクレオチドを含む請求項4〜6のいずれかに記載の第2の発現ベクターとを含み、該第1のポリヌクレオチドと該第2のポリヌクレオチドとは異なっている、請求項7に記載の医薬組成物。
(i)ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含むAAVベクターであって、該ジンクフィンガーヌクレアーゼが、FokI開裂ドメインと、F1からF5の順番に並べられた5個のジンクフィンガードメインを含むジンクフィンガータンパク質とを含み、各ジンクフィンガードメインが、認識ヘリックス領域を含み、該ジンクフィンガータンパク質の該認識ヘリックス領域が、
F1:QSGNLAR(配列番号4);
F2:LKQNLCM(配列番号5):
F3:WADNLQN(配列番号6);
F4:TSGNLTR(配列番号7);および
F5:RQSHLCL(配列番号8)
である、AAVベクターと、
(ii)ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含むAAVベクターであって、該ジンクフィンガーヌクレアーゼが、FokI開裂ドメインと、F1からF6の順番に並べられた6個のジンクフィンガードメインを含むジンクフィンガータンパク質とを含み、各ジンクフィンガードメインが、認識ヘリックス領域を含み、該ジンクフィンガータンパク質の該認識ヘリックス領域が、
F1:TPQLLDR(配列番号9);
F2:LKWNLRT(配列番号10);
F3:DQSNLRA(配列番号11);
F4:RNFSLTM(配列番号12);
F5:LRHDLDR(配列番号13);および
F6:HRSNLNK(配列番号14)
である、AAVベクターと、
(iii)第IX因子タンパク質をコードするドナーを含むAAVベクターと
を含む、請求項7に記載の医薬組成物。
細胞におけるアルブミン遺伝子を開裂するための組成物であって、該組成物は、請求項4〜6のいずれかに記載の1種または複数種の発現ベクターを含み、該ベクターは、前記1種または複数種のタンパク質が発現され、該アルブミン遺伝子が開裂されるような条件下で、該細胞に導入されることを特徴とする、組成物。
血友病Bの患者を処置するための、請求項4〜6のいずれかに記載の発現ベクターを含む組成物または請求項7もしくは請求項8に記載の医薬組成物であって、該組成物または該医薬組成物は、内在性アルブミン遺伝子への機能的第IX因子タンパク質をコードする導入遺伝子の標的化組込みを媒介することを特徴とする、組成物または医薬組成物。
前記第1のヌクレアーゼ、該第1のヌクレアーゼとは異なる前記第2のヌクレアーゼおよび前記導入遺伝子ドナーが、約1:1:1、約1:1:2、約1:1:3、約1:1:4、約1:1:5、約1:1:6、約1:1:7、約1:1:8、約1:1:9、約1:1:10、約1:1:11、約1:1:12、約1:1:13、約1:1:14、約1:1:15、約1:1:16、約1:1:17、約1:1:18、約1:1:19または約1:1:20の比で提供される、請求項8〜12のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、依然として、血友病を処置する追加の組成物および方法の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
機能的凝固因子タンパク質(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子および/または第XI因子)等の、タンパク質をコードする配列の標的化組込みのための方法および組成物が、本明細書に開示されている。機能的第VIII因子(「F8」)および/または第IX因子(「F.IX」または「FIX」)タンパク質の発現は、例えば、血友病A(第VIII因子)および/または血友病B(第IX因子)の処置および/または予防をもたらし得る一方、機能的第VII因子または第X因子の発現は、第VII因子欠損症および/または第X因子欠損症に関連する血友病を処置または予防し得る。ヌクレアーゼ、例えば、操作されたメガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALE−ヌクレアーゼ(制限エンドヌクレアーゼおよび/またはメガヌクレアーゼ由来のヌクレアーゼドメインとTALEエフェクタードメインとの融合体を含むTALEN(メガTALEおよびコンパクトTALEN等))、Ttago系および/またはCRISPR/Casヌクレアーゼ系は、遺伝子が挿入される細胞における「セーフハーバー」遺伝子の遺伝子座(例えば、CCR5、AAVS1、HPRT、Rosaまたはアルブミン)におけるDNAの開裂に使用される。ドナー導入遺伝子の標的化された挿入は、相同組換え修復(HDR)または非相同性修復機構(例えば、NHEJドナー捕捉)によるものとなり得る。ヌクレアーゼは、標的DNAにおける二本鎖切断(DSB)または一本鎖切断(ニック)を誘導することができる。一部の実施形態において、2種のニッカーゼが、2個のニックを導入することによるDSBの作製に使用される。場合によっては、ニッカーゼは、ZFNであり、他の場合では、ニッカーゼは、TALENまたはCRISPR/Casニッカーゼである。一部の実施形態において、本方法および組成物は、細胞におけるアルブミン遺伝子に結合する少なくとも1種のタンパク質に関係する。
【0012】
一態様において、ゲノムにおける目的の領域(例えば、アルブミン遺伝子)における標的部位に結合する非天然起源のジンクフィンガータンパク質(ZFP)であって、1個または複数個の操作されたジンクフィンガー結合ドメインを含むZFPが、本明細書に記載されている。一実施形態において、ZFPは、目的の標的ゲノム領域を開裂させるジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)であって、1個または複数個の操作されたジンクフィンガー結合ドメインおよびヌクレアーゼ開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインを含むZFNである。開裂ドメインおよび開裂ハーフドメインは、例えば、種々の制限エンドヌクレアーゼおよび/またはホーミングエンドヌクレアーゼから得ることができる。一実施形態において、開裂ハーフドメインは、IIS型制限エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)に由来する。ある特定の実施形態において、ジンクフィンガードメインは、アルブミン遺伝子における標的部位、例えば、表1の単一の行(row)に示す通りに並べられた認識ヘリックスドメインを有するジンクフィンガータンパク質を認識する。一部の実施形態において、ジンクフィンガータンパク質は、表1の単一の行に示す通りのF1からF5またはF1からF6と命名されて並べられた5または6個のジンクフィンガードメインを含む。
【0013】
別の態様において、ゲノムにおける目的の領域(例えば、アルブミン遺伝子)における標的部位に結合する転写活性化因子様エフェクター(TALE)タンパク質であって、TALEが、1個または複数個の操作されたTALE結合ドメインを含むTALEタンパク質が、本明細書に記載されている。一実施形態において、TALEは、目的の標的ゲノム領域を開裂するヌクレアーゼ(TALEN)であって、1個または複数個の操作されたTALE DNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインを含むTALENである。開裂ドメインおよび開裂ハーフドメインは、例えば、種々の制限エンドヌクレアーゼおよび/またはホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)から得ることができる。一実施形態において、開裂ハーフドメインは、IIS型制限エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)に由来する。他の実施形態において、開裂ドメインは、メガヌクレアーゼに由来し、このメガヌクレアーゼドメインは、DNA結合機能性を提示することもできる。
【0014】
別の態様において、ゲノム中の目的の領域(例えば、アルブミン遺伝子)における標的部位に結合するCRISPR/Cas系であって、1種または複数種の操作された単一ガイドRNAまたは機能的均等物と共にCas9ヌクレアーゼを含むCRISPR/Cas系が、本明細書に記載されている。
【0015】
本明細書に記載されているヌクレアーゼ(例えば、ZFN、CRISPR/Cas系、Ttagoおよび/またはTALEN)は、例えば、リーダー配列、トレーラー配列もしくはイントロン等の遺伝子内もしくはこれに隣接するコード領域もしくは非コード領域、またはコード領域の上流もしくは下流いずれかの非転写領域内における目的の領域に結合および/またはこれを開裂することができる。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼ(例えば、ZFN)は、アルブミン遺伝子に結合および/またはこれを開裂する。
【0016】
別の態様において、1種または複数種のヌクレアーゼ(例えば、本明細書に記載されているZFN、CRISPR/Cas系、Ttagoおよび/またはTALEN)または他のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、本明細書に記載されている。ポリヌクレオチドは、例えば、mRNAであってよい。一部の態様において、mRNAは、化学修飾されていてよい(例えば、Kormannら(2011年)Nature Biotechnology 29巻(2号):154〜157頁を参照)。他の態様において、mRNAは、ARCAキャップを含むことができる(米国特許第7,074,596号および同第8,153,773号を参照)。さらなる実施形態において、mRNAは、改変されていないおよび改変されたヌクレオチドの混合物を含むことができる(米国特許出願公開第2012−0195936号を参照)。
【0017】
別の態様において、プロモーターに作動可能に連結された、本明細書に記載されている1種または複数種のタンパク質(ヌクレアーゼ(例えば、ZFN、CRISPR/Cas系、Ttagoおよび/またはTALEN)を包含する)をコードするポリヌクレオチドを含む、発現ベクター(例えば、ZFN、CRISPR/Cas系、Ttagoおよび/またはTALEN発現ベクター)が、本明細書に記載されている。一実施形態において、発現ベクターは、ウイルスベクターである。一態様において、ウイルスベクターは、組織特異的指向性を提示する。
【0018】
別の態様において、1種または複数種の発現ベクター(ヌクレアーゼ(例えば、ZFN、CRISPR/Cas系、Ttagoおよび/またはTALEN)発現ベクターを含む)を含む宿主細胞が、本明細書に記載されている。
【0019】
別の態様において、本明細書に記載されている発現ベクターを含む医薬組成物が提供される。一部の実施形態において、医薬組成物は、1種より多くの発現ベクターを含むことができる。一部の実施形態において、医薬組成物は、第1のポリヌクレオチドを含む第1の発現ベクターと、第2のポリヌクレオチドを含む第2の発現ベクターとを含む。一部の実施形態において、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは、異なる。一部の実施形態において、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは、実質的に同じである。医薬組成物は、ドナー配列(例えば、第IX因子ドナー配列)をさらに含むことができる。一部の実施形態において、ドナー配列は、発現ベクターに関連する。
【0020】
一態様において、本発明の方法および組成物は、血友病において異常に発現されるタンパク質(第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子および/または第XI因子タンパク質)の機能的バージョンを発現する導入遺伝子を含む遺伝子改変された細胞であって、導入遺伝子が、細胞のゲノムの内在性セーフハーバー遺伝子(例えば、アルブミン遺伝子)に組み込まれた細胞を含む。ある特定の実施形態において、導入遺伝子は、少なくとも1種のヌクレアーゼを使用して、部位特異的な(標的化された)様式で組み込まれる。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、Ttagoおよび/またはCRISPR/Cas系)は、セーフハーバー遺伝子(例えば、CCR5、HPRT、AAVS1、Rosaまたはアルブミン。例えば、米国特許第7,951,925号および同第8,110,379号;米国出願公開第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号および20130177960号、ならびに米国出願第14/278,903号を参照されたい)に特異的である。一部の実施形態において、セーフハーバーは、アルブミン遺伝子である。
【0021】
別の態様において、in vitroおよび/またはin vivoで細胞を遺伝子改変して、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子および/または第XI因子を産生する方法であって、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子および/または第XI因子をコードする導入遺伝子が、セーフハーバー遺伝子座に組み込まれ、細胞において発現されるように、1種または複数種のヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas)を使用して、細胞における内在性セーフハーバー遺伝子を開裂するステップを含む方法が、本明細書に記載されている。ある特定の実施形態において、セーフハーバー遺伝子は、CCR5、HPRT、AAVS1、Rosaまたはアルブミン遺伝子である。ある特定の実施形態において、細胞は、哺乳動物細胞である。ある特定の実施形態において、細胞は、霊長類細胞である。ある特定の実施形態において、細胞は、ヒト細胞である。実施形態の1セットにおいて、細胞(例えば、肝臓細胞)におけるアルブミン遺伝子を開裂するための方法であって、1種または複数種のタンパク質が発現され、アルブミン遺伝子が開裂されるような条件下で、細胞に、本明細書に開示されている1種または複数種の発現ベクターを導入するステップを含む方法が提供される。アルブミン遺伝子は、例えば、開裂されたアルブミン遺伝子へのドナー配列の組込みにより改変することができる。
【0022】
ある特定の実施形態において、本方法は、細胞を遺伝子改変して、リソソーム蓄積症において欠如する凝固因子またはタンパク質を産生するステップを含み、細胞に、表1に示すジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)(またはこれらのZFNをコードするポリヌクレオチド)およびドナーを投与するステップを含む。ZFNおよびドナーは、同じまたはいずれかの組合せで異なるベクターに存在することができ、例えば、それぞれ構成成分のうち1種を保有する3種の別々のベクター(例えば、AAVベクター);構成成分のうち2種を保有する1種のベクターおよび第3の構成成分を保有する別々のベクター;または全3種の構成成分を保有する1種のベクターに存在することができる。
【0023】
別の態様において、例えば、血友病Aを処置するために、血友病Aを有する哺乳動物、または霊長類、例えばヒト霊長類、例えば、ヒト患者において欠如または欠損する機能的タンパク質(例えば、第VIII因子)を提供するための方法が、本明細書に提供される。場合によっては、機能的タンパク質は、循環血漿タンパク質である。場合によっては、機能的タンパク質は、非循環血漿タンパク質である。場合によっては、機能的タンパク質は、肝臓特異的であり得る。別の態様において、例えば、血友病Bを処置するために、血友病Bを有する哺乳動物、または霊長類、例えばヒト霊長類、例えば、ヒト患者において欠如または欠損する機能的タンパク質(例えば、第IX因子)を提供するための方法が、本明細書に提供される。別の態様において、第VII因子欠損症に関連する血友病を処置するために、哺乳動物、または霊長類、例えばヒト霊長類、例えばヒト患者に機能的タンパク質(例えば、第VII因子)を提供するための方法が、本明細書に提供される。別の態様において、第X因子欠損症に関連する血友病を処置するために、機能的タンパク質(例えば、第X因子)を提供するための方法が、本明細書に提供される。別の態様において、第XI因子欠損症と関連する血友病を処置するために、機能的タンパク質(例えば、第XI因子)を提供するための方法が、本明細書に提供される。ある特定の実施形態において、本方法は、ヌクレアーゼを使用して、それを必要とする被験体における細胞に機能的第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子および/または第XI因子タンパク質をコードする配列を組み込むステップを含む。他の実施形態において、本方法は、被験体に遺伝子改変された細胞(血友病の被験体において異常に発現されるタンパク質の機能的バージョンを発現する)を投与するステップを含む。よって、単離された細胞は、被験体に導入することができる(ex vivo細胞療法)、あるいは細胞は、被験体の一部である場合改変することができる(in vivo)。例えば、血友病の処置のための医薬の調製における、血友病(例えば、第VIII因子ドナーによる血友病A、第IX因子ドナーによる血友病B、第VII因子による第VII因子欠損症、第X因子による第X因子欠損症および/または第XIによる第XI因子欠損症)の処置のための、本明細書に記載されているドナーおよび/またはヌクレアーゼの使用も提供される。ある特定の実施形態において、第VIII因子Fタンパク質は、B−ドメイン欠失を含む。ある特定の実施形態において、第VIII因子および/または第IX因子コード配列は、ウイルスベクター、非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)および/またはこれらの組合せを使用して送達される。
【0024】
記載されている組成物および方法のいずれかにおいて、ヌクレアーゼ(複数可)および/または導入遺伝子(複数可)は、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9およびAAVrh10、またはAAV2/8、AAV8.2、AAV2/5およびAAV2/6などのようなシュードタイプ化AAVが挙げられるがこれらに限定されない、AAVベクターにおいて運ばれ得る。一部の実施形態において、AAVベクターはAAV2/6ベクターである。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼおよび導入遺伝子ドナーは、同じAAVベクター型を使用して送達される。他の実施形態において、ヌクレアーゼおよび導入遺伝子ドナーは、異なるAAVベクター型を使用して送達される。ヌクレアーゼおよび導入遺伝子は、1種または複数種のベクターを使用して送達することができ、例えば、1種のベクターが、導入遺伝子およびヌクレアーゼ(複数可)の両方を保有する;1種がヌクレアーゼ(複数可)(例えば、例えば、2AペプチドによるZFN対の左および右ZFN)を保有し、1種が導入遺伝子を保有する2種のベクター;または1種のベクターが、ヌクレアーゼ対の一方のヌクレアーゼ(例えば、左ZFN)を保有し、別々のベクターが、ヌクレアーゼ対の他方のヌクレアーゼ(例えば、右ZFN)を保有し、第3の別々のベクターが、導入遺伝子を保有する3種のベクター。
図2を参照されたい。2種またはそれを超えるベクターが使用される実施形態において、ベクターは、同じ濃度でまたは異なる比で使用することができ、例えば、導入遺伝子ドナーベクター(複数可)は、ヌクレアーゼベクター(複数可)よりも2倍、3倍、4倍、5倍またはそれを超えて高い濃度で投与することができる。例えば、第1のヌクレアーゼ、第1のヌクレアーゼとは異なる第2のヌクレアーゼおよび導入遺伝子ドナーは、約1:1:1、約1:1:2、約1:1:3、約1:1:4、約1:1:5、約1:1:6、約1:1:7、約1:1:8、約1:1:9、約1:1:10、約1:1:11、約1:1:12、約1:1:13、約1:1:14、約1:1:15、約1:1:16、約1:1:17、約1:1:18、約1:1:19または場合によっては、約1:1:20の比で送達することができる。例証の実施形態において、第1のヌクレアーゼ、第1のヌクレアーゼとは異なる第2のヌクレアーゼおよび導入遺伝子ドナーは、約1:1:8の比で送達される。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼおよび/または導入遺伝子ドナーは、インタクトな動物の肝臓への静脈内(例えば、門脈内)投与により送達される。
【0025】
本明細書に記載されている組成物および方法のいずれかにおいて、導入遺伝子にコードされるタンパク質は、第VIII因子タンパク質、または改変第VIII因子タンパク質、例えば、B−ドメイン欠失第VIII因子(BDD−F8)またはそれらの断片を含むことができる。他の実施形態において、導入遺伝子にコードされるタンパク質は、第IX因子タンパク質を含む。他の実施形態において、導入遺伝子にコードされるタンパク質は、第VII因子タンパク質を含む。他の実施形態において、導入遺伝子にコードされるタンパク質は、第X因子タンパク質を含む。本明細書に記載されている組成物または方法のいずれかにおいて、導入遺伝子は、転写調節因子も含むが、他方ではこれを含まず、転写は、内在性調節因子により調節される。別の態様において、本発明の方法は、それを必要とする被験体の治療的処置のための組成物を含む。一部の実施形態において、本組成物は、セーフハーバー特異的ヌクレアーゼと、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子および/または第XI因子タンパク質、あるいはこれらの機能的断片および/またはトランケーションをコードする導入遺伝子ドナーとを含む操作された幹細胞を含む。他の実施形態において、本組成物は、改変されており、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子および/または第XI因子タンパク質、あるいはこれらの機能的断片および/またはトランケーションをコードする導入遺伝子ドナーを発現する、操作された幹細胞を含む。
【0026】
本明細書に記載されている組成物または方法のいずれかにおいて、細胞は、真核細胞であってよい。適した細胞の非限定例として、分泌細胞(例えば、肝臓細胞、粘膜細胞、唾液腺細胞、下垂体細胞等)、血液細胞(赤血球)、赤血球前駆細胞、肝細胞、筋肉細胞、幹細胞(例えば、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、肝幹細胞、造血幹細胞(例えば、CD34+))または内皮細胞(例えば、血管内皮細胞、糸球体内皮細胞および尿細管内皮細胞)等の、真核細胞または細胞株が挙げられる。よって、標的細胞は、霊長類細胞、例えば、ヒト細胞であってよく、または標的細胞は、哺乳動物細胞(獣医学的動物を含む)、例えば特に、非ヒト霊長類、ならびにげっ歯目(マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ目(ウサギ)、食肉目(ネコ、イヌ)および偶蹄目(Arteriodactyla)(ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ)の哺乳動物であってよい。一部の態様において、標的細胞は、組織(例えば、肝臓)を含む。一部の態様において、標的細胞は、本明細書に記載される方法のいずれかによる幹細胞(例えば、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、肝臓幹細胞等)または非ヒト動物胚であり、次いで、胚は、生きた動物が出生するように移植される。次いで、動物は、性的成熟になるまで育てられ、子孫を生じるようになり、ここで、子孫の少なくとも一部は、ゲノム改変を含む。細胞は、例えば、マウス、ラット、ウサギまたは他の哺乳動物細胞胚の胚細胞を含むこともできる。細胞は、いかなる生物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌまたは他の哺乳動物細胞に由来してよい。細胞は、生物(例えば、被験体)から単離することができる、またはその一部であってよい。
【0027】
本明細書に記載されている方法および組成物のいずれかにおいて、導入遺伝子は、内在性セーフハーバー遺伝子に組み込むことができ、それにより、例えば、組み込まれた導入遺伝子との融合タンパク質として、該内在性遺伝子の一部、その全てが発現されるまたはそのいずれも発現されない。一部の実施形態において、内在性セーフハーバー遺伝子は、アルブミン遺伝子であり、内在性配列は、アルブミン配列である。内在性は、外来性タンパク質のアミノ(N)末端部分および/または外来性タンパク質のカルボキシ(C)末端部分に存在することができる。アルブミン配列は、全長野生型または変異体アルブミン配列を含むことができるか、あるいは、部分的アルブミンアミノ酸配列を含むことができる。ある特定の実施形態において、アルブミン配列(全長または部分的)は、それが融合された導入遺伝子によって発現されるポリペプチドの血清半減期の延長におよび/または担体として役立つ。他の実施形態において、導入遺伝子は、アルブミン配列を含み、ゲノム内の別のセーフハーバーへの挿入に標的化される。さらに、導入遺伝子は、その発現を駆動する外来性プロモーター(例えば、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター)を含むことができるか、その発現は、内在性制御配列(例えば、内在性アルブミンプロモーター)によって駆動され得る。一部の実施形態において、ドナーは、例えばコドン最適化、およびグリコシル化部位の付加等が挙げられるがこれらに限定されない、追加の改変を含む。
【0028】
一部の実施形態において、ジンクフィンガータンパク質と、野生型または操作された開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインとを含む融合タンパク質が提供される。
【0029】
一部の実施形態において、(i)ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含むAAVベクターであって、該ジンクフィンガーヌクレアーゼが、FokI開裂ドメインと、F1からF5に並べられた5個のジンクフィンガードメインを含むジンクフィンガータンパク質とを含み、各ジンクフィンガードメインが、認識ヘリックス領域を含み、ジンクフィンガータンパク質の認識ヘリックス領域が、表1の第1の行に示されている(配列番号4〜8)AAVベクター(例えば、配列番号15)と、(ii)ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含むAAVベクターであって、該ジンクフィンガーヌクレアーゼが、FokI開裂ドメインと、F1からF6に並べられた6個のジンクフィンガードメインを含むジンクフィンガータンパク質とを含み、各ジンクフィンガードメインが、認識ヘリックス領域を含み、ジンクフィンガータンパク質の認識ヘリックス領域が、表1の第2の行に示されている(配列番号9〜14)AAVベクター(例えば、配列番号16)と、(iii)第IX因子タンパク質をコードするドナーを含むAAVベクター(例えば、配列番号17)とを含む医薬組成物が提供される。
【0030】
一部の実施形態において、(i)、(ii)および(iii)は、約1:1:1、約1:1:2、約1:1:3、約1:1:4、約1:1:5、約1:1:6、約1:1:7、約1:1:8、約1:1:9、約1:1:10、約1:1:11、約1:1:12、約1:1:13、約1:1:14、約1:1:15、約1:1:16、約1:1:17、約1:1:18、約1:1:19または約1:1:20の比で提供される。
【0031】
一部の実施形態において、配列番号15に対し80%、90%、95%、99%、99.5%または99.8%またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる第1のポリヌクレオチドと、配列番号16に対し80%、90%、95%、99%、99.5%または99.8%またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる第2のポリヌクレオチドと、任意選択で、配列番号17に対し80%、90%、95%、99%、99.5%または99.8%またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなるドナー配列とを含む医薬組成物が提供される。
【0032】
一部の実施形態において、配列番号15に示す配列を含む第1のポリヌクレオチドと、配列番号16に示す配列を含むまたはそれからなる第2のポリヌクレオチドと、任意選択で、配列番号17に示す配列を含むまたはそれからなるドナー配列とを含むまたはそれらからなる医薬組成物が提供される。
【0033】
本明細書に記載されている組成物または方法のいずれかにおいて、開裂は、操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはTtagoもしくはCRISPR/Cas系と特異的開裂をガイドするための操作されたcrRNA/tracr RNA(「単一ガイドRNA」)の使用等の、特異的ヌクレアーゼの使用により起こり得る。一部の実施形態において、2種のニッカーゼが使用されて、2個のニックを導入することによりDSBを作製する。場合によっては、ニッカーゼはZFNであるが、他方では、ニッカーゼは、TALENまたはCRISPR/Cas系である。標的化組込みは、相同組換え修復機構(HDR)および/または非相同性修復機構(例えば、NHEJドナー捕捉)により起こることができる。本明細書に記載されているヌクレアーゼは、例えば、コード領域の上流または下流のいずれかにおける、リーダー配列、トレーラー配列もしくはイントロン、または非転写領域内等の、遺伝子内またはそれに隣接するコード領域または非コード領域における目的の領域に結合および/またはこれを開裂することができる。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、結合部位(例えば、表1に示す結合部位)におけるまたはその付近の標的配列を開裂する。開裂は、例えば、挿入、欠失またはこれらの組合せによる遺伝子の改変を結果としてもたらし得る。ある特定の実施形態において、改変は、ヌクレアーゼ(複数可)結合部位(複数可)および/または開裂部位(複数可)におけるまたはその付近、例えば、開裂の部位(複数可)の上流または下流の1〜300(またはその間のいずれかの値)塩基対以内、より好ましくは、結合部位(複数可)および/または開裂部位(複数可)のいずれかの側の1〜100塩基対(またはその間のいずれかの値)以内、さらにより好ましくは、結合部位(複数可)および/または開裂部位(複数可)のいずれかの側の1〜50塩基対(またはその間のいずれかの値)以内である。
【0034】
記載されている方法および組成物を使用して、それを必要とする被験体における血友病を処置または予防することができる。一部の実施形態において、血友病Bの患者を処置する方法であって、本明細書に記載されるいずれかの発現ベクターまたは医薬組成物を患者に投与するステップを含み、発現ベクターまたは医薬組成物が、内在性アルブミン遺伝子への機能的第IX因子タンパク質をコードする導入遺伝子の標的化組込みを媒介する方法が提供される。一部の実施形態において、本組成物は、ベクターを含み、肝臓細胞を標的とすることに使用される。他の実施形態において、本組成物は、操作された幹細胞を含み、骨髄移植片として患者に与えられる。一部の事例において、患者は、移植に先立ち部分的にまたは完全に免疫除去(immunoablate)される。他の事例において、患者は、内在性遺伝子のヌクレアーゼ媒介性改変(例えば、アルブミン遺伝子座へのFIX導入遺伝子の標的化組込み)の前、最中および/または後に1種または複数種の免疫抑制剤で処置される。
【0035】
他の態様において、ヒト第9因子(hF9)導入遺伝子の補正的コピーを被験体自身の肝細胞のゲノムにin vivoで部位特異的に組み込むために、表1に示す操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む系(「SB−FIX」系)を使用して血友病Bを処置および/または予防する方法が、本明細書に記載される。hF9導入遺伝子の組込みは、アルブミン遺伝子座のイントロン1に標的化され、血液への第IX因子の安定的で高レベルな肝臓特異的発現および分泌を結果としてもたらす。SB−FIXは、系列的で連続した静脈内用量として投与される、3種の個々の組換えアデノ随伴ウイルス血清型2/6(rAAV2/6)ベクターを含有する:SBS42906をコードする第1のベクター(表1のSB−42906)、SBS43043をコードする第2のベクター(SB−43043)およびプロモーターなしhF9導入遺伝子をコードするDNA修復鋳型を提供する第3のベクター(SB−F9ドナー、「SB−FIXドナー」とも称される)。全3種のベクターの送達は、1)操作された配列特異的ZFN(SBS42906およびSBS43043)の対による、アルブミン遺伝子座のイントロン1内の所定の部位における特異的かつ選択的な開裂、および2)ZFN誘導性DNA切断の部位における、DNA修復鋳型にコードされるhF9導入遺伝子の安定的組込みをもたらす。高度に発現された内在性アルブミン遺伝子座の制御下における、ゲノムへのhF9導入遺伝子の配置は、被験体の生涯にわたる第IX因子の永続的な肝臓特異的発現をもたらす。
【0036】
さらに、本明細書に記載されている方法のいずれかは、部分的肝切除術、または形質導入を増強するおよび/または細胞周期を行うよう肝細胞を誘導する二次作用物質(secondary agent)による処置を含む、追加のステップをさらに含むことができる。二次作用物質の例として、ガンマ線照射、UV照射、チミジン等のトリチウム標識ヌクレオチド、シス−白金、エトポシド、ヒドロキシ尿素、アフィディコリン、プレドニゾロン、四塩化炭素および/またはアデノウイルスが挙げられる。
【0037】
本明細書に記載されている方法は、in vitro、ex vivoまたはin vivoで実施することができる。ある特定の実施形態において、本組成物は、生きているインタクトな哺乳動物に導入される。哺乳動物は、送達の時点にいかなる発生のステージであってもよく、例えば、胚、胎児、新生児、乳児、若年または成体であり得る。その上、標的化細胞は、健康であっても罹患していてもよい。ある特定の実施形態において、組成物のうち1種または複数種は、静脈内(例えば、門脈内を介して、例えば尾静脈注射により肝臓に)、動脈内、腹腔内、筋肉内、肝臓実質へと(例えば、注射により)、肝動脈へと(例えば、注射により)および/または胆樹を通して(例えば、注射により)送達される。
【0038】
特定の一態様において、本明細書に記載されている方法および組成物は、(i)FVIIIをコードするドナー導入遺伝子、(ii)それぞれFVIII以外の内在性遺伝子の遺伝子座を標的とする、例えば、血友病患者等、哺乳動物または霊長類またはヒトの内在性アルブミン遺伝子を標的とするヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、TtagoまたはCRISPR/Cas系)を含む治療組成物を含む。ある特定の実施形態において、治療組成物は、異なる量で、別々のAAVベクター等、別々の独立的ベクターに、FVIIIドナー導入遺伝子およびアルブミン遺伝子特異的ヌクレアーゼを含み、一緒に投与することができる(例えば、単一の溶液へと混合してもよいし、または同時に投与してもよい)か、あるいは、別々に投与することができる(例えば、別々の溶液で、実質的な遅延、例えば、それぞれの投与の間に10分間またはそれ超、30分間またはそれ超、1時間またはそれ超、2時間またはそれ超、3時間またはそれ超、またはそれより長い遅延で投与することができる)。ある特定の実施形態において、治療組成物を投与して、非FVIII遺伝子座へのFVIIIドナー導入遺伝子の組込みと、組み込まれたFVIIIのその後の発現をもたらし、哺乳動物または霊長類またはヒトまたは血友病患者の血漿における治療レベルのFVIIIを達成する。ある特定の実施形態において、治療レベルのFVIIIは、例えば、FVIIIの臨床的に許容される正常血漿濃度の2%超、4%超、5%超、6%超、8%超、10%超、12%超、15%超、20%超、25%超またはそれを超える濃度を含むことができる。あるいはまたはそれに加えて、治療レベルのFVIIIは、例えば、個体へのFVIIIドナー導入遺伝子およびアルブミン遺伝子ヌクレアーゼの投与に先立ち個々の哺乳動物または霊長類またはヒトまたは血友病患者において測定される機能的FVIIIの血漿濃度の2%超、4%超、5%超、6%超、8%超、10%超、12%超、15%超、20%超、25%超、30%超、35%超またはそれを超える濃度を含むことができる。
【0039】
別の特定の態様において、本明細書に記載されている方法および組成物は、(i)FIXをコードするドナー導入遺伝子、(ii)それぞれFIX以外の内在性遺伝子の遺伝子座を標的とする、例えば、血友病患者等、哺乳動物または霊長類またはヒトの内在性アルブミン遺伝子を標的とするヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、TtagoまたはCRISPR/Cas系)を含む治療組成物を含む。ある特定の実施形態において、治療組成物は、異なる量で、別々のAAVベクター等、別々の独立的ベクターに、FIXドナー導入遺伝子およびアルブミン遺伝子ヌクレアーゼを含み、一緒に投与することができる(例えば、単一の溶液へと混合、または同時に投与することができる)か、あるいは別々に投与することができる(例えば、別々の溶液で、実質的な遅延、例えば、それぞれの投与の間に10分間またはそれ超、30分間またはそれ超、1時間またはそれ超、2時間またはそれ超、3時間またはそれ超、またはそれより長い遅延で投与することができる)。ある特定の実施形態において、治療組成物を投与して、非FIX遺伝子座へのFIXドナー導入遺伝子の組込みと、組み込まれたFIXのその後の発現をもたらし、哺乳動物または霊長類またはヒトまたは血友病患者の血漿における治療レベルのFIXを達成する。ある特定の実施形態において、治療レベルのFIXは、FIXの臨床的に許容される正常血漿濃度の例えば、2%超、4%超、5%超、6%超、8%超、10%超、12%超、15%超、20%超、25%超、またはそれを超える濃度を含むことができる。あるいはまたはそれに加えて、治療レベルのFIXは、例えば、個体へのFIXドナー導入遺伝子およびアルブミン遺伝子ヌクレアーゼの投与に先立ち個々の哺乳動物または霊長類またはヒトまたは血友病患者において測定される機能的FIXの血漿濃度の2%超、4%超、5%超、6%超、8%超、10%超、12%超、15%超、20%超、25%超、30%超、35%超、またはそれを超える濃度を含むことができる。
【0040】
特定の種類の細胞、例えば、血小板、線維芽細胞、肝細胞等に組成物を標的とするため、投与される組成物の1種または複数種は、その細胞の表面受容体に特異的に結合するホーミング剤と会合することができる。例えば、ベクターは、ある特定の肝系細胞が受容体を有するリガンド(例えば、ガラクトース)にコンジュゲートすることができる。コンジュゲーションは、共有結合性、例えば、グルタルアルデヒド等の架橋剤、または非共有結合性、例えば、ビオチン化ベクターへのアビジン化リガンドの結合であり得る。コードされるコートタンパク質の1種または複数種が、リガンドがウイルス粒子表面に露出されるように、ネイティブAAVコートタンパク質およびペプチドまたはタンパク質リガンドのハイブリッドとなることができるように、ベクターストックの調製に使用されるAAVヘルパープラスミドを操作することにより、別の形態の共有結合性コンジュゲーションが提供される。
【0041】
本発明の組成物(例えば、発現ベクター、遺伝子改変された細胞、ZFP、CRISPR/Cas系および/またはTALENならびに任意選択で導入遺伝子ドナー)を含むキットも提供される。キットは、ヌクレアーゼをコードする核酸(例えば、RNA分子、または適切な発現ベクター中に含有されるヌクレアーゼコード遺伝子)、ドナー分子、適切な宿主細胞株、本発明の方法を実施するための指示書などを含み得る。
【0042】
これらおよび他の態様は、全体としての開示を踏まえて、当業者に容易に明らかである。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
表1の単一の行に示す通りのF1からF5またはF1からF6と命名されて並べられた5または6個のジンクフィンガードメインを含むジンクフィンガータンパク質。
(項目2)
項目1に記載のジンクフィンガータンパク質と、野生型または操作された開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインとを含む融合タンパク質。
(項目3)
項目1または項目2に記載の1種または複数種のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(項目4)
項目3に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
(項目5)
前記ベクターが、AAVベクターである、項目4に記載の発現ベクター。
(項目6)
前記AAVベクターが、AAV2/6ベクターである、項目5に記載の発現ベクター。
(項目7)
項目4〜6のいずれかに記載の発現ベクターを含む医薬組成物。
(項目8)
第1のポリヌクレオチドを含む項目4〜6のいずれかに記載の第1の発現ベクターと、第2のポリヌクレオチドを含む項目4〜6のいずれかに記載の第2の発現ベクターとを含み、該第1のポリヌクレオチドと該第2のポリヌクレオチドとは異なっている、項目7に記載の医薬組成物。
(項目9)
(i)ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含むAAVベクターであって、該ジンクフィンガーヌクレアーゼが、FokI開裂ドメインと、F1からF5に並べられた5個のジンクフィンガードメインを含むジンクフィンガータンパク質とを含み、各ジンクフィンガードメインが、認識ヘリックス領域を含み、該ジンクフィンガータンパク質の該認識ヘリックス領域が、表1の第1の行に示されている(配列番号4〜8)AAVベクターと、
(ii)ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含むAAVベクターであって、該ジンクフィンガーヌクレアーゼが、FokI開裂ドメインと、F1からF6に並べられた6個のジンクフィンガードメインを含むジンクフィンガータンパク質とを含み、各ジンクフィンガードメインが、認識ヘリックス領域を含み、該ジンクフィンガータンパク質の該認識ヘリックス領域が、表1の第2の行に示されている(配列番号9〜14)AAVベクターと、
(iii)第IX因子タンパク質をコードするドナーを含むAAVベクターと
を含む、項目7に記載の医薬組成物。
(項目10)
前記第1のポリヌクレオチドが、配列番号15に示す配列を含むまたはそれからなり、前記第2のポリヌクレオチドが、配列番号16に示す配列を含むまたはそれからなる、項目8に記載の医薬組成物。
(項目11)
ドナー配列をさらに含む、項目10に記載の医薬組成物。
(項目12)
前記ドナー配列が、発現ベクターに関連する、項目11に記載の医薬組成物。
(項目13)
前記ドナー配列が、配列番号17に示す配列を含むまたはそれからなる、項目11に記載の医薬組成物。
(項目14)
前記発現ベクターが、AAVベクターである、項目13に記載の医薬組成物。
(項目15)
前記AAVベクターが、AAV2/6ベクターである、項目14に記載の医薬組成物。
(項目16)
少なくとも1種のタンパク質が、細胞におけるアルブミン遺伝子に結合する、先行する項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目17)
薬学的に許容される担体をさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目18)
細胞におけるアルブミン遺伝子を開裂する方法であって、
前記1種または複数種のタンパク質が発現され、該アルブミン遺伝子が開裂されるような条件下で、該細胞に、項目4〜6のいずれかに記載の1種または複数種の発現ベクターを導入するステップ
を含む方法。
(項目19)
開裂された前記アルブミン遺伝子にドナー配列を組み込むステップをさらに含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記ドナー配列が、AAVベクターを使用して導入される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記AAVベクターが、AAV2/6ベクターである、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記ドナー配列が、第IX因子(F.IX)タンパク質をコードする、項目18〜21のいずれかに記載の方法。
(項目23)
前記細胞が、肝臓細胞である、項目18〜22のいずれかに記載の方法。
(項目24)
血友病Bの患者を処置する方法であって、内在性アルブミン遺伝子への機能的第IX因子タンパク質をコードする導入遺伝子の標的化組込みを媒介する、項目4〜6のいずれかに記載の発現ベクターまたは項目7に記載の医薬組成物を該患者に投与するステップを含む方法。
(項目25)
(i)ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含むAAVベクターであって、該ジンクフィンガーヌクレアーゼが、FokI開裂ドメインと、F1からF5に並べられた5個のジンクフィンガードメインを含むジンクフィンガータンパク質とを含み、各ジンクフィンガードメインが、認識ヘリックス領域を含み、該ジンクフィンガータンパク質の該認識ヘリックス領域が、表1の第1の行に示されている(配列番号4〜8)AAVベクターと、
(ii)ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含むAAVベクターであって、該ジンクフィンガーヌクレアーゼが、FokI開裂ドメインと、F1からF6に並べられた6個のジンクフィンガードメインを含むジンクフィンガータンパク質とを含み、各ジンクフィンガードメインが、認識ヘリックス領域を含み、該ジンクフィンガータンパク質の該認識ヘリックス領域が、表1の第2の行に示されている(配列番号9〜14)AAVベクターと、
(iii)第IX因子タンパク質をコードするドナーを含むAAVベクターと
を含む系が前記患者に投与される、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記発現ベクター(複数可)または医薬組成物および導入遺伝子が、静脈内投与される、項目24または項目25に記載の方法。
(項目27)
項目4〜6のいずれかに記載の発現ベクターを含むキット。
(項目28)
前記第1のヌクレアーゼ、該第1のヌクレアーゼとは異なる前記第2のヌクレアーゼおよび前記導入遺伝子ドナーが、約1:1:1、約1:1:2、約1:1:3、約1:1:4、約1:1:5、約1:1:6、約1:1:7、約1:1:8、約1:1:9、約1:1:10、約1:1:11、約1:1:12、約1:1:13、約1:1:14、約1:1:15、約1:1:16、約1:1:17、約1:1:18、約1:1:19または約1:1:20の比で提供される、項目8または10〜17に記載の医薬組成物。
(項目29)
(i)、(ii)および(iii)が、約1:1:1、約1:1:2、約1:1:3、約1:1:4、約1:1:5、約1:1:6、約1:1:7、約1:1:8、約1:1:9、約1:1:10、約1:1:11、約1:1:12、約1:1:13、約1:1:14、約1:1:15、約1:1:16、約1:1:17、約1:1:18、約1:1:19または約1:1:20の比で提供される、項目9に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0049】
詳細な説明
改変前のその発現または遺伝子配列が異常である、1種または複数種のタンパク質を産生するように細胞を改変するための組成物および方法が、本明細書に開示されている。一部の実施形態において、このタンパク質は、血友病に関連する。細胞は、細胞のセーフハーバー遺伝子(例えば、アルブミン)への、1種または複数種の機能的タンパク質をコードする導入遺伝子の標的化挿入により改変され得る。一部の実施形態において、導入遺伝子は、内在性アルブミン遺伝子に挿入される。導入遺伝子は、血友病に関与するいずれかのタンパク質またはペプチド、例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子および/またはこれらの機能的断片をコードすることができる。本明細書に記載されている細胞を使用して、および/または本明細書に記載されている通りに細胞を改変することにより(ex vivoまたはin vivo)、血友病を処置する方法も開示される。細胞を改変するためのヌクレアーゼおよびドナー分子をコードする核酸を含む組成物と、in vivoまたはex vivoで細胞を改変するための方法がさらに記載される。その上、本発明の方法および組成物によって改変された細胞を含む組成物が記載される。
【0050】
本明細書に記載されているゲノム的に改変された細胞は、典型的に、変更された状態または異常な状態のその遺伝子が血友病疾患に関連する治療タンパク質(例えば、第VII因子、第VIII因子(F8)、第IX因子、第X因子および/または第XI因子)をコードする配列を被験体の1個または複数個の細胞のゲノムに(in vivoまたはex vivo)挿入するように、ヌクレアーゼ媒介性(ZFN、TALENおよび/またはCRISPR/Cas)標的化組込みにより、該細胞がin vivoでタンパク質を産生するように改変される。ある特定の実施形態において、本方法は、例えば、部分的肝切除術により、および/または細胞周期進行を受けるように肝細胞を誘導する1種もしくは複数種の化合物の投与により、増殖するように(細胞周期に入るように)被験体の細胞、特に、肝臓細胞を誘導するステップをさらに含む。被験体として、ヒト、非ヒト霊長類、ネコ、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、モルモット、ウシ、ブタ、ウマ、およびヤギ等のような獣医学的動物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0051】
概要
本明細書に開示される方法、ならびに組成物の調製および使用の実施は、特に示さない限り、本技術分野の技術範囲内の、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算機化学、細胞培養、組換えDNAならびに関連分野における従来の技術を用いる。これらの技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、SambrookらMOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年および第3版、2001年;Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、New York、1987年および定期的更新;シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY、Academic Press、San Diego;Wolffe、CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION、第3版、Academic Press、San Diego、1998年;METHODS IN ENZYMOLOGY、304巻、「Chromatin」(P.M. WassarmanおよびA. P. Wolffe編)、Academic Press、San Diego、1999年;ならびにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY、119巻、「Chromatin Protocols」(P.B. Becker編)Humana Press、Totowa、1999年を参照されたい。
【0052】
定義
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、相互交換可能に使用され、直鎖状または環状コンフォメーションの、一本鎖形態または二本鎖形態のいずれかの、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーを指す。本開示の目的のため、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定的であると解釈すべきではない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの公知のアナログ、ならびに塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)において修飾されたヌクレオチドを包含し得る。一般に、特定のヌクレオチドのアナログは、同じ塩基対合特異性を有する;即ち、Aのアナログは、Tと塩基対合する。
【0053】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、相互交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1または複数のアミノ酸が、対応する天然起源のアミノ酸の化学的アナログまたは修飾された誘導体である、アミノ酸ポリマーにも適用される。
【0054】
用語「相同性」は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。一部の実施形態において、ポリマー分子は、それらの配列が、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.5%または99.8%同一である場合、互いに「相同」であるとみなされる。一部の実施形態において、ポリマー分子は、それらの配列が、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.5%または99.8%類似である場合、互いに「相同」であるとみなされる。
【0055】
用語「同一性」は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。2種の核酸配列のパーセント同一性の計算は、例えば、最適な比較目的のために2種の配列をアライメントすることにより実行することができる(例えば、最適なアライメントのために第1および第2の核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較目的のために非同一配列を無視することができる)。ある特定の実施形態において、比較目的のためにアライメントされた配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、99%、99.5%、99.8%または実質的に100%である。続いて、対応するヌクレオチド位置におけるヌクレオチドが比較される。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じヌクレオチドによって占有される場合、分子は、この位置において同一である。2配列間のパーセント同一性は、2配列の最適なアライメントのために導入されることを必要とするギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一位置の数の関数である。配列の比較および2配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。例えば、2種のヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、PAM 120重み残基表(weight residue table)、ギャップ長さペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に取り込まれたMeyersおよびMiller(CABIOS、1989年、4巻:11〜17頁)のアルゴリズムを使用して決定することができる。あるいは、2種のヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、NWSgapdna.CMPマトリックスを使用したGCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを使用して決定することができる。例えば、Clustal等、種々の他の配列アライメントプログラムを利用でき、配列同一性の決定に使用することができる。
【0056】
「結合」とは、巨大分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的な非共有結合相互作用を指す。相互作用が全体として配列特異的である限り、結合相互作用の全ての構成成分が配列特異的である(例えば、DNA骨格中のリン酸残基と接触する)必要はない。かかる相互作用は一般に、10
−6M
−1またはそれ未満の解離定数(K
d)を特徴とする。「親和性」とは、結合の強度を指す:増加した結合親和性は、より低いK
dと相関する。
【0057】
「結合タンパク質」は、別の分子と非共有結合的に結合できるタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合できる。タンパク質結合タンパク質の場合、これは、それ自体と結合でき(ホモ二量体、ホモ三量体等を形成する)および/または異なるタンパク質(単数もしくは複数)の1もしくは複数の分子に結合できる。結合タンパク質は、1つよりも多い型の結合活性を有し得る。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合活性、RNA結合活性およびタンパク質結合活性を有する。
【0058】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、タンパク質、またはより大きいタンパク質内のドメインであり、その構造が亜鉛イオンの配位を介して安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1または複数のジンクフィンガーを介して配列特異的様式でDNAに結合する。用語、ジンクフィンガーDNA結合タンパク質は、多くの場合、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略される。
【0059】
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1または複数のTALEリピートドメイン/単位を含むポリペプチドである。これらのリピートドメインは、その同族標的DNA配列へのTALEの結合に関与する。単一の「リピート単位」(「リピート」とも呼ぶ)は、典型的には、33〜35アミノ酸長であり、天然起源のTALEタンパク質内の他のTALEリピート配列と少なくともいくらかの配列相同性を示す。例えば、米国特許第8,586,526号を参照されたい。
【0060】
ジンクフィンガーおよびTALE結合ドメインは、例えば、天然起源のジンクフィンガーまたはTALEタンパク質の認識ヘリックス領域の操作(1または複数のアミノ酸を変更する)を介して、所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作され」(engineer)得る。したがって、操作されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、非天然起源のタンパク質である。DNA結合タンパク質を操作するための方法の非限定的な例は、設計および選択である。設計されたDNA結合タンパク質は、その設計/組成が合理的基準から主に生じる、天然起源でないタンパク質である。設計のための合理的基準には、置換ルールの適用、ならびに既存のZFPおよび/またはTALEの設計および結合データの情報を記憶するデータベース中の情報を処理するためのコンピューターアルゴリズムが含まれる。例えば、米国特許第6,140,081号;同第6,453,242号;同第6,534,261号;および同第8,586,526号を参照されたい;WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496もまた参照されたい。
【0061】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質またはTALEは、その産生がファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択などの実験過程から主に生じる、天然には見出されないタンパク質である。例えば、US第5,789,538号;US第5,925,523号;US第6,007,988号;US第6,013,453号;US第6,200,759号;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970 WO01/88197、およびWO02/099084を参照されたい。
【0062】
「TtAgo」は、遺伝子サイレンシングに関与すると考えられる原核生物アルゴノートタンパク質である。TtAgoは、細菌Thermus thermophilusに由来する。(例えば、Swartsら、同書、G. Shengら、(2013年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111巻、652頁を参照されたい)。「TtAgo系」は、例えば、TtAgo酵素による開裂のためのガイドDNAを含めた、必要な構成成分の全てである。
【0063】
「組換え」とは、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換の過程を指し、限定するものではないが、非相同末端結合(NHEJ)および相同組み換えによるドナー捕捉を含む。本開示の目的のため、「相同組換え(HR)」とは、例えば、相同性指向性の修復機構を介した細胞における二本鎖切断の修復の間に行われる、かかる交換の特殊化された形態を指す。この過程は、ヌクレオチド配列の相同性を必要とし、「標的」分子(即ち、二本鎖切断を経験したもの)の鋳型修復のために「ドナー」分子を使用し、ドナーから標的への遺伝情報の移入をもたらすので、「非乗換え遺伝子変換」または「ショートトラクト(short tract)遺伝子変換」として様々に公知である。いかなる特定の理論に制約されることも望まないが、かかる移入は、切断された標的とドナーとの間に形成するヘテロ二重鎖DNAのミスマッチ補正、および/もしくは標的の一部となる遺伝情報を再合成するためにドナーが使用される「合成依存的鎖アニーリング」、ならびに/または関連する過程に関与し得る。かかる特殊化されたHRは、多くの場合、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全てが標的ポリヌクレオチド中に取り込まれるように、標的分子の配列の変更をもたらす。
【0064】
本開示の方法では、本明細書に記載される1または複数の標的化されたヌクレアーゼは、所定の部位において標的配列(例えば、細胞クロマチン)中に二本鎖切断を生じることができ、切断の領域中のヌクレオチド配列に対する相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドが、細胞中に導入され得る。二本鎖切断の存在は、ドナー配列の組込みを容易にすることが示されている。このドナー配列は、物理的に組み込まれ得、またはあるいは、このドナーポリヌクレオチドは、相同組換えによる切断の修復のための鋳型として使用されて、細胞クロマチン中への、ドナーと同様のヌクレオチド配列の全てまたは一部の導入を生じる。したがって、細胞クロマチン中の第1の配列は、変更され得、ある特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチド中に存在する配列へと変換され得る。用語「置き換える」または「置き換え」の使用は、別のヌクレオチド配列による1つのヌクレオチド配列の置き換え(即ち、情報的な意味での配列の置き換え)を示すと理解され得、別のポリヌクレオチドによる1つのポリヌクレオチドの物理的または化学的置き換えを必ずしも必要としない。
【0065】
本明細書に記載される方法のいずれかでは、さらなるジンクフィンガータンパク質またはTALENの対が、細胞内のさらなる標的部位のさらなる二本鎖開裂に使用され得る。
【0066】
細胞クロマチン中の目的の領域中の配列の標的化された組換えおよび/または置き換えおよび/または変更のための方法のある特定の実施形態では、染色体配列は、外因性「ドナー」ヌクレオチド配列との相同組換えによって変更される。かかる相同組換えは、切断の領域と相同な配列が存在する場合に、細胞クロマチン中の二本鎖切断の存在によって刺激される。
【0067】
本明細書に記載される方法のいずれかでは、第一のヌクレオチド配列(「ドナー配列」)は、目的の領域中のゲノム配列と相同ではあるが同一ではない配列を含み得、それによって、目的の領域において非同一配列を挿入するように相同組換えを刺激する。したがって、ある特定の実施形態では、目的の領域中の配列と相同なドナー配列の一部分は、置き換えられるゲノム配列に対して、約80〜99%の間(またはそれらの間の任意の整数)の配列同一性を示す。他の実施形態では、ドナー配列とゲノム配列との間の相同性は、例えば、1ヌクレオチドのみが100個を超える連続する塩基対のドナー配列とゲノム配列との間で異なる場合、99%よりも高い。ある特定の場合、ドナー配列の非相同部分は、新たな配列が目的の領域中に導入されるように、目的の領域中に存在しない配列を含み得る。これらの例では、非相同配列には、一般に、目的の領域中の配列と相同または同一な、50〜1,000塩基対(またはそれらの間の任意の整数値)または1,000よりも大きい任意の数の塩基対の配列が隣接する。他の実施形態では、このドナー配列は、第一の配列とは非相同であり、非相同組換え機構によってゲノム中に挿入される。
【0068】
本明細書に記載される方法のいずれかは、目的の遺伝子(複数可)の発現を破壊するドナー配列の標的化された組込みによる細胞中の1種もしくは複数種の標的配列の部分的もしくは完全な不活性化に使用され得る。部分的または完全に不活性化された遺伝子を有する細胞株もまた提供される。
【0069】
さらに、本明細書に記載される標的化された組込みの方法は、1種または複数種の外因性配列を組み込むためにも使用され得る。外因性核酸配列は、例えば、1種もしくは複数種の遺伝子もしくはcDNA分子、または任意の型のコード配列もしくは非コード配列、および1種もしくは複数種の制御エレメント(例えば、プロモーター)を含み得る。さらに、この外因性核酸配列は、1種または複数種のRNA分子(例えば、小ヘアピンRNA(shRNA)、阻害的RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)等)を産生し得る。
【0070】
「開裂」とは、DNA分子の共有結合骨格の切断を指す。開裂は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解が含まれるがこれらに限定されない種々の方法によって開始され得る。一本鎖開裂および二本鎖開裂の両方が可能であり、二本鎖開裂は、2つの個別の一本鎖開裂事象の結果として生じ得る。DNA開裂は、平滑末端または付着末端のいずれかの産生を生じ得る。ある特定の実施形態では、融合ポリペプチドが、標的化された二本鎖DNA開裂に使用される。
【0071】
「開裂ハーフドメイン」は、第2のポリペプチド(同一または異なるのいずれか)と協同して、開裂活性(好ましくは二本鎖開裂活性)を有する複合体を形成する、ポリペプチド配列である。用語「第1および第2の開裂ハーフドメイン」;「+および−の開裂ハーフドメイン」ならびに「右および左の開裂ハーフドメイン」は、相互交換可能に使用されて、二量体形成する開裂ハーフドメインの対を指す。
【0072】
「操作された開裂ハーフドメイン」は、別の開裂ハーフドメイン(例えば、別の操作された開裂ハーフドメイン)と偏性ヘテロ二量体を形成するように改変された開裂ハーフドメインである。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,914,796号;同第8,034,598号;および同第8,623,618号もまた参照されたい。
【0073】
用語「配列」とは、DNAまたはRNAであり得;直鎖状、環状または分枝状であり得、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る、任意の長さのヌクレオチド配列を指す。用語「ドナー配列」とは、ゲノム中に挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば、2ヌクレオチド長と10,000ヌクレオチド長との間(またはそれらの間もしくはそれらを上回る任意の整数値)、好ましくは約100ヌクレオチド長と1,000ヌクレオチド長との間(またはそれらの間の任意の整数)、より好ましくは約200ヌクレオチド長と500ヌクレオチド長との間のものであり得る。
【0074】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびにヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。真核生物細胞クロマチンの大部分は、ヌクレオソームの形態で存在し、ヌクレオソームコアは、各々2つのヒストンH2A、H2B、H3およびH4を含む八量体と会合したおよそ150塩基対のDNAを含む:リンカーDNA(生物に依存して変動する長さのもの)が、ヌクレオソームコア間に延びる。1分子のヒストンH1が、一般に、リンカーDNAと会合する。本開示の目的のため、用語「クロマチン」は、原核生物および真核生物の両方の、全ての型の細胞核タンパク質を包含することを意味する。細胞クロマチンには、染色体クロマチンおよびエピソームクロマチンの両方が含まれる。
【0075】
「染色体」は、細胞のゲノムの全てまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、多くの場合、細胞のゲノムを構成する全ての染色体のコレクションであるその核型によって特徴付けられる。細胞のゲノムは、1または複数の染色体を含み得る。
【0076】
「エピソーム」は、細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む、複製性の核酸、核タンパク質複合体または他の構造である。エピソームの例には、プラスミドおよびある特定のウイルスゲノムが含まれる。
【0077】
「標的部位」または「標的配列」は、結合のための十分な条件が存在する場合に、結合分子が結合する核酸の一部分を規定する核酸配列である。
【0078】
「外因性」分子は、細胞中に通常は存在しない分子であるが、1または複数の遺伝学的方法、生化学的方法または他の方法によって細胞中に導入され得る。「細胞中での通常の存在」は、特定の発生段階または細胞の環境条件に関して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発生の間にのみ存在する分子は、成人筋肉細胞に関して外因性分子である。同様に、ヒートショックによって誘導される分子は、ヒートショックされていない細胞に関して、外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能障害性内因性分子の機能性バージョン、または正常に機能する内因性分子の機能障害性バージョンを含み得る。
【0079】
外因性分子は、とりわけ、例えば、コンビナトリアルケミストリー過程によって生成されるような小分子、または巨大分子、例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記分子の任意の修飾された誘導体、あるいは上記分子のうちの1または複数を含む任意の複合体であり得る。核酸には、DNAおよびRNAが含まれ、一本鎖または二本鎖であり得;直鎖状、分枝状または環状であり得;任意の長さのものであり得る。核酸には、二重鎖を形成することが可能な核酸、ならびに三重鎖形成性核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号を参照されたい。タンパク質には、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが含まれるがこれらに限定されない。
【0080】
外因性分子は、内因性分子と同じ型の分子、例えば、外因性タンパク質または核酸であり得る。例えば、外因性核酸は、細胞中に導入された感染性ウイルスゲノム、プラスミドもしくはエピソーム、または細胞中に通常は存在しない染色体を含み得る。細胞中への外因性分子の導入のための方法は、当業者に公知であり、脂質媒介性移入(即ち、中性およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接的注射、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介性移入およびウイルスベクター媒介性移入が含まれるがこれらに限定されない。外因性分子はまた、内因性分子と同じ型の分子であり得るが、細胞が由来するのとは異なる種に由来し得る。例えば、ヒト核酸配列は、マウスまたはハムスターに元々由来する細胞株中に導入され得る。
【0081】
対照的に、「内因性」分子は、特定の発生段階で特定の環境条件下で特定の細胞中に通常存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリア、葉緑体もしくは他のオルガネラのゲノム、または天然起源のエピソーム核酸を含み得る。さらなる内因性分子には、タンパク質、例えば、転写因子および酵素が含まれ得る。
【0082】
「融合」分子は、2つまたはそれ超のサブユニット分子が、好ましくは共有結合によって連結された分子である。これらのサブユニット分子は、同じ化学型の分子であり得るか、または異なる化学型の分子であり得る。第1の型の融合分子の例には、融合タンパク質(例えば、ZFPまたはTALEのDNA結合ドメインと1または複数の活性化ドメインとの間の融合物)および融合核酸(例えば、上記融合タンパク質をコードする核酸)が含まれるがこれらに限定されない。第2の型の融合分子の例には、三重鎖形成性核酸とポリペプチドとの間の融合物、および副溝結合剤と核酸との間の融合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0083】
細胞における融合タンパク質の発現は、細胞への融合タンパク質の送達から、または細胞への融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの送達によって生じ得、このポリヌクレオチドは転写され、この転写物は翻訳されて、融合タンパク質を生じる。トランス−スプライシング、ポリペプチド開裂およびポリペプチドライゲーションもまた、細胞におけるタンパク質の発現に関与し得る。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの送達のための方法は、本開示の他の場所に示される。
【0084】
「遺伝子」には、本開示の目的のために、遺伝子産物をコードするDNA領域(以下を参照)、ならびにかかる調節配列がコード配列および/または転写された配列に隣接してもしなくても、遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域が含まれる。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えばリボソーム結合部位および内部リボソーム進入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス結合部位ならびに遺伝子座制御領域が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0085】
「遺伝子発現」とは、遺伝子中に含まれる情報の、遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造的RNAまたは任意の他の型のRNA)、またはmRNAの翻訳によって産生されたタンパク質であり得る。遺伝子産物には、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化および編集などの過程によって修飾されたRNA、ならびに例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP−リボシル化、ミリストイル化(myristilation)およびグリコシル化によって修飾されたタンパク質もまた含まれる。
【0086】
遺伝子発現の「モジュレーション」とは、遺伝子の活性における変化を指す。発現のモジュレーションには、遺伝子活性化および遺伝子抑制が含まれ得るが、これらに限定されない。ゲノム編集(例えば、開裂、変更、不活性化、ランダム変異)が、発現をモジュレートするために使用され得る。遺伝子不活性化とは、本明細書に記載されるZFPを含まない細胞と比較して、遺伝子発現における任意の低下を指す。したがって、遺伝子不活性化は、部分的または完全であり得る。
【0087】
「目的の領域」は、外因性分子に結合することが望まれる、細胞クロマチンの任意の領域、例えば、遺伝子または遺伝子内もしくは遺伝子に隣接した非コード配列などである。結合は、標的化されたDNA開裂および/または標的化された組換えを目的とすることができる。目的の領域は、例えば、染色体、エピソーム、オルガネラゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、または感染性ウイルスゲノム中に存在し得る。目的の領域は、遺伝子のコード領域内、例えばリーダー配列、トレーラー配列もしくはイントロンなどの転写された非コード領域内、またはコード領域の上流もしくは下流のいずれかの非転写領域内に存在し得る。目的の領域は、単一のヌクレオチド対ほどの小ささもしくは最大2,000ヌクレオチド対の長さ、または任意の整数値のヌクレオチド対であり得る。
【0088】
「真核生物」細胞には、真菌細胞(例えば酵母)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞(例えば、T細胞)を含む動物細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0089】
用語「作動可能な連結」および「作動可能に連結した(「operatively linked」または「operably linked」)」は、2つまたはそれ超の構成成分(例えば、配列エレメント)の並置に関して相互交換可能に使用され、ここで、これらの構成成分は、両方の構成成分が正常に機能し、他の構成成分のうちの少なくとも1つに対して発揮される機能をこれらの構成成分のうちの少なくとも1つが媒介し得る可能性を許容するように、配置される。例示として、転写調節配列、例えばプロモーターは、転写調節配列が、1または複数の転写調節因子の存在または非存在に応答してコード配列の転写のレベルを制御する場合、コード配列に作動可能に連結される。転写調節配列は、一般に、コード配列とシスで作動可能に連結されるが、このコード配列に直接隣接する必要はない。例えば、エンハンサーは、エンハンサーとコード配列とが連続していない場合であっても、コード配列に作動可能に連結した転写調節配列である。
【0090】
融合ポリペプチドに関して、用語「作動可能に連結した」とは、構成成分の各々が、他の構成成分と連結して、そのように連結されていない場合にそれが果たすのと同じ機能を果たすという事実を指し得る。例えば、ZFP DNA結合ドメインが活性化ドメインに融合された融合ポリペプチドに関して、このZFP DNA結合ドメインおよび活性化ドメインは、この融合ポリペプチド中で、ZFP DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合できるが、活性化ドメインは遺伝子発現を上方調節できる場合に、作動可能な連結状態にある。ZFP DNA結合ドメインが開裂ドメインに融合した融合ポリペプチドの場合、ZFP DNA結合ドメインおよび開裂ドメインは、この融合ポリペプチド中で、ZFP DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合できるが、開裂ドメインは標的部位の近位においてDNAを開裂できる場合に、作動可能な連結状態にある。
【0091】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、その配列が全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一ではないが、その全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能を保持する、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は、対応する天然の分子よりも多い、より少ない、もしくは同じ数の残基を有し得、および/または、1もしくは複数のアミノ酸もしくはヌクレオチド置換を含み得る。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を決定するための方法は、本技術分野で周知である。同様に、タンパク質機能を決定するための方法は周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター結合、電気泳動移動度シフトまたは免疫沈降アッセイによって、決定され得る。DNA開裂は、ゲル電気泳動によってアッセイされ得る。Ausubelら、上記を参照されたい。タンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば、共免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイまたは遺伝学的および生化学的の両方の補完によって、決定され得る。例えば、Fieldsら(1989年)Nature 340巻:245〜246頁;米国特許第5,585,245号およびPCTWO98/44350を参照されたい。
【0092】
「ベクター」は、標的細胞に遺伝子配列を移入させることが可能である。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」および「遺伝子移入ベクター」は、目的の遺伝子の発現を指向することが可能であり、標的細胞に遺伝子配列を移入させることができる、任意の核酸構築物を意味する。したがって、この用語は、クローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびに組込みベクターを含む。
【0093】
「セーフハーバー」遺伝子座は、遺伝子が宿主細胞に対する任意の有害な影響なしに挿入され得る、ゲノム内の遺伝子座である。挿入された遺伝子配列の発現が隣接する遺伝子からのいずれのリードスルー発現によっても乱されないセーフハーバー遺伝子座が、最も有益である。ヌクレアーゼ(複数可)によって標的化されるセーフハーバー遺伝子座の非限定例として、CCR5、CCR5、HPRT、AAVS1、Rosaおよびアルブミンが挙げられる。例えば、米国特許第7,951,925号および同第8,110,379号;米国出願公開第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号および同第20130177960号、ならびに米国仮特許出願第61/823,689号を参照されたい。
【0094】
ヌクレアーゼ
血友病AまたはBの被験体由来のまたは被験体中の細胞のゲノムにおける機能的凝固因子(例えば、第VIII因子および/または第IX因子)タンパク質)をコードする配列の組込みにおいて有用なヌクレアーゼなどの、ヌクレアーゼを含む組成物が、本明細書に記載されている。ある特定の実施形態では、このヌクレアーゼは、天然起源である。他の実施形態では、このヌクレアーゼは、非天然起源である、即ち、DNA結合ドメインおよび/または開裂ドメインにおいて操作されている。例えば、天然起源のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位に結合するように変更され得る(例えば、同族結合部位とは異なる部位に結合するように操作されたメガヌクレアーゼ)。他の実施形態では、ヌクレアーゼは、異種のDNA結合ドメインおよび開裂ドメイン(例えば、異種開裂ドメインを有する、ジンクフィンガーヌクレアーゼ;TALエフェクタードメインDNA結合タンパク質;メガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)ならびに/または操作された単一ガイドRNAを利用するCRISPR/Cas系などの系を含む。
【0095】
A.DNA結合ドメイン
本明細書に開示されている組成物および方法において、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン、TALE DNA結合ドメイン、CRISPR/CasヌクレアーゼのDNA結合部分またはメガヌクレアーゼ由来のDNA結合ドメインが挙げられるがこれらに限定されない、いかなるDNA結合ドメインを使用することもできる。
【0096】
ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、天然起源のまたは操作された(非天然起源の)メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)である。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼには、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIが含まれる。それらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら(1997年)Nucleic Acids Res. 25巻:3379〜3388頁;Dujonら(1989年)Gene 82巻:115〜118頁;Perlerら(1994年)Nucleic Acids Res. 22巻、1125〜1127頁;Jasin(1996年)Trends Genet. 12巻:224〜228頁;Gimbleら(1996年)J. Mol. Biol. 263巻:163〜180頁;Argastら(1998年)J. Mol. Biol. 280巻:345〜353頁およびNew England Biolabsカタログもまた参照されたい。操作されたメガヌクレーゼは、例えば、米国特許出願公開第20070117128号に記載される。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、全体としてヌクレアーゼに関して変更され得(即ち、ヌクレアーゼが同族開裂ドメインを含むように)、または異種開裂ドメインに融合され得る。メガヌクレアーゼ由来のDNA結合ドメインも、ヌクレアーゼ活性を提示することができる(例えば、cTALEN)。
【0097】
他の実施形態では、DNA結合ドメインは、天然起源のまたは操作された(非天然起源の)TALエフェクターDNA結合ドメインを含む。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,586,526号を参照されたい。属Xanthomonasの植物病原性細菌は、重要な作物植物において多くの疾患を引き起こすことが公知である。Xanthomonasの病原性は、植物細胞中に25種よりも多い異なるエフェクタータンパク質を注入する、保存されたIII型分泌(T3S)系に依存する。これらの注入されたタンパク質のなかでも、植物転写活性化因子を模倣し、植物トランスクリプトームを操作する、転写活性化因子様(TAL)エフェクターである(Kayら(2007年)Science 318巻:648〜651頁を参照されたい)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最もよく特徴付けられたTALエフェクターの1つは、Xanthomonas campestgris pv.Vesicatoria由来のAvrBs3である(Bonasら(1989年)Mol Gen Genet 218巻:127〜136頁およびWO2010079430を参照されたい)。TALエフェクターは、タンデムリピートの集中したドメインを含有し、各リピートは、これらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要なおよそ34アミノ酸を含有する。さらに、これらは、核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含有する(概説については、Schornack S、ら(2006年)J Plant Physiol 163巻(3号):256〜272頁を参照されたい)。さらに、植物病原性細菌Ralstonia solanacearumでは、R.solanacearum biovar 1株GMI1000およびbiovar 4株RS1000における、brg11およびhpx17と称される2つの遺伝子が、XanthomonasのAvrBs3ファミリーと相同であることが見出されている(Heuerら(2007年)Appl and Envir Micro 73巻(13号):4379〜4384頁を参照されたい)。これらの遺伝子は、互いにヌクレオチド配列において98.9%同一であるが、hpx17のリピートドメインにおける1,575塩基対の欠失が異なる。しかし、両方の遺伝子産物は、XanthomonasのAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。例えば、その全体が本明細書に参考として援用される米国特許第8,586,526号を参照されたい。
【0098】
これらのTALエフェクターの特異性は、これらのタンデムリピート中に見出される配列に依存する。リピートされる配列は、およそ102塩基対を含み、これらのリピートは、典型的には、互いに91〜100%相同である(Bonasら、同書)。これらのリピートの多型は、12位および13位に通常位置し、12位および13位における超可変二残基(リピート可変二残基またはRVD領域)の正体と、TALエフェクターの標的配列中の連続ヌクレオチドの正体との間には、一対一の相関が存在するようである(MoscouおよびBogdanove、(2009年)Science 326巻:1501頁ならびにBochら(2009年)Science 326巻:1509〜1512頁を参照されたい)。実験的に、これらのTALエフェクターのDNA認識のための天然コードは、12位および13位におけるHD配列(リピート可変二残基またはRVD領域)が、シトシン(C)への結合をもたらし;NGがTに結合し、NIがA、C、GまたはTに結合し、NNがAまたはGに結合し、そしてINGがTに結合するように、決定されている。これらのDNA結合リピートは、新たな配列と相互作用でき植物細胞において非内因性レポーター遺伝子の発現を活性化できる人工の転写因子を作製するために、新たな組合せおよびリピート数を有するタンパク質へとアセンブルされている(Bochら、同書)。操作されたTALタンパク質は、FokI開裂ハーフドメインに連結されて、酵母レポーターアッセイにおいて活性を示すTALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)(非定型TALENを含む)を生じている(プラスミドベースの標的)。例えば、米国特許第8,586,526号を参照されたい。
【0099】
一部の実施形態において、TALENは、エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインを含む。他の実施形態において、TALE−ヌクレアーゼは、メガTALである。このようなメガTALヌクレアーゼは、TALE DNA結合ドメインおよびメガヌクレアーゼ開裂ドメインを含む融合タンパク質である。メガヌクレアーゼ開裂ドメインは、単量体として活性であり、活性のために二量体形成を必要としない(Boisselら(2013年)Nucl Acid Res:1〜13頁、doi:10.1093/nar/gkt1224を参照)。
【0100】
またさらなる実施形態において、ヌクレアーゼは、コンパクトTALENを含む。これらは、TALE DNA結合ドメインをTevIヌクレアーゼドメインに連結する単鎖融合タンパク質である。融合タンパク質は、TALE DNA結合ドメインが、TevIヌクレアーゼドメインに関して位置する場所に応じて、TALE領域によって局在化されるニッカーゼとして作用することができる、あるいは二本鎖切断を生じさせることができる(Beurdeleyら(2013年)Nat Comm:1〜8頁、DOI:10.1038/ncomms2782を参照)。加えて、ヌクレアーゼドメインは、DNA結合機能性を提示することもできる。追加のTALEN(例えば、1種または複数種のTALEN(cTALENまたはFokI−TALEN)と1種または複数種のメガTALE)と組み合わせて、いかなるTALENを使用することもできる。
【0101】
ある特定の実施形態において、DNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。好ましくは、ジンクフィンガータンパク質は、選択された標的部位に結合するように操作されているという点で、非天然起源である。例えば、全て参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Beerliら(2002年)Nature Biotechnol. 20巻:135〜141頁;Paboら(2001年)Ann. Rev. Biochem. 70巻:313〜340頁;Isalanら(2001年)Nature Biotechnol. 19巻:656〜660頁;Segalら(2001年)Curr. Opin. Biotechnol. 12巻:632〜637頁;Chooら(2000年)Curr. Opin. Struct. Biol. 10巻:411〜416頁;米国特許第6,453,242号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,030,215号;同第6,794,136号;同第7,067,317号;同第7,262,054号;同第7,070,934号;同第7,361,635号;同第7,253,273号;および米国特許出願公開第2005/0064474号;同第2007/0218528号;同第2005/0267061号を参照されたい。
【0102】
操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然起源のジンクフィンガータンパク質と比較して、新規結合特異性を有し得る。操作方法には、合理的設計および種々の型の選択が含まれるがこれらに限定されない。合理的設計には、例えば、トリプレット(またはクアドルプレット(quadruplet))ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、ここで、各トリプレットまたはクアドルプレットのヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドルプレット配列に結合するジンクフィンガーの1種または複数種のアミノ酸配列と関連する。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、共有に係る米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。
【0103】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含む例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,410,248号;同第6,140,466号;同第6,200,759号および同第6,242,568号;ならびにWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197およびGB2,338,237中に開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共有に係るWO02/077227に記載されている。
【0104】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば、5またはそれ超のアミノ酸長のリンカーを含む、任意の適切なリンカー配列を使用して一緒に連結され得る。6またはそれ超のアミノ酸長の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間に適切なリンカーの任意の組合せを含み得る。
【0105】
標的部位の選択;融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のためのZFPおよび方法は、当業者に公知であり、米国特許第6,140,081号;同第5,789,538号;同第6,453,242号;同第6,534,261号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,200,759号;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970 WO01/88197;WO02/099084;WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496に詳細に記載されている。
【0106】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば、5またはそれ超のアミノ酸長のリンカーを含む、任意の適切なリンカー配列を使用して、一緒に連結され得る。6またはそれ超のアミノ酸長の例示的なリンカー配列について、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号もまた参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間に適切なリンカーの任意の組合せを含み得る。
【0107】
B.開裂ドメイン
いずれか適した開裂ドメインをDNA結合ドメインに操作可能に連結して、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALENまたはCRISPR/Casヌクレアーゼ系等、ヌクレアーゼを形成することができる。例えば、米国特許第7,951,925号;同第8,110,379号および同第8,586,526号;米国特許出願公開第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号および同第20130177960号ならびに米国仮特許出願第61/823,689号を参照されたい。
【0108】
上述のように、開裂ドメインは、DNA結合ドメインに対して異種であり得る、例えば、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ由来の開裂ドメイン、またはTALEN DNA結合ドメインおよび開裂ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼ由来の開裂ドメイン。異種開裂ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得られ得る。開裂ドメインが由来し得る例示的なエンドヌクレアーゼには、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが含まれるがこれらに限定されない。例えば、2002〜2003年カタログ、New England Biolabs、Beverly、MA;およびBelfortら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379〜3388頁を参照されたい。DNAを開裂するさらなる酵素が公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;リョクトウヌクレアーゼ;膵臓DNase I;小球菌ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linnら(編)Nucleases、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1993年もまた参照)。これらの酵素(またはその機能的断片)のうちの1または複数は、開裂ドメインおよび開裂ハーフドメインの供給源として使用され得る。
【0109】
同様に、開裂ハーフドメインは、開裂活性のために二量体形成を必要とする、上記のような任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来し得る。一般に、融合タンパク質が開裂ハーフドメインを含む場合、2つの融合タンパク質が、開裂に必要とされる。あるいは、2つの開裂ハーフドメインを含む単一のタンパク質が使用され得る。これら2つの開裂ハーフドメインは、同じエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得、または各開裂ハーフドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得る。さらに、2つの融合タンパク質についての標的部位は、好ましくは、互いに関して配置され、その結果、そのそれぞれの標的部位への2つの融合タンパク質の結合は、例えば二量体形成によって開裂ハーフドメインに機能的開裂ドメインを形成させる互いに対する空間的配向に、これらの開裂ハーフドメインを置く。したがって、ある特定の実施形態では、標的部位の近くの端は、5〜8ヌクレオチドまたは15〜18ヌクレオチド離れている。しかし、任意の数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位間に介在し得る(例えば、2〜50ヌクレオチド対またはそれ超)。一般に、開裂の部位は、標的部位間に存在する。
【0110】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在しており、(認識部位における)DNAへの配列特異的結合が可能であり、結合の部位またはその近傍でDNAを開裂させることが可能である。ある特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から取り出された部位においてDNAを開裂させ、分離可能な結合ドメインおよび開裂ドメインを有する。例えば、IIS型酵素FokIは、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチドおよび他方の鎖上のその認識部位から13ヌクレオチドの場所において、DNAの二本鎖開裂を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;同第5,436,150号および同第5,487,994号;ならびにLiら(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:4275〜4279頁;Liら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:2764〜2768頁;Kimら(1994年a)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91巻:883〜887頁;Kimら(1994年b)J. Biol. Chem. 269巻:31,978〜31,982頁を参照されたい。したがって、一実施形態では、融合タンパク質は、操作されてもされなくてもよい、少なくとも1つのIIS型制限酵素および1または複数のジンクフィンガー結合ドメイン由来の開裂ドメイン(または開裂ハーフドメイン)を含む。
【0111】
その開裂ドメインが結合ドメインから分離可能である例示的なIIS型制限酵素は、FokIである。この特定の酵素は、二量体として活性である。Bitinaiteら(1998年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95巻:10,570〜10,575頁。したがって、本開示の目的のため、開示された融合タンパク質において使用されるFokI酵素の一部は、開裂ハーフドメインとみなされる。したがって、ジンクフィンガー−FokI融合物を使用した細胞配列の標的化された二本鎖開裂および/または標的化された置き換えのために、各々がFokI開裂ハーフドメインを含む2つの融合タンパク質が、触媒的に活性な開裂ドメインを再構成するために使用され得る。あるいは、1つのジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFokI開裂ハーフドメインを含む単一のポリペプチド分子もまた、使用され得る。ジンクフィンガー−FokI融合物を使用した標的化された開裂および標的された配列変更のためのパラメーターは、本開示の別の場所に提供される。
【0112】
開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインは、機能的開裂ドメインを形成するために、開裂活性を保持するまたは多量体形成する(例えば、二量体形成する)能力を保持する、タンパク質の任意の部分であり得る。
【0113】
例示的なIIS型制限酵素は、その全体が本明細書に組み込まれる、国際公開WO07/014275に記載されている。さらなる制限酵素もまた、分離可能な結合および開裂ドメインを含み、これらは、本開示によって企図される。例えば、Robertsら(2003年)Nucleic Acids Res.31巻:418〜420頁を参照されたい。
【0114】
ある特定の実施形態では、開裂ドメインは、例えば、その全ての開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20050064474号;同第20060188987号;同第20070305346号および同第20080131962号に記載されるように、ホモ二量体形成を最小化または予防する1種または複数種の操作された開裂ハーフドメイン(二量体形成ドメイン変異体とも呼ばれる)を含む。FokIの446位、447位、479位、483位、484位、486位、487位、490位、491位、496位、498位、499位、500位、531位、534位、537位および538位におけるアミノ酸残基は、全て、FokI開裂ハーフドメインの二量体形成に影響を与えるための標的である。
【0115】
偏性ヘテロ二量体を形成するFokIの例示的な操作された開裂ハーフドメインには、第1の開裂ハーフドメインが、FokIの490位および538位のアミノ酸残基において変異を含み、第2の開裂ハーフドメインが、アミノ酸残基486および499において変異を含む、対が含まれる。
【0116】
したがって、一実施形態では、490位における変異によりGlu(E)がLys(K)で置き換えられ、538位における変異によりIso(I)がLys(K)で置き換えられ、486位における変異によりGln(Q)がGlu(E)で置き換えられ、499位における変異によりIso(I)がLys(K)で置き換えられる。特に、本明細書に記載される操作された開裂ハーフドメインは、一方の開裂ハーフドメインにおいて490位(E→K)および538位(I→K)を変異させて、「E490K:I538K」と称される操作された開裂ハーフドメインを産生し、および別の開裂ハーフドメインにおいて486位(Q→E)および499位(I→L)を変異させて、「Q486E:I499L」と称される操作された開裂ハーフドメインを産生することにより調製された。本明細書に記載される操作された開裂ハーフドメインは、異常な開裂が最小化または消失される、偏性ヘテロ二量体変異体である。例えば、あらゆる目的でそれらの開示が参照によりそれらの全体が組み込まれる、米国特許第7,914,796号および同第8,034,598号を参照されたい。ある特定の実施形態では、操作された開裂ハーフドメインは、486位、499位および496位における変異(野生型FokIに対して番号を付けた)、例えば、486位の野生型Gln(Q)残基をGlu(E)残基で置き換える変異、499位の野生型Iso(I)残基をLeu(L)残基で置き換える変異、および496位の野生型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換える変異(それぞれ、「ELD」ドメインおよび「ELE」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、操作された開裂ハーフドメインは、490位、538位および537位における変異(野生型FokIに対して番号を付けた)、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で置き換える変異、538位の野生型Iso(I)残基をLys(K)残基で置き換える変異、および537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KKK」ドメインおよび「KKR」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、操作された開裂ハーフドメインは、490位および537位における変異(野生型FokIに対して番号を付けた)、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で置き換える変異、および537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KIK」ドメインおよび「KIR」ドメインとも呼ばれる)を含む(例えば、米国特許第8,623,618号を参照されたい)。他の実施形態では、操作された開裂ハーフドメインは、「シャーキー」および/または「シャーキー」変異を含む(Guoら(2010年)J. Mol. Biol. 400巻(1号):96〜107頁を参照されたい)。
【0117】
本明細書に記載される操作された開裂ハーフドメインは、例えば、米国特許第7,888,121号;同第7,914,796号;同第8,034,598号および同第8,623,618号に記載されるように、野生型開裂ハーフドメイン(FokI)の部位特異的変異誘発によって、任意の適切な方法を使用して調製できる。
【0118】
あるいは、ヌクレアーゼは、いわゆる「開裂酵素」技術を使用して、核酸標的部位においてin vivoでアセンブルされ得る(例えば、米国特許出願公開第20090068164号を参照されたい)。かかる開裂酵素の構成成分は、別々の発現構築物のいずれか上に発現され得るか、または、例えば、自己開裂性2AペプチドもしくはIRES配列によって個々の構成成分が分離されて、1つのオープンリーディングフレームで連結され得る。構成成分は、個々のジンクフィンガー結合ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであり得る。
【0119】
ヌクレアーゼは、例えば、WO2009/042163および20090068164に記載される酵母ベースの染色体系における使用の前に、活性についてスクリーニングされ得る。ヌクレアーゼ発現構築物は、本技術分野で公知の方法を使用して容易に設計することができる。例えば、米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060188987号;同第20060063231号;および国際公開WO/014275を参照されたい。ヌクレアーゼの発現は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えば、ラフィノースおよび/またはガラクトースの存在下で活性化(抑制解除)され、グルコースの存在下で抑制されるガラクトキナーゼプロモーターの制御下にあり得る。
【0120】
ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼはCRISPR/Cas系を含む。この系のRNA構成成分をコードするCRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)遺伝子座、およびタンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansenら、2002年. Mol. Microbiol. 43巻:1565〜1575頁;Makarovaら、2002年. Nucleic Acids Res. 30巻:482〜496頁;Makarovaら、2006年. Biol. Direct 1巻:7頁;Haftら、2005年. PLoS Comput. Biol. 1巻:e60頁)が、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列を構成する。微生物宿主中のCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子およびCRISPR媒介性の核酸開裂の特異性をプログラムすることが可能な非コードRNAエレメントの組合せを含有する。
【0121】
II型CRISPRは、最もよく特徴付けられた系の1つであり、4つの連続的ステップで、標的化されたDNA二本鎖切断を実施する。第1に、2つの非コードRNA、pre−crRNAアレイおよびtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAは、pre−crRNAのリピート領域にハイブリダイズし、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのpre−crRNAのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体は、標的認識のためのさらなる要求、crRNA上のスペーサーとプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーとの間のWatson−Crick塩基対合を介して、標的DNAにCas9を指向させる。最後に、Cas9は、標的DNAの開裂を媒介して、プロトスペーサー内の二本鎖切断を生じる。CRISPR/Cas系の活性は、3つのステップから構成される:(i)「適応」と呼ばれる過程における、さらなる攻撃を予防するための、CRISPRアレイ中への異質DNA配列の挿入、(ii)関連タンパク質の発現、ならびにアレイの発現およびプロセシング、その後の、(iii)異質核酸によるRNA媒介性の干渉。したがって、細菌細胞では、いわゆる「Cas」タンパク質のいくつかが、CRISPR/Cas系の天然機能と関連し、異質DNAなどの挿入などの機能において役割を果たす。
【0122】
ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、天然起源のCasタンパク質の「機能的誘導体」であり得る。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列ポリペプチドと共通する定性的な生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」には、対応する天然配列ポリペプチドと共通した生物学的活性を有することを条件として、天然配列の断片ならびに天然配列ポリペプチドおよびその断片の誘導体が含まれるがこれらに限定されない。本明細書で企図される生物学的活性は、DNA基質を断片に加水分解する機能的誘導体の能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合的修飾、およびその融合物の両方を包含する。Casポリペプチドまたはその断片の適切な誘導体には、Casタンパク質またはその断片の変異体、融合物、共有結合的修飾が含まれるがこれらに限定されない。Casタンパク質またはその断片を含むCasタンパク質、およびCasタンパク質またはその断片の誘導体は、細胞から取得可能であり得るか、もしくは化学的に合成され得るか、またはこれらの2つの手順の組合せによって、取得可能であり得る。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞、またはCasタンパク質を天然に産生し、より高い発現レベルで内因性Casタンパク質を産生するように、もしくは外因的に導入された核酸からCasタンパク質を産生するように遺伝子操作された細胞であり得、この核酸は、内因性Casと同じまたは異なるCasをコードする。一部の場合には、細胞は、Casタンパク質を天然には産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作される。
【0123】
セーフハーバー遺伝子および他の遺伝子に標的化された例示的なCRISPR/Casヌクレアーゼ系が、例えば、米国仮特許出願第61/823,689号に開示されている。
【0124】
よって、ヌクレアーゼは、ドナー(導入遺伝子)を挿入することが望ましいいずれかの遺伝子における標的部位に特異的に結合するDNA結合ドメインを含む。
【0125】
標的部位
上に詳細に記載したように、DNA結合ドメインは、(例えば、アルブミンなどのセーフハーバー遺伝子座における)選択された任意の配列に結合するように操作され得る。操作されたDNA結合ドメインは、天然起源のDNA結合ドメインと比較して、新規結合特異性を有し得る。操作方法には、合理的設計および種々の型の選択が含まれるがこれらに限定されない。合理的設計には、例えば、トリプレット(またはクアドルプレット)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、ここで、各トリプレットまたはクアドルプレットのヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドルプレット配列に結合するジンクフィンガーの1種または複数種のアミノ酸配列と関連する。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、共有に係る米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。TALエフェクタードメインの合理的設計もまた実施され得る。例えば、米国特許第8,586,526号を参照されたい。
【0126】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含む、DNA結合ドメインに適用可能な例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,410,248号;同第6,140,466号;同第6,200,759号;および同第6,242,568号;ならびにWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197およびGB2,338,237に開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共有に係るWO02/077227に記載されている。
【0127】
標的部位の選択;融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のためのヌクレアーゼおよび方法は、当業者に公知であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20050064474号および同第20060188987号に詳細に記載されている。
【0128】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、DNA結合ドメイン(例えば、マルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質)は、例えば、5またはそれ超のアミノ酸のリンカーを含む、任意の適切なリンカー配列を使用して一緒に連結され得る。6またはそれ超のアミノ酸長の例示的なリンカー配列について、例えば、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号を参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のDNA結合ドメイン間に適切なリンカーの任意の組合せを含み得る。米国特許第8,586,526号もまた参照されたい。
【0129】
機能的第VIII因子および/または第IX因子タンパク質をコードする配列の標的化挿入による血友病の処置のため、被験体のゲノムにおけるいずれか所望の挿入部位が、ヌクレアーゼにより開裂され、これは、第VIII因子および/または第IX因子コード配列を保有するドナーポリヌクレオチドの標的化挿入を刺激する。ヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、ゲノムにおけるいずれか所望の部位に標的化され得る。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、内在性セーフハーバー遺伝子座、例えば、内在性アルブミン遺伝子座に標的化される。
【0130】
ある特定の実施形態において、
図6Aおよび
図6Bに示す二量体形成するジンクフィンガーヌクレアーゼの対が、アルブミン遺伝子の開裂に使用されて、第IX因子ドナーの標的化組込みを容易にする。ZFNが、偏性ヘテロ二量体を形成するように(例えば、対の一方のメンバーが、「ELD」FokIドメインを含み、対の他方のメンバーが、「KKR」FokIドメインを含む)、ZFNは、表1に示す認識ヘリックス領域を有するDNA結合ドメインと、操作されたFokI開裂ドメインとを含む。
【0131】
少なくとも25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%配列相同性または同一性を有するZFN配列等が挙げられるがこれらに限定されない、本明細書に記載されるZFNに対し相同性または同一性を有するZFNも提供される。さらに、相同性が、FokIドメイン、リンカードメイン、ジンクフィンガー骨格残基(例えば、認識ヘリックス領域の外側のいずれかの残基)が挙げられるがこれらに限定されない、認識ヘリックス領域の外側の残基に対して典型的には決定されることが理解されよう。いかなるジンクフィンガー骨格(文脈)および/または開裂ドメインを使用することもできるため、認識ヘリックス領域ジンクフィンガー残基の外側の相同性における有意なバリエーションが存在し得る。
【0132】
ドナー配列
血友病を処置するため、ドナー配列(「外来性配列」または「ドナー」または「導入遺伝子」とも呼ばれる)は、機能的凝固因子タンパク質またはその一部をコードする配列を含み、ドナー組込み後に機能的凝固因子タンパク質をコードおよび発現する配列を結果としてもたらす。凝固因子タンパク質導入遺伝子の非限定例として、第VIII因子および/または第IX因子が挙げられ、これらのタンパク質の機能的断片を含む。ある特定の実施形態において、第VIII因子タンパク質のB−ドメインが欠失される。例えば、Chuahら(2003年)101巻(5号):1734〜1743頁を参照されたい。他の実施形態において、導入遺伝子は、機能的第IX因子タンパク質またはその一部をコードする配列を含み、ドナー組込み後に機能第IX因子タンパク質をコードおよび発現する配列を結果としてもたらす。
【0133】
ドナー分子は、内在性遺伝子の全てもしくは一部が発現されるまたは内在性遺伝子のいずれも発現されないように、内在性遺伝子に挿入することができる。例えば、本明細書に記載されている機能的凝固因子タンパク質(例えば、第VIII因子および/または第IX因子)配列を含む導入遺伝子は、導入遺伝子と共に内在性アルブミンの一部が発現されるまたはそのいずれも発現されないように、内在性アルブミン遺伝子座に挿入することができる。
【0134】
ドナー(導入遺伝子)配列は、融合タンパク質(複数可)(例えば、ヌクレアーゼ)の発現に先立ち、それと同時に、またはその後に、細胞に導入することができる。ドナーポリヌクレオチドは、これと、これが相同性を有するゲノム配列との間の相同組換え(または相同組換え修復)を支持するために、ゲノム配列に対し十分な相同性(連続的または非連続的領域)を含有することができるか、あるいは、ドナー配列は、非HDR機構(例えば、NHEJドナー捕捉)により組み込むことができ、この場合、ドナーポリヌクレオチド(例えば、ベクター)は、細胞クロマチンにおける目的の領域と相同な配列を含有する必要がない。例えば、米国特許第7,888,121号および同第7,972,843号ならびに米国特許出願公開第20110281361号;同第20100047805号および同第20110207221号を参照されたい。
【0135】
ドナーポリヌクレオチドは、DNAまたはRNA、一本鎖、二本鎖または部分的に一本鎖かつ部分的に二本鎖であり得、直鎖状または環状(例えば、小環状)形態で細胞に導入することができる。米国特許出願公開第20100047805号、同第20110281361号、同第20110207221号を参照されたい。直鎖状の形態で導入される場合、当業者に公知の方法によって、ドナー配列の末端を保護する(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)ことができる。例えば、1つまたは複数のジデオキシヌクレオチド残基を直鎖状分子の3’末端に付加する、および/または自己相補的なオリゴヌクレオチドを一端または両端にライゲーションする。例えば、Changら、1987年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84巻:4959〜4963頁、Nehlsら、1996年、Science、272巻:886〜889頁を参照されたい。分解から外因性ポリヌクレオチドを保護するための追加の方法としては、末端アミノ基(複数可)の付加、および例えば、ホスホロチオエート、ホスホルアミダートやO−メチルリボースもしくはデオキシリボース残基などの修飾ヌクレオチド間の結合の使用が挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドは、例えば、複製起点、プロモーターや抗生物質耐性をコードしている遺伝子などの追加の配列を有するベクター分子の部分として、細胞内に導入することができる。さらに、ドナーポリヌクレオチドを、ネイキッド核酸として、リポソームまたはポロキサマーなどの剤と複合体を形成した核酸として、導入することができ、また、ウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス)によって送達することができる。
【0136】
一部の実施形態において、ドナーは、その発現が、組込み部位における内在性プロモーター(例えば、ドナーが、患者のアルブミン遺伝子座に組み込まれる場合は、内在性アルブミンプロモーター)によって駆動されるように挿入され得る。このような場合には、導入遺伝子は、その発現を駆動する制御エレメント(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)を欠如し得る(例えば、「プロモーターなし構築物」とも称される)。それにもかかわらず、他の場合には、ドナーが、組込みにより機能的タンパク質の発現を駆動するプロモーターおよび/またはエンハンサー、例えば、構成的プロモーターまたは誘導性もしくは組織特異的(例えば、肝臓特異的または血小板特異的)プロモーターを含むことができることが明らかである。ドナー配列は、いずれか最適な標的部位に特異的に組み込まれることができる。
【0137】
アルブミン配列(内在性または導入遺伝子の一部)が、導入遺伝子と共に発現される場合、アルブミン配列は、全長配列(野生型もしくは変異体)または部分的配列であり得る。好ましくは、アルブミン配列は、機能的である。これらの全長または部分的アルブミン配列の機能の非限定例として、導入遺伝子(例えば、治療用遺伝子)によって発現されるポリペプチドの血清半減期の延長および/または担体としての作用が挙げられる。
【0138】
さらに、発現を必要としていなくとも、外因性配列は、転写調節配列または翻訳調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、内部リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列および/またはポリアデニル化シグナルをも含み得る。
【0139】
ドナー配列のいずれかは、次の改変のうち1種または複数種を含むことができる:コドン最適化(例えば、ヒトコドンへの)、および/または1個もしくは複数個のグリコシル化部位の付加。例えば、McIntoshら(2013年)Blood(17巻):3335〜44頁を参照されたい。
【0140】
送達
ヌクレアーゼ、これらのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチド、ならびに本明細書に記載されているタンパク質および/またはポリヌクレオチドを含む組成物を、任意の適当な手段によってin vivoまたはex vivoで送達してもよい。
【0141】
本明細書に記載されているようなヌクレアーゼの送達方法は、例えば、米国特許第8,586,526号、同第6,453,242号、同第6,503,717号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,607,882号、同第6,689,558号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号および同第7,163,824号に記載されており、それらの全ての開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。また、本明細書に記載されているようなヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物を、1種または複数種のジンクフィンガータンパク質、TALENタンパク質および/またはCRISPR/Cas系(複数可)をコードする配列を含有するベクターを使用して送達してもよい。以下に限定されないが、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ関連ウイルスベクターなどを含めた任意のベクター系を使用してもよい。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,534,261号、同第6,607,882号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号および同第7,163,824号も参照されたい。さらに、任意のこれらのベクターが、求められる1種または複数種の配列を含んでもよいことは明らかである。そのため、1種または複数種のヌクレアーゼおよびドナー構築物を細胞内に導入する際に、ヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチドを同じベクターまたは異なるベクターに保有させてもよい。複数のベクターを使用する際には、各ベクターは、1種または複数種のヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物をコードする配列を含んでもよい。ある特定の実施形態において、導入遺伝子およびヌクレアーゼ(複数可)の両方を保有するために1種のベクターが使用される。他の実施形態において、1種のベクターがヌクレアーゼ(複数可)(例えば、ZFN対の左および右ZFN、例えば、2Aペプチドによる)を保有し、1種が導入遺伝子を保有する、2種のベクターが使用される(同じまたは異なるベクター型)。またさらなる実施形態において、第1のベクターがヌクレアーゼ対の一方のヌクレアーゼ(例えば、左ZFN)を保有し、第2のベクターがヌクレアーゼ対の他方のヌクレアーゼ(例えば、右ZFN)を保有し、第3のベクターが導入遺伝子を保有する、3種のベクターが使用される。
図2を参照されたい。
【0142】
ドナーおよび/またはヌクレアーゼは、任意の適切な濃度で使用され得る。特定の実施形態において、ドナーおよび別々のヌクレアーゼベクター(複数可)は、同じ濃度で使用される。他の実施形態において、ドナーおよび別々のヌクレアーゼベクター(複数可)は、異なる濃度で使用され、例えば、1つのベクターは、他のベクターの2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍またはそれ超倍である(例えば、ヌクレアーゼベクター(複数可)よりも多くのドナーベクター(複数可))。例えば、ヌクレアーゼベクター(または複数のヌクレアーゼベクター)およびドナーベクターは、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:11、約1:12、約1:13、約1:14、約1:15、約1:16、約1:17、約1:18、約1:19または場合によっては、約1:20の比で使用することができる。一部の実施形態では、第1のヌクレアーゼベクター、第1のヌクレアーゼベクターとは異なる第2のヌクレアーゼベクター、およびドナーベクターは、約1:1:1、約1:1:2、約1:1:3、約1:1:4、約1:1:5、約1:1:6、約1:1:7、約1:1:8、約1:1:9、約1:1:10、約1:1:11、約1:1:12、約1:1:13、約1:1:14、約1:1:15、約1:1:16、約1:1:17、約1:1:18、約1:1:19、または、いくつかの場合には、約1:1:20の比で使用され得る。例示的な実施形態では、第1のヌクレアーゼベクター、第1のヌクレアーゼベクターとは異なる第2のヌクレアーゼベクター、およびドナーベクターは、約1:1:8の比で使用される。AAVベクターが送達のために使用される場合、例えば、ドナーおよび/またはヌクレアーゼを含むウイルスベクター(複数可)は、1用量(例えば、細胞または動物)1kgあたり約1×10
8〜約1×10
15ベクターゲノムであり得る。
【0143】
従来のウイルスおよび非ウイルスに基づく遺伝子移入方法は、細胞(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織に、ヌクレアーゼおよびドナー構築物をコードする核酸を導入するために使用することができる。非ウイルスベクター送達系としては、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、およびリポソームまたはポロキサマーなどの送達ビヒクルとの複合体を形成している核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系としては、DNAおよびRNAウイルスが挙げられ、これらは細胞へ送達された後に、エピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのどちらかを有する。操作されたDNA結合タンパク質およびこれらの結合タンパク質を含む融合タンパク質のin vivo送達の総説については、Rebar(2004年)、Expert Opinion Invest. Drugs、13巻(7号):829〜839頁、Rossiら(2007年)、Nature Biotech.、25巻(12号):1444〜1454頁、ならびにAnderson、Science、256巻:808〜813頁(1992年)、NabelおよびFelgner、TIBTECH、11巻:211〜217頁(1993年)、MitaniおよびCaskey, TIBTECH、11巻:162〜166頁(1993年)、Dillon、TIBTECH、11巻:167〜175頁(1993年)、Miller、Nature、357巻:455〜460頁(1992年)、Van Brunt、Biotechnology、6巻(10号):1149〜1154頁(1988年)、Vigne、Restorative Neurology and Neuroscience、8巻:35〜36頁(1995年)、KremerおよびPerricaudet、British Medical Bulletin、51巻(1号):31〜44頁(1995年)、Haddadaら、Current Topics in Microbiology and Immunology中のDoerflerおよびBoehm著(1995年)ならびにYuら、Gene Therapy、1巻:13〜26頁(1994年)などの一般的な遺伝子送達の文献を参照されたい。
【0144】
核酸の非ウイルス送達方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン、または脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、および薬剤で増強されたDNA取り込みが挙げられる。例えば、Sonitron 2000システム(Rich−Mar)を使用するソノポレーションも、核酸の送達に使用することができる。
【0145】
追加の例示の核酸送達系としては、AmaxaBiosystems(ケルン、ドイツ)、Maxcyte,Inc.(ロックビル、メリーランド州)、BTX Molecular Delivery Systems(ホリストン、マサチューセッツ州)、およびCopernicus Therapeutics Inc.、(例えば、米国特許第6,008,336号を参照されたい)によって提供されるものが挙げられる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、および同第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適した陽イオン性および中性脂質としては、FelgnerのWO91/17424、WO91/16024の脂質が挙げられる。
【0146】
免疫脂質複合体などの標的化されたリポソームを含めた脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal、Science、270巻:404〜410頁(1995年)、Blaeseら、Cancer Gene Ther.、2巻:291〜297頁(1995年)、Behrら、Bioconjugate Chem.、5巻:382〜389頁(1994年);Remyら、Bioconjugate Chem.、5巻:647−654(1994年)、Gaoら、Gene Therapy、2巻:710〜722頁(1995年)、Ahmadら、Cancer Res.、52巻:4817〜4820頁(1992年)、ならびに米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号および同第4,946,787号を参照されたい)。
【0147】
追加の送達方法としては、送達される核酸のEnGeneIC送達ビヒクル(EDV)内へのパッケージングを使用することが挙げられる。これらのEDVは、抗体の1つのアームが標的組織に対する特異性を有し、かつ他方がEDVに対する特異性を有する二重特異性抗体を使用して、標的組織に特異的に送達される。抗体は、EDVを標的細胞の表面に運び、次いでEDVは、エンドサイトーシスにより細胞内に運ばれる。細胞内に取り込まれると、内容物が放出される(MacDiarmidら、(2009年)、Nature Biotechnology、27巻(7号)、643頁を参照されたい)。
【0148】
操作されたヌクレアーゼ/ドナーをコードする核酸を送達するためのRNAまたはDNAウイルスに基づく系の使用は、ウイルスに体内の特定の細胞を標的とさせ、ウイルスペイロードを核に輸送するための高度に進化した過程を利用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与(in vivo)することができるか、またはインビトロで細胞を処置するために使用することができ、改変された細胞は患者に投与される(ex vivo)。ヌクレアーゼ/ドナーを送達するための従来のウイルスに基づく系としては、遺伝子移入のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクチン、および単純ヘルペスウイルスのベクターが挙げられるが、これらに限定されない。宿主ゲノム内の組込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ関連ウイルスの遺伝子移入方法を用いて可能であり、多くの場合、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。さらに、高い形質導入効率が、多くの異なる細胞型および標的組織において観察されている。
【0149】
レトロウイルスの向性は、外来のエンベロープタンパク質を組み入れることによって変更することができ、標的細胞の潜在的な標的集団を拡大させる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入または感染させることができるレトロウイルスベクターであり、典型的には高ウイルス力価を生じる。レトロウイルス遺伝子移入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6〜10kbの外来配列に用いるパッケージング能力を有する、シス作用性の長い末端反復からなる。最小限のシス作用性LTRが、ベクターの複製およびパッケージングには十分であり、それらは、次いで、治療遺伝子を標的細胞内に組み込むために使用されて、導入遺伝子の永続的な発現を提供する。広く使用されているレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびそれらの組合せに基づくものが挙げられる(例えば、Buchscherら、J.Virol.、66巻:2731〜2739頁(1992年)、Johannら、J.Virol.、66巻:1635〜1640頁(1992年)、Sommerfeltら、Virol.、176巻:58〜59頁(1990年)、Wilsonら、J.Virol.、63巻:2374〜2378頁(1989年)、Millerら、J.Virol.、65巻:2220〜2224頁(1991年)、PCT/US94/05700を参照されたい)。
【0150】
一過性発現が好適な用途では、アデノウイルスに基づく系を使用することができる。アデノウイルスに基づくベクターは、多くの細胞型で非常に高い効率で形質移入が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターを用いて、高力価および高レベルの発現を得ている。このベクターは、比較的単純な系で大量に産生することができる。また、アデノ関連ウイルス(「AAV」)ベクターを使用して、例えば、核酸およびペプチドのin vitro産生において、ならびにin vivoおよびex vivoの遺伝子治療の手順(例えば、Westら、Virology、160巻:38〜47頁(1987年)、米国特許第4,797,368号、WO93/24641、Kotin、Human Gene Therapy、5巻:793〜801頁(1994年)、Muzyczka、J.Clin.Invest. 94巻:1351頁(1994年)を参照されたい)に用いるために、細胞に標的核酸を形質導入することもできる。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号、Tratschinら、Mol.Cell.Biol.、5巻:3251〜3260頁(1985年)、Tratschinら、Mol.Cell.Biol.、4巻:2072〜2081頁(1984年)、HermonatおよびMuzyczka、PNAS、81巻:6466〜6470頁(1984年)、およびSamulskiら、J.Virol.、63巻:03822〜3828頁(1989年)を含めた多数の刊行物に記載されている。
【0151】
少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが、現在、臨床試験の遺伝子移入に利用可能であり、それらは、形質導入薬剤を生成するために、ヘルパー細胞株内に挿入された遺伝子による欠損ベクターの相補性を含むアプローチを利用する。
【0152】
pLASNおよびMFG−Sは、臨床試験で使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunbarら、Blood、85巻:3048〜305頁(1995年)、Kohnら、Nat.Med.、1巻:1017〜102頁(1995年)、Malechら、PNAS、94巻:22号、12133〜12138頁(1997年))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験で使用された最初の治療ベクターであった。(Blaeseら、Science、270巻:475〜480頁(1995年))。MFG−Sでパッケージされたベクターについて、50%またはそれ超の形質導入効率が観察されている。(Ellemら、Immunol Immunother.、44巻(1号):10〜20頁(1997年)、Dranoffら、Hum.Gene Ther.、1巻:111〜2頁(1997年)。)
【0153】
組換えアデノ関連ウイルスベクター(rAAV)は、欠損型および非病原性のパルボウイルスアデノ関連2型ウイルスに基づく有望な代替の遺伝子送達システムである。全てのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAV145塩基対の逆方向末端反復のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入された細胞のゲノム内への組込みに起因する効率的な遺伝子移入および安定な導入遺伝子送達は、このベクター系の鍵となる特長である(Wagnerら、Lancet 351巻:9117号 1702〜3頁(1998年)、Kearnsら、Gene Ther.9巻:748〜55頁(1996年))。AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9およびAAVrh10、またはAAV2/8、AAV8.2、AAV2/5およびAAV2/6などのようなシュードタイプ化AAV、ならびに任意の新規AAV血清型を含めた他のAAV血清型も、本発明に従って使用することができる。
【0154】
複製欠損性組換えアデノウイルスベクター(Ad)は、高力価で産生することができ、多数の異なる細胞型を容易に感染させる。アデノウイルスベクターのほとんどは、導入遺伝子がAd E1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置き換えて、その後、複製欠損性ベクターが、欠失した遺伝子機能をトランスに供給するヒト293細胞で増殖するように、操作される。Adベクターは、肝臓、腎臓、および筋肉で見出されるものなど非分裂性の分化細胞を含む、複数の種類の組織をin vivoで形質導入することができる。従来のAdベクターは、大きな保有能力を有する。臨床試験でAdベクターを使用する例では、筋肉内注入を用いた抗腫瘍免疫化のポリヌクレオチド治療が含められた(Stermanら、Hum.Gene Ther.、7巻:1083〜9頁(1998年))。臨床試験における遺伝子移入に用いるアデノウイルスベクターの使用の追加の例としては、Roseneckerら、Infection、24巻:1号、5〜10頁(1996年)、Stermanら、Hum.Gene Ther.、9巻:7号、1083〜1089頁(1998年)、Welshら、Hum.Gene Ther.、2巻:205〜18頁(1995年)、Alvarezら、Hum.Gene Ther.、5巻:597〜613頁(1997年)、Topfら、Gene Ther.、5巻:507〜513頁(1998年)、Stermanら、Hum.Gene Ther.、7巻:1083〜1089頁(1998年)が挙げられる。
【0155】
パッケージング細胞を使用して、宿主細胞を感染させることが可能なウイルス粒子を形成する。そのような細胞としては、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317が含まれる。遺伝子治療で使用されるウイルスベクターは、通常、ウイルス粒子内に核酸ベクターをパッケージングする生産細胞株によって生成される。これらのベクターは、典型的に、パッケージングおよびその後の宿主への組込みに必要とされる最小限のウイルス配列(適用可能な場合)、発現させるタンパク質をコードする発現カセットによって置き換えられている他のウイルス配列を含有する。欠けているウイルス機能は、パッケージング細胞株によってトランスに供給される。例えば、遺伝子治療に使用するAAVベクターは、典型的には、宿主ゲノム内へのパッケージングおよび組込みに必要とされるAAVゲノム由来の逆方向末端反復(ITR)配列のみを具える。ウイルスDNAは、細胞株中にパッケージングされ、他のAAV遺伝子即ち、repおよびcapをコードするもののITR配列を欠失したヘルパープラスミドを含有する。細胞株はまた、ヘルパーとしてアデノウイルスに感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製、およびヘルパープラスミド由来のAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列を欠失しているため、有意な量にはパッケージングされない。アデノウイルスによる夾雑は、例えば、AAVよりも感受性があるアデノウイルスに対する熱処理によって低減することができる。
【0156】
多くの遺伝子治療用途では、遺伝子治療ベクターが、高度な特異性で特定の細胞型に送達されることが望ましい。したがって、ウイルスの外表面上でウイルス外被タンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することによって、ウイルスベクターを所与の細胞型に対する特異性を有するように改変することができる。リガンドは、目的の細胞型上に存在することが公知の受容体に対する親和性を有するように選ばれる。例えば、Hanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92巻:9747〜9751頁(1995年)は、モロニーマウス白血病ウイルスを改変して、gp70に融合されたヒトヘレグリンを発現することができ、その組換えウイルスが、ヒト上皮成長因子受容体を発現しているある特定のヒト乳がん細胞を感染させることを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、細胞表面受容体に対するリガンドを含む融合タンパク質をウイルスが発現する、他のウイルス−標的細胞の対にまで及び得るものである。例えば、線状ファージを操作して、事実上いかなる選ばれた細胞受容体にも特異的な結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を提示することができる。上記の記載は、主にウイルスベクターに適用されるが、同じ原理を非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターを操作して、特異的な標的細胞による取り込みに好都合な特異的な取り込み配列を含有させることができる。
【0157】
遺伝子治療ベクターは、下記に説明するように、個々の患者への投与によって、典型的には、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下もしくは頭蓋内注入)または局所適用によって、in vivoで送達することができる。あるいは、個々の患者から移植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)や万能ドナーの造血幹細胞などの細胞に、ベクターをex vivoで送達し、続いて、通常はベクターを組み入れた細胞を選択した後に、患者への細胞の再移植を行うことができる。
【0158】
また、ヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソーム等)を、in vivoでの細胞の形質導入のために、生物に直接投与することもできる。あるいは、ネイキッドDNAを投与することができる。投与は、血液または組織の細胞との最終的な接触の内に分子を導入するために通常使用される経路のいずれかに依り、そのような経路としては、注射、注入、局所適用、およびエレクトロポレーションが挙げられるが、これらに限定されない。そのような核酸を投与する適当な方法は、利用可能であり、当業者に周知であり、そして、1つよりも多い経路を使用して特定の組成物を投与することができるが、多くの場合、特定の経路は、別の経路よりも速やかかつ有効な反応を提供することができる。
【0159】
本明細書に記載されているポリヌクレオチド(例えば、ヌクレアーゼをコードするおよび/または第VII因子、第VIII因子、FIX、第X因子および/または第XIをコードする)の導入に適したベクターとしては、非組込み型レンチウイルスベクター(IDLV)が挙げられる。例えば、Oryら(1996年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93巻:11382〜11388頁、Dullら(1998年)、J.Virol.、72巻:8463〜8471頁、Zufferyら(1998年)、J. Virol.、72巻:9873〜9880頁、Follenziら(2000年)、Nature Genetics、25巻:217〜222頁、米国特許出願公開第2009/054985号を参照されたい。
【0160】
薬学的に許容される担体は、投与されている特定の組成物によって、および組成物を投与するために使用される特定の方法によって、ある程度は決定される。したがって、下記に記載するように、利用可能な医薬組成物の実に様々な適当な製剤が存在する(例えば、Remington‘s Pharmaceutical Sciences、第17版、1989年を参照されたい)。
【0161】
ヌクレアーゼをコードする配列とドナー構築物とを、同じまたは異なる系を使用して送達することができることは明らかである。例えば、ヌクレアーゼおよびドナーを同じベクター(例えば、AAV)によって保有することができる。あるいは、ドナーポリヌクレオチドをプラスミドによって保有することができ、一方、1種または複数種のヌクレアーゼを異なるベクター(例えば、AAVベクター)によって保有することができる。さらに、これらの異なるベクターを、同じまたは異なる経路(筋肉内注射、尾静脈注射、他の静脈内注射、腹腔内投与および/または筋肉内注射)によって投与することができる。これらのベクターを、同時にまたは任意の順番で、送達することができる。
【0162】
よって、ある特定の実施形態において、本開示は、第VIII因子コード配列のヌクレアーゼ媒介性組込みによる、血友病Aのin vivoまたはex vivo処置を含む。本開示は、第IX因子コード配列のヌクレアーゼ媒介性組込みによる、血友病Bのin vivoまたはex vivo処置も含む。同様に、本開示は、それぞれ第VII因子、第X因子、または第XI因子コード配列のヌクレアーゼ媒介性組込みによる、第VII因子欠損症、第X因子、または第XI因子欠損症関連血友病の処置を含む。組成物は、血清、肝臓または標的細胞で所望の濃度の治療的な第VII因子、第VIII因子、第IX因子または第X因子のポリペプチドを得るために、有効量でヒト患者へ投与される。投与は、ポリヌクレオチドが所望の標的細胞に送達される任意の手段に依ることができる。例えば、in vivoおよびex vivoの両方の方法が意図される。門脈への静脈内注射は、好ましい投与方法である。他のin vivo投与の様式としては、例えば、肝動脈を通じることを含めて肝臓葉もしくは胆管への直接注射および肝臓遠位への静脈内注射、肝実質への直接注射、肝動脈を介した注射ならびに/または胆管を通じた逆行注射が挙げられる。ex vivo投与の様式としては、切除した肝細胞または肝臓の他の細胞をin vitroで形質導入し、続いて形質導入された切除肝細胞をヒト患者の門脈脈管、肝実質または胆管へ戻して注入することが挙げられる。例えば、Grossmanら、Nature Genetics、6巻:335〜341頁(1994年)を参照されたい。他の投与機序は、患者または同種異系間幹細胞におけるセーフハーバー位置への、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子および/または第XI因子をコードする導入遺伝子のex vivoヌクレアーゼ媒介性挿入を含む。改変後に、処置された細胞は次に、血友病の処置のために患者へと再注入される。
【0163】
血友病の処置は、単なる一例として本明細書に記されており、本明細書に開示されている方法および組成物を使用して他の状態を処置できることを理解されたい。場合によっては、本方法および組成物は、血栓性障害の処置において有用であり得る。投与する有効量のヌクレアーゼ(複数可)および第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子または第XI因子ドナーは、患者に応じておよび目的の治療ポリペプチドによって変化することになる。したがって、有効量は、その組成物を投与する医師によって最適に決定され、適切な投薬量は、当業者によって容易に決定され得る。十分な時間で組込みおよび発現させた後(例えば、典型的には4〜15日間)、治療ポリペプチドの血清または他の組織のレベルの分析、および投与前の初期レベルとの比較によって、投与されている量が少なすぎるのか、適正な範囲内であるか、または多すぎるのかを決定する。一部の実施形態において、単一用量を患者に投与することができる。一部の実施形態において、複数用量を患者に投与することができる。一部の実施形態において、本明細書に開示されている組成物と他の治療剤との共投与を行うことができる。
【0164】
また、初期投与およびそれに引き続いての投与に適したレジメンも変化し得るが、初期投与と、必要であればそれに引き続いての投与とを行うのが典型的である。引き続いての投与は、種々の間隔で投与されてもよく、毎日から毎年まで数年に1回までの範囲に及ぶ。当業者は、適切な免疫抑制技法が、送達ベクターの免疫抑制による形質導入の阻害または遮断を回避するために推奨され得ることを理解する。例えば、Vilquinら、Human Gene Ther.、6巻:1391〜1401頁(1995年)を参照されたい。
【0165】
ex vivoとin vivoとの両方の投与に用いる製剤としては、液体中懸濁液物または乳濁液が挙げられる。多くの場合、活性成分は、薬学的に許容され、かつ活性成分に適合する賦形剤と混合される。適当な賦形剤としては、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどおよびそれらの組合せが挙げられる。さらに、組成物は、湿潤剤もしくは乳濁剤、pH緩衝剤、安定化剤または医薬組成物の効果を高める他の試薬などの微量の補助的な物質を含有していてもよい。
【0166】
以下の実施例は、ヌクレアーゼがジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む、本開示の例示的な実施形態に関する。このことが、実例のみの目的にあること、ならびに他のヌクレアーゼが使用され得ること、例えば、操作されたDNA結合ドメインを有するホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)が使用され得ること、および/または天然起源のもしくは操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)のDNA結合ドメインと異種由来開裂ドメインとの融合物、操作された単一ガイドRNAを含むTALENおよび/またはCRISPR/Cas系が使われ得ることであることは理解されよう。
【実施例】
【0167】
(実施例1)
ヌクレアーゼおよびドナー構築
ヒトアルブミン遺伝子座を標的化するために、高親和性および特異性で、それぞれ隣接する15塩基対および18塩基対の標的部位に結合するように、2種の個々のZFNである、SBS42906(5フィンガータンパク質)およびSBS43043(6フィンガータンパク質)を設計した。ZFNを下の表1に示す。
【0168】
標的配列における大文字は、結合されるヌクレオチドを表示し、小文字は、結合されないヌクレオチドを表示する。
【表1】
【0169】
DNAにおける特異的な空間的配向性で組み合わせた33塩基対認識配列に結合される両方のZFNの厳密な要件は、アルブミン遺伝子座における単一の既定の部位における二本鎖切断(DSB)の形成を触媒することに必要な機能的特異性をもたらす。この構造の略図を
図2に示す。2種のZFNはそれぞれ、DNAの向かい合った鎖に位置するアルブミン遺伝子のイントロン領域における特異的な配列(転写開始部位に対してヌクレオチド447〜485)に標的化される。
【0170】
FokIヌクレアーゼ開裂ドメインは、各ZFPのカルボキシ末端に結合する。例えば、米国特許第7,888,121号および同第8,623,618号を参照されたい。高度に特異的な機能を実施するFok1ドメインの追加の特色は、ヘテロ二量体結合事象のみへの開裂の制限である。これは、ヘテロ二量体としてのみ機能するように操作されたバリアントFok1ドメイン(例えば、「ELD/KKR」)の使用により達成される。例えば、米国特許第8,623,618号を参照されたい。これらの偏性ヘテロ二量体FokIドメインは、潜在的ホモ二量体部位におけるオフターゲット開裂を防止し、これにより、ZFN特異性をさらに増強する。
【0171】
ドナーベクターを次の通りに構築した。アルブミンイントロン1遺伝子座を標的とするZFNおよびhF9導入遺伝子をコードするrAAV2/6ベクターを
図1に示す。2種の、ZFNをコードするAAV2/6ベクターであるSB−42906およびSB−43043(それぞれ左ZFNおよび右ZFNを発現)について、ZFN発現は、ヒトApoEエンハンサーおよびヒトα1−抗トリプシン(hAAT)プロモーターで構成された肝臓特異的エンハンサーおよびプロモーターの制御下にある(Miaoら(2000年)Mol. Ther.1巻(6号):522〜532頁)。ApoE/hAATプロモーターは、企図される標的組織である肝細胞において高度に活性であるが、非標的組織におけるZFN発現および活性を防止するため、他の細胞および組織型においては不活性である。
【0172】
hF9導入遺伝子を含有するrAAV2/6ドナーベクター(SB−F9ドナー)は、エクソン2〜8を含む部分的hF9 cDNAをコードするプロモーターなし構築物である。F9エクソン2スプライスアクセプター部位(SA)は、組込みの機構(NHEJまたはHDR;例えば、
図3および
図4を参照)にかかわらず、アルブミン遺伝子座由来の成熟mRNAへのhF9導入遺伝子(エクソン2〜8)の効率的なスプライシングを可能にするために存在する。アルブミンイントロン1遺伝子座における開裂部位と相同な配列が、hF9導入遺伝子を任意選択で挟む。相同性の左アーム(LA)は、アルブミンイントロン1開裂部位の上流の280ヌクレオチドの同一配列を含有し、相同性の右アーム(RA)は、開裂部位の下流の100ヌクレオチドの同一配列を含有する。相同性のアームは、相同組換え修復によるアルブミンイントロン1遺伝子座におけるhF9導入遺伝子の標的化組込みを容易にすることを助けるために使用される。相同性アームのサイズは、標的化組込みまたは導入遺伝子発現を阻害し得るアルブミン遺伝子座における反復性配列およびスプライシングエレメントを回避するために選択された。ポリA配列は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来する。rAAVベクターは、バキュロウイルス(Sf9)発現系を使用して、カプシド血清型AAV2/6によりパッケージされる。
【0173】
(実施例2)
ヒト初代肝細胞におけるヌクレアーゼ改変
プレーティング1日後に、細胞当たり0.3E5〜9.0E5ベクターゲノム(vg)のMOIで、いずれか1種または2種のZFNを発現するrAAV2/6ウイルス(複数可)をヒト初代肝細胞に形質導入した。7日目に細胞を収集し、miSEQによるパーセントインデル(挿入および/または欠失)解析およびFokIドメインに対する抗体を使用したウエスタンブロットによるZFN発現解析の両方のために、ゲノムDNAおよびタンパク質を調製した。
【0174】
本明細書に記載されるZFN(SBS42906(5フィンガー;左ZFN)およびSBS43043(6フィンガー;右ZFN))は、高レベルの改変を示した(例えば、10〜30%の間のインデル)。
【0175】
加えて、ヒトヘパトーマ細胞株(HepG2)を使用して、アルブミン遺伝子座における特異的ヌクレアーゼ媒介性組込みおよび組込み機序(NHEJまたはHDR)を評価した。ヒトアルブミンZFNおよびFIXドナーを形質導入したHepG2細胞は、バックグラウンドを上回る強いhFIX分泌(約75ng/ml)を示し、miSEQによるアルブミン特異的遺伝子改変の解析は、約74%インデルを示した。遺伝子型判定のためにサブクローンを使用して、アルブミン遺伝子座における特異的組込みおよびNHEJまたはHDRのいずれかによる組込みの機序を決定した(
図3)。サブクローンは、強いhFIX分泌(最大350ng/ml)も示した。全体的に、HDRまたはNHEJのいずれかによる単一対立遺伝子ドナー組込みを有するサブクローンの間に差はなかった。
【0176】
これらの結果は、hFIXが、FIXドナー組込みの機序にかかわらず、アルブミン遺伝子座から安定的に発現され得ることを示した。
【0177】
アルブミン遺伝子座におけるFIXドナーの安定的な組込み後に、hALB−hFIX融合タンパク質mRNAが、アルブミンプロモーターから転写される。変更されない野生型アルブミン遺伝子の発現は、2.3kbの転写物をもたらすが、hALB−hFIX融合mRNAは、NHEJまたはHDRのいずれかによる組込み機序にかかわらず、1.7kbとより短い(
図5A)。
【0178】
本発明者らは、NHEJまたはHDRのいずれかにより安定的に組み込まれたFIXドナーによるヘパトーマ細胞株HepG2の安定的サブクローンを作製することによりこれを実証した。SB−42906、SB−43043およびFIXドナーによるHepG2細胞の形質導入後に、本発明者らは、組込み特異的遺伝子型判定により、NHEJまたはHDRのいずれかによるFIXドナー組込みを示し、hFIX ELISAによって検出可能なhFIXタンパク質の高い(150〜350ng/ml)分泌レベルを示した数個のサブクローンを同定した(
図5B)。総mRNA単離およびcDNAへの逆転写後に、本発明者らは、PCRおよびシーケンシングによりこれらのサブクローンの転写物を解析した。未改変対照細胞において、本発明者らは、エクソン1〜8を挟むプライマーにより、予想される野生型アルブミン転写物(2.3kb)のみを検出することができたが、FIXドナーに結合するプライマーによる転写物は検出されなかった。
【0179】
アルブミン遺伝子座に組み込まれたFIXドナーを有し、FIXを分泌する3種のHepG2サブクローンにおいて、本発明者らは、野生型ヒトアルブミン転写物と、アルブミン5’UTRおよびFIXドナー3’UTRに結合するプライマーを用いた、予想されるhALB−hFIX融合転写物(1.7kb)との両方を検出した。これらのRT−PCR産物のサブクローニングおよびシーケンシングは、これが、予想されるhAlb−hFIX融合mRNAであることを確認した。この結果は、全3種のサブクローンにおいて、FIXドナーが、NHEJまたはHDRのいずれかにより、機能的hALB−hFIX転写物の発現をもたらす1種のアルブミン対立遺伝子に組み込まれ、hFIXタンパク質をさらに分泌したことを示唆する。他の対立遺伝子のMiSeq解析は、これらのサブクローンが、アルブミンイントロン1における10もしくは40ヌクレオチド(nt)欠失または1nt挿入を保有することを示した。これらのインデルにもかかわらず、細胞は、予想されるとおり、未改変対照細胞の場合の野生型アルブミン転写物およびタンパク質の約半量を産生し、アルブミンエクソン1における小インデルが、アルブミン発現に大きな影響を持たないことを実証する。これらのサブクローンにおいて、アルブミンmRNAのエクソン8に結合するプライマーにより検出可能な他の転写物は存在しなかったため、本発明者らは、hFIXドナー組込み後に、mRNAスプライシングが、アルブミンエクソン1のスプライスドナー部位およびhF9ドナーのスプライスアクセプター部位の間にのみ生じたと結論付けた。
【0180】
要約すると、HepG2サブクローンのヌクレアーゼ改変アルブミン遺伝子座における転写プロファイルの本発明者らによる詳細な解析は、所望のhALB−hFIX融合タンパク質mRNAのみが発現されることを示した。
【0181】
標的化組込みの成功には、同じ肝細胞の形質導入のために全3種のAAVベクターが必要とされる(例えば、米国仮特許出願第61/943,865号を参照)。本発明者らは、標的化組込みの効率が、ZFN:ドナーの比に依存することを見出した。よって、rAAVコードZFNベクターは、1:1比で製剤化され、rAAVコードZFN:ZFN:hF9ドナーDNA比は、1:1:8である。
【0182】
(実施例3)
ヒトにおけるIn VitroオフターゲットSELEXガイド毒性評価
バイオインフォマティクスアプローチを使用して、本明細書に記載されるZFNに企図されるDNA結合部位への最良適合マッチに関してゲノムを検索することにより、ZFN作用の潜在的なオフターゲット効果を同定した。ZFN毎のコンセンサス優先結合部位を得るために、SELEX(実験的富化によるリガンドの体系的進化)として公知の親和性に基づく標的部位選択手順を用いた。
【0183】
簡潔に説明すると、ZFNのZFP部分を、ランダムDNA配列のプールと共にインキュベートし、親和性クロマトグラフィーによりZFPタンパク質およびいずれかの結合したDNA配列を捕捉し、次に、結合したDNA断片をPCR増幅することにより、SELEX実験を行った。これらのDNA断片をクローニングおよび配列決定およびアライメントして、コンセンサス結合優先度を決定した。
【0184】
次に、表1の2種のZFNのための15塩基対および18塩基対結合部位における各位置に対するこれらの実験により得られた優先度を使用して、ヒトゲノムにおける最も類似の部位のゲノムワイドバイオインフォマティクス検索をガイドした。次に、その結果得られた潜在的な開裂部位のリストをランク付けして、SELEX由来コンセンサス配列に対し最高類似性を有するこれらの部位にとっての優先順位を得た。ヒトゲノムにおける上位40部位を同定した。これらの40部位のうち18種は、アノテートされた遺伝子の内に収まったが、これらのうち1種のみが、エクソン(タンパク質コード)配列内に生じた。イントロン配列における低レベルの改変は、遺伝子発現または機能に影響を与えるとは予想されなかった。
【0185】
次に、これらの部位が、本明細書に記載されるヌクレアーゼによって開裂されるか決定するため、高用量(3e5vg/細胞)のSB−42906およびSB−43043(両者共にAAV2/6としてパッケージ)または対照としてGFPを発現するAAV2/6ベクターにより、ヒト初代肝細胞およびヒトヘパトーマ細胞株HepG2を形質導入した。トランスフェクション7〜9日後にゲノムDNAを単離し、オンターゲット(hALBイントロン1遺伝子座)および上位40種の予測されるオフターゲット部位遺伝子座を、100ngのゲノムDNA(約15,000の二倍体ゲノム)からPCR増幅した。次に、Illumina miSEQにおけるペアエンドディープシーケンシングにより、各遺伝子座における改変のレベルを決定した。オープンソースソフトウェアパッケージSeqPrep(Dr.John St.Johnにより開発、例えば、Klevegringら(2014年)PLOS One doi:e104417 doi.10,1371journal.pone0104417を参照)により、対になった配列をマージした。
【0186】
全塩基にわたり、品質スコア≧15に関して各配列にフィルターをかけ、続いてヒトゲノムにマッピングした(hg19アセンブリ)。不正確な遺伝子座にマッピングされた配列は、さらなる解析から除去した。標的アンプリコンゲノム領域と、得られたIllumina Miseq読み取りデータ(read)との間でNeedleman−Wunsch(Needleman, S.B,mおよびWunsch, C.D.(1970年)J. Mol Biol 48巻(3号):443〜53頁)アライメントを行って、挿入および欠失をマッピングした。インデル1塩基対の長さも真のインデルとみなし、実際の事象の数え落とし(undercounting)を回避したことを除いて、Gabrielら(2011年)Nature Biotechnology.29巻(9号):816〜23頁に記載された通りに、アライメントされた配列におけるインデル事象を定義した。
【0187】
記載された解析の適用後に、ヒト初代肝細胞における16.2%インデルおよびHepG2細胞における30.0%インデルにおけるオンターゲット改変を測定した。いずれの細胞型においても、潜在的な上位40種のオフターゲット部位のいずれかにおける有意なインデルを検出することはできなかった。
【0188】
これらの結果は、オンターゲットレベルでの(それぞれ16および30%)ヒト初代肝細胞およびヘパトーマ細胞の両方におけるZFN試薬SBS42906およびSBS43043の精巧な特異性を強調する。
【0189】
(実施例4)
In vivo標的化組込み
補正的FIX導入遺伝子が、被験体のゲノムに組み込まれ(例えば、被験体自身の内在性アルブミン遺伝子座の制御下において)、これにより、第IX因子の肝臓特異的合成をもたらすように、本明細書に記載されるヌクレアーゼ(および/またはヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド)およびドナー、ならびに/またはヌクレアーゼおよび/もしくはドナーを含む医薬組成物が、ヒト被験体に投与される。特に、FIXに対するインヒビターなしで現在の処置ガイドラインに従って予防的FIX補充療法(>100用量)を受けており、組換えFIXに対する過敏症ではない、重度血友病Bの(無処置の場合>6出血/年)少なくとも18歳の男性被験体に、表2に例示されている次のスケジュールのうち1種に従って、本明細書に記載されるヌクレアーゼおよびFIXドナーを投与する。
【表2】
【0190】
「SB−FIX」は、静脈内用量として投与される3種の構成成分、すなわち、3種の個々の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)血清型2/6(rAAV2/6)ベクターを含有する:SBS42906(左ZFNと命名され、ZFN1と本明細書において称される)をコードする第1のベクター(SB−42906)、SBS43043(右ZFNと命名され、ZFN2と本明細書において称される)をコードする第2のベクター(SB−43043)およびプロモーターなしhF9導入遺伝子をコードするDNA修復鋳型をコードする第3のベクター(hF9遺伝子ドナー)。
【0191】
SB−FIXの3種の構成成分(2種のヌクレアーゼおよびドナー)を、逐次的におよび/または同時に、例えば、1種または複数種の医薬組成物において、静脈内注入(例えば、門脈)により投与する。
【0192】
任意選択で、被験体は、コルチコステロイド(corticosteriod)等、免疫抑制剤で処置されて(SB−FIX投与の前、最中および/または後に)、例えば、免疫応答(例えば、中和抗体(NAB)応答またはAAVに対する免疫応答)を低下または排除する。特に、肝臓アミノトランスフェラーゼ増加を発症する被験体は、60mgのプレドニゾロンと、続く4〜6週間にわたる漸減による短期免疫抑制レジメンを投与される。
【0193】
AAV2/6に対する免疫応答;FIXに対する免疫応答;AAV2/6ベクターDNAの存在;血液、唾液、尿、糞便および精液におけるPCRによるアルブミン遺伝子座遺伝子改変(SB−FIXの改変部位)の存在;FIXレベルのベースラインからの変化;aPTTのベースラインからの変化;第IX因子補充療法の使用のベースラインからのいずれかの変化;出血エピソードの頻度および/または重症度のベースラインからのいずれかの変化;ならびに肝臓機能(例えば、AST、ALT、ビリルビン、アルカリホスファターゼおよびアルブミンレベルを含む)に関して、被験体を評価する。
【0194】
SB−FIX投与は、機能的FIXの肝産生を回復させる。正常レベルの>1%において、FIX濃縮物による予防的処置の必要が、低減または排除され、正常の>5%において、最重度外傷を除く全ての外傷後の出血は、実質的に低下される。よって、肝臓細胞へのFIX cDNAのAAV媒介性遺伝子移入は、血友病B被験体におけるFIXの長期産生をもたらす。
【0195】
本明細書にて言及されている全ての特許、特許出願および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0196】
開示は、理解を明確にする目的で、説明および実施例によっていくらか詳細に提供されているが、本開示の精神または範囲を逸脱することなく様々な変形および改変が実践され得ることは、当業者にとって明らかである。したがって、前出の記載および実施例は、限定として解釈されるべきものではない。