特許第6642983号(P6642983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6642983
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】可変限界設定を用いた逆方向切削器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/16 20060101AFI20200130BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   A61B17/16
   A61B17/56
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-116386(P2015-116386)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2015-231527(P2015-231527A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2018年6月8日
(31)【優先権主張番号】14/300,481
(32)【優先日】2014年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・イー・リザルディ
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ジェイ・ジルカ
(72)【発明者】
【氏名】スコット・プレスベリー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エス・バリュール
(72)【発明者】
【氏名】ディーン・シー・テイラー
【審査官】 小宮 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0036381(US,A1)
【文献】 特開2012−187287(JP,A)
【文献】 特表2011−528962(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0076503(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0155899(US,A1)
【文献】 特表2003−522587(JP,A)
【文献】 特表2012−504432(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0325048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削器具であって、
近位端部及び遠位端部を有する細長い本体であって、前記遠位端部に位置する穿孔チップを含む、細長い本体と、
前記細長い本体に形成された空洞内に旋回式で配設される切削ブレードであって、前記切削ブレードが前記細長い本体から突出しない後退位置と、前記切削ブレードが前記細長い本体から突出する1つ又は2つ以上の配備位置とに配置可能となっている、切削ブレードと、
前記細長い本体を通って延び、前記切削ブレードに結合される遠位端部を有する作動シャフトであって、前記作動シャフトが前記細長い本体に対して縦方向に平行移動することは、前記切削ブレードを前記後退位置と前記1つ又は2つ以上の配備位置との間で移動させるのに効果的となっている、作動シャフトと、
前記作動シャフトに結合される作動ノブであって、前記作動ノブが前記細長い本体の縦軸を中心として回転することは、前記作動シャフトを前記細長い本体に対して前記縦方向に平行移動させるのに効果的となっている、作動ノブと、
調整要素であって、前記作動シャフトが前記細長い本体に対して前記縦方向に平行移動され得る程度を、前記細長い本体に対する前記調整要素の位置に基づいて制限するように構成された、調整要素と、を備え
前記作動シャフトは、前記細長い本体の第1のスロットを通じて延びる第1のタブを有し、
前記調整要素は前記第1のスロットの少なくとも一部分に被せて配設されて、前記第1のタブが前記第1のスロット内でスライドし得る程度を制限する、切削器具。
【請求項2】
前記切削ブレードが配設される前記空洞は、前記細長い本体の前記遠位端部から、ある距離をおいて離間されている、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記作動ノブは前記作動シャフトにねじ接合によって結合される、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記調整要素は、リングを備え、前記リングは、前記リング上に形成された段付き停止表面を有し、前記段付き停止表面は複数の段を有し、
前記調整要素が前記細長い本体の前記縦軸を中心として回転することは、前記複数の段のうちのどの段が前記第1のスロットと整列されるかを変更し、それにより前記第1のスロットの有効長を変更するのに効果的である、請求項に記載の器具。
【請求項5】
切削器具であって、
近位端部及び遠位端部を有する細長い本体であって、前記遠位端部に位置する穿孔チップを含む、細長い本体と、
前記細長い本体に形成された空洞内に旋回式で配設される切削ブレードであって、前記切削ブレードが前記細長い本体から突出しない後退位置と、前記切削ブレードが前記細長い本体から突出する1つ又は2つ以上の配備位置とに配置可能となっている、切削ブレードと、
前記細長い本体を通って延び、前記切削ブレードに結合される遠位端部を有する作動シャフトであって、前記作動シャフトが前記細長い本体に対して縦方向に平行移動することは、前記切削ブレードを前記後退位置と前記1つ又は2つ以上の配備位置との間で移動させるのに効果的となっている、作動シャフトと、
前記作動シャフトに結合される作動ノブであって、前記作動ノブが前記細長い本体の縦軸を中心として回転することは、前記作動シャフトを前記細長い本体に対して前記縦方向に平行移動させるのに効果的となっている、作動ノブと、
調整要素であって、前記作動シャフトが前記細長い本体に対して前記縦方向に平行移動され得る程度を、前記細長い本体に対する前記調整要素の位置に基づいて制限するように構成された、調整要素と、を備え、
固定ハンドル部分を更に備え、前記固定ハンドル部分は、前記固定ハンドル部分上に形成された複数の突出部を有し、前記複数の突出部は、前記調整要素の遠位側向き表面に形成された複数の戻り止め又は開口部内に受容されるように構成されている、切削器具。
【請求項6】
前記調整要素を前記固定ハンドル部分と係合させるように構成された付勢ばねを更に備える、請求項に記載の器具。
【請求項7】
前記作動ノブはトルクリミッタを有し、前記トルクリミッタは、前記作動ノブを回転させる際に加えられ得るトルクの量を制限するように構成されており、かつ、前記切削ブレードが所望の位置に到達したときに触覚フィードバックをユーザーに与えるように構成されている、請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記作動シャフトの前記遠位端部はリンク機構によって前記切削ブレードに結合される、請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記リンク機構はリンクバーを備え、前記リンクバーは、前記作動シャフトのヨークに第1の横断ピンによって結合される近位端部と、前記切削ブレードのヨークに第2の横断ピンによって結合される遠位端部と、を有する、請求項に記載の器具。
【請求項10】
前記作動シャフトが前記細長い本体に対して近位側に平行移動することは、前記切削ブレードを旋回ピンを中心として回転させて前記切削ブレードを前記空洞の中へと後退させるのに効果的であり、前記作動シャフトが前記細長い本体に対して遠位側に平行移動することは、前記切削ブレードを前記旋回ピンを中心として回転させて前記切削ブレードを前記空洞から配備するのに効果的である、請求項1に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
逆方向切削器具及びそれに関連する方法が本明細書にて開示される。
【背景技術】
【0002】
関節鏡下手術の間、小さな切開部が、関節鏡下手術の部位又は関節を被覆する皮膚に形成され、それにより、手術器具が関節内に配置され、関節鏡下での可視化によって操作され得るようになる。これらの手術器具は、再建手術の間に柔組織移植片を受容するための、移植患者の部位ソケット(例えば、大腿骨又は脛骨トンネル)を形成するなど、様々な作業を実施するために使用され得る。
【0003】
例えば、典型的な下腿関節鏡ACL手技においては、移植患者の部位ソケットを脛骨及び大腿骨に形成するためにドリルが使用される。ドリルはまず、脛骨の前側表面で始まって膝関節に向かって内向きに前進して、脛骨を貫くトンネルを形成するために使用される。結果として得られる脛骨トンネルは、関節腔内で始まって大腿骨の外側に向かって前進して大腿骨トンネルを穿孔するために、大腿骨へのアクセスをもたらす。大腿骨トンネルの穿孔は、所望の深さが達成されたときに終わり、そのため、結果として得られる大腿骨トンネルは止まり穴となり、細い案内ワイヤの寸法の穴のみが、大腿骨の外部へと、完全に貫いて延びる。この下腿アプローチにおいて、大腿骨トンネルはおよそ真っ直ぐであるが、これはバイオメカニクス的には次善のものであり、関節の回転安定性を低下させるものである。
【0004】
関節のバイオメカニクスと回転安定性を改善する1つの方法は、大腿骨において前内側の刺入点を代わりに用いることである。前内側アプローチおいて、内側の膝の前部に形成された刺入点を通じて大腿骨切痕(femoral notch)の中へとドリルが挿入され、外側顆にトンネルが穿孔される。得られる骨トンネルは、解剖学的により正しい位置に配置される。しかしながら、このアプローチは、既存の切削器具が限られていることから生じるいくつかの難題を伴う。例えば、外科医は、比較的大きな直径のドリルを前進させるとき、内側顆の軟骨を傷付けるのを避けるために、用心しなければならない。
【0005】
それに代わる方法が、図1に示すように、逆方向切削器具を使用したアウトサイドインアプローチ(outside-in approach)を用いて段付き開口部を大腿骨に形成することである。まず、直径D1を有する穴が、大腿骨の外側で始まって、図示の矢印A1の方向に関節に向かって内向きに前進して穿孔される。ドリルは次いで、穴の遠位部分を直径D2へと拡幅するように逆方向切削機構を作動させて、図示の矢印A2の方向に部分的に引き抜かれる。次いで、逆方向切削機構は停止され、ドリルは穴の減少した直径の近位部分を通じて完全に引き抜かれる。段付き開口部を同様の方式で形成することが望ましい場合がある手技は他にも多数ある。
【0006】
既存の逆方向切削器具は、不便な点が多数あるという問題を抱えている。例えば、既存の器具は、単一の直径のトンネルしか逆方向切削し得ない。したがって、種々の直径を有する複数のトンネルを穿孔する必要がある場合、種々の直径を有する複数の器具を使用しなければならず、在庫及び滅菌のコスト、並びに外科的複雑度が増すことになる。
【0007】
更に、既存の逆方向切削器具において、前方切削のための穿孔チップと逆方向切削チップは全く同一である。逆方向切削が実施される場合、前方切削チップは、主ドリルシャフトにほぼ垂直に配設されるように、単純に外向きにヒンジで留められる。この位置において、主ドリルシャフトの開放端部は広がる傾向があり、チップが破断し得る。また、前方穿孔と逆方向切削を実施するために同じ構造が使用されるので、構造の形状は、一方のタスク又はもう一方のタスクに対して最適化され得ない。このことは、器具の切削性能を低下させ、かつ/又はチップが損傷を受ける危険性を増すことになり得る。
【0008】
したがって、改善された切削器具及びそれに関連する方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
切削器具及びそれに関連する方法が本明細書に開示されるが、逆方向切削ブレードの直径は、複数の直径設定のうちのいずれかに調整され得、同じ器具を使用して種々の直径の穴を形成し得る。限界直径を事前設定でき、そのため、切削操作の間、ユーザーが、適切な直径を選択することを気にする必要がなく、むしろ事前設定された限界に達するまで簡単に切削ブレードを配備し得るようになっている。切削ブレードの所望の位置決めを確認するためにユーザーが視覚及び/又は触覚フィードバックを与えられる器具と同様に、逆行切削ブレードが前方穿孔チップから分離され、使用されていないときには器具の本体に形成された空洞内で保護される切削器具がまた開示される。
【0010】
いくつかの実施形態において、切削器具は、近位端部及び遠位端部を有する細長い本体であって、遠位端部が穿孔チップを画定する、細長い本体と、細長い本体に形成された空洞内に配設される切削ブレードであって、切削ブレードが細長い本体から突出しない後退位置と、切削ブレードが細長い本体から突出する1つ又は2つ以上の配備位置に配置可能となっている、切削ブレードと、細長い本体を通って延び、切削ブレードに結合される遠位端部を有する作動シャフトであって、作動シャフトが細長い本体に対して縦方向に移動することは、切削ブレードを後退位置と1つ又は2つ以上の配備位置との間で移動させるのに効果的となっている、作動シャフトと、作動シャフトに結合される作動ノブであって、作動ノブが細長い本体の縦軸を中心として回転することは、作動シャフトを細長い本体に対して縦方向に平行移動させるのに効果的となっている、作動ノブと、調整要素であって、作動シャフトが細長い本体に対して縦方向に平行移動され得る程度を、細長い本体に対する調整要素の位置に基づいて制限するように構成された、調整要素と、を備える。
【0011】
切削ブレードが配設される空洞は、細長い本体の遠位端部から、ある距離をおいて離間され得る。作動ノブは、ねじ接合によって作動シャフトに結合され得る。作動シャフトは、細長い本体の第1のスロットを通じて延びる第1のタブを有し得る。調整要素は第1のスロットの少なくとも一部分に被せて配設されて、第1のタブが第1のスロット内でスライドし得る程度を制限し得る。調整要素は、リングを備え、リングは、リング上に形成された段付き停止表面を有し、その段付き停止表面は複数の段を有する。調整要素が細長い本体の縦軸を中心として回転することは、複数の段のうちのどの段が第1のスロットと整列されるかを変更し、それにより第1のスロットの有効長を変更するのに効果的である。この器具は、固定ハンドル部分を更に備え、その固定ハンドル部分は、固定ハンドル部分上に形成された複数の突出部を有し、その複数の突出部は、調整要素の遠位側向き表面に形成された複数の戻り止め又は開口部内に受容されるように構成される。この器具は、調整要素を固定ハンドル部分と係合させるように構成された付勢ばねを有し得る。作動ノブはトルクリミッタを有し、そのトルクリミッタは、作動ノブを回転させる際に加えられ得るトルクの量を制限するように構成されており、かつ、切断ブレードが所望の位置に到達したときに触覚フィードバックをユーザーに与えるように構成されている。作動シャフトの遠位端部は、リンク機構によって切断ブレードに結合され得る。リンク機構はリンクバーを備え得、そのリンクバーは、作動シャフトのヨークに第1の横断ピンによって結合される近位端部と、切削ブレードのヨークに第2の横断ピンによって結合される遠位端部と、を有する。作動シャフトが細長い本体に対して近位側に移動することは、切削ブレードを旋回ピンを中心として回転させて切削ブレードを空洞の中へと後退させるのに効果的であり、作動シャフトが細長い本体に対して遠位側に平行移動することは、切削ブレードを旋回ピンを中心として回転させて切削ブレードを空洞から配備するのに効果的である。
【0012】
いくつかの実施形態において、切削器具は、遠位穿孔チップを有する細長い本体と、遠位穿孔チップに対して近位側の位置で細長い本体に形成された空洞から選択的に配備可能な切削ブレードであって、複数の直径のいずれかに配備可能である、切削ブレードと、を備える。
【0013】
いくつかの実施形態において、骨を切削する方法が、切削器具の遠位チップを使用して、第1の直径を有する第1の開口部を骨に穿孔することであって、切削器具の切削ブレードは前記穿孔の間、切削器具の本体の中へと後退されていることと、第1の開口部を穿孔した後、切削ブレードが切削器具の本体から少なくとも部分的に突出するように、切削ブレードを配備することと、切削ブレードを配備した後、切削器具の切削ブレードを使用して、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2の開口部を骨に切削することと、を含む。
【0014】
第1及び第2の開口部は互いに近接しており、そのため第1の開口部と第2の開口部とが段付き骨トンネルを画定する。第1の開口部は順方向に穿孔され得、第2の開口部は逆方向に切削され得る。第1の開口部は順方向に穿孔され得、第2の開口部は順方向に切削され得る。第1の開口部は脛骨に形成され得、第2の開口部は大腿骨に形成され得る。第1の開口部は大腿骨の内側部分に形成され得、第2の開口部は大腿骨の外側部分に形成され得る。この方法は、第2の開口部を切削した後に、切削ブレードを切削器具の本体の中へと後退させ、第1の開口部を通じて切削器具を引き抜くことを更に含み得る。この方法は、切削ブレード配備直径を切削器具の複数の直径設定のうちの1つに設定することを更に含み得る。
【0015】
本発明は更に、請求する装置及び方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、以下の詳細な説明を付属の図面と併せ読むことで、より完全に理解されよう。
図1】段付き骨トンネルを大腿骨に形成された、ヒトの膝関節の概略斜視図である。
図2A】切削器具の例示的な実施形態の斜視図である。
図2B図2Aの切削器具の遠位端部の断面輪郭図である。
図2C図2Aの器具の作動シャフト及び切削ブレードの分解図である。
図2D図2Aの器具の作動シャフト及び切削ブレードの別の分解図である。
図2E図2Aの切削器具の近位端部の断面輪郭図である。
図2F図2Aの切削器具の近位端部の分解図である。
図3A】切削器具の別の例示的な実施形態の斜視図である。
図3B図3Aの切削器具の遠位端部の断面輪郭図である。
図3C図3Aの切削器具の近位端部の断面輪郭図である。
図3D図3Aの切削器具の近位端部の分解図である。
図3E図3Aの切削器具のハンドル部分の平面図である。
図4A】切削器具の別の例示的な実施形態の斜視図である。
図4B図4Aの切削器具の遠位端部の断面輪郭図である。
図4C図4Aの切削器具の近位端部の断面輪郭図である。
図4D図4Aの切削器具の近位端部の分解図である。
図4E】調整ノブと付勢ばねを取り除いて示した、図4Aの切削器具の近位端部の斜視図である。
図4F図4Aの切削器具の調整ノブ及びディスクハンドルの分解図である。
図5A】切削器具の別の例示的な実施形態の斜視図である。
図5B図5Aの切削器具の遠位端部の断面輪郭図である。
図5C図5Aの切削器具の遠位端部の分解図である。
図5D図5Aの切削器具の近位端部の断面輪郭図である。
図5E図5Aの切削器具の近位端部の分解図である。
図5F】調整ノブと付勢ばねを取り除いて示した、図5Aの切削器具の近位端部の斜視図である。
図6A】切削器具の別の例示的な実施形態の斜視図である。
図6B図6Aの切削器具の遠位端部の分解図である。
図6C図6Aの切削器具の遠位端部の部分分解図である。
図6D図6Aの切削器具の近位端部の断面輪郭図である。
図6E図6Aの切削器具の近位端部の分解図である。
図6F】調整ノブと付勢ばねを取り除いて示した、図6Aの切削器具の近位端部の斜視図である。
図7A】切削器具の別の例示的な実施形態の斜視図である。
図7B図7Aの切削器具の遠位端部の部分分解図である。
図7C図7Aの切削器具の近位端部の断面輪郭図である。
図7D図7Aの切削器具の近位端部の分解図である。
図7E図7Aの切削器具のトルクリミッタ及び調整リングの斜視図である。
図7F図7Aの切削器具の作動ノブの斜視図である。
図7G】作動ノブと付勢ばねと前方ハンドル部分を取り除いて示した、図7の切削器具の近位端部の斜視図である。
図8A】切削器具を使用する例示的な方法を示している。
図8B】切削器具を使用する例示的な方法を示している。
図8C】切削器具を使用する例示的な方法を示している。
図8D】切削器具を使用する例示的な方法を示している。
図8E】切削器具を使用する例示的な方法を示している。
図8F】切削器具を使用する例示的な方法を示している。
図9A】切削器具を使用する別の例示的な方法を示している。
図9B】切削器具を使用する別の例示的な方法を示している。
図9C】切削器具を使用する別の例示的な方法を示している。
図9D】切削器具を使用する別の例示的な方法を示している。
図9E】切削器具を使用する別の例示的な方法を示している。
図9F】切削器具を使用する別の例示的な方法を示している。
図10A】切削器具を使用する別の例示的な方法を示している。
図10B】切削器具を使用する別の例示的な方法を示している。
図10C】切削器具を使用する別の例示的な方法を示している。
図10D】切削器具を使用する別の例示的な方法を示している。
図10E】切削器具を使用する別の例示的な方法を示している。
図10F】切削器具を使用する別の例示的な方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
切削器具及びそれに関連する方法が本明細書に開示されるが、逆方向切削ブレードの直径は、複数の直径設定のうちのいずれかに調整され得、同じ器具を使用して種々の直径の穴を形成できるようになっている。限界直径を事前設定することができ、そのため、切削操作の間、ユーザーが、適切な直径を選択することを気にする必要がなく、むしろ事前設定された限界に達するまで簡単に切削ブレードを配備し得るようになっている。切削ブレードの所望の位置決めを確認するためにユーザーが視覚及び/又は触覚フィードバックを与えられる器具と同様に、逆方向切削ブレードが前方穿孔チップから分離され、使用されていないときには器具の本体に形成された空洞内で保護される切削器具がまた開示される。
【0018】
本願で開示する装置及び方法の構造、機能、製造、及び用途の原理が総括的に理解されるように、特定の例示的実施形態について、これから説明することにする。これらの実施形態の1つ又は2つ以上の例を添付図面に示す。本明細書で詳細に説明し、添付の図面に示す装置及び方法が、非限定的な例示的実施形態であること、並びに本発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることは、当業者には理解されよう。1つの例示的な実施形態との関連において例示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。こうした改変及び変形は本発明の範囲内に含まれるものとする。本開示において、実施形態の同様な付番された構成要素は、概して類似の特徴部及び/又は目的を有する。
【0019】
図2A〜2Fは切削器具200の例示的な実施形態を示している。
【0020】
図示のように、器具200は全体的に、近位端部202pから遠位端部202dへと縦軸Lに沿って延びる細長い本体202を有している。器具200はまた、作動シャフト204と、切削ブレード206と、内管210を有する作動ノブ208と、ワッシャ212と、保持クリップ214と、を有している。
【0021】
本体202の近位端部は、ドリル(例えば、電気式又は空気圧式の外科用ドリル)のチャックに結合するための、切子状の嵌め合い境界面又はシャンク216を定めている。本体の遠位端部は、順方向又は前方向に被験者に穴を開けるための先鋭チップ218を定めている。チップ218は、任意の様々な形状又は構成を有し得、前方切削の性能に関して最適化され得る。本体202はまた空洞220を有し、この空洞220の中で、切削ブレードが横断ピン222を介して旋回式で装着されている。切削ブレード206は、空洞220の開口部を通じて選択的に配備され又は後退され得る。換言すれば、切削ブレード206は、ブレードが開口部を通じて突出する、図2Bに示すような配備構成、及びブレードが開口部を通じて突出しない後退構成に配置され得る。器具200が切削操作で使用されるときに形成される穴の直径を調整するために、ブレード206が開口部から突出する程度が調整され得る。切削ブレード206は、任意の様々な形状又は構成を有し得、逆方向切削及び/又は順方向切削の性能に関して最適化され得る。
【0022】
作動シャフト204は、本体202の内部ルーメンを通じて延び、本体に対して長手方向に平行移動可能である。作動シャフト204の遠位端部は、様々な方式のいずれかで切削ブレード206に結合され得る。例えば、図2B〜2Dに示すように、作動シャフト204の遠位端部は、切削ブレード206に結合される銃剣形状のチップを定めている。具体的に言えば、切削ブレード206の近位端部は、作動シャフト204の遠位端部が受容されるヨークを定めている。ヨークの内部に形成された雄型突起が曲線状カム表面を定めており、この曲線状カム表面は、作動シャフト204のチップに形成された雌型レセプタクル226の対応する曲線状カム表面と係合する。操作の際、作動シャフト204が本体202に対して近位側に平行移動することによって、ブレード206は横断ピン222を中心として旋回し、開口部を通じて配備されることになる。作動シャフト204が近位側に平行移動される程度によって、切削ブレード206が開口部から突出する程度が制御される。作動シャフト204が本体202に対して遠位側に平行移動することによって、ブレード206は横断ピン222を中心として反対方向に旋回し、空洞の中へと後退されることになる。
【0023】
図2E〜2Fに示すように、本体の円柱状近位部分は、作動シャフト204の第1のタブ部分230がスライド可能に配置される第1の縦スロット228を定めている。スロット228は、タブ230の長さよりも長い長さを有し、そのため、ブレードが完全に配備される近位位置と、ブレードが完全に後退される遠位位置との間で、タブがスロット内で縦方向にスライドし得るようになっている。スロット228の長さはこのようにして、ブレード206が配備され得る直径の範囲を、したがってブレードによって形成され得るトンネル直径の範囲を定めている。
【0024】
本体202の円柱状近位部分はまた、作動シャフト204の第2のタブ部分234がスライド可能に配置される第2の縦スロット232を定めている。作動ノブ208の内管210は、本体202の円柱状近位部分に被さって回転可能に配置され、そのため、内管のねじ付き内部表面236は作動シャフト204の第2のタブ234のねじ付き表面と係合するようになっている。作動ノブ208は、作動ノブに形成された遠位円筒状凹部内に内管が着座するように、内管210に被さって配置される。内管210の六角雄型部分が、作動ノブ208の六角雌型部分と係合して、作動ノブの回転位置を内管に対して固定する。ワッシャ212は、作動ノブ208に形成された近位円筒穴に配設され、本体202の外部表面に形成されたスロット238にスナップ嵌めされる保持クリップ214によって、定位置に保持される。作動ノブを本体に対して一定の縦方向位置に維持するために、作動ノブ208は、保持クリップ214と本体202上に形成されたショルダー240との間に挟み付けられる。したがって、作動ノブ208(及び作動ノブ208に結合された内管210)が本体202に対して回転することにより、作動シャフト204のねじ山は内管のねじ山に沿って進み、それによって作動シャフトが本体に対して縦方向に平行移動することになる。この縦方向の平行移動の近位限界及び遠位限界は、作動シャフト204に形成された第1のタブ230に対する第2のスロット228の大きさによって定められる。作動ノブ208は、縦軸Lを中心として第1の方向に回転して、作動シャフト204を近位側に引き、ブレード206を配備し、かつ/又は切削直径を増加させ得る。作動ノブ208は、縦軸Lを中心として、反対の第2の方向に回転して、作動シャフト204を遠位側に押し、ブレード206を後退させ、かつ/又は切削直径を低減させ得る。
【0025】
作動シャフト204を前進及び後退させるためのねじ接合を示したが、それに代わってあるいはそれに加えて様々な他の機構が使用され得ることが理解されよう。いくつかの実施形態において、ねじ接合は有利にも、切削ブレード206を移動させるための機械効率の向上をもたらし、それにより、切削ブレードが切削操作の間に配備又は後退位置で膠着することが防止され得る。加えて、回転式の作動ノブが本明細書で図示及び説明されているが、それに加えてあるいはそれに代わって、ボタン、レバー、トリガーなどを含め、様々な任意の作動機構が使用され得ることが理解されよう。
【0026】
器具200を使用する例示的な方法において、器具をドリルに結合し、作動ハンドル208を回転させてブレード206を完全後退位置に配置することによって、器具は使用に備え得る。外科医が段付き開口部を形成する準備ができると、外科医はドリルを作動させて、前方切削チップ218で開口部の減少した直径部分を形成する。外科医は次いで、更なる回転が可能でなくなり、ブレード206が配備されたことが示唆されるまで、作動ハンドル208を回転させる。外科医は次いで、ドリルを作動させて、段付き開口部の拡大した直径部分を逆方向切削する。最後に、外科医は作動ハンドル208を回転させて、切削ブレード206を完全後退位置に復帰させ、器具200を患者から引き抜く。器具200はまた、更に以下で説明するように、他の例示的な方法でも使用され得る。
【0027】
図3A〜3Eは切削器具300の別の例示的な実施形態を示している。
【0028】
図示のように、器具300は全体的に、近位端部302pから遠位端部302dへと縦軸Lに沿って延びる細長い本体302を有している。器具300はまた、作動シャフト304と、切削ブレード306と、作動ノブ308と、ハンドル310と、スライドインジケータ312と、保持クリップ314と、を有している。
【0029】
本体302の近位端部は、ドリル(例えば、電気式又は空気圧式の外科用ドリル)のチャックに結合するための、切子状の嵌め合い境界面又はシャンク316を定めている。本体302の遠位端部は、順方向又は前方向に対象に穴を切削するための先鋭チップ318を定めている。チップ318は、任意の様々な形状又は構成を有し得、前方切削の性能に関して最適化され得る。本体302はまた空洞320を有し、この空洞320の中で、切削ブレード306が横断ピン322を介して旋回式で装着されている。切削ブレード306は、空洞320の開口部を通じて選択的に配備され又は後退され得る。換言すれば、切削ブレード306は、ブレードが開口部を通じて突出する、図3Bに示すような配備構成、及びブレードが開口部を通じて突出しない後退構成に配置され得る。器具300が切削操作で使用されるときに形成される穴の直径を調整するために、ブレード306が開口部から突出する程度が調整され得る。切削ブレード306は、任意の様々な形状又は構成を有し得、逆方向切削及び/又は順方向切削の性能に関して最適化され得る。
【0030】
作動シャフト304は、本体302の内部ルーメンを通じて延び、本体に対して縦方向に平行移動可能である。作動シャフト304の遠位端部は、様々な方式のいずれかで切削ブレード306に結合され得る。例えば、図3Bに示すように、作動シャフト304の遠位端部は、(例えば、器具200に関連して上で議論したのと同じ様式で)切削ブレード306に結合される銃剣形状のチップを定めている。操作の際、作動シャフト304が本体302に対して近位側に平行移動することによって、ブレード306は横断ピン322を中心として旋回し、開口部を通じて配備されることになる。作動シャフト304が近位側に平行移動される程度によって、切削ブレード306が開口部から突出する程度が制御される。作動シャフト304が本体302に対して遠位方向に平行移動することによって、ブレード306は横断ピン322を中心として反対方向に旋回し、空洞320の中へと後退することになる。
【0031】
図3C〜3Dに示すように、本体302の円柱状近位部分は、作動シャフト304の第1のタブ部分330がスライド可能に配置される第1の縦スロット328を定めている。スロット328は、タブ330の長さよりも長い長さを有し、そのため、ブレード306が完全に配備される近位位置と、ブレードが完全に後退される遠位位置との間で、タブがスロット内で縦方向にスライドし得るようになっている。スロット328の長さはこのようにして、ブレード306が配備され得る直径の範囲を、したがってブレードによって形成され得るトンネル直径の範囲を、定めている。
【0032】
本体302の円柱状近位部分はまた、作動シャフト304の第2のタブ部分334がスライド可能に配置される第2の縦スロット332を定めている。作動ノブ308は、本体302の円柱状近位部分に被さって回転可能に配置され、そのため、作動ノブのねじ付き内部表面は作動シャフト304の第2のタブ334のねじ付き表面と係合するようになっている。
【0033】
作動ノブ308は、実質的に円筒状であり、スライドインジケータ312の下方部分がスライド可能に配設される大ピッチの雄ねじ342を有している。作動ノブがハンドルに対して回転可能となるように、またスライドインジケータ312の上方部分がハンドルに形成されたスロット344にスライド可能に配設されるように、作動ノブ308はハンドル310内に受容される。作動ノブを本体に対して一定の縦方向位置に維持するために、ハンドル310及び作動ノブ308は、近位保持クリップ314と本体302上に形成されたショルダー340との間に挟み付けられる。ハンドル部分310は、任意選択により、本体302に対して回転可能に固定され得る。操作の際、作動ノブ308が本体302及びハンドル部分310に対して回転することにより、作動シャフト304のねじ山は作動ノブのねじ山に沿って進み、それによって作動シャフトが本体に対して縦方向に平行移動することになる。この縦方向の平行移動の近位限界及び遠位限界は、作動シャフト304に形成された第1のタブ330に対する第2のスロット328の大きさによって定められる。作動ノブ308は、縦軸Lを中心として第1の方向に回転して、作動シャフト304を近位側に引き、ブレード306を配備し、かつ/又は切削直径を増加させ得る。作動ノブ308は、縦軸Lを中心として、反対の第2の方向に回転して、作動シャフト304を遠位側に押し、ブレード306を後退させ、かつ/又は切削直径を低減させ得る。
【0034】
器具300はまた、ブレードの完全配備位置と完全後退位置との間に多数の中間停止点を定める。作動ノブ380が回転するとき、スライドインジケータ312は、大ピッチのねじ山342の中で進む。インジケータ312は、作動ノブ308が回転するとインジケータがハンドルに対して縦方向に平行移動するように、ハンドル310に形成されたスロット344に捕獲される。インジケータ312は、選択された切削直径を示す主突出部313を有している。インジケータ312はまた、主突出部に隣接する第2の突出部315を有しており、第2の突出部315は、作動ノブ308が回転するとき、スロット344の複数の側方ブランチと整合する。第2の突出部315が側方ブランチ346にクリック止めされると、ユーザーは、次の直径設定に到達したという触覚フィードバックを受け取る。ブレード配備の程度に関してユーザーに指示を与えるために、マーキングがハンドル310上に印刷されるか、あるいは別様に形成され得る。図示の実施形態において、図3Eに示すように、利用可能な切削直径の設定をミリメートル単位で表現するために(例えば、完全後退位置における3.5mmの直径と、様々な配備位置に対する、1ミリメートルの増分における6〜12mmの直径)、数値の目盛りが含められている。図3Eにも示すように、側方スロット346は、各1ミリメートルの設定間における0.5ミリメートルの増分を定め得る。これらの利用可能な直径は単に例示的なものであり、また以下で議論するように、器具300は、多様な直径のうちのいずれか又は直径の範囲をもたらすように構成され得ることが理解されよう。
【0035】
器具300を使用する例示的な方法において、器具をドリルに結合し、作動ハンドル308を回転させてブレード306を完全後退位置に配置することによって、器具は使用に備え得る。外科医が段付き開口部を形成する準備ができると、外科医はドリルを作動させて、前方切削チップ318で開口部の減少した直径部分を形成する。外科医は次いで、スライドインジケータ312及びハンドル310によって所望の穴の直径が示されるまで、作動ノブ308を回転させる。外科医は次いで、ドリルを作動させて、段付き開口部の拡大した直径部分を逆方向切削する。最後に、外科医は作動ノブ308を回転させて、切削ブレード306を完全後退位置に復帰させ、器具300を患者から引き抜く。器具300はまた、更に以下で説明するように、他の例示的な方法でも使用され得る。
【0036】
図4A〜4Fは切削器具400の別の例示的な実施形態を示している。
【0037】
図示のように、器具400は全体的に、近位端部402pから遠位端部402dへと縦軸Lに沿って延びる細長い本体402を有している。器具400はまた、作動シャフト404と、切削ブレード406と、作動ノブ408と、ディスクハンドル410と、ストップリング412と、調整ノブ448と、を有している。
【0038】
本体402の近位端部は、ドリル(例えば、電気式又は空気圧式の外科用ドリル)のチャックに結合するための、切子状の嵌め合い境界面又はシャンク416を定めている。本体402の遠位端部は、順方向又は前方向に対象に穴を開けるための先鋭チップ418を定めている。チップ418は、任意の様々な形状又は構成を有し得、前方切削の性能に関して最適化され得る。本体402はまた空洞420を有し、この空洞420の中で、切削ブレード406が横断ピン422を介して旋回式で装着されている。切削ブレード406は、空洞420の開口部を通じて選択的に配備され又は後退され得る。換言すれば、切削ブレード406は、ブレードが開口部を通じて突出する、図4Bに示すような配備構成、及びブレードが開口部を通じて突出しない後退構成に配置され得る。器具400が切削操作で使用されるときに形成される穴の直径を調整するために、ブレード406が開口部から突出する程度が調整され得る。切削ブレード406は、任意の様々な形状又は構成を有し得、逆方向切削及び/又は順方向切削の性能に関して最適化され得る。
【0039】
作動シャフト404は、本体402の内部ルーメンを通じて延び、本体に対して縦方向に平行移動可能である。作動シャフト404の遠位端部は、様々な方式のうちのいずれかで切削ブレード406に結合され得る。例えば、図4Bに示すように、作動シャフト404の遠位端部は、(例えば、器具200に関連して上で議論したのと同じ様式で)切削ブレード406に結合される銃剣形状のチップを定めている。操作の際、作動シャフト404が本体402に対して近位方向に平行移動することによって、ブレード406は横断ピン422を中心として旋回し、開口部を通じて配備されることになる。作動シャフト404が近位側に平行移動される程度によって、切削ブレード406が開口部から突出する程度が制御される。作動シャフト404が本体402に対して遠位方向に平行移動することによって、ブレード406は横断ピン422を中心として反対方向に旋回し、空洞の中へと後退されることになる。
【0040】
図4C〜4Eに示すように、本体402の円柱状近位部分は、作動シャフト404の第1のタブ部分430がスライド可能に配置される第1の縦スロット428を定めている。スロット428は、タブ430の長さよりも長い長さを有し、そのため、ブレード406が完全に配備される近位位置と、ブレードが完全に後退される遠位位置との間で、タブがスロット内で縦方向にスライドし得るようになっている。スロット428の長さはこのようにして、ブレード406が配備され得る直径の範囲を、したがってブレードによって形成され得るトンネル直径の範囲を定めている。ストップリング412は、本体402のねじ付き外側部分450にねじ係合されるねじ付き内側表面を有している。図4Eに示すように、ストップリング412は、タブ430の近位移動限界がストップリングによって定められるように、スロット428の少なくとも近位部分を被覆している。横断ピン452がストップリング412に対する調整ノブ448の回転位置を固定し、そのため、調整ノブが回転することは、ストップリングを本体402に対して回転させるのに効果的となっている。そのような回転により、ストップリング412は本体402に沿って縦方向に平行移動することになる。したがって、調整ノブ448を、縦軸Lを中心として第1の方向に回転させることにより、ストップリング412は遠位側に前進されて、スロット428の長さを効果的に減じ、それによって最大切削直径を低減する。縦軸Lを中心として調整ノブ448を反対の第2の方向に回転させることにより、ストップリング412は近位側に前進されて、スロット428の長さを効果的に増大させ、それによって最大切削直径を増大させる。
【0041】
本体402の円柱状近位部分はまた、作動シャフト404の第2のタブ部分434がスライド可能に配置される第2の縦スロット432を定めている。作動ノブ408は、本体402の円柱状近位部分に被さって回転可能に配置され、そのため、作動ノブに装着された内管454のねじ付き内側表面は、作動シャフト404の第2のタブ434のねじ付き表面と係合するようになっている。
【0042】
作動ノブを本体402に対して一定の縦方向位置に維持するために、作動ノブ408は、本体402の溝438と係合する近位保持クリップ414と、ディスクハンドル410との間に挟み付けられる。操作の際、作動ノブ408が本体402及びハンドル部分410に対して回転することにより、作動シャフト404のねじ山は作動ノブ408のねじ山に沿って進み、それによって作動シャフトが本体に対して縦方向に平行移動することになる。この縦方向の平行移動の近位限界は、第1のスロット428から張り出すストップリング412の縦方向位置によって定められる。作動ノブ408は、縦軸Lを中心として第1の方向に回転して、作動シャフト404を近位側に引き、ブレード406を配備し、かつ/又は切削直径を増加させ得る。作動ノブ408はまた、縦軸Lを中心として、反対の第2の方向に回転して、作動シャフト404を遠位側に押し、ブレード406を後退させ、かつ/又は切削直径を低減させ得る。
【0043】
上記のように、ストップリング412の位置は、調整ノブ448を本体402及びディスクハンドル410に対して回転させることによって調整され得る。図4D〜4Fに示すように、調整ノブ448は、調整ノブの近位側端面から近位側に延びるピン456を有している。ピン456は、ディスクハンドル410に形成された複数の穴458のうちのいずれかに受容され得る。穴458の各々は、(例えば、ピン456が、ある穴から隣接する穴へと移動する結果、その隣接の方向に応じて、切削直径が0.5mm増加又は減少するように)所定の切削直径に割り出しされている。直径設定を調整するために、調整ノブ448は、ピン456をディスクハンドル410の穴458から引き抜くように遠位側に付勢され得る。調整ノブ448は次いで、所望の設定(調整ノブ上のマーキング又はディスクハンドル410上の指示矢印460によって指示される)へと回転され得る。最後に、調整ノブ448は、ディスクハンドル410に形成された複数の穴458のうちの1つにピン456が係合するように、近位側に付勢され得る。調整ノブ448を近位方向に付勢するために、付勢ばね462が設けられ得る。ピン456が穴458のうちの1つに着座すると、ピン456は、調整ノブ448が回転するのを防止し、ストップリング412が誤って移動しないことを確実にする。これにより、器具400は切削操作の全体を通じて所望の直径に依然として設定されるようになる。付勢ばね462は調整ノブ448を圧迫して、調整ノブを遠位側に押すことによって、ユーザーがばね力に打ち勝つまでピン456を穴458に着座した状態に保つ。付勢ばね462に遠位ストッパを設けるために、遠位側のCクリップ464が本体402に取り付けられ得る。
【0044】
器具400を使用する例示的な方法において、器具を外科医又は他のユーザーに手渡す前に、外科技師は「バックテーブル」上で器具を使用に備えることができる。この準備は、上述のように調整ノブ448を使用して切削直径を設定し、作動ノブ408を回転させてブレード406を完全後退位置に配置することを含み得る。外科医が段付き開口部を形成する準備ができると、外科医は、器具400が結合されたドリルを作動させて、前方切削チップ418で開口部の減少した直径部分を形成する。次いで、更なる回転が不可能になり、調整ノブ448を使用する外科技師によってブレード406が所定の限界設定まで配備されたことが示唆されるまで、外科医は作動ノブ408を回転させる。外科医は次いで、ドリルを作動させて、段付き開口部の拡大された直径部分を逆方向切削する。最後に、外科医は作動ハンドル408を回転させて、切削ブレード406を完全後退位置に復帰させ、器具400を患者から引き抜く。したがって、外科医は、器具が患者の体内にある間に器具400を所望の直径に設定することを気にかける必要はない。むしろ、所望の直径は事前設定され、したがって外科医は単純に、ストップリング412がタブ430によって係合されて、所望の切削直径に確実に達するまで、作動ノブ408を回すことができる。換言すれば、外科医は、ブレード406を配備するときに目盛り又は較正値(calibrations)を見る必要がない。器具400はまた、更に以下で説明するように、他の例示的な方法でも使用され得る。
【0045】
図5A〜5Fは、切削器具500の別の例示的な実施形態を示している。
【0046】
図示のように、器具500は全体的に、近位端部502pから遠位端部502dへと縦軸Lに沿って延びる細長い本体502を有している。器具500はまた、作動シャフト504と、切削ブレード506と、作動ノブ508と、ディスクハンドル510と、ストップリング512と、調整ノブ548と、を有している。
【0047】
本体502の近位端部は、ドリル(例えば、電気式又は空気圧式の外科用ドリル)のチャックに結合するための、切子状の嵌め合い境界面又はシャンク516を定めている。本体502の遠位端部は、順方向又は前方向に対象に穴を開けるための先鋭チップ518を定めている。チップ518は、任意の様々な形状又は構成を有し得、前方切削の性能に関して最適化され得る。本体502はまた空洞520を有し、この空洞520の中で、切削ブレード506が第1及び第2のサイドピン522を介して旋回式で装着されている。切削ブレード506は、空洞520の開口部を通じて選択的に配備又は後退され得る。換言すれば、切削ブレード506は、ブレードが開口部を通じて突出する、図5Bに示すような配備構成、及びブレードが開口部を通じて突出しない後退構成に配置され得る。器具500が切削操作で使用されるときに形成される穴の直径を調整するために、ブレード506が開口部から突出する程度が調整され得る。切削ブレード506は、任意の様々な形状又は構成を有し得、逆方向切削及び/又は順方向切削の性能に関して最適化され得る。
【0048】
作動シャフト504は、本体502の内部ルーメンを通じて延び、本体に対して縦方向に平行移動可能である。作動シャフト504の遠位端部は、様々な方式のうちのいずれかで切削ブレード506に結合され得る。例えば、作動シャフト504は、器具200に関連して上で議論した方式と同じ方式で、切削ブレード506に結合され得る。しかしながら、図5B〜5Cは、作動シャフト504を切削ブレード506に結合するための別の機構を示している。図5B〜5Cに示す機構は、上述した切削器具200、300、400のいずれかと共に使用され得ることが理解されよう。図示のように、切削ブレード506は、作動シャフト504の遠位端部が受容される近位ヨーク部分を定めている。ヨーク部分の各フォークは曲線カムスロット566を定めている。横断ピン568が、作動シャフト504の遠位端部に形成された穴を通じて、及び切削ブレード506のカムスロット566の各々を通じて、延びている。操作の際、作動シャフト504が本体502に対して近位側に平行移動することによって、横断ピン568はカムスロット566に沿ってスライドすることになり、それによってブレード506は第1及び第2のサイドピン522を中心として旋回し、開口部を通じて配備されることになる。作動シャフト504が近位側に平行移動される程度によって、切削ブレード506が開口部から突出する程度が制御される。作動シャフト504が本体502に対して遠位側に平行移動することによって、ブレード506は第1及び第2のサイドピン522を中心として反対方向に旋回し、空洞520の中へと後退されることになる。
【0049】
図5D〜5Fに示すように、本体502の円柱状近位部分は、作動シャフト504の第1のタブ部分530がスライド可能に配置される第1の縦スロット528を定めている。スロット528は、タブ530の長さよりも長い長さを有し、そのため、ブレード506が完全に配備される近位位置と、ブレードが完全に後退される遠位位置との間で、タブがスロット内で縦方向にスライドし得るようになっている。スロット528の長さはこのようにして、ブレード506が配備され得る直径の範囲を、したがってブレードによって形成され得るトンネル直径の範囲を、定めている。図5Fに示すように、ストップリング512は段付きの遠位側向き表面570を有している。したがって、ストップリング512の長さは、ストップリングの周囲に沿った複数の別個の径方向位置の各々において異なっている。図5Fに示すように、ストップリング512は、タブ530の近位移動限界がストップリングによって定められるように、スロット528の少なくとも近位部分を被覆している。スロット528の有効長はしたがって、ストップリング512のどの段がスロットと整列されるかを変更することによって変化され得る。図示のストップリング512は、ストップリングの長さが最大となる第1の段572を有している。ストップリング512の長さは、矢印A1の方向に移動すると、連続する各段ごとに低減される。一対のばねクリップ574が、ストップリング512に対する調整ノブ548の回転位置を固定し、そのため、調整ノブが回転することは、ストップリングを本体502に対して回転させるのに効果的となっている。したがって、縦軸Lを中心として調整ノブ548を第1の方向に回転させることにより、ストップリング512のより背の高い段がスロット528と整列されて、スロットの長さが効果的に減じられ、それによって最大切削直径が低減される。したがって、縦軸Lを中心として調整ノブ548を反対の第2の方向に回転させることにより、ストップリング512のより背の低い段がスロット528と整列されて、スロットの長さが効果的に増加され、それによって最大切削直径が増加される。
【0050】
場合によっては、器具400のねじ付きストップリングなど、他のタイプのストップリングと比較して、器具500に使用されるタイプの段付きストップリングの公差を制御する方がより容易となり得る。したがって段付きストップリングは、場合によっては、より均一な回転とより容易な較正をもたらし得る。
【0051】
本体502の円柱状近位部分はまた、作動シャフト504の上方及び下方の第2のタブ部分534がスライド可能に配置される第2の縦スロット532を定めている。作動ノブ508は、本体502の円柱状近位部分に被さって回転可能に配置され、そのため、作動ノブのねじ付き内側表面は作動シャフト504の上方及び下方の第2のタブ534のねじ付き表面と係合するようになっている。
【0052】
作動ノブを本体502に対して一定の縦方向位置に維持するために、作動ノブ508は、近位保持クリップ514とディスクハンドル510との間に挟み付けられる。操作の際、作動ノブ508が本体502及びハンドル部分510に対して回転することにより、作動シャフト504のねじ山は作動ノブのねじ山に沿って進むことになり、それによって作動シャフトが本体に対して縦方向に平行移動することになる。この縦方向の平行移動の近位限界は、第1のスロット528に被さって配置されるストップリング512の段によって定められる。作動ノブ508は、縦軸Lを中心として第1の方向に回転して、作動シャフト504を近位側に引き、ブレード506を配備し、かつ/又は切削直径を増加させ得る。作動ノブ508はまた、縦軸Lを中心として、反対の第2の方向に回転して、作動シャフト504を遠位側に押し、ブレード506を後退させ、かつ/又は切削直径を低減させ得る。
【0053】
上記のように、ストップリング512の位置は、調整ノブ548を本体502及びディスクハンドル510に対して回転させることによって調整され得る。図5Eに示すように、調整ノブ548は、調整ノブの近位側端面から近位側に延びるピン556を有している。ピン556は、ディスクハンドル510に形成された複数の穴558のうちのいずれかに受容され得る。穴558の各々は、(例えば、ピン556が、ある穴から隣接する穴へと移動する結果、その隣接の方向に応じて、切削直径が0.5mm増加又は減少するように)所定の切削直径に割り出しされている。直径設定を調整するために、調整ノブ548は、ピン556をディスクハンドル510の穴558から引き抜くように遠位側に付勢され得る。調整ノブ548を次いで、所望の設定(調整ノブ上のマーキング又はディスクハンドル510上の指示矢印560によって指示される)へと回転させることができる。最後に、調整ノブ548は、ディスクハンドル510に形成された複数の穴558のうちの1つにピン556が係合するように、近位側に付勢され得る。調整ノブ548を近位方向に付勢するために、付勢ばね562を設けることができる。ピン556が穴558のうちの1つに着座されると、ピン556は、調整ノブ548が回転するのを防止し、ストップリング5112が誤って移動しないことを確実にする。これにより、器具500は切削操作の全体を通じて所望の直径に依然として設定されることが確実になる。付勢ばね562は調整ノブ548を圧迫して、調整ノブを遠位側に押すことによってユーザーがばね力に打ち勝つまでピン556を穴558に着座した状態に保つ。付勢ばね562に遠位ストッパを設けるために、遠位側のCクリップ564を本体502に取り付けることができる。
【0054】
器具500を使用する例示的な方法において、器具は、器具を外科医に手渡す前に、外科技師は「バックテーブル」上で器具を使用に備えることができる。この準備は、上述のように調整ノブ548を使用して逆方向切削直径を設定し、作動ノブ508を回転させてブレード506を完全後退位置に配置することを含み得る。外科医が段付き開口部を形成する準備ができると、外科医は、器具500が結合されたドリルを作動させて、前方切削チップ518で開口部の減少された直径部分を形成する。次いで、更なる回転が不可能になり、調整ノブ548を使用する外科技師によってブレード506が所定の限界設定まで配備されたことが示唆されるまで、外科医は作動ノブ508を回転させる。外科医は次いで、ドリルを作動させて、段付き開口部の拡大した直径部分を逆方向切削する。最後に、外科医は作動ハンドル508を回転させて、切削ブレード506を完全後退位置に復帰させ、器具500を患者から引き抜く。したがって、外科医は、器具が患者の体内にある間に器具500を所望の直径に設定することを気にかける必要はない。むしろ、所望の直径は事前設定され、したがって外科医は単純に、ストップリング512がタブ530によって係合されて、所望の切削直径に確実に達するまで、作動ノブ508を回し得る。換言すれば、外科医は、ブレード506を配備するときに目盛り又は較正値(calibrations)を見る必要がない。器具500はまた、更に以下で説明するように、他の例示的な方法でも使用され得る。
【0055】
図6A〜6Fは切削器具600の別の例示的な実施形態を示している。
【0056】
図示のように、器具600は全体的に、近位端部602pから遠位端部602dへと縦軸Lに沿って延びる細長い本体602を有している。器具600はまた、作動シャフト604と、切削ブレード606と、作動ノブ608と、段付き停止表面670を備えた調整リング648と、前方ハンドル610と、を有している。
【0057】
本体602の近位端部は、ドリル(例えば、電気式又は空気圧式の外科用ドリル)のチャックに結合するための、切子状の嵌め合い境界面又はシャンク616を定めている。本体602の遠位端部は、順方向又は前方向に対象に穴を開けるための先鋭チップ618を定めている。チップ618は、任意の様々な形状又は構成を有し得、前方切削の性能に関して最適化され得る。本体602はまた空洞620を有し、この空洞620の中で、切削ブレード606が横断ピン622を介して旋回式で装着されている。切削ブレード606は、空洞620の開口部を通じて選択的に配備又は後退され得る。換言すれば、切削ブレード606は、ブレードが開口部を通じて突出する配備構成、及びブレードが開口部を通じて突出しない後退構成に配置され得る。器具600が切削操作で使用されるときに形成される穴の直径を調整するために、ブレード606が開口部から突出する程度が調整され得る。切削ブレード606は、任意の様々な形状又は構成を有し得、逆方向切削及び/又は順方向切削の性能に関して最適化され得る。
【0058】
作動シャフト604は、本体602の内部ルーメンを通じて延び、本体に対して縦方向に平行移動可能である。作動シャフト604は、有利にも更なる強度と剛性をもたらすと共に使用中の変形を低減し得る、中実の円柱ロッドであってもよい。作動シャフト604の遠位端部は、様々な方式のうちのいずれかで切削ブレード606に結合され得る。例えば、図6B〜6Cに示すように、作動シャフト604を切削ブレード606に結合するために、リンク組立体が使用され得る。図示のように、切削ブレード606は、作動シャフト676の近位端部が受容される近位ヨーク部分を定めている。リンクバー676の遠位端部は、第1の旋回ピン678によって切削ブレード606に結合される。リンクバー676の近位端部は、作動シャフト604の遠位端部に形成されたヨークに受容され、このヨークに第2の旋回ピン680によって結合される。リンクバー676は、横断ピン622から離れた位置でブレード606に結合され、そのため、リンクバーの縦方向の平行移動によってブレードが横断ピンを中心として回転するようになっている。操作の際、作動シャフト604が本体602に対して近位側に平行移動することにより、リンクバー676は近位方向に引かれ、ブレード606は横断ピン622を中心として後退位置へと回転することになる。作動シャフト604が本体602に対して遠位側に平行移動することにより、リンクバー676は遠位方向に押され、ブレード606は横断ピン622を中心として配備位置へと回転することになる。作動シャフト604が遠位側に平行移動される程度によって、切削ブレード606が開口部から突出する程度が制御される。図示のタイプのリンク機構は有利にも、切削操作で配備及び使用されるとき、ブレードに遊びをほとんど伴わない、より強固なブレード機構をもたらし得る。また、第1の旋回ピン678及び第2の旋回ピン680が挿入される図示の円筒状開口部は、細長いカムスロット又は他の噛み合い機構と比べて、厳密な公差で製造することがより容易となり得る。更に、図示の実施形態において、ブレードが逆方向切削に使用されるときにブレード606にかかる圧力が、作動シャフト604を近位側に付勢する傾向がある。この付勢は、作動シャフト604と作動ノブ608とのねじ係合によって抗されるが、このねじ係合は、切削中のブレード606の遊びを低減又は排除するように、堅固な係合をもたらす。
【0059】
図6D〜6Fに示すように、本体602の円柱状近位部分は、作動シャフト604の第1のタブ部分630がスライド可能に配置される第1の縦スロット628を定めている。スロット628は、タブ630の長さよりも長い長さを有し、そのため、ブレード606を完全に後退させる近位位置と、ブレードを完全に配備させる遠位位置との間で、タブがスロット内で縦方向にスライドし得るようになっている。スロット628の長さはこのようにして、ブレード606が配備され得る直径の範囲を、したがってブレードによって形成され得るトンネル直径の範囲を定めている。図6Eに示すように、調整リング648は段付きの近位側表面670を有している。したがって、調整リング648の長さは、停止表面670の周囲に沿った複数の別個の径方向位置の各々において異なっている。図6Fに示すように、調整リング648は、タブ630の遠位移動限界が停止表面670によって定められるように、スロット628の少なくとも遠位部分を被覆している。スロット628の有効長はしたがって、停止表面670のどの段をスロットと整列させるかを変更することによって変化され得る。図示の停止表面670は、調整リング648の長さが最大となる第1の段672を有している。調整リング648の長さは、矢印A1の方向に移動すると、連続する各段ごとに低減される。縦軸Lを中心として調整リング648を第1の方向に回転させることにより、停止表面670のより背の高い段をスロット628と整列させて、スロットの長さを効果的に減じ、それによって最大切削直径を低減させる。縦軸Lを中心として調整リング648を反対の第2の方向に回転させることにより、停止表面670のより背の低い段をスロット628と整列させて、スロットの長さを効果的に増加させ、それによって最大切削直径を増加させる。
【0060】
本体602の円柱状近位部分はまた、作動シャフト604の上方及び下方の第2のタブ部分634がスライド可能に配置される、上部及び下部の第2の縦スロット632を定めている。作動ノブ608は、本体602の円柱状近位部分に被さって回転可能に配置され、そのため、作動ノブのねじ付き内側表面は作動シャフト604の上方及び下方の第2のタブ634のねじ付き表面と係合するようになっている。
【0061】
作動ノブを本体に対して一定の縦方向位置に維持するために、作動ノブ608は、近位保持クリップ614と本体602のショルダー640との間に挟み付けられる。操作の際、作動ノブ608を本体602及び前方ハンドル部分610(ハンドル部分が本体に対して回転するのを防止するためにピン留めされる)に対して回転させることにより、作動シャフト604のねじ山は作動ノブのねじ山に沿って進むことになり、このようにして作動シャフトは本体に対して縦方向に平行移動することになる。この縦方向の平行移動の遠位限界は、停止表面670のどの段を第1のスロット628と整列させるかによって定められる。作動ノブ608は、縦軸Lを中心として第1の方向に回転して、作動シャフト604を近位側に引き、ブレード606を後退させ、かつ/又は切削直径を低減させ得る。作動ノブ608はまた、縦軸Lを中心として、反対の第2の方向に回転して、作動シャフト604を遠位側に押し、ブレード606を配備し、かつ/又は切削直径を増加させ得る。
【0062】
上記のように、停止表面670の位置は、調整リング648を本体602及び前方ハンドル610に対して回転させることによって調整され得る。図6Eに示すように、ハンドル610は、ハンドルの近位側端面から近位側に延びるピン656を有している。ピン656は、調整リング648に形成された複数の穴658のうちのいずれかに受容され得る。穴658の各々は、(例えば、ピン656が、ある穴から隣接する穴へと移動する結果、その隣接の方向に応じて、切削直径が0.5mm増加又は減少するように)所定の切削直径に割り出しされている。直径設定を調整するために、調整リング648は、ピン656を調整リングの穴658から引き抜くように遠位側に付勢され得る。調整リング648は次いで、所望の設定(調整リング上のマーキング又は前方ハンドル610上の指示矢印660によって指示され得る)へと回転し得る。最後に、調整リング648は、調整リングに形成された複数の穴658のうちの1つにピン656が係合するように、近位側に付勢され得る。調整リング648を遠位方向に付勢するために、付勢ばね662が設けられ得る。
【0063】
器具600を使用する例示的な方法において、器具は、器具を外科医に手渡す前に、外科技師は「バックテーブル」上で器具を使用に備えることができる。この準備は、上述のように調整リング648を使用して逆方向切削直径を設定し、作動ハンドル608を回転させてブレード606を完全後退位置に配置することを含み得る。外科医が段付き開口部を形成する準備ができると、外科医は、器具600が結合されたドリルを作動させて、前方切削チップ618で開口部の減少された直径部分を形成する。次いで、更なる回転が不可能になり、調整リング648を使用する外科技師によってブレード606が所定の限界設定まで配備されたことが示唆されるまで、外科医は作動ハンドル608を回転させる。外科医は次いで、ドリルを作動させて、段付き開口部の拡大された直径部分を逆方向切削する。最後に、外科医は作動ハンドル608を回転させて、切削ブレード606を完全後退位置に復帰させ、器具600を患者から引き抜く。したがって、外科医は、器具が患者の体内にある間に器具600を所望の直径に設定することを気にかける必要はない。むしろ、所望の直径は事前設定され、したがって外科医は単純に、ストッパ670がタブ630によって係合されて、所望の切削直径に確実に達するまで、作動ノブ608を回すことができる。換言すれば、外科医は、ブレード606を配備するときに目盛り又は較正値(calibrations)を見る必要がない。器具600はまた、更に以下で説明するように、他の例示的な方法でも使用され得る。
【0064】
図7A〜7Gは切削器具700の別の例示的な実施形態を示している。
【0065】
図示のように、器具700は全体的に、近位端部702pから遠位端部702dへと縦軸Lに沿って延びる細長い本体702を有している。器具700はまた、作動シャフト704と、切削ブレード706と、トルクリミッタ782を備えた作動ノブ708と、段付き停止表面770を備えた調整リング748と、前方ハンドル710と、を有している。
【0066】
本体702の近位端部は、ドリル(例えば、電気式又は空気圧式の外科用ドリル)のチャックに結合するための、切子状の嵌め合い境界面又はシャンク716を定めている。本体702の遠位端部は、順方向又は前方向に被験者に穴を開けるための先鋭チップ718を定めている。チップ718は、任意の様々な形状又は構成を有し得、前方切削の性能に関して最適化され得る。本体702はまた空洞720を有し、この空洞720の中で、切削ブレード706が横断ピン722を介して旋回式で装着されている。切削ブレード706は、空洞720の開口部を通じて選択的に配備又は後退され得る。換言すれば、切削ブレード706は、ブレードが開口部を通じて突出する配備構成、及びブレードが開口部を通じて突出しない後退構成に配置され得る。器具700を切削操作で使用するときに形成される穴の直径を調整するために、ブレード706が開口部から突出する程度が調整され得る。切削ブレード706は、任意の様々な形状又は構成を有し得、逆方向切削及び/又は順方向切削の性能に関して最適化され得る。
【0067】
作動シャフト704は、本体702の内部ルーメンを通じて延び、本体に対して縦方向に平行移動可能である。作動シャフト704は、有利にも更なる強度と剛性をもたらすと共に使用中の変形を低減し得る、中実の円柱ロッドであってもよい。作動シャフト704の遠位端部は、様々な方式のいずれかで切削ブレード706に結合され得る。例えば、作動シャフト704は、器具600に関連して上述したようなリンク組立体によって切削ブレード706に結合される遠位端部を有し得る。操作の際、作動シャフト704が本体702に対して近位側に平行移動することにより、ブレード706は近位方向に引かれ、ブレードは横断ピン722を中心として後退位置へと回転することになる。作動シャフト704が本体702に対して遠位側に平行移動することにより、ブレード706は遠位方向に押され、ブレードは横断ピン722を中心として配備位置へと回転することになる。作動シャフト704が遠位側に平行移動する程度によって、切削ブレード706が開口部から突出する程度が制御される。
【0068】
図7C〜7D及び7Gに示すように、本体702の円柱状近位部分は、作動シャフト704の第1のタブ部分730がスライド可能に配置される第1の縦スロット728を定めている。スロット728は、タブ730の長さよりも長い長さを有し、そのため、ブレード706を完全に後退させる近位位置と、ブレードを完全に配備させる遠位位置との間で、タブがスロット内で縦方向にスライドし得るようになっている。スロット728の長さはこのようにして、ブレード706が配備され得る直径の範囲を、したがってブレードによって形成され得るトンネル直径の範囲を定めている。図7Gに示すように、調整リング748は段付きの近位側表面770を有している。したがって、調整リング748の長さは、停止表面770の周囲に沿った複数の別個の径方向位置の各々において異なっている。図7Gに示すように、調整リング748は、タブ730の遠位移動限界が停止表面770によって定められるように、スロット728の少なくとも遠位部分を被覆している。スロット728の有効長はしたがって、停止表面770のどの段をスロットと整列させるかを変更することによって変化され得る。図示の停止表面770は、調整リング748の長さが最大となる第1の段772を有している。調整リング748の長さは、矢印A1の方向に移動すると、連続する各段ごとに低減される。縦軸Lを中心として調整リング748を第1の方向に回転させることにより、停止表面770のより背の高い段をスロット728と整列させて、スロットの長さを効果的に減じ、それによって最大切削直径を低減させる。縦軸Lを中心として調整リング748を反対の第2の方向に回転させることにより、停止表面770のより背の低い段をスロット728と整列させて、スロットの長さを効果的に増加させ、それによって最大切削直径を増加させる。
【0069】
本体702の円柱状近位部分はまた、作動シャフト704の上方及び下方の第2のタブ部分734がスライド可能に配置される、上部及び下部の第2の縦スロット732を定めている。作動ノブ708はトルクリミッタ782に結合され、トルクリミッタ782は、本体702の円柱状近位部分に被さって回転可能に配置され、そのため、トルクリミッタのねじ付き内側表面は作動シャフト704の上方及び下方の第2のタブ734のねじ付き表面と係合するようになっている。
【0070】
作動ノブ708は、近位保持クリップ714と本体702のショルダー740との間に挟み付けられる。操作の際、作動ノブ708を本体702及び前方ハンドル部分710(ハンドル部分が本体に対して回転するのを防止するためにピン留めされる)に対して回転させることにより、作動シャフト704のねじ山はトルクリミッタ782のねじ山に沿って進むことになり、このようにして作動シャフトは本体に対して縦方向に平行移動することになる。この縦方向の平行移動の遠位限界は、停止表面770のどの段を第1のスロット728と整列させるかによって定められる。作動ノブ708は、縦軸Lを中心として第1の方向に回転して、作動シャフト704を近位側に引き、ブレード706を後退させ、かつ/又は切削直径を低減し得る。作動ノブ708はまた、縦軸Lを中心として、反対の第2の方向に回転して、作動シャフト704を遠位側に押し、ブレード706を配備し、かつ/又は切削直径を増加させ得る。
【0071】
図7E〜7Fに示すように、トルクリミッタ782は、作動ノブ708に形成された近位円筒状凹部内に受容され、トルクリミッタの遠位側向き表面に形成された一連の歯784が、作動ノブの凹部に形成された対応する一連の歯786と係合するようになっている。作動ノブ708が回転し、切削ブレード706が完全配備位置に接近又は到達すると、作動シャフト704の第1のタブ730は停止表面770と係合して、トルクリミッタ782の更なる回転を防止する。ユーザーが引き続きトルクを作動ノブ708に加えた場合、歯784、786は一時的に分離し、作動ノブ708はトルクリミッタ782に対してスリップする。このスリップは、ブレードが完全配備位置に到達したことをユーザーに示唆する触覚及び/又は聴覚フィードバックを発生し得る。加えて、このスリップは、ブレードが完全配備位置に到達した後に過剰なトルクが加えられる場合に生じ得る、器具700の損傷を防止し得る。歯784、786が分離する閾値トルクは、付勢ばね762のばね力、及び/又は歯の形状、ランプ角、若しくは他の性質を変更することによって、任意の所望の値に設定することができる。いくつかの実施形態において、器具700は、ブレード706が完全後退位置に接近又は到達したときに、同様のトルク制限機能を設け得る。
【0072】
上記のように、停止表面770の位置は、調整リング748を本体702及び前方ハンドル710に対して回転させることによって調整され得る。図7D〜7Eに示すように、ハンドル710は、ハンドルの近位側端面から近位側に延びる複数(図示の実施形態においては4つ)の突出部756を有している。突出部756は、調整リング748に形成された複数の穴又は戻り止め758のうちのいずれかに受容され得る。穴758の各々は、(例えば、突出部756が、ある組の穴から隣接する組の穴へと移動する結果、その隣接の方向に応じて、切削直径が0.5mm増加又は減少するように)所定の切削直径に割り出しされている。直径設定を調整するために、調整リング748は、所望の設定(調整リング上のマーキング又は前方ハンドル710上の指示矢印760によって指示され得る)へと回転する。調整リング748が回転するとき、調整リング748に形成された開口部758は、ドーム形状の突出部756の上でカム運動して(cam over)、付勢ばね762の抵抗力に抗して調整リング748を近位側に逸らす。突出部756が調整リング748の隣接する組の開口部758に入り込むとき、調整リングは、付勢ばね762の力を受けて遠位側に弾き出されて、次の設定に到達したという触覚フィードバックをユーザーに与える。
【0073】
器具700を使用する例示的な方法において、器具は、器具を外科医に手渡す前に、外科技師は「バックテーブル」上で器具を使用に備えることができる。この準備は、上述のように調整リング748を使用して逆方向切削直径を設定し、作動ハンドル708を回転させてブレード706を完全後退位置に配置することを含み得る。外科医が段付き開口部を形成する準備ができると、外科医は、器具700が結合されたドリルを作動させて、前方切削チップ718で開口部の減少された直径部分を形成する。外科医は次いで、作動ハンドル708がトルクリミッタ782に対してスリップするまで作動ハンドル708を回転させるが、これによって触覚及び/又は聴覚フィードバックが外科医に与えられ、調整リング748を使用する外科技師によってブレード706が所定の限界設定に配備されたことが示唆される。外科医は次いで、ドリルを作動させて、段付き開口部の拡大された直径部分を逆方向切削する。最後に、外科医は作動ハンドル708を回転させて、切削ブレード706を完全後退位置に復帰させ、器具700を患者から引き抜く。したがって、外科医は、器具が患者の体内にある間に器具700を所望の直径に設定することを気にかける必要はない。むしろ、所望の直径は事前設定され、したがって外科医は単純に、停止表面770がタブ730によって係合されて、所望の切削直径に確実に達するまで、作動ノブ708を回すことができる。換言すれば、外科医は、ブレード706を配備するときに目盛り又は較正値(calibrations)を見る必要がない。器具700はまた、更に以下で説明するように、他の例示的な方法でも使用され得る。
【0074】
本明細書で開示する器具は、多様な既知の材料のいずれかから構成され得る。例示的な材料には、ステンレス鋼などの金属、PEEKなどのポリマー、セラミックスなどを含めた、外科用途における使用に好適な材料が挙げられる。
【0075】
本明細書で開示する器具は、多様な直径のいずれにも調整可能となり得る。いくつかの実施形態において、器具本体は、ブレードが完全に後退された状態で約3.5mmの直径を有する。いくつかの実施形態において、ブレードは、約3.5mm〜約24mmの範囲、約3.5mm〜約12mmの範囲、約6mm〜約12mmの範囲で、約6mm〜約8mmの範囲、約8mm〜約10mmの範囲、又は約10mm〜約12mmの範囲にある直径に配備され得る。本明細書で開示する器具は、特定の操作範囲内にあるいかなる直径もユーザーによって選択され得るように「アナログ」となり得る。本明細書で開示する器具はまた、有限である複数の個別の直径設定がユーザーに利用可能となるように「デジタル」にもなり得る。これらの有限の工程は、所定の増分(例えば、4分の1ミリメートルの増分、2分の1ミリメートルの増分、1ミリメートルの増分、及び/又は2ミリメートルの増分)で構成され得る。
【0076】
上述の器具は単に例示的な実施形態であるので、本開示の範囲から逸脱することなく、特定の器具の特徴が任意の他の器具に組み込まれ得ることが理解されよう。
【0077】
ブレードが配備される開口部は、本体の長さ方向に沿った、様々な位置のいずれかに形成され得る。いくつかの実施形態において、開口部は、本体の遠位チップに近接して、例えば、本体の遠位末端部から約4mmのところで始まり、本体の末端の遠位末端部から約15mm離れた点へと約11mmにわたって延びて形成される。開口部はまた、本体の遠位チップから更に距離をおいて、例えば、本体の中間点に形成され得る。以下で詳述するように、この構成は有利にも、前内側アプローチを用いて大腿骨トンネルの順方向リーマ通しが実施される特定の方法を容易にする。
【0078】
方法
本明細書で開示する器具は、ヒト又は動物に対して実施され得る多様な外科的方法のいずれにおいても使用され得る。本明細書で開示する器具はまた、非外科的方法において、例えば、製造又は木工の方法において、あるいは、逆方向切削、順方向切削、穿孔、段付きトンネルの形成、又は前記器具によって促進される他の工程が望まれる任意の他の方法において使用され得る。本明細書で開示する器具は、順方向切削と逆方向切削の双方に使用され得ることが理解されよう。
【0079】
以下で説明する方法において、上述した器具700について参照する。しかしながら、本明細書で開示又は企図される他の器具のいずれかが、これらの方法を実行するために使用され得、それに応じて方法が、当業者には容易に理解されるように必要に応じて修正されることが理解されよう。
【0080】
図8A〜8Fは、切削器具700を使用して段付き骨トンネルを大腿骨800に形成する例示的な方法を示している。この方法は、図示のような外側アプローチ、又は内側アプローチ、前側アプローチ、後側アプローチ、前内側アプローチ、前外側アプローチ、後内側アプローチ、後外側アプローチなどを含めた、任意の他のアプローチを用い得る。加えて、大腿骨がトンネルが形成される例示的な骨として用いられる一方、方法がいずれの骨又は他の対象にもトンネルを形成するのに用いられ得ることが理解されよう。
【0081】
図8Aに示すように、器具700の遠位穿孔チップ718は、関節鏡用の刺入点又は開放した皮膚切開部を介して患者の大腿骨800の外面の1点を標的とし得る。器具700の標的を患者の大腿骨800にするのに先立って、あるいは任意の他の所望の時点で、器具の作動ノブ708は第1の方向に回転して切削ブレード706を完全に後退させ得、また調整リング748を所望の切削直径限界を設定するように回転させ得る。これらの工程は、器具700を外科医に手渡す前に、手術室のバックテーブル上で外科技師によって実施され得る。図8Bに示すように、外科医は、切削器具700が結合されたドリルを作動させて、切削器具の遠位チップ718を用いた順方向切削によって第1の開口部802を大腿骨800に形成し得る。第1の開口部802は直径D1を有し、直径D1は切削器具700の本体702の外径に実質的に等しい。第1の開口部802は、例えば、切削器具700の本体702の外面にある深さマーキング及び/又は深さストッパによって示されるように、所望の深さへと形成され得る。図8Cに示すように、器具700の遠位端部が関節腔にある状態で、外科医は、切削ブレード706が事前設定された切削直径限界に配備されるまで、作動ノブ708を反対の第2の方向に回転させることができる。図8Dに示すように、外科医は次いで、ドリルを作動させ、配備された器具700の切削ブレード706を用いた逆方向切削によって、第2の開口部804を大腿骨800に形成し得る。第2の開口部804は直径D2を有するが、この直径D2は、直径D1よりも大きいものであり、また事前設定された限界直径に実質的に等しいものである。切削器具700の本体702の外面の深さマーキング及び/又は深さストッパによって外科医に示唆され得る所望の深さに第2の開口部804が到達すると、図8Eに示すように、作動ノブ708は第1の方向に回転して、切削ブレード706を本体の中へと完全に後退させ得る。切削器具700は、次いで、図8Fに示すように、(例えば、ACL再建術又は他の手技を完了するために)軟組織移植片が挿し込まれ得る段付き骨トンネル又はソケットを残して患者から引き抜かれ得る。
【0082】
図9A〜9Fは、下腿アプローチを用いて大腿骨ソケットを形成するために切削器具700を使用する例示的な方法を示している。この方法は多様な他のアプローチのうちの任意のものを用い得ること、またこの方法は任意の他の骨又は対象にソケットを形成するために用いられ得ることが理解されよう。
【0083】
図9Aに示すように、器具700の遠位穿孔チップ718は、関節鏡用の刺入点又は開放した皮膚切開部を介して患者の大腿骨906の外面の1点を標的とし得る。器具700の標的を患者の脛骨906にするのに先立って、あるいは任意の他の所望の時点で、器具の作動ノブ708は第1の方向に回転して切削ブレード706を完全に後退させ得、また調整リング748を所望の切削直径限界を設定するように回転させ得る。これらの工程は、器具を外科医に手渡す前に、手術室のバックテーブル上で外科技師によって実施され得る。図9Bに示すように、外科医は、切削器具700が結合されたドリルを作動させて、切削器具の遠位チップ718を用いた順方向切削によって第1の開口部908を脛骨906に形成し得る。第1の開口部908は直径D1を有し、直径D1は切削器具700の本体702の外径に実質的に等しい。第1の開口部908は、例えば、切削器具700の本体702の外面にある深さマーキング及び/又は深さストッパによって示されるように、所望の深さへと形成され得る。図9Cに示すように、器具700の遠位端部が関節腔にある状態で、外科医は、切削ブレード706が事前設定された切削直径限界に配備されるまで、作動ノブ708を反対の第2の方向に回転させることができる。図9Dに示すように、外科医は次いで、ドリルを作動させ、配備された器具700の切削ブレード706を用いた逆方向切削によって、第2の開口部910を大腿骨900に形成し得る。第2の開口部910は直径D2を有するが、この直径D2は、直径D1よりも大きいものであり、また事前設定された限界直径に実質的に等しいものである。切削器具700の本体702の外面の深さマーキング及び/又は深さストッパによって外科医に示唆され得る所望の深さに第2の開口部910が到達すると、図9Eに示すように、作動ノブ708は第1の方向に回転して、切削ブレード706を本体の中へと完全に後退させ得る。切削器具700は次いで、図9Fに示すように、(例えば、ACL再建術又は他の手技を完了するために)軟組織移植片が挿し込まれ得る大腿骨ソケット910を残して患者から引き抜かれ得る。
【0084】
図10A〜10Fは、下腿アプローチを用いて大腿骨ソケットを形成するために切削器具700を使用する別の例示的な方法を示している。この方法は多様なアプローチのうちの任意のものを用い得ること、またこの方法は任意の他の骨又は対象にソケットを形成するために用いられ得ることが理解されよう。
【0085】
図10Aに示すように、器具700の遠位穿孔チップ718は、関節鏡用の刺入点又は開放した皮膚切開部を介して患者の大腿骨1000の外側顆の大腿骨切痕(femoral notch)内の1点を標的とし得る。いくつかの実施形態において、器具700は、前内側の刺入点を通じて少なくとも部分的に挿入され得、その刺入点は、例えば、膝蓋腱に対して約1cm内側に、かつ膝蓋骨の下極に対して直ぐ遠位側に形成され得る。器具700の標的を患者の大腿骨1000にするのに先立って、あるいは任意の他の所望の時点で、器具の作動ノブ708は第1の方向に回転して切削ブレード706を完全に後退させ得、また調整リング748は所望の切削直径限界を設定するように回転し得る。これらの工程は、器具700を外科医に手渡す前に、手術室のバックテーブル上で外科技師によって実施され得る。図10Bに示すように、外科医は、切削器具700が結合されたドリルを作動させて、切削器具の遠位チップ718を用いた順方向切削によって、大腿骨の外側顆を貫く第1の開口部1002を形成し得る。器具700が内側顆を通過する際、器具700の外径は比較的小さいので、第1の開口部1002を形成するときに内側顆の軟骨に損傷を与える危険性はほとんどない。第1の開口部1002は直径D1を有し、直径D1は切削器具700の本体702の外径に実質的に等しい。第1の開口部1002は、例えば、切削器具700の本体702の外面にある深さマーキング及び/又は深さストッパによって示されるように、所望の深さへと形成され得る。図10Cに示すように、器具700の中間点又は実質的に中央の区間が関節腔に位する状態で、外科医は、切削ブレード706が事前設定された切削直径限界に配備されるまで、作動ノブ708を反対の第2の方向に回転させ得る。図10Dに示すように、外科医は次いで、配備された器具700の切削ブレード706を用いた逆方向切削を用いて第2の開口部1004を形成することによって、第1の開口部1002の一部分を拡大するようにドリルを作動し得る。ここでも、器具700のうちの、内側顆に隣接する部分の外径は比較的小さいので、第2の開口部1004を形成するときに内側顆の軟骨に損傷を与える危険性はほとんどない。第2の開口部1004は直径D2を有するが、この直径D2は、直径D1よりも大きいものであり、また事前設定された限界直径に実質的に等しいものである。第2の開口部1004が所望の深さに到達すると(このことは切削器具700の本体702の外面の深さマーキング及び/又は深さストッパによって外科医に示唆され得る)、図10Eに示すように、作動ノブ708は第1の方向に回転して、切削ブレード706を本体の中へと完全に後退させ得る。切削器具700は次いで、図10Fに示すように、(例えば、ACL再建術又は他の手技を完了するために)軟組織移植片が挿し込まれ得る大腿骨ソケット1004を残して患者から引き抜かれ得る。
【0086】
本明細書で開示する器具は、多様な他の方法のいずれにおいても使用され得ることが理解されよう。
【0087】
本明細書に開示される器具は、1回の使用の後に廃棄されるように設計することができ、又はこれらは複数回使用されるように設計することができる。しかしながらいずれの場合でも、器具を少なくとも1回使用した後で再び使用するには再調整する場合がある。再調整は、器具を分解する工程、続いて特定の部分を洗浄又は交換する工程、及びその後の再組み立ての工程の任意の組み合わせを含むことができる。特に、器具は分解することができ、器具の任意の数の特定の部分又は部品を、任意の組み合わせで選択的に交換又は除去することができる。特定の部品を洗浄及び/又は交換すると、器具は、再調整設備において又は外科的処置の直前に手術チームによってのいずれかで、後で使用するために再組立てすることができる。器具の再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組み立てのための様々な技術を利用してもよいことを、当業者は理解されよう。そのような技術の使用と、それにより調整された器具は、全て本出願の範囲内にある。
【0088】
本明細書に記載された本発明は、外科手術の前に処理されることが好ましい。初めに、新しい又は使用済みの器具を入手し、必要に応じて洗浄する。次に、器具を消毒することができる。1つの滅菌法では、プラスチック又はTYVEKバッグなどの閉鎖かつ密封された容器に器具を入れる。次いで容器及び器具を、ガンマ線、X線、又は高エネルギー電子線などの、容器を貫入することができる放射線野の中に置く。この放射線によって器具上及び容器内の細菌が殺菌される。消毒された器具は、その後、無菌容器内で保管することができる。密閉容器は、医療施設において開封されるまで器具を無菌状態に保つ。
【0089】
器具は滅菌することが好ましい。これは、ベータ線又はガンマ線放射、酸化エチレン、蒸気、及び液浴(例、低温浸漬)などの当業者には周知の多くの数の方法によって行うことができる。
【0090】
本発明は、具体的な実施形態を参照して記載されてきたが、記載される発明の概念の趣旨及び範囲内で様々な変更がなされてもよいことを理解するべきである。したがって、本発明が記載される実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲の文言によって定義される完全な範囲を有することが意図される。
【0091】
〔実施の態様〕
(1) 切削器具であって、
近位端部及び遠位端部を有する細長い本体であって、前記遠位端部は穿孔チップを画定する、細長い本体と、
前記細長い本体に形成された空洞内に旋回式で配設される切削ブレードであって、前記切削ブレードが前記細長い本体から突出しない後退位置と、前記切削ブレードが前記細長い本体から突出する1つ又は2つ以上の配備位置とに配置可能となっている、切削ブレードと、
前記細長い本体を通って延び、前記切削ブレードに結合される遠位端部を有する作動シャフトであって、前記作動シャフトが前記細長い本体に対して縦方向に平行移動することは、前記切削ブレードを前記後退位置と前記1つ又は2つ以上の配備位置との間で移動させるのに効果的となっている、作動シャフトと、
前記作動シャフトに結合される作動ノブであって、前記作動ノブが前記細長い本体の縦軸を中心として回転することは、前記作動シャフトを前記細長い本体に対して縦方向に平行移動させるのに効果的となっている、作動ノブと、
調整要素であって、前記作動シャフトが前記細長い本体に対して縦方向に平行移動され得る程度を、前記細長い本体に対する前記調整要素の位置に基づいて制限するように構成された、調整要素と、を備える、切削器具。
(2) 前記切削ブレードが配設される前記空洞は、前記細長い本体の前記遠位端部から、ある距離をおいて離間されている、実施態様1に記載の器具。
(3) 前記作動ノブは前記作動シャフトにねじ接合(threaded interface)によって結合される、実施態様1に記載の器具。
(4) 前記作動シャフトは、前記細長い本体の第1のスロットを通じて延びる第1のタブを有する、実施態様1に記載の器具。
(5) 前記調整要素は前記第1のスロットの少なくとも一部分に被せて配設されて、前記第1のタブが前記第1のスロット内でスライドし得る程度を制限する、実施態様4に記載の器具。
【0092】
(6) 前記調整要素は、リングを備え、前記リングは、前記リング上に形成された段付き停止表面を有し、前記段付き停止表面は複数の段を有する、実施態様5に記載の器具。
(7) 前記調整要素が前記細長い本体の前記縦軸を中心として回転することは、前記複数の段のうちのどの段が前記第1のスロットと整列されるかを変更し、それにより前記第1のスロットの有効長を変更するのに効果的である、実施態様6に記載の器具。
(8) 固定ハンドル部分を更に備え、前記固定ハンドル部分は、前記固定ハンドル部分上に形成された複数の突出部を有し、前記複数の突出部は、前記調整要素の遠位側向き表面に形成された複数の戻り止め又は開口部内に受容されるように構成されている、実施態様1に記載の器具。
(9) 前記調整要素を前記固定ハンドル部分と係合させるように構成された付勢ばねを更に備える、実施態様8に記載の器具。
(10) 前記作動ノブはトルクリミッタを有し、前記トルクリミッタは、前記作動ノブを回転させる際に加えられ得るトルクの量を制限するように構成されており、かつ、前記切削ブレードが所望の位置に到達したときに触覚フィードバックをユーザーに与えるように構成されている、実施態様1に記載の器具。
【0093】
(11) 前記作動シャフトの前記遠位端部はリンク機構によって前記切削ブレードに結合される、実施態様1に記載の器具。
(12) 前記リンク機構はリンクバーを備え、前記リンクバーは、前記作動シャフトのヨークに第1の横断ピンによって結合される近位端部と、前記切削ブレードのヨークに第2の横断ピンによって結合される遠位端部と、を有する、実施態様11に記載の器具。
(13) 前記作動シャフトが前記細長い本体に対して近位側に平行移動することは、前記切削ブレードを旋回ピンを中心として回転させて前記切削ブレードを前記空洞の中へと後退させるのに効果的であり、前記作動シャフトが前記細長い本体に対して遠位側に平行移動することは、前記切削ブレードを前記旋回ピンを中心として回転させて前記切削ブレードを前記空洞から配備するのに効果的である、実施態様1に記載の器具。
(14) 切削器具であって、
遠位穿孔チップを有する細長い本体と、
前記遠位穿孔チップに対して近位側の位置で前記細長い本体に形成された空洞から選択的に配備可能な切削ブレードであって、複数の直径のいずれかに配備可能である、切削ブレードと、を備える、切削器具。
(15) 骨を切削する方法であって、
切削器具の遠位チップを使用して、第1の直径を有する第1の開口部を前記骨に穿孔することであって、前記切削器具の切削ブレードは前記穿孔の間、前記切削器具の本体の中へと後退されている、ことと、
前記第1の開口部を穿孔した後、前記切削ブレードが前記切削器具の前記本体から少なくとも部分的に突出するように、前記切削ブレードを配備することと、
前記切削ブレードを配備した後、前記切削器具の前記切削ブレードを使用して、前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2の開口部を前記骨に切削することと、を含む、方法。
【0094】
(16) 前記第1及び第2の開口部は互いに近接しており、そのため前記第1の開口部と第2の開口部とが段付き骨トンネルを画定するようになっている、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記第1の開口部は順方向に穿孔され、前記第2の開口部は逆方向に切削される、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記第1の開口部は順方向に穿孔され、前記第2の開口部は順方向に切削される、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記第1の開口部は脛骨に形成され、前記第2の開口部は大腿骨に形成される、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記第1の開口部は大腿骨の内側部分に形成され、前記第2の開口部は前記大腿骨の外側部分に形成される、実施態様18に記載の方法。
【0095】
(21) 前記第2の開口部を切削した後に、前記切削ブレードを前記切削器具の前記本体の中へと後退させ、前記第1の開口部を通じて前記切削器具を引き抜くことを更に含む、実施態様15に記載の方法。
(22) 切削ブレード配備直径を前記切削器具の複数の直径設定のうちの1つに設定することを更に含む、実施態様15に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F