特許第6642986号(P6642986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6642986
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】水素化脱硫方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/19 20060101AFI20200130BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20200130BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20200130BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   B01J27/19 M
   B01J37/08
   B01J37/02 101E
   C10G45/08 Z
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-133593(P2015-133593)
(22)【出願日】2015年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-16404(P2016-16404A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2018年6月25日
(31)【優先権主張番号】1456464
(32)【優先日】2014年7月4日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ ドーダン
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−000726(JP,A)
【文献】 特開2011−067748(JP,A)
【文献】 特表2013−514169(JP,A)
【文献】 特表2009−523607(JP,A)
【文献】 特表2013−504411(JP,A)
【文献】 特開2015−167936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリン留分の水素化脱硫方法であって、当該ガソリン留分と、水素と、触媒と、を接触させ、当該触媒が硫化されており、当該接触が以下の条件:
・ 200℃〜400℃の温度範囲;
・ 1〜2.5MPaの範囲の全圧;
・ 1〜10時間-1の範囲の空間速度(触媒の量に対するフィードの体積流量として定義される);
・ 100〜600NL/Lの範囲の水素/ガソリンフィードの体積比;
において実施される、方法であり、
当該触媒は、アルミナベースの担体と、少なくとも1つのVIB族の金属と、少なくとも1つのVIII族の金属と、リンと、を含み、
前記触媒の比表面積が、40〜95m/gの範囲であり、
触媒の単位表面積あたりのVIB族の金属の原子数として表される、前記VIB族の金属の密度が、触媒のnmあたり、VIB族の金属の原子数7〜30の範囲であり、
前記触媒が、前記担体上に、前記VIB族の金属と、前記VIII族の金属と、前記リンとを含浸させて、含浸した触媒前駆体を得て、次いで前記含浸した触媒前駆体を200℃未満の温度で乾燥させて、その後の焼成を行わないことにより調製され、
前記VIB族の金属の含量が、触媒総重量に対する当該VIB族金属の酸化物として3重量%〜35重量%の範囲であり、
前記VIII族の金属の含量が、触媒総重量に対する当該VIII族金属の酸化物として0.1重量%〜10重量%の範囲であり、
前記リンの含量が、触媒総重量に対するPとして0.3重量%〜10重量%の範囲である、水素化脱硫方法。
【請求項2】
(VIII族の金属)/(VIB族の金属)のモル比が、0.1〜0.8の範囲であり、リン/(VIB族の金属)のモル比が、0.1〜0.7の範囲である、請求項1に記載の水素化脱硫方法。
【請求項3】
前記触媒の比表面積が、50〜90m/gの範囲である、請求項1または2に記載の水素化脱硫方法。
【請求項4】
前記VIB族の金属の密度が、触媒のnmあたりVIB族の金属原子数7〜25の範囲である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素化脱硫方法。
【請求項5】
前記VIB族の金属が、タングステン及びモリブデンから選択され、前記VIII族の金属が、ニッケル及びコバルトから選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水素化脱硫方法。
【請求項6】
前記VIB族の金属が、モリブデンであり、前記VIII族の金属が、コバルトである、請求項5に記載の水素化脱硫方法。
【請求項7】
前記アルミナベースの担体が、混練され、成形され、及び焼成されたアルミナゲルから得られる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水素化脱硫方法。
【請求項8】
前記触媒が、酸素及び/又は窒素を含有する少なくとも1つの有機化合物を更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水素化脱硫方法。
【請求項9】
前記有機化合物が、カルボン酸、アルコール、アルデヒド、エステル、アミン、アミノカルボン酸、アミノアルコール、ニトリル及びアミドから選択される、請求項8に記載の水素化脱硫方法。
【請求項10】
前記有機化合物が、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、150〜1500の分子量のポリエチレングリコール、アセトフェノン、2,4−ペンタン
ジオン、ペンタノール、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、C−Cジアルキルスクシネート、少なくとも6つのグルコピラノース単位がα(1−4)結合した環状オリゴ糖類、エチレンジアミン、テトラメチル尿素、アミノ三酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、モノエタノールアミン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド及びエチレンジアミン四酢酸から選択される、請求項9に記載の水素化脱硫方法。
【請求項11】
前記触媒が、
a)1つ又は複数の含浸工程において、前記アルミナベースの担体上に、前記VIII族の金属と、前記VIB族の金属と、前記リンと、を堆積させて、含浸した触媒前駆体を得る工程;
b)200℃未満の温度で前記含浸した前駆体を乾燥させ、その後の焼成を行わずに、乾燥触媒を得る工程;を含む方法によって調製されたものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水素化脱硫方法。
【請求項12】
前記触媒が、
i)1つ又は複数の含浸工程において、前記アルミナベースの担体上に、前記VIII族の金属と、前記VIB族の金属と、前記リンと、酸素及び/又は窒素を含有する少なくとも1つの有機化合物と、を堆積させて、含浸した触媒前駆体を得る工程;
ii)200℃未満の温度で前記含浸した前駆体を乾燥させ、その後の焼成を行わずに、乾燥触媒を得る工程;を含む方法によって調製されたものである、請求項8〜10のいずれか一項に記載の水素化脱硫方法。
【請求項13】
工程i)が連続する以下の工程:
i1)アルミナ担体に、少なくとも1つのVIB族の金属と、少なくとも1つのVIII族の金属と、リンと、を含有する少なくとも1つの溶液を含浸させて、含浸した担体を得る工程;
i2)工程i1)で得られた前記含浸した担体を、200℃未満の温度で乾燥させ、その後の焼成を行わずに、乾燥触媒を得る工程;
i3)工程i2)で得られた前記乾燥触媒に、酸素及び/又は窒素を含有する少なくとも1つの有機化合物を含む含浸溶液を含浸させ、ドーピングされた触媒前駆体を得る工程;
i4)場合によっては、工程i3)で得られた前記ドーピングされた触媒前駆体を熟成させる工程;を含む、請求項12に記載の水素化脱硫方法。
【請求項14】
前記ガソリンが、接触分解装置から得られるガソリンである、請求項1に記載の水素化脱硫方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル留分(特にガソリン留分)の水素化脱硫に用いられる水素化処理触媒、並びに、前記触媒の調製方法に関する。
【0002】
本発明はまた、本発明による触媒を用いた、ガソリン留分の水素化脱硫方法に関する。
【背景技術】
【0003】
石油精製、あるいは石油化学工業は現在、新しい規制に直面している。実際、近年、次第に全ての国によって採用されつつある、硫黄に関する仕様が厳しくなっており、到達目標の例として、ヨーロッパ及び日本では、市販のガソリン中の硫黄含量が10ppm(重量ベース)であることが挙げられる。接触分解(FCC:流動接触分解)、又は非触媒(non−catalytic)分解(コーキング法(cokefaction)、ビスブレーキング法(visbreaking)、蒸気分解法)によって得られるガソリン、すなわち、ガソリンプールにおける硫黄の主要な前駆体は、硫黄含量の減少に関する課題を扱う際に焦点となるものである。
【0004】
当業者に公知の、硫黄含量を減少させるための1つの手段は、水素及び外部触媒の存在下で、炭化水素留分(特に触媒により接触分解されたガソリン)の水素化処理(又は水素化脱硫)を実施することからなる。しかしながら、この方法は、使用される触媒が十分な選択性を有さない場合には深刻なオクタン価の低下を引き起こすという欠点を有する。このオクタン価の減少は、水素化脱硫に付随する、この種のガソリン中に存在するオレフィン水素化処理と主に関連している。したがって、ガソリンの水素化脱硫は、他の水素化処理方法とは対照的に、2つの相対する条件を満たさなければならない。すなわち、ガソリンの強い水素化脱硫を確実にすること、及び、存在する不飽和化合物の水素化処理を制限すること、である。
【0005】
例えば、特許文献1は、ガソリンを分留することと、軽い留分をスウィートニングすることと、従来用いられている触媒により重い留分を水素化処理することと、更にZSM5ゼオライトによりそれを処理して、ほぼ最初のオクタン価となるまで回復させることとからなる方法を提案している。
【0006】
特許文献2は、高温、低圧及び高い水素/フィード速度の条件下でのFCCガソリンの処理方法を特許請求している。これらの特定の条件下では、脱硫反応により形成されるメルカプタン(HSを含む)、並びにオレフィンの形成をもたらす再結合反応は最小化される。
【0007】
最後に、特許文献3は、多段階工程によって非常に低い残留硫黄含量の実現を可能にするレイアウトを提案している。すなわち、第1触媒による水素化脱硫、液体留分とガス留分の分離、並びに、第2触媒による第2の水素化処理、である。液体とガスの分離を用いることにより、最初の反応器中で形成されるHSを除去して、水素化脱硫とオクタン価減少との間の良好なバランスを得ることができる。
【0008】
上記の二股の課題に対処するもう一つの方法は、水素化脱硫において活性を有し、かつ、オレフィン水素化処理反応と比較し水素化脱硫において非常に選択的である、水素化脱硫触媒を用いる方法である。
【0009】
この点について、特許文献4が当技術分野において公知であり、この文献は、活性化コバルト/モリブデン金属相及び高温アルミナ(すなわち800℃超の温度で焼成)をベースとする担体を含み、40〜200m/gの範囲の比表面積を有する水素化脱硫触媒を開示している。前記触媒は、コバルト、モリブデン、及び少なくとも1つの有機化合物の形態の添加物を含有する水溶液の乾式含浸によって得られる。
【0010】
特許文献5は、少なくとも1つの担体、少なくとも1つのVIII族の元素、少なくとも1つのVIB族の元素、及びリンを含む選択的水素化脱硫触媒を記載しており、前記触媒は、担体の単位表面積あたりのVIB族元素の密度が、担体のmあたりVIB族元素の酸化物2×10−4〜18×10−4gの範囲であり、VIB族元素に対するリンのモル比が、0.27〜2の範囲であり、VIB族元素の量が、VIB族元素の酸化物に対して1重量%〜20重量%の範囲であり、担体が、135m/g未満の比表面積を有する。
【0011】
ディーゼル用の水素化処理触媒も知られている。それらは、担体及び少なくとも1つのVIII族の金属と結合した少なくとも1つのVIB族の金属を含み、200〜300 m/gの範囲の比表面積を有し、それゆえ、単位表面積あたりのVIB族金属の密度(触媒のnmあたりの、VIB族の金属原子数として表す)が7未満である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5318690号明細書
【特許文献2】国際公開第01/40409号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5968346号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/321320号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1892039号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、特に水素化脱硫及び/又は選択性に関する触媒活性の面での触媒性能が向上し、それを使用に供することにより、オクタン価を著しく減少させずに、硫黄含有量の低いガソリンの生産を可能とする、特にガソリン分留用の水素化脱硫触媒に対して、精製業者の多くの関心が注がれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、アルミナベースの担体と、少なくとも1つのVIB族の金属と、少なくとも1つのVIII族の金属と、リンと、を含む水素化処理触媒であって、
・ 前記触媒の比表面積が20〜150m/gの範囲であり、
・ 前記触媒の単位表面積あたりのVIB族の金属の原子数として表される、VIB族の金属の密度が、触媒のnmあたりVIB族の金属の原子数7〜30の範囲であり、
前記触媒が、前記担体上に、VIB族の金属と、VIII族の金属と、リンと、を含浸させて触媒前駆体を得て、次いで含浸した触媒前駆体を200℃未満の温度で乾燥させて、その後の焼成を行わないことにより調製される、水素化処理触媒に関する。
【0015】
VIB族の金属の含量は、通常、触媒総重量に対する前記VIB族の金属の酸化物として3重量%〜35重量%の範囲である。
【0016】
VIII族の金属の含量は、通常、触媒総重量に対する前記VIII族の金属の酸化物として0.1重量%〜10重量%範囲である。
【0017】
リン含量は、通常、触媒総重量に対するPとして0.3重量%〜10重量%の範囲である。
【0018】
好ましくは、(VIII族の金属)/(VIB族の金属)のモル比は、0.1〜0.8の範囲であり、リン/(VIB族の金属)のモル比は、0.1〜0.7の範囲である。
【0019】
本発明の触媒は、好ましくは30〜120m/gの範囲、より好ましくは40〜95m/gの範囲、更に好ましくは50〜90m/gの範囲の比表面積を有する。
【0020】
好ましくは、前記VIB族の金属の密度は、触媒のnmあたりVIB族の金属の原子数が7〜25の範囲、より好ましくは触媒のnmあたりVIB族の金属の原子数が7〜20の範囲、更に好ましくは触媒のnmあたりVIB族の金属の原子数7〜15の範囲である。
【0021】
前記VIB族の金属は、タングステン及びモリブデンから選択され、前記VIII族の金属は、ニッケル及びコバルトから選択される。
【0022】
好ましい実施形態によれば、前記VIB族の金属はモリブデンであり、前記VIII族の金属はコバルトである。
【0023】
本発明に係る触媒の前記アルミナベースの担体は、混練され、成形され、及び焼成されたアルミナゲルから得られる。
【0024】
本発明によれば、触媒は酸素及び/又は窒素を含む少なくとも1つの有機化合物を更に含んでもよい。有機化合物は、カルボン酸、アルコール、アルデヒド、エステル、アミン、アミノカルボン酸、アミノアルコール、ニトリル及びアミドから選択されうる。
【0025】
前記有機化合物は例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、150〜1500の分子量を有するポリエチレングリコール、アセトフェノン、2,4−ペンタンジオン、ペンタノール、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、C−Cジアルキルスクシネート、少なくとも6つのグルコピラノース単位がα(1−4)結合した環状オリゴ糖類、エチレンジアミン、テトラメチル尿素、アミノ三酢酸(aminotriacetic acid)、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、モノエタノールアミン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド及びエチレンジアミン四酢酸から選択される。
【0026】
本発明はまた、前記本発明に係る触媒の調製方法に関し、前記方法は以下の工程を含む:
a)1つ又は複数の含浸工程において、アルミナベースの担体上に、VIII族の金属と、VIB族の金属と、リンと、を堆積させて、含浸した触媒前駆体を得る工程;
b)200℃未満の温度で前記含浸した触媒前駆体を乾燥させ、その後の焼成を行わずに、乾燥触媒を得る工程。
【0027】
有機添加物をも含有する場合には、本発明に係る触媒は、以下の工程を含む方法により調製される:
i)1つ又は複数の含浸工程において、アルミナベースの担体上に、VIII族の金属と、VIB族の金属と、リンと、酸素及び/又は窒素を含有する少なくとも1つの有機化合物と、を堆積させて、含浸した触媒前駆体を得る工程;
ii)200℃未満の温度で前記含浸した前駆体を乾燥させ、その後の焼成を行わずに、乾燥触媒を得る工程。
【0028】
本発明では、前記工程i)は、連続した以下の工程を含んでもよい:
i1)アルミナ担体に、少なくとも1つのVIB族の金属と、少なくとも1つのVIII族の金属と、リンと、を含有する少なくとも1つの溶液を含浸させて、含浸した担体を得る工程;
i2)工程i1)で得られた前記含浸した担体を、200℃未満の温度で乾燥させ、その後の焼成を行わずに、乾燥触媒を得る工程;
i3)工程i2)で得られた前記乾燥触媒に、酸素及び/又は窒素を含有する少なくとも1つの有機化合物を含む含浸溶液を含浸させ、ドーピングされた触媒前駆体を得る工程;
i4)場合によっては、工程i3)で得られた前記ドーピングされた触媒前駆体を熟成させる工程。
【0029】
最後に、本発明はまた、ガソリン留分の水素化脱硫方法に関し、前記方法は、前記ガソリン留分と、水素と、本発明による硫化された触媒若しくは前記方法のうちの1つによって調製された硫化された触媒と、を接触させることを特徴とする。接触は、以下の条件で実施される:
・ 200℃〜400℃の温度範囲;
・ 1〜3MPaの範囲の全圧;
・ 1〜10時間−1の範囲の液空間速度(触媒の量に対するフィードの体積流量として定義される);
・ 100〜600NL/Lの範囲の水素/ガソリンフィードの体積比。
【0030】
水素化脱硫工程を用いて処理されるガソリンは、好ましくは、接触分解装置から得られるガソリンである。
【発明の効果】
【0031】
出願人は本発明において、アルミナベースの担体と、元素の周期律表におけるVIB族及びVIII族の金属と、リンと、を含む水素化処理触媒を発見した。前記触媒は、硫化の後、改善された水素化脱硫活性を示すのみならず、オレフィン水素化処理反応と比較し、水素化脱硫における高い選択性をも示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
第1の態様によると、本発明は、アルミナベースの担体と、少なくとも1つのVIB族の金属と、少なくとも1つのVIII族属の金属と、リンと、を含む水素化処理触媒に関し、前記触媒は以下の特徴を有する:
・ 前記触媒の比表面積は、20〜150m/gの範囲であり、
・ 触媒の単位表面積あたりVIB族の金属の原子数として表される、VIB族の金属の密度は、触媒のnmあたり、VIB族の金属の原子数7〜30の範囲であり、
前記担体上に、前記VIB族の金属と、前記VIII族の金属と、前記リンと、を含浸させることによって含浸した触媒前駆体を得て、次いで前記含侵した触媒前駆体を200℃未満の温度で乾燥させて、その後の焼成を行わないことにより調製される。
【0033】
本願発明によると、触媒の単位表面積あたりのVIB族の金属の原子数として表される、VIB族の金属の密度(触媒のnmあたりのVIB族の金属の原子数)は、例えば以下の式により算出される:
d(VIB族の金属)=(X×N)/(100×1018×S×M
(式中、
X=VIB族の金属の重量%;
=アボガドロ定数(=6.022×1023);
S=触媒の比表面積(m/g)(ASTM D3663基準に従い測定);
=VIB族の金属のモル質量(例えばモリブデンの場合、95.94g/モル)。
【0034】
驚くべきことに、本発明者は上記の、VIB族及びVIII族の金属と、リンと、を含浸させ、更に、200℃未満の温度で乾燥させ、その後の焼成工程を経ることなく調製される触媒が、高い水素化脱硫活性を示し、同時に、オレフィン水素化処理反応においてより高い選択性を示すことを見出した。活性の増加は、反応装置の温度が減少しうることを意味し、それにより、従来技術である水素化脱硫触媒(HDS)の存在下で得られる性能と比較し、例えば触媒のコーキングによる失活の現象を制限し、それにより、反応装置の寿命を長期化させるという長所を備えつつ、同程度の脱硫性能が得られる。更に、本発明の触媒は、オレフィン水素化処理と比較し、水素化脱硫における高い選択性を示し、これにより、処理済みガソリンのオクタン価の低下を防止するためにオレフィン水素化処理反応が制限されるべき、オレフィンを含むガソリンタイプの炭化水素留分(すなわち、通常30℃〜250℃の範囲の沸点)の水素化処理の際、有利な特徴となる。
【0035】
本発明の触媒は、このように、活性を有する金属相が堆積した担体を含む。前記担体は、多孔質のアルミナベースの固体であり、それはすなわち、アルミナと、活性を有する金属相を含浸させる工程以外の工程で導入された例えば金属及び/又はドーパントと、を含む。例えば、前記金属及び/又はドーパントは、前記担体の調製(混練、解膠(peptizing))又はその成型の際に導入される。
【0036】
好ましくは、前記担体は、アルミナにより構成される。好ましくは、前記アルミナは、δ型、γ型若しくはθ型アルミナ単独、又はそれらの混合物である。
【0037】
前記アルミナ担体の孔体積は通常、0.4cm/g〜1.3cm/gの範囲、好ましくは0.6cm/g〜1.1cm/gの範囲である。全細孔容積は、ASTM D4284に従い、140°の濡れ角による水銀圧入ポロシメトリー(Rouquerol F.;Rouquerol J.;Singh K.“Adsorption by Powders & Porous Solids:Principle,methodology and applications”(Academic Press,1999)に記載;例えば、Micromeritics(商標)社の装置(Autopore III(商標)モデル)を使用)で測定される。
【0038】
前記アルミナ担体の比表面積は、通常20m/g〜200m/gの範囲、好ましくは20m/g〜180m/gの範囲、より好ましくは30m/g〜170m/gの範囲である。本発明において、比表面積は、ASTM D3663に従い、BET法によって測定され、この方法は、上記著書に記載されている。
【0039】
アルミナ担体は、有利な形態では、粉末形状若しくはビーズ形状、押出し成形物、ペレット又は不規則かつ非球形の塊の形状であり、それらの具体的な形状は、破砕工程によっても生じ得る。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明の触媒はアルミナ担体を含み、前記担体は、基本的にアルミニウムオキシ(ヒドロキシド)(AlO(OH))タイプの、ベーマイトとして知られている前駆体を含むアルミナゲルから得られる。アルミナゲル(別名ベーマイトゲル)は、pHの調節によって誘導される、塩基性及び/又は酸性のアルミニウム塩溶液の沈殿反応、又は当業者に公知の他の方法(P.Euzen,P.Raybaud,X.Krokidis,H.Toulhoat,J.L.Le Loarer,J.P.Jolivet,C.Froidefond「Alumina,in Handbook of Porous Solids」、F.Schuth,K.S.W.Sing,J.Weitkamp,Wiley-VCH、Weinheim,Germany,2002,pp.1591-1677)により合成されうる。
【0041】
一般に、前記沈殿反応は、5℃〜80℃の範囲の温度、及びpH6〜10の範囲で実施される。好ましくは、前記温度は35℃〜70℃の範囲であり、前記pHは6〜10の範囲である。
【0042】
一実施形態では、前記アルミナゲルは、酸性アルミニウム塩の水溶液を塩基性溶液と接触させることにより得られる。例えば、前記酸性アルミニウム塩は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム又は塩化アルミニウムからなる群から選択される。好ましくは、前記酸性塩は硫酸アルミニウムである。前記塩基性溶液は、好ましくは水酸化ナトリウム溶液又は水酸化カリウム溶液から選択される。あるいは、アルミン酸ナトリウム及びアルミン酸カリウムからなる群から選択されうるアルミニウム塩類のアルカリ性溶液を、酸性溶液と接触させてもよい。非常に好ましい変形例では、前記ゲルは、アルミン酸ナトリウムの溶液を硝酸と接触させることによって得られる。アルミン酸ナトリウム溶液は、好ましくは10−5〜10−1モル/Lの範囲の濃度であり、より好ましくは、10−4〜10−2モル/Lの範囲の濃度である。別の実施形態では、前記アルミナゲルは、酸性アルミニウム塩の水溶液をアルミニウム塩のアルカリ性溶液と接触させることによって得られる。沈殿工程の後、得られるアルミナゲルは、その後、好ましくは酸性溶媒中で混合する工程に供される。使用する酸は、例えば硝酸であってもよい。この工程は既知の装置(例えばZアームミキサー、グラインダーミキサー又は連続式の1軸若しくは2軸スクリュー)を使用して実施され、前記ゲルはペーストの粘稠度を有する生成物に変化する。
【0043】
有利な実施形態では、「多孔形成剤」として知られている1つ又は複数の化合物を混合溶媒に添加する。これらの化合物は、加熱すると分解する特性を有することにより、担体に多孔性を生じさせる。例えば、木粉、木炭、タール及びプラスチック材料が、多孔形成剤として使用されうる。
【0044】
押出し成形物の形状の担体が必要な場合、混練の後得られるペーストを、例えば押出し型に通す。通常、前記押出し成形物は、0.4〜100mmの範囲、好ましくは0.5〜100mmの範囲、より好ましくは範囲0.5〜10mmの範囲、更に好ましくは、0.4〜4mmの範囲の直径を有する。これらの押出し成形物は、円筒形、多葉形(multi−lobed)(例えば三葉形若しくは四葉形)の形状であってもよい。
【0045】
成形後、前記担体を、場合によっては、熱処理に供する前に乾燥させる。例えば、前記乾燥は、100℃〜200℃の範囲の温度で実施されうる。
【0046】
乾燥させた前記担体を、更に熱処理工程に供し、それにより、想定される用途に適する物性が付与されうる。
【0047】
第一の実施形態では、前記熱処理は、少なくとも1つの熱水処理と、少なくとも1つの焼成工程とを含む。「熱水処理」という用語は、水の存在下、周囲温度を上回る温度での処理を意味する。好ましくは、前記熱水処理は、100℃〜300℃の範囲の温度で、0.5〜8時間実施される。
【0048】
この熱水処理の間、前記アルミナは様々な方式により処理されうる。例えば、アルミナに酸性溶液を事前に含浸させ、次いで、蒸気相又は液相において熱水処理に供することが可能である。この熱水処理の前の含浸は、乾式で実施してもよく、又は、アルミナを酸性水溶液に浸漬させることにより実施してもよい。「乾式含浸」という用語は、処理済のアルミナによる水の取り込み量以下の体積の溶液とアルミナとを接触させることを意味する。好ましくは、前記含浸は乾式含浸である。
【0049】
酸性溶液で事前に含浸させなかったアルミナ担体を処理することも可能であり、この場合、酸性度は熱水処理の間に用いられる適切な水溶液により提供される。
【0050】
前記酸性水溶液は、アルミナの少なくとも一部を溶解させるのに使用できる少なくとも1つの酸性化合物を含む。「アルミナの少なくとも一部を溶解するのに使用できる酸性化合物」という用語は、アルミナと接触したときに少なくとも一部のアルミニウムイオンを溶解させる、如何なる酸性化合物をも意味する。好ましくは、前記酸は、アルミナ担体中のアルミナの少なくとも0.5重量%を溶解させるのに使用できる。好ましくは、この酸は、硝酸、塩酸、過塩素酸及び硫酸等の強酸、又は水溶液が4未満のpHを示す濃度で用いられる、例えば酢酸等の弱酸、又はこれらの酸の混合物から選択される。
【0051】
好ましい実施形態によると、前記熱水処理は、硝酸及び酢酸単独、又はそれらの混合物の存在下で実施される。この処理はオートクレーブ中で実施され、この場合、好ましくは、欧州特許出願公開第0387109号明細書で定義されるような、回転バスケット式オートクレーブで実施されうる。
【0052】
前記熱水処理はまた、飽和蒸気圧下で、又は、処理温度に対応する飽和蒸気圧の少なくとも70%の水蒸気分圧下で実施されうる。
【0053】
この第一の実施形態による熱水処理の後に行われる焼成工程は、通常、400℃〜1500℃の範囲の温度、好ましくは800℃〜1300℃の範囲の温度で、1〜8時間、通常0〜50重量%の範囲の水分を含む空気中で実施される。
【0054】
前記熱処理工程の第1の実施形態の変形例によると、乾燥した担体を第1の焼成工程に供し、次に熱水処理工程、最後に第2の焼成工程に供してもよい。この場合、2つの焼成工程は上記の操作条件の範囲内で実施され、前記操作条件は各焼成工程で同一であってもよく、異なってもよい。
【0055】
第2の代替的な熱処理の実施形態によると、前記担体は1回のみの焼成に供され、すなわち、この焼成工程の前にも後にも熱水処理が行われない。これは、通常、400℃〜1500℃の範囲の温度、好ましくは500℃〜1200℃の範囲の温度で、1〜8時間、通常0〜50重量%の範囲の水分含量の空気中で実施される。この実施形態では、前記焼成工程は、望ましい焼成温度に達するまで、何段階かの一定温度で徐々に昇温させることにより実施されうる。
【0056】
最後の熱処理の終わりにおいて、前記担体は通常、20〜200m/gの範囲の比表面積を有する。前記担体にはδ型、γ型又はθ型のアルミナタイプの結晶学的構造が存在し、それらは単独又は混合物として用いられる。様々な結晶学的構造の存在は、主に熱処理が実施される条件と、特に最終的な焼成温度と関係する。
【0057】
本発明の触媒は、アルミナ担体と、リンと、少なくとも1つのVIB族の金属及び少なくとも1つのVIII族の金属から形成される活性相と、から構成される。その調製の間、前記触媒は焼成に供されることがなく、すなわち、前記含浸された触媒前駆体は、200℃超の温度による熱処理工程に供されない。
【0058】
VIII族の金属の総含有量は、触媒総重量に対して、VIII族の金属の酸化物で0.1重量%〜10重量%の範囲、好ましくは0.6重量%〜8重量%の範囲、より好ましくは2重量%〜7重量%の範囲、更に好ましくは2重量%〜6重量%の範囲であり、より更に好ましくは、触媒総重量に対して、VIII族の金属の酸化物で3重量%〜6重量%の範囲である。
【0059】
VIB族の金属の含有量は、触媒総重量に対して、VIB族の金属の酸化物で3重量%〜35重量%の範囲、好ましくは5重量%〜30重量%の範囲、より好ましくは7重量%〜28重量%の範囲、より更に好ましくは触媒総重量に対して、VIB族の金属の酸化物で10重量%〜25重量%の範囲である。
【0060】
本発明の触媒は、通常、触媒総重量に対してPで0.3重量%〜10重量%の範囲、好ましくは触媒総重量に対してPで2重量%〜8重量%の範囲の、リン含量を有する。例えば、前記触媒中に存在するリンは、VIB族の金属と、場合によってはヘテロポリアニオンの形態のVIII族の金属と、結合する。
【0061】
本発明の水素化処理触媒は、酸化物の形で、20〜150m/gの範囲、好ましくは30〜120m/gの範囲、より好ましくは40〜95m/gの範囲、更に好ましくは50〜90m/gの範囲の比表面積を有することを特徴とする。
【0062】
更に、触媒の単位表面積あたりのVIB族の金属の原子数として表される、触媒における前記金属の密度は、触媒のnmあたりVIB族の金属の原子数7〜30の範囲、好ましくは触媒のnmあたりVIB族の金属の原子数7〜25の範囲、更に好ましくは触媒のnmあたりVIB族の金属の原子数7〜20の範囲である。より更に好ましくは、触媒の単位表面積あたりのVIB族の金属の原子数として表される、前記金属の密度は、触媒のnmあたりVIB族の金属の原子数7〜15の範囲である。例えば、前記触媒が20重量%の酸化モリブデンMoO(すなわち13.33重量%のMo)を含み、100m/gの比表面積を有する場合、密度d(Mo)は以下のようになる:
d(Mo)=(13.33×N)/(100×1018×100×96)=8.3原子のMo/触媒のnm
前記触媒中の、VIII族の金属のVIB族の金属に対するモル比は、通常、0.1〜0.8の範囲、好ましくは0.2〜0.6の範囲である。
【0063】
更に、リン/(VIB族の金属)のモル比は、通常、0.1〜0.7の範囲、好ましくは0.2〜0.6の範囲である。
【0064】
前記触媒の活性相に存在するVIB族の金属は、好ましくはモリブデン及びタングステンから選択される。
【0065】
前記触媒の活性相に存在するVIII族の金属は、好ましくはコバルト、ニッケル及びこれらの2つの元素の混合物から選択される。
【0066】
前記触媒の活性相は、好ましくは以下の元素の組合せにからなる群から選択される:
ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデン、及びニッケル−コバルト−モリブデン;
より好ましくは、前記活性相は、コバルト及びモリブデンから構成される。
【0067】
本発明の触媒は、以下の工程を含む製造方法により調製される:
a)少なくとも1つのVIB族の金属の成分と、少なくとも1つのVIII族の金属の成分と、リンとを、触媒前駆体が得られるような形態で担体と接触させる工程;
b)工程a)で得られた前記触媒前駆体を、200℃未満の温度で乾燥させ、その後の調製を行わない工程。
【0068】
前記担体と接触させる工程a)には、幾つかの実施形態が含まれる。前記の触媒の製造方法における工程a)の第1の実施形態では、前記成分であるVIB族の金属、VIII族の金属及びリンは、1つ又は複数の共含浸工程(すなわち、前記成分であるVIB族の金属、VIII族の金属及びリンが、前記担体上へ同時に導入される)を用いて、前記の担体上に堆積する。前記1つ又は複数の共含浸工程は好ましくは、乾式含浸によって、又は過剰の溶液を用いた含浸によって実施される。この第1の実施形態が、幾つかの共含浸工程の実施を含む場合、各々の共含浸工程の後に、通常、200℃未満の温度、有利には50〜180℃の範囲、好ましくは60〜150℃の範囲、より好ましくは75〜140℃の範囲の温度で中間乾燥工程を実施する。
【0069】
好ましい共含浸の実施形態によると、コバルト、モリブデン及びリンが含まれる場合、含浸水溶液は、前記溶液中でヘテロポリアニオンの形成を促進するpH条件下で調製される。例えば、かかる水溶液のpHは1〜5の範囲である。
【0070】
前記の触媒の製造方法における工程a)の第2の実施形態によると、前記触媒前駆体は、連続的に、かつ任意の順序で、前記担体上にVIB族の金属の成分と、VIII族の金属の成分と、リンと、を堆積させることにより調製される。前記堆積は、乾式含浸により、過剰含浸により、あるいは当業者に公知の方法を使用した堆積−沈殿により、実施されうる。この第2の実施形態では、VIB族及びVIII族の金属成分並びにリンは、2つの連続する含浸の間の中間の乾燥工程を伴い、幾つかの含浸工程によって堆積させてもよく、前記乾燥工程は、一般に50℃〜180℃の範囲、好ましくは60℃〜150℃の範囲、より好ましくは75℃〜140℃の範囲の温度条件で実施される。
【0071】
前記の金属及びリンを堆積させる方法に関係なく、含浸溶液の組成中に用いられる溶媒は、活性相の金属前駆体を溶解させる目的で選択され、例えば水又は有機溶剤(例えばアルコール)である。
【0072】
例えば、用いられうるモリブデン源としては、その酸化物及び水酸化物、モリブデン酸及びそれらの塩(特にモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウムなどのアンモニウム塩)、リンモリブデン酸(HPMo1240)及びそれらの塩、場合によってはケイモリブデン酸(HSiMo1240)及びその塩、が挙げられる。例えば、前記モリブデン源は、Keggin型、lacunary Keggin型、置換Keggin型、Dawson型、Anderson型、Strandberg型のいかなるヘテロポリ化合物であってもよい。好ましくは、三酸化モリブデンが、Keggin型、lacunary Keggin型、置換Keggin型及びStrandberg型のヘテロポリ化合物と共に用いられる。
【0073】
用いられうるタングステン前駆体は、当業者に公知である。例えば、用いられうるタングステン源としては、その酸化物及び水酸化物、タングステン酸及びそれらの塩、(特にタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウムなどのアンモニウム塩)、リンタングステン酸及びそれらの塩、場合によってはケイタングステン酸(HSiW1240)及びその塩、が挙げられる。例えば、前記タングステン源は、Keggin型、lacunary Keggin型、置換Keggin型又はDawson型のいかなるヘテロポリ化合物であってもよい。好ましくは、酸化物及びアンモニウム塩、例えばメタタングステン酸アンモニウム、又は、Keggin型、lacunary Keggin型若しくは置換Keggin型のヘテロポリアニオンが用いられる。
【0074】
例えば、用いられうるコバルト前駆体は、その酸化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、炭酸塩及び硝酸塩から有利に選択される。好ましくは水酸化コバルト及び炭酸コバルトが用いられる。
【0075】
例えば、用いられうるニッケル前駆体としては、その酸化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、炭酸塩及び硝酸塩から有利に選択される。好ましくは水酸化ニッケル及びヒドロキシ炭酸ニッケルが用いられる。
【0076】
リンは、触媒の調製における様々な段階で、また様々な形態において、有利に導入されうる。リンは、前記アルミナ担体の成形の間、又は、好ましくはこの成形の後、導入されうる。それは例えば、選択されたマトリックス(例えば、好ましくはアルミニウムオキシヒドロキシド(ベーマイト、アルミナの前駆体))を解膠させる直前若しくは直後に導入されうる。それは、単独で、又はVIB族の金属及びVIII族の金属のうちの少なくとも1つとの混合物として、有利に導入されうる。リンは好ましくは、VIB族及びVIII族の金属の前駆体と共に、混合物として、一度に若しくは部分的に、前記金属前駆体及びリン前駆体を含有する溶液を用い、前記アルミナ担体への乾式含浸によって、成形されたアルミナ担体に導入される。好ましいリン源はオルトリン酸HPOであるが、その塩及びエステル(リン酸アンモニウム等)又はそれらの混合物も使用できる。リンはまた、Keggin型、lacunary Keggin型、置換Keggin型又はStrandberg型のヘテロポリアニオンの形状のVIB族元素と同時に導入されうる。
【0077】
VIII族及びVIB族の金属と、リンと、の1つ又は複数の含浸工程の終わりに、前記触媒前駆体は、当業者に公知の任意の技術を使用して行われる乾燥工程b)に供される。この工程は常圧又は減圧下で有利に実施される。好ましくは、この工程は常圧下で実施される。この工程b)は、200℃未満、好ましくは50〜180℃の範囲、より好ましくは60〜150℃の範囲、更に好ましくは75〜140℃の範囲の温度で実施される。
【0078】
工程b)は、空気又は他の任意の高温ガスを用いた流動床で有利に実施される。好ましくは、前記の乾燥が流動床で実施される場合、用いられるガスは空気又は不活性ガス(例えばアルゴン又は窒素)である。より好ましくは、前記乾燥は空気の存在下で流動床にて実施される。
【0079】
好ましくは、この乾燥工程は、30分〜4時間の範囲、好ましくは1時間〜3時間の範囲で実施される。
【0080】
本発明に係る方法の工程b)の終わりにおいては、例えば空気中で200℃超の温度で行われる、その後の焼成工程も経ずに、乾燥触媒が得られる。
【0081】
前記触媒は、水素化処理触媒として用いられる前に、硫化工程(活性化工程)を経るのが好ましい。この活性化工程は、当業者に公知の方法を用いて実施され、特に硫黄を還元しうる雰囲気中で、水素及び硫化水素の存在下で実施するのが好ましい。硫化水素は、直接用いてもよく、あるいは、硫黄含有剤(例えばジメチルジスルフィド)から発生させてもよい。
【0082】
本発明の別の態様によると、前記水素化処理触媒は、上記のように、酸素及び/又は窒素を含有する1つ又は複数の有機化合物を更に含む。このタイプの触媒は、以下明細書において「ドーピングされた触媒」という用語で示す。前記触媒に存在する有機化合物は、2つ超の炭素原子と、少なくとも1つの酸素及び/又は窒素原子と、を含有する。
【0083】
酸素を含有する有機化合物は、カルボン酸、アルコール、アルデヒド又はエステルから選択されうる。例えば、前記酸素を含有する有機化合物は、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、150〜1500の分子量のポリエチレングリコール、アセトフェノン、2,4−ペンタンジオン、ペンタノール、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、少なくとも6つのα(1−4)結合されたグルコピラノース単位から構成される環状オリゴ糖、及びジアルキルスクシネートからなるから選択されうる。ジアルキルスクシネートは、好ましくはC−Cジアルキルスクシネートであり、より好ましくは、ジメチルスクシネート、ジエチルスクシネート、ジプロピルスクシネート及びジブチルスクシネートからなる群から選択される。好ましくは、前記C−Cジアルキルスクシネートとして、ジメチルスクシネート又はジエチルスクシネートを用いる。より好ましくは、前記C−Cジアルキルスクシネートはジメチルスクシネートである。1つの実施形態によると、前記有機化合物はC−Cジアルキルスクシネート、特にジメチルスクシネートと酢酸との組合せを少なくとも含む。
【0084】
窒素を含有する有機化合物は、アミンから選択されうる。例えば、前記窒素を含有する有機化合物は、エチレンジアミン又はテトラメチル尿素でありうる。
【0085】
酸素及び窒素を含有する有機化合物は、アミノカルボン酸、アミノアルコール、ニトリル又はアミドから選択されうる。例えば、前記酸素及び窒素を含有する有機化合物は、アミノ三酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、モノエタノールアミン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)でありうる。
【0086】
本発明のドーピングされた触媒は、以下の工程を含む方法を使用して調製される:
i)少なくとも1つのVIB族の金属成分と、少なくとも1つのVIII族の金属成分と、リンと、少なくとも1つの酸素及び/又は窒素を含有する有機化合物と、を、ドーピングされた触媒が得られる形態で、担体と接触させる工程;
ii)工程i)で得られたドーピングされた触媒前駆体を、200℃未満の温度で乾燥させ、以降に焼成しない工程。
【0087】
ドーピングされた触媒前駆体に用いられている、VIB族の元素に対する酸素及び/又は窒素を含有する有機化合物のモル比は、工程ii)における乾燥工程の前において、0.05〜9モル/モルの範囲、好ましくは0.1〜8モル/モルの範囲、より好ましくは0.2〜7モル/モルの範囲である。
【0088】
例えば、前記の有機成分がC−Cジアルキルスクシネート(特にジメチルスクシネートで)と酢酸との混合物である場合、前記成分は好ましくは以下の量で導入される:
・ ドーピングされた触媒前駆体中のVIB族の元素に対する、ジアルキル(例えばジメチル)スクシネートのモル比が、0.05〜2モル/モルの範囲、好ましくは0.1〜1.8モル/モルの範囲、より好ましくは0.15〜1.5モル/モルの範囲;
・ ドーピングされた触媒前駆体中のVIB族の元素に対する、酢酸のモル比が、0.1〜5モル/モルの範囲、好ましくは0.5〜4モル/モルの範囲、より好ましくは1.3〜3モル/モルの範囲、更に好ましくは1.5〜2.5モル/モルの範囲。
【0089】
接触工程i)は、幾つかの実施形態を含む。
【0090】
ドーピングされた触媒の調製方法における、工程i)の第1の実施形態では、成分であるVIB族及びVIII族の金属、リン、並びに成分である有機化合物は、少なくとも1つの共含浸工程(好ましくは乾式含浸)を用いて担体に堆積する。この実施形態によると、前記の成分であるVIB族及びVIII族の金属、リン及び有機化合物は、同時に、前記の担体に導入される。この工程i)の第1の実施形態は、1つ又は複数の共含浸工程の採用を含み、各共含浸工程は好ましくは、通常200℃未満の温度、より好ましくは50〜180℃の範囲、更に好ましくは60〜150℃の範囲、より更に好ましくは75〜140℃の範囲の中間の乾燥工程が続く。
【0091】
ドーピングされた触媒の調製方法における、工程i)の第2の実施形態では、少なくとも1つの酸素や窒素を含む有機化合物が、少なくとも1つのVIII族の金属と、少なくとも1つのVIB族の金属と、リンと、担体と、を含む触媒前駆体と接触する。この第2の実施形態は、「有機化合物の後含浸(post−impregnation)」として公知の調製方法である。これは例えば、乾式含浸によって実施される。
【0092】
この第2の実施形態では、工程i)における接触は、以下に詳細に記載される連続的な工程を含む:
i1)アルミナ担体に、少なくとも1つのVIB族の金属と、少なくとも1つのVIII族の金属と、リンと、を含有する少なくとも1つの溶液を含浸させて含浸した担体を得る工程;
i2)工程i1)で得られた含浸した担体を、200℃未満の温度で乾燥させ、それ以降に焼成せず、乾燥触媒を得る工程;
i3)工程i2)で得られた乾燥触媒を、酸素及び/又は窒素を含有する少なくとも1つの有機化合物からを含む溶液を含浸させ、ドーピングされた触媒前駆体を得る工程;
i4)場合によっては、工程i3)で得られるドーピングされた触媒前駆体を熟成させる工程。
【0093】
工程i1)では、VIB族及びVIII属の金属は、好ましくは、アルミナベースの担体上に過剰の溶液を含浸させるための1つ又は複数の工程を通じて、あるいは、好ましくは、前記アルミナベースの担体への乾式含浸のための1つ又は複数の工程を通じて、金属の前駆体を含有する水溶液若しくは有機溶液を用いて、アルミナ担体に導入される。VIB族及びVIII族の金属の前駆体、並びにリンの前駆体は、上記のとおりである。VIB族及びVIII族の金属と、リンとのアルミナ担体への導入の次に、乾燥工程i2)が続く。ここでは、200℃未満、好ましくは50〜180℃の範囲、より好ましくは60〜150℃の範囲、又は、更に好ましくは75〜140の範囲の温度で、溶媒(通常は水)が除去される。それにより得られる含浸した担体を乾燥させる処理の後、200℃以上の温度の空気中で焼成する工程が決して続かない。
【0094】
なお、工程i1)及びi2)はそれぞれ、本発明に係る上記の「ドーピングされない」触媒の調製方法における工程a)及びb)に対応する。
【0095】
工程i3)によると、前記乾燥触媒は、酸素及び/又は窒素を含有する少なくとも1つの有機化合物を含む含浸溶液で含浸に供される。少なくとも1つの有機化合物を含む前記含浸溶液は、好ましくは水溶液である。
【0096】
前記有機化合物は、1つ又は複数の、過剰量による含浸若しくは乾式含浸工程により、又は、当業者に公知の他の任意の手段による工程により、有利に堆積させることができる。好ましくは、前記有機化合物は、1度の含浸工程において、特に好ましくは1度の乾式含浸工程において導入される。
【0097】
前記調製方法の工程i4)によると、工程i3)で得られるドーピングされた触媒の前駆体を、有利には常圧下、17〜50℃の範囲の温度で、熟成工程に供することができる。熟成させる時間は、通常10分〜48時間の範囲、好ましくは30分〜5時間の範囲である。
【0098】
任意の熟成工程の後、前記調製方法の工程ii)によると、ドーピングされた触媒前駆体を200℃未満の温度で乾燥工程に供し、その後の焼成は行わない。
【0099】
本発明の調製方法の乾燥工程ii)は、当業者に公知の任意の技術を使用して有利に実施される。有利には、常圧下又は減圧下で実施される。好ましくは、この工程は常圧下で実施される。
【0100】
この工程ii)は、有利には50〜180℃の範囲、好ましくは60〜150℃の範囲、より好ましくは75〜140℃の範囲の温度で実施される。工程ii)は、有利には、空気又は他の任意の高温ガスを用いて流動床で実施されうる。流動床で乾燥を実施する場合、好ましくは、前記ガスとして空気又は不活性ガス(例えばアルゴン又は窒素)を用いる。より好ましくは、前記乾燥は空気の存在下で流動床で実施される。好ましくは、この工程ii)は、30分〜4時間の範囲、より好ましくは1時間〜3時間の範囲で行う。
【0101】
本発明の調製方法の工程ii)が終了した後、200℃以上の温度でのいかなる触媒工程も実施することなく、ドーピングされた触媒が得られる。
【0102】
別の実施形態によると、ドーピングされた触媒の調製方法は、有機化合物との共含浸と、前記共含浸で用いたものと同一若しくは異なる有機化合物による処理後含浸とを組み合わせる。
【0103】
この実施形態は、以下の工程を含む:
i)少なくとも1つのVIB族の金属成分と、少なくとも1つのVIII族の金属の成分と、リンと、酸素及び/又は窒素を含有する少なくとも1つの有機化合物とを含む溶液を、共含浸によって担体と接触させて、ドーピングされた触媒前駆体を得る工程;
i’)工程i)で得られたドーピングされた触媒前駆体を、200℃未満の温度で乾燥させ、その後の焼成を行わない工程;
i’’)工程i’)で得られた乾燥済みのドーピングされた触媒前駆体を、酸素及び/又は窒素を含有する有機化合物の溶液と接触させる工程;
ii)工程i’’)で得られた、含浸後のドーピングされた触媒前駆体を、200℃未満の温度で乾燥させて、その後の焼成を行わずに、ドーピングされた触媒を得る工程。
【0104】
上記した処理条件がこの実施形態において適用できることは明らかである。
【0105】
前記ドーピングされた触媒は、使用前に活性化することが有利である。この活性化処理は、当業者に公知の方法を用いて実施される硫化処理に該当し、好ましくは、水素及び硫化水素の存在下、硫黄を還元する雰囲気において実施される。
【0106】
このように得られるドーピングされた触媒は、有利には中間の焼成工程を経ずに、硫化工程に供される。前記ドーピングされた触媒は、有利にはエクスシチュ(ex situ)又はインシチュ(in situ)で硫化される。本発明の乾燥触媒において記載したものと同じ硫化剤が使用できる。
【0107】
本発明はまた、炭化水素留分の水素化処理方法に関する。特に、前記方法は範囲30〜260℃の分留温度の範囲の炭化水素留分の水素化脱硫である。好ましくは、この炭化水素留分は、ガソリンタイプの留分である。より好ましくは、前記ガソリン留分は、例えば、接触分解(流動接触分解)装置から得られるオレフィンガソリン留分である。
【0108】
本発明の水素化脱硫処理は、炭化水素フィード中の有機硫黄化合物を硫化水素(HS)に変換するのと同時に、前記フィード中に存在するオレフィンの水素化処理をできるだけ制限することができる。
【0109】
前記水素化処理工程は、以下の条件下で、本発明に係る触媒及び水素と、炭化水素留分とを接触させる工程からなる:
・ 200〜400℃の範囲、好ましくは230〜330℃の範囲の温度;
・ 1〜3MPaの範囲、好ましくは1.5〜2.5MPaの範囲の全圧;
・ 1〜10時−1の範囲、好ましくは2〜6時−1の範囲の空間速度(HSV)(触媒の体積に対する、フィードの体積流量として定義);
・ 100〜600NL/L範囲、好ましくは200〜400NL/Lの範囲の、水素/ガソリンフィード体積の比。
【0110】
前記の触媒的水素化脱硫工程は、1つ又は複数の一連の固定床型又は沸騰床型の反応装置で実施されうる。前記工程を、少なくとも2台の反応装置を直列に用いて実施する場合、第1の水素化脱硫反応装置で得られる生成物からHSを除去する装置を設け、その後、第2の水素化脱硫反応装置で前記生成物を処理することが可能である。
【実施例】
【0111】
【実施例1】
【0112】
焼成触媒Aの調製(本発明によらない)
比表面積80m/gの遷移アルミナを、触媒Aの担体S1とした。800℃にてギブサイトを(0.8秒の短い滞留時間で)熱分解させる工程により、遷移アルミナを得た。水で洗浄し、粉末上のナトリウム含量を減少させ、前記と同様に2回目の迅速な脱水処理を実施した。得られたアルミナ粉末を次にボウル造粒機でビーズ状に成形し、次に150℃で乾燥させた。最後に、この担体を8時間、の高い水分圧(100%)にて熱水処理し、その後850℃にて焼成した。
【0113】
三酸化モリブデン、水酸化第一コバルト及びリン酸を含有する水溶液で担体を乾式含浸に供し、触媒Aを調製した。金属及びリンの前駆体を含有する溶液の量を、担体による水の取り込み量(0.97mL/g)と厳密に等しくした。最終的に得られる触媒中のモリブデン、コバルト及びリンが、望ましい濃度(重量%)となるよう、水溶液中の金属前駆体の濃度を調節した。金属前駆体を完全に溶解させるため、含浸溶液を90℃で2時間、還流加熱した。担体への乾式含浸の後、触媒を、水を飽和させた容器中で1時間30分熟成させ、オーブンで90℃の空気中で乾燥させ、更に450℃の空気中で焼成した。
【0114】
焼成した後に得られた触媒Aは、15.5重量%のモリブデン(MoO当量)、3.4重量%のコバルト(CoO当量)及び3.9重量%のリン(P当量)を含み、62m/gの比表面積であり、触媒のnm当たり10.6のモリブデン原子の表面積当たり密度であった。この触媒のための原子比率は、以下の通りであった:Co/Mo=0.42、P/Mo=0.51。
【実施例2】
【0115】
尿素及びクエン酸でドーピングし、リンを含まない触媒Bの調製(本発明によらない)
1100℃の空気中で押出し成形したアルミナ担体S0を再度焼成して得た、44m/gの比表面積を有する遷移アルミナを触媒Bの担体S2とした。
【0116】
担体S0は、アルミン酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムとの混合による沈殿反応により合成した。この反応は、60℃の温度、pH9にて、60分間、200rpmで撹拌することにより実施した。得られたゲルを、Zアームミキサーで混合する工程に供し、ペーストを得た。ペーストを直径1.6mmのオリフィスを有する三葉形の鋳型に通して押出しを行った。得られた押出し成形物を次に150℃で乾燥させ、更に450℃の空気中で焼成した。担体S0を次に1100℃の空気中で焼成し、担体S2を得た。
【0117】
コバルト及びモリブデンの前駆体(それぞれ炭酸コバルト及びヘプタモリブデン酸アンモニウム)を含有する水溶液を用いて、担体S2の乾式含浸により触媒Bを調製した。この溶液は尿素及びクエン酸を更に含んでいた。尿素/モリブデン及びクエン酸/モリブデンモルの比がそれぞれ3.8及び0.6となるように尿素及びクエン酸の濃度を設定した。含浸溶液の体積を水で調節し、担体の水取り込み体積(0.62mL/g)と厳密に等しくした。最終的に得られる触媒中のモリブデン、コバルトとリンの濃度が望ましい濃度(重量%)となるよう、溶液中のコバルト及びモリブデンの濃度を調節した。含浸の後、触媒をオーブンで110℃の空気中で乾燥させた。空気中での焼成をその後実施しなかった。
【0118】
乾燥後に得られた触媒Bは、15.3重量%のモリブデン(MoO酸化物当量)、3.3重量%のコバルト(CoO酸化物当量)含量で、34m/gの比表面積で、触媒のnmあたりのモリブデンの表面積当たり密度が18.7原子(「dMo」と示す)であった。この触媒は0.41のCo/Mo原子比率であり、リンを含まなかった。
【実施例3】
【0119】
(本発明による)乾燥触媒C〜Iの調製
触媒Aと同じプロトコルによる乾式含浸、遷移アルミナをベースとする異なる担体、更に同じ熟成工程及び乾燥工程を用い、触媒C〜Iを得た。乾燥工程の後に、空気中で焼成する処理を実施しなかった。三酸化モリブデン、水酸化第一コバルト及びリン酸を水に溶解させ、含浸溶液を得た。溶液中に添加する前駆体の量を調節し、最終的に得られる触媒中に含まれる前駆体の量を最適化した。
【0120】
様々な条件下でアルミナS0を後処理することにより、アルミナS3、S4及びS5を調製した。850℃の湿った空気中(50%の水/kg乾燥空気)で焼成し、担体S3を得た。オートクレーブ中で3時間、6.5%の酢酸の存在下で100℃の熱水処理を行った後、空気中1000℃で焼成し、担体S4を得た。1150℃の空気中で担体S4を焼成し、担体S5を得た。
【0121】
表1は、使用した担体S1、S2、S3、S4及びS5の特徴を示す。
【0122】
【表1】
【0123】
X線回折によって結晶相を解析した。ASTM D3663−03基準に従い、窒素の吸脱着法を用い、BET比表面積を測定した。ASTM D4284−03基準に従い、水銀ポロシメトリーにより、体積及び全細孔容積によるメジアン径を算出した。
【0124】
得られた触媒の金属含量、並びに、VIB族の金属(モリブデン)の密度(dMo:触媒の単位表面積あたりのモリブデンの原子数として表される(原子/nm)を、表2にまとめる。
【0125】
【表2】
【実施例4】
【0126】
触媒A〜Iの触媒性能の評価
10重量%の2,3−ジメチルブト−2−エン及び0.33重量%の3−メチルチオフェン(すなわち、フィード中の硫黄の重量が1000ppm)を含有する接触分解ガソリン(FCC)を、代表的なモデルフィードとして用い、様々な触媒性能の評価を行った。ヘプタンを溶媒として用いた。
【0127】
4mLの触媒の存在下、1.5MPaの全圧、210℃の温度、HSV=6時−1(HSV=フィードの体積流量/触媒の体積)及び300NL/LのH/フィード体積比の条件で、固定床流動床反応装置にて水素化脱硫反応(HDS)を実施した。HDS反応に先立ち、常圧下、15%(mol)のHSを含有する水素流中で2時間、350℃でインシチュで触媒を硫化した。
【0128】
各々の触媒を、連続的に、反応装置中に置いた。異なる時間間隔でサンプリングをし、気相式クロマトグラフィ分析により、試薬の消失と生成物の生成を観察した。
【0129】
触媒活性及び選択性について、触媒の性能を評価した。水素化脱硫活性(HDS)の結果は、3−メチルチオフェンのHDS反応の速度定数(kHDS)に基づき、添加された触媒の体積により標準化し、硫黄を含む化合物に関する一次速度論を用いて推定することにより得た。オレフィンの水素化処理活性(HydO)の結果は2,3−ジメチルブト−2−エンの水素化処理反応の速度定数に基づき、添加された触媒の体積により標準化し、オレフィンに関する一次速度論を用いて推定することにより得た。
【0130】
触媒の選択性は、速度定数を標準化した比率(kHDS/kHydO)として表される。高い比率kHDS/kHydOは、触媒の選択性が高いことを示す。
【0131】
触媒Aを参照値として用い(相対的なHDS活性及び相対的な選択性=100)、得られた数値を標準化した。すなわち、上記の性能は相対的なHDS活性及び相対的な選択性である。
【0132】
【表3】
【0133】
本発明の触媒は全て、オレフィン水素化処理に対する水素化脱硫の選択性について、本発明によらない触媒(すなわち触媒A(焼成した触媒)及び触媒B(リンを含まない触媒))と比較し向上していた。この触媒の選択性の向上により、オレフィン水素化処理によるオクタン価の減少を可能な限り防止できるため、特にオレフィンを含有するガソリンの水素化脱硫工程を実施する場合に特に有利である。
【0134】
触媒C〜Iはまた、本発明によらない触媒A及び触媒Bと比較し水素化脱硫において高い活性を示す。
【実施例5】
【0135】
有機共含浸分子の存在下での(本発明による)乾燥触媒K1及びK2の調製
担体S4の乾式含浸により、触媒K1及びK2を得た。金属及びリンの前駆体を含有する含浸水溶液の体積を、担体の水取り込み量(0.91mL/g)と厳密に等しくした。最終的に得られる触媒中のモリブデン、コバルト及びリンを好ましい濃度(重量%)とするため、水溶液中の金属前駆体の濃度を調節した。
【0136】
三酸化モリブデン、水酸化第一コバルト及びリン酸を溶解させ、更に有機分子としてクエン酸を添加して得た溶液を第1溶液とし、トリエチレングリコールを添加して得た溶液を第2溶液として、2つの含浸溶液を調製した。第1の含浸溶液は、クエン酸/モリブデンのモル比が0.4であった。第2の含浸溶液は、トリエチレングリコール/モリブデンのモル比が0.4であった。前記含浸溶液を90℃で2時間、還流加熱し、金属前駆体が完全に溶解した溶液を得た。次にこれらの溶液を担体S4へ含浸させた。乾式含浸の後、水を飽和させた密封容器中で1時間30分、触媒を熟成させ、更にオーブンで120℃の空気中で乾燥させた。クエン酸を含有する触媒K1の場合、モリブデン(MoO)、コバルト(CoO)とリン(P)の含量は、酸化物当量でそれぞれ10.5、2.2及び2.9であった。
【0137】
トリエチレングリコール含む触媒K2の場合、モリブデン(MoO)、コバルト(CoO)及びリン(P)の含量は、酸化物当量でそれぞれ10.4、2.2及び2.9であった。
【0138】
【表4】
【実施例6】
【0139】
ポストドーピングによる有機分子の存在下の(本発明による)乾燥触媒L1、L2及びL3の調製
乾燥触媒Eから触媒L1、L2及びL3を得た。1つ又は複数の有機分子を含有する水溶液を混合して、追加的な乾式含浸工程を実施した。前記溶液の量を、乾燥触媒Eの水の取り込み量(0.76mL/g)及び調製される触媒の重量の関数として決定した。
【0140】
クエン酸を含有する水溶液の乾式含浸により、ドーピングされた触媒L1の前駆体を得た。クエン酸/モリブデンのモル比=0.4が得られるように、前記溶液中のクエン酸濃度を決定した。
【0141】
トリエチレングリコールを含有する水溶液の乾式含浸により、ドーピングされた触媒L2の前駆体を得た。トリエチレングリコール/モリブデンのモル比=0.4が得られるように、前記溶液中のトリエチレングリコールの濃度を決定した。
【0142】
ジメチルスクシネート及び酢酸を含有する水溶液の乾式含浸により、ドーピングされた触媒L3の前駆体を得た。ジメチルスクシネートとモリブデンとの間のモル比=0.7が得られるように、ジメチルスクシネートの濃度を決定し、酢酸及びジメチルスクシネートとの間の体積比を0.75に固定した。
【0143】
乾式含浸の後、ドーピングされた触媒L1、L2及びL3の各前駆体を、密封容器中に水を飽和させた雰囲気下で周囲温度にて1時間30分間、空気中で熟成させ、次いでロータリーエバポレーター中において140℃で2時間乾燥させた。
【0144】
ドーピング前には、触媒L1、L2及びL3の前駆体の特徴は触媒Eと同一であった。
【実施例7】
【0145】
(本発明によらない)触媒A及びBと比較した、触媒K1、K2、L1、L2及びL3の性能の評価
実施例4の条件に従い、触媒の性能を測定した。結果を表6に示す。
【0146】
【表6】
【0147】
本発明の触媒は全て、オレフィン水素化処理に対する水素化脱硫の選択性について、本発明によらない触媒A(焼成)及び触媒B(焼成なし、リンなし)と比較し向上していた。
【0148】
この触媒の選択性の向上により、オレフィン水素化処理によるオクタン価の減少を可能な限り防止できるため、特にオレフィンを含有するガソリンの水素化脱硫工程を実施する場合に特に有利である。
【0149】
更に、前記触媒は、本発明によらない触媒A(焼成)及び触媒B(焼成なし、リンなし)と比較し、非常に良好な相対HDS活性を示す。以上のように、いかなる特定の理論にも拘束されないが、共含浸又はポストドーピングにより有機分子を添加することにより、とりわけ、相対HDS活性を顕著に向上させることができる。