(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置(88)に動作可能に結合され、前記3パラメータ絶縁器(32)の動作特性を監視するように構成されるセンサ(90、92)を更に備え、前記制御装置が前記動作特性の関数として前記MR制動流体の前記粘度を調節するように構成され、前記3パラメータ絶縁器は前記主ばねにより主に定まるばね定数(KA)と、磁気粘性(MR)制動流体で充填されるときに前記制動子を経る体積剛性により主に定まる調整ばね定数(KB)とを有する、請求項1に記載の適応型3パラメータ絶縁器組立体(30)。
前記制御装置(88)が宇宙機打ち上げモードおよび軌道上モードで動作可能であり、前記制御装置(88)が、前記宇宙機打ち上げモードで動作するときに、前記3パラメータ絶縁器(32)の動的剛性を増加させるように前記磁界を調節する、請求項1に記載の適応型3パラメータ絶縁器組立体(30)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0013]以下の発明を実施するための形態はその性質上例示に過ぎず、本発明または本発明の応用例や使用例を限定することは意図されていない。更には、前述の背景技術または以下の発明を実施するための形態に提示されるいかなる理論にも拘束されものではない。
【0011】
[0014]本明細書に現れる用語「適応型」は、「受動型」振動絶縁器および他の絶縁システムとの区別のために利用される。したがって用語「適応型」は、「能動型」および「準能動型」絶縁器組立体および絶縁システムを共に包含する。本明細書に記載の適応型絶縁器組立体は、ビークルとビークルにより担持されるペイロードとの間で伝達される振動または衝撃力を減衰するために利用されるビークル絶縁システムに有益に使用される。しかしながら、後述の3パラメータ絶縁器組立体(および絶縁器組立体を使用する多点絶縁システム)は、2つの物体または構造体間の振動または衝撃荷重を減衰することが望まれる、任意の宇宙機器搭載、航空機搭載、陸上または他の用途に利用できることを強調しておく。いくつかの絶縁器組立体を含む多点ビークル絶縁システムの例は以下に
図5と併せてより完全に記載される。
【0012】
[0015]
図1は、先行技術の教示に従って例示する受動型3パラメータ絶縁器10の概略図である。3パラメータ絶縁器10は絶縁物体「IO」と台座「P」との間に機械的に結合される。一実施形態において、台座Pは衛星または他の宇宙機である一方、絶縁物体IOは宇宙機により担持される光学台または他の感振ペイロードである。別の実施形態において、台座Pは航空機であり、絶縁物体IOはガスタービンエンジンであり、航空機胴体に達する前に望ましく減衰される振動を発生する。更なる実施形態において、台座Pは異なる種類のビークルであり得る。
図1にモデル化したように、3パラメータ絶縁器10は以下の機械要素または構成要素、すなわち(i)絶縁物体IOと台座Pとの間に機械的に結合される第1のばね構成要素K
A、(ii)絶縁物体IOと台座Pとの間に、第1のばね構成要素K
Aと並列に機械的に結合される第2のばね構成要素K
B、および(iii)絶縁物体IOと台座Pとの間に、第1のばね構成要素K
Aと並列に且つ第2のばね構成要素K
Bと直列に機械的に結合される制動子C
Aを含む。3パラメータ絶縁器10の伝達率は次式により表される。
【0014】
式中、T(ω)は伝達率であり、X
output(ω)は絶縁物体IOの出力運動であり、X
input(ω)は台座Pにより絶縁器10に付与される入力運動である。
[0016]
図2は、2パラメータ絶縁器(曲線14)および非減衰装置(曲線16)と比べて3パラメータ絶縁器10(曲線12)の制動特性を例示する伝達率図である。
図2に18で示すように、非減衰装置(曲線16)は、例示の例では10ヘルツをやや下回る限界周波数で比較的高いピーク利得をもたらす。比較として、2パラメータ装置(曲線14)は、限界周波数では有意により低いピーク利得であるが、限界周波数を超えた後(ロールオフと呼ぶ)では周波数増加に伴い望ましくなく漸次の利得減少をもたらす。例示の例では、2パラメータ装置(曲線14)のロールオフはディケード当たりおよそ20デシベル(「dB/decade」)である。最後に、3パラメータ装置(曲線12)は、2パラメータ装置(曲線14)により達成されるものと実質的に同等の低いピーク利得をもたらし、更に約40dB/decadeの比較的急峻なロールオフをもたらす。したがって3パラメータ装置(曲線12)は、曲線12および14により囲まれる範囲20により
図2で定量化されるように、より高い周波数で有意により低い伝達率をもたらす。非限定例として、3パラメータ絶縁器の更なる考察が、1994年1月26日に発行された、「THREE PARAMETER VISCOUS DAMPER AND ISOLATOR」という名称の米国特許第5,332,070号、および2007年2月27日に発行された、「ISOLATOR USING EXTERNALLY PRESSURIZED SEALING BELLOWS」という名称の米国特許第7,182,188(B2)号に見られ、双方とも本出願の譲受人に譲受され、参照することにより本明細書により組み込まれる。
【0015】
[0017]したがって、
図1に概略的に例示する絶縁器10のような、受動型3パラメータ絶縁器は、所与の周波数範囲にわたり、非減衰装置および2パラメータ装置と比べて、優れた制動特性(即ち、より低い全体伝達率)をもたらすように調整できることが理解されるべきである。更には、粘弾性制動子とは対照的に、受動型3パラメータ絶縁器の剛性および制動特性は独立して調整できる。それ故、6つ以上の絶縁器が多点システムに配置されると、各3パラメータ絶縁器は特に、台座とそれにより支持される絶縁物体との間の振動伝達を最小限に抑えるために各自由度で最適な剛性および制動をもたらすように調整できる。しかしながら、上記の「背景技術」という項で述べたように、受動型3パラメータ絶縁器はいくつかの点では依然制限がある。例えば、3パラメータ絶縁器は目標臨界モードに対応する周波数でピーク制動をもたらすように調整できる一方、受動型3パラメータ絶縁器は、他の臨界または剛体モードが起こる他の動作周波数では最適に及ばない制動をもたらすことになる。これは、臨界モードが起こる正確な周波数は絶縁器展開後(例えば、宇宙機打ち上げ後)まで分からないことがあり、また時間と共に変動する点で不利になり得る。更なる制限として、受動型3パラメータ絶縁器の動的剛性は典型的には固定され、したがって、打ち上げ時および軌道上環境など、高度に異なる環境での絶縁器動作に応じるために絶縁器動作中に調節することはできない。
【0016】
[0018]以下、従前の受動型3パラメータ絶縁器に関する前述の制限を克服する適応型3パラメータ絶縁器組立体を説明する。後述する絶縁器組立体は、3パラメータ絶縁器の油圧室に流体結合される外部磁気粘性(MR)弁を使用する。絶縁器の油圧室はMR制動流体で充填され、この流体が油圧室間を流れる際にMR弁を通過する。総合制御装置がMR弁により発生される磁界の強度を変更して油圧室間を流れる際のMR制動流体の粘度を修正する。制御装置はMR制動流体の粘度を修正して3パラメータ絶縁器の動的剛性を調節できる。加えて、または代替として、制御装置は制動流体粘度を修正して3パラメータ絶縁器の制動係数(C
A)を変更し、またそれにより絶縁器がピーク制動をもたらす周波数を能動的に調整できる。後者の場合、制御装置は、組立体内に含まれる1つまたは複数の振動センサにより検出される起振力の大きさのような入力データ応じて、制動流体粘度を修正できる。そうする際に、絶縁器組立体はその制動能力を、目標臨界モードが発達し時間と共に変化するにつれ、それらに合わせて自動的にまたは適応的に自己調整する。更なる例として、制御装置は、温度測定値に応じて制動流体粘度を修正して熱的に誘起される制動流体体積の変化を相殺してよい。これは次いで、一般に3パラメータ絶縁器内に含まれる種類の熱補償器の必要性を排除することができる。そのような適応型3パラメータ絶縁器組立体の例を以下
図3と併せて説明する。
【0017】
[0019]
図3は、本発明の例示的実施形態に従って例示する適応型3パラメータ絶縁器組立体30の概略図である。絶縁器組立体30は、3パラメータ絶縁器32と、絶縁器32に対して外部に位置決めされ且つ流体結合されるMR弁34とを含む。いくつかの点で、3パラメータ絶縁器32は、本出願の譲受人に譲受され、参照することにより組み込まれる、1998年9月8日に発行された、「HEAVY LOAD VIBRATION ISOLATION APPARATUS」という名称の米国特許第5,803,213号に記載されるものなど、他の公知の3パラメータ絶縁器と類似する。しかしながら、そのような絶縁器は典型的には本質的に受動型であり、外部MR弁や制御システムと協同して、後述の方式でMR制動流体の粘度を操作することにより剛性および制動の能動型または適応型調節をもたらすものではない。更には、強調点として、(i)絶縁器32が、MR制動流体で充填し得る少なくとも2つの油圧室を有する3パラメータ装置であり、且つ(ii)絶縁器32の油圧室が、MR制動流体が油圧室間を流れるときに外部MR弁を通して送られるようにMR弁に流体結合される限り、3パラメータ絶縁器32の特定の設計は実施形態間で異なり得る。このことを念頭に、3パラメータ絶縁器組立体30の動作がより良く理解できる例示的な、しかし非限定的な状況をもたらすために、
図3に概略的に示す3パラメータ絶縁器32の実施形態を以下詳述する。
【0018】
[0020]
図3に概略的に例示するように、3パラメータ絶縁器32は、第1の端部38と、端部38の反対側の第2の端部40と、端部38および40の間の中間部42とを有する絶縁器ハウジング36を含む。参照し易いように、ハウジング端部38および40は以降それぞれ「上」および「下」端部と呼んでよく、3パラメータ絶縁器32のその他の構造的構成要素を説明するために同様の術語を使用してよい。そのような用語は、
図3に示す3パラメータ絶縁器32の例示される向きに関して、および絶縁器32は3次元空間で任意の向きを取れるという了解の下に利用される。絶縁器ハウジング36は、対向油圧室および1つまたは複数の平行移動ピストン(例えば、後述のピストン48および52)を包含するのに適する任意の数の部品から生産できる。一実施形態において、およびもっぱら非限定例として、ハウジング36は、1つまたは複数の端キャップがねじ取付けにより、円周溶接により、または液密シールを形成するのに適する別の接合技法を利用して密封接合されるシリンダから生産される。多くの実施形態において、絶縁器ハウジング36は全体的に管状の形状を有し、またより完全には後述するように、制動子ピストンが絶縁器32の作動軸に沿って平行移動するように摺動可能に装着される少なくとも1つの内部空洞またはボアを包含するであろう。
図3に示すように、絶縁器ハウジング36は、MR弁34が装着される外部弁装着インタフェース43を含むことができる。
【0019】
[0021]可変容積対向油圧室44および46はハウジング36内に包含される。制動子ピストン48は絶縁器ハウジング36の上部内に摺動可能に装着され、油圧室44および46を流体分割する。制動子ピストン48は絶縁器ハウジング36内で絶縁器32の作動軸(
図3に破線50により表す)に沿って摺動できる。ガスばねピストン52も同様に、ハウジング36の下部内に作動軸50に沿って平行移動するように摺動可能に装着される。制動子ピストン48とガスばねピストン52は、下油圧室46内に延在する内部軸または連接棒54により剛接合される。この剛結合の結果、ピストン48および52は絶縁器32の動作中に作動軸50に沿って一体となって往復動する。ピストン48および52は各々ハウジング36の内周面に密封係合する。この点で、ピストン48および52は各々、ピストン48および52をハウジング内で軸方向に摺動させつつも精密嵌合をもたらすように、ハウジング36の内径よりも僅かに小さい外径を有して作製されてよい。所望であれば、ピストン48および52には各々、Oリングのような動的シール(図示せず)が装備されてハウジング36の内面に密封係合し、またそれにより、それぞれのピストン−ボア界面からの流体漏出を最小限に抑えるまたは排除してもよい。
【0020】
[0022]貫通軸56が、絶縁器ハウジング36の上端部38に設けられる開口58を通して上油圧室44内に延在する。貫通軸56の内末端は、例えば、ねじインタフェースまたは他の取付けインタフェースを利用して、制動子ピストン48に添着してよい。或いは、貫通軸56と制動子ピストン48は単一の加工部品として生産できる。貫通軸56の外末端は3パラメータ絶縁器32の第1の機械的入出力部として機能し、
図3に概略的に例示するような、第1の旋回継手60に添着される。下軸または「スティンガ」62が更にハウジング36の下端部40に剛接合され、またそこから軸方向に延出する。スティンガ62は絶縁器32の第2の機械的入出力部として機能する。スティンガ62は同様に下旋回継手64で終了することができる。旋回継手60および64は集合的に、3パラメータ絶縁器32の設置中および/またはピストン48および52が絶縁器32の作動軸50に沿って往復動する際に、3パラメータ絶縁器32の追加の運動の自由を可能にする。更なる実施形態において、3パラメータ絶縁器32は、固定点装着インタフェースまたは球面軸受け装着インタフェースのような、異なる種類の装着インタフェースを含んで生産できる。加えて、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の装着特徴が絶縁器ハウジング36の下端部40に直接一体化でき、その場合スティンガ62は不要でよい。
【0021】
[0023]油圧室44および46は気密的に密封され、または最低でも流体密であり、絶縁器32の動作中の制動流体の漏出を防止する。油圧室44および46は、制動子ピストン48、ガスばねピストン52、連接棒54および貫通軸56の平行移動を可能にするようにして密封される。これは、滑り界面および動的シールのシステムを利用して達成できる。或いは、
図3に示すように、第1の金属密封ベローズ66をハウジング36の上端部38と貫通軸56との間に密封接合して、貫通軸56の平行移動を可能にしつつ油圧室44の上端部を密封できる。ベローズ66は内圧が加えられており、制動子ピストン48と絶縁器ハウジング36の内面と共に、上油圧室44を制限する。第2の金属密封ベローズ68が同様に、ハウジング36内に設けられる内周壁70とガスばねピストン52の第1の面との間に密封接合される。内壁70には開口72が設けられ、そこに連接棒54が延在してピストン48および52を接合する。ベローズ68もしたがって内圧が加えられており、ピストン52の第1の面、制動子ピストン48の第1の面(室44を制限するピストン48の面の反対側)、およびハウジング36の内面と協働して油圧室46を制限または画定する。空隙または開放空間が密封ベローズ68の外部を囲み、通気穴74をハウジング36の側壁に設けることで、ベローズ68の屈曲に影響を与えかねない空気量を閉じ込めてしまうことを防止できる。
【0022】
[0024]油圧室44および46は、MR弁34を通して延在する流路により流体結合される。具体的には、
図3に示す例示的実施形態において、上油圧室44はMR弁34の第1のポートに第1の導管76により流体結合される一方、下油圧室46はMR弁34の第2のポートに第2の導管78により流体結合される。側壁ポート80および82が絶縁器ハウジング36に設けられ、それぞれ導管76および78に流体結合され、所望の流体相互接続を容易にする。油圧室44および46、導管76および78、ならびにMR弁34は、後述のように、絶縁器組立体30の動作中に選択されたMR制動流体を収容し導く。MR制動流体は、制動目的に適し且つ外部生成される磁界の大きさに関して変動する粘度を有する任意の液体であり得る。絶縁器組立体30は最初は制動流体無しで生産および配布してよく、その場合、油圧室44および46(ならびに導管76、導管78、およびMR弁34)は、生産後且つ組立体30の使用前に、選ばれた接合部にて選択された制動流体で充填してよい。絶縁器組立体30の種々の室および流路の充填は、制動流体充填後に密封される、非例示の注入口を利用して達成してよい。
【0023】
[0025]上記のように、制動子ピストン48、ガスばねピストン52、貫通軸56、および連接棒54は、絶縁器32の動作中にハウジング36に対して平行移動する。制動子ピストン48がハウジング36内を摺動するにつれ、MR制動流体が油圧室44および46間で交換され、それぞれの容積がピストン48の平行移動位置に従って変動する。制動子ピストン48が動いた結果、油圧室44の容積が減少し、それに対応して油圧室46の容積が増加する例では(即ち、制動子ピストン48が
図3に示す例示の向きで上方に移動するとき)、制動流体は室44から、流路76を経て、MR弁34を経て、流路78を経て、室46に流れる。逆に、制動子ピストン48が動いた結果、油圧室44の容積が増加し、油圧室46の容積が減少する例では(制動子ピストン48が例示の向きで下方に移動するとき)、制動流体は室46から、流路78を経て、MR弁34を経て、流路76を経て、室44に流れる。室44および46間を進むとき、MR制動流体は少なくとも1つの制限された流路または開口部を強制的に通されて所望の制動効果を提供する。
図3に概略的に示す実施形態において、制限された流路は側壁ポート80および82、流路76および78、ならびにMR弁34の組合によりもたらされる。したがって油圧室44および46、制動子ピストン48、ならびに制動流体は集合的に、制動係数C
Aを有する制動子44、46、48を形成する。
【0024】
[0026]3パラメータ絶縁器32は更に、制動子44、46、48と並列に機械的に結合される主ばね含む。いくつかの実施形態において、主ばねは別個のコイルばねまたはハウジング36に切り込まれる加工ばねであり得る。例示の例では、主ばねは、ガスばねピストン52およびハウジング36の下部に設けられる空気圧室84により集合的に形成されるガスばね52、84である。
図3に示すように、空気圧室84はハウジング36の内面および、部分的に下油圧室46を制限するガスばねピストン52の上部の反対側のピストン52の下面により制限される。こうして絶縁器32を通して、2つの負荷経路、すなわち(i)上旋回継手60から、貫通軸56を経て、制動子44、46、48を経て、ハウジング36を経て、下旋回継手64に延在する第1の負荷経路、および(ii)上旋回継手60から、貫通軸56を経て、連接棒54を経て、ガスばね52、84を経て、下旋回継手64に延在する第2の負荷経路が提供される。したがって絶縁器32は、適宜、C
A(制動係数)が制動子44、46、48および選択されるMR制動流体の粘度により定まる3パラメータ装置と見なされる。ばね定数K
Aは主にガスばね52、84により定まる。最後に、調整ばね定数K
Bは主に、選択される制動流体で充填されるときの制動子44、46、48を経る体積剛性により定まる。
図3に示す実施形態においては設けられていないが、絶縁器32の更なる実施形態において、別個の調整ばね(例えば、コイル、加工またはガスばね)を制動子44、46、48と直列に且つ主ガスばね52、84と並列に設けてK
B値の追加調整を可能にできる。
【0025】
[0027]3パラメータ絶縁器組立体30の動作中に、MR弁34は、MR制動流体が絶縁器32の対向油圧室44および46間を流れる際に通過する磁界を発生する。絶縁器組立体30は更に、MR弁34により生成される磁界の強度、MR制動流体の粘度、ならびに従って絶縁器32の動的剛性および制動性質を制御するように機能する制御サブシステム86を含む。
図3に示すように、制御サブシステム86は総合制御装置88、1つまたは複数の振動センサ90、温度センサ92、および電源94を含み得る。制御サブシステム86構成要素およびMR弁34の間の種々の相互接続を
図3に破線96により表す。図示されるように、制御装置88はMR弁34に動作可能に結合され、具体的には、弁34内に包含される1つまたは複数の誘導コイル(後述)に電気的に結合される。振動センサ90、温度センサ92、および電源94は更に制御装置88に結合される。これらの接続は典型的にはハード、つまり有線であろうが、しかしながら、センサ90および/またはセンサ92が制御装置88と無線通信する可能性は決して排除できない。制御装置88はMR弁34に、それにより生成される磁界の強度を変更させる。制御装置88は典型的には(しかし常に必要ではない)、電源94により弁34に供給される電流または印加される電圧を変更することにより、弁34により生成される磁界の強度を調節する。制御装置88は本質的に手動式、電気式または機械式、もしくはその組み合わせであり得る。少なくとも部分的に電子的に実装される場合、制御装置88は、上述の機能を行うのに適する任意の数の相互接続されるハードウェア(例えば、プロセッサやメモリ)、ソフトウェアおよびファームウェア構成要素を含み得る。
【0026】
[0028]制御装置88は、制御装置88に関連付けられるメモリに記憶される所定のスケジュールに従って、弁34により生成される磁界の強度を調節するようにプログラムまたは別の方法で構成できる。例えば、絶縁器組立体30が衛星上に展開される場合、制御装置88はMR弁34に対して、衛星打ち上げ中に弁34により生成される磁界の強度を増加させ、その後衛星が軌道に乗ると磁界の強度を低下させるように命令できる。この場合、制御装置88は少なくとも以下のモード、すなわち(i)制御装置88が、絶縁器32の動的剛性を増加させるように磁界を調節する宇宙機打ち上げモード、および(ii)制御装置88が磁界の強度、そして絶縁器32の剛性を減少させる軌道上モードで動作可能でよい。このようにして、3パラメータ絶縁器32の動的剛性を、打ち上げ中は増大させて絶縁器32を損傷から保護でき、次いでその後の軌道上運転中は減少させて絶縁器32を低振幅振動への応答改善のために軟化できる。更なる実施形態において、制御装置88は、外部制御源から受信する、しかも恐らくは無線送受信機(図示せず)を介して受信する指令に応じて、MR弁34により生成される磁界の強度を操作できる。
【0027】
[0029]制御装置88は更に、反動的または半能動的方式で、具体的には、絶縁器組立体30に関して測定される動作特性に応じて、MR弁34により生成される磁界の強度を調節できる。一実装形態において、制御装置88は、振動センサ90により受信されるデータに応じて、MR弁34により生成される磁界の強度を調節するように構成される。振動センサ90は例えば、1つまたは複数の単軸または二軸加速度計であり得、絶縁器32に、台座(例えば、
図5に示す台座P)に、または絶縁物体(例えば、
図5に示す絶縁IO)に装着してよい。制御装置88は、適宜、センサ90により測定される起振力の大きさを所定の閾値未満に維持するために、MR流体粘度を増加または減少させるように構成できる。このようにして、制御装置88はMR弁34を制御して3パラメータ絶縁器32の制動性質を、およびそれにより絶縁器32の全動作周波数領域にかけて起こる目標臨界モードを終始調節できる。更には、制御装置88はMR弁34を制御して、絶縁器組立体30の動作寿命中に起こり得る臨界モードの任意の周波数ドリフトに適応できる。検出される振動の関数として磁界の強度を調節することに加えてまたは代えて、制御装置88は、温度センサ92から受信するデータに応じて、MR弁34により生成される磁界の強度を調節して、例えば、熱的に誘起される制動流体体積変化の変化を補償できる。具体的には、センサ92により記録される温度が上昇するにつれ、制御装置88はMR弁34を制御してMR制動流体の低下する粘度を相殺できる。
【0028】
[0030]絶縁器組立体30はMR制動流体粘度の適応型調整を可能にし、3パラメータ絶縁器32の剛性および制動特性が現場で調整できるようにすることを理解されたい。MR制動流体粘度の所望の変化は、MR弁34により生成される磁界の強度を修正することにより達成される。特に、人工生成される磁界に曝されていないときのMR制動流体の自然つまりインヘレント粘度が、MR弁34にその所望の制動および剛性特性を付与するのに適切であれば、動作の或る間隔中にMR弁34を励磁することは不要でよい。更には、MR弁34は絶縁器32に対して外部であり(そこに一体化されるのに対して)、電力密封ケーブルの密封が避けられ、絶縁器32のばね/制動子要素の設計複雑度は良好に低減され、またMR弁34の除去や分解は容易となる。加えて、例えば、万一弁34内に含まれるインダクタコイルの大きさまたは数を増加する必要がであっても、絶縁器32のばね/制動子要素を再設計する必要性は排除される。MR弁34は、MR制動流体が絶縁器32の油圧室44および46間を流れる際に通過する磁界を生成するのに適する任意の形状を取れる。しかしながら、MR弁故障の際にも絶縁器組立体30が引き続き機能するように、MR弁34は弁要素またはいかなるその他の可動部品も有さないことが好ましい。可動部品を有さず、MR弁34としての使用に適するMR弁の例を以下
図4と併せて説明する。
【0029】
[0031]
図4は、
図3に示すMR弁34としての使用に適する3段階可逆MR弁100の横断面図である。この例では、MR弁100は第1および第2の端キャップ104および106を有する弁ハウジング102を含む。端キャップ104および106は、例えば、ねじ棒ならびに関連する締結具110および112を利用して、シリンダコア108の対向端に接合される。ポート114および116がそれぞれ端キャップ104および106に設けられる。全体的に環状または管状の流路118がコア108周囲でポート114および116間に延在する。流路118は、常磁性保持器122に巻かれてフェライト環124で散在されるいくつかのインダクタコイル120により囲まれる。囲い板126がこの組立体を囲い、非例示の導線が囲い板126を通してコイル120へ設けられる。
図3に示すMR弁34とし利用されると、ポート114は導管76に流体結合でき、ポート116は導管78に流体結合でき、コイル120は制御装置88に電気的に結合できる。ピストン48および52が絶縁器32(
図3)にわたり印加される起振力に応じて往復動すると、MR制動流体は対向油圧室44および46間をおよびMR弁100(
図4)を通して流れる。したがって制御装置88は、MR制動流体が弁100を通過する際の粘度を調節するように、コイル120に供給される電流を変動させてそれにより生成される磁界の強度を増加または減少できる。これにより、制御装置88は次いで、前述のように、3パラメータ絶縁器32(
図3)の剛性および制動性質を調節できる。特に、MR弁100は弁要素またはその他のいかなる可動部品も有さない。結果として、万一のMR弁故障の場合にも、MR制動流体は依然弁100を流通でき、絶縁器組立体30は引き続き動作する。
【0030】
[0032]
図5は、絶縁器組立体30(
図3)がいくつかの同様の絶縁器(同じく参照番号「30」により特定される)と組合されて、本発明の更なる例示的実施形態に従って例示するように、絶縁システム130を生成できる一方式を例示する簡略図である。絶縁システム130は台座Pと絶縁物体IOとの間に多点装着配置で展開される。
図5に全体的に例示するように、絶縁器組立体30の対向端(特に、組立体内に含まれる絶縁器の対向端)は、複数の装着ブラケット134などの装着ハードウェアを利用して台座装着インタフェース132に装着される。この特定例で、絶縁システム130は8つの絶縁器組立体30を含み、それらは8腕装着配置に位置決めされて高忠実度制動を6自由度(「6DOF」)でもたらす。更なる実施形態において、絶縁システム130はより小さい数またはより大きい数の絶縁器組立体を含んでよく、それらは他の装着配置に位置決めされてよい。例えば、代替実施形態において、絶縁システム130は、6脚つまりスチュワートプラットホーム式装着配置に位置決めされる6つの絶縁器組立体30を含んでよい。
【0031】
[0033]台座Pおよび絶縁物体IOは、絶縁システム130が使用される特定の用途に従って、様々な異なる形状を取れる。いくつかの実施形態において、台座Pは宇宙機の形状を取ってよい一方、絶縁物体IOは、宇宙機により担持される光学ペイロードまたはセンサ一式などの、感振構成要素の形状を取る。この場合、絶縁システム130は、宇宙機が軌道上にあるときに、宇宙機内の振動放出源から装着インタフェース132を経た感振構成要素への振動の伝達を最小限に抑える役目を担ってよい。同様に、絶縁システム130は、宇宙機打ち上げ中に、装着インタフェース132を経た感振構成要素への衝撃力の伝達を最小限に抑える役目を担ってよい。他の実施形態において、台座Pは航空機など、異なる種類のビークルであり得る。各絶縁器組立体は、絶縁システム130の動作中に台座Pおよび絶縁物体IOの剛体モードの高制動をもたらすように命令できるまたは自動的に自己調整してよい。したがって絶縁システム130は、台座Pおよび絶縁物体IOの全動的動作範囲にわたって(静的から非常に高周波数まで)高忠実度制動性能をもたらすことができる。同時に、絶縁器組立体30の動的剛性は高衝撃荷重の存在下で(例えば、台座Pが衛星または他の宇宙機である実施形態において宇宙機打ち上げ中)自動的に増加されて組立体30を流体漏出または他の損傷から保護できる。
図5に別個のユニットとして示したが、少なくとの幾つかの実施形態において、絶縁器組立体30のいくつかの構成要素を組み合わせて部品数を低減できることが理解されるであろう。例えば、2つ以上の絶縁器組立体30が共通の電源、共通の制御装置、共通の温度センサ(もし有れば)、および/または共通の振動センサ(もし有れば)を共有できる。
【0032】
[0034]したがって従前の受動型3パラメータ絶縁器に関するいくつかの制限を克服する適合型3パラメータ絶縁器組立体の実施形態を提供してきた。上述の実施形態において、絶縁器組立体はMR弁を含み、MR制動流体が3パラメータ絶縁器の油圧室間を通る際に制動流体の粘度が制御できる。これにより、次いで3パラメータ絶縁器の剛性および制動特性が、予め設定したスケジュールに、外部制御源から受信される指令に、または絶縁器組立体の測定される動作特性(例えば、温度および/または振動測定値)に応じて、現場で調整できる。このようにして、絶縁器組立体は軌道上で独立して自己調整して終始を、1つまたは複数の臨界モードが発達し時間と共に変化するにつれ、それら目標とできる。加えて、絶縁器組立体は制動流体粘度を調節して熱的に誘起される制動流体体積の変化を補償するように構成できる。上記は複数の3パラメータ絶縁器組立体を含む宇宙機絶縁システムの実施形態も提供した。
【0033】
[0035]少なくとも1つの例示的実施形態を上記の発明を実施するための形態で提示したが、多数の変形形態が存在することを理解されたい。また、1つまたは複数の例示的実施形態は例示に過ぎず、いかなる方法でも本発明の範囲、適用性、または構成を限定することは意図されていない。むしろ上記の発明を実施するための形態は、当業者に、本発明の例示的実施形態を実施するための便利なロードマップを提供するであろう。例示的実施形態で説明した要素の機能および配置は、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ得ることを理解されたい。