特許第6643005号(P6643005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許66430052−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643005
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 46/04 20060101AFI20200130BHJP
   C07C 50/32 20060101ALI20200130BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200130BHJP
【FI】
   C07C46/04
   C07C50/32
   !C07B61/00 300
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-163536(P2015-163536)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2017-39678(P2017-39678A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101123
【氏名又は名称】アグロカネショウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 誠司
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−078948(JP,A)
【文献】 特開2012−116852(JP,A)
【文献】 特開2014−213227(JP,A)
【文献】 長瀬 雄三 ほか,過酸化水素によるナフトールのアルカリ性酸化に就いて,薬学雑誌,1954年,Vol.74,No.1,pp.9-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 46/04
C07C 50/32
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式[I]:

で表される2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの製造方法であって、
下式[II]:

で表される2−ヒドロキシナフタレンを(1)アルカリ性水溶液中または(2)アルカリ性水溶液と、水に対して相溶性のない不活性な有機溶媒との混合物中で酸化バナジウム(V)の存在下において、過酸化水素水で酸化することを特徴とする2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ水溶液が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機溶媒が、脂肪族炭化水素、脂肪族環式炭化水素または芳香族炭化水素である請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの製造方法に関する。詳しくは、本発明は樹脂製造原料、洗顔料中間体、医農薬中間体などとして有用な2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを高収率かつ高純度で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−ヒドロキシナフタレン(または2−ナフトール)を原料として2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを製造する方法としては、2−ヒドロキシナフタレンを、コバルト触媒と苛性アルカリの存在下においてメタノール中で気体状酸素を用いて酸化する方法について開示している。しかしながら、この方法では、ポリマーに固定されたコバルトモルフォリン触媒と言った高価な触媒を使用しなければならない。また、収率にも問題がある。この方法は、非特許文献1に記載されている。
【0003】
1−ヒドロキシナフタレンを原料として2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを製造する方法としては、1−ヒドロキシナフタレンを、バナジウム触媒の存在下、水酸化カリウム水溶液中において過酸化水素水を用いて酸化する方法について開示している。しかしながらこの方法では、使用する原料の1−ナフトールは、高価であり、また収率も低くコストに問題がある。この方法は、非特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Catalysis Letters、141巻、12号、1808頁(2011)
【非特許文献2】薬学雑誌、74巻、1号、9頁(1954)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを工業的に簡易に、かつ大量に、しかも、高収率かつ安価に生産し得る方法について鋭意検討し、本発明に到達したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、2−ヒドロキシナフタレンを(1)アルカリ溶液中または(2)アルカリ溶液と、水に対して相溶性のない不活性な有機溶媒との混合物中でバナジウム触媒存在下において、過酸化水素で酸化することにより2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを高収率、高純度で得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
本発明は、下式[I]:
【化1】
で表される2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの製造方法であって、
下式[II]:
【化2】
で表される2−ヒドロキシナフタレンを(1)アルカリ水溶液中または(2)アルカリ水溶液と、水に対して相溶性のない不活性な有機溶媒との混合物中でバナジウム触媒存在下において、過酸化水素水で酸化することを特徴とする方法に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で出発物質として使用される上記式[II]で示される2−ヒドロキシナフタレンは、公知の化合物であり、市場において容易に入手可能な化合物である。
本発明は、2−ヒドロキシナフタレンに、例えば、5〜50%のアルカリ水溶液、好ましくは20〜30%のアルカリ水溶液を、アルカリの量として、例えば、1〜100倍モル、好ましくは2〜10倍モル加え、更に、酸化バナジウム(V)などのバナジウム触媒を2−ヒドロキシナフタレンに対して、触媒量として、例えば、0.01%〜50質量%、好ましくは0.1%〜5質量%を当該アルカリ水溶液に加える。得られた溶液に、例えば、10%〜60%過酸化水素、好ましくは30%〜40%の過酸化水素を、2−ヒドロキシナフタレンに対して、例えば、1〜20倍モル、好ましくは3〜10倍モル使用し、例えば、30〜90℃で、例えば、1時間〜20時間、好ましくは40〜60℃で、例えば、3〜10時間で加える。反応後、上記式[I]の化合物を得るために、反応液に塩酸等の酸を、例えば、アルカリ量に対して、例えば、1〜5倍モル、好ましくは、1.1〜2倍モルの量で、加えて酸性にし、析出した結晶をろ取する。ろ取した結晶を水洗浄後、乾燥することにより、極めて容易に目的化合物である上記式[I]の化合物を高収率かつ高純度で得ることができる。また、本反応は、水と相溶性のない不活性な有機溶媒の共存下にて行うことができる。
【0009】
本発明で使用するバナジウム触媒は、酸化バナジウムを成分として含有し、2−ヒドロキシナフタレンを2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンに変換するのを触媒するものであれば組成は、問わない。具体的には、例えば、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸アンモン、バナジン酸カリウム等を用いることが出来る。特に酸化バナジウム(V)が好適である。
【0010】
本反応は、アルカリ溶液中で行われるか、またはアルカリ溶液と、水に対して相溶性のない不活性な有機溶媒との混合物中で行われる。アルカリとしては、アルカリ金属が好適であり、アルカリ金属の水酸化物であることが特に好適である。具体的には、アルカリとしては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが好適である。これらのアルカリは、単独で使用してもよく、又は混合物として使用することもできる。
【0011】
本発明の酸化反応が、アルカリ溶液と、有機溶媒との混合物中で行われる場合には、有機溶媒は、本反応の進行に対して実質的に影響を与えないものであればよい。具体的には、ベンゼンや、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの各種芳香族炭化水素類、ペンタンや、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの各種環状又は非環状脂肪族炭化水素類などが好適である。特に好ましい不活性な有機溶媒は、トルエンである。
有機溶媒の量は、アルカリ溶液に対して、例えば、0.01〜10倍、好ましくは、0.1〜2倍の量で使用することが適切である。
【0012】
本発明においては、酸化反応は、一般に10〜100℃、好ましくは、30〜60℃において行われる。
塩酸などの酸の濃度は、例えば、1〜100%、好ましくは、20〜100%であることが好適である。
また、反応液の冷却は、例えば、60〜0℃、好ましくは、30〜5℃であることが好適である。
【0013】
本発明の製造方法では、2−ヒドロキシナフタレンを、(1)アルカリ溶液中または(2)アルカリ水溶液と、水に対して相溶性のない不活性な有機溶媒との混合物中でバナジウム触媒存在下において、過酸化水素水で酸化することにより、収率良く、高純度の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを得る方法である。
【実施例】
【0014】
以下に、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0015】
実施例1
2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの合成
28%水酸化ナトリウム水溶液(35.8g)に酸化バナジウム(V)(273mg)、トルエン(30ml)、2−ヒドロキシナフタレン(7.20g)を加えて、45℃にて35%過酸化水素水(29.1g)を4時間かけて滴下した。反応液に35%塩酸(31.3g)を滴下し、反応液を10℃まで冷却した。析出した結晶をろ取し、水でさらに洗浄し、風乾した。2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン6.6g(収率90%)を得た。純度は、99%であった。ここで、2−ヒドロキシナフタレンに対するアルカリのモル比は、5倍モルであり、2−ヒドロキシナフタレンに対するバナジウム触媒の量は、3.8質量%であり、2−ヒドロキシナフタレンに対する過酸化水素の量は、6倍モルであった。
【0016】
比較例1
28%水酸化ナトリウム水溶液(35.8g)にトルエン(30ml)、2−ヒドロキシナフタレン(7.20g)を加えて、45℃にて35%過酸化水素水(29.1g)を4時間かけて滴下した。2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンは、得られなかった。ここで、2−ヒドロキシナフタレンに対するアルカリのモル比は、5倍モルであり、2−ヒドロキシナフタレンに対する過酸化水素の量は、6倍モルであった。
【0017】
比較例2
水(35.8g)に酸化バナジウム(V)(273mg)、トルエン(30ml)、2−ヒドロキシナフタレン(7.20g)を加えて、45℃にて35%過酸化水素水(29.1g)を4時間かけて滴下した。実施例1と同様な処理をし、タール状物質が得られ、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンは、NMRで5%以下の収率で生成が確認できたのみであった。ここで、2−ヒドロキシナフタレンに対するバナジウム触媒の量は、3.8質量%であり、2−ヒドロキシナフタレンに対する過酸化水素の量は、6倍モルであった。
【0018】
上記に示したとおり、本発明の製造方法は、産業上有用な化合物の製造中間体化合物である2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを高収率かつ高純度で製造する方法である。