(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643027
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】徘徊監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20200130BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20200130BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
G08B25/00 510M
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-197710(P2015-197710)
(22)【出願日】2015年10月5日
(65)【公開番号】特開2017-72889(P2017-72889A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】391019681
【氏名又は名称】株式会社コムテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岩田 哲明
【審査官】
加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3106936(JP,U)
【文献】
特開2000−081488(JP,A)
【文献】
特開2009−136212(JP,A)
【文献】
特開2000−331209(JP,A)
【文献】
特開2009−032023(JP,A)
【文献】
特開2001−157196(JP,A)
【文献】
特開2006−238002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 25/04
G08B 21/02
G08B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
徘徊者を監視する徘徊監視システムにおいて、
徘徊者を監視する監視ポイントに人がいるか検出する人検出手段と、
前記人検出手段で検出された人に対し、徘徊者に付された反射材で反射する光であって、徘徊者が発光を感じにくい不感光を照射する光出力手段と、
前記反射材で反射された反射光を検出する反射検出手段と、
前記反射検出手段が前記反射光を検出した場合、前記監視ポイントに徘徊者がいることを警報する警報手段と
を備えることを特徴とする徘徊監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の徘徊監視システムにおいて、
前記光出力手段は、前記不感光として紫外線を出力することを特徴とする徘徊監視システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の徘徊監視システムにおいて、
前記監視ポイントを撮像する撮像手段を備え、
前記人検出手段は、
前記撮像手段が撮像した画像中に人が撮像されているかを検出し、
前記反射検出手段は、
前記撮像手段で撮像した画像中に、前記反射光が反射されている様子が撮像されているかを検出することを特徴とする徘徊監視システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の徘徊監視システムにおいて、
前記警報手段は、
前記反射検出手段が前記反射光を検出した場合、警報信号を出力する警報信号出力手段と、
前記警報信号出力手段から出力された前記警報信号を受信すると警報を実行する警報実行手段と、
前記警報信号出力手段と前記警報実行手段とを通信可能に接続する通信手段と
を備えることを特徴とする徘徊監視システム。
【請求項5】
請求項4に記載の徘徊監視システムにおいて、
前記通信手段は、
電力線を介して前記警報信号を通信することを特徴とする徘徊監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徘徊者を監視する徘徊監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
認知症のお年寄り等の徘徊者が老人ホーム等の建物から出てしまうことなどを監視する様々な徘徊監視システムが開発されている。
ある徘徊監視システムでは、徘徊者に発信機を取り付け、建物の出口等の監視ポイントに検知器を設置して、徘徊者が監視ポイントに近づいて検知器が発信機の信号を受信したら、建物内に設置された警報機等で警報を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ある徘徊監視システムでは、さらに赤外線センサ等の人体センサを備え、人体センサが通過ポイントに人がいることを検出するとともに、検知器が発信機の信号を受信したら、警報機が警報を行っている。
【0004】
前者の徘徊監視システムでは、検出器が発信機の信号を受信しただけで警報を行ってしまうので、徘徊者が監視ポイントにいるときだけでなく、徘徊者が監視ポイントの近くを単に通過しただけでも警報されてしまう可能性がある。そのため、後者の徘徊監視システムでは、監視ポイントに人がいることを人体センサで検出して、さらに、その人が徘徊者であることを検出器が発信機から信号を受信することで確認して警報を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−120459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、後者の徘徊監視システムでも、人体センサが監視ポイントで健常者を検出したとき、例えば、監視ポイントの近くの物陰に隠れた位置を徘徊者が通った場合でも、警報が行われてしまうことがある。
【0007】
また、発信機は、徘徊者にとって煩わしいものであるらしく、徘徊者自身によって取り外されてしまうことがあり、前述したいずれの徘徊監視システムを導入しても、徘徊者をうまく監視できないことがあった。
【0008】
本発明は、上記点に鑑み、誤警報の発生を抑え、発信機を用いなくても徘徊者を監視することが可能な徘徊監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の徘徊監視システムは、徘徊者を監視する徘徊監視システムにおいて、徘徊者を監視する監視ポイントに人がいるか検出する人検出手段と、前記人検出手段で検出された人に対し、徘徊者に付された反射材で反射する不感光を照射する光出力手段と、前記反射材で反射された反射光を検出する反射検出手段と、前記反射検出手段が前記反射光を検出した場合、前記監視ポイントに徘徊者がいることを警報する警報手段とを備える。
【0010】
これによると、反射材は、この反射材が塗布されたシールを洋服に貼り付けたり、直接洋服等にぬったりすれば徘徊者に付すことができるので、発信機のように、徘徊者が煩わしいと感じて取り外してしまうことが少ない。
【0011】
また、これによると、監視ポイントに人がいて、物陰に徘徊者がいる場合、不感光が徘徊者に届かないので、このような場合に監視ポイントに徘徊者がいると誤判定することは考えにくい。
【0012】
したがって、この徘徊監視システムを用いると、誤警報の発生を抑え、発信機を用いなくても徘徊者を監視することができる。
なお、反射光は、不感光でもよいし、可視光でもよい。
【0013】
次に、徘徊監視システムは、監視ポイントを撮像する撮像手段を備えてもよい。この場合、人検出手段は、撮像手段が撮像した画像中に人が撮像されているかを検出し、反射検出手段は、撮像手段で撮像した画像中に、反射光が反射されている様子が撮像されているかを検出するようにしてもよい。
【0014】
これによると、撮像手段を監視ポイントに設置して、この撮像手段で撮像された画像を解析するだけで、人検出手段による人の検出と、反射検出手段による反射光の検出を行うことができる。
【0015】
次に、警報手段は、反射検出手段が反射光を検出した場合、警報信号を出力する警報信号出力手段と、警報信号出力手段から出力された警報信号を受信すると警報を実行する警報実行手段と、警報信号出力手段と警報実行手段とを通信可能に接続する通信手段とで構成されていてもよい。
【0016】
これによると、監視ポイントから離れた位置に警報実行手段を設置することができるので、監視ポイントから離れた人に、監視ポイントに徘徊者がいることを知らせることができる。
【0017】
次に、通信手段は、電力線を介して警報信号を通信するものでもよい。通信手段は、その他、LAN等でもよいし、無線によるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態の徘徊監視システムの模式図である。
【
図2】実施形態の監視ポイント装置で実行される監視処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施携帯の徘徊監視システム1は、
図1に示すように、監視ポイント装置3と、電力線通信(PLC)用のアダプタ5と、警報装置7とで構成される。このうち、アダプタ5は、監視ポイント装置3が設置される場所、及び警報装置7が設置される場所の近くにあるコンセントにそれぞれ接続され、監視ポイント装置3、及び警報装置7と通信可能に接続されている。また、アダプタ5同士も、電力線DLを介して通信可能に接続されている。
【0020】
監視ポイント装置3は、可視光及び紫外線のいずれの画像も撮像可能なカメラ30と、紫外線を出力するライト、いわゆるブラックライト32を備えている。
カメラ30は、徘徊者がいる施設に設置された監視ポイントを撮像可能に設置されている。ブラックライト32は、監視ポイントに向かって紫外線を照射可能な位置に設置されている。
【0021】
また、監視ポイント装置3は、画像解析が可能なコンピュータ装置34を備えている。このコンピュータ装置34は、後述する監視処理を実行する。
監視ポイント装置3が設置される場所の近くに設置されるアダプタ5は、監視ポイント装置3が設置される場所の近くに設置されているコンセントに接続されている。このアダプタ5は、監視ポイント装置3と通信し、監視ポイント装置3から警報信号を受信したら、電力線DLに警報信号を出力する。また、このアダプタ5は、監視ポイント装置3に動作用の電力を供給する。
【0022】
警報装置7は、警報信号を受信したとき、警報音を出力する装置である。警報装置7は、監視ポイント装置3が設置される施設のうち、徘徊者を監視する者が警報音を聞くことができる場所に設置される。
【0023】
警報装置7が設置される場所の近くに設置されるアダプタ5は、警報装置7が設置される場所の近くに設置されているコンセントに接続されている。このアダプタ5は、警報装置7と通信し、電力線DLから警報信号を受信したら、警報装置7に警報信号を出力する。また、このアダプタ5は、警報装置7に動作用の電力を供給する。
【0024】
以上のように構成される徘徊監視システム1のうち、監視ポイント装置3のコンピュータ装置34で実行される監視処理を、
図2を用いて説明する。
この監視処理は、監視ポイント装置3にアダプタ5からの電力の供給が開始されたら、電力の供給が停止されるまで、実行される処理である。
【0025】
監視ポイント装置3に電力の供給が開始されると、カメラ30から、監視ポイントを可視光で撮像した画像の画像データの供給が一定時間ごとに開始されるので、まず、この画像データの解析が実行される(S1)。
【0026】
次に、その解析した画像データから、監視ポイントに人がいるかが判定される(S2)。この判定は、一定時間毎に撮像した画像の中に、移動する対象が存在するか否かにより行われる。そして、監視ポイントに人がいる、すなわち移動する対象が存在すると判定された場合は(S2:YES)、次にS3が実行される。一方、監視ポイントに人がいいない、すなわち移動する対象が存在しないと判定された場合は(S2:NO)、S1の処理が繰り返される。
【0027】
S3では、カメラ30に紫外線による撮像を行うよう指示するとともに、ブラックライト32を点灯させる処理が実行され、次にS4が実行される。
S4では、S3が実行されると、カメラ30から、監視ポイントを紫外線で撮像した画像の画像データの供給が一定時間ごとに開始されるので、この画像データの解析が実行される。
【0028】
もし、監視ポイントに徘徊者がいると、本実施形態では、紫外線を反射する反射剤を徘徊者の着用する服に塗っているので、ブラックライト32から発射された紫外線を反射した紫外線が反射し、カメラ30が撮像した画像には、反射剤で反射する紫外線が撮像される。
【0029】
S5では、S4で解析された画像中に、反射剤で反射された紫外線が撮像されているかいなかが判定される。
この判定(S5)で、反射剤で反射された紫外線が撮像されていなければ、S8が実行され(S5:NO)、撮像されていればS6が実行される(S5:YES)。
【0030】
S6及びS8では、ブラックライト32を消灯し、カメラ30には、可視光による撮像を開始するよう指示する処理が実行される。S8の終了後は、S1の処理が再び実行される、S6の終了後は、S7の処理が実行される。
【0031】
S7では、監視ポイント装置3の近くのコンセントに接続されたアダプタ5に警報信号を送信する処理が実行され、S1の処理が再び実行される。
アダプタ5は、監視ポイント装置3から警報信号を送信すると、警報装置7の近くのコンセントに接続されたアダプタ5に電力線DLを介して警報信号を送信し、これにより警報装置7が警報を発する。
【0032】
以上説明した監視処理を実行する徘徊監視システム1は以下のような特徴的な作用効果を奏する。
本実施形態の徘徊監視システム1では、反射剤を徘徊者に付しているが、反射剤は、この反射剤が塗布されたシールを洋服に貼り付けたり、直接洋服等にぬったりすれば徘徊者に付すことができるので、発信機のように、徘徊者が煩わしいと感じて取り外してしまうことが少ない。
【0033】
また、本実施形態の徘徊監視システム1では、監視ポイントに人がいて、物陰に徘徊者がいる場合、紫外線が徘徊者に届かないので、このような場合に監視ポイントに徘徊者がいると誤判定することは考えにくい。
【0034】
したがって、この徘徊監視システム1を用いると、誤警報の発生を抑え、発信機を用いなくても徘徊者を監視することができる。
次に、本実施形態の徘徊監視システム1は、一台のカメラ30だけを用いて、監視ポイントに人がいるか否かの判定(S3)と、監視ポイントにいる人が徘徊者であるか否かの判定(S5)とができるので、徘徊者がいる施設に簡単に設置できる。
【0035】
また、本実施形態の徘徊監視システム1は、監視ポイント装置3を警報装置7との通信を電力線通信で行っているので、徘徊者がいる施設に簡単に設置できる。
本発明の各構成と、本実施形態の各構成との対応関係について説明する。
【0036】
本発明の人検出手段は、カメラ30と、S3の処理に相当する。
本発明の光出力手段は、ブラックライト32に相当する。
本発明の検出手段は、カメラ30と、S5の処理に相当する。
【0037】
本発明の不感光は、紫外線に相当する。
本発明の反射材は、本実施形態の反射剤や、反射剤を塗布したシールが該当する。
本発明の撮像手段は、カメラ30に相当する。
【0038】
本発明の警報信号出力手段は、S7の処理に相当する。
本発明の警報実行手段は、警報装置7に相当する。
本発明の通信手段は、アダプタ5と電力線DLに相当する。
【0039】
以上、実施形態について説明したが、特許請求の範囲に記載された発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
(1)上記実施形態では、不感光(徘徊者が発光を感じにくい光)として紫外線を用いたが赤外線等でもよい。また、ブラックライト32は、紫外線(不感光)を出力できればよく、可視光が混じっていてもよい。不感光としては、紫外線や赤外線のような不可視光(人には見えない光)を用いてもよいが、徘徊者が発光を感じにくい光であれば可視光を用いてもよい。
【0040】
(2)上記実施形態では、電力線で通信を行う例について説明したが、LAN等の他の有線での通信を行ってもよいし、無線での通信を行ってもよい。
(3)上記実施形態では、監視ポイント装置3と警報装置7とを一台ずつしか示していないが、これらを複数設置してもよい。
【0041】
(4)上記実施形態では、監視ポイント装置3にコンピュータ装置34を備え、このコンピュータ装置34で監視処理を行うようにしたが、電力線DLを介して監視ポイント装置3と通信可能なコンピュータ装置を備え、このコンピュータ装置で監視処理を実行させるようにしてもよい。
【0042】
(5)上記実施形態では、施設内に警報装置を設置する例について説明したが、警報装置は、インターネットや電話回線などを用いて、外部に設置された警報装置に警報信号を送信するようにしてもよい。この場合、外部に設置された警報装置としては携帯電話等でもよい。
【0043】
(6)上記実施形態では、反射材として紫外線を反射するものを用いた例について説明したが、反射材としては、紫外線を受光すると可視光を反射するものを用いてもよい。この場合、カメラ30としては、可視光のみに感度を有するカメラを用いてもよい。また、この場合に、紫外線が当てられると描かれた模様が可視光で光る反射材を用いた場合、S5では、カメラ30で撮影された映像に中に、その模様が撮像されているか否かを判定するようにしてもよい。模様が撮像されていれば、徘徊者が監視ポイントにいると判定するようにしてもよい(S5:YES)。
【符号の説明】
【0044】
1… 徘徊監視システム 3… 監視ポイント装置 5… アダプタ 7… 警報装置
30… カメラ 32… ブラックライト 34… コンピュータ装置 DL… 電力線