(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記巻き出しボビンの巻き出し方向の回転を規制するブレーキ部により前記直線溝付管に後方張力を付加する、請求項1〜5の何れか一項に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
前記第2の捻り引抜き工程を経て形成された前記第2の中間捻り管にインラインで熱処理を施す熱処理工程を有する、請求項1〜6の何れか一項に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
前記第1構造部は、前記巻き出しボビンの巻き出し方向の回転を規制するブレーキ部を有し、前記ブレーキ部により前記直線溝付管に後方張力を付加する、請求項8〜12の何れか一項に記載の内面螺旋溝付管の製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る内面螺旋溝付管の製造装置とそれを用いた内面螺旋溝付管の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
【0026】
本明細書において、「前段」および「後段」とは、管材の加工順序に沿った前後関係(すなわち、上流および下流)を意味し、装置内の各部位の配置を意味するものではない。管材は内面螺旋溝付管の製造装置において、前段(上流)側から後段(下流)側に搬送される。前段に配置される部位は、必ずしも前方に配置されるとは限らず、後段に配置される部位は、必ずしも後方に配置されるとは限らない。
【0027】
<<製造装置>>
図1は内面螺旋溝付管の製造装置Dを示す正面図である。
製造装置Dは、第1構造部Aと第2構造部Bとを備える。第1構造部Aと第2構造部Bは、中継点Nにおいて管材5を受け渡す。
第1構造部Aは、巻き出しボビン11から巻き出した管材5を中継点Nまで搬送する。また、第1構造部Aは、搬送途中において第1の捻り引抜き工程および第2の捻り引抜き工程を行い管材5に2回の捻りを付与する。
第2構造部Bは、管材5を中継点Nから巻き取りボビン61まで搬送する。また、第2構造部Bは、搬送途中において第3の捻り引抜き工程および第4の捻り引抜き工程を行い管材5に2回の捻りを付与する。
また、第1構造部Aは第1の公転機構30を有し、第2構造部Bは第2の公転機構80を有する。第1の公転機構30および第2の公転機構80は、公転回転中心軸Cを中心として互いに逆方向に回転する。
【0028】
本実施形態の製造装置Dは、
図5(a)、(b)に示す直線溝付管5Bに第1〜第4の捻り引抜き工程を行うことで、
図6に示す内面螺旋溝付管5Rを製造する装置である。
図3に示す様に直線溝付管5Bには、内面に長さ方向に沿う複数の直線溝5aが形成されている。また、
図4に示す様に、直線溝付管5Bに捻りを付与した内面螺旋溝付管5Rには、直線溝5aに由来する螺旋溝5cが形成されている。
直線溝付管5Bは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。また、直線溝付管5Bは、押出成形により製造された押出材であり、後述する巻き出しボビン11にコイル状に巻き付けられている。
【0029】
なお、本明細書において「管材」とは、直線溝付管5B、内面螺旋溝付管5Rおよび各段階で捻りが付与された中間成形体としての中間捻り管の上位概念であり、製造工程の段階を問わず、加工対象となる管を意味する。
また、本明細書において、第1の捻り引抜き工程を経た後の管材を第1の中間捻り管5M1と呼ぶ。第2の捻り引抜き工程を経た後の管材を第2の中間捻り管5M2と呼ぶ。第3の捻り引抜き工程を経た後の管材を第3の中間捻り管5M3と呼ぶ。完成品である内面螺旋溝付管5Rの捻り角度に対して、第1の中間捻り管5M1は1/4程度の捻りが付与されており、第2の中間捻り管5M2は半分程度の捻りが付与されており、第3の中間捻り管5M3は3/4程度の捻りが付与されている。
【0030】
<<第1構造部>>
図2は、第1構造部Aの正面図である。
第1構造部Aは、第1の公転機構30と、第1の浮き枠34と、巻き出しボビン11と、第1のガイドキャプスタン18と、第1の引抜きダイス1と、第1の公転キャプスタン21と、第1の公転フライヤ23と、第2の公転キャプスタン22と、第2の引抜きダイス2と、第2のガイドキャプスタン41と、を有する。
【0031】
<第1の公転機構>
第1の公転機構30は、第1の回転シャフト35と、駆動部39と、前方スタンド37Aと、後方スタンド37Bと、を有している。
第1の公転機構30は、第1の回転シャフト35において軸受34aを介して第1の浮き枠34を支持する。これにより、第1の回転シャフト35が回転しても、第1の浮き枠34の静止状態が維持される。したがって、第1の公転機構30は、第1の浮き枠34に支持された巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1の静止状態を維持できる。
【0032】
第1の回転シャフト35は、駆動部39により回転させられる。第1の回転シャフト35は、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bを有する。前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bは、ともに内部が中空の円筒形状を有する。前方シャフト35Aと後方シャフト35Bは、ともに公転回転中心軸C(第1引抜きダイスのパスライン)を中心軸とする同軸上に配置されている。前方シャフト35Aは、前方スタンド37Aに軸受36を介し回転自在に支持され、前方スタンド37Aから後方(後方スタンド37B側)に向かって延びている。同様に、後方シャフト35Bは、後方スタンド37Bに軸受を介し回転自在に支持され、後方スタンド37Bから前方(前方スタンド37A側)に向かって延びている。前方シャフト35Aと後方シャフト35Bとの間には、第1の浮き枠34が架け渡されている。
【0033】
第1の回転シャフト35(前方シャフト35Aおよび後方シャフト35B)には、第1の公転キャプスタン21、第2の公転キャプスタン22および第1の公転フライヤ23が固定されている。第1の回転シャフト35が回転することで、第1の回転シャフト35に固定されたこれらの部材は、公転回転中心軸Cを中心に公転回転する。
【0034】
駆動部39は、駆動モータ39cと直動シャフト39fとベルト39a、39d、プーリ39b、39eとを有している。駆動部39は、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bを回転させる。
駆動モータ39cは、直動シャフト39fを回転させる。直動シャフト39fは、前方スタンド37Aおよび後方スタンド37Bの下部において前後方向に延びている。
前方シャフト35Aの前方の端部35Abは、前方スタンド37Aを貫通した先端にプーリ39bが取り付けられている。プーリ39bは、ベルト39aを介し直動シャフト39fと連動する。同様に、後方シャフト35Bの後方の端部35Bbは、後方スタンド37Bを貫通した先端にプーリ39eが取り付けられ、ベルト39dを介し直動シャフト39fと連動する。これにより、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bは、公転回転中心軸Cを中心に同期回転する。
【0035】
<第1の浮き枠>
第1の浮き枠34は、第1の回転シャフト35の前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bの互いに向かい合う端部35Aa、35Baに軸受34aを介し支持されている。また、第1の浮き枠34は、巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1を支持する。
【0036】
図3は、
図2における矢印III方向から見た第1の浮き枠34の平面図である。
図2、
図3に示すように、第1の浮き枠34は、上下に開口する箱形状を有する。第1の浮き枠34は、前後に対向する前方壁34bおよび後方壁34cと、左右に対向するとともに前後方向に延びる一対の支持壁34dと、を有する。
【0037】
前方壁34bおよび後方壁34cには貫通孔が設けられ、それぞれ前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bの端部35Aa、35Baが挿入されている。端部35Aa、35Baと前方壁34bおよび後方壁34cの貫通孔との間には、軸受34aが介在する。これにより、第1の浮き枠34には、第1の回転シャフト35(前方シャフト35Aおよび後方シャフト35B)の回転が伝達され難い。第1の浮き枠34は、第1の回転シャフト35が回転状態にあっても地面Gに対する静止状態を保つ。なお、公転回転中心軸Cに対し第1の浮き枠34の重心を偏らせる錘を設けて第1の浮き枠34の静止状態を安定させてもよい。
【0038】
図3に示すように、一対の支持壁34dは、巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1を左右方向(
図2紙面中の上下方向)両側に配置されている。一対の支持壁34dは、巻き出しボビン11を保持するボビン支持シャフト12および第1のガイドキャプスタン18の回転軸J18を回転可能に支持する。また、支持壁34dは、図示略のダイス支持体を介し第1の引抜きダイス1を支持する。
【0039】
<巻き出しボビン>
巻き出しボビン11には、直線溝5aが形成された直線溝付管5B(
図3参照)が巻き付けられている。巻き出しボビン11は、直線溝付管5Bを巻き出して後段に供給する。巻き出しボビン11は、ボビン支持シャフト12に着脱可能に取り付けられている。
【0040】
図3に示すように、ボビン支持シャフト12は、第1の回転シャフト35と直交する方向に延びている。また、ボビン支持シャフト12は、第1の浮き枠34に自転回転可能に支持されている。なお、ここで自転回転とは、ボビン支持シャフト12自身の中心軸を中心として回転することを意味する。ボビン支持シャフト12は、巻き出しボビン11を保持し、巻き出しボビン11の供給方向に自転回転することで、巻き出しボビン11の管材5の繰り出しを補助する。
【0041】
巻き出しボビン11は、巻き付けられた直線溝付管5Bを全て供給した際に取り外され、他の巻き出しボビンに交換される。取り外された空の巻き出しボビン11は、直線溝付管5Bを形成する押出装置に取り付けられ、再び直線溝付管5Bが巻き付けられる。巻き出しボビン11は、第1の浮き枠34に支持され公転回転しない。したがって、巻き出しボビン11に直線溝付管5Bが乱巻されていても支障なく供給を行うことができ、巻き直しを行うことなく使用できる。また、巻き出しボビン11の重量により製造装置Dにおいて管材5に捻りを付与するための公転回転の回転数は制限されない。したがって、巻き出しボビン11に長尺の管材5が巻き付けることができる。これにより、長尺の管材5に対して、捻りを付与することができ、製造効率を高めることができる。
【0042】
ボビン支持シャフト12には、ブレーキ部15が設けられている。ブレーキ部15は、第1の浮き枠34に対するボビン支持シャフト12の自転回転に制動力を与える。すなわち、ブレーキ部15は、巻き出しボビン11の巻き出し方向の回転を規制する。ブレーキ部15による制動力により、巻き出し方向に搬送される管材5には、後方張力が付加される。ブレーキ部15としては、例えば、制動力としてのトルク調節が可能なパウダーブレーキ又はバンドブレーキを採用できる。
【0043】
<第1のガイドキャプスタン>
第1のガイドキャプスタン18は、円盤形状を有している。第1のガイドキャプスタン18には、巻き出しボビン11から繰り出された管材5が1周巻き掛けられる。第1のガイドキャプスタン18の外周の接線方向は、公転回転中心軸Cと一致する。第1のガイドキャプスタン18は、管材5を第1の方向D1に沿って公転回転中心軸C上に誘導する。第1のガイドキャプスタン18は、自転回転自在に第1の浮き枠34に支持されている。また第1のガイドキャプスタン18の外周には、自転回転自在のガイドローラ18bが並んで配置されている。本実施形態の第1のガイドキャプスタン18は、自身が自転回転するとともにガイドローラ18bが転動するが、何れか一方が回転すれば、管材5をスムーズに搬送できる。なお、
図2において、ガイドローラ18bの図示は省略されている。
【0044】
図3に示すように、第1のガイドキャプスタン18と巻き出しボビン11との間には、管路誘導部18aが設けられている。管路誘導部18aは、例えば管材5を囲むように配置された複数のガイドローラである。管路誘導部18aは、巻き出しボビン11から供給される管材5を第1のガイドキャプスタン18に誘導する。
【0045】
なお、第1のガイドキャプスタン18に代えて、巻き出しボビン11と第1の引抜きダイス1との間にトラバース機能を有する誘導管を設けてもよい。誘導管を設ける場合には、巻き出しボビン11と第1の引抜きダイス1との距離を短くすることができ、工場内のスペースを有効活用できる。
【0046】
<第1の引抜きダイス>
第1の引抜きダイス1は、管材5(直線溝付管5B)を縮径する。第1の引抜きダイス1は、第1の浮き枠34に固定されている。第1の引抜きダイス1は、第1の方向D1を引抜き方向とする。第1の引抜きダイス1の中心は、第1の回転シャフト35の公転回転中心軸Cと一致する。また、第1の方向D1は、公転回転中心軸Cと平行である。
第1の引抜きダイス1には、第1の浮き枠34に固定された潤滑油供給装置9Aにより潤滑油が供給される。これにより第1の引抜きダイス1における引抜き力を軽減できる。
第1の引抜きダイス1を通過した管材5は、第1の浮き枠34の前方壁34bに設けられた貫通孔を介して、前方シャフト35Aの内部に導入される。
【0047】
<第1の公転キャプスタン>
第1の公転キャプスタン21は、円盤形状を有している。第1の公転キャプスタン21は、中空の前方シャフト35Aの内外を径方向に貫通する横孔35Acに配置されている。第1の公転キャプスタン21は、円盤の中心を回転軸J21として、第1の回転シャフト35(前方シャフト35A)の外周部に固定された支持体21aに自転回転が自在な状態で支持されている。
【0048】
第1の公転キャプスタン21は、外周の接線の1つが公転回転中心軸Cと略一致する。第1の公転キャプスタン21には、公転回転中心軸C上の第1の方向D1に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。第1の公転キャプスタン21は、管材5を巻き掛けて前方シャフト35Aの内部から外部に引き出して第1の公転フライヤ23に誘導する。
【0049】
第1の公転キャプスタン21は、公転回転中心軸Cの周りを前方シャフト35Aとともに公転回転する。公転回転中心軸Cは、第1の公転キャプスタン21の自転回転の回転軸J21と直交する方向に延びている。管材5は、第1の公転キャプスタン21と第1の引抜きダイス1との間で捻りが付与される。これにより、管材5は、直線溝付管5Bから第1の中間捻り管5M1となる。
【0050】
第1の公転キャプスタン21とともに、前方シャフト35Aには駆動モータ20が設けられている。駆動モータ20は、第1の公転キャプスタン21を管材5の巻き掛け方向(搬送方向)に駆動回転する。これにより、第1の公転キャプスタン21は、管材5に第1の引抜きダイス1を通過するための前方張力を付与する。
【0051】
第1の公転キャプスタン21および駆動モータ20は、前方シャフト35Aの公転回転中心軸Cに重心が位置するように公転回転中心軸Cに対して互いに対称の位置に配置されることが好ましい。これにより、前方シャフト35Aの回転のバランスを安定させることができる。なお、第1の公転キャプスタン21と駆動モータ20の重量差が大きい場合は、錘を設けて重心を安定させてもよい。
【0052】
<第1の公転フライヤ>
第1の公転フライヤ23は、第1の引抜きダイス1と第2の引抜きダイス2との間で、管材5の管路を反転させる。第1の公転フライヤ23は、第1の引抜きダイス1の引抜き方向である第1の方向D1に搬送される管材5を反転させ、搬送方向を第2の引抜きダイス2の引抜き方向である第2の方向D2に向ける。より具体的には、第1の公転フライヤ23は、第1の公転キャプスタン21から第2の公転キャプスタン22に管材5を誘導する。
【0053】
第1の公転フライヤ23は、複数のガイドローラ23aとガイドローラ23aを支持するガイドローラ支持体(図示略)とを有する。ここでは、煩雑さを解消するためガイドローラ支持体の図示を省略するが、ガイドローラ支持体は、第1の回転シャフト35に支持されている。ガイドローラ23aは、公転回転中心軸Cに対し外側に湾曲する弓形状を形成して並んでいる。ガイドローラ23a自身が転動して管材5をスムーズに搬送する。第1の公転フライヤ23は、公転回転中心軸Cを中心として、第1の浮き枠34並びに第1の浮き枠34内に支持された第1の引抜きダイス1および巻き出しボビン11の周りを回転する。
【0054】
第1の公転フライヤ23の一端は、公転回転中心軸Cに対し第1の公転キャプスタン21の外側に位置している。また、第1の公転フライヤ23の他端は、中空の後方シャフト35Bの内外を径方向に貫通する横孔35Bcを通過して後方シャフト35Bの内部に延びている。第1の公転フライヤ23は、第1の公転キャプスタン21に巻き掛けられて外側に繰り出された管材5を後方シャフト35B側に誘導する。また、第1の公転フライヤ23は、管材5を後方シャフト35Bの内部において、第2の方向D2に沿って公転回転中心軸C上に繰り出す。
【0055】
なお、本実施形態の第1の公転フライヤ23(および第2の公転フライヤ73)は、ガイドローラ23aにより管材5を搬送するものであるとして説明した。しかしながら第1の公転フライヤ23を、弓状に形成した帯板から形成して、管材5を帯板の一面を滑動させて搬送してもよい。
また、
図1において、管材5がガイドローラ23aの外側を通過する場合を例示した。しかしながら、第1の公転フライヤ23(および第2の公転フライヤ73)の回転速度が速い場合には、管材5が遠心力により公転フライヤから脱線するおそれがある。このような場合は、管材5の外側に更にガイドローラ23aを設けることが好ましい。
第1の公転フライヤ23(および第2の公転フライヤ73)と同等の重量を有し前方シャフト35Aから後方シャフト35Bに延びて第1の公転フライヤ23と同期回転するダミーフライヤを複数設けてもよい。これにより、第1の回転シャフト35の回転を安定させることができる。
【0056】
<第2の公転キャプスタン>
第2の公転キャプスタン22は、第1の公転キャプスタン21と同様に、円盤形状を有する。第2の公転キャプスタン22は、後方シャフト35Bの端部35Bbの先端に設けられた支持体22aに自転回転が自在な状態で支持されている。また、第2の公転キャプスタン22の外周には、自転回転自在のガイドローラ22cが並んで配置されている。本実施形態の第2の公転キャプスタン22は、自身が自転回転するとともにガイドローラ22cが転動するが、何れか一方が回転すれば、管材5をスムーズに搬送できる。
【0057】
第2の公転キャプスタン22は、外周の接線の1つが公転回転中心軸Cと略一致する。第2の公転キャプスタン22には、公転回転中心軸C上の第2の方向D2に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。第2の公転キャプスタン22は、巻き掛けられた管材を公転回転中心軸C上の第2の方向D2に繰り出す。
【0058】
第2の公転キャプスタン22は、公転回転中心軸Cの周りを後方シャフト35Bとともに公転回転する。公転回転中心軸Cは、第2の公転キャプスタン22の自転回転の回転軸J22と直交する方向に延びている。第2の公転キャプスタン22から繰り出された管材5は、第2の引抜きダイス2において縮径される。第2の引抜きダイス2は、地面Gに対し静止しているため、第2の公転キャプスタン22と第2の引抜きダイス2との間で、管材5に捻りを付与できる。これにより、管材5は、第1の中間捻り管5M1から内面螺旋溝付管5Rとなる。
【0059】
第2の公転キャプスタン22を支持する支持体22aは、公転回転中心軸Cに対し第2の公転キャプスタン22と対称の位置に錘22bを支持する。錘22bは、後方シャフト35Bの回転のバランスを安定させる。
【0060】
<第2の引抜きダイス>
第2の引抜きダイス2は、第2の公転キャプスタン22の後段に配置される。第2の引抜きダイス2は、反対の第2の方向D2を引抜き方向とする。第2の方向D2は、公転回転中心軸Cと平行な方向である。第2の方向D2は、第1の引抜きダイス1の引抜き方向である第1の方向D1と反対である。管材5は、第2の方向D2に沿って第2の引抜きダイス2を通過する。第2の引抜きダイス2は、第2の引抜きダイス2は、地面Gに対して静止している。第2の引抜きダイス2の中心は、第1の回転シャフト35の公転回転中心軸Cと一致する。
【0061】
第2の引抜きダイス2は、例えば図示略のダイス支持体を介して架台42に支持されている。また、第2の引抜きダイス2には、架台42に取り付けられた潤滑油供給装置9Bにより潤滑油が供給される。これにより第2の引抜きダイス2における引抜き力を軽減できる。
第2の引抜きダイス2における縮径および捻り付与により、管材5は、第1の中間捻り管5M1から第2の中間捻り管5M2となる。
【0062】
<第2のガイドキャプスタン>
第2のガイドキャプスタン41は、円盤形状を有している。第2のガイドキャプスタン41の外周の接線方向は、公転回転中心軸Cと一致する。第2のガイドキャプスタン41には、公転回転中心軸C上の第2の方向D2に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。
【0063】
第2のガイドキャプスタン41は、回転軸J41を中心に架台42に回転可能に支持されている。また、第2のガイドキャプスタン41の回転軸J41は、駆動モータ43と駆動ベルト等を介し接続されている。第2のガイドキャプスタン41は、駆動モータ43により、管材5の巻き掛け方向(搬送方向)に駆動回転する。なお、駆動モータ43は、トルク制御可能なトルクモータを用いることが好ましい。
【0064】
第2のガイドキャプスタン41が駆動することによって管材5には、前方張力が付与される。これにより管材5は、第2の引抜きダイス2における加工に必要な引抜き応力が付与され前方に搬送される。
【0065】
<<第2構造部>>
図4は、第2構造部Bの正面図である。
第2構造部Bは、第2の公転機構80と、第2の浮き枠84と、巻き取りボビン61と、第3の引抜きダイス3と、第3の公転キャプスタン72と、第2の公転フライヤ73と、第4の公転キャプスタン71と、第4の引抜きダイス4と、を有する。
第2構造部Bは、第1構造部Aと比較して、管材5の搬送方向が逆転させた構成を有する。また、第2構造部Bの構成について、第1構造部Aと共通する構成については、その詳細な説明を省略し、主に異なる箇所について説明する。
【0066】
<第2の公転機構>
第2の公転機構80は、第1の公転機構30と同様の構成を有するが、第1の公転機構30と逆方向に回転する。第2の公転機構80は、前方シャフトおよび後方シャフトを含む第2の回転シャフト85と、駆動部89と、を有している。
【0067】
第2の回転シャフト85には、第3の公転キャプスタン72、第4の公転キャプスタン71および第2の公転フライヤ73が固定されている。
駆動部89は、第2の回転シャフト85を回転させる。また、駆動部89は、第2の回転シャフト85を介して第3の公転キャプスタン72、第4の公転キャプスタン71および第2の公転フライヤ73を回転させる。
【0068】
第2の公転機構80は、第2の回転シャフト85において軸受84aを介して第2の浮き枠84を支持する。これにより、第2の回転シャフト85が回転しても、第2の浮き枠84の静止状態が維持される。したがって、第2の公転機構80は、第2の浮き枠84に支持された巻き取りボビン61、第3のガイドキャプスタン68および第4の引抜きダイス4の静止状態を維持できる。
【0069】
<第3の引抜きダイス>
第3の引抜きダイス3は、中継点Nの後段に配置される。第3の引抜きダイス3は、第3の方向D3を引抜き方向とする。第3の方向D3は、公転回転中心軸Cと平行な方向であり、第2の方向D2と同方向である。管材5は、第3の方向D3に沿って第3の引抜きダイス3を通過する。第3の引抜きダイス3の中心は、公転回転中心軸Cと一致する。第3の引抜きダイス3は、例えば図示略のダイス支持体を介して架台42に支持されており地面Gに対して静止している。第3の引抜きダイス3には、架台42に取り付けられた潤滑油供給装置9Cにより潤滑油が供給される。第3の引抜きダイス3における縮径および捻り付与により、管材5は、第2の中間捻り管5M2から第3の中間捻り管5M3となる。
なお、第3の方向D3は、第2の方向と異なる方向であってもよい。すなわち、第2の引抜きダイス2と第3の引抜きダイス3との間に、管材5を巻き掛けるキャプスタンを設けて引抜き方向を反転させてもよい。
【0070】
<第3の公転キャプスタン>
第3の公転キャプスタン72は、第2の公転キャプスタン22と同様の構成を有するが、駆動モータ75を有する点およびガイドローラを有さない点が異なる。第3の公転キャプスタン72は、駆動モータ75により、管材5の巻き掛け方向(搬送方向)に駆動回転する。第3の公転キャプスタン72が駆動することによって管材5には、前方張力が付与され、第3の引抜きダイス3における加工に必要な引抜き応力が付与され前方に搬送される。
【0071】
第3の公転キャプスタン72は、第2の回転シャフト85に固定された支持体72aに支持され第2の回転シャフト85とともに公転回転する。支持体72aは、回転バランスを安定させるために、公転回転中心軸Cに対し第3の公転キャプスタン72と対称の位置に錘72bを支持する。第3の公転キャプスタン72は、外周の接線の1つが公転回転中心軸Cと略一致する。第3の公転キャプスタン72は、公転回転中心軸C上を搬送れる管材5を一周以上巻き掛けて公転回転中心軸C上に再び繰り出す。第3の公転キャプスタン72は、管材5を第2の回転シャフト85の内部に繰り出す。
【0072】
<第2の公転フライヤ>
第2の公転フライヤ73は、第1の公転フライヤ23と同様の構成を有するが、管材5の搬送方向が逆転している点が異なる。また、第2の公転フライヤ73の公転回転方向は、管材5の搬送方向に対し、第1の公転フライヤ23の公転回転方向と逆方向である。第2の公転フライヤ73は、第3の引抜きダイス3と第4の引抜きダイス4との間で、管材5の管路を反転させる。第2の公転フライヤ73は、第3の引抜きダイス3の引抜き方向である第3の方向D3に搬送される管材5を反転させ、搬送方向を第4の引抜きダイス4の引抜き方向である第4の方向D4に向ける。より具体的には、第2の公転フライヤ73は、第3の公転キャプスタン72から第4の公転キャプスタン71に管材5を誘導する。
【0073】
第2の公転フライヤ73は、公転回転中心軸Cに対し外側に湾曲する弓形状を形成して並ぶ複数のガイドローラ73aと、ガイドローラ73aを支持するガイドローラ支持体(図示略)と、を有する。第2の公転フライヤ73は、公転回転中心軸Cを中心として、第2の浮き枠84並びに第2の浮き枠84内に支持された第4の引抜きダイス4および巻き取りボビン61の周りを回転する。第2の公転フライヤ73の一端は、第2の回転シャフト85の内外を径方向に貫通する横孔85cから外側に向かって延びている。第2の公転フライヤ73は、管材5を第2の回転シャフト85の内側から外側に誘導する。また、第2の公転フライヤ73は、第4の公転キャプスタン71に向かって延びて、管材5を第4の公転キャプスタン71に誘導する。
【0074】
<第4の公転キャプスタン>
第4の公転キャプスタン71は、第1の公転キャプスタン21と同様の構成を有するが、ガイドローラ71bを有する点および駆動モータを有さない点が異なる。
第4の公転キャプスタン71は、外周の接線の1つが公転回転中心軸Cと略一致する。また、第4の公転キャプスタン71の外周には、自転回転自在のガイドローラ71bが並んで配置されており管材5をスムーズに搬送する。第4の公転キャプスタン71には、第2の公転フライヤ73から誘導された管材5を巻き掛けられる。第4の公転キャプスタン71は、巻き掛けられた管材5を公転回転中心軸C上の第4の方向D4に繰り出す。第4の公転キャプスタン71は、第2の回転シャフト85に支持されており、公転回転中心軸C周りを公転回転する。
【0075】
<第2の浮き枠>
第2の浮き枠84は、第1の浮き枠34と同様の構成を有する。第2の浮き枠84は、第2の回転シャフト85に軸受84aを介し支持されている。これにより、第2の浮き枠84には、第2の回転シャフト85の回転が伝達され難い。第2の浮き枠84は、第2の回転シャフト85が回転状態にあっても地面Gに対する静止状態を保つ。また、第2の浮き枠84は、巻き取りボビン61、第3のガイドキャプスタン68および第4の引抜きダイス4を支持する。
【0076】
<第4の引抜きダイス>
第4の引抜きダイス4は、第2の浮き枠84に固定されている。第4の引抜きダイス4は、第4の方向D4を引抜き方向とする。第4の引抜きダイス4の中心は、第2の回転シャフト85の公転回転中心軸Cと一致する。また、第4の方向D4は、公転回転中心軸Cと平行である。
第4の引抜きダイス4には、第2の浮き枠84に固定された潤滑油供給装置9Dにより潤滑油が供給される。
第4の引抜きダイス4における縮径および捻り付与により、管材5は、第3の中間捻り管5M3から内面螺旋溝付管5Rとなる。
【0077】
<第3のガイドキャプスタン>
第3のガイドキャプスタン68は、第1のガイドキャプスタン18と同様の構成を有するが、駆動モータ68cを有する点およびガイドローラを有さない点が異なる。第3のガイドキャプスタン68は、駆動モータ68cにより、管材5の巻き掛け方向(搬送方向)に駆動回転する。第3のガイドキャプスタン68が駆動することによって管材5には、前方張力が付与され、第4の引抜きダイス4における加工に必要な引抜き応力が付与され前方に搬送される。
【0078】
<巻き取りボビン>
巻き取りボビン61は、管材5の管路の終端に設けられ、管材5を回収する。巻き取りボビン61の前段には、誘導部68aが設けられている。誘導部68aは、トラバース機能を有し管材5を巻き取りボビン61に整列巻きさせる。
【0079】
巻き取りボビン61は、ボビン支持シャフト62に着脱可能に取り付けられている。ボビン支持シャフト62は、第2の回転シャフト85と直交する方向に延びている。また、ボビン支持シャフト62は、駆動モータ65に接続されている。巻き取りボビン61は、駆動モータ65により駆動回転され、管材5を弛ませることなく巻き取る。巻き取りボビン61は、管材5が十分に巻き付けられた場合に取り外され、他の巻き取りボビン61に付け替えられる。
【0080】
<<内面螺旋溝付管の製造方法>>
上述した内面螺旋溝付管の製造装置Dを用いて、内面螺旋溝付管5Rを製造する方法について説明する。
【0081】
まず、予備工程について説明する。
押出成形により、
図5に示すように、内面に長さ方向に沿う複数の直線溝5aが周方向に間隔をおいて形成された直線溝付管5Bを作製(直線溝付管押出工程)する。更に、直線溝付管5Bを巻き出しボビン11にコイル状に巻き付ける。更に、巻き出しボビン11を製造装置Dの第1の浮き枠34にセットする。また、巻き出しボビン11から管材5(直線溝付管5B)を繰り出して、予め直線溝付管5Bの管路をセットする。具体的には、管材5を、第1のガイドキャプスタン18、第1の引抜きダイス1、第1の公転キャプスタン21、第1の公転フライヤ23、第2の公転キャプスタン22、第2の引抜きダイス2、第2のガイドキャプスタン41、第3の引抜きダイス3、第3の公転キャプスタン72、第2の公転フライヤ73、第4の公転キャプスタン71、第4の引抜きダイス4、第3のガイドキャプスタン68、巻き取りボビン61の順に、通過させて、セットする。
以上の予備工程が終わった後に、内面螺旋溝付管5Rの製造を開始する。
【0082】
内面螺旋溝付管5Rの製造工程において、管材の搬送経路に沿って説明する。
まず、巻き出しボビン11から管材5を順次繰り出していく。
次に、巻き出しボビン11から繰り出された管材5を、第1のガイドキャプスタン18に巻き掛ける。第1のガイドキャプスタン18は、管材5を公転回転中心軸C上に位置する第1の引抜きダイス1のダイス孔に誘導する(第1の誘導工程)。
【0083】
次に、管材5を第1の引抜きダイス1に通過させる。更に、第1の引抜きダイス1の後段で管材5を第1の公転キャプスタン21に巻き掛けて公転回転中心軸Cの周りを回転させる。これにより、管材5を縮径するとともに捻りを付与する(第1の捻り引抜き工程)。
【0084】
第1の捻り引抜き工程において、管材5には第1の公転キャプスタン21を駆動する駆動モータ20により、前方張力が付与される。また、同時に管材5には巻き出しボビン11のブレーキ部15により後方張力が付与される。このため、管材5に適度な張力を付与することが可能となり、管材5に座屈・破断を生じさせることなく安定した捻り角を付与できる。
【0085】
管材5は、第1の引抜きダイス1に通された後に、公転回転する第1の公転キャプスタン21に巻き掛けられる。管材5は、第1の引抜きダイス1により縮径されるとともに、第1の公転キャプスタン21により捻りが付与される。これにより、管材5(直線溝付管5B)の内面の直線溝5a(
図3参照)に捻りが付与され内面に螺旋溝5cが形成される。第1の捻り引抜き工程により直線溝付管5Bは、第1の中間捻り管5M1となる。
【0086】
第1の捻り引抜き工程において、管材5には、捻りが付与されると同時に引抜きダイスによる縮径が行われる。すなわち、管材5には、捻りと縮径との同時加工による複合応力が付与させる。複合応力下においては、捻り加工のみを行う場合と比較して管材5の降伏応力が小さくなり、管材5の座屈応力に達する前に、管材5に大きな捻りを付与できる。これにより、管材5の座屈の発生を抑制しつつ大きな捻りを付与できる。
【0087】
第1の引抜きダイス1の前段には、第1のガイドキャプスタン18が設けられており管材5の回転が規制されている。すなわち、管材5は、第1の引抜きダイス1の前段で、捻り方向の変形が拘束されている。管材5には、第1の引抜きダイス1と第1の公転キャプスタン21との間で捻りが付与される。すなわち、第1の捻り引抜き工程において、管材5に捻りが付与される領域(加工域)は、第1の引抜きダイス1と第1の公転キャプスタン21との間に制限される。
加工域の長さと、限界捻り角(座屈を生じないで捻ることができる最大捻り角)の関係には、相関関係があり、加工域を短くすることで、大きな捻り角を付与しても座屈が生じにくい。第1のガイドキャプスタン18を設けることで、第1の引抜きダイス1の前段で捻りが付与されることがなく、加工域を短く設定できる。また、第1の引抜きダイス1と第1の公転キャプスタン21との距離を近づけることで加工域を短く設定し、座屈を生じさせずに管材5に大きな捻りを付与できる。
【0088】
第1の引抜きダイス1による管材5の縮径率は、2%以上とすることが好ましい。
図7は、引抜き時の限界捻り角と縮径率の関係を調べた予備実験の結果を示すグラフである。
図7に示すように、限界捻り角と縮径率の間には相関が認められ、引抜き時の縮径率を大きくするにつれて限界捻り角が大きくなる傾向が認められる。すなわち、縮径率が小さ過ぎる場合は引抜きによる効果が乏しく、大きな捻り角を得ることが難しいので、2%以上とするのが好ましい。なお、同様の理由から縮径率を5%以上とすることがより好ましい。
一方で、縮径率が大きくなり過ぎると加工限界で破断を生じ易くなるので、40%以下とするのが好ましい。
【0089】
次に、第1の公転フライヤ23に管材5を巻き掛けて、管材5の搬送方向を公転回転中心軸C上の第2の方向D2に向ける。更に、第2の公転キャプスタン22に管材5を巻き掛けて、管材5を第2の引抜きダイス2に導入する(第2の誘導工程)。これにより、管材5の搬送方向は、第1の方向D1から第2の方向D2に反転し、第2の引抜きダイス2の中心に合わせられる。第1の公転フライヤ23は、第1の浮き枠34の周りを公転回転中心軸Cを中心として回転する。なお、第1の公転キャプスタン21、第1の公転フライヤ23および第2の公転キャプスタン22は、公転回転中心軸Cを中心として同期回転する。したがって、第1の公転キャプスタン21から第2の公転キャプスタン22の間で、管材5は相対的に回転せず捻りが付与されない。
【0090】
次に、第2の公転キャプスタン22とともに回転する管材5を第2の引抜きダイス2に通過させる。これにより、管材5を縮径するとともに捻りを付与し、螺旋溝5cの捻り角を更に大きくする(第2の捻り引抜き工程)。第2の捻り引抜き工程により第1の中間捻り管5M1は、内面螺旋溝付管5Rとなる。
なお、第2の引抜きダイス2による管材5の縮径率は、第1の捻り引抜き工程と同様に、2%以上(より好ましくは5%以上)40%以下とすることが好ましい。
【0091】
第2の捻り引抜き工程において、管材5には第2のガイドキャプスタン41を駆動する駆動モータ43により、前方張力が付与される。駆動モータ43としては、トルク制御可能なトルクモータを用いた場合、第2のガイドキャプスタン41は、管材5に付与する前方張力を調整できる。第2のガイドキャプスタン41により前方張力を調整することで、第2の捻り引抜き工程において管材5に適度な張力を付与することが可能となる。これにより、管材5に座屈・破断を生じさせることなく安定した捻り角を付与できる。
【0092】
管材5は、公転回転する第2の公転キャプスタン22に巻き掛けられた後に第2の引抜きダイス2を通過する。管材5は、第2の引抜きダイス2により縮径されるとともに、第2の公転キャプスタン22により管材5に捻りを付与される。これにより、管材5の内面の螺旋溝5cに更に大きな捻りが付与され、螺旋溝5cの捻り角が大きくなる。第2の捻り引抜き工程により第1の中間捻り管5M1は、第2の中間捻り管5M2となる。
【0093】
第2の引抜きダイス2の前段では、第2の公転キャプスタン22に管材5が巻き掛けられている。第2の引抜きダイス2の後段では、第2のガイドキャプスタン41が設けられ管材5の回転が規制されている。すなわち、管材5は第2の引抜きダイス2の前後で、捻り方向の変形が拘束されており、第2の公転キャプスタン22と第2のガイドキャプスタン41との間で、管材5に捻りが付与される。すなわち、第2の捻り引抜き工程において、管材5に捻りが付与される領域(加工域)は、第2の公転キャプスタン22と第2の引抜きダイス2との間に制限される。上述したように、加工域を短くすることで、大きな捻り角を付与しても座屈が生じにくい。第2のガイドキャプスタン41を設けることで、第2の引抜きダイス2の後段で捻りが付与されることがなく、加工域を短く設定できる。
【0094】
なお、本実施形態において、第2の公転キャプスタン22は、後方スタンド37Bの後方(第2の引抜きダイス2側)に設けられているが、第2の公転キャプスタン22は、前方スタンド37Aと後方スタンド37Bとの間に位置していてもよい。しかしながら、第2の公転キャプスタン22を、後方スタンド37Bに対し後方に配置して第2の引抜きダイス2に近づけることで、第2の捻り引抜き工程における加工域を短くすることができる。これにより、座屈の発生をより効果的に抑制できる。
【0095】
第1の捻り引抜き工程と同様に、第2の捻り引抜き工程において管材5には、捻りと縮径とが行われて複合応力が付与させる。これにより、管材5の座屈応力に達する前に、管材に座屈の発生を抑制しつつ大きな捻りを付与できる。
【0096】
次に、管材5を第3の引抜きダイス3に通過させる(第3の誘導工程)。更に、第3の引抜きダイス3の後段で管材5を第3の公転キャプスタン72に巻き掛けて公転回転中心軸Cの周りを回転させる。これにより、管材5を縮径するとともに螺旋溝5cの捻り角を更に大きくする(第3の捻り引抜き工程)。第3の捻り引抜き工程により第2の中間捻り管5M2は、第3の中間捻り管5M3となる。
なお、第3の引抜きダイス3による管材5の縮径率は、第1および第2の捻り引抜き工程と同様に、2%以上(より好ましくは5%以上)40%以下とすることが好ましい。
【0097】
第3の捻り引抜き工程において、管材5には第3の公転キャプスタン72を駆動する駆動モータ75により、前方張力が付与される。このため、管材5に適度な張力を付与することが可能となり、管材5に座屈・破断を生じさせることなく安定した捻り角を付与できる。
【0098】
第1および第2の捻り引抜き工程と同様に、第3の捻り引抜き工程において管材5には、捻りと縮径とが行われて複合応力が付与させる。これにより、管材5の座屈応力に達する前に、管材に座屈の発生を抑制しつつ大きな捻りを付与できる。
【0099】
第3の引抜きダイス3の前段には、第2のガイドキャプスタン41が設けられており管材5の回転が規制されている。第3の捻り引抜き工程において、管材5に捻りが付与される領域(加工域)は、第3の引抜きダイス3と第3の公転キャプスタン72との間に制限され加工域を短く設定できる。これにより、座屈を生じさせずに管材5に大きな捻りを付与できる。
【0100】
次に、管材5を第2の回転シャフト85の内部に通過させ、更に横孔85cから管材5を誘導し、第2の公転フライヤ73に管材5を巻き掛けて、管材5の搬送方向を公転回転中心軸C上の第4の方向D4に向ける。更に、第4の公転キャプスタン71に管材5を巻き掛けて、管材5を第4の引抜きダイス4に導入する(第4の誘導工程)。また、第3の公転キャプスタン72から第4の公転キャプスタン71の間で、管材5は相対的に回転せず捻りが付与されない。
【0101】
次に、第4の公転キャプスタン71とともに回転する管材5を第4の引抜きダイス4に通過させる。これにより、管材5を縮径するとともに捻りを付与し、螺旋溝5cの捻り角を更に大きくする(第4の捻り引抜き工程)。第4の捻り引抜き工程により第3の中間捻り管5M3は、内面螺旋溝付管5Rとなる。
【0102】
第4の引抜きダイス4による管材5の縮径率は、第1〜第3の捻り引抜き工程と同様に、2%以上(より好ましくは5%以上)40%以下とすることが好ましい。
なお、第1〜第4の捻り引抜き工程において、前段で行った縮径時の加工硬化の影響で後段の捻り引抜き工程が困難となる。したがって、第1〜第4の引抜きダイス1〜4の縮径率の合計には限度があり、50%以下とすることが好ましい。なお、第1〜第4の捻り引抜き工程の間に、インライン加熱によるひずみ除去のための中間焼鈍を行う場合(後段に説明する変形例)においては、この限りではない。
【0103】
第4の捻り引抜き工程において、管材5には第3のガイドキャプスタン68を駆動する駆動モータ68cにより、前方張力が付与される。これにより、管材5に座屈・破断を生じさせることなく安定した捻り角を付与できる。
【0104】
第4の引抜きダイス4の前段では、第4の公転キャプスタン71に管材5が巻き掛けられている。第4の引抜きダイス4の後段では、第3のガイドキャプスタン68が設けられ管材5の回転が規制されている。すなわち、管材5は第4の引抜きダイス4の前後で、捻り方向の変形が拘束されており、第4の公転キャプスタン71と第3のガイドキャプスタン68との間で、管材5に捻りが付与される。すなわち、第4の捻り引抜き工程において、管材5に捻りが付与される領域(加工域)は、第4の公転キャプスタン71と第4の引抜きダイス4との間に制限される。上述したように、加工域を短くすることで、大きな捻り角を付与しても座屈が生じにくい。
【0105】
第1〜第3の捻り引抜き工程と同様に、第4の捻り引抜き工程において管材5には、捻りと縮径とが行われて複合応力が付与させる。これにより、管材5の座屈応力に達する前に、管材に座屈の発生を抑制しつつ大きな捻りを付与できる。
【0106】
次に、管材5は、巻き取りボビン61に巻き付けられ回収される。巻き取りボビン61は、駆動モータ65により、管材5の搬送速度と同期して回転することで、管材5を弛みなく巻き取ることができる。
以上の工程を経て、製造装置Dを用いて、
図6に示す内面螺旋溝付管5Rを製造することができる。
【0107】
<作用効果>
本実施形態の製造方法によれば、特許文献1に示す従来の製造方法と比較して、捻りと同時に縮径を行っているため、出発材と最終製品の外径および断面積が異なる。また、管材に捻りと縮径の複合応力を付与するために、捻り加工に必要なせん断応力を低減させることが可能となり、管材5の座屈応力に達する前に、管材5に大きな捻りを付与できる。なお、特許文献1に示す製造装置では、
図7における縮径率0%の5°程度の捻りを2回行うため10°程度の捻り角の付与が限界であると考えられる。これに対して、本実施形態の製造方法によれば、直線溝付管5Bに対して捻りを付与するとともに、縮径を行うため、座屈発生を抑制しつつ大きな捻り角を付与できる。なお、本実施形態において、最終品である内面螺旋溝付管5Rの外径に対し、素材となる直線溝付管5Bの外径は1.1倍以上である。
【0108】
本実施形態の製造方法によれば、第1の引抜きダイス1と第2の引抜きダイス2との間で、管材5を公転回転させて捻りを付与するとともに引抜き方向を反転している。これにより、第1の捻り引抜き工程と第2の捻り引抜き工程における捻り方向を一致させて、管材5に捻りを付与できる。同様に、および第3の引抜きダイス3と第4の引抜きダイス4との間で、管材5を公転回転させて捻りを付与するとともに引抜き方向を反転している。これにより、第3の捻り引抜き工程と第4の捻り引抜き工程における捻り方向を一致させて、管材5に捻りを付与できる。更に、第1の公転機構30と第2の公転機構80とは、逆方向に回転するため第2の捻り引抜き工程と第3の捻り引抜き工程における捻り方向を一致させることができる。
【0109】
また、ラインの速度は、公転回転速度に依存するため、重量物である巻き出しボビン11又は巻き取りボビン61を回転させない本実施形態の製造方法では、回転速度を容易に高めることができる。すなわち、本実施形態によれば容易にラインを高速化できる。
更に、本実施形態において、巻き出しボビン11および巻き取りボビン61を回転させることがなく、巻き出しボビン11および巻き取りボビン61に長尺の管材5を巻き付けることができる。このため、本実施形態の製造方法によれば、一気通貫で長尺の管材5に捻りを付与することができる。すなわち、本実施形態によれば内面螺旋溝付管5Rの大量生産が容易となる。
【0110】
本実施形態の製造方法は、4回の捻り引抜き工程を経て管材5に捻りを付与するものである。このため、各段階の捻り引抜き工程で付与する捻り角を積み上げて大きな捻り角を付与することができる。すなわち各段階の捻り引抜き工程における捻り角を小さくすることで弱いせん断応力で加工できるため、底肉厚の薄い管に対しても、高角度の捻り角を付与できる。より具体的には、本実施形態によれば、0.4mm以下の底肉厚の管材においても、15°以上の捻り角を付与できる。
また、本実施形態によれば、捻り引抜き工程において付与する捻り角を浅くすることができるため、管材5の搬送速度(すなわちライン速度)を早くすることができる。したがって、第1構造部Aのみからなる製造装置と比較して、約2倍のライン速度で同程度の捻り角を付与することができる。
【0111】
本実施形態の製造方法によれば、第1〜第4の捻り引抜き工程において、管材5には前方張力と後方張力が付与される。前方張力は、第2のガイドキャプスタン41により管材5に付与され、後方張力は、巻き出しボビン11を制動するブレーキ部15によって管材5に付与される。これにより、加工対象の管材5に適切な張力を安定して付与することができる。管材5の管路に弛みが無く、直線溝付管5Bが芯ずれせずに引抜きダイスに入るため、管材5に座屈・破断を生じさせることなく安定した捻り角を付与できる。
【0112】
本実施形態において、第1および第2の引抜きダイス1、2のダイス孔の中心は、公転回転中心軸C上に位置している。同様に、第3および第4の引抜きダイス3、4のダイス孔の中心は、公転回転中心軸C上に位置している。これにより、ダイス孔を通過する管材5をダイス孔に対して直線的に配置できるため、管材5を均一に縮径して、捻り付与時の座屈を抑制できる。なお、第1および第2の引抜きダイス1、2並びに第3および第4の引抜きダイス3、4において、管材5が正常に縮径できる範囲であれば、公転回転中心軸Cに対するダイス孔の位置ズレは許容される。
【0113】
なお、上述の本実施形態において、第1〜第4の引抜きダイス1〜4の位置に、それぞれ複数の引抜きダイスを並べて配置してもよい。この場合には、第1〜第4の捻り引抜き工程において、縮径しながら多段階に捻りを付与できる。これにより、各引抜きダイスによる捻り加工により、捻り角を積み上げ大きな捻り角を付与した内面螺旋溝付管5Rを製造できる。
【0114】
また、上述の本実施形態において、第1〜第4の引抜きダイス1〜4の前段に、引抜きダイスのダイス孔の中心に管材5を誘導するダミーダイスを設けてもよい。ダミーダイスを用いることで、管材5の位置合わせをすることができ、第1〜第4の引抜きダイス1〜4のダイス孔内周面に、管材5を均一な圧力で接触させることが可能となる。これにより、管材5の縮径が均一に行われて周方向の偏肉が少ない内面螺旋溝付管を製造できる。また、管材5の捻りも周方向に均一に行い、捻り角の安定した内面螺旋溝付管5Rを、座屈を生じさせることなく製造できる。なお、ダミーダイスは、管材の縮径をほとんど行わない(例えば、縮径率0%〜0.3%)。ダミーダイスを構成する材料としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂が例示できる。
【0115】
<<変形例>>
上述した実施形態の変形例について、
図8を基に説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
変形例の内面螺旋溝付管の製造装置Daは、上述の実施形態と比較して、中継点Nに加熱炉(熱処理部)6を備える点が異なる。
【0116】
変形例の製造装置Daは、上述の実施形態と同様に、第1構造部Aおよび第2構造部Bを備える。また、変形例の製造装置Daは、上述の実施形態の第2のガイドキャプスタン41に代えて、2つの中継ガイドキャプスタン41A、41Bを有する。中継ガイドキャプスタン41A、41Bの間には、管材5にインラインで熱処理を施す加熱炉6が設けられている。
【0117】
加熱炉6は、管材5の搬送方向に沿って設けられ管材5を囲む断熱筒6bと、断熱筒6b内を加熱するヒータ6aと、を有する。加熱炉6は、第1構造部Aを経て捻りが付与された第2の中間捻り管5M2に対して、熱処理(焼きなまし処理)を行い、O材化する。熱処理を行うことで、第1構造部Aにおける第1および第2の捻り引抜き工程により生じた加工硬化を除去して、第3および第4の捻り引抜き工程において大きな捻りを付与できる。これにより、例えば、40°以上の大きな捻り角を付与した内面螺旋溝付管5Rを製造できる。
【0118】
<<熱交換器>>
図9は、本発明に係る内面螺旋溝付管を備えた熱交換器90の一例を示す概略図であり、冷媒を通過させるチューブとして内面螺旋溝付管91(内面螺旋溝付管5R)を蛇行させて設け、この内面螺旋溝付管91の周囲に複数のアルミニウム合金製のフィン材92を平行に配設した構造である。内面螺旋溝付管91は、平行に配設したフィン材92を貫通するように設けた複数の透孔を通過するように設けられている。
図9に示す熱交換器90の構造において内面螺旋溝付管91は、フィン材92を直線状に貫通する複数のU字状の主管91Aと、隣接する主管91Aの隣り合う端部開口同士をU字形のエルボ管91Bで
図9(b)に示すように接続してなる。また、フィン材92を貫通している内面螺旋溝付管91の一方の端部側に冷媒の入口部96が形成され、内面螺旋溝付管91の他方の端部側に冷媒の出口部97が形成されることで
図9に示す熱交換器90が構成されている。
【0119】
図9に示す熱交換器90は、フィン材92のそれぞれに形成した透孔を貫通するように内面螺旋溝付管91を設け、フィン材92の透孔に挿通後、拡管プラグにより内面螺旋溝付管91の外径を押し広げて内面螺旋溝付管91とフィン材92を機械的に一体化することで組み立てられている。
図9に示す熱交換器90に内面螺旋溝付管91を適用することで、熱交換効率の良好な熱交換器90を提供できる。
また、例えば、内面螺旋溝付管5Rの外径が10mm以下と小さく、アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる内面螺旋溝付管5Rを用いて熱交換器90を構成すると、小型高性能であり、リサイクル時にフィン材92と内面螺旋溝付管91の分離が不要であって、リサイクル性に優れた熱交換器を提供できる。
【0120】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。