【実施例1】
【0016】
本発明に係る廃棄物処理、計測設備における一連の概略処理について
図1を用いて説明する。
【0017】
図1には、解体場所P1と測定場所P2が示されている。解体場所P1は、廃止措置対象の原子力発電施設であり、容器1内に解体廃棄物2を収納した後、必要に応じて蓋3をして、測定場所P2に搬入される。なお測定場所P2は、できれば屋内に設置されるのがよい。測定場所P2に搬入された容器は、蓋が外された状態で容器に収納された放射性廃棄物の放射能濃度を測定した後に、砂を充填した上で蓋をして搬出され、例えばトレンチに埋設される。
【0018】
測定場所P2における放射性廃棄物2の放射能濃度を測定するプロセスとしては、廃棄物2の3次元計測と放射線計測が実行される。このため本発明に係る廃棄物計測方法では、容器の外部からの計測ではなく、容器の内部計測を可能としている。
【0019】
本発明における測定方法のフローの一例を
図2に示す。本測定方法は、ステップS101からステップS108の処理からなる。ステップS101からステップS104までが3次元計測、ステップS105からステップS108までが放射線計測の処理ステップを示している。
【0020】
本発明の測定方法では、初めのステップS101において、放射性廃棄物2が収納された容器1を、測定場所P2に受け入れる。受け入れた容器1は、異物の混入や二次汚染の拡大を防止する目的で、蓋(図示せず)が閉じられていることが通常である。
【0021】
そこでステップS102では、容器1の内部を確認できるよう、容器1上部の蓋3を開放する。蓋3を開放するにあたっては、二次汚染が広がらないよう養生を施すなどの処置をすることが望ましい。また、場合によっては容器1に蓋3がされていないことも考えられる。その場合には、ステップS102はスキップしてもかまわない。
【0022】
次にステップS103では、容器上部から容器1に収納された放射性廃棄物2の位置を3次元計測する。
【0023】
ステップS103を実現する3次元計測装置100の一例を
図3に示す。ステップS103を実現するためのシステムは、支持脚11により支持された第1のリニアアクチュエータ12、第1のリニアアクチュエータ12にこれと直交する方向に取り付けられた第2のリニアアクチュエータ13、第2のリニアアクチュエータ13に取り付けられた3次元位置計測装置21、第1のリニアアクチュエータ12および第2のリニアアクチュエータ13を制御する制御装置14、3次元位置計測装置21を計測制御し同装置から出力される計測データを収集する計測制御・データ収集装置22からなる。
【0024】
第2のリニアアクチュエータ13は、制御装置14からの制御信号に従い、第1のリニアアクチュエータ12により矢印15の方向に並進する。また、3次元位置計測装置21は、制御装置14からの制御信号に従い、第2のリニアアクチュエータ13により矢印23の方向に並進する。
【0025】
第1のリニアアクチュエータ12の並進方向15が、容器1に対して横方向への移動であるとすれば、第2のリニアアクチュエータ13の並進方向23は、容器1に対して縦方向への移動である。かつ3次元位置計測装置21は、収納容器1をその上部から俯瞰している。これにより、容器1内に収納された放射性廃棄物2の収納位置が3次元位置計測可能である。
【0026】
図4に、容器1に収納された放射性廃棄物2の一例を示す。この図は、
図3の3次元計測装置100により、収納容器1をその上部から俯瞰して得た画像例を示している。図の例では、放射性廃棄物2として熱交換器に使用された伝熱管群を例としている。従来は、この伝熱管をさらに細断した上で容器1に収納されていたが、ここでは切断工数を大幅に減少させるため、
図4に示すように、容器1に収納可能な最大サイズまでの切断としている。
図3に示す3次元位置計測装置21は、このような放射性廃棄物2の容器1内における位置を、容器1の上部から計測している。
【0027】
なお、3次元位置計測装置21の一例に、測定対象物に照射したレーザ光の反射を利用して対象物までの距離を計測するレーザ距離計測器がある。ピンポイント測定タイプのレーザ距離計測器は測定精度が高いが測定できる視野範囲は狭い。その場合、あらかじめスキャン手順をプログラミングしておき、そのスキャン手順に基づき、制御装置14および計測制御・データ収集装置22によりレーザ距離計測器をスキャンして容器1内の放射性廃棄物2の位置情報を取得することが可能である。さらに、スキャンにより得られた容器1内の放射性廃棄物2の位置情報から、容器1内の放射性廃棄物2の位置のマップを生成することで、後述する放射線スペクトル計測器31の挿入位置を決定することが容易になる。
【0028】
他のレーザ距離計測器の例として、レーザレンジファインダ(LRF)と呼ばれるものがある。LRFは、照射したレーザを回転ミラーで反射させて扇状にスキャンする。そのため、ピンポイント測定タイプのレーザ距離計測器と比較して、測定視野範囲が格段に広いと言う特徴がある。LRFによる測定データは、基準原点(例えばレーザ出射点)に対する点(X,Y,Z)の3次元座標値である点群データとして出力されるので、ピンポイント測定タイプのレーザ距離計をリニアアクチュエータ12およびリニアアクチュエータ13を用いてスキャンした場合と同様なマップを短時間で形成することができる。
【0029】
3次元位置計測装置21の一例として、少なくとも異なる2方向から撮影したカメラ画像から三角側距原理を利用して距離を求めるステレオカメラを利用することも可能である。この場合、レーザを用いた距離測定と比較して精度は劣るが、放射性廃棄物2の収納状況を光学カメラに収めておくことで、収納状況を視覚的に把握することが容易となる利点がある。また、レーザ距離計測器は金属光沢がある対象物に対しては測定精度が低下する場合があるため、金属光沢がある放射性廃棄物2が主な場合にはステレオカメラを利用することができる。一方ステレオカメラでは、平板等のように対象物に凹凸等の起伏の変化に乏しい場合には距離測定が難しくなる場合がある。このため、レーザ距離計測器とステレオカメラを併用することにより、ロバストな測定が可能になる。
【0030】
図2のフロー図に戻り、次のステップS104では、ステップS103の3次元位置計測データに基づき、後述する放射線スペクトル計測器31を挿入可能な隙間41を探索し抽出する。
【0031】
図5は、ステップS104での処理により、結果的に得られた放射線スペクトル計測器31を挿入可能な隙間41の例を示す図である。隙間41であれば、容器1上部から挿入した放射線スペクトル計測器31を容器1底部に向けて挿入可能な領域であることを表している。
【0032】
ステップS104での処理は具体的には、測定に使用する放射線スペクトル計測器31や、後述する放射線スペクトル計測器位置検出器32のサイズをあらかじめ入力しておき、ステップS103にて生成した容器1内における放射性廃棄物2のマップ情報(
図4)と比較することで、放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を挿入する隙間41を探索する。基本的には、容器1を上部から見た場合の視野の広がり方向の隙間41のサイズを判定基準とすればよい。
【0033】
ステップS103にて生成した容器1内における放射性廃棄物2のマップ情報と、ステップS104での隙間探索により抽出した隙間41をコンピュータ等の画面に表示した場合のイメージを
図5に示す。このとき、抽出した隙間41の各位置に対して、視野方向にどの程度の深さの空間があるかといった情報もあわせて取得することにより、後述する放射線スペクトル計測器31の挿入深さを決定するための判断材料として利用することが可能である。
【0034】
以上説明したステップS101からステップS104までが3次元計測の処理であり、
図3の3次元計測装置100を用いて実行される。これに対し、以下に述べるステップS105からステップS108までが放射線計測の処理であり、
図6の放射線計測装置200を用いて実行される。
【0035】
図6の放射線計測装置200について説明する。ここでは、複数のコ字形状の支持脚11が、床面に配置されたレール61上に載置されて矢印62の方向に並進する。各支持脚11の並進位置は、制御装置により個別に設定可能である。複数のコ字形状の支持脚11の上部には、支持脚上部16に沿って矢印63の方向に並進可能なガイド管昇降装置64が取り付けられている。ガイド管昇降装置64は高さ方向66に上下動が可能である。ガイド管昇降装置64はガイド管把持機構65にガイド管51を吊り下げ把持しており、ガイド管51を容器1内に容器上部から挿入が可能である。なお、ガイド管昇降装置64の並進方向63、および高さ位置66は、制御装置により個別に設定可能である。
【0036】
またガイド管昇降装置64は、ガイド管51を吊り下げ把持して容器上面の任意位置に位置づけることが可能であり、かつ当該位置に位置づけられて容器内に挿入されたガイド管51の内部に、ガイド管上部から放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を挿入する構造を含んでいる。
【0037】
図2に戻る。次のステップS105では、ステップS104にて抽出した隙間41に、放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を挿入するためのガイド管51を挿入する。この挿入の位置決めのために
図6の放射線計測装置200が使用される。
【0038】
図7に、ガイド管51を容器1に挿入する様子を具体的に示す。ガイド管51の挿入は、放射線スペクトル計測器31が放射性廃棄物2と衝突し、その衝撃により破損してしまうことを防止する、あるいは、放射線スペクトル計測器31を放射性廃棄物2の内部へ挿抜する際に、放射性廃棄物2に引っかかってしまい挿入や抜き取りができなくなってしまうことを防止することを目的としている。
【0039】
ガイド管51には剛性の高いものを使用してもよいが、様々な形状をした放射性廃棄物2が容器1に収納されるであろうことを考慮すると、管の形状が可変なフレキシブル管であることが望ましい。フレキシブル管を用いることで、放射性廃棄物2の隙間41に奥深く挿入することも可能である。
【0040】
ステップS104にて抽出した隙間41が、放射線スペクトル計測器31や放射線スペクトル計測器位置検出器32に対して十分大きい場合には、ガイド管51を挿入せずに計測を実施することも十分考えられる。
【0041】
図2に戻る。次にステップS106では、ステップS105で挿入したガイド管51の管内に放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を挿入する。
【0042】
さらにステップS107では、ガイド管51に挿入した放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を、挿入深さ方向における最初の測定ポイントまで移動させる。
【0043】
ステップS108では、最初の測定ポイントまで到達したら、放射線スペクトル計測器31による放射線スペクトル計測、および放射線スペクトル計測器位置検出器32による放射線スペクトル計測器31の位置計測を実施する。
【0044】
ステップS109では、その位置における放射線スペクトル計測、および放射線スペクトル計測器31の位置計測が終了したら、次の測定ポイントまで放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を移動させる。
【0045】
あらかじめ設定した測定ポイントでの測定が終了するまで、ステップS108とステップS109を繰り返し実行する。
【0046】
図8に、ガイド管51に放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を挿入する様子を示す。放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32は、ガイド管昇降装置64に連動して作動する計測器挿入装置(図示せず)により送り出されたケーブル33により挿抜される。このケーブル33には放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32に対する電力供給や制御信号送信のためのケーブルおよびデータ収集のためのケーブルが内包されている。放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32からのデータは、データ収集装置24に取り込まれる。
【0047】
また、放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を、ガイド管51内を移動して、測定ポイントを変えて測定する様子を
図9に示す。測定ポイントの設定、あるいは測定ポイント間の距離は、要求測定精度にあわせて設定することが望ましい。
【0048】
以上の測定において、測定ポイントが多数ある場合には、測定ポイントの位置情報とその位置における放射線スペクトル測定データから、詳細な濃度分布のマップを生成することが可能である。測定ポイントが少ない場合でも、粗い濃度分布のマップを生成することが可能であり、さらに測定データから、ベイズ推定や最尤推定等の逆問題解法を用いて、濃度分布を推定することも可能である。
【0049】
以上記載した本発明の実施例1に係る方法および装置により、廃棄体容器内に収納された放射性廃棄体の放射能濃度を、その容器内に放射能濃度分布がある場合であり、また放射能濃度のレベルが低い場合であっても精度よく計測できる。