特許第6643115号(P6643115)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643115放射性廃棄物の放射能濃度測定方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643115
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】放射性廃棄物の放射能濃度測定方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/167 20060101AFI20200130BHJP
   G01T 1/16 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   G01T1/167 D
   G01T1/16 A
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-17704(P2016-17704)
(22)【出願日】2016年2月2日
(65)【公開番号】特開2017-138138(P2017-138138A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230940
【氏名又は名称】日本原子力発電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】名雲 靖
(72)【発明者】
【氏名】月山 俊尚
(72)【発明者】
【氏名】田所 孝広
(72)【発明者】
【氏名】上野 克宜
(72)【発明者】
【氏名】岡田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正弘
(72)【発明者】
【氏名】山井 英樹
(72)【発明者】
【氏名】近江 正
(72)【発明者】
【氏名】三徳屋 匠
(72)【発明者】
【氏名】下尾崎 寛子
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−052362(JP,A)
【文献】 特開2011−208958(JP,A)
【文献】 特開2015−187567(JP,A)
【文献】 特開平06−027246(JP,A)
【文献】 特開2014−157132(JP,A)
【文献】 特開昭62−015443(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00208250(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−1/16
G01T 1/167−7/12
G21F 9/36
G21C 17/00−17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する容器内に収納された放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
前記開口部の方向から前記容器内を視認して前記放射性廃棄物の位置を検知し、放射線計測器を挿入可能な隙間空間を決定し、当該隙間空間に挿入した放射線計測器の計測結果を当該隙間空間における挿入位置の情報とともに得ることを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
前記放射性廃棄物の位置を検知するために、レーザにより距離を測定するレーザ距離計測器を用いることを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項3】
請求項1に記載の放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
前記放射性廃棄物の位置を検知するために、少なくとも2方向から撮影したカメラ画像により距離を測定するカメラ距離計測器を用いることを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
放射線計測器の計測結果を当該隙間空間における挿入位置の情報とともに得るために、放射線スペクトル計測器と、該放射線スペクトル計測器とともに移動する放射線スペクトル計測器位置検出器を用いることを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
検知された前記放射性廃棄物の位置は、前記容器内における3次元位置であることを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
決定された前記放射線計測器を挿入可能な隙間空間に、ガイド管を挿入し、ガイド管内に前記放射線計測器を挿入することを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
前記ガイド管は、フレキシブルチューブであることを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
前記隙間空間の挿入位置に対して得た放射線計測器の計測結果から、挿入位置方向の計測結果の分布を得ることを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項9】
開口部を有する容器内に収納された放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
放射線計測器として放射線スペクトル計測器および放射線スペクトル計測器位置検出器を、前記容器内に予め挿入する検出器挿入領域を設置し、前記放射性廃棄物を前記容器に収納した後、前記放射線スペクトル計測器および前記放射線スペクトル計測器位置検出器を前記検出器挿入領域に挿入し、前記検出器挿入領域に挿入した放射線計測器の計測結果を当該検出器挿入領域における挿入位置の情報とともに得ることを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項10】
請求項9に記載の放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
前記放射線計測器は放射線スペクトル計測器であって、放射線スペクトル計測器がコリメータを備えたことを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
前記放射線計測器は放射線スペクトル計測器および放射線スペクトル計測器位置検出器を含み、前記放射線スペクトル計測器による測定スペクトルデータ、および前記放射線スペクトル計測器位置検出器による測定位置データから、逆問題解析により放射能濃度分布を評価する放射能濃度逆推定を含むことを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項12】
上部の蓋を外された容器内に収納された放射性廃棄物の放射能濃度測定装置であって、
3次元計測装置と、放射線計測装置とを備え、
前記3次元計測装置は、上部の蓋を外された前記容器を上方から視認して前記放射性廃棄物の位置を検知し、放射線計測器を挿入可能な隙間空間を決定し、
前記放射線計測装置は、決定された前記隙間空間に放射線計測器と該放射線計測の位置検出器を挿入して、前記放射線計測器の計測結果を当該隙間空間における挿入位置の情報とともに得ることを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定装置。
【請求項13】
請求項12に記載の放射性廃棄物の放射能濃度測定装置であって、
前記放射線計測装置は、決定された前記隙間空間にガイド管を挿入し、その後ガイド管内に前記放射線計測器と前記放射線計測の位置検出器を挿入する手段を含むことを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定装置。
【請求項14】
開口部を有する容器内に収納された放射性廃棄物の位置を前記容器の開口部から計測する廃棄物位置計測ステップと、該廃棄物位置計測ステップにより取得した前記放射性廃棄物の位置情報に基づき、少なくとも1台のガンマ線の放射線スペクトルを計測する放射線スペクトル計測器を前記容器または前記放射性廃棄物内に挿入する位置を決定する計測器挿入位置決定ステップと、該計測器挿入位置決定ステップにより決定した挿入位置に前記放射線スペクトル計測器を挿入する計測器挿入ステップと、該計測器挿入ステップにより挿入した前記放射線スペクトル計測器により、挿入方向に対して少なくとも1点以上の挿入位置または挿入深さにおいて放射線スペクトルを計測し、そのときの前記放射線スペクトル計測器の挿入位置または挿入深さを測定する放射線スペクトル計測器位置検出ステップと、前記放射線スペクトル計測器による放射線スペクトル計測結果および前記放射線スペクトル計測器位置検出ステップによる前記放射線スペクトル計測器の計測位置情報から前記容器内に収納された前記放射性廃棄物の放射能濃度を評価する放射能濃度評価ステップを備えたことを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項15】
請求項14に記載の放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
前記計測器挿入位置決定ステップとして、前記放射線スペクトル計測器のサイズ情報、前記放射線スペクトル計測器位置検出ステップと前記廃棄物位置計測ステップにより取得した前記放射性廃棄物位置情報から得られる前記放射性廃棄物の隙間情報とを比較するサイズ比較ステップを備え、該サイズ比較ステップよる比較の結果、前記放射性廃棄物の隙間が前記放射線スペクトル計測器のサイズよりも大きい場合に、その前記隙間を前記放射線スペクトル計測器の挿入位置に決定する計測器挿入位置判定ステップを有することを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項16】
放射線計測器として放射線スペクトル計測器および放射線スペクトル計測器位置検出器を、開口部を有する容器内に予め挿入する検出器挿入領域を設置する検出器挿入領域設置ステップと、放射性廃棄物を前記容器に収納する放射性廃棄物収納ステップと、前記放射性廃棄物を前記容器に収納した後、前記放射線スペクトル計測器および前記放射線スペクトル計測器位置検出器を前記検出器挿入領域に挿入する検出器挿入ステップと、前記検出器挿入ステップにより挿入した前記放射線計測器により、挿入方向に対して少なくとも1点以上の挿入位置または挿入深さにおいて放射線スペクトルを計測し、そのときの前記放射線スペクトル計測器の挿入位置または挿入深さを測定する放射線スペクトル計測器位置検出ステップと、前記放射線スペクトル計測器による放射線スペクトル計測結果および前記放射線スペクトル計測器位置検出器による前記放射線スペクトル計測器の計測位置情報から前記容器内に収納された前記放射性廃棄物の放射能濃度を評価する放射能濃度評価ステップを備えたことを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項17】
請求項16に記載の放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
前記放射能濃度評価ステップとして、前記放射線スペクトル計測器による測定スペクトルデータ、および前記放射線スペクトル計測器位置検出器による測定位置データから、逆問題解析により放射能濃度分布を評価する放射能濃度逆推定ステップを備えたことを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【請求項18】
請求項1ないし請求項5、または請求項10ないし請求項11のいずれか1項に記載の放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、
前記放射線計測器を前記放射性廃棄物表面まで近接させ、前記放射線計測器による測定データから放射能濃度分布を測定または推定することを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電施設等の廃止措置に伴い発生する放射性廃棄物の放射能濃度を合理的かつ高精度に測定するのに好適な放射性廃棄物の放射能濃度測定方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電施設等の廃止措置においては、施設の解体に伴い、大量の廃棄物が発生する。その中には、放射化された廃棄物や汚染された廃棄物も含まれ、これらの廃棄物についてはその放射能濃度を測定し、放射能濃度のレベルに応じた処理・処分が必要となる。例えば、放射能濃度が極めて低いレベルの廃棄体はL3廃棄物と呼ばれ、容器に収納後、トレンチに埋設されることが計画されている。
【0003】
廃棄物の放射能濃度測定は、廃棄物が収納された容器の外側に放射線検出器を配置して実施されることが想定される。また、廃棄物を収納した上で砂を充填した容器の外側から放射能濃度を測定することも想定される。これは、容器に廃棄物および砂を充填したあと、蓋を閉じることによってその後の異物の混入や二次的な汚染の拡大を防止することが想定されるためである。
【0004】
このような容器に収納された放射性廃棄物の放射能濃度を測定する方法として、特許文献1に記載の方法がある。特許文献1では、容易に汚染測定ができるように測定対象物に対して切断や成型加工を実施している。
【0005】
容器に収納された放射性廃棄物の放射能濃度を測定する別の方法として、特許文献2に示す方法がある。特許文献2では、廃棄物が収納された容器の外側から、NaI検出器とGe検出器の2種類の検出器を用いて測定する方法である。具体的には、容器を挟むように2種類の検出器を対向配置し、得られた対向方向の測定結果から、線源の位置による影響を排除して線源強度を計算したうえで、点在する線源強度を積算して放射性核種の含有量を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−248066号公報
【特許文献2】特開2005−180936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、原子力発電施設等から発生する膨大な量の解体廃棄物に対して、測定の前処理となる切断や成型加工が必要となり、時間と費用がかかるという課題がある。
【0008】
また、検討されている容器のサイズは、一辺が1m前後と大型であるため、廃棄物や容器壁による遮蔽効果により、ガンマ線の減衰が大きい。さらに砂を充填した上で、測定する場合には、ガンマ線の減衰がいっそう大きくなる。そのため特許文献2に記載されているような、容器外でのガンマ線測定は難しくなるという課題がある。
【0009】
特にL3廃棄物のように、放射能濃度のレベルが低い場合には、容器中央部に線源が存在するような濃度分布があったとしても、その線源からのガンマ線を測定することはきわめて困難であるという課題がある。また、時間をかけて測定する場合でも、非常に長い時間が必要になり、現実的な時間で実施することはきわめて困難であると言う課題がある。
【0010】
以上のことから本発明の目的は、容器に収納された放射性廃棄物の放射能濃度のレベルが低い場合および容器内の放射性廃棄物に放射能濃度分布がある場合であっても精度よく計測できる放射性廃棄物の放射能濃度測定方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例として、開口部を有する容器内に収納された放射性廃棄物の放射能濃度測定方法であって、開口部の方向から容器内を視認して放射性廃棄物の位置を検知し、放射線計測器が挿入可能な隙間空間を決定し、当該隙間空間に挿入した放射線計測器の計測結果を当該隙間空間における挿入位置の情報とともに得ることを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定方法である。
【0012】
また本発明は、上部の蓋を外された容器内に収納された放射性廃棄物の放射能濃度測定装置であって、3次元計測装置と、放射線計測装置とを備え、3次元計測装置は、上部の蓋を外された前記容器を上方から視認して放射性廃棄物の位置を検知し、放射線計測器を挿入可能な隙間空間を決定し、放射線計測装置は、決定された隙間空間に放射線計測器と放射線計測機の位置検出器を挿入して、放射線計測器の計測結果を当該隙間空間における挿入位置の情報とともに得ることを特徴とする放射性廃棄物の放射能濃度測定装置である。
【発明の効果】
【0013】
容器に収納された放射性廃棄物の放射能濃度のレベルが低い場合及び容器内の放射性廃棄物に放射能濃度分布がある場合であっても精度よく計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る廃棄物処理、計測設備における一連の概略処理を示す図。
図2】本発明に係る廃棄物計測方法の処理フローの一例を示した図。
図3図2の処理フローにおける3次元計測を行うための装置の一例を示す図。
図4】容器内に収納された放射性廃棄物の一例を示した図。
図5】放射線スペクトル計測器31を挿入可能な隙間41の例を示す図。
図6】放射線計測装置200の一例を示す図。
図7】ガイド管51を容器1に挿入する様子を具体的に示す図。
図8】ガイド管51に放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を挿入する様子を示す図。
図9】測定ポイントを変えて測定する様子を示す図。
図10】容器1の上面図を示す図。
図11図10の容器1のA-A断面を示す図。
図12】大きな板状の放射性廃棄物2を測定する方法の一例を示す図。
図13】放射線スペクトル計測器31にコリメータ34を装着して計測する方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明に係る廃棄物処理、計測設備における一連の概略処理について図1を用いて説明する。
【0017】
図1には、解体場所P1と測定場所P2が示されている。解体場所P1は、廃止措置対象の原子力発電施設であり、容器1内に解体廃棄物2を収納した後、必要に応じて蓋3をして、測定場所P2に搬入される。なお測定場所P2は、できれば屋内に設置されるのがよい。測定場所P2に搬入された容器は、蓋が外された状態で容器に収納された放射性廃棄物の放射能濃度を測定した後に、砂を充填した上で蓋をして搬出され、例えばトレンチに埋設される。
【0018】
測定場所P2における放射性廃棄物2の放射能濃度を測定するプロセスとしては、廃棄物2の3次元計測と放射線計測が実行される。このため本発明に係る廃棄物計測方法では、容器の外部からの計測ではなく、容器の内部計測を可能としている。
【0019】
本発明における測定方法のフローの一例を図2に示す。本測定方法は、ステップS101からステップS108の処理からなる。ステップS101からステップS104までが3次元計測、ステップS105からステップS108までが放射線計測の処理ステップを示している。
【0020】
本発明の測定方法では、初めのステップS101において、放射性廃棄物2が収納された容器1を、測定場所P2に受け入れる。受け入れた容器1は、異物の混入や二次汚染の拡大を防止する目的で、蓋(図示せず)が閉じられていることが通常である。
【0021】
そこでステップS102では、容器1の内部を確認できるよう、容器1上部の蓋3を開放する。蓋3を開放するにあたっては、二次汚染が広がらないよう養生を施すなどの処置をすることが望ましい。また、場合によっては容器1に蓋3がされていないことも考えられる。その場合には、ステップS102はスキップしてもかまわない。
【0022】
次にステップS103では、容器上部から容器1に収納された放射性廃棄物2の位置を3次元計測する。
【0023】
ステップS103を実現する3次元計測装置100の一例を図3に示す。ステップS103を実現するためのシステムは、支持脚11により支持された第1のリニアアクチュエータ12、第1のリニアアクチュエータ12にこれと直交する方向に取り付けられた第2のリニアアクチュエータ13、第2のリニアアクチュエータ13に取り付けられた3次元位置計測装置21、第1のリニアアクチュエータ12および第2のリニアアクチュエータ13を制御する制御装置14、3次元位置計測装置21を計測制御し同装置から出力される計測データを収集する計測制御・データ収集装置22からなる。
【0024】
第2のリニアアクチュエータ13は、制御装置14からの制御信号に従い、第1のリニアアクチュエータ12により矢印15の方向に並進する。また、3次元位置計測装置21は、制御装置14からの制御信号に従い、第2のリニアアクチュエータ13により矢印23の方向に並進する。
【0025】
第1のリニアアクチュエータ12の並進方向15が、容器1に対して横方向への移動であるとすれば、第2のリニアアクチュエータ13の並進方向23は、容器1に対して縦方向への移動である。かつ3次元位置計測装置21は、収納容器1をその上部から俯瞰している。これにより、容器1内に収納された放射性廃棄物2の収納位置が3次元位置計測可能である。
【0026】
図4に、容器1に収納された放射性廃棄物2の一例を示す。この図は、図3の3次元計測装置100により、収納容器1をその上部から俯瞰して得た画像例を示している。図の例では、放射性廃棄物2として熱交換器に使用された伝熱管群を例としている。従来は、この伝熱管をさらに細断した上で容器1に収納されていたが、ここでは切断工数を大幅に減少させるため、図4に示すように、容器1に収納可能な最大サイズまでの切断としている。図3に示す3次元位置計測装置21は、このような放射性廃棄物2の容器1内における位置を、容器1の上部から計測している。
【0027】
なお、3次元位置計測装置21の一例に、測定対象物に照射したレーザ光の反射を利用して対象物までの距離を計測するレーザ距離計測器がある。ピンポイント測定タイプのレーザ距離計測器は測定精度が高いが測定できる視野範囲は狭い。その場合、あらかじめスキャン手順をプログラミングしておき、そのスキャン手順に基づき、制御装置14および計測制御・データ収集装置22によりレーザ距離計測器をスキャンして容器1内の放射性廃棄物2の位置情報を取得することが可能である。さらに、スキャンにより得られた容器1内の放射性廃棄物2の位置情報から、容器1内の放射性廃棄物2の位置のマップを生成することで、後述する放射線スペクトル計測器31の挿入位置を決定することが容易になる。
【0028】
他のレーザ距離計測器の例として、レーザレンジファインダ(LRF)と呼ばれるものがある。LRFは、照射したレーザを回転ミラーで反射させて扇状にスキャンする。そのため、ピンポイント測定タイプのレーザ距離計測器と比較して、測定視野範囲が格段に広いと言う特徴がある。LRFによる測定データは、基準原点(例えばレーザ出射点)に対する点(X,Y,Z)の3次元座標値である点群データとして出力されるので、ピンポイント測定タイプのレーザ距離計をリニアアクチュエータ12およびリニアアクチュエータ13を用いてスキャンした場合と同様なマップを短時間で形成することができる。
【0029】
3次元位置計測装置21の一例として、少なくとも異なる2方向から撮影したカメラ画像から三角側距原理を利用して距離を求めるステレオカメラを利用することも可能である。この場合、レーザを用いた距離測定と比較して精度は劣るが、放射性廃棄物2の収納状況を光学カメラに収めておくことで、収納状況を視覚的に把握することが容易となる利点がある。また、レーザ距離計測器は金属光沢がある対象物に対しては測定精度が低下する場合があるため、金属光沢がある放射性廃棄物2が主な場合にはステレオカメラを利用することができる。一方ステレオカメラでは、平板等のように対象物に凹凸等の起伏の変化に乏しい場合には距離測定が難しくなる場合がある。このため、レーザ距離計測器とステレオカメラを併用することにより、ロバストな測定が可能になる。
【0030】
図2のフロー図に戻り、次のステップS104では、ステップS103の3次元位置計測データに基づき、後述する放射線スペクトル計測器31を挿入可能な隙間41を探索し抽出する。
【0031】
図5は、ステップS104での処理により、結果的に得られた放射線スペクトル計測器31を挿入可能な隙間41の例を示す図である。隙間41であれば、容器1上部から挿入した放射線スペクトル計測器31を容器1底部に向けて挿入可能な領域であることを表している。
【0032】
ステップS104での処理は具体的には、測定に使用する放射線スペクトル計測器31や、後述する放射線スペクトル計測器位置検出器32のサイズをあらかじめ入力しておき、ステップS103にて生成した容器1内における放射性廃棄物2のマップ情報(図4)と比較することで、放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を挿入する隙間41を探索する。基本的には、容器1を上部から見た場合の視野の広がり方向の隙間41のサイズを判定基準とすればよい。
【0033】
ステップS103にて生成した容器1内における放射性廃棄物2のマップ情報と、ステップS104での隙間探索により抽出した隙間41をコンピュータ等の画面に表示した場合のイメージを図5に示す。このとき、抽出した隙間41の各位置に対して、視野方向にどの程度の深さの空間があるかといった情報もあわせて取得することにより、後述する放射線スペクトル計測器31の挿入深さを決定するための判断材料として利用することが可能である。
【0034】
以上説明したステップS101からステップS104までが3次元計測の処理であり、図3の3次元計測装置100を用いて実行される。これに対し、以下に述べるステップS105からステップS108までが放射線計測の処理であり、図6の放射線計測装置200を用いて実行される。
【0035】
図6の放射線計測装置200について説明する。ここでは、複数のコ字形状の支持脚11が、床面に配置されたレール61上に載置されて矢印62の方向に並進する。各支持脚11の並進位置は、制御装置により個別に設定可能である。複数のコ字形状の支持脚11の上部には、支持脚上部16に沿って矢印63の方向に並進可能なガイド管昇降装置64が取り付けられている。ガイド管昇降装置64は高さ方向66に上下動が可能である。ガイド管昇降装置64はガイド管把持機構65にガイド管51を吊り下げ把持しており、ガイド管51を容器1内に容器上部から挿入が可能である。なお、ガイド管昇降装置64の並進方向63、および高さ位置66は、制御装置により個別に設定可能である。
【0036】
またガイド管昇降装置64は、ガイド管51を吊り下げ把持して容器上面の任意位置に位置づけることが可能であり、かつ当該位置に位置づけられて容器内に挿入されたガイド管51の内部に、ガイド管上部から放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を挿入する構造を含んでいる。
【0037】
図2に戻る。次のステップS105では、ステップS104にて抽出した隙間41に、放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を挿入するためのガイド管51を挿入する。この挿入の位置決めのために図6の放射線計測装置200が使用される。
【0038】
図7に、ガイド管51を容器1に挿入する様子を具体的に示す。ガイド管51の挿入は、放射線スペクトル計測器31が放射性廃棄物2と衝突し、その衝撃により破損してしまうことを防止する、あるいは、放射線スペクトル計測器31を放射性廃棄物2の内部へ挿抜する際に、放射性廃棄物2に引っかかってしまい挿入や抜き取りができなくなってしまうことを防止することを目的としている。
【0039】
ガイド管51には剛性の高いものを使用してもよいが、様々な形状をした放射性廃棄物2が容器1に収納されるであろうことを考慮すると、管の形状が可変なフレキシブル管であることが望ましい。フレキシブル管を用いることで、放射性廃棄物2の隙間41に奥深く挿入することも可能である。
【0040】
ステップS104にて抽出した隙間41が、放射線スペクトル計測器31や放射線スペクトル計測器位置検出器32に対して十分大きい場合には、ガイド管51を挿入せずに計測を実施することも十分考えられる。
【0041】
図2に戻る。次にステップS106では、ステップS105で挿入したガイド管51の管内に放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を挿入する。
【0042】
さらにステップS107では、ガイド管51に挿入した放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を、挿入深さ方向における最初の測定ポイントまで移動させる。
【0043】
ステップS108では、最初の測定ポイントまで到達したら、放射線スペクトル計測器31による放射線スペクトル計測、および放射線スペクトル計測器位置検出器32による放射線スペクトル計測器31の位置計測を実施する。
【0044】
ステップS109では、その位置における放射線スペクトル計測、および放射線スペクトル計測器31の位置計測が終了したら、次の測定ポイントまで放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を移動させる。
【0045】
あらかじめ設定した測定ポイントでの測定が終了するまで、ステップS108とステップS109を繰り返し実行する。
【0046】
図8に、ガイド管51に放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を挿入する様子を示す。放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32は、ガイド管昇降装置64に連動して作動する計測器挿入装置(図示せず)により送り出されたケーブル33により挿抜される。このケーブル33には放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32に対する電力供給や制御信号送信のためのケーブルおよびデータ収集のためのケーブルが内包されている。放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32からのデータは、データ収集装置24に取り込まれる。
【0047】
また、放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を、ガイド管51内を移動して、測定ポイントを変えて測定する様子を図9に示す。測定ポイントの設定、あるいは測定ポイント間の距離は、要求測定精度にあわせて設定することが望ましい。
【0048】
以上の測定において、測定ポイントが多数ある場合には、測定ポイントの位置情報とその位置における放射線スペクトル測定データから、詳細な濃度分布のマップを生成することが可能である。測定ポイントが少ない場合でも、粗い濃度分布のマップを生成することが可能であり、さらに測定データから、ベイズ推定や最尤推定等の逆問題解法を用いて、濃度分布を推定することも可能である。
【0049】
以上記載した本発明の実施例1に係る方法および装置により、廃棄体容器内に収納された放射性廃棄体の放射能濃度を、その容器内に放射能濃度分布がある場合であり、また放射能濃度のレベルが低い場合であっても精度よく計測できる。
【実施例2】
【0050】
本発明の実施例2について、図10図11を用いて説明する。図10図11は、容器1内に放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を挿入するための挿入領域51’をあらかじめ設置する方法の一例を示したものである。図10は、容器の上面図を、図11図10に示したA−A断面図を表している。
【0051】
図10図11において、放射性廃棄物2のサイズは、実施例1に例示したようなものばかりではなく、配管のように一方向に長いものや比較的小さいものまで様々である。放射性廃棄物2の形状やサイズがあらかじめわかっていて、それらが容器1を上から見たときの広がり方向の容器1の面積全体を占めるようなものでない場合には、先に挿入領域51’を容器に設置しておき、その後で放射性廃棄物2を収納する手順にしておけば、放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を確実に挿入でき、放射能濃度のレベルが低い場合であっても精度よく計測可能となる。
【0052】
また、挿入に際しては、容器1上部から3次元位置計測装置21により挿入位置を測定することで、確実な挿入が可能となる。図10図11に示す挿入領域51’は一例であり、収納する放射性廃棄物2のサイズや形状に合わせて、挿入領域51’を複数のガイド管51で構成するなど、挿入領域51’のパターンを複数用意しておくことで、合理的に計測が可能となる。
【0053】
以上の測定データから、実施例1と同様、測定データから放射能濃度分布のマップを作成、あるいは放射能濃度分布を、逆問題解法を用いて推定することは言うまでもない。
【0054】
以上記載した本発明の実施例2の方法により、放射性廃棄物2のサイズや形状やサイズが様々な場合でも放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を確実に挿入でき、容器1内に放射能濃度の分布がある場合であっても、また放射能濃度のレベルが低い場合でも放射能濃度を精度よく測定できる。
【実施例3】
【0055】
本発明の実施例3について、図12および図13を用いて説明する。図12は放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を容器1内に挿入して、大きな板状の放射性廃棄物2を測定する方法の一例を示したものである。
【0056】
大きな板状の放射性廃棄物2を測定する場合、放射性廃棄物2に隙間41がない場合がある。また、放射性廃棄物2がコンクリート解体物である場合も、そのコンクリート解体物やそれに伴い発生するコンクリートくず等が容器内に隙間なく収納されるため、板状の放射性廃棄物の場合と同様、放射性廃棄物2に隙間41がない場合がある。その場合でも、放射能濃度のレベルが低い場合には、なるべく放射性廃棄物2に放射線スペクトル計測器31を近接させて測定することが望まれる。大きな板状の放射性廃棄物2であっても、その表面に起伏がある場合や曲率を有する場合があり、放射性廃棄物2の容器1内における位置を正確に把握していないと、放射線スペクトル計測器31を挿入した際に放射性廃棄物2と衝突し、その衝撃で放射線スペクトル計測器31が破損する恐れがある。
【0057】
そのため、事前に3次元位置計測装置21により、放射性廃棄物2の上面位置を測定し、放射線スペクトル計測器31の挿入深さを決定しておく必要がある。ここで決定した挿入深さに従い、計測器挿入装置(図示せず)により容器1内に放射線スペクトル計測器31および放射線スペクトル計測器位置検出器32を挿入し、計測する。
【0058】
図13は、放射線スペクトル計測器31にコリメータ34を装着して計測する方法の一例を示した図である。放射性廃棄物2の内部に放射線スペクトル計測器31を挿入できない場合、放射性廃棄物2の表面から放射線スペクトルを計測することになる。このような場合、放射線スペクトル計測器31にコリメータ34を装着して計測することで、放射性廃棄物2の測定範囲を図に示す点線内部の領域に限定できる。このようにして多数の測定ポイントにおいて測定を実施することにより、詳細な放射能濃度分布のマップを生成することが可能になる。
【0059】
以上記載した本発明の第三の実施例の方法により、放射性廃棄物2が大きな板状のもので、放射線スペクトル計測器をその内部に挿入できない場合であっても、放射能濃度分布を詳細に計測でき、また放射能濃度のレベルが低い場合でも放射能濃度を精度よく測定できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の方法を用いることで、様々な放射能濃度レベルの放射性廃棄物に対して、容器内部に放射能濃度の分布がある場合であっても、容器内の放射能濃度を精度よく測定できる。
【符号の説明】
【0061】
1:容器
2:放射性廃棄物
3:蓋
11:支持脚
12、13:リニアアクチュエータ
14:制御装置
15:矢印
21:3次元位置計測装置
22:計測制御・データ収集装置
23:矢印
31:放射線スペクトル計測器
32:放射線スペクトル計測器位置検出器
33:ケーブル
34:コリメータ
41:隙間
51:ガイド管
51’:挿入領域
S101〜S109:処理ステップ
P1:解体場所
P2:測定場所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13