(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643133
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】固定体および固定装置
(51)【国際特許分類】
F16B 15/02 20060101AFI20200130BHJP
F16B 19/14 20060101ALN20200130BHJP
【FI】
F16B15/02 B
!F16B19/14
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-27049(P2016-27049)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-145862(P2017-145862A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】川端 誠規
【審査官】
熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−224024(JP,A)
【文献】
実公昭45−033364(JP,Y1)
【文献】
実開昭59−131657(JP,U)
【文献】
特開平08−100810(JP,A)
【文献】
特開平07−293532(JP,A)
【文献】
特開2013−198271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 17/00−19/14
F16B 15/00−15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釘打ち工具から射出されて、被固定体にあけられた貫通孔を通って固定対象に打ち込まれる釘により、前記被固定体を前記固定対象に固定する際に、前記釘の頭部と前記被固定体との間に介在する固定体であって、
前記釘が貫通し、かつ、その釘の頭部と前記被固定体とに挟まれる固定体本体を備え、
前記固定体本体には、前記被固定体に接する裏面側から突出して前記貫通孔に進入する複数の突起が、互いに間隔を空けて設けられ、また、
前記固定体本体の、前記裏面側とは反対の前面側から突出し、前記釘が貫通してその釘の頭部により圧潰される、筒状部を備え、その筒状部は、前記固定体本体の裏面に垂直な方向から見た平面視において、その筒状部の外周面で囲まれた範囲と前記突起とが重ならない位置に設けられる、固定体。
【請求項2】
前記突起は、複数が、円形形状を有する前記貫通孔の内周面に当接するよう、円周上に並んで配置される、請求項1に記載の固定体。
【請求項3】
前記突起は、先端ほど細くなる先細り形状に形成される、請求項1または2に記載の固定体。
【請求項4】
前記固定体本体の、前記裏面側とは反対の前面側に、前記釘打ち工具の射出部に対し位置決めされる、釘打ち工具側位置決め部が設けられる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固定体。
【請求項5】
前記固定体本体の、前記裏面側とは反対の前面側に、下方に向けた前記釘打ち工具の射出部に対し、前記固定体が落下しないように係合する、釘打ち工具側仮保持部が設けられる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固定体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の固定体と、前記被固定体とからなる、固定装置。
【請求項7】
前記固定体本体に設けられた前記突起は、前記被固定体の前記貫通孔の内周面に対し、下側に位置する前記固定体が上側に位置する前記被固定体から落下しないように、係合する、請求項6に記載の固定装置。
【請求項8】
前記固定体本体に設けられた前記突起は、前記被固定体の前記貫通孔の内周面に対し、前記釘が通る中心を軸心とする前記被固定体の回動に前記固定体が追従するように、係合する、請求項6または7に記載の固定装置。
【請求項9】
前記突起は、前記被固定体の前記貫通孔に進入した突起がその貫通孔から飛び出ることなく控える高さに形成されている、請求項6ないし8のいずれか1項に記載の固定装置。
【請求項10】
釘打ち工具から射出されて、被固定体にあけられた貫通孔を通って固定対象に打ち込まれる釘により、前記被固定体を前記固定対象に固定する際に、前記釘の頭部と前記被固定体との間に介在する固定体と、前記被固定体とからなる、固定装置であって、
前記固定体は、前記釘が貫通し、かつ、その釘の頭部と前記被固定体とに挟まれる固定体本体を備え、
前記固定体本体には、前記被固定体に接する裏面側から突出して前記貫通孔に進入する複数の突起が、互いに間隔を空けて設けられ、
前記突起は、先端ほど細くなる先細り形状に形成されるとともに、前記被固定体の前記貫通孔に進入した突起がその貫通孔から飛び出る高さに形成されている、固定装置。
【請求項11】
前記固定体本体に設けられた前記突起は、前記被固定体の前記貫通孔の内周面に対し、前記釘が通る中心を軸心とする前記固定体の回動に前記被固定体が追従するように、係合し、かつ、
前記固定体は、前記釘が通る中心を軸心とする前記釘打ち工具の射出部の回動に、前記突起が前記貫通孔の内周面に係合して前記被固定体に組み付けられた前記固定体が追従するように、前記射出部に仮取付けされる、第1の仮取付け手段を備える、請求項6ないし10のいずれか1項に記載の固定装置。
【請求項12】
前記固定体は、前記釘打ち工具の射出部に、前記釘が通る中心を軸心として回動可能に仮取付けされる、第2の仮取付け手段を備え、かつ、
前記固定体本体に設けられた前記突起は、前記被固定体の前記貫通孔の内周面に対し、前記射出部を動かないよう止めた状態で、前記被固定体を、前記釘が通る中心を軸心として回動したとき、前記射出部に前記第2の仮取付け手段によって仮取付けされた前記固定体が前記被固定体に追従して回動するように、係合する、請求項6ないし11のいずれか1項に記載の固定装置。
【請求項13】
前記固定体は、前記釘打ち工具の射出部に仮取付けされる、他の仮取付け手段を備え、かつ、
前記固定体本体に設けられた前記突起は、前記被固定体の前記貫通孔に対し、前記射出部を動かないよう止めた状態で、前記被固定体を、前記釘が通る中心を軸心として回動したとき、前記射出部に前記他の仮取付け手段によって仮取付けされた前記固定体が追従することなく、前記被固定体のみが回動するように、係合する、請求項6ないし11のいずれか1項に記載の固定装置。
【請求項14】
前記被固定体の前記貫通孔は、3分ボルトを挿入可能な3分ボルト用貫通孔であって、径が、前記釘の頭部よりも大である、請求項6ないし13のいずれか1項に記載の固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釘打ち工具から射出される釘により、被固定体を固定対象に固定するための、固定体、および、その固定体を備える固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被固定体を固定対象に固定するにあたって、釘と付勢素子を用いることがあった(例えば、特許文献1参照)。
図10に示すように、付勢素子15は、基礎材料11(固定対象)上に配置されるケーブル溝12(被固定体)の上に載置された。そして、釘14が、例えば火薬力作動型の打設装置(釘打ち工具)の射出部13から射出されて、付勢素子15を通り、ケーブル溝12および基礎材料11に打ち込まれた。この付勢素子15は、釘14の射出力に対する緩衝材、あるいは釘14を案内するためのものであり、中央には、釘14が通るスリーブ部分15aを有し、周囲は、プラスチック部分15bで囲まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−100810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の付勢素子15(固定体)にあっては、打ち込まれる釘14を中心に、付勢素子15が基礎材料11(固定対象)側に押圧され、付勢素子15は、釘14が通る中央部分が、基礎材料11側に突出するよう変形する虞があった。その結果、ケーブル溝12(被固定体)を押す押圧力が、釘14がある中央部分に集中し、その中央から離れた部分を十分に押圧することができなかった。このため、ケーブル溝12が釘14を軸として回る虞があり、そのケーブル溝12を基礎材料11にしっかりと固定することが困難であった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、被固定体を固定対象にしっかりと固定することができる、固定体および固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る固定体および固定装置は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る固定体は、釘打ち工具から射出されて、被固定体にあけられた貫通孔を通って固定対象に打ち込まれる釘により、前記被固定体を前記固定対象に固定する際に、前記釘の頭部と前記被固定体との間に介在するものである。この固定体は、前記釘が貫通し、かつ、その釘の頭部と前記被固定体とに挟まれる固定体本体を備える。そして、前記固定体本体には、前記被固定体に接する裏面側から突出して前記貫通孔に進入する複数の突起が、互いに間隔を空けて設けられる。
また、前記固定体本体の、前記裏面側とは反対の前面側から突出し、前記釘が貫通してその釘の頭部により圧潰される、筒状部を備え、その筒状部は、前記固定体本体の裏面に垂直な方向から見た平面視において、その筒状部の外周面で囲まれた範囲と前記突起とが重ならない位置に設けられる。
【0007】
この固定体によると、固定体は、釘の頭部と被固定体とに挟まれる固定体本体を備える。そして、固定体本体には、被固定体の貫通孔に進入する複数の突起が設けられている。こうして、貫通孔に進入する突起が設けられることで、被固定体への固定体の位置決めが可能となり、釘を釘打ち工具から射出し、その釘を、固定体本体と被固定体の貫通孔とを介して固定対象に打ち込むことで、被固定体は、固定対象に固定される。ここで、被固定体の貫通孔に進入した複数の突起は、互いに間隔を空けた位置にあり、貫通孔内には、空間が設けられる。そこで、釘の頭部からの圧力を受けた固定体本体は、前記空間内に押し出されることが可能となり、前記圧力は、貫通孔の外側に分散する。こうして、圧力が、釘が通る部分に集中することなく、釘から離れた側(貫通孔の外側)に分散することで、被固定体は、釘を軸として回り難くなる。
また、釘が通る筒状部が、突起と重ならない位置にあることから、釘の頭部からの圧力を筒状部を介して受けた固定体本体は、貫通孔内にある空間内に押し出され易い。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る固定体は、請求項1に記載の固定体において、前記突起は、複数が、円形形状を有する前記貫通孔の内周面に当接するよう、円周上に並んで配置される。こうして、円周上に並ぶ突起が、貫通孔の内周面に当接することで、この固定体を、被固定体に正確に位置決めすることができる。
【0009】
【0010】
また、請求項
3に記載の発明に係る固定体は、請求項
1または2に記載の固定体において、前記突起は、先端ほど細くなる先細り形状に形成される。これにより、突起が被固定体の貫通孔から固定対象側に飛び出たとしても、固定対象が木などの比較的柔らかな材料からなる場合には、突起は容易にその固定対象に食い込むことができ、また、固定対象がコンクリート等の硬い材料からなる場合には、突起は容易に潰れることができる。
【0011】
また、請求項
4に記載の発明に係る固定体は、請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の固定体において、前記固定体本体の、前記裏面側とは反対の前面側に、前記釘打ち工具の射出部に対し位置決めされる、釘打ち工具側位置決め部が設けられる。
【0012】
また、請求項
5に記載の発明に係る固定体は、請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の固定体において、前記固定体本体の、前記裏面側とは反対の前面側に、下方に向けた前記釘打ち工具の射出部に対し、前記固定体が落下しないように係合する、釘打ち工具側仮保持部が設けられる。
【0013】
また、請求項
6に記載の発明に係る固定装置は、請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の固定体と、前記被固定体とからなる。
【0014】
また、請求項
7に記載の発明に係る固定装置は、請求項
6に記載の固定装置において、前記固定体本体に設けられた前記突起は、前記被固定体の前記貫通孔の内周面に対し、下側に位置する前記固定体が上側に位置する前記被固定体から落下しないように、係合する。これにより、施工にあたって、固定体を被固定体に予め組み付けておくことができる。
【0015】
また、請求項
8に記載の発明に係る固定装置は、請求項
6または
7に記載の固定装置において、前記固定体本体に設けられた前記突起は、前記被固定体の前記貫通孔の内周面に対し、前記釘が通る中心を軸心とする前記被固定体の回動に前記固定体が追従するように、係合する。
【0016】
また、請求項
9に記載の発明に係る固定装置は、請求項
6ないし
8のいずれか1項に記載の固定装置において、前記突起は、前記被固定体の前記貫通孔に進入した突起がその貫通孔から飛び出ることなく控える高さに形成されている。
【0017】
また、請求項
10に記載の発明に係る固定装置は、
釘打ち工具から射出されて、被固定体にあけられた貫通孔を通って固定対象に打ち込まれる釘により、前記被固定体を前記固定対象に固定する際に、前記釘の頭部と前記被固定体との間に介在する固定体と、前記被固定体とからなる。ここで、前記固定体は、前記釘が貫通し、かつ、その釘の頭部と前記被固定体とに挟まれる固定体本体を備える。そして、前記固定体本体には、前記被固定体に接する裏面側から突出して前記貫通孔に進入する複数の突起が、互いに間隔を空けて設けられる。これらの突起は、先端ほど細くなる先細り形状に形成されるとともに、前記被固定体の前記貫通孔に進入した突起がその貫通孔から飛び出る高さに形成されている。
この固定装置によると、固定体は、釘の頭部と被固定体とに挟まれる固定体本体を備える。そして、固定体本体には、被固定体の貫通孔に進入する複数の突起が設けられている。こうして、貫通孔に進入する突起が設けられることで、被固定体への固定体の位置決めが可能となり、釘を釘打ち工具から射出し、その釘を、固定体本体と被固定体の貫通孔とを介して固定対象に打ち込むことで、被固定体は、固定対象に固定される。ここで、被固定体の貫通孔に進入した複数の突起は、互いに間隔を空けた位置にあり、貫通孔内には、空間が設けられる。そこで、釘の頭部からの圧力を受けた固定体本体は、前記空間内に押し出されることが可能となり、前記圧力は、貫通孔の外側に分散する。こうして、圧力が、釘が通る部分に集中することなく、釘から離れた側(貫通孔の外側)に分散することで、被固定体は、釘を軸として回り難くなる。また、突起が、先端ほど細くなる先細り形状に形成されるとともに、被固定体の貫通孔に進入した突起がその貫通孔から飛び出る高さに形成されていることから、固定対象が、木などの比較的柔らかな材料からなる場合には、釘の打ち込み前に、突起を固定対象に食い込ませることで、固定対象に対し、この固定体、ひいては被固定体を位置決めすることができる。そして、固定対象がコンクリート等の硬い材料からなる場合には、突起は容易に潰れることができる。
【0018】
また、請求項
11に記載の発明に係る固定装置は、請求項
6ないし
10のいずれか1項に記載の固定装置において、前記固定体本体に設けられた前記突起は、前記被固定体の前記貫通孔の内周面に対し、前記釘が通る中心を軸心とする前記固定体の回動に前記被固定体が追従するように、係合する。そして、前記固定体は、前記釘が通る中心を軸心とする前記釘打ち工具の射出部の回動に、前記突起が前記貫通孔の内周面に係合して前記被固定体に組み付けられた前記固定体が追従するように、前記射出部に仮取付けされる、第1の仮取付け手段を備える。これにより、被固定体に組み付けられた固定体を、釘打ち工具の射出部に仮取付けした状態で、釘打ち工具を回動すれば、その回動に固定体および被固定体が追従する。このため、釘打ち工具を回動することで、被固定体の向きを簡単に変えることができる。
【0019】
また、請求項
12に記載の発明に係る固定装置は、請求項
6ないし
11のいずれか1項に記載の固定装置において、前記固定体は、前記釘打ち工具の射出部に、前記釘が通る中心を軸心として回動可能に仮取付けされる、第2の仮取付け手段を備える。そして、前記固定体本体に設けられた前記突起は、前記被固定体の前記貫通孔の内周面に対し、前記射出部を動かないよう止めた状態で、前記被固定体を、前記釘が通る中心を軸心として回動したとき、前記射出部に前記第2の仮取付け手段によって仮取付けされた前記固定体が前記被固定体に追従して回動するように、係合する。これにより、被固定体に組み付けられた固定体を、釘打ち工具の射出部に仮取付けした状態で、釘打ち工具を動かすことなく、被固定体を、固定体を追従させながら回動することができ、被固定体の向きを簡単に変えることができる。
【0020】
また、請求項
13に記載の発明に係る固定装置は、請求項
6ないし
11のいずれか1項に記載の固定装置において、前記固定体は、前記釘打ち工具の射出部に仮取付けされる、他の仮取付け手段を備える。そして、前記固定体本体に設けられた前記突起は、前記被固定体の前記貫通孔に対し、前記射出部を動かないよう止めた状態で、前記被固定体を、前記釘が通る中心を軸心として回動したとき、前記射出部に前記他の仮取付け手段により仮取付けされた前記固定体が追従することなく、前記被固定体のみが回動するように、係合する。これにより、被固定体に組み付けられた固定体を、釘打ち工具の射出部に仮取付けした状態で、釘打ち工具を動かすことなく、被固定体を単独で回動することができ、被固定体の向きを簡単に変えることができる。
【0021】
また、請求項
14に記載の発明に係る固定装置は、請求項
6ないし
13のいずれか1項に記載の固定装置において、前記被固定体の前記貫通孔は、3分ボルトを挿入可能な3分ボルト用貫通孔であって、径が、前記釘の頭部よりも大である。
【発明の効果】
【0022】
この発明に係る固定体および固定装置によれば、固定体本体に、被固定体の貫通孔に進入する複数の突起を互いに離して設けることで、被固定体に対して固定体が位置決めされるとともに貫通孔内に空間が設けられて、釘の頭部からの圧力が貫通孔の外側に分散し、これによって、被固定体は、釘を軸として回り難く、固定対象にしっかりと固定される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の一実施の形態の、釘を、固定体および被固定体を介して固定対象に打ち込む前を示す断面図である。
【
図2】同じく、釘を、固定体および被固定体を介して固定対象に打ち込んだ後を示す断面図である。
【
図3】同じく、固定体を斜め上から見た斜視図である。
【
図4】同じく、固定体を斜め下から見た斜視図である。
【
図9】この発明の変形例を示す、
図4相当図である。
【
図10】従来の、釘と付勢素子を用いてケーブル溝を基礎材料に固定する際の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明に係る固定体および固定装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1〜
図8は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、固定対象を示す。2は、被固定体を示す。3aは、釘打ち工具の射出部を示し、釘打ち工具は、ガス、圧縮空気、電気、火薬等を用いた動力により作動する。4は、釘を示し、この釘4は、釘打ち工具(詳しくは、釘打ち工具の射出部3a)から射出されて、前記被固定体2にあけられた貫通孔2aを通って前記固定対象1に打ち込まれる。5は、固定体を示し、この固定体5は、前記釘4により、前記被固定体2を前記固定対象1に固定する際に、釘4の頭部4aと被固定体2との間に介在する。6は、固定装置を示し、この固定装置6は、前記固定体5と前記被固定体2とからなる。
【0026】
ここで、固定体5は、釘4が貫通し、かつ、その釘4の頭部4aと被固定体2とに挟まれる固定体本体5aを備える。そして、固定体本体5aには、被固定体2に接する裏面5b側から突出して被固定体2の貫通孔2aに進入する複数の突起5c、5cが、互いに間隔を空けて設けられる。
【0027】
また、固定体5は、固定体本体5aの、前記裏面5b側とは反対の前面5d側から突出し、釘4が貫通してその釘4の頭部4aにより圧潰される、筒状部5eを備える。つまり、この筒状部5e(詳しくは、この筒状部5eおよび後述する突片5h)は、釘4の頭部4aによって圧潰されて筒状部圧潰片5fとなる(
図2参照)。そして、筒状部5eは、固定体本体5aの裏面5bに垂直な方向から見た平面視において、その筒状部5eの外周面で囲まれた範囲と前記突起5cとが重ならない位置に設けられる。
【0028】
固定体本体5aは、その固定体本体5aの前面5d側に、釘打ち工具の射出部3aに対し位置決めされる、釘打ち工具側位置決め部501が設けられる。また、固定体本体5aは、その固定体本体5aの前面5d側に、下方に向けた釘打ち工具の射出部3aに対し、固定体5が落下しないように係合(詳しくは、摩擦係合)する、釘打ち工具側仮保持部502が設けられる。
【0029】
また、固定体5と被固定体2との関係においては、固定体本体5aに設けられた突起5cは、被固定体2の貫通孔2aの内周面に対し、下側に位置する固定体5が上側に位置する被固定体2から落下しないように、係合(詳しくは、摩擦係合)する。そして、前記突起5cは、前記貫通孔2aの内周面に対し、釘4が通る中心7を軸心とする被固定体2の回動に固定体5が追従するように、係合(詳しくは、摩擦係合)する。さらに、前記突起5cは、前記貫通孔2aの内周面に対し、釘4が通る中心7を軸心とする固定体5の回動に被固定体2が追従するように、係合(詳しくは、摩擦係合)する。
【0030】
また、釘打ち工具と固定体5と被固定体2との関係においては、固定体本体5aに設けられた突起5cは、被固定体2の貫通孔2aの内周面に対し、釘4が通る中心7を軸心とする固定体5の回動に被固定体2が追従するように、係合(詳しくは、摩擦係合)する。そして、固定体5は、釘4が通る中心7を軸心とする釘打ち工具の射出部3aの回動に、突起5cが貫通孔2aの内周面に係合して被固定体2に組み付けられた固定体5が追従するように、射出部3aに仮取付けされる、第1の仮取付け手段511を備える。
【0031】
さらに、釘打ち工具と固定体5と被固定体2との関係においては、固定体5は、釘打ち工具の射出部3aに、釘4が通る中心7を軸心として回動可能に仮取付けされる、第2の仮取付け手段512を備える。そして、固定体本体5aに設けられた突起5cは、被固定体2の貫通孔2aの内周面に対し、射出部3aを動かないよう止めた状態で、被固定体2を、釘4が通る中心7を軸心として回動したとき、射出部3aに前記第2の仮取付け手段512によって仮取付けされた固定体5が被固定体2に追従して回動するように、係合(詳しくは、摩擦係合)する。
【0032】
具体的には、固定対象1は、建物の天井、壁、あるいは基礎床等であったり、建物等の構造材であったりする。そして、被固定体2は、配線材とか配管材とかその他の物の、吊り具、支持具、あるいは収容体等であったりする。そこで、この被固定体2の貫通孔2aは、径が、釘4の頭部4aよりも大となっている。図示実施の形態においては、この貫通孔2aは、3分ボルトを挿入可能な3分ボルト用貫通孔となっている。
【0033】
釘4は、単独で釘打ち工具から射出されるのではなく、釘保持部8とともに射出される。すなわち、釘4は、並置された複数の釘4、4と各釘4を保持して繋がる複数の釘保持部8、8とを備える釘連結体(図示せず)における、端に位置する釘保持部8が分離して、釘打ち工具からその分離した釘保持部8とともに射出される。そして、この釘保持部8は、釘4が固定対象1に打ち込まれると、その釘4の頭部4aによって圧潰されて釘保持部圧潰片8aとなる(
図2参照)。
【0034】
固定体5は、例えば合成樹脂製であって、固定体本体5aは、例えば円盤状に形成される。この固定体本体5aに設けられる突起5cは、被固定体2の貫通孔2aに比して十分小さな小突起からなる。そして、この突起5cは、複数(図示実施の形態においては、六つ)が、円形形状を有する前記貫通孔2aの内周面に当接するよう、円周上に並んで(詳しくは、均等に並んで)配置される。また、突起5cは、被固定体2の貫通孔2aに進入した突起5cがその貫通孔2aから飛び出ることなく控える高さに形成されている(
図1参照)。そして、突起5cは、先端ほど細くなる先細り形状に形成されている。
【0035】
また、固定体本体5aから突出する筒状部5eは、釘打ち工具から射出される釘4をガイドし、また、射出の衝撃を緩和するものである。この筒状部5eは、固定体本体5aの中央から垂直に起立し、筒内が、釘4の軸部4bが通る釘挿通孔となっている。詳細には、筒状部5eには、その周面からひれ状に突出する複数の突片5h、5hが設けられており、その突片5hは、筒状部5eを一方(図示実施の形態においては時計回り方向)に回る側に湾曲形成されている。
【0036】
そして、固定体本体5aに設けられる、前述した釘打ち工具側位置決め部501、釘打ち工具側仮保持部502、第1の仮取付け手段511および第2の仮取付け手段512は、固定体本体5aの前面5d側から突出するリブ5iからなる。このリブ5iは、筒状部5eを取り囲み、かつ、その筒状部5eと同心となる円形形状に形成されている。そこで、このリブ5iが、釘打ち工具の射出部3aの内側に嵌まることで、固定体本体5aは、射出部3aに、位置決めされ、係合し、そして、仮取付けされる。また、固定体本体5aには、その前面5d側に、周縁から突出する周縁リブ5jが設けられる。
【0037】
次に、以上の構成からなる固定体5、およびその固定体5を備える固定装置6の作用効果について説明する。固定体5は、釘4の頭部4aと被固定体2とに挟まれる固定体本体5aを備え、固定体本体5aには、被固定体2の貫通孔2aに進入する複数の突起5c、5cが設けられている。こうして、貫通孔2aに進入する突起5c、5cが設けられることで、被固定体2への固定体5の位置決めが可能となり、釘4を、釘打ち工具(詳しくは、射出部3a)から射出し、固定体本体5a(図示実施の形態においては、筒状部5eおよび固定体本体5a)と被固定体2の貫通孔2aとを介して固定対象1に打ち込むことで、被固定体2は、固定対象1に固定される。ここで、被固定体2の貫通孔2aに進入した複数の突起5c、5cは、互いに間隔を空けた位置にあり、貫通孔2a内には、空間が設けられる。そこで、釘4の頭部4aからの圧力を受けた固定体本体5aは、前記空間内に押し出されることが可能となり、前記圧力は、貫通孔2aの外側に分散する。こうして、圧力が、釘4が通る部分に集中することなく、釘4から離れた側(貫通孔2aの外側)に分散することで、被固定体2は、釘4を軸として回り難くなる。
【0038】
すなわち、固定体本体5aに、被固定体2の貫通孔2aに進入する複数の突起5c、5cを互いに離して設けることで、被固定体2に対して固定体5が位置決めされるとともに貫通孔2a内に空間が設けられて、釘4の頭部4aからの圧力が貫通孔2aの外側に分散し、これによって、被固定体2は、釘4を軸として回り難く、固定対象1にしっかりと固定される。なお、前記位置決めは、突起5cが貫通孔2aの内周面に当接しない場合には、大まかな位置決めとなるが、図示実施の形態においては、円周上に並ぶ突起5cが、貫通孔2aの内周面に当接することで、この固定体5を、被固定体2に正確に位置決めすることができる。
【0039】
また、突起5cは、先端ほど細くなる先細り形状に形成される。これにより、突起5cが、打ち込まれる釘4の頭部4aに押されて、被固定体2の貫通孔2aから固定対象1側に飛び出たとしても、固定対象1が木などの比較的柔らかな材料からなる場合には、突起5cは容易にその固定対象1に食い込むことができ、また、固定対象1がコンクリート等の硬い材料からなる場合には、突起5cは容易に潰れることができる。
【0040】
また、固定体本体5aに設けられて釘4が通る筒状部5eが、平面視において突起5cと重ならない位置にあることから、釘4の頭部4aからの圧力を筒状部5eを介して受けた固定体本体5aは、貫通孔2a内にある空間内に押し出され易く、また、前記圧力が突起5cに集中することもない。このため、前記圧力を、的確に釘4から離れた側に分散させることができる。
【0041】
また、突起5cは、被固定体2の貫通孔2aの内周面に対し、下側に位置する固定体5が上側に位置する前記被固定体2から落下しないように、係合する。これにより、施工にあたって、固定体5を被固定体2に予め組み付けておくことができる。
【0042】
また、固定体本体5aには、下方に向けた釘打ち工具の射出部3aに対し、固定体5が落下しないように係合する、釘打ち工具側仮保持部502(図示実施の形態においては、リブ5i)が設けられており、予め、固定体5を釘打ち工具の射出部3aに仮保持させておくことができる。
【0043】
また、固定体本体5aに設けられた突起5cは、被固定体2の貫通孔2aの内周面に対し、釘4が通る中心7を軸心とする固定体5の回動に被固定体2が追従するように、係合する。そして、固定体5は、釘4が通る中心7を軸心とする釘打ち工具の射出部3aの回動に、突起5cが貫通孔2aの内周面に係合して被固定体2に組み付けられた固定体5が追従するように、射出部3aに仮取付けされる、第1の仮取付け手段511(図示実施の形態においては、リブ5i)を備える。これにより、被固定体2に組み付けられた固定体5を、釘打ち工具の射出部3aに仮取付けした状態で、射出部3a、つまり釘打ち工具を回動すれば、その回動に固定体5および被固定体2が追従する。このため、釘打ち工具を回動することで、被固定体2の向きを簡単に変えることができる。
【0044】
また、固定体5は、釘打ち工具の射出部3aに、釘4が通る中心7を軸心として回動可能に仮取付けされる、第2の仮取付け手段512(図示実施の形態においては、リブ5i)を備える。そして、固定体本体5aに設けられた突起5cは、被固定体2の貫通孔2aの内周面に対し、射出部3aを動かないよう止めた状態で、被固定体2を、釘4が通る中心7を軸心として回動したとき、射出部3aに前記第2の仮取付け手段によって仮取付けされた固定体5が被固定体2に追従して回動するように、係合する。これにより、被固定体2に組み付けられた固定体5を、釘打ち工具の射出部3aに仮取付けした状態で、釘打ち工具を動かすことなく、被固定体2を、固定体5を追従させながら回動することができ、被固定体2の向きを簡単に変えることができる。
【0045】
また、被固定体2の貫通孔2aは、3分ボルトを挿入可能な3分ボルト用貫通孔であり、状況によっては、釘4や固定体5を用いることなく、3分ボルトを用いて、被固定体2を固定対象1に固定することもできる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、固定体5における突起5cは、先端ほど細くなる先細り形状に形成されるとともに、被固定体2の貫通孔2aに進入した突起5cがその貫通孔2aから飛び出る高さに形成されてもよい。これにより、固定対象1が、木などの比較的柔らかな材料からなる場合には、釘4の打ち込み前に、突起5cを固定対象1に食い込ませることで、固定対象1に対し、この固定体5、ひいては被固定体2を位置決めすることができる。そして、固定対象1がコンクリート等の硬い材料からなる場合には、突起5cは、その硬い材料に当たって容易に潰れることができる。
【0047】
また、釘打ち工具と固定体5と被固定体2との関係において、固定体5は、第2の仮取付け手段512に替えて、釘打ち工具の射出部3aに仮取付けされる、他の仮取付け手段(例えば、射出部3aの内側に嵌まるリブ5i)を備えて、固定体本体5aに設けられた突起5cは、被固定体2の貫通孔2aの内周面に対し、射出部3aを動かないよう止めた状態で、被固定体2を、釘4が通る中心7を軸心として回動したとき、射出部3aに前記他の仮取付け手段により仮取付けされた固定体5が追従することなく、被固定体2のみが回動するように、係合(詳しくは、摩擦係合)してもよい。これにより、被固定体2に組み付けられた固定体5を、釘打ち工具の射出部3aに仮取付けした状態で、釘打ち工具を動かすことなく、被固定体2を単独で回動することができ、被固定体2の向きを簡単に変えることができる。
【0048】
また、固定体5の突起5cは、六つ設けられなくとも、
図9に示すように、三つであってもよく、また、それ以外の数であってもよい。そして、これら突起5cは、貫通孔2aの内周面に当接するよう配置されるが、貫通孔2aの内周面に当接しなくともよい。また、この突起5cは、先端ほど細くなる先細り形状に形成されるが、必ずしも、この形状に限るものではない。
【0049】
また、固定体本体5aには、筒状部5eが設けられるが、この筒状部5eは、なくともよい。
【0050】
また、固定体本体5aには、リブ5iが設けられ、そのリブ5iが、釘打ち工具側位置決め部501、釘打ち工具側仮保持部502、第1の仮取付け手段511および第2の仮取付け手段512(あるいは、前記他の仮取付け手段)となるが、このリブ5iに替えて、筒状部5eに設けられる突片5hを、釘打ち工具側位置決め部501、釘打ち工具側仮保持部502、第1の仮取付け手段511および第2の仮取付け手段512(あるいは、前記他の仮取付け手段)としてもよい。
【0051】
また、釘4は、釘保持部8を伴って射出されるが、釘4が単独で射出されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 固定対象
2 被固定体
2a 貫通孔
3a 釘打ち工具の射出部
4 釘
4a 頭部
4b 軸部
5 固定体
5a 固定体本体
5b 裏面
5c 突起
5d 前面
5e 筒状部
501 釘打ち工具側位置決め部
502 釘打ち工具側仮保持部
511 第1の仮取付け手段
512 第2の仮取付け手段
6 固定装置
7 釘が通る中心