(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水中において、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、定置された電源ベース側の送電側回路の送電コイルから、移動する水中ロボット側の受電側回路の受電コイルに、非接触で電力を供給する非接触給電装置であって、
該送電コイルは、径大なループ環状に巻回されており、該受電コイルは、該送電コイルより径小なループ環状に巻回されており、該受電コイルは、給電に際し該送電コイルと内外の関係で対応位置し、もって該送電コイルの磁界位置内で停止し、
該水中ロボットは、耐圧構造で自律移動型の海中無人探査機よりなり、該受電コイルは、該水中ロボットの機体胴部の耐圧殻内側に巻回されており、
該電源ベース側の該送電コイルの収納部は、該水中ロボットが通過可能,停止可能な筒状穴を備えており、該筒状穴は、両端が開放された直線横穴よりなると共に、径が該水中ロボットの機体胴部の径より径大であり、該送電コイルは、該筒状穴を形成する該収納部内側に巻回されており、
給電に際しては、該水中ロボットの機体胴部が該電源ベースの筒状穴内にて停止されるが、該受電コイルが、定置された該送電コイルの巻回エリア内つまり磁界位置内にさえあれば、浮遊,移動する該水中ロボットを、どこでも自在に停止,位置決め,維持して、給電可能であること、を特徴とする水中ロボット用の非接触給電装置。
請求項1において、該電源ベースの筒状穴は、端部が、径小な均一径よりなる中央部に向け、徐々に径小となった略ベルマウス形状を備えており、もって該端部にて、該水中ロボットの機体胴部を、該筒状穴の中央部へとガイド可能であり、
該筒状穴の中央部の径が、該水中ロボットの機体胴部の径より僅かに若干大き目に設定されており、該送電コイルは、該筒状穴の該中央部を形成する該収納部内側に巻回されており、もって該送電コイルと受電コイル間の電力伝送距離が短縮化されること、を特徴とする水中ロボット用の非接触給電装置。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
例えば海底で、長時間何らかの潜水作業を行う場合、水中ロボットが使用されている。この水中ロボットとしては、
図4中に示した耐圧構造で自律移動型の海中無人探査機AUV1が、代表的である。
そして、AUV1に対する電力供給には、非接触給電装置(WPT)(Wireless Power Transfer)が用いられている。
すなわち、海底電源ベース2側のバッテリーに充電,貯蔵された電力が、水中(海中)3で、AUV1に供給されるが、このような海底電源ベース2とAUV1間の電力授受には、非接触給電装置(WPT)が必要不可欠であり、必須的に用いられている。
非接触給電装置としては、例えば電気自動車等にワイヤレス給電する陸上用のものが、現在広く知られ、開発,実用化が進行している。
【0003】
上述した陸上用の非接触給電装置としては、例えば、次の特許文献1,2に示されたものが挙げられる。水中用の非接触給電装置としては、例えば、次の特許文献3に示されたものが挙げられる。
【特許文献1】特開2012−016106号公報
【特許文献2】特開2012−143106号公報
【特許文献3】特開2015−231307号公報
【0004】
《従来技術》
図5は、AUV1用の従来の非接触給電装置4の説明に供する。まず
図5の(2)図に示したように、この非接触給電装置4は、陸上用の一般的な非接触給電装置と同様、電磁誘導の相互誘導作用に基づき例えば磁界共振結合方式(磁界共鳴方式)により、送電側回路5の送電コイル6から、非接触で対向位置せしめられた受電側回路7の受電コイル8に、水中(海中)3において電力を供給する。
すなわち給電に際しては、海底電源ベース2側の送電側回路5において、送電コイル6が、高周波電源9からの高周波交流を励磁電流として通電される(コイル軽量化等のため高周波が使用される)。もって送電コイル6と、AUV1側の受電側回路7の受電コイル8間に、磁束の磁路が形成されて電磁結合され、受電側回路7のバッテリー10が給電,充電される。
そして、従来の非接触給電装置4において、送電コイル6と受電コイル8は、上下等で対をなす同径の対称構造をなしていた(前述した特許文献3についても同様)。又、送電側回路5および受電側回路7には、それぞれ、並列共振用のコンデンサ11が設けられて、共振回路を形成しており、電力供給量の増大が図られている。
図中12は、受電側回路7に設けられ、交流を直流に変換するコンバータ(整流部)や平滑部である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなAUV1用等の従来の非接触給電装置4については、次の問題が課題として指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、重量,コスト,信頼性等に、問題が指摘されていた。すなわち、従来の非接触給電装置4については、特にAUV1側について、次のa,b,c,dの問題が指摘されていた。
a.高水圧下での使用に鑑み、
図5の(2)図に示したように、受電側回路7の受電コイル8は、均圧容器13内に収められていた。これに対し、受電側回路7のその他の電子部品は、耐圧容器14内に収められていた。
均圧容器13は、受電カプラーとも称され、外部水圧変化に伴い内外可堯変形可能な樹脂ケースよりなると共に、内部に絶縁油15が封入されていた。もって水圧変化に伴い、絶縁油15にその圧が伝達され、もって内外の圧力が均圧化される構造よりなる。このような均圧容器13内に、受電コイル8が収められていた。
しかしながら、専用の均圧容器13を使用する分だけ、重量やコストが嵩むという問題が指摘されており、装置信頼性への悪影響も指摘されていた。
なお、受電側回路7のその他の電子部品、例えば共振用並列コンデンサ11,コンバータ12,バッテリー10等は、通常の陸上で使われている電気部品製の場合、加圧厳禁であり、金属製耐圧剛構造の耐圧容器14、つまりAUV1機体内に収められていた。
【0006】
b.そこで受電側回路7において、受電コイル8からの電力引き込み用のリード線は、ホースに収納されると共に、
図5の(2)図に示したように、耐圧貫通コネクタ16を介し耐圧容器14内へと導入されていた。
そして、この耐圧容器14のケース壁貫通用の耐圧貫通コネクタ16としては、いわゆる高周波電力型コネクタが使用されていた。前述したように、この非接触給電装置4では高周波交流が使用されており、高周波交流に誘導加熱されない特殊防止構造の高周波電力型コネクタを、使用しなければならなかった。
もってその分、重量やコストが嵩むという問題が指摘されており、装置信頼性への悪影響も指摘されていた。
【0007】
c.そこで、このような高周波電力型の耐圧貫通コネクタ16ではなく、通常型の耐圧貫通コネクタ17を使用することも試みられた。
すなわち
図5の(3)図に示したように、均圧容器13中に、受電側回路7の共振用並列コンデンサ11およびコンバータ12を収納する。もって直流に変換した電力を、リード線にて通常型の耐圧貫通コネクタ17を経由して、耐圧容器14内のバッテリー10等へと導入することも、試みられた。
しかしこの場合、共振用並列コンデンサ11やコンバータ12は、高水圧に耐える仕様のものに耐圧部品化しなければならなかった。もってその分、重量が重くなり、特にコストが非常に嵩むという問題が指摘されており、装置信頼性への悪影響も指摘されていた。
【0008】
《第2の問題点》
第2に、従来の非接触給電装置4については、送電コイル6に受電コイル8を対向位置させることの困難性が、指摘されていた。
すなわち、
図5の(1)図,(2)図に示したように、定置された海底電源ベース2側の送電コイル6に対し、浮遊し移動するAUV1側の受電コイル8を、給電に際し非接触で対向位置させ維持し続けることは、多大な困難を伴っていた。
特に、対をなす対称構造の送電コイル6と受電コイル8を対向位置させて、電磁誘導の相互誘導作用に基づき電力を伝送供給可能なギャップ距離は、コイルサイズの数10%以下とされている。
そこで給電に際し、このような僅かな至近距離,ギャップ距離内に、海中3で浮遊するAUV1の水平尾翼1’等側に配された受電コイル8を、定位置に停止,位置決め,維持し続けることは、多大な困難を伴っていた。もってこの面から、非接触給電が容易でないという指摘があった。
そこで、このような停止,位置決め,維持専用の付帯装置の開発も検討テーマとなっていた。しかしながら、これでは更なる重量増やコストアップを招くことになる。
なお図中18は、送電コイル6が収納された均圧容器であり、送電カプラーとも称される。
【0009】
《本発明について》
本発明に係る水中ロボット用の非接触給電装置は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、重量,コスト,信頼性等に優れると共に、第2に、送電コイルの磁界内なら、どこでも受電コイルに給電可能であり、非接触給電が容易化される、水中ロボット用の非接触給電装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。
請求項1の水中ロボット用の非接触給電装置は、水中において、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、定置された電源ベース側の送電側回路の送電コイルから、移動する水中ロボット側の受電側回路の受電コイルに、非接触で電力を供給する。
該送電コイルは、径大なループ環状に巻回されている。該受電コイルは、該送電コイルより径小なループ環状に巻回されており、該受電コイルは、給電に際し該送電コイルと内外の関係で対応位置し、もって該送電コイルの磁界位置内で停止する。
該水中ロボットは、耐圧構造で自律移動型の海中無人探査機よりなり、該受電コイルは、該水中ロボットの機体胴部の耐圧殻内側に巻回されている。
【0011】
該電源ベース側の該送電コイルの収納部は、該水中ロボットが通過可能,停止可能な筒状穴を備えている。該筒状穴は、両端が開放された直線横穴よりなると共に、径が該水中ロボットの機体胴部の径より径大であり、該送電コイルは、該筒状穴を形成する該収納部内側に巻回されている。
給電に際しては、該水中ロボットの機体胴部が該電源ベースの筒状穴内にて停止されるが、該受電コイルが、定置された該送電コイルの巻回エリア内つまり磁界位置内にさえあれば、浮遊,移動する該水中ロボットを、どこでも自在に停止,位置決め,維持して、給電可能であること、を特徴とする。
【0012】
請求項2については、次のとおり。
請求項2の水中ロボット用の非接触給電装置は、請求項1において、該電源ベースの筒状穴は、端部が、径小な均一径よりなる中央部に向け、徐々に径小となった略ベルマウス形状を備えており、もって該端部にて、該水中ロボットの機体胴部を、該筒状穴の中央部へとガイド可能である。
該筒状穴の中央部の径が、該水中ロボットの機体胴部の径より僅かに若干大き目に設定されている。該送電コイルは、該筒状穴の該中央部を形成する該収納部内側に巻回されており、もって該送電コイルと受電コイル間の電力伝送距離が短縮化されること、を特徴とする。
【0013】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)給電に際しては、水中ロボットの機体胴部が、電源ベース側の筒状穴内にて停止される。そして、水中ロボット側の径小な受電コイルが、電源ベース側の径大な送電コイルに対し、内外の関係で対応位置せしめられる。
(2)その際、受電コイルが送電コイルの巻回エリア内部、つまり磁界位置内に対応位置すればよい。
(3)このようにして、電源ベース側の送電側回路の送電コイルから、水中ロボット側の受電側回路の受電コイルに、電力が供給される。
(4)さて、この非接触給電装置は、このように異径コイル採用を基本とすると共に、受電コイルが、水中ロボットの機体胴部に巻回されている。又、筒状穴が、電源ベースの収納部に形成され、送電コイルが、筒状穴を形成する収納部に巻回されている。このように、簡単容易な構成よりなる。
(5)更に、この非接触給電装置にあっては、水中ロボットの機体胴部が、電源ベース側の筒状穴内にあれば、そして受電コイルが、送電コイルの巻回エリア内部つまり磁界位置内にさえあれば、水中ロボットは、どの位置でも自在に浮遊,停止,位置決め,維持して、容易に給電可能である。
(6)なお、電源ベース側の筒状穴について、ベルマウス形状を備えるようにすると、水中ロボットのガイドとなり、上述した浮遊,停止,位置決め,維持が、より確実,容易化する。送電コイルと受電コイル間の電力伝送距離短縮も可能となる。
(7)そこで、本発明の水中ロボット用の非接触給電装置は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0014】
《第1の効果》
第1に、重量,コスト,信頼性等に優れている。
本発明の水中ロボット用の非接触給電装置では、受電コイルが、水中ロボット側の機体胴部耐圧殻内側に巻回されると共に、電源ベース側に筒状部が形成され、送電コイルが、筒状穴を形成する収納部に巻回されている。もって給電に際し、径小の受電コイルが径大な送電コイルと、内外の関係で対応位置する。
このように、本発明の非接触給電装置は、異径コイル採用を基本とした簡単容易な構成よりなる。もって、軽量化が実現されると共にコストが軽減され、装置としての信頼性も向上する。
前述したこの種従来例のように、同径コイル使用を基本とし、均圧容器を用いて受電コイルを収納する構成や、電力引き込み用のリード線のために、高周波電力型特殊構造の耐圧貫通コネクタを使用する構成や、高水圧に耐える仕様の共振用並列コンデンサ,コンバータを用いる構成等を、採用しなくてもよい。もってその分、重量,コスト,信頼性等に優れている。
【0015】
《第2の効果》
第2に、送電コイルの磁界内なら、どこでも受電コイルに給電可能となり、非接触給電が容易化されるようになる。
本発明の水中ロボット用の非接触給電装置では、給電に際し、水中ロボットの機体胴部を、電源ベースの筒状穴内で停止させ、受電コイルを、送電コイルと対応位置させる。
そして水中ロボットは、受電コイルが、送電コイルの巻回エリア内部,磁界位置内に位置さえすれば、どこでも自在に浮遊,停止,位置決め,維持して、給電可能となる。もって給電が容易化される。
前述したこの種従来例のように、給電に際し、送電コイルに受電コイルを対向位置にて維持し続ける困難は、解消される。特に、僅かな電力伝送距離内に、浮遊する水中ロボット側の受電コイルを、停止,位置決め,維持し続ける困難は、本発明の場合は確実に解消される。
又、電源ベース側の筒状穴について、ベルマウス形状を備えるようにすると、給電に際し水中ロボットが適切にガイドされ、上述した浮遊,停止,位置決め,維持等が、一段と確実かつ容易となる。なお、送電コイルと受電コイル間の電力伝送距離を短縮して、給電効率を向上せしめることも可能となる。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
《水中ロボット等について》
本発明は、水中ロボット用の非接触給電装置に関する。そこでまず、水中ロボット等について、
図4等を参照して説明する。
強大な水圧のかかる深海、例えば水深1,000m更には水深3,000m程度の海中3で、調査,計測等の作業を行う水中ロボットとしては、AUV1やROV19が代表的である。
AUV(Autonomous Underwater Vehicle)1は、海中3を通信制御により無軌道で移動,航行できる、自律移動型の海中無人探査機よりなる。
ROV(Remotely Operated Vehicle)19は、母船20とケーブル21でつながれており、ケーブル21を介し電力を受け通信制御されて、無軌道で移動する遠隔操作型の海中無人探査機よりなる。
海底電源ベース2は、AUV1へ電力を供給すべく海底に設けられた電源基地であり、母船20から例えばROV19を使って、そのバッテリー22(
図3を参照)に電力が充電,貯蔵される。
もって、海底電源ベース2側のバッテリー22に貯蔵された電力が、AUV1に供給される。このような海中3,海底23における、海底電源ベース2とAUV1間の電力授受に、非接触給電装置が使用される。
【0018】
《非接触給電装置24について》
まず、本発明の前提として、水中ロボットの代表例であるAUV1用の非接触給電装置24(WPT)について、
図1,
図3、
図4等を参照して、一般的に説明しておく。
この非接触給電装置24は、水中3において、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、海底電源ベース2側の送電側回路25の送電コイル26から、水中ロボット側つまりAUV1側の受電側回路27の受電コイル28に、非接触で電力を供給する。
【0019】
このような非接触給電装置24について、更に詳述する。まず、1次側の送電側回路25の送電コイル26は、海底電源ベース2の収納部29内に配設される。収納部29は、送電カプラーとも称され、海底電源ベース2に直接一体設されることもあるが、
図4の例では、海底電源ベース2から離れた別体として設けられている。
送電コイル26以外の送電側回路25は、海底電源ベース2に配設される。海底電源ベース2は、金属製耐圧剛構造の耐圧容器よりなる。収納部29は、少なくとも送電コイル26が巻回されるトップカバー部が樹脂製の均圧容器よりなる(耐圧容器や均圧容器については、背景技術欄で前述した所を参照)。なお均圧容器に代え、樹脂が内部充填された容器を耐圧容器的に用いるようにしてもよい。
これに対し、2次側の受電側回路27は、AUV1側に配設される。
【0020】
送電側回路25の送電コイル26は、
図3に示したように、高周波電源30に接続されている。高周波電源30は、バッテリー22や高周波インバータ31等を備え、例えば数kHz〜数10kHz〜数100kHz程度の高周波交流を、送電コイル26に向けて通電する。
受電側回路27の受電コイル28は、バッテリー32に接続されている。すなわち受電コイル28からの出力は、コンバータ33にて交流が直流に変換され、その出力が平滑コンデンサにて安定電圧化された後、バッテリー32に供給される。そして充電されたバッテリー32にて、必要に応じインバータを介し、負荷34が駆動される。
送電側回路25には、並列共振用の並列コンデンサ35が設けられ、受電側回路27にも、並列共振用の並列コンデンサ36が設けられている。送電コイル26と並列コンデンサ35、受電コイル28と並列コンデンサ36は、それぞれ共振回路を形成しており、共振により電力供給量の増大が図られている。
なお、更に直列共振用の直列コンデンサを用いることも考えられるが、共振回路としては、並列共振用の並列コンデンサ35,36のみの使用、又は、直列共振用の直列コンデンサのみの使用も可能である。
そして、両並列共振回路の共振周波数が等しく設定されると共に、送電側回路25の高周波電源30の電源周波数も、共振周波数と等しく揃えられている。
【0021】
電磁誘導の相互誘導作用については、次のとおり。給電に際しては、送電コイル26と受電コイル28とが、非接触ギャップを存しつつ対応位置せしめられる。そして送電コイル26での磁束形成により、受電コイル28に誘導起電力を生成させ、もって送電コイル26から受電コイル28に電力を供給することは、公知公用である。
すなわち送電コイル26に、高周波電源30からの給電交流,励磁電流を印加,通電することにより、自己誘導起電力が発生して磁界が送電コイル26の周囲に生じ、磁束φがコイル面に対して直角方向に形成される。そして形成された磁束φが、受電コイル28を貫き鎖交することにより、誘導起電力が生成され磁界が誘起される。
このように誘起された磁界を利用して、数kW以上〜数10kW〜数100kW程度の電力供給が可能となっている。送電コイル26側の磁束φの磁気回路と、受電コイル28側の磁束φの磁気回路は、相互間にも磁束φの磁気回路つまり磁路φが形成されて、電磁結合される。
この非接触給電装置24では、このような電磁誘導の相互誘導作用に基づいた磁界共振結合方式による、非接触給電が行われている。すなわち、前述したように共振周波数,電源周波数を揃えることにより、送電コイル26と受電コイル28間について、磁界共振現象が生じる。もって、更なる非接触ギャップ拡大が可能となっている。
非接触給電装置24について、一般的説明は以上のとおり。
【0022】
《本発明の概要》
以下、本発明の水中ロボット用の非接触給電装置24について、
図1〜
図4を参照して説明する。まず、本発明の概要については、次のとおり。
本発明に係る非接触給電装置24は、上述したように水中3において、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、海底電源ベース2側の送電側回路25の送電コイル26から、水中ロボット側つまりAUV1側の受電側回路27の受電コイル28に、非接触で電力を供給する。
送電コイル26は、径大なループ状に巻回されており、受電コイル28は、送電コイル26より径小なループ状に巻回されている。そして受電コイル28は、給電に際し、送電コイル26と内外の関係で対応位置し、送電コイル26の磁界位置内で停止する。
そして、海底電源ベース2側の送電コイル26の収納部29は、水中ロボットつまりAUV1が通過可能,停止可能な筒状穴37を備えている。
この筒状穴37は、両端が開放されると共に、水中ロボットつまりAUV1の機体より径大であり、送電コイル26は、筒状穴37を形成する収納部29内側に巻回されている。
給電に際しては、水中ロボットであるAUV1の機体胴部38が、電源ベース2の筒状穴3内にて停止されるが、受電コイル28が、定置された送電コイル26の巻回エリア内つまり磁界位置内にさえあれば、浮遊,移動するAUV1を、どこでも自在に停止,位置決め,維持して、給電可能であること、を特徴とする。
本発明の概要については、以上のとおり。以下、このような本発明の非接触給電装置24について、更に詳述する。
【0023】
《送電コイル26,筒状穴37等について》
まず、この非接触給電装置24の送電コイル26や筒状穴37等について、
図1を参照して説明する。
海底電源ベース2の送電コイル26の収納部29は、水中ロボットのAUV1が通過,停止可能な筒状穴37を備えている。
すなわち海底電源ベース2側には、送電コイル26用のカプラーつまり収納部29が設けられている。そして収納部29には、水中ロボットつまりAUV1が、通過可能,停止可能な筒状穴37が形成されている。
筒状穴37は、両端が開放されると共に、水中ロボットつまりAUV1より径大であり、送電コイル26は、筒状穴37を形成する収納部29内側に巻回されている。
すなわち筒状穴37は、AUV1の機体胴部38その他の機体より径大であると共に、その両端が開放された貫通穴よりなる。筒状穴37の径Wは、AUV1の機体胴部38の径Dの1.5倍〜6倍程度、例えば3倍〜5倍程度よりなり、左右両端が開放された直線横穴よりなる。
【0024】
そして、このような筒状穴37空間を形成する収納部29内側に、送電コイル26が巻回されている。
すなわち収納部29について、筒状穴37形成箇所つまりトップカバー部壁の内側に、送電コイル26が巻回されている。トップカバー部壁は、磁界の磁路となることに鑑み、樹脂やFRP等、磁化されず磁界の影響を受けない非磁性,非導電性,高電気抵抗の材料にて構成される。
送電コイル26は、スパイラル円環状,方形環状,その他の環状,ループ状をなして巻回される。もって送電コイル26の巻径は、巻回される筒状穴37の径Wにほぼ見合っており、AUV1の機体胴部38の径Dの1.5倍〜6倍程度、代表的には3倍〜5倍程度よりなる。
従って送電コイル26は、後述するようにAUV1の機体胴部38に巻回される受電コイル28より、例えば3倍〜5倍程度径大な設定よりなる。
送電コイル26,筒状穴37等については以上のとおり。
【0025】
《受電コイル28やAUV1について》
次に、この非接触給電装置24の受電コイル28やAUV1について、
図1を参照して説明する。
この水中ロボットつまりAUV1は、耐圧構造で自律移動型の海中無人探査機よりなり、受電コイル28は、その機体胴部38の耐圧殻内側に巻回されている。耐圧殻は、受電コイル28が巻回される部分が、樹脂等の非磁性で電気抵抗の高い材料よりなる。
【0026】
これらについて、更に詳述する。AUV1は、機体が全体的に耐圧殻にて形成された剛構造よりなる。そしてAUV1は、海底電源ベース2側の収納部29の筒状穴37を、通過,停止可能となっている。
筒状穴37は上述したように、AUV1の機体胴部38の径Dに対し、例えば3倍〜5倍程度の径Wよりなり、もってAUV1は、筒状穴37内を、自在に通過,停止,位置決め,浮遊等、可能となっている。
なお図中39は、AUV1の1対のスクリューであり、40は、それぞれのモータ収納部である。
【0027】
受電コイル28は、このようなAUV1の機体胴部38の耐圧殻壁内側に、巻回されている。そして、前述した送電コイル26と同様、スパイラル円環状,方形環状,その他の環状,ループ状をなして巻回されている。
もって受電コイル28の巻径は、巻回されるAUV1の機体胴部38の径Dに見合っており、海底電源ベース2の収納部29側の筒状穴37の径Wの例えば1/3〜1/5程度となっている。従って受電コイル28は、筒状穴37に巻回される送電コイル26に比し、例えば1/3〜1/5程度と、はるかに径小な設定よりなる。
【0028】
ところで、このような受電コイル28が巻回されるので、AUV1は、少なくとも機体胴部38の耐圧殻壁の巻回部分が、磁界誘起,磁束形成に支障がない樹脂やFRP製よりなる。非磁性,非導電性,高電気抵抗の材料よりなる。
さて給電に際しては、AUV1を、海底電源ベース2収納部29の筒状穴37内で停止させることにより、受電コイル28を、送電コイル26と内外の関係で対応位置させる。
すなわち、受電コイル28が送電コイル26の巻回エリア内部に位置すべく、AUV1を停止させることにより、つまり、受電コイル28が送電コイル26の磁界位置内に位置すべく、AUV1を停止させることにより、給電が実施される。
このように給電が実施された、AUV1の機体胴部38が電源ベース2の筒状穴3内にて停止されるが、受電コイル28が、送電コイル26の巻回エリア内である磁界位置内にさえあれば、浮遊,移動するAUV1を、どこでも自在に停止,位置決め,維持して、給電可能である。
なお図示例では、受電コイル28の巻回軸と、送電コイル26の巻回軸とが、一致しているが、これによらず、両巻回軸方向が平行であってもよく、更には、平行でなくても可能である。
受電コイル28やAUV1については、以上のとおり。
【0029】
《
図2の例》
次に、
図2の例について説明する。
図2の例の非接触給電装置24では、海底電源ベース2の筒状穴37は、端部41が、中央部42に向け徐々に径小となった略ベルマウス形状を備えており、水中ロボットつまりAUV1をガイド可能となっている。
そして送電コイル26は、筒状穴37の径小な中央部42を形成する、収納部29内側に巻回されている。
【0030】
これらについて、更に詳述する。この
図2の例の筒状穴37は、径小な均一径よりなる中央部42と、外方に向け徐々に径大に広がった端部41とからなる。この端部41の形状は、ベルマウス形状やラッパ口とも称される。
そして図示例の筒状穴37は、中央部42と、ベルマウス形状の両方の端部41と、から構成されている。もってAUV1が、筒状穴37を左右両側から通過することが可能となっている。
これに対し、図示例によらず筒状穴37が、中央部41と、ベルマウス形状の一方の端部41とからなり、他方端側は例えば閉鎖する構成も可能である。このような構成では、AUV1は、筒状穴37内にて停止可能ではあるが、通過は不能となる。
【0031】
いずれにしても送電コイル26は、筒状穴37の中央部42を形成する収納部29について、その内側に巻回されている。図示例では、筒状穴37の中央部42の径W’が、AUV1の機体胴部38の径Dより、僅かに若干大き目に設定される。
このような構成の図示例の非接触給電装置24については、次の利点がある。まず給電に際し、AUV1を適切にガイド可能となる。
すなわち、筒状穴37のベルマウス形状の端部41にて、AUV1をガイドすることにより、AUV1の機体胴部38を、筒状穴37の中央部42へと導くことができる。もって、AUV1側の受電コイル28を、海底電源ベース2側の収納部29の送電コイル26に対し、内外の関係で停止,位置決め,維持せしめることが、確実かつ容易に可能となるという利点がある。
更に、送電コイル26と受電コイル28について、相互間の距離を大幅に短縮した給電が、実現可能となる。電力伝送距離を大幅に短縮した給電が、可能となるという利点がある。
なお、この
図2の例の非接触給電装置24について、その他の構成,機能等は、
図1の例について前述した所に準じるので、その説明は省略する。
図2の例については、以上のとおり。
【0032】
《作用等》
本発明の水中ロボット用の非接触給電装置24は、以上説明したように構成されている。そこで以下のようになる。
(1)給電に際しては、水中ロボットのAUV1について、機体胴部38が海底電源ベース2側の筒状穴37内にて停止される。そして、AUV1側の径小な受電コイル28が、海底電源ベース2側の径大な送電コイル26に対し、内外の関係で対応位置せしめられる(
図1,
図4を参照)。
【0033】
(2)そしてその際、受電コイル28が、送電コイル26の巻回エリア内部,磁界位置内にあれば、どの位置でも給電可能である。
従ってAUV1は、受電コイル28がそのような位置に位置すべく、海底電源ベース2側の筒状穴37内へと移動して、停止する(
図1,
図4を参照)。
【0034】
(3)非接触給電装置24では、このようにして、送電側回路25の送電コイル26から、受電側回路27の受電コイル28に、電力が供給される。
すなわち、水中(海中)3において非接触で、海底電源ベース2側からAUV1側に、電磁誘導の相互誘導作用に基づき磁界共振結合方式にて、電力が授受される(
図1,
図4を参照)。
【0035】
(4)さてそこで、この非接触給電装置24にあっては、以下のようになる。この非接触給電装置24は、径小な受電コイル28が、AUV1の機体胴部38内側に巻回されている。又、筒状穴37が、海底電源ベース2の収納部29に形成され、径大な送電コイル26が、筒状穴37を形成する収納部29内側に巻回されている(
図1を参照)。
このように、この非接触給電装置24は、異径コイル採用を基本とした、簡単容易な構成よりなる。
すなわち、同径コイル採用を基本とした前述したこの種従来例の非接触給電装置4(
図5を参照)に比し、均圧容器13や、高周波電圧型特殊構造の耐圧貫通コネクタ16や、耐高水圧仕様のコンデンサ11,コンバータ12、等々を採用しないでよい。もって、より簡単な構成により容易に、非接触給電が実現される。
【0036】
(5)更に、この非接触給電装置24にあっては、給電に際しAUV1の機体胴部38が、海底電源ベース2側の筒状穴37内にあれば、そして受電コイル28が、送電コイル26の巻回エリア内部,磁界位置内にさえあれば、AUV1は、どの位置でも自在に、浮遊,停止,位置決め,維持して、容易に給電可能である。
前述したこの種従来例の非接触給電装置4のように、浮遊するAUV1を定位置に停止,位置決め,維持する困難は、解消される。
【0037】
(6)なお、海底電源ベース2側の筒状穴37について、ベルマウス形状を備えるようにすると(
図2を参照)、給電に際しAUV1がガイドされ、もって上述した浮遊,停止,位置決め,維持が一段と確実化,容易化される。
又、送電コイル26と受電コイル28間の電力伝送距離の短縮化も、可能となる。
【0038】
(7)なお、この非接触給電装置24の場合、送電コイル26と受電コイル28間の結合係数は、その電力伝送距離の関係もあり、約0.01〜0.06程度であった。
この程度の低い結合係数の場合、陸上・空中で非接触給電を実施すると、伝送効率,給電効率が低く、コイル冷却手段が別途必要となる。
しかし、本発明のように水中(海中)3で非接触給電を実施する場合、特に、海水温が5℃以下となるような深海の場合は、冷却が何らの手段を要することなく自然かつ容易に行われる。もって、支障なく非接触給電が行われる。
作用等については、以上のとおり。