特許第6643143号(P6643143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643143
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】主ロープロッド回転防止治具
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20200130BHJP
   B66B 7/08 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   B66B5/00 D
   B66B7/08 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-36591(P2016-36591)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-154825(P2017-154825A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】硯川 政秀
(72)【発明者】
【氏名】東島 孝祐
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−026973(JP,U)
【文献】 実開昭51−014900(JP,U)
【文献】 実開平06−083233(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00−5/28
B66B 7/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの複数の主ロープとカウンタウェイトとの接続部における前記主ロープの張力調整に用いられる主ロープロッド回転防止治具であって、
前記主ロープの前記カウンタウェイト側端部に接続されたロッド部材の外側に嵌めるU字形部であり、ベース部及び前記ベース部の両端部に結合された2つの腕部を含むU字形部と、前記ベース部に前記腕部と反対方向に突出するように固定された軸部と、前記2つの腕部の少なくとも一方の前記腕部に結合されたボルトとを備え、
前記一方の腕部において、前記ボルトの先端部を前記ロッド部材側に突出させるようにねじ込むことで前記ロッド部材に突き当て可能に構成され、
前記軸部は、前記ベース部に対しネジ結合により分離可能に固定されている、
主ロープロッド回転防止治具。
【請求項2】
請求項1に記載の主ロープロッド回転防止治具において、
前記ロッド部材に前記ボルトの先端部が突き当てられた状態で、前記軸部は、前記複数の主ロープのうち、他の前記主ロープの前記カウンタウェイト側端部に接続されたロッド部材に係合可能に接触または隙間を介して面する、主ロープロッド回転防止治具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の主ロープロッド回転防止治具において、
前記ボルトは、前記2つの腕部のそれぞれにねじ込むように結合された2つのボルトであり、
前記2つのボルトの先端部は、前記2つの腕部の前記ロッド部材側に突出している、主ロープロッド回転防止治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの複数の主ロープとカウンタウェイトとの接続部における主ロープの張力調整に用いられる主ロープロッド回転防止治具に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータでは、乗りかごと、カウンタウェイトとが複数の主ロープで接続され、機械室の巻き上げ機の駆動によって、乗りかごが昇降移動する。このようなエレベータでは、長期間の使用に伴って主ロープの伸びが発生する等により、主ロープの張力調整の作業が必要になる。
【0003】
特許文献1には、2本の主ロープのカウンタウェイト側端部にソケットが取り付けられ、各ソケットの孔に両切りボルトが貫通され、両切りボルトの両端部に2つのプレートが取り付けられた構成が記載されている。2つのプレートは、2つの両切りボルトの両端部に掛け渡され、両切りボルトのうち、プレートの外側にナットが結合され、そのナットでプレートを介して2つのソケットが挟み込まれている。これにより、主ロープの張力調整の際にソケットの回り止めを行える。
【0004】
特許文献2には、主ロープの端部に取り付けられたソケットの孔に挿入される挿入部と、挿入部の両側に配置され、ソケットを挿入部との間で把持可能な当接部とを有する回り止め工具を用いて、ソケットの回り止めを行うことが記載されている。
【0005】
特許文献3には、主ロープの端末が吊り板にシンブルロッドを介して取り付けられており、1つのシンブルロッドに回り止め工具のU字形の係合部が係合される構成が記載されている。この構成では、他のシンブルロッドのおねじ部に回り止め工具の割ナット及び保持部が、割ピンを挟むように係合されている。この構成では、割ナットが係合されたシンブルロッドの回転を押さえるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−172732号公報
【特許文献2】特開2001−199653号公報
【特許文献3】実開平5−26973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、エレベータでは、主ロープの端部に取り付けられたロープ側ロッド部材と、カウンタウェイトの端部に取り付けられたウェイト側ロッド部材とが折り曲げ可能に連結される場合がある。このような構成では、ロッド部材に治具を挿入したり、ロッド部材に治具をねじ係合させることなく、ロッド部材の回り止めを行うことが望まれる。特許文献1から特許文献3のいずれにも、主ロープの端部に取り付けられたロッド部材において、治具を挿入したり、治具をねじ係合させることなく、回り止めを行うことは開示されていない。
【0008】
本発明の目的は、主ロープのカウンタウェイト側端部に接続されたロッド部材において、治具を挿入したり、治具をねじ係合させることなく、回り止めを行える主ロープロッド回転防止治具を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る主ロープロッド回転防止治具は、エレベータの複数の主ロープとカウンタウェイトとの接続部における前記主ロープの張力調整に用いられる主ロープロッド回転防止治具であって、前記主ロープの前記カウンタウェイト側端部に接続されたロッド部材の外側に嵌めるU字形部であり、ベース部及び前記ベース部の両端部に結合された2つの腕部を含むU字形部と、前記ベース部に前記腕部と反対方向に突出するように固定された軸部と、前記2つの腕部の少なくとも一方の前記腕部に結合されたボルトとを備え、前記一方の腕部において、前記ボルトの先端部を前記ロッド部材側に突出させるようにねじ込むことで前記ロッド部材に突き当て可能に構成され、前記軸部は、前記ベース部に対しネジ結合により分離可能に固定されている
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る主ロープロッド回転防止治具によれば、少なくとも一方の腕部において、一方の腕部に結合されたボルトの先端部をロッド部材側に突出させるようにねじ込んでロッド部材に突き当てることにより、ロッド部材に治具を保持できる。そして、この状態で軸部が他の主ロープの端部に接続されたロッド部材に係合することで、治具が固定されたロッド部材の回り止めを行える。また、このとき、ロッド部材に治具を挿入したり、ロッド部材に治具をねじ係合させる必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施形態の主ロープロッド回転防止治具により回転を防止する主ロープとカウンタウェイトとの接続部を示す斜視図である。
図2図1のA−A拡大断面図(a)と、(a)のB部を左側から右側に見た図(b)である。
図3】実施形態の主ロープロッド回転防止治具の斜視図である。
図4図3に示す主ロープロッド回転防止治具を上方から見た図である。
図5図3に示す主ロープロッド回転防止治具の正面図である。
図6図5において、軸部とU字形部とを分離して示す図である。
図7】カウンタウェイトの上部に接続された複数のロッド部材のうち、1つのロッド部材に主ロープロッド回転防止治具を固定して、そのロッド部材の回り止めを行う作業を工程順に示す図である。
図8】本発明に係る実施形態の別例の主ロープロッド回転防止治具を構成するキャップを示す図である。
図9図8に示すキャップをロッド部材の接続ピンの端部に嵌合させて、主ロープロッド回転防止治具のボルトの先端部を接続ピンの端面に突き当てた状態を示す断面図である。
図10図9を上方から見た図である。
図11】キャップの別例を、ロッド部材の接続ピンの端部に嵌合させた状態を示している図9に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。以下で説明する形状、数量、材質などは、説明のための例示であって、主ロープロッド回転防止治具を適用するエレベータの仕様により適宜変更が可能である。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
図1は、実施形態の主ロープロッド回転防止治具10(図3)により回転を防止する主ロープ50とカウンタウェイト60との接続部を示す斜視図である。図2は、図1のA−A拡大断面図(a)と、(a)のB部を左側から右側に見た図(b)である。
【0014】
エレベータ40は、昇降路41内で乗りかご(図示せず)と、カウンタウェイト60とが複数の主ロープ50で接続され、機械室(図示せず)に配置された巻き上げ機(図示せず)の駆動によって主ロープ50が移動することにより、乗りかごが昇降移動する。
【0015】
カウンタウェイト60は、カウンタレール42によって上下方向に案内される。カウンタレール42は、カウンタウェイト60の移動を案内するガイドレールである。
【0016】
カウンタウェイト60は、略矩形状の枠体61と、複数の錘62とを含み、枠体61と複数の錘62とが一体化されている。錘62は、直方体状であり、枠体61の内部に上下に積層される。枠体61は、鉄等の金属により形成される。錘62は、鉄等の金属、またはコンクリートにより形成される。
【0017】
エレベータ40の使用状態において、カウンタウェイト60は2本のカウンタレール42の間に配置され、カウンタウェイト60の上下方向の両端部で左右方向の両端部に取り付けられたガイドシュー63によって、各カウンタレール42に昇降可能に支持される。
【0018】
カウンタウェイト60の上端部には複数の主ロープ50の端部が、ロープ側ロッド部材51及びウェイト側ロッド部材70を介して接続される。
【0019】
ウェイト側ロッド部材70は、下端部におねじ部72が形成されたロッド本体71と、おねじ部72に2つずつ結合されたナット73とを含む。ウェイト側ロッド部材70の上端部には幅方向(図2の紙面の表裏方向)に広がった頭部70aが形成される。また、その頭部70aにおいて、ウェイト側ロッド部材70の長手方向に対し直交する方向(図1の紙面の表裏方向、図2の左右方向)には、円柱状の接続ピン75が貫通される。
【0020】
主ロープ50のカウンタウェイト60側端部にはロープ端末としてロープ側ロッド部材51が接続される。ロープ側ロッド部材51は、先端部が二股に分かれて2つの腕部52が形成される。2つの腕部52の内側にはウェイト側ロッド部材70の頭部70aが配置され、その状態で、腕部52及び頭部70aに接続ピン75が貫通している。接続ピン75の両端部で、腕部52より外側に突出した部分には割ピン76が直径方向に挿入され、その両端部が接続ピン75の外周面より突出している。図2(b)に示すように、割ピン76の先端部は、二股に広げられている。これにより、接続ピン75がロープ側ロッド部材51から脱落することが割ピン76により阻止される。このため、主ロープ50にウェイト側ロッド部材70が接続される。また、ロープ側ロッド部材51には、ウェイト側ロッド部材70が折り曲げ可能に連結される。
【0021】
そして、カウンタウェイト60の枠体61の上端部に設けられる上端板部61aには、ウェイト側ロッド部材70の下端部が上側から下側に貫通されて上端板部61aから下側に突出した部分に2つのナット73が重ねて結合される。これにより、カウンタウェイト60の上端板部61aの上面からのウェイト側ロッド部材70の突出長さを調節することにより、カウンタウェイト60及び乗りかごの間での主ロープ50の張力の調節が可能となる。
【0022】
主ロープ50の張力を調整する際には、スパナ等の工具を用いて、ウェイト側ロッド部材70のおねじ部72におけるナット73の位置を調節する。例えば、複数の主ロープ50の間で張力にばらつきがあった場合に、張力の小さい主ロープ50に結合されたウェイト側ロッド部材70のナット73を締め上げる。この場合、工具でナット73を回すのみでは、ウェイト側ロッド部材70が共回りしてしまう可能性がある。これにより、張力調整作業に長時間を要する場合がある。このとき、作業者が一方の手でウェイト側ロッド部材70の回転を防止しながら、他方の手でナット73を回すことにより、ウェイト側ロッド部材70でのナット73の位置を調節することも考えられるが、作業性が悪く、作業に長時間を要する場合がある。
【0023】
実施形態では、このような不都合を防止するために、図3から図5を用いて示す主ロープロッド回転防止治具10が用いられる。以下では、主ロープロッド回転防止治具10は、回転防止治具10と記載する。図3は、回転防止治具10の斜視図である。図4は、回転防止治具10を上方から見た図である。図5は、回転防止治具10の正面図である。図6は、図5において、軸部20とU字形部11とを分離して示す図である。
【0024】
回転防止治具10は、複数の主ロープ50とカウンタウェイト60との接続部における各主ロープ50の張力調整に用いられる。回転防止治具10は、U字形部11と、軸部20と、2つのボルト25とを備える。U字形部11は、主ロープ50の端部に接続されたウェイト側ロッド部材70の外側に嵌めるものである。具体的には、U字形部11は、ベース部12と、2つの略平行な腕部16とを有し、U字形に形成される。ベース部12は、2つの腕部16の間に連結される連結板部13と、連結板部13の長手方向中間部で幅方向一方側面(図3図4の紙面の表側面、図5の上側面)から突出する突出板部14と、軸固定部15とを有する。軸固定部15は、突出板部14の一方側面(図4図5の右側面)から突出するように形成される。軸固定部15は、先端面(図3図5の右側面)にネジ孔(図示せず)が形成される。例えば、軸固定部15は、突出板部14の一方側面にナットを溶接固定することにより形成される。軸固定部15は、後述する軸部20の端部をネジ結合により固定する。
【0025】
2つの腕部16は、連結板部13の両端部において、軸固定部15と反対側である同方向(図3図5の左方向)に突出するように結合される。各腕部16は、断面が略三角形であり、先端に向かうほど幅狭となっている。また、各腕部16の長手方向中間部には、後述するボルト25をねじ結合するためのねじ孔17が形成される。2つの腕部16の間隔は、主ロープ50に結合されたウェイト側ロッド部材70の接続ピン75(図2)の全長よりも大きい。これにより、2つの腕部16の内側にはウェイト側ロッド部材70が配置可能である。また、2つの腕部16に形成されたねじ孔17は、一直線状に配置される。このため、各ねじ孔17にボルト25がねじ込まれた状態で、ボルト25の先端が対面する。図2に戻って示すように、回転防止治具10の各腕部16の内側からボルト25の先端が突出し、それらの先端がウェイト側ロッド部材70の接続ピン75の端面中心部に突き当て可能である。
【0026】
図3から図6に示すように、回転防止治具10の軸部20は、ベース部12において、腕部16と反対方向に突出するように固定される。具体的には、軸部20は、直線状に伸びる円柱状、または一端(図3図6の左端)が塞がれた円筒状である。そして、図7に示すように、軸部20の一端面には軸方向に突出するおねじ部21が形成される。そしてこのおねじ部21をU字形部11の軸固定部15にネジ結合することにより、軸部20がU字形部11に対しネジ結合により分離可能に固定される。この状態で軸部20は、ベース部12から、腕部16と反対方向に突出する。U字形部11及び軸部20は、例えば鉄等の金属により形成される。
【0027】
2つのボルト25は、2つの腕部16のそれぞれに、外側からねじ込むように結合され、2つのボルト25の先端部は、2つの腕部16の内側であるウェイト側ロッド部材70側に突出している。そして、各ボルト25の先端部を、対応する腕部16にウェイト側ロッド部材70側に突出させるようにねじ込むことで、ウェイト側ロッド部材70の接続ピン75(図2)の端面に突き当て可能としている。
【0028】
図7は、カウンタウェイト60(図1)の上部に接続された複数のウェイト側ロッド部材70のうち、1つのウェイト側ロッド部材70に回転防止治具10を固定して、そのウェイト側ロッド部材70の回り止めを行う作業を工程順に示す図である。
【0029】
図7(a)に示すように、カウンタウェイト60の上側では、複数のウェイト側ロッド部材70が密集した状態で上方に突き出しており、それぞれに主ロープに接続されたロープ側ロッド部材51が結合されている。そして、図7(b)に示すように回転防止の対象である1つのウェイト側ロッド部材70の上端部には、回転防止治具10のU字形部11が、軸部20と分離した状態で結合固定される。具体的には、1つのウェイト側ロッド部材70の上端部に設けられ、ロープ側ロッド部材51の先端部から横方向に突出する接続ピン75を囲うように、U字形部11が配置される。そして、この状態で、U字形部11の各腕部16にボルト25をねじ込んで、各腕部16から内側に突出したボルト25の先端部が接続ピン75の両端面に突き当てられ、2つのボルト25が接続ピン75を両側から挟む。これにより、U字形部11がウェイト側ロッド部材70に固定される。
【0030】
次いで、図7(c)に示すように、U字形部11に軸部20がネジ結合されることにより、U字形部11と軸部20とが固定される。この状態で、軸部20は、他の複数の主ロープ50の端部に接続された複数のウェイト側ロッド部材70またはロープ側ロッド部材51の間に配置されて横方向に伸びている。これにより、軸部20は、他の主ロープに接続されたロープ側ロッド部材51、またはこのロープ側ロッド部材51に接続されたウェイト側ロッド部材70に接触するか、または隙間を介して面している。
【0031】
上記のように、回転防止治具10は、腕部16にボルト25の先端部をウェイト側ロッド部材70側に突出させるようにねじ込んで、ウェイト側ロッド部材70に突き当てることにより、ウェイト側ロッド部材70に回転防止治具10を保持できる。そして、この状態で回転防止治具10の軸部20が他の主ロープ50に接続されたロープ側ロッド部材51、またはこのロープ側ロッド部材51に接続されたウェイト側ロッド部材70に係合する。これにより、回転防止治具10が固定されたウェイト側ロッド部材70及び主ロープ50の回り止めを行える。また、このとき、ウェイト側ロッド部材70に治具を挿入したり、ウェイト側ロッド部材70のねじ部に治具をねじ係合する必要がない。回転防止治具10は、軸部20を水平方向に対し傾斜させることにより、主ロープ50に接続された周囲のロープ側ロッド部材51に係合可能に配置されてもよい。
【0032】
なお、本例と異なる比較例として、ウェイト側ロッド部材70のナット73の位置を調節する際に、1つのウェイト側ロッド部材70をスパナで挟んで保持させる方法も考えられる。この方法では、スパナにおいて、挟み部とは反対側の掴み部を他のウェイト側ロッド部材70に対面させて係合可能とする。しかしながらこの場合には、スパナの挟み部とウェイト側ロッド部材70との間には比較的大きな隙間が発生するので、ウェイト側ロッド部材70にスパナを十分な固定強度で固定することは難しい。また、その固定はスパナ本来の機能ではないので固定作業に適さずスパナを痛める原因となる。実施形態では、このような不都合を防止できる。
【0033】
さらに、実施形態では、軸部20は、U字形部11に対しネジ結合により分離可能に固定されるので、上記の図7(b)に示したように、U字形部11を軸部20とは分離してウェイト側ロッド部材70に固定することができる。そして、その後で、U字形部11に軸部20を固定できる。これにより、複数のウェイト側ロッド部材70の間に回転防止治具10の全体を外側から挿入できない、または挿入しにくい場合でも、U字形部11だけを先に複数のウェイト側ロッド部材70の間に容易に配置できる。例えば、複数のウェイト側ロッド部材70が小さい間隔をあけて密集しており、軸部20とU字形部11とが一体化された状態では回転防止治具10を複数のウェイト側ロッド部材70の間に配置できない場合がある。この場合には、U字形部11を先にウェイト側ロッド部材70に固定する。そして、その後で、軸部20だけを複数のウェイト側ロッド部材70の間に横方向一方側(図7(c)の左側)等から容易に差し込んで、U字形部11に軸部20を結合することができる。これにより、回転防止治具10の固定作業の作業性を高くできる。
【0034】
また、2つのボルト25は、2つの腕部16のそれぞれにねじ込むように結合され、2つのボルト25の先端部は、2つの腕部16のウェイト側ロッド部材70側に突出している。これにより、回転防止治具10をウェイト側ロッド部材70に固定する際の微調整を容易に行える。例えば2つの腕部16の内側からのボルト25の突出量を、2つのボルト25の間で変えることもできる。
【0035】
図8は、実施形態の別例の回転防止治具10を構成するキャップ30を示す図である。図9は、キャップ30をウェイト側ロッド部材70の接続ピン75の端部に嵌合させて、回転防止治具10のボルト25の先端部を接続ピン75の端面に突き当てた状態を示す断面図である。図10は、図9を上方から見た図である。
【0036】
図8から図10に示す別例の構成では、回転防止治具10をウェイト側ロッド部材70に固定する際に、回転防止治具10のボルト25の先端部にキャップ30を嵌合させている。図8に示すように、キャップ30は、直方体の一端が開口する略箱形であり、周壁部31を形成する2つの対面する板部32の開口端に切欠33が形成される。図8では、対面する2つの板部32のうち、1つの(図8の上側の)板部32に形成された切欠33が示されている。ウェイト側ロッド部材70に回転防止治具10が固定された状態で、切欠33の内側には、接続ピン75から突出する割ピン76(図9図10)の端部が配置される。図8では、切欠33を半円形としているが、矩形等の別の形状でもよい。また、キャップ30を形成する底板部34の中心部には、貫通孔35が形成されている。貫通孔35の直径は、回転防止治具10のボルト25のねじ部の外径とほぼ同じである。
【0037】
図9図10に示すように、回転防止治具10をウェイト側ロッド部材70に固定する際には、回転防止治具10の各腕部16から内側に突出するボルト25の先端部にキャップ30を嵌合させる。このとき、キャップ30の切欠33の内側には、接続ピン75に挿入された割ピン76の端部が通ってキャップ30との干渉が防止される。また、ボルト25の先端部は、底板部34の外側から貫通孔35を通ってキャップ30の内側に挿入される。そして、キャップ30の周壁部31が、ウェイト側ロッド部材70の円柱状の接続ピン75の端部に嵌合される。この状態で、切欠33を有する2つの板部32の間隔D(図9)は、接続ピン75の端部の外径とほぼ同じである。これにより、接続ピン75の端部に対し、キャップ30が直径方向にずれ動くことが抑制される。そして、キャップ30の内側に突出するボルト25の先端部を、接続ピン75の端面のほぼ中心に容易に突き当てることができる。このため、接続ピン75の軸方向両端のほぼ中心にそれぞれボルト25の先端を突き当てて締め付けることで、回転防止治具10をウェイト側ロッド部材70に、容易に安定して固定することができる。その他の構成及び作用は、図1から図7の構成と同様である。
【0038】
図11は、キャップ30の別例を、ウェイト側ロッド部材70の接続ピン75の端部に嵌合させた状態を示している図9に対応する図である。図11に示す回転防止治具10では、図8から図10の構成において、ボルト25の周囲で、キャップ30の底板部34と腕部16との間に配置されたコイルバネ36を備える。そして、コイルバネ36の縮みによる反発力が底板部34及び腕部16に加わっている。
【0039】
上記構成によれば、コイルバネ36によって、キャップ30が腕部16に対し接続ピン75の中心軸を中心とする回転方向等にずれ動くことを抑制できる。これにより、ボルト25の先端部を接続ピン75の端面のほぼ中心に、より容易に突き当てることができる。その他の構成及び作用は、図8から図10の構成と同様である。
【0040】
なお、上記の各例の構成では、回転防止治具10の2つの腕部16の両方にボルト25をねじ込んだ構成を説明したが、1つの腕部16のみにボルト25がねじ込まれる構成としてもよい。このとき、ボルト25の先端部と、ボルト25がねじ込まれない他の腕部16とでウェイト側ロッド部材70が挟まれて、回転防止治具10をウェイト側ロッド部材70に固定することができる。このとき、回転防止治具10の軸部20は、2つの腕部16の一方側、例えばボルト25がねじ込まれる腕部16の側に偏った状態で、U字形部11に固定されてもよい。
【0041】
また、上記では、回転防止治具10がウェイト側ロッド部材70に固定される場合を説明したが、回転防止治具はロープ側ロッド部材51に固定される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 主ロープロッド回転防止治具(回転防止治具)、11 U字形部、12 ベース部、13 連結板部、14 突出板部、15 軸固定部、16 腕部、17 ねじ孔、20 軸部、21 おねじ部、25 ボルト、30 キャップ、31 周壁部、32 板部、33 切欠、34 底板部、35 貫通孔、36 コイルバネ、40 エレベータ、41 昇降路、42 カウンタレール、50 主ロープ、51 ロープ側ロッド部材、52 腕部、60 カウンタウェイト、61 枠体、61a 上端板部、62 錘、63 ガイドシュー、70 ウェイト側ロッド部材、70a 頭部、71 ロッド本体、72 おねじ部、73 ナット、75 接続ピン、76 割ピン。
図1
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図11