(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の信号によって表される前記頭部配向が、体位変換手法による望ましい配向から所定量を越えて逸脱するとき、前記第1の条件が満たされる、請求項1に記載のシステム。
前記第1の条件は、前記配向インジケータの前記画像における位置が、体位変換手法による第1の基準インジケータに関する望ましい位置から所定量を越えて逸脱していることである、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
前記第1の基準インジケータが、第1の局所軸まわりの第1の回転に関する第1のフィードバックを提供するように構成され、前記第2の基準インジケータが、前記第1の局所軸に垂直な第2の局所軸まわりの第2の回転に関する第2のフィードバックを提供するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【背景技術】
【0002】
浮動性めまいは人口の大部分が罹患する一般的な症状である。前庭障害の診断および治療のためには、患者の頭部が特定の位置に配置されるように患者を位置させること、例えば、患者が頭部を真っ直ぐにして背筋を伸ばして座り、動かないでいることを要する。診断または治療を行うためには、患者を特定の位置に、または特定の順序で所定の一連の位置へと動かすのが必要なことがある。患者の頭部の適切な位置決めは、適切な診断および治療にとって不可欠である。
【0003】
前庭活性(即ち、配向の変化に対するヒトの反応、「平衡感覚」)は、患者において直接モニタすることができないので、医師は、ヒトの前庭系の活性を客観的に検出するために、眼球運動反射などの二次的徴候に頼らなければならない。頭部が任意の軸線を中心にして回転すると、ヒトは本質的かつ不随意に、自身の目をそれぞれの軸線上において反対方向で回転させることによって、離れた視像を持続させようとする。内耳中の半規管は、角運動量を感知し、脳内にある眼球運動の中枢に信号を送る。これにより、信号は外眼筋に中継されて、頭部が動いた際に患者の注視を1つの物体に集中させることができる。眼振と称される特定の反応は、頭部が動いていない状態で半規管が刺激されているときに生じる。眼球運動の方向は、刺激されている特定の半規管に直接関係する。
【0004】
診断し治療することができる症状の一例は、良性発作性頭部めまい症(BPPV)である。BPPVは回転性めまいの最も一般的な原因であり、すべての回転性めまい患者の約40%を占める。BPPVの最も一般的な原因は、卵形嚢内にある炭酸カルシウム結晶(耳石)が、患者の半規管内へと変位すること(半規管結石症)またはクプラ上へと変位すること(クプラ結石症)である。今日、後半規管BPPV(最も一般的)は、Dix−Hallpike法と称される、患者の特定の位置決めを特別な手順で行うことによって診断され、試験者は、患者が頭部を患部の耳の方に向けた状態で仰臥位にあるときの目を観察することによって、眼振を同時に調べる。Dix−Hallpike法は、BPPVの診断に使用されている最も一般的な位置決め手順であるが、Hallpike−Stenger、側臥および回転(side−lying and roll)などの他の手法も使用される。選択される手法は、医師の好み、患者の首の可動性、およびBPPVが後半規管、前半規管、または外側半規管のどこに存在すると疑われるかによってそれぞれ決定される。BPPVの治療はリポジショニング手法による。例えば、浮遊耳石置換法(Epley法と称される)、Liberatory(Semant法と称される)、およびいわゆるBBQロール法など、この目的のために医師が利用可能ないくつかのリポジショニング手法がある。
【0005】
手法は、このようにして治療されるすべての患者の90%で成功する。しかしながら、治療を受けた患者の約40%は再発を経験し、さらなるリポジショニングのために医師を再訪するのが必要なことがある。治療を受けた患者のほぼ40%において、治療の成功が即効性または持続性でないことの理由は分かっていない。1つの理由としては、リポジショニング手法が医師によって適切に行われていなかった可能性がある。医師が、自由にリポジショニング手法を行いながら、同時に患者の体位および応答を追跡する手段を有する場合、医師がより高い信頼度でリポジショニング手法を行うことができ、その結果、より多くの患者が治療の成功を経験するであろう。
【発明の概要】
【0006】
方法は、異常なヒト前庭活性を観察し特定するために行われてもよい。方法は、ヒトにおける選択された空間的配向をもたらすことと、ヒトの空間的配向、およびヒト前庭活性の1つ以上の運動成分の視覚表現を提供することとを含んでいてもよい。方法は、例えば、空間的配向をモニタするとともに空間的配向の変化の指標としての前庭脊髄反射をモニタしながら、例えばDix−Hallpike法を自動的に行うことを可能にしてもよい。装置は、上述の方法を行うように構成されてもよく、患者の頭部の位置を決定する位置決めまたは配向測定、例えば加速度計もしくは類似のデバイスと、眼球運動モニタリング機器、例えば患者の頭部に装着され、患者の眼球運動を登録するためにカメラもしくは類似の機器を備えた、ゴーグルまたは眼鏡とを含んでもよい。場合によっては、装置は、試験を実行する間、患者を自由に回転可能な任意の360°の空間的配向で懸架する機構をさらに備えてもよく、その機構は、試験中に望ましい反応を引き起こすための要件にしたがって、自動的に患者の空間的配向を変更することができる。
【0007】
上述の装置は、患者の空間的配向を自動的に変更する機構がない状況では、試験を行う医師またはアシスタントによる、かなりの訓練および経験を必要とすることがある。かかる機構が利用可能であっても、嵩ばって高価なことがあり、したがって、かかる機構を取得し使用するために必要な空間および資金を有する医師のみが利用可能なことがある。
【0008】
したがって、広い空間を占めることなく、最小限の追加訓練をした医師が簡単に使用できる、試験または治療中の異常なヒト前庭活性を観察し特定するための、コスト効率の良い方法およびシステムを有するのが望ましいことがある。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、ヒトの頭部配向を検出し記録するためのシステムが考案され、前記システムは、三次元空間内におけるヒトの頭部配向に関する少なくともセンサデータを取得することができる第1のセンサデバイスと、医療データ取得システム、プロセッサ、およびグラフィックディスプレイを備えるコンピュータシステムとを備え、医療データ取得システムは、第1のセンサデバイスからのセンサデータを格納し出力するように構成され、グラフィックディスプレイは、プロセッサによって生成された画像を表示するように構成され、プロセッサは、医療データ取得システムからのセンサデータを処理し、頭部配向を表す第1の信号を出力し、グラフィックディスプレイによって示されるのに適した画像を生成するように構成され、前記画像は、第1の基準インジケータと、配向インジケータであって、例えば第1の基準インジケータに対する前記配向インジケータの位置が、グラフィックディスプレイにおいて、プロセッサからの第1の信号に基づいて決定される、配向インジケータと、第1の特定の条件が満たされる場合は常にフィードバック信号と、を少なくとも含む。これにより、医師は、嵩ばる機器または入念な訓練の使用を伴うことなく、精密かつ確実な方法で、ヒトの配向の操作に従うことが可能になる。
【0010】
一実施形態では、第1の特定の条件は、頭部配向を表す第1の信号が、特定の体位変換手法による頭部配向から所定量を越えて逸脱しているという条件である。別の実施形態では、第1の特定の条件は、配向インジケータが、特定の体位変換手法による第1の基準インジケータに関する望ましい位置から所定量を越えて逸脱しているという条件である。これにより、システムのディスプレイが、検査または治療を受けているヒトの頭部の移動が実行されている間、迅速で効率的なフィードバックを医師に提供することが可能になる。
【0011】
一実施形態では、プロセッサは、グラフィックディスプレイの配向インジケータの色、形状、またはサイズを変化させることによって、フィードバック信号を生成する。一実施形態では、システムは、ヒト頭部の格納された三次元モデルを少なくとも保持するように構成されたメモリを備える。さらなる実施形態では、プロセッサによって生成された画像は、ヒト頭部の格納された三次元モデルの二次元投影を含み、二次元投影の視角は頭部配向を表す第1の信号に基づいて決定される。別の実施形態では、第1の基準インジケータは、第1の局所軸まわりの回転に関するフィードバックを提供するように構成され、第2の基準インジケータは、第1の局所軸に垂直な第2の局所軸まわりの回転に関するフィードバックを提供するように構成される。フィードバック信号は、ヒト頭部の三次元モデルの二次元投影の視角における変化と併せて、検査の間、医師がヒトの頭部の配向を継続的に追跡し、所定のヘッド回転からの逸脱があればそれを即座に補正することを簡単にする。
【0012】
一実施形態では、システムは、ヒトの眼球運動に関するセンサデータを取得することができる第2のセンサデバイスを備え、好ましくは、プロセッサは、第2のセンサデバイスによって提供されるヒトの眼球運動に関するセンサデータから前庭活性を導き出すように構成される。
【0013】
プロセッサはさらに、第1のセンサデバイスからのセンサデータおよび第2のセンサデバイスからのセンサデータに基づいて、1つ以上のフィードバック信号を生成するように構成されてもよい。
【0014】
1つのフィードバック信号は、例えば校正処置を実行して確立される、例えば基準位置に対する、ヒトの片目または両目の位置に関連してもよい。例えば、片目または両目が所定の位置範囲内にある場合、片目または両目は1つの色で示されてもよく、片目または両目が所定の位置範囲外にある場合は別の色で示されてもよい。
【0015】
さらなる実施形態では、メモリに格納されたヒト頭部の三次元モデルは、一組の左半規管および一組の右半規管それぞれの格納された三次元モデルを含む。プロセッサは、一実施形態では、一組の半規管の格納された三次元モデルの二次元投影を提供し、一組の左半規管および一組の右半規管のうち個々の半規管の色をそれぞれ、導き出された前庭活性に応答して変化させるように構成される。一組の左半規管および一組の右半規管それぞれの半規管モデルの二次元投影は、それらの視角を、ヒト頭部の三次元モデルの二次元投影における視角と交換し、それに加えて、例えば色の変更によって、ヒトの眼球運動に関する取得データによって前庭活性が検出されるごとに、それらの外観を個々に変化させる。この特徴により、医師が、頭部の操作中に検査または治療されているヒトの前庭活性を追跡することが可能になり、その結果、医師が、検査または治療中のヒトからの異常な前庭反応を判断するのがより簡単になる。
【0016】
いくつかの実施形態では、特定の体位変換手法が、Dix−Hallpike法、Epley法、またはSemant法から成る群から選択される。一実施形態は、ヒトの前庭活性を検出する前に選択される、特定の体位変換手法を提供する。この特徴により、医師が、例えば、検査されているヒトに対してDix−Hallpike法を行う前にそれを選択することが可能になり、また、システムはDix−Hallpike法が行われることを前もって「知る」ことができ、ガイダンスに対して予期される一連の頭部回転角度を提供し、その結果、体位変換を実行する間は医師をガイドすることができるので、システムによって、体位変換の個々の移動を精密にかつ適正な順序で支援することが可能になる。
【0017】
ヒトの頭部配向を検出し記録するためのシステムは、三次元空間内におけるヒトの頭部配向に関するセンサデータを提供することができる、第1のセンサデバイスと、第1のセンサデバイスからのセンサデータを格納し出力するように構成された医療データ取得システムと、医療データ取得システムからのセンサデータを処理し、頭部配向を表す第1の信号を出力し、グラフィックディスプレイによって表現するための画像を生成するように構成された、プロセッサと、を含み、画像は、第1の基準インジケータと、配向インジケータであって、画像における配向インジケータの位置がプロセッサからの第1の信号に基づいて決定される、配向インジケータと、第1の条件が満たされたときのフィードバックインジケータと、を含む。
【0018】
任意に、第1の信号によって表される頭部配向が、体位変換手法による望ましい配向から所定量を越えて逸脱する場合、第1の条件が満たされる。
【0019】
任意に、体位変換手法は、Dix−Hallpike法、Epley法、またはSemant法を含む。
【0020】
任意に、体位変換手法は、ヒトの前庭活性を検出する前に予め決定される。
【0021】
任意に、第1の条件は、配向インジケータの画像における位置が、体位変換手法による第1の基準インジケータに関する望ましい位置から所定量を越えて逸脱していることである。
【0022】
第1の基準インジケータは、ルーラー、またはルーラーに沿って数字を備えた数直線、または対象とする数からルーラーもしくは数直線上にゼロの数字で印付けられた基準点までの符号付き距離を示す数直線のように形成されてもよい。数字は、第1の軸まわりの頭部の角度回転を度数で示してもよく、例えば第1の基準インジケータが好ましくは画像中の水平方向ルーラーまたは数直線として示される場合は水平軸まわりの頭部の角度回転を度数で示してもよい。配向インジケータは、第1の、例えば水平軸まわりの頭部の現在の角度回転に対応する位置で、第1の基準インジケータに対して位置決めされてもよい。配向インジケータが第1の軸まわりの角度回転の望ましい範囲外にあるとき、第1の条件が満たされてもよい。
【0023】
任意に、画像は第2の基準インジケータを含む。
【0024】
第2の基準インジケータは、ルーラー、またはルーラーに沿って数字を備えた数直線、または対象とする数からルーラーもしくは数直線上にゼロの数字で印付けられた基準点までの符号付き距離を示す数直線のように形成されてもよい。数字は、第2の軸まわりの頭部の角度回転を度数で示してもよい。第2の軸は第1の軸に垂直であってもよい。第2の軸は垂直軸であってもよく、その場合、第2の基準インジケータは好ましくは、画像中で垂直のルーラーまたは数直線として示される。配向インジケータは、第2の、例えば垂直軸まわりの頭部の現在の角度回転に対応する位置で、第2の基準インジケータに対して位置決めされてもよい。配向インジケータが第2の軸まわりの角度回転の望ましい範囲外にあるとき、第1の条件が満たされてもよく、あるいは、配向インジケータが第1の軸まわりの角度回転の望ましい範囲外にあるとき、および/または第2の軸まわりの角度回転の望ましい範囲外にあるとき、第1の条件が満たされてもよい。
【0025】
任意に、配向インジケータは、例えばx軸、y軸、およびz軸がヒト頭部に対して以下に定義されたデカルト座標系の画像の形態を有してもよく、その配向は、第1の基準指標を形成し、また、例えば選択された体位変換手法におけるヒト頭部の望ましい開始位置に対応する、例えば水平方向のx軸および水平方向のy軸および垂直方向のz軸を有する、別のデカルト座標系に関連して画像中に示されてもよい。したがって、任意に、ヒト頭部の望ましい開始位置において、配向インジケータおよび第1の基準インジケータが一致し、選択された体位変換手法にしたがってヒト頭部が望ましく回転させられると、配向インジケータはヒト頭部の現在の回転に対応する位置で画像中に示され、配向インジケータが、例えばx軸、y軸、およびz軸を中心にした、角度回転の望ましい範囲外にあるとき、第1の条件が満たされてもよい。
【0026】
任意に、フィードバックインジケータは、配向インジケータの色、形状、またはサイズの変化を含む。
【0027】
任意に、システムは、ヒト頭部の三次元モデルを格納するように構成されたメモリをさらに含む。
【0028】
任意に、フィードバックインジケータは、(1)ヒト頭部の三次元モデルの二次元投影、(2)第1の基準インジケータ、または(3)第2の基準インジケータの、色、形状、もしくはサイズの変化を含む。
【0029】
任意に、ヒト頭部の三次元モデルは、一組の左半規管の第1の三次元モデルと、一組の右半規管の第2の三次元モデルとを含む。
【0030】
任意に、プロセッサによって生成された画像は、ヒト頭部の三次元モデルの二次元投影を含み、二次元投影の視角は頭部配向を表す第1の信号に基づいて決定される。
【0031】
任意に、プロセッサによって生成された画像は第2の基準インジケータを含む。
【0032】
任意に、第1の基準インジケータは、第1の局所軸まわりの第1の回転に関する第1のフィードバックを提供するように構成され、第2の基準インジケータは、第1の局所軸に垂直な第2の局所軸まわりの第2の回転に関する第2のフィードバックを提供するように構成される。
【0033】
任意に、システムは、ヒトの眼球運動に関するセンサデータを提供することができる第2のセンサデバイスをさらに含み、プロセッサは、第2のセンサデバイスによって提供される眼球運動に関するセンサデータから前庭活性を導き出すように構成される。
【0034】
任意に、システムは、ヒト頭部の三次元モデルを格納するように構成されたメモリをさらに含み、ヒト頭部の三次元モデルは、一組の左半規管の第1の三次元モデルと、一組の右半規管の第2の三次元モデルとを含み、プロセッサは、(1)第1の三次元モデル、第2の三次元モデル、またはそれら両方の二次元投影を提供するように、ならびに(2)導き出された前庭活性に応答して、二次元投影の少なくとも一部の色を変化させるように構成される。
【0035】
任意に、システムはグラフィックディスプレイをさらに含む。
【0036】
本明細書に記載する1つ以上の実施形態は、広い空間を占めることなく、最小限の追加訓練をした医師が簡単に使用できる、試験または治療中の異常なヒト前庭活性を観察し特定するための、コスト効率の良い方法およびシステムを提供する。したがって、本明細書に記載する1つ以上の実施形態は、米国特許第6,800,062号に記載されているもののような、既知の装置および方法よりも有利である。
【0037】
他の特徴および実施形態については、発明を実施するための形態において後述する。
【0038】
実施形態については、以下により詳細に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
様々な実施形態について図面を参照して以下に記載する。全体を通して同様の参照番号は同様の要素を指す。したがって、同様の要素については、各図面の説明に関して詳細に記載しない。図面は単に実施形態の説明を容易にしようとするものであることにも留意されたい。図面は、特許請求の範囲に記載された発明の網羅的な説明として、または特許請求の範囲に記載された発明の範囲に対する限定として意図されない。それに加えて、図示される実施形態は必ずしも図示される態様または利点をすべて有さなくてもよい。特定の実施形態と併せて記載される態様または利点は、必ずしもその実施形態に限定されず、そのように図示されていない場合であっても、またはそのように明示的に記載されていない場合であっても、他の任意の実施形態で実施することができる。
【0041】
図1の概略ブロック図は、ヒトの前庭活性を試験および検査するための臨床セットアップ1を示す。臨床セットアップ1は、コンピュータ化されたシステム2と、ヒトの配向、例えばヒトの頭部配向を検出する配向センサ4の形態である、第1のセンサデバイスと、検査されているヒトの目5の動きを検出する眼球運動検出器6の形態である、第2のセンサデバイスと、検査中にリアルタイムで配向および前庭活性を表示するディスプレイ3と、を備える。コンピュータ化されたシステム2は、データ取得モジュール7と、計算モジュール8と、ヒトの頭部および半規管の三次元モデルを保持するメモリ9と、ディスプレイ3に対して出力信号を提供するグラフィックプロセッサ10と、を備える。コンピュータ化されたシステム2は、専用計算デバイスとして具体化されてもよく、または標準的な既製のパーソナルコンピュータで実行するように設計されたアプリケーションとして具体化されてもよい。
【0042】
眼球運動検出器6および配向センサ4は、例えば、欧州特許出願EP14169653.4に記載されている種類の、内蔵式の頭部装着型ユニット(
図1には図示なし)に組み込まれてもよい。頭部装着型ユニットは、ヒトがユニットを着用している状態で自由に動くことを可能にする、比較的小型で軽量のハードウェアである。頭部装着型ユニットは、好ましくは、例えば調節式ヘッドバンドによって、ヒト頭部に固定することができるゴーグルとして具体化されてもよい。眼球運動検出器6は、例えば半透明ミラーを介して、ヒトの目を恒常的にモニタする小型ビデオカメラとして具体化されてもよい。眼球運動検出器6は、ヒトの左目および右目両方の動きを同時にモニタするために、2つあってもよい。配向センサ4は、頭部装着型ユニットに装着される加速度計ユニットとして具体化されてもよい。検査の間、頭部装着型ユニットは検査されているヒトの頭部に固定され、眼球運動および空間的配向に関するデータが、コンピュータ化されたシステム2のデータ取得モジュール7に供給される。ヒトに対する適切な検査を行う前に、頭部装着型ユニットから収集されたデータをヒトの基準平衡位置と適正に協調させることができるようにするため、配向校正処置を含み、また好ましくは眼球位置校正処置も含む、校正処置が行われる。
【0043】
校正済みの頭部装着型ユニットを着用しているヒトの検査中、ヒト頭部は、医師が臨床セットアップ1のディスプレイ3を見ながら、検査を行う医師によって一連の異なる位置または配向に置かれる。検査中にディスプレイ3を見ることによって、医師は、検査されているヒトの実際の配向および前庭反応をモニタしてもよい。前庭反応はヒトの眼球の不随意運動に反映され、したがって、眼球運動検出器6からのデータは、対応する前庭反応を計算するために計算モジュール8によって使用される。計算の結果はグラフィックプロセッサ10に提供され、検査を行っている医師が見るディスプレイ3の表示領域で、ヒト頭部および半規管の二次元透視投影をリアルタイムで生成する目的のため、専用メモリ9によって提供される、格納されたヒト頭部およびそれに関連する一対の半規管の三次元モデルと組み合わされる。
【0044】
図1のディスプレイ3によって提供され得る例示的な画像が
図2に示されている。
図2は、ヒト頭部21の透視投影を含むメインウィンドウ20と、データウィンドウ28と、一組の動作制御部29、30、31、32と、一組のタブ式ウィンドウ33、34、35、および36とを示している。ヒト頭部21の透視投影は、一組の左半規管22Lと、一組の右半規管22Rと、第1の基準インジケータの一例を構成する水平基準インジケータ25と、第2の基準インジケータの一例を構成する垂直基準インジケータ26と、配向インジケータ27と、をさらに備える。配向インジケータ27は、配向センサ4によって決定されるようなヒトの頭部配向の二次元投影を表す。透視投影21において、一組の左半規管22Lは後半規管23および前半規管24を有し、濃い色で強調してそれらの管における前庭活性を示している。明瞭にするため、一組の左半規管22Lおよび一組の右半規管22Rはそれぞれ、メインウィンドウ20内で、ヒト頭部21からある程度の距離で空間に浮遊して示されている。
【0045】
システム1の使用中、医師は、メインウィンドウ20の「センター」ボタン29を作動させることによって、頭部装着型ユニットを校正することにより、データ収集セッションを開始する。この校正は、ヒトの頭部が頭部装着型ユニットを保持し、正面を向いている状態で行われる。それに続いて、校正後にヒト頭部によって何らかの動きが行われると、それが記録され、校正ポイントに対して、例えば、「センター」ボタン29を作動させたときのヒト頭部の配向に関して示される。ヒトが空間内で頭部を動かすと、それに対応してヒト頭部21の透視投影角度がメインウィンドウ20内で動き、一組の左半規管22Lおよび一組の右半規管22Rの透視投影角度が、ヒト頭部21に対するそれらの相対位置を保ったままヒト頭部21とともに動く。
【0046】
校正処置は眼球位置校正処置を含んでもよい。光源、例えば低出力レーザー光源が、頭部装着型ユニット上に配置され、好ましくは、ヒトが頭部装着型ユニットを着用したときの前方視方向で光線を放射するように構成されてもよい。校正処置の一部として、医師は、被検者の前方の壁にある固定点を光線が照明するようにして被検者を位置決めした状態で、頭部をリラックスして前方視方向で保持するように、被検者に伝えてもよい。医師はまた、固定点に集中するように被検者に伝えてもよい。次に、医師は、メインウィンドウ20の「センター」ボタン29を作動させ、それによって、ヒト頭部の基準位置と基準配向、および任意にヒトの目の基準位置、即ち、「センター」ボタン29を作動させたときのヒトの頭部ならびに任意に目の位置および配向を確立してもよい。続いて、ヒトの検査中に眼球運動測定および配向測定が、好ましくは、確立したヒト頭部の基準位置および基準配向、ならびに任意にヒトの目の基準位置を参照して行われる。
【0047】
プロセッサはさらに、眼球運動検出器6および配向センサ4からのセンサデータに基づいて、1つ以上のフィードバック信号を生成するように構成されてもよい。
【0048】
1つのフィードバック信号は、例えば眼球位置校正処置を実行して確立される、例えば確立された基準位置に対する、ヒトの片目または両目の位置に関連してもよい。例えば、片目または両目が所定の位置範囲内にある場合、片目または両目は1つの色で示されてもよく、片目または両目が所定の位置範囲外にある場合は別の色で示されてもよい。例えば、医師は、ヒト頭部を所定位置に向けながら、固定点に集中するように被検者に言ってもよい。片目または両目が、片目または両目が対応する色で示されるディスプレイに示されるような所定の位置範囲内にある場合、ヒト頭部は適正に位置決めされており、検査の準備ができている。
【0049】
校正処置が完了すると、医師は、メインウィンドウ20の「スタート」ボタン30を作動させることによって、動きおよび前庭反応データの取得を開始してもよい。
【0050】
配向インジケータ27はヒト頭部21の透視投影とともに動く。ヒト頭部が動くと、配向インジケータ27はそれに対応して、垂直基準インジケータ26および水平基準インジケータ25それぞれに対して動く。垂直基準インジケータ26および水平基準インジケータ25の位置決めは、行われる検査のタイプによって決定される。例えば、医師がシステム1を用いたDix−Hallpike法を行いたい場合、医師は、第1の移動ではヒト頭部を垂直に通る軸線を中心にして、また第2の移動ではヒトの耳から耳までの軸線を中心にして、ヒト頭部を動かさなければならない。配向インジケータ27は、第1の移動の間は配向インジケータ27が垂直基準インジケータ26上に留まり、第2の移動の間は配向インジケータ27が水平基準インジケータ25上に留まるような形で、医師がヒト頭部を動かすようにすることによって、医師がDix−Hallpike法を行うのを支援する。好ましくは、配向インジケータ27は、配向インジケータ27が第1または第2の移動の間に軌道を逸れている場合、点灯するかまたは色を変化させてもよい。角度許容差がシステムに組み込まれてもよい。
【0051】
このように、システム1のディスプレイ3は、例えばDix−Hallpike法を実行する間に、リアルタイムで医師に正のフィードバックを提供して、所望の検査または治療結果を得るために医師が患者の頭部および/または胴体に対して行わなければならない移動をガイドしてもよい。頭部21の二次元投影と、二組の半規管22Lおよび22R、ならびに垂直基準インジケータ26および水平基準インジケータ25に対する配向インジケータ27の組み合わせによって、ヒトの頭部の動きにおける高い精度がもたらされる。眼球運動検出器6がヒトの目をモニタしているという事実により、システムは、例えば、半規管22Lおよび22Rの二次元投影における個々の半規管をウィンドウ20内で点灯させるかまたはその色を変化させ、それによってそれら半規管の前庭活性を示すことによって、眼振が存在することを示してもよい。これは、
図2において、左後半規管23および左前半規管24が、被検者の左後半規管および左前半規管の活性を示す濃い色であるものとして示されている。
【0052】
いくつかのタイプの検査は、試験されているヒトが視力を奪われていること、即ち目隠しされることを要することがある。これは、ほとんどのヒトが、空間内における自身の配向を判断するために視力を使用するのが自然であるという事実による。この感覚の種類を検査から除外するために、被検者は、検査または治療の間、片目もしくは両目に濃い色または不透明の目隠しを着用していてもよい。目隠しは、好ましくはヒトが着用したときにゴーグルの下に位置し、電磁スペクトルの赤外範囲以外のすべての光を遮る材料から製造され、それによってヒトが検査の持続時間の間、視覚的刺激を何ら受けないようにしている。システム1の眼球運動検出器6は、スペクトルの赤外範囲で感知可能であるように構成され、それにより、検査されているヒトは何も見えていないにもかかわらず眼球運動を検出することを可能にしている。ヒトが何も見えていない場合であっても目の平衡反射が存在するので、この検査の方法によって視覚的刺激が検査から有効に除外され、それによって平衡器官からの信号が、検査中または検査後に詳細に解析するために有効に分離される。
【0053】
検査の間、
図1のコンピュータ化されたシステム2のデータ取得モジュール7は、被検者の頭部の注視方向および空間的配向を表す、リアルタイムデータのストリームを計算モジュール8に提供する。これらのデータは、計算モジュール8によって分類、選別、および記録され、両方の組の半規管22Lおよび22Rそれぞれの空間的配向および前庭活性を表すベクトルに変換される。このベクトルは、
図2に示されるヒト頭部21のリアルタイム二次元投影を生成するため、グラフィックプロセッサ10の第1の入力に提供される。同時に、専用メモリ9によって提供される、格納されたヒト頭部およびそれに関連する半規管の三次元モデルは、ディスプレイ3に表示するのに適した、ヒト頭部21ならびにそれに対応する一連の左半規管22Lおよび一連の右半規管22Rの適切な二次元表現の投影を計算するため、グラフィックプロセッサ10の第2の入力に適用される。
【0054】
三次元座標系は、x軸がヒト頭部の耳から耳へと伸び、y軸がヒトの頭頂骨の頂部から首を通って伸び、z軸がヒトの後頭部から鼻の先端へと伸びる、標準的な右手座標系として定義される。この座標系について以下で言及する。3つの軸x、y、およびzを中心にしたヒト頭部の配向角度は、次式の3つの回転マトリクスを使用したTait−Bryan連鎖回転として表現されてもよい。
【数1】
【数2】
および、
【数3】
【0055】
ラジアンで表現される3つの回転角度α、β、およびγは、起点(校正時に設定される)に対して3つの軸を中心にしたヒト頭部の回転を記述している。
図1の回転センサ4によって提供されるデータは、被検者の頭部の回転角度を計算するのに使用される。校正時には、回転角度α、β、およびγはゼロであり、回転センサ4からのデータはベクトルとして次のように表現される。
【数4】
が校正時であり、そして、
【数5】
が検査の間である。ベクトル
【数6】
は、データ取得モジュール7によって回転センサ4からのデータから生成され、計算モジュール8に対する入力として使用される。
【0056】
解剖学的に、ヒトの三半規管は、外側半規管(垂直軸まわりに横断面内で機能する)、前半規管(前後軸まわりに冠状面内で機能する)、および後半規管(左右軸まわりに矢状面内で機能する)と称される。上述したように、半規管の活性は直接モニタすることができない。その代わりに、眼球運動検出器6を使用して検査中に前庭活性を検出するために、前庭眼反射が使用される。例えば、検査されているヒトの頭部が横断面内で左から右に動いた場合、前庭眼反射のおかげで、ヒトの目は右から左に反対方向で動く。眼球運動検出器6はこの挙動を記録し、それを水平運動ベクトル
【数7】
として解釈する。代わりにヒト頭部を矢状面内で上下に動かした場合、ヒトの目はそれぞれ下および上に動くであろう。眼球運動検出器6はこの挙動を垂直運動ベクトル
【数8】
として記録し解釈する。最後に、ヒト頭部を冠状面内で傾動させ回転させた場合、ヒトの目は反対方向で回転する。眼球運動検出器6は、これらの眼球運動を記録し、挙動を回転運動ベクトル
【数9】
として解釈する。運動ベクトル
【数10】
【数11】
および
【数12】
を眼球運動検出器6から導き出す方法は、本出願の範囲外である。
【0057】
ベクトル
【数13】
【数14】
および
【数15】
はまた、特定の半規管に対する前庭刺激が存在することを示す一組のベクトルを導き出す目的で、計算モジュール8に対する入力として使用される。この一組のベクトルは、次のやり方で導き出されてもよい。
ベクトルは、
【数16】
【数17】
および、
【数18】
として正規化される。
【0058】
左目に関して、刺激ベクトル
【数19】
が以下のように導き出される。
【数20】
【数21】
および、
【数22】
であって、
【数23】
であり、式中、k
1、k
2、およびk
3は定数である。
【0059】
同様に、右目に関して、刺激ベクトル
【数24】
が以下のように導き出される。
【数25】
【数26】
【数27】
であって、
【数28】
である。
【0060】
定数k
1、k
2、およびk
3は、個々の値L
lateral、L
anterior、L
posterior、R
lateral、R
anterior、およびR
posteriorがそれぞれ、0または1の値を持つように選択される。ベクトル
【数29】
【数30】
および
【数31】
は、グラフィックプロセッサ10に対する入力として計算モジュール8によって使用される。
【0061】
使用の際、グラフィックプロセッサ10は、専用メモリ9によって提供されるヒト頭部の三次元表現を取得し、ベクトル
【数32】
を三次元表現に適用し、その表現に対する二次元投影角度を生成することによって、その二次元表現を生成する。次に、グラフィックプロセッサ10は、刺激ベクトル
【数33】
および
【数34】
をそれぞれ取得し、それらを使用して、
図2のメインウィンドウ20に示されるヒト頭部の投影における一組の半規管22Lおよび22Rの個々の半規管の色を決定する。眼球運動検出器6によって提供されるベクトル
【数35】
【数36】
および
【数37】
から導き出される、被検者の半規管における著しい活性がない場合、半規管は中間色で描写される。被検者の半規管の1つ以上における前庭活性の検出に際して、上述した方法で、グラフィックプロセッサ10は、活性が検出された半規管の色を、
図2の半規管23および24によって示されるような、前庭活性がないことを示すのに使用される中間色から逸脱する色へと変化させる。このように、頭部配向および前庭活性は、回転センサ4および眼球運動検出器6を着用しているヒトの検査の間、システム1のディスプレイ3上で同時にモニタすることができる。
【0062】
例えばDix−Hallpike法を実行する間、ヒト頭部のより確実で精密な指標を提供するために、追加のインジケータが、水平基準インジケータ25、垂直基準インジケータ26、および配向インジケータ27の形態で、ディスプレイ3の主要ウィンドウ20に提供される。配向インジケータ27は、ヒト頭部21の二次元表現の前方にある仮想面F上への三次元点Pの二次元投影である。面Fはベクトル
【数38】
に垂直である。点Pは、ベクトル
【数39】
が仮想面Fと交差する点として定義される。これは、次式
【数40】
のように表現されてもよく、式中
【数41】
である。
【0063】
換言すれば、配向インジケータ27は、頭部をその3つの軸のうち1つを中心にして向きを変えたときは常に、被検者の頭部の方向にぴったりと従う。Dix−Hallpike法のセットアップ中、水平基準インジケータ25および垂直基準インジケータ26は、Dix−Hallpike法の第1の補正運動中は配向インジケータ27が垂直基準インジケータ26と一致し、Dix−Hallpike法の第2の補正運動中は配向インジケータ27が水平基準インジケータ25と一致するようにして、面F上に投影される。水平基準インジケータ25および垂直基準インジケータ26は両方とも、メインウィンドウ20に表示されたときに細長い形状を有し、この特徴によって、医師が検査されているヒトの頭部の動きを追跡することが簡単になる。システム1に、例えばいずれかの方向で5度の許容差を提供することにより、動きが適正な動きから逸脱し過ぎるごとに、例えば、配向インジケータ27の色、質感、または全体的な外観を変化させることによって、医師に簡単に警告することができ、そのような場合、医師が確実かつ簡単な方法で動きの補正を行うことが可能になる。システム1を使用して検査を行う方法について、以下により詳細に記載する。
【0064】
例えば、被検者の一組の左半規管におけるBPPVを検出するために、Dix−Hallpike法が選択された場合、この選択は、
図2のメインウィンドウ20の試験セットアップタブ33で、システム1に入力されてもよい。システム1は、ここでは、メインウィンドウ20内にある水平基準インジケータ25および垂直基準インジケータ26を示している。被検者は、検査ソファ上で背筋を伸ばして座っており、Dix−Hallpike法の第1のステップで、自身の頭部を試験されている側(即ち、この場合は左側)へ45°向けている。頭部がこのような形で向けられたままの状態で、ヒトを、頭部をさらに20°〜30°後方に傾けるような形で、やや迅速に検査ソファ上で背中を下にして仰臥させる。Dix−Hallpike法のこの部分の間、体位変換を行う医師は、特に配向インジケータ27から目を離さず、ディスプレイ3上のメインウィンドウ20を見る。被検者の頭部が動くと、配向インジケータ27がメインウィンドウ20内で動き回り、そして通常はヒトの注視方向を表す。頭部角度と予期される45°との違いが大きすぎる場合、または被検者の仰臥位への動きが遅すぎる場合、メインウィンドウ20内の配向インジケータ27は、動きの適切な実行へと医師をガイドするために、色を例えば赤色に変化させる。Dix−Hallpike法の第2のステップの間、被検者は、頭部を左に45°向けたまま座位に戻され、Dix−Hallpike法の第2のステップに対する正しい速度および角度を提供するために、医師は依然として配向インジケータ27に注目し続ける。
【0065】
Dix−Hallpike法を実行する間、システム1は、被検者の動きおよび反応を記録し表示する。頭部角度が、メインウィンドウ20内におけるヒト頭部21の二次元表現に反映されて、医師が検査中は精密なやり方で頭部配向を追跡することを可能にしている。被検者の前庭系の反応は、ヒト頭部表現21とともに表示された半規管22Lおよび22Rの二次元表現に反映されており、検査の間にリアルタイムで被検者の前庭反応を医師がモニタすることを可能にしている。水平基準インジケータ25および垂直基準インジケータ26は、運動における支援として配向インジケータ27の位置決めおよび着色を使用して、医師がDix−Hallpike法の運動を行うためのガイドを提供する。Dix−Hallpike法が行われていた場合、医師は、例えばBPPVの正確な診断を確立するために、メインウィンドウ20の「コレクション」タブ35を選択することによって記録データを閲覧し、記録データセットによって支援されるその後の分析を行ってもよい。システム1によって提供される支援のメカニズムについて、
図3aおよび3bを参照してさらに詳しく記載する。
【0066】
図3aには、Dix−Hallpike法の第1のステップを実行した直後の配向インジケータ27が示されている。上述したように、Dix−Hallpike法の第1のステップは、被検者の頭部を、頭部を真っ直ぐに保ったまま、垂直軸まわりに原点から45°、罹患が疑われる側に(この場合は左側に)向けることを伴う。頭部がこの場合は左側に向けられると、配向インジケータ27はディスプレイ3内で動き回る。
図3aでは、配向インジケータ27は、水平軸上の45°の印のところ、および垂直軸上の0°のところにある。
図3aにはまた、垂直方向のボックスVおよび水平方向のボックスHが示されている。
図3aに示されるこれらのボックスは、
図2に示される水平基準インジケータ25および垂直基準インジケータ26を表し、配向インジケータ27が水平および垂直方向で「適正に」位置決めされると考えられる範囲を示している。配向インジケータ27の中心がそれらの範囲内にある限り、配向インジケータ27には、
図2のメインウィンドウ20に示されるとき、システムによって淡色が、即ち中間色が割り当てられる。Dix−Hallpike法の第1のステップの回転許容差限界は、水平面では原点から約42°〜約47°、垂直面では原点から約−3°〜約3°である。これらの範囲は、単に例示目的で選択されており、
図3aおよび3bに示される例では任意に選択される。
【0067】
図3bには、Dix−Hallpike法の第1のステップを実行した直後の配向インジケータ27が示されている。しかしながら、この場合、医師は、被検者の頭部を左側へと十分に大きく向けておらず、原点から約41°だけ向けている。配向インジケータは、
図3bの垂直軸に沿って0°のままである。ここでは、配向インジケータ27は垂直方向のボックスVによって定義された所定の限界の外側にあるので、フィードバック条件がここでは満たされており、配向インジケータ27には、
図2のメインウィンドウ20に示されたときにシステムによってより濃い対比色が割り当てられ、したがって、Dix−Hallpike法の第1のステップにおいて、被検者の頭部が左側へと十分に大きく向けられていないという、医師に対する明確なフィードバック信号を提供する。医師が、被検者の頭部を、配向インジケータ27が垂直方向のボックスVの範囲内に来るように十分に右側へと向けると、すぐにフィードバック条件を満足しなくなり、それにより、配向インジケータ27はメインウィンドウ20内で中間色に再び戻る。例えば、被検者の頭部を約47°よりもさらに旋回させることによって、頭部の旋回が行きすぎた場合、フィードバック条件が再び満たされ、配向インジケータ27は、医師による体位変換のエラーを示す対比色へと再び変化する。
【0068】
様々な前庭の状態が、システム1を使用して診断または緩和されてもよい。BPPVを緩和する処置の一例は、罹患した半規管内にある浮遊粒子が、重力を直接的に用いて半規管から内耳の卵形嚢へと流れて戻ることを可能にすることによって作用する、Epleyリポジショニング法である。Epley法は、Dix−Hallpike法と同様に、患者による体位変換の手順を伴うが、やや関与が大きく、したがって適正に行うことがより困難である。システム1および例えばDix−Hallpike法を使用して、ヒトのBPPVの原因の範囲および位置を判断することで、医師は、Epley法の様々なステップの間のガイドに関してメインウィンドウ20を観察しながら、Epley法を行うのと同様の方法でシステム1をセットアップすることができる。医師は続いて、Epley法が患者に対して改善を提供しているか、またどの程度提供しているかを判断するために、再びDix−Hallpike法を行ってもよい。
【0069】
システム1のディスプレイ3のメインウィンドウ20によって提供される精巧なガイド手段のおかげで、医師は、被検者又は被治療者が行う運動が有効であるのに十分正確であるかを心配することなく、広範囲の異なる前庭検査を迅速かつ確実に行ってもよい。
【0070】
好ましい一実施形態では、システム1の眼球運動検出器6および回転センサ4は、例えば欧州特許出願EP14169653.4に記載されている種類の、軽量ゴーグルに組み込まれてもよい。ゴーグルのセンサからのデータ処理は、システム1のコンピュータ化されたシステム2の機能性を提供する適切なソフトウェアを実行する、標準的なパーソナルコンピュータで実行されてもよい。データの取得、記録、および格納は、パーソナルコンピュータによって提供される標準的な格納手段によって提供されてもよく、検査中に記録されたデータをその後に分析するための手段も、ソフトウェアによって提供されてもよい。
【0071】
本明細書に記載する1つ以上の実施形態によるシステムは、ヒトの前庭系における様々な病気の診断および治療を改善し、BPPVを患うヒトの診断および治療に特に有用である。
【0072】
特定の特徴について図示し記載してきたが、それらは特許請求の範囲に記載された発明を限定することを意図しないことが理解され、また、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正が行われてもよいことが、当業者には明白となるであろう。したがって、明細書および図面は、限定的ではなく例示的な意味で考慮される。特許請求の範囲に記載された発明は、すべての代替形態、変更形態、および均等形態を包含するものとする。
以下は、出願当初の特許請求の範囲に対応する記載である。
[項目1]
ヒトの頭部配向を検出して記録するためのシステムであって、
三次元空間内におけるヒトの頭部配向に関するセンサデータを提供することができる、第1のセンサデバイスと、
前記第1のセンサデバイスからの前記センサデータを格納し出力するように構成された医療データ取得システムと、
前記医療データ取得システムからの前記センサデータを処理し、前記頭部配向を表す第1の信号を出力し、グラフィックディスプレイによって表現するための画像を生成するように構成された、プロセッサと、を備え、
前記画像が、
第1の基準インジケータと、
配向インジケータであって、前記画像における前記配向インジケータの位置が前記プロセッサからの前記第1の信号に基づいて決定される、前記配向インジケータと、
第1の条件が満たされたときのフィードバックインジケータと、を備える、
システム。
[項目2]
前記第1の信号によって表される前記頭部配向が、体位変換手法による望ましい配向から所定量を越えて逸脱するとき、前記第1の条件が満たされる、項目1に記載のシステム。
[項目3]
前記体位変換手法は、Dix−Hallpike法、Epley法、またはSemant法を含む、項目2に記載のシステム。
[項目4]
前記体位変換手法は、ヒトの前庭活性を検出する前に予め決定される、項目2に記載のシステム。
[項目5]
前記第1の条件は、前記配向インジケータの前記画像における位置が、体位変換手法による第1の基準インジケータに関する望ましい位置から所定量を越えて逸脱していることである、項目1から4のいずれか一項に記載のシステム。
[項目6]
前記フィードバックインジケータは、前記配向インジケータの色、形状、またはサイズの変化を含む、項目1から5のいずれか一項に記載のシステム。
[項目7]
ヒト頭部の三次元モデルを格納するように構成されたメモリをさらに備える、項目1から6のいずれか一項に記載のシステム。
[項目8]
前記フィードバックインジケータが、(1)前記ヒト頭部の前記三次元モデルの二次元投影、(2)前記第1の基準インジケータ、または(3)第2の基準インジケータの、色、形状、もしくはサイズの変化を含む、項目7に記載のシステム。
[項目9]
前記ヒト頭部の前記三次元モデルが、一組の左半規管の第1の三次元モデルと一組の右半規管の第2の三次元モデルとを含む、項目7または8に記載のシステム。
[項目10]
前記プロセッサによって生成された前記画像が、前記ヒト頭部の前記三次元モデルの二次元投影を含み、前記二次元投影の視角が、前記頭部配向を表す前記第1の信号に基づいて決定される、項目7から9のいずれか一項に記載のシステム。
[項目11]
前記プロセッサによって生成された前記画像が第2の基準インジケータを含む、項目1から10のいずれか一項に記載のシステム。
[項目12]
前記第1の基準インジケータが、第1の局所軸まわりの第1の回転に関する第1のフィードバックを提供するように構成され、前記第2の基準インジケータが、前記第1の局所軸に垂直な第2の局所軸まわりの第2の回転に関する第2のフィードバックを提供するように構成される、項目11に記載のシステム。
[項目13]
前記ヒトの眼球運動に関するセンサデータを提供することができる第2のセンサデバイスをさらに備える、項目1から12のいずれか一項に記載のシステム。
[項目14]
前記プロセッサが、前記第2のセンサデバイスによって提供される前記眼球運動に関する前記センサデータから前庭活性を導き出すように構成される、項目13に記載のシステム。
[項目15]
前記プロセッサが、前記第2のセンサデバイスによって提供される前記眼球運動に関する前記センサデータから前庭活性を導き出すように構成される、項目13または14に記載のシステム。
[項目16]
前記プロセッサが、前記第1のセンサデバイスからの前記センサデータおよび前記第2のセンサデバイスからの前記センサデータに基づいて、フィードバック信号を生成するように構成される、項目13から15のいずれか一項に記載のシステム。
[項目17]
ヒト頭部の三次元モデルを格納するように構成されたメモリをさらに備え、
前記ヒト頭部の前記三次元モデルが、一組の左半規管の第1の三次元モデルと、一組の右半規管の第2の三次元モデルとを含み、
前記プロセッサが、(1)前記第1の三次元モデル、前記第2の三次元モデル、またはそれら両方の二次元投影を提供するように、ならびに(2)前記導き出された前庭活性に応答して、前記二次元投影の少なくとも一部の色を変化させるように構成される、項目13から16のいずれか一項に記載のシステム。
[項目18]
前記グラフィックディスプレイをさらに備える、項目1から17のいずれか一項に記載のシステム。