(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643172
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】モータのトルク検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20200130BHJP
G01L 3/14 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
G01L5/00 H
G01L3/14 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-85044(P2016-85044)
(22)【出願日】2016年4月21日
(65)【公開番号】特開2017-194366(P2017-194366A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】592079882
【氏名又は名称】シグマー技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】月野 寛
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3918367(JP,B2)
【文献】
特許第4176956(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/
G01L 3/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクを伝達するはすば歯車もしくはウォーム歯車がモータ軸に取り付けられているモータのトルク検出装置において、
内外輪を備えた軸受で回転可能かつ軸線方向に移動可能に支持されたモータ軸と、
軸受の非回転側となる外輪を支持するモータフレームでモータ軸の軸線方向にスライド可能に支持されたスライド部材と、
モータの不動部分に取り付けられたスイッチ部材とを有し、
スイッチ部材がオンオフ作動する作動部を備えるとともに、スライド部材が該作動部と係合して該スライド部材のスライド移動に伴い該作動部をオンオフ作動させる係合部を備えていて、
上記スイッチ部材がオンオフ作動時にオンオフにそれぞれ対応する信号を発する出力端子を有している、
ことを特徴とするモータのトルク検出装置。
【請求項2】
スイッチ部材は一つのスイッチ部材として形成され、スライド部材の係合部は、スイッチ部材の作動部をオフ状態とする第一係合部と、スライド部材の移動方向で該第一係合部の両側に位置して該作動部をオン状態にもたらす第二係合部とを有し、スイッチ部材の作動部がモータの通常負荷時に上記第一係合部と係合して、スイッチ部材の出力端子で上記オフ状態に対応する信号を出力し、負荷の増減によるモータ軸の所定量を超えた正負移動の際、スイッチ部材の作動部が上記第一係合部から外れて正側もしくは負側の第二係合部と係合して、スイッチ部材の出力端子で上記オン状態に対応する正もしくは負の信号を出力することとする請求項1に記載のモータのトルク検出装置。
【請求項3】
スライド部材は、上記所定量を調整可能とする調整部材を有していることとする請求項1または請求項2に記載のモータのトルク検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ軸にトルク伝達用のはすば歯車もしくはウォーム歯車が取り付けられたモータのトルク検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のトルク検出装置としては、特許文献1に開示されている装置が知られている。
【0003】
この特許文献1のトルク検出装置にあっては、モータ軸がフレームを貫通して外部に突出している該モータ軸の部分に、軸線方向で距離をおいて位置する二つのフランジを設け、これに対し、フレーム側には、モータの回転が正負回転して、モータ軸が軸線方向で一方あるいは他方に向け移動した際に、上記二つのフランジの一方あるいは他方とそれぞれ当接して作動する作動部を備えた二つのスイッチが設けられている。
【0004】
かくして、モータが正回転もしくは負回転している際に、モータのトルクが負荷に応じて通常時から変動すると、そのトルクにもとづき、モータ軸に取り付けられたはすば歯車での伝達力の軸線方向分力により、上記モータ軸が正または負方向に移動し、例えば、正回転方向トルクが所定値以上に増大するとモータ軸が正方向に移動して一方のフランジが一方のスイッチを作動させ、負回転方向トルクが所定値以上増大するとモータ軸が負方向に移動して他方のフランジが他方のスイッチを作動させる。こうすることで、モータの正負の回転方向に対応して二つのスイッチの作動により、トルクが所定値を超えて変動したことを検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5609342号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のトルク検出装置にあっては、二つのフランジは回転するモータ軸に取り付けられている関係上、モータ軸とともに回転しており、一方、スイッチはフレーム側に取り付けられているので不動位置にあり、したがって、該スイッチの作動部がフランジに当接するときには、該作動部は、該作動部に対して相対回転しているフランジとの間に摩擦を生じ、その結果、摩耗することとなる。作動部のオンオフの回数が多い場合には、摩耗も大きくなり、スイッチ自体の短命化そして信頼性に問題をもたらし好ましくない。また、作動部の作動がフランジとの動的接触により行われるので、この動的接触によっても、スイッチの作動における信頼性の問題をも生ずる。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、相対移動のもとでの接触による摩擦を生ずることなく、スイッチ部材の延命化そして信頼性の向上を図れるモータのトルク検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るモータのトルク検出装置では、トルクを伝達するはすば歯車もしくはウォーム歯車がモータ軸に取り付けられている。
【0009】
かかるモータのトルク検出装置において、本発明では、内外輪を備えた軸受で回転可能かつ軸線方向に移動可能に支持されたモータ軸と、
軸受の非回転側となる外輪を支持するモータフレームでモータ軸の軸線方向にスライド可能に支持されたスライド部材と、モータの不動部分に取り付けられたスイッチ部材とを有し、スイッチ部材がオンオフ作動する作動部を備えるとともに、スライド部材が該作動部と係合して該スライド部材のスライド移動に伴い該作動部をオンオフ作動させる係合部を備えていて、上記スイッチ部材がオンオフ作動時にオンオフにそれぞれ対応する信号を発する出力端子を有している、ことを特徴としている。
【0010】
このように構成される本発明によると、スイッチ部材もこれを作動させるスライド部材も非回転状態にあり、両者は回転方向での相対移動は伴わないので、両者間に摩擦、ひいては摩耗を生じることがない。
【0011】
本発明において、スイッチ部材は一つのスイッチ部材として形成され、スライド部材の係合部は、スイッチ部材の作動部をオフ状態とする第一係合部と、スライド部材の移動方向で該第一係合部の両側に位置して該作動部をオン状態にもたらす第二係合部とを有し、モータが正回転もしくは負回転している際に、スイッチ部材の作動部がモータの通常負荷時に上記第一係合部と係合して、スイッチ部材の出力端子で上記オフ状態に対応する信号を出力し、負荷の増大によるモータ軸の所定量以上を超えた正負移動の際、スイッチ部材の作動部が上記第一係合部から外れて正側もしくは負側の第二係合部と係合して、スイッチ部材の出力端子で上記オン状態に対応する正もしくは負の信号を出力するようにすることができる。
【0012】
このように構成することで、許容範囲でのトルクの変動のもとでは、所定量内でのモータ軸の正負移動を伴っても通常負荷としてスイッチ部材をオフ状態とし、所定量以上で初めてスイッチ部材をオン状態に作動させることとなる。また、このような構成のもとでは、モータが正負のいずれにも回転する場合であっても、スイッチ部材は一つで正負のいずれのスイッチ作動を行うことができる。
【0013】
本発明において、スライド部材は、上記所定量を調整可能とする調整部材を有していることが好ましい。
【0014】
この調整部材での調整により、負荷によるトルクが変動してもスイッチがオフ状態を維持する移動についての所定量範囲を、適宜変更設定することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明は、モータが正回転もしくは負回転している際に、トルクを伝達するはすば歯車もしくはウォーム歯車が取り付けられているモータ軸を回転可能かつ軸線方向に移動可能に軸受により支持しているモータの負荷に応じてトルクが変動する場合に、はすば歯車もしくはウォーム歯車での伝達力の軸線方向分力によりモータ軸が移動することを利用してトルクを検出する装置において、モータフレームで軸線方向に移動可能に支持されたスライド部材と、モータの不動部分に取り付けられたスイッチ部材とを有し、いずれも回転しないスライド部材とスイッチ部材とで、モータ軸の軸線方向移動によるスイッチ作動にもとづいてトルク検出を行うようにしたので、スイッチ部材の作動部には何ら摩擦、ひいては摩耗が生ずることがなく、スイッチ部材の延命化そしてスイッチ作動の信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態としての、モータのトルク検出装置を備えたモータ装置の概要構成図である。
【
図2】
図1装置におけるトルク検出装置の部分を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図2装置でスライド部材が正方向に移動したときの状態の断面図である。
【
図4】
図2装置でスライド部材が負方向に移動したときの状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1に本実施形態のトルク検出装置を備えたモータ装置を示し、図の上半部は正面図、下半部はモータ軸の軸線を含む面での断面図である。
【0019】
モータ装置(以下、「モータ」という)1は、軸線Xをもつモータ軸11に回転子12が取り付けられ、上記モータ軸11は、軸線X方向で離れた二位置でころがり軸受(以下、「軸受」という)13,14により回転自在に支持されている。右方に位置する一方の軸受13そして左方に位置する他方の軸受14は、内輪13A;14A、ボール13B;14Bそして外輪13C;14Cを有し、内輪13A;14Aはモータ軸11に取り付けられていて、該モータ軸11と一体的に回転する。一方の軸受13の外輪13Cは後述の円板状の支持体21により支持され、他方の軸受14の外輪14Cは、モータ1のモータフレーム20をなす不動の蓋体22により支持されている。一方の軸受13を支持する上記支持体21と軸受13との間に予圧用の板ばね23が配され、上記支持体21には、トルク検出装置30が取り付けられている。該トルク検出装置30は、後に詳述する。また、これに対し、他方の軸受14を支持する上記蓋体22内には、該蓋体22とモータ軸11との間にオイルシール22A、また蓋体22と軸受14との間に予圧用の板ばね24が配されている。
【0020】
上記蓋体22と支持体21はそれらの外周にて、モータフレーム20の一部をなす円筒状の胴部25により保持されており、上記支持体21と該胴部25には上記トルク検出装置30を覆う他の蓋部26が取り付けられている。また、上記モータ軸11の左端側には、図示しないはすば歯車もしくはウォーム歯車が取り付けられていて、減速装置(図示せず)に接続されている。
【0021】
次に、一方の軸受13とともにトルク検出装置30について説明する。
図2は
図1におけるトルク検出装置30及びその周辺を拡大して示す図である。
【0022】
図2において、トルク検出装置30はトルクの変動に関し許容範囲で中立状態にある場合で示されている。
【0023】
トルク検出装置30は、スライド部材31とスイッチ部材32とから成っている。
【0024】
スライド部材31は、一方の軸受13の外輪13Cを支持する支持体21によって支持されている。モータフレーム20で保持された不動の支持体21により支持されている上記軸受13の外輪13Cは、したがって非回転である。この軸受13は、上記支持体21の主部21Aから半径方向に延びる側板部21Bと外輪13Cとの間に配された断面が波形の既出の予圧用の板ばね23が配されている。上記軸受13は、回転する内輪13Aがスペーサ26を介してモータ軸11の段部11Aに嵌合取付けされている。
【0025】
上記軸受13の非回転側となる外輪13Cは、上記支持体21の側板部21Bに対応して形成された凹部21B−1に遊嵌されていて、該凹部21B−1に対して軸線X方向に移動可能状態で支持されている。上記凹部21B−1より外方に位置する支持体21の主部21Aには、上記凹部21B−1の外周縁に隣接して軸線X方向に延びる孔部21A−1が形成されており、該孔部21A−1にてスライド部材31がブッシュ28を介して軸線X方向にスライド可能に支持されている。
【0026】
上記スライド部材31は、中間部が円筒状部33Aをなし両端側にねじ部33B,33Cが形成されたロッド33と、右方に位置する一端側のねじ部33Bに螺合する二つの係合部材34(34A及び34B)と、一方の係合部材34Aを押す調整部材としてのナット部材35と、他方の係合部材34Bとブッシュ28との間に配された圧縮ばね36と、左方に位置する他端側のねじ部33Cと円筒状部33Aとの境界位置でロッド33に取り付けられたフランジ状の圧板37と、上記ねじ部33Cに螺合して該圧板37を圧するナット部材38とを有している。
【0027】
上記二つの係合部材34Aと34Bは、協働してスイッチ部材32に対する係合部34を形成する。リング状の二つの係合部材34Aと34Bは、対向方向にテーパ面34A−1,34B−1を形成し、両テーパ面34A−1,34B−1で開放されたV溝を形成する。一方の係合部材34Aはねじ部33Bとの螺合位置を調整することで、係合部材34A,34Bとの間の間隔Lを変更設定することができる。調整部材としてのナット部材35は、上記係合部材34Aの調整された位置を固定する。
【0028】
かくして、スライド部材31は、ブッシュ28と左方の係合部材34Bとの間に配された圧縮ばね36の力を受けてロッド33が右方へ圧せられた状態で圧板37が軸受13の外輪13Cの側端面に当接して位置している。かかる位置において、係合部34は中立位置にあり、該中立位置では、後述するスイッチ部材32の作動部32Aが係合部34の二つの係合部材34A,34B間の距離Lの範囲に位置して、該範囲が第一係合部を形成し、作動部32Aが上記範囲を超えたときには、係合部材34A,34Bがスイッチ部材32の作動部32Aに対して当接して第二係合部34を形成する。
【0029】
スイッチ部材32は、モータ装置1の不動部分、例えばモータフレーム20の一部に取り付けられており、不動の位置にある。該スイッチ部材32は、突出した作動部32Aを有し、該作動部32Aは押圧力を受けることで没入する。該スイッチ部材32は、作動部32Aが突出しているときにオフ信号をそして没入したときにオン信号を出力端子32Bで発する。
【0030】
スライド部材31がブッシュ28に対してスライドしながら右方(正方向)あるいは左方(負方向)に移動して、上記スイッチ部材32は、作動部32Aが係合部34の左方の係合部材34Bに乗り上げたときには作動部32Aが該係合部材34Bに圧せられて没入し(
図3参照)、正のオン信号、あるいは、右方の係合部材34Aに乗り上げたときには作動部32Aが該係合部材34Aに圧せられて没入し(
図4参照)、負のオン信号を上記出力端子32Bに生ずる。二つの係合部材34A,34Bの間、すなわち、距離Lの範囲に上記作動部32Aが位置して中立状態にあるときには、作動部32Aは突出状態にあり、スイッチ部材32は、オフ信号を出力端子32Bに生ずる。
【0031】
次に、このような構成の本実施形態について、その作動を説明する。
【0032】
モータ装置が駆動されると、モータ軸1は回転してはすば歯車もしくはウォーム歯車(図示せず)を介して駆動対象回転体を回転駆動する。モータ軸1は、正回転もしくは負回転する際に、負荷を伝達するはすば歯車もしくはウォーム歯車を介して負荷の軸線方向分力を受けて、軸線方向に移動(シフト)する。この移動の方向は、回転方向により、正負の方向となる。
【0033】
上記モータ軸1の移動量そしてその向きは、モータの負荷の変動とともに変化する。このモータ軸1の移動そしてその移動量と向きの変化に伴い、スライド部材31が移動し、その移動量と向きも変化する。モータの負荷、すなわち上記スライド部材31の移動の変化が許容範囲となる所定移動量範囲内のときは、上記スイッチ部材32の作動部32Aは、係合部34の二つ係合部材34A,34Bの間、すなわち、距離Lの範囲内にあり、該作動部32Aは突出状態にあり上記スイッチ部材32がオフ信号を発している。したがって、モータ装置1は、その運転状態をそのまま維持する。
【0034】
モータ軸11が一方の回転方向(正回転方向)で回転している際に、モータの負荷が増大して、スライド部材31は
図2での右方(正方向)に移動する。その場合、負荷が許容範囲を超えて増大するとモータ軸11ひいてはスライド部材31が上記所定移動量範囲を超えて右方へ移動して、
図3に見られるごとく、スイッチ部材32の作動部32Aが係合部34の左方の係合部材34Bに乗り上げて没入し、スライド部材32が正のオン信号を出力端子32Bで発する。図示しない制御装置は、この出力信号を受けて負荷を減少する方向に駆動対象回転体を制御する。
【0035】
また、モータ軸11が他方の回転方向(負回転方向)で回転していて、負荷が許容範囲を超えて増大した場合、
図4に見られるごとく、スライド部材31は左方に移動して所定移動量範囲を外れるように移動する。そのとき、スイッチ部材32の作動部32Aは係合部34の右方の係合部材34Aに乗り上げて没入し、スライド部材32が負のオン信号を出力端子32Bに発する。制御装置は、この出力信号を受けて負荷を減少する方向に駆動対象回転体を制御する。
【0036】
スライド部材31を中立状態とする該スライド部材31の移動量に関する所定範囲は、すなわち二つの係合部材34A,34Bの距離Lの範囲は調整部材としてのナット35を緩めて、該係合部材34Aの位置を変更し、該ナット35でその位置を固定することで、変更設定することができる。
【符号の説明】
【0037】
11 モータ軸
13 軸受
13C 外輪
30 トルク検出装置
31 スライド部材
32 スイッチ部材
32A 作動部
32B 出力端子
34 係合部
34A,34B 第二係合部
35 調整部材(ナット)
L 第一係合部(距離Lの範囲)