(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
図において、高周波加熱調理器の本体1は、加熱室17に加熱する食品(被加熱物)を入れ、高周波エネルギーやヒータの熱を使用して食品を加熱調理する。
【0012】
ドア2は、加熱室17の内部に食品を出し入れするために開閉するもので、ドア2を閉めることで加熱室17を密閉状態にし、食品を加熱する時に使用する高周波の漏洩を防止し、ヒータの熱を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。
【0013】
取っ手7は、ドア2に取り付けられ、ドア2の開閉を容易にするもので、手で握りやすい形状になっている。
【0014】
ガラス窓4は、調理中の食品の状態が確認できるようにドア2に取り付けられ、ヒータ等の発熱による高温に耐えるガラスを使用している。
【0015】
入力手段5は、ドア2の前面下側の操作パネル3に設けた表示部5aと操作部5bからなり、操作部5bは、高周波加熱やヒータ加熱等の加熱手段や加熱の強さや加熱する時間等の調理条件を入力するためのもので、表示部5aは、操作部5bから入力された内容や調理の進行状態を表示するものである。
【0016】
排気口8は、部品を冷却した後の冷却風や食品を加熱した時に発生した蒸気を排出する部分である。
【0017】
機械室18は、加熱室17下部に設けられた空間で、空間内には、食品を加熱するためのマグネトロン31、マグネトロン31に接続された導波管21、マグネトロン31の電源を供給するマグネトロン駆動用電源30が搭載されたインバータ基板480、その他後述する各種部品、これらの各種部品を冷却する冷却手段62等が取り付けられている。
【0018】
加熱室17の底面の略中央部は凹状に窪んでおり、その中に回転アンテナ19が設置され、マグネトロン31の発振により放射される高周波エネルギーは、導波管21、回転アンテナ駆動手段23の出力軸23aが貫通する結合穴22を通して回転アンテナ19の下面に流入し、回転アンテナ19で拡散されて加熱室17内に放射される。回転アンテナ19は、回転アンテナ駆動手段23の出力軸23aに連結されている。
【0019】
加熱室17の後部には熱風ユニット11が取り付けられ、熱風ユニット11内には加熱室17内の空気を効率良く循環させる熱風ファン15と、熱風ヒータ14が取り付けられ、加熱室奥壁面には熱風の通り道となる孔が設けられている。
【0020】
熱風ファン15は、熱風ユニット11の外側に取り付けられた熱風モータ13の駆動により回転し、加熱室奥壁面に設けた孔を通して加熱室17との間で空気を循環し、熱風ヒータ14で循環する空気を加熱する。
【0021】
加熱室17の天面の裏側には、ヒータよりなるグリル加熱手段12が取り付けられている。グリル加熱手段12は、マイカ板にヒータ線を巻き付けて平面状に形成し、加熱室17の天面裏側に押し付けて固定し、加熱室17の天面を加熱して加熱室17内の食品を輻射熱によって焼くものである。
【0022】
温度検出手段16は、各ヒータで加熱される加熱室17の温度を検出するもので、検知手段としてサーミスター等が使用される。
【0023】
テーブルプレート20は、食品を載置するためのもので、ヒータ加熱と高周波加熱の両方に使用できるように耐熱性を有し、かつ、高周波の透過性が良く、衛生面でも問題がない磁器等の材料で成形されている。
【0024】
次に、
図4のブロック図について説明する。
41は交流電源で、本体1の制御部品や各電気部品を動作させるものである。60はレンジ加熱手段で、食品を高周波エネルギーで加熱するマグネトロン31と、マグネトロン駆動用電源30とを含む構成である。主制御手段6は、入力手段5より入力された加熱の強さをパワー信号6aに変換して、マグネトロン駆動用電源30の制御回路50に送る。
【0025】
61はオーブン加熱手段で、前述した熱風ユニット11と熱風ユニット11の外側に取り付けられた熱風モータ13とを含む。主制御手段6は、加熱室17の温度が入力手段5から入力された温度になるように、加熱室17の温度を温度検出手段16により検出し、熱風ヒータ14の電力を調整する。
【0026】
62は冷却手段で、加熱動作時に自己発熱部品や発熱部品からの熱伝導によって熱的に不具合を発生する可能性のある部品を冷却するもので、レンジ加熱手段60が動作している時は、特にマグネトロン31やマグネトロン駆動用電源30を冷却するものである。
【0027】
6は主制御手段で、入力手段5から入力された内容に従い、食品を加熱調理するように各加熱手段を動作させ、温度検出手段16の検知温度に応じてオーブン加熱手段61やグリル加熱手段12のヒータの電力を調整するものである。
【0028】
次に、マグネトロン31とマグネトロン駆動用電源30の動作について説明する。
図3は、マグネトロン駆動用電源30を説明する制御ブロック図、
図5は、制御ブロック図の主要部の電圧波形図、
図6はエリア毎のパルスの説明図である。
【0029】
まず、マグネトロン駆動用電源30について説明する。
41は交流電源で、商用電源から供給される交流の電源である。42は整流回路で、交流電源41から供給された交流の電源を直流化するものである。
【0030】
43は電源平滑回路で、整流回路42で整流された電源を平滑するものである。
46は昇圧トランスで、一時側コイルに印加された電圧を昇圧して二次側コイルに高い電圧を誘起させるものである。
44はスイッチング素子で、昇圧トランス46の一次側コイルに流す電流を高周波(20K〜40KHz)でON、OFFするものである。
45は共振コンデンサである。共振コンデンサ45と昇圧トランス46の一次側コイルのインダクタンスによって、スイッチング素子44がONからOFFした後も、昇圧トランス46の一次側コイルに電流が交流的に流れ、昇圧トランス46の二次側コイルに電圧を誘起する。そして、スイッチング素子44のON、OFFする時間の比率を調整することで、二次側に発生する電圧の高さを調節する。
【0031】
以上説明した電源平滑回路43、スイッチング素子44、共振コンデンサ45、昇圧トランス46によって、インバータ回路48を構成する。
【0032】
47は高圧回路で、昇圧トランス46の二次側コイルに誘起した高周波電圧を倍電圧整流するものである。
【0033】
31はマグネトロンである。電気的構成としては、カソード31a(ヒータ兼用)とアノード31bからなり、ヒータ31aに電流を流しヒータを発熱させ、ヒータが温まり、カソード31aとアノード31b間の電圧が発振電圧以上(約4kV)に達するとマグネトロン31は発振を開始し、高周波エネルギーを放射して加熱室17の食品を加熱するものである。
【0034】
次に、制御回路50と制御手段53について説明する。
図3に示すように、制御回路50は、電源電圧検出回路58、電源同期タイミング検出回路51、入力電流検出回路52、駆動回路57、ONタイミング検出回路55a、制御手段53を含み構成される。
【0035】
電源同期タイミング検出回路51は、交流電源41の電圧Z(
図5(a)では商用電源の1/2周期を示す)が周期的に変化し、電圧Zがゼロボルトになるタイミングを検出するためのものである。
【0036】
入力電流検出回路52は、マグネトロン31を動作させている時に、電源平滑回路43に流れる電流を検出するものである。電流の測定は、抵抗52aの両端間に発生する電圧を測定し、抵抗52aの抵抗値から算出する。抵抗52aは、抵抗自身で余分な電力を消費しないように、小さな抵抗値の抵抗器を使用している。そのため、抵抗52aの両端に発生する電圧も微小な値となり、その電圧を増幅回路で増幅して制御手段53に検出値として出力している。
【0037】
そして、マグネトロン31が発振している時の高周波出力と、入力電流検出回路52の抵抗52aの両端に発生する電圧と、の相関関係を事前に確認しておく。制御手段53は、入力電流検出回路52の抵抗52aの両端に発生する電圧によって、マグネトロン31の発振している出力が、主制御手段6からの要求に合致しているかどうかを認識できるようになっている。
【0038】
ONタイミング検出回路55aは、インバータ回路48の共振コンデンサ45と、昇圧トランス46の一次側コイルと、で成る共振回路に流れている電流を検出する。そして、電流の流れが止まった時を検出して、I/O55(詳細は後述)にスイッチング素子44のONするタイミングを指示する。
【0039】
駆動回路57は、I/O55より出力したONデータ信号を基にスイッチング素子44を駆動するものである。
【0040】
次に、制御手段53は、DAコンバータ53d、計時手段53a、CPU54、I/O55、記憶手段53b、DMA56、シリアル通信手段53cを有する。
【0041】
制御手段53は、主制御手段6から送られてくるパワー信号6a(詳細は後述)に基づいて動作を開始する。
【0042】
パワー信号6aは、操作部5bから入力された加熱の強さを主制御手段6によって制御回路50に伝え、マグネトロン31の高周波出力を設定するための信号である。パワー信号6aは、制御回路50のシリアル通信手段53c(後述)に入力される。
【0043】
CPU54は、CPU54に接続される各種の手段等を制御する。
【0044】
計時手段53aは、電源同期タイミング検出回路51から送られてくるパルス信号Q(
図5(b))のパルス幅U(
図5(b))を計時して、パルス幅の中点R(
図5(b))を算出し、パルスの間隔の時間S(
図5(b))を測定して、接続されている電源41の周波数を判定する。
【0045】
但し、
図3では示していないが、ゼロクロス検出手段を備えている場合は、制御手段53は電圧Zがゼロになったタイミングを検知できる。そこで、電源同期タイミング検出回路51に代わってゼロクロス検出手段を使用することも可能である。
【0046】
記憶手段53bは、マグネトロン31が最大の高周波出力で発振できる電圧を、マグネトロン駆動用電源30から出力するための駆動データKを記憶する。
【0047】
駆動データKは、商用電源の1/2周期の間、スイッチング素子44を駆動する数を蓄積する。また、接続する交流電源41の周波数によってスイッチング素子44の駆動は異なるので、日本国内で使用する場合は50Hz用と60Hz用の2種類設けている。なお、駆動データKの詳細は後述する。
【0048】
シリアル通信手段53cは、CPU54に接続して主制御手段6からのパワー信号6aを受け取る。
【0049】
DMA(ダイレクトメモリアクセス)56は、CPU54の転送開始の指示後、CPU54の動作速度に影響されることなく、記憶手段53bの駆動データKをI/O55へと転送する。
【0050】
I/O55は、DMA56から送られてくる駆動データKを、ONデータ信号として駆動回路57に出力する。CPU54の指示により、ONタイミング検出回路55aによるバルス信号Qを起点に、駆動データKのスタートデータを同期する。各駆動データKの駆動回路57への出力のタイミングは、ONタイミング検出回路55aからの入力と同期するものである。
【0051】
次に、駆動データKについて詳細に説明する。
記憶手段53bに記憶する駆動データKは、マグネトロン31が最大の高周波出力で発振できる電圧を、マグネトロン駆動用電源30で出力するためのデータである。さらに、マグネトロン31を発振させた時に、最大限に力率と効率を向上できる電源(
図5(e))を生成するためのデータとしている。
【0052】
力率と効率を向上するために、交流電源41の電圧Zが低い正弦波の裾にあたる
図5(a)の左右のA部側で、マグネトロン31の通電率を高める。マグネトロン31の通電率を高めるためには、スイッチング素子44のON時間を長くして、昇圧トランス46の二次側コイルの誘導電圧を早く上昇(維持)させ、マグネトロン31のヒータ(カソード)31aの温度を早く上昇させ、マグネトロン31の発信開始を早くするデータとしている。
【0053】
また、電源効率を向上させるために、交流電源41の電圧が低い正弦波の裾野部から急激に電圧が上昇した(
図5(a)のB部)後、電圧変化がなだらかになる頂点付近(
図5(a)のC部)では、必要以上の電圧がマグネトロン31に加わらないように、頂点部分の手前(電圧が急激に上昇しているB部の後半)からスイッチング素子44のON時間を徐々に短くし始めて、マグネトロン31に印加する電圧の上昇率を押えている。
【0054】
そして、C部では必要以上の電圧(マグネトロン31に印加する電圧がマグネトロンの発振電圧(約4kV)を越すと急激に電流が流れる)を印加しないようにしている。
【0055】
具体的な駆動データKは、
図5(c)に示すように交流電源41の半周期(電圧Z)を細かく分けたエリア1からエリアNごとに駆動データKを設定している。本実施例では、細分したエリアとして、交流電源41の半周期(電圧Z)の時間を等間隔で200等分している。駆動データKは、各エリアに対応してスイッチング素子44をONするON時間のデータが一つ割り当てられており、計200個備えている。これは、前述したスイッチング素子44を20KHzでONする時のON回数と同じ数である。
【0056】
また、駆動データKのONデータとなるON時間について
図5(c)と
図5(d)を用いて説明する。
図5(d)は、前述した各エリアに対応したスイッチング素子44のON時間を示す。交流電源41の半周期を示す電圧Zの裾側のH点、つまり
図5(d)のデータGのON時間が最大となり、電圧Zのピーク点DのデータEのON時間が最小である。その間のデータは、図に示すようになだらかな変化を示すON時間が設定されている。OFF時間は、スイッチング素子44がONからOFF後の次のONタイミングを指示するONタイミング検出回路55aの出力によって決まり、I/O55から出力されるONデータ信号の各OFF時間は略同じ時間となる。
【0057】
次に、前述したエリアについて
図6を用いて説明する。図に示すように、同一エリア内にI/O55から出力されるONデータ信号は、同じONデータ信号が出力されるように設定されている(エリア1では同じONデータ信号Gが複数回出力されている)。また、一度出力されたONデータ信号は、経過時間に伴いエリアが次のエリアに移行した場合でもONデータ信号を継続し、次のONタイミング検出回路55aからの入力を待ち、次のONデータ信号を出力する(エリア1からエリア2に移行する際、ONデータ信号Gが既に出力されているため、エリア2に移行してもONデータ信号Gが継続し、次の出力でONデータ信号Jが出力されている)。
【0058】
図では説明のため、同一エリアに複数個のONデータ信号を記載しているが、本実施例では、理想の交流電源41を使用した時の電圧Zの裾側のH点でONデータ信号が一回出力される設定である。ただし、電圧Zのピーク点DのデータEでは、ONデータ信号のON時間が短くなるので、同一エリアで連続して同じデータEのONデータ信号が続けて出力される。同じONデータ信号は、次のデータに移行しないで割り込んで同じONデータ信号を生成して出力するものである。
【0059】
次に、マグネトロン駆動用電源30の動作について説明する。マグネトロン31の発信開始は、主制御手段6より、加熱を開始するために入力された高周波出力に対応するパワー信号6aが制御手段53に送られることで開始する。
【0060】
制御手段53は、判定した周波数に対応したON時間の比率のデータである駆動データKを、記憶手段53bより呼び出す。DMA56からI/O55へと出力してON時間データ信号(
図5(d))を生成する。
【0061】
制御手段53は、パワー信号6aを受けて、記憶手段53bに記憶してある駆動データKのうち、記憶手段53bに記憶する電源の周波数に対応するON時間の比率である駆動データKを呼び出して、ON時間データ信号(
図5(d))を生成し出力する。なお、製品が電源に接続された時に、交流電源41の周波数の検出は終了している。
【0062】
また、主制御手段6から送られてくるパワー信号6aに対応したマグネトロン31の発振する高周波出力になるように、入力電流検出回路52からの検出値に応じて制御手段53から出力するON時間データ信号(
図5(d))のパルスのON時間を次のように変更する。
【0063】
すなわち、変更は、要求のある高周波出力に対応して入力電流検出回路52の検出する電流値が流れるように、入力電流検出回路52の検出した電流値が小さい場合、マグネトロン31に供給する電圧を高くするようにON時間データ信号(
図5(d))のON時間の比率を大きくして、マグネトロン31が発振する高周波出力を大きくするように動作する。
【0064】
また、検出した電流が大きい場合は、マグネトロン31に供給する電圧を小さくするようにON時間データ信号(
図5(d))のON時間の比率を小さくして、マグネトロン31が発振する高周波出力を小さくするように動作するものである。
【0065】
結果、
図5(c)に示すマグネトロン31に印加される電圧Zの裾側では、
図5(e)に示すように、早く立ち上がり、不要なピーク点のない平らな電圧が印加される。
【0066】
次に、動作について説明する。被調理物を温めるのに、その被調理物(図示無し)を加熱室17のテーブルプレート20に載置しドア2を閉める。
【0067】
ドア2を閉めた後、ドア2に設けられた操作パネル3の表示部5aに示されたメニューを参照して、操作部5bの操作により加熱強さである高周波出力と加熱時間を設定する。なお、自動加熱の温めも選択可能である。そして、操作部5bの加熱開始用スタートボタン(図示せず)を押して加熱を開始する。
【0068】
次に、高周波出力を700W、加熱時間を1分と入力された場合について説明する。主制御手段6は、加熱を開始するために、入力された高周波出力が700Wであることを、パワー信号6aをインバータ基板480内の制御手段53に送って知らせる。
【0069】
同時に主制御手段6は、回転アンテナ駆動手段23に信号を送り、回転アンテナ19を回転させ、冷却手段62へも信号を送り冷却風の送風を開始する。
【0070】
制御手段53は、パワー信号6aを受けて、記憶手段53bに記憶してある駆動データKのうち、電源の周波数に対応した方の駆動データKを呼び出してON時間データ信号をI/O55へと呼び出し、I/O55はONタイミング検出回路55aからの出力を待ってエリアの状態を確認してONデータ信号を逐次出力する。なお、電源周波数の検出は製品が電源に接続された時に、接続した交流電源41の周波数の検出を終了している。
【0071】
加熱開始直後は、マグネトロン31のヒータ31aは温まっていないので発振もなく電流もさほど流れない。しかし、加熱開始時はマグネトロン31に最大出力となる高い電圧が印加されるように、記憶手段53bに記憶してある駆動データKのON時間を生成して出力するので、早期にヒータ31aの温度が上昇し始め(電圧の印加した約1秒後)次第に電流が流れ始める。
【0072】
記憶手段53bの駆動データKは複数パターンあり、起動時は専用パターンで、その後、必要とする高周波出力700Wが得られるパターンの駆動データKに切り替わる。さらに、高周波出力700Wが得られるように、入力電流検出回路52で検出する電流を監視しながらON時間データ信号(
図5(d))のON時間を変更する。ただし、目標の電流値に対して、差が大きいときは変更幅を多く、差が小さくなると変更幅も小さくしている。さらに、目標値に対して電流を増加させるときと減少させるときとでは、減少させるときの方が、マグネトロン31が発振する高周波出力の変化が鈍いので、減少させるときは変更幅を大きくした方が良い。
【0073】
被調理物の加熱は前記動作を繰り返すことで安定して加熱が行われ、所定の加熱時間である1分が経過すると、主制御手段6より制御手段53に停止命令がでて加熱を終了する。
【0074】
次に、駆動データKとエリアとONデータ信号の関係について更に詳細に説明する。
【0075】
記憶される駆動データKの数は、接続される交流電源41の半周期にスイッチング素子44がON/OFFするのに必要な最小のONの数である。
【0076】
駆動データKは、交流電源41が理想の正弦波として半周期間にスイッチング素子44が電源のゼロボルト時から順番にONするON時間のデータが記憶されている。
【0077】
I/O55からONデータ信号の出力されるタイミングは、ONタイミング検出回路55aから出力されるものである。その出力されるタイミングは、インバータ回路48の共振コンデンサ45と昇圧トランス46の一次側コイルの仕様で決定するもので、マグネトロン駆動用電源30が動作時は同じタイミング(略同じOFF時間)となる。
【0078】
また、I/O55から出力されるONデータ信号は、CPU54で管理される交流電源41の半周期の時間を等分に分割した各エリアにおいて、同一エリアで複数回ONデータ信号を出力する場合、次の駆動データKの前に割り込んで、前記ONデータ信号と同じON時間となるONデータ信号を出力する。そのため、各エリアに対応して設けている駆動データKによって、交流電源41の電圧Zに対応したONデータ信号がスイッチング素子44に出力される。
【0079】
このエリアの原理を用いた理由について説明する。はじめに、交流電源41が常に理想の正弦波で電圧変動がない場合と、マグネトロンの入出力に関する個々のバラツキがない場合は、前述のエリアの原理を採用しなくても問題の発生がないと考える。しかし、例えば、交流電源41の電源電圧が高く変動して、入力電流検出回路52の検出した電流値が大きくなり、マグネトロン31に供給する電圧を低くするため駆動データKのON時間を短くした場合、OFF時間は一定なので、備えている半周期分の駆動データKを使い切ってしまい、最後はスイッチング素子44がONできないことがある。
【0080】
また、電源電圧が低い場合は、駆動データKのON時間を長くするため、駆動データKが余る。さらに、駆動データKのON時間の変化により、交流電源41の正弦波で変化する電圧Zと、マグネトロン31を駆動するスイッチング素子44のON/OFFのタイミングが合わなくなり、マグネトロンが正常に発信しないことがある。なお、マグネトロンの入出力に関する個々のバラツキも現実的には存在し、前述した入力電流検出回路52の検出した電流値に応じて、駆動データKのON時間が調整されることで前記現象が発生する。
【0081】
しかし、本実施例では、前述のエリアの考え(交流電源の半周期の時間軸を複数に分けたエリアのうち、同一のエリアでONデータ信号を複数回出力する場合、該複数回のONデータ信号は同一のON時間で出力する)を取り入れている。そのため、駆動データKのON時間が変化した場合、ON時間が変化した同一エリア、もしくは次のエリアにまたがってONデータ信号数が調整される。このことにより、交流電源41の正弦波とマグネトロン31を駆動するスイッチング素子44のON/OFFのタイミングが常に同期するので、マグネトロンの発信を正常化できる。
【0082】
スイッチング素子44がON/OFFするのに必要な最小のONと同じ数の駆動データKを備えて、スイッチング素子44の一回毎のON時間をデータとして備え、スイッチング素子44を駆動し、また駆動データKのON時間が変化した場合でも、ON時間が変化した同一エリア、もしくは次のエリアにまたがってONデータ信号数が調整される。このことで、交流電源41の正弦波とマグネトロン31を駆動するスイッチング素子44のON/OFFのタイミングが常に同期するため、マグネトロン駆動用電源30の出力側の誤差を極力小さくすることができる。
【0083】
また、高周波加熱調理器はマグネトロンの発信時の熱やスイッチング素子44や昇圧トランス46の発熱に伴い、マグネトロン駆動用電源30の環境温度が上昇するため、入力電流検出回路52の温度上昇を補正することで更に精度を上げることが可能である。
【0084】
以上説明したように、本実施例によれば、マグネトロンと、交流電源に接続されて電源を直流化する整流回路と、該整流回路に接続され前記マグネトロンを駆動するインバータ回路と、該インバータ回路のスイッチング素子を駆動する駆動回路と、前記インバータ回路に流れる電流を検出する入力電流検出回路と、前記インバータ回路のスイッチング素子のONタイミングを出力するONタイミング検出回路と、前記入力電流検出回路の検出結果に基づいて前記インバータ回路のスイッチング素子を制御する制御手段と、を備え、該制御手段には、前記交流電源の半周期の時間軸を複数に分けたエリアと、該エリアに対応して前記スイッチング素子をONするのに必要なON時間の駆動データを有する。
【0085】
これにより、製品の組み立て後、特定の出力でマグネトロン31を発信させた場合、制御手段で読み込まれる入力電流検出回路52の検出値を変更することで、複数行っていた調整を一度の調整で完了できるので、調整時間を短縮することができる。
【0086】
また、前記制御手段は、前記交流電源の半周期の時間軸を複数に分けたエリアのうち、同一のエリアで前記ONデータ信号を複数回出力する場合、該複数回のONデータ信号は同一のON時間で出力する。これにより、駆動データのON時間が変化した場合、ON時間が変化した同一エリア、もしくは次のエリアにまたがってONデータ信号数が調整されるので、交流電源の正弦波とマグネトロンを駆動するスイッチング素子のON/OFFのタイミングが常に同期して、マグネトロンの発信を正常化できる。
【0087】
またスイッチング素子44の制御は、CPU54と記憶手段53bとI/O55とDMA56により、アナログ回路を使用する必要がなくなり、部品数の低減、実装するプリント基板の小型化が図れる。また、コストを低減できる。