【実施例1】
【0019】
図1〜
図5は本発明の実施例1を示す。同図に示すように、ロック解除機構1は、自動車などの車両2の自動スライドドア3のドア本体4の外側に配置されるベース部5と、このベース部5に回動可能に設けられた操作部6とを備える。
【0020】
前記ベース部5は、車両2の前後方向に延びるように長く形成され、その中央部11が上下方向に幅広に形成され、この中央部11より幅狭な一側部たる前側部12と他側部たる後側部13とを一体に有し、この例では、前側部12より後側部13が上下方向に幅広に形成されている。また、ベース部5と操作部6とは合成樹脂などからなる。尚、車両2の前側が一側、後側が他側であり、以下、右側のスライドドア3に設けたロック解除機構1を説明し、左側のスライドドア3は図面とは前後が逆になるが、前側部12は車両2の前側に配置される。
【0021】
また、前記ベース部5には、開口部14が貫通形成され、この開口部14は、前記中央部11に形成された中央開口部15と、前記前側部12の前後方向後側に形成された前側開口部16とを備え、それら中央開口部15と前側開口部16とは連通し、この前側開口部16の内側が収容部17であり、この収容部17に後述する連結部が収納される。前記中央開口部15は、前記ベース部5と略相似形であって、前後方向に僅かに長い長円形状をなし、また、前記前側開口部16は、前後方向に長い長孔形状をなし、前記中央開口部15に比べて上下方向に幅狭に形成されている。
【0022】
前記中央部11,前側部12及び後側部13の周面11S,12S,13Sの断面形状は、車両外側から車両内側に向かって間隔が広がるように斜めに形成されている。また、前記中央部11の上,下の周面11S,11Sは、正面視で上,下に凸状の湾曲形状に形成され、該中央部11は前後方向に長い長孔形状にされている。
【0023】
前記操作部6は、前記中央開口部15及び前記前側開口部16の形状に対応した略平板状の操作部本体21を備え、この操作部本体21は、前記中央開口部15に対応した幅広部21Aと、前記前側開口部16に対応した幅狭部21Bとを一体に備える。
【0024】
前記操作部本体21の一側である前側で、前記幅広部21Aの上下に、回動中心たる軸部22,22を上下に突設し、これら軸部22,22を軸支する上下の軸受部23,23が前記ベース部5に設けられている。
【0025】
そして、前記軸部22,22を軸受部23,23に回動可能に連結することにより、ベース部5に操作部6が回動可能に枢支される。このようにベース部5に操作部6を取り付けた状態で、操作部6の軸部22位置の後側が押圧部24であり、操作部6の軸部22位置の前側が連結部25である。また、取り付け状態で、前記軸部22,22はベース部5により外部から隠れる。そして、前記連結部25より上下方向に幅広な前記押圧部24が幅広部であり、前記連結部25が幅狭部である。
【0026】
前記連結部25は、その内面側にリンク機構を構成するリンク片31を備え、このリンク片31は内外方向に長く形成され、前記収容部17に部分的に収容される。また、前記リンク片31は、車両2の内外方向に長い長孔32を備え、その外端部31Gが前記連結部25の内面側に上下方向の連結ピン33により回動可能に連結されている。さらに、前記連結ピン33は前記連結部25の引出し方向と垂直方向に延びるものであって、この例では、連結ピン33は、前記軸部22と同様に上下方向で連結部25の引出し方向と交差する方向に設けられている。
【0027】
前記リンク片31の車両2の前後の両側面部31A,31Aは、平行に形成されている。これに対して、前記前側部12の内面には、前記リンク片31を前後から挟む一側壁部たる前壁部34と他側壁部たる後壁部35が平行に突設され、これら前壁部34と後壁部35の内面間の間隔は、前記リンク片31の両側面部31A,31Aの間隔より大きく形成されている。尚、前壁部34及び後壁部35は、前記リンク片31の案内部である。そして、軸部22から操作部6の前端24Kまでの第1の長さは、軸部22から連結ピン33までの第2の長さより長い。
【0028】
前記リンク片31には、ドア本体4側に回動自在に設けたドア側リンク片(図示せず)が、前記長孔32に遊挿したピン(図示せず)により、回動可能に連結され、このドア側リンク片をロッド(図示せず)によりロック解除装置36に連結している。また、このロック解除装置36は、自動スライドドア3の開閉駆動装置37に電気的に接続され、スライドドア3のロックを解除するものである。
【0029】
そして、ロック解除機構1によりスライドドア3のロックを解除すると、ロック解除装置36はロック解除信号を開閉駆動装置37に出力し、開閉駆動装置37がスライドドア3を自動で開閉する。尚、ロック解除機構1がロック解除信号を出力してもよい。
【0030】
前記車両2には、閉状態でスライドドア3をロックするフロントロック機構と、開状態でスライドドア3をロックするロアロック機構と、が設けられており、開閉駆動装置37は、スライドドア3が閉状態の場合、ロック解除機構1によりロックが解除されると、スライドドア3を自動で開き、スライドドア3が開状態の場合、ロック解除機構1によりロックが解除されると、スライドドア3を自動で閉めるように駆動する。
【0031】
前記スライドドア3は、車両2のボディの所定部位に設けられたガイドレール(図示せず)に沿って前後へスライド移動可能に支持されており、前記フロントロック機構と前記ロアロック機構としては、前記ガイドレール側に設けられたストライカとスライドドア3側に回動自在に支持されたフックなどから構成されたものが用いられる。
【0032】
また、前記ドア本体4には貫通孔(図示せず)が設けられ、この貫通孔に前記前,後壁部34,35及びリンク片31が挿通される。
【0033】
図1及び
図2に示すように、前側部12の内面にはドア本体4に固定する固定部41が突設されている。また、前記操作部6は、操作する前の初期位置(
図1)で前記連結部25が収容部17に収容されると共に、前記連結部25の外面が前記前側部12の外面に連続するように略面一になる。尚、この面一の状態で、前壁部34の外端側段部34Sと後壁部35の外縁35Sに、前記連結部25の内面側が当接することにより、ベース部5に対して操作部6が位置決めされ、このように外端側段部34S及び外縁35Sが操作部6の初期位置における位置決め部である。さらに、前記後側部13の外面の上下幅方向中央には、凹部42が形成され、前記初期位置で、押圧部24の前端24Kは、前記凹部42より僅かに外側に位置し、凹部42を囲む周囲の前側部外面43と略面一となる。
【0034】
また、上述したように前記第1の長さが前記第2の長さより長く、梃子の原理で連結部25を操作する際、押圧部24側のストロークを確保するため、後側部13の中央開口部15側の厚さを、前側部12に比べて、厚く形成している。さらに、押圧部24の外面には、滑り止め用凹部44が複数設けられている。
【0035】
次に、前記ロック解除機構1の使用方法について説明する。スライドドア3が閉まった状態で、ロックを解除して開く場合、使用者は押圧部24を押す。このように押す操作で操作部6が動くので、両手に荷物を持った状態でも、押圧部24を押すことができ、場合によっては、肘などを使って押すことも可能となる。
【0036】
いずれかの方法で押圧部24を押すと、軸部22を中心として操作部6が回動し、外側に回動した連結部25によりリンク片31が外向きに引っ張られる。この場合、第2の長さは比較的短いが、連結部25とリンク片31が連結ピン33により回動可能に連結されているため、リンク片31をスムーズに作動することができる。このリンク片31の作動により、上述したようにロック解除装置36がスライドドア3のロックを解除する。この場合、押圧部24を押すことにより得られる力が機械的に変換されてロックが解除される。尚、押圧部24を押して回動した操作部6は、弾性付勢手段などの復帰手段(図示せず)により、初期位置に復帰する。
【0037】
スライドドア3のロックが解除されると、開閉駆動装置37によりスライドドア3が駆動され、スライドドア3が開く。尚、スライドドア3が全開位置に来ると、ロック機構により開状態のスライドドア3がロックされる。
【0038】
一方、前記開状態のスライドドア3に対して、押圧部24を押すと、スライドドア3のロックが解除され、開閉駆動装置37によりスライドドア3が駆動され、スライドドア3が閉まり、閉まった位置でロック機構によりスライドドア3がロックされる。
【0039】
このように本実施例では、請求項1
〜4に対応して、車両用自動スライドドア3のロック機構の解除を操作部6への操作に連動して行うためのロック解除機構1であって、自動スライドドア3のドア本体4の外側に配置されたベース部5と、ベース部5に回動可能に設けられた操作部6とを有し、操作部6は、押圧部24と、スライドドア3のロック解除装置36に操作力を与えるための連結部25とを備え、押圧部24と連結部25との間には回動中心たる軸部22が設けられ、押圧部24が押圧操作されることにより、操作部6が軸部22を中心に回動して連結部25がロック解除装置36に操作力を与えるように構成したから、スライドドア3のロック解除を、押すだけの操作で行うことができる。
【0040】
このように本実施例では、請求項
5に対応して、操作部6は、車両2の前後方向に延びると共に、幅広部たる押圧部24と幅狭部たる連結部25が形成されているから、押す操作によるロック解除を安定して行うことができる。
【0041】
このように本実施例では、請求項
1に対応して、連結部25には、ベース部5に形成された収容部17に配置されると共に、ロック解除装置36に操作力を伝達するリンク機構たるリンク片31が連結され、押圧部24が押圧操作された際に
リンク片31が外側に移動し、連結部25とリンク片31とは
リンク片31の前記移動方向と交差方向に延びる軸たる連結ピン33を中心に折れ曲げ可能であるから、軸部22からリンク片31の距離(第2の長さ)が短くてもロック解除が可能となる。
【0042】
以下、実施例上の効果として、軸部22から操作部6の前端24Kまでの第1の長さが、軸部22から連結ピン33までの第2の長さより長いから、小さい力で押圧部24を押して梃子の原理により操作力を得ることができる。また、押圧部24は連結部25に比べて上下寸法が大きく、好ましくは押圧部24の上下寸法は連結部25の上下寸法の2倍以上であるから、押圧操作する際、視覚的にも分かり易く、操作もし易い。また、後側部13の外面の上下幅方向中央には、中央開口部15に連通する凹部42を形成したから、押圧部24の前端24Kと後側部13の外面との間に物が挟まり難くなり、安定した操作を行うことができる。さらに、押圧部24の外面に設けた滑り止め用凹部44により、滑り止め効果が得られると共に、触手により押すべき場所が分かる。さらに、操作する前の初期位置で連結部25が収容部17に収容されると共に、連結部25の外面が前側部12の外面に連続するように略面一になるから、出っ張りが少なくなり、空気抵抗も小さくなる。また、リンク片31を機械的に引っ張ることにより、ロック解除装置36を駆動する構成を採用するから、ロック解除機構1を既存の車両に取付け易くなり、この場合、既存の車両のハンドル等を取り外して取り付ければよい。
【実施例2】
【0043】
図6は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例のベース部5は、前側部12が内前側部12Uと外前側部12Gに内外に分割されており、前記外前側部12Gが前記中央部11に一体に設けられている。
【0044】
前記内前側部12Uは、前記ドア本体4に固定する平板状の固定部50を備え、この固定部50に前記前壁部34と前記後壁部35とを一体に設けている。尚、リンク片31は連結部25に連結されている。
【0045】
前記ベース部5の後側部13には、回動連結部51を設け、この回動連結部51により前記後側部13の後端を前記ドア本体4の外面に回動可能に取り付けている。
【0046】
また、前記外前側部12Gの後縁内面側には、外回動伝達係合部たる段部52を設け、この段部52が前記連結部25の前端内面に係合し、前記ベース部5の外側への回動を前記連結部25に伝達する。そして、前記回動連結部51位置と前記段部52位置の間に前記軸部22が位置する。
【0047】
さらに、前記外前側部12Gに把持部53を設けている。この把持部53は、この例では、外前側部12Gの外面に略外内方向の孔部54を設けると共に、この孔部54の内端に前後方向の内孔部54Aを後向きに設け、連結部25の内孔部54Aの外側に位置する部分により前記把持部53を構成している。そして、この例では内孔部54Aが後向きに設けられているから、右手での操作に適したものとなる。
【0048】
従って、孔部54から内孔部54A内に指を差し入れ、把持部53を外側に引っ張ると、前記段部52が前記連結部25の前端内面に係合しているから、
図6の一点鎖線に示すように、回動連結部51を中心にベース部5と操作部6が外側回動し、リンク片31が外側に移動し、ロック解除装置36が駆動する。尚、外側に移動したベース部5と操作部6は、弾性付勢手段などの復帰手段(図示せず)により、ドア本体4の外面に沿う初期位置に復帰する。また、初期位置において、押圧部24を押せばロックを解除することができる。
【0049】
このように本実施例では、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0050】
このように本実施例では、請求項
2に対応して、連結部25には、ロック解除装置36に操作力を伝達するリンク機構たるリンク片31が連結され、ドア本体4に、ベース部5を回動連結部51により回動可能に取り付け、ベース部5に、該ベース部5を回動操作する把持部53を設け、ベース部5の外側回動を操作部6の回動中心たる軸部22位置より連結部25側に伝える外回動伝達係合部たる段部52をベース部5に設けると共に、回動連結部51位置と段部52位置の間に回動中心たる軸部22が位置するから、押圧部24を押す操作と、ベース部5の連結部25側を引っ張る操作のいずれによってもロック解除可能となる。
【0051】
また、実施例上の効果として、押圧部24を押して操作部6を回動する操作によりロックを解除することができ、把持部53を引っ張ってベース部5を回動する操作によりロックを解除することができるから、押圧部24を押す操作と、連結部25を引っ張る操作とを同時に行ってロックを解除することもできる。
【実施例3】
【0052】
図7及び
図8は本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、前記ベース部5に把持部を設けると共に、該ベース部5を前記ドア本体4から離れる方向に移動可能に該ドア本体4に取り付けている。
【0053】
前記ベース部5とドア本体4には、該ベース部5をドア本体4に接離可能に取り付けるスライド機構61を設け、このスライド機構61は、前記前側部12の内面にスライド筒部62を一体に突設し、このスライド筒部62がスライドするスライド受け部(図示せず)を、前記ドア本体4に設けている。また、スライド筒部62の先端には、ドア本体4の内面に係合して抜け止めとなる鍔部62Aが設けられている。尚、実施例1で示した前記固定部41は設けられていない。また、前記スライド筒部62は車両2の内外方向に設けられている。
【0054】
前記前側部12の後側には、縦長の操作用開口部63が貫通形成され、この操作用開口部63の前縁63Fの前側に位置する前側部12の内面12Nにより把持部を構成している。尚、図示した位置より操作用開口部63を前側に設ければ、実施例2と同様に右手での操作に適したものになる。
【0055】
従って、操作用開口部63から内面12Nに指を差し入れ、ベース部5を外側に引っ張ると、前記連結部25の内面側が外端側段部34Sと外縁35Sに当接しているから、
図7の一点鎖線に示すように、ベース部5と操作部6が外側に平行移動し、リンク片31が外側に移動し、ロック解除装置36が駆動する。尚、外側に移動したベース部5と操作部6は、弾性付勢手段などの復帰手段(図示せず)により、ドア本体4の外面に沿う初期位置に復帰する。
【0056】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0057】
このように本実施例では、請求項
3に対応して、連結部25には、ロック解除装置36に操作力を伝達するリンク機構たるリンク片31が連結され、ドア本体4に、ベース部5を該ドア本体4から離れる方向に移動可能に取り付け、ベース部5に、該ベース部5を前記離れる方向に操作する把持部たる内面12Nを設けたから、押圧部24を押す操作とベース部5側を引っ張る操作のいずれによってもロック解除可能となる。
【0058】
また、実施例上の効果として、把持部たる内面12Nは、連結部25に近い前側部12の後側に設けられているから、ベース部5を安定して引っ張ることができる。また、操作用開口部63を設け、前側部12の内面12Nにより把持部を構成したから、外面に出っ張り部分を設ける必要がない。
【実施例4】
【0059】
図9は本発明の実施例4を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、前記連結部25の外面に把持部71を設けた例であり、この把持部71は平面略コ字型をなし、内部に指掛け部72を有し、その把持部71を外側に引っ張ることにより、連結部25が収容部17から部分的に引き出され、リンク片31が外側に移動し、ロック解除装置36が駆動する。
【0060】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0061】
このように本実施例では、請求項
4に対応して、操作部6の回動中心たる軸部22位置より連結部25側には、外側に引出し操作を行う把持部71が設けられ、連結部25が引出し操作されることにより、操作部6が軸部22を中心に回動して連結部25がロック解除装置36に操作力を与えるように構成したから、押圧部24を押す操作と連結部25側を引っ張る操作のいずれによってもロック解除可能となる。
【0062】
また、実施例上の効果として、把持部71は指掛け部72を有するから、安定して引っ張ることができる。
【0063】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例において、幅広部は、幅狭部である前側部及び後側部に対して上部側及び下部側の両方が上下方向に広く形成したものを示したが、上部側と下部側の一方のみを幅広に形成してもよい。また、ドア本体への取付構造を変えることにより、後側部13のないタイプのものにも適用可能である。さらに、把持部の形状は、連結部を手で引っ張ることができる機能を有するものであれば、適宜選定可能である。また、連結部は、初期状態で、収容部に部分的に収容されていればよい。さらに、実施例では、操作部に回動中心として軸部を設けたが、べース部に軸部を設け、操作部に回動中心として軸受部を設けてもよい。また、本発明のロック解除機構は、押圧部を押圧操作するものであるから、前後が逆でもよい。さらに、スライド機構は各種タイプのものを用いることができる。また、各実施例において、リンク片を連結部に一体に設けてもよく、この場合、リンク片は、操作力をロック解除装置に伝達する伝達部となる。さらに、実施例2で示した内孔部を前向きに設ければ、左手での操作に適したものとなる。