特許第6643195号(P6643195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643195
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】荷役作業車
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/08 20060101AFI20200130BHJP
   B66F 9/075 20060101ALI20200130BHJP
   B66F 9/22 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   B66F9/08 F
   B66F9/075 Z
   B66F9/22 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-127740(P2016-127740)
(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公開番号】特開2018-2340(P2018-2340A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183222
【氏名又は名称】住友ナコ フォ−クリフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】光岡 秀晃
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−315793(JP,A)
【文献】 特開2001−213593(JP,A)
【文献】 実開昭62−020096(JP,U)
【文献】 特開2004−142855(JP,A)
【文献】 特開2000−128028(JP,A)
【文献】 特開2000−035002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00− 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪側に設けられた荷役装置
後輪側に設けられた錘部
前記前輪と前記後輪との間に設けられた収納部に収納されたバッテリと、
前記収納部より車両後方側に設けられ、作動油が蓄えられるオイルタンクと、
前記オイルタンクに蓄えられた作動油を加圧吐出する油圧ポンプと、
前記収納部より車両前方側に設けられ、前記油圧ポンプから吐出された作動油が流入する第1油圧機器及び第2油圧機器と、
前記第1油圧機器から排出された作動油を前記オイルタンク側に戻すための第1配管であって、可撓性を有する第1配管と、
前記第2油圧機器から排出された作動油を前記オイルタンク側に戻すための第2配管であって、可撓性を有する第2配管と、
前記第1配管及び前記第2配管が接続され、それら配管を流通する作動油を集合させて前記オイルタンクに戻す第3配管であって、前記第1配管及び前記第2配管より曲げ剛性が大きい第3配管とを備えるカウンターバランス式の荷役作業車の製造方法において、
前記前輪と前記後輪との距離が異なる複数種類の荷役作業車両に対し、前記第1配管及び前記第2配管は同一長さのものを使用し、前記第3配管は当該荷役作業車の種類毎に長さを変更したものを使用する荷役作業車の製造方法
【請求項2】
前記第3配管前記バッテリの下方側において車両前方側から車両後方側に延びるように配置する請求項1に記載の荷役作業車の製造方法
【請求項3】
前記第3配管を流通してきた作動油を前記オイルタンク内に排出する排出口、前記オイルタンク内に貯留された作動油の最高油面高さより高い位置開口させる請求項1又は2に記載の荷役作業車の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪側に設けられた荷役装置、及び後輪側に設けられた錘部(カウンターウエイト)を有するカウンターバランス式の荷役作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の荷役作業車では、各油圧機器から排出される作動油は、ゴムホース等の可撓性を有する配管を介してオイルタンクに戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−254789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各油圧機器からオイルタンクまでの長さは、荷役作業車毎に異なる。このため、特許文献1に記載の発明では、荷役作業車毎に異なる長さのゴムホースを準備する必要がある。このため、ゴムホースの種類が多くなるとともに、ゴムホースの組み付け方法が車両毎に異なってしまう等の問題を有する。
【0005】
本願は、ゴムホース等の可撓性を有する配管の種類を削減することが可能な荷役作業車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は「各油圧機器からオイルタンクまでの長さは、主に、前輪(Fh)と後輪(Rh)との距離(以下、ホイールベースという。)によって決まる点」に着目したものである。
【0007】
すなわち、前輪(Fh)と後輪(Rh)との間に設けられた収納部(7A)に収納されたバッテリ(7)と、収納部(7A)より車両後方側に設けられ、作動油が蓄えられるオイルタンク(9)と、オイルタンク(9)に蓄えられた作動油を加圧吐出する油圧ポンプ(11)と、収納部(7A)より車両前方側に設けられ、油圧ポンプ(11)から吐出された作動油が流入する第1油圧機器(13)及び第2油圧機器(15)と、第1油圧機器(13)から排出された作動油をオイルタンク(9)側に戻すための第1配管(19A)であって、可撓性を有する第1配管(19A)と、第2油圧機器(15)から排出された作動油をオイルタンク(9)側に戻すための第2配管(19B)であって、可撓性を有する第2配管(19B)と、第1配管(19A)及び第2配管(19B)が接続され、それら配管(19A〜19C)を流通する作動油を集合させてオイルタンク(9)に戻す第3配管(21)であって、第1配管(19A)及び第2配管(19B)より曲げ剛性が大きい第3配管(21)とを備える。
【0008】
これにより、本願では、ホイールベースの違いは、第3配管(21)の長さを変更することにより対応可能である。
つまり、第3配管(21)から各油圧機器(3B、13、15)までの長さ、及び当該第3配管(21)からオイルタンク(9)までの長さは、荷役作業車の種類によらず、概ね同一長さである。そして、各油圧機器(3B、13、15)からオイルタンク(9)までの長さの違いは、概ねホイールベースの違いである。
【0009】
したがって、本願では、可撓性を有する第1配管(19A)及び第2配管(19B)の長さを荷役作業車の種類によらず同一長さとし、かつ、第3配管(21)の長さを荷役作業車の種類毎に変更することにより、複数種類の荷役作業車に対応することが可能である。延いては、可撓性を有する配管の種類を削減できる。
【0010】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る荷役作業車の油圧経路を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る荷役作業車の油圧経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する「発明の実施形態」は、本願発明の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載したものである。本発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
【0014】
少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「1つの」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、当該部材が2以上設けられていてもよい。
(第1実施形態)
1.荷役作業車の構成
カウンターバランス式の荷役作業車1は、図1に示すように、前輪Fh側に荷役装置3、及び後輪Rh側に錘部5を有する。本実施形態に係る荷役装置3は、図2に示すように、一対のフォーク3A及び一対のマストリフトシリンダー3Bを有する。
【0015】
つまり、本実施形態は、カウンターバランス式のフォークリフトに本発明に係る荷役作業車を適用したものである。各フォーク3Aは、前輪Fh側から車両前方側に延びる帯板状の部材である。
【0016】
一対のマストリフトシリンダー3Bは、一対のフォーク3Aを含む荷役部を昇降させる油圧機器である。錘部5は、荷役装置3に作用する荷重により車両が前方側に大きく傾きことを抑制する釣り合い錘である。
【0017】
前輪Fhと後輪Rhとの間には、図1に示すように、バッテリ7が収納された収納部7Aが設けられている。バッテリ7は、荷役作業車1の動力用電力を供給する電源である。つまり、バッテリ7は、走行用電動モータ(図示せず。)及びポンプ駆動電動モータ11A等に電力を供給する二次電池である。
【0018】
収納部7A、つまりバッテリ7より車両後方側にはオイルタンク9が設けられている。オイルタンク9は、油圧機器に作動させるための作動油が蓄えられる作動油溜めである。油圧ポンプ11は、オイルタンク9に蓄えられた作動油を加圧吐出する。当該油圧ポンプ11は、ポンプ駆動電動モータ11Aにより駆動される。
【0019】
収納部7Aより車両前方側には、コントロールバルブ13、オービットロール15及び一対のマストリフトシリンダー3Bが設けられている。コントロールバルブ13は、図2に示すように、油圧ポンプ11から吐出された作動油が流入するとともに、当該作動油の送り先を選択するための油圧機器である。
【0020】
オービットロール15は、油圧ポンプ11から吐出された作動油がコントロールバルブ13を経由して流入するとともに、操舵輪を操舵するための油圧機器である。すなわち、オービットロール15は、ステアリングシンリダ(図示せず。)に供給する作動油等をステアリングの操作に応じて制御する。
【0021】
なお、本実施形態に係る操舵輪は後輪Rhである。ステアリングシリンダは、操舵輪を操舵する操舵力を発揮する油圧機器である。ステアリングは乗員が操作する操舵用操作部である。一対のマストリフトシリンダー3Bには、油圧ポンプ11から吐出された作動油がコントロールバルブ13を経由して流入する。
【0022】
つまり、本実施形態では、油圧ポンプ11から吐出された作動油は、高圧配管17を介してコントロールバルブ13に供給された後、コントロールバルブ13からオービットロール15及びマストリフトシリンダー3B等に分配供給される。
【0023】
オービットロール15及びマストリフトシリンダー3B等の油圧機器は、油圧ポンプ11から供給された高圧の作動油により機械的出力をし、当該機械的出力により圧力が低下した低圧の作動をオイルタンク9側に戻す。
【0024】
コントロールバルブ13は、いずれの油圧機器にも送り出さない作動用をオイルタンク9側に戻す。因みに、いずれの油圧機器にも作動用を送り出さない場合には、油圧ポンプ11は、停止又は下限回転数にて稼働している。そして、例えば、貨物を上昇させる場合やステアリングが操作された場合に、油圧ポンプ11の回転数が上昇する。
【0025】
第1低圧配管19Aは、コントロールバルブ13から排出された作動油をオイルタンク9側に戻すための第1配管の一例である。第2低圧配管19Bは、オービットロール15から排出された作動油をオイルタンク9側に戻すための第2配管の一例である。
【0026】
第3低圧配管19Cは、一対のマストリフトシリンダー3Bから排出された作動油をオイルタンク9側に戻すための配管である。第1低圧配管19A〜第3低圧配管19Cは、ゴムホース等の可撓性を有する配管である。なお、フィルタ19Dは、作動油中の異物を除去する。
【0027】
共通配管21は、第1低圧配管19A〜第3低圧配管19Cを流通する作動油を集合させてオイルタンク9に戻す第3配管の一例である。第1低圧配管19A〜第3低圧配管19Cは、収納部7Aより車両前方側で共通配管21に接続されている。
【0028】
つまり、第1低圧配管19A〜第3低圧配管19Cを流通する作動油は、収納部7Aより車両前方側で集合し、共通配管21を流通してオイルタンク9に戻る。共通配管21は、いずれの低圧配管19A〜19Cよりも曲げ剛性が大きい配管である。なお、本実施形態に係る共通配管21は金属製である。
【0029】
共通配管21は、図1に示すように、バッテリ7の下方側において車両前方側から車両後方側に延びている。そして、共通配管21のオイルタンク9側は、ゴムホース等の可撓性を有する繋ぎ配管21Aを介して戻し管23に繋がっている。
【0030】
戻し管23は、共通配管21を流通してきた作動油をオイルタンク9内に排出するための管であって、その上端に排出口23Aが設けられた排出部の一例である。排出口23Aは、オイルタンク9内に貯留された作動油の最高油面高さより高い位置で開口している。
【0031】
「最高油面高さ」とは、例えば、油面計が設けられたオイルタンク9においては、最高油面を示す目印より高い油面高さをいう。本実施形態に係る戻し管23は、金属又は樹脂製であって、その流入口側はオイルタンク9に固定されている。
【0032】
2.本実施形態に係る荷役作業車の特徴
本実施形態では、第1低圧配管19A〜第3低圧配管19Cを流通する作動油を収納部7Aより車両前方側で共通配管21に集合させてオイルタンク9に戻す。このため、本実施形態では、ホイールベースの違いは、共通配管21の長さを変更することにより対応することが可能となる。
【0033】
つまり、共通配管21から各油圧機器3B、13、15までの長さ、及び当該共通配管21からオイルタンク9までの長さは、荷役作業車1の種類によらず、概ね同一長さである。そして、各油圧機器3B、13、15からオイルタンク9までの長さの違いは、概ねホイールベースの違いである。
【0034】
したがって、本実施形態では、可撓性を有する第1低圧配管19A〜第3低圧配管19Cの長さを荷役作業車1の種類によらず同一長さとし、かつ、共通配管21の長さを荷役作業車1の種類毎に変更することにより、複数種類の荷役作業車1に対応することが可能である。延いては、可撓性を有する配管、つまり第1低圧配管19A〜第3低圧配管19C等の種類を削減できる。
【0035】
ところで、従来は、第1低圧配管19A〜第3低圧配管19Cがバッテリ7の下方側に配索された状態でオイルタンク9まで延びていた。このため、第1低圧配管19A〜第3低圧配管19Cのメンテナンスを行うには、バッテリ7を車両から取り外す必要があったため、第1低圧配管19A〜第3低圧配管19Cのメンテナンス作業の作業性が低い、という問題があった。
【0036】
本実施形態では、共通配管21は、バッテリ7の下方側において車両前方側から車両後方側に延びており、ゴムホース等の可撓性を有する材質で構成された第1低圧配管19A〜第3低圧配管19Cは、バッテリ7の下方側に配索されていない。
【0037】
通常、メンテナンスが必要な配管は、第1低圧配管19A〜第3低圧配管19C等の可撓性を有する材質で構成された配管である。一方、金属製の配管は、メンテナンスが殆ど必要ない。
【0038】
したがって、本実施形態では、バッテリ7を車両から取り外すことなく、可撓性を有する材質で構成された配管、つまり第1低圧配管19A〜第3低圧配管19Cのメンテナンスを行うことができるので、メンテナンス作業性を向上させることができる。
【0039】
排出口23Aは、オイルタンク9内に貯留された作動油の最高油面高さより高い位置で開口しているので、各油圧機器3B、13、15から排出された作動油を確実にオイルタンク9に戻すことができる。
【0040】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、共通配管21がバッテリ7の下方側に配索されていた。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、共通配管21がバッテリ7に対して車両幅方向にずれた位置に配索された構成であってもよい。
【0041】
上述の実施形態では、油圧機器として、マストリフトシリンダー3B、コントロールバルブ13及びオービットロール15を例示した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の油圧機器であってもよい。
【0042】
上述の実施形態では、荷役作業車としてフォークリフトを例に本発明を説明した。しかし、本発明の適用は、フォークリフトに限定されるものではなく、その他の荷役作業車に適用できる。
【0043】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0044】
1… 荷役作業車 3… 荷役装置 3A… フォーク
3B… マストリフトシリンダー 5… 錘部 7… バッテリ
7A… 収納部 9… オイルタンク 11… 油圧ポンプ
11A… ポンプ駆動電動モータ 13… コントロールバルブ
15… オービットロール 17… 高圧配管 19A… 第1低圧配管
19B… 第2低圧配管 19C… 第3低圧配管 19D… フィルタ
21… 共通配管 21A… 繋ぎ配管 23… 戻り管 23A… 排出口
図1
図2