(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のとおり、仮本分割プロセスにおいては、半導体ウェハ基板W上に実装すべき半導体チップCの全てを仮固定してから本圧着用ヘッド46を用いて熱圧着する。このため、順次熱圧着を進める過程において、熱圧着対象の半導体チップCの周囲には、仮固定状態の半導体チップCが隣接している。ところで、これら仮固定状態の半導体チップCの熱圧着は未実施であるため、熱硬化性接着剤Rの硬化が開始することは好ましくない。すなわち、熱圧着を行なう前に熱硬化性接着剤Rが硬化すると、加圧しても、
図21(c)における半導体チップCのバンプBと半導体ウェハ基板Wのパッド電極Eの距離が縮まらずに接合不良となることがある。
【0007】
このため、本圧着用ヘッド46が熱圧着する半導体チップCに隣接する半導体チップCを仮固定している熱硬化性接着剤Rの硬化開始を防ぐ必要がある。
【0008】
そこで、従来の半導体ウェハ基板Wの全面を支持するステージ400(
図23(a))に代わり、本圧着用アタッチメント48が熱圧着する領域SAのみを半導体チップCの反対面から支持する本圧着用バックアップステージ43(
図23(b))が用いられるようになってきている(例えば特許文献1)。このような構成にすることにより、本圧着用バックアップステージ43側が加熱機能を有しても、熱圧着領域SAの周囲まで昇温する能力は低い。このため、本圧着用ヘッド46とバックアップステージ43による同時加熱により、熱圧着時間が短縮でき、熱圧着領域の周囲への熱影響をて低減することができる。
【0009】
ただし、昨今では、半導体ウェハ基板Wの厚みが薄くなってきて取り扱いが難しくなっていることに起因して、上記の本圧着用バックアップステージ43を用いるだけでは不充分な場合ある。すなわち、半導体ウェハ基板Wの薄板化にともない、
図24のように、半導体ウェハ基板Wが仮貼材Mを介してサポート基板Sに固定された状態で扱われることがあり、サポート基板Sおよび仮貼材Mの断熱性によって、バックアップステージ43による熱圧着領域の昇温効果が不充分となって、熱圧着時間が短縮できず、熱圧着領域の周囲に悪影響を及ぼすことがある。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、仮貼材を介してサポート基板上に固定された半導体ウェハ基板上に、熱硬化性樹脂で仮固定された半導体チップを熱圧着して半導体装置を製造するのに際して、熱圧着対象以外の半導体チップに悪影響を及ぼすことのない半導体装置の製造方法および製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
サポート基板上に仮貼材を介して固定された半導体ウェハ基板上に、半導体チップを熱圧着接続する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体ウェハ基板に到達する切込部を形成する切断工程と、前記半導体ウェハ基板上に未硬化の熱硬化性接着剤を介して前記半導体チップを仮固定する仮圧着工程と、仮固定された前記半導体チップを熱圧着する本圧着工程と、を有し、少なくとも本圧着工程の前に切断工程を有する半導体装置の製造方法である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記切断工程を前記仮圧着工程に先行し、前記切込部が形成された前記半導体ウェハ基板上に前記半導体チップを仮固定する半導体装置の製造方法である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記仮圧着工程を前記切断工程に先行し、前記半導体チップが仮固定された前記半導体ウェハ基板に切込部を形成してから、本圧着工程で前記半導体チップを熱圧着する半導体装置の製造方法である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3の何れかに記載の半導体装置の製造方法であって、
前記切断工程おける切込部の深さが、前記半導体ウェハ基板の半分以上に達する半導体装置の製造方法である。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記切断工程おける切込部の深さが、前記半導体ウェハ基板を貫通し、前記仮貼材の膜厚の半分以上に達する半導体装置の製造方法である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5の何れかに記載の半導体装置の製造方法であって
前記切断工程により分割された個々の領域を個片領域とすると、前記本圧着工程において、複数の個片領域を同時に熱圧着する半導体装置の製造方法である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6の何れかに記載の半導体装置の製造方法であって、
前記仮圧着工程で前記半導体ウェハ基板上に複数の半導体チップを仮固定状態で積層する半導体装置の製造方法である。
【0019】
請求項
8に記載の発明は、
サポート基板上に仮貼材を介して固定された半導体ウェハ基板上に、半導体チップを熱圧着接続する半導体装置の製造装置であって、
前記半導体ウェハ基板に到達する切込部を形成する切断装置と、前記半導体ウェハ基板上に前記半導体チップを仮固定する仮圧着装置と、仮固定された前記半導体チップを熱圧着する本圧着装置とを備え、
前記切断装置で前記半導体ウェハ基板に切込部を形成した後に、前記仮圧着装置で前記半導体チップを仮固定する半導体装置の製造装置である。
【0020】
請求項
9に記載の発明は、
サポート基板上に仮貼材を介して固定された半導体ウェハ基板上に、半導体チップを熱圧着接続する半導体装置の製造装置であって、
前記半導体ウェハ基板に到達する切込部を形成する切断装置と、前記半導体ウェハ基板上に前記半導体チップを仮固定する仮圧着装置と、仮固定された前記半導体チップを熱圧着する本圧着装置とを備え、
前記仮圧着装置で前記半導体ウェハ基板上に前記半導体チップを仮固定した後に、前記切断装置で前記半導体ウェハ基板に切込部を形成してから、前記本圧着装置で仮固定された前記半導体チップを熱圧着する半導体装置の製造装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、仮貼材を介してサポート基板上に仮固定された半導体ウェハ基板上に、熱硬化性樹脂で仮固定された半導体チップを熱圧着して半導体装置を製造するのに際して、熱圧着対象以外の半導体チップに悪影響を及ぼすことが防げる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係わる半導体装置の製造装置の構成を示す概略図である。
【
図2】(a)本発明の一実施形態に係わる半導体装置の製造装置を構成する切断装置を説明する図である(b)同切断装置の切断用ヘッドを説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係わる半導体装置の製造装置を構成する仮圧着装置を説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係わる半導体装置の製造装置を構成する本圧着装置を説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係わる半導体装置の製造装置の制御構成を表すブロック図である。
【
図6】(a)本発明の一実施形態に係わる半導体装置の製造方法で用いられる仮貼材でサポート基板に固定された半導体ウェハ基板を示す断面図である(b)同半導体ウェハ基板を用いた切断工程の状態を示す断面図である(c)同切断工程後の状態を示す断面図である。
【
図7】(d)本発明の一実施形態に係わる半導体装置の製造方法の仮圧着工程を示す断面図である(e)同仮圧着工程後の状態を示す断面図である(f)本圧着工程の状態を示す断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係わる半導体装置の製造方法での切断工程における切込部の深さについて説明する図である。
【
図9】(a)通常の半導体ウェハ基板上に仮固定した半導体チップを熱圧着する際の熱伝導を説明する図である(b)本発明に係わる半導体ウェハ基板上に仮固定した半導体チップを熱圧着する際の熱伝導を説明する図である。
【
図10】(a)本発明に係わる半導体ウェハ基板上に仮固定した半導体チップに厚みバラツキがある状態を示す図である(b)本発明に係わる半導体ウェハ基板上で厚みバラツキがある半導体チップを同時に熱圧着する状態を示す図である。
【
図11】(a)本発明の一実施形態に係わる半導体装置の製造方法に用いられる半導体ウェハ基板上面の該略図である(b)切断工程後の同半導体ウェハ基板上面の該略図である。
【
図12】(c)本発明の一実施形態に係わる半導体装置の製造方法における仮圧着工程後の半導体ウェハ基板上面の該略図である。(d)同半導体ウェハ基板上面から本圧着工程を説明する概略図である。
【
図13】本発明の別の実施形態に係わる半導体装置の製造装置の構成を示す概略図である。
【
図14】(a)本発明の別の実施形態に係わる半導体装置の製造方法で用いられる仮貼材でサポート基板に固定された半導体ウェハ基板を示す断面図である(b)同半導体ウェハ基板を用いた仮圧着工程での状態を示す断面図である(c)同仮圧着工程後の状態を示す断面図である。
【
図15】(c)本発明の別の実施形態に係わる半導体装置の製造方法の切断工程を示す断面図である(d)同切断工程後の状態を示す断面図である(e)本圧着工程の状態を示す断面図である。
【
図16】(a)本発明の別の実施形態に係わる半導体装置の製造方法に用いられる半導体ウェハ基板上面の該略図である(b)仮圧着工程後の同半導体ウェハ基板上面の該略図である。
【
図17】(a)本発明の一実施形態に係わる半導体装置の製造方法で用いられる仮貼材でサポート基板に固定された半導体ウェハ基板を用いた切断工程を示す断面図である(b)同切断工程後の状態を示す断面図である(c)仮圧着工程において複数の半導体チップを積層した状態を示す断面図である。
【
図18】(a)本発明の別の実施形態に係わる半導体装置の製造方法で用いられる仮貼材でサポート基板に固定された半導体ウェハ基板を示す断面図である(b)同半導体ウェハ基板を用いた仮圧着工程において複数の半導体チップを積層した状態を示す断面図である(c)仮圧着工程で複数の半導体チップを積層した後の切断工程を示す断面図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係わる半導体装置の製造方法での切断工程における切込部の深さが半導体ウェハ基板を貫通しない例について説明する図である。
【
図20】(a)半導体ウェハ基板上に多数の半導体チップが実装された状態の上面図である(b)同断面図である。
【
図21】(a)バンプ面に熱硬化性樹脂を付与した半導体チップとパッド電極を有する半導体ウェハ基板の断面図である(b)同半導体チップと同半導体ウェハ基板の位置合わせを行った状態を示す断面図である(c)同半導体チップを同半導体ウェハ基板上に仮固定した状態を示す断面図である(d)同半導体チップを同半導体ウェハ基板上に熱圧着した状態を示す断面図である。
【
図22】(a)半導体ウェハ基板上に仮固定された半導体チップを複数単位で熱圧着する範囲を示す上面図である(b)同範囲を熱圧着する前の状態を示す断面図である。
【
図23】(a)半導体チップを熱圧着する際に半導体ウェハ基板全面を支持するステージを示す断面図である(b)半導体チップを熱圧着する際に半導体ウェハ基板の熱圧着領域のみを支持するステージを示す断面図である。
【
図24】半導体ウェハ基板が仮貼材を介してサポート基板上に固定されている場合の熱圧着に際しての問題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態の一例について、図面を用いて説明する。
図1は本発明に係る半導体装置の製造装置1を示す図である。半導体装置の製造装置1は、
図6(a)に断面図を示すような、サポート基板Sに仮貼材Mを介して固定された半導体ウェハ基板Wに半導体チップCを実装するものである。半導体チップCは
図7(d)に示したようにバンプBを有しており、熱圧着により半導体チップCのバンプBが溶融して半導体ウェハ基板W上のパッド電極Eに接合する。また、
図7(d)の半導体チップCのバンプ側に付着している熱硬化性接着剤Rは熱圧着時に硬化する。なお、本実施形態では未硬化の熱硬化性樹脂Rが半導体チップCのバンプ側に付着した場合について記すが、これに限定されるものではなく、未硬化の熱硬化性接着剤が半導体ウェハ基板Wのパッド電極側(半導体チップを積層する場合は下側の半導体チップの反バンプ面)に付着していてもよい。
【0024】
本実施形態において半導体チップCのバンプBとしては銅ピラー先端にハンダが形成された銅ピラーバンプを想定しているがこれに限定されるものではなく、半導体チップの機能に悪影響を及ぼさない温度で溶融する金属を素材として耐腐食性に優れたものであればよい。また、半導体チップCを半導体ウェハ基板W上に複数積層する場合においては、上面(反バンプ面)に電極を有するものが用いられる。半導体チップの上下両面に電極を有する場合においては貫通電極を用いるのが一般的であるが、これに限定されるものではない。
【0025】
熱硬化性接着剤Rとしては樹脂単体のものでもよいが、無機微粒子が配合されたものであってもよい。なお熱硬化性接着剤Rは、その温度に応じて粘度が変動する。具体的には、樹脂の特性から定まる基準温度Ts未満の温度領域では硬化することなく、可逆的に温度上昇に伴って粘度が低くなる性質を示す。一方、熱硬化性接着剤Rは、基準温度Ts以上の温度域においては硬化し、不可逆的に温度上昇に伴って粘度は高くなる性質をしめす。以後、基準温度Tsを硬化開始温度と記す。
【0026】
本実施形態において、半導体ウェハ基板Wの素材としてシリコンを想定しているがこれに限定されるものではなく、シリコンカーバイドや窒化ガリウム等の化合物系半導体であってもよく、熱伝導率の高い素材であれば本発明の効果が活かされる。半導体ウェハ基板Wには、後述の切断工程で個片化される単位毎に電子回路が形成され、パッド電極Eは電子回路と外部とを電気的に接続するものである。なお、半導体ウェハ基板Wに形成される電子回路は半導体集積回路として機能するものであっても良いが、本実施形態においては、半導体ウェハ基板W表層に再配線層WRが形成されたものとしている。再配線層WRが形成された半導体ウェハ基板Wを用いた場合は、再配線層WR以外の半導体ウェハ基板Wを最終的に除去することで、FO−WLP(Fan−Out Wafer Level Package)技術のRDL−first法にも応用が可能である。
【0027】
サポート基板Sは半導体ウェハ基板Wと同じ面形状を有し、半導体ウェハ基板Wを固定するものであり、薄くても適度な剛性を有するものが好ましく、素材としては一般にガラスやシリコンが用いられ、厚みとしては500〜1000μmが通常用いられる。
【0028】
仮貼材Mは半導体ウェハ基板Wをサポート基板Sに固定するものである。仮貼材としては、実装温度以上の耐熱性を有することが好ましく、厚みは50〜500μmが望ましい。さらに好ましくは100〜500μm、さらには200〜500μmが好ましい。厚みが50μm以上あると半導体ウェハ基板Wを切断する際にサポート基板Sまで切断する可能性がなく、厚みが100μm以上だとサポート基板Sに熱伝導性の高いものを使用しても隣接半導体チップCへの熱影響を低減できる。さらに、厚みが200μm以上あると、複数の半導体チップCを一括して熱圧着する際に半導体チップCの厚さバラツキを吸収することができる。一方において、厚みが500μm以下であれば半導体チップCを位置ズレなく実装できるので好ましい。
【0029】
半導体装置の製造装置1は、切断装置2、仮圧着装置3、本圧着装置4、図示していないが半導体ウェハ基板Wを固定したサポート基板Sを搬送する搬送装置5と、制御部6を備えている。
【0030】
図1の半導体装置の製造装置1では、半導体ウェハ基板Wを固定したサポート基材Sを搬送装置5により、切断装置2、仮圧着装置3、本圧着装置4の順に搬送する機能を有しており、サポート基材SはXY面に水平な状態を維持している。
【0031】
なお、
図1(および
図2(a)、
図3および
図4)において、図の左右方向をX方向、これに直交する方向をY方向、上下方向をZ方向、Z軸を中心として回転する方向をθ方向として説明する。
【0032】
半導体装置の製造装置1を構成する切断装置2は、サポート基板Sに仮貼材Mを介して固定された半導体ウェハ基板Wを個片に切断してダイシングするものであり、その構成を
図2(a)に示す。
【0033】
図2(a)の切断装置2は、切断用基台21、切断用ステージ22、切断用支持フレーム23、切断用ユニット24、切断用ヘッド25、切断手段であるダイシングブレード26、距離測定手段である切断用距離センサ27および切断用画像認識装置28を備えている。
【0034】
切断用基台21は、切断装置2を構成する主な構造体である。切断用基台21は、切断用ステージ22と切断用フレーム23とを支持している。
【0035】
切断用ステージ22は、半導体ウェハ基板Wを固定したサポート基材Sを保持しつつ、任意の位置に移動させるものである。
図2(a)の切断装置2では、切断用ステージ22は、切断用基台21に対してY方向に移動可能なY方向可動部22aを設け、Y方向可動部22a上にX方向に移動可能なX方向可動部22bを設け、X方向可動部22b上にθ方向可動部22cを設けた構成となっている。また、θ方向可動部22cは吸着機構等により、サポート基材Sを保持する機能を有している。なお、切断用ステージ22の構成は
図2(a)に示したものに限定されるものではなく、サポート基材Sを保持して、X、Yおよびθの各方向に位置調整が可能な構成であればよい。
【0036】
切断用支持フレーム23は、切断用ユニット24を支持するものである。切断用支持フレーム23は、厚板状に形成され、切断用基台21の切断用ステージ22近傍からZ方向に向かって延びるよう構成されている。
【0037】
切断用ユニット24は、切断用ヘッド25を移動させるものである。切断用ユニット24は、図示しない移動用のサーボモータとボールねじとから構成される。切断用ユニット24は、サーボモータによってボールねじを回転させることによりボールねじの軸方向の駆動力を発生するよう構成されている。切断用ユニット24は、移動方向が半導体ウェハ基板Wに対して垂直なZ方向になるよう切断用支持フレーム23に取り付けられている。つまり、切断用ユニット24は、切断用ヘッド25を任意の位置に移動させつつZ方向の駆動力(加圧力)を発生するように構成されている。切断用ユニット24は、サーボモータの出力を制御することによりZ方向の加圧力である切断荷重を任意に設定できるように構成されている。なお、本実施形態において、切断用ユニット24は、サーボモータとボールねじの構成としたがこれに限定されるものではなく、空圧アクチュエータや油圧アクチュエータから構成してもよい。
【0038】
切断用ヘッド25は、切断用ユニット24の駆動力を半導体ウェハ基板Wに伝達するとともに、切断手段であるダイシングブレード26を回転駆動させるものである。切断用ヘッド25は、切断用ユニット24を構成している図示しないボールねじナットに取り付けられている。また、切断用ユニット24は、切断用ステージ22と対向するよう配置されている。つまり、切断用ヘッド25は、切断用ユニット24によってZ方向に移動されることで切断用ステージ22に近接できるよう構成されている。切断用ヘッド25には、図示しないダイシングブレード26用のモータ、ダイシングブレード26、切断用距離センサ27が設けられている。なお、切断用ヘッド25はダイシングブレード26をZ方向を軸とするθ方向に回転させる機能を有していても良いし、直角方向に向きの異なる2つのダイシングブレード26を有してその一方のみを機能させる構成であってもよい。
【0039】
図2(b)に示すように、切断手段であるダイシングブレード26は、半導体ウェハ基板Wに切込を形成するための刃である。
【0040】
切断用距離センサ27は、任意の基準位置からZ方向の距離を測定するものである。切断用距離センサ27は、各種レーザ光を利用した変位センサから構成される。切断用距離センサ27は、切断用ヘッド25の任意の基準位置から半導体ウェハ基板Wの表面までの距離を測定するように構成されている。なお、本実施形態において、切断用距離センサ27はレーザ光を利用したものから構成されているがこれに限定されるものではなく、超音波を利用したものや、リニアスケール、サーボモータのエンコーダから算出するものから構成されてもよい。
【0041】
切断用画像認識装置28は、画像によって半導体ウェハ基板Wの位置情報を取得するものである。切断用画像認識装置28は、切断用ステージ22に保持されている半導体ウェハ基板Wの位置合わせマークを画像認識して、半導体ウェハ基板Wの位置情報を取得するよう構成されている。
【0042】
仮圧着装置3は、熱硬化性接着剤Rを介して半導体チップCを半導体ウェハ基板W上に仮固定するものである。なお、半導体チップCが上下に貫通する貫通電極を有する場合においては、熱硬化性接着剤Rを介して複数の半導体チップCを半導体ウェハ基板W上に仮固定状態で積層する機能も有するものである。
【0043】
仮圧着装置3は、
図3に示すように、仮圧着用基台31、仮圧着用ステージ32、仮圧着用支持フレーム33、仮圧着用ユニット34、仮圧着用ヘッド35および仮圧着用画像認識装置38を備えている。なお、仮圧着用基台31、仮圧着用ステージ32、仮圧着用および支持フレーム33は、切断装置2の切断用基台21、切断用ステージ22および切断用支持フレーム23とほぼ同一の構成であるので、同様の点に関しては具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0044】
仮圧ユニットである仮圧着用ユニット34は、仮圧着用ヘッド35をZ方向に移動させるものである。仮圧着用ユニット34は、図示しないサーボモータとボールねじとから構成されている。仮圧着用ユニット34は、サーボモータによってボールねじを回転させることによりボールねじの軸方向の駆動力を発生するように構成されている。仮圧着用ユニット34は、ボールねじの軸方向が半導体ウェハ基板Wに対して垂直なZ方向になるよう仮圧着用支持フレーム33に取り付けられている。つまり、仮圧着用ユニット34は、Z方向の駆動力(仮圧力)を発生するように構成されている。仮圧着用ユニット34は、サーボモータの出力を制御することによりZ方向の加圧力である仮圧着荷重を任意に設定できるように構成されている。なお。本実施形態において、仮圧着用ユニット34は、サーボモータとボールねじとの構成にしたがこれに限定されるものではなく、空圧アクチュエータ、油圧アクチュエータやボイスコイルモータから構成してもよい。
【0045】
仮圧着用ヘッド35は、半導体チップCを吸着保持して、仮圧着用ユニット34の駆動力を半導体チップCに伝達するものである。仮圧着用ヘッド35は、仮圧着用ユニット34を構成している図示しないボールねじナットに取り付けられている。また、仮圧着用ユニット34は、仮圧着用ステージ32と対向するように配置されている。つまり、仮圧着用ヘッド35は、仮圧着用ユニット34によってZ方向に移動されることで仮圧着用ステージ32に近接できるよう構成されている。仮圧着用ヘッド35には、仮圧着用ヒータ36が内蔵され、仮圧着用アタッチメント37が設けられている。
【0046】
仮圧着用ヒータ36は、半導体チップCを加熱するものである。仮圧着用ヒータ36は、カートリッジヒータから構成され、仮圧着用ヘッド35に形成された孔等に組み込まれている。本実施形態において、仮圧着用ヒータ36は、カートリッジヒータから構成されているがこれに限定されるものではなく、半導体チップCを加熱することが出来るものであればよい。
【0047】
仮圧着用アタッチメント37は、半導体チップCを保持し、加圧力や熱を伝達するものである。仮圧着用アタッチメント37は、仮圧着用ヘッド35に仮圧着用ステージ32と対向するように設けられている。仮圧着用アタッチメント37は、半導体チップCを位置決めしながら吸着保持できるように構成されている。また、仮圧着用アタッチメント37は、半導体チップCを位置決め保持するとともに、仮圧着用ヒータ36からの伝熱によって半導体チップCを加熱できるように構成されている。
【0048】
仮圧着用画像認識装置38は、画像によって半導体チップCと半導体ウェハ基板Wとの位置情報を取得するものである。仮圧着用画像認識装置38は、仮圧着用ステージ32に保持されているサポート基板S上の半導体ウェハ基板W上面の位置合わせマークと仮圧着用アタッチメント37に保持されている半導体チップC下面の位置合わせマークとを画像認識して、半導体ウェハ基板Wと半導体チップCとの位置情報を取得するように構成されている。なお、半導体ウェハ基板W上に仮固定された半導体チップC上に半導体チップCを複数積層する場合においては、半導体ウェハ基板Wの位置合わせマークの代わりに半導体チップC上面の位置合わせマークを用いる場合もある。
【0049】
本圧着装置4は、半導体チップC下面のバンプBと半導体ウェハ基板Wのパッド電極EとをバンプBの溶着により接合し、半導体チップCを半導体ウェハ基板Wの上に固定するものである。なお、半導体ウェハ基板W上に、上下に貫通する貫通電極を有する半導体チップCが仮固定状態で複数積層されている場合には、積層された半導体チップC間を一括で接合するものである。
【0050】
本圧着装置4は、
図4に示すように、本圧着用基台41、本圧着用テーブル42、本圧着用バックアップステージ43、本圧着用フレーム44、本圧着用ユニット45、本圧着用ヘッド46を備えている。
【0051】
本圧着用基台41は、本圧着装置4を構成する主な構造体であり、充分な剛性を有するように構成されている。本圧着用基台41は、本圧着用テーブル42と、本圧着用バックアップステージ43と、本圧着用支持フレーム44とを支持している。
【0052】
本圧着用テーブル42は、サポート基板Sの周縁部を保持し、(サポート基板Sに固定された)半導体ウェハ基板WをXY面内の任意な位置に移動させるものである。
図4に示した本圧着装置4においては、本圧着用基台41上にY方向に移動可能なY方向可動部42aを設け、Y方向可動部42a上にX方向に移動可能なX方向可動部42bを設け、X方向可動部42b上にθ方向に移動可能なθ方向可動部42cを設け、θ方向可動部42cがサポート基板Sの周縁部を保持する構成になっているがこれに限定されるものではない。サポート基板Sの周縁部を保持して、X、Yおよびθの各方向の位置調整が可能な構成であれば良い。ただし、本圧着用テーブル42の可動範囲内において、本圧着用テーブル42が本圧着用バックアップステージ43に接触しない構造である必要がある。
【0053】
本圧着用バックアップステージ43は、本圧着用ヘッド46により半導体ウェハ基板W上の半導体チップCを熱圧着する際にサポート基板S側から支持するものであり、図示しない吸着機構によりサポート基板Sを吸着保持する機能を備えていることが望ましい。本圧着用バックアップステージ43はヒータを内蔵していてもよい。このヒータは、本圧着用ヘッド46による熱圧着時にサポート基板S側から加熱を行うものである。
本圧着用バックアップステージ43の上面は、本圧着用ヘッド46によって押圧される領域を支持する形状である必要があるが、広すぎると他の構成要素との干渉が起こりやすいので好ましくない。本圧着ヘッド46の押圧面と本圧着用バックアップステージ43の上面が一対を成すことにより、半導体ウェハ基板Wの位置とは無関係に同一の平行度で加圧を行うことができる。
【0054】
本圧着用支持フレーム44は、本圧着用ユニット45を支持するものである。
図4の本圧着装置4において、本圧着用支持フレーム44は門型形状としている。これは、本圧着用ユニット45による加圧力が大きな場合にも適しているためである。
【0055】
本圧着用ユニット45は、本圧着用ヘッド46をZ方向に移動させるものである。本圧着用ユニット45は、図示しないサーボモータとボールねじとから構成される。本圧着用ユニット45は、サーボモータによってボールねじを回転させることによりボールねじの軸方向の駆動力を発生するように構成されている。本圧着用ユニット45は、ボールねじの軸方向が本圧着用バックアップステージ43の上面に対して垂直なZ方向になるように本圧着用支持フレーム44に取り付けられている。つまり、本圧着用ユニット45は、Z軸方向の駆動力(加圧力)を発生できるように構成されている。本圧着用ユニット45は、サーボモータの出力を制御することによりZ方向の加圧力を任意に設定できるように構成されている。なお、本実施形態において、本圧着用ユニット45は、サーボモータとボールねじの構成としたが、これに限定されるものではなく、空圧アクチュエータ、油圧アクチュエータやボイスコイルモータから構成してもよい。
【0056】
本圧着用ヘッド46は、本圧着用ユニット45の駆動力を半導体チップCに伝達するとともに、半導体チップCを加圧して熱圧着を行うものである。本圧着用ヘッド46には、半導体チップCを加熱するための本圧着用ヒータ47が内蔵されている。また本圧着用ヘッド46の先端部には本圧着用アタッチメント48が設けられており、本圧着用アタッチメント48によって形成される押圧面SAは、複数の半導体チップCを同時に加圧する形状を有している。
【0057】
本圧着用ヘッド46は、本圧着用ユニット45を構成している図示しないボールねじナットに取り付けられている。つまり、本圧着用ヘッド46は、本圧着用バックアップステージ43と平行に対向するように配置されている。すなわち、本圧着用ヘッド46は本圧着用ユニット45によってZ方向に移動されることで、本圧着用バックアップステージ43に近接する。
【0058】
図示しない搬送装置5は、切断装置2、仮圧着装置3と本圧着装置の間で半導体ウェハ基板W(または半導体チップCが仮固定された半導体ウェハ基板W)を固定したサポート基板Sの受け渡しを行なうものである。
【0059】
制御部6は、
図5に示すように、切断装置2、仮圧着装置3、本圧着装置4および搬送装置5を制御するものである。制御部6は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御部6は、切断装置2、仮圧着装置3、本圧着装置4および搬送装置5を制御するための種々のプログラムやデータが格納されている。
【0060】
制御部6は、切断用ステージ22と仮圧着用ステージ32と本圧着用テーブル42とに接続され、切断用ステージ22と仮圧着用ステージ32と本圧着用テーブル42とのX方向、Y方向、θ方向の移動量をそれぞれ制御することができる。
【0061】
制御部6は、切断用ユニット24と仮圧着用ユニット34と本圧着用ユニット45とに接続され、切断用ユニット24と仮圧着用ユニット34と本圧着用ユニット45とのZ方向の加圧力および切断用ユニット24の切断用ヘッド25の動作態様をそれぞれ制御することができる。
【0062】
制御部6は、仮圧着用ヒータ36と本圧着用ヒータ47とに接続され、仮圧着用ヒータ36と本圧着用ヒータ47との温度をそれぞれ制御することができる。
【0063】
制御部6は、切断用距離センサ27に接続され、半導体ウェハ基板Wの表面までの距離を取得することができる。
【0064】
制御部6は、切断用画像認識装置28と仮圧着用画像認識装置38とに接続され、切断用画像認識装置28と仮圧着用画像認識装置38とをそれぞれ制御し、半導体ウェハ基板Wや半導体チップCの位置情報を取得することができる。
【0065】
制御部6は、搬送装置5に接続され、搬送装置5を制御することができる。
【0066】
以下では、
図6から
図12を用いて、本発明に係わる半導体装置の製造装置1を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
【0067】
図6(a)は切断装置2で処理される前の、サポート基板Sに仮貼材Mを介して固定された半導体ウェハ基板Wの断面図である。この半導体ウェハ基板W全体の上面図が
図11(a)であるが、
図11(a)においてはパッド電極Eの記載を省いている。
【0068】
図6(a)に示した状態から、切断装置2は切断用ユニット24を下降してダイシングブレード26によって半導体ウェハ基板Wに切込を形成するように切断する(
図6(b))。切断に際して制御部6は、切断用画像認識装置28によりシリコンウェハ基板W面内における切断位置がダイシングブレード26の直下になるように位置合わせを行い、切断用距離センサ27により、半導体ウェハ基板Wの表面とダイシングブレード26の刃先位置を確認し所定の切込み深さとなるように切断用ユニット24を制御する。また、制御部6は半導体ウェハ基板Wを個片化するため縦横に直線的な切込みを入れるが、そのために半導体ウェハ基板WをXY面内で所定長さ移動させながら切断を行なうよう切断用ステージ22を制御する。なお、升目状の切込みを入れるために切断用ステージ22により半導体ウェハ基板Wを(サポート基板Sとともに)θ方向に90度移動させてもよいが、ダイシングブレード26をθ方向に90度回転させることが可能な(あるいはθ方向に90度向きが異なるダイシングブレードを有している)場合は、切断用ステージ22を回転させずに、ダイシングブレード26の向きを90度変えた後に切断時のステージ移動方向をダイシングブレード26の向きに合わせてもよい。
【0069】
図6(c)は切断工程完了後の断面図であり、半導体ウェハ基板W全体の上面図で示したのが
図11(b)である。
図11(b)により、切断工程により半導体ウェハ基板Wは升目状に切込部W0が形成され、ダイシングされていることが判る。
【0070】
図6(c)において切込部W0の深さが半導体ウェハ基板Wを貫通して仮貼材Mに達していることが判るが、詳しくは
図8のようになっている。
図8において、仮貼材厚みTMに対して、仮貼材Mの切断深さDCの関係は、(仮貼材Mの切断深さDC)/(仮貼材厚みTM)≧0.5とすることが望ましい。この値が0.5未満であると、熱圧着工程での仮貼材の変形が周囲に影響し、位置ズレを生じる可能性があるからである。また、0.5より大きく設定することで、切断装置2の切断用距離センサ27に少々の測定誤差が生じても半導体ウェハ基板Wを貫通するように切断することが出来る。
【0071】
切断装置2によってダイシングされた半導体ウェハ基板Wはサポート基板Sに固定された状態で搬送装置5によって仮圧着装置3に運ばれる。仮圧着装置3に搬送された半導体ウェハ基板Wはサポート基板に固定された状態で仮圧着用ステージ32に保持される。
【0072】
仮圧着工程において、仮圧着装置3の仮圧着用アタッチメント37に保持した半導体チップCを仮圧着用ヒータ36によって所定の仮圧着温度Ttまで加熱する。これによって半導体チップCに付着した熱硬化性接着剤Rには、熱が伝わり半導体チップCと略同一の仮圧着温度Ttに加熱される。ここで、仮圧着温度Ttは、熱硬化性接着剤Rの硬化開始温度より低く設定されている。すなわち、制御部6は熱硬化性接着剤Rが硬化しない温度域において熱硬化性接着剤Rが所定の粘度になるよう仮圧着用ヒータ36の温度を制御している。
【0073】
この状態で、制御部6は、半導体チップCを半導体ウェハ基板Wに仮固定するように仮圧着用画像認識装置38から取得した情報に基づいて仮圧着用ステージ32を位置調整する。この状態における半導体チップCと半導体ウェハ基板Wの状況を示したのが
図7(d)であり、この後に制御部6は仮圧着用ユニット34を制御して半導体チップCを半導体ウェハ基板W上に所定の圧力で圧着して仮固定する。
【0074】
以上の動作を半導体ウェハ基板W上に順次実施した後の状態の断面図が
図7(e)であり、半導体ウェハ基板W全体に半導体チップCが仮固定された状態の上面図で示したのが
図12(c)である。
【0075】
この後、半導体チップCが仮固定された半導体ウェハ基板Wはサポート基板Sに固定された状態で搬送装置5によって本圧着装置4に運ばれる。本圧着装置4に搬送されたサポート基板Sは周縁部を本圧着用テーブル42に把持される。制御部6は、本圧着用テーブル42で把持したサポート基板Sの位置を調整し、半導体チップCを仮固定した半導体ウェハ基板Wの熱圧着すべき領域の上下に本圧着用アタッチメント48と本圧着用バックアップステージ43が配置されるようにする。なお、この段階において、半導体チップCの上面に対して、本圧着用アタッチメント48の押圧面には隙間がある。
【0076】
次に、制御部6は、本圧着用ヒータ47を所定温度に加熱した状態で、本圧着ユニット45を制御して本圧着用ヘッド46を下降させて、半導体チップCを熱圧着する。その際、半導体ウェハ基板W全体に半導体チップCを仮固定した状態での、熱圧着領域SAを示した上面図が
図12(d)である。本実施形態において、熱圧着領域SAで最多4個の半導体チップCが熱圧着できるような本圧着用アタッチメント48を用いるが、これに限定されるものではなく、一括で圧着できる半導体チップCの数がこれより多くても少なくてもよい。
【0077】
この本圧着工程で、半導体チップCが仮固定された半導体ウェハ基板Wがサポート基板Sに固定された状態で熱圧着される状態を示したのが
図7(f)である。この熱圧着時において本発明の効果が発揮されるが、その効果については
図9を用いて説明する。
【0078】
半導体ウェハ基板Wをダイシングして個片化していない場合においては、
図9(a)に断面図を示すように、本圧着用アタッチメント48によって加熱される半導体チップCが昇温し、加熱された半導体チップCからの熱流Hcは熱伝導率の高い半導体ウェハ基板Wを伝わって周辺の(本圧着工程前の)半導体チップCに付着している熱硬化性樹脂Rを硬化開始温度以上に加熱してしまう。一方、半導体ウェハ基板Wをダイシングして個片化した場合においては、
図9(b)に断面図を示すように、半導体チップC間で半導体ウェハ基板Wに切込部W0があるので、半導体ウェハ基板Wを通じた熱伝導が防げる。更に、仮貼材Mとして用いられる素材は半導体に比べて熱伝導性が低いので、半導体チップCからの熱流Hcは極めて限定されたものになる。すなわち、本圧着用アタッチメント48を介して加熱されている領域外の半導体チップCの熱硬化性樹脂Rが硬化するのを防ぐことができる。
【0079】
更に、本圧着用アタッチメント48を介して加熱された半導体チップCから半導体ウェハ基板Wを通して外部に放出される熱が制限されるので、加熱対象の半導体チップCの上下方向での温度差を低減することが出来る。このため、半導体ウェハ基板W上に複数の半導体チップCを仮固定した状態で熱圧着する場合において、積層の上部(本圧着用アタッチメント48に近い側)と積層の下部(半導体ウェハ基板Wに近い側)で同等の接合品質を確保することが可能になる。
【0080】
また、仮貼材Mの素材が弾性を有していれば、半導体チップCの厚みバラツキにも対応し得る。すなわち、
図10(a)のように、仮固定さらた半導体チップCに厚みバラツキがあったとしても、弾性を有する仮貼材Mが本圧着工程で厚みバラツキを吸収する効果がある。
【0081】
以上、
図1に示した半導体装置の製造装置1を用いた実施形態について説明したが、本発明は、本圧着工程前に半導体ウェハ基板Wをダイシングして個片化することで効果を発揮するものである。このため、半導体装置の製造装置1を構成している切断装置2、仮圧着装置3および本圧着装置4の配列を変え、
図13に示すような半導体装置の製造装置100によって、仮圧着工程後の次に切断工程という順番にしてもよい。このような半導体装置100においては、
図5と同様な制御構成でよく、工程のプログラムが半導体装置の製造装置1とは異なる。なお、
図13においては、切断装置2を中心に仮圧着装置3と本圧着装置4を直角配置しているが、これに限定されるものではなく、仮圧着装置3、切断装置2.本圧着装置4の順で直線配置されていてもよい。
【0082】
以下では、
図14から
図16を用いて、本発明に係わる別の実施形態として、半導体装置の製造装置100を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
【0083】
図14(a)は仮圧着装置3で処理される前の、サポート基板Sに仮貼材Mを介して固定された半導体ウェハ基板Wの断面図である。この半導体ウェハ基板W全体の上面図が
図16(a)であるが、
図16(a)においても
図11(a)と同様にパッド電極Eの記載を省いている。
【0084】
このサポート基板Sに仮貼材Mを介して固定された半導体ウェハ基板Wは仮圧着装置3の仮圧着用ステージ32に固定され、
図14(a)のように、半導体チップCと半導体ウェハ基板Wが位置合わせされ(
図14(b))、半導体ウェハ基板W上に半導体チップCが仮固定される(
図14(c))。この仮圧着工程における仮圧着装置3の動作は、半導体装置の製造装置1と同様である。なお、半導体ウェハ基板W全体に半導体チップCが仮固定された状態の上面図で示したのが
図16(b)である。
【0085】
次に、半導体チップCが仮固定された半導体ウェハ基板Wはサポート基板Sに固定された状態で搬送装置5によって切断装置2に運ばれ、切断用ステージ22に保持された状態で切断用ユニット24を下降してダイシングブレード26によって半導体ウェハ基板Wに切込が形成される(
図15(d))。切断工程に際しては、半導体チップCが仮固定されている以外は半導体装置の製造装置1と同様に行う。すなわち、切込み深さも、仮貼材厚みTMに対して、仮貼材Mの切断深さDCの関係が、(仮貼材Mの切断深さDC)/(仮貼材厚みTM)≧0.5とすることが望ましい。
【0086】
切断工程完了後の状態は
図15(e)であり、半導体装置の製造装置1での仮圧着後の状態(
図7(e))と同じである。このため、本圧着工程(
図15(f))については、半導体装置の製造装置1と何ら変わらず、同じ効果が得られる。
【0087】
なお、いずれの実施形態においても、本圧着工程が完了したら、半導体ウェハ基板Wから仮貼材を剥離することにより、半導体装置として個片化することができる。また、FO−WLP用途においては、更に再配線層WR以外の半導体ウェハ基板W部分を除去してもよい。
【0088】
ところで、前述のとおり本発明は半導体ウェハ基板W上に複数の半導体チップCを積層状態で仮固定して熱圧着する際にも有効であるが、このための装置配列は
図1の半導体の製造装置1、
図13の半導体装置の製造装置100の何れでもよい。半導体の製造装置1では
図17(a)、
図17(b)のように半導体ウェハ基板Wを個片化してから半導体チップCを仮固定状態で積層し、半導体装置の製造装置100では半導体ウェハ基板Wに半導体チップCを仮固定状態で積層してから半導体ウェハ基板Wを個片化する。
【0089】
これまで説明した本発明の実施形態では、切断工程において、半導体ウェハ基板Wを貫通する切込みを入れているが、熱圧着対象以外の半導体チップへの熱影響影響を僅かでも低減する目的であれば。半導体ウェハ基板Wを貫通しない(ハーフカット)切込みであってもよい。例えば、
図19に示すように、半導体ウェハ基板厚みTWに対して、切込部W0の深さHCが、(切込部W0の深さHC)/(半導体ウェハ基板厚みTW)≧0.5であれば、半導体ウェハ基板Wを介した隣接半導体チップCへの熱影響は半減以下とすることが出来る。ただし、半導体ウェハ基板Wを貫通する切込み深さでなければ、半導体チップCの高さバラツキを仮貼材Mで緩和することは困難となるので、本圧着工程で用いる本圧着ヘッド46側に弾性を持たせることが望ましい。