特許第6643224号(P6643224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロッキード マーティン コーポレイションの特許一覧

特許6643224宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル
<>
  • 特許6643224-宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル 図000002
  • 特許6643224-宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル 図000003
  • 特許6643224-宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル 図000004
  • 特許6643224-宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル 図000005
  • 特許6643224-宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル 図000006
  • 特許6643224-宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル 図000007
  • 特許6643224-宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル 図000008
  • 特許6643224-宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル 図000009
  • 特許6643224-宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル 図000010
  • 特許6643224-宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643224
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】宇宙機並びに熱制御システム及び熱制御パネル
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/58 20060101AFI20200130BHJP
   B64G 1/44 20060101ALI20200130BHJP
   H02S 10/40 20140101ALI20200130BHJP
   H02S 30/20 20140101ALI20200130BHJP
【FI】
   B64G1/58
   B64G1/44 B
   H02S10/40
   H02S30/20
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-507603(P2016-507603)
(86)(22)【出願日】2014年4月8日
(65)【公表番号】特表2016-521225(P2016-521225A)
(43)【公表日】2016年7月21日
(86)【国際出願番号】US2014033285
(87)【国際公開番号】WO2014168923
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2017年3月17日
【審判番号】不服2019-4212(P2019-4212/J1)
【審判請求日】2019年4月1日
(31)【優先権主張番号】61/810,225
(32)【優先日】2013年4月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/197,033
(32)【優先日】2014年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598028028
【氏名又は名称】ロッキード マーティン コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Lockheed Martin Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ハミルトン
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 一ノ瀬 覚
【審判官】 氏原 康宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−114999(JP,A)
【文献】 特開2008−265522(JP,A)
【文献】 特開2012−140120(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0043427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/40
B64G 1/44
B64G 1/50 - 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙機であって、
宇宙空間との間で熱伝達を可能とすることができる露出領域を有する側面と、
前記露出領域を有する側面に結合されたものであり、その自由端が第1の距離にあって前記露出領域に隣接して位置決めされる折り畳み位置と、前記自由端が前記第1の距離より大きい第2の距離にあって前記露出領域から離間している拡張位置との間で移動可能である少なくとも1つの拡張可能部材と、
第1及び第2の側面を備えたものであり、前記第1の側面が前記第2の側面の放射率より低い放射率を有しており前記第1の側面が少なくとも0.50の吸収率及び0.20未満の放射率を有し、前記第2の側面が少なくとも0.80の吸収率及び少なくとも0.80の放射率を有するパネル本体と、前記パネル本体を宇宙機に結合するための前記第2の側面上の結合領域とを具備し、前記拡張可能部材の自由端に結合されている熱制御パネルと、を備え、
前記拡張可能部材が拡張可能な可撓性ソーラーアレイを備え、前記可撓性ソーラーアレイが内面及び外面を有する上パネルを備え、前記内面が少なくとも1つの太陽電池を備え、前記熱制御パネルが前記外面に結合されており、
前記拡張可能部材の折り畳み位置では、前記熱制御パネルが周囲光を吸収して熱を前記露出領域に向けて放出し、これによって前記露出領域を有する側面からの熱損失を最小限に抑えるように構成され、前記拡張可能部材の拡張位置では、前記露出領域を有する側面からの熱伝達が前記熱制御パネルによって実質的に抑制されずに行われるように構成された、宇宙機。
【請求項2】
前記少なくとも1つの拡張可能部材が前記露出領域を有する側面に結合されている、請求項1に記載の宇宙機。
【請求項3】
太陽光利用デバイスを更に備え、前記拡張可能部材の折り畳み位置では、前記太陽光利用デバイスの太陽電池が周期光に露出されない状態とされる、請求項1に記載の宇宙機。
【請求項4】
前記太陽光利用デバイスが前記露出領域に隣接した側面に結合されている、請求項3に記載の宇宙機。
【請求項5】
前記太陽光利用デバイスが前記露出領域を有する側面に結合された拡張可能な可撓性ソーラーアレイを備え、前記熱制御パネルが前記可撓性ソーラーアレイの上パネルの外面に結合されている、請求項3に記載の宇宙機。
【請求項6】
前記拡張可能部材の折り畳み位置では前記熱制御パネルの第2の側面が前記露出領域に面し、前記拡張可能部材の拡張位置では前記熱制御パネルの第2の側面が前記露出領域から離れた方向に面する、請求項1に記載の宇宙機。
【請求項7】
宇宙機の熱損失を最小限に抑えるための熱制御システムであって、
第1及び第2の端部を有するものであり、前記第1及び第2の端部が第1の距離で離間している折り畳み位置と、前記第1及び第2の端部が前記第1の距離より大きい第2の距離で離間している拡張位置との間で移動可能である拡張可能部材と、
前記第1の端部に取り付けられ、第1及び第2の側面を備えたものであり、前記第1の側面が前記第2の側面の放射率より低い放射率を有しており前記第1の側面が少なくとも0.50の吸収率及び0.20未満の放射率を有し、前記第2の側面が少なくとも0.80の吸収率及び少なくとも0.80の放射率を有するパネル本体と、前記パネル本体を宇宙機に結合するための前記第2の側面上の結合領域とを具備し、前記拡張可能部材の第2の端部から離間するように前記折り畳み位置から前記拡張位置に移動可能である熱制御パネルと、を備え、
前記拡張可能部材が少なくとも1つの拡張可能な可撓性ソーラーアレイを備え、前記可撓性ソーラーアレイが外面及び内面を有する上パネルを備え、前記内面が少なくとも1つの太陽電池を備え、前記熱制御パネルが前記上パネルの外面に取り付けられている、熱制御システム。
【請求項8】
宇宙空間との間で熱伝達を可能とすることができる露出領域を有する側面と、前記露出領域を有する側面に結合されたものであり、その自由端が第1の距離にあって前記露出領域に隣接して位置決めされる折り畳み位置、及び前記自由端が前記第1の距離より大きい第2の距離にあって前記露出領域から離間している拡張位置の間で移動可能である少なくとも1つの拡張可能部材と、第1及び第2の側面を備えたものであり、前記第1の側面が前記第2の側面の放射率より低い放射率を有し、前記拡張可能部材の自由端に結合されている熱制御パネルと、を備えた宇宙機において、前記拡張可能部材の折り畳み位置では、周囲光を吸収して熱を前記露出領域に向けて放出し、これによって前記露出領域を有する側面からの熱損失を最小限に抑えるように構成され、前記拡張可能部材の拡張位置では、前記露出領域を有する側面からの熱伝達が実質的に抑制されずに行われるように構成された熱制御パネルであって、
第1及び第2の側面を備えたものであり、前記第1の側面が少なくとも0.50の吸収率及び0.20未満の放射率を有し、前記第2の側面が少なくとも0.80の吸収率及び少なくとも0.80の放射率を有するパネル本体と、
前記パネル本体を宇宙機に結合するための前記第2の側面上の結合領域と、
を備える、熱制御パネル。
【請求項9】
前記パネル本体がカプトンを含む、請求項8に記載の熱制御パネル。
【請求項10】
前記パネル本体がチタンホイルを含む、請求項8に記載の熱制御パネル。
【請求項11】
前記パネル本体が前記第1の側面上に堆積された材料を含む、請求項8に記載の熱制御パネル。
【請求項12】
前記堆積された材料が、ニッケル、チタン、又は塗料を含む、請求項11に記載の熱制御パネル。
【請求項13】
前記第1又は第2の側面が化学変換コーティングを含む、請求項8に記載の熱制御パネル。
【請求項14】
前記パネル本体が少なくとも2つの材料を含む、請求項8に記載の熱制御パネル。
【請求項15】
前記第1の側面が、ベアチタン、陽極酸化処理チタン、ベアベリリウム、又はクロム酸黒ニッケルを含む、請求項14に記載の熱制御パネル。
【請求項16】
前記第2の側面が、黒色の塗料、カプトンのテープ、カプトンのフィルム、又は化学変換コーティングを含む、請求項14に記載の熱制御パネル。
【請求項17】
前記結合領域に取り付けられた結合機構を更に備える、請求項8に記載の熱制御パネル。
【請求項18】
実質的に矩形の外周を備える、請求項8に記載の熱制御パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2013年4月9日に出願された米国特許出願第61/810,225号の優先権の利益を主張する。その全体は引用により本願にも含まれるものとする。
【0002】
本発明は、一般に宇宙機の加熱制御システムに関し、より具体的には、上段打ち上げ段階及びトランスファー軌道の間に用いられる断熱コンポーネントに関する。
【背景技術】
【0003】
宇宙機の太陽光利用コンポーネントが折り畳み構成である場合、宇宙機を加熱しなければならない必要性のために、上段打ち上げ段階及びトランスファー軌道中に静止宇宙機の電池が消耗することがある。電池が消耗して他の重要なシステムに給電できなくなると、宇宙機は損傷しかねない。
【0004】
このような結果を防ぐため、多くの宇宙機は、ソーラーアレイ(solar array)が折り畳み構成である時に、熱遮蔽を用いるか、又は太陽光による電気エネルギを生成して機内ヒータに給電する。熱遮蔽を用いた宇宙機では、そのような構成は、宇宙機のソーラーアレイ又はラジエータパネルに熱遮蔽を取り付けることによって相対的な熱損失を低減する。折り畳み構成での太陽エネルギ発生は、格納されたソーラーアレイパネルを機外方向に向けて該ソーラーアレイパネルが太陽エネルギを収集できるようにすることで実行される。
【0005】
特に、熱遮蔽はコストが高く、宇宙機の重量を増すが、宇宙機を加熱するための太陽エネルギを収集するものではない。また、折り畳み構成での太陽エネルギ発生が可能なのは、剛性ソーラーアレイパネルを用いた宇宙機だけである。従って、全ての宇宙機が熱遮蔽を効率的に利用可能であるわけではなく、全てのソーラーアレイパネルが折り畳み構成である時に太陽エネルギを発生するように構成可能であるわけでもない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示するいくつかの実施形態の態様によれば、折り畳み構成である時に完全に封入されて太陽エネルギを発生させることができないアレイである可撓性ソーラーアレイを有する宇宙機が、従来の熱遮蔽の欠点がない熱制御システムを組み込み得ることが認識される。更に、熱制御システムは、可撓性ソーラーアレイを用いるもの以外の宇宙機用途において熱損失を効率的に最小限に抑えることができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、露出領域を有する側面と、拡張可能部材と、熱制御パネルと、を備えることができる宇宙機が提供される。宇宙機の露出領域を有する側面は、宇宙機と例えば宇宙空間のような周囲環境との間で熱伝達を可能とすることができる露出領域を備えることができる。拡張可能部材は、例えば支柱又はトラスによって宇宙機に結合することができる。拡張可能部材は、その自由端が第1の距離にあって露出領域に隣接して位置決めされる折り畳み位置と、前記自由端が第1の距離より大きい第2の距離にあって前記露出領域から離間している拡張位置との間で移動可能である。熱制御パネルは、第1及び第2の側面を備える。前記第1の側面は前記第2の側面の放射率より低い放射率を有し得る。例えば第1の側面は、第2の側面の放射率より大幅に低い放射率を有し得る。更に第1の側面は、宇宙機の側面より低い放射率を有することで、折り畳み位置にある場合に宇宙機の側面からの熱損失を最小限に抑えることができる。熱制御パネルは拡張可能部材の自由端に結合されている。更に、折り畳み位置において熱制御パネルは、入射する太陽エネルギを吸収して熱を露出領域に向けて放出し、これによって宇宙機の側面に熱を与え、宇宙機の電池によるヒータ使用を最小限に抑えるか又は排除するように構成可能である。折り畳み位置では、熱制御パネルは、該熱制御パネルから例えば宇宙空間のような環境への熱損失を抑制することができる。更に、拡張位置では、宇宙機の側面から宇宙空間への熱伝達は熱制御パネルの形態係数の妨害(blockage)によって実質的に抑制されない傾向を持ち得る。
【0008】
宇宙機の拡張可能部材は、露出領域を有する側面に結合することができる。拡張可能部材は、拡張可能な可撓性ソーラーアレイ等のソーラーアレイを備えるか又はこれに結合することができる。ソーラーアレイは、内面及び外面を有する上パネルを備え得る。内面は少なくとも1つの太陽電池を備えることができる。前記熱制御パネルは外面に結合すればよい。
【0009】
宇宙機は、ソーラーアレイ等の太陽光利用デバイスも備えることができる。前記拡張可能部材の折り畳み位置では、太陽光利用デバイスの太陽電池は周期光に露出されない場合がある。太陽光利用デバイスは、露出領域に隣接した宇宙機の側面に結合すればよい。太陽光利用デバイスは、露出領域を有する側面に結合された拡張可能な可撓性ソーラーアレイを備え、熱制御パネルは前記可撓性ソーラーアレイの上パネルの外面に結合することができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記拡張可能部材の折り畳み位置では、熱制御パネルの第2の側面は露出領域に面することができる。更に、前記拡張可能部材の拡張位置では、熱制御パネルの第2の側面は露出領域から離れた方向に面することができる。熱制御パネルは、露出領域の外周と実質的に等しいサイズの外周を備え得る。前記熱制御パネルは実質的に平面の本体を備えることができる。更に、前記拡張可能部材の折り畳み位置では熱制御パネルを露出領域に対して実質的に平行に位置決めし、拡張可能部材の拡張位置では熱制御パネルを露出領域に対して実質的に直交して位置決めすることができる。
【0011】
また、いくつかの実施形態は、宇宙機の熱損失を最小限に抑えるための熱制御システムを提供するように構成することができ、この熱制御システムは拡張可能部材及び熱制御パネルを備える。拡張可能部材は第1及び第2の端部を有し得る。拡張可能部材は、第1及び第2の端部が第1の距離で離間している折り畳み位置と、第1及び第2の端部が第1の距離より大きい第2の距離で離間している拡張位置との間で移動可能である。熱制御パネルは、前記第1の端部に取り付けることができ、第1及び第2の側面を有するパネル本体を備え得る。前記第1の側面は第2の側面の放射率より低い放射率を有し得る。熱制御パネルは、拡張可能部材の第2の端部から離間するように、拡張可能部材の折り畳み位置から拡張位置に移動可能である。
【0012】
拡張可能部材は、少なくとも1つの拡張可能な可撓性ソーラーアレイを備えることができる。前記可撓性ソーラーアレイは、外面及び内面を有する上パネルを備え得る。内面は少なくとも1つの太陽電池を備え得る。いくつかの実施形態では、熱制御パネルは上パネルの外面に取り付けることができる。
【0013】
また、いくつかの実施形態は、宇宙機のための熱制御パネルを提供することができる。これらは、第1及び第2の側面を備えたパネル本体と、前記パネル本体を宇宙機に結合するための第2の側面上の結合領域と、を備えることができる。いくつかの実施形態では、機外に面した側面とすることができる第1の側面は、少なくとも0.50の吸収率及び0.20未満の放射率を有し得る。いくつかの実施形態では、第1の側面について、放射率に対する吸収率の比は少なくとも3.0とすればよい。いくつかの実施形態では、機内に面した面とすることができる第2の側面は、少なくとも0.80の吸収率及び少なくとも0.80の放射率を有し得る。
【0014】
パネル本体は、黒カプトン、チタンホイル、又は第1の側面もしくは第2の側面上に堆積された材料を含み得る。堆積された材料は、ニッケル、チタン、又は黒色の塗料等の塗料を含み得る。第1又は第2の側面は化学変換コーティングを含み得る。
【0015】
パネル本体は少なくとも2つの材料を含み得る。第1の側面は、ベアチタン、陽極酸化処理チタン、ベアベリリウム、及び/又はクロム酸黒ニッケルを含み得る。第2の側面は、黒色の塗料、カプトンのテープ、カプトンのフィルム、及び/又は化学変換コーティングを含み得る。
【0016】
熱制御パネルは更に、結合領域に取り付けられた結合機構を備え得る。熱制御パネルは実質的に矩形の外周を備え得る。
【0017】
また、宇宙機からの熱伝達を制御する方法も提供することができる。この方法は、宇宙機の露出領域に隣接して熱制御パネルを位置決めすることと、熱制御パネルが第1の距離で露出領域から離間している第1の位置から、熱制御パネルが第1の距離より大きい第2の距離で露出領域から離間している第2の位置へ該パネルを移動させることと、を備え得る。第1の位置では宇宙機からの熱損失が熱制御パネルによって抑制され、第2の位置では宇宙機からの熱損失が熱制御パネルによって抑制されない。移動させることは、拡張可能部材を移動させることを含み得る。拡張可能部材は可撓性ソーラーアレイを備えることができ、移動させることは、可撓性ソーラーアレイを拡張可能部材の折り畳み位置から拡張位置へ移動させてソーラーアレイの太陽電池を露出させることを備え得る。
【0018】
1つ以上の展開可能なソーラーアレイに近接して位置決めされた1つ以上のラジエータパネルを有する宇宙機を備えたいくつかの実施形態を提供することができる。1つ以上のソーラーアレイは、展開していない位置から展開位置へ宇宙機から外側の方向に展開するように構成可能である。装置は、1つ以上のソーラーアレイに動作可能に接続された1つ以上の熱制御パネルを備えることができ、この熱制御パネルは、1つ以上のソーラーアレイが折り畳み又は拡張していない位置にある場合に、1つ以上のラジエータパネルの露出領域を覆うように構成されている。各熱制御パネルは、機外に向いた面及び機内に向いた面を備え得る。機外に向いた面は高い太陽エネルギ吸収の材料を含み、機内に向いた面は機外に向いた面より高い放射率を有する材料を含むことができる。この点で、各熱制御パネルが展開していない位置にあって太陽光に露出されている場合、熱制御パネルはある量の太陽光を吸収して熱を下にあるラジエータパネルへ向けて機内方向に放出又は放射して、ヒータによる電池の消費を低減又は解消することができ、同時に、熱制御パネルの機外に向いた面の放射率が低いことによる下部のラジエータパネルからの熱損失を抑制又は最小限に抑えることができる。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、宇宙機が機内加熱システムを使用しなくて済むように、熱制御パネルは宇宙機のラジエータパネルに向けて充分な熱(例えば3000〜4000ワット)を放射することで、そのような加熱システムに関連した電池の電気消費を回避することができる。
【0020】
主題の技術の更に別の特徴及び利点は以下の記載において述べられ、一部は記載から明らかになり、又は主題の技術の実施によって学習され得る。主題の技術の利点は、記述された記載及びそのクレーム並びに添付図面に特に示された構造によって実現及び達成される。
【0021】
前述の一般的な記載及び以下の詳細な説明は例示的及び説明的なものであり、特許請求されるような本発明の更なる説明を与えるように意図されていることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本明細書の更なる理解を与えるために含まれ、本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付図面は、開示する実施形態を例示し、記載と共に、開示する実施形態の原理を説明するように機能する。
【0023】
図1】剛性ソーラーアレイパネルを有する従来の宇宙機の斜視図である。
図2図1の宇宙機の上面図である。
図3図1の宇宙機の側面図である。
図4図1の宇宙機の端面図である。
図5】いくつかの実施形態に従った、折り畳み構成の可撓性ソーラーアレイパネル及び熱制御パネルを有する宇宙機の斜視図である。
図6図5の宇宙機の上面図である。
図7図5の宇宙機の側面図である。
図8図5の宇宙機の端面図である。
図9】いくつかの実施形態に従った、可撓性ソーラーアレイパネルが展開された構成である図5の宇宙機の斜視図である。
図10】いくつかの実施形態に従った、異なる材料及び光入射角を有する熱制御パネルの温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の詳細な説明では、主題の技術の完全な理解を得るために多数の具体的な詳細事項を述べる。しかしながら、主題の技術はこれらの具体的な詳細事項の一部がなくても実施可能であることは当業者には認められよう。他の例では、主題の技術を曖昧にしないために、周知の構造及び技法については詳細には示さない。
【0025】
以下に述べる詳細な説明は、主題の技術の様々な構成を記述することを意図しており、主題の技術を実施することができる構成のみを表すことは意図していない。添付図面は、本明細書に組み込まれて詳細な説明の一部を構成する。詳細な説明は、主題の技術の完全な理解を得る目的のために具体的な詳細事項を含む。しかしながら、主題の技術はこれらの具体的な詳細事項がなくても実施可能であることは当業者には認められよう。いくつかの例では、主題の技術を曖昧にするのを避けるために、周知の構造及びコンポーネントについてはブロック図の形としては示さない。理解を容易にするため、同様のコンポーネントに同一の要素番号を付す。
【0026】
打ち上げ及び初期軌道段階の間、衛星がその最終軌道に安全に位置決めされることを保証するため、宇宙機を制御し宇宙機と通信する際に電池電力が必要となる。更に、トランスファー軌道段階では、バスセクション等の宇宙機のコンポーネントの完全な機能を可能とするためそれらを−20℃超の温度に維持すると共に、非動作コンポーネントを機能限界温度の下限より高く維持しなければならない。宇宙機からの熱損失があるので、宇宙機の閾値温度を発生又は維持するためには電池電力及び/又は熱パネルが必要である。これらの選択肢は双方とも、使用には制限及び結果が伴う。
【0027】
例えば、図1から図4は、22,000マイルの静止軌道高度に衛星を投入するトランスファー軌道段階のための構成である一般的な従来の宇宙機100を示す。宇宙機100は、その対向側面に、格納された構成の1対の剛性ソーラーアレイ102と1対のラジエータパネル104とを備えている。各ラジエータパネル104は宇宙機100の側面に沿って延在し、熱損失は主にこれらのラジエータパネル104によって生じる。トランスファー軌道段階の間、又は剛性ソーラーアレイ102を展開する前、ラジエータパネル104は剛性ソーラーアレイ102の外周の隣接領域又は外周を取り囲む領域でのみ露出している。このため熱損失は低減するが、防止されるわけではない。従って宇宙機100は、そのコンポーネントの充分な温度を維持するため、電池エネルギを用いて機内ヒータに給電すると共に充分な熱を発生させなければならない。
【0028】
宇宙機100は、剛性ソーラーアレイ102を展開する前の上段トランスファーの間、特に宇宙機100のバスセクションに給電するように構成された電池を含む。しかしながら、これらの電池は軌道上の要件向けにサイズが設定されており、上段トランスファーの間(打ち上げ機フェアリングは機外投棄される)、更に剛性ソーラーアレイ102の展開前の分離後期間のために要する8〜10時間中に再充電されることなく機内ヒータに給電するには小型である。
【0029】
従って、電池は再充電されることなく機内ヒータ及び他のコンポーネントに給電するには小型であるので、宇宙機100はトランスファー軌道段階中にエネルギ及び加熱の要件を満足させるため太陽エネルギを利用しなければならない。図1から図4に示す、露出した上パネル106を含む剛性ソーラーアレイ102の場合、宇宙機100は、該宇宙機100を加熱すると共にラジエータパネル104からの熱損失を補償するための電気エネルギを発生させることができる。更に、上パネル106による電気エネルギの発生は、宇宙機100が「正のエネルギバランス」を適切に維持することを可能とする。すなわち、発生させた電気エネルギは、宇宙機100の電池を再充電し、宇宙機100のバス機器の動作に用いられる電気エネルギを補い、宇宙機100を加熱するためには充分である。このため、剛性ソーラーアレイ102の場合、宇宙機100は、機内ヒータの起動を可能とするのに充分な太陽電気エネルギを発生させることができる。さもなければ、利用可能な電池電力に著しい負荷がかかっていたはずである。
【0030】
しかしながら、剛性ソーラーアレイ102とは異なり、格納された可撓性ソーラーアレイを用いる場合、該ソーラーアレイは完全に封入されるので、可撓性ソーラーアレイを展開する前にはエネルギ発生用の上パネルは露出しない。このため、可撓性ソーラーアレイを有する宇宙機の機内ヒータの給電では、電池からの純エネルギ消費が生じる。これは、ヒータ及びバス動作による電池の消費を補うための対応した太陽電気エネルギの発生が行われないからである。
【0031】
また、一部の宇宙機において、ラジエータパネルが熱遮蔽又はトランスファー軌道熱遮蔽(TOTS:Transfer Orbit Thermal Shield)によって覆われる場合があることに留意すべきである。TOTSは、宇宙機100のラジエータパネル104からの放射熱損失を最小限に抑える。TOTSは、ラジエータパネル104の領域全体を覆うように使用可能であるが、熱損失及び電池ヒータ消費を完全に抑制するものではない。
【0032】
従って、本明細書に開示する実施形態の少なくとも一部の態様によれば、可撓性ソーラーアレイを用いた宇宙機について、宇宙機の電池電力の純損失を生じることなく宇宙機のコンポーネントを保護及び保持するのに充分な熱を維持又は発生させる費用効果の高い軽量のシステムが必要とされていることが認識される。
【0033】
以下の記載では、電池から電気エネルギを消費することも太陽電気エネルギの発生を必要とすることもなく宇宙機のための熱を発生又は維持することができる熱制御システムの実施形態を開示する。従って、宇宙機は、利用可能な電池電力を消耗するリスクなしに、更にそのために上段打ち上げ段階中に宇宙機が損傷することもなく、可撓性ソーラーアレイを用いることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、熱制御システムは、宇宙機に結合された少なくとも1つの拡張可能部材と、この拡張可能部材に結合された熱制御パネルと、を備えることができる。熱制御パネルは、上段打ち上げ段階の間に太陽エネルギを収集し、これを宇宙機のラジエータパネルに向けて放射することができる。
【0035】
拡張可能部材は、この拡張可能部材の自由端が第1の距離にあって宇宙機の露出した熱放散領域に隣接して位置決めされる折り畳み位置と、自由端が第1の距離より大きい第2の距離にあって露出領域から離間している拡張位置との間で移動可能である。
【0036】
熱制御パネルは、入射する太陽エネルギを収集してこれを宇宙機のラジエータパネルに向けて機内に再放射する1つ以上の材料を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、熱制御パネルは入射する太陽エネルギの50%〜95%を収集することができる。熱制御パネルは、露出したラジエータ領域の全体を覆う必要はない。熱制御パネルは、一部の領域のみを覆っても充分な熱を発生させるように設計され、これによってコスト及び質量を最小限に抑えることができる。
【0037】
例えばここで図5図9を参照すると、宇宙機200は、少なくとも一方の側に、宇宙機200と例えば宇宙空間のような環境との間で熱伝達を可能とする露出領域202を有する。露出領域202は側面パネル204の一部とすればよい。側面パネル204は、1つ以上の宇宙機のコンポーネントによって少なくとも部分的に覆うことができる。図示のように、側面パネル204は、ソーラーアレイパネルボックス210によって少なくとも部分的に覆うことができる。ソーラーアレイパネルボックス210は、可撓性ソーラーアレイ等のソーラーアレイを収容することができる。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、宇宙機200は、この宇宙機200に結合された少なくとも1つの可動部又は拡張可能部材208を備えることができる。拡張可能部材208は、折り畳み位置と拡張位置との間で動くように構成可能である。いくつかの実施形態によれば、可動部又は拡張可能部材208は、熱制御パネル212又は遮蔽に結合することができる。熱制御パネル212は、拡張可能部材208の移動により起動されて、宇宙機200に近付く方向又は宇宙機200から遠ざかる方向に動かすことができる。熱制御パネル212は、宇宙機200から異なる距離に離間した第1の位置と第2の位置との間で移動することができる。
【0039】
可動部又は拡張可能部材208は、熱制御パネル212又は遮蔽を移動させるためだけに用いる専用コンポーネントとすることができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、可動部又は拡張可能部材208は、熱制御パネル212又は遮蔽の起動機構以外の主な用途を有する宇宙機200のコンポーネントから成るか又はそのようなコンポーネントに結合することも可能である。
【0040】
例えば図5図8は、折り畳み位置220に示される拡張可能部材208が、可撓性ソーラーアレイ(210)から成るか又はこれに結合されている実施形態を示す。図9は、拡張位置222の可撓性ソーラーアレイ(210)を示す。このような実施形態では、重量、複雑さ、又は他のコンポーネントとの起こり得る干渉を増すことなく、可撓性ソーラーアレイ(210)が補助機能(熱制御パネル212又は遮蔽の起動)を提供することができるという利点が得られる。いくつかの実施形態によれば、可撓性ソーラーアレイ(210)は、アコーディオン型スタック又はアコーディオン型の扇状折り畳み構成を備えることができ、これは、図5図8に示す構成から図9に示す構成に拡張又は展開することができる。いくつかの実施形態では、可撓性ソーラーアレイ(210)は、この可撓性ソーラーアレイ(210)を機外に拡張するため拡張可能部材208と結合するように構成された支柱又はトラス状構造を備えることができる。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、熱制御パネル212は、可撓性ソーラーアレイ(210)の既存の外側カバー又はコンポーネントに取り付けることができる。例えば熱制御パネル212は、可撓性ソーラーアレイ(210)を収容する外側カバー又はボックスの上部と同一平面とすることができる。更に、熱制御パネル212は、可撓性ソーラーアレイ(210)のパネルの1つ又は縁部に取り付けることも可能である。
【0042】
従って、可撓性ソーラーアレイ(210)がその折り畳み構成(図5図8に示す)から展開位置(図9に示す)に動かされると、熱制御パネル212は、これが結合された可撓性ソーラーアレイ部分(例えばカバーの上部)と共に移動することができる。このため図9に示すように、熱制御パネル212は宇宙機200から遠位に離間し、可撓性ソーラーアレイ(210)の末端部に配置され得る。図9は、可撓性ソーラーアレイ(210)が展開された場合、該可撓性ソーラーアレイ(210)に取り付けられた2つ以上の熱制御パネル212を可撓性ソーラーアレイ(210)によって起動できることを示す。
【0043】
図6図8を参照すると、折り畳み又は格納構成において、熱制御パネル212は宇宙機200に熱放射又は発熱機能を与えることができる。図6は、熱制御パネル212に入射する直接光240と、下にある側面パネル204等の宇宙機200の一部から反射した間接光242と、を示す。この直接光240及び間接光242は熱制御パネル212によって吸収されて、全体が宇宙空間に露出される場合よりも高い温度に熱制御パネル212を加熱することができる。熱制御パネル212は、下にある側面パネル204に向けて熱を放出又は放射するように構成可能である。この熱放射又は発熱は、側面パネル204からの宇宙機200の熱損失によって生じる電池からのヒータ電力消費の低減又は解消に役立てることができる。
【0044】
図6図8を参照すると、折り畳み又は格納構成において、熱制御パネル212は、宇宙機200の下にある側面パネル(ラジエータパネル)204と実質的に平行であるように取り付けることができる。しかしながらいくつかの実施形態では、熱制御パネル212は、下にある側面パネル204又は宇宙機200の他のコンポーネントもしくは他の部分に対して斜めに又は非平行に位置決めすることも可能である。いくつかの実施形態では、熱制御パネル212は実質的に平面とすることができる。しかしながら、熱制御パネル212は3次元の非平面形状を含むことも可能である。
【0045】
熱制御パネル212は、側方から見た(例えば側面パネル204に対する直交方向から見た)場合、側面パネル204の外周より大きいか又は外周よりも外側に延在する外周を備えることができる。いくつかの実施形態では、熱制御パネル212の全外周は、側面パネル204の全外周よりも外側に延在するか又は外周全体を取り囲み、これによって熱制御パネル212は側面パネル204の全ての露出領域202を覆うように位置決めすることが可能となる。しかしながら、いくつかの実施形態は、熱制御パネル212の一部のみ又はいくつかの部分のみが側面パネル204の一部よりも外側に延在するように構成され得る。
【0046】
更に、図7は、宇宙機200の側面パネル204の全ての露出領域202を覆うように位置決めされた熱制御パネル212を側面図で示すが、熱制御パネル212は全ての露出領域202より小さい領域を覆うことも可能である。従っていくつかの実施形態では、熱制御パネル212は、側面パネル204の周辺長、サイズ、又は形状とほぼ等しい周辺長、サイズ、又は形状を含み得る。例えば側面図において、熱制御パネル212は、露出領域202の少なくとも約半分、又は露出領域202の少なくとも約4分の3を覆うことができる。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、熱制御パネル212は可撓性ソーラーアレイ(210)の側面全体を覆うように位置決めすることができる。しかしながら、いくつかの実施形態は、可撓性ソーラーアレイ(210)の側面の一部のみを熱制御パネル212で覆うか又は熱制御パネル212に取り付けるように構成可能である。可撓性ソーラーアレイ(210)の各パネルの幅は、熱制御パネル212の全幅の約5分の1から約2分の1、及び約4分の1から約4分の1とすればよい。
【0048】
更に、いくつかの実施形態では、熱制御パネル212は剛性材料又は屈曲可能材料を含むことができる。熱制御パネル212は多種多様な形状のいずれかとすればよい。例えば熱制御パネル212の外周は、矩形、方形、円形、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0049】
図6及び図8に示すように、熱制御パネル212は、機外に向いた第1の側又は表面260(例えば宇宙空間に面する)と、機内に向いた第2の側又は表面262(例えば宇宙機200に面する)と、を含むことができる。第1及び第2の側260、262は異なる特性を有することができる。例えば第1及び第2の側260、262は、異なる太陽光吸収率及び/又は赤外線放射率を有し得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、熱制御パネル212の第1の側260は吸収率の高い材料で構成することができる。更に、第1の側260は放射率の低い材料で構成することができる。更に、いくつかの実施形態では、第1の側260は吸収率が高く放射率が低い材料で構成することができる。例えばいくつかの実施形態では、第1の側260の吸収率は、少なくとも約0.40、少なくとも約0.50、少なくとも約0.60、少なくとも約0.70、又は少なくとも約0.80とすることができる。更に、第1の側260の放射率は、0.30未満、0.20未満、0.15未満、0.10未満、又は0.05未満とすることができる。いくつかの実施形態では、第1の側260の放射率に対する吸収率の比は、少なくとも約2.0、少なくとも約3.0、少なくとも約5.0、少なくとも約8.0、又は少なくとも約11.0とすることができる。
【0051】
第1の側260は、例えばカプトン(Kapton)、チタン、ニッケル、ベリリウム、及びそれらの誘導体、例えばチタンホイル、ベアチタン、陽極酸化処理チタン、ベアベリリウム、クロム酸黒ニッケル、又は他の先進の太陽光選択性表面材料、又はそれらの組み合わせで構築すればよい。
【0052】
第2の側262は吸収率の高い材料で構成することができる。しかしながら、第2の側262は放射率の高い材料で構成することも可能である。いくつかの実施形態において、第2の側262は吸収率が高く放射率が高い材料で構成することができる。例えばいくつかの実施形態では、第2の側262の吸収率は、少なくとも約0.70、少なくとも約0.80、少なくとも約0.85、少なくとも約0.90、又は少なくとも約0.95とすることができる。更に、第2の側262の放射率は、少なくとも約0.60、少なくとも約0.70、少なくとも約0.80、少なくとも約0.85、又は少なくとも約0.90とすることができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、第2の側262は、塗料(黒色の塗料等)、カプトンのテープ又はフィルム、金属堆積物(ニッケル堆積物、チタン堆積物、クロム堆積物等)、化学変換コーティング、又はそれらの誘導体、又はそれらの組み合わせから構成することができる。いくつかの実施形態では、第2の側262は、その下にある高放射率の光学太陽光リフレクタラジエータコーティングに放射するように構成することができる。放射率が高い場合、第2の側262は、吸収した太陽光線からの熱を宇宙機200に向けて、特に宇宙機200の側面パネル204に向けて放射することができる。
【0054】
図10は、いくつかの実施形態に従った、様々な機外材料及び光入射角についての例示的な宇宙機のラジエータパネルの温度プロファイルを有するグラフを示す。宇宙機は、トランスファー軌道中に一般的に見られるように、受動熱制御モードでその天底−天頂軸を中心に回転していると想定する。光入射角は、図7図8に示すように、宇宙機回転軸に対して0度及び60度として実証されている。図10のグラフでは、熱制御パネル212が、その機外に向いた第1の側260に用いる材料及び光入射角に基づいて、経時的に様々な温度範囲を達成可能であることが示されている。例えばライン300は、0度の角度での陽極酸化処理チタンの温度範囲を示す。ライン302は、60度の角度での陽極酸化処理チタンの温度範囲を示す。更に、ライン310は、0度の角度でのベアチタンの温度範囲を示す。ライン312は、60度の角度でのベアチタンの温度範囲を示す。ライン320は、0度の角度でのアルミニウム処理カプトンの温度範囲を示す。ライン322は、60度の角度でのアルミニウム処理カプトンの温度範囲を示す。アルミニウム処理カプトンは従来TOTS構成に用いられる。ライン322の結果は、トランスファー軌道終了又はソーラーアレイ展開実行のかなり前である2.3時間の時点で、必要な動作温度の下限を維持するためにヒータ出力が必要となることを示している。ライン300、302、及び310、312で表される他の2つのサンプルの太陽光選択性材料は、パネル202の温度をヒータ範囲超に維持することができ、従って不都合なヒータによる電池の電力消費は回避される。
【0055】
熱制御パネル212は薄いシート状の材料で構成することができる。例えばパネルは、約2mmから約10mmの厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、パネルの厚さは約3mmから約6mmであり得る。例えばパネルの厚さは、約3mmから約4mm、約3mmから約5mm、約4mmから約5mm、又は他のそのような範囲とすることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、宇宙機200の一方側の側面パネル(ラジエータパネル)204は、幅が8フィートで高さが20フィートとすることができ、展開されていない可撓性ソーラーアレイ(210)はこのラジエータパネル上で3フィート×15フィートの面積を占める。本明細書に開示した熱制御パネル212の実施形態を用いない場合、展開していない可撓性ソーラーアレイ(210)の側面及び上部の側面パネル(ラジエータパネル)204の露出部分は、宇宙機200内部のシステムから熱を失い続けるか又は放射し続ける。トランスファー軌道中、機内ヒータが起動されて電池から電力を消費する可能性がある。熱制御パネル212は、露出領域(例えば各辺が2〜3フィート)を覆い、前述の機外に面した表面260を用いて太陽エネルギを収集し、側面パネル(ラジエータパネル)204の露出領域202に向けて内側に熱を放射して、熱損失を防止すると共に、電気ヒータのラジエータパネルに関連した電池の電力消費を回避することができる。
【0057】
いくつかの実施形態の態様では、トランスファー軌道の持続期間は2週間以上であり得るが、再充電機能を持たない電池は約8時間しか持続しないことが認識される。このため、本明細書に開示するいくつかの実施形態を実施することで、ソーラーアレイの展開前にヒータ出力を使用する必要性を解消し、電池寿命を20時間より長くし、これによって可撓性ソーラーアレイ(210)の展開前に許容可能な動作を可能とすることができる。
【0058】
いくつかの態様において、機外及び/又は機内の材料は例えば0.9の伝達係数を生成するように選択すればよい。従って、太陽が0.951ワット/平方インチの量の太陽エネルギを生成する場合、再放射されるエネルギ量は、S=0.8559ワット/平方インチ(0.9×0.951)であり得る。トランスファー軌道中に宇宙機200が回転するならば、一度に吸収されるエネルギ量は、1/π×Sであり得る。熱制御パネル212により生成される合計エネルギは、露出領域202を覆う熱制御パネル212の全面積とSの値とに基づいて計算することができる。
【0059】
解析により、上段分離後のフェアリング排出とソーラーアレイ展開との間の典型的な回転(rotisserie)モード中に、幅広い範囲の太陽光入射角について、充分な熱を発生させて宇宙機200に再放射させることが可能であると確認されている。本明細書に記載するいくつかの実施形態は、全体的な電池消費を低減するにあたって非可撓性アレイのミッションでも高度に生産的であり得るという利点があり、TOTSを用いる場合、全体的なTOTSサイズを縮小することができる。
【0060】
主題の技術の記載は、本明細書に記載した様々な態様を当業者が実施できるように与えている。主題の技術について様々な図面及び態様を参照して具体的に記載したが、これらは例示の目的のためだけのものであり、主題の技術の範囲を限定するものとして解釈されるものでないことは理解されよう。
【0061】
様々なコンポーネント間の関係を本明細書において記載し、及び/又は直交もしくは垂直であるとして例示したが、これらのコンポーネントはいくつかの実施形態では他の構成で配置することができる。例えば、言及したコンポーネント間に形成される角度は、いくつかの実施形態では90度より大きいか又は90度より小さい場合がある。
【0062】
主題の技術を実施するためには他にも多くの方法があり得る。本明細書に記載した様々な機能及び要素は、主題の技術の範囲から逸脱することなく、例示したものとは異なる方法でも実施可能である。これらの態様に対する様々な変更は当業者には容易に明らかとなり、本明細書に規定した一般的な原理は他の態様にも適用され得る。従って、主題の技術の範囲から逸脱することなく、主題の技術に対する多くの変更及び変形を当業者によって実施可能である。
【0063】
開示したプロセス中のステップの特定の順序又は階層は例示的な手法の一例であることは理解されよう。設計の好みに基づいて、プロセス中のステップの特定の順序又は階層を配置し直すことも可能であることは理解されよう。ステップのいくつかは同時に実行してもよい。添付の方法クレームは、様々なステップの要素を見本の順序で提示しており、提示した特定の順序又は階層に限定することは意図していない。
【0064】
本明細書で用いる場合、一連のアイテムに付随する「〜の少なくとも1つ」という語句は、それらのアイテム間を分離する「及び」や「又は」という言葉と共に、リストの各要素(member)(すなわち各アイテム)でなく、全体としてリストを修飾する。「〜の少なくとも1つ」という語句は、リスト化した各アイテムの少なくとも1つの選択を要求するものではない。この語句には、アイテムのいずれか1つの少なくとも1つ、及び/又はアイテムのいずれかの組み合わせの少なくとも1つ、及び/又はアイテムの各々の少なくとも1つを含む意味が可能である。一例として、「A、B、及びCの少なくとも1つ」、又は「A、B、又はCの少なくとも1つ」という語句は各々、Aのみ、Bのみ、又はCのみ;A、B、及びCのいずれかの組み合わせ;及び/又はA、B、及びCの少なくとも1つを示す。
【0065】
単数の要素に対する言及は、特に指定しない限り、「唯一の」を意味するのでなく、「1つ以上の」を意味することが意図される。「いくつか(some)」という言葉は1つ以上を指す。下線付き及び/又はイタリック体の見出し及び小見出しは、便宜上用いるに過ぎず、主題の技術を限定するものではなく、主題の技術の記載の解釈と関連付けて参照されるものではない。当業者に既知であるか又は後に既知となる、本開示全体を通して記載された様々な態様の要素についての全ての構造的及び機能的な均等物は、引用により本明細書に明示的に含まれ、主題の技術によって包含されることが意図される。更に、本明細書の開示には、そのような開示が上述の記載で明示的に述べられているか否かにはかかわらず、公用のみに供される(dedicated to the public)ことが意図されたものはない。
【0066】
当業者に既知であるか又は後に既知となる、本開示全体を通して記載された様々な態様の要素についての全ての構造的及び機能的な均等物は、引用により本明細書に明示的に含まれ、クレームによって包含されることが意図される。更に、本明細書の開示には、そのような開示がクレームで明示的に述べられているか否かにはかかわらず、公用のみに供されることが意図されたものはない。クレームの要素は、要素が「〜ための手段」という語句を用いて明示的に記載されない限り、又は、方法クレームの場合に要素が「〜ためのステップ」という語句を用いて記載されない限り、米国特許法第112条の第6パラグラフの規定のもとで解釈されない。更に、記載又はクレームにおいて「含む」、「有する」等の言葉を用いる限りにおいて、そのような言葉は、「備える」という言葉がクレームで移行語句として用いられる場合に解釈される場合と同様に、包括的(inclusive)であることが意図される。
【0067】
「態様」等の語句は、そのような態様が主題の技術にとって不可欠であることも、そのような態様が主題の技術の全ての構成に適用されることも暗示しない。ある態様に関連した開示は、全ての構成又は1つ以上の構成に適用され得る。1つの態様は1つ以上の例を提供する場合がある。態様等の語句は1つ以上の態様を指すことがあり、その逆も同様である。「実施形態」等の語句は、そのような実施形態が主題の技術に不可欠であることも、そのような実施形態が主題の技術の全ての構成に適用されることも暗示しない。ある実施形態に関連した開示は、全ての実施形態又は1つ以上の実施形態に適用され得る。1つの実施形態は1つ以上の例を提供する場合がある。実施形態等の語句は1つ以上の実施形態を指すことがあり、その逆も同様である。「構成」等の語句は、そのような構成が主題の技術に不可欠であることも、そのような構成が主題の技術の全ての構成に適用されることも暗示しない。ある構成に関連した開示は、全ての構成又は1つ以上の構成に適用され得る。1つの構成は1つ以上の例を提供する場合がある。構成等の語句は1つ以上の構成を指すことがあり、その逆も同様である。
【0068】
「例示的な」という言葉は、「一例として又は例示として機能すること」を意味するために本明細書で用いられる。本明細書において「例示的な」として記載された態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計よりも好ましいか又は有利であるとは解釈されない。
【0069】
当業者に既知であるか又は後に既知となる、本開示全体を通して記載された様々な態様の要素についての全ての構造的及び機能的な均等物は、引用により本明細書に明示的に含まれ、クレームによって包含されることが意図される。更に、本明細書の開示には、そのような開示がクレームで明示的に述べられているか否かにはかかわらず、公用のみに供されることが意図されたものではない。クレームの要素は、要素が「〜ための手段」という語句を用いて明示的に記載されない限り、又は、方法クレームの場合に要素が「〜ためのステップ」という語句を用いて記載されない限り、米国特許法第112条の第6パラグラフの規定のもとで解釈されない。更に、記載又はクレームにおいて「含む」、「有する」等の言葉を用いる限りにおいて、そのような言葉は、「備える」という言葉がクレームで移行語句として用いられる場合に解釈される場合と同様に、包括的であることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10