(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643229
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】ピストン−シリンダユニット及び該ユニットの作動方法
(51)【国際特許分類】
F16D 25/12 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
F16D25/12 B
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-531040(P2016-531040)
(86)(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公表番号】特表2016-537584(P2016-537584A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】DE2014200559
(87)【国際公開番号】WO2015070849
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2017年10月13日
(31)【優先権主張番号】102013223232.2
(32)【優先日】2013年11月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ドレーアー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ トレーダー
【審査官】
倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−540947(JP,A)
【文献】
特開2011−038547(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/156269(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102012220177(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/08
F16D 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチ操作用ピストン−シリンダユニット(40)のピストン(42)の位置調整方法であって、
前記ピストン−シリンダユニット(40)は、ピストン(42)と、シリンダ(41)と、シール手段(43)とを備え、
前記ピストン(42)は、前記シリンダ(41)内で軸線方向に変位可能であり、
前記シール手段(43)は、前記ピストン(42)と前記シリンダ(41)との間に、密閉作用を伴って配置されており、
前記ピストン(42)の両側に動作スペース(47,48)が配置されており、
両動作スペース(47,48)と流体的に接続されている流体回路(44)と、該流体回路(44)内に配置され、前記ピストン(42)のポジションと位置調整速度を制御するポジショニング部材(45)と、をさらに備え、
前記ピストン−シリンダユニット(40)内に、又は前記ピストン−シリンダユニット(40)に接して、センサが配置されており、該センサによって、前記ピストン−シリンダユニット(40)内部の圧力を、及び/又は流体的に接続された前記流体回路(44)内の圧力を、測定可能であり、
当該位置調整方法は、
(a)前記ピストン−シリンダユニット(40)内部の圧力を、及び/又は、流体的に接続された流体回路(44)内の圧力を、センサにより測定値として取得するステップ(30)と、
(b)前記測定値(31)を、前記ポジショニング部材(45)のための調整設定値に変換するステップ(32)と、
(c)前記調整設定値に応じて、前記ポジショニング部材(45)による前記ピストン(42)の位置調整速度を設定するステップ(33)と、
(d)前記ポジショニング部材(45)により前記ピストン(42)の位置を調整するステップ(34)と、
(e)前記ピストン−シリンダユニット(40)内部の圧力を、及び/又は、流体的に接続された前記流体回路(44)内の圧力を、取得するステップ(35)と、
を実施することを特徴とする、
ピストン−シリンダユニット(40)のピストン(42)の位置調整方法。
【請求項2】
前記ピストン(42)が目標ポジションに到達するまで、ステップ(a)〜(e)を制御ループ(37)内で繰り返す、
請求項1に記載のクラッチ操作用ピストン−シリンダユニット(40)のピストン(42)の位置調整方法。
【請求項3】
前記センサにより取得された測定値が負圧に対応する場合(25)、前記ピストン(42)の位置調整速度を低減する(24)、
請求項1又は2に記載のクラッチ操作用ピストン−シリンダユニット(40)のピストン(42)の位置調整方法。
【請求項4】
前記ポジショニング部材(45)のための調整設定値を、可変の補正係数で重み付けられた前記測定値によって形成し、
前記補正係数を、前記センサにより測定された負圧が大きくなるにつれて大きくする、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクラッチ操作用ピストン−シリンダユニット(40)のピストン(42)の位置調整方法。
【請求項5】
クラッチ開放時に当該位置調整方法を適用し、
0Nmの伝達トルクに対応するクラッチ係合ポイントに達した場合にはじめて、もしくは該クラッチ係合ポイントを下回った場合にはじめて、当該位置調整方法を適用する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクラッチ操作用ピストン−シリンダユニット(40)のピストン(42)の位置調整方法。
【請求項6】
クラッチ閉鎖状態及び/又はクラッチ開放状態において、圧力の監視をアクティブにする、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のクラッチ操作用ピストン−シリンダユニット(40)のピストン(42)の位置調整方法。
【請求項7】
前記センサにより、正圧及び/又は負圧を測定可能であり、
前記センサにより測定される信号は、測定された圧力に比例している、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のクラッチ操作用ピストン−シリンダユニット(40)のピストン(42)の位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両におけるクラッチを液圧式に操作するための、ピストン−シリンダユニットに関する。このユニットは、ピストンとシリンダとシール手段とを備えており、ピストン−シリンダユニットは、流体回路と流体的に接続されており、ピストンは、シリンダ内で軸線方向に変位可能であり、シール手段は、ピストンとシリンダとの間に、密閉作用を伴って配置されている。さらに本発明は、ピストン−シリンダユニットの作動方法にも関する。
【0002】
クラッチ操作のために、目的に合わせてクラッチを開閉可能な液圧式アクチュエータを使用することができる。この種の液圧式アクチュエータは通常、ピストン−シリンダユニットによって形成されている。それらのピストン−シリンダユニットは、シリンダとその内部で移動可能に配置されたピストンとを備えている。ピストンとシリンダとの間には、密閉のために少なくとも1つのシール部材が配置されている。ピストンをシリンダに対し相対的に変位させることによって、動作流体を搬送することができ、ないしは圧力を形成することができ、これによって操作部材の位置調整を実現することができ、例えば液圧式に操作されるクラッチ又はブレーキの位置調整を実現することができる。この種のピストン−シリンダユニットは、例えば独国特許出願公開第19523215号明細書から公知である。
【0003】
温度変化又はその他の影響によって、動作流体の体積が変化する場合がある。このような体積変化は、ピストン−シリンダユニットの動作に悪影響を及ぼす虞がある。それゆえ、体積変化を補償しなければならない。このような体積補償は、例えばいわゆるスニファプロセスによって実現される。スニファプロセス中、動作流体の体積変化は、貯蔵容器から動作流体を流入させることによって、又は貯蔵容器へ動作流体を流出させることによって、補償される。この場合、動作流体の流入もしくは流出を例えば、ピストン及び/又はシリンダ内に配置された孔又は溝を介して行うことができる。その際、スニファプロセスは、ピストン−シリンダユニットを予め定められたポジションまで走行させることによって開始され、これによって調整された流体交換が可能となる。
【0004】
従来技術において知られている解決策によれば、一方のピストン−シリンダユニットの操作を介して他方のピストン−シリンダユニットが操作されるよう、2つのピストン−シリンダユニットが相互に接続されている。この場合、一方のピストン−シリンダユニットはスレーブシリンダを備え、他方のシリンダユニットはマスタシリンダを備え、マスタシリンダのピストンを介してスレーブシリンダのピストンの操作が引き起こされる。
【0005】
できるかぎりダイナミックな制御を実現するために目標とするのは、この種のピストン−シリンダユニットをできるかぎり迅速に操作して、少なくとも1つのピストン−シリンダユニットにより操作されるクラッチを迅速に開放又は閉鎖することである。特に温度の影響により摩擦が高まる可能性があり、そのことによってピストン−シリンダユニットの位置調整が緩慢に行われるようになってしまう。この場合、位置調整速度がそれぞれ異なると、ピストン−シリンダユニットの一方に負圧が形成されてしまう可能性がある。このような負圧が生じると、シールがそれらのシール面から浮き上がることが原因となって、非密閉状態に至る虞がある。さらにこの場合、空気又は動作流体が、関係するピストン−シリンダユニットのピストンに吸い込まれてしまう可能性がある。両方のケースとも特に、ピストン−シリンダユニットの動作工程に関する特性曲線が損なわれてしまう。さらに単独のピストン−シリンダユニットの場合にも、負圧が発生する可能性がある。
【0006】
したがって、当該のピストン−シリンダユニットをクラッチの制御に用いる場合には、ピストン−シリンダユニットの動作工程に関するクラッチのクラッチ特性曲線にも影響が及ぼされ、このことによって、トルク制御に基づいて見込まれるクラッチへ伝達すべきトルクが、実際に伝達されるトルクともはや一致しなくなることから、乗り心地が損なわれる虞がある。
【0007】
本発明の課題は、ピストンのダイナミックな位置調整を生じさせることができ、その際にピストン−シリンダユニット内での負圧の発生が低減されるか、又は完全に排除されるようにした、ピストン−シリンダユニットを提供することである。さらに本発明の課題は、このようなピストン−シリンダユニットの作動方法を提供することである。
【0008】
ピストン−シリンダユニットに関する本発明の課題は、請求項1の特徴によって解決される。
【0009】
本発明の1つの実施例は、特に車両のクラッチを液圧式に操作するための、ピストン−シリンダユニットに関する。この場合、ピストンと、シリンダと、シール手段とが設けられており、ピストン−シリンダユニットは、流体回路と流体的に接続されており、ピストンは、シリンダ内で軸線方向に変位可能であり、シール手段は、ピストンとシリンダとの間に、密閉作用を伴って配置されている。さらにこの場合、ピストン−シリンダユニット内に、又はピストン−シリンダユニットに接して、センサが配置されており、このセンサによって、ピストン−シリンダユニット内部の圧力を、及び/又は流体的に接続された流体回路内の圧力を、測定可能である。
【0010】
特に、ピストン−シリンダユニット内のピストンを過度に高速に走行させると、ピストン−シリンダユニットユニット内に負圧が発生する可能性がある。これによって、動作流体又は空気が、ピストンとシリンダとの間に配置されたシール手段を通り抜けて、吸引される虞がある。これによって、想定外の予測不可能な体積補償がピストン−シリンダユニット内部で発生し、その結果、ピストン−シリンダユニットの位置調整特性が変動してしまう。さらにこれに伴いこのような変動によって、関係するピストン−シリンダユニットにより位置調整可能なクラッチにも影響が及ぼされる。したがってクラッチの特性曲線も、予期せずに変化してしまう。
【0011】
このような変化の原因となる体積補償は、ピストン−シリンダユニット内の負圧に起因して発生する。ピストン−シリンダユニット内部の圧力を取得可能なセンサを設ければ、いつ負圧が発生するのかを検出することができる。これにより、有利には機械式及び/又は液圧式のシステムに介入制御することによって、クラッチの位置調整特性及び/又は特性曲線の変動に対抗する作用を与えることができる。
【0012】
1つの有利な実施形態によれば、ピストン−シリンダユニットが接続されて組み入れられた流体回路内部の圧力をセンサが取得できるように、センサを配置することもできる。その際に有利には、流体回路を液圧回路とすることができ、ピストン−シリンダユニットのピストンの位置調整を生じさせる動作流体が、この回路内を流れる。ピストン−シリンダユニット内で利用される動作流体の圧力を取得することによって、ピストン−シリンダユニット自体における負圧の発生に関する情報も得られるようになる。
【0013】
以下のように構成するのも、同様に有利である。即ち、ピストンはポジショニング部材によって変位可能であり、ピストンの位置調整速度は、センサにより送出された値に応じて、ポジショニング部材によって設定可能である。
【0014】
有利にはセンサは、ピストン−シリンダユニット内部の圧力を取得し、もしくはピストン−シリンダユニットを付勢する動作流体の圧力を取得する。センサは、ポジショニングユニット及び/又は評価ユニット例えば制御装置へ、取得された測定値を転送することができる。センサ信号に基づき、ポジショニングユニット自体において調整設定値が形成され、又は評価ユニットにおいて設定調整値が形成されて、ポジショニングユニットへ転送される。ポジショニングユニットへ転送された調整設定値に応じて、ポジショニングユニットはピストンの位置調整に作用を与える。例えば、ピストンに対する位置調整速度を上昇又は低下させることができる。この場合、位置調整速度を低下させることによって特に、負圧の発生を減少させることができ、又は発生している負圧を消失させることができる。ここで有利であるのは、ピストンの位置調整速度の制御を、少なくとも僅かな正圧に到達してからはじめて終了させることである。
【0015】
この場合、センサにより測定された値を、信号として直接、ポジショニングユニットの制御に利用してもよいし、又は最初に信号技術的な変換を実施してもよい。特に、測定された値を制御ユニットにおいて、このユニットに記憶された特性マップを用いて整合調整することができ、それによってピストンの位置調整速度を状況に即して制御できるようになる。目下生じている圧力状態のほかに、調整設定値を形成するためにさらに別の変量を利用することもできる。そのような変量として挙げられるのは例えば、温度、伝達されるトルク、又は伝達されるトルクと予期されるトルクとの差などである。
【0016】
さらに有利になる可能性があるのは、センサにより正圧及び/又は負圧を測定可能なことであり、この場合、センサにより送出可能な信号は、測定された圧力に比例している。
【0017】
使用されるセンサによって、正圧も負圧も取得できると、有利になる可能性がある。これによって、ピストン−シリンダユニット内における圧力を、もしくは接続された液圧回路内の圧力を、関連するすべての圧力範囲において監視できるようになる。ピストン−シリンダユニット内部にいくらか正圧が発生している場合には、例えば位置調整速度をただちに制御する必要がない。その理由は、正圧によっても、動作流体又は空気がシール手段を通り越して不所望に吸引されることがないからである。
【0018】
有利には、センサから送出された信号は、そのつど測定された圧力に比例している。つまり、送出される信号は、そのつど測定される圧力によって直接変化する。このようにすれば、圧力の僅かな変動に対しても反応することができる。この場合、送出される信号を、センサ自体によって、又は制御ユニットを介して、出力することができる。測定される圧力と送出される信号とが比例関係にあると有利である理由は、そのことによって信号変化に対しいっそう高いダイナミクスで反応できるからである。この場合、測定された値自体によって、信号が変化する。
【0019】
さらに、信号を重み付ける補正係数を設けることができる。このような補正係数は、一定であってもよいし、又は可変であってもよい。可変の補正係数を、例えば予め設定された特性マップによって定義することができる。
【0020】
同様に好適になる可能性があるのは、正圧から負圧に変化するときに、又は負圧から正圧に変化するときに、測定された値の振幅に依存しない一定の信号をセンサが送出することである。
【0021】
正の圧力から負の圧力への移行又はその逆方向への移行だけを指示するセンサは、構造が格段に簡単になることから、ひいてはコストが下がることから、特に有利である。この場合、センサは有利には、圧力の極性が変化した時点から、一定の信号を送出する。したがってセンサによって、目下発生している圧力の極性範囲を簡単に取得できるようになる。この場合、位置調整速度を制御することによって、目下発生している圧力を制御することができる。さらにこの場合、新たな極性変化が発生するまで、つまりはセンサから先行して送出された信号がゼロと等しくなるまで、位置調整速度を緩慢にすることができる。負圧が発生しているときにセンサがゼロ信号を送出するのであれば、ゼロとは異なる信号によって、正圧に到達したことを識別することができる。
【0022】
この場合、そのつど発生している圧力の解消は、測定値に比例する信号を送出するセンサの場合のように精密ではない。それゆえシステムの制御は、品質を低下させて行うことしかできない。移動調整速度の整合も、この種のセンサを利用した場合には緩慢になる。また、この種のセンサを利用した場合には、圧力整合のダイナミクスが低下する。しかしながらこのようなセンサによって、負圧の発生を最小限に抑えるか又は完全に阻止する目的でシステムを制御するための、簡単かつロバストな構成を形成することができる。
【0023】
本発明による方法の課題は、請求項5に記載の特徴を備えた方法によって解決される。
【0024】
1つの実施例は、クラッチ操作用ピストン−シリンダユニットのピストンの位置調整方法に関するものであり、この方法によれば、以下のステップが実施される。即ち、
・ピストン−シリンダユニット内部の圧力を、及び/又は流体的に接続された流体回路内の圧力を、センサにより測定値として取得するステップ。
・測定値を、ポジショニング部材のための調整設定値に変換するステップ。
・ポジショニング部材によるピストンの位置調整速度を設定するステップ。
・ポジショニング部材によりピストンの位置を調整するステップ。
・ピストン−シリンダユニット内部の圧力を、及び/又は流体的に接続された流体回路内の圧力を、取得するステップ。
【0025】
この方法が格別有利である理由は、ピストン−シリンダユニット内部の圧力に基づき、ピストンの位置調整速度の制御を達成でき、このことによって、負圧がさらに上昇すること又は負圧がそのまま維持されることに、ただちに対抗できるからである。
【0026】
有利には、測定された圧力がセンサ又は制御ユニットによって変換されて、負圧が消失されるように、ポジショニングユニットがピストンの位置調整を相応に整合する。ポジショニングユニットを例えば、ピストン−シリンダユニットの位置調整を制御するアクチュエータによって形成することができる。例えばこのアクチュエータを、液圧回路を開放又は閉鎖する弁とすることができる。別の選択肢としてこのアクチュエータを、ピストンの位置調整に作用を及ぼすさらに別のピストン−シリンダユニットによって形成することもできる。
【0027】
有利には、ピストン−シリンダユニット内で直接、圧力が測定されるか、又は、ピストン−シリンダユニット内部にも流れる動作流体が流動する液圧回路において、圧力が測定される。この場合、実施形態に応じて、液圧回路内で測定された値から、ピストン−シリンダユニット内部の圧力をダイレクトに推定することができ、又は、換算を利用して圧力を算出することができる。
【0028】
センサにより測定されポジショニングユニットのために変換された値により、有利には、センサの測定値から得られた調整設定値を用いて、ピストンがさらに位置調整される。特にこの場合、制御されていないシステムよりも低減された位置調整速度によって、負圧が消失するようになる。
【0029】
有利には、本発明による方法全体にわたって、ピストン−シリンダユニット内部の圧力が取得される。この場合、位置調整速度を、継続的に又は規定のインターバルで、制御することができる。
【0030】
1つの有利な実施形態によれば、ピストン−シリンダユニット内部及び/又は流体的に接続された流体回路内で取得された圧力が、規定の限界範囲外にある間、本発明による方法が制御ループ内で繰り返される。
【0031】
この場合、規定された限界範囲は特に、圧力のゼロ値によって、もしくは僅かな正圧によって、下に向かう方向で制限されている。このようにすることで特に、負圧の発生もしくは増大が回避されることになり、有利には目下発生している負圧が消失するようになる。有利には、ピストンの位置調整を制御する方法は、負圧が完全に消失して僅かな正圧が発生するまで実施される。
【0032】
1つの有利な実施形態によれば、圧力が正圧の範囲にあるときでも、継続的に又は一定のインターバルで圧力が取得される。このようにすることで、負圧の発生に極めて迅速に反応することができ、それによってクラッチ操作の品質が向上する。
【0033】
同様に有利なものとすることができるのは、センサにより取得された測定値が負圧に対応する場合、ピストンの位置調整速度を低下させることである。
【0034】
ピストンの位置調整速度を低下させることにより、負圧の上昇に対抗することができ、もしくは負圧がさらに発生することに対抗することができる。この場合、特に有利であるのは、負圧を消失可能な間は、位置調整速度を通常設定される位置調整速度よりも低く保持することである。ピストンの動きを緩慢にすることによって、動作流体の後流などのような補償プロセスを、いっそう良好に生じさせることができ、これによって負圧の発生が阻止される。
【0035】
しかも本発明の1つの格別好適な実施形態によれば、ポジショニング部材のための調整設定値を、可変の補正係数で重み付けられた測定値によって形成し、この補正係数を、センサにより測定された負圧が大きくなればなるほど大きくする。
【0036】
さらに極めて有利であるのは、補償の際にいっそう高いダイナミクスが得られるように、補正係数によって測定値を重み付けることである。この場合、特に有利であるのは、負圧が大きいときには、負圧が小さいときよりも位置調整速度を著しく低下させることである。いっそう大きく低下させることによって、負圧をいっそう迅速に消失させることができ、その結果、全体として負圧がいっそう迅速に補償されるようになる。
【0037】
補正係数を用いることにより、補正係数の形成次第で、ポジショニング部材のために極めて整合のとれた調整設定値を発生させることができる。その際に例えば、いっそう迅速な補償を達成する目的で、高い負圧測定値に対していっそう高い重み付けを発生させることができる。有利な実施形態によれば、負圧を都合よく消失させる目的で、測定値の重み付けのためにシステム全体に合わせて整合された特性マップを記憶させることもできる。
【0038】
同様に有利であるのは、クラッチ開放時に本発明による方法を適用し、約0Nmの伝達トルクに対応するクラッチ係合ポイントに達した場合にはじめて、もしくはこのクラッチ係合ポイントを下回った場合にはじめて、本発明による方法を適用することである。
【0039】
負圧を調整するための方法もしくは位置調整速度を制御するための方法は、有利にはクラッチの開放過程中のみ適用される。その理由は、負圧形成は主としてクラッチ開放時に起こるからである。さらに有利であるのは、クラッチ係合ポイントに達したときに、もしくはクラッチ係合ポイントを下回っているときに、本発明による方法をはじめて適用することである。クラッチ係合ポイントとは一般に、クラッチの摩擦フェーシングがまだ当接し合っているが、もはやさしたるトルクが伝達されないポイント、と定義されている。本発明による方法を、この時点から投入するのが格別有利である。その理由は、このようにすれば、本発明による方法を適用しても、クラッチにおいて力の伝達が切り離されるときの動特性に、もしくはクラッチにおいてトルクが消失するときの動特性に、悪影響が及ぼされないからである。
【0040】
さらに有利なものとすることができるのは、クラッチの閉鎖状態及び/又は開放状態において、圧力監視をアクティブにしておくことである。
【0041】
ピストン−シリンダユニットにおいて圧力を継続的に監視することによって、負圧の形成に対し全体的にいっそう迅速に応答することができる。このことによって、位置調整特性に好影響を及ぼすことができる。この場合、特に、体積変動に起因する動作流体の補償の役割を果たすいわゆるスニファプロセスが行われているときも、圧力監視はアクティブである。
【0042】
次に、添付の図面を参照しながら有利な実施例実施例に基づき、本発明について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】ピストン−シリンダユニットにより操作可能なクラッチのクラッチ特性曲線を示す図であって、特性曲線がずれる可能性のある範囲を表すばらつきの範囲が書き込まれた図
【
図2】2つ部分から成るグラフであって、上部では、典型的には車両のクラッチ操作用に設けられたピストン−シリンダユニットの液圧回路内のセンサにより検出可能な圧力推移を時間軸上で示し、下部では、ピストン−シリンダユニットのピストンの変位を時間軸上で示すグラフ
【
図3】本発明による方法の相前後するステップを順番にブロックで示したフローチャート
【
図4】流体的に流体回路と接続されたピストン−シリンダユニットの概略図であって、ピストン−シリンダユニット内及び流体回路内に圧力監視用センサが配置されることを示す図
【0044】
図1には、参照符号5が付されたX軸上に、ピストン−シリンダユニットのアクチュエータの動作変位を描いたグラフ1が示されている。参照符号4で表されたY軸上には、クラッチの駆動側と被駆動側との間の接触個所で発生する圧力が示されている。この場合、クラッチの特性曲線2は、アクチュエータの動作変位が大きくなるにつれて、クラッチ駆動側とクラッチ被駆動側との間の接触個所における圧力が高まる、という基本原理に従っている。したがってクラッチは、アクチュエータの動作変位が大きくなるのに伴い閉じられる。これは、ピストン−シリンダユニットのアクチュエータが最後まで走行することにより、接触個所において圧力が強まることに基づくものである。
【0045】
参照符号2によって、クラッチの慣用的な特性曲線が表されており、この特性曲線の場合、接触個所における圧力は、最初は僅かに高まるだけであり、これは駆動側のクラッチフェーシングと被駆動側のクラッチフェーシングが十分な強さで当接するようになるまで続く。十分な強さで当接した時点からは、この接触個所における圧力は急激に高まり、このことは特性曲線2の勾配が著しく急峻になることで表されている。
【0046】
特性曲線2の推移は、クラッチの特性によって影響を受け、例えばばねの仕様、摩擦フェーシングの特性、部材相互間の幾何学的配向、又は製造公差などによって影響を受ける。ただし特性曲線2を、クラッチ各々について固有に求めることができ、この特性曲線2は、所定の許容偏差の範囲内で1つの構造形式の複数のクラッチについて、きわめて類似しているか、又は同一でさえある。
【0047】
範囲3により、妨害作用に起因して特性曲線2がずらされる可能性のあるばらつきの範囲が表されている。このような妨害作用は特に、液圧回路又はピストン−シリンダユニット自体において負圧が発生することによって、生じる可能性がある。この場合、負圧の発生によって特に、特性曲線2の予測不可能な変動が引き起こされ、その結果、例えば特性曲線2が平行移動したり、又は特性曲線2の比較的急峻な部分が傾いてしまったりする可能性がある。特に、変動を予測しにくいというのは、乗り心地に関して不都合なことであり、それというのも、見込まれる伝達すべきトルクと、クラッチにおいて実際に伝達されるトルクとの偏差が発生する可能性があるからである。したがって乗り心地の点から、特性曲線2の予測不可能なこの種の偏差を回避しなければならない。
【0048】
図2の上部には、特性曲線10が示されており、この特性曲線10によって、液圧システムもしくはピストン−シリンダユニットに正圧が発生する領域が、軸11上に描かれている。軸11は時間軸に対応するものであって、この場合、時間は左から右側に経過していく。軸11の下側には、負圧の領域が描かれている。つまり軸12には、軸11と軸12の交点から出発して、上に向かって正圧が書き込まれ、下に向かって負圧が書き込まれている。
【0049】
図2の下部には、特性曲線13が示されている。上方の軸11と平行に延びている軸14も同様に、軸11と同じ時間推移を表している。参照符号15が付された軸には、ピストン−シリンダユニットのアクチュエータのポジションが示されている。
【0050】
軸14よりも下では、クラッチ操作に用いられるピストン−シリンダユニットは、いわゆるスニファプロセス中である。この場合、ピストンは、ピストン−シリンダユニット内で規定どおりに体積補償を行うことができるよう、シリンダに対し相対的に動かされている。この場合、ピストン−シリンダユニットにより操作されるクラッチによっても、トルクは伝達されない。
【0051】
垂直方向に延びた線16は、シリンダに対し相対的にピストンを動かすことでピストン−シリンダユニットがスニファプロセスを終了させた時点を表している。これは例えば、オーバーフロー開口部の閉鎖によって達成できる。時点17は、ピストン−シリンダユニットが再びスニファプロセスを開始した時点を表している。
【0052】
水平方向に延びる線18によって、クラッチのいわゆる係合ポイントが表されている。この係合ポイントにおいて、クラッチによるトルク伝達構造がスタートするのは、点19のところで特性曲線が下から上へ向かって線18と交差したときである。さらにこの係合ポイントにおいてトルク伝達が終了するのは、点20のところで特性曲線が上から下へ向かって線18を下回ったときである。係合ポイントにおいて、クラッチの摩擦フェーシングが当接し合うように、ただし、さしたるトルク伝達が発生しない程度に、アクチュエータが動かされる。
【0053】
アクチュエータは、
図2の左側から出発して最後まで走行し、それによってクラッチが閉鎖される。クラッチがスニファ領域から離れる時点16からは、僅かな正圧が発生し、このことは上部に示した特性曲線10からわかる。係合ポイントをシンボリックに表した線18と特性曲線13との交点において、正圧が強く上昇し始める。この場合に正圧が生じるのは、ピストン−シリンダユニットもしくは接続された液圧回路において、動作流体が圧縮された結果である。正圧は、特性曲線13の領域21にクラッチが到達するまで上昇する。この場合、領域21は定常領域を表しており、この領域ではクラッチが閉鎖され、アクチュエータは動かない。したがって正圧も、特性曲線10の領域22では一定に保持される。
【0054】
ついでアクチュエータは再び戻るように走行し、それによって特性曲線13の推移が減少する。特性曲線10によって表された発生した正圧も、同様に減少する。圧力上昇も圧力減少も、直線的な推移によって表されている。これらは、アクチュエータの運動が同様に直線的に推移することによって生じる。
【0055】
係合ポイントを表す線18を特性曲線が下回った時点から、クラッチはいかなるトルクも伝達しない状態におかれる。本発明による方法を採用しないシステムの場合、つまりアクチュエータを同じ位置調整速度のままに保持するシステムの場合、アクチュエータの動作変位は、参照符号23が付された特性曲線13の領域のように推移する。この場合の動きは、ピストン−シリンダユニットにおいてスニファプロセスが再開されるまで、同じ速度を維持しながら継続される。
【0056】
この推移23には、上部に示した特性曲線10の圧力推移25が対応する。この場合、圧力は負圧が生じる領域へ、ほとんど急激に移行する。このような状況で起こり得るのは、ピストンとシリンダとの間でシール手段が負圧に対し密閉されないことから、空気又は動作流体が非制御状態で吸引されてしまい、それによってピストン−シリンダユニットの特性曲線ひいては操作されるクラッチの特性曲線も、非制御状態で変動してしまうことである。
【0057】
それゆえ本発明による方法によれば、アクチュエータの位置調整速度が低減され、それによって特性曲線13の推移24が生じることになる。特性曲線13の勾配が小さくなった結果、位置調整速度が推移23の場合よりも低下する。特性曲線が軸14と交差すると、位置調整速度は再び増加し、それによってアクチュエータは、本来、推移23においても見込まれるように、軸14よりも明らかに低いレベルまで降下する。上部において、推移24に基づく本発明によるアクチュエータの経過には、圧力推移26が対応する。圧力推移26においてはいかなる時点でも負圧は発生せず、このことによって、クラッチの特性曲線2に不都合な影響が及ぼされるのも回避される。
【0058】
つまり
図2に示した推移24及び26は、本発明による方法を適用した場合に達成されるアクチュエータの圧力推移26と動作変位24を、時間軸上で表したものである。これら両方の推移が、変更が加えられていない推移23及び25とは異なるようになるのは、クラッチの係合ポイントを特性曲線が下回ったときであり、つまりはクラッチにおいてトルク伝達がもはや行われないときである。このことによって通常の閉鎖プロセス及び通常の開放プロセスの領域におけるクラッチの動特性には、不利な影響が及ぼされない。
【0059】
図3には、ピストン−シリンダユニットの液圧回路もしくはピストン−シリンダユニット自体において負圧が発生するのを低減するための、もしくは回避するための、格別有利な方法を記述したフローチャートが示されている。
【0060】
センサの信号入力を表す矢印30からスタートして、参照符号31の付されたブロックにおいて、圧力センサの信号を処理することができる。その際、特に、圧力信号に重み付け係数を設けることができ、又は圧力信号を予め規定された特性マップによって調整することができる。
【0061】
ブロック32において、センサにより検出された値が、アクチュエータのポジションと位置調整速度を制御するポジショニング部材のための調整設定値に変換される。ついでブロック33において、アクチュエータの位置調整速度が、ブロック32において得られた設定値に応じて整合される。
【0062】
その後、ブロック34において、ピストン−シリンダユニットのアクチュエータもしくはピストンの位置調整が行われる。ブロック35において、液圧回路もしくはピストン−シリンダユニットの圧力が再び検出される。
図3に示したフローチャートとは異なり、圧力の検出を他のステップ中に継続的に行うこともできる。
【0063】
最後に、負圧が発生することなくアクチュエータが目標ポジションに到達した場合には、矢印36に沿ってこの方法が終了し、又は、矢印37に沿ってこの方法が反復され、それによって、位置調整速度に関して整合させてアクチュエータを引き続き走行させることができる。有利な実施形態によれば、この方法を
図3のフローチャートに即して任意の回数だけ反復させることができる。このような反復はまず第一に、制御品質と、制御速度と、なされた目標設定とに依存する。
【0064】
図4には、ピストン−シリンダユニット40の概略図が示されており、このユニットは実質的に、シリンダ41とピストン42とシール手段43とによって構成されている。この場合、ピストン42は、シリンダ41内を軸線方向に移動可能である一方、ピストン42は、シリンダ41に対しシール手段43により密閉されている。
【0065】
ピストン42の左側には動作スペース48が配置されており、ピストンの右側には動作スペース47が配置されている。これらの動作スペース47,48は、流体回路44と流体的に接続されている。
図4にはさらに、流体回路内にポジショニング部材45が配置されている。ポジショニング部材45を例えば別のピストン−シリンダユニットとすることができ、このユニットは、ピストン−シリンダユニット40内の動作流体の運動を生じさせることができ、それによってピストン42の位置をシリンダ41に対し相対的に調整することができる。1つの有利な実施形態によれば、ポジショニング部材45を弁によって構成することも可能であり、この弁によって動作流体の流れを適切に制御することができる。
【0066】
1つの択一的な実施形態によれば、ピストン42を別のピストン−シリンダユニットのピストンと機械的に接続することもできる。このようにした場合、ピストン42の運動は、図示されていないピストンの運動によって引き起こされる。この場合、ピストン42と、ポジショニング部材として用いられる図示されていないピストンとの間の結合は、機械的に行われ、液圧式には行われない。さらにこの場合、圧力をピストン−シリンダユニット40において測定してもよいし、ポジショニング部材として動作する図示されていないピストン−シリンダユニットにおいて測定してもよい。両方のピストン−シリンダユニットの幾何学的特性が既知であるならば、ピストン−シリンダユニット40内の圧力を換算によって算出することができる。ピストン42が機械的に接続されている場合であっても、ピストン−シリンダユニット40を流体回路44と流体的に接続することができる。特にこの場合、動作スペース47,48は、流体回路44と流体的に接続されている。
【0067】
圧力センサを、例えば動作スペース47,48の一方に配置することができる。別の選択肢として圧力センサを、外側からピストン−シリンダユニット40に取り付けてもよいし、又は流体回路44内に組み込んでもよい。ここで重要であるのは、圧力センサにより、例えば直接測定することによって、又は換算によって、ピストン−シリンダユニット40内の圧力状態を推定できる、ということである。
【0068】
例えば左側に突出したピストンロッド46に、クラッチを接続することができる。この場合、ピストン42の走行によって、クラッチが開放又は閉鎖される。
【0069】
図1〜
図4に示した実施例によっても、特に格別有利な方法及び幾何学的形状に関して、いかなる限定が及ぼされるものでもない。図面の果たす役割は特に、本発明の着想を明らかにするためである。
【符号の説明】
【0070】
1 グラフ
2 特性曲線
3 ばらつきの範囲
4 軸(圧力)
5 軸(アクチュエータポジション)
10 特性曲線(液圧回路もしくはピストン−シリンダユニットにおける圧力推移)
11 軸(時間)
12 軸(圧力)
13 特性曲線(アクチュエータポジション)
14 軸(時間)
15 軸(アクチュエータポジション)
16 スニファプロセスの終了
17 スニファプロセスの開始
18 クラッチ係合領域
19 交点
20 交点
21 特性曲線13の領域(アクチュエータ静止ポジション、クラッチ閉鎖)
22 特性曲線10の領域(一定の正圧)
23 本発明による方法を適用しない特性曲線13の推移
24 本発明による方法を適用した特性曲線13の推移
25 本発明による方法を適用しない特性曲線10の推移
26 本発明による方法を適用した特性曲線10の推移
30 センサにおける信号入力(測定圧力に対応する信号)
31 測定値の処理
32 測定値から調整設定値への変換
33 位置調整速度の整合
34 アクチュエータの位置調整
35 圧力の測定
36 方法の終了
37 方法の反復
40 ピストン−シリンダユニット
41 シリンダ
42 ピストン
43 シール手段
44 流体回路
45 ポジショニング手段
46 ピストンロッド
47 動作スペース
48 動作スペース