特許第6643235号(P6643235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643235
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】多段遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 17/12 20060101AFI20200130BHJP
   F04D 29/057 20060101ALI20200130BHJP
   F04D 29/06 20060101ALI20200130BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20200130BHJP
   F04D 29/00 20060101ALI20200130BHJP
   F04D 29/058 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   F04D17/12
   F04D29/057 Z
   F04D29/06
   F04D29/42 H
   F04D29/00 B
   F04D29/058
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-539506(P2016-539506)
(86)(22)【出願日】2014年9月2日
(65)【公表番号】特表2016-529444(P2016-529444A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】EP2014068620
(87)【国際公開番号】WO2015032756
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2017年8月18日
(31)【優先権主張番号】FI2013A000208
(32)【優先日】2013年9月5日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513243790
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】NUOVO PIGNONE S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人サカモト・アンド・パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ミケラッシ,ヴィットリオ
(72)【発明者】
【氏名】セザル,イスマイル・ハッキ
(72)【発明者】
【氏名】アールブルク,クリスチャン
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−29693(JP,A)
【文献】 特開平10−331793(JP,A)
【文献】 特開2002−106487(JP,A)
【文献】 実開昭59−131599(JP,U)
【文献】 特開平11−62877(JP,A)
【文献】 米国特許第5449235(US,A)
【文献】 特開2007−177696(JP,A)
【文献】 特開2011−89490(JP,A)
【文献】 特開平7−127600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 17/12
F04D 29/056−29/058
F04D 29/06
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(3)と、
少なくとも第1の軸受および第2の軸受(11、13)によって前記ケーシング(3)内に回転支持されている軸(9)と、
前記第1の軸受と前記第2の軸受(11、13)との間の前記軸(9)に取り付けられている少なくとも1つの軸受間インペラ(19A〜19D)と、
前記軸(9)の一方の端部に取り付けられているオーバーハングインペラ(15)と、
前記ケーシング(3)内に位置し、前記オーバーハングインペラ(15)の出口位置から前記軸受間インペラ(19A〜19D)の入口位置へと圧縮ガスの向きを変えるための複数のリターンベーンを画定する複数の固定のリターンチャネルブレード(27A)を備えたリターンチャネルアセンブリ(23A)を備える第1のダイヤフラム構造(25、25X)と、
前記ケーシング(3)内の入口プレナム(17)と、
を備え、
前記第1のダイヤフラム構造(25、25X)は、前記第1の軸受および第2の軸受(11、13)の一方を収容し、
前記第1のダイヤフラム構造(25、25X)内に収容されている軸受の少なくとも1つの潤滑油路(12)が、前記固定のリターンチャネルブレード(27A)の少なくとも1つを通過して延びる、多段遠心圧縮機(1)。
【請求項2】
前記固定のリターンチャネルブレード(27A)が、前記リターンチャネルアセンブリ(23A)の屈曲頂部(33A)に近接する領域へと延びる、請求項1に記載の圧縮機(1)。
【請求項3】
前記オーバーハングインペラ(15)、前記第1のダイヤフラム構造(25、25X)および前記少なくとも1つの軸受間インペラ(19A〜19D)が、前記ケーシング(3)内に配置されている、請求項1または2に記載の圧縮機(1)。
【請求項4】
前記第1の軸受と前記第2の軸受(11、13)との間に配置された少なくとも第2の軸受間インペラ(19A〜19D)をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の圧縮機(1)。
【請求項5】
可変入口案内ベーン(41)の構造をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮機(1)。
【請求項6】
前記可変入口案内ベーン(41)が、前記オーバーハングインペラ(15)と流体連通して前記入口プレナム(17)の周囲に径方向に配置されている、請求項5に記載の圧縮機(1)。
【請求項7】
前記可変入口案内ベーン(41)が、軸方向のガス入口流を生成するために前記オーバーハングインペラ(15)の前方に軸方向に配置されている、請求項5に記載の圧縮機(1)。
【請求項8】
前記オーバーハングインペラ(15)が、前記軸(9)の一方の端部に支持され、前記入口プレナム(17)に対向する、請求項1から5のいずれか1項に記載の圧縮機(1)。
【請求項9】
前記第1のダイヤフラム構造(25、25X)内に収容されている軸受の少なくとも1つの潤滑油路(12)が、前記第1のダイヤフラム構造(25、25X)を介して設けられている請求項1から8のいずれか1項に記載の圧縮機(1)。
【請求項10】
前記入口プレナム(17)が、軸方向の入口プレナムである、請求項1から9のいずれか1項に記載の圧縮機(1)。
【請求項11】
前記入口プレナム(17)が、径方向の入口プレナムである、請求項1からのいずれか1項に記載の圧縮機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する主題の実施形態は、一般に、多段遠心圧縮機に関する。より具体的には、本明細書に開示する実施形態は、可動入口案内ベーンを備えた遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、広範囲の用途にわたって、今日多くの産業において広く利用されている。遠心圧縮機のユーザからの遠心圧縮機の製造業者に対する一貫した要求は、既存の種類の遠心圧縮機と同じ性能特性を有する小型かつ安価な機械の製造である。この要求は、遠心圧縮機の小型化が機械の性能を低下させることなく安価な機械となるように、圧縮機の効率を改良する必要性を伴う。
【0003】
遠心圧縮機は、一般に複数の段を有し、各段は回転するインペラと、1つの段のインペラの出口位置から次段のインペラの入口位置へと機械を介してガス流路に沿って圧縮ガスの向きを変え、流れの接線成分を除去するための固定ベーンを形成する固定リターンチャネルブレードを備えるリターンチャネルとを備える。
【0004】
いくつかの公知の遠心圧縮機では、可変入口案内ベーンとも呼ばれる可動入口案内ベーンが、流入するガス流の流れ条件を機械の動作条件に応じて変更するために設けられている。
【0005】
図1は、従来技術の多段遠心圧縮機であり、概して100が付されている。圧縮機100は、入口マニホールド102と、出口マニホールド103とを備えた外側ケーシング101を有する。ケーシング101の内部には、概して「圧縮機バンドル」と呼ばれるいくつかの部品が配置されており、これらは複数の圧縮機段を画定する。より具体的には、ケーシング101の内部には、回転軸105が配置されている。軸105は、2つの端部軸受106、107によって支持されている。各軸受は、実際には1つ以上の軸受部品からなる軸受アセンブリとすることができる。2つの軸受106、107の間では、複数のインペラ109が軸105に取り付けられている。第1のインペラ109の入口109Aは、入口プレナム111と流体連通しており、ここで、圧縮されるガスは、入口マニホールド102を介して送給される。ガス流は、径方向に入口プレナム111に入り、次いで1組の可動入口案内ベーン113を介して送給され、実質的に軸方向において第1のインペラ109に入る。
【0006】
最後のインペラ109の出口109Bは、ボリュート115と流体連通しており、これにより圧縮ガスを収集し、圧縮ガスを出口マニホールド103に送給する。
【0007】
固定のダイヤフラム117は、各対の連続的に配置されたインペラ109の間に配置されている。ダイヤフラム117は、個別の軸方向に積層された部品として形成することができる。他の実施形態では、ダイヤフラム117は、2つの実質的に対称な半体に形成することができる。各ダイヤフラム117は、それぞれの上流側のインペラ109の径方向の出口からそれぞれの下流側のインペラ109の入口へと延びるリターンチャネル119を画定し、上流側のインペラからの下流側のインペラに圧縮ガス流を戻す。固定ブレード121は、上流側から下流側のインペラへと圧縮ガスの向きを変えている間に流れの接線成分を除去するために、リターンチャネル119に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国実用新案第201896763号明細書
【発明の概要】
【0009】
多段圧縮機は、ケーシングに収容され、端部軸受によって支持されている回転軸を備えて設けられている。1つ以上のインペラは、軸受間、すなわち圧縮機ケーシングの軸を回転支持する端部軸受の間の軸に支持されている。付加的なインペラは、オーバーハング位置に取り付けられている。すなわち、軸の一方の端部に片持ち支持されている。具体的には、オーバーハングインペラは、最上流側のインペラ、すなわち、圧縮機の入口プレナムと対向する軸端部に配置されているものである。リターンチャネルは、オーバーハングインペラと後続の軸受間インペラ(in−between−bearings impeller)との間に設けられている。したがって、オーバーハングインペラは、回転軸線に沿って機械的部品を備える必要がなくてもよい入口プレナムに配置されており、入口プレナムは、ケーシング内に一体化されている。したがって、圧縮機入口から第1のオーバーハングインペラの軸方向の入口へのガスの流れが容易である。入口案内ベーンは、入口プレナムの外側、たとえば入口マニホールドで到達が容易な位置に配置することができる。第1の軸受は、第1のダイヤフラムおよび関連する固定のリターンチャネルブレードを介して圧縮機の固定の構造に接続されている。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、多段遠心圧縮機はしたがって、ケーシングと、少なくとも第1の軸受および第2の軸受によってケーシング内に回転支持されている軸とを備えて設けられている。圧縮機はさらに、オーバーハングインペラと、第1の軸受と第2の軸受との間に取り付けられている少なくとも1つの軸受間インペラとを備えている。オーバーハングインペラと軸受間インペラは、共に回転するために軸に取り付けられる。第1のダイヤフラム構造は、ケーシング内に位置し、オーバーハングインペラの出口位置から隣接する軸受間インペラの入口位置へと圧縮ガスの向きを変えるための複数のリターンベーンを画定する複数の固定リターンチャネルブレードを備えたリターンチャネルアセンブリを備える。いくつかの実施形態によれば、固定リターンチャネルブレードは、前記複数のリターンチャネルの屈曲頂部に近接する領域へと延びる。この構造により、付加的な機械的剛性がもたらされる。ダイヤフラム構造は、第1の軸受および第2の軸受の一方を収容する。したがって、オーバーハングインペラから軸受間インペラ(単数または複数)への直接的な流れ接続が、圧縮機ケーシング内に完全に形成されている。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、複数の軸受間インペラは、回転軸上に支持することができる。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、圧縮機は、可変入口案内ベーンの構造を設けることができる。好適な例示的な実施形態では、可変入口案内ベーンは、圧縮機ケーシングの外側に位置する。たとえば、可動入口案内ベーンとも呼ばれる可変入口案内ベーンは、オーバーハングインペラの軸方向の入口が配置されている入口プレナムの上流側の入口マニホールドに径方向に配置することができる。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、入口マニホールドは、圧縮機軸の回転軸線に対して径方向に配置することができる。他の実施形態では、入口マニホールドは、軸方向のガス入口流を生成するためにオーバーハングインペラと実質的に同軸に配置することができる。
【0014】
様々な特徴および実施形態が以下の本明細書で開示されており、さらに本明細書の不可欠部分をなす添付の特許請求の範囲に記載される。上記の簡単な説明は、以下の詳細な説明をより深く理解できることを目的とし、さらに当該技術分野に対する本発明の寄与をより評価できるようにするために、本発明の種々の実施形態の特徴を記載している。当然のことながら、本発明の他の特徴は、以下に説明すると共に、添付の特許請求の範囲に記載される。この点で、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の実施形態が、それらの応用において、以下の説明に記載され、あるいは図面に示される構成の詳細および構成要素の配置に制限されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実施および実行することができる。また、本明細書で使用する表現および用語は説明のためのものであって、限定として見なされるべきではないことを理解されたい。
【0015】
そのようなものとして、当業者であれば、本開示の基となる概念が、本発明のいくつかの目的を実行するための他の構造、方法、および/またはシステムを設計するための基礎として容易に利用することができることを理解するであろう。したがって、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限り、特許請求の範囲はこのような均等な構造を含むものと見なされるということが重要である。
【0016】
本発明の開示された実施形態およびその付随する利点の多くのより完全な理解は、以下の詳細な説明を添付の図面と共に検討して参照することによってよりよく理解されるので、容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来技術の多段遠心圧縮機の断面図である。
図2】第1の実施形態における本開示の多段遠心圧縮機の断面図である。
図3図2のIII−III線による断面図である。
図4】さらなる実施形態に係る本開示の多段遠心圧縮機の断面図である。
図5】変形例における図2と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面を参照する。異なる図面における同じ参照番号は、同一または類似の要素を特定する。さらに、図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。また、以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。代わりに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0019】
「一実施形態」または「実施形態」または「いくつかの実施形態」に対する明細書全体での参照は、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造または特性が、開示されている主題の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、明細書全体の様々な場所における句「一実施形態では」または「実施形態では」または「いくつかの実施形態では」の出現は、必ずしも同一の実施形態(単数または複数)を参照していない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせられてもよい。
【0020】
図2は、遠心圧縮機の軸線A−Aを含む鉛直面に沿った断面の、本明細書に開示する主題に係る多段遠心圧縮機である。圧縮機は、概して1が付され、入口マニホールド5と、出口マニホールド7とを備えた外側ケーシング3を備える。圧縮機1は、上下分割または水平分割タイプのものとすることができる。
【0021】
回転軸9は、ケーシング3内に配置されている。いくつかの実施形態によれば、回転軸9は、2つの軸受11および13によって支持されている。各軸受11および13は、圧縮機1の設計に応じて、1つ以上の軸受部品、たとえば軸方向の軸受および/または径方向の軸受を備える。軸受11および13は、設計上の選択に応じて潤滑油軸受または磁気軸受とすることができる。
【0022】
ケーシング3は、圧縮機バンドルを形成する部品、より具体的には複数のインペラと、それぞれのリターンチャネルを画定する複数のダイヤフラムと、圧縮ガスを収集して出口マニホールド7を介して前記圧縮ガスを送給するボリュートとを収容する。
【0023】
より具体的には、ケーシング3は、回転軸9の第1の端部9Aに取り付けられる第1のインペラ15を収容する。第1のインペラ15は、オーバーハングインペラであり、すなわち、軸受11を越えて延びる軸9の端部によって片持ち支持されている。したがって、オーバーハングインペラは、入口マニホールド5と流体連通している入口プレナム17内に突出する。
【0024】
軸9に沿って、1つ以上のさらなるインペラが、第1のインペラ15から下流側の軸9との共回転のために配置されている。図2に示す例示的な実施形態では、4つの付加的なインペラ19A、19B、19Cおよび19Dが、圧縮機1の低圧側から高圧側に順次配置されている。最後のインペラ19Dの出口は、ボリュート21と流体連通している。圧縮ガスは、ボリュート21によって収集され、出口マニホールド7に搬送される。
【0025】
インペラ19A〜19Dは、軸端部に配置されているオーバーハングインペラ15とは対照的に、2つの軸受11と13との間の回転軸9に取り付けられている、いわゆる軸受間インペラである。
【0026】
リターンチャネル構造は、各対の連続的に配置されたインペラの間に設けられている。より具体的には、第1の1組のリターンチャネル23Aが、オーバーハングインペラ15の径方向の出口と第1の軸受間インペラ19Aの軸方向の入口との間に配置されている。リターンチャネル構造23Aは、オーバーハングインペラ15から排出されたガスを収集し、ガス流を第1の軸受間インペラ19Aの入口で遠心圧縮機1の軸線A−Aに戻す。同様に、リターンチャネル構造23B、23Cおよび23Dは、各インペラ19A〜19Cとそれぞれの下流側のインペラとの間に位置し、最後のリターンチャネル構造23Dは、インペラ19Cの出口と最後の軸受間インペラ19Dの入口との間に位置している。
【0027】
リターンチャネル構造23A、23B、23Cおよび23Dは、ケーシング3内に配置されて圧縮機バンドルの一部を形成している、概して25が付されているいわゆるダイヤフラムによって形成されている。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、各リターンチャネル構造23A〜23Dは、それぞれ27A〜27Dが付されている複数の固定のリターンチャネルブレードを備える。各リターンチャネルブレードは、前縁と、後縁とを備える。第1のリターンチャネル23Aのブレードは、それぞれの前縁29Aと、後縁31Aとから構成されている。同様に、リターンチャネルブレード27B〜27Dの前縁および後縁は、29B〜29Dおよび31B〜31Dがそれぞれ付されている。
【0029】
各リターンチャネル構造は、インペラ15およびインペラ19A〜19Cに対してそれぞれ33A〜33Dで示されている屈曲頂部を備える。オーバーハングインペラ15と第1の軸受間インペラ19Aとの間に配置された固定のリターンチャネルブレード27Aは、少なくとも屈曲頂部33Aの領域まで径方向に展開する。いくつかの例示的な実施形態では、固定のリターンチャネルブレード27Aは、屈曲頂部33Aの周囲に展開することができ、それにより前記リターンチャネルブレード27Aの前縁29Aは、屈曲頂部33Aから上流側(ガス流の方向に対して)に位置し、後縁31Aは、前記屈曲頂部33Aから下流側に配置される。残りの固定のリターンチャネルブレード27B〜27Dは、屈曲頂部33B〜33Dから下流側に配置された前縁29B〜29Dを備える比較的短い延長部を有することができる。
【0030】
リターンチャネルブレード27Aは、関連するダイヤフラムの内側部もしくはコア25X、またはオーバーハングインペラのダイヤフラム構造と、前記ダイヤフラム構造の外側部との間に機械的接続を形成し、したがって外側ケーシング3との機械的接続を形成する。
【0031】
オーバーハングインペラ15のダイヤフラム25の内側部25Xは、第1の軸受11のためのハウジングを形成する。したがってリターンチャネルブレード27B〜27Dは、固定のリターンチャネルブレード27Aを介して圧縮機バンドルの外側部およびケーシング3に機械的に接続され、これによりオーバーハングインペラ15と第1の軸受間インペラ19Aとの間にリターンチャネルを形成する。
【0032】
図3は、図2のIII−III線による概略断面図である。図3の断面図は、ダイヤフラムのコア25Xと圧縮機バンドルの外側部との間の機械的接続を確立する、回転軸9と、第1の軸受11と、オーバーハングインペラ15のダイヤフラムのコアまたは内側部25Xと、固定のリターンチャネルブレード27Aとを示している。したがって、固定のリターンチャネルブレード27Aによりもたらされる機械的接続は、圧縮機1の軸受11と外側ケーシング3との間の接続を確立する。
【0033】
いくつかの例示的な実施形態によれば、軸受11は、潤滑油を必要とする場合がある。いくつかの例示的な実施形態では、1つ以上の潤滑油路12が、第1のダイヤフラム25のコア25X、および1つ以上の固定のリターンチャネルブレード27Aを介する目的のために設けることができる。好適な実施形態によれば、前記固定のリターンチャネルブレード27Aのいくつかは、図3に概略的に示すように比較的厚い前縁29Aを設けることができ、それにより潤滑油路12は、前記ブレードを介して容易に作製することができる。
【0034】
他の例示的な実施形態によれば、軸受11は、電力供給を必要とする磁気軸受とすることができる。いくつかの実施形態では、電気配線はダイヤフラムのコア25X、および固定のリターンチャネルブレード27Aの少なくとも1つを介して設けることができ、配線は図3に開示されている潤滑油路12に対応する経路に実質的に沿って延びる。配線が通過して延びるリターンチャネルブレード27Aは、比較的厚い前縁を有することができる。
【0035】
上述した構造により、同一のケーシング3に収容されているオーバーハングインペラ15と、1つ以上の軸受間インペラ19A〜19Dとを有する多段遠心圧縮機を得ることができる。したがってガス流路は、完全にケーシング3内で入口マニホールド5から出口マニホールド7へと、上述したようにインペラおよびリターンチャネル構造を介して入口プレナム17からボリュート21へと延びる。
【0036】
第1のインペラ15をオーバーハング構造に配置することにより、入口プレナム17は、機械的部材、特に回転軸9を備える必要が完全になくなる。これにより、圧縮機の軸線A−Aから離れた領域において可変または可動入口案内ベーン41の配置が可能となる。いくつかの実施形態では、可変入口案内ベーン41は、入口マニホールド5内に位置することができ、前記可変入口案内ベーンの動きを制御するための制御手段43が、ケーシング3の外側全体に配置することができる。これにより、可変入口案内ベーン41およびそれらの動作および制御のための関連する器具およびアクチュエータは、保守または修理のために手が届きやすくなっている。
【0037】
可変入口案内ベーン41をケーシング3の外側および入口プレナム17の外側に配置することは、入口プレナム17から回転軸9を除去したことによって可能となり、それにより径方向の入口における可変入口案内ベーンによって生成された渦流は、入口プレナム17を妨げる機械的部材の存在によって過度に歪むことなくオーバーハングインペラ15に容易に到達することができる。
【0038】
好適な実施形態によれば、圧縮機1の低圧側の第1の軸受11は、完全に「ガスの中」であり、ドライガスシールを必要としない。このようなドライガスシールは、第2の軸受13が配置されている軸9の反対側の、高圧側にのみ必要である。ドライガスシールの数を減少させることは、圧縮機の信頼性を高めることに寄与し、その全体的なコストを減少させる。
【0039】
図4は、本開示に係る多段遠心圧縮機のさらなる実施形態を概略的に示している。同じ参照番号が、図2および3に関連して開示されたものと同じまたは対応する部品、要素または特徴を示すために使用される。
【0040】
図2図4の実施形態との主な違いは、入口マニホールドの構造に関するものである。図4の実施形態では、ガス入口は、再度5が付されている直通の軸方向の入口マニホールドである。圧縮機バンドルの構造、具体的にはオーバーハングインペラ15、軸受間インペラ19A〜19Dおよびリターンチャネル、ならびに関連するダイヤフラムの構造は、図2および図3を参照して上記で開示されたものと概ね同一または同様とすることができる。
【0041】
図4における圧縮機1のレイアウトは、可動または可変入口案内ベーン41の構造を考慮すると特に有効である。可変入口案内ベーン41およびその作動部材43は、再び圧縮機1の本体ケーシング3の外側で入口マニホールドに配置することができ、これによりケーシング3を分解する必要なく可変入口案内ベーン構造に外部から手が届きやすくなっている。可変入口案内ベーン41は、一体型の歯車式圧縮機と全く同様に、オーバーハングインペラ15の前方に軸方向に配置された軸方向の入口プレナムの直前に配置することができ、圧縮機の高効率化を図ることができる。
【0042】
図5は、図2の実施形態と同様の、変形例の断面図である。同じ参照番号が、図2と同一または相当する部分を示すために使用されている。図5の実施形態では、第1の圧縮機段の固定のリターンチャネルブレード27Aはより短くなり、その前縁29Aは、圧縮機の圧力端に対向するダイヤフラムの固定の内側部25Xの側に位置している。ダイヤフラム25の内側部25Xと圧縮機ケーシングとの間の機械的接続は、固定のリターンチャネルブレードによって依然としてもたらされている。加えて、スペーサ30は、インペラの出口とリターンチャネルの頂部33Aとの間のリターンチャネルに配置することができる。スペーサ30は、付加的な機械的剛性をもたらすことができる。軸受11の潤滑油路または配線は、固定のリターンチャネルブレード27Aおよび/またはスペーサ30を介して延びることができる。
【0043】
本明細書で記載される主題の開示された実施形態は、いくつかの例示的な実施形態と関連して特異性および詳細事項に関して図面において示され、かつ上記で十分に説明されたが、新規の教示事項、本明細書で記載された原理および概念、ならびに添付の特許請求の範囲に記載の主題の利点から実質的に逸脱することなく、多くの修正、変更、および省略が可能であることは、当業者には明らかであろう。したがって、開示された発明の適正な範囲は、すべてのこのような修正、変更、および省略が含まれるように、添付の特許請求の範囲を最も広く解釈することによってのみ決定すべきである。加えて、あらゆるプロセスまたは方法ステップの順序または配列は、代替の実施形態に応じて変更され、または再配列することができる。
【符号の説明】
【0044】
1、100 多段遠心圧縮機
3、101 外側ケーシング
5、102 入口マニホールド
7、103 出口マニホールド
9、105 回転軸
9A 第1の端部
11 第1の軸受
12 潤滑油路
13 第2の軸受
15 オーバーハングインペラ、第1のインペラ
17、111 入口プレナム
19A〜19D 軸受間インペラ
21、115 ボリュート
23A〜23D リターンチャネル構造
25 第1のダイヤフラム
25X 内側部、コア
27A〜27D リターンチャネルブレード
29A〜29D 前縁
30 スペーサ
31A〜31D 後縁
33A〜33D 屈曲頂部
41、113 入口案内ベーン
43 制御手段、作動部材
106、107 端部軸受
109 第1のインペラ
109A 入口
109B 出口
117 ダイヤフラム
119 リターンチャネル
121 固定ブレード
図1
図2
図3
図4
図5