(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643237
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】無色外観を有する透明光学物品
(51)【国際特許分類】
G02C 7/00 20060101AFI20200130BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20200130BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20200130BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
G02C7/00
G02B1/04
G02C7/10
G02B5/22
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-542258(P2016-542258)
(86)(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公表番号】特表2017-502352(P2017-502352A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】EP2014079074
(87)【国際公開番号】WO2015097186
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年12月21日
(31)【優先権主張番号】13306853.6
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598142955
【氏名又は名称】エシロール アンテルナショナル
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジル バイエ
【審査官】
吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/098513(WO,A1)
【文献】
特表2010−501256(JP,A)
【文献】
特表2005−522574(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0215750(US,A1)
【文献】
国際公開第2008/032652(WO,A1)
【文献】
特開2007−112919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明光学レンズであって、
・400〜460nmの範囲内の波長を有する光を少なくとも部分的に阻止する少なくとも1種の染料Aと、
・前記染料Aにより該透明光学レンズに付与された色のバランスを少なくとも部分的に調整するための少なくとも1種の蛍光増白剤Bであって、前記少なくとも1種の蛍光増白剤Bが400〜460nmの範囲内の波長の光を蛍光により発し、且つ前記染料A及び前記蛍光増白剤Bが互いに異なる、蛍光増白剤Bと、
を含み、
前記染料Aの最大吸収値λmax(A)と前記蛍光増白剤Bの最大蛍光発光値λmax(B)との絶対値で表される差が15nm未満であり、
前記蛍光増白剤Bが、当該透明光学レンズの基材中又は前記基材上に被覆された層中に組み込まれ、前記蛍光増白剤Bが、前記基材の重量又は前記層の重量を基準にして、50ppm未満の量で使用される、透明光学レンズ。
【請求項2】
前記少なくとも1種の染料Aが420〜450nmの範囲内の波長を有する光を少なくとも部分的に阻止する、請求項1に記載の透明光学レンズ。
【請求項3】
前記少なくとも1種の蛍光増白剤Bが420〜450nmの範囲内の波長の光を蛍光により発する、請求項1又は2に記載の透明光学レンズ。
【請求項4】
基材と前記基材上に被覆された少なくとも1つの層とを含み、前記少なくとも1種の染料A及び前記少なくとも1種の蛍光増白剤Bが、一緒に又は個別に、前記基材に及び/又は前記基材上に被覆された前記少なくとも1つの層に含まれるものとして更に規定される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項5】
80%超の可視スペクトル域の相対光透過率Tvを有するものとして更に規定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項6】
85%超の可視スペクトル域の相対光透過率Tvを有するものとして更に規定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項7】
前記染料Aが、ペリレン類、クマリン類、ポルフィリン類、アクリジン類、インドレニン類、及びインドール−2−イリデン類の中から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項8】
前記蛍光増白剤Bが、スチルベン類、カルボスチリル類、クマリン類、1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン類、ナフタルイミド類、及びベンゾオキサゾール類から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項9】
前記蛍光増白剤Bが、ビス−ベンゾオキサゾール類、フェニルクマリン類、メチルクマリン類、及びビス−(スチリル)ビフェニル類から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項10】
前記少なくとも1種の染料Aが、420〜450nmの範囲内の波長を有する光の1〜50%を阻止する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項11】
前記染料Aが、前記基材の重量を基準にして50ppm未満の量で前記基材中に組み込まれる、請求項4〜10のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項12】
前記染料Aが、前記基材上に被覆された少なくとも1つの層中に前記層の重量を基準にして5000ppm未満の量で組み込まれる、請求項4〜10のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項13】
前記蛍光増白剤Bが、前記基材の重量を基準にして50ppm未満の量で前記基材中に組み込まれる、請求項4〜12のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項14】
前記蛍光増白剤Bが、前記基材上に被覆された少なくとも1つの層中に前記層の重量を基準にして50ppm未満の量で組み込まれる、請求項4〜12のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項15】
10未満の黄色度指数Yiを有するものとして更に規定される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項16】
40超の白色度指数Wiを有するものとして更に規定される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項17】
パッシブなものとして更に規定される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【請求項18】
眼用レンズとして更に規定される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の透明光学レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学分野に関し、より特定的には、青色光から保護することが意図された光学フィルターを含んでいるにもかかわらずほとんど無色の外観を維持する透明光学物品、好ましくは眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトにより知覚される可視光は、近似的に波長380nm〜波長780nmの範囲のスペクトル全体にわたる。このスペクトルのうち約380nm〜約500nmの範囲の部分は、高エネルギーの本質的に青色の光に対応する。
【0003】
多くの研究(例えば、Kitchel E.,“The effects of blue light on ocular health”,Journal of Visual Impairment and Blindness Vol.94,No.6,2000又はGlazer−Hockstein and al.,Retina,Vol.26,No.1.pp.1−4,2006を参照されたい)から、青色光はヒトの眼の健康に対して、特に網膜に対して光毒性作用を有することが示唆される。
【0004】
実際に、眼の光生物学研究(Algvere P.V.and al.,“Age−Related Maculopathy and the Impact of the Blue Light Hazard”,Acta Ophthalmo.Scand.,Vol.84,pp.4−15,2006)及び臨床試験(Tomany S.C.and al.,“Sunlight and the 10−Year Incidence of Age−Related Maculopathy.The Beaver Dam Eye Study”,Arch Ophthalmol.,Vol.122.pp.750−757,2004)から、過度に長期間にわたり又は強烈に青色光に晒されると加齢黄斑変性(ARMD)等の重篤な眼疾患が誘発される恐れがあることが実証された。
【0005】
従って、危険性が増加する波長帯域に関しては特に、潜在的に有害な青色光に晒されることを制限することが推奨される(特に、B(λ)青色光危険関数に関するISO8980−3規格:2003(E)の表B1を参照されたい)。
【0006】
その目的で、眼鏡着用者は、網膜への光毒性青色光透過を防止又は制限する眼用レンズを両方の眼のそれぞれの前に着用することが推奨されよう。かかるレンズはまた、コントラスト感度の増加により視覚性能の増加を提供し得る。
【0007】
例えば、国際公開第2008/024414号パンフレットには、適切な波長範囲の光を吸収又は反射により部分的に阻止する膜を含むレンズを利用して、青色光スペクトルのうち400nm〜460nmの問題となる部分を少なくとも部分的にカットすることがすでに提案されている。これはまた、光学エレメントに黄色染料を組み込むことによっても行うことが可能である。
【0008】
しかしながら、青色光を遮断すると、色バランス、光学デバイスを通して見たときの色覚、及び光学デバイスの知覚色が影響を受ける。実際に、400〜460nmの範囲内の波長を有する光を少なくとも部分的に阻止する染料を組み込んだ青色光遮断光学デバイスは、黄色、褐色、又は琥珀色に見える。これは、多くの眼科用途で審美的に許容できず、デバイスが眼用レンズである場合、使用者の正常色覚を妨げる恐れがある。
【0009】
従来の青色光遮断フィルターの黄変の影響を補償する努力がなされてきた。例えば、青色光遮断レンズは、黄変の影響を相殺するために青色、赤色、緑色の染料等の追加の染料で処理されてきた。しかしながら、この技術は、青色光の波長以外の光の波長の全透過を望ましくないほど低減するので、レンズの使用者に光の減衰をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の点を考慮すると、許容可能な色化粧を更に提供可能な、即ち、光学物品の観察者にはほとんど無色として知覚される、青色光を少なくとも部分的に遮断可能な光学物品の必要性が存在する。使用者に許容可能な色覚だけでなく、許容可能な全光透過レベルもまた、必要とされる。即ち、眼用システムの場合、光学物品は、着用者の色覚を劇的に損なうものであってはならない。特定的には、青色光の波長の選択的遮断を可能にすると同時に可視光の少なくとも80%を透過する光学物品の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
蛍光増白剤により発せられた青色光が、染料で処理された材料の青色の減少を補償して元の無色外観を回復可能であることから、色バランス調整手段として、即ち、光学システムに組み込まれた青色光遮断染料による青色遮断により生じる色覚の変化を最小限に抑えるために、好ましくは排除するために、蛍光白色剤(FWA)、蛍光増白剤(OBA)、又は蛍光増白剤(FBA)とも呼ばれる蛍光増白剤を使用可能であることを、本発明者らは発見した。
【0012】
本発明の必要性に対処するために且つ先行技術の挙げられた欠点を取り除くために、本出願人は、
・400〜460nm、好ましくは420〜450nmの範囲内の波長を有する光を少なくとも部分的に阻止する少なくとも1種の染料Aと、
・染料Aにより透明光学物品に付与された色のバランスを少なくとも部分的に調整するための少なくとも1種の蛍光増白剤Bであって、前記少なくとも1種の蛍光増白剤Bが400〜460nm、好ましくは420〜450nmの範囲内の波長の光を蛍光により発し、且つ前記染料A及び前記蛍光増白剤Bが互いに異なる、蛍光増白剤Bと、
を含む透明光学物品を提供する。
【0013】
透明光学物品の基材及び/又は基材上に被覆された少なくとも1つの層で蛍光増白剤Bと染料A(本明細書では青色光遮断染料又は黄色染料としても参照される)とを組み合わせて使用することにより、青色光から使用者を保護すると同時に染料により付与された黄色をマスキングすることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で用いられる場合、物品がその表面上に1つ以上の層又はコーティングを含むとき、「物品上に層又はコーティングを堆積する」とは、物品の外部コーティング、即ち、基材から最も離れたコーティングの非被覆(露出)表面上に層又はコーティングを堆積することを意味する。
【0015】
本明細書で用いられる場合、基材/コーティング「上の」コーティング、又は基材/コーティング「上に」堆積されたコーティングとは、(i)基材/コーティングの上に位置決めされたコーティング、(ii)必ずしも基材/コーティングに接触してとはかぎらない、即ち、基材/コーティングと関連コーティングとの間に1つ以上の中間コーティングを介在させてもよい(しかしながら、好ましくは前記基材/コーティングに接触する)コーティング、並びに(iii)必ずしも基材/コーティングを完全に覆うとはかぎらないコーティング、として定義されるものである。「コーティング1がコーティング2の下に位置決めされると記されている」場合、コーティング2はコーティング1よりも基材から離れていると理解すべきである。
【0016】
本明細書では、光学物品は、前記光学物品を介した画像の観察がコントラストの有意な損失を伴うことなく知覚される場合、即ち、前記光学物品を介した画像の形成が画像の品質に悪影響を及ぼすことなく得られる場合、透明であると理解される。「透明」という用語のこの定義は、本明細書では、そのように認定される対象物すべてに適用可能である。
【0017】
本発明では、透明光学物品は、好ましくは、可視、紫外、又は赤外のみのエネルギー源から透明光学物品に進入する光を発する。言い換えれば、光学システムにより発せられる光は、透過された入射光であるか、又は反射された入射光であるか、又は入射光の吸収後に蛍光若しくは燐光のプロセスにより再び発せられた光であるか、のいずれかである。実際には、本発明に係る透明光学物品は、好ましくは、蛍光灯や白熱灯のような電気−光変換素器も発光ダイオードもなんら含まない。この実施形態では、透明光学物品は、パッシブとして定義される。
【0018】
本発明に係る透明光学物品は、好ましくは光学レンズ又はレンズブランク、より好ましくは眼用レンズ又はレンズブランクである。
【0019】
「眼用レンズ」という用語は、眼の保護及び/又は視力の矯正を行うために眼鏡フレームに合わせたレンズを意味するように用いられる。前記レンズは、無限焦点レンズ、単焦点レンズ、二焦点レンズ、三焦点レンズ、及び累進レンズから選択され得る。眼用光学品は本発明の好ましい分野であるが、本発明が、他のタイプの透明光学エレメント、例えば、光学器械用レンズ、特に写真用又は天文学用フィルター、光学照準レンズ、眼用バイザー、照明システムの光学品等に適用可能であることは、理解されよう。
【0020】
透明光学物品は、好ましくは、基材と基材上に被覆された少なくとも1つの層とを含む。それが光学レンズである場合、その凸主側(前側)、凹主側(後側)、又はその両側が被覆され得る。透明光学物品はまた、平面状物品であり得る。光学物品が前主表面と後主表面とを有する場合、その後表面は、好ましくは、蛍光増白剤を含有するいかなる層によっても被覆されない。
【0021】
本発明の意味するところによれば、基材とは、非被覆基材を意味するものと理解されるべきであり、一般に2つの主面を有する。基材は、特に、光学物品の形状を有する光透過性材料、例えば、眼鏡に取り付ける予定の眼用レンズである。これとの関連では、「基材」という用語は、光学レンズ、より特定的には眼用レンズの透明ベース構成材料を意味するものと理解される。この材料は、1つ以上のコーティングのスタックのための支持体として機能する。
【0022】
本発明に係る物品の基材は、無機ガラス又は有機ガラス、例えば、眼用品産業で使用される眼用グレードの透明材料から一般に選択される熱可塑性又は熱硬化性プラスチックから作製される有機ガラスである。
【0023】
特に好ましいクラスの基材材料として挙げられるのは、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレートとポリカーボネートとのコポリマー、ポリオレフィン、例えばポリノルボルネン、アルキレングリコールビスアリルカーボネートの重合又は(共)重合により得られる樹脂、例えばジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のポリマー及びコポリマー(例えば、PPG Industries社によりCR−39(登録商標)という商品名で市販されているもので、対応する市販のレンズは、ESSILOR社製ORMA(登録商標)レンズと参照される)、ポリカーボネート、例えばビスフェノール−Aから誘導されるもの、(メタ)アクリル又はチオ(メタ)アクリルのポリマー及びコポリマー、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、ウレタン及びチオウレタンのポリマー及びコポリマー、エポキシのポリマー及びコポリマー、エピスルフィドのポリマー及びコポリマーである。
【0024】
いくつかの用途では、光学的及び/又は機械的性質を改善するために基材の主表面を1つ以上の機能性コーティングで被覆することが好ましい。「コーティング」という用語は、基材及び/又は他のコーティング、例えばゾル−ゲルコーティング又は有機樹脂で作製されたコーティングに接触していてもよい任意の層、層スタック、又は膜を意味するものと理解される。コーティングは、湿式処理、ガス処理、及び膜転写をはじめとする種々の方法により堆積又は形成され得る。光学品で慣例的に使用されるこれらの機能性コーティングは、限定されるものではないが、耐衝撃性及び/又は接着性プライマー、耐摩耗性及び/又は耐引掻き性コーティング、反射防止コーティング、偏光コーティング、フォトクロミックコーティング、又は帯電防止コーティング、又は2つ以上のかかるコーティングで作製されたスタック、特に耐摩耗性及び/又は耐引掻き性コーティングで被覆された耐衝撃性プライマーコーティングであり得る。
【0025】
耐摩耗性及び/又は耐引掻きコーティング(硬質コーティング)は、好ましくはポリ(メタ)アクリレート系又はシラン系硬質コーティングである。本発明で推奨される硬質の耐摩耗性及び/又は耐引掻き性コーティングとしては、シラン加水分解物系組成物(ゾルゲルプロセス)、特に、例えば米国特許出願公開第2003/0165698号明細書及び米国特許第4,211,823号明細書に記載のエポキシシラン加水分解物系組成物から得られるコーティングが挙げられる。
【0026】
最終製品のさらなる層の耐衝撃性及び/又は接着性を改善するプライマーコーティングは、好ましくは、ポリウレタンラテックス又はアクリルラテックスである。プライマーコーティング並びに耐摩耗性及び/又は耐引掻きコーティングは、国際公開第2007/088312号パンフレットに記載のものから選択され得る。
【0027】
可視スペクトルの比較的広い範囲にわたり物品−空気界面での光反射を低減することにより最終光学物品の反射防止性を改善する反射防止コーティングは、光学分野、特に眼用光学品で慣例的に使用される任意の反射防止コーティングであり得る。周知のように、反射防止コーティングは、伝統的に、誘電材料又はゾル−ゲル材料で構成された単層又は多層スタックを含む。これらは、多層コーティング、好ましくは高屈折率(HI、n>1.5)の層と低屈折率(LI、n≦1.5)と層とを含むである。
【0028】
反射防止コーティングの構造及び作製は、国際公開第2010/109154号パンフレット及び国際公開第2012/153072号パンフレットに、より詳細に記載されている。
【0029】
本発明に係るプライマー、硬質コート、反射防止コーティング等のコーティングは、スピン塗布、ディップ塗布、スプレー塗布、蒸発、スパッタリング、化学気相堆積、及びラミネーションをはじめとする当技術分野で公知の方法を用いて堆積され得る。
【0030】
本発明によれば、染料A及び蛍光増白剤Bは、一緒に又は個別に、透明光学物品中に、好ましくは基材中に及び/又は基材上に被覆された少なくとも1つの層中に組み込まれるが、依然として健康及び化粧外観に関して本発明の利点及び有益性が得られる。
【0031】
本発明に係るシステムでは、染料A及び蛍光増白剤Bは、両方とも基材中に、両方とも同一のコーティング、例えば、プライマーコーティング、硬質コーティング、又は反射防止コーティング中に、一方は基材中に且つ他方は透明光学物品のいずれかの面(凸、凹又はフラットであり得る)上に堆積されたコーティング中に、(少なくとも)2つの異なるコーティング中に個別に、組込み可能であるか、又はこれら実施形態の組合せで実現可能である。例えば、青色光遮断染料は硬質コーティング中に位置決めされ、且つ蛍光増白剤はプライマーコーティング中に含まれ得るか、又は青色光遮断染料は基材中に含まれ、且つ蛍光増白剤はコーティング中に含まれ得る。染料及び蛍光増白剤が(少なくとも)2つの異なるコーティング中に含まれる場合、これらのコーティングは、必ずしも透明光学物品の同一面上に堆積されるとはかぎらない。それらは、透明光学物品の片面上に又は透明光学物品の両面上に堆積可能である。
【0032】
いくつかの染料及び/又はいくつかの蛍光増白剤は、基材中に及び/又は基材の表面上に堆積された同一の若しくは異なる層中に組込み可能である。
【0033】
好ましい実施形態では、透明光学物品は、青色光遮断染料Aが組み込まれた基材を含む。染料(及び/又は蛍光増白剤)は、当技術分野で周知の方法、例えば、以下の方法により基材中に組込み可能である。
I.有機溶媒性及び/又は水性の高温着色浴、好ましくは水性溶液中に基材を数分間浸漬することによる含浸方法又は浸染方法。
有機レンズ基材等の有機材料から作製された基材は、ほとんどの場合、90℃程度の温度に加熱された且つ染料が分散された水性着色浴中に浸漬することにより材料のバルク中で着色される。染料は、こうして基材の表面下に拡散し、色濃度は、基材の本体中に拡散する染料の量を調整することにより得られる。
II.含浸可能な一時的コーティングを必要とする特開2000−314088号公報及び特開2000−241601号公報に記載の拡散方法。又は
III.米国特許第6534443号明細書及び米国特許第6554873号明細書に記載されるように昇華性材料を用いた無接触着色。又は
IV.基材自体の製造時、例えば、をキャスト又は射出成形することによる青色吸収色素の組込み。
【0034】
他の実施形態では、透明光学物品は、基材と基材上に被覆された少なくとも1つの層とを含み、染料Aは、基材上に被覆された前記少なくとも1つの層中に組み込まれる。染料は、例えば、硬質コーティング及び/又はプライマーコーティング中に組み込まれ得るとともに、これにより一般に基材への硬質コーティングの接着が促進される。染料はまた、後続的に基材に転写、ラミネート、融合、又は接着される膜中に組込み可能である。
【0035】
光学製造技術分野の当業者の熟知するいくつかの方法では、染料(及び/又は蛍光増白剤)を層中に組み込むことが知られている。青色光遮断染料は、層と同時に堆積され得る。即ち、液体コーティング組成物から層を作製する場合、基材の表面に適用(in situ混合)して硬化させる前に、前記コーティング組成物中に染料を組み込むか(直接に若しくは例えば染料含浸粒子として)又は溶解させることが可能である。
【0036】
染料(及び/又は蛍光増白剤)はまた、個別のプロセス又はサブプロセスでコーティングに組み込まれ得る。例えば、基材を着色するために参照されたものに類似した浸漬着色方法を用いて、即ち、昇温でティント処理浴を利用して、本出願人名義の米国特許出願公開第2003/0020869号明細書に開示された拡散方法により、インクジェットプリンターを用いて印刷が行われる印刷プライマーを使用する本出願人名義の米国特許出願公開第2008/127432号明細書に開示された方法により、熱転写プリンターを利用して昇華染料を印刷することを必要とする本出願人名義の米国特許出願公開第2013/244045号明細書に開示された方法により、又は着色剤を基材中に転写するために多孔性層を使用する本出願人名義の米国特許出願公開第2009/047424号明細書に開示された方法により、コーティングを基材の表面に堆積させた後にそのコーティングに染料を組み込み得る。染料はまた、コーティングが硬化(例えば、熱硬化又はUV硬化)されるか、乾燥されるか、又は適用される前に、表面上にスプレー塗布され得る。
【0037】
インクジェット印刷を実行する場合、典型的には物品の表面上にインク受容コーティングを適用することにより、インクを受容するように物品の表面を改質することが一般に必要である。インク受容コーティングは、永久的ティント処理が可能なコーティングであっても、染料を物品中に転写させる一時的支持体として使用される一時的ティント処理が可能なコーティングであってもよい。染料は、インク受容コーティングに近接した基材自体中に又は基材のコーティング中に転写され得る。基材又はコーティングをティント処理するためのインクジェット印刷は、本出願人名義の米国特許出願公開第2013/0230649号明細書に、より詳細に記載されている。
【0038】
基材又はコーティング中に蛍光増白剤Bを組み込むための方法は、染料の組込みに対して開示されたものと一般に同一である。明らかに、以上に記載の方法のいくつかの組合せを用いて、染料Aと蛍光増白剤Bとを中に組み込んで有する透明光学物品を得ることが可能である。
【0039】
本発明に使用される蛍光増白剤の量は、黄色外観を有していない透明光学物品を提供するのに十分な量であり、一方、本発明に使用される染料の量は、青色光からの満足な保護を提供するのに十分な量である。
【0040】
基材中に組み込む場合、蛍光増白剤は、前記基材の重量を基準にして、好ましくは200ppm未満、より好ましくは50ppm未満の量で使用される。
【0041】
基材上に被覆された層中に組み込む場合、蛍光増白剤は、前記層の重量を基準にして、好ましくは200ppm未満、より好ましくは50ppm未満の量で使用される。
【0042】
基材中に組み込む場合、青色光遮断染料は、前記基材の重量を基準にして、好ましくは50ppm未満、より好ましくは5ppm未満の量で使用される。
【0043】
基材上に被覆された層中に組み込む場合、青色光遮断染料は、前記層の重量を基準にして、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは500ppm未満の量で使用される。
【0044】
当然のことながら、蛍光増白剤及び青色光遮断染料のそれぞれの量は、透明で無色のエレメントを製造するように互いに適合化されなければならない。特定的には、蛍光増白剤の所望の量は、使用される染料の性質及び量をはじめとするいくつかの因子に依存してさまざまであろうことを、当業者であれば認識するべきである。この目的のために、各化合物の最適量は単純な実験室実験により決定可能である。
【0045】
明らかに、本発明に係る透明光学物品は、その基材もコーティングもいずれもティント処理されていない場合、単に無色に見える。
【0046】
本明細書で用いられる場合、染料は、顔料及び着色剤の両方を意味し得る。即ち、その媒体中に可溶又は不溶であり得る。それは単独又は組合せで使用され得る。
【0047】
染料Aの化学的性質は、400〜460nmの範囲内、好ましくは420〜450nmの範囲内に吸収ピーク、理想的には最大吸収ピークを有するかぎり、特に限定されない。好ましくは、400〜460nmの範囲内の波長を有する光を少なくとも部分的に阻止する手段として機能する染料Aは、400nm〜460nmの範囲内、より好ましくは420nm〜450nmの範囲内の光を選択的に阻止する。本明細書で用いられる場合、その波長範囲外の可視波長の透過にほとんど又はまったく影響を及ぼさずに、その範囲内で少なくともいくらかの透過を阻止する場合、手段は波長範囲を「選択的に阻止する」。
【0048】
透明光学物品に組み込まれる1種以上の染料は、好ましくは400〜460nmの範囲内の波長を有する光の1〜50%、より好ましくは10〜40%、理想的には10〜30%を阻止するように、放射線を吸収する。それらは、好ましくは420〜450nmの範囲内の波長を有する光の1〜50%、より好ましくは10〜40%、理想的には10〜30%を阻止する。これらの吸収は、染料濃度により制御可能であり、染料の不在下で同一波長で透過される光の量を基準にして測定される。
【0049】
青色光遮断染料は、ペリレン類、クマリン類、ポルフィリン類、アクリジン類、インドレニン(3Hインドールの同義語である)類、及びインドール−2−イリデン類から選択され得るが、これらの類に限定されるものではない。
【0050】
好ましい青色光遮断染料は、電磁スペクトルの400〜460nm、好ましくは420〜450nmの範囲内の狭い吸収帯域を有する。理想的には、前記吸収帯域は、約430nmを中心とする。
【0051】
最も好ましい本発明に係る染料は、理想的な分光特性及び興味深い射出加工性を呈するペリレンである。実際に、ペリレンは、400〜460nmの波長の範囲外の可視スペクトルの領域で吸収しないか又はごくわずかに吸収する選択的黄色染料である。
【0052】
周知のように、蛍光増白剤は、UV領域及び菫色領域(通常340〜370nm)の光を吸収して主に可視スペクトルの青色領域の光を蛍光により再び発する物質である。それらは単独又は組合せで使用され得る。
【0053】
蛍光増白剤の化学的性質は、400〜460nm、好ましくは420〜450nmの範囲内の波長の光を蛍光により、理想的には最大蛍光により発し得るかぎり、特に限定されない。
【0054】
好ましくは、蛍光増白剤は、400〜460nmの範囲内の波長を有する光の30%未満、より好ましくは20%未満、更により好ましくは10%未満、理想的には5%未満を吸収する。それは、好ましくは420〜450nmの範囲内の波長を有する光の30%未満、より好ましくは20%未満、更により好ましくは10%未満、理想的には5%未満を吸収する。前記蛍光増白剤は、400〜460nmの範囲内、好ましくは420〜450nmの範囲内に、好ましくは最大吸収ピークを有しておらず、更により好ましくは吸収ピークを有していない。
【0055】
蛍光増白剤は、スチルベン類、カルボスチリル類、クマリン類、1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン類、ナフタルイミド類、組み合わされたヘテロ芳香族化合物類(例えば、ピレニル−トリアジン類、又は他の組合せのヘテロ環式化合物類、例えば、チアゾール類、ピラゾール類、オキサジアゾール類、縮合多環芳香族系類、又はトリアジン類で、互いに直接又は共役環系により結合されたもの)、ベンゾオキサゾール類、特定的には、好ましくはエチレン基、フェニルエチレン基、スチルベン基、ベンゾオキサゾール基、及び/又はチオフェン基を含む共役環系により2位が置換されたベンゾオキサゾール類から選択され得るが、これらの類に限定されるものではない。蛍光増白剤の好ましい類は、A.G.Oertli,Plastics Additives Handbook,6th Edition,H.Zweifel,D.Maier,M.Schiller Editors,2009に、より詳細に記載されるビス−ベンゾオキサゾール類、フェニルクマリン類、メチルクマリン類、及びビス−(スチリル)ビフェニル類である。
【0056】
市販のビス−ベンゾオキサゾール蛍光増白剤の特定の例は、Eastman Chemical社製のEastobrite(登録商標)化合物、例えば、Eastobrite(登録商標)OB、Eastobrite(登録商標)OB−1、及びEastobrite(登録商標)OB−3、Clariant社製のHostalux(登録商標)化合物、例えば、Hostalux ACK、Hostalux CP01、Hostalux EBU、Hostalux EF、Hostalux ERE、Hostalux EREN、Hostalux ES2R、Hostalux ESR、Hostalux ETB 300、Hostalux ETBN、Hostalux KCB、Hostalux KS、Hostalux KS1B、Hostalux KSB3、Hostalux KSC、Hostalux KSN、Hostalux NR、Hostalux NSM、Hostalux PFC、Hostalux PFCB、Hostalux PN、Hostalux PNB、及びHostalux PR、住友化学株式会社製のWhitefluor(登録商標)化合物(スチリル−ビス−ベンゾオキサゾール)、例えば、Whitefluor(登録商標)B、Whitefluor(登録商標)PEN、Whitefluor(登録商標)PHR、Whitefluor(登録商標)HCS、Whitefluor(登録商標)PCSである。
【0057】
市販のメチル−クマリン蛍光増白剤の特定の例は、Eastern Color&Chemical Co.製のEccowhite(登録商標)化合物、例えば、Eccowhite 1132 MOD、Eccowhite 2013、Eccowhite 2790、Eccowhite 5261、Eccowhite AEA−HF、Eccowhite Nylon FW、Eccowhite OP、Eccowhite PSO、Eccowhite DM−04 MODである。
【0058】
蛍光増白剤の他の有用なカテゴリーは、ビス−ベンゾオキサゾール化合物及びビス−(スチリル)ビフェニル化合物の両方を含むBASF社製のTinopal(登録商標)類、例えば、Tinopal ABP−A、Tinopal ABP−X、Tinopal ASP、Tinopal BPO、TinopalEC、Tinopal HST、Tinopal HW、Tinopal MSP、Tinopal NP、Tinopal SPP−N、Tinopal SPP−Z、Tinopal UP HC DD、Tinopal UP、Tinopal CBS−X、及びTinopal OBである。
【0059】
本発明に使用し得る他の有用な蛍光増白剤は、Fluorescent Whitening agents,Anders G.EQS,Environmental quality and safety(Suppl.Vol IV)Georg Thieme Stuttgart 1975に記載されている。
【0060】
好ましい蛍光増白剤は高い蛍光収率を有する。即ち、吸収したエネルギーの大部分を可視光として再び放出する。
【0061】
最も好ましい蛍光増白剤は、以下の通りである。
i)以下の構造を有してEastobrite(登録商標)OB−1という商品名でEastman Chemical社により市販されている2,2’−(1,2−エチレンジイルジ−4,1−フェニレン)ビスベンゾキサゾール
【化1】
ii)以下の構造を有してTinopal OBという商品名でBASF社により市販されている2,5−チオフェンジイルビス(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾオキサゾール)
【化2】
【0062】
本発明によれば、特定の黄色染料は、前記染料の吸収スペクトルに最もよく一致する蛍光発光を有する蛍光増白剤であり、その逆も同様である。染料及び蛍光増白剤の性質により吸収/発光ピーク位置を調整し得る。
【0063】
好ましい実施形態では、本発明に係る透明光学物品は、染料aの最大吸収値λmax(A)と蛍光増白剤Bの最大蛍光発光値λmax(B)との差(絶対値で表される)が15nm未満、より好ましくは10nm未満、理想的には5nm未満となるように、染料Aと蛍光増白剤Bとを含む。本出願との関連では、λmax(A)及びλmax(B)はジクロロメタン中で測定される。
【0064】
青色光遮断染料としてのペリレンと蛍光増白剤としての2,2’−(1,2−エチレンジイルジ−4,1−フェニレン)ビスベンゾキサゾール(Eastobrite(登録商標)OB−1)との組合せは、後者の蛍光性がペリレンの吸収スペクトルに完全に一致するので、特に好ましい。Eastobrite(登録商標)OB−1の最大蛍光発光波長は436nmであり、一方、ペリレンは434nmに吸収極大を有する。
【0065】
本発明に係る透明光学物品は、白色度指数Wi及び黄色度指数Yiにより定量可能な改善された色特性を有する。
【0066】
蛍光増白剤Bの白色効果、言い換えれば本発明に係る透明光学物品の白色度の評価は、CIE三刺激値X,Y,Z、例えば、規格ASTM E313−73(1993)及びASTM D1925−70(1988)に記載のものに基づいて比色測定により行われ得る。本発明に係る透明光学物品は、好ましくは高い白色度指数Wiを有する。即ち、ASTM E313−73に準拠して測定したとき、40超である。Wiは、タウベ(Taube)の式により計算される(Wi=4B−3G、パラメーターB(青色)及びG(緑色)は、G=Y及びB=0.847Zとして三刺激値X,Y,Zから決定される)。
【0067】
本発明に係る透明光学物品は、好ましくは低い黄色度指数Yiを有する。即ち、ASTM D−1925に準拠して測定したとき、10未満、より好ましくは5未満である。Yiは、以下の関係式によりCIE三刺激値X,Y,Zから決定可能である。
Yi=(128×−106Z)/Y
【0068】
本発明に係る透明光学物品は、好ましくは80%超、より好ましくは85%超の可視スペクトル域の相対光透過率Tvを有する。Tv率は、規格NF EN1836に定義されものであり、380〜780nmの波長範囲に対応する。