【課題を解決するための手段】
【0006】
本目的は、独立請求項に係るデバイス及び方法によって達成される。本発明の有利な実施形態は従属請求項に定められている。
【0007】
本発明の好ましい実施形態に係るデバイスは、物体の関心領域に電磁放射、特に光を照射するための照射ユニットと、電磁放射の照射の際に物体の関心領域に発生する音響波(音波)、特に超音波を検出するための検出ユニットとを備え、検出ユニットは、好ましくは物体の関心領域の外に位置する一つ以上の点状検出位置において音響波を検出するように設計される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態に係る方法では、照射ユニットを用いて、物体の関心領域に電磁放射、特に光を照射し、電磁放射の照射の際に物体の関心領域に発生した音響波、特に超音波を検出する。更に、音響波は、好ましくは物体の関心領域の外に位置する一つ以上の点状検出位置において検出される。“検出位置”との用語は、好ましくは、本発明の意味においては、例えばその検出位置に位置する音響検出器によって、音響波が直接検出される位置、及び/又は、音響波が通過することができる実際の又は仮想的な位置(その後、音響検出器によって検出される)に関する。従って、本発明の意味において、検出位置は多様な方法で形成され得て、例えば、検出位置に点状音響検出要素を提供することによって、一つ以上の集束点(焦点)(各集束点が検出位置に位置する)を有する一つ以上の検出要素を提供することによって、又は、一つ以上の点状開口(各点状開口が検出位置に位置する)を提供することによって、形成され得る。
【0009】
本発明の意味において、“光音響画像化”とは、狭義の光音響画像化、つまり、物体に可視光を照射するものに限られるものではなく、検査中の物体が、他のスペクトル範囲、例えば、無線周波数又はマイクロ波範囲の電磁放射で照射される光音響画像化及び熱音響画像化にも関する点に留意されたい。
【0010】
検出位置は、好ましくは、光学的ピンホールと等価な超音波的ピンホールで形成されて、つまり、一つの小さな実際の又は仮想的な開口を通過する波を検出する。開口は、音波がその開口を通過するようにするが、ピンホールを通過しない他の方向を伝播する波を拒絶し、及び/又は検出しない。このような動作は、物理的手段(例えば、小型物理的検出器、小型音波開口、音波低透過性物質中に埋め込まれたニードル状音波キャリア)、又は、音響レンズ、信号を拒絶する特定の形状の検出器、検出器アレイを用いて実現される仮想的手段によって行うことができる。ピンホール検出に関する有利な態様は、好ましい実施形態に開示されているような、超音波の広角許容を確実にする手段に関する。
【0011】
検出位置に関する“点状”との用語は、好ましくは、本発明の意味において、小型の音波検出部(小型超音波トランスデューサ、開口、ピンホール、検出集束点等)に関し、その小型音波検出部のサイズは、本発明に係るデバイス及び/又は方法を用いて得られる画像の達成可能及び/又は所望の空間分解能の範囲内にあるか、それと同程度であるか、又はそれ以下である。ピンホールのサイズが、得られる方位分解能(横方向分解能,lateral resolution)を決定するが、検出器の検出周波数を数十MHz又は数百MHzにして、30マイクロメートル未満、好ましくは10マイクロメートル未満の距離分解能(軸方向分解能,axial resolution)を達成することで、高い距離分解能も同様に得ることができる。
【0012】
本発明は、一つ以上の点状検出位置において音響波を検出するように設計されている検出ユニットを有する物体の光音響画像化用のデバイスを提供することに基づくものであり、一つ以上の点状検出位置は、物体の関心領域の外、好ましくは検査中の物体の表面の上又は上方に位置する。点状検出位置は、多様な要素、例えば一つ以上の点状音波検出要素、一つ以上の音波検出要素の一つ以上の集束点、音波検出器によって検出される前に音響波が通過する一つ以上の点状開口等によって与えられ得る。点状検出器は、対称、非対称、円形、矩形又は他の形状であり得る小型開口領域であるとみなされる。好ましくは、点状検出器のサイズは、所望の空間分解能に少なくとも相当する又はそれ以下のサイズである。
【0013】
音波検出の点状特性によって、検出される音響情報に関する高い空間確実性、つまりは、得られる画像の高い鮮明性を達成することができる。逆に、これらの検出器によっては、方向確実性は得られない。つまり、ピンホール検出器では、一次元、二次元、又は三次元において特定の音波がやって来る正確な角度を決定することができない。この問題を解決するため、デバイスは、好ましくは、トモグラフィの原理に基づいた画像形成法を利用し、また、既知の感度領域、つまり、組織内の音響源が少なくとも一つの点状検出要素において検出される相対強度及び/又は分散の空間分布を仮定することによるトモグラフィ検出プロセスのモデル化を利用し得る。感度領域を用いて、逆投影又はモデルベースの反転方法に基づいて再構成を重み付けすることができ、例えば、特定の方向に沿ってモデル化されたデータ、又は空間内の特定の位置に関するデータに特定の重みを与える。
【0014】
他の態様は、二次元グリッドで配置可能な複数の点状検出位置を利用するものであり、多数の空間分解データを収集して、トモグラフィ画像に変換するので、高分解能画像を得ることができる。ここで仮定されるグリッドとは、平坦なグリッド、又は曲率を有するグリッドであり得て、後者の場合には、画像の質が改善され得る。検出器位置は、時間不変、又は時間依存の方法で空間内にパターンを形成することができ、例えば、検出器のアレイや、検出器要素の並進移動によるものとなる。
【0015】
更に他の態様では、点状検出位置の使用が、モデルベースの反転方法等のトモグラフィ方法を改善し得て、特に、点拡がり関数(PSF,point−spread−function)補正(インパルス応答補正としても知られている)を取り入れることで、改善され得る。これは、モデルベースの反転方法を用いる際に達成可能であり、検出器を単一点に理想化する代わりに、検出器位置に設けられる実際の検出器の物理的プロセスがモデル化される。この点に関して、検出器の開口全体にわたって信号検出を積分するプロセス、又は等価なプロセスにおいて、用いられる検出器の物理的寸法が反転モデルに組み込まれる。従って、本発明に係る点状検出位置を提供することで、トモグラフィ画像の再構成を単純化し且つ改善することができる。代わりに、ピンホールの物理的又は仮想的寸法を考慮するため、デコンボリューションを行い、画像の再構成及び/又は質を改善することもできる。デコンボリューションは、文献に記載されている方法に従って、二次元又は三次元で行うことができる。
【0016】
本発明に係る音響波の検出によって、収集されるデータが、高分解能画像(例えば、皮膚等の上皮組織の画像化分野において、メゾスコピック範囲、つまり、最大数ミリメートルの深度)を得るのに適したものとなる。これは、好ましくは、多様なトモグラフィ変換方法(逆投影アルゴリズム、モデルベースの方法(順モデル化等)が挙げられる)を用いて、達成され得る。
【0017】
最後に、本発明は、小さな形状因子及び携帯性を有し、簡単に手持ち式で動作可能で、手術室にシームレスに統合可能な配置構成に関する。そのデバイス設計の核心は、組織から多重投影データを高速収集するために焦点外超音波信号の高速測定を可能にする軽量技術の利用にある。高速処理動作は、好ましくは、医師への直接フィードバック用に走査されたデータの実時間表示を更に可能にする。携帯性とは、特に、軽量で形状因子が小さな機械を用いて使用者が片手/片腕で操作することを可能にする形状因子のことを称する。これは、本願において、形状因子の小さな検出器と、照明用のフレキシブルな光学誘導システムを用いて達成される。検出器ユニットはデバイスの手持ち部分にあるが、光源並びに検出及び計算電子機器は、手持ち部分とは別の制御ユニット内に配置され得る。
【0018】
本願において、携帯性とは、少なくとも検出器パターンと、照明配置構成の少なくとも一部とが一つのユニット内に収容されるようにピンホール検出器を配置構成することを更に示唆し(後述の
図1を参照)、場合によっては、複数の他のシステム(目視検査用の光学システム、蛍光画像化システム、光学コヒーレンストモグラフィシステム、光学分解能光音響顕微鏡システム等)を統合し得る。
【0019】
特に好ましい本発明の特徴は、携帯デバイスが物体表面に対する不変距離において点状検出位置(ピンホール検出器)を効果的に位置決めすることである。不変距離とは、本願において、ピンホール検出器パターンと画像化される物体の表面との間の距離が、データ取得プロセスにわたって変化しないという意味で定義される。これを達成するため、デバイスは、デバイスの前方部分、つまり、音波検出の方向と一致する物体に向かうデバイスの面に決定される有効表面(“中間表面”とも称される)を用いて、ピンホール検出器パターンを実現する。この面は、対象物体との直接接触を為す。本願において、直接接触とは、デバイスと物体との直接物理的な接触、又は、音響整合スペーサ又は媒体を介するものとして定義される。いずれの場合においても、有効表面は、デバイスと物体との間に定められ、デバイスと物体とを接続して、また、(1)デバイス機器と画像化される組織との間のバリア(一方の媒体から他方の媒体への電気、流体又は他の流れを防止するバリア)と、(2)ピンホール検出器と物体の表面との間の基準点とを形成するという重要な役割を有する。基準点は、好ましくは、取得中に物体表面及び画像化される物体がピンホール検出器パターンに対して移動することを防止するという点で必要とされる。これは、手持ち式操作において特に有利である。本願で提案されるデバイスは、好ましくは、1〜50マイクロメートル程度の分解能を達成する。しかしながら、手持ち式操作は、所望の分解能よりも数桁大きな距離でスキャナを容易に移動させ得る。有効表面を定めることは、画像化される物体を携帯スキャナに対して固定して、スキャナの移動を画像化される物体に対する並進移動にする。このようにして、有効表面を介する直接接触が適用される限り、ピンホール検出器と画像化される物体との間の相対的距離は、走査中に変化しない。
【0020】
手持ち式操作は、診察又は外来検査において全身にアクセスするのに有利である。固定スキャナとは対照的に、携帯光音響デバイス用の有効表面を定めることには多様な方法が想定される。本発明のデバイスは、デバイスの前方端の境界又は“リム”を用いて、検査中の組織を僅かに圧縮して、組織を検出器に対して動かなくすることを想定している。追加的に又は代替的に、この操作は、デバイスと画像化される物体(例えば、皮膚)との間の摩擦を生じさせる物質製の有効表面を用いることによって可能となる。最後に、吸引操作を提供することもでき、デバイスが、手動又は機械的/電気的動作のポンプを用いて、蛸の吸盤と同様の吸引作用で、皮膚又は他の上皮組織をデバイスの前方端にくっつける負圧を更に発生させる。有効表面は、膜であり得て、ピンホール検出器を物体から離隔して、場合によっては検出器に音波を結合させる結合媒体を更に含み得ることを理解されたい。この膜は、画像化される物体と直接接触し得る。代わりに、有効表面は、cMUTウェーハや、圧電検出器アレイ、照明ユニットの露出表面であり得て、物体と直接接触する有効表面として機能する物理的表面を形成するように作製される。更なる代替案は、検出パターンの前方に配置される保護膜が生じさせる有効表面、例えば、cMUTウェーハや圧電検出器アレイの前方におけるものである。有効表面は、更なる他の機能、特に、物体からの音波を超音波検出器に結合させる音響整合媒体を封入するという機能を有し得る。音響整合媒体は、筐体内に含まれる固体、ゲル又は流体であり、有効表面を共に生じさせる膜によって漏れないようにされる。
【0021】
特に、光源を携帯ヘッド(発光ダイオード、レーザーダイオード)上に集積することもできる。この場合、データ転送を無線で、つまり、電波、マイクロ波、又は光の送信及び検出によって達成することもできる。これは、特に、強度変調、周波数変調、又は位相変調された光を用いることで、達成可能である。多重スペクトル画像化の場合、波長が異なる複数の光源を組み込む必要がある。代わりに、特に、光パルスを用いる場合には、大型光源が必要とされるので、導光体が、いずれかの箇所に配置された光源からの光を誘導するようにして、デバイスの重量を最少にする。
【0022】
まとめると、本発明は、物体の高品質光音響画像の確実な取得を可能にして、特に、皮膚及び内皮組織の検査に必要な分解能を満たす。
【0023】
好ましい実施形態では、点状検出位置は物体の表面上に位置する。特に、光音響波を検出する際には、デバイスが物体に接触している。このようにして、物体の表面下深くの深度の関心領域に対応する物体の部分についても、高分解能画像を得ることができる。更に、物体とデバイスとの間の結合媒体の薄膜のみで十分に、効率的な音響及び/又は光学結合を生じさせ得る。
【0024】
更に好ましい実施形態では、点状検出位置は、物体の表面の上方に位置する。好ましくは、点状検出位置は、物体の表面の近傍、特に、物体の表面から2mm未満、特に1mm未満の距離に位置する。このようにして、点状検出位置と物体の表面との間に隙間が得られる。好ましくは、結合媒体が、スキャナと画像化される物体の表面との間に生じた隙間を埋める。有利には、この隙間は、物体上方の方向からの照明(前方照明とも称される)に代えて又は加えて、デバイスの側方領域からの物体への電磁放射、特に光の結合(側方照明とも称される)を可能にする。更に、隙間が結合媒体で埋められている場合、検出ユニットの点状検出位置を擦ったり損傷させる危険性なく、物体の上又は上方でデバイスを簡単且つ安全に移動させることができる。
【0025】
他の好ましい実施形態では、一つ以上の点状検出位置の各々が、音響波が収集される視野、特に発散視野を示す。このようにして、個々の音波は小型音波検出要素(小型超音波トランスデューサ、開口、ピンホール等)によって検出されるものではあるが、画像化される物体から放出される音響エネルギーの大部分が、デバイスによって収集される。
【0026】
本発明の更なる実施形態によると、検出ユニットは、音響波を検出するための点状検出位置に位置する一つ以上の点状検出要素を備える。本発明の意味において、“検出要素”との用語は、あらゆる音波検出要素に関し、好ましくは、音響波を検出するための点状検出位置に位置し、特に、音響波を検出するための点状検出位置に位置する一次元又は二次元アレイで配置される。“検出要素”との用語に係る“点状”との用語は、好ましくは、小型検出要素に関し、そのサイズは、特に、取得される画像の所望の及び/又は達成可能な空間分解能、特に方位分解能の範囲内、特に同程度のものである。このようにして、追加設定を設けずに、音響波を一つ以上の点状検出位置において直接検出することができる。これは、デバイスを単純化して、そのコストを軽減し得る。
【0027】
特に好ましい実施形態では、点状検出要素は、150μm未満、特に50μm未満の寸法を有する感知領域を備える。このようにして、検出された音響情報に関する空間確実性が更に改善され、従って、得られる画像の鮮明性が更に増強される。更に、多数の検出要素を検出ユニットに組み込むことができる。従って、多数の空間分解光音響データを並列で収集することができ、トモグラフィ方法(逆投影アルゴリズムやモデルベースの方法等)を用いた高分解能画像の取得を更に改善し得る。
【0028】
好ましくは、検出ユニットは、一次元又は二次元パターンで配置された複数の点状検出要素を備える。音響波を検出するため、その一次元又は二次元パターンは、検出器のアレイによって形成されて、点状検出位置に位置する。このようにして、一次元又は二次元グリッドで配置される多重データ点を収集することができる。そして、トモグラフィ方法(逆投影やモデルベースの方法等)を用いて、これらデータを高分解能画像に変換することができ、高分解能画像を改善し得る。
【0029】
特に好ましい他の実施形態では、点状検出要素は、容量性超音波トランスデューサ、特に、容量性微細機械加工超音波トランスデューサ(CMUT,capacitive micro‐machined ultrasound transducer)に対応する。CMUTは、エネルギー変換がキャパシタンスの変化によって生じるトランスデューサである。好ましくは、CMUTは、微細機械加工法を用いてシリコン上に構成され、キャビティがシリコン基板に形成されて、キャビティの頂部に懸架された薄層が膜として機能し、その上の金属化層が電極として機能し、シリコン基板が底部電極として機能する。AC(交流)信号が、バイアスがかけられた電極に印加されると、関心媒体に超音波が発生する。このようにして、CMUTはトランスミッタとして機能する。他方、本発明の好ましい実施形態のように、バイアスがかけられたCMUTの膜に超音波が印加されると、CMUTのキャパシタンスが変化するにつれて、交流信号が発生する。このようにして、CMUTは超音波のレシーバとして機能する。他のトランスデューサによる方法と比較すると、CMUTを点状検出要素として用いることによって、極めて多数のトランスデューサをトランスデューサアレイ内に含ませることができる。
【0030】
他の好ましい実施形態によると、一つ以上の点状検出位置は、音響波を検出するための一つ以上の検出要素の一つ以上の集束点に対応する。好ましくは、検出要素は、トランスデューサの面から或る距離において最大値を示す超音波感度を有する集束超音波トランスデューサに対応する。トランスデューサの集束領域において、超音波感度は、集束領域外の感度と比較して100倍以上高くなり得る。この感度の増大のため、集束領域に配置される際には、音波発生要素から、はるかに大きな音響信号が得られる。
【0031】
本発明の他の好ましい態様は、超広帯域超音波周波数の使用であり、広帯域検出器を用いて、本願の技術の更に有利な可能性を与える。上皮組織内の複数のエネルギー吸収特徴部は異なるサイズを有し、それに応じて異なる周波数で音波を放出する。広周波数帯域にわたるこうした周波数の検出は、小血管(小静脈、細動脈)から大血管や、界面、他の組織構造等の多様な組織特徴を可視化することを可能にするので、特に有用である。広帯域スペクトルを、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)結晶の物質を用いて得ることができ、広帯域特性及び高感度がもたらされることが分かった。これに対応して、数MHz(又は数百kHz)から数十又は数百MHz(例えば、50MHz、200MHz)の範囲内の周波数が、上皮構造及び上皮下構造を画像化するのに重要な周波数を含むことが分かった。このことは、広帯域周波数成分の使用が、狭帯域を使用するよりも、多くの組織特徴を再現するので、画像化性能を改善することを示唆している。帯域幅の正確な選択は、最終的には、使用されるトランスデューサの物理的性能、及び、画像化したい特徴によって決定され得る。
【0032】
画像形成における周波数の利用も、本発明における好ましい態様である。特に、生の信号に適用される適切なフィルタを用いる、異なる帯域における周波数の分離が、画像化性能を有利に改善することが分かった。異なる周波数帯において再構成される画像は、異なる空間周波数、つまり、異なる組織特徴を含む。異なる周波数帯における画像の合成が、合成画像におけるそうした特徴のより良い分離をもたらすことができる。その理由は、それら異なる特徴は、異なる強度、異なる色、又はその存在の輪郭をより良く描く他のレンダリング法でレンダリング可能であるからである。他の理由は、フィルタリングされていない又は広いバンドパスでフィルタリングされた信号と比較して、狭いバンドパスでフィルタリングされた信号については低いノイズパワーが得られるからである。この周波数帯依存性の画像化は、スケーラビリティに関する重要な特徴でもある。周波数帯の代替利用法は、所望の分解能及び深度設定について特定の周波数を使用することに関する。例えば、真皮又は皮下組織(より深くに位置する構造/低分解能)を画像化するための低周波数帯に対して、異なる周波数帯(高周波数)が、皮膚の表皮(より表面的な構造/高分解能)を画像化するのに適切である。
【0033】
本発明の更に好ましい態様は、使用されるトランスデューサが、高い許容角度で音波を収集することである。CMUTトランスデューサは、広帯域応答及び広い許容角度の両方に対して高感度の物質を用いることによって、角度感度を最適化する。これらトランスデューサをより小型(100マイクロメートル以下程度)にして、より薄い膜を用いることで、物理的サイズ寸法を減少させることによって、ピンホールの設計基準を満たしながら、より良い検出特性及びより高い角度検出を達成することができる。圧電性物質及び他の音波に対して高感度の物質での実施について重要な特徴は、集束点、つまり、仮想的ピンホールを実現する点の位置である。典型的には、こうした点は、音波に対して高感度な表面に曲率をもたせることによって、及び/又は、音響レンズを用いることによって、実現される。集束点は、要素のアレイによっても達成可能であり、合成法を用いてピンホールに繋がる開口を効果的に実現する。これら全ての場合において、特に好ましい本発明の特徴は、トランスデューサの音波検出表面及び媒体に対する集束点の位置に関係している。特に、トランスデューサの音波検出表面(平坦な表面の場合、典型的には、複数の素子で構成される)に可能な限り近く、又は、湾曲した表面の外縁を画定する境界を通過する仮想的表面の近くに、集束点を配置することによって、検出器及び/又はピンホールの許容角度を増大及び/又は最大化させることができる。これは、本発明の特に有利な好ましい特徴であり、ピンホールの許容角度を、集束点の位置によって変調させる。これは、集束点が画像化される物体の外に優先的に位置する本発明の他の実施形態にも適合する。従って、集束点を検出器近くに配置することで許容角度を最大にし、検出器全体が表面近傍に配置されるシステムを設計することで、本願の有利な特徴が提供される。例えば、半球の曲率を有する検出器を用いることによって、集束点は、半球の境界を通過する表面の中心に位置して、事実上180度にわたる集束点の信号を効果的に許容する。この場合における正確な形状及びピンホールの位置の適応によって、集束点を、半球の外に配置することができ、許容角度を効果的に変調させる。
【0034】
好ましい実施形態では、検出ユニットは、検出要素の集束点を偏向させるための少なくとも一つの偏向要素を備え、集束点を、関心領域の外の異なる横方向位置に、特に、物体の表面の上又は上方において、位置決めできるようにする。これは、物体の表面にわたってデバイスを横方向に移動させる必要なく、物体の効率的な検査を可能にする。検出要素は、照射ユニットによって照射される電磁放射の少なくとも一部に対して透過性であり得る。このようにして、上方から物体を照明することを可能にする。更に、他の画像化手段(接眼レンズによる目視検査、レンズ、写真法、光学コヒーレンストモグラフィ、他の顕微鏡法、)及び光学分解能光音響画像化の統合を可能にする。全体として、簡単な照明と、ハイブリッド画像化法の実現とが促進される。
【0035】
好ましくは、検出ユニットは、音響波が通過することができる一つ以上の点状開口を備える。より好ましくは、検出される音響波の強度の大部分、より好ましくは70%超、より好ましくは90%超、より好ましくは95%超、最も好ましくは99%超が、検出前に点状開口を通過することができるように、点状開口が位置する。本発明の意味において、“開口”との用語は、電磁放射の照射の際に物体の関心領域に発生する音響波等の波が通過することができるあらゆる手段に関する。本発明の意味において、“開口”との用語に係る“点状”との用語は、小型開口に係り、そのサイズは、得られる画像の所望の及び/又は達成可能な空間分解能の範囲内のもの、特に同程度のものである。このようにして、顕著な強度損失なく、得られる画像の空間確実性が増強される。同様に、ピンホールとの用語が、小型開口を指称するのに用いられる。
【0036】
好ましくは、デバイスは、光信号及び/又は音響信号を処理して、二次元又は三次元において物体の光音響画像を発生させるように構成された画像処理デバイスを備える。好ましくは、組織内の音波伝播の態様及び少なくとも一つの検出器感度領域の態様を含む順モデルに基づくトモグラフィ再構成を用いて、画像を発生させる。
【0037】
好ましくは、調査中の物体の上にデバイスを位置決めして、及び/又は、調査中の物体に対して手でデバイスを移動させるため、特に、物体の外側表面の上にデバイスを位置決めして、物体の外側表面に沿ってデバイスを移動させるため、デバイスは、指及び/又は手で掴まれて保持されるように構成された手持ち式デバイスである。このようにして、診察又は外来検査において全身に効率的にアクセスすることができる。“手持ち式デバイス”との用語は、一部の構成要素、特に、照射ユニット及び/又は検出ユニットのみが、同じ目的のため指及び/又は手で掴まれて保持されように構成されている光音響画像化デバイスにも関する。好ましくは、手持ち式デバイス又は手持ち式プローブのサイズは、本発明の意味において、幅及び/又は奥行及び/又は高さが15cm未満である。更に、“手持ち式デバイス”との用語は、手持ち式デバイス又は手持ち式プローブの任意の向きにおいてトモグラフィ光音響画像を取得するように設計された光音響画像化デバイスに関し得る。例えば、物体から画像を取得する際に、手持ち式デバイス又はプローブの向きは、垂直上向きから垂直下向きまで変化し得て、それらの間の全ての向き、特に、水平向きを含み得る。
【0038】
以下、本発明の追加的又は代替的な態様、そして、本発明の好ましい又は代替的な態様について説明する。
【0039】
本発明の追加的又は代替的な態様によると、光音響デバイス(“メゾスコピック画像化デバイス”とも称される)は、調査中の物体、特に生体を反射モードで画像化するように構成される。“反射モード”との用語は、励起機器及び検出機器を両方とも、画像化される組織の同じ側に配置することを称する。メゾスコピック画像化デバイスは、光源デバイスを有する光学照明デバイスを含む。パルスレーザー光源や、強度変調及び/又は位相変調の光等の光源デバイスが、物体を照明するように構成される。このため、光源デバイスは、光反射及び/又は屈折要素、メタ材料、及び/又は拡散要素、例えば、ミラー、ガルバノメータ、拡散体、他の可動部分、レンズシステム、光学フィルタ等を含み得る。
【0040】
検出器デバイスは、好ましくは、少なくとも一つの超音波検出要素(トランスデューサ)を備える音響検出器デバイスを備え、物体の照明に応答して物体内に発生する音響信号を収集するように配置される。音響検出器デバイスは、組織の光学照明を可能にするように、つまり、悪影響を与えないように配置される。これに対応して、光学照明デバイスは、組織からの音響(超音波)検出を可能にするように、つまり、悪影響を与えないように配置される。
【0041】
少なくとも一つの超音波検出器は、好ましくは、小型開口(ピンホールとも称される)を通過する音波を検出するように配置される。小型開口は、発生する画像の空間確実性を得るのに重要である。小型開口についての既知の感度領域を仮定することで、小型開口からの検出プロセスをモデル化することができる。感度領域は、組織内の音響源が少なくとも一つの検出器によって検出される相対的強度及び/又は分散の空間分布を記述する。画像形成は、トモグラフィ法に基づいたものとなり、そのトモグラフィ法は、音波伝播をモデル化又は近似することができ、場合によっては、使用される検出器の特定の特性(例えば、検出器システムの周波数応答、及び/又は、周波数依存の空間応答)を含み得て、これに、少なくとも一つの反転ステップが続き、測定データから画像を生成する。
【0042】
更に、メゾスコピック画像化デバイスは、光信号及び音響信号を処理して、二次元又は三次元で物体の光音響画像を発生させるように構成された画像処理デバイスを含む。組織内の音波伝播の態様及び少なくとも一つの検出器の感度領域の態様を含む順モデルに基づいたトモグラフィ再構成を用いて、画像を発生させることができる。
【0043】
本発明の他の追加的又は代替的な態様は、光信号を収集するように構成された光検出器デバイスを備える第二の検出器デバイス、例えば、接眼レンズ、光検出器のアレイ、CCD検出器、光学コヒーレンストモグラフィ検出器等を提供することである。その光信号は、照明光の入力を受けた後に物体内に発生する。従って、光検出器デバイスは、スペクトルフィルタリング要素を含み得て、例えば、散乱、反射、吸収、及び/又は、蛍光画像データを収集するように構成され得る。データは、レンズ、例えば、写真レンズや、倍率変化レンズを用いて収集され得る。光学データは、第二の照明デバイスに応答して発生する。第二の照明デバイスは、光音響画像を発生させるのに用いられる、又は、光学画像の仕様に適合可能な第一の照明デバイスと同一であり得る。例えば、第二の照明デバイスは、蛍光画像又は走査コヒーレントビーム(光学コヒーレンストモグラフィ画像化システムの一部)の発生用の励起光であり得る。光学画像は、疑わしい病変の上へのデバイスの配置を誘導するのに役立つ。接眼レンズを用いない場合、デバイスは、正確な配置を誘導するため、また、診断及びセラノスティック(治療診断)目的のため、スクリーン上に光画像を投影する。基準マーカーを用いて、光学システムと共に又は独立して、デバイス配置を行うこともできる。正確な配置のために光音響デバイスの視野を(皮膚又は光学画像上において)追跡するマーカーは重要である。マーカーは、クロスヘア、十字、ドット、又は他のマーカーであり得て、光学照明器から皮膚又は光学画像上に投影される。光学画像は、診断又はセラノスティック(治療診断)画像化に使用可能であり、又は、光信号及び音響信号から再構成された光学画像データ及び光音響画像データに基づいたハイブリッド画像を生成するのに使用可能である。
【0044】
この点に関して、皮膚/内皮画像化デバイス、特に、画像処理デバイスは、光音響画像、光学画像、及びハイブリッド画像を生成するように構成される。光音響画像は、用いられる音響検出器デバイス及び処理方法の特性によって決まる超音波空間分解能の分解能及び全体的な画像化特性を実現する。
【0045】
これに対応して、光学画像特性は、主に、使用される光学検出器に依存し、CCD検出器が用いられるのか、他の検出器、例えばOCT検出器が用いられるのかに依存して変わる。OCTを用いる場合、三次元の視界を考慮することができる。しかしながら、ハイブリッド画像の空間分解能は、多様な画像化デバイスで利用可能な特徴と、収集される信号の組み合わせであり得て、光学デバイス及び音響デバイスの両方の特性、要素サイズ及び幾何学的形状に依存し得る。
【0046】
従って、ハイブリッド画像は、超音波画像及び光学画像の単純な重ね合わせになり得る。代わりに、ハイブリッド画像は、第三の画像を得るために両方のシステムの特徴を利用するより複雑な処理方式に基づいたものになり得る。
【0047】
本発明の他の追加的又は代替的な態様は、レーザービームで関心物体を走査するレーザー走査システムを統合することである。適切な照明システムは、上記照明システムの機器の一部を利用し、及び/又は、レーザービームを修正する要素を追加し得て、例えば、レーザービームの幅を調整して、集束特性を与える。このシステムに応答して発生する光音響信号の検出は、システム内に存在する超音波トランスデューサによって、又は、集束レーザービームが発生させる周波数成分に近い検出特性を有する第二のトランスデューサによって同様に検出可能である。システム及び画像形成は、画像処理デバイスによっても行うことができる。画像処理デバイスは、音響信号を処理して、物体の光学分解能光音響画像を発生させるように構成され、その画像は、単独で使用可能であり、又は、収集された他の画像及び信号と組み合わせて、ハイブリッド画像を形成することもできる。
【0048】
本発明の更に他の追加的又は代替的な態様は、画像化される特定の上皮疾患の寸法及び検査に割り当てられた時間に最適に調和するように、超音波検出の特性、例えば周波数や視野(走査パターン及び寸法)を適合させることによって、分解能及び深度の変動を含む画像を発生させることである。この動的適応は、自動化可能であり、又は使用者がオペレーションコンソールにおいて走査される領域を選択する使用者定義の特徴において実現可能である。この選択は、本発明のデバイスでの試験前の病変の目視検査によって誘導され得て、又は、第二のデバイスの特徴で病変を検査することによって誘導され得る。第二のデバイスの特徴は、下方の病変の寸法、場合によっては光学特性を分析して、メゾスコピック光音響及び他の走査のパラメータを最適に設定することによって、走査パラメータを自動的に誘導するのにも使用可能である。例えば、画像分割アルゴリズムを用いて、病変の領域及び境界を決定して、走査パターンを形成して、それら境界を最適に連結したり、皮膚の特定の領域に対して光学分解能光音響顕微鏡法を誘導したりすることができる。こうしたパラメータの一部の適応は、検出器自体の修正(多様なトランスデューサ、デバイスの動作範囲を拡張する第二のトランスデューサの追加)によっても行うことができ、例えば、ソフトウェア適応(つまり、適切な深度及び分解能を得るための広帯域トランスデューサ、走査パラメータ、適切なフィルタの使用、広帯域光音響データの処理)によっても行うことができる。しかしながら、超音波回折の原理に従って深い深度や大きな試料体積において更に低下する高周波数光音響分解能に対して表面重み付けコントラストの光学分解能を徐々に交換することができる本発明の他の態様に関しても適応が生じ得る。このことは、診断及びセラノスティック(治療診断)の解釈用に投影されるこうしたスケーラブルな画像化特性を統合する画像をもたらす。
【0049】
スケーラビリティは、特に、広帯域超音波周波数検出性能を有する検出器要素を用いることによって、得ることができる。数百kHzから数百MHzもの広帯域において検出に有利な性能が得られる。好ましい実施形態では、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)結晶物質から作製され、湾曲モードで構成された単一のトランスデューサ要素を用いて、広い許容角度と、2MHzから200MHzまでの検出を可能にする。代わりに、複数のトランスデューサを用いて、多様な周波数帯を検出することができ、例えば、一つのトランスデューサが、0.5〜10MHzの範囲をカバーして、他のトランスデューサが10MHzから50MHzの範囲をカバーする。ここに与えられている厳密な値は単なる例である。トランスデューサを、互いに近接して配置して、並列で走査し得る。
【0050】
本発明は、超音波広帯域検出を用いて、光学画像化の侵入深度を顕著に改善するだけではなく、深度に対して分解能を適応させることもでき、広帯域トランスデューサで使用される周波数範囲に適応することによって、更には、検討される多様な周波数に対して異なる音響センサーを使用することによって、深度(直径)が数百マイクロメートルの試料から、直径略5mmの試料に対する数マイクロメートルの分解能、30μm未満の分解能に適応する。
【0051】
この方法を用いて、収集される信号からの多様な特徴を組み合わせて、多様な光学コントラストパラメータを利用することができ、固有コントラスト(病変の境界、血管、酸化又は脱酸素化ヘモグロビン、メラニン、多様な代謝産物、酸素化、低酸素症)や、外的に投与された薬剤(光学色素、蛍光色素、ナノ粒子等)を画像化することが含まれる。こうしたバイオマーカーの検出は、単一の波長で達成可能であり、又は、組織を多重波長で照明して、異なる波長における画像を収集して、それら画像をスペクトル処理して、下方の関心部分の特定の吸収特徴を識別した後に達成可能である。
【0052】
デバイスは、多重スペクトル光音響トモグラフィ(MSOT,multi−spectral optoacoustic tomography)の原理で動作可能であり、多重波長での照明及びスペクトル処理法を用いて、解剖学的、機能的/生理的、及び分子的なパラメータをin‐vivoで取得する。代わりに、バイオマーカーを時間的特徴で分解することもでき、経時的な吸収パラメータの変動を記録して、組織内の構造的、生理的、更には分子的な特徴を識別することができる。このことは、画像間の差をとることによって、より一般的には、特定の組織の特性を明らかにする特定の動的パターンに画像を一致させることによって達成可能である。
【0053】
本発明の好ましい態様によると、ピンホールから音波を検出するように配置構成される音響検出器を用いる。これは、例えば、小型開口のみから信号を検出する圧電トランスデューサ(PZT)等の集束電気音響トランスデューサ、容量性トランスデューサCMUT(容量性微細機械加工超音波トランスデューサ)、ハイドロフォン、又は他のシリコンベースのトランスデューサを用いて、達成可能である。同様に、光学干渉法やシリコンフォトニクスに基づいた検出器要素を用いた検出器の位置(検出器アレイ)を実現することができる。これら全ての好ましい場合において、音波は、小型開口(ピンホール)のグリッドにわたって検出されて、集束されていないものとされ、つまり、多重発散許容角度からの光を検出する(投影)。有効表面(中間表面)を使用することによって、ピンホールのグリッドは、画像化される物体からの不変距離に存在するようになり、これは、本発明における特に好ましい特徴であり、データ収集プロセス全体にわたって、ピンホールグリッド(点状検出位置)が、物体又は画像化される物体の表面からの不変距離を有するようにする。このようにして、検出器走査の実施形態、例えば、ピンホールグリッドを設けるのに単一又は少数の検出器を用いる実施形態/デバイスにおいても、使用者に依存する移動の可能性にもかかわらず、手持ち式操作で高分解能を得ることができる。この構成は、静止スキャナにおいても好ましいものであり、物体の移動を防止する。例えば、物体が人間の腕である場合、有効表面を設けることは、人間の移動が、不変距離の状態を壊して、モーションアーティファクト及び分解能劣化をもたらすことを防止するのに役立つ。不変距離の状態において発生する信号をトモグラフィ再構成して、二次元又は三次元の画像を得る。
【0054】
このような“ピンホール”開口は多様な方法で実現可能である。一つの方法は、小型サイズの検出器、例えば、CMUTベースの検出器、シリコン/シリカ検出器、物理的に小型な干渉検出器、例えばファイバーベースの検出器を用いて、物理的に開口を実現することである。ここで重要な技術は、シリコンフォトニクスであり、音波を小さな物理的領域から同様に検出する。他の方法は、湾曲した表面要素及び/又は音響レンズを用いて幾何学的且つ電子的に開口を実現することであり、小さな集束点から優先的に検出を行い、及び/又は、検出特性を更に制御するタイミング、例えば、遅延及び総和法を用いる。この場合、一組の移動ステージ、音響及び/又は光学ミラー、又は、ステージ及びミラーの組み合わせを用いて、領域上に検出器パターンを形成し得る。更に他の方法は、干渉ファイバー、例えば、ブラッグ格子やファブリ・ペロー共鳴器を取り入れたファイバー等を用いて、ピンホールを実現することである。代替案として、或る物質を用いて検出器を封入して、音波が検出器に達することができる小さな開口のみを有するようにし得る。このような実現方法を達成するため、音波反射物質、音波吸収物質、又はこれら二種類の物質の組み合わせを配置して、検出器を封入して、小さな物理的開口のみを通過する音波が検出器にアクセスできるようにする。典型的には、液体と空気の界面が、良好な音波反射を達成することができ、これは、例えば、中空ガラス表面である。反射を防止するためには、音波吸収物質の充填(又は音波を伝播させない真空構造)が必要となり、又は、物理的ピンホールを拡大して、検出器保護の壁との音波の干渉を減らす。この検出方法においては、音波吸収物質で検出器(開口を除く)を取り囲み、反射音波が媒体に再入射することを防止する。代わりに、媒体で取り囲むこと(開口、つまりピンホールを除く)で効率的な音波吸収を保証することができる場合には、反射物質を全く用いなくてよい。
【0055】
有効な代替案は、音波を透過させない又は高音波反射性の物質(例えば、真空や空気)で取り囲まれた、音波を透過させる物質(例えば、金属のヘアピンやニードル)製の点状検出器を用いることである。ニードルを走査することによって、多数の点からのピンホール測定を行うことができる。検出を並列化するため、複数のニードルを備えるシステムも想定可能である。ニードルは、並列で読み取られる多重センサーに向けられ得る。
【0056】
上記トランスデューサは、好ましくは、電気的トランスデューサ、つまり、圧電トランスデューサ、容量性トランスデューサ、又はシリコントランスデューサを備える。シリコントランスデューサとして、ウェーハベースのトランスデューサ、又は干渉ファイバーベースのトランスデューサが挙げられ、トランスデューサを介する照明も可能にする。本願においては、レーザービーム走査の使用と、干渉計の使用を用いた検出が好ましい方法であり、有効表面を用いることで実現される。しかしながら、圧電検出器又はcMUTの使用がより好ましい方法をもたらし得て、特に、並列検出を可能にし、また、干渉検出器と比較して、より広帯域の検出、より小型/より軽量の実施を達成することができる。従って、幅、サイズ及びコストを更に低減して、携帯性を高めるためには、電気音響検出器(CMUT、シリコン、ファイバー、物理的ピンホール)の使用が好ましい。
【0057】
好ましくは、ピンホール検出器要素は、所定の基準表面、例えば、平坦な表面、凹又は凸の表面に沿って位置し、音響エネルギーを結合させる媒体を介して組織に結合される。媒体は、光を更に分散させ得る。媒体による分散は、組織表面に対して均一に照明光を分布させるのに有用である。また、媒体は、光を円形に分散させる層状媒体であり得て、リングパターンで組織を照明する。媒体は、有効表面を設けるユニットであり得て、有効表面の一部であり得て、有効表面と接触し得て、又は、有効表面によって少なくとも一つの面の輪郭が与えられるものであり得る。
【0058】
好ましくは、検出器は、動作中において、組織の外、例えば組織表面から0.1〜10mm離れて位置する集束点(焦点)を有する。このモードで取得される音波は、媒体内の多数の発散点からのものであるが、仮想的な小型空間開口を介して収集され、データの起源に関して、空間確実性をもたらすが、角度不確実性ももたらす。しかしながら、二次元グリッドで配置された複数の点を用いると、上記トモグラフィ法(逆投影やモデルベースの方法)を用いて、そうしたデータを高分解能画像に変換することができる。概説すると、検出器の活性検出表面近傍のピンホールは、ピンホールの許容角度を増大させて、トモグラフィに利用可能な多数の投影を生じさせる。この設計は、画像再構成及び画像性能を改善する。
【0059】
本発明の他の追加的又は代替的な態様では、集束超音波検出器、例えば、電気音響超音波検出器が、検出器又は集束点を走査して、小型開口検出のパターンを設ける。効果的には、トランスデューサの集束領域は、集束されていない小型開口検出器とされる。ここで、開口は、検出器の湾曲した形状を用いて電子的に設けられ、遅延信号を加えて、検出器開口内を通過する線からの信号を検出する。これらの検出器は、大きな検出領域を有する傾向にあり、それ自体がピンホールを形成するものではないので、音波回折及び検出器の有限の面積全体を考慮する手段が、正確な検出を可能にするために更に必要となり得るが、ただし、これは、トランスデューサの領域の実際の検出性能を電子的に処理する及び/又は数学的にモデル化するものとなる。検出のモデル化は、特定の許容特性を考慮する手段も提供する。音波の伝播及び検出、そして数学的反転を記述する順モデルに、こうしたモデルを組み込むことができ、順問題に検出器モデルを組み込むことで、ピンホール動作を確立する。
【0060】
本デバイスの他の好ましい特徴は、組織上に光を結合させるのに適した照明方法に関する。本願で検討される照明の実施は、スキャナの動作にとって有利なものである。ここで、照明は、好ましくは、平面波照明を用いる点状検出器のパターンを介する透過性照明(前方照明とも称される)、又は、パターン状照明(例えば、リング照明)のいずれかによって提供される表面照明として与えられる。これは、例えば、組織から放出された音波をシステムに向けて偏向させるが、関心波長において光が表面を通過することを可能にする表面を介して、達成可能である。また、透過性照明は、容量性トランスデューサ又は干渉トランスデューサの適切に修正されたチップを介しも達成可能であり、ウェーハ又は表面を、メタ物質として、光を通過させるように適切に処理することが想定される。また、拡散体が、あらゆる照明パターン(リング、矩形等)において、照明をより均一にするように使用され得て、透透過性照明モードで使用されるか、又は、検出器ラインの下に配置される。例えば、拡散体は、表面内に封入されて散乱媒体(例えば、液体散乱体、寒天等のゲル散乱体、TiO
2球、イントラリピッド、又は、適切な音響伝播特性を有する固体散乱体)を含む体積部分として実現され得る。封入表面は光反射表面であり得る。光は、一つ又は複数の位置から光ガイドを介して、散乱体積部分内に入射し得る。入射した光は、封入表面で散乱され反射される。組織と接触する表面は、勿論反射性ではないので、全ての光子を組織内に付与することができる。この点に関して、リング又は矩形の均一な光子パターンが組織内に入射して、光音響応答を励起させる。より一般的な代替案は、光ファイバーを組織に近付け又は直接接触させることによって、組織内に光を直接入射させることを含む。封入表面の利点は、分布照明パターンが達成可能な点である。原則的には、均一な照明が好ましいが、中心が強く照明されないリング状、ドーナッツ状、矩形の照明(矩形、ドーナッツ)が、多量の光エネルギーをピンホールの前方に直接付与することに起因して、ダイナミックレンジを改善するのには好ましい。この場合、トランスデューサから離れた光エネルギーを調整することが、視認性及びダイナミックレンズを改善し得る。
【0061】
更に、本発明は、振幅、周波数、又は位相という一つの時間変動パラメータでの光照明の使用に関する。振幅変動を考慮する場合、振幅変動は、超短光パルス形式のものであり得て、例えば、Ti:サファイアレーザー、光パラメトリック発振器、レーザーダイオード、発光ダイオード、ファイバーレーザー、又は他の光生成要素からのものである。代わりに、振幅の変動は、強度変調レーザー及びレーザーダイオードを使用しても生成可能である。最後に、周波数又は位相変調光源も検討可能である。周波数領域画像化の実施の詳細は、参照として本願に組み込まれる特許文献1において確立されている。
【0062】
本発明の更なる利点として、ハイブリッド光音響メゾスコープデバイスの光源デバイスは、物体の多様な照明タイプ、例えば、広視野照明、パターン化照明、単一平面照明、集束照明、及び/又は、ペンシルビーム照明用に構成され得る。広視野照明では、検査領域を覆う物体の表面領域が均一に照明される。これに対応して、パターン化又は集束照明は、物体の表面領域に対してパターン化された又は集束された光場分布を生じさせて、その分布は、例えば、パターン又は光の焦点を走査することによって、時間変動し得る。必要とされる特定の画像化性能特性に応じて、複数の照明タイプを組み合わせることができる。照明の方向は、特に上皮組織を画像化する場合には、物体の一方の側からのものとされ得て、組織へのアクセスが、組織の一方の側からのみ可能となる。
【0063】
好ましくは、主たるデバイス特徴、つまり、音響分解能メゾスコピー用の照明の方向は、二つの主要な方法におけるものとなり得る。一つの方法は、透過性要素又はメタ物質を用いる光学及び音響システムによるものである。第二の方法は、視野側から光を横方向で結合させるものであり、典型的には拡大システム、反射及び/又は拡散媒体を用いて、光を組織内に均一に分布させる。例えば、検出器を組織に結合させる媒体は、多数の散乱体(脂質、TiO
2粒子、他の散乱媒体等)を含む拡散ゲル又は流体であり得る。流体は、反射表面(ミラーや反射箔(白色箔、銀又はアルミニウム箔等))によって封入されて、結合ゲルから出て来る光子を反射して、結合媒体及び組織に戻す。両方の照明方法を組み合わせることができる。
【0064】
更に他の代替実施形態によると、音響透過性ミラーを用い、音波を単一要素検出器に反射するが、ガルバノメータベースのデバイス又は他の高速モーターステージを用いて走査を行い、二次元音響検出器グリッドパターンの使用と等価なラスタ走査を提供する。CMUTベースのシステムほど高速ではないが、単一の検出器及び音響走査ミラーの組み合わせの使用は、追加の画像化モードの実現を可能にする透過性音波偏向デバイスの利点を有する。この場合における光透過性ミラーの使用は、上方からの物体照明を促進し、また、他の画像化手段(接眼レンズによる目視検査(これは好ましい実施形態である)、レンズ、写真法、光学コヒーレンストモグラフィ、他の顕微鏡法)及び光学分解能光音響画像化の統合を促進することができる。これは、実際的なシステムに寄与して、簡単な照明を促進して、ハイブリッド画像化法を実現するのに特に魅力的である。
【0065】
本発明の他の特に好ましい実施形態によると、画像処理デバイスは、光音響メゾスコープ画像を生成するだけではなく、光学画像及び/又は光学分解能光音響画像の少なくとも一方を更に生成するように構成される。特に、光学画像は、音響検出器デバイスの配置を光学制御で行うことができるという利点を有し、つまり、物体について収集された光学画像データに応じて、音響検出器デバイスを物体に対して位置決めすることができる。また、光学画像は、皮膚科学において現在実践されているのに類似した診断又はセラノスティック(治療診断)目的での従来の組織及び病変の検査用にも使用可能である。しかしながら、上述のように、光学画像は、トモグラフィ光学画像、例えば、組織の数百マイクロメートルから数ミリメートルまでの高分解能三次元画像を提供する光学コヒーレンストモグラフィ画像や、組織深くに広がる共起表現コントラストを明らかにする音響分解能画像等も示唆し得る。更なる利点として、光学画像データ及び/又は光音響画像データを用いて、光音響画像及び光学画像をそれぞれ再構築することができ、また、その逆も可能である。
【0066】
一般的に、画像化される物体は、例えば、人間の皮膚、動物の皮膚、又は最大数ミリメートルの他の表皮組織を含み得る。多様なレベルの小型化技術が検討され、本発明の方法を、内視鏡デバイスに追加することもでき、結腸、食道等の表皮内部の疾患や、内臓や血管の内側をイメージングすることができる。後者の場合、光源デバイス、光検出器デバイス、及び音響検出器デバイスは、内視鏡デバイスに結合される。好ましくは、音響検出器デバイスは、内視鏡デバイスの遠位部分に配置され、検査されている物体の内側部分を表すハイブリッド又は光音響画像を収集することができる。
【0067】
本発明の上記の及び他の要素、特徴、ステップ、特性及び利点は、添付図面を参照する以下の好ましい実施形態の詳細な説明からより明らかになるものである。