(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置を示す回路図である。
図2は、本実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図3は、
図2の拡大図である。
【0008】
先ず、本実施形態に係る半導体装置1の構成を、回路面から説明する。
図1に示すように、半導体装置1においては、MOSFET10が設けられている。MOSFET10には、ドレイン10d、ソース10s、ゲート10gが設けられており、ソース10sとドレイン10dとの間には、ボディダイオード10bが形成されている。ボディダイオード10bのアノードはソース10sに接続され、カソードはドレイン10dに接続されている。
【0009】
また、半導体装置1には、ドレイン電極11、ソース電極12及びゲート電極13が設けられている。MOSFET10のドレイン10dはドレイン電極11に接続され、ソース10sはソース電極12に接続され、ゲート10gはゲート電極13に接続されている。ソース電極12は接地電位GNDに接続されている。
【0010】
ドレイン電極11とゲート電極13との間には、GD間クランプ回路15が接続されている。GD間クランプ回路15においては、双方向ダイオードが設けられている。例えば、2つのダイオード16a及び16bが直列に接続されている。ダイオード16aのカソードはドレイン電極11に接続されている。ダイオード16aのアノードはダイオード16bのアノードに接続されている。ダイオード16bのカソードはゲート10gに接続されている。GD間クランプ回路15のクランプ電圧Vclamp1は、MOSFET10のソース−ドレイン間のブレークダウン電圧VDSSよりも低い。
【0011】
ドレイン電極11とゲート電極13との間には、GD間クランプ回路17も接続されている。ドレイン電極11とゲート電極13との間において、GD間クランプ回路15とGD間クランプ回路17は、並列に接続されている。GD間クランプ回路17においては、双方向ダイオードが設けられている。例えば、4つのダイオード18a〜18dが直列に接続されている。ダイオード18aのカソードはドレイン電極11に接続されている。ダイオード18aのアノードはダイオード18bのアノードに接続されている。ダイオード18bのカソードはダイオード18cのカソードに接続されている。ダイオード18cのアノードはダイオード18dのアノードに接続されている。ダイオード18dのカソードはゲート電極13に接続されている。
【0012】
GD間クランプ回路17のクランプ電圧Vclamp2は、GD間クランプ回路15のクランプ電圧Vclamp1よりも高く、MOSFET10のソース−ドレイン間のブレークダウン電圧VDSSよりも低い。すなわち、Vclamp1<Vclamp2<VDSSである。
【0013】
MOSFET10ゲート10gとGD間クランプ回路15との間のノードN1と、GD間クランプ回路17とゲート電極13との間のノードN2との間には、ゲート抵抗19が接続されている。ノードN2と基準電位としての接地電位GNDとの間には、プルダウン抵抗20が接続されている。
【0014】
ノードN2とソース電極12との間には、GS間クランプ回路21が接続されている。GS間クランプ回路21においては、双方向ダイオードが設けられている。例えば、ダイオード22a及び22bが直列に接続されている。ダイオード22aのアノードはノードN2に接続されており、ダイオード22aのカソードはダイオード22bのカソードに接続されており、ダイオード22bのアノードはソース電極12に接続されている。
【0015】
次に、本実施形態に係る半導体装置1の構成を、デバイス面から説明する。
図2に示すように、半導体装置1には、例えば樹脂材料からなる外囲器30が設けられている。ドレイン電極11には、外囲器30の内部に配置された板状のドレインパッド11aと、ドレインパッド11aから外囲器30の外部に引き出されたドレイン端子11bが一体的に設けられている。ソース電極12には、外囲器30の内部に配置された板状のボンディングパッド12aと、ボンディングパッド12aから外囲器の外部に引き出されたソース端子12bが一体的に設けられている。ゲート電極13には、外囲器30の内部に配置された板状のボンディングパッド13aと、ボンディングパッド13aから外囲器の外部に引き出されたゲート端子13bが一体的に設けられている。
【0016】
以下、説明の便宜上、半導体装置1の内部にXYZ直交座標系を設定する。ゲート電極13からソース電極12に向かう方向を「+X方向」とし、その逆方向を「−X方向」とする。また、ゲート電極13とソース電極12の中点からドレイン電極11に向かう方向を「+Y方向」とし、その逆方向を「−Y方向」とする。更に、+X方向及び+Y方向に対して直交する方向のうち一方を「+Z方向」とし、他方を「−Z方向」とする。以下、+Z方向を「上」ともいい、−Z方向を「下」ともいうが、この表記は便宜的なものであり、重力の方向とは無関係である。
【0017】
図2及び
図3に示すように、ドレインパッド11a、ボンディングパッド12a及びボンディングパッド13aは、XY平面に沿って拡がっている。ドレインパッド11a上、すなわち、ドレインパッド11aの+Z方向側の領域のうち、+X方向側の略半面には、MOSFET10が搭載されている。MOSFET10は、例えば、半導体チップ内に形成された縦型MOSFETである。MOSFET10の下面にはドレイン10d(
図1参照)が設けられており、ドレインパッド11aに接続されている。MOSFET10の上面の中央領域にはソース10sが設けられている。MOSFET10の上面におけるソース10sを囲む領域には、略C字状のゲート10gが設けられている。
【0018】
ドレインパッド11a上の領域のうち、−X方向側且つ−Y方向側の領域には、GS間クランプ回路21が搭載されている。GS間クランプ回路21の上面の中央領域には、矩形状のパッド21aが設けられており、パッド21aを囲むように、略C字状の電極21bが設けられている。
【0019】
ドレインパッド11a上のうち、GS間クランプ回路21から見て+Y方向側の領域の−X方向側の略半面には、GD間クランプ回路17が搭載されている。GD間クランプ回路17の下面には電極17aが設けられており、ドレインパッド11aに接続されている。GD間クランプ回路17の上面には電極17bが設けられている。
【0020】
MOSFET10とGD間クランプ回路17との間の領域における−Y方向側の略半面には、プルダウン抵抗20が搭載されている。プルダウン抵抗20の上面における+X方向側の端部には電極20aが設けられており、−X方向側の端部には電極20bが設けられている。
【0021】
MOSFET10とGD間クランプ回路17との間の領域における+Y方向側の略半面には、ゲート抵抗19が搭載されている。ゲート抵抗19の上面における+X方向側の端部には電極19aが設けられており、−X方向側の端部には電極19bが設けられている。
【0022】
GD間クランプ回路17及びゲート抵抗19の+Y方向側には、GD間クランプ回路15が搭載されている。GD間クランプ回路15の下面には電極15aが設けられており、ドレインパッド11aに接続されている。GD間クランプ回路15の上面には電極15bが設けられている。
【0023】
また、MOSFET10、GD間クランプ回路15、GD間クランプ回路17、GS間クランプ回路21、プルダウン抵抗20及びゲート抵抗19上には、ソースコンタクト層31、ゲートコンタクト層32及びゲートコンタクト層33が相互に離隔して設けられている。なお、
図2においては、図を見やすくするために、ソースコンタクト層31、ゲートコンタクト層32及びゲートコンタクト層33、並びに、上述の各電極は、図示を省略されている。
【0024】
ソースコンタクト層31は、MOSFET10のソース10s、プルダウン抵抗20の電極20a、GS間クランプ回路21の電極21bに接続されている。ゲートコンタクト層32は、MOSFET10のゲート10g、ゲート抵抗19の電極19a、GD間クランプ回路15の電極15bに接続されている。ゲートコンタクト層33は、GS間クランプ回路21のパッド21a、プルダウン抵抗20の電極20b、GD間クランプ回路17の電極17bに接続されている。
【0025】
また、ソースコンタクト層31におけるソース10sの直上域に配置された部分には、金属細線35の一端がボンディングされている。金属細線35の他端はソース電極12のボンディングパッド12aにボンディングされている。ゲートコンタクト層33におけるパッド21aの直上域に配置された部分には、金属細線36の一端がボンディングされている。金属細線36の他端はゲート電極13のボンディングパッド13aにボンディングされている。金属細線35及び36も、外囲器30内でモールドされている。
【0026】
次に、本実施形態に係る半導体装置の動作について説明する。
図4(a)は、横軸に電圧をとり、縦軸に電流をとって、クランプ回路のV−I特性を示すグラフ図であり、(b)は、横軸にドレイン−ゲート間電圧をとり、縦軸にドレイン−ゲート間電流をとって、本実施形態に係る半導体装置のV−I特性を示すグラフ図である。
【0027】
図4(a)に示すように、GD間クランプ回路15は、印加される電圧がクランプ電圧Vclamp1未満であるときは実質的に電流を流さず、電圧がクランプ電圧Vclamp1に達すると、急激に電流を流す。同様に、GD間クランプ回路17は、印加される電圧がクランプ電圧Vclamp2未満であるときは実質的に電流を流さず、電圧がクランプ電圧Vclamp2に達すると、急激に電流を流す。クランプ電圧Vclamp2はクランプ電圧Vclamp1よりも高く、MOSFET10のソース−ドレイン間のブレークダウン電圧VDSSよりも低い。
【0028】
このため、
図4(b)に示すように、半導体装置1のドレイン電極11とゲート電極13との間の電圧VDGを、ゼロから連続的に増加させていくと、半導体装置1は以下のような挙動を示す。
【0029】
電圧VDGがクランプ電圧Vclamp1未満であるときは、GD間クランプ回路15もGD間クランプ回路17も降伏せず、MOSFET10もブレークダウンしないため、ドレイン−ゲート間電流IDGはほとんど流れない。
【0030】
電圧VDGがクランプ電圧Vclamp1を超えると、GD間クランプ回路15がクランプして導通状態となる。しかしながら、ドレイン電極11とゲート電極13との間には、GD間クランプ回路15とゲート抵抗19が直列に接続されているため、いきなり大電流が流れることはなく、電圧VDGの上昇に伴って、電流IDGが徐々に増加する。これにより、ドレイン電極11に入力された電流が少しずつ消費される。また、電流IDGが流れることにより、ノードN1の電位が上昇するため、MOSFET10が少しずつ導通し、MOSFET10のドレイン−ソース間にも電流が流れ始める。これによっても、電流が消費される。
【0031】
そして、電圧VGDがクランプ電圧Vclamp2に達すると、GD間クランプ回路17がクランプして、導通状態となる。これにより、GD間クランプ回路17に電流IDGが流れる。但し、この時点では、既にGD間クランプ回路15及びMOSFET10を介して電流の少なくとも一部が消費されているため、GD間クランプ回路17に流れる電流IDGは抑制される。
【0032】
GD間クランプ回路17に電流IDGが流れることにより、電圧VDGはそれ以上増加せず、MOSFET10のブレークダウン電圧VDSSに達することがない。また、ノードN1の電位が更に上昇することにより、MOSFET10が更に導通し、MOSFET10のドレイン−ソース間に電流を流す。この結果、MOSFET10を保護することができる。
【0033】
次に、本実施形態に係る半導体装置の使用例について説明する。
図5は、本実施形態に係る半導体装置の使用例を示す回路図である。
図5に示すように、本使用例においては、半導体装置1をメカニカルリレー100のスイッチ回路として使用する。メカニカルリレー100においては、機械式スイッチ101が設けられており、その近傍に、コイル102が設けられている。コイル102には、直流電源103及び半導体装置1が直列に接続されている。また、機械式スイッチ101には一定の力が印加されており、コイル102から磁力が印加されなければ、一方の状態を維持するようになっている。
【0034】
図5及び
図1に示すように、半導体装置1のゲート電極13にオン電位を入力すると、MOSFET10が導通状態となり、直流電源103、コイル102及び半導体装置1からなる閉回路に電流が流れる。これにより、コイル102が磁界を発生させ、磁力によって機械式スイッチ101を切り替える。一方、ゲート電極13にオフ電位を入力すると、MOSFET10が非導通状態となり、コイル102の磁力が消失する。これにより、機械式スイッチ101は元の状態に戻る。
【0035】
そして、MOSFET10の導通/非導通の切替に伴い、コイル102のインダクタンスに起因して誘導電流が発生し、MOSFET10のドレイン−ゲート間に電圧VDGが印加される。このとき、半導体装置1においては、上述の動作により、電圧VDGが印加されてもMOSFET10を保護することができ、また、DG間クランプ回路17及び15も保護することができる。
【0036】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態によれば、GD間クランプ回路17に対して並列に、GD間クランプ回路15及びゲート抵抗19を設け、GD間クランプ回路15のクランプ電圧Vclamp1をGD間クランプ回路17のクランプ電圧Vclamp2よりも低く設定している。これにより、GD間クランプ回路17が降伏する前にGD間クランプ回路15が降伏し、ゲート抵抗19を介して少しずつ電流を流すことにより、GD間クランプ回路17の破壊を防止できる。この結果、MOSFET10を確実に保護することができる。このように、本実施形態に係る半導体装置1は、外部から印加される電気的負荷に対する耐性が高い。
【0037】
また、ゲート抵抗19の抵抗値を調整することにより、GD間クランプ回路15がクランプしたときに流れる電流の大きさを、許容できる範囲内に規制することができる。
【0038】
なお、仮に、GD間クランプ回路15を設けないと、ドレイン−ゲート間の電圧VDGがクランプ電圧Vclamp2に達したときに、GD間クランプ回路17に急激に大きな電流が流れる。これにより、GD間クランプ回路17が破壊される可能性がある。GD間クランプ回路17が破壊されると、以後、MOSFET10を効果的に保護することができなくなり、半導体装置1のアバランシェ耐量が低下する。
【0039】
これに対して、本実施形態によれば、上述の如くGD間クランプ回路15を設けることにより、半導体装置1のアバランシェ耐量を例えば1.5倍程度増加させることができ、信頼性を向上させることができる。
【0040】
以上説明した実施形態によれば、外部から印加される電気的負荷に対する耐性が高い半導体装置を実現することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。