【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例における冷蔵システム1000のブロック図である。冷蔵システム1000は、格納している相関データに従った冷却方法で庫内を冷却する1又は2以上の冷蔵庫1、インターネットやWAN等の広域公衆ネットワーク2、及び冷蔵庫1から周辺環境や使用状態を受信して相関データを更新し、冷蔵庫1に対して新たな冷却方法に係る情報を送信するサーバ機器3で構成される。サーバ機器3としては、例えば、冷蔵庫1から広域公衆ネットワーク2を通じて受信した情報に基づいて、人工知能処理を施すことで相関データを更新することができるように構成できる。
【0013】
図2は、本実施例における冷蔵庫1の機能ブロック図である。冷蔵庫1は、冷蔵室、冷凍室及び野菜室といった貯蔵室(不図示)を1以上と、CPU(Central Processing Unit)101、ROMとして主に構成された制御プログラム部102、RAMとして主に構成されたメモリ103、センサ104、電子部品105、圧縮機106、通信部107を備えている。本実施例のメモリ103は揮発性メモリであるが、不揮発性メモリにしても良い。センサ104としては、後述する相関データの「行に係る情報」及び「列に係る情報」を取得」するものがあれば、その他は特に制限されない。本実施例では、「行に係る情報のセンサとして冷蔵庫外の温度を取得する庫外温度センサと、「列に係る情報」のセンサとして冷凍室内の温度を取得する冷凍室温度センサとを有していればよい。その他、センサ104としては、例えば、冷蔵室温度センサ、野菜室温度センサ、冷蔵庫外の湿度や照度を検知する庫外湿度センサ、庫外照度センサ、などが挙げられる。
【0014】
また、電子部品105や圧縮機106としては、後述する相関データの「要素」に係る機器を有していれば、その他は特に制限されない。本実施例では、「要素」に係る機器として、冷凍室への冷気供給を制御する送風機である冷凍室ファンと、圧縮機を有している。
【0015】
制御プログラム部102は、詳細を後述する初期相関データ部1020、各センサ104の情報が入力される入力制御部1040、電子部品105に制御信号を出力する出力制御部1050、圧縮機106に制御信号を出力する圧縮機制御部1060、通信部107に制御信号を出力する通信制御部1070を有している。
【0016】
初期相関データ部1020は、工場出荷時に設定された初期相関データ1080と、入力制御部1040が出力するセンサ104の検出値とを参照して、出力制御部1050や圧縮機制御部1060(制御部)にファン回転数や圧縮機回転数を指令する。
【0017】
図3は、初期相関データ1080を示す図である。初期相関データ1080(及びメモリ103に書き換え可能に記憶される後述する相関データ1030)は、本実施例で「行に係る情報」として掲げられる「庫外温度(室内温度)」の範囲毎、及び、「列に係る情報」として掲げられる「貯蔵室温度の目標温度に対する差分値」の範囲毎に、「要素」として掲げられる「圧縮機106及び冷凍室ファン」の回転数を対応させたテーブルである。
【0018】
本実施例の工場出荷時では、初期相関データ1080は、「行に係る情報」である室内温度が(A)12℃以下、(B)12℃超20℃以下、(C)20℃超28℃以下、(D)28℃超の4通りの場合に分類され、また、「列に係る情報」である冷凍室温度の目標温度(例えば−28℃)との差分値が(1)0℃超2℃以下、(2)2℃超4℃以下、(3)4℃超の3通りの場合に分類されている。そして、この4×3通りの何れに現在該当するかが、センサ104の検出値に基づいて判定され、この判定結果に対応する「要素」が指定する制御が行われる。例えば、室内温度が15℃、冷凍室温度が−21.5℃(目標温度−25℃)の場合、(B)かつ(2)に対応するため、圧縮機1200回転、庫内ファン900回転が指令値として読み込まれる。
【0019】
初期相関データ1080は制御プログラム部102に格納されており、初期相関データ1080により、冷蔵庫1の電源投入直後の圧縮機106の回転数やファン105のモータ回転数を決めている。
【0020】
なお、「要素」には、冷凍サイクルに設けられる蒸発器近傍の除霜ヒータのON/OFF、各貯蔵室への冷気供給量を制御するダンパの開閉に係る情報を格納させておいてもよい。また、「行に係る情報」は室内の湿度情報をさらに利用してもよいし、「列に係る情報」は冷凍室以外の貯蔵室の目標温度に対する差でもよい。
【0021】
通信部107は広域公衆ネットワーク2を通してインターネット上のサーバ機器3と相互通信を行うインターフェースであり、BlueTooth(登録商標)や、赤外線通信部、Wi−Fi(登録商標)等で直接または間接に広域公衆ネットワーク2と無線通信を行なう。通信制御部1070は冷蔵庫1のセンサデータ等をサーバ機器3へ送信するよう通信部107に指令し、サーバ機器3が記憶又は作成する相関データを新たに受信するよう通信部107に指令できる。
【0022】
図4は本実施例のサーバ機器3が記憶している詳細相関データ30を示す図である。サーバ機器3は、広域公衆ネットワーク2を通して冷蔵庫1が送信してきた情報や、サーバ機器3の管理者等が別途入力する情報、人工知能による学習処理等に基づいて詳細相関データ30を作成したり更新したりできる。
【0023】
詳細相関データ30は、冷蔵庫1に送信される相関データに比して、「行に係る情報」及び「列に係る情報」の分解能が高い。具体的に、本実施例では、「行に係る情報」である室内温度の分類が、例えば、氷点下5℃から40℃まで1℃毎に分類されている(氷点下5℃〜氷点下4℃、・・・、39℃〜40℃)。また、「列に係る情報」である目標温度に対する差が「0℃超1℃以下」から「29℃超30℃以下」まで分類されている。
【0024】
これは、上述した初期相関データ1080や、メモリに記憶されるメモリ内相関データ1030よりも詳細である。例えば、初期相関データ1080の分解能を検討すると、最も高分解能である「12℃超〜20℃以下」又は「20℃超〜28℃以下」ですら分解能が8℃であるところ、詳細相関データ30は、分解能が1℃である。
【0025】
図5は本実施例のメモリ103に書き換え可能に記憶されるメモリ内相関データ1030を示す図である。冷蔵庫1のメモリ103は、サーバ機器3の記憶容量よりも小さい容量を備える。冷蔵庫1は、センサ104を通じて検知した情報に基づいて、サーバ機器3から、メモリ内相関データ1030を更新する情報を受信する処理を行う。センサ104としては、メモリ内相関データ1030の「行」及び「列」に係る情報と同種の情報を取得するセンサを利用することができる。本実施例では、庫外温度センサ及び冷凍室温度センサの情報を利用することができる。
【0026】
図6は本実施例の冷蔵システム1000の制御フローチャートである。制御プログラム部102には工場出荷時の初期相関データ1080が格納されている。工場から出荷された冷蔵庫1の電源が投入された場合、メモリ103が揮発性であることから、まず制御プログラム部102は、この初期相関データ1080をメモリ103に転送して相関データ1030として記憶する(ステップS100)。
【0027】
通信制御部1070は、センサ104から検知した貯蔵室温度や室内温度をサーバ機器3へ所定時間毎、例えば1分毎に定期的に送信するよう、通信部107を制御する(ステップS101)。
【0028】
サーバ機器3は、冷蔵庫1から受信したデータや、その他サーバ機器3を管理する者が与えた情報、人工知能による学習処理を基に、詳細相関データ30を作成したり更新したりする。
【0029】
詳細相関データ30は、冷蔵庫1に格納させることができるメモリ内相関データ1030の情報量よりも大きい情報量で構成されている。具体的に、本実施例の冷蔵庫1は、室内温度について(A)〜(D)の4分類しか格納できないところ、サーバ機器3は、上述のとおりそれより多くの分類を保有している。
【0030】
また、サーバ機器3は、保有している高分解能な(例えば1℃毎に分類している)詳細相関データ30から、低分解能な(例えば2℃毎に分類している)相関データを作成する制御部を有する。例えば、20〜21℃,21〜22℃,22〜23℃,23〜24℃,24〜25℃の5種類の「行に係る情報」の分類から、20〜25℃の1種類の分類を作成することができる。この作成は、算術平均処理といったものでもよいし、人工知能による学習処理でもよい。「列に係る情報」や「要素」も同様にして作成することができる。
【0031】
このようにして作成した低分解能な「行に係る情報」を冷蔵庫1に送信することで、メモリ103の容量に合わせて適切なメモリ内相関データ1030を作成および送信することができる。低分解能なデータは、それぞれの冷蔵庫1の仕様態様や環境に合わせて作成することができるため、冷蔵庫1毎にきめ細かな更新を行うことができる。すなわち、冷蔵庫1ごとに異なる分解能のデータを送信することができる。
【0032】
さて、冷蔵庫1は、サーバ機器3の詳細相関データ30の一部又はサーバ機器3が作成した低分解能データを、新たな相関データ1030として受信するべきか判定する(ステップS102)。この判定の開始は、例えば、センサ104が検知した値が、現在メモリ内相関データ1030によって効果的に対応可能な範囲の上下限に近づいている場合、所定期間ごと、又はユーザから指令を受けた場合、に行うことができる。
【0033】
「センサ104が検知した値が、現在メモリ内相関データ1030によって効果的に対応可能な範囲の上下限に近づいている場合」とは、例えば、「行に係る情報」を検知するセンサの値が、「行に係る情報」における低分解能な範囲に属するようになった場合、「行に係る情報」として分類できない範囲に属するようになった場合、が考えられる。しかし、相関データの構成態様が種々考え得ることから、その判断基準も種々想定できるため、一般に論ずることは難しい。
【0034】
このように、相関データ1030の更新は、現在保有している相関データ1030では効果的な制御が難しいと判断できるときに行うことができる。例えば、現在保有している相関データ1030が初期相関データ1080と同一だと仮定する。この場合、分類が比較的細かい温度範囲と考え得る「12℃超〜20℃以下」、「20℃超〜28℃以下」は、比較的効果的な制御ができると考え得るが、それ以外の温度範囲での制御には改善の余地があると考え得る。現在冷蔵庫1が記憶しているメモリ内相関データ1030が効果的に対応可能な温度範囲から逸脱しそうであると判断できる場合に、冷蔵庫1は、相関データ1030を更新する。より具体的には、室内温度が例えば13℃に低下した場合、現状よりも、より低い温度範囲(例えば、9℃〜17℃)の分解能を上げた相関データ1030に更新することができる。この場合、例えば、「行に係る情報」を「9〜11℃」、「11〜13℃」、「13〜15℃」、「15〜17℃」に更新することができる。
【0035】
このように、一例としては、現在の室内温度の上下4,5,6,7,8,9又は10℃の範囲の分解能が高くなるように相関データ1030を更新することが好ましい。
【0036】
さらに、このように更新した後に、室内温度が8℃に低下すると、メモリ内相関データ1030が、対応する温度範囲を有しないため、冷蔵庫1は対応する「要素」を判定できない。そのような事態を避けるべく、例えば、分類可能な温度範囲の上下限に近づいたら、再びメモリ内相関データ1030を更新することが好ましい。
【0037】
なお、「列に係る情報」の更新は、同様に、冷凍室温度センサの検知値を考慮して行うことができる。例えば、冷凍室内に常温の食品が投入されて、目標温度に対する差分が3℃超に到達したら、「列に係る情報」を更新することができる。また、冷凍室の急冷命令がなされたことをトリガーとして更新しても良い。
【0038】
新たな相関データ1030を受信すべきと判断した場合(ステップS102,Yes)、通信部107及び広域公衆ネットワーク2を介してサーバ機器3から相関データ1030を受信し、メモリ103へ格納する(ステップS103)。
【0039】
制御プログラム部102は、メモリ103に格納された新たなメモリ内相関データ1030のから圧縮機回転数やファンモータ回転数を決定する(ステップS104)。これにより、より好適な圧縮機回転数やファンモータ回転数を使用して冷却制御を行うことができる(ステップS105)。
【0040】
なお、通信部107がサーバ機器3との通信を確立できない場合は、現在保有する相関データ1030を維持して制御を継続するようにしても良いし、センサ104の値に鑑みて工場出荷時の初期相関データ1080の方が適切と判断する場合は、初期相関データ1080に戻して制御を維持継続するようにしても良い。
【0041】
また、本実施例では、圧縮機回転数や庫内ファン回転数の指令値を室内温度等に対応付けた相関データを例示したが、その他、貯蔵室ドアの開閉回数や時間、投入される頻度の高い食品負荷量に対応付けた相関データとしてもよい。
【0042】
なお、本実施例では、相関データの「列に係る情報」に「冷凍室」を挙げたが、何らかの貯蔵室であればよい。また、「要素」に係るファンは、「列に係る情報」に挙げられた貯蔵室のファンであればよい。