特許第6643275号(P6643275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643275
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】屈折率が高い薄板ガラス基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 23/037 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
   C03B23/037
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-90258(P2017-90258)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-214273(P2017-214273A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2017年4月28日
(31)【優先権主張番号】10 2016 107 934.0
(32)【優先日】2016年4月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアント レッフェルバイン
(72)【発明者】
【氏名】フランク ビュレスフェルト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ラングスドルフ
【審査官】 有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−196238(JP,A)
【文献】 特開2015−227276(JP,A)
【文献】 特開2012−121756(JP,A)
【文献】 特開2012−121755(JP,A)
【文献】 特開2005−047732(JP,A)
【文献】 特開2015−160805(JP,A)
【文献】 特開2015−187070(JP,A)
【文献】 特開2014−218427(JP,A)
【文献】 特開2014−224039(JP,A)
【文献】 特開平09−086944(JP,A)
【文献】 特開2010−180129(JP,A)
【文献】 特開2013−180919(JP,A)
【文献】 特開2007−022846(JP,A)
【文献】 特開2013−063892(JP,A)
【文献】 特開平08−073239(JP,A)
【文献】 特開昭54−016524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 17/00−17/06
C03B 23/00−35/26,40/00−40/04
C03C 1/00−14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a.平均幅B及び平均厚さDを有し、少なくとも1.68の屈折率を有するガラスからの予備成形体を、リドロー装置に用意する工程、
b.前記予備成形体の少なくとも一部を、加熱する工程、
c.前記予備成形体をリドローして、平均幅b及び平均厚さdを有する薄板ガラスにする工程、
を含む、屈折率の高い薄板ガラスを製造する方法であって、
ここで前記予備成形体の加熱された部分は、最大30分の時間にわたって、前記ガラスの失透下限を上回る温度を有し、
前記予備成形体のガラスは、温度への、粘度の依存性を有し、該依存性は、昇温時に108〜105dPasの粘度範囲において、少なくとも3×105dPas/Kの平均粘度低下を特徴としており、
ここで、工程bにおける加熱は、予備成形体のガラスが少なくとも104dPas、及び最大108dPasの粘度を有する温度T2への加熱を含む、
前記方法。
【請求項2】
前記予備成形体のガラスが、温度への、粘度の依存性を有し、該依存性は、108〜105dPasの粘度範囲で、少なくとも5×105dPas/Kの平均粘度低下を特徴としている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予備成形体の加熱された部分が、少なくとも3秒の時間にわたって、前記ガラスの失透下限を上回る温度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記予備成形体の加熱された部分が、最大15分の時間にわたって、前記ガラスの失透下限を上回る温度を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記ガラスが、1012dPasの粘度に相当する温度から、1013dPasの粘度に相当する温度へと冷却される冷却工程を有し、ここで前記冷却における平均冷却速度は、最大1000K/分である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記予備成形体のガラスを、工程bにおける加熱の前に、少なくとも部分的に予熱し、前記ガラスが1010〜1014dPasの粘度を有する温度T1に予熱する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記予備成形体の端部領域における温度が、予熱の間、前記予備成形体の中央における温度よりも高い、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リドロー法によって屈折率が高い薄板ガラスを製造する方法、及びこの方法によって得られる高屈折率の薄板ガラスに関する。
【0002】
屈折率が高いガラス基材を製造する方法は幾つか、従来技術から公知である。そこで米国特許出願公開第2013/0011607号明細書(US 2013/0011607 A1)は、1.55〜2.3の屈折率を有するガラスを挙げている。これらのガラスは、ダウンドロー法、又はフロート法、特にオーバーフロー・ダウンドロー法における作業に適しているのが望ましい。それと言うのもこれらのガラスは、組成の観点でこれらの方法に最適化されたものだからである。リドロー法もまた、あり得る加工法として言及されているが、これらのガラスをリドロー法でどのように作業可能なのかの詳細については、開示されていない。これらのガラスは、酸化ストロンチウムの割合を著しく高めることにより、フロート法、及びダウンドロー法に最適化されている。米国特許出願公開第2013/0011607号明細書(US 2013/0011607 A1)のガラスで実際に達成された屈折率は、1.61〜1.66の範囲にある。最大2.3の屈折率を有するガラスを薄板ガラスとして提供するという目的は、この文献では明らかに失敗している。同じことが同様に、米国特許出願公開第2013/0230692号明細書(US 2013/0230692 A1)にも当てはまる。
【0003】
国際公開第2016/008866号(WO 2016/008866 A1)、及び国際公開第2016/008867号(WO 2016/008867 A1)は、高い屈折率を有する薄板ガラスを教示しており、板ガラス法において、屈折率が高いガラスの加工の困難性に取り組んでいる。板ガラス法としては、いわゆるインライン法のダウンドロー、及びオーバーフロー・フュージョンが好ましい。しかしながらまた、リドロー法も挙げられている。これらは、結晶化の危険が特に大きい方法であると記載されている。言い換えるとこの方法は、屈折率が高い光学ガラスにとって特に重要である。その理由は、リドロー法では、既に一度、結晶成長領域を経た予備成形体を用いることにある。すなわち、ガラスは既に一度、溶融体から冷却されており、これによってガラスが結晶化可能な温度範囲を経ているということである。この温度範囲は、それぞれのガラスによる。よって、既に結晶核がガラス内に存在していてよく、この場合にこの結晶核が、リドロー法の際に迅速な失透をもたらすことがある。前述の文献は、特に長い粘度プロファイル、つまり温度に顕著に依存しない粘度を有する光学ガラスを製造するための解決策を提案している。従来技術ではしばしば、またこれら2つの文献でも、板ガラス法で加工できるようにするために、ガラス組成の最適化に努めている。
【0004】
屈折率が高いガラスの場合に問題となるのは基本的に、屈折率が高いガラス構成要素(例えばTiO、ZrO、Nb、BaO、CaO、SrO、ZnO、La)を使用することによって、ガラスの結晶化傾向も増大することにある。1つの例外がPbOだが、これは環境的な理由から、使用しないのが望ましい。ここで結晶化傾向とは、ガラスが特定の温度範囲における製造の間に、比較的容易に結晶を形成することであり、これによって、顕著な結晶化傾向を有さない他のガラスよりも容易に失透する。薄板ガラス基材を製造する方法に共通しているのは、成形を可能にするため、ガラス溶融物又はガラス製品を比較的長い時間にわたって、高温で維持しなければならないということである。これによって、失透の危険性が増大する。このことはまた、従来技術において屈折率が高いガラスが通常、板ガラス法では製造されなかった理由でもある。それでも、屈折率が高い薄板ガラスを得るために、これらのガラスは従来の方法で溶融され、棒状に鋳造され、例えば冷却部を備えるプレス機又はローラによって非常に迅速に冷却される。迅速な冷却によってガラス溶融物は、結晶化が起こり得る温度範囲を、結晶が形成されないほど迅速に通過する。こうして得られる棒状物は、それから切断及び研磨によって薄いガラス基材にさらに加工されるが、これは非常に不経済である。
【0005】
独国特許出願公開第10 2014 100 750号明細書(DE 10 2014 100 750 A1)は、薄いガラス部材を製造するためのリドロー法を記載している。ここで予備成形体は特に、105.8dPas〜107.6Pas未満の粘度に相当する温度に加熱される。ここではまた、光学ガラスもリドローされる。これらの光学ガラスは、リン酸塩ガラス、及びフルオロリン酸塩ガラスに属し、これらの光学ガラスは、1.53の範囲(例えばSchott N-PK51)、又はそれどころか1.49の範囲(例えばSchott N-FK51A)でしか、屈折率nDを有さない。これらのガラスは、その特性の観点で、本発明の範囲で使用される屈折率が高いガラスとは同等ではない。
【0006】
まさにリドロー法が、屈折率が高いガラスにとって特に重要なことは、明らかである。最後にリドロー法では、既に一度、結晶形成が可能な臨界温度範囲を経た予備成形体を使用する。この冷却の際に既に結晶核が形成されていれば、これはリドロー法で迅速な結晶化につながるであろう。
【0007】
従来技術には、その組成の観点で板ガラス法に最適化されてない、屈折率が高いガラスも、板ガラス法で加工して薄板ガラスにするために適した方法が欠けている。この方法は、屈折率が高い薄板ガラスをもたらすのに適しているだけでなく、高い収率を達成するためにも適しているのが望ましい。この方法において好適には、屈折率が高いガラスにおいてしばしば生じる問題であって、比較的高い密度及び比較的高い熱膨張係数によって生じる問題も解決されるのが望ましい。この方法は特に、表面品質、応力、及び内部品質の観点で、光学ガラスに関するその他の高い要求を満たす薄板ガラスを得られるようにするのが望ましい。
【0008】
実際に、特定の適用のための光学ガラスは、その光学的な観点で選択される。その際には通常、屈折率だけではなく、ガラスの分光性及びその他の多様な特性が、重要な役割を果たす。非常に稀な場合、所望のガラス特性を1つ以上変えること無く、薄板ガラスとしての作製という観点で、ガラス組成を最適化することがあり得る。通常、所望の仕様は、技術的な使用領域により、顧客の要望に基づいて決まる。つまりガラスの製造者は、ガラスの組成を任意で適合させることはできない。なぜならば、それによって所望の特性も変わってしまうことがあるからである。ガラスは、多数の成分からの系であり、ここで1つの成分の相対的な量の変更が、ガラスの多くの特性に対して、予見できない結果をもたらすことがある。
【0009】
ガラス組成の最適化を必要としない、光学ガラスが薄板ガラスとして得られる方法をもたらすことが望ましい。
【0010】
本発明の説明
本発明は、屈折率が高いガラスを、薄板ガラスに加工可能な方法を提供する。本発明の方法は、リドロー法に分類される。リドロー法は基本的に従来技術から、例えば米国特許第3635687号明細書(US 3,635,687 A)から公知である。
【0011】
リドロー法では、ガラス片(「予備成形体」と呼ぶ)を部分的に加熱し、適切な機械的稼動手段によって、その長さを引き伸ばす。予備成形体を一定の速度で、加熱ゾーンに入れ、加熱されたガラスを一定の速度で引き出し、こうして速度の比率に依存した、予備成形体の断面形状の縮小が達成される。
【0012】
つまり例えばロッド状、又は管状の予備成形体を使用する場合、再度ロッド状、又は管状のガラス部材が生じるが、それらの直径はより小さくなっている。同様に、プレート状の予備成形体もリドローすることができる。本発明により製造可能な薄板ガラスは、その断面形状が、予備成形体と似ていてよく、これによって薄板ガラスは、その断面形状について、1:1で縮小された予備成形物の構図となる。しかしながらまた、プレート状の予備成形体の場合、厚みを減少させたリボン状の薄板ガラスが生じるように、薄板ガラスを成形することもできる。
【0013】
ガラスのリドローに際しては通常、細長い予備成形体を、片側では保持部に挟み、例えばマッフル炉でもう一方の端部を加熱する。ガラスが成形可能になり次第、保持部に挟まれた予備成形体の端部の方に引っ張ることによって、このガラスを引き出す。この際に予備成形体をマッフル炉へと送り込むと、適切な温度選択で、断面積は小さくなったが、形状的には類似の薄板ガラス部材が得られる。
【0014】
板状の予備成形体からは、同様に、ほぼリボン状の薄板ガラス部材を、リドロー法によって得ることができ、これは予備成形体よりも明らかに少ない厚さを有する。薄板ガラス部材の引き出し速度、及び予備成形体の送り込み速度の選択によって、断面の変形係数、及び/又は縮小係数が決まる。
【0015】
本発明の方法は、以下の工程:
a.平均幅B、及び平均厚さD、及び少なくとも1.68の屈折率nDを有するガラスからの予備成形体を、リドロー装置に用意する工程、
b.予備成形体の少なくとも一部を加熱する工程、
c.予備成形体をリドローして、平均幅b、及び平均厚さdを有する薄板ガラスにする工程、
を有する、屈折率が高い薄板ガラスを製造する方法であり、ここで、予備成形体の加熱された部分は最大30分の時間にわたり、ガラスの失透下限(UEG)を上回る温度を有し、ここで予備成形体のガラスは、温度への、粘度の依存性を有し、この粘度の依存性は、昇温時に108〜105dPasの粘度範囲において、少なくとも3×105Pas/Kの平均粘度減少によって、特徴付けられる。
【0016】
ガラスの失透下限を上回る温度は、失透下限に近いのが好ましい。この温度は特に、ガラスの融点(Tm)未満、好ましくはUEG+0.7×(Tm−UEG)未満、より好ましくはUEG+0.4×(Tm−UEG)未満、特に好ましくはUEG+0.2×(Tm−UEG)未満である。本発明の方法の特別な利点は、屈折率が高いガラスが、その他の特性を考慮することなく、本発明の方法において容易に加工可能なことである。これはつまり特に、ガラス組成を、結晶化傾向の観点で適合させる必要が無いということである。むしろ本方法は、予備成形体の加熱された部分が、本方法の間に30分以下にわたって、ガラスの失透下限を上回る温度を有すること、及びガラスが、記載された温度範囲において、温度への、適切な最小の粘度依存性で選択されることによって、屈折率が高いガラスの特性に適合されている。予備成形体の加熱された部分は、本方法の間、好適には少なくとも2秒、特に少なくとも10秒、ガラスの失透下限を上回る温度を有する。
【0017】
予備成形体の加熱された部分は好ましくは、本方法の間に、15分以下、さらに好ましくは6分以下、より好ましくは4分以下、特に好ましくは2分以下、ガラスの失透下限を上回る温度を有する。このように構成された方法実施によって、ガラスの結晶化は、通常の光学適用にとっては許容可能な程度に保たれることが判明している。本発明による方法では、予備成形体の加熱された部分が、少なくとも2秒、好適には少なくとも10秒、特に少なくとも30秒、好ましくは少なくとも1分の時間にわたり、各ガラスの失透下限を上回る温度を有することが意図されている。予備成形体のガラスの失透下限を上回る温度を適用することによって、ある程度の結晶化が起こる。しかしながらこの結晶化は、予備成形体の加熱された部分が、失透下限を上回る温度で長過ぎて維持されなければ、光学的な適用にとっては許容可能であり、予備成形体のガラスは関連する温度範囲において、記載した程度に最小の、温度への、粘度の依存性を有する。
【0018】
予備成形体のガラスは、本発明による方法において特に、昇温時に108〜105dPasの粘度範囲において、少なくとも3×105dPas/K、特に少なくとも5×105dPas/K、好ましくは少なくとも8×105dPas/K、又は少なくとも9×105dPas/Kの平均粘度減少によって特徴付けられる、温度への、粘度の依存性を有する。この対策によって、関連する温度範囲においてガラスの粘度は、より僅かな温度減少下でも既に、結晶化のために重要な粘度範囲から迅速に再度離れ、さらなる結晶化が抑制されるほど、著しく向上する。
【0019】
具体的な検討からは、予備成形体のガラスは好適には、108〜105dPasの粘度範囲における、温度への、粘度の依存性の平均減少が、平均で最大5×106dPas/K、特に最大2×106dPas/K、好ましくは最大1.5×106dPas/K、特に好適には最大1.2×106dPas/Kであるように選択されているのが望ましい。これらの上限は、実際の検討によってもたらされている。よって、温度変動に対して激しく反応するガラスの場合、ガラスの粘度を所望の範囲に保つことは、特に困難である。
【0020】
ここに開示された方法に基づき、当業者はつまり、所望の特性を有する光学ガラスからの予備成形物を本方法のために選択するために、本方法のためにガラスを開発する必要なく、多くの可能性を利用できる。温度への、粘度の依存性という観点で適切な特性を有するガラスの選択により、粘度を特に迅速に、つまり温度を少し変えることによって、制御可能であるという利点がもたらされる。結晶化に重要な温度範囲から迅速に離れ、これによって、ガラスを失透下限を上回る温度に保つ時間が短縮できるという可能性に加えて、この特性はまた、屈折率が高いガラスは通常、高い熱容量も有するので、重要である。このため、ここに記載したガラスの選択によって、光学ガラスを、公知のリドロー装置で加工する可能性が生じる。しかしながら特に良好に適しているのは、成形ゾーンを僅かな高さで調整できる装置である。関連する温度範囲において非常に「長い」粘度・温度プロファイルを有するガラスからの予備成形物の場合、熱を迅速、充分に排出可能にするためには、著しい冷却コストをかけて稼動させなければならないだろう。その結果、予備成形体は、結晶化の危険がある温度に長く留まり、相応して結晶が形成されるであろう。
【0021】
本発明による方法によって、意外なことに、屈折率が高いガラスからの予備成形体を、容易にリドローすることができ、これによってコスト的に非常に有利に、薄い、又は肉薄のガラス製品を、特に高い表面品質で、特に好ましくは少なくとも部分的に火炎研磨された表面品質で、製造することができる。本発明による方法は、公知の光学ガラスに適用することができる。このガラスは、1.68超、特に1.7超、さらに好ましくは1.75超、特に好ましくは1.79超の屈折率nDを有する。
【0022】
失透下限はあらゆるガラスについて、異なる温度及び粘度にある。これは、以下のように特定する。試験すべきガラスの長さ最大300mm、幅10mm、及び高さ5mmの試料(例えば10mm×10mm×5mm)を、全面で光学的に研磨し、引き続き様々な温度(TA、TB、TC・・・Tn)でそれぞれ900分、温度処理する。これらの温度は好適には、最大15K、離れている。このためにこれらの試料を、Pt10Rh薄板に配し、勾配炉に配置する。温度処理の終了後にこれらの試料を、倍率40倍の光学顕微鏡により、片側の端部照明で試験する。失透下限とは、結晶化が可視化される最小温度である。
【0023】
本発明の方法は、予備成形体の少なくとも一部を加熱する工程を含む。この部分を、予備成形体のガラスが予備成形可能になる温度T2に加熱する。T2は特に、ガラスの粘度が104〜108dPasである温度である。T2は特に、軟化点(EW)でのガラスの粘度よりも小さい粘度が条件付けられる温度である。温度T2における予備成形体のガラスは好ましくは、107.6dPas未満、さらに好適には最大107.5dPas、さらに好適には最大107.0dPas、極めて特に好ましくは最大106.5dPasの粘度η2を有する。好ましい実施形態では成形ゾーンを、少なくとも104dPas〜最大108dPas、特に105.8〜107.6dPas、特に105.8〜107.6未満の予備成形体のガラスの粘度に相当する温度T2に加熱する。ガラスの粘度は、温度に依存する。各温度において、ガラスは特定の粘度を有する。成形ゾーンにおいて所望の粘度η2を達成するためにどのような温度T2が必要であるかは、ガラス次第である。ガラスの粘度は、DIN ISO 7884-2、-3、-4に従って測定し、温度への、粘度の依存性は、VFT曲線(フォーゲル・フルチャー・タンマン等式)を用いて測定する。
【0024】
温度T2は好適には、650〜800℃の温度範囲にある。温度T2は好適には、ガラス内で本方法の間に達する最大温度である。
【0025】
軟化点における相応するガラスの粘度よりも小さい粘度η2が、有利である。なぜならば、予備成形体の引き出しに必要な引張力は、粘度が増加するとともに増大するからである。つまり、より低い粘度は、必要とされる引張力が小さくなることとも結びついている。ただし、屈折率が高いガラスは密度も高く、このため温度T2における粘度がより低くなり、これによって、引力が引張速度の制御を困難にすることにつながり得る。言い換えれば、予備成形体のガラスの粘度η2は、低すぎないのが望ましい。それと言うのもさもなくば、ガラスの均一な引き出しが困難になるからである。よって予備成形体のガラスは、好ましくはT2における粘度が、少なくとも104.0dPas、さらに好ましくは少なくとも104.5dPas、さらにおり好ましくは少なくとも105.0dPas、極めて特に好ましくは少なくとも105.8dPasである。
【0026】
高温での、工程bで加熱された予備成形体の部分のごく短い滞留時間は、様々な措置によって影響される:これは例えば、適用される引張力、ガラスの粘度・温度プロファイル、加熱装置の構成、及びガラスの密度である。上記温度におけるガラスの短い滞留時間は好適には、特に予備成形体が小さな成形ゾーンを有することによって達成される。予備成形体は特に、本方法の間に0.95×D〜1.05×dの厚さを有する予備成形体の部分として規定される成形ゾーンを有する。この成形ゾーンはつまり、加熱に基づき予備成形体を成形する予備成形体の部分である。成形ゾーンの領域における予備成形体の厚さは、本来の厚さDよりも小さいが、薄板ガラスの最終的な厚さdは、まだ達成されていない。好適には成形ゾーンに、ガラスの粘度が107.6dPas未満である温度が存在する。この温度は特に、650〜800℃の範囲にある。より低い温度、及び/又はより高い粘度では、本来の幅Bと比べて、幅bの著しい減少が起こることが判明している。107.6dPasの粘度未満であれば、幅bが、本来の幅Bに対して僅かにしか減少しないので、有利である。これによって、薄板ガラスよりも比較的大きな面積が製造できる。
【0027】
本方法で使用する予備成形体は好適には、少なくとも200mmの幅Bを有する。好ましい実施形態において、この幅は少なくとも300mm、より好適には少なくとも400mm、さらに好適には少なくとも500mm、又はそれどころか少なくとも700mmである。比較的大きな幅Bを有する予備成形体を使用する場合、特に幅が広い薄板ガラスも、本方法によって得られる。本方法は、出発厚さDの著しい減少を可能にすることを特徴としている。予備成形体の厚さDが、少なくとも5mm、より好適には少なくとも10mm、さらに好適には少なくとも25mmであれば、特に好ましい。これには、高い屈折率を有するガラスから予備成形体を用意することが比較的容易に可能であるという利点がある。例えば、屈折率が高いガラスからの従来の棒状物を使用することができる。本発明による方法により、予備成形体の厚さDを、著しく低減させることができる。本方法によって得られる薄板ガラスの厚さdは特に、2mm未満である。
【0028】
高い収率、ひいては経済的な方法が可能になるように、特定の長さLの予備成形体を使用するのが好ましい。予備成形体の長さLが大きくなればなるほど、新たな予備成形体をリドロー装置に入れなければならなくなる前に、リドロー法における作業過程でより多くの薄板ガラスを製造することができる。予備成形体の長さLは好適には、少なくとも500mm、さらに好ましくは少なくとも1000mmである。
【0029】
予備成形体は、光学ガラスに通常の方法で、少なくとも1.68の屈折率ηDを有する屈折率が高いガラスから、製造することができる。予備成形体は、厚さD、及び幅Bを有し、また幅の、厚さに対する比B/Dを有する。リドローによって、予備成形体の比率B/Dの変更、特にこの比率の増大を行うことができる。好適には、b/d>>B/Dが当てはまる。
【0030】
本発明の意味合いにおいて、平均厚さD及び平均幅Bを有する屈折率が高いガラス成形体の予備成形体、特にプレート状、棒状、又は板状の予備成形体を、用意することができる。少なくとも1つの部分区域、特に予備成形体の成形ゾーンは、それから加熱する。その後、予備成形体の引張を、平均厚さd及び平均幅bまで行い、これによって、薄板ガラス部材の断面積が決まる。つまりリドローによって、目的方向に対して横方向での、予備成形体の断面積の形状変更も達成することができる。
【0031】
ここで成形ゾーンは、予備成形体が、厚さ0.95×D〜1.05×dの厚さを有する予備成形体の部位に関する。成形ゾーンは好適には、最大50×D、好適には最大10×D、特に好ましくは最大6×D(特に最大100mm)、極めて特に好ましくは最大5×D(特に最大40mm)、特に好ましくは最大4×D(特に最大30mm)の高さを有する。成形ゾーンは好適には、予備成形体の幅全体にわたる。成形ゾーンの「高さ」とは、予備成形体が引っ張られる方向における広がりを意味する。成形ゾーン外部において予備成形体の温度は、好適にはT2よりも低い。これによって、予備成形体の成形は、実質的に成形ゾーンの領域でのみ、起こる。その上、またその下では、厚さも幅も一定であるのが好ましい。
【0032】
特別な措置が、屈折率が高いガラスの失透を回避するために貢献することが判明している。これに該当するのは特に、予備成形体を、失透下限を下回る温度に予熱することである。予備成形体のこの予熱工程は、予備成形体の加熱工程前に行うのが好ましい。これによって温度及び/又は温度分布を、予備成形体の内部でより良好に制御することができる。この方法において、予熱されていない予備成形体を用いたとすると、予備成形体における熱分布に基づき、リドロー法における成形に必要とされる温度及び/又は粘度を、成形体の非常に小さな部分でのみ達成することがより困難になるであろう。その場合にはむしろ、熱が、予備成形体のより多くの部位に分配され、これによって予備成形体の部分が、長すぎる時間にわたって、ガラスの失透下限を上回る温度を受容することになり得るであろう。
【0033】
つまり予備成形体は、加熱前に予熱、特に温度T1に予熱するのが好ましい。この目的のためにリドロー装置は、予備成形体を温度T1に加熱可能な予熱ゾーンを有するのが好ましい。この予熱ゾーンは、リドロー装置の上部領域に配置されているのが好ましい。温度T1は、1010〜1014dPasの粘度η1にほぼ相当する。予備成形体はつまり、方法の工程bにおける予熱前に、予熱するのが好ましい。これによって、成形領域をより迅速に移動することが可能になる。なぜならば、温度T2に達するのに必要な時間が、より短くなるからである。同様に、温度膨張係数が高いガラスが、高すぎる温度勾配によって破壊されることが、予熱ゾーンにより回避される。予熱の間の、予備成形体の端部領域における温度は好適には、予備成形体の中央における温度よりも高いのが好ましい。中央とは、両方の端部領域に対して、水平方向において等距離を有する予備成形体の部分である。これによって特に、室温〜TGの重要な温度範囲において、予備成形体の破壊が回避される。温度T1は好適には、予備成形体のガラスの失透下限を下回り、好ましくはTGを上回る。特別な利点は、失透下限を上回る温度に予備成形体をさらす時間が、予熱によって減少し、こうして、不所望の失透が確実に回避できることにある。
【0034】
引き出す薄板ガラス部材の幅bは、成形ゾーンにおける粘度が上昇するのに伴い、次第に低下する。100μmの薄板ガラス成分の厚さdを達成するために、例えば引張速度を上昇させると、薄板ガラス部材の幅bは、予備成形体Bの幅に比べて、明らかに減少する。b/dの比率が高い平坦な薄板ガラス部材を得るためには、予備成形体のガラスが成形ゾーンにおいて粘度η2を有すると、有利である。
【0035】
予備成形体は成形ゾーンを、30分未満、さらに好適には15分未満、特に好ましくは6分未満の時間の間に通過するのが好ましい。特に、温度T2における予備成形体の所定の部分の滞留時間は、30分未満、さらに好適には15分未満、特に好ましくは6分未満である。この要求は、ガラスを非常に短い時間にわたってのみ、結晶化が起こり得る温度にさらす必要性から生じる。
【0036】
好ましい温度経過は、ガラスの温度がT1からT2へと、少なくとも50K/分、好ましくは少なくとも80K/分、より好ましくは少なくとも95K/分、上昇することを特徴とする。温度上昇は、予備成形体のガラスを、ガラスが所望のように成形可能な粘度にするために、できる限り迅速に行うのが望ましい。しかしながら熱膨張係数が高いまさにこのガラスの場合、つまり屈折率が高い多くのガラスでは、加熱は特定の下限を下回ったままでなければならない。温度を500K/分よりも速くなく、好適には400K/分よりも速くなく、特に250K/分よりも速くなく、特に好ましくは150K/分よりも速くなく、T1からT2へと加熱することが、有利であると実証されている。
【0037】
予備成形体の幅の、厚さに対する比の増加は好ましくは、製造される薄板ガラス部材の厚さdが、予備成形体の厚さDよりも実質的に小さいことによって、実質的に達成される。厚さdは好適には、最大D/10、さらに好適には最大D/30、特に好ましくは最大D/75である。この場合、薄板ガラス部材は、好適には10mm未満、さらに好ましくは1mm未満、より好ましくは100μm未満、さらに好ましくは50μm未満、特に好ましくは30μmの厚さdを有する。本発明によって、薄い薄板ガラス部材を高品質で、また比較的大きな面積で製造することが可能になる。
【0038】
製造される薄板ガラス部材の幅bは、予備成形体の幅Bに対して、ほとんど小さくすることができない。これは、比B/bが、好適には最大2、さらに好ましくは最大1.6、特に好ましくは最大1.25であるということを意味する。
【0039】
本方法は、リドロー装置で行うことができる。加熱目的のために、予備成形体をリドロー装置に導入することができる。リドロー装置は好適には、予備成形体を端部で入れることが可能な保持部を有する。この保持部は、リドロー装置の上部区域に存在するのが好ましい。それからこの予備成形体を、その上端部を用いて保持部へと入れる。
【0040】
リドロー装置は、少なくとも1つの加熱装置を有する。加熱装置は好適には、リドロー装置の中央領域に配置されている。加熱装置は好適には、電気抵抗式加熱器、バーナー配置、放射式加熱器、レーザースキャナーを有する若しくは有さないレーザー、又はこれらの組み合わせであり得る。加熱装置は好適には、加熱装置が成形領域に存在する予備成形体を、本発明により構成された成形ゾーンが得られるよう、特に温度T2が達成されるよう加熱できるように、形成されている。成形領域は、好適にはリドロー装置内部に存在する領域である。加熱装置は、成形領域及び/又は予備成形体の部位を、成形領域に存在する予備成形体が、その成形ゾーン内部で温度T2を受容するぐらい高い温度に加熱する。予備成形体の部位のみを適切に加熱するのに適した加熱装置、例えばレーザーを使用する場合、成形領域は、ほとんど加熱されない。
【0041】
成形領域は好適には、最大50×D、好適には最大10×D、特に好ましくは最大6×D(特に最大100mm)、極めて特に好ましくは最大5×D(特に最大40mm)、特に好ましくは最大4×D(特に最大30mm)の、成形ゾーンをもたらす高さを有する。このため、加熱の種類及び予備成形体の寸法に従って、成形領域は、様々な長さで実施されていてよい。
【0042】
変形のために直接備えられている予備成形体及び/又は予備成形体の部位は、有利にはまず、結晶化小渡を下回る温度、つまり結晶形成が始まる温度に加熱し、ガラスの軟化点を下回る温度に加熱する。このようにして、結晶形成を防止することができる。成形領域の内部で予備成形体を、軟化点を上回る温度、特に失透下限を上回る温度である温度T2に加熱する。軟化点においてガラスの粘度は、107.6dPasである。
【0043】
本発明にとって特に重要なのは、屈折率が高いガラスを短時間、失透下限を上回る温度にさらすことである。ここで最大の時間は、成形ゾーンに存在する温度に、また各ガラスに依存する。好適には、ガラスをこの方法でいかなる時点においても、失透上限を上回る温度に加熱する。
【0044】
加熱装置は、成形領域及び/又は成形領域の部位を加熱し、これは好適には、予備成形体において本発明により構成された成形ゾーンが、温度T2に加熱されるのと同じ大きさである。成形ゾーンの上側、及び下側に存在する予備成形体の部分は、好適にはT2よりも低い温度を有する。これは、本発明によれば好ましくは、加熱装置が、1種以上のカバー、又はその他の冷却剤を含有することによって達成され、これらは、成形領域の外部に存在する予備成形体の部分をシェーディング、及び/又は冷却するものである。代替的に、又はさらに、予備成形体の集中的又は限定的な加熱が、予備成形領域において可能になる加熱装置、例えばレーザー、又はレーザースキャナーを使用することができる。さらなる代替的な実施は、それ自体、唯一の僅かな高さを有し、成形ゾーンの近くに存在する加熱装置に関し、これによって、熱は実質的に成形領域の外部にある領域に広まらない。
【0045】
加熱装置は、加熱作用が適切な放射実施及び/又は放射制限によって、予備成形多領域に集中、及び/又は限定される放射式加熱器であり得る。例えば、KIR(=短波IR)加熱を使用することができ、ここで好適には、シェーディングによって、低い成形ゾーンが達成される。また、冷却された(気体、水、又は空気によって冷却された)カバーを使用することもできる。さらなる加熱装置としては、レーザーを使用することができる。レーザー照射を実施するために、レーザースキャナーを使用することができる。
【0046】
この装置は、冷却装置を有することができ、これは好適には、リドロー装置の下部領域、特に成形領域の下部に直接、配置されている。これによってガラスは好適には、成形の後に直接、>109dPasの粘度にされ、これによって、もはや顕著には成形されない。この冷却は好ましくは、少なくとも104dPas/s、好ましくは少なくとも106dPas/sの粘度変化が生じるように行う。これは好適には、予備成形体のガラスに依存して、400〜700℃の範囲、特に450〜650未満℃の範囲における温度T3に、ほぼ相当する。
【0047】
本発明による方法は、好適にはさらに、成形領域から出た後に、ガラスの冷却を含む。109dPas超の粘度への、ガラスのさらなる冷却は、自然冷却によって、周囲温度及び/又は室温(例えば10〜25℃)で行うことができる。しかしながらガラスは、流体において能動的に、例えば気流で冷却することもできる。ガラスは特に好ましくは、成形領域に続く冷却ゾーンへと導き、そこで穏やかな冷却速度で冷却し、これによって残留応力は、亀裂を入れずに、少なくとも1つの引き続く断面切断、また縁からの分離を可能にする。
【0048】
ガラスが109dPas超の粘度を有する温度T3への冷却は好適には、穏やかな速度による冷却によって達成される。これはつまり、温度T2から温度T3への薄板ガラスの冷却は、好適には平均冷却速度(最大1000K/分、又は最大500K/分、特に最大250K/分)によって行うということである。本発明により作業された屈折率が高いガラスは、しばしば高い熱膨張係数を有する。これによって、速すぎる冷却の場合、ガラス内での応力につながる。よって好適には、穏やかな冷却速度で冷却する。冷却がゆっくりになるほど、その分だけ、リドロー装置を長く構成しなければならない。それと言うのも、リドローの過程は、冷却の間にさらに進行するからである。そのため、中程度の冷却速度は、小さくなりすぎないのも望ましい。中程度の冷却速度は特に、少なくとも30K/分、さらに好適には少なくとも60K/分、特に好ましくは少なくとも100K/分である。このようにして、薄板ガラスにおける応力は、光学ガラスの高い要求を満たし、リドロー装置における冷却区間を、不必要に長く構成する必要がなくなる。好ましい実施形態において、ガラスは代替的に、又はさらに、上記冷却速度によって、1012〜1013dPasの冷却に相当する温度範囲により冷却する。
【0049】
成形領域は好適には、成形ゾーンが予備成形体で形成されるように配置されており、かつ/又は加熱装置は、成形ゾーンが予備成形体で形成されるように、構成されている。予備成形体の成形ゾーンの加熱により、対応する箇所において、予備成形体が引っ張り可能なほど、ガラスの粘度が著しく低下する。
【0050】
これによって予備成形体は、その幅をほぼ維持したまま、明らかに長くなる。つまり、予備成形体の引っ張りによって、厚さDが減少する。予備成形体は好適には、上端部により保持部へと入れられているため(これは好適には、リドロー装置の上部領域に存在する)、予備成形体の引張は、すでに単独で、重力の作用によってもたらすことができるが、ただしこれは、本発明によれば、特に、粘度η2が、好ましい領域に存在することによって、避けるのが望ましい。好ましい実施形態において、リドロー装置は、好適には成形領域の下側にある予備成形体の部位において、とりわけ予備成形体の下端部で、引張を実行する引張装置を含む。
【0051】
引張装置は好適には、リドロー装置の下部領域に配置されている。ここで引張装置は、予備成形体の反対側に設置されているローラを有するように構成されていてよい。予備成形体は下端部によって、第二の保持部で解放可能に固定されていてよい。第二の保持部は特に、引張装置の構成要素である。第二の保持部には例えば、後に予備成形体を長さ方向に引っ張る重りが固定されていてよい。
【0052】
好ましくは、適用される引張力は、成形体の幅(B)400mmあたり350N未満、好ましくは成形体の幅400mmあたり300N未満、さらに好ましくは成形体の幅400mmあたり100N未満、極めて特に好ましくは成形体の幅400mmあたり50N未満である。引張力は好ましくは、成形体の幅400mmあたり1N超、さらに好ましくは成形体の幅400mmあたり5N超、さらに好ましくは成形体の幅400mmあたり10N超、極めて特に好ましくは成形体の幅400mmあたり20N超である。ガラスの粘度との関連で成形ゾーンにおいて上記引張力を適用する場合、予備成形体の厚さの有利な減少は、幅を充分に維持したまま、行うことができる。
【0053】
好ましい実施形態において、予備成形体は、成形領域の方向で送り込まれ、これによってこの方法は連続的に稼動させることができる。この目的のために、リドロー装置は好適には、予備成形体を成形領域へと動かすのに適した送り込み装置を有する。これによって、リドロー装置は、連続的な稼働で使用することができる。送り込み装置は、予備成形体を好適には、予備成形体を引っ張る速度v2よりも小さな速度v1で成形領域へと動かす。これによって予備成形体は、長さ方向に引っ張られる。v1の、v2に対する比は、特にv1/v2<1、好適には最大0.8、さらに好適には最大0.4、特に好ましくは最大0.1である。これら2つの速度の違いは、予備成形体の幅及び厚さがどの程度小さくなるかによって、特定する。
【0054】
本発明によればまた、薄板ガラス、とりわけ本発明による方法によって製造可能な薄板ガラスは、少なくとも1.68の屈折率nD、及び2mm未満の厚さを有し、ここで屈折率は少なくとも0.001、理論的な屈折率よりも小さい。特に好ましくは、ガラスの屈折率は、少なくとも0.004、特に好ましくは少なくとも0.008、理論的な屈折率よりも小さい。代替的な実施形態において、屈折率はそれどころか理論的な屈折率よりも少なくとも0.05、又は少なくとも0.1小さい。
【0055】
理論的な屈折率は、まず薄板ガラスの屈折率を測定し、再度製造後、板ガラスをTG+20Kに相当する温度に加熱し、それから2K/hの冷却速度で20℃の温度に冷却することによって測定する。その後、屈折率を再度測定し(=理論的な屈折率)、この新たな冷却の前の屈折率との差を、特定する。
【0056】
本発明による薄板ガラスは、結晶不含であるのが好ましい。結晶不含であることを確認するために、光学的に研磨した試料を光学顕微鏡により、片側の端部照射で、倍率40倍で観察する。本発明による試料は、特に4cm2の試験面積において、50μmよりも大きい結晶を有さず、特に20μmより大きい結晶を有さず、好適には5μmより大きい結晶を有さず、特に好ましくは、1μmより大きい結晶を有さない。「大きさ」は、マーチン径を意味する。それでも本発明によるガラスは、失透下限を上回るガラスの滞留時間が原因で形成され得るより小さな結晶を、含有することがある。ただしこれらの結晶は非常に小さい。失透下限を上回る温度における滞留時間は確かに、結晶形成を可能にしているものの、結晶成長は温度導入、及び温度への、ガラス粘度の依存性が原因で、迅速に再度抑制されたからである。よって薄板ガラスは、非常に良好な内部品質を有する。薄板ガラスは特に、いわゆる縞模様(例えばオーバーフロー・フュージョン法、及び新たなダウンドロー法で特徴的なもの)を有さないのが好ましい。
【0057】
本発明の薄板ガラスは、従来の光学ガラスに比べて、比較的迅速に冷却されており、これによってリドロー装置における冷却区間は、特定の長さを超える必要がない。これによって、従来の光学ガラスと比較して、高い仮想温度をもたらし、これは新たな冷却における熱収縮につながる。ガラスは冷却段階が原因で、TG+20Kの温度から20℃の温度へと、2K/hの一定の冷却速度で再度冷却された場合、好適には少なくとも0.001、特に少なくとも0.004、好適には少なくとも0.008の値だけ向上された屈折率を有する。代替的な実施形態では、屈折率は冷却後に、少なくとも0.02、より好適には少なくとも0.05、特に好ましくは少なくとも0.01、向上している。これによってガラスは、ゆっくり冷却した棒状物と比較して、高い熱収縮を有する。熱収縮が大きい場合、複数の薄板ガラスの間の熱収縮のばらつきは、より少ないことが判明している。言い換えると、予測される熱収縮からの平均偏差は、ゆっくりと冷却したガラスの場合よりも小さい。
【0058】
優れた表面品質をもたらす薄板ガラスが得られることが、本発明の利点である。表面品質は特に、最大20nmの粗さRaで認識できる。この粗さ深さは、DIN EN ISO 4287に相応して測定する。
【0059】
薄板ガラスは好適には、2.6g/cm3超の密度、特に2.85g/cm3超の密度、好適には3g/cm3超の密度を有する。特に好ましくは、薄板ガラスの密度は、少なくとも3.2g/cm3、さらに好ましくは少なくとも4g/cm3、さらに好ましくは少なくとも5g/cm3、特に好ましくは少なくとも6g/cm3である。予備成形体及び薄板ガラスは同一のガラスから成るので、これらの値は、予備成形体のガラスについても、相応して当てはまる。しかしながらガラスの密度は、高すぎないのが望ましい。それと言うのも、予備成形体の制御された引張は、ガラスの質量が大きすぎる場合、実現するのが困難になり得るからである。従って密度は、特に最大8g/cm3、特に最大7g/cm3に制限される。
【0060】
ガラスは好適には、103dPas未満、特に102.5dPas未満、又はそれどころか102dPas未満の液相粘度を有する。この特性を有するガラスは、この方法に適している。なぜならば、結晶形成領域が著しく低粘度範囲に移行されている、結晶化傾向のあるガラスには、UEGに近いプロセスウィンドウが、高粘度範囲で開かれているからである。これまで、このようなガラスは、引っ張ることができないと考えられていた。
【0061】
薄板ガラスは好適には、α+20/+300℃=7×10-6-1より高い平均腺熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)を示す。薄板ガラスのCTEは好ましくは、α+20/+300℃=8.2×10-6-1超、さらに好ましくは少なくともα+20/+300℃=9×10-6-1、さらに好ましくは少なくともα+20/+300℃=10×10-6-1、特に好ましくは少なくともα+20/+300℃=7×11-6-1である。予備成形体及び薄板ガラスは同一のガラスから成るので、これらの値は、予備成形体のガラスについても、相応して当てはまる。
【0062】
薄板ガラスは好適には、幅bの、厚さdに対する比が、最大で200,000対1、及び少なくとも20:1である。本発明の薄板ガラスは特に、巻取られて存在し得る。これはつまり、ガラスが薄いガラス帯状物として巻取られていることを意味する。ここで薄板ガラスは、2mm未満、特に1mm未満、さらに好ましくは0.5mm未満、特に0.2mm未満、特に好ましくは0.1mm未満の厚さdを有する。薄板ガラスは好適には、少なくとも5m、さらに好ましくは少なくとも10m、特に好ましくは少なくとも20mの長さlを有する。
【0063】
或いは、薄板ガラスは円形のウェハの形(例えば6インチ若しくは12インチ)、又はシートの形状で存在することができる。ガラスの幅bは好適には、100mm超、さらに好適には200mm超、より好適には少なくとも300mm、特に好ましくは少なくとも400mmである。特定の実施形態において、薄板ガラスの幅bは、200mm未満に制限されている。
【0064】
本発明による方法によって、2000μm未満、1000μm未満、500μm未満、100μm未満、好適には50μm未満、特に好ましくは40μm未満、30μm未満、20μm未満、10μm未満の厚さdを有する薄板ガラス部材を作成することができ、ここで好適には、薄板ガラス部材の少なくとも1つの表面は、少なくとも区画ごとに、火炎研磨された表面品質を有する。ここで「厚さ」とは特に、薄板ガラスの中央における平均厚さを意味する。「幅」とは好適には、特に端部領域における縁を考慮せずに、又は端部領域を考慮せずに、正味帯状物の平均幅を意味する。正味帯状物は好適には、薄板ガラスの中央における厚さよりも最大10μm、又は最大20μm大きい厚さを有する限り、その水平的な広がりで薄板ガラスを取り囲む。より厚い端部領域及び/又は縁は、正味帯状物には該当しない。
【0065】
火炎研磨された表面とは、ガラス溶融物と、異種材料(例えば成形型、又はローラ)との接触が起こらない、加熱成形工程から生じるガラス表面であると理解されるべきである。火炎研磨された表面は通常、慣用の機械的な後処理法によっては達成されない非常に僅かな粗さ深さによって特徴付けられる。さらに、火炎研磨された表面は、ガラス成分、例えばB23、又はアルカリ金属の蒸発により、バルク材料に比べて僅かに変更された化学組成を有することができる。火炎研磨された表面は特に、機械的な常温後処理に典型的な研削又は研磨の痕跡を有さない。従って、火炎研磨されたガラス表面は、機械的に研磨されたガラス表面とは、相応する分析により明らかに区別することができる。
【0066】
薄板ガラス部材は好ましくは、2つの表面、及び周囲を巡る端部によって帯状に構成されていてよく、ここで薄板ガラス部材の少なくとも1つの表面は、少なくとも区画ごとに、Ra<=20nmの火炎研磨された表面品質を有する。
【0067】
ここで、薄板ガラス部材は、最大200,000:1、好適には最大20,000:1、特に好ましくは最大200:1の幅−厚さの比b/dを有することができる。薄板ガラス部材の幅bは好適には、その厚さdよりも実質的に大きい。幅−厚さの比率について、少なくとも2:1、さらに好適には少なくとも20:1、特に好ましくは少なくとも100:1の値が存在すると、特に好ましい。本発明による薄板ガラス部材は、非常に高い表面品質を有することができ、これは特に好ましくは、少なくとも部分的に、火炎研磨された品質である。
【0068】
本発明による薄板ガラスは、特に正味領域における、優れた形状特性を特徴とする。これに該当するのは特に、60μm未満、好適には50μm未満、より好適には40μm未満、特に30μm未満、特に好ましくは20μm未満、又はそれどころか10μm未満、の厚さ許容差である。これに該当するのは特にまた、35μm未満、好適には30μm未満、より好適には25μm未満、特に好ましくは15μm未満、特に好ましくは7μm未満の厚さむら(SEMI MF 1530によるTTV:Total Thickness Variation)である。TTVとは、最も厚い箇所と最も薄い箇所における、好適には正味領域(つまり、端部領域/縁無し)での薄板ガラス部材の厚さの差である。優れた形状特性に該当するのは特にまた、DIN 50441-5に記載の、4000μm未満、好適には2000μm未満、より好適には1500μm未満、特に好ましくは300μm未満、又はそれどころか200μm未満の歪みである。これらの記載は特に、200mm×200mmの面積に当てはまる。本発明の薄板ガラスは好適には、40μm未満、好適には35μm未満、特に25μm未満、より好適には20μm未満、さらに好適には10μm未満、又は5μm未満の傾斜(25.4mm当たりのTTV)を示す。
【0069】
本発明による方法で製造された薄板ガラスは、様々な光学適用、例えばディスプレイガラス(例えばOLED、LCD、2D、又は3Dディスプレイ)、照明分野(例えばOLED)、ウェハレベル光学において、及び/又はフィルターガラスとして使用するために適している。
【0070】
実施例
実施例1
光学ガラスを製造するための溶融槽において、1.80の屈折率nD、及び10ppm/KのCTEを有するガラスからの棒状物を製造する。このガラスは、640℃超で、>0.01μm/分の結晶速度を有する。棒状物は、160mmの幅、及び14mmの厚さを有する。連続的なバーから、長さ1mで各試料に分ける。これらを研削及び研磨法によって加工し、これによって、1000×160×8mm3の寸法を有する正方形の予備成形体が生じる。
【0071】
この予備成形体をリドロー装置に導入し、図9に記載の粘度経過が生じるように、温度プロファイルを調整する。このガラスは2分間にわたって、失透下限を上回る温度を有する。このガラスは、昇温時に108〜105dPasの粘度範囲で、10×105dPas/Kの粘度平均減少を示す。
【0072】
このプリフォームを、30mm/分の速度で炉内に入れ、810mm/分の速度でドロー材を引っ張る。100mmの幅、及び50mmの正味幅を有するガラス帯状物が生じる。正味領域において帯状物は、約0.3mmの厚さを有する。その表面は、火炎研磨されている。
【0073】
これらの試料を、結晶について調査する。これらは、結晶を有していない。
【0074】
実施例2
昇温時に108〜105dPasの粘度範囲で、3.2×105dPas/Kの粘度平均減少、及び3.25ppm/KのCTEを有するガラスのガラス棒状物から、寸法が100×50×2mm3のプリフォームを、研削及び研磨によって製造する。これらを装置に入れ、それからこれを1mm/sの速度で予熱炉に入れ、引き続きCO2レーザーのレーザー線を通過させる。このレーザー線は、スキャナによって生成させる。照射直径は、ガラスの場所で2mmに調整する。線状に加熱したガラスを、重力によって引き出す。粘度経過は、図10から読み取ることができる。このガラスは3秒間にわたって、失透下限を上回る温度を有する。40mmの全体幅、及び0.05〜1mmの厚さを有する帯状物が生じる。こうして得られた帯状物は、火炎研磨された表面を有し、50μmより大きな結晶を有さない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】リドロー装置の例示的な本発明による実施形態の構成を側面から概略的に示す。
図2】予備成形体を概略的に示す。
図3】レーザーによる構成を概略的に示す。
図4】加熱装置としてあり得る放射式加熱器の作用を概略的に示す。
図5】リドローにおける成形ゾーンの高さの影響を示す。
図6】あり得る厚さ分布を示す。
図7】例示的に、引き出した薄板ガラス部材の平均幅b(全体幅)、並びに必要となる引張力を、それぞれ予備成形体のガラスの粘度に対して示す。
図8】例示的に引き出した薄板ガラス部材の平均幅b(全体幅)の、平均厚さd(正味厚さ)に対する比、並びに必要となった引張力を、それぞれ成形ゾーンにおける予備成形体のガラスの粘度に対して示す。
図9】実施例1によるリドローにおける粘度経過を示す。
図10】実施例2によるリドローにおける粘度経過を示す。
【0076】
好ましい実施形態の詳細な説明
以下で詳述する好ましい実施形態の記載において、明確性のために同一の符号は、これらの実施形態において、又はこれらの実施形態で、実質的に同じ部分を表す。
【0077】
図1は、リドロー装置の例示的な本発明による実施形態の構成を側面から概略的に示す。リドロー装置内では予備成形体1が、上から下に向かって装置を通って移動する。リドロー装置は、装置の中央領域に配置されている2つの加熱装置2を有する。この実施形態において加熱装置は、成形領域4を形成するように、カバー3によって遮蔽されている。成形領域4に存在する予備成形体1の部位を、温度T2に達するように加熱する。高さHを有する成形ゾーン5も示されている。予備成形体1は、引張装置6(ここでは2つの稼動ローラの形で実施されている)によって、下方向に引っ張られる。これによって、送り込み装置7(ここでは同様に、ローラの形で実施されている)は、予備成形体1を引張装置6よりもゆっくりと送り込みながら引っ張り、予備成形体1が成形領域4で成形される。予備成形体1はこれによってより薄くなり、成形後の厚さdは、成形前の厚さDよりも小さい。
【0078】
予備成形体1を、成形領域4に供給する前に、予熱装置8(ここでは、バーナーの火によって表されている)によって、温度T1に予熱する。成形領域4の通過後、予備成形体1を冷却装置9(これはここでは、氷の結晶によって表されている)に供給する。
【0079】
図2は、長さL、厚さD、及び幅Bを有する予備成形体を概略的に示す。予備成形体の端部から中央方向へと伸びる端部領域Rも示されている。端部領域Rは好ましくは、成形体の幅の少なくとも1%、最大50%の割合を占め、これによってあらゆる端部領域に、予備成形体の幅の少なくとも0.5%、最大25%が割り当てられる。端部領域Rは特に、予備成形体の幅の少なくとも2%、最大30%の割合、好ましくは少なくとも5%、最大20%の割合、特に好ましくは少なくとも7%、最大15%の割合にわたる。端部領域において、予熱の際の温度は好適には、予備成形体の中央における温度よりも高く、特に少なくとも5℃、又は少なくとも20℃高い。
【0080】
図3は、レーザー10を有する加熱装置の構成を概略的に示す。レーザーの放射は、スキャンミラー11によって、ガラスに向けられる。スキャンミラーの動きにより、成形ゾーンが均一に加熱される。任意の照射形成光学要素は、図示されていない。
【0081】
図4は、加熱装置2として使用可能な、あり得る放射式加熱器の作用を概略的に示す。予備成形体1に対する距離に依存して、成形ゾーン5の高さは異なる。この図ではまた、できるだけ低い成形ゾーン5を保つために、シェーディング若しくはカバー3によって成形ゾーン5を区切ることができる。つまり距離も、また加熱装置の構成も、成形ゾーン5の高さの調整に役立てることができる。
【0082】
図5は、ガラス製品の幅が、リドローにおいて成形ゾーンの高さにどの程度依存しているのかを示す。より低い成形ゾーンが、予備成形体の幅の低減を低下させる効果を有することが見て取れる。
【0083】
図6は、平坦なガラス製品の厚さdが、製品の幅bにわたってどのように分布しているかを示す。これからは、ガラス製品の端部における縁が、相対的に狭いことが分かる。均一な低い密度を有する部位は、通常は縁を除去しなければならないガラス製品を適用するために利用できる。本発明による方法を用いると、収率は特に高い。
【0084】
図7は、それぞれ成形ゾーンにおける予備成形体のガラスの粘度に依存した、引き出した薄板ガラス部材の平均幅b(全体幅)、及び引き出しに必要な引張力を、5mm/分で高さ40mmのマッフル炉に入れた、厚さ4mm及び幅400mmの予備成形体の場合について、例示的に示す。ガラスは、200mm/分で引き出す。必要な引張力が、粘度が上昇するとともに次第に上昇することが、明らかに見て取れる。さらに、得られる製品の平均幅bは、粘度が上昇するにつれて次第に低下することが、明らかである。
【0085】
図8は、それぞれ成形ゾーンにおける予備成形体のガラスの粘度に依存した、引き出したガラス製品の平均幅b(全体幅)の、平均厚さd(正味厚さ)に対する比率、及び引き出しに必要な引張力を、5mm/分で高さ40mmのマッフル炉に入れた、厚さ4mm及び幅400mmの予備成形体の場合について、例示的に示す。ガラスは、200mm/分で引き出す。得られる製品の幅−厚さの比率b/dは、粘度が上昇するにつれて次第に低下することが、明らかである。粘度上昇に伴う、図6に示した平均幅bの低下と比較して、比b/dは、粘度が上昇するにつれて、相対的にさらに著しく低下する。
【符号の説明】
【0086】
1 予備成形体
2 加熱装置
3 カバー
4 予備成形領域
5 成形ゾーン
6 引張装置
7 送り込み装置
8 予熱装置
9 冷却装置
10 レーザー
11 スキャンミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10