特許第6643301号(P6643301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643301
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】欠陥検査装置及び欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20200130BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20200130BHJP
   G06T 5/50 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   G01N21/88 J
   G06T1/00 300
   G06T5/50
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-234072(P2017-234072)
(22)【出願日】2017年12月6日
(65)【公開番号】特開2019-100937(P2019-100937A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2018年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502178001
【氏名又は名称】学校法人梅村学園
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敦志
(72)【発明者】
【氏名】末廣 一郎
(72)【発明者】
【氏名】輿水 大和
(72)【発明者】
【氏名】青木 公也
(72)【発明者】
【氏名】吉村 裕一郎
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−013371(JP,A)
【文献】 特開2017−013378(JP,A)
【文献】 特許第5821708(JP,B2)
【文献】 特開昭60−135707(JP,A)
【文献】 特開平07−229853(JP,A)
【文献】 特開2005−043174(JP,A)
【文献】 特開平05−107200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G06T 1/00−1/60
G06T 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象を撮像した撮像画像に基づいて、該撮像画像よりも解像度を下げた低解像度画像を複数作成する解像度変更手段と、
該解像度変更手段で作成した複数の低解像度画像を合成した合成画像を作成して該合成画像から欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出手段と、を備え、
前記解像度変更手段は、
撮像画像内での位相をずらしながら前記撮像画像に前記分割領域を設定する分割領域設定手段と、
該分割領域設定手段で前記分割領域を設定したときに前記分割領域内の各画素の輝度の平均値を1つの画素の輝度値とした平均画像を作成する平均画像作成手段と、
該平均画像作成手段で作成した平均画像に輝度値を設定して輝度画像を作成する輝度値設定手段と、
該輝度値設定手段で作成した輝度画像を複数枚合成して前記低解像度画像を作成する位相画像合成手段と、を有するとともに、
前記分割領域設定手段で設定する分割領域のサイズを変化させながら、前記平均画像作成手段と、前記輝度値設定手段と、前記位相画像合成手段とで解像度の異なる複数の前記低解像度画像を作成するように構成され、
前記欠陥候補抽出手段は、前記位相画像合成手段で作成した複数の前記低解像度画像を合成した合成画像に対して輝度値に基づいて欠陥の有無を判断するように構成される欠陥検査装置であって、
前記輝度値設定手段は、前記平均画像に対して、一の着目画素と、該着目画素の両側に隣接する一対の隣接画素とを抽出し、前記着目画素の輝度値と前記一対の隣接画素のそれぞれの輝度値との比較に基づいて輝度値を設定するように構成される欠陥検査装置。
【請求項2】
前記輝度値設定手段は、
前記平均画像に対して、
前記着目画素の輝度値に対して、前記一対の隣接画素のそれぞれが共に明るい又は暗い場合にのみ前記着目画素と前記一対の隣接画素との輝度差に基づいて輝度値を設定し、それ以外の場合は輝度値を0に設定する請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記位相画像合成手段は、前記輝度画像を合成して正規化し、
前記欠陥候補抽出手段は、前記位相画像合成手段により正規化された複数の前記低解像度画像を合成して前記合成画像を作成する
請求項1又は請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
検査対象を撮像した撮像画像に基づいて、該撮像画像よりも解像度を下げた低解像度画像を複数作成するステップと、
該低解像度画像を複数作成するステップで作成した複数の前記低解像度画像を合成した合成画像を作成して該合成画像から欠陥候補を抽出するステップと、を備え、
前記低解像度画像を複数作成するステップでは、
撮像画像内での位相をずらしながら前記撮像画像に分割領域を設定し、且つ該分割領域内の各画素の輝度の平均値を1つの画素の輝度値とした平均画像を作成する平均画像作成処理と、該平均画像作成処理で作成した平均画像について、輝度値を設定した輝度画像を作成する輝度値設定処理と、該輝度値設定処理で作成した各輝度画像を合成して前記低解像度画像を作成する位相画像合成処理とを、前記撮像画像に分割領域を設定する際に分割領域のサイズを変化させながら繰り返して実行することによって解像度の異なる複数の前記低解像度画像を作成するように構成され、
前記欠陥候補を抽出するステップでは、複数の前記低解像度画像を合成した合成画像に対して輝度値に基づいて欠陥の有無を判断するように構成される欠陥検査方法であって、
前記輝度値設定処理では、前記平均画像に対して、一の着目画素と、該着目画素の両側に隣接する一対の隣接画素とを抽出し、前記着目画素の輝度値と前記一対の隣接画素のそれぞれの輝度値との比較に基づいて輝度値を設定する
欠陥検査方法。
【請求項5】
前記輝度値設定処理では、
前記着目画素の画素値に対して、前記一対の隣接画素のそれぞれが共に明るい又は暗い場合にのみ前記着目画素と前記一対の隣接画素との輝度差に基づいて輝度値を設定し、それ以外の場合は輝度値を0に設定するように構成される
請求項4に記載の欠陥検査方法。
【請求項6】
前記位相画像合成処理は、前記輝度画像を合成して正規化し、
前記欠陥候補を抽出するステップでは、前記位相画像合成処理により正規化された複数の前記低解像度画像を合成して前記合成画像を作成する
請求項4又は請求項5に記載の欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象を撮像した画像を用いて該検査対象の欠陥を発見する欠陥検査装置、及び欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査対象を撮像した撮像画像から所定のサイズの分割領域を分割する分割手段と、分割領域を分割する位相(位置)を変更する位相変更手段と、前記位相変更手段で位相を変更しながら前記分割手段で分割した複数の分割領域のそれぞれについて、分割領域に含まれている複数の画素の輝度の平均値を求め、該複数の画素の輝度を該平均値に置き換えて低解像度化する平均化手段とを有する画像処理装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、画像処理装置では、平均化手段で低解像度化した画像(以下、低解像度画像と称する)のそれぞれについて、低解像度画像に含まれる各画素を2値化した量子化データを作成した後に、該量子化データを複数枚加算して検査用の画像を作成しており、検査用の画像中における輝度の相対的に高い、または低い領域を欠陥候補として認識できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−13371号公報
【特許文献2】特許第5821708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の欠陥検査装置において、低解像度画像には輝度レベルが低い値のものや、高い値のものが含まれているが、低解像度画像から量子化データを作成するにあたり、前記輝度レベルが2値に変換されるため、欠陥を示している輝度の情報が量子化データには反映されないことがある。その結果、量子化データを加算して作成した検査用の画像に欠陥候補が正しく反映されず、欠陥の検査精度が低下してしまうことが問題となっている。
また、解像度毎に位相を振った画像を加算した場合、解像度によって位相を振る回数が違うため、そのまま加算すると位相を振る回数の少ない解像度の欠陥の重みが少なくなり、検出できない欠陥が発生することも問題となっている。
【0006】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、欠陥の検査精度を高めることができる欠陥検査装置、及び欠陥検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の欠陥検査装置は、
検査対象を撮像した撮像画像に基づいて、該撮像画像よりも解像度を下げた低解像度画像を複数作成する解像度変更手段と、
該解像度変更手段で作成した複数の低解像度画像を合成した合成画像を作成して該合成画像から欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出手段と、を備え、
前記解像度変更手段は、
撮像画像内での位相をずらしながら前記撮像画像に前記分割領域を設定する分割領域設定手段と、
該分割領域設定手段で前記分割領域を設定したときに前記分割領域内の各画素の輝度の平均値を1つの画素の輝度値とした平均画像を作成する平均画像作成手段と、
該平均画像作成手段で作成した平均画像に輝度値を設定して輝度画像を作成する輝度値設定手段と、
該輝度値設定手段で作成した輝度画像を複数枚合成して前記低解像度画像を作成する位相画像合成手段と、を有するとともに、
前記分割領域設定手段で設定する分割領域のサイズを変化させながら、前記平均画像作成手段と、前記輝度値設定手段と、前記位相画像合成手段とで解像度の異なる複数の前記低解像度画像を作成するように構成され、
前記欠陥候補抽出手段は、前記位相画像合成手段で作成した複数の前記低解像度画像を合成することにより、前記合成画像を作成するように構成される。
【0008】
上記構成の欠陥検査装置によれば、低解像度画像を作成する際においては分割画像を2値化せずに合成し、また、合成画像を作成する際においては低解像度画像を2値化せずに合成しているため、欠陥候補の抽出に用いる合成画像には欠陥のコントラスト情報が残る。
【0009】
従って、前記欠陥検査装置では、合成画像のコントラスト情報に合わせて欠陥候補の有無を判断(抽出)できるようにすることで、欠陥の検査精度を高めることができる。
【0010】
本発明の欠陥検査装置において、
前記輝度値設定手段は、
前記平均画像に対して、
着目画素と、該着目画素の両側に隣接する一対の隣接画素とを抽出し、
前記着目画素の輝度値に対して、前記一対の隣接画素のそれぞれが共に明るい又は暗い場合にのみ輝度差に基づいて輝度値を設定し、それ以外の画素は輝度値を0に設定する。
ように構成されていてもよい。
【0011】
上記構成の欠陥検査装置によれば、着目画素(着目点)に対して両側の隣接画素の片側の画素が明るく、他方の画素が暗い場合は、平均画像内の輝度変化を正常部の輝度変化と捉え、正常部が欠陥として過剰に検出されてしまうことを防止できる。
【0012】
また、正常部に模様が入っている場合は、その境界部分においては、両側隣接画素の片側が着目画素と同等の輝度で、もう一方が明るいまたは暗いという画素が入ってくるが、これも正常部として判定することができる。
【0013】
さらに、本発明の欠陥検査装置において、
前記位相画像合成手段は、前記輝度画像を合成して正規化し、
前記欠陥候補抽出手段は、前記位相画像合成手段により正規化された複数の前記低解像度画像を合成して前記合成画像を作成する。
【0014】
かかる構成によれば、解像度毎における位相をずらす回数の違いによる重みの差をなくすことができ、複数の低解像度画像や、複数の輝度画像を合成する際に、欠陥であることを示す輝度値の情報が失われてしまうことを抑制することができる。
【0015】
本発明の欠陥検査方法は、
検査対象を撮像した撮像画像に基づいて、該撮像画像よりも解像度を下げた低解像度画像を複数作成するステップと、
該低解像度画像を複数作成するステップで作成した複数の前記低解像度画像を合成した合成画像を作成して該合成画像から欠陥候補を抽出するステップと、を備え、
前記低解像度画像を複数作成するステップでは、
撮像画像内での位相をずらしながら前記撮像画像に分割領域を設定し、且つ該分割領域内の各画素の輝度の平均値を1つの画素の輝度値とした平均画像を作成する平均画像作成処理と、該平均画像作成処理で作成した平均画像について、輝度値を設定した輝度画像を作成する輝度値設定処理と、該輝度値設定処理で作成した各輝度画像を合成して前記低解像度画像を作成する位相画像合成処理とを、前記撮像画像に分割領域を設定する際に分割領域のサイズを変化させながら繰り返して実行することによって解像度の異なる複数の前記低解像度画像を作成するように構成され、
前記欠陥候補を抽出するステップでは、複数の前記低解像度画像を合成することにより、前記合成画像を作成するように構成される。
【0016】
上記構成の欠陥検査装置によれば、低解像度画像を作成する際においては分割画像を2値化せずに合成し、また、合成画像を作成する際においては低解像度画像を2値化せずに合成しているため、欠陥候補の抽出に用いる合成画像には欠陥のコントラスト情報が残る。
【0017】
従って、前記欠陥検査装置では、合成画像のコントラスト情報に合わせて欠陥候補の有無を判断(抽出)できるようにすることで、欠陥の検査精度を高めることができる。
【0018】
本発明の欠陥検査方法において、
前記輝度値設定処理では、
前記平均画像に対して、着目画素と、該着目画素の両側に隣接する一対の隣接画素とを抽出し、
前記着目画素の画素値に対して、前記一対の隣接画素のそれぞれが共に明るい又は暗い場合にのみ輝度差に基づいて輝度値を設定し、それ以外の場合は輝度値を0に設定するように構成されていてもよい。
【0019】
上記構成の欠陥検査装置によれば、着目画素(着目点)に対して両側の隣接画素の片側の画素が明るく、他方の画素が暗い場合は、平均画像内の輝度変化を正常部の輝度変化と捉え、正常部が欠陥として過剰に検出されてしまうことを防止できる。
【0020】
また、正常部に模様が入っている場合は、その境界部分においては、両側隣接画素の片側が着目画素と同等の輝度で、もう一方が明るいまたは暗いという画素が入ってくるが、これも正常部として判定することができる。
【0021】
さらに、本発明の欠陥検査方法において、
前記位相画像合成処理は、前記輝度画像を合成して正規化し、
前記欠陥候補を抽出するステップでは、前記位相画像合成処理により正規化された複数の前記低解像度画像を合成して前記合成画像を作成する。
【0022】
かかる構成によれば、解像度毎における位相をずらす回数の違いによる重みの差をなくすことができ、複数の低解像度画像や、複数の輝度画像を合成する際に、欠陥であることを示す輝度値の情報が失われてしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の欠陥検査装置及び欠陥検査方法によれば、検査対象の欠陥を精度良く発見できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る欠陥検査装置のブロック図である。
図2図2は、同実施形態に係る欠陥検査装置のフローチャートである。
図3図3において(a)〜(c)は、撮像画像の分割サイズの説明図である。
図4図4において(a)〜(i)は、分割領域の位相の設定の仕方の説明図である。
図5図5は、同実施形態に係る欠陥検査装置の平均画像を作成する処理の説明図である。
図6図6において(a)〜(d)は、輝度画像を作成する処理の説明図である。
図7図7において(a)〜(c)は、ブロブ処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態にかかる欠陥検査装置について、添付図面を参照しつつ説明する。欠陥検査装置は、物品の外観を撮像した画像を基にして傷等の結果を発見するように構成されている。なお、物品には、例えば、金属や、プラスチックフィルム、布、印刷物等が挙げられる。
【0026】
なお、欠陥検査装置は、例えば、パソコンのように、情報の処理や機器の制御を行う処理装置や、情報を記憶する記憶装置、ディスプレイ等の出力装置等を備えていればよい。
【0027】
図1に示すように、欠陥検査装置1は、検査対象を撮像した撮像画像を取得する画像取得手段2と、該画像取得手段2で取得した撮像画像に基づいて、該撮像画像よりも解像度を下げた低解像度画像を複数作成する解像度変更手段3と、該解像度変更手段3で作成した複数の低解像度画像を合成した合成画像を作成して該合成画像から欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出手段4と、を備えている。
【0028】
画像取得手段2は、撮像装置が撮像した検査対象となる物品の画像を、該撮像装置から直接取得してもよいし、欠陥検査装置1の記憶装置や、外部の記憶装置に記憶されている検査対象の画像を取得するように構成されていてもよい。
【0029】
解像度変更手段3は、撮像画像内での位相をずらしながら前記撮像画像に分割領域を設定する分割領域設定手段30と、該分割領域設定手段30で分割領域を設定したときに分割領域内の各画素の輝度の平均値を1つの画素の輝度値とした平均画像を作成する平均画像作成手段31と、該平均画像作成手段31で作成した平均画像について、輝度値を設定して輝度画像を作成する輝度値設定手段32と、該輝度値設定手段32で作成した各輝度画像を合成して前記低解像度画像を作成する位相画像合成手段33と、を有する。
【0030】
また、本実施形態に係る解像度変更手段3は、分割領域設定手段30が撮像画像内での位相(分割領域の位相)をずらした後に、平均画像作成手段31が位相をずらした分割領域内の各画素の輝度の平均値を1つの画素の輝度値として平均画像を作成し、輝度値設定手段32が平均画像に輝度値を設定して輝度画像を作成する処理をくり返し行うことにより、複数の輝度画像を作成するように構成されている。
【0031】
また、解像度変更手段3は、分割領域設定手段30で分割領域のサイズ(前記平均画像作成手段31で作成する平均画像のサイズ)を変化させながら、前記平均画像作成手段31と、前記輝度値設定手段32と、前記位相画像合成手段33とで解像度の異なる複数の前記低解像度画像を作成するように構成されている。
【0032】
分割領域設定手段30は、分割領域のサイズと、位相(分割領域内に設定する位置)とを設定できるように構成されている。
【0033】
分割領域設定手段30は、分割領域のサイズを変更可能に構成することができ、さらに、低解像度画像を作成するためにあらかじめ設定しておいたサイズ(すなわち、分割領域のサイズの初期値)が定められていてもよい。
【0034】
なお、分割領域設定手段30は、例えば、3×3画素(縦3画素、横3画素)のサイズ4×4画素(縦4画素、横4画素)のサイズ5×5画素(縦5画素、横5画素)のサイズと順に画素数を増加させて検査画像に写る最大の欠陥(最大と予測される欠陥)と同サイズになるまで分割領域のサイズを変更するように構成されていればよい。
【0035】
さらに、分割領域設定手段30は、分割領域のサイズを変えずに、該分割領域の位相(撮像画像内での位置)を1画素ずつずらすように構成されている(図4(a)〜図4(i)参照)。位相をずらす方向は横方向、縦方向のそれぞれの方向にずらしている。なお、図4(a)〜図4(i)においては、撮像画像を「P1」、分割領域を「R1」で示している。
【0036】
平均画像作成手段31は、分割領域設定手段30で設定した分割領域内の各画素の輝度の平均値を1つの画素の輝度値として平均画像を作成する(図5参照)。なお、図5では、撮像画像を「P1」、分割領域を「R1」、平均画像を「P2」で示している。
【0037】
輝度値設定手段32は、平均画像作成手段31で作成された平均画像に対し、基準となる画素と、該画素の周囲の画素との輝度の比較を行い、比較して計算された輝度値に該当する画素の輝度値を変換する。
【0038】
位相画像合成手段33では、分割領域のサイズ毎(解像度毎)に、全ての平均画像に輝度値を設定した後、同じサイズの輝度画像(同じサイズの分割領域に基づいて作成された輝度画像)の全てを合成した画像を作成し、該画像の画素値を正規化することにより、低解像度画像を作成する。
【0039】
輝度値設定手段32について詳細に説明する。輝度値設定手段32は、前記平均画像に対して、着目画素と、該着目画素の両側に隣接する一対の隣接画素とを抽出し、着目画素と各隣接画素の輝度の関係に基づいて平均画像に輝度値を設定する。
【0040】
なお、輝度値設定手段32が一対の隣接画素として抽出する画素は、着目画素の左右に隣接する画素であってもよいし、着目画素の上下に隣接する画素であってもよいし、着目画素の斜め上と斜め下に隣接する画素であってもよい。
【0041】
輝度値設定手段32では、着目画素の画素値と各隣接画素の画素値とを取得し、一対の隣接画素のそれぞれが着目画素よりも明るい場合又は暗い場合(図6(a)と(b)参照)においてのみ、すなわち、一対の隣接画素のそれぞれの明るさ(輝度値)が着目画素の明るさ(輝度値)よりも高い又は低い場合に、着目画素と隣接画素の輝度差に基づいて平均画像に輝度値を設定する。
【0042】
本実施形態では、着目画素の画素値と一方の隣接画素の画素値との差をL1、着目画素の画素値と他方の隣接画素値との差をL2とした場合、着目画素の画素値Lを式1の計算値とする。
【数1】
【0043】
これは、着目画素と一方の隣接画素の画素値の差L1と着目画素の画素値と他方の隣接画素値との差L2が同等の輝度値の場合(図6(a)参照)は明らかに欠陥であるので大きな値を出力し、着目画素と一方の隣接画素の画素値の差L1と着目画素の画素値と他方の隣接画素値との差L2の差が大きい時(図6(b)参照)は欠陥でない可能性があるため、着目画素の輝度値を小さい値にして感度(欠陥候補の検出率)を下げている。なお、式(1)により算出した輝度値が負の数となる場合は、着目画素の輝度値を0に設定する。
【0044】
なお、画素値Lは、着目画素の左右に隣接する画素の画素値で求めた値、着目画素の上下に隣接する画素で求めた値、着目画素の右斜め上と左斜め下に隣接する画素で求めた値、左斜め上と右斜め下に隣接する画素で求めた値の4通りの値に基づいて求めることができる。また、その値の最大となる値を輝度値と設定するか、合計値を輝度値と設定してもよいし、上下と左右のみの2つの値から設定するか、上下と左右、斜めの4つの値全てを用いて値を設定してもよい。
【0045】
一対の隣接画素のうちの一方の画素値が着目画素よりも明るく、他方が着目画素よりも暗い場合(図6(c)参照)は、平均画像輝度値に0を設定する。このように、平均画像輝度値の値に欠陥候補抽出手段4が正常部であると判定できる値を設定することにより、平均画像内の輝度変化を正常部の輝度変化であると捉えることができるようになる。
【0046】
また、一対の隣接画素のうちの一方の画素値が着目画素と同等の明るさであり、他方が着目画素よりも明るい又は暗い場合(図6(d)参照)も、平均画像の輝度値に0を設定する。この場合においても、平均画像輝度値の値に欠陥候補抽出手段4が正常部であると判定できる値を設定することにより、正常部に模様が入っている場合であり、その模様の境界部分において、両側隣接画素の片側が着目画素と同等の輝度で、もう一方が明るいまたは暗いという画素が入ってくる場合も、正常部として判定できるようになる。なお、図6(a)〜図6(d)において、着目画素は「Px1」、隣接画素は「Px2」で示している。
【0047】
位相画像合成手段33は、上述のように、輝度画像を合成して低解像度画像を作成するが、合成する輝度画像の枚数は、撮像画像を分割するサイズにより異なるため、低解像度画像を正規化するように構成されている。
【0048】
例えば、撮像画像を分割するサイズが3×3画素の場合は9枚の平均画像(輝度画像)が作成され、撮像画像を分割するサイズが4×4画素の場合は16枚の平均画像(輝度画像)が作成されるため、撮像画像を分割するサイズが大きくなると、合成する平均枚数が多くなる。従って、平均画像(輝度画像)をそのまま加算して合成した場合は、撮像画像を分割するサイズが大きくなるにつれて、合成後の輝度値も大きくなる傾向となる(図3(a)〜図3(c)参照)。なお、図3(a)〜図3(c)では、撮像画像を「P1」、分割領域を「R1」で示している。
【0049】
位相画像合成手段33による正規化では、分割領域のサイズ毎に、位相が異なる輝度画像が複数枚存在しており、該輝度画像の同じ座標(輝度画像が重なり合う領域)の画素値を加算することにより輝度画像同士が合成される。
【0050】
そして、輝度画像を合成した画像に対し2値化を行い、ブロブ処理で欠陥候補点を抽出する。2値化の閾値は合成した画像枚数に比例して大きな値とする。この欠陥候補点に対し、画像取得手段2で得た撮像画像の輝度値を用いて輝度を再計算する。
【0051】
続いて、輝度値の再計算方法の例を説明すると、輝度画像の画素値を加算することにより合成した画像に対して2値化処理を行い、ブロブ処理により欠陥候補点の形状と、欠陥候補点の平均輝度を計算する。
【0052】
このとき、欠陥候補点の輝度計算を行う画像は、画像取得手段2で得た低解像度化する前の画像の画素値を用いる。さらに、欠陥候補点の形状を膨張処理により拡大し、拡大した領域から拡大前の領域を差し引くことで、欠陥候補点の周辺部の形状を得る。この欠陥候補点の周辺部の平均輝度を、画像取得手段2で得た低解像度化する前の画像の画素値を用いて算出する(図7(a)〜図7(c)参照)。なお、図7(a)〜図7(c)においては、欠陥候補点を「R2」、欠陥候補点を拡大した領域を「R3」で示している。
【0053】
欠陥候補点の平均輝度と欠陥候補点の周辺部の平均輝度の差を合成後の輝度とする。このブロブ処理を使った手法では、入力である元の低解像度画像が8ビットであれば、出力である合成後の出力画像も8ビットであり、加算回数に依存しない欠陥コントラストを出力することができる。
【0054】
なお、位相画像合成手段33による輝度画像の合成時における正規化では、輝度画像の同じ座標(輝度画像が重なり合う領域)の画素値を加算することで輝度画像同士を合成する場合は、撮像画像を分割するサイズ(分割領域のサイズ)毎の画像枚数が違うため、加算後の輝度値は入力画像のビット数を超えることがあるが、同じ座標の画素値の最大値を合成後の画像の輝度値とすれば、入力である輝度画像と出力である合成画像の最大輝度を同じにすることができる。かかる方法においても入力と出力の画像のビット数を揃えることができる。
【0055】
位相画像合成手段33は、サイズを画像取得手段2で得た撮像画像のサイズに合わせて低解像度画像を拡大することにより、各低解像度画像のサイズを揃えるように構成されている。位相画像合成手段33では、低解像度画像の輝度が正規化されている一方、低解像度画像のサイズはそれぞれ異なっているが、位相画像合成手段33のかかる処理により、低解像度画像のサイズが揃えられる。
【0056】
画像サイズを揃えた位相合成画像に対し、同じ座標の画素値を加算することで、低解像度画像の合成後の画像を得ることができる。なお、画像サイズを揃えた位相合成画像に対し、同じ座標の画素値の最大値を合成後の画素値として使用してもよい。
【0057】
欠陥候補抽出手段4は、低解像度画像合成後の画像に対し、輝度値に基づいて欠陥の有無(欠陥であるか正常部であるかの判断)を行うように構成されている。本実施形態に係る欠陥候補抽出手段4は、判別分析法等の一般的な2値化処理にて欠陥部を抽出し、その面積や形状で欠陥か正常部かの判断を行うように構成されている。
【0058】
本実施形態に係る欠陥検査装置1の構成は、以上の通りである。続いて、欠陥検査装置1による欠陥検査方法について説明する。
【0059】
欠陥検査方法は、画像取得手段2で撮像画像を取得するステップと、検査対象を撮像した撮像画像に基づいて、該撮像画像よりも解像度を下げた低解像度画像を複数作成するステップと、該解像度変更手段3で作成した複数の低解像度画像を合成した合成画像を作成して該合成画像から欠陥候補を抽出するステップとを備えている。
【0060】
図2に示すように、画像取得手段2で撮像画像を取得し(S1)、分割領域設定手段30が分割サイズ設定手段により分割領域のサイズを決定し(S2)、さらに、撮像画像に分割領域を設定する位置(位相)を決定し(S3)、撮像画像に分割領域を設定する。
【0061】
そして、平均画像作成手段31が、分割領域内の各画素の輝度の平均値を1つの画素の輝度値とした画像に設定することで平均画像を作成する(S4)。
【0062】
続いて、輝度値設定手段32が平均画像に対して輝度値を設定する(S5)。より具体的に説明すると、輝度値設定手段32は、平均画像内から着目画素と該着目画素の両側に隣接する一対の隣接画素とを抽出し、該着目画素と各隣接画素の明るさ(輝度値)の関係に基づいて平均画像の輝度値を設定する。
【0063】
一対の隣接画素のそれぞれの画素値が着目画素よりも明るい場合又は暗い場合、すなわち、一対の隣接画素のそれぞれの明るさ(輝度値)が着目画素の明るさ(輝度値)よりも共に高い又は低い場合、着目画素と隣接画素の輝度差に基づいて平均画像に輝度値を設定する。この場合の平均画像に輝度値は、式(1)により導出される。
【0064】
そして、一対の隣接画素のうちの一方の画素値が着目画素よりも明るく、他方が着目画素よりも暗い場合は、平均画像の輝度値に0を設定する。また、一対の隣接画素のうちの一方が着目画素と同等の明るさであり、他方が着目画素よりも明るい又は暗い場合も、平均画像の輝度値を0に設定する。
【0065】
これにより、平均画像に輝度値が設定された輝度画像が作成される。
【0066】
撮像画像から新たな輝度画像を作成する場合(S6でNo)は、分割領域の位相を変更し、再び輝度画像を作成する処理(S2〜S5)を実行する。
【0067】
輝度画像を作成し終えた場合(S6でYes)は、位相画像合成手段33が輝度画像を合成して(S7)低解像度画像を作成する。
【0068】
さらに、別の解像度で新たな低解像度画像を作成する場合(S8でNo)は、分割領域のサイズを新たに設定し(S2)、平均画像作成手段31、輝度値設定手段32、位相画像合成手段33による低解像度画像の作成処理を再び実行する(S3〜S7)
【0069】
低解像度画像を作成し終えた場合(S8でYes)は、解像度変更手段3で作成した複数の低解像度画像を合成した合成画像を作成し(S9)、欠陥候補抽出手段4により該合成画像から欠陥候補を抽出(検出)する(S10)。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る欠陥検査装置1及び欠陥検査方法によれば、低解像度画像を作成する際においては分割画像を2値化せずに合成し、また、合成画像を作成する際においては低解像度画像を2値化せずに合成しているため、欠陥候補の抽出に用いる合成画像には欠陥のコントラスト情報が残る。
【0071】
従って、合成画像のコントラスト情報に合わせて欠陥候補の有無を判断(抽出)できるようにすることで、欠陥の検査精度を高めることができるという優れた効果を奏し得る。なお、本実施形態では、低解像度画像合成手段での出力画像において、欠陥候補点となる領域が抽出されているため、欠陥検出処理では単純な処理で欠陥の判断をすることが可能である。
【0072】
また、着目画素(着目点)に対して両側の隣接画素の片側の画素値が明るい、又は暗い場合は、平均画像内の輝度変化を正常部の輝度変化と捉え、正常部が欠陥として過剰に検出されてしまうことを防止でき、正常部に模様が入っている場合は、その境界部分においては、両側隣接画素の片側が着目画素と同等の輝度で、もう一方が明るいまたは暗いという画素が入ってくるが、これも正常部として判定することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、解像度(すなわち、分割画像のサイズ)を変えることで欠陥のサイズと、画素のサイズが同じになる低解像度画像を作成でき、また、撮像画像内での位相(すなわち、撮像画像内から分割画像を分割する位置)をずらすことにより、欠陥のサイズと低解像度画像の画素(分割画像)のサイズが同じ場合に、該低解像度画像の画素の中心に欠陥が写っている画像を得ることができる。そのため、一つの画素の中心に欠陥を写すことができ、これにより、欠陥が写っている画素と、その両側の画素の輝度を比較することにより、最大の欠陥コントラストを得ることが可能になる。
【0074】
さらに、解像度毎における位相をずらす回数の違いによる重みの差をなくすことができ、複数の低解像度画像や、複数の輝度画像を合成する際に、欠陥であることを示す輝度値の情報が失われてしまうことを抑制することができる。
【0075】
なお、本発明の欠陥検査装置1、及び欠陥検査方法は、上記一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を行うことは勿論である。
【0076】
上記実施形態において、合成する輝度画像が重なり合う領域が存在する場合は、該輝度画像の重なり合う領域の輝度値を加算した値を輝度値としていたが、この構成に限定されない。例えば、合成する輝度画像が重なり合う重合領域の輝度値の最大値を設定してもよい。
【0077】
上記実施形態において、欠陥候補抽出手段4は、複数の低解像度画像を合成した合成画像を2値化するように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、欠陥候補抽出手段4は、一つの低解像度画像の輝度値の情報を反映させた画像を合成画像とし、該合成画像を2値化するように構成されていてもよい。
【0078】
上記実施形態では、式(1)により平均画像に設定する輝度差の値を算出していたが、この構成に限定されず、例えば、下式(2)により平均画像に設定する輝度差の値を算出してもよい。

【数2】
【符号の説明】
【0079】
1…欠陥検査装置、2…画像取得手段、3…解像度変更手段、4…欠陥候補抽出手段、22…画像取得手段、30…分割領域設定手段、31…平均画像作成手段、32…輝度値設定手段、33…位相画像合成手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7