(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
眼領域または鼻領域に位置する解剖学的構造に電気刺激を提供することによって、1つまたは複数の疾患(たとえば、ドライアイ、疲れ目、コンタクトレンズの装着による眼の不快感など)を治療するための装置、システム及び方法が本明細書に記載されている。具体的には、本明細書で開示される方法は、一般に、涙腺を活性化するために眼領域または鼻領域の解剖学的構造に、複数の波形パラメータによって定義される、パターン化された電気刺激を適用することを含む。電気刺激は、刺激の送達中または送達後の涙液生成の増加などの効果をもたらし得る。
【0030】
一般に、本明細書に開示される方法は、眼窩または鼻粘膜の及び粘膜下組織の神経、筋肉(したがって、間接的に、感覚情報を中枢神経系に戻すことを提供する筋紡錘及びゴルジ腱器官の受容器を介した神経)、及び/または腺を電気的に刺激することを含む。この手法によれば、神経組織は何らかの方法で活性化され得る。たとえば、
図1を参照すると、本発明者らは、鼻腔内位置102または眼球位置104での活性化が、電極が神経を直接活性化している場合には、活動電位が活性点から逆行性及び正行性に動作し、腺及び筋肉が活性化され脳への感覚入力を発生させる場合には、求心性神経で正行性に動作すると仮定する。矢印106、108、110、及び112で示されるように、途中でいくつかの神経節を通過した後、脳への感覚入力が橋の涙腺核に達する。この場合、神経計算及びデータ整理が、情報が大脳の感覚皮質の領域にさらに伝達される前に、神経節及び橋の核でそれぞれ起こる可能性が高い。したがって、神経組織の活性化は、直接的または間接的に、入力に応答させるために、中枢神経系に回路(たとえば脳、脊髄、潜在的末梢神経系(PNS)の神経節)を発生させ得る。脳幹118からの出力は、矢印114で示すように、涙腺にフィードバックを送り得る。
【0031】
本発明者らは、刺激入力に最初に気付いた後、刺激は引き続き送達されるが、数秒(たとえば、30秒未満)後に刺激を感じないことを報告する患者がいることを見出した。評価は、中枢神経系がデータ整理を実施し、それによってこれらの患者の適応を容易にしたはずであるというというものであった。したがって、本明細書での手法は、患者の適応を削減する刺激パラダイムを患者に提供することを目的としている。
【0032】
例示的な刺激装置
本明細書に記載の刺激波形は、埋め込み型の刺激装置または非埋め込み型の(たとえば、携帯型の)刺激装置を介して送達され得る。
【0033】
例示的な埋め込み型マイクロ刺激装置
本明細書に記載の刺激波形が、埋め込み型刺激装置を使用して適用される場合、刺激装置は、単一マイクロ刺激装置を形成する、ハウジング及びハウジングに接続され対応する補完的な可撓性延長部を含むマイクロ刺激装置を備え得る。一例を
図2A〜2Cに示す。そこに示されるように、マイクロ刺激装置200は、ハウジング202と、ハウジング202に接続された可撓性延長部204とを備え得る。ハウジング202は、密閉され得て、内部に刺激回路の一部または全部を含み得る。マイクロ刺激装置200は、参照により全体が本明細書にすでに組み込まれる、米国特許出願第13/441,806号に記載されているような任意の刺激回路を含み得る。ハウジング202は、1つまたは複数の金属(たとえば、チタン)またはその他の生体適合性材料から形成され得る。
【0034】
延長部204は、シリコンなどの可撓性材料から形成し得て、第1の電極206、第2の電極208、及びコイル210を含み得る。いくつかの変形例では、延長部204は、成形シリコンなどの成形品であり得る。延長部は、
図2A〜2Bに示すように、延長部及びハウジングが、一体の形状を有し得るようにハウジングに対応する補完的な形状を有し得る。可撓性延長部204は、組織に埋め込まれたとき、解剖学的構造の1つまたは複数の組織(たとえば、眼窩または涙腺)に適合し得る。
図2Bは、マイクロ刺激装置200の側面図を示す。そこに示すように、延長部204の厚さは、ハウジング202の厚さよりも薄くし得て、ハウジング202の厚さまで厚くし得る。さらに、
図2Aでは、延長部204の幅は、ハウジング202の幅より大きく示されているが、ハウジング202の厚さまで薄くもし得る。
【0035】
電極206及び208、ならびにコイル210は、1つまたは複数のフィードスルーを介してマイクロ刺激装置回路に接続し得る。たとえば、
図2Cは、延長部204が除去されたハウジング202の斜視図を示す。そこに示されるように、ハウジング202は、ハウジング202を貫通する複数のフィードスルー212を備え得る。1つまたは複数の要素(たとえば、電極206もしくは208、またはコイル210のうちの1つ)は、フィードスルー212への接続によって密封された刺激回路に電気的に接続され得る。さらに、フィードスルー212のいくつかは、フィードスルー212をハウジング202から電気的に絶縁することができる絶縁部材214を含み得る。本明細書に記載の電気刺激を送達し得る本埋め込み型刺激装置及びその他の埋め込み型刺激装置は、参照により全体が本明細書にすでに組み込まれる、米国特許出願第13/441,806号、及び参照により全体が本明細書にすでに組み込まれる、米国特許出願第14/256,915号に記載されている。
【0036】
刺激装置が、埋め込み型マイクロ刺激装置である場合、システムは、電力、情報などを送信及び/または受信するためにマイクロ刺激装置と通信し得る、コントローラをさらに備え得る。たとえば、刺激システムが、受動刺激回路(または、別の方法では、電池または内部電源を含まない刺激回路)を有するマイクロ刺激装置を備える変形例では、コントローラ信号は、コントローラの出力信号を介して刺激装置に電力を供給し得る。コントローラは、無線及び/または有線接続を介してマイクロ刺激装置と通信し得る。コントローラは、体内に埋め込むように構成され得るか、または身体の外部にそのまま構成し得る。コントローラは、使い捨て、再使用可能、または部分的に再使用可能であり得る。場合によっては、コントローラは再充電可能であり得る。
【0037】
図3は、例示的な外部コントローラを示す。そこに示されるように、刺激システム300は、携帯型装置を備えるコントローラ302を含む。コントローラ302は、埋め込まれたマイクロ刺激装置306の近くに配置され得、埋め込まれたマイクロ刺激装置306によって受信される出力信号308を生成し得る。埋め込まれたマイクロ刺激装置は、次いで本明細書でより詳細に説明するように、解剖学的標的を刺激するために使用される刺激信号310を生成し得る。本明細書に記載の電気刺激を送達するために使用され得る本コントローラ及び他のコントローラは、参照により全体が本明細書にすでに組み込まれる、米国特許出願第13/441,806号に記載されている。
【0038】
マイクロ刺激装置の長さ及び幅は、マイクロ刺激装置の一部を、涙腺内部またはその周辺に、または刺激されることが所望される涙腺または、限定されるものではないが、鼻毛様体神経または前篩骨神経などの、神経などの所望の組織に隣接して配置することができるように選択され得る。より詳細な内容は、参照により全体が本明細書にすでに組み込まれる、米国特許出願第13/441,806号、参照により全体が本明細書にすでに組み込まれる、米国特許出願第14/256,915号、及び2014年3月12日に出願された「Implant Delivery Devices、Systems、 and Methods」と題する、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願第14/207,072号に記載されている。
【0039】
マイクロ刺激装置は、送達システムを使用して患者に注入可能であり得る。送達システムは、挿入装置(マイクロ刺激装置が着脱自在に取り付け可能な導管、軸など)及び/または切開ツールを含み得る。いくつかの変形例では、挿入装置は12ゲージ以上の大きさの針である。他の変形例では、挿入装置はカニューレを含む。いくつかの変形例では、挿入装置はピストン組立体を備え得て、ピストン組立体はいくつかの変形例では、バネ式であり得る。マイクロ刺激装置を挿入装置に装填し、挿入装置を挿入経路に挿入し得る。眼角に解剖学的ランドマークを使用してマイクロ刺激装置が眼領域に埋め込まれるいくつかの変形例では、送達装置(たとえば、針)を涙腺に近接して配置し得て、マイクロ刺激装置は、送達装置を使用して配置され得る。解剖学的ランドマークには、限定するものではないが、外眼角、眼瞼縁、涙腺の眼瞼葉、眼窩縁、眼窩の上外側面の骨の隆起、血管床などが含まれる。いくつかの変形例では、まぶたを持ち上げ、まぶたの下の結膜を通る挿入経路を形成し、マイクロ刺激装置を挿入経路に進行させることによって、マイクロ刺激装置を埋め込み得る。挿入経路は、切開ツールを使用して形成し得る。いくつかの変形例では、挿入経路は、挿入ツールの切開要素を使用して形成し得る。いくつかの変形例では、挿入経路は、骨膜と眼窩骨との間に形成され得る。他の変形例では、挿入経路は、骨膜と涙腺との間に形成され得る。マイクロ刺激装置は、最小侵襲の取り出しを容易にするための1つまたは複数の機能を有し得る。参照により全体が本明細書にすでに組み込まれる、米国特許出願第14/207,072号には、本明細書に記載のマイクロ刺激装置を埋め込むために使用され得る挿入装置のその他の変形例が記載されている。
【0040】
例示的な携帯型刺激装置
図4A〜4Cはそれぞれ、携帯型刺激装置400の例示的な変形例の斜視図、断面背面図、及び断面側面図をそれぞれ示す。
図4A〜4Cに示すように、刺激装置400は、刺激装置本体402及び刺激装置プローブ404を備え得る。一般に、刺激装置本体402は、患者に送達され得る、本明細書でより詳細に説明されている、刺激を生成するように構成され得る。刺激装置本体402は、前部ハウジング438、後部ハウジング440、及び近位ハウジング442を備え得て、それらを組み合わせて本体空洞454を画定し得る。本体空洞454は、制御サブシステム436及び電源452を含み得て、全体として刺激を生成及び制御し得る。
【0041】
刺激は、刺激装置プローブ404を介して患者に送達され得る。いくつかの変形例では、刺激装置本体402及び刺激装置プローブ404は、可逆的に取り付け得る。刺激装置400の一部または全部は使い捨て可能であり得て、刺激装置400の一部または全部は再使用可能であり得る。たとえば、刺激装置プローブ404が刺激装置本体402に取り外し可能に接続される変形例では、刺激装置本体402は再使用可能であり得て、刺激装置プローブ404は使い捨て可能であり得て、定期的に交換され得る。これらの変形例のいくつかでは、装置は、刺激装置プローブが刺激装置本体から切り離された後に刺激装置本体に再接続されるときに、患者への刺激送達を防止する無効化機構を備える。これに加えてまたはこれに代えて、装置は、刺激装置プローブが刺激装置本体から切り離された後に刺激装置本体に再接続されることを防止するロックアウト機構を備え得る。いくつかの変形例では、装置は、取り外し可能な保護キャップをさらに備える。
【0042】
刺激装置プローブは、少なくとも1つの鼻挿入プロングを含み得て、鼻挿入プロングは患者の鼻腔に少なくとも部分的に挿入されるように構成され得る。
図4A〜4Cに示される携帯型刺激装置の変形例では、刺激装置プローブ404は、2つの鼻挿入プロング406及び408を備え得る。鼻挿入プロングは、患者の鼻孔に挿入されたとき自動調整し得る。刺激装置プローブ404は、患者がプローブ404をより容易に掴むことを可能にし得る、隆起部420をさらに含み得る。
【0043】
各鼻挿入プロングは、少なくとも1つの電極を含み得る。
図4A〜4Cに示すように、プローブ404は、鼻挿入プロング406上に第1の電極410及び鼻挿入プロング408上に第2の電極412を含み得る。
図4Bの刺激装置400の断面図に示すように、電極410及び412は、それぞれプロング406及び408内に配置されたリード線430及び432に接続され得る。リード線430及び432はそれぞれ、次いでコネクタ422及び424に接続され得る。コネクタ422及び424は、近位ハウジング442のルーメン408及び410を貫通し得て、制御サブシステム436及び電源452に直接的または間接的に接続し得る。したがって、電気刺激は、制御サブシステム436からコネクタ422及び424を通り、リード430及び432を通り、ならびに電極410及び412を通って移動し得る。いくつかの変形例では、電極は、2015年2月24日に出願された「Polymer Formulation for Nasolacrimal Stimulation」と題する、参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願第14/630,471号に詳細に記載されているヒドロゲルを含む。
【0044】
刺激装置本体は、以下でより詳細に説明するような、1つまたは複数の刺激のパラメータを調節するための1つまたは複数の操作機構を備えるユーザー・インターフェースを備え得る。操作機構は、制御サブシステムに情報を提供し得て、制御サブシステムは、プロセッサ、メモリ、及び/または刺激サブシステムを含み得る。いくつかの変形例では、操作機構は、たとえば、
図4A及び
図4Cでは414及び416として示されている、第1及び第2のボタンを備え得る。いくつかの変形例では、第1ボタンを押すことによって刺激装置をオンにして、及び/または刺激波形を変更し得て、第2ボタン416を押すことによって刺激装置をオフにして、及び/または刺激波形を変更し得る。これに加えてまたはこれに代えて、ユーザー・インターフェースは、1つまたは複数の(たとえば、光、音、振動などに基づく)フィードバック要素を備え得る。示されているように、ユーザー・フィードバック要素は、インジケータ418として
図4Aの変形例に示される、光ベースのインジケータを備え得て、ユーザーに情報を提供し得る。本明細書に記載の電気刺激を送達し得る本刺激装置及びその他の携帯型刺激装置は、参照により全体が本明細書にすでに組み込まれる、米国特許出願第14/256,915号に記載されている。
【0045】
波形
本明細書に記載の刺激装置によって送達される電気刺激波形は、特定の治療法及び/または特定の患者に合わせて適合され得る。本明細書に記載の波形は、双極、三極、四極、または高極性などの多極構成または遠位復帰を有する単極構成を介して送達され得ることを理解されたい。波形は、正弦波、準正弦波、方形波、鋸歯状波、傾斜波または三角波、それらの短縮版バージョン(たとえば、ある特定の振幅に達したときに波形が安定するバージョン)などであり得る。
【0046】
本明細書でより詳細に説明するように、電気刺激波形のパターン化が使用される場合、形状、周波数、振幅、及びパルス幅などの波形パラメータが変化され得る。波形の周波数、パルス幅及び/または振幅は、鋸歯状、正弦波状などのように線形に、指数関数的に変化され得るか、またはランダムに変化され得る。刺激はパターン化の一つとして中断させることもできる。すなわち、刺激は、たとえば、1秒オン/1秒オフ、5秒オン/5秒オフなどのオン/オフ状態にすることができる。また、律動的または非決定的、非律動的な様式の波形形状(たとえば、矩形と三角形と指数)の変化も使用し得る。したがって、波形パターン化の多数の変形を実現することができる。反復的な方法で、これらのパラメータ変化を経時的に組み合わせることも、パターン化と見なすことができることを理解されたい。場合によっては、ランダムなパターン化が使用され得る。パターン化は、適用された刺激に対する患者の慣れを防止するのに役立ち得る(すなわち、刺激に対する患者の反応が刺激中に減少するのを防止するのに役立ち得る)。
【0047】
場合によっては、副作用を最小限に抑えるために刺激波形を構成することが所望され得る。場合によっては、痛み、不快感、または粘液産生をもたらし得る、小さい神経(たとえば、a-δ線維、c線維、交感神経線維及び副交感神経線維)の刺激を減少させながら、治療効果を促進させ得る、直径が大きい神経(たとえば、三叉神経の求心性線維)の刺激を促進することが所望され得る。一般に、パルス幅が小さい場合、直径が大きい神経の活性化の閾値は、小さい神経線維の活性化の閾値よりも低くなり得る。反対に、パルス幅が大きい場合、直径が大きい神経の活性化の閾値は、小さい神経線維の活性化の閾値よりも高くなり得る。したがって、場合によっては、好ましくは、直径が大きい神経を作動させるパルス幅を選択することが所望され得る。いくつかの変形例では、パルス幅は50μs〜約1200μsであり得る。別の例として、ある特定の波形は、歯に伝わる三叉神経の枝(たとえば、CN V2)の活性化を最小にし得る。これらは、パルス幅が30μs〜300μs、周波数が10Hz〜150Hz、及び振幅が0.1mA〜5mAの範囲の波形を含み得る。
【0048】
刺激は、規則的または不規則な間隔で定期的に送達され得る。刺激バーストが、規則的または不規則な間隔で定期的に送達され得る。刺激の振幅、パルス幅、または周波数は、刺激の過程で変更され得る。たとえば、刺激振幅は、一定期間内に低振幅から高振幅にランプさせ得る。その他の変形例では、刺激振幅は、一定期間内に高振幅から低振幅にランプさせ得る。刺激パルス幅もまた、一定期間内に低いパルス幅から高いパルス幅にランプさせ得る。刺激パルス幅は、一定期間内に高いパルス幅から低いパルス幅にランプさせ得る。ランプ期間は、1秒〜15分の間であり得る。あるいは、ランプ期間は5秒〜30秒の間であり得る。
【0049】
本明細書に記載のパターン化された刺激波形は、患者の快適性を高めるために使用され得て、及び/または刺激の有効性を改善するために使用され得て、したがって、以下に、快適性及び/または有効性を高めるために単独または組み合わせて使用し得る波形パラメータ説明する。
【0050】
形状
いくつかの例では、波形形状またはその変化は、刺激の快適性及び/または有効性に影響を及ぼし得る。刺激装置(電極装置)がパルスベースの電気波形を生成するように構成されている場合、パルスは、任意の適切なパルス(たとえば、方形パルス、ヘーバーサインパルスなど)であり得る。これらの波形によって送達されるパルスは、二相性、交互に変わる単相性、または単相性などであり得る。パルスが二相性である場合、パルスは、反対極性(たとえば、第1の位相及び第1の位相と反対の極性を有する電荷平衡相)を有する1対の単相部を含み得る。二相パルスの各相は、電圧制御または電流制御のいずれかであり得る。いくつかの変形例では、二相パルスの第1の位相及び電荷平衡位相の両方を電流制御し得る。他の変形例では、二相パルスの第1の位相及び電荷平衡位相の両方を電圧制御し得る。さらに他の変形例では、二相パルスの第1の位相は電流制御され得て、二相パルスの第2の位相は電圧制御され得る。またはその逆もあり得る。いくつかの例では、電流制御両側刺激と電圧制御電荷平衡との組み合わせは、片側刺激を可能にし得て、本明細書に記載されるように、波形形状を変更することによって、刺激の領域間、たとえば、電極が各鼻孔に配置されているときの鼻孔間の切り替えを可能にし得る。
【0051】
波形が二相パルスを含むいくつかの変形例では、二相パルスによって送達される正味電荷がほぼゼロになるように、二相パルスを電荷平衡にすることが所望され得る。いくつかの変形例では、第1の位相及び電荷平衡位相が同じパルス幅及び振幅になるように、二相パルスは対称であり得る。対称二相性パルスを有することにより、たとえば、各鼻腔に同じタイプの刺激を送達させることが可能になり得る。第1の位相のパルスは、鼻の第1の側を刺激し得て(その一方で、鼻の第2の側に電荷平衡相を提供する)、逆位相のパルスは、鼻の第2の側を刺激し得る(その一方で、鼻の第1の側に電荷平衡相を提供する)。
【0052】
波形が二相パルスを含む他の変形例では、二相パルスは非対称であり得て、第1のパルスの振幅及び/またはパルス幅は、電荷平衡相の振幅及び/またはパルス幅と異なり得る。二相性パルスが非対称であっても、二相性パルスは電荷平衡され得る。たとえば、陰極パルスは、陽極パルスよりも振幅が小さいが、陽極パルスよりも長い持続時間を有し得るか、または陰極パルスは、陽極パルスよりも振幅が大きいが、陽極パルスよりも短い持続時間を有し得る。両方の場合において、二相パルスによって送達される正味の電荷がほぼゼロになるように、電荷注入(振幅と持続時間とを逓倍する)は各パルスで等しくなり得る。
【0053】
波形の形状は、電極の近くの組織を優先的に活性化するように変更し得る。たとえば、
図5A〜5Cは、2つの電極のうちの1つの電極の近くの組織を優先的に活性化するように構成された例示的な波形を示し、優先的な活性化は、経時的に一方の電極の近くから他方の電極の近くに移動し得る。刺激装置が、各鼻孔に電極を有するように構成された携帯型刺激装置である変形例では、たとえば、この優先的な活性化は、2つの鼻孔のうちの1つの組織の優先的な活性化を可能にし得て、これは経時的に変化し得る。たとえば、
図5Aは、経時的にパルスのアスペクト比(振幅:持続時間)が変化する二相電荷平衡波形518の変動を示す。示されているのは、先頭の陰極パルスが、後続の陽極パルスと比較してより大きい振幅及びより短い持続時間を有する、第1のパターンを有する波形である。このパターンは、510及び514で示される時間周期に見られる。波形は、先頭の陰極パルスが、後続の陽極パルスと比較してより小さい振幅及びより長い持続時間を有する、第2のパターンを有する。このパターンは、512及び516で示される時間周期に見られる。各時間周期は任意の適切な持続時間を有し得て、したがって任意の適切な数のパルスを含み得ることを理解されたい。一例として、各時間周期は約1秒間、持続し得る。他の例では、各時間周期は1秒未満、約1〜約5秒間、約5〜約10秒間、約10〜約20秒間、またはそれ以上、持続し得る。
【0054】
いくつかの変形例では、波形は2つのアスペクト比の間で急激に形を遷移し得る。他の変形例では、遷移は段階的になり得る。陰極パルスのアスペクト比は経時的に増加し、次いで経時的に減少し得て、陽極パルスのアスペクト比は経時的に減少し得て、経時的に増加し得る。
図5Bは、アスペクト比の間で段階的に遷移する波形520の例を示す。これらの増減は、線形の増減、または正弦波の増減などの任意の適切な形状を有し得る。他の変形例では、遷移により、陰極パルスのアスペクト比が経時的に段階的に増加し、陽極パルスのアスペクト比が経時的に段階的に減少し、次いで陰極パルスのアスペクト比が急激に減少し、陽極パルスのアスペクト比が急激に増加する、鋸歯形状になり得る。
【0055】
いくつかの変形例では、陰極パルスが第1のパターンと陽極パルスが第1のパターンとの間の前後で極性が切り替えられる。たとえば、
図5Cは、そのような刺激波形522の例示的なバージョンを示す。そこに示されるように、502及び506によって示される時間周期は陰極パルス、次に陽極パルスを有し得て、504及び508によって示される時間周期は陽極パルス、次に陰極パルスを有し得る。各時間周期は任意の適切な期間を有し得ることを理解されたい。一例として、各時間周期は約1秒間、持続し得る。その他の例では、各時間周期は1秒未満、約1〜5秒間、約5〜10秒間、約10〜20秒間、またはそれ以上、持続し得る。いくつかの変形例では、刺激波形が2つの陽極パルスと2つの陰極パルスの繰り返しパターンを含むように、各時間周期が単一の一対のパルスの間、持続し得る。
【0056】
可変振幅:持続時間のアスペクト比を有するパターンは、均一な電荷注入を有し得るが、2つの電極のうちの1つの電極の近くで組織を優先的に活性化し得る。すなわち、先頭の陰極パルスが陽極パルスよりも振幅が大きく、持続時間が短い場合、波形は陰極の近くの組織を優先的に活性化し得て、先頭の陰極パルスが陽極パルスより振幅が小さく、持続時間が長い場合、波形は陽極電極の近くの組織を優先的に活性化し得る。本明細書で説明するようにアスペクト比を変更し、極性を切り替えることにより、流涙反応が増加し得る。これは、極性を切り替えることにより中枢神経系によって知覚されるような刺激の非線形加算を招くだけでなく、極性を切り替えることにより患者の刺激への適応が低下するためであり得る。
【0057】
周波数
ドライアイを治療するか、またはそれ以外の方法で組織を刺激することによって流涙反応を生成するために、本明細書に記載の刺激装置は、標的組織(たとえば、神経)を刺激するのに適した周波数で1つまたは複数の波形を生成するように構成され得る。周波数は、刺激の快適性及び/または有効性に影響を及ぼし得る。一般に、周波数は、好ましくは約0.1Hz〜約200Hzの間である。これらの変形例のいくつかでは、周波数は、好ましくは約10Hz〜約200Hzの間である。これらの変形例のいくつかでは、周波数は、好ましくは約30Hz〜約150Hzの間である。これらの変形例の他のものでは、周波数は、好ましくは約50Hz〜約80Hzの間である。これらの変形例の他のものでは、周波数は、好ましくは約30Hz〜約60Hzの間である。いくつかの変形例では、周波数は、約1.5Hz、約10.25Hz、約70Hz、約150Hz、約25Hz、約27.5Hz、約30Hz、約32.5Hz、約35Hz、約37.5Hz、約40Hz、約42.5Hz、約45Hz、約47.5Hz、約50Hz、約52.5Hz、約55Hz、約57.5Hz、約60Hz、約62.5Hz、または約65Hzであり得る。いくつかの変形例では、約145Hz〜約155Hzの間のような高い周波数は、各パルスが標的組織を刺激/活性化するには高すぎ得る。結果として、刺激は、患者により偶発性の要素を有すると解釈され得て、患者の慣れを軽減するのに役立ち得る。本明細書に記載される周波数は、標的組織を刺激して涙腺を活性化させて涙を生成する反射回路を開始させるのに適し得て、及び/または涙腺を支配する遠心性線維を直接動かすのに適し得る。いくつかの例では、本明細書に記載のように、特定の解剖学的標的の優先的な活性化のために周波数を選択し得る。
【0058】
振幅
ドライアイを治療するか、またはそれ以外の方法で組織を刺激することによって流涙反応を生成するために、本明細書に記載の刺激装置は、標的組織(たとえば、神経)を刺激するのに適した電流を送達するように構成され得る。最大振幅またはその変化は、刺激の快適性及び/または有効性に影響を及ぼし得る。刺激が二相性パルスを含み、二相性パルスの第1の位相が電流制御される場合、第1の位相は、好ましくは約1.0mA〜約10mAの振幅を有し得る。これらの範囲内の振幅は、標的組織を刺激するのに十分に高くあり得るが、組織の著しい加熱、組織の焼灼などを回避するのに十分に低くあり得る。いくつかの変形例では、振幅は約1.0mA〜約5.0mAの間であり得る。他の変形例では、第1の位相は、約0.1mA、約0.2mA、約0.3mA、約0.4mA、約0.5mA、約0.6mA、約0.7mA、約0.8mA、約0.9mA、または約1.0mAの振幅を有し得る。いくつかの変形例では、振幅は可変であり得る。たとえば、振幅は、約1.3mA〜約1.5mA、約2.2mA〜約2.5mA、約3.2mA〜約3.7mA、約4.3mA〜約5.0mAの間で変化し得る。二相パルスの第1の位相が電圧制御される場合、第1の位相は、好ましくは、約10mV〜約100Vの間の振幅を有し得る。
【0059】
刺激装置がパルスベースの波形を送達するように構成されている場合、いくつかの変形例では、パルスの振幅は経時的に一定であり得る。他の変形例では、パルスの振幅は経時的に変化し得る。これにより、患者の調節を減少させ得る。いくつかの変形例では、パルスの振幅は、最小値から最大値まで(直線的に、指数関数的に、など)増加し得て、最小値まで低下し得て、必要に応じて繰り返し得る。いくつかの変形例では、パルスの振幅は、正弦波プロファイルに応じて変化し得る。別の変形例では、
図6Aに示すように、振幅は、単一パルスについて定期的にベースライン振幅(A)から高振幅(B)に増加し得る。さらに別の変形例では、
図6B〜6Cに示すように、パルスの振幅は、定期的に2つの低振幅(A、B)の間で増減するパターンに従い、定期的に単一パルス(
図6B)または複数のパルス(たとえば、2つのパルス)(
図6C)について高振幅(C)に増加し得る。さらに別の変形例では、
図6Dに示すように、高振幅の1つのパルス(または複数のパルス)の前に、短い休止(すなわち、電流送達なし)を先行させ得る。これらのタイプの振幅変化の各々は、単独で、または任意の他のタイプの振幅変化と組み合わせて実施し得て、患者の適応を減少させ得る。
【0060】
振幅が経時的に変化するいくつかの変形例では、振幅は、約0.1Hz〜約5Hzの間、約1Hz〜約5Hzの間、約1Hz〜2Hzの間、約2Hz〜3Hzの間、約3Hz〜4Hzの間、または約4Hz〜約5Hzの間などの、患者の適応を減少させる、または患者の快適性を高めるのに適した周波数で変化し得る。いくつかの変形例では、振幅は、約1.0Hz、約1.1Hz、約1.2Hz、約1.3Hz、約1.4Hz、約1.5Hz、約1.6Hz、約1.7Hz、約1.8Hz、約1.9Hz、約2.0Hz、約2.1Hz、約2.2Hz、約2.3Hz、約2.4Hz、約2.5Hz、約2.6Hz、約2.7Hz、約2.8Hz、約2.9Hz、約3.0Hz、約3.1Hz、約3.2Hz、約3.3Hz、約3.4Hz、約3.5Hz、約3.6Hz、約3.7Hz、約3.8Hz、約3.9Hz、または約4.0Hzの周波数で変化し得る。他の変形例では、刺激波形は、変調される高周波信号(たとえば、正弦波)であり得て、上述の範囲のビート周波数で変調され得る。そのような変形例では、搬送周波数は、約100Hz〜約100kHzの間であり得る。
【0061】
パルス幅
ドライアイを治療するか、またはそれ以外の方法で組織を刺激することによって流涙反応を生成するために、本明細書に記載の刺激装置は、第1の位相が好ましくは約1μs〜約10msの間のパルス幅を有する波形を送達するように構成され得る。これらの変形のいくつかでは、パルス幅は、約10μs〜約100μsの間であり得る。他の変形例では、パルス幅は、約100μs〜約1msの間であり得る。さらに他の変形例では、パルス幅は、約0μs〜約300μsの間であり得る。さらに他の変形例では、パルス幅は、約0μs〜500μsの間であり得る。上述のように、好ましくは、直径が大きい神経を作動させるパルス幅を選択することが所望され得る。いくつかの変形例では、パルス幅は50μs〜約1200μsであり得る。別の例として、30μs〜300μsのパルス幅は、歯に伝わる三叉神経の枝(たとえば、CN V2)の活性化を最小にし得る。
【0062】
いくつかの変形例では、パルスの振幅は経時的に一定であり得る。その他の変形例では、パルス幅は経時的に変化し得る。経時的なパルス幅変化は、刺激の有効性及び/または快適性を増加させ得る。いくつかの変形例では、パルス幅は、最小値から最大値まで(直線的に、指数関数的に、など)増加し得て、最小値まで低下し得て、必要に応じて繰り返し得る。いくつかの変形例では、パルス幅は、正弦波プロファイルに応じて変化し得る。別の変形例では、
図7Aに示すように、パルス幅は、単一パルスについて定期的にベースラインパルス幅(A)から長いパルス幅(B)に増加し得る。さらに別の変形例では、
図7B〜7Cに示すように、パルス幅は、定期的に2つの短いパルス幅(A、B)の間で増減するパターンに従い、定期的に単一パルス(
図7B)または複数のパルス(たとえば、2つのパルス)(
図7C)について長いパルス幅(C)に拡張し得る。さらに別の変形例では、
図7Dに示すように、より長いパルス幅の1つのパルス(または複数のパルス)の前に、短い休止(すなわち、電流送達なし)を先行させ得る。これらのタイプのパルス幅変化の各々は、単独で、または任意のその他のタイプのパルス幅変化と組み合わせて実施し得る。パルス幅変化の任意の形状では、パルス幅は、任意の適切な周波数で変化し得る。いくつかの変形例では、パルス幅は、約0.1Hz、約0.2Hz、約0.3Hz、約0.4Hz、約0.5Hz、約0.6Hz、約0.7Hz、約0.8Hz、約0.9Hz、約1Hz、約1.1Hz、約1.2Hz、約1.3Hz、約1.4Hz、または約1.5Hzで変化し得る。いくつかの変形例では、刺激中の患者の快適性を高めるために、約0.5Hz〜1Hzの間のレートでのパルス幅の変化が所望され得る。
【0063】
いくつかの変形例では、パルス幅の増減は、刺激装置によって実現される関数によって定義され得る。たとえば、パルス幅は、パルス幅が指数関数的に変化するような関数によって定義され得る。一つの変形例では、パルス幅を定義する関数は、2つの位相、すなわち、先頭パルスのパルス幅が経時的に増加する第1の位相と、先頭パルスのパルス幅が経時的に減少する第2の位相とを含み得る。第1の位相では、先頭パルスのパルス幅は、指数関数に従って最大パルス幅に近づき、時間tにおいて、PW{t}は、以下の式で定義される。
式中、PW
maxは、最大許容パルス幅、PW
minは最小許容パルス幅、τは時間定数である。
【0064】
所定の時間量(時間定数τの倍数)が経過すると、パルス幅変化が第2の位相に入り得る。第2の位相では、先頭パルスのパルス幅は、次の指数式に従って、その最大値から最小値まで指数関数的に減衰する。
【0065】
所定の時間量(時間定数τの倍数)が経過した後、パルス幅変化が第1の位相に再び入り得て、サイクルが繰り返され得る。二次(電荷平衡)パルスのパルス幅は、電荷の完全な平衡を保つために、それに応じて増減される。PW
max、PW
min、及びτは、本明細書に記載のパルス幅を達成するための任意の適切な値を有し得るが、一例として、PW
maxは300μs、PW
minは0μs、τは1/5μsであり得る。他の変形例では、たとえば、PW
maxは、約100μs、約200μs、約300μs、約400μs、または約500μsであり得て、PW
minは、約0μs、約10μs、約50μs、または約100μsであり得て、τは、約1/3μs、約1/4μs、約1/5μs、または約1/6μsであり得る。指数関数的に増減するパルス幅を定義する例示的な関数を
図8に示す。
【0066】
オン/オフ期間
いくつかの例では、本明細書に記載される波形は連続的な様式で送達され得て、他の例では、波形は、患者の適応を減少させ得る、オン期間及びオフ期間を有する非連続的な様式で送達され得る。例示的なオン/オフ持続時間には、限定されないが、1秒オン/1秒オフ、1秒オン/2秒オフ、2秒オン/1秒オフ、5秒オン/5秒オフ、0.2秒オン/0.8秒オフ、1秒未満オン/10秒未満オフが含まれる。
【0067】
例示的な波形
上記の波形パラメータのいずれかとパラメータの変動を組み合わせて、本明細書に記載のパターン化された波形を生成し得て、これらの波形は、本明細書に記載の刺激装置のいずれかによって送達され得ることを理解されたい。たとえば、波形が二相性パルスを含む変形例では、二相性パルスは、任意の適切な周波数、パルス幅、及び振幅を有し得る。刺激振幅、パルス幅、及び周波数は、パルスごとに同じであり得て、または本明細書でより詳細に説明するように、経時的に変化し得る。これらのパラメータの組み合わせは、刺激の有効性及び/または快適性を増加させ得て、場合によっては、本明細書でより詳細に記載されるように、個々の患者によって異なり得る。装置タイプによって分類された例示的なパターン化された波形パラメータを以下の表1に列挙する。
表1 例示的な波形パラメータ
【0068】
波形が交互に変わる単相パルス波形である変形例では、刺激装置によって送達される各パルスは単一位相を有し得て、連続パルスは交互に変わる極性を有し得る。一般に、交互に変わる単相パルスは、所与の周波数(30Hz〜80Hzの間などの、上記に列挙した1つまたは複数の周波数など)で、対で送達され、第1のパルスと第2のパルスとの間のパルス間の間隔(たとえば、約100μs、50μs〜150μsなど)を有し得る。各パルスは、電流制御または電圧制御であり得て、連続パルスは、両方とも電流制御または両方とも電圧制御である必要はない。パルス波形が荷電平衡されているいくつかの変形例では、波形は、一対の単相パルスの送達後の受動的な電荷平衡された位相を含み得て、波形がパルス間の電荷差を補正することを可能にし得る。
【0069】
電気刺激波形を送達するように構成された刺激装置が、鼻中隔の両側に電極を設置するように配置されるとき、交互に変わる単相パルスは、鼻組織の両側刺激を促進し得る。神経によって、陽極パルス及び陰極パルスに対する反応が異なり得るため、第1の位相のパルスは、鼻の第1の側を刺激し得て(その一方で、鼻の第2の側に電荷平衡相を提供する)、逆位相のパルスは、鼻の第2の側を刺激し得る(その一方で、鼻の第1の側に電荷平衡相を提供する)。パルス間の間隔は、逆位相パルスによって反転される前に、標的神経を活性化/分極化させるために、第1の位相パルスによって提供される刺激のための時間を与え得る。
【0070】
患者に最適化された波形
発明者らの実験により、いくつかの例では、特定の患者のための1つまたは複数の患者に最適化された波形の識別によって、パターン化された波形を使用した刺激により生じる流涙が増加し得ることが見出された。患者に最適化された波形は、本明細書に記載の波形パラメータの組み合わせを含み得る。したがって、患者に最適化された波形を識別する方法が望ましい。本発明者らの実験により、感知された感覚異常は流涙に強く関連することも見出された。したがって、患者の感覚異常の知覚が患者に最適化された波形の識別に使用され得る。眼領域に埋め込まれたマイクロ刺激装置を有する患者の患者に最適化された波形を得るための例示的な方法が、
図9に示されている。刺激の有効性を高める(たとえば、流涙を増大させる)ために、各個人に本方法を実行することが所望され得る。
【0071】
示されているように、本明細書に記載の刺激装置を使用して患者に波形を含む電気刺激を送達することによって患者に最適化された波形であるかどうかを決定するために波形を評価し得る。本方法は、最初に、最も低い振幅及び/またはパルス幅で波形を送達し、振幅及び/またはパルス幅を増加させながら、患者に対して感覚に対するフィードバックを求めることを含み得る。方法は、患者が電気刺激の送達中に何らかの感覚を感じるかどうかを評価することを含み得る。感じない場合、異なる波形(たとえば、周波数、振幅、パルス幅、オン/オフ期間、またはこれらのパラメータの時間変化などの異なるパラメータの組み合わせを有する)が選択され得る。方法は、患者が不快感を覚えていないことを保証することをさらに含み得る。患者が不快感を覚えている場合、新しい波形で方法を再開するか、または振幅及び/またはパルス幅を減少させて不快感を軽減させ得る。同様に、方法は、波形を適用している間の感覚が、患者にとって快適であることを保証することを含み得る。振幅及び/またはパルス幅は、患者の快適性を実現するように調整され得る。快適性は、患者の開眼及び閉眼の両方で評価され得る。
【0072】
患者が、その波形をその日に感じられた最も快適かつ/または有効な波形だと知覚した場合、及び/または患者が、目が濡れていると感じた場合、及び/または患者が感覚異常を知覚した場合、すなわち、より具体的には、くすぐり感と振動の両方が、まぶたの中で動いていると知覚した場合、その波形は患者に最適化された波形として指定され得る。患者が、まぶたのくすぐり感を知覚するが、振動を知覚しない場合、くすぐり感及び/または振動の知覚の増大を達成するために振幅及び/またはパルス幅を調整し得る。患者が、振動を知覚するが、くすぐり感を知覚しない場合、振動が(たとえば、まぶたと眉毛の間を)移動する感覚の増大を達成するために振幅及び/またはパルス幅を調整し得る。また、患者が、刺激の送達が終了した後に、感覚(たとえば、くすぐり感または振動)を感じることも所望され得る。識別された患者に最適化された波形のそれぞれの場合において、さらに低い振幅及び/またはパルス幅を使用して同じ感覚を達成できるかどうかを判定するために、さらに低い振幅及び/またはパルス幅を試験し得る。
【0073】
図9の方法は、眼領域に配置された埋め込み型刺激装置を有する患者に関して説明しているが、同様の方法が、別の領域(たとえば、鼻領域)の埋め込み型刺激装置用または携帯型刺激装置用に1つまたは複数の患者に最適化された波形を識別するために使用し得ることを理解されたい。1つまたは複数の患者に最適化された波形が識別されると、その波形を送達するように刺激装置を構成し得る。いくつかの変形例では、識別された波形を送達するように刺激装置を構成するために外部装置を使用し得る。システムが、受動刺激回路を有する埋め込み型刺激装置で使用するためのコントローラを含む変形例では、識別された刺激波形を発生させる出力信号を生成するように構成されたコントローラを使用し得る。
【0074】
複数の波形を有する装置
臨床医及び/または患者が、複数の利用可能な波形から所望の波形を選択し得るように、本明細書に記載の刺激装置のいくつかの変形例は、複数の波形で構成され得る。たとえば、刺激装置は、チップ上に保存された複数の刺激波形を含み得る。たとえば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、または10個を超える刺激波形をチップ上に保存し得る。1つの変形例では、2〜10個の刺激波形がチップ上に保存される。その他の変形例では、2〜8個の刺激波形、または3〜5個の刺激波形を装置チップ上に保存し得る。いくつかの変形例では、刺激装置に保存される波形の好ましいセットは、上記の方法を介するなど、特定の患者のための様々な刺激波形の初期試験に基づいて臨床医によって予め選択され得る。本明細書に記載されているように、本発明者らの実験により、感知された感覚異常が流涙に強く関連することが見出されているので、保存された刺激波形が患者の強い感覚異常を誘発する刺激波形であることが有用であり得る。他の変形例では、刺激装置は、個々の患者に固有のものではない複数の刺激波形で予め構成され得る。
【0075】
いくつかの変形例では、その日に提供されるすべての刺激について、保存された複数の波形から異なる波形をランダムに選択し得る。毎回、異なる波形をランダムに選択することにより、患者が任意の特定の刺激パターンに対する耐性を発生させるリスクが低下し得る。別の実施形態では、マルチプレクサを使用して、内部に保存された波形の異なる組み合わせを提供し、異なる繰り返し波形から断片を組み合わせるときに「準非反復」波形を形成することができる。異なる波形を1つの合成波形に多重化することにより、波形への慣れを潜在的にさらに制限することができる。
【0076】
いくつかの変形例では、患者は、たとえば、本明細書に記載のユーザー・インターフェースのようなユーザー・インターフェースを使用して、刺激装置に保存された複数の刺激波形の中から選択的に選択することを可能にし得る。そのようなユーザー・インターフェースを有する変形例では、ユーザー・インターフェースは、ユーザー(すなわち、患者)が刺激波形を制御することを可能にし得る1つまたは複数の操作機構を備え得る。たとえば、ユーザー・インターフェースは、限定されないが、ユーザーが刺激波形を変更することを可能にし得る、ボタン、スライダ、レバー、タッチパッド、ノブ、またはハウジングの変形可能/スクイズ可能部分などの1つまたは複数の構造を含み得る。
【0077】
異なる波形は、患者がある範囲の強度にわたるものとして知覚するように構成され得る。刺激装置が異なる形状を有する波形を送達するように構成された変形例では、患者は、異なる形状を有する波形を選択することによって、本明細書に記載の波形によって優先的に刺激される組織を変更する(たとえば、陰極パルス先行を有する波形から陽極パルス先行を有する波形に切り替える)ことが可能になり得る。いくつかの変形例では、患者が2回目または以降の治療期間に刺激装置をオンにすると、刺激装置は、患者によって以前に選択された波形(たとえば、以前の治療セッション中に使用された波形、複数の治療セッション中に最もよく使用された波形など)を最初にオンにし得る。
【0078】
たとえば、携帯型鼻刺激装置を使用する場合、ユーザーは、刺激装置の一部を鼻組織に接触させた後、複数の刺激波形の間で変化させることによって、刺激の知覚強度を増大し得る。不快感を引き起こすことなく、刺激が好ましい感覚異常(たとえば、刺痛、くすぐり感、穿痛)を引き起こすまで、患者が刺激の強度を増大させることが所望され得る。したがって、患者が、適切な刺激強度を自己決定することを可能にし得て、刺激を自己調整して所望の結果(たとえば、涙液生成)を達成するのに有効な波形にすることを可能にし得る。不快感を最小限に抑えるために、ユーザーが刺激の強度をゆっくりと増大させることが所望され得る。一部の患者は、経時的に変化する感覚レベルを好む可能性がある。それらの患者は、強い感覚から始めた後に、弱い感覚にすることを望む可能性がある。それらの患者は、弱い感覚(たとえば、軽いくすぐり感)から初めた後に、より強い一時的な感覚(たとえば、非常に短時間の軽い不快感)にすることを好む可能性がある。強い感覚及び弱い感覚が変化する場合、一部の患者は、刺激中にくしゃみをしたいという感覚を減らすことが可能になり得る。
【0079】
1つの特定の例では、刺激装置は、本明細書に記載の形状変化、最大振幅変化、パルス幅変化、及び周波数変化のうちの1つまたは複数の組み合わせをそれぞれ有する複数の異なる波形を送達するように構成され得る。いくつかの例では、刺激装置は、
図4A〜4Cに対して上述の刺激装置400であり得る。他の例では、刺激装置は、
図2A〜2Cに対して上述したマイクロ刺激装置200であり得る。
【0080】
1つまたは複数の波形は、経時的に変化されるパルス形状を有し得る。
図10に示す変形例では、パルス形状は4つの周期の間で循環させ得る。第1の期間は、対称位相を有する二相電流制御波形を含み得る。第2の期間は、電流制御の第1の位相とそれに続く電圧制御の第2の位相とを含み得る。これは、1つの電極により近い位置を優先的に刺激するのに役立ち得る。第1の位相は、第1の電極によって供給され第2の電極によってシンクされる電流を有し得て、第2の位相は、第2の電極によって供給され第1の電極によってシンクされる電流を有し得る。第3の期間は、対称的な位相を有する二相電流制御波形を含み得る(すなわち、第3の期間は第1の期間と同じであり得る)。第4の期間は、電流制御の第1の位相とそれに続く電圧制御の第2の位相とを含み得る。第1の位相は、第2の電極によって供給され第1の電極によってシンクされる電流を有し得て、第2の位相は、第1の電極によって供給され第2の電極によってシンクされる電流を有し得る。各期間では、パルスは荷電平衡され得る。パルス形状は、約0.1Hzなどの任意の適切な周波数で変化され得る。
【0081】
1つまたは複数の波形は、経時的に変化されるパルス幅を有し得る。1つの変形例では、電流制御位相のパルス幅は、0μs〜300μsの間で変化され得る。変化は、
図11に示し
図8に対してより詳細に説明されるように、経時的なパルス幅の増減を記述する指数関数に従い得る。
【0082】
1つまたは複数の波形は、経時的に変化される最大振幅を有し得る。電流制御位相の振幅変化は、三角形、長方形、または他の適切な形状に近似させ得る。
図12A〜12Eには、様々な周波数での例示的な振幅変化が示されており、図は、長方形(
図12B)を有する振幅変化及び三角形(
図12C〜12E)に近似する振幅変化を示す。最大振幅は、約0.5Hz〜約3Hzの間などの任意の適切な周波数で変化され得る。いくつかの他の変形例では、
図12Aに示すように、最大振幅は一定であり得ることを理解されたい。
【0083】
図13A〜13Eは、それぞれ例示的な波形1310、1320、1330、1340、及び1350を示し、これらのパラメータのうちの1つまたは複数が経時的に変化され、各変化タイプは、その他のタイプの変化とは独立して同時に進行する。
図13Eのボックス1302、1304、及び1306は、形状、パルス幅、及び最大振幅の変化をそれぞれ強調するものである。いくつかの変形例(たとえば、
図13B〜13Eの変形例)では、形状、パルス幅、及び最大振幅の3つすべてが経時的に変化されるが、波形の他の変形例(たとえば、
図13Aの変形例)では、これらのパラメータの1つまたは2つだけが経時的に変化され得ることを理解されたい。
【0084】
図13A〜13Eの5つの波形は、刺激装置(たとえば、
図4A〜4Cに関して上述の刺激装置400、または
図2A〜2Cに関して上述のマイクロ刺激装置200)で利用可能であり得て、刺激装置は、患者が5つの異なる波形の中から選択するためにユーザー・インターフェース(たとえば、2つのボタンを含むインターフェース)を使用できるように構成され得る。装置のいくつかの変形例では、装置が治療期間に使用され、オフにされ、追加の治療期間のために再びオンにされると、装置は、使用された最後の刺激設定に自動的にオンし得る。
【0085】
図13Aに示す設定1は、30Hzの刺激周波数を有し得て、(
図12Aに示すように)0.7mAの最小刺激電流振幅、0.7mAの最大刺激電流振幅、したがって最大刺激電流振幅の無変動を有し得て、(
図11に示すように、指数関数に応じて立ち上がり及び立ち下がりが)0μsの最小パルス幅、300μsの最大パルス幅、1Hzのパルス幅変化周波数を有し得て、(0μsのパルス幅で)0μCの位相ごとの最小電荷注入量、(0.7mA及び300μsで)0.21μCの位相ごとの最大電荷注入量を有し得て、
図10に関して上述のように変化されるパルス形状を有し得る。
【0086】
図13Bに示す設定2は、37.5Hzの刺激周波数を有し得て、(
図12Bに示すように)1.33mAの最小刺激電流振幅、1.5mAの最大刺激電流振幅、0.17mAの最大刺激電流振幅の変動、及び2.1Hzの振幅変化周波数を有し得て、(
図11に示すように、指数関数に応じて立ち上がり及び立ち下がりが)0μsの最小パルス幅、300μsの最大パルス幅、1Hzのパルス幅変化周波数を有し得て、(0μsのパルス幅で)0μCの位相ごとの最小電荷注入量、(1.5mA及び300μsで)0.45μCの位相ごとの最大電荷注入量を有し得て、
図10に関して上述のように変化されたパルス形状を有し得る。
【0087】
図13Cに示す設定3は、45Hzの刺激周波数を有し得て、(
図12Cに示すように)2.17mAの最小刺激電流振幅、2.5mAの最大刺激電流振幅、0.33mAの最大刺激電流振幅の変動、及び2.6Hzの振幅変化周波数を有し得て、(
図11に示すように、指数関数に応じて立ち上がり及び立ち下がりが)0μsの最小パルス幅、300μsの最大パルス幅、1Hzのパルス幅変化周波数を有し得て、(0μsのパルス幅で)0μCの位相ごとの最小電荷注入量、(2.5mA及び300μsで)0.75μCの位相ごとの最大電荷注入量を有し得て、
図10に関して上述のように変化されたパルス形状を有し得る。
【0088】
図13Dに示す設定4は、52.5Hzの刺激周波数を有し得て、(
図12Dに示すように)3.2mAの最小刺激電流振幅、3.7mAの最大刺激電流振幅、0.5mAの最大刺激電流振幅の変動、及び2.8Hzの振幅変化周波数を有し得て、(
図11に示すように、指数関数に応じて立ち上がり及び立ち下がりが)0μsの最小パルス幅、300μsの最大パルス幅、1Hzのパルス幅変化周波数を有し得て、(0μsのパルス幅で)0μCの位相ごとの最小電荷注入量、(3.7mA及び300μsで)1.11μCの位相ごとの最大電荷注入量を有し得て、
図10に関して上述のように変化されたパルス形状を有し得る。
【0089】
図13Eに示す設定5は、60Hzの刺激周波数を有し得て、(
図12Eに示すように)4.3mAの最小刺激電流振幅、5.0mAの最大刺激電流振幅、0.67mAの最大刺激電流振幅の変動、及び2.5Hzの振幅変化周波数を有し得て、(
図11に示すように、指数関数に応じて立ち上がり及び立ち下がりが)0μsの最小パルス幅、300μsの最大パルス幅、1Hzのパルス幅変化周波数を有し得て、(0μsのパルス幅で)0μCの位相ごとの最小電荷注入量、(5.0mA及び300μsで)1.5μCの位相ごとの最大電荷注入量を有し得て、
図10に関して上述のように変化されたパルス形状を有し得る。
【0090】
これらのパラメータの組み合わせを有するパターン化された波形によって、単純なユーザー・インターフェース及び限られた数の設定を使用して、大きなパラメータ空間を単一の装置に提供し得る。これにより、各患者に対してパラメータが個別に調整される波形として、個々の患者に対して効果的またはほぼ効果的な波形を送達する限られた数のプリセット波形を有する単一の装置の能力が向上し得る。
【0091】
解剖学的標的
いくつかの変形例では、本明細書に記載の電気刺激を、涙腺組織を支配する1つまたは複数の神経に送達させることが所望され得る。いくつかの変形例では、本明細書に記載の電気刺激を、鼻粘膜に送達することが所望され得る。これは、鼻涙腺反射を活性化することによって流涙を引き起こし得る。いくつかの例では、標的領域は、鼻毛様体神経の前篩骨枝によって支配される組織を含み得る。別の変形例では、解剖学的構造は後篩骨神経である。いくつかの例では、鼻粘膜の標的領域は、鼻柱の上に位置し得る。これらの例のいくつかでは、標的領域は、鼻骨の下端付近(すなわち、鼻骨と上部外側軟骨との間の境界面の近く)であり得る。他の変形例では、標的領域は鼻柱であり得る。いくつかの変形例では、約20mm〜約35mmの間の刺激を患者の鼻腔に送達することが所望され得る。これらの変形のいくつかでは、患者の鼻腔内の約25mm〜約35mmの間に電極を配置することが所望され得る。刺激は、鼻腔の前方部分、鼻孔内及び鼻甲介の前方、いくつかの例では、中鼻甲介の前方の位置、または下鼻甲介の前方の位置で送達されることが所望され得る。いくつかの例では、一部分は鼻の前面に向けられるように刺激を向けることが所望され得る。刺激は、少なくとも部分的に、中隔またはその近くの組織を介して送達され得る。これにより、鼻中隔の後部に向かう神経の活性化を最小限に抑えながら、中隔の前面(たとえば、三叉神経の眼枝)の神経の選択的活性化が可能になり得て、歯を神経支配する神経の刺激から生じ得る副作用を低減させ得て、鼻漏を低減させ得る。いくつかの例では、嗅覚領域の刺激から生じ得る副作用を低減するように刺激を向けることも所望され得る。
【0092】
他の例示的な解剖学的構造には、電気的に刺激され得る流涙または腺の血管拡張の過程に関連する患者の神経、筋肉、粘膜または粘膜下組織(たとえば、鼻または鼻腔の粘膜または粘膜下)、無毛及び有毛皮膚の感覚細胞、腺またはその他の構造が含まれ得る。たとえば、解剖学的構造には、限定されないが、涙腺、1つまたは複数のマイボーム腺、涙管、皮膚受容体(機械受容体、マイスナー小体、腱紡錘、ゴルジ腱器官、ルフィニ小体、ストレッチ受容体、ルフィニ小体末端器官、パチニ小体末端器官、毛包受容体、自由神経終末、温度受容器、球状またはクラウゼ小体、侵害受容器)、副交感神経、繊維及び神経突起、交感神経、線維及び神経突起、涙管枝、涙腺神経、涙腺動脈及びその枝の血管周囲神経、マイボーム腺を神経支配する神経線維、涙腺の筋上皮細胞、涙腺の腺房細胞、涙腺の導管細胞が含まれ得る。さらに別の変形例では、解剖学的構造は、滑車下神経である。その他の変形例では、解剖学的構造は、経時的な力または温度の変化を感知する皮膚受容体、または皮膚内で成長する毛髪を動かすことによって皮膚に直接または間接的に加えられる力の変化を報告する皮膚の領域内の皮膚受容体のセット、または皮膚または皮膚内の毛髪に加えられる力の変化を報告する、または粘膜、鼻の粘膜または眼の結膜を含む皮膚の温度変化を報告する、皮膚受容体を支配する神経である。
【0093】
本明細書に記載の波形を含む刺激は、参照により全体が本明細書にすでに組み込まれている、米国特許出願第13/441,806号、及び参照により全体が本明細書にすでに組み込まれている、米国特許出願第14/256,915号に記載されている治療法に従って、本明細書に記載されているような刺激装置を使用してこれらの解剖学的標的に送達され得る。
【実施例】
【0094】
以下の実施例は、本明細書に開示される電気刺激パターン及びその効果をさらに説明するものであり、決してその範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0095】
実施例1:涙管インプラントを用いた刺激
眼領域に埋め込まれたマイクロ刺激装置を有する患者を、30Hzの非パターン刺激(対照)及び異なる周波数(30Hz、70Hz、155Hz)のオン/オフパターン(1秒オン/1秒オフ、2秒オン/2秒オフ、及び5秒オン/5秒オフ)で試験した。埋め込まれたマイクロ刺激装置は、
図2A〜2Cに示され、本明細書に記載の特長を有する。
【0096】
患者の刺激の知覚は、30Hzの非パターン化波形制御とパターン化された波形とでは異なった。具体的には、30Hzの非パターン化波形を受けた3人の患者は、刺激期間にわたって波形の知覚が薄れていると感じ、パターン化された波形を受信したときに、刺激期間にわたって波形の知覚が薄れているという報告した患者はいなかった。刺激が、30Hz、1秒オン/オフ波形(「パターン1」)のとき、3人の患者が連続的として波形を知覚し、15人の患者が断続的として波形を知覚した。刺激が、30Hz、5秒のオン/オフ波形(「パターン2」)のとき、すべての患者が断続的として波形を知覚した。刺激が、70Hz、1秒オン/オフ波形(「パターン3」)のとき、2人の患者が連続的として波形を知覚し、10人の患者が断続的として波形を知覚した。患者は、その他の波形よりもパターン3が「より強く」「より速く」「より明確」であると知覚したと報告した。刺激が、155Hz、1秒のオン/オフ波形(「パターン4」)のとき、患者が連続的または断続的として波形を知覚するかどうかは、振幅に依存し、「弱い」「強い」「ピンチ」という波形の報告を含む、定性的な知覚の範囲であった。
【0097】
さらに、患者は、感覚異常の質及び/または位置の変化を報告した。
図14Aは、30Hzの非パターン化波形を使用した刺激により感じられた感覚異常の領域1402を示す。パターン化された波形では、患者は、
図14Bに示されるような感覚異常(振動及び/またはくすぐり感)の移動を感じた(振動及び/または刺痛は、矢印1404の方向にまぶたに沿って動いた)。一部の患者は、
図14Cに示されるように、1つの領域1408で連続的に存在する振動、及び他の領域1406で連続的に存在するか、または部分的に出現する、再出現する感覚またはくすぐり感を感じた。他の患者は、
図14Dに示されるように、眉毛の一方または両方に沿って及び/または鼻に沿ってまたは鼻に沿って延びる領域1410として、パターン化された波形による感覚異常を有する患部の拡大を経験した。
【0098】
刺激の停止後の患者の知覚も、30Hzの非パターン波形とパターン化された波形とでは異なった。患者は、対照の停止後には感覚異常を知覚しなかったが、パターン1、3及び4を停止した後に、刺痛感の感覚異常を知覚したと報告した。
【0099】
シルマー・スコアは、30Hzの非パターン化波形制御と比較してパターン化された波形で増加した。パターン1では、患者の1/3がシルマー・スコアで50%増加した。パターン3では、患者の3/4がシルマー・スコアで50〜100%増加した。パターン4では、患者の3/8がシルマー・スコアで100%以上増加した。
【0100】
パターン化された波形のいくつかは、さらなる利点も提供した。たとえば、パターン1は、対照よりも消費電力が小さく、同時に患者の適応も低減させ、パターン4は、神経刺激及び神経ブロックの両方が可能であった。
【0101】
実施例2:涙管インプラントを用いた刺激(2)
眼領域に埋め込まれたマイクロ刺激装置を有する患者では、パターン化された波形の使用により、基底流涙(対照1=電気刺激なし)との比較、及び30Hz(非パターン化)(対照2)での刺激との比較でシルマー試験によって測定された流涙の増加を生じた。埋め込まれたマイクロ刺激装置は、
図2A〜2Cに示され、本明細書に記載の特長を有する。データを以下の表2に示す。基底流涙(左、刺激なし)と、30Hzの非パターン化波形刺激(中央)と、パターン化され、患者に最適化された刺激波形(右)の平均流涙結果を比較する棒グラフ図を
図15に示す。表2のデータに基づくと、基底流涙の平均値は4.71mmであり、30Hzでの非パターン刺激の平均値は4.96mmであり、パターン化された刺激を使用したときの平均値は8.29mmであった。全体的に見ると、30Hzでの非パターン刺激を使用した平均シルマー・スコアの増加は、基底流涙と比較して約5%であり、パターン化された波形を使用した平均シルマー・スコアの増加は、基底流涙と比較して約76%であった。したがって、患者に最適化されたパターン化された波形は、30Hzの非パターン波形よりもはるかに大きな量(この場合は、70%を超えるポイント)で流涙を増加させることができた。
表2 12人の患者のシルマー・スコア
【0102】
パターン化された波形は、刺激中に感覚異常が感じられなかった患者、または短期的な感覚異常しか経験できなかった(たとえば、刺激が連続的に供給されたにもかかわらず、感じられた感覚異常が30秒未満、多くの場合、わずか10秒未満だった)患者でも感覚異常を発生させることができた。新たに獲得された、または再獲得された感覚異常は、さらに、流涙の増加及び患者の満足度の改善を伴なった。
【0103】
多くの場合、患者は、刺激休止中(たとえば、1秒オン/1秒オフのパターンを有する波形のオフ部分の間)、及びある特定の例では、刺激を適用後に停止させた後の数秒または数分間の振動及び刺痛の間の振動の感覚を報告した。振動または刺痛が、まぶたや眉に沿って、2つの例では、鼻の領域(鼻の外側及び/または内側)でも、身体的に移動したと感じた患者の報告がいくつかあった。患者の評判は、全体的に非常に肯定的なものだった。
【0104】
実施例3:涙管インプラントを用いた刺激(3)
19人の患者が、眼領域に埋め込まれた微小刺激装置を有していた(これらの患者のうちの12人は、実施例2と同じ患者である)。上述のように、眼窩の領域で報告された感覚異常を最大にするために、患者のフィードバックを収集するとともに、患者ごとに、波形周波数、パルス幅、及びオン/オフ期間を変化することによって患者に最適化されたパターン化された波形を決定した。
【0105】
各波形は、患者ごとに同じコントローラ/エナジャイザーを使用して提供された。患者ごとに試験した波形は以下を含んだ。
− 30Hz
− 30Hz、1秒オン、1秒オフ
− 30Hz、5秒オン、5秒オフ
− 70Hz、1秒オン、1秒オフ
− 30Hz、100%から0%までパルス幅変化され、1秒で100%に戻る
− 30Hz、100%から70%までパルス幅変化され、1秒で100%に戻る
− 70Hz、100%から70%までパルス幅変化され、1秒で100%に戻る
− 30Hzから70Hzまで5Hz刻み(すなわち、周波数変化の増加部分、30Hz、35Hz、40Hz、50Hz、55Hz、60Hz、65Hz、70Hz)でほぼ線形に変化された周波数、1秒間で上下に変化される(70から30まで、1秒で70に戻る)
− 周波数が5Hz間隔(30Hz、35Hz、40Hz、45Hz、55Hz、60Hz、65Hz、70Hz)で、30Hzから70Hzまでランダムに変化された周波数
【0106】
患者に、以下を含む各波形について一連の質問をした。
− 波形が不快感を引き起こしていたかどうか。
− 波形からの感覚を、30Hzの非パターン波形、及び同じ日に前に試験された他の波形を含む、他の波形と比べてどのように異なるように思うか。
− 眼が濡れている感覚があったかどうか。
− くすぐり感と振動の組み合わせを感じたかどうか。
− 感覚(くすぐり感及び/または振動)があたかも動いているかのように感じられたかどうか(これは適応の可能性が低いことを示唆している)。及び
− 感覚の位置。
【0107】
患者が、上まぶたに感覚を感じることが所望された。これは、涙管と眼窩の前頭神経を活性化して対応する可能性が高いと考えられたためであった。感覚が目自体に近く、感覚異常の面積が大きいほど、波形がより最適であると評価された。さらに、三叉神経の眼枝(CN VI)の感覚経路に対応する位置にくすぐり感及び振動の感覚の混合として知覚された波形が所望された。これらの位置には、まぶただけでなく、眉、額のこめかみ領域、鼻(特に鼻の内側)、及び額の特定の領域も含まれていた。
【0108】
患者ごとに、次の3つのシルマー・スコア、すなわち刺激のない基底シルマー・スコア(「基底シルマー」)、30Hzの非パターン化波形の適用中の急性シルマー・スコア(「30Hzシルマー」)、患者ごとの患者に最適化されたパターン化された波形の適用中の急性シルマー・スコア(「パターン化されたシルマー」)を記録した。
【0109】
平均の両側30Hzのシルマー・スコア及び平均の両側パターン化されたシルマー・スコアは両方とも、平均両側基底シルマー・スコアよりも高かった。平均の両側パターン化されたシルマー・スコアは、平均の両側30Hzシルマー・スコアより高かった。平均の両側シルマー・スコアの特定のデータを
図16Aに示す。そこに示されるように、重篤なDEDを有する15人の患者(基底シルマー・スコアが10mm未満であると定義される)は、平均で30Hzのシルマー・スコアの場合、基底シルマー・スコアより22%増加し、パターン化されたシルマー・スコアの場合、基底シルマー・スコアより78%増加した。
【0110】
患者に最適化されたパターン化された波形を使用して刺激されたとき、30Hzの非パターン化波形よりも多くの患者が、増加した両側のシルマー・スコアを示した。
図17A〜17Bに示されるように、重度のDEDを有する15人の患者の中で、非応答者の数は、(
図17Aに示すように)30Hz波形を使用した場合の47%から、(
図17Bに示すように)患者に最適化されたパターン化された波形場合の20%へと減少した。
【0111】
同側(すなわち、眼内インプラントと同じ側の眼)、対側(すなわち、眼内インプラントの反対側の眼)、及び両側(すなわち、両眼の平均)シルマー・スコアの比較により、単一の眼のインプラントからの刺激は、両側の涙液生成をもたらしたが、患者に最適化されたパターン化された波形の刺激の場合、その効果がより顕著であることを示した。同側の30Hzのシルマー・スコアが、両側の30Hzのシルマー・スコアより高いことが見出され、30Hzの刺激が対側の眼よりも同側の眼の涙液産生を多くすることが示され、逆に、対側の30Hzのシルマー・スコアが、両側の30Hzのシルマー・スコアより低いことが見出され、30Hzの刺激が同側の眼よりも対側の眼の涙液産生を少なくすることを示された。
【0112】
一方、同側及び対側のパターン化されたシルマー・スコアは、両側のパターン化されたシルマー・スコアと類似していることが見出された。これは、患者に最適化されたパターン化された波形が、同側及び対側の両眼の両方ともで涙液生成を刺激するのに同様に有効であるように、パターン化された刺激が30Hz刺激よりも対側の眼の涙液生成をより良く刺激することを示唆した。これは、直接的な動き(涙神経のみ)に加えて反射的な動き(涙管及び前頭神経を刺激することによって活性化される)の結果であると仮定された。
図16Bは、重度のDEDを有する15人の患者の対側シルマー・スコアを示す。そこに示されているように、患者は、平均で30Hzのシルマー・スコアの場合、基底シルマー・スコアより9%の増加し、パターン化されたシルマー・スコアの場合、基底シルマー・スコアより82%増加した。
【0113】
周波数を線形またはランダムに切り替えることにより、患者は振動とくすぐり感の混在を経験した。1秒オン/1秒オフで70Hzの高い周波数に変更すること、周波数を変化すること(5Hz刻みで30〜70Hz)、及び/またはパルス幅を変更することで、特定の患者は、くすぐりの感覚を、振動、くすぐり感だけ、または振動が移動する感覚に加えて、しばしばくすぐり感の感覚の移動と組み合わせて報告した。また、患者に最適化されたパターン化された波形による刺激により、インプラントにより迅速かつ繰り返して結合するために、患者がエナジャイザー/コントローラを保持する場所を見つけることを可能にすることも見出された。
【0114】
実施例4:鼻粘膜の電気刺激
パターン化された波形は、
図4A〜4Cに対して記載された装置を使用して被験者の鼻粘膜に送達された。送達されたパターン化された波形は、
図13A〜13Eに示され、本明細書に記載の波形と、1秒オン/オフ及び5秒オン/オフのオン/オフ期間を有する30Hz、70Hz、及び155Hzの波形を含んだ。被験者のくしゃみをしたいという感覚を軽減しながら、パターン化されていない刺激と同じレベルの涙液排出を達成することができた。被験者はまた、ほとんどの場合、感覚印象の改善と見なされる鼻のマッサージの感覚も報告した。さらに、被験者は、鼻刺激の間、増加した刺激振幅を使用することができ、不快感のない涙液増加をもたらした。これは、刺激に使用された電荷の最大振幅が短時間だけ印加されたからである。被験者の評判は、全体的に非常に肯定的なものだった。
【0115】
実施例5:前頭神経刺激(ウサギ)
左前神経領域に細いワイヤー電極をウサギに埋め込み、0.1mA〜5.0mAの振幅の30Hzで刺激を適用した。刺激及びベースライン測定をそれぞれ3回繰り返した。下記の表3及び
図18に示すように、30Hz(非パターン化)波形で増加した流涙が観察されたが、刺激の送達中に記録されたシルマー・スコアでの測定によると、流涙の増加は、それぞれ10秒間のオン及びオフ期間を有するパターン化された刺激を使用してさらに顕著になった。
表3