特許第6643316号(P6643316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643316
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】無線周波アプリケーションの構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20200130BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20200130BHJP
   H03H 9/145 20060101ALI20200130BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20200130BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20200130BHJP
   H04B 1/38 20150101ALI20200130BHJP
   B81B 7/02 20060101ALN20200130BHJP
【FI】
   H01L21/02 B
   H03H9/17 F
   H03H9/145 C
   H03H9/145 D
   H03H9/64 Z
   H01L27/12 B
   H04B1/38
   !B81B7/02
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-505533(P2017-505533)
(86)(22)【出願日】2015年7月3日
(65)【公表番号】特表2017-532758(P2017-532758A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】FR2015051854
(87)【国際公開番号】WO2016016532
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年6月11日
(31)【優先権主張番号】14/01800
(32)【優先日】2014年8月1日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507088071
【氏名又は名称】ソイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オレグ コノンチュク
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ヴァン デン ダエル
(72)【発明者】
【氏名】エリック デボネ
【審査官】 加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−164906(JP,A)
【文献】 特表2007−507093(JP,A)
【文献】 特表2013−543276(JP,A)
【文献】 特開2006−229282(JP,A)
【文献】 特開2004−221285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 27/12
H03H 9/145
H03H 9/17
H03H 9/64
H04B 1/38
B81B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低部と、深さにp型ドーピングされた上部(3)とを含む高い抵抗率のシリコンの支持基板(2)と、
前記支持基板(2)のドーピングされた上部(3)に形成されたシリコンのメソ多孔性トラップ層(4)と、
を含む無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)であって、
前記構造(1、1’、11)は、前記深さが1μm未満であり、前記メソ多孔性トラップ層(4)は20%及び60%間の多孔率を有していることを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)
【請求項2】
請求項1に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)において、前記メソ多孔性トラップ層(4)は、2nmと50nmとの間の直径を有する孔を有することを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)において、前記支持基板の低部の抵抗率は、1000ohm.cm.より大きいことを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)において、活性層が、前記メソ多孔性トラップ層上に配置されることを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)。
【請求項5】
求項4に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)において、前記活性層は半導体材料で形成されることを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)。
【請求項6】
請求項4に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)において、前記活性層()は圧電性材料で形成されることを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)。
【請求項7】
請求項4に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)において、前記活性層()は、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウム、リチウムニオブ酸塩、タンタル酸リチウム、クオーツ、アルミニウム窒化物からなる群から選ばれた材料のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)において、前記活性層の厚さが10nmから50μmの間にあることを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)。
【請求項9】
請求項4乃至8いずれか一項に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)において、誘電体層が、前記メソ多孔性トラップ層と前記活性層との間に配置されることを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)。
【請求項10】
請求項9に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)において、前記誘電体層(は、二酸化珪素、シリコン窒化物、アルミニウム酸化物からなる群から選ばれた材料のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)において、前記誘電体層の厚さは、10 nmからμmまでであることを特徴とする無線周波アプリケーションの構造。
【請求項12】
請求項4乃至11のいずれか一に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)
において、
少なくとも1つのマイクロエレクトロニクス機器()は、前記活性層()の中又は上にあり
、前記マイクロエレクトロニクス機器()は、スイッチング回路、アンテナチューニング回路又は無線周波数パワー増幅器回路であることを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)。
【請求項13】
請求項4乃至11のいずれか一に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)において、
少なくとも1つのマイクロエレクトロニクス機器()は、前記活性層()の中又は上にあり、
前記マイクロエレクトロニクス機器(7)は、複数のアクティブコンポーネントおよび複数のパッシブコンポーネントを含むことを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)。
【請求項14】
請求項4乃至11のいずれか一に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)において、
少なくとも1つのマイクロエレクトロニクス機器(は、前記活性層()の中又は上にあり、 前記マイクロエレクトロニクス機は、少なくとも1つの制御素子及びオームコンタクト付きマイクロスイッチまたは静電容量マイクロスイッチから成る少なくとも1つのMEMSスイッング素子を含むことを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)。
【請求項15】
請求項4乃至11のいずれか一に記載の無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)において、
少なくとも1つのマイクロエレクトロニクス機器は、前記活性層の中又は上にあり、
前記マイクロエレクトロニクス機器(7)は、バルク弾性波又は表面弾性波の伝播によって動作する無線周波フィルタであることを特徴とする無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積無線周波アプリケーションの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
集積装置は、通常、作製をサポートするために主に用いられるウェーハの形態で基板上に製造される。しかし、集積の増加の度合い及びそれらの装置に期待される性能レベルの増大は、それらの性能レベルと、それらが形成されるその基板の特性との間のますます重要なカップリングを推し進めている。これは、特に、約3kHzと300GHzとの間の周波数を有する信号を処理する無線周波(RF)装置のケースに当てはまり、約3kHzと300GHzとの間の周波数を有する信号を処理し、その応用は、特に、テレコミュニケーションの分野内に入る(携帯電話、Wi−Fi、ブルートゥース(登録商標)など)。
【0003】
装置/基板のカップリングを例として、装置内に伝搬する高周波信号の由来する電磁界は、その基板の深部まで入り込み、その中にある任意の荷電粒子と相互作用する。これは、その信号の非線形なひずみ(高調波)問題、コンポーネント間の挿入損失及び可能な影響によるその信号のエネルギーの部分の無意味な消費を引き起こす。
【0004】
従って、RF装置は、それらの基本設計概念と製造工程との両方によって、及び、基板の容量によって左右される特性を持っている。その基板上のRF装置は、その挿入損失、隣接した装置のクロストーク、高調波を生じる非線形なひずみ現象を制限するように製造されている。
【0005】
アンテナスイッチ及びチューナー及びパワー増幅器のような無線周波装置は、様々なタイプの基板上に、製造されうる。
【0006】
例えば、サファイア基板上のシリコンが知られており、一般に、SOS(サファイア上のシリコン)と呼ばれ、コンポーネントを与え、シリコンの表面層に、ミクロ電子工学技術、そのサファイア基板の絶縁特性のメリットにより、製造される。例えば、このタイプの基板上に作製されたそのアンテナスイッチとそのパワー増幅器は、非常に良好な性能指数を示すが、これらは、解決策の全コストのため、主にニッチアプリケーションのために用いられる。
【0007】
支持基板を含む高抵抗率シリコンに基づく基板、その支持基板上に配置されたトラップ層、そのトラップ層上に配置された誘電体層、及び、その誘電体層上に配置された活性半導体層についても、また、知られている。その支持基板は、常に、1kohm.cm.よりも高い抵抗率を示す。そのトラップ層は、非ドープのポリシリコンを含むことができる。先行技術により、高抵抗支持基板及びトラップ層の組み合わせは、上記の装置/基板カップリングを減じさせ、そうして、そのRF基板の良好な特性レベルを確保することが可能である。この点において、当業者は、ウッドヘッド出版からの、Oleg Kononchuk 及びBich-Yen Nguyenの「シリコン−オンーインシュレイター(SOI)テクノロジー、製造、および応用」ポイント10.7及び10.8中の従来技術から知られている高抵抗半導体基板に作製されているRF装置の性能のレビューに気づくであろう。
【0008】
それにもかかわらず、ポリシリコンのトラップ層は、その層のトラップ密度を減少させることに寄与している高温度熱処理のステップに部分的な再結晶化が起こる欠点を示している。RFコンポーネントにおいて要求が増大する仕様を示唆する携帯電話標準の傾向により、トラップ密度のこの減少に関係する装置性能の劣化は、一部の適用に対しては禁止されている。
【0009】
さらに、基板のスタックを生産するために、ポリシリコンの堆積のステップと表面準備のステップは慎重に扱うべきであり、かつ、高価である。
【0010】
このポリシリコンのトラップ層への代替手段は、多孔質のシリコンの層である。従来技術によれば、多孔質層の堆積は、厚さ1μm未満の非常に薄い膜厚を得ることを可能としていない。従って、従来技術による多孔質層とその10μmと80μmとの間の厚さは、その装置の作製の幾つかのステップに持ちこたえ、そして、最終的に機能的な装置に保持されるのに十分な機械的な強度を有する多孔質層を含む基板を得ることを可能としない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、従来技術の欠点を改善しつつ、無線周波アプリケーションに適切な構造を提供する。本発明の目的は、特に、RF装置の増大する要求を満たし、そして、作製コストの削減を可能にする集積構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の構成を無線周波アプリケーションのための構造と関連する。
・低部と、深さDにp型ドーピングされた上部とを含む高い抵抗率のシリコンの支持基板と、
・前記支持基板のドーピングされた上部に形成されたシリコンのメソ多孔性トラップ層とを含む。
【0013】
本発明により、その構造は、深さDは1μm未満であり、前記トラップ層は20%及び60%間の多孔率を有している点において、注目に値する。
【0014】
本発明によると、こうして得られたトラップ層の多孔率は、高くありうるレベル(> 5000ohm.cm)で、その抵抗を正確に制御することを可能にする。こうして、(20%から60%までの正確な範囲によれば)多孔率及びトラップ層が形成されるシリコンの支持基板の上部のドーピングの深さD(1μm未満)の設定は、以下のことを可能にする。
−メソ多孔層の良好な機械的な強度を確保し、最終的な機能的な装置に保持させることを可能にする;
−そして、無線周波アプリケーションにとって適切である構造についての抵抗性と絶縁特性を与える。
【0015】
さらに、非常に薄いメソ多孔トラップ層(1μm未満)の作製が、その後のプロセスステップが実現されるために必要な表面準備の潜在的なステップと同様に、その支持基板上のそのトラップ層の堆積ステップを簡素化する。
【0016】
本発明の有利な特徴によると、単独又は組み合わせで考えると、
−前記メソ多孔トラップ層は、直径が2nmから50nmの孔である、
−前記メソ多孔トラップ層は、ドープされた支持基板の上部の電気分解のプロセスによって得られる、
−電気分解プロセスは、電気分解の端子における電圧制御の技術により制御される、
−その支持基板の低部分の抵抗率は、1000ohm.cmよりも大きい。
【0017】
本発明の他の有利な特徴によると、単独又は組み合わせで考えると、
−活性層は、前記トラップ層上に配置される;
−前記活性層は、直接的な接合により、前記トラップ層上に転写される、
−前記活性層は、半導体材料で形成される、
−前記活性層は、圧電性材料で形成される、
−前記活性層は、以下のグループから選ばれた材料のうちの少なくとも1つを含む:シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウム、リチウムニオブ酸塩、タンタル酸リチウム、クオーツ、アルミニウム窒化物、
−前記活性層の厚さは、10nm及び50μmの間にあり、
−誘電体層は、前記トラップ層と前記活性層との間に配置される、
−前記誘電体層は、直接的な接合により、前記トラップ層に転写される、
−前記誘電体層は、以下のグループから選ばれた材料のうちの少なくとも一つを含む:二酸化珪素、シリコン窒化物、アルミニウム酸化物、
−前記誘電体層は10nmから6μmまでである、
−シリコン窒化物(SiN)の層は、前記トラップ層と前記活性層との間に配置される。
【0018】
本発明の他の有利な特徴によると、単独または組み合わせで考えると、少なくとも一つのマイクロエレクトロニクス機器が活性層上又は活性層中で存在する。
−マイクロエレクトロニクス機器は、スイッチ回路又はアンテナチューニング回路又は無線周波数パワー増幅器回路である、
−前記マイクロエレクトロニクス機器は、少なくとも1つの制御素子及びオームコンタクト付きマイクロスイッチ又は静電容量マイクロスイッチから成る少なくとも1つのMEMSスイッチ素子を含む、
−前記マイクロエレクトロニクス機器は、バルク弾性波又は表面弾性波によって動作する無線周波数フィルタである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の他の特徴と利点は、以下の添付の図面に関する次の発明の詳細な説明から表現される:
図1】シリコン多孔性とヤング率との依存性を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態を示す図である。
図3】(a)本発明の第2実施形態を示す図である。(b)本発明の第2実施形態を示す図である。
図4】本発明の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による無線周波アプリケーションの構造(1、1’、11)は、高い抵抗(HR)の支持基板2を含む。高い抵抗率は、1000ohm.cmより大きい抵抗率を意味すると理解されるべきである。それは4000と10000ohm.cmの間で有利にある。
【0021】
本発明によると、HRシリコンの支持基板2は、上部3に、1μm未満のあらかじめ指定されている深さDまで、p-タイプドーピングを行う。このドーピングは、イオン注入により有利に行われる。その後、注入されたp型ドーパント、または、p+層のエピタキシーを活性化するためのRTAタイプのべーク、または、さらに、「ガラス上でスピンする」(遠心分離によるガラスの層の堆積を記述する用語)ことによるドーピングすることが続く。
【0022】
そうして、支持基板2の上部3を多孔層4に変換するために、HRシリコンの支持基板2のドープされた上部層3は電気分解のプロセスの対象となり、これは、トラップ層4を形成するであろう。そのサポート基板2の上部層3に前もって導入されたドーパントの深さDは、そのトラップ層4の厚さと実質的に対応している。
【0023】
電気分解のプロセスは、電気化学の陽極酸化処理の例に対して存在することが可能である。その陽極酸化処理において、少なくともその支持基板2の上部3に、少なくともフッ化水素酸など、電解質を含むチャンバーに配置される。陽極と陰極とは、その時、電解質に浸されて、電源により電力が供給される。
【0024】
多孔性のシリコンには、形態学的な3種類のタイプがある。
−一般的に、弱くドープされたn型のシリコンから得られ、50nmより大きい孔直径を有しているマクロ多孔性シリコン、
−一般的に、強くドープされたp型シリコンから得られ、2nmから50nmの間までの孔直径を有しているメソ多孔性シリコン、
−一般的に、弱くドープされたp型シリコンから得られ、2nm未満の孔直径を有しているナノ多孔性(また、いわゆるマイクロ多孔性)シリコン。
【0025】
従って、基板2のドーピングのレベル、及び電源により与えられた電流密度の調整のように電気分解過程の条件に依存し、多孔率は、高く、又は、低く、かつ、制御をされている。概括すると、層の多孔性Poは層内の非占有のバルクの部分と定義されて、次の式のように表現される。
Po = (d − dPo)/ d
【0026】
dは非多孔性の材料の密度であり、dPoは多孔性の材料の密度である。
【0027】
生成されたトラップ層4は、支持基板2において生成された反転電荷を捕捉するのに適した高欠陥密度、及び高抵抗のレベルを得るのに十分な多孔率を有しなければならない。しかしながら、そのトラップ層4の厚さに加えて、この多孔率が、その多孔質層4の機械的な強度も特徴付けている。多孔質層の多孔率の機能として(Eとして示され及びギガパスカルで表現された)ヤング率の依存度は、図1に示される。ある一定の厚さに対して、多孔率がより大きくなるにつれて、機械的特性の程度は低くなる。多孔性パーセント(Po)の機能としてのヤング率の減少は、機械的な強度における減少を反映する。さらに、一定の多孔率のために、多孔質層がより厚くなれば、機械的性質はより低下する。出願人は、プロセスウィンドウを識別する。そのウィンドウに対して、多孔質層は、無線周波アプリケーションに必要とされる抵抗特性と同様、次のミクロ電子工学のステップ(堆積、ベーク、研磨など)と両立するのに必要な機械的な強度を示している。
【0028】
従って、本発明により、構造1、1’、11は、構造1、1’、11の機械的な性能および電気的性能のレベルを確保するために、多孔率が20%から60%までであり、1μm未満の厚さを有するトラップ層4を提案する。孔直径2nm及び50nmの間までの直径の孔を有するメソ多孔質な形態学は、必要な多孔レベル、厚さが1μm以上、有意なトラップ密度(典型的には、1013/cm2より大きく、逆電荷をトラップすることを可能とする)を可能とし、逆転電荷と高抵抗率を閉じ込めることを可能とする。
【0029】
(メソ多孔性シリコンの)トラップ層4の厚さDは、支持基板2の上部3のp型のドーピングの深さに依存する。多孔率は、電気分解プロセス性能条件と同様に、支持基板2の上部3に導入されたドーパントの量に依存する。
【0030】
支持基板2の上部3の電気分解による多孔性形成が前もって決定された深さDを越えないことを確保するために、電気分解の端子における電圧制御が導入され、多孔性形成が、RHシリコンの支持基板2のノンドープ下部で、いつ、始まるかを決定し、したがって、電気分解プロセスを止めることを可能にする。支持基板2の上部3の多孔性形成は、実質的に深さDにおいて、基板2の上部3に導入されたドーパント拡散後部の端で停止されなければならない。
【0031】
従って、本発明による無線周波アプリケーションのための構造1、1’、11は、多孔性シリコンのトラップ層4を含み、その多孔性は、20%と60%との間にあり、その厚さは1μm未満であり、高抵抗率シリコンの支持基板2に配置されている。そのトラップ層は、5000ohm.cm.よりも大きい典型的な抵抗値を有している。
【0032】
図2に示された本発明の第1の実施形態によれば、支持基板2とトラップ層4とを含む無線周波アプリケーションのための構造1は、例えば、200nm又は300nmの直径を有するマイクロエレクトロニクスのプロセスと互換性のある大きさのウェーハの型を取ることができる(図2(c))。
【0033】
有利には、HRシリコンの支持基板HR(図2(a))が4000ohm.cm.より大きい抵抗率を持っている。まず、ホウ素のイオン注入が、例えば、1e13/cm2のドーズ量及び50keVのエネルギーで行われ、その後、5分間、1000℃の熱処理が引き続き、そして、約200nmの深さにまで、p-ドープされた上部3が形成される(図2(b))。次いで、その支持基板2に以下の電気分解が行われる。すなわち、電流密度は、10mA/cm2及び20mA/cm2の間にあり、電解液は、10%及び30%の間のHFの濃度を有するであろう。シリコンのメソ多孔性トラップ層4は、その支持基板2のドープされた上部3で形成される(図2(c))。ドーパントの量と、電気分解間で適用された電流密度とに依存して得られた多孔率は、ほぼ50%のオーダーである。孔は、2nmと50nmとの間のサイズを有している。この作製プロセスは、簡単かつ安価であり、以下の無線周波アプリケーションの仕様と互換性のある機械的特性及び電気的な特性を示す構造1を得ることを可能にする。
−マイクロエレクトロニクスのコンポーネントの作製の様々なストレスの多いステップに耐える良好な機械的な強度と、
−マイクロエレクトロニクスのコンポーネントの作製のための高温度での熱処理の適用の後でさえ、支持基板2の高抵抗率及びメソ多孔質層4の電荷トラップ特性に関連した安定した絶縁特性。
【0034】
図3において、本発明の第2の実施形態が示される。この第2の実施形態の第一のバリエーションによると、図3(a)において説明されて、無線周波アプリケーションの構造1’はウェーハの形態を取り、活性層5をさらに含み、トラップ層4上に配置され、その中及びその上に、RFコンポーネントが作り出されることができるであろう。この活性層5は半導体材料及び/または圧電性材料で有利に構成されるであろう。有利なことに、しかし、これが制限されることなしでは、活性層5は以下の材料のうちの少なくとも1つを含む。すなわち、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウム、リチウムニオブ酸塩、タンタル酸リチウム、クオーツ、アルミニウム窒化物など。その活性層5の厚さは、作製されうるコンポーネントに依存し、数ナノメートル(例えば、10nm)から数十μm(例えば、50μm)に及ぶことが可能である。
【0035】
例として、活性層5は、以下を含む当業者によく知られている薄膜転写プロセスのうちの1つによって、トラップ層4を含む支持基板2に転写される。
−スマートカット(商標)プロセスは、ドナー基板と接合の軽水素及び/又はヘリウムイオンの注入を基礎とし、例えば、分子粘着により、トラップ層4に直接、このドナー基板の結合であり、自身で支持基板2に配置される。分離ステップは、次いで、イオンの注入の深さにより定義された脆化平面のレベルにおいて、ドナー基板(活性層)からの薄い表面層を分離することを可能とする。最終ステップは、高温度熱処理を含むことができ、最終的に、活性層5において必要とされる結晶性と表面品質を与える。このプロセスは、例えば、シリコンの層に対して、数nmと約1.5μmの間の厚さを有する薄い活性層の作製に適している。
−エピタキシーステップが後に続くスマートカットプロセスは、例えば、数十nmから20μmまでのより厚い活性層を得ることを可能にしている。
−直接的な接合方法及び機械的な、化学的な、及び/又は機械的化学的薄膜プロセス;それらは、それ自身で支持基板2に配置される、トラップ層4上に、直接、分子付着によってドナー基板を組み立て、次いで、例えば、粉砕及び研磨(CMP「化学機械平坦化」)により、活性層5の所望の厚さにドナー基板を薄くすることである。これらのプロセスは、特に、例えば、数μmから十数μm、数百μmまで、厚い層の転写に適合する。
【0036】
第2の実施形態の別のバリエーションによると、図3(b)において示されて、無線周波アプリケーションの構造1’は、活性層5とトラップ層4との間に配置された誘電体層6を含むこともできる。有利なことに、しかし、これが制限されることなしに、誘電体層6は、二酸化珪素、シリコン窒化物、アルミニウム酸化物などを材料として少なくとも1つの材料を含むであろう。その厚さは、10nmと3μmとの間で変化することができるであろう。
【0037】
トラップ層4又はドナー基板上に誘電体層6は、トラップ層4への活性層5の転移より前に、熱酸化によって、または、LPCVDまたはPECVDまたはHDP堆積により得られる。
【0038】
無線周波アプリケーションのためのSOI基板(絶縁物上のシリコン)の分野でよく知られているように、例えば、シリコンの支持基板上のシリコン酸化物により形成されるこのような誘電体層は、陽電荷を含んでいる。これらの電荷は、誘電体層の界面で支持基板からの負のチャージによって、相殺される。これらの電荷は、誘電体層下の、支持基板中の約10−100ohm.cm.に低下する低効率を有する導電層を生成する。従って、支持基板(シグナルの直線性、挿入損失のレベル、受動的なコンポーネントの質的要因など)の抵抗率に影響を受ける電気性能レベルは、この導電層の存在のため厳しく低下する。
【0039】
次に、トラップ層4の役割は、それが高く、安定した抵抗率レベルを保持するように、支持基板2において生成されたすべての可動電荷を閉じ込めることである。
【0040】
本発明により、図4は第3の実施形態を示す。この第3の実施形態の第1のバリエーションによれば、図4(a)において、無線周波アプリケーションの構造11も、活性層5上又は活性層5中に、マイクロエレクトロニクス機器7を含むか、または、それから成り立つことができる。その構造11は、誘電体層6上又は直接的にトラップ層4上に配置される。マイクロエレクトロニクス機器7は、スイッチ回路(スイッチと呼ばれる)又はアンテナチューニング又は同調回路(チューナーと呼ばれる)、又は、さらに、パワー増幅回路(パワー増幅器)であり、シリコンマイクロエレクトロニクス技術により製造される。シリコンの活性層5は、一般的に、例えば、厚さが50nmから180nm、例えば、145nmである。また、下地誘電体層6は、厚さ50nmから400nm、例えば、200nmである。トラップ層4は、その誘電体層6とその支持基板2の間に配置される。活性層5中又は上に製造されたマイクロエレクトロニクス機器7において、複数のアクティブコンポーネント(MOS又はバイポーラなど)及び複数のパッシブコンポーネントを含む(容量、誘導子、抵抗器、共鳴器、フィルタ型などの)。
【0041】
マイクロエレクトロニクスのコンポーネントの作製は、高温度熱処理を、典型的には、950−1100℃、又は、さらに高い温度で、高温度熱処理を含むいくつかのステップを行うことを必要とする。上に説明された多孔性シリコンのトラップ層4は、そのような熱処理の後に、その物理的及び電気特性を保持する。
【0042】
図4(b)に示された、この実施形態の別のバリエーションにおいて、マイクロエレクトロニクス機器7は、第一に、SOIの基板「絶縁物上のシリコン」上に製造され、支持基板2に配置されたトラップ層4を含む本発明に従う構造1に、当業者に知られた層転写技術によって転写されることが可能である。
【0043】
この具体的なケースで、構造11は、一方では、トラップ層4上の支持基板2を含む。後者の上方では、マイクロエレクトロニクス機器7のコンポーネントの層がある。金属相互接続及び誘電層のいわゆる「バックエンド」部は、トラップ層4上方に配置され、活性層5で部分的に生成される、いわゆる「フロントエンド」部(シリコン)は、活性層5で部分的に発生し、それ自体が、「バックエンド」部の上方にある。最後に、上方に、活性層5及び、任意に、誘電体層6’がある。
【0044】
これらの具体的な2つの場合において、トラップ層4と支持基板2に入る装置7に伝わる高周波信号に由来する電磁界は、支持基板2とトラップ層4の高く、安定している抵抗率のため、低い損失(損失挿入)、および混乱(クロストーク、高調波)だけを被るであろう。有利には、本発明による構造11は、従来技術に比べて、簡単であり、及び経済的である。そして、それは、同等の性能レベルを提供する。
【0045】
第4の実施形態による、無線周波アプリケーションの構造11が、少なくとも1つのコントロール素子および、オームコンタクトを有するマイクロスイッチ又は静電容量マイクロスイッチからなる1つのMEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)スイッチング素子を含むマイクロエレクトロニクス機器7を含み、または、それから成り得る。
【0046】
MEMS作製はシリコンの活性層下の誘電体層の存在により容易にされうる。従って、本発明による構造11が、例として、20nm及び2μmの厚さ、有利には、145nmの厚さのシリコンの活性層5、20nm及び1μmの間の厚さ、有利に、400nmの厚さの下地誘電体層6とを含むことができるであろう。そのトラップ層4は、その誘電体層6とその支持基板2との間に配置される。そして、MEMS部の作製は、表面ミクロ機械技術、特に、シリコンの活性層において、ビーム又は移動式の膜を自由にすることを可能にする。
【0047】
あるいは、MEMS部は、トラップ層4において、層(電極、誘電体、犠牲層、活性層を含む)の複数を連続的に堆積することによって、及びこれらの種々の層においてパターンの形成によって直接生成できる。
【0048】
MEMS部前で、通常、行われる制御素子(例えば、CMOS)の作製のためのミクロ電子工学のプロセスは、前述の実施形態にあるように、このタイプの高温度熱処理の適用を必要とする。このタイプの処理に対するトラップ層4の機械強度及びその電気特性を保持する容量(高抵抗及び可動電荷の捕捉に適したトラップ密度)は、したがって、主要な点である。
【0049】
第3の実施形態と同じ方法において、機器7に伝わっている高周波信号は、そのトラップ層4とその支持基板2とに入る電磁界を生成する。損失(挿入損失)、歪み(高調波)、及び混雑(クロストークなど)は、トラップ層4を提供される支持基板2の高く、安定している抵抗率のためにより低くなるであろう。
【0050】
第5の実施形態によると、無線周波アプリケーションの構造11はマイクロエレクトロニクス機器7を含み、かつ、それからなることができる。そのマイクロエレクトロニクス機器7は音響大量波(BAW)の伝播によって動作している無線周波数フィルタを含む。
【0051】
FBARのBAWフィルタの作製(薄膜バルク音響共鳴器)型は、圧電性材料からなる活性層5を要する。その中では、活性層5が、それを囲む2つの電極間で音響の波が含まれる。従って、本発明による構造11は、例として、50nmと1μmとの間の厚さ、好都合には、100nmの厚さで、アルミニウム窒化物の活性層5、及び1μmと6μmとの間の厚さで誘電体層6(例えば、シリコン酸化物)を含む。トラップ層4は、誘電体層6と支持基板2との間に配置される。絶縁空洞は、そのフィルタの活性層の下で、すなわち、音響の波が伝えられることが必要なエリアの下に形成される。
【0052】
BAWフィルタの製造は、それから、RF信号が備えられる電極の堆積ステップを必要とする。
【0053】
本発明による構造11は、一方で、絶縁空洞の深さを制限する。その基板に対する隔離機能は、その支持基板2とそのトラップ層4の高く、かつ、安定した抵抗率により、臨界を減じさせる。これは、これらの装置の製造工程のシンプルさ、柔軟性、および頑丈さにおいての利点がある。また、その本発明による構造11は、特に、直線性についてのフィルタにおいて、よりよい性能レベルを得ることを可能とする。
【0054】
第5の実施形態のバリエーションによれば、マイクロエレクトロニクス機器7は、表面弾性波(SAW)の伝播によって動作している無線周波数フィルタを含む。
【0055】
SAWフィルタの製造するのには、櫛型電極を形成する表面上に、圧電性材料から成る活性層5が必要である。この音響波は、これらの電極間に伝播されようとする。従って、本発明による構造11は、例えば、200nmと20μmとの間の厚さのタンタル酸リチウム、できれば、0.6μmの厚さの活性層5を含むことができるであろう。そのトラップ層4は、その活性層5とその支持基板2の間に配置される。誘電体層6は、活性層5とトラップ層4との間で自由に選択的に追加できる。
【0056】
本発明による構造11は、特に挿入損失および直線性についてよりよいフィルタ性能を得ることを可能とする。
【0057】
本発明により、無線周波アプリケーションの構造1、1’、11は、上で述べられた実施の形態に限定されない。それは、高周波信号が伝わる任意のアプリケーションに起こる可能性がある。支持基板2に配置されたトラップ層4の物理的な及び電気的な特性が、部品上の良好な特性RF特性を提供する(損失、非線形性及び他の障害を制限している)ので、支持基板2で、望ましくない損失あるいは障害がおこり得るいかなるアプリケーションにも適合する。
図1
図2
図3
図4