特許第6643318号(P6643318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643318ディスクブレーキ用調整装置およびこのような調整装置を備えたディスクブレーキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643318
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】ディスクブレーキ用調整装置およびこのような調整装置を備えたディスクブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/56 20060101AFI20200130BHJP
   F16D 55/226 20060101ALI20200130BHJP
   F16D 41/06 20060101ALI20200130BHJP
   F16D 41/067 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   F16D65/56 C
   F16D55/226 104A
   F16D41/06 D
   F16D41/06 B
   F16D41/067
   F16D41/06 C
   F16D41/06 E
【請求項の数】32
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-507398(P2017-507398)
(86)(22)【出願日】2015年7月15日
(65)【公表番号】特表2017-524108(P2017-524108A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】EP2015066098
(87)【国際公開番号】WO2016026618
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2017年10月11日
(31)【優先権主張番号】102014111956.8
(32)【優先日】2014年8月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597166361
【氏名又は名称】クノール−ブレミゼ ジュステーメ フューア ヌッツファーツォィゲ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KNORR−BREMSE System fuer Nutzfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ルギチ,アブデルアズィーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ショイフラー,クリスティアン
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−097331(JP,A)
【文献】 特開平01−182634(JP,A)
【文献】 特開2001−349346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
F16D 41/06
F16D 41/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリーホイール(1)を備えたディスクブレーキ(120)用調整装置(100)であって、
a.前記フリーホイール(1)が内側リング(2)と外側リング(3)を備え、
i.前記内側リング(2)と前記外側リング(3)が複数のころがり軸受ボール(4)
と共にスラストボールベアリングを形成し、このスラストボールベアリングによって
前記内側リング(2)が前記外側リング(3)と相対的に回転可能に軸受され、
b.前記フリーホイール(1)がさらに、前記内側リング(2)と前記外側リング(3) をそれぞれ通過する貫通穴(5a、5b)を有し、
c.前記フリーホイール(1)がさらに、保持器(6a、6b、6c、6d)を備え、こ の保持器内に、圧縮ばね(12)と押圧部材(13)を備えた複数の締付けローラ(7)が保持され、
i.前記保持器(6a、6b、6c、6d)が前記貫通穴(5a、5b)に対して半径
方向において前記内側リング(2)と前記外側リング(3)との間に配置され、かつ
ii.前記内側リング(2)と前記外側リング(3)によって完全に取り囲まれている、
上記調整装置(100)において、
前記内側リング(2)との相対的回転及び連結手段(11、17a、17b、27a、27b、36、37)によって前記保持器(6a、6b、6c、6d)を前記内側リング(2)上でかみ合い連結的に固定保持することによって、前記圧縮ばね(12)が前記保持器(6a、6b、6c、6d)内で予圧縮されていることを特徴とする調整装置(100)。
【請求項2】
前記連結手段が、ピン(37、17a、17b)と穴(11)であることを特徴とする請求項1に記載の調整装置(100)。
【請求項3】
前記連結手段が、スナップフックの端部、ピン(27a、27b)および対向輪郭(36)であることを特徴とする請求項1に記載の調整装置(100)。
【請求項4】
前記フリーホイール(1)の前記内側リング(2)が段差部(8)を有し、該段差部の外周に、複数の締付けくさび(9)が規則的な角度ピッチで配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の調整装置(100)。
【請求項5】
前記締付けローラ(7)が前記フリーホイール(1)の組立て状態で前記締付けくさび(9)内に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の調整装置(100)。
【請求項6】
前記締付けくさび(9)が2.6°と4.2°との間の締付け角度を有することを特徴とする請求項5に記載の調整装置(100)。
【請求項7】
前記内側リング(2)と前記外側リング(3)がそれぞれ、許容誤差を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の調整装置(100)。
【請求項8】
前記内側リング(2)と前記外側リング(3)がそれぞれ、冷間成形されたことを特徴とする請求項7に記載の調整装置(100)。
【請求項9】
前記内側リング(2)と前記外側リング(3)がそれぞれ鋼から製作されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の調整装置(100)。
【請求項10】
前記内側リング(2)と前記外側リング(3)がそれぞれ粉末冶金焼結法によって製作されたことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の調整装置(100)。
【請求項11】
前記内側リング(2)と前記外側リング(3)がそれぞれ粉末金属から作られていることを特徴とする請求項10に記載の調整装置(100)。
【請求項12】
前記保持器(6a、6d)が一体に形成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の調整装置(100)。
【請求項13】
前記保持器(6b、6c)が複数の保持器リンク(14a、14b)からなるチェーンとして製作されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の調整装置(100)。
【請求項14】
前記チェーンリンク(14a、14b)がそれぞれ2つの側板(15a、15b)を備えていることを特徴とする請求項13に記載の調整装置(100)。
【請求項15】
前記側板(15a、15b)がそれぞれアイ(16aまたは16b)を有することを特徴とする請求項14に記載の調整装置(100)。
【請求項16】
それぞれ1つのアイ(16b)がそれぞれ1つのフィルムヒンジ(19)を介して前記保持器リンク(14b)に装着されていることを特徴とする請求項15に記載の調整装置(100)。
【請求項17】
前記保持器リンク(14a、14b)がそれぞれ少なくとも1本のピン(17a、17b)を備えていることを特徴とする請求項13から16のいずれか一項に記載の調整装置(100)。
【請求項18】
それぞれ前記アイ(16aまたは16b)がそれぞれ1本のピン(17a、17b)に掛けられることにより、前記保持器リンク(14a、14b)が互いに連結されて前記保持器(6b、6c)を形成していることを特徴とする請求項15又は16に記載の調整装置(100)。
【請求項19】
前記保持器(6b、6c)の前記保持器リンク(14a、14b)が射出成形されたことを特徴とする請求項13から18のいずれか一項に記載の調整装置(100)。
【請求項20】
前記保持器(6d)が複数の側板部分(22)を備え、該側板部分(22)が前記保持器(6d)の外周に規則的な角度ピッチで分配されていることを特徴とする請求項1に記載の調整装置(100)。
【請求項21】
前記各側板部分(22)が長穴(23a)を有し、前記保持器(6d)の組立て状態で前記押圧部材(13)の案内突出部(18)が前記長穴(23a)に通されていることを特徴とする請求項20に記載の調整装置(100)。
【請求項22】
前記各側板部分(22)がそれぞれロック部分(24)によって画成され、それによって前記ロック部分(24)が前記保持器(6d)の外周に規則的な角度ピッチで分配されていることを特徴とする請求項20又は21に記載の調整装置(100)。
【請求項23】
前記ロック部分(24)が連結ウェブ(25)を備え、該連結ウェブを介して前記ロック部分(24)がそれぞれ前記側板部分(22)に一体に連結されていることを特徴とする請求項22に記載の調整装置(100)。
【請求項24】
前記ロック部分(24)がスナップフック部分(26)を備え、該スナップフック部分が互いに対向する対称の2つのスナップフック(27a、27b)を形成し、前記スナップフック部分(26)の前記スナップフック(27a、27b)が前記保持器(6d)の非組立て状態で円形の前記保持器(6d)の中心の方に向いていることを特徴とする請求項23に記載の調整装置(100)。
【請求項25】
前記連結ウェブ(25)と前記スナップフック部分(26)がそれぞれフィルムヒンジ(28)によって連結されていることを特徴とする請求項24に記載の調整装置(100)。
【請求項26】
前記連結ウェブ(25)にそれぞれ1つの対向部分(29)が接続し、該対向部分が同様にフィルムヒンジ(30)によって前記連結ウェブ(25)に連結され、前記対向部分(29)が前記保持器(6d)の非組立て状態で円形の前記保持器(6d)の中心から離れる方向に向いていることを特徴とする請求項23から25のいずれか一項に記載の調整装置(100)。
【請求項27】
前記対向部分(29)にそれぞれ2つの一部側板部分(31a、31b)が接続し、該一部側板部分がフィルムヒンジ(32)を介して前記対向部分(29)に連結されていることを特徴とする請求項26に記載の調整装置(100)。
【請求項28】
前記両一部側板部分(31a、31b)が溝(33)を有し、前記保持器(6d)の組立て状態で前記溝に前記両スナップフック(27a、27b)が係止されていることを特徴とする請求項27に記載の調整装置(100)。
【請求項29】
前記両一部側板部分(31a、31b)がそれぞれ切込み(34a、34b)を有し、前記保持器(6d)の組立て状態でこの切込みが長穴(23b)であることを特徴とする請求項27又は28に記載の調整装置(100)。
【請求項30】
前記スナップフック部分(26)と前記対向部分(29)がそれぞれ段差部(35)を有し、前記保持器(6d)の組立て状態で前記圧縮ばね(12)が前記段差部に支持されていることを特徴とする請求項26から29のいずれか一項に記載の調整装置(100)。
【請求項31】
前記保持器(6d)が射出成型法で制作された平らな部品であることを特徴とする請求項1から11、28のいずれか一項に記載の調整装置(100)。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の調整装置(100)を備えているディスクブレーキ(120)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載した、車両、特に商用車のためのディスクブレーキ用調整装置に関する。本発明はこのような調整装置を備えたディスクブレーキにも係わる。
【背景技術】
【0002】
車両および所定の技術的機器は、運動エネルギを変換するために、しばしば摩擦ブレーキを使用する。その際、特に乗用車と商用車の分野ではディスクブレーキが有利である。ディスクブレーキの代表的な構造形式の場合、ディスクブレーキは、一般的には2個のブレーキパッドとブレーキディスクからなる内側の機構と共に、ブレーキキャリパを備えている。内側の機構には、空気圧操作のシリンダを介して、シリンダ力が加えられ、例えばブレーキ回転レバーを備えた偏心機構によって増幅され、そして締付け力としてねじ付きスピンドルを介してブレーキパッドとブレーキディスクに伝達される。この場合、ねじ付きスピンドルを介して、ブレーキディスクとブレーキパッドの摩耗が補償される。
【0003】
ブレーキパッドが構造的に摩耗部品として設計されるので、ブレーキパッドは一般的にブレーキディスクよりも軟らかい。すなわち、パッドはその使用期間にわたってパッド厚さが変化し、摩耗する。ブレーキディスクも摩耗する。この摩耗のため、摩耗調整が摩耗による変化を補償し、それによって一定の空隙を生じるようにすることが必要となる。ブレーキの応答時間を小さく保つため、ブレーキディスクのクリアランスを保証するためおよび限界負荷の場合のためのストロークの予備を貯えるために、一定の空隙が必要になる。
【0004】
特に商用車のためのディスクブレーキは一般的に調整装置を装備している。この調整装置は運動ねじを有する少なくとも1本の調節スピンドルに作用する。調整装置はブレーキパッドとブレーキディスクの摩耗によって大きくなるディスクブレーキの空隙を一定に保つ。そのために、調整装置は例えば偏心レバーのようなアクチュエータに対するインターフェースを備えている。調整装置は、空隙が所定の値を有する限り、運動ねじを駆動しない。調整装置はさらに、過負荷保護装置を備えている。この過負荷保護装置は調節スピンドルと摩擦対との間の力連結の際に作用する。なぜなら、もしそうしないと、調整装置がさらに作用する駆動トルクによって破壊されるからである。
【0005】
調整装置はさらに、フリーホイールを必要とする。このフリーホイールはアクチュエータの戻りストロークにおいて、運動ねじが反対方向に駆動されて空隙が再び大きくなるのを防止する。この機能を実現するために、しばしば従来の工業用フリーホイールが使用される。このフリーホイールは高い機械的精密さを有する。この高い精密さは、個々の部品の製作の際に個々の部品が小さな許容誤差を有することによって得られる高い精度によって生じる。
【0006】
従来の工業用フリーホイールの機械的精密さは、ディスクブレーキ用調整装置のコスト構造に不利に作用する。なぜなら、従来の工業用フリーホイールの精密さがディスクブレーキの調整装置における使用のためには必ずしも必要ではないからである。
【0007】
摩耗調整装置の一例が文献独国特許出願公開第102004037771A1号明細書に記載されている。その際、駆動装置回転運動は例えば、トルク制限装置、例えばボール傾斜路を有するフリーホイール兼過負荷クラッチ装置から、連続的に作用するクラッチ(摩擦クラッチ)を経て、押圧トランプの調節スピンドルに伝達される。その際、空隙が連続的に調節される。
【0008】
このような調整装置100’が図12に示してある。調整装置は実質的に次の機能要素からなっている。
・調整装置軸線102を有する軸101
・軸受ディスク103
・スラストベアリング104
・つば付きブッシュまたはスペーサスリーブ105
・シフトフォークまたは駆動リング106
・フリーホイール兼過負荷クラッチ装置107
・クラッチリング108
・円錐クラッチ109
・スリーブ円錐部110
・調節スピンドルに作用するための外側プロファイル112を有するばねスリーブ11
・付勢ばね113
・外側プロファイル114を有する星形回転伝動部材115
・駆動ジャーナル116
説明については独国特許出願公開第102004037771A1号明細書が参照される。
【0009】
揺動運動がブレーキ回転レバーから、駆動リング106を備えたシフトフォークと、調整装置のフリーホイール兼過負荷クラッチ装置107に伝えられる。
【0010】
車両技術では、例えば組立ておよび保守整備の際に、絶えず重量とコストを低減する必要がある。同時に、エネルギ、すなわち燃料を節約すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の課題は、従来技術よりも低コストで製作可能なディスクブレーキ用調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、請求項1の対象によってこの課題を解決する。本発明はさらに、本発明に係る調整装置を備えたディスクブレーキを提供する。
【0013】
請求項1の特徴によれば、内側リングと相対的に保持器を回転させることによっておよびそれに続いて適当な手段によって保持器を内側リング上でかみ合い連結的に固定保持することによって、圧縮ばねが保持器内で予圧縮されている。
【0014】
すなわち、本発明は、フリーホイールの重要な部品ができるだけ大きな許容誤差でそしてそれによって低コストで製作可能であるように、ディスクブレーキの調整装置のためのフリーホイールを形成するという思想に基づいている。この場合、発生する部品許容誤差は、フリーホイールの内側リングと相対的に保持器を回転させることによりおよびそれに続いてフリーホイールの内側リング上で保持器を固定保持することにより、保持器内で圧縮ばねを予圧縮することによって補償される。なぜなら、それによってフリーホイールの締付けローラが圧縮ばねによって内側リングの締付けくさび内に押され、フリーホイールの個々の部品の許容誤差が比較的に大きいにもかかわらずフリーホイールの申し分のない機能が保証されるからである。
【0015】
本発明の有利な実施形態では、締付けくさびの締付け角度が2.6°と4.2°の間の角度によって形成されている。この比較的に大きな許容誤差はコストを低減するように、ひいては有利に作用する。フリーホイールの圧縮ばねの予圧縮により、締付け角度の許容誤差が大きいにもかかわらず、フリーホイールの申し分のない機能が保証される。
【0016】
本発明の有利な実施形態では、フリーホイールの内側リングと外側リングがそれぞれ、十分な許容誤差を有する正味寸法での変形または一次成形を可能にする変形法または一次成形法によって製作されている。それによって、内側リングと外側リングの切削による後加工が不要であるかまたは内側リングと外側リングの切削による後加工を最小限に制限することができる。従って、内側リングと外側リングの製作コストを、従来技術よりも低減することができるので有利である。
【0017】
本発明の他の実施形態では、フリーホイールの保持器が、それぞれ合成樹脂材料から作られた多数の保持器セグメントからなっている。それによって、保持器セグメントを製造する射出成形金型を有利に簡単化し、それによって低コストで形成することができる。これは特に、保持器セグメントの最終幾何がフィルムヒンジを折り曲げることによって生じるように、保持器セグメントが構造的に形成されている場合である。それによって、保持器セグメントを製造する射出成形金型が有利に簡単化されるので、金型はスライダなしに、ひいてはきわめて低コストで形成可能である。
【0018】
本発明の他の実施形態では、フリーホイールの保持器が合成樹脂材料から平らな部品として一体に製作され、組立ての際に初めて、この平らな部品の多数のフィルムヒンジを折り曲げることによっておよびスナップ連結部を係止することによって、保持器の最終幾何が生じる。それによって、保持器を製造する射出成形金型が有利に簡単化されるので、金型はスライダなしに、ひいてはきわめて低コストで形成可能である。
【0019】
本発明はさらに、本発明に係る調整装置を備えたディスクブレーキを提供する。このディスクブレーキは、本発明に係る調整装置によって低コストで、ひいては有利に製作可能である。
【0020】
本発明の他の有利な実施形態は従属請求項から明らかである。
【0021】
本発明に係る対象の実施形態が図に示してある。次に、この実施形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る調整装置のフリーホイールの断面図である。
図2図1に示した本発明に係る調整装置のフリーホイールの分解斜視図である。
図3図1に示した本発明に係る調整装置のフリーホイールの保持器の部分拡大斜視図である。
図4】本発明に係る調節装置のフリーホイールの実施形態の変形の断面図である。
図5図4に示した本発明に係る調整装置のフリーホイールの分解斜視図である。
図6図4に示した本発明に係る調整装置のフリーホイールの保持器の組立て状態を示す部分拡大斜視図である。
図7図6に示した保持器の非組立て状態を示す実施形態の変形の部分拡大斜視図である。
図8】本発明に係る調整装置のフリーホイールの他の実施形態の変形の断面図である。
図9図8に示した本発明に係る調整装置のフリーホイールの分解斜視図である。
図10図8に示した本発明に係る調整装置のフリーホイールの保持器の非組立て状態を示す部分拡大斜視図である。
図11図8に示した本発明に係る調整装置のフリーホイールの保持器の組立て状態を示す部分拡大斜視図である。
図12】従来技術の調整装置の部分断面図である。
図13】本発明に係る調整装置を備えた本発明に係るディスクブレーキの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
従来技術による調整装置100’については、既に上記において図12と関連して説明した。ここでは説明を繰り返さない。
【0024】
次に、ディスクブレーキ120の調整装置100用の締付けローラ型フリーホイールについて説明する。ディスクブレーキ120は図13に示してあり、後で説明する。締付けローラ型フリーホイールの場合、圧縮ばね12が締付けローラ7を、締付けローラ7と共に回転するフリーホイール1の内側リング2とフリーホイール1の外側リング3との間で、軽く押圧している。それによって、締付けローラ7はその回転方向に依存して収容室または締付けくさび9内でくさび作用を受ける。
【0025】
締付けローラ7の収容室が圧縮ばね12から離れる方向に浅くなっているので、内側リング2が外側リング3と相対的に大きく回転すればするほど、伝達されるトルクは大きくなる。形成された締付けくさび9の迎え角または締付け角を適切に選択することにより、潤滑が最良の場合にも、物理的原因で、この構造は絶対に滑らず、自己ロックの状態となる。そのためには、締付けくさび9の迎え角または締付け角は、締付けローラ7と外側リング3との間で生じるすべり摩擦係数μのアークタンジェント以下であるように選定しなければならない。
【0026】
テーパ角または締付け角がアークタンジェント(μ)よりも大きく選定されると、フリーホイール1は滑り、確実に作用しない。
【0027】
回転方向が逆転するかあるいは外側の回転数が内側の回転数よりも大きいと、締付けローラ7は圧縮ばね12の方へ転動し、それによって締付け作用が解除される。
【0028】
商用車用のディスクブレーキ120の調整装置100については、フリーホイール1の機能は次のために必要である。すなわち、調整装置100の戻り行程で調 整装置100のアクチュエータが調節スピンドルを戻し回転せず、それによってディスクブレーキの空隙が所定の値のままになるようにするために必要である。
【0029】
調整装置100の送り行程では、調節スピンドルの駆動を保証するために、フリーホイール1の摩擦連結が必要である。その際、フリーホイール1によって伝達可能なトルクを十分な大きさにして、フリーホイール1が滑らないようにするだけでよい。過負荷防止部、ひいてはフリーホイール1の応答トルクを正確に定めることができるので、フリーホイール1の申し分のない機能を失うことなく、フリーホイール1の部品の機能寸法が比較的に大きな許容誤差内で変動可能である。
【0030】
ディスクブレーキ120の調整装置100のためのこのようなフリーホイール1を設計する場合、μ=0.08の最小の摩擦係数が守られる。これは約2.6°〜約4.2°の締付けくさび9のテーパ角または締付け角を可能にする。フリーホイール1のすべての締付けくさび9が4.2°の最大締付け角を上回らないときにも、伝達すべき最小締付け力が達成されるので、フリーホイール1の締付けくさび9毎に、2.6°〜4.2°の締付け角を守ることのみを保証すべきである。締付け角が小さい場合、フリーホイール1の望まれる寿命のためには、上回るべきでないヘルツの接触応力(Hertzsche Pressung)を守ることだけを保証すればよい。
【0031】
図1には、(詳細に示していないが、図12に関連して容易に想像可能である)ディスクブレーキ120(図13参照)、特に商用車用のディスクブレーキ120の調整装置100の本発明に係るフリーホイール1が示してある。フリーホイール1は内側リング2と外側リング3を備えている。フリーホイール1の内側リング2と外側リング3は多数のころがり軸受ボール4と共に、スラストボールベアリングを形成する。このスラストボールベアリングによって、フリーホイール1の内側リング2はフリーホイール1の外側リング3と相対的に回転可能に軸受されている。フリーホイール1はさらに、内側リング2と外側リング3をそれぞれ通過する貫通穴5a、5bを有する。フリーホイール1はさらに、保持器6aを備えている。この保持器内に多数の締付けローラ7が保持されている。保持器6aは貫通穴5a、5bに対して半径方向において内側リング2と外側リング3との間に配置され、内側リング2と外側リング3によって完全に取り囲まれている。
【0032】
図2には、図1のフリーホイール1が分解斜視図で示してある。
【0033】
内側リング2は段差部8を有する。この段差部8はその外周に多数の締付けくさび9を有する。この締付けくさびは段差部8の外周に規則的な角度ピッチで配置されている。内側リング2はさらに肩範囲10を有する。この肩範囲10は貫通穴5aに対して平行に延在する穴11を有する。この穴は周方向において規則的な角度ピッチで配置されている。肩範囲とは反対の段差部8の側は溝を有する。この溝内には、フリーホイール1の組立て状態でころがり軸受ボール4が配置され、内側リング2および外側リング3と共にスラストボールベアリングを形成している。
【0034】
内側リング2と特に締付けくさび9に関する精度要求が上述したように比較的に小さいので、内側リング2は好ましくは、例えば冷間成形の場合のように、十分な許容誤差を有する正味寸法での変形を可能にする変形法によって製作される。この場合、好ましくは、内側リング2は鋼から作られている。その代わりに、内側リング2は、例えば粉末金属焼結法の場合のように、十分な許容誤差を有する正味寸法での変形を可能にする変形法によって製作可能である。この場合、内側リング2は粉末金属、好ましくは焼結鋼から作られる。その代わりに、内側リング2は、工業用セラミック材料から粉末金属焼結法によって有利に作ることができる。内側リング2の製作に関しては、ころがり軸受産業において普通である小さな部品許容誤差、特に締付けくさび9の小さな許容誤差を達成するための、内側リング未加工品のコストのかかる切削をできるだけ省略することが本発明にとって重要である。外側リング3の製作は内側リング2の製作に関する実施と同様に行われる。
【0035】
同様に図2には圧縮ばね12が示してある。この圧縮ばね12はここではコイルばねとして形成され、組立て状態で保持器6aに掛止めされている。圧縮ばね12は組立て状態で周方向において押圧部材13に作用し、この押圧部材はさらに締付けローラ7に作用し、組立て状態で圧縮ばね12によって締付けローラ7を締付けくさび9内に押し込む。すなわち、圧縮ばね12、押圧部材13および締付けローラ7はフリーホイール2の1つの機能構造グループを形成する。この構造グループは保持器6aの外周に規則的な角度ピッチで多重配置され、保持器6aによってそれぞれ保持されている。保持器6aへの機能構造グループの部品12、13、7の装着は、本発明のこの実施形態の変形では、ここでは図示していない円筒状補助装置によって有利に行われる。予備組立てが完了した保持器6aが図3に示してある。
【0036】
保持器6aは好ましくは合成樹脂材料から射出成形法によって作られている。そのためには、その閉じた構造的形成によって、複数のスライダを有する射出成形金型が必要である。この場合、スライダは保持器6aのこのような幾何型押し部の形を仕上げる。このスライダはその配置または幾何に基づいて、金型の分離面に対して平行にあるいは金型の分離面に対して三次元的に傾斜させて取り外さなければならない。
【0037】
押圧部材13はここでは例えば、合成樹脂材料から射出成形法で作られた別個の部品として示してある。その代わりに、押圧部材13は圧縮ばね12の一端の周りに射出成形することによっても形成することができる。さらに、押圧部材13の機能が例えば曲げられた線材突出部として圧縮ばね12に統合されているときには、押圧部材13を省略することもできる。
【0038】
締付けローラ7および押圧部材13と共に保持器6a内に挿入された圧縮ばね12は、フリーホイールの組立ての過程で予圧縮される。予圧縮工程のために、機能構造グループと予備組立てされた保持器6aはフリーホイール1の内側リング2上にセットされ、そして締付けローラ7が内側リング2の締付けくさび9内に係止するまで回転させられる。そして、保持器6aはさらに回転させられ、内側リング2の肩範囲10の穴11と、保持器6aに一体に形成された対応するピン37とによって軸方向に錠止される。
【0039】
このようにして行われた圧縮ばね12の予圧縮により、締付けローラ7は、締付けくさび9内での締付け角度の比較的に大きな許容誤差にもかかわらず、その機能を確実に果たすことができる。圧縮ばね12の設計にとって重要な構造的基準は、締付けくさび7の締付け角度が比較的に大きな許容誤差で形成されているときでも、それぞれの締付けローラ7を締付けくさび9内に確実に押し込むために、できるだけ大きな有効ばね変位である。
【0040】
保持器6aと圧縮ばね12には、高い精度が要求されない。なぜなら、締付けローラ7を締付けくさび9内に押し込むばね力が非常に小さくてもよいからである。小さなばね力により、自由回転運転中のフリーホイール1の引きずりトルクが非常に小さい。それによって、ばね力がその都度比較的に大きく変化するときに、フリーホイール1の機能が確実に発揮される。これはそれぞれの締付けくさび9内での比較的に大きく異なるばね変位を許容する。従って、この方策は、本発明に係るフリーホイール1の一連の部品2、3、6a、12、13を、広い許容誤差帯域で、ひいては低コストで設計することを可能にする。
【0041】
繰り返しを避けるために、以下において、図1図3に示した本発明に係るフリーホイール1の上述の実施形態の変形に対する相違点、変更および補足についてのみ説明する。
【0042】
図5図6には、保持器6bが多数の保持器リンク14aからなるチェーンとして多リンクで作られている本発明の実施形態の変形が示してある。各保持器リンク14aは、圧縮ばね12、押圧部材13および締付けローラ7からなるフリーホイール2の機能構造グループを1つずつ収容する。
【0043】
このようにして予め組立てられた保持器リンク14aは、それぞれ2枚の側板15aとピン17aを介して互いに連結されて保持器6bを形成する。この場合、側板はそれぞれアイ16aを有し、このアイ16aがピンに掛けられる。貫通するアイ16aを有する側板15aの形成により、側板15aが比較的に小さな剛性を有するので、許容誤差は側板15aの弾性変形または自己ひずみによって簡単に、ひいては有利に克服可能である。本発明のこの実施形態の変形では、スライダ13がそれに一体連結された案内突出部18を介してアイ16a内を案内されている。
【0044】
保持器リンク14aからなるチェーンとしての保持器6bの形成は、保持器6bの簡単な組立てを可能にする。この組立てのために補助装置が不要である。なぜなら、個々の保持器リンク14aに最初にそれぞれ、圧縮ばね12、押圧部材13および締付けローラ7が装備され、続いてこの保持器リンクが次の保持器リンク14aまたはその側板15aによって互いにしっかりと接続されるからである。
【0045】
ある保持器リンク14aの場合、ピン17aが他の保持器リンク14aの場合よりも長く形成されている。それによって、このピン17aは、フリーホイール1の内側リング2の穴11を介してフリーホイール1の内側リング2に対してかみ合い連結することによって、圧縮ばね12を持続的に予圧縮するために使用される。
【0046】
保持器6bの保持器リンク14aは好ましくは射出成形法で合成樹脂材料から作られる。そのためには、保持器リンク14aの構造的形成により、特に貫通するアイ16aを有する側板15aの形成により、スライダを有する射出成形金型が必要である。この場合、スライダは保持器リンク14aにこのような幾何型押し部を形成する。この幾何型押し部はその配置または幾何に基づいて、金型の分離面に対して平行にまたは金型の分離面に対して三次元的に傾斜させて取り外さなければならない。
【0047】
図7には本発明の他の実施形態の変形が示してある。この実施形態の変形の場合、保持器6cが多数の保持器リンク14bからなるチェーンとして多リンク状に形成されている。各保持器リンク14bは、圧縮ばね12、押圧部材13および締付けローラ7からなる、フリーホイール2の機能構造グループをそれぞれ1つ収容している。
【0048】
このようにして予め組立てられた保持器リンク14bは、それぞれ1つのアイ16bを有するそれぞれ2つの側板15bと、保持器リンク14bにそれぞれ一体連結されかつそれぞれアイ16bが掛けられるピン17bとを介して、互いに連結されて保持器6cを形成している。図5図6の実施形態の変形と異なり、個々の保持器リンク14bのアイ16bはそれぞれフィルムヒンジ19を介してそれぞれの保持器リンク14bに装着されている。本発明のこの実施形態の変形では、スライダ13は同様に、スライダ13に一体連結された案内突出部18を介してアイ16a内を案内されている。
【0049】
貫通するアイ16bを有する側板15bの形成により、側板15bが比較的に小さな剛性を有するので、許容誤差は側板15bの弾性変形または自己ひずみによって簡単に、ひいては有利に克服可能である。
【0050】
保持器リンク14bからなるチェーンとしての保持器6cの形成は、保持器6cの簡単な組立てを可能にする。この組立てのために補助装置が不要である。なぜなら、個々の保持器リンク14bに最初にそれぞれ、圧縮ばね12、押圧部材13および締付けローラ7が装備され、続いてこの保持器リンクが次の保持器リンク14bまたはその側板15bによって互いにしっかりと接続されるからである。そのために、各側板15bは各フィルムヒンジ19を介して先ず最初に90°だけ回転させられる。その際、側板突出部20は保持器リンク14cと一体に形成されたウェブ21の背後に係止し、そして各側板15bをその最終位置に錠止する。この機能は圧縮ばね12、押圧部材13および締付けローラ7の組立てを容易にする。というのは、側板15bのアイ16bに挿入される案内突出部18を介して押圧部材12を案内するために、先ず最初に保持器リンク14cの一方の側板15bを閉じることができるからである。
【0051】
保持器リンク14bの場合、ピン17bが他の保持器リンク14bの場合よりも長く形成されている。それによって、このピン17bは、フリーホイール1の内側リング2の穴11を介してフリーホイール1の内側リング2に対してかみ合い連結することによって、圧縮ばね12を持続的に予圧縮するために使用される。
【0052】
保持器6cの保持器リンク14bは好ましくは射出成形法で合成樹脂材料から作られる。保持器リンク14bの構造的形成により、特にフィルムヒンジ19によって保持器リンク14bに一体連結された側板15bの形成により、射出成形金型による保持器リンク14bの製作が簡単である。というのは、それによって、保持器リンク14bのすべての幾何型押し部を、金型の分離面に対して垂直に取り外すことができるからである。その結果、このような射出成形金型ではスライダが不要である。
【0053】
図8図11には、本発明の他の実施形態の変形が示してある。この実施形態の変形の場合には、保持器6dが、図4図7の実施形態とは異なり、および図1図3の実施形態に類似して、一体に形成されている。
【0054】
図10には保持器6dの非組立て状態が示され、図11には組立て状態が示されている。保持器6dはその非組立て状態で、図1図3の実施形態とは異なり、平らな部品として形成されている。この場合、用語「平らな」は、保持器6dの機能的で幾何学的なすべての形成部が1つの平面、ここでは図面の面内に配置され、それに対して垂直な平面内では保持器6dの壁厚だけが延在していることを意味する。
【0055】
保持器6dは多数の側板部分22を備えている。これは図10によくわかるように示してある。側板部分22は規則的な角度ピッチで保持器6dの外周に分配されている。各側板部分22は長穴23aを有する。この長穴23aは押圧部材13を案内する働きをし、保持器6dの組立て状態で長穴23aは押圧部材の案内突出部18に係合する。各側板部分22はそれぞれロック部分24によって画成されているので、ロック部分24は同様に規則的な角度ピッチで保持器6dの外周に分配されている。
【0056】
ロック部分24は連結ウェブ25を有し、この連結ウェブを介してロック部分24がそれぞれ側板部分22に一体的に連結されている。ロック部分24はさらにスナップフック部分26を備えている。このスナップフック部分は互いに対向する対称の2つのスナップフック27a、27bを形成している。保持器6dの非組立て状態でスナップフック部分26のスナップフック27a、27bはそれぞれ円状保持器6dの中心の方へ半径方向に向いている。連結ウェブ25とスナップフック部分26はフィルムヒンジ28によって連結されている。
【0057】
連結ウェブ25には対向部分29が接続している。この対向部分は同様にフィルムヒンジ30によって連結ウェブ25に連結されている。対向部分29には2つの一部側板部分31a、31bが接続している。この一部側板部分はフィルムヒンジ32を介して対向部分29に連結されている。両一部側板部分31a、31bは溝33を有し、この溝には、保持器6dの組立て状態で両スナップフック27a、27bが係合する。両一部側板部分31a、31bはそれぞれ切込み34a、34bを有する。両切込み34a、34bは保持器6dの組立て状態で長穴23bを形成する(図11も参照)。対向部分29およびそれと共に両一部側板部分31a、31bは保持器の非組立て状態でそれぞれ円状保持器6dの中心から半径方向外側に向いている。スナップフック部分26と対向部分29はそれぞれ、段差部35を備えている。保持器6dの組立て状態で、圧縮ばね12がこの段差部に支持される。
【0058】
保持器6dの組立ての際先ず最初に、ロック部分24の対向部分29がフィルムヒンジ30を介して90°曲げられる。その後で、それと同様に、スナップフック部分26がフィルムヒンジ28を介して90°曲げられる。今や、押圧部材13の圧縮ばね12を組み立てることができる。その際、圧縮ばねは両段差部35に支持され、一方、押圧部材13はその一方の案内突出部18を介して側板部分22の長穴23a内で案内される。その後で、両一部側板部分31a、31bがフィルムヒンジ32を介してさらに90°曲げられるので、両一部側板部分31a、31bは側板部分22に対向し、押圧部材の他の案内突出部18が長穴23bを形成する一部側板部分31a、31bの切込み34a、34bに係合する。その後で、スナップフック部分26の両スナップフック27a、27bが両一部側板部分31a、31bの溝33に係止される。隣接するロック部分24が上述のように組み立てられたときに、締付けローラ7の組立てが行われる。それによって、保持器6dが続けてまたは部分的に組み立てられる。
【0059】
この場合さらに、保持器6dの軸方向へのスナップフック27a、27bの張り出し部が、内側リング2に穿設された対応する対向輪郭36に保持器6dを固定するために利用される。
【0060】
保持器6dは好ましくは射出成形法で合成樹脂材料から作られる。保持器6dを平らな部品として構造的に形成したことにより、保持器6dを製作するための射出成形金型が簡単化される。というのは、それによって、保持器のすべての幾何型押し部を金型の分離面に対して垂直に取り外すことができるからである。その結果、このような射出成形金型ではスライダが不要である。
【0061】
ディスクブレーキ120、特に商用車用ディスクブレーキは、調整装置100(ここでは図示していないが、図12に関連して容易に想像可能である。)を備えている。この調整装置は運動ねじを有する少なくとも1本の調節スピンドル125に作用する。調整装置100はブレーキパッド123とブレーキディスク121の摩耗によって大きくなるディスクブレーキ120の空隙を一定に保持する。
【0062】
調整装置100はさらに、フリーホイール1を有する。このフリーホイールは調整装置100の戻り行程で、調節スピンドル125の運動ねじが反対方向に駆動されて空隙が再び拡大するのを防止する。
【0063】
図13は、フリーホイール1を有する本発明に係る調整装置100を備えた本発明に係るディスクブレーキ120を概略的に示している。
【0064】
図13の空気圧式ディスクブレーキの構造と機能については、独国特許第19729024C1号明細書の詳細な記載が参照される。図13には次の構成要素が記載されている。ディスクブレーキ120、ブレーキディスク121、ブレーキキャリパ122、ブレーキパッド123、横材124、スピンドル軸線126を有する第1調節スピンドル125、第2スピンドル軸線128を有する第2調節スピンドル127、押圧部材129、スプロケット131を有する同期ユニット130、チェーン132、偏心体141を有する回転レバー140。
【0065】
回転レバー140は駆動要素143を備え、この駆動要素はフリーホイール1を有する調整装置100の駆動リング106のシフトフォークと協働する。駆動要素143と駆動リング106は調整装置100のための調整駆動装置142を形成する。調整装置100はここでは第1調節スピンドル125内に配置されている。調整機器1について詳しく説明する。調整機器1は電動操作式ディスクブレーキにも適している。
【0066】
ここではフローティングキャリパとして形成されたブレーキキャリパ122がブレーキディスク121を跨いでいる。ブレーキディスク121の両側にブレーキパッド123が配置されている。本実施形態では、ディスクブレーキ120は2本の調節スピンドル125、127を備えた2スタンプ型ブレーキ(zweistempelige Bremse)として形成されている。
【0067】
締付け側のブレーキパッド123は押圧部材129を介して調節スピンドル125、127に連結されている。反作用側の他のブレーキパッド123はブレーキディスク121の他方の側でブレーキキャリパ122内に固定されている。調節スピンドル125、127はそれぞれ、ブリッジとも呼ばれる横材124内にねじ回転可能に配置されている。
【0068】
横材124、ひいては調節スピンドル125、127は締付け装置、ここでは回転レバー140によって操作可能である。
【0069】
ディスクブレーキ120はいろいろな動力駆動装置を備えることができる。回転レバー140はここでは例えば空気圧で操作される。回転レバー140は
両調節スピンドル125、127は詳しく説明しない方法で、スプロケット131とチェーン132を備えた同期ユニット130によって回転可能に連結されている。
【0070】
本発明は上記の実施形態に限定されず、特許請求の範囲内で変更可能である。
【0071】
フリーホイール1を備えた調整装置100は、1スタンプ型ディスクブレーキと3本以上の調節スピンドルを備えたディスクブレーキにも使用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 フリーホイール
2 内側リング
3 外側リング
4 ころがり軸受ボール
5a 貫通穴
5b 貫通穴
6a 保持器
6b 保持器
6c 保持器
6d 保持器
7 締付けローラ
8 段差部
9 締付けくさび
10 肩範囲
11 穴
12 圧縮ばね
13 押圧部材
14a 保持器リンク
14b 保持器リンク
15a 側板
15b 側板
16a アイ
16b アイ
17a ピン
17b ピン
18 案内突出部
19 フィルムヒンジ
20 側板突出部
21 ウェブ
22 側板部分
23a 長穴
23b 長穴
24 ロック部分
25 連結ウェブ
26 スナップフック部分
27a スナップフック
27b スナップフック
28 フィルムヒンジ
29 対向部分
30 フィルムヒンジ
31a 一部側板部分
31b 一部側板部分
32 フィルムヒンジ
33 溝
34a 切込み
34b 切込み
35 段差部
36 対向輪郭
37 ピン
100、100’ 調整装置
101 軸
102 調整軸線
103 支持ディスク
104 スラスト軸受
105 スペーサスリーブ
106 駆動リング
107 フリーホイール兼過負荷クラッチ装置
108 クラッチリング
109 円錐クラッチ
110 スリーブ円錐部
111 ばねスリーブ
112 外側成形部
113 予備締付けばね
114 外側成形部
115 星形回転伝動部材
116 駆動ジャーナル
120 ディスクブレーキ
121 ブレーキディスク
122 ブレーキキャリパ
123 ブレーキパッド
124 横材
125 第1調節スピンドル
126 第1スピンドル軸線
127 第2調節スピンドル
128 第2スピンドル軸線
129 押圧部材
130 同期ユニット
131 スプロケット
132 チェーン
140 回転レバー
141 偏心体
142 調整駆動装置
143 駆動要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13