特許第6643323号(P6643323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643323
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】クローポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/18 20060101AFI20200130BHJP
   F04C 23/00 20060101ALI20200130BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   F04C18/18 A
   F04C23/00 F
   F04C29/00 B
   F04C29/00 C
   F04C29/00 D
   F04C29/00 G
【請求項の数】30
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-512733(P2017-512733)
(86)(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公表番号】特表2017-527735(P2017-527735A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】EP2015069637
(87)【国際公開番号】WO2016034485
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2018年7月25日
(31)【優先権主張番号】202014007117.9
(32)【優先日】2014年9月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508206070
【氏名又は名称】レイボルド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】バーチ,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】タナ,クライブ
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−507641(JP,A)
【文献】 特開2011−132869(JP,A)
【文献】 特開平04−259691(JP,A)
【文献】 特開平01−104992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/18
F04C 23/00
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロータを夫々支持する2つのロータ軸を備えており、
各ロータは、2つの爪部及び2つの爪凹部を有しており、
1つのポンプ段を夫々形成する複数のロータ対が設けられており、各ポンプ段では、一方のロータの部は、他方のロータの爪凹部と協働し、
ポンプハウジングが、ポンプ段毎に少なくとも1つのポンプ室を画定しており、
前記ポンプハウジングの分離面が、前記ロータ軸の長手方向に延びており、
隣り合うポンプ段の間に配置された中間壁が2つの部分から構成されており、
前記中間壁には、連結チャネルが隣り合うポンプ段を互いに連結するために設けられており、
前記連結チャネルは、前記ロータ軸によって部分的に閉じられていることを特徴とするクロー式ポンプ。
【請求項2】
前記ポンプハウジングは2つの部分から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のクロー式ポンプ。
【請求項3】
記中間壁の分離面が前記ロータ軸の長手方向に延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクロー式ポンプ。
【請求項4】
前記中間壁は、前記分離面の方に開いて前記ロータ軸を収容するために設けられている凹部を有していることを特徴とする請求項3に記載のクロー式ポンプ。
【請求項5】
前記中間壁は前記ポンプハウジングの2つのハウジング部分と一体に夫々形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のクロー式ポンプ。
【請求項6】
前記連結チャネルは前記分離面の方に開いていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項7】
前記連結チャネルの口及び出口が、前記分離面の異なる側に配置されていることを特徴とする請求項3乃至のいずれか一項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項8】
前記連結チャネルの入口及び出口は、前記ポンプハウジングの異なるハウジング部分に形成されていることを特徴とする請求項7に記載のクロー式ポンプ。
【請求項9】
前記ロータの位置に応じて、前記連結チャネルの口及び/又は出口が、関連するロータによって完全に閉じられているか、部分的に閉じられているか、又は完全に開かれていることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項10】
前記入口及び/又は前記出口は、断面が第1のポンプ段から最後から2番目のポンプ段に減少するように構成されていることを特徴とする請求項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項11】
前記入口及び/又は前記出口は、断面が第1のポンプ段から最後から2番目のポンプ段に連続的に減少するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載のクロー式ポンプ。
【請求項12】
前記入口及び/又は前記出口は、最後のポンプ段の断面が先行するポンプ段のいずれかの断面より大きいように構成されていることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか一項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項13】
前記爪部及び/又は前記爪凹部の配置が少なくとも2つのポンプ段で同一であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項14】
前記爪部及び/又は前記爪凹部の配置が全てのポンプ段で同一であることを特徴とする請求項13に記載のクロー式ポンプ。
【請求項15】
異なるポンプ段の前記ロータは多くとも前記ロータの軸方向の幅に関して異なっていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項16】
前記ロータ軸及び前記ロータは前記ポンプハウジングに配置される前に予め組み立てられた状態であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項17】
前記2つのロータ軸及び関連するロータは一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項18】
前記2つのロータ軸に、回転ピストン段を形成するための回転ピストンとして構成されているロータが夫々配置されていることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項19】
前記2つのロータ軸は、前記ポンプハウジングにグリース潤滑式転がり軸受によって支持されていることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項20】
前記2つのロータ軸を同期させるための油なしの同期装置が設けられていることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか一項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項21】
前記2つのロータ軸は、同期のためのベルト及び/又はチェーンを介して互いに連結されていることを特徴とする請求項1乃至20のいずれか一項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項22】
前記2つのロータ軸は別個のロータによって夫々駆動され、2つのロータは互いに同期することを特徴とする請求項1乃至21のいずれか一項に記載のクロー式ポンプ。
【請求項23】
前記2つのロータは、電子同期ユニット又は力伝達なしのギアを介して互いに同期することを特徴とする請求項22に記載のクロー式ポンプ。
【請求項24】
求項1乃至23のいずれか一項に記載のクロー式ポンプに使用されるロータ軸ユニットであって、
複数のロータを支持するロータ軸を備えており、
前記ロータ及び前記ロータ軸は一体に形成されていることを特徴とするロータ軸ユニット。
【請求項25】
前記ロータは同一のロータ外形を有していることを特徴とする請求項24に記載のロータ軸ユニット。
【請求項26】
前記ロータはクロー式ポンプのポンプ段を形成していることを特徴とする請求項24又は25に記載のロータ軸ユニット。
【請求項27】
前記ロータ軸は、前記ロータと共に連続的な鋳造外形として製造されていることを特徴とする請求項26に記載のロータ軸ユニット。
【請求項28】
前記ロータ軸は、前記ロータと共に押し出された外形として製造されていることを特徴とする請求項27に記載のロータ軸ユニット。
【請求項29】
記ロータを製造するために、前記押し出された外形に空間が設けられていることを特徴とする請求項28に記載のロータ軸ユニット。
【請求項30】
前記ロータの幅が異なることを特徴とする請求項29に記載のロータ軸ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のポンプ段を備えたクロー式ポンプに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2221482 号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このタイプのクロー式ポンプが、例えば米国特許第5049050 号明細書及び米国特許第8308458 号明細書に記載されている。多段のクロー式ポンプは、爪状の外形を有するロータが配置されている2つのロータ軸を備えている。従って、各ロータの外形は、関連する爪凹部と共に1つ又は2つの爪部を有する。媒体が、反対方向に回転する2つの協働するロータによって運ばれ、その際、一方のロータの爪部が他方のロータの爪凹部と係合する。多段のクロー式ポンプでは、ポンプ段毎にロータ軸の長手方向に対して径方向の吸込み及び径方向の排出が生じる。クロー式ポンプのロータ軸及びロータを囲むポンプハウジング内に、ポンプ段から径方向に排出される流体の方向を変えるために対応するチャネルが配置されているため、流体は、次のポンプ段によって再度径方向に吸い込まれる。個々のクロー式ロータは、例えば圧入によって軸に配置される。軸は、複数の部分から構成されたハウジングに配置されており、このハウジング内に油潤滑式転がり軸受を介して支持されている。2つの軸を同期させるために、各軸は歯車を有している。ハウジングを複数の部分から構成して個々のロータ要素を軸に連結することが必要であるため、生じる多くの公差を補償することが必要である。そのため、組立工程を段階的に行う。従って、第1のハウジング部分内に、第1のポンプ段、つまり2つの対応するロータを有するロータ軸が配置される。続いて、第1のポンプ段を形成するように中間壁を2つのロータ軸上で移動させる。必要に応じて、公差を補償するための対応するディスク又はスペーサを第1のポンプ段内に使用しなければならない。次のポンプ段を形成するために、次の2つのロータ、その後次のハウジング部分を軸上で移動させる。更に次のポンプ段内に、対応する要素が公差を補償するために必要である。従って、複数のポンプ段を備えたクロー式ポンプの組立工程は非常に面倒である。更に2つの軸の正確な同期が必要である。この正確な同期は機械的な伝動装置を介して行われるので、この伝動装置の潤滑が必要である。このため、次に伝動装置と油潤滑式転がり軸受及びポンプ段との間に夫々密閉部分を配置することが必要になる。その結果、製造及び組立ての経費が更に増える。
【0004】
本発明は、前記ポンプの製造及び組立てのコストが明らかに減少する、特に複数のポンプ段を備えたクロー式ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記の目的は請求項1に定義された特徴によって達成される。
【0006】
本発明のクロー式ポンプは、複数のロータを夫々支持している2つのロータ軸を備えている。2つのロータ軸は、ポンプハウジング内に互いに平行に配置されている。ポンプハウジングによって、ポンプ段毎にポンプ室が形成されて、ポンプ室内にロータが配置される。好ましい実施形態によれば、各ロータは2つの爪部及び2つの爪凹部を有している。流体を運ぶために、1つのロータの1つの爪部が、他のロータの爪凹部と夫々協働する。本発明によれば、ポンプハウジングは、ポンプハウジングの分離面がロータ軸の長手方向に延びているように構成されている。特に、ポンプハウジングの分離面は、2つのロータ軸の長手方向の中心面に配置されている。このため、2つのロータ軸が対応して設けられたロータと共にハウジング部分内に置かれ得るという利点がある。従って、組立工程は、1つのポンプ段が他のポンプ段の後に取り付けられるように段階的に行われなくなる。好ましくは、ポンプハウジングは2つの部分から構成されているため、ロータ軸がロータと共に、完全な構成要素として第1のポンプハウジング内に置かれることができ、その後、第1のポンプハウジングはポンプハウジングの第2の部分を取り付けることにより閉じられる。そのため、クロー式ポンプの組立工程は著しく簡略化される。
【0007】
隣り合うポンプ室の間に配置された中間壁は2つの部分から構成されていることが好ましい。中間壁の分離面は、ロータ軸の長手方向に延びる面に設けられている。特に、少なくとも1つの中間壁の分離面はポンプハウジングの分離面と一致する。
【0008】
第1及び/又は最後のポンプ段のポンプ室の中間壁と、任意に同様に設けられてもよい側壁とは、分離面の方向に開いている凹部を有していることが好ましい。前記凹部は、組み立てられた状態でロータ軸を受けて通過させるために機能する。ロータ軸が凹部に簡単に置かれ得るように、前記凹部は実質的に半円状の凹部であることが特に好ましい。更に、2つのハウジング部分の一方に固定して連結されている少なくとも1つの中間壁は一体に構成されていることが好ましい。特に、2つのハウジング部分及び中間壁、任意には更に第1及び/又は最後のポンプ段を収容するポンプ室を形成する側壁が一体に構成され得る。このため、例えば一体化された鋳造部材が可能になる。
【0009】
更に好ましい実施形態によれば、夫々隣り合うポンプ段の中間壁は、隣り合うポンプ段を互いに連結するように構成された連結チャネルと共に形成されている。中間壁にこのような連結チャネルを設けることは、それ自体で特に2段のポンプハウジングの構成から独立した発明を意味する。特に、中間壁に連結チャネルを配置することは、このような連結チャネルが、ポンプ段を囲むポンプハウジングに配置するより更に容易に形成され得るという利点を有する。そのため、従来技術とは異なり、ポンプ段の間の連結チャネルは、ロータ軸に対して実質的に軸方向に延びている。従って、本発明によれば、ポンプ段の対応する入口及び出口が、従来技術のように径方向ではなく、軸方向に配置されている。
【0010】
連結チャネルの特に好ましい実施形態によれば、連結チャネルは中間壁の方向に開いている。この構成は、好ましくは一体に構成された中間壁を備えた2つの部分から構成されたポンプハウジングを設けることに特に関連して有利である。連結チャネルが中間壁の分離面の方に開いているように連結チャネルを配置することは、連結チャネルが簡単に形成され得るという利点を有する。2つの部分から構成されたポンプハウジングでは、連結チャネルが例えばフライス加工等によって形成されることができ、その際、フライス加工の工具は分離面に実質的に垂直に導かれ得る。このような構成の連結チャネルでは、中間壁を軸芯に平行に延びる穴と共に設ける必要がないことが好ましい。
【0011】
本発明の更に好ましい実施形態によれば、連結チャネルは、ロータ軸を収容する、特に半円状の開口部の方向に少なくとも部分的に開いているように配置されている。そのため、連結チャネルの形成が更に簡略化される。従って、連結チャネルは、組み立てられた状態では小さな隙間を除いてロータ軸によって少なくとも部分的に閉じられている。
【0012】
更に好ましい実施形態によれば、中間壁に配置された連結チャネルの入口及び出口が、分離面の異なる側に配置されている。従って、ロータ軸が例えば水平に配置されている場合、入口はロータ軸の中心面の上方に配置され、出口は中心面の下方に配置されている。従って、入口及び出口が異なるハウジング部分に、特に2つのハウジング部分の1つに夫々形成されていることが特に好ましい。
【0013】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、連結チャネルの入口及び/又は出口は、関連するロータによって夫々のロータ位置に応じて完全に閉じられているか、部分的に閉じられているか、又は完全に開かれているように配置されている。ここで、関連するロータは、媒体が流入する領域及び/又は媒体が流出する領域を含むポンプ段毎にロータ対の2つのロータの1つである。この好ましい実施形態では、1つのロータ位置では、入口及び/又は出口の開口部が完全に閉じられていることが特に有利である。このような構成は、対応する開口部が分離壁に配置されて、開口部全体に亘ってロータの側壁が延びているので簡単に実現され得る。従って、入口及び/又は出口の非常に優れた密閉性が達成され得る。密閉性は、特に小さな隙間及び相対的に大きな径方向の被覆のために優れている。優れた密閉緊密性をもたらして、ひいては特に第1のポンプ段から好ましくは最後から2番目のポンプ段への圧縮をもたらすために、入口及び/又は出口の断面が第1のポンプ段から最後から2番目のポンプ段の方向に減少することが好ましい。この減少は連続的又は段階的になされ得る。断面は圧縮によって更に小さくなり得る。最後のポンプ段の入口及び/又は出口の断面は最後から2番目のポンプ段の入口及び/又は出口の断面より大きいことが好ましい。このようにして、ポンプのノイズの発生が低減され得る。
【0014】
本発明の更に好ましい実施形態によれば、爪部及び爪凹部の配置及び向きは、少なくとも2つのポンプ段、好ましくは全てのポンプ段で同一である。特に、少なくとも2つのポンプ段、好ましくは全てのポンプ段は夫々、ロータ外形が同一のロータを有している。この特に好ましい実施形態では、ロータは、軸方向の幅のみ互いに異なっている。このような構成は、本発明の特に好ましい実施形態によれば、ロータ軸及び好ましくは全ての関連するロータを一体の構成で設けることが可能になるという相当な利点を有する。簡略化された製造という利点とは別に、このような構成は更に、同期の正確さに対する要求があまり厳しくないという効果を奏する。ロータと共にロータ軸を一体に構成することは、それ自体でハウジングの構成から独立した発明とみなされるべきである。ロータ軸をロータと一体に構成することはロータ軸及びロータが対応して形成されたハウジングハーフ内に置かれ得るという利点を有するので、これら2つの発明の組合せは特に好ましい。ロータがロータ軸と共に一体に構成されているため、ポンプ段毎に補償される必要がある組立てに関する公差が生じない。特に、製造公差及び組立公差が互いに合計されてしまうことが防止される。
【0015】
任意には、ロータ軸上に夫々の回転ピストンが第1のポンプ段及び/又は最後のポンプ段として配置され得る。この変形例では、ロータ軸がクロー式ロータとして構成されている他のロータと一体に構成されて、回転ピストンとして形成されたロータのみがロータ軸に、例えばロータを所定の位置に圧入することにより配置されることが好ましい。
【0016】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、2つのロータ軸はグリース潤滑式転がり軸受によってポンプハウジングに配置されている。このようにして、運ばれる流体の油潤滑による汚染の危険性が回避される。ポンプ段に油が入り得ない。このため、更に同期装置が油を含まないことが好ましい。同期装置は、2つの反対方向に回転するロータ軸を同期させるために機能する。2つのロータ軸の油なしの同期は、好ましい実施形態によれば、ベルト及び/又はチェーンによって行われる。従って、油潤滑される必要があるギア伝動装置又は少なくとも2つの噛合する歯車を設ける必要がない。
【0017】
機械的な同期装置の代替案として、2つの軸を夫々個別のモータ、特に電気モータによって駆動することが更に可能であり、2つのモータは、電子同期ユニットによって互いに同期することが好ましい。歯車を更に有し得る力伝達なしのギアを使用することが更に可能であり、その理由は、歯車が力伝達なしの構成のために油を差す必要がないためである。
【0018】
本発明は、それ自体で発明としてみなされるべきであって、好ましい実施形態によれば本発明のクロー式ポンプに使用される真空ポンプのためのロータ軸ユニットに更に関する。本発明に係るロータ軸ユニットは、ロータ軸に支持された複数のロータを備えている。ロータ及びロータ軸は一体に形成されている。ロータは、クロー式ポンプに関連して上記に記載されているように、ロータ、好ましくは全てのロータが同一のロータ外形を有するように構成されていることが好ましい。従って、特に好ましい実施形態によれば、ロータは、軸方向の幅のみ互いに異なっている。
【0019】
一体に構成されたロータ軸が連続的な鋳造外形として、好ましくは押し出された外形として製造されていることが特に好ましい。ロータと一体に構成されたロータ軸が、連続的な鋳造外形として製造されることにより簡単に製造され得る。この製造は、特に好ましい実施形態によれば全てのロータが同一のロータ外形を有するために可能である。連続的な鋳造外形が高精度に製造され得るので、実質的に隣り合うロータの間の空間をフライス加工工程で生成するだけで外形を加工することが可能である。従って、ロータ軸ユニットの製造工程が、その後に軸に取り付けられる必要がある個別の分離したロータの製造及び組立てより明らかに安価である。
【0020】
従って、ロータ軸ユニットの製造は以下の実質的な製造工程を有する。
【0021】
まず、例えば押出成形工程で押出外形を生成する。ここで、押し出された製品全体の外形は好ましくはロータ外形に相当する。次の工程で、隣り合うロータの間の空間を生成する。空間の生成を、例えばフライス加工工程によって行うことができる。ここで、間の空間は、2つの隣り合うロータを連結する軸が配置され続けられるような深さを有する。続いて、軸受箇所を、例えば軸の2つの端部に生成することが可能である。このように製造された2つのロータ軸ユニットの同期がベルト、チェーンなどによって実現される場合、歯車がチェーン又はベルトを導くために軸に配置され得る。歯車は更に、電気モータに連結するために使用され得る。ロータ軸ユニットの一体の構成は、互いに合計される公差が生じず、安価な製造が可能であるという利点を特に有する。
【0022】
このような一体の構成を有するロータ軸ユニットを備えた本発明のクロー式ポンプでは、組立工程が特に簡単であり、ひいては安価である。特に、組立工程は以下の本質的な工程を有する。
【0023】
第1の工程で、一体に構成されたロータ軸ユニット、つまりロータと一体に形成されたロータ軸を、第1のハウジングハーフに挿入する。この挿入は、分離壁に設けられた、特に半円状の凹部内に行われる。この点について、上記に記載されているように、ハウジングハーフは既に分離壁を更に有していることが特に好ましい。次の工程で、第2のハウジングハーフを取り付けることができ、2つのハウジングハーフを連結することができる。真空気密な連結は、例えば接合によって行われ得る。同期ユニットがハウジング内に配置されるか否かに応じて、2つのハウジングハーフを連結する前又は後にベルト又はチェーンを、好ましくは予め取り付けられた歯車等に置く。
【0024】
特に公差が合計されないので、組立工程は上述したように行われ得る。特に2つのロータ軸の、例えば歯付きベルト、チェーンなどを介した同期が油なしの同期を可能にする。
【0025】
好ましくは非常に正確に対称なロータを製造することにより、平衡工程が非常に簡単になり、僅かな時間しか必要としなくなる。
【0026】
ロータ軸ユニットのための上記に記載された製造方法及び組立工程の両方は、独立した発明と見なされるべきである。
【0027】
本発明の多段クロー式ポンプは、一列に軸方向に配置された全てのポンプ段を有して構成され得るため、圧縮率が1つのポンプ段から次のポンプ段に軸方向に連続的に増加する。中央のポンプ入口を設けて、ポンプ段がポンプ入口から両方向に延びることが更に可能である。ここで、ポンプ段はまた同一の軸に軸方向に配置されるが、反対の送出方向が実現される。従って、いわゆるデュアル排出ポンプでは、共通の入口がポンプの中途部に設けられて、2つの出口がポンプの2つの外側に設けられている。
【0028】
本発明を、クロー式ポンプの好ましい実施形態により以下に更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】ある位置でのクロー式ポンプのポンプ段を示す概略図である。
図2】ある位置でのクロー式ポンプのポンプ段を示す概略図である。
図3】ある位置でのクロー式ポンプのポンプ段を示す概略図である。
図4】ハウジングハーフの一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係るクロー式ポンプは、一列に軸方向に配置された複数のポンプ段を備えており、図1〜3は1つのポンプ段の断面略図である。これらの図は、ロータ対を形成するロータ10, 12の位置が夫々異なる同一のポンプ段を示す。前記2つのロータ10, 12は夫々ロータ軸14と一体に形成されている。ロータ軸14は、2つのハウジングハーフ16, 18から形成されたポンプハウジングに配置されている。前記ポンプハウジング16, 18は、ロータ10, 12と共にポンプ室20, 22を形成しており、前記ポンプ室の向きはロータ10, 12の位置に応じて変わる。
【0031】
この配置では、2つのハウジングハーフ16, 18は、分離面24がロータ軸14の長手方向に延びているように形成されている。ここで、前記分離面24は、2つのロータ軸14の中心面の高さに配置されている。
【0032】
図1〜3を正面から見ると、中間壁26が2つのロータ10, 12の後ろに配置されている。前記中間壁は、図示された実施形態では送出方向に先行するポンプ段であるポンプ段に向かって障壁を形成している。中間壁26には、連結チャネルが、図1〜3に矢印28によって概略的に示されているように配置されている。送られる流体が、図1〜3を見る方向に中間壁26の後側に配置されている出口30を通って前記連結チャネル28に流入する。その後、流体は、図1〜3では中間壁26の前側に配置されている入口32を通って図示されたポンプ段に流入する。
【0033】
しかしながら、2つのロータ10, 12が図2に示されている位置にある場合のみ、流体が連結チャネル28及び入口32を介してポンプ室22に流入する。この位置では、入口32は少なくとも部分的に開いているため、流体がポンプ室22に流れ込むことが可能になる。加えて、流体はポンプ室20から出口に運ばれる。この出口は、図1〜3では図示されているロータの前方に配置されている中間壁に配置されている。
【0034】
2つの矢印34によって示されているように2つのロータが相互に反対方向に回転することにより、ポンプ室の体積が減少して媒体の搬送及び媒体の圧縮が行われる。ロータ10, 12は既知の爪状の外形を有する。各ロータでは、前記外形は2つの爪凹部38を有している。
【0035】
図4に示されているハウジングハーフ16の一部では、2つの連続したポンプ段40, 42が部分的に見える。ここで、運ばれる媒体の圧縮率が増加するように、ポンプ段40の軸方向の幅がその後のポンプ段42の軸方向の幅より大きい。2つの連続したポンプ段40, 42は、分離面24に配置された中間壁26によって互いに離れている。前記中間壁26は、分離面24の方に開いている2つの凹部44, 46を有している。2つの凹部44, 46は2つのロータ軸14を受けるべく機能する。図4で見ると凹部44の下方に、前記中間壁26はポンプ段42の入口32を有している。ロータ10の位置(図2)に応じて、流体が入口32を通ってポンプ室22に流入する。入口32は連結チャネル28に連結されている。この連結チャネルはまず、入口32から中間壁26の側面48に垂直に延びている。その後、好ましくは中間壁26の厚さに対して中途部に、連結チャネル28の一部28a が、図4で見ると上方に延びている。第2のハウジングハーフは、ポンプ段40の対応する第2の壁の凹部46の上方に出口30を有している。入口32に対応して、出口30は連結チャネル28, 28a に連結されている。従って、第2のハウジングハーフによって形成されている分離壁の上部に、連結チャネルは対応するように形成されている。従って、2つのハウジングハーフ16, 18を互いに重ね合わせて置くことにより、連結チャネル28, 28a は簡単に形成される。
【0036】
図4に示されている連結チャネル28, 28a の典型的な実施形態の特有の利点は、連結チャネルが例えばエンドミルを使用することにより容易に形成され得るので製造が非常に簡単であるということである。連結チャネルは、分離壁26の上側50から常にアクセス可能である。
【0037】
クロー式ポンプの組立てのために、好ましくはロータ10, 12と共に一体に製造されるロータ軸14は、図4で見ると上から分離壁の凹部44, 46に置かれる。その結果得られる配置では、ロータ軸14は対応する連結チャネル28の一部を常に閉じている。
【0038】
その後、連結チャネルの一部28aが互いに重ね合わせて配置されて、連続する連結チャネル28, 28a が2つの隣り合うポンプ段40, 42の間に形成されるように、第2のハウジングハーフが取り付けられる。
【0039】
他のポンプ段は対応するように形成され、その際、ロータ軸14の長手方向52に延びるポンプ段40, 42の幅が送出方向に減少する。
図1
図2
図3
図4