特許第6643325号(P6643325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643325
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/54 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
   G01N30/54 G
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-513233(P2017-513233)
(86)(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公表番号】特表2017-527811(P2017-527811A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】US2015040999
(87)【国際公開番号】WO2016039854
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2018年7月11日
(31)【優先権主張番号】62/050,125
(32)【優先日】2014年9月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】トラウト,サミー・エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,リチャード・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,ウィリアム・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ドライデン,ポール・シー
(72)【発明者】
【氏名】リアス,ジェイン・アン
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0228452(US,A1)
【文献】 特開2013−238572(JP,A)
【文献】 特開2004−363335(JP,A)
【文献】 特開2004−146568(JP,A)
【文献】 特開2010−257956(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/061158(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0283324(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/54,30/60,
H05B 3/10,3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板に直に又は間接的に隣接して配置される加熱要素と、
結晶シリコンを含む第2の基板であって、該第2の基板は前記加熱要素に熱的に接触するように直に又は間接的に隣接して配置され、該第2の基板は第1の面及び第2の面を有し、該第2の面は前記第2の基板に対して前記第1の面とは反対側にあり、前記第1の面は前記加熱要素側にあり、前記第2の面はガスクロマトグラフィカラムに熱的に接触するように直に又は間接的に隣接して配置され、前記第2の基板は、前記第2の基板と熱的に接触している前記ガスクロマトグラフィカラムに前記加熱要素からの熱を伝達することができる、第2の基板と
を備え
前記第2の基板は、ダイヤモンド、タングステン、モリブデン、タングステン合金、モリブデン合金又はその組み合わせを含む、装置。
【請求項2】
ヒータアセンブリ備え、該ヒータアセンブリは、第1の介在層と第2の介在層との間に配置される前記加熱要素を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ヒータアセンブリは前記第1の基板及び第2の基板から電気的に絶縁される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記加熱要素はフォイルヒータ又はワイヤヒータを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の基板は結晶シリコンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記結晶シリコンは多結晶シリコンを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
第1の基板と、
前記第1の基板に直に又は間接的に隣接する加熱要素と、
第2の基板であって、該第2の基板は前記加熱要素に熱的に接触するように直に又は間接的に隣接し、該第2の基板は第1の面及び第2の面を有し、該第2の面は前記第2の基板に対して前記第1の面とは反対側にあり、前記第1の面は前記加熱要素側にあり、前記第2の面はガスクロマトグラフィカラムに熱的に接触するように直に又は間接的に隣接して配置され、前記第2の基板は、以下の属性、すなわち、25℃において
【数1】
より低い体積熱容量と、25℃において
【数2】
より高い熱伝導率と、25℃におい
【数3】
より大きい、熱伝導率と熱膨張係数との比と、100GPaより高いヤング率とを含む第2の基板と
を備え、前記第2の基板は、前記第2の基板と熱的に接触している前記ガスクロマトグラフィカラムに前記加熱要素からの熱を伝達することができ
前記第2の基板は、ダイヤモンド、タングステン、モリブデン、タングステン合金、モリブデン合金又はその組み合わせを含む、装置。
【請求項8】
ヒータアセンブリ備え、該ヒータアセンブリは、第1の介在層と第2の介在層との間に配置される前記加熱要素を備える、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記加熱要素はフォイルヒータ又はワイヤヒータを含む、請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、発明者としてSammye Traudt他の名前で、2014年9月13日に出願された米国仮特許出願第62/050,125号の優先権を主張する。米国特許出願第62/050,125号の開示全体が特に引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0002】
GCシステムでは、化合物が分離カラム(「カラム」)の全長を横切るのに必要とされる時間の長さが、その保持時間として知られている。化合物の保持時間に寄与する1つの要因が、分離カラムの温度である。カラムの温度を分析ごとに正確に制御することは、特定の化合物、すなわち、被分析物のための保持時間の再現性を与えるのに有益である。さらに、サンプル被分析物がカラムの中を移動している間にカラム温度をプログラムで変更することにより、有利なことに、分析時間を短縮し、ピークの広がりを抑えることができる。
【0003】
多種多様なカラム径及び長さに対応するだけの十分に大きい空間内で均一で、かつ再現可能な熱環境を与えることができることから、既知のシステムでは、多くの場合に、カラムは空気対流オーブンを用いて加熱される。カラムは通常、開いた柱体を作り出す支持構造上に配置される。これにより、加熱された空気が全てのカラム表面に到達できるようになり、結果として、カラムの全長にわたって均一な温度が生成される。空気対流オーブンは有用であるが、その使用は、明らかな不都合を伴う。例えば、対流オーブンは、加熱するのに大量のエネルギー及び長い時間を必要とし、冷却するのに長い時間を必要とする。この結果、当然、数ある不都合の中でも、比較的長いサイクル時間及び高い電力消費量が生じる。さらに、温度プログラム条件によって迅速に分析を行うことができるのは、空気対流オーブンを使用するときに限られる。
【0004】
それゆえ、上記で論じられた既知のGCカラムヒータの少なくとも短所を克服する装置が必要とされている。
【0005】
本教示は、添付の図面とともに読まれるときに、以下の詳細な説明から最も良く理解される。それらの特徴は必ずしも縮尺通りに描かれていない。実用的なときはいつでも、類似の参照符号は類似の特徴を指している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】代表的な実施形態による、GCシステムの簡略化されたブロック図である。
図2A】代表的な実施形態による、GCカラムを加熱するための装置の組立分解図である。
図2B】組立後の図2AのGCカラムを加熱するための装置を示す図である。
図2C】GCカラム上方に配置された、図2Bの装置を示す図である。
図2D】別の代表的な実施形態による、GCカラムが上方に配置された、図2Bのカラム加熱装置を示す図である。
図2E】代表的な実施形態による、GCカラムを加熱するための装置の組立分解図である。
図3】代表的な実施形態による、GCカラムを加熱及び冷却するための装置の一部を切り取った等角図である。
図4A】代表的な実施形態による、GCカラムを加熱及び冷却するための装置の断面図である。
図4B】代表的な実施形態による、GCカラムを加熱及び冷却するための装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみが目的であり、限定を意図していないことが理解される。定義される用語は、本教示の技術分野において一般に理解され受け入れられている定義済みの用語の技術的意味及び科学的意味に加えられる。
【0008】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられるとき、「1つの(a、an)」及び「その(the)」という語は、別段の指定がない限り、単数及び複数の双方の指示対象を含む。このため、例えば「デバイス(a device)」は1つのデバイス及び複数のデバイスを含む。
【0009】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられるとき、「実質的」又は「実質的に」という語は、その通常の意味に加えて、受け入れ可能な限界又は度合いの範囲内にあることを指す。例えば、「実質的にキャンセルされた」は、当業者であれば、そのキャンセルが受け入れ可能であると見なすことを意味する。
【0010】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられるとき、「概ね」という語は、その通常の意味に加えて、当業者に受け入れ可能な限界又は量の範囲内にあることを指す。例えば、「概ね同じ」は、当業者であれば、比較される複数のアイテムを同じであると見なすことを意味する。
【0011】
以下の詳細な説明において、本教示を十分に理解してもらうために、限定ではなく、説明のために、具体的な細部を開示する代表的な実施形態が記述される。例示的な実施形態の説明を分かりにくくするのを避けるために、既知のシステム、デバイス、材料、動作方法及び製造方法の説明は省略される場合がある。それにもかかわらず、当業者の理解の範囲内にあるシステム、デバイス、材料及び方法は、代表的な実施形態に従って用いることができる。
【0012】
添付の図面において示されるような、種々の要素の互いの関係を説明するために、「上方」、「下方」、「最上部」、「最下部」、「上側」及び「下側」等の相対語を用いることができる。これらの相対語は、図面において示される向きに加えて、デバイス及び/又は要素の異なる向きも包含することが意図される。例えば、デバイスが図面における見方に対して反転された場合、例えば、別の要素の「上方にある」と説明された要素は、その時点で、その要素の「下方に」存在することになる。同様に、デバイスが図面内の見方に対して90度だけ回転した場合、別の要素の「上方にある」又は「下方にある」と説明された要素は、今度は、この他方の要素に「隣接している」ことになり、「隣接している」は、この他方の要素に当接しているか、又はそれらの要素間に1つ若しくは複数の層、材料、構造等を有するかのいずれかを意味する。本明細書において用いられるとき、別の要素の「上に配置される」又は「下方に配置される」要素は、その要素が、この他方の要素に「隣接している」ことを意味する。「直に隣接している」は、他方の要素に当接していることを意味する。
【0013】
図1は、代表的な実施形態による、GCシステム100の簡略化されたブロック図である。GCシステム100の数多くの態様が、当業者に知られている。したがって、GCシステム100の或る特定の既知の構成要素の細部は省略される。或る特定の事例では、実現される場合がある既知の構成要素の代表的な例が言及されるが、例示のために提示されており、限定することは全く意図していない。
【0014】
GCシステム100は、サンプル入口101を備える。サンプル入口101は、汚染物質トラップ102に流体的に結合される。汚染物質トラップ102はカラム103に流体的に結合され、カラム103は、ガスクロマトグラフィにおいて有用な様々のカラムのうちの1つとすることができる。一実施形態では、汚染物質トラップ102は、同時に出願された、同一所有者の米国特許出願第14/057,022号(2013年10月18日出願)において記述されるのと同様とすることができ、その開示は特に引用することにより本明細書の一部をなすものとする。汚染物質トラップ102は、サンプル入口101からのサンプル内の汚染物質を捕捉し、捕捉された汚染物質がカラム103に達するのを防ぐように構成されるマイクロ流体汚染物質トラップである。汚染物質トラップ102を含むことは単なる例示であり、本教示は、汚染物質トラップを備えないGCシステム、又は上記で引用されたばかりの出願において記述されるようなマイクロ流体汚染物質トラップを備えないGCシステムにおいて使用する場合も考えられることに留意されたい。
【0015】
カラム103は化学サンプルの成分を分離する。カラム103は、1つの溶融シリカ又は金属管(図示せず)を備えるキャピラリカラムとすることができ、化学サンプルの成分を分離するために、管の内部がコーティングされているか、サンプル入口101からのサンプルと相互作用する粒子を充填されている。
【0016】
カラム103は、カラム加熱装置と熱的に接触しており、その装置は、カラム温度制御装置104の一態様である。カラム温度制御装置104によって、以前のデバイスよりカラム103の加熱の均一性を改善しながら、保持時間が制御される。さらに、或る特定の実施形態では、カラム温度制御装置104は、カラム103を効率的に冷却し、最終的には、既知のGCシステムと比べて、被分析物の保持時間の再現性及び分析サイクル時間を改善する。カラム温度制御装置104のこれらの利点及び他の利点が、代表的な実施形態に関連して以下で更に十分に説明される。
【0017】
カラム103は、検出器105に物理的に、及び/又は流体的に接続され、検出器105は、カラム103によって分離される成分の存在を、そして多くの場合にその量を検出する。一般的に、検出器105は、炎イオン化検出器(FID)、質量分析計検出器(MSD)、熱伝導度検出器(TCD)、電子捕獲検出器(ECD)、窒素リン検出器(NPD)、硫黄化学発光検出器(SCD)、窒素化学発光検出器(NCD)、パルス型炎光光度検出器(PFPD)、ヘリウムイオン化検出器(HID)又は炎光光度検出器(FPD)等の既知のGC検出器である。
【0018】
また、GCシステム100は、コントローラ106及び電源107を備える。コントローラ106は、GCシステム100の複数のコントローラ(図示せず)のうちの1つとすることができるか、GCシステムの唯一のコントローラとすることができる。ここでは、カラム温度制御装置104によってカラム103の加熱を保持することに関するコントローラ106の機能が説明される。コントローラ106又は他のコントローラの他の機能は、本教示に関連しないので、説明されない。
【0019】
一般的に、コントローラ106は、本明細書において論じられる種々の機能を実行するために数多くのやり方(例えば、専用のハードウェアを備える等)で実現することができる。「プロセッサ」はコントローラの1つの例であり、コントローラは、本明細書において論じられる種々の機能を実行するためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を用いてプログラミングすることができる1つ又は複数のマイクロプロセッサを利用する。コントローラ106は、プロセッサを利用して、又は利用することなく実現することができ、幾つかの機能を実行する専用のハードウェアと、他の機能を実行するプロセッサ(例えば、1つ又は複数のプログラミングされたマイクロプロセッサ及び関連する回路)との組み合わせとして実現することもできる。本開示の種々の実施形態において利用することができるコントローラ構成要素の例は、限定はしないが、従来のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。
【0020】
種々の実施態様において、コントローラ106は1つ又は複数の記憶媒体(本明細書では包括的に「メモリ」と呼ばれ、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、プログラム可能リードオンリーメモリ(PROM)、電気的プログラム可能リードオンリーメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能リードオンリーメモリ(EEPROM)、ユニバーサルシリアルバス(USB)ドライブ、フロッピーディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープ等の揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ)に関連付けられる場合がある。幾つかの実施態様では、記憶媒体は、コントローラ106上で実行されるときに、本明細書において論じられる機能のうちの少なくとも幾つかを実行する1つ又は複数のプログラムで符号化される場合がある。種々の記憶媒体がコントローラ106内に固定される場合があるか、又は持ち運び可能な場合があり、本明細書において論じられる本教示の種々の態様を実現するために、その記憶媒体上に記憶された1つ又は複数のプログラムをプロセッサ又はコントローラにロードできるようにする。「プログラム」又は「コンピュータプログラム」という用語は、コントローラ106をプログラミングするために利用することができる任意のタイプのコンピュータコード(例えば、ソフトウェア又はマイクロコード)を指す一般的な意味において本明細書において使用される。
【0021】
コントローラ106は、温度センサ(図1には示されない)からの温度データを解釈するために、温度センサからそのデータを受信し、所望のカラム温度を達成するようにシステムの態様を変更するアルゴリズムを実行するように構成される。これらに機能は、別々のコントローラ、プロセッサ又はモジュールによって実行される場合がある。コントローラ106は、電源107に制御信号を与えるように構成される。電源107は、幾つかの既知の電源のうちの1つであり、カラム103の温度を概ね所望の温度に保持するために、カラム温度制御装置104の電力を調整するように構成される。
【0022】
図2Aは、代表的な実施形態による、GCカラム(図2Aには示されない)を加熱するためのカラム加熱装置200(「装置」と呼ばれる場合もある)の組立分解図を示す。カラム加熱装置200は、実質的に平坦である第1の基板201を備える。オプションで、第1の基板201の上方にスペーサ層202が配置される。層202内に凹部203が設けられ、温度センサ204を受け入れるように構成される。
【0023】
ヒータアセンブリ210が第1の基板201の上方に配置され、オプションの第1の介在層206とオプションの第2の介在層207との間に配置される加熱要素205を備える。第1の介在層206及び第2の介在層207は一般的に、機械的にコンプライアントであり、同じ材料から形成される。とりわけ、ヒータアセンブリ210は、図1の代表的な実施形態に関連して上記で説明されたカラム温度制御装置104内の熱源として使用する場合が考えられる。
【0024】
加熱要素205は実質的に均一な一連の配線として示されるが、それらの配線は実質的に不均一であり、非対称であり、及び/又は不規則な場合があることも考えられる。一例として、ヒータアセンブリ210の外縁は外部環境への露出が大きいので、アセンブリの内側部分に比べて、外縁において温度の低下が生じる場合がある。その縁において加熱要素205の配線の密度を高くし、及び/又は幅を変更することによって、外縁付近の加熱要素205の電力密度が高められ、言及された温度低下として現れる、加熱要素の内側部分と外縁との間の温度差を小さくすることができるか、又は解消することができる。さらに、配線の厚さを変更することによっても、本明細書において説明されるような所望の特性を有することができる。
【0025】
第1の介在層206及び第2の介在層207は、加熱要素205と、第1の基板201、及びヒータアセンブリ210の上方に配置される第2の基板208との間の電気絶縁体としての役割を果たすように選択することもできる。第1の基板201と同様に、第2の基板も実質的に平坦である。第2の基板208は、GCカラム(図2Aには示されない)が第2の基板208と直に接触するか、又は間接的に(すなわち、GCカラムと第2の基板208との間に介在層(図示せず)を伴って)接触するように構成される。具体的には、GCカラムは、第2の基板208の上面209の上方に配置され、ヒータアセンブリ210からの熱は、第2の基板208を通してGCカラムに伝達される。図2Aを見直すことから理解することができるように、上面209は実質的に平坦である。
【0026】
第1の基板201及び第2の基板208は、単一の層、又は同じ若しくは異なる材料の複数の層を備えることができる。以下で更に十分に説明されるように、カラム加熱装置200は第2の基板208に接触しているGCカラムを実質的に均一に加熱する。
【0027】
空気対流オーブン等の既知のGCヒータでは、オーブンは、30℃/分〜60℃/分の温度プログラミングレートを可能にするために、大量の電力(最大で2000W)を必要とする場合がある。対照的に、以下で更に十分に説明されるように、カラム加熱装置200は、有益なことに、100Wより著しく低い電力において、同様の温度プログラミングレートを与える。さらに、カラム加熱装置200は、はるかに速い(例えば、既知のGCヒータの電力要件の25%で、既知のGCヒータより最大で5倍〜10倍速い)温度プログラミングレートを可能にし、結果として、クロマトグラフィ分析が迅速に行われる。また、既知のGCヒータが450℃から50℃まで冷却するのに6分以上を要する場合があるが、カラム加熱装置200は、3分未満で動作することができ、それにより、分析間のサイクル時間を早めることができるようになる。カラム加熱装置200は、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208の材料特性を低熱質量になるように規定することによって、機械的剛性、小さな熱勾配、及び熱変形に対する耐性を保持しながら、これらの性能改善を実現する。
【0028】
当業者によって理解されるべきであるように、物体の「熱質量」は、熱エネルギー(すなわち、熱)を蓄積する能力の指標である。したがって、比較的低い熱質量を有する材料は、比較的高い熱質量の材料より、温度を変更するのに必要とする熱が少ない。以下で更に十分に説明されるように、迅速に加熱及び冷却できるようにするために、第1の基板201及び第2の基板208並びにヒータアセンブリ210のために選択される材料は低い熱質量を有する。
【0029】
熱質量(単位J/K)は、材料の比熱cと物体の質量mとの積である。便宜上、質量は、材料の密度ρと、表面積Aと、表面積に対して垂直な厚さtとの積として更に規定することができる。組み合わせると、熱質量は、
熱質量=(ρctA
と表すことができる。
【0030】
カラム加熱装置200の表面積は、加熱されるカラムのサイズに基づいて一定であるので、ここで論じられる場合、表面積は定数と見なされる。残りの項が更に検討される。項ρcは、材料の体積熱容量としても知られており、材料固有の特性である。熱質量を最小化するために、この項は最小化されるべきである。代表的な実施形態では、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のための材料は、25℃において、約
【数1】
未満の体積熱容量を有する。
【0031】
第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のための材料の選択は、機械的剛性、低い熱勾配及び熱変形に対する耐性によって更に導かれる。これらの要因は、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のために必要とされる材料の最小厚を決定する際に特に重要である。熱質量とともに、これらは完全に独立した特性ではないので、材料の選択は、それらの相互関係を考慮して行われる。最終的な目的は、より迅速に加熱及び冷却できるようにするために、第1の基板201及び第2の基板208の場合に相対的に低い熱質量を達成しながら、第2の基板208の上面209にわたって低い熱勾配を達成することである。
【0032】
第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208にわたる熱勾配は、基板の異なる部分が異なる熱環境にあることから生じる。例えば、加熱要素205は、完全に均質な熱プロファイルを有するわけではない。さらに、第1の基板201及び第2の基板208の外縁は通常、周囲温度環境に対して、より大きく露出されることになる。したがって、第1の基板201及び第2の基板208にわたって熱勾配が存在する可能性がある。第1の基板及び第2の基板のための選択された材料が、熱流に対して低い耐性を有する、すなわち、高い熱伝導率kを有するときに、勾配は低減される。それゆえ、GCカラムと接触している上面209が温度に関して実質的に均一であるように、特に第2の基板208の場合に比較的高い熱伝導率を有する材料を有することが望ましい。代表的な実施形態によれば、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のための材料は、25℃において約
【数2】
より高い熱伝導率を有する。
【0033】
第1の基板201及び第2の基板208は、カラム加熱装置200のための機械的構造を与える。とりわけ、第1の基板201及び第2の基板208は、層202及び温度センサ204だけでなく、相対的に硬質でないヒータアセンブリ210も支持する。有益なことに、第1の基板201及び第2の基板208のために選択される材料は、十分な支持を与えるほど十分に硬質である。材料の剛性は、その弾性率(又はヤング率)Eに関連付けられる。材料が高い弾性率を有する場合には、低い弾性率を有する材料と同じ剛性を与えるのに必要な材料が少ない(例えば、部品が薄い)。それゆえ、十分な剛性を達成するのに必要とされる材料の(熱)質量が少ないように、高い弾性率を示す材料を有することが有益である。代表的な実施形態によれば、第1の基板201及び第2の基板208のための材料は、約100GPaより大きいヤング率を有する。剛性に加えて、第1の基板201及び第2の基板208は、ヒータ及びカラムを、上面209と直に接触させておくか、又は上面209と間接的に(すなわち、GCカラム212と上面209との間にある介在層(図示せず)と)接触させておくために、表面平坦性を保たなければならない。平坦性に関する問題は、急速な温度変化からの変形又は「バックリング(buckling)」に起因して生じる場合がある。例えば、構成要素が非対称に冷却されるときのように、その構成要素内に大きな熱勾配が存在する場合には、構成要素の複数の部分が、他の部分が一定のままである間に、熱膨張に起因して大きくなろうとする。最悪の場合、これは、バックリング又は破損を引き起こす可能性がある。
【0034】
熱膨張に起因して機械的に変形する可能性は、高い熱伝導率k、低い熱膨張係数α又はその両方を有する材料を選択することによって最小化することができる。高い熱伝導率を有する材料は、材料内の大きな熱勾配の形成に耐える。低い熱膨張を有する材料は、著しい熱勾配下にあっても、あまり大きくならない。高い熱伝導率、低い熱膨張係数又はその両方を有する材料を選択することによって、バックリングへの十分な耐性を与えながら、より少ない材料(例えば、より薄い部品)を、それゆえ、より低い熱質量を使用できるようになる。代表的な実施形態によれば、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のための材料は、25℃において、約
【数3】
より大きい、熱伝導率と熱膨張係数との比を有する。
【0035】
第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のための材料の選択に関する別の検討事項は、材料の電気絶縁特性である。材料は、この機能を果たすために、カラム加熱装置200内に更なる材料を追加しなければならないのを回避するために実質的に電気的に絶縁性であることが有益である。
【0036】
最後に、約450℃より高い温度において、カラム加熱装置200内で有効である、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のための材料を選択することが重要である。
【0037】
以下の表は、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のための材料を選択する際に考慮されるべき要因のうちの幾つかの要約を提示する。
【0038】
【表1】
【0039】
代表的な実施形態では、第2の基板208はシリコンを含む。一般的に、第2の基板208を形成するシリコン層は、約0.3mm〜1.5mmの厚さを有する。具体的には、第2の基板208は約0.675mmの厚さを有する<1,0,0>Siを含む。代表的な実施形態では、第1の基板201は、約0.675mmの厚さを有する<1,0,0>Siウェハを含み、第2の基板208は、それぞれ約0.675mmの厚さを有する2つの<1,0,0>Siウェハを含む。第2の基板208のために2つのウェハを使用することによって、幾分改善された保持時間再現性を与えることがわかった。とりわけ、第2の基板208は、特殊な研磨又はドーピングを必要としない。さらに、そして不可欠ではないが、第1の基板201は、第2の基板208と同じ材料から、そして同じ仕様に形成することができる。
【0040】
第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のためのシリコンの使用は例示にすぎないことに留意されたい。より一般的には、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のために選択される材料は、25℃において約
【数4】
より低い体積熱容量(ρc)と、25℃において約
【数5】
より高い熱伝導率(k)と、25℃において約
【数6】
より大きい、熱伝導率と熱膨張係数との比(k/α)と、約100GPより高いヤング率(E)とを有するように選択される。
【0041】
これらの物理的特性は、低い熱質量、機械的剛性、低い熱勾配及び変形への耐性を含む、幾つかの限度内でカラム加熱装置200のより迅速な加熱及び冷却を達成するために望ましい。表1は、或る材料範囲にわたってこれらの4つの特性を比較する。
【0042】
【表2】
【0043】
上記に基づいて、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のために選択される材料は優先的には、25℃において約
【数7】
より低い体積熱容量を有する。それゆえ、銅、アルミナ、ニクロム、ステンレス鋼、ニッケル、サファイア、窒化シリコン、炭化タングステン、酸化ベリリウム、黄銅、青銅、アルミニウム黄銅、鉄及びベリリウムは、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のための好ましい材料ではない。
【0044】
第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のために選択される材料は優先的には、25℃において約
【数8】
より高い熱伝導率を有する。それゆえ、パイレックス(登録商標)ガラス、雲母、チタン、石英ガラス、ガリウムヒ素、ゲルマニウム、窒化ホウ素、酸化ジルコニウム、炭化ホウ素、インジウムリン、ニオブ、レニウム及びタンタルは一般的に、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のための好ましい材料ではない。
【0045】
第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のために選択される材料は更に優先的には、(25℃において)25℃において約
【数9】
より大きい、熱伝導率kと熱膨張係数αとの比を有する。それゆえ、アルミニウム、マグネシウム、銀、亜鉛及び金は、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のための好ましい材料ではない。
【0046】
第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のために選択される材料は更に優先的には、約100GPaより高いヤング率を有する。それゆえ、グラファイトは、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のための好ましい材料ではない。
【0047】
上記の分析に基づいて、第2の基板208、又は第1の基板201及び第2の基板208のために使用することができ、全ての好ましい材料特性を満たすことができる例示的な材料は、シリコン、窒化アルミニウム、ダイヤモンド、炭化シリコン、タングステン、モリブデン、タングステン合金(特に銅との合金)、モリブデン合金(特に銅との合金)及びその組み合わせを含む。
【0048】
ヒータアセンブリ210は第1の基板201の上方に配置され、第1の介在層206と第2の介在層207との間に配置される加熱要素205を備える。第1の介在層206及び第2の介在層207は一般的に同じ材料から形成され、それぞれ第2の比較的低い熱質量を有する。さらに、第1の介在層206及び第2の介在層207はそれぞれ、電気的に絶縁性である材料から形成される。とりわけ、第1の基板201及び第2の基板208が電気的に絶縁性である場合には、第1の介在層206及び第2の介在層207はなくすことができる。しかしながら、比較的高い温度において材料がより高い導電率になることができる場合には(例えば、シリコン)、加熱要素と第1の基板201及び第2の基板208との間に電気絶縁が必要とされる。したがって、第1の基板及び第2の基板がシリコンである代表的な実施形態では、第1の介在層206及び第2の介在層207が必要とされる。しかしながら、とりわけ、別の代表的な実施形態では、この絶縁機能を果たすために、第1の介在層206及び第2の介在層207を含むのではなく、加熱要素に面する第1の基板201及び第2の基板208の面をガラス又は他の誘電体の層でコーティングすることができる。
【0049】
加熱要素205は具体的には、ワイヤヒータ又はフォイルヒータ等の抵抗性加熱要素である。他のタイプの加熱要素も考えられる。加熱要素はかなり薄く、それゆえ、カラム加熱装置200の各層の所望の平坦性を実質的に妨げないことが有益であることは理解されたい。既知の薄膜製造方法によれば、当業者の理解し得る範囲内にあるそのような比較的薄い加熱要素が考えられる。
【0050】
第1の基板201及び第2の基板208の比較的低い熱質量と同様に、第1の介在層206及び第2の介在層207の比較的低い熱質量は、それらの層が比較的迅速に熱くなり、熱をあまり保持しないのを確実にする。したがって、ヒータアセンブリ210は、その表面にわたって迅速に加熱することができ、ヒータにおいて多くの場合に使用される他の材料ほど熱を保持しないであろう。ここでも、前者の属性は最終的には、第2の基板208の上面209の上方に配置されるGCカラムが比較的非常に迅速に加熱され、それにより分析時間を改善するのを確実にする。後者の属性は、カラム加熱装置200から熱を相対的に迅速かつ効率的に完全に散逸させることができ、それにより、サイクル時間を短縮し、保持時間再現性を改善できるようにする。
【0051】
代表的な実施形態では、第1の介在層206及び第2の介在層207はそれぞれ雲母を含み、それは層状ケイ酸塩(フィロケイ酸塩)鉱物から構成される。一般的に、雲母材料は、X4−620(OH,F)であり、ただし、XはK、Na又はCaであるか、又は頻度は低いが、Ba、Rb又はCsであり、YはAl、Mg又はFeであるか、又は頻度は低いがMn、Cr、Ti、Li等であり、Zは主にSi又はAlであるが、Fe3+又はTiを含むこともできる。第1の介在層206及び第2の介在層207のための雲母の使用は、例示にすぎず、雲母に類似の熱質量、導電率、及び急速な温度変化に起因する機械的歪みへの耐性を有する他の材料も考えられる。例えば、ガラス繊維等の織布(fabrics)及び玄武岩が、所望の特性を与える。
【0052】
一般的に、ヒータアセンブリ210の第1の介在層206及び第2の介在層207を形成する雲母層はそれぞれ、約0.3mmの厚さを有する。より一般的には、ヒータアセンブリ210の第1の介在層206及び第2の介在層207のために選択される材料は、約1×10^12Ω・m〜約1×10^14Ω・m以上の電気抵抗率を有する。雲母は、シリコンと同様に、比較的低い熱膨張係数(CTE)を有するので、加熱又は冷却されるときに膨張せず、機械的な歪みを受けないであろう。さらに、雲母は本質的に平坦であり、基板と加熱要素との間の密着をもたらす。雲母の代わりに電気絶縁体としての役割を果たすことができる他の材料は、例えば、窒化アルミニウム、石英、ガラス、炭化シリコン及び前述の織布である。前述の織布のようなコンプライアント材料は、密着を達成するために圧縮することができるので、それほど平坦である必要はない。
【0053】
第1の基板201の上方に、かつヒータアセンブリ210の第1の介在層206の下方にオプションでスペーサ層202が配置される。スペーサ層202内に凹部203が設けられ、温度センサ204を受け入れる。スペーサ層202は温度センサ204を収容する。具体的には、スペーサ層202は、ガラス繊維材料等のコンプライアント材料である。スペーサ層202は、有益なことに、加熱要素205の第1の介在層206と、第1の基板201との間の比較的一定の圧力を保持する。とりわけ、温度センサ204を含む場合、スペーサ層202が存在しない場合には、一定の圧力を損なうおそれがある。ヒータアセンブリ210の第1の介在層206と第1の基板201との間の圧力が均一でない結果として、カラム加熱装置200の全体的な「平坦性」が低下し、それにより、熱勾配及び「ホットスポット」が生じる可能性があり、それゆえ、GCカラムの性能を劣化させる可能性がある。
【0054】
上記で示唆されたように、コントローラ106は、温度センサ204から温度データを受信し、それらのデータに基づいて、電源107に制御信号を与える。コントローラ106からの制御信号に基づいて、電源107は、何らかの所望の反復可能なプログラムに従って、GCカラムの温度を実質的に一定の値に保持するために、又はGCカラムの温度を変更させるために、ヒータアセンブリ210への電力を調整する。
【0055】
図2Bは、組立後のGCカラムを加熱するための図2Aのカラム加熱装置200を示す。カラム加熱装置200は、カラム加熱装置200の種々の層を固定するために使用されるグロメット(grommet)211を含む。具体的には、グロメット211はステンレス鋼を含む。ブラケット、クリップ等の、層を固定する他の手段も考えられる。グロメット又は他の固定手段の要件は、高い温度(例えば、450℃)に耐えることができ、依然として、カラム加熱装置200にかかる十分な圧力を保持できることである。高温金属が好ましい材料である。
【0056】
図2Cは、その上方に配置されたGCカラム212を有する、図2Bのカラム加熱装置200を示す。図示されるように、GCカラム212は、比較的平坦ならせん巻きに向けられ、カラム加熱装置200の上面209の上方に配置され、上面209と熱的に接触している。カラム加熱装置からの熱をGCカラムに伝達するために、GCカラム212は、上面209と直に接触することを通して、又は上面209に実質的に極めて近接するようにして、カラム加熱装置200と熱的に接触している。代表的な実施形態では、GCカラムは、溶融シリカキャピラリカラムを含む。GCカラム212の寸法は様々であるが、通常の内径は約100μm〜約530μmの範囲にある。通常の長さは、約5メートル〜約60メートルの範囲にある。代表的な実施形態におけるGCカラム212のコイリングは、上記のように、GCカラム212が実質的に平坦であるカラム加熱装置210と熱的に接触するように、1回又は複数回「積み重ねられた」実質的に平坦ならせん巻きとすることができる。とりわけ、GCカラム212は、約70mm〜約200mmの直径を有する支持体上に多層環状体として巻きつけることができる。幾つかの実施形態では、2つ以上のGCカラム212がカラム加熱装置200の上方に配置される場合があり、いずれのGCカラム212もカラム加熱装置200と熱的に接触している。
【0057】
具体的には、GCカラム212は、最長で約60mの長さを有し、内径が320μm(又はそれより小さな内径)であり、溶融シリカキャピラリカラムを含む。代替的には、GCカラム212は、60m未満の長さを有することができるが、530μmの内径を有することができる。また、カラムは金属とすることもでき、固定相(stationary phase)で充填される場合もある。
【0058】
動作時に、GCカラム212が第2の基板の上面209の上方に設けられた後に、加熱要素が起動され、カラム加熱装置200の種々の層を加熱し始める。ヒータアセンブリ210が第2の基板208を加熱し、それにより、GCカラム212を加熱することが最も重要である。GCカラム212の加熱は、上記で論じられたように、装置の構成要素の種々の特性に起因して、実質的に均一であり、効率的である。特定の実行が完了した後に、GCカラム212及びカラム加熱装置200は、分析のための初期温度に実質的に達するように冷却される。上記で論じられたようなカラム加熱装置200の種々の構成要素によって、カラム加熱装置200は、その初期温度まで比較的迅速に冷却し、先行する実行からの熱を実質的に保持しない。したがって、次の分析が開始されるとき、カラム加熱装置200及びGCカラム212は先行する実行と実質的に同じ初期温度にある。さらに、GCシステムにおいて使用される他の既知の加熱構成より、サイクル時間が比較的改善される。
【0059】
図2Dは、別の代表的な実施形態による、その上方に配置されたGCカラム212を有する、図2Bのカラム加熱装置200を示す。理解できるように、図2Dのカラム加熱装置200は、上記で図2Cに関連して説明されたカラム加熱装置200と共通の或る特定の態様、細部及び特徴を共有する。多くの場合に、そのような共通の態様、特徴及び細部は繰り返されない。上記で言及されたように、GCカラム212は、比較的平坦ならせん巻きに向けられ、カラム加熱装置200の上面209の上方に配置され、上面209と直に物理的に接触しているか、又は物理的に近接している部分を通して、上面209と熱的に接触する。ここでも、代表的な実施形態におけるGCカラム212のコイリングは、上記のように、GCカラム212が実質的に平坦であるカラム加熱アセンブリ210と熱的に接触するように、1回又は複数回「積み重ねられた」実質的に平坦ならせん巻きとすることができる。本明細書において説明される所望の目的を達成するために、GCカラム212がいかに「積み重ねられる」か、又は「巻きつけられる」場合があるかを当業者であれば理解されよう。図示される代表的な実施形態によれば、GCカラム212はGCカラムブラケット214に取り付けられるGCカラム支持体215によって、上面209の上方の適所に保持される。具体的には、GCカラム支持体215は、アルミニウム、ニッケル又はステンレス鋼の等の金属の細いストリップから構成することができる。より一般的には、GCカラム支持体215は、上面209上にGCカラム212を支持し、温度曝露(最大450℃)に耐えることができる材料から形成することができる。GCカラムブラケット214は、GCカラム212のための構造要素としての役割を果たし、再現可能なクロマトグラフィ性能を得るために上面209上にGCカラム212を再現可能に位置決めするのを確実にする。GCカラムブラケット214は、限定はしないが、ねじ、クランプ及び磁石(図示せず)を含む、様々な既知の要素のうちの1つ又は複数を用いてGCシステム内に取り付けることができる。
【0060】
図2Eは、代表的な実施形態による、GCカラム加熱装置213(「装置」と呼ばれる場合もある)の組立分解図を示す。カラム加熱装置213の多くの態様は、上記のカラム加熱装置200の態様と実質的に同じである。したがって、カラム加熱装置200の特徴に共通である種々の特徴の多くの細部は繰り返されない。とりわけ、カラム加熱装置200、213の共通の要素の種々の特性は同じである。スペーサ層202が省かれる実施形態では、温度センサは基板208、201内に配置することができる。介在層206、207が省かれる実施形態では、温度センサは、基板層208、201内に、又は第1の基板201の下方に(すなわち、第1の基板201より、加熱要素205から更に離れて)位置することができるスペーサ層202内に配置することができる。
【0061】
カラム加熱装置213は、その上方に配置される加熱要素205を有する第1の基板201を備える。
【0062】
ヒータアセンブリ216が加熱要素205を含む。それゆえ、とりわけ、ヒータアセンブリ216は、オプションであるとして上記で言及された第1の介在層206及び第2の介在層207を備えない。しかしながら、加熱要素205は、図2A図2Dに関連して説明された代表的な実施形態のカラム加熱装置200、213において使用する場合が考えられる。
【0063】
加熱要素205は、具体的には、ワイヤヒータ又はフォイルヒータ等の抵抗性加熱要素である。他のタイプの加熱要素も考えられる。加熱要素205はかなり薄く、それゆえ、カラム加熱装置213の各層の所望の平坦性を実質的に妨げないことが有益であることは理解されたい。加熱要素205は、不均一な形状を含む、任意の実質的に平坦な形状とすることができる。既知の薄膜製造方法によれば、当業者の理解し得る範囲内にあるそのような比較的薄い加熱要素が考えられる。
【0064】
カラム加熱装置213は、加熱要素205の上方に配置される第2の基板208も備える。第2の基板208は、カラム加熱装置からの熱をGCカラム212に伝達するために、GCカラム212(図2Dには示されない)と熱的に接触するように構成され、その接触は、上面209と直に接触すること、又は上面209と実質的に極めて近接することを含むことができる。実施形態では、GCカラム212は、GCカラム212と第2の基板208との間にある介在層(図示せず)にもかかわらず、第2の基板208と熱的に接触することができる。具体的には、GCカラムは第2の基板208の上面209の上方に配置され、加熱要素205からの熱が、図2A図2Dの代表的な実施形態に関連して上記で説明されたように、第2の基板208を通して伝達される。第1の基板201及び第2の基板208は、同じ材料又は異なる材料の単一の層又は複数の層を備えることができる。上記の第2の基板208の熱分配を通して、装置213は、第2の基板208と接触しているGCカラムを実質的に均一に加熱する。
【0065】
図3は、代表的な実施形態による、GCカラム212を加熱し、冷却するためのカラム温度制御装置300(「装置」と呼ばれる場合もある)の一部を切り取った等角図を示す。カラム温度制御装置300の多くの態様は、図1図2Eの代表的な実施形態に関連して上記で説明された態様と実質的に同じであり、カラム加熱及び冷却装置300の説明をわかりにくくするのを避けるために繰り返されない。
【0066】
カラム温度制御装置300は、内部302を有するハウジング301を備える。ハウジング301は、カラム加熱装置200又はカラム加熱装置213をその内部に保持するように構成される。一般的に、ハウジング301は、カラム加熱及び冷却装置300の熱的要件に適合する幾つかの材料のうちの1つ又は複数から形成することができる。例えば、ハウジング301は、金属若しくは合金、又は熱的に適した高分子材料を含む。とりわけ、以下で更に十分に説明されるように、第1のアクチュエータ303及び第2のアクチュエータ304が、第1の断熱層306及び第2の断熱層307を、カラム加熱装置200及びGCカラム212の外側と接触するように、そして非接触になるように動かすように構成される。これらの断熱層は少なくとも、カラム及びカラムヒータが熱を損失しないように断熱する能力を有するが、当業者によって理解されるような更なる断熱特性を有することもできる。具体的には、カラム加熱装置200の外側は、第2の基板208の上面209、及び第1の基板201の下面(すなわち、上面209の反対側にある表面)を含む。
【0067】
以下で更に十分に説明されるように、第1のアクチュエータ303(矢印309によって示される)及び第2のアクチュエータ304(矢印308によって示される)はそれぞれ、第1の断熱層306及び第2の断熱層307をカラム加熱装置200の外面及びGCカラム212と比較的確実に接触させておくために、加熱サイクルが開始される前に内側に動くように構成され、第1の断熱層306及び第2の断熱層307をカラム加熱装置200の外面及びGCカラム212から分離するために、加熱サイクルが終了した後に、かつ冷却サイクルが開始する前に、外側に(ここでも、矢印308、309によって示される)に動くように構成される。とりわけ、図3では、最も内側の位置において示される第1のアクチュエータ303及び第2のアクチュエータ304、それゆえ、第1の断熱層306及び第2の断熱層307は、カラム加熱装置200の外面と比較的確実に接触する。したがって、図3において、カラム加熱及び冷却装置300の種々の構成要素は、加熱サイクルのために位置決めされる。
【0068】
また、カラム加熱及び冷却装置300は、冷却サイクル中に内部302内に気流を与えるように位置するファン305も備える。ファン305は、気流を内部に導くために単一のファン又は複数のファンを備えることができる。単数又は複数のファンがカラム加熱装置200にわたって空気を送り込むように構成されるが、ファンはカラム加熱装置200にわたって空気を引き込むように構成することもできる。とりわけ、ファン305は、図3に示される向きに対して垂直になるように向けることができ、これにより、図3の流れの方向に対して垂直な流れを導くことができる。
【0069】
第1の断熱層306及び第2の断熱層307は、GCシステムの性能を妨げることなく、十分な断熱を与えるのに適した材料から形成される。具体的には、第1の断熱層306及び第2の断熱層307は約0.25インチの厚さを有するガラス布材料から形成され、第1の断熱層306及び第2の断熱層307が接触するカラム加熱装置200の外面に対する第1の断熱層306及び第2の断熱層307の共形を改善する「ブランケット」として設けることができる。代替的には、第1の断熱層306及び第2の断熱層307は、限定はしないが、ガラス繊維、ガラス布、玄武岩等を含む、他のタイプの断熱材を含むこともできる。第1の断熱層306及び第2の断熱層307のために選択される材料は一般的に、GC実行後に比較的完全に、かつ迅速に冷却できるようにしながら、GC実行中にカラム加熱装置200と周囲環境との間の十分な熱的障壁を与える必要がある。
【0070】
上記で言及されたように、そして以下で更に十分に説明されるように、第1のアクチュエータ303及び第2のアクチュエータ304は、加熱サイクル中にカラム加熱装置200の外面と比較的良好に熱的に接触するように第1の断熱層306及び第2の断熱層307と係合し、冷却シーケンス中に、第1の断熱層306及び第2の断熱層307と、カラム及びカラム加熱装置200の外面との間に分離空間を生成するように構成される。第1のアクチュエータ303及び第2のアクチュエータ304は、第1の断熱層306及び第2の断熱層307を動かすように構成される幾つかの既知の機械式アクチュエータのうちの1つとすることができる。第1の断熱層306及び第2の断熱層307を係合及び分離する第1のアクチュエータ303及び第2のアクチュエータ304の動きは、機械、空気圧、磁気、手動によることができるか、又は電気制御を通して行うことができる。さらに、2つのアクチュエータが示されるが、直接又は間接の運動システム(例えば、ケーブル及びプーリシステム)を通して第1の断熱層306及び第2の断熱層307の動きをもたらすために、本教示によって、より多くの、又はより少ないアクチュエータが考えられることに留意されたい。
【0071】
図4Aは、代表的な実施形態による、カラム加熱及び冷却装置300の断面図を示す。ここでも、カラム加熱及び冷却装置300の多くの態様が、図1図3の代表的な実施形態に関連して上記で説明された態様と実質的に同じであり、カラム加熱及び冷却装置300の説明をわかりにくくするのを避けるために繰り返されない。
【0072】
図4Aにおいて、第1のアクチュエータ303及び第2のアクチュエータ304は最も内側の位置において示されており(それぞれ矢印401、402によって示される)、それにより、第1の断熱層306及び第2の断熱層307は、カラム加熱装置200の外面と比較的確実に接触している。したがって、図4Aにおいて、カラム加熱及び冷却装置300の種々の構成要素は加熱サイクルのために位置決めされる。以下に説明されるように、第1の断熱層306及び第2の断熱層307の圧力は、GCカラム212と、カラム加熱装置200の外面との間の良好な熱的接触を確実にし、それにより、保持時間再現性、サイクル時間及びエネルギー効率を改善するのを助ける。
【0073】
第1の断熱層306及び第2の断熱層307とカラム加熱装置200の外面との係合は、周囲環境への熱エネルギーの損失を低減することによって、熱効率を有用に改善する。第1の断熱層306は、周囲環境からのGCカラム212の保護も与える。とりわけ、第1の断熱層306は、周囲環境からの断熱層を設け、それにより、GCカラムが、非制御環境である可能性がある周囲環境の温度の影響を受けにくくする。同様に、第1の断熱層306ほど直接ではないが、第2の断熱層307も、周囲環境からの第1の基板201(図4Aには示されない)の実質的な断熱を与えることによって、周囲環境からのGCカラム212の保護を与える。
【0074】
したがって、第1の断熱層306及び第2の断熱層307が係合する結果として、GCカラム212がより迅速に加熱され、或る特定の既知のGCカラムヒータに比べて特定の温度を達成するために使用するエネルギーが少なくなる。第1のアクチュエータ303及び第2のアクチュエータ304は、完全に係合するように(すなわち、第1の断熱層306及び第2の断熱層307がGCカラム212及びカラム加熱装置200と接触するように)、又は完全に解除されるように(すなわち、第1の断熱層306及び第2の断熱層307がGCカラム212及びカラム加熱装置200と接触しないように)、適所に設定されるように構成される。さらに、第1のアクチュエータ303及び第2のアクチュエータ304は非対称に位置決めすることができる。例えば、第2のアクチュエータ304がカラム加熱装置200と完全に係合する間に、第1のアクチュエータ303はカラム加熱装置200から離反するように動くことができる。カラム加熱装置200のヒータアセンブリ210(図4Aには示されない)が周囲温度付近で、又は等温において動作するGC適用例では、カラム加熱装置200にわたって、又はカラム加熱装置200及びGCカラム212と接触している第1の断熱層306及び第2の断熱層307にわたって冷却流を有することによって、温度制御を改善することができる。これを果たすために、第1の断熱層306及び第2の断熱層307の一方又は両方を、GCカラム212及びカラム加熱装置200からわずかな距離だけ離反するように動かすことができるか、又はGCカラム212及びカラム加熱装置200と接触したままにすることができる。ファン305は、可変量の冷却空気がGCカラム212及びカラム加熱装置200にわたって移動できるようにするために、最大電力に切り替わるか、比例電力制御下で動作するか、又はオフに切り替わることができる。
【0075】
最後に、第1の断熱層306及び第2の断熱層307はなくすことができ、カラム加熱及び冷却装置300は、以下で説明されるように、冷却サイクル中にファン305を使用しながら、断熱層を用いることなく加熱サイクルにおいて機能することができることに留意されたい。この代表的な実施形態は、可能ではあるが、上記のように加熱サイクル中にカラム加熱装置200と係合するように構成される第1の断熱層306及び第2の断熱層307を備える代表的な実施形態より有益ではない。とりわけ、第1の断熱層306及び第2の断熱層307をなくすそのような一実施形態では、GCカラム212の加熱速度が悪影響を及ぼされ、GCカラム212及びカラム加熱装置200が周囲環境の変化の影響をより受けやすくなるので、GCカラム212の全体的な再現性が損なわれる。
【0076】
図4Bは、代表的な実施形態による、カラム加熱及び冷却装置300の断面図を示す。ここでも、カラム加熱及び冷却装置300の多くの態様は、図1図4Aの代表的な実施形態に関連して上記で説明された態様と実質的に同じであり、カラム加熱及び冷却装置300の説明をわかりにくくするのを避けるために繰り返されない。
【0077】
図4Bにおいて、第1のアクチュエータ303及び第2のアクチュエータ304は最も外側の位置において示されており(それぞれ矢印403、404によって示される)、それにより、第1の断熱層306及び第2の断熱層307は、カラム加熱装置200の外面から分離される。したがって、図4Bにおいて、カラム加熱及び冷却装置300の種々の構成要素は、冷却サイクルのために位置決めされる。以下で説明されるように、カラム加熱装置200との接触から第1の断熱層306及び第2の断熱層307を解除することは、冷却サイクル中の冷却効率を改善し、冷却の速度及び完全性を高める。有益なことに、冷却速度が高められ、結果としてサイクル時間が改善されるだけでなく、潜熱の除去も改善され、それにより、特定の被分析物の保持時間の比較的高い再現性を可能にする。
【0078】
カラム加熱装置200の外面から第1の断熱層306及び第2の断熱層307を分離することによって、第1の断熱層306及び第2の断熱層307の内面とカラム加熱装置200との間に複数の流路405が生成される。第1の外側流路406及び第2の外側流路407がそれぞれ、ハウジング内の第1の断熱層306及び第2の断熱層307の外面上に存在する。動作中に、ファン305が係合し、ファンからの空気(矢印408によって示される)が流路405、並びに第1の外側流路406及び第2の外側流路407内に流れ、カラム加熱装置200を包囲する領域からの強制対流によって熱エネルギーを除去する。図4Bに示されるように、第1の断熱層306及び第2の断熱層307をカラム加熱装置200から分離することによって、空気が、カラム加熱装置200の外面だけでなく、第1の断熱層306及び第2の断熱層307のそれぞれの両面にわたって流れ、除去されなければカラム加熱及び冷却装置300内に捕捉される可能性があった残留熱を効率的に除去する。例えば、第1の断熱層306及び第2の断熱層307がカラム加熱装置200の外面と接触している係合位置のままであった場合には(図3及び図4Aにおいて示される)、冷却サイクル中の空気流は、第1の断熱層306及び第2の断熱層307の外側部分のみにわたって(すなわち、第1の外側流路406及び第2の外側流路407内のみに)流れることになり、内側流路405の中には流れないことになる。したがって、空気は、カラム加熱装置200の外面にわたって、又は第1の断熱層306及び第2の断熱層307の内面にわたって流れないことになる。数多くの既知のGCヒータデバイスに対して冷却が改善されることになるが、第1の断熱層306及び第2の断熱層307がカラム加熱装置200の外面と接触しないように分離される代表的な実施形態と比べて、ファン305からの空気流で流されない領域内の残留熱の可能性が高くなる(すなわち、図4Aに示される)。この残留熱はサイクル時間を長くすることになり、除去が不十分である場合には、特定の被分析物の保持時間の再現性を低下させる可能性がある。さらに、第1の断熱層306及び第2の断熱層307を、ハウジング301と接触するまで動かすことができ、カラム加熱装置200と第1の断熱層306及び第2の断熱層307との間の空間を広げることができる。数多くの既知のGCヒータデバイスに対して冷却が改善されることになるが、第1の断熱層306及び第2の断熱層307がカラム加熱装置200の外面と接触しないように分離される(すなわち、図4Bに示される)代表的な実施形態によって達成されるのと比べて、ファン305からの空気流で流されない領域内の残留熱の可能性が高くなる。この残留熱はサイクル時間を長くすることになり、除去が不十分である場合には、特定の被分析物の保持時間の再現性を有害なほど低下させる可能性がある。更なる構成は、断熱パッドのうちの一方のみをカラム加熱装置200から離反するように動かすことである。カラム加熱装置200の露出面(おそらく第1の基板201)にわたる空気流によって、第2の基板208と相互作用するGCカラム212を冷却空気流に曝露することなく冷却できるようになる。そのような構成は、周囲温度付近における保持時間安定性を改善できるようにする場合がある。
【0079】
本開示の観点から、本教示を踏まえて、それらの方法及びデバイスを実現できることに留意されたい。さらに、種々の構成要素、材料、構造及びパラメータは説明及び例示としてのみ含まれており、制限する意味は全くない。本開示の観点から、本教示は、添付の特許請求の範囲内にとどまりながら、他の適用例において実現することができ、これらの適用例を実現するために必要とされる構成要素、材料、構造及び装置を決定することができる。
【0080】
例示的な実施形態
ここで開示されている主題により提供される例示的な実施形態は、特許請求の範囲及び以下の実施形態を含むが、これらに限定されない。
【0081】
A1.第1の基板と、
第1の基板に隣接する加熱要素と、
シリコンを含む第2の基板であって、第2の基板は加熱要素に隣接し、第2の基板は第1の面及び第2の面を有し、第2の基板は、第2の基板と熱的に接触しているガスクロマトグラフィカラムに加熱要素からの熱を伝達することができる、第2の基板と、
を備える、装置。
A2.第2の基板は、以下の属性、すなわち、25℃において
【数10】
より低い体積熱容量と、25℃において
【数11】
より高い熱伝導率と、25℃において約
【数12】
より大きい、熱伝導率と熱膨張係数との比と、100GPaより高い機械的剛性とを含む、実施形態A1に記載の装置。
A3.カラム加熱装置を収容するように構成されるハウジングであって、カラム加熱装置は第1の面及び第2の面を含む、ハウジングと、
第1の面に隣接する第1の断熱層と、
第2の面に隣接する第2の断熱層と、
第1の面及び第2の面内に配置されるヒータアセンブリと、
ハウジングに接続され、加熱シーケンス中に、第1の断熱層及び第2の断熱層をそれぞれ第1の面及び第2の面と接触させるように動かし、冷却シーケンス中に、第1の断熱層及び第2の断熱層をそれぞれ第1の面及び第2の面と接触しないように動かすように構成されるアクチュエータと、
を更に備える、実施形態A1又はA2に記載の装置。
A4.冷却シーケンス中に、断熱層とハウジングとの間に形成される流路、及びヒータアセンブリと断熱層の内壁との間に形成される流路が、冷却流体がその中を通り抜け、カラム加熱装置の温度を下げることができるように構成される、実施形態A3に記載の装置。
A5.ハウジングに接続される1つ又は複数のファンを更に備え、1つ又は複数のファンは冷却流体を第1の流路の中に強制的に流すように構成される、実施形態A3又はA4に記載の装置。
A6.ヒータアセンブリを更に備え、このヒータアセンブリは、第1の介在層と第2の介在層との間に配置される加熱要素を備える、実施形態A1又はA2に記載の装置。
A7.第1の介在層と第2の介在層との間に配置される加熱要素を備える、実施形態A1又はA6に記載の装置。
A8.ヒータアセンブリは基板から電気的に絶縁される、実施形態A1〜A7のいずれか一項に記載の装置。
A9.加熱要素はフォイルヒータ又はワイヤヒータを含む、実施形態A1〜A6に記載の装置。
A10.第1の基板は結晶シリコンを含む、実施形態A1〜A9のいずれか一項に記載の装置。
A11.結晶シリコンは多結晶シリコンを含む、実施形態A1〜A10のいずれか一項に記載の装置。
A12.第2の基板は結晶シリコンを含む、実施形態A1〜A11のいずれか一項に記載の装置。
A13.第2の基板は、窒化アルミニウム、ダイヤモンド、炭化シリコン、タングステン、モリブデン、タングステン合金、モリブデン合金又はその組み合わせを含む、実施形態A1〜A12のいずれか一項に記載の装置。
なお、出願当初の特許請求の範囲の記載は以下の通りである。
請求項1:
第1の基板と、
前記第1の基板に隣接する加熱要素と、
シリコンを含む第2の基板であって、該第2の基板は前記加熱要素に隣接し、該第2の基板は第1の面及び第2の面を有し、該第2の基板は、該第2の基板と熱的に接触しているガスクロマトグラフィカラムに前記加熱要素からの熱を伝達することができる、第2の基板と
を備える、装置。
請求項2:
ヒータアセンブリを更に備え、該ヒータアセンブリは、第1の介在層と第2の介在層との間に配置される前記加熱要素を備える、請求項1に記載の装置。
請求項3:
前記ヒータアセンブリは前記基板から電気的に絶縁される、請求項2に記載の装置。
請求項4:
前記加熱要素はフォイルヒータ又はワイヤヒータを含む、請求項1に記載の装置。
請求項5:
前記第1の基板は結晶シリコンを含む、請求項1に記載の装置。
請求項6:
前記結晶シリコンは多結晶シリコンを含む、請求項5に記載の装置。
請求項7:
前記第2の基板は結晶シリコンを含む、請求項1に記載の装置。
請求項8:
前記第2の基板は前記加熱要素に隣接し、該第2の基板は、以下の属性、すなわち、25℃において
【数13】
より低い体積熱容量と、25℃において
【数14】
より高い熱伝導率と、25℃において約
【数15】
より大きい、熱伝導率と熱膨張係数との比と、100GPaより高い機械的剛性とを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
請求項9:
ヒータアセンブリを更に備え、該ヒータアセンブリは、第1の層と第2の介在層との間に配置される前記加熱要素を備える、請求項8に記載の装置。
請求項10:
前記第2の基板は、窒化アルミニウム、ダイヤモンド、炭化シリコン、タングステン、モリブデン、タングステン合金、モリブデン合金又はその組み合わせを含む、請求項8に記載の装置。
請求項11:
前記加熱要素はフォイルヒータ又はワイヤヒータを含む、請求項8に記載の装置。
請求項12:
カラム加熱装置を収容するように構成されるハウジングであって、前記カラム加熱装置は第1の面及び第2の面を含む、ハウジングと、
前記第1の面に隣接する第1の断熱層と、
前記第2の面に隣接する第2の断熱層と、
前記第1の面及び前記第2の面内に配置されるヒータアセンブリと、
前記ハウジングに接続され、加熱シーケンス中に、前記第1の断熱層及び前記第2の断熱層をそれぞれ前記第1の面及び前記第2の面と接触させるように動かし、冷却シーケンス中に、前記第1の断熱層及び前記第2の断熱層をそれぞれ前記第1の面及び前記第2の面と接触しないように動かすように構成されるアクチュエータと
を更に備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
請求項13:
前記冷却シーケンス中に、前記断熱層と前記ハウジングとの間に形成される流路、及び前記ヒータアセンブリと前記断熱層の内壁との間に形成される流路が、冷却流体がその中を通り抜け、前記カラム加熱装置の温度を下げることができるように構成される、請求項12に記載の装置。
請求項14:
前記ハウジングに接続される1つ又は複数のファンを更に備え、前記1つ又は複数のファンは前記冷却流体を前記第1の流路を通じて強制的に流すように構成される、請求項12に記載の装置。
請求項15:
前記カラム加熱装置は、
第1の基板と、
前記第1の基板に隣接するヒータアセンブリと、
前記ヒータアセンブリに隣接する第2の基板であって、前記第2の基板は第1の面及び第2の面を有し、前記第2の面は熱的に接触している前記ガスクロマトグラフィカラムを有するように構成され、前記ヒータアセンブリからの熱は前記第2の基板を通して伝達され、前記ガスクロマトグラフィカラムを実質的に均一に加熱する、第2の基板と
を備える、請求項12に記載の装置。
請求項16:
ヒータアセンブリを更に備え、該ヒータアセンブリは、第1の介在層と第2の介在層との間に配置される前記加熱要素を備える、請求項15に記載の装置。
請求項17:
前記ヒータアセンブリは前記基板から電気的に絶縁される、請求項16に記載の装置。
請求項18:
前記加熱要素はフォイルヒータ又はワイヤヒータを含む、請求項17に記載の装置。
請求項19:
前記第2の基板は結晶シリコンを含む、請求項15に記載の装置。
請求項20:
前記第2の基板は、以下の属性、すなわち、25℃において
【数16】
より低い体積熱容量と、25℃において
【数17】
より高い熱伝導率と、25℃において
【数18】
より大きい、熱伝導率と熱膨張係数との比と、100GPaより高い機械的剛性とを含む、請求項15に記載の装置。
請求項21:
前記第2の基板は、窒化アルミニウム、ダイヤモンド、炭化シリコン、タングステン、モリブデン、タングステン合金、モリブデン合金又はその組み合わせを含む、請求項15に記載の装置。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B