【文献】
The International Journal of Biochemistry & Cell Biology, Vol. 36, (2004), p. 379-385
【文献】
The Journal of Biological Chemistry, Vol. 279, No. 48, (2004), p. 49868-49875
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
活性型の前記TCTPがホモ又はヘテロ二量体型であり、FLドメイン又はH2ドメインがTCTP二量体型HRFの構造のうちHRF受容体に結合する領域であり、前記TCTP二量体型HRFが全長又はN末端が欠失したTCTP二量体である、
請求項3又は4に記載のアレルギー性疾患、炎症性疾患、及びマラリアからなる群から選択される1又は複数の疾患の予防または治療に対する医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、IgE依存性ヒスタミン放出因子(HRF)と細胞膜に存在するその受容体との間の結合阻害剤を有効成分として含む、アレルギー性疾患、炎症性疾患、及びマラリアからなる群から選択される1又は複数の疾患の診断、予防、又は治療に対する医薬組成物を提供する。
【0029】
TCTPは、分泌小胞(small secretory vesicle)に滞在した後に不規則な経路によって細胞の外に分泌される固有のタンパク質である。p53誘導性膜タンパク質であるTSAP6がこのプロセスに関与すると報告されている(Amzallag et al., J Biol Chem, 279, 46104-46112, 2004)。分泌されたHRFは、IgEで感作された好塩基球を刺激してヒスタミン及びインターロイキン−4(IL−4)の放出を促進し、アレルギー性鼻炎、喘息、及びアトピー性皮膚炎等の遅発相アレルギー性疾患をもたらす(非特許文献1)。
【0030】
本明細書におけるアレルギー性疾患は、好ましくは喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(皮膚の掻痒)、花粉症、結膜炎及びアナフィラキシー、より好ましくは喘息、鼻炎又はアトピー性皮膚炎からなる群から選択されるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0031】
本明細書における炎症性疾患は、好ましくは関節リウマチ、気管支炎、肺炎、関節炎、腎炎、乾癬、皮膚炎、クローン病、腸炎、歯肉炎、動脈硬化、冠動脈炎、肝炎、ベーチェット病、膀胱癌、前立腺炎、腎盂腎炎、糸球体腎炎、骨髄炎、甲状腺炎、ブドウ膜炎、腹腔内炎症、髄膜炎及び肺線維症、より好ましくは関節リウマチからからなる群から選択されるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0032】
HRFによって上方制御され得るIL−8は、様々なアレルギー性疾患に関与し、好ましくは喘息又は気管支炎(Chanez et al., Int Arch Allergy Immunol, 111, 83-88, 1996)、慢性閉塞性肺疾患(Nocker et al., Int Arch Allergy Immunol, 109, 183-191, 1996)、気管支拡張症(Simpson et al., Thorax, 62, 211-218, 2007)、鼻炎(Benson et al., Pediatr Allergy Immunol, 10, 178-185, 1999; Kuna et al., J Allergy Clin Immun, 97, 104-112, 1996)、アトピー性皮膚炎(Kimata & Lindley, Arch Dis Child 70,119-122, 1994)、蕁麻疹(皮膚の掻痒、Choi et al., J Clin Immunol, 28, 244-249, 2008)、花粉症(Ciprandi et al., Otolaryngol Head Neck Surg, 133, 429-435, 2005)、結膜炎(Miyoshi et al., Cornea, 20, 743-747, 2001)、及びアナフェラキシーによって例示されるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0033】
IL−8は様々な炎症性疾患に関与し、好ましくは、慢性気管支炎等の慢性炎症性気管支疾患(Richman-Eisenstat et al., Am J Physiol, 264, L413-418, 1993)、肺炎等の炎症性肺疾患(Erger and Casale, Eur Respir J, 11, 299-305, 1998; Pease & Sabroe, Am J Respir Med, 1, 19-25, 2002)、関節炎又は腎炎(Harada et al., J Leukoc Biol, 56, 559-564, 1994)、乾癬(Schulz et al., J Immunol, 151, 4399-4406, 1993; Bruch-Gerharz et al., J Exp Med, 184, 2007-2012, 1996)、皮膚炎(Sticherling et al., Arch Dermatol Res, 284, 82-85, 1992)、クローン病(Izutani et al., Inflamm Bowel Dis, 1, 37-47, 1995)、炎症性腸疾患(Mitsuyama et al., Clin Exp Immunol, 96, 432-436, 1994)、歯肉炎(Haake & Huang, Clinical Periodontology, 9th Edition. Philadelphia: W.B.Saunders Co. 2002. page 162)、動脈硬化症及び冠動脈疾患等の心血管疾患(Apostolakis et al., Cardiovasc Res, 84, 353-360, 2009; Boekholdt et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol,24, 1503-1508, 2004)、慢性肝疾患(Zimmermann et al., PLoS ONE, 6, e21381, 2011)、ベーチェット病(Katsantonis et al., Dermatology, 201, 37-39, 2000)、膀胱癌、前立腺炎、腎盂腎炎、又は骨髄炎(Shahzad et al., Int arch med, 3, 11, 2010)、甲状腺疾患(Kobawala et al., J Thyroid Res, 8, 270149, 2011)、ブドウ膜炎(Klok et al., Br J Ophthalmol, 82, 871-874, 1998)、糸球体腎炎、腹膜炎、髄膜炎、及び肺線維症(Harada et al., Mol Med Today, 2, 482-489, 1996)によって例示されるが、必ずしもこれらに限定されない。したがって、肺疾患、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬及び掌蹠膿疱症等の慢性炎症性皮膚疾患、眼炎症等の他の炎症性疾患(Mukaida, Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol, 284, L566-L577, 2003; Skov et al., J Immunol, 181, 669-679, 2008; Harada et al., J Leukoc Biol, 56, 559-564, 1994)等の疾患を治療するための効率的な戦略としてIL−8阻害剤を使用することが提案される。IL−8ブロッキング抗体又はIL−8受容体をコードする遺伝子の抑制もまた、炎症の治療において有効である(Harada et al., Mol Med Today, 2, 482-489, 1996)。例えば、炎症は、慢性炎症性皮膚疾患を有する患者にIL−8に対する抗体を投与することにより減少された(Skov et al., J Immunol, 181, 669-679, 2008)。HRFによって上方制御されるGM−CSFもまた、様々な炎症性疾患に関与するため(Hamilton, Trends Immunol, 23, 403-408, 2002)、GM−CSFもまた、関節リウマチを含む炎症性疾患の治療に対する標的として提案される(Cornish et al., Nat Rev Rheumatol, 5, 554-559, 2009)。本発明者らは、HRF受容体結合阻害剤がIL−8分泌の阻害に関与することを確認し、本発明のHRF受容体結合阻害剤が上に述べられる疾患の予防及び治療に有用な可能性があることが示唆された。
【0034】
抗マラリア剤であるアルテミシニンがマラリアのタンパク質HRFに結合することが1998年に開示された(Bhisutthibhan et al., J Biol Chem, 273, 16192-16198, 1998)。また、IL−8はマラリアを有する患者で分泌され(Friedland et al., Trans R Soc Trop Med Hyg, 87, 54-55, 1993)、以前の報告によればマラリアHRFはIL−8分泌を促進する(MacDonald et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 98, 10829-32, 2001)。したがって、HRF活性を抑制するためHRFの受容体結合を阻害することによって、アルテミシニンと同じように本発明のHRF受容体結合阻害剤をマラリアの予防及び治療に有利に使用することができる。
【0035】
TCTP(翻訳的に制御された腫瘍タンパク質)二量体は活性型である。TCTP二量体型HRFの構造のうち、可動性ループ(FL)ドメイン又はヘリックス2(H2)ドメインは、HRF受容体と結合するための領域である。本明細書では、TCTPは天然起源由来又は人工的な産生によって作製されることが好ましく、全長であるか、又は可動性ループ(FL)の欠失、ヘリックス2(H2)の欠失、C末端の欠失、若しくはN末端の欠失のいずれかを有する。
【0036】
上記TCTP二量体型HRFは、全長、若しくはFL、H2、N末端若しくはC末端の欠失型のいずれかの二量体型であってもよく、又はホモ若しくはヘテロであってもよい。
【0037】
上記TCTP二量体型HRFは、脊椎動物に由来してもよい。
【0038】
上記結合阻害剤は、HRF受容体と、可動性ループ(FL)ドメイン及びヘリックス2(H2)ドメインのうち1つ又はそれらの両方との間の結合を阻害するように機能し得る。
【0039】
TCTP二量体型HRF構造において、可動性ループ(FL)ドメインは、天然変性タンパク質(IUP)構造部分として細胞膜に存在するHRF受容体に結合することができるが、必ずしもこれに限定されない。
【0040】
上記FLドメインは、以下の(X)n−(S又はT)−RTEG−(A、N、又はQ)−IDDSLIGGNASAEGPEGEGTE−(S又はA)−TV−(V又はI)−T−(X)nのアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つを含むことが好ましく、式中、Xは無作為のアミノ酸であり、nは0〜5の整数である。
【0041】
上記FLドメインは、以下の表1に列挙される配列番号1〜配列番号4によって表されるアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つを含むことが好ましい。
【0042】
上のFLドメインは、それ自体をコードする遺伝子によってコードされてもよい。
【0043】
上のFLドメインは、以下の表1に列挙される配列番号5〜配列番号10によって表されるヌクレオチド配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントのいずれかのDNAによってコードされてもよい。
【0044】
上記TCTP二量体型HRFは、細胞膜に存在するHRF受容体に結合するヘリックス2(H2)ドメインを有してもよい。
【0045】
上記H2ドメインは、以下の(X)n−TKE−(A又はS)−YKKYIKDYMK−(S又はA)−(L又はI)−K−(G又はA)−(K又はR)−LEE−(Q又はH)−(K又はR)−P−(X)nのアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つを含むことが好ましく、式中、Xは無作為のアミノ酸であり、nは0〜5の整数である。
【0046】
上記H2ドメインは、以下の表1に列挙される配列番号11〜配列番号12によって表されるアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つを含むことが好ましい。
【0047】
上のH2ドメインは、それ自体をコードする遺伝子によってコードされてもよい。
【0048】
上のH2ドメインは、以下の配列番号13〜配列番号15によって表されるヌクレオチド配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つによってコードされてもよい。
【0049】
上記C末端ドメインは、以下の配列番号33〜配列番号34によって表されるアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つで構成されることが好ましく、該アミノ酸配列は1又は複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を有してもよい。
【0050】
上のC末端ドメインはそれ自体をコードする遺伝子によってコードされてもよい。
【0051】
上のC末端ドメインは、以下の配列番号35〜配列番号37によって表されるヌクレオチド配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つによってコードされてもよい。上記C末端ドメインは、以下の配列番号33〜配列番号34によって表されるアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つで構成されることが好ましく、該アミノ酸配列は1又は複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を有してもよい。
【0053】
FLドメイン、H2ドメイン、又はC末端ドメインのアミノ酸配列は、当業者に既知の従来の方法によって修飾されてもよい。例えば、FLドメイン、H2ドメイン、又はC末端ドメイン中のアミノ酸の数は、増加されてもよく、減少されてもよい。また、修飾は、FLドメイン、H2ドメイン、又はC末端ドメインの活性が減少されない限り、上のアミノ酸配列中の順番又は特定の残基を変更することによって行われてもよい。上記アミノ酸は、天然のL−α−アミノ酸のみならず、β、γ、δのアミノ酸またD−α−アミノ酸誘導体に変更されてもよい。
【0054】
したがって、当業者は、そのHRF阻害活性が維持され、増加され、又は減少されない限り、従来の技法を使用してFL、H2ドメイン、又はC末端ドメインを修飾することができる。その場合、修飾されたものもまた、本発明の範囲に含まれる。
【0055】
上記FLドメイン、H2ドメイン、C末端ドメインは、脊椎動物に由来してもよい。
【0056】
HRF受容体結合ドメイン及びその機構が本発明によって開示されることから、当該技術分野の知識を有する者はだれでも、ラット、マウス、ヒト、ウサギ、及びニワトリにおいてFLドメイン、H2ドメイン、及びC末端ドメインを容易に同定することができる。したがって、ラット、マウス、ヒト、ウサギ、及びニワトリのHRF受容体結合ドメインもまた、本発明の範囲に含まれる。
【0057】
TCTPの全長アミノ酸は、様々な真核生物において高度に保存され、配列アラインメントによって確認された(Thaw et al., Nat Struct Biol, 8, 701-704, 2001)。三次元構造もまた、高い類似性を有する(Hinojosa-Moya et al., J Mol Evol, 66, 472-483, 2008)。したがって、TCTPの全長配列のみならず、受容体結合ドメインであるFL、H2、及びC末端もまた、脊椎動物において非常に相同であり、受容体結合、二量体形成において、又は活性化のための部位として同等に作用し得る。
【0058】
上の結合阻害剤は、HRF受容体への結合に関与するドメインに特異的に結合し、HRFとその受容体との間の結合を阻害して受容体活性を阻害するか、又は二量体形成を阻害するように機能することが好ましい。
【0059】
上の結合阻害剤は、以下のHRFのFLドメイン、H2ドメイン、及びC末端ドメインの1又は複数に結合し、FLドメイン又はH2ドメインのいずれか又はそれらの両方とHRF受容体との間の結合を阻害し得る。
【0060】
上の結合阻害剤は、以下のHRFのFLドメイン、H2ドメイン、及びC末端ドメインの1又は複数に対する抗体、並びにそれらのフラグメントからなる群から選択される1又は複数の物質を含んでもよい。
【0061】
上の結合阻害剤は、アミノ酸配列(X)n−(S又はT)−RTEG−(A、N又はQ)−IDDSLIGGNASAEGPEGEGTE−(S又はA)−TV−(V又はI)−T−(X)n、それらのアナログ、又はそれらのフラグメントを認識する抗体又はそのフラグメントであってもよいが、必ずしもこれらに限定されず、FLドメインを認識することができる任意の抗体が許容され得る。式中、Xは無作為のアミノ酸であり、nは0〜5の整数である。
【0062】
上の結合阻害剤は、アミノ酸配列(X)n−TKE−(A又はS)−YKKYIKDYMK−(S又はA)−(L又はI)−K−(G又はA)−(K又はR)−LEE−(Q又はH)−(K又はR)−P−(X)n、それらのアナログ、又はそれらのフラグメントを認識する抗体又はそのフラグメントであってもよいが、必ずしもこれらに限定されず、H2ドメインを認識することができる任意の抗体が許容され得る。式中、Xは無作為のアミノ酸であり、nは0〜5の整数である。
【0063】
上の結合阻害剤は、配列番号33又は配列番号34によって表されるアミノ酸配列、それらのアナログ、若しくはそれらのフラグメントを認識する抗体若しくはそのフラグメント、又はそのフラグメントであってもよく、該アミノ酸配列は、配列中に1又は複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を有してもよいが、必ずしもこれらに限定されず、HRFのC末端ドメインを認識することができる任意の抗体が許容され得る。
【0064】
上の結合阻害剤は、HRF受容体に結合してHRFの機能を抑制する。C末端ドメインは、TCTP二量体形成、又はHRF若しくはHRF受容体の活性化を阻害することが好ましい。
【0065】
本発明におけるHRF機能の阻害は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の分泌、IL−8の分泌、及び酸化ストレス活性の阻害をもたらすことが好ましい。
【0066】
上の結合阻害剤は、HRF受容体を競合的に、非競合的に、又は不競合的に阻害し得る。
【0067】
上の結合阻害剤は、HRFのFLドメイン、H2ドメイン、C末端ドメイン、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントからなる群から選択される1又は複数の物質を有効成分として含むHRF受容体結合阻害剤を含んでもよい。
【0068】
上の結合阻害剤は、HRFのFLドメイン、H2ドメイン、C末端ドメイン、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントからなる群から選択される1又は複数の物質を含んでもよい。
【0069】
配列番号1〜配列番号4によって表されるアミノ酸配列の1つを含むFLドメインは、IgE依存性ヒスタミン放出因子(HRF)と細胞膜に存在するHRF受容体との間の結合阻害剤として作用し得る。
【0070】
配列番号11又は配列番号12によって表されるアミノ酸配列を含むH2ドメインは、上の結合阻害剤として作用し得る。
【0071】
配列番号33又は配列番号34によって表されるアミノ酸配列を含むC末端ドメインは、上の結合阻害剤として作用し得る。
【0072】
また、上のFLドメイン、H2ドメイン、又はC末端ドメイン及びHRFドメインと接合された融合タンパク質は、上の結合阻害剤として作用し得る。
【0073】
上記FLドメイン、H2ドメイン、及びC末端ドメインの様々な配列の組み合せを有するFLドメイン、H2ドメイン、及びC末端ドメインは、結合阻害剤としても作用し得る。
【0074】
結合阻害剤は、上のFLドメイン、H2ドメイン、及びC末端ドメインと相同性を有する類似の配列又はそのフラグメントを含んでもよい。
【0075】
上の結合阻害剤は、以下の(X)n−(S又はT)−RTEG−(A、N又はQ)−IDDSLIGGNASAEGPEGEGTE−(S又はA)−TV−(V又はI)−T−(X)nのアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つを含むことが好ましく、式中、Xは無作為のアミノ酸であり、nは0〜5の整数である。
【0076】
上の結合阻害剤は、表1に列挙される配列番号1〜配列番号4によって表されるアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つを含んでもよい。
【0077】
上の結合阻害剤は、以下の(X)n−TKE−(A又はS)−YKKYIKDYMK−(S又はA)−(L又はI)−K−(G又はA)−(K又はR)−LEE−(Q又はH)−(K又はR)−P−(X)nのアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つを含むことが好ましく、式中、Xは無作為のアミノ酸であり、nは0〜5の整数である。
【0078】
結合阻害剤は、表1に列挙される配列番号11〜配列番号12によって表されるアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントからなる群から選択される物質の1つで構成されることが好ましい。
【0079】
結合阻害剤は、以下の配列番号33〜配列番号34によって表されるアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つで構成されることが好ましく、該アミノ酸配列は1又は複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を有してもよい。
【0080】
上の結合阻害剤は、FLドメイン、H2ドメイン、C末端ドメイン、及びHRFからなる群から選択される1又は複数の物質の発現を抑制する発現阻害剤を有効成分として含んでもよい。
【0081】
FLドメイン、H2ドメイン、C末端ドメイン、及びHRFからなる群から選択される1又は複数の物質の発現を抑制する発現阻害剤は、FLドメイン、H2ドメイン、FLドメイン及びH2ドメイン、C末端ドメイン、又はHRF mRNAに結合するアンチセンスヌクレオチド、短干渉RNA、短ヘアピンRNA、並びに低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択され得る。
【0082】
上の結合阻害剤は、HRFのC末端ドメイン、そのアナログ、又はその免疫学的に活性なフラグメントに特異的に結合する抗体を含んでもよい。
【0083】
上の結合阻害剤は、7個のアミノ酸で構成されるペプチド(ここで、第1のアミノ酸はA、L及びWからなる群から選択され、第2のアミノ酸はV、Y、E及びAからなる群から選択され、第3のアミノ酸はT、V、F、及びAからなる群から選択され、第4のアミノ酸はY、P、及びAからなる群から選択され、第5のアミノ酸はP、G、及びKからなる群から選択され、第6のアミノ酸はA、L、S、及びWからなる群から選択され、第7のアミノ酸はA、P、及びMからなる群から選択される)、それらのアナログ、又はそれらのフラグメントであってもよい。
【0084】
上の結合阻害剤は、配列番号23〜配列番号32によって表されるアミノ酸、それらのアナログ、又はそれらのフラグメントの1つで構成されるペプチドであってもよい。
【0085】
7個のアミノ酸又はそれらのアナログで構成されるペプチドは、HRFに結合することができ、より好ましくはHRFのH2ドメインに結合することができる。
【0086】
上の7個のアミノ酸又はそれらのアナログで構成されるペプチドは、最終的に、HRFにそれ自体を結合することによってHRFとその受容体との間の結合を阻害することにより免疫応答誘導物質の分泌を妨げる。
【0087】
本発明の好ましい実施形態では、f−TCTP(単量体TCTP)、Δ−dTCTP(FL欠失二量体TCTP)、及びDel−N11dTCTP(N末端欠失二量体TCTP、HRF)のBEAS−2B細胞におけるIL−8及びGM−CSFの分泌に対する効果を調べた。そうするため、f−TCTP、Δ−dTCTP、及びDel−N11dTCTPの活性をBEAS−2B細胞(ATCC)におけるIL−8分泌と比較した。その結果、Del−N11dTCTPは、f−TCTP及びΔ−dTCTPがなし得たよりも更にIL−8及びGM−CSFの分泌を増加した(
図1及び
図2を参照されたい)。Del−N11dTCTPは、活性な二量体を形成することによってIL−8分泌を誘導する能力を示したが、FL欠失Δ−dTCTPは、二量体を形成してもIL−8分泌を誘導し得なかった不活性な形態であることが確認された。したがって、FLドメインは、その特異的受容体へのTCTP二量体の結合に関与することが確認され、サイトカイン分泌活性に対する重要な部分であることが示唆された。
【0088】
本発明の好ましい実施形態では、dTBP2(dTCTP結合ペプチド2)に対するf−TCTP、Δ−dTCTP、及びDel−N11dTCTPの親和性を調べた。詳しくは、ビオチンをdTBP2のCOOH末端に接合し、精製して固定化した。その後、f−TCTP、Δ−dTCTP、及びDel−N11dTCTPをそれに添加した後、結合強度を調べた。その結果、Del−N11dTCTPはf−TCTP又はΔ−dTCTPよりも高いdTBP2に対する親和性を有した(
図3を参照されたい)。Del−N11dTCTPと異なり、FLドメイン欠失Δ−dTCTPは、二量体を形成できたにもかかわらず、dTBP2ペプチドに対する低い親和性を示した。したがって、FLドメインはdTBP2と活性HRF型Del−N11dTCTPとの間の結合プロセスにおいて重要な役割を果たし、そのためFLドメインなしでは二量体が形成されたとしてもdTBP2結合が阻害されることが確認された。結論として、FLドメインは受容体に結合して構造変化をもたらし、それによりHRFはdTBP2に結合することができる。
【0089】
本発明の好ましい実施形態では、本発明者らは、FLドメイン、ヘリックス2ドメイン、及びヘリックス3ドメインがDel−N11dTCTPと受容体との間の結合を阻害し得るかどうかを更に調べた。そうするため、各ドメインのペプチドを合成し、Del−N11dTCTPの阻害を調べるため使用した。FLドメイン、ヘリックス2ドメイン、及びヘリックス3ドメインのペプチドをNH
2末端のアセチル化及びCOOH末端のアミド化によって合成した後、精製した(peptron)。その結果、FLドメイン及びヘリックス2ドメインは、ヘリックス3ドメインよりも良好にIL−8の分泌を阻害した(
図4を参照されたい)。
【0090】
本発明の好ましい実施形態では、FLドメイン及びヘリックス2ドメインを認識するポリクローナル抗体のIL−8阻害効果を調べた。詳しくは、BEAS−2B細胞を種々の濃度の抗FL抗体及び抗H2抗体で処理した後、Del−N11dTCTPによって誘導されるIL−8の抑制を調べた。その結果、IL−8分泌は抗体単独で処理された陰性対照(NC)群では観察されなかった。Del−N11dTCTP単独で処理された細胞では、IL−8の分泌は増加した。FLドメインを特異的に認識する抗体で処理された細胞では、Del−N11dTCTPによるIL−8の分泌は減少した(
図5を参照されたい)。また、H2ドメインを特異的に認識する抗体で処理された細胞でも、Del−N11dTCTPによるIL−8分泌は減少し、本発明の抗体がIL−8放出に対して阻害効果を有することを示唆した(
図6を参照されたい)。
【0091】
本発明の好ましい実施形態では、本発明者らは、X線構造結晶学によってFLドメインの存在下又は不在下でのTCTP受容体結合のモデリングを行った。そうするため、単量体型のf−TCTP(FLドメインを含む)及びΔ−TCTP(FLドメイン欠失)を作製した後、f−dTCTP及びΔ−dTCTPを構築するため二量体形成を行った。結晶化の後、構造を同定した。
【0092】
本発明の好ましい実施形態では、f−dTCTP(FLドメインを含む)を構築するため、単量体型のf−TCTP(FLドメインを含む)タンパク質をクローニングして発現させた。HisTrapカラム(
図7を参照されたい)を使用して分離されたf−TCTPを、Hi−Trap Qカラムを使用するイオン交換クロマトグラフィーによって精製した後、SDS−PAGEを行った(
図8を参照されたい)。
【0093】
本発明の好ましい実施形態では、Δ−dTCTP(FLドメイン欠失)を構築するため、単量体型のΔ−TCTP(FLドメイン欠失)タンパク質をクローニングして発現させた。HisTrapカラム(
図9を参照されたい)を使用して分離されたΔ−TCTPを、Hi−Trap Qカラムを使用するイオン交換クロマトグラフィーによって精製した後、SDS−PAGEを行った(
図10を参照されたい)。
【0094】
本発明の好ましい実施形態では、本発明者らは、ターシャリーブチルヒドロペルオキシドで処理することにより上で発現され、精製されたf−TCTP及びΔ−TCTPの二量体の形成を誘導した。その結果、f−dTCTP及びΔ−dTCTPのタンパク質を得た。
【0095】
本発明の好ましい実施形態では、f−dTCTP及びΔ−dTCTPのタンパク質結晶の作製に対する最適条件をスクリーニングした。詳しくは、結晶化をハンギングドロップ蒸気拡散法又はシッティングドロップ蒸気拡散法により誘導した。シンクロトロンからの情報を収集するため、安定化されたクライオ条件(cryo-condition:低温条件)をスクリーニングした。結晶化されたf−dTCTP及びΔ−dTCTPのタンパク質のX線データを安定化されたクライオ条件において収集した。f−dTCTP及びΔ−dTCTPの結晶構造を調べた。その結果、結晶構造の構造は、試験モデルとして使用される本来のTCTPのものと類似した(
図11を参照されたい)。二量体型のf−dTCTP及びΔ−dTCTPの三次元構造は対称蝶形であり、二量体構造はCys172によって介在されることが確認された(
図12を参照されたい)。
【0096】
本発明の好ましい実施形態では、本発明者らは、そのループの可動性によりf−dTCTPのFLドメイン自体を特定することが困難であったことから、FLドメインを含むf−dTCTPの構造のモデリングを行った。FLドメインのモデリングを極小化エネルギーによって行った。その結果、FLと接合されたf−dTCTP構造において、FLは独立しており、HRFの本体から離れていたため、HRF構造全体はFLの存在によって影響を受けなかった(
図13を参照されたい)。また、本発明者らは、f−dTCTPとその受容体との間の結合モデル、及びf−dTCTPとdTBTP2ペプチドとの間の結合モデルを構築した(
図14を参照されたい)。
【0097】
本発明の好ましい実施形態では、本発明者らは、HRF受容体に結合する領域であるHRFのFLドメイン、H2ドメイン、及びC末端ドメインに特異的に結合することによってHRF活性を阻害する抗体を構築するため、抗原としてHRF受容体結合ドメインペプチドを使用してニュージーランドホワイトのウサギにおいて免疫応答を誘導して特異的なポリクローナル抗体を産生した。産生された抗体が上記抗原に特異的に結合することができたかどうかを調べた。また、本発明者らは、抗原特異的アフィニティークロマトグラフィー(
図15及び実施例8を参照されたい)により受容体結合ドメインであるFL、H2、及びC末端に結合するIgGを分離、精製した後、免疫応答誘導物質に対する阻害効果及びその抗炎症効果の試験を行った。
【0098】
さらに、本発明の別の好ましい実施形態では、本発明者らは、HRF親和性アッセイによってHRFに結合することができた7−merのペプチドを分離し、7個のアミノ酸で構成される7−merペプチドの配列を分析した(配列番号23〜配列番号32を参照されたい)。その結果、上のペプチドは、H2ドメイン等のHRFの特定の領域に結合してHRFとその受容体との間の結合を阻害することができ、したがって、免疫応答誘導物質の分泌を妨げ得ることを確認した。
【0099】
本発明者らは、HRF構造の一部として細胞膜に存在する、FLドメイン、H2ドメイン、及びC末端ドメインが、HRF受容体を結合することができたことを確認し、上記に結合する抗体及びHRFに結合する7−merペプチドを更に同定した。それゆえ、HRFに結合する上記のFLドメイン、H2ドメイン及びC末端ドメイン、並びにそれらの抗体及び7−merペプチドを、喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(皮膚の掻痒)、花粉症、結膜炎及びアナフィラキシー等のアレルギー性疾患;気管支炎、肺炎、関節炎、腎炎、乾癬、皮膚炎、クローン病、腸炎、歯肉炎、動脈硬化、冠動脈炎、肝炎、ベーチェット病、膀胱癌、前立腺炎、腎盂腎炎、糸球体腎炎、骨髄炎、甲状腺炎、ブドウ膜炎、腹腔内炎症、髄膜炎、肺線維症及び関節リウマチ等の炎症性疾患;並びにマラリアを含むHRF関連疾患の診断、予防及び治療のための薬剤の開発に効果的に使用することができる。
【0100】
本発明の組成物は、HRF受容体結合阻害剤に加えて、HRF受容体結合阻害剤と同じ又はそれに類似する機能を有する1又は複数の成分を含んでもよい。
【0101】
本発明の組成物を経口投与又は非経口投与することができ、非経口投与には、腹腔内注射、直腸内注射、皮内注射、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、子宮内注射、脳血管内注射、胸腔内注射、関節内注射、硬膜外注射、髄腔内注射、心内膜注射、動脈内注射、骨内注射、鼻腔内投与、直腸内投与、気管内投与、経皮投与、点眼及び噴霧があるが、必ずしもこれらに限定されない。本発明の組成物を一般的な形態の医薬配合物において使用することができる。
【0102】
本発明の組成物を単独で投与してもよく、外科手術、ホルモン療法、化学療法、及び生物学的制御因子と共に処理してもよい。
【0103】
上記組成物の有効量は、1日当たり0.0001mg/kg〜1000mg/kg、好ましくは1日当たり0.001mg/kg〜10mg/kgであり、投与頻度は1日1回、又は好ましくは1日数回である。上記組成物の有効量は、体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率、及び疾患の重症度に応じて決定され得る。
【0104】
本発明の組成物は、一般的に使用される希釈剤又は賦形剤、例えば充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤及び界面活性剤と混合することによって経口投与又は非経口投与用に調製することができる。非経口投与のための配合物は、滅菌水溶液、不水溶性賦形剤、懸濁液、乳液、凍結乾燥調製物及び坐剤であるが、必ずしもこれらに限定されない。不水溶性賦形剤及び懸濁液は、活性化合物(単数又は複数)に加えて、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、オレイン酸エチル等の注射用エステル等を含有することができる。坐剤は、活性化合物(単数又は複数)に加えて、ウイテプゾール、マクロゴール、tween 61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン等を含有することができる。
【0105】
また、本発明は、HRFとその受容体との間の結合阻害剤を有効成分として含む薬学的有効量の化合物を被験体に投与する工程を含む、HRF関連疾患を予防又は治療する方法を提供する。
【0106】
本明細書における疾患は、喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(皮膚の掻痒)、花粉症、結膜炎及びアナフィラキシー等のアレルギー性疾患;気管支炎、肺炎、関節炎、腎炎、乾癬、皮膚炎、クローン病、腸炎、歯肉炎、動脈硬化、冠動脈炎、肝炎、ベーチェット病、膀胱癌、前立腺炎、腎盂腎炎、糸球体腎炎、骨髄炎、甲状腺炎、ブドウ膜炎、腹腔内炎症、髄膜炎、肺線維症及び関節リウマチ等の炎症性疾患;並びにマラリアからなる群から選択することができるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0107】
本明細書では、薬学的有効量は、0.0001mg/kg〜1000mg/kg、より好ましくは0.001mg/kg〜100mg/kgを指すが、必ずしもこれらに限定されない。投与量は、体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与期間、投与方法、除去速度、及び疾患の重症度等に応じて調整され得る。
【0108】
本発明の組成物を経口投与又は非経口投与することができ、非経口投与には、腹腔内注射、直腸内注射、皮内注射、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、子宮内注射、脳血管内注射、胸腔内注射、関節内注射、硬膜外注射、髄腔内注射、心内膜注射、動脈内注射、骨内注射、鼻腔内投与、直腸内投与、気管内投与、経皮投与、点眼及び噴霧があるが、必ずしもこれらに限定されない。本発明の組成物を一般的な形態の医薬配合物において使用することができる。
【0109】
本明細書では、被験体は、ヒト、哺乳動物、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、イヌ、及びネコ等の試験動物、並びにチンパンジー及びゴリラ等の類人猿を含む脊椎動物からなる群から選択されるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0110】
本発明は、TCTP二量体構造である活性なHRFにおいて可動性ループFLドメイン及びH2ドメインが、細胞膜に存在するそれらの受容体に特異的に結合する領域であることを確認した。それゆえ、本発明は、HRFと上記のFLドメイン及びH2ドメインを標的とする受容体との間の結合阻害剤をHRF関連疾患の阻害剤の開発に効果的に使用することができることを示唆し、この場合、上記疾患として喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(皮膚の掻痒)、花粉症、結膜炎及びアナフィラキシー等のアレルギー性疾患;気管支炎、肺炎、関節炎、腎炎、乾癬、皮膚炎、クローン病、腸炎、歯肉炎、動脈硬化、冠動脈炎、肝炎、ベーチェット病、膀胱癌、前立腺炎、腎盂腎炎、糸球体腎炎、骨髄炎、甲状腺炎、ブドウ膜炎、腹腔内炎症、髄膜炎、肺線維症及び関節リウマチ等の炎症性疾患;並びにマラリアが例示される。
【0111】
また、本発明は、
1)FLドメイン及びH2ドメイン、HRFのFLドメインとH2ドメインとの両方、それらのアナログ、並びにそれらのフラグメントからなる群から選択される1又は複数の物質を、HRF受容体と共に試験試料と接触させる工程と、
2)上記ドメイン、それらのアナログ、又はそれらのフラグメントと上記HRF受容体との間の結合強度を測定する工程と、
3)上の工程1を経ていない対照と比較して、上の結合を減少することが確認された上記試験試料を選択する工程と、
を含む、アレルギー性疾患、炎症性疾患、及びマラリアからなる群から選択される1又は複数のHRF関連疾患の診断、予防、又は治療に対する候補物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0112】
本明細書におけるアレルギー性疾患は、好ましくは喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(皮膚の掻痒)、花粉症、結膜炎及びアナフィラキシーからなる群から選択されるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0113】
本明細書における炎症性疾患は、好ましくは関節リウマチ、気管支炎、肺炎、関節炎、腎炎、乾癬、皮膚炎、クローン病、腸炎、歯肉炎、動脈硬化、冠動脈炎、肝炎、ベーチェット病、膀胱癌、前立腺炎、腎盂腎炎、糸球体腎炎、骨髄炎、甲状腺炎、ブドウ膜炎、腹腔内炎症、髄膜炎及び肺線維症からなる群から選択されるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0114】
工程3)の試験試料は、好ましくはペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド物質、合成物質、化学物質、核酸、天然物質、天然化合物、半合成物質、発酵生成物、細胞抽出物、植物抽出物、動物組織抽出物及び血漿からなる群から選択される1又は複数の物質であるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0115】
また、本発明は、
1)FLドメイン及びH2ドメインのいずれか又はそれらの両方、それらのアナログ、並びにそれらのフラグメントからなる群から選択される1又は複数の物質を、HRF受容体を発現する細胞と共に、試験試料と接触させる工程と、
2)上の工程1)の細胞を培養する工程と、
3)上の工程1)経ていない対照のレベルと比較して、工程2)の培養溶液中にヒスタミン、IL−8、又はGM−CSFを含む活性物質の低分泌を示す試験試料を選択する工程と、
を含む、アレルギー性疾患、炎症性疾患、及びマラリアからなる群から選択される1又は複数のHRF関連疾患の診断、予防、又は治療に対する候補物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0116】
本明細書におけるアレルギー性疾患は、好ましくは喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(皮膚の掻痒)、花粉症、結膜炎及びアナフィラキシーからなる群から選択されるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0117】
本明細書における炎症性疾患は、好ましくは関節リウマチ、気管支炎、肺炎、関節炎、腎炎、乾癬、皮膚炎、クローン病、腸炎、歯肉炎、動脈硬化、冠動脈炎、肝炎、ベーチェット病、膀胱癌、前立腺炎、腎盂腎炎、糸球体腎炎、骨髄炎、甲状腺炎、ブドウ膜炎、腹腔内炎症、髄膜炎及び肺線維症からなる群から選択されるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0118】
工程3)の試験試料は、好ましくはペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド物質、合成物質、化学物質、核酸、天然物質、天然化合物、半合成物質、発酵生成物、細胞抽出物、植物抽出物、動物組織抽出物及び血漿からなる群から選択される1又は複数の物質であるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0119】
また、本発明は、FLドメイン、H2ドメイン、及びHRFのC末端ドメインからなる群から選択される1又は複数の物質を結合する抗体を構築する工程と、上記で試験試料を処理する工程と、対照と比較して、上の抗体とFLドメイン、H2ドメイン、及びC末端ドメインとの間の結合強度を増すことが確認された試験試料を選択する工程とによる、アレルギー性疾患、炎症性疾患、及びマラリアからなる群から選択されるHRF関連疾患の治療に対する候補物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0120】
また、本発明は、FL、H2、及びC末端のドメインを含むHRFの発現を測定する工程と、対照と比較して、HRF発現を減少することが確認された試験試料を選択する工程とを含む、アレルギー性疾患、炎症性疾患、及びマラリアからなる群から選択されるHRF関連疾患の治療に対する候補物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0121】
また、本発明は、FLドメイン、H2ドメイン、及びHRFのC末端ドメインからなる群から選択される1又は複数の物質を結合する抗体と、FLドメイン、H2ドメイン、又はHRFのC末端ドメインとの間の結合強度を測定する工程と、対照の結合強度と比較して、上の抗体とFLドメイン、H2ドメイン、及びC末端ドメインとの間の結合強度を増すことが確認された試験試料を選択する工程とによって、アレルギー性疾患、炎症性疾患、及びマラリアからなる群から選択されるHRF関連疾患を診断する方法を提供する。
【0122】
細胞膜に存在するその受容体への結合を担う、また該受容体に結合することにより最終的にIL−8分泌を阻害することができるHRF構造中のFLドメイン及びH2ドメインが本発明において同定されたことから、HRF受容体結合ドメインを使用するスクリーニング方法を適用して様々な炎症性疾患、アレルギー性疾患、及びマラリアに対する治療剤をスクリーニングすることができる。
【0123】
また、本発明は、HRFのFLドメイン、H2ドメイン、C末端ドメイン、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントからなる群から選択される1又は複数の物質と、HRF受容体との間の結合を検出する物質を備える、アレルギー性疾患、炎症性疾患、又はマラリアを診断するキットを提供する。
【0124】
HFR受容体と、HRFのFLドメイン及びH2ドメインのうち1つ又はそれらの両方との間の結合を検出することができる物質を調べるため、上のドメインに特異的に結合するプライマー、プローブ(正:probe)、又はアンチセンスヌクレオチドを使用することができるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0125】
HRF受容体と、HRFのFLドメイン及びH2ドメインのうち1つ又はそれらの両方との間の結合を検出することができる物質は、ドメイン特異的抗体であってもよい。
【0126】
本明細書では、アレルギー性疾患、炎症性疾患、又はマラリアの診断をするキットは、RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)キット、DNAチップキット、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)キット、サンドイッチELISAキット、プロテインチップキット、迅速キット(rapid kit)、又はMRM(多重反応モニタリング)キットであってもよいが、必ずしもこれらに限定されず、当業者によく知られている任意のキットを選択してもよい。
【0127】
本発明のHRF関連疾患を診断するキットは、HRF構造の一部として、細胞膜に存在するHRF受容体に結合するFLドメイン又はH2ドメイン認識することができ、HRF又は受容体の活性化に関与するC末端ドメインを認識し、また、HRF受容体にFL又はH2のドメインを結合することによって、IL−8分泌の阻害を確認することができる。したがって、HRF受容体結合ドメインを使用する上記キットを、様々な炎症性疾患、アレルギー性疾患、及びマラリアの診断に対する疾患診断キットとして有効に使用することができる。
【0128】
また、本発明は、配列番号1〜配列番号4によって表されるアミノ酸配列の1つで構成されるFLドメインに特異的に結合する抗体、又はその免疫学的に活性なフラグメントを提供する。
【0129】
また、本発明は、配列番号11〜配列番号12によって表されるアミノ酸配列の1つで構成されるH2ドメインに特異的に結合する抗体、又はその免疫学的に活性なフラグメントを提供する。
【0130】
また、本発明は、配列番号33〜配列番号34によって表されるアミノ酸配列の1つで構成されるC末端ドメインに特異的に結合する抗体、又はその免疫学的に活性なフラグメントを提供する。
【0131】
本明細書における抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、マウス抗体、キメラ抗体及びヒト化抗体からなる群から選択されるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0132】
本明細書では、ポリクローナル抗体は、本発明の1つのタンパク質マーカーを試験動物に注射する工程と、該動物から血液を抜き取って抗体を含有する血清を得る工程とで構成される従来の方法によって産生され得る。ポリクローナル抗体は、当該分野でよく知られている任意の方法によって精製されてもよく、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、サル、ウマ、ブタ、ウシ、及びイヌ等の宿主から産生され得る。
【0133】
本明細書では、モノクローナル抗体は、任意の従来技法によって産生され、ハイブリドーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法、及びEBVハイブリドーマ技法によって例示される、連続細胞培養により抗体分子を提供することができる(Kohler G et al., Nature 256:495-497, 1975、Kozbor D et al., J Immunol Methods 81:31-42, 1985、Cote RJ et al., Proc Natl Acad Sci 80:2026-2030, 1983、及びCole SP et al., Mol Cell Biol 62:109-120, 1984)が、必ずしもこれらに限定されない。
【0134】
本明細書では、キメラ抗体として、可変領域配列が1つの種を起源とし、可変領域配列がマウス抗体を起源とし、定常領域がヒト抗体を起源とし、定常領域配列が別の種を起源とするような抗体が挙げられ得る。
【0135】
本明細書では、ヒト化抗体として、マウス又は他の哺乳動物の生殖系列を起源とするCDR配列がヒトフレームワーク領域に接合されている抗体が挙げられる。該フレームワーク領域の更なる修飾を、哺乳動物生殖系列を起源とするCDR配列のみならず、ヒトフレームワーク領域においても行うことができる。
【0136】
本明細書では、免疫学的に活性なフラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、Fd、単鎖Fv(scFv)、及びジスルフィド安定化Fv(dsFv)からなる群から選択されることが好ましいが、必ずしもこれらに限定されない。
【0137】
また、本発明は、特徴的にHRF受容体に結合するか、又はHRFのその受容体への結合に関与するFLドメインを提供する。上記FLドメインは、以下の(X)n−(S又はT)−RTEG−(A、N又はQ)−IDDSLIGGNASAEGPEGEGTE−(S又はA)−TV−(V又はI)−T−(X)nのアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つを含むことが好ましい。
【0138】
また、本発明は、特徴的にHRF受容体に結合するか、又はHRFのその受容体への結合に関与するH2ドメインを提供する。上記H2ドメインは、以下の(X)n−TKE−(A又はS)−YKKYIKDYMK−(S又はA)−(L又はI)−K−(G又はA)−(K又はR)−LEE−(Q又はH)−(K又はR)−P−(X)nのアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つを含むことが好ましい。
【0139】
また、本発明は、HRF受容体へのHRFの結合、HRFの活性化、又はHRF二量体の形成に関与するC末端ドメインを提供する。本明細書では、C末端ドメインは、以下の配列番号33〜配列番号34によって表されるアミノ酸配列、それらのアナログ、及びそれらのフラグメントの1つを含むことが好ましく、該アミノ酸配列はその中の1又は複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を有してもよい。
【0140】
また、本発明は、FLドメイン、H2ドメイン、及びC末端ドメインからなる群から選択される1又は複数の物質をコードする遺伝子、該遺伝子を含む組換え発現ベクター、並びに該発現ベクターによって形質移入された形質転換体を提供する。
【0141】
また、本発明は、上のFLドメイン、H2ドメイン、又はC末端ドメインに特異的に結合するペプチド、抗体、それらのアナログ、又はそれらの免疫学的に活性なフラグメントを提供する。
【0142】
また、本発明は、FLドメイン、H2ドメイン、及びC末端ドメインからなる群から選択される1又は複数の物質を有効成分として含む、ヒスタミン放出誘導剤を提供する。
【0143】
また、本発明は、FLドメインに対するペプチド若しくは抗体、それらのアナログ、又はそれらの免疫学的に活性なフラグメントを作製する方法であって、
1)ヒト以外の動物モデルにおいて配列番号1〜配列番号4によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列で構成されるFLドメインペプチドを抗原として使用することにより免疫応答を誘導して、FLドメイン特異的なペプチド若しくは抗体、それらのアナログ、又はそれらの免疫学的に活性なフラグメントを産生する工程と、
2)上の工程1)において産生された上記ペプチド、上記抗体、それらの上記アナログ、又はそれらの免疫学的に活性な上記フラグメントが上記抗原に特異的に結合可能であったかどうかを確認する工程と、
3)工程2)において上記抗原に特異的に結合することが確認された上記ペプチド、上記抗体、それらの上記アナログ、又はそれらの免疫学的に活性な上記フラグメントを分離及び精製する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0144】
また、本発明は、H2ドメインに対するペプチド若しくは抗体、それらのアナログ、又はそれらの免疫学的に活性なフラグメントを作製する方法であって、
1)ヒト以外の動物モデルにおいて配列番号11〜配列番号12によって表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列で構成されるH2ドメインペプチドを抗原として使用することにより免疫応答を誘導してH2ドメインに特異的なペプチド若しくは抗体、それらのアナログ、又はそれらの免疫学的に活性なフラグメントを産生する工程と、
2)上の工程1)で産生された上記ペプチド、上記抗体、それらの上記アナログ、又はそれらの免疫学的に活性な上記フラグメントが上記抗原に特異的に結合可能であったかどうかを確認する工程と、
3)工程2)で上記抗原に特異的に結合することが確認された上記ペプチド、上記抗体、それらの上記アナログ、又はそれらの免疫学的に活性な上記フラグメントを分離及び精製する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0145】
また、本発明は、HRFのC末端ドメインに対するペプチド若しくは抗体、それらのアナログ、又はそれらの免疫学的に活性なフラグメントを作製する方法であって、
1)ヒト以外の動物モデルにおいてHRFのC末端ドメインペプチドを抗原として使用することにより免疫応答を誘導してHRFのC末端ドメインに特異的なペプチド若しくは抗体、それらのアナログ、又はそれらの免疫学的に活性なフラグメントを産生する工程と、
2)上の工程1)で産生された上記ペプチド、上記抗体、それらの上記アナログ、又はそれらの免疫学的に活性な上記フラグメントが上記抗原に特異的に結合可能であったかどうかを確認する工程と、
3)工程2)で上記抗原に特異的に結合することが確認された上記ペプチド、上記抗体、それらの上記アナログ、又はそれらの免疫学的に活性な上記フラグメントを分離及び精製する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0146】
また、本発明は、タンパク質−タンパク質相互作用分析を行う工程を含む、HRF特異的受容体を同定する方法を提供する。このとき、タンパク質−タンパク質相互作用分析は、同時精製、酵母ツーハイブリッド法、又はプロテインチップ法によって行われるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0147】
上記同時精製は、
1)HRF−HRF受容体複合体を分離する工程と、
2)分離された複合体を精製する工程と、
3)上の精製された複合体から上記受容体を確認する工程と、
で構成されるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0148】
上記プロテインチップ法は、
1)その機能が開示される又は開示されていない様々なタンパク質が統合されたプロテインチップに対して、本発明の欠失型HRF、又はホモ若しくはヘテロTCTP二量体を処理する工程と、
2)上記欠失型HRF又はTCTP二量体特異的抗体の存在下又は不在下で上に言及されたアッセイ方法を使用することにより上記タンパク質−タンパク質相互作用を確認する工程と、
で構成されるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0149】
以下の実施例に示すように、本発明の実際に現在好ましい実施形態を説明する。
【0150】
しかし、当業者であれば、本開示を考慮した上で本発明の趣旨及び範囲内の変更及び改善がなされ得ることが理解されるだろう。
【0151】
実施例及び実験例で使用される様々な種類のTCTP構造は以下の通り区別される。
【0152】
詳しくは、f−TCTPは全長TCTPであり、Δ−TCTPはFLドメイン欠失TCTPであり、f−dTCTPは二量体型f−TCTPであり、Δ−dTCTPは二量体型FLドメイン欠失TCTPであり、Del−N11dTCTPは二量体型アミノ末端欠失TCTPである。
【実施例】
【0153】
実施例1:f−TCTP及びΔ−TCTPの構築
<1−1>単量体型のf−TCTPタンパク質及びΔ−TCTPタンパク質のクローニング
FLドメインが存在するか欠失されるHRFの活性を測定し、X線結晶構造を特性評価するのに有用なタンパク質を発現し、抽出するため、表2に列挙される配列を使用してコンストラクトを設計した。
【0154】
【表2】
【0155】
上のタンパク質を作製するため、pET22b(+)ベクター(Novagen)を使用してf−TCTP及びΔ−TCTPをクローニングした。f−TCTPのクローニングを表3に列挙されるプライマーを使用して行った。E.coliにおいてΔ−TCTP遺伝子を発現するため、コドンの最適化を行った。NdeI及びXhoIの制限酵素部位を使用してpET22b(+)ベクターに挿入された、コドン最適化Δ−TCTP全長配列をBioneerによって作製した。
【0156】
【表3】
【0157】
<1−2>単量体型f−TCTPタンパク質の発現及び精製
150μg/mlのアンピシリン(Generay Biotech)で補足したLB(ルリア−ベルターニ)寒天プレート上で実施例<1−1>でクローニングしたf−TCTPベクターを用いて、E.coli BL21(DE3−GEN−X)を形質移入した。コロニーを収集し、それを用いて凍結細胞ストックを作製した。細胞を、5mlのLB培地中で一晩培養し、それを新たなLB培地1000ml中に希釈した。310K振蕩培養器(N-Biotek)でOD
600が0.6〜0.8に達するまで細胞を培養した。OD
600が0.6〜0.8に達したら、IPTG(イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド、Gold Biotechnology)を最終濃度1mMでそこに添加し、その後、310K振蕩培養器で2.5時間更に培養した。細胞を採取するため、277K高速冷却遠心機(Hanil、Supra 22K)を使用して7650g(6500rev/分)で10分間遠心分離を行った。採取した細胞を、50mMのTris−Cl(pH8.0、Georgiachem)、100mMのNaCl(USB)、10mMのイミダゾール(USB)、1mMのPMSF(Sigma)、10mg/mlのDNase I、及びRocheプロテアーゼ阻害剤カクテル(米国インディアナ州インディアナポリスのRoche Applied Science)を含有するバッファー25mlに溶かした後、Digital Sonifier 50(米国コネチカット州ダンベリーのBranson Ultrasonics Co.)を使用して溶解した。溶解した細胞を277K高速冷却遠心機において24900g(15000rev/分)で30分間遠心分離した。HisTrapカラムを使用するAKTA Explorerシステム(米国ニュージャージー州ピスカタウェイのGE Healthcare)により上清を親和性精製した。表4及び
図7に示されるように、f−TCTPは、50mMのTris−Cl(pH8.0)及び100mMのNaClを含有するバッファーを使用して10mM〜500mMの濃度のイミダゾールにより勾配溶離されて溶離に至った。その後、SDS−PAGEを行った(
図7)。
【0158】
【表4】
【0159】
HisTrapカラムによって上で分離されたf−TCTPは、次に、5mlのHi−Trap Qカラムを使用するイオン交換クロマトグラフィーへと進んだ。表5及び
図8に示されるように、f−TCTPは、20mMのTris−Cl(pH7.5)を含有するバッファーを使用して0mM〜500mMの濃度のNaClにより勾配溶離され、溶離に至った。その後、SDS−PAGEを行った(
図8)。
【0160】
【表5】
【0161】
<1−3>単量体型Δ−TCTPタンパク質の発現及び精製
150μg/mlのアンピシリン(Generay Biotech)で補足したLB(ルリア−ベルターニ)寒天プレート上で実施例<1−1>でクローニングしたΔ−TCTPベクターを用いて、E.coli BL21(DE3−GEN−X)を形質移入した。コロニーを収集し、それを用いて凍結細胞ストックを作製した。細胞を、5mlのLB培地中で一晩培養し、それを新たなLB培地1000ml中に希釈した。310K振蕩培養器(N-Biotek)でOD
600が0.6〜0.8に達するまで細胞を培養した。OD
600が0.6〜0.8に達したら、IPTG(イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド、Gold Biotechnology)を最終濃度1mMでそこに添加し、その後、310K振蕩培養器で2.5時間更に培養した。細胞を採取するため、7650g(6500rev/分)で10分間、277K高速冷却遠心機(Hanil、Supra 22K)を使用して遠心分離を行った。採取した細胞を、50mMのTris−Cl(pH8.0、Georgiachem)、100mMのNaCl(USB)、10mMのイミダゾール(USB)、1mMのPMSF(Sigma)、10mg/mlのDNase I、及びRocheプロテアーゼ阻害剤カクテル(米国インディアナ州インディアナポリスのRoche Applied Science)を含有するバッファー25mlに溶かした後、Digital Sonifier 50を使用して溶解した。溶解した細胞を24900g(15000rev/分)で30分間、277K高速冷却遠心機において遠心分離した。上清を、HisTrapカラムを使用するAKTA Explorerシステムによって親和性精製した。表6及び
図9に示されるように、Δ−TCTPを、50mMのTris−Cl(pH8.0)及び100mMのNaClを含有するバッファーを使用して10mM〜500mMの濃度のイミダゾールで勾配溶離し、溶離に至った。その後、SDS−PAGEを行った(
図9)。
【0162】
【表6】
【0163】
HisTrapカラムによって上で分離されたΔ−TCTPは、次に5mlのHi−Trap Qカラムを使用するイオン交換クロマトグラフィーに進んだ。表7及び
図10に示されるように、Δ−TCTPを、20mMのTris−Cl(pH7.5)を含有するバッファーを使用して0mM〜500mMの濃度のNaClにより勾配溶離し、溶離に至った。その後、SDS−PAGEを行った(
図10)。
【0164】
【表7】
【0165】
<1−4>二量体型のf−dTCTP及びΔ−dTCTPのタンパク質の形成
実施例<1−2>及び<1−3>においてクロマトグラフィーによって分離されたf−TCTP及びΔ−TCTPを濃縮し、1mMのターシャリーブチルヒドロペルオキシドにより処理して二量体化を誘導した。その結果、f−dTCTP及びΔ−dTCTPが構築された。
実施例2:f−dTCTP及びΔ−dTCTPの結晶化、並びにデータ収集
f−dTCTP及びΔ−dTCTPのタンパク質の結晶化に対する最適条件をスクリーニングして決定し、またシンクロトロンから情報を収集するため安定化されたクライオ条件をスクリーニングした。結晶化されたf−dTCTP及びΔ−dTCTPのタンパク質のX線データを安定化されたクライオ条件において収集した。
<2−1>f−dTCTP及びΔ−dTCTPの結晶化
結晶化に対するf−dTCTP及びΔ−dTCTPの最適濃度を沈降実験により決定したところ50mg/mlであった。初期の結晶化を、スクリーニングキット(Screen I&II,Indexスクリーン試薬、米国カリフォルニア州ラグナニゲルのHampton Research)を使用してスパース行列式理論(Jancarik & Kim, J Appl Cryst, 24, 409-411, 1991)に基づいて手動又は自動でハンギングドロップ蒸気拡散法又はシッティングドロップ蒸気拡散法により行った。Hydra e−Drop(米国マサチューセッツ州ウォルサムのThermo Scientific)を介して本発明者らによって確立されたハイスループット結晶化システムにより自動式試験を行った。f−dTCTPタンパク質の結晶化に対する最適条件は、次の通りであり、すなわち、25%のPEG 3350及び0.1MのBis−Tris(pH5.5)で構成される結晶化溶液(母液)を各ウェルに充填した(200μl/ウェル)。結晶化溶液とタンパク質(50mg/ml)とを1:1の比率で混合することにより作製された2μlのハンギングドロップをカバーガラスに置き、蒸気拡散法により結晶を形成した。Δ−dTCTPタンパク質の結晶化に対する最適条件は、次の通りであり、すなわち30%のPEG 300及び0.1MのMES(pH6.5)で構成される結晶化溶液を各ウェルに充填した(200μl/ウェル)。結晶化溶液とタンパク質(50mg/ml)とを1:1の比率で混合することにより作製された2μlのハンギングドロップをカバーガラスに置き、ハンギングドロップ蒸気拡散法により結晶を形成した。
<2−2>f−dTCTP及びΔ−dTCTPのクライオ条件のスクリーニング
安定化されたクライオ条件を見出すプロセスは、シンクロトロンにおけるデータ収集のプロセスに必須である。シンクロトロン放射の強度は非常に強いため、結晶中のタンパク質は容易に酸化される。その結果、タンパク質骨格が損傷されるため、確実なデータ収集ができない。したがって、本発明者らは、結晶を急速凍結するためのクライオ条件を見出した。LV cryo−oil(ニューヨーク州イサカのMiTeGen)をf−dTCTPの結晶化に使用した。f−dTCTP結晶を含有する液滴を混合物(溶液及びLV cryo−oil、1:1、体積/体積)に添加し、マウンティングループを使用して結晶をすくい取った後、急速凍結した。100%のPEG300をΔ−dTCTPに使用した。Δ−dTCTP結晶を含有する液滴を混合物(ウェル溶液及び100%のPEG300、1:1、体積/体積)に添加し、マウンティングループを使用して結晶をすくい取った後、急速凍結した。
<2−3>f−dTCTP及びΔ−dTCTPのX線データの収集
f−dTCTPのX線データを、ポハン光源(PLS)(Pohang Accelerator Laboratory(PAL))から最大2.7Åまで収集し、これを表8に示す。検出器はADSC Q315rであった。Δ−dTCTPのX線データをスイス光源から最大1.79Åまで収集した。このとき、philatusを検出器として使用した。
【0166】
【表8】
【0167】
実施例3:f−dTCTP及びΔ−dTCTPの結晶構造の分析
<3−1>分子置換によるf−dTCTP及びΔ−dTCTPの結晶構造の同定
f−dTCTP及びΔ−dTCTPの結晶構造を、分子置換を使用することにより位相問題を解決して同定した。タンパク質間の構造類似性が予想されたため、既知の構造を用いて分子置換によって位相問題を解決する方法を使用した。高速回転関数(fast rotation function)を使用して分子配向を検索し、並進関数、Rファクター検索、及び相関関係検索を使用して分子配置(molecular location)を検索した。得られたおおよその配向及び配置を剛体リファインメント又はRファクター極小化によって精密化した後、原子位置の精密化及びモデルリビルディングを行った。分子置換を完成するため、CNS(Brunger et al., Acta Cryst, D54, 905-921, 1998)、AMoRe(Navaza, Acta Crystallogr D Biol Crystallogr, 49, 588-591, 1993)、EPMR(Kissinger et al., Acta Crystallogr D Biol Crystallogr, 57, 1474-1479, 2001)、及びPHASER等のプログラムを使用した。f−dTCTP及びΔ−dTCTPの結晶構造を開示するため、ヒトTCTP構造(PDB ID:2HR9)をEPMR用試験モデルとして使用した。ヒトTCTPモデルを使用する分子置換によりΔ−dTCTPの相を得た。グラフィックソフトウェアCOOT(Emsley & Cowtan, Acta Crystallogr D Biol Crystallogr, 60, 2126-2132, 2004)を使用して一次モデルを構築し、CNSを使用してエネルギー極小化を行った。PHENIXにより最終モデルを得た(Adams et al., Acta Crystallogr D Biol Crystallogr, 66, 213-221, 2010)。最終モデルの精密化値(正:values)を以下の表9に示す。
【0168】
【表9】
【0169】
<3−2>単量体型のf−TCTP及びΔ−TCTPの三次元結晶構造の同定
f−TCTP及びΔ−TCTPの構造の試験結果より、単量体型のf−dTCTP及びΔ−dTCTPでは、構造は上の試験モデルのものに類似することが確認された(
図11)。
<3−3>二量体型のf−dTCTP及びΔ−dTCTPの三次元結晶構造の同定
ターシャリーブチルヒドロペルオキシドの存在下で構築されたΔ−dTCTPは、予想通り、C末端システイン間のジスルフィド架橋によって作られた二量体型であった。N末端残基が欠失されていなくても二量体構造として形成され得たことはこの構造に独特であった。FLの不在により、二量体界面での衝突の問題が消え、パッキングが良好であったため、Δ−dTCTPの結晶はf−dTCTPのものよりも更に大きく、回折分解能は良好であった。しかしながら、FLの可動性のため、FLの電子密度はf−dTCTPではわからなかった。同定されたf−dTCTP及びΔ−dTCTPの三次元構造では、各単量体は試験モデルとして使用された本来のTCTPと非常に一致した。予想通り、二量体型のf−dTCTP及びΔ−dTCTPの三次元構造は対称蝶形であり、二量体構造はCys172によって介在されることが確認された(
図12)。
【0170】
興味深いことに、f−dTCTP及びΔ−dTCTPの三次元構造は互いに類似していた。電子密度は、FLの可動性のためf−dTCTPでは検出されず、その構造は表面に露出されるため、構体(body structure)と衝突することも構体に影響を及ぼすこともなかった。f−dTCTP及びΔ−dTCTPの三次元構造をf−TCTP及びΔ−TCTPのものと比較した。その結果、異なる表面構造のため、単量体及び二量体の生理学的作用に関与するパートナータンパク質は異なる役割を果たした。
【0171】
本発明者らによる先の研究では、抗体のFc領域を使用して作製された二量体型の野生型TCTPは、サイトカイン分泌活性を有し、一旦TCTPが二量体を形成すると、N末端の欠失を伴わなくてもHRFによって活性化されることが確認された(Kim et al., PLoS one, 4, e6464, 2009)。したがって、TCTP二量体の形成は、HRFの活性に重要であることが確認された。
実施例4:モデリングによって形成されたFLを含む野生型f−dTCTPの構築
FLの可動性のためf−dTCTPの電子密度を得ることができなかった。したがって、FLを含むf−dTCTPの構造をモデリングによって構築した。エネルギー極小化によるFLドメインのモデリングの結果、f−dTCTP構造中のFLはHRFの本体から離れていたため、HRF構造が全体としてFLの存否によってそれほど影響を受けないことが確認された。
<4−1>FLを含む野生型f−dTCTP構造のモデリングプロセス
FLの可動性のためf−dTCTPの構造が観察されなかったことから、f−dTCTP構造をFLの存在下でのモデリングによって構築した。FLの構造は、試験モデルとして使用されたNMRの構造に基づいた。FLドメインは、TINKER 6.0パッケージを使用してエネルギー極小化された。全てのプログラムに対し、力場としてCharmm22を使用した。
【0172】
最初に、TINKERパッケージのPDBXYZプログラムを使用して精密化のための構造(structure to refine)をpdbファイルからxyzファイルへと変換した。xyzファイルは、TINKERの全てのプログラムに対し、デフォルトファイルフォーマットとして直角座標システムを使用する。xyzファイルは、構造中の各原子に対する全ての名称及びX−Y−Z座標、力場、原子の種類、原子の数、並びに原子結合情報を含む。pdbファイルをxyzファイルへと変換した後、TINKERパッケージの極小化プログラムを使用してタンパク質構造を極小化した。
【0173】
上記タンパク質構造極小化プログラムは、直角座標においてをJorge Nocedalアルゴリズムの修正版を使用する制限付きメモリL−BFGS極小化を可能とした。FLドメイン単独を極小化するため、FLドメインの原子数は、アクティブコマンド後のキーファイルに書き込まれた。鎖1の37Ser〜69Gly及び鎖2の213Ser〜245Glyの領域に対応するxyzファイルの原子数594〜1019及び3382〜3807が、アクティブコマンドの後に書き込まれた(アクティブ594、アクティブ595、アクティブ596等々)。極小化はMinimize.xによって実行された。このとき、自乗平均根(正:Root mean square)(RMS)勾配の値は0.1であった。RMS勾配は、どの程度エネルギーを極小化することができるかを決定するための基準として使用されるエネルギーの微分係数である。例えば、RMSが0である場合、そのエネルギーが完全に極小化されるまで極小化が起こる。しかしながら、現実には、RMSは0になり得ないため、標準的な極小化値が必要である。極小化の完了により、タンパク質構造を得るためxyzファイルは、XYZPDBプログラムを使用してpdbファイルに再び変換される。エネルギー極小化の前及び後のタンパク質構造の安定性を調べるため、総位置エネルギー及びその構成要素並びに大きな個々の相互作用の一覧を、ANALYZEプログラムを使用して調べた。
<4−2>モデリングによるFLを含むf−dTCTP構造の同定
最初に、FLを極小化する前に、総位置エネルギーを調べ、結果を下記表10に示す。
【0174】
【表10】
【0175】
FL構造エネルギーを極小化した後、総位置エネルギーも調べ、結果を表11に示す。上記エネルギーを極小化した後、エネルギーの減少により構造が更に安定化された。
【0176】
【表11】
【0177】
FLの可動性によりf−dTCTPの構造を特定することができなかったため、FLを含むf−dTCTPの構造を上に記載されるTINKERを使用するモデリングによって構築した。
【0178】
結果より、
図13に示されるように、FLはHRFの本体から離れているため、全体的な一般構造に影響を及ぼさないことが確認された(
図13)。
実施例5:HRFに結合するdTBP2(dTCTP結合ペプチド2)がどのようにしてf−dTCTPの活性を制御するのかについての根本的な機構の調査
<5−1>HRFに結合する七量体(7mer)の構築及び分離
HRFをプラスチックのウェルに固定化した。HRFに結合することができるペプチドを7−merの無作為ペプチドライブラリの親和性選択によって単離した(米国のNew England Biolabs)。
【0179】
詳しくは、HRFを20μg/mlの濃度でコーティングバッファー(0.1M NaHCO
3、pH8.6)に溶解し、それをポリスチレンマイクロタイタープレート(50μl/ウェル)に充填した後、4℃で一晩コーティングを行い、BSAで非特異的結合をブロッキングした。プレートを0.1%Tween/TBS(TBST)で6回洗浄した。10μlのファージディスプレイペプチドライブラリストック溶液を40μlの3%BSA/TBSに希釈し、上に添加した。プレートを室温で1時間置いた。TBSTをそれに添加し、プレートを5分間置いた後、洗浄した。1回目のパニングの後、1回洗浄を行い、2回目及び3回目のパニングの後5回洗浄を行い、4回目のパニングの後10回洗浄を行った。50μlのグリシン/HClバッファー(pH2.2)をそれに添加し、5分間置いた。その後、ファージを溶離した後、8μlの1M Tris−HCl(pH9.1)で中和を誘導した。溶離したファージ溶液を20mlのER2537培養培地(OD
600=0.5〜1)に添加した後、37℃において振蕩培養器(rpm=200)で2時間培養した。100mlのSB培地をそれに添加した後、振蕩(250rpm)しながら一晩培養した。培養溶液を10000rpm(4℃)で15分間遠心分離した。100mlの得られた上清を30mlの5×PEG/NaCl(20%PEG(重量/体積)、15%NaCl(重量/体積))と共に添加した後、5分間溶解させた。その後、混合物を30分間氷中に置いた。混合物を10000rpm(4℃)で20分間遠心分離し、上清を廃棄した。得られたペレットを1mlの3%BSA/TBSに懸濁した。14000rpmで5分間遠心分離を行った後、上清を得て、パニングに使用した。親和性精製及びファージ複製を4回繰り返した後、ファージを溶離した。溶離したファージの適切なプレートから各ファージクローンを得た後、ELISAを行った。HRFに対して特異的な親和性を示すそれらのファージクローンを分離した後、ペプチド配列を確認するためシーケンシングを行った。HRFに対して優占的な結合を示すそれらのファージディスプレイペプチドを選択し、以下に列挙する。
ph1(p1)のアミノ酸配列:LVTYPLP(配列番号23)、
ph2(p2)のアミノ酸配列:WYVYPSM(配列番号24)、
ph3(p3)のアミノ酸配列:SYLPYPY、及び、
ph4(p4)のアミノ酸配列:WEFPGWM(配列番号25)。
【0180】
上で得られたファージの結合親和性をELISAによって比較した。
【0181】
すなわち、各ファージプラークを、SB培地で培養された1mlのER2537培養培地(OD
600=0.5〜1)に添加した後、37℃のインキュベーター(rpm=250)で5時間培養した。100μlの各培養溶液を900μlのSB培地に添加した後、一晩培養した。14000rpmで5分間の遠心分離を2回行い、得られた上清をELISAに使用した。
【0182】
上で分離された各ファージ溶液を等容量の6%BSA/PBSに希釈し、50μlの希釈された溶液をHRF又はBSA(対照)で被覆されたプラスチックウェルプレートの各ウェルに添加し、2時間置いた。そのプレートをPBSTで5回洗浄した後、3%BSA/PBSで希釈された(1:5000)HRP接合抗M13抗体(Pharmacia)をそれに添加し(100μl/ウェル)、それを1時間置いた。そのプレートをPBSTで6回、PBSで1回洗浄した。ペルオキシダーゼ基質溶液をそれに添加した後(100μl/ウェル)、OD
405をELISAリーダーで測定した。その結果、本発明のファージph1、ph2、及びph4、特にph2及びph4はHRFに特異的に結合することが確認された。
【0183】
HRFを20μg/mlの濃度から各々1/5倍に連続的に希釈し(20μg/ml、4μg/ml、0.8μg/ml、0.16μg/ml、及び0.032μg/ml)、それをプラスチックウェル中で固定した(50μl/ウェル)。各々1/5倍に連続的に希釈されたファージ2溶液(ストック溶液の1/2、1/10、1/50、1/250、及び1/1250)をそれに添加した後、ELISAを行ってOD
405を測定した。その結果、本発明のファージph2クローンは、HRFが0.4μg/ml、0.08μg/ml、0.016μg/ml、及び0.032μg/mlまで希釈されてもHRFに対する結合力を維持することが確認された。
【0184】
本発明の七量体ペプチドのHRF結合親和性に関与した残基を確認するため、p2のアミノ酸配列をアラニン(A)で置換し、m5のみをリジン(K)で置換した。その結果、以下の配列が確立された。
七量体ペプチドm1のアミノ酸配列:AYVYPSM(配列番号26)、
七量体ペプチドm2のアミノ酸配列:WAVYPSM(配列番号27)、
七量体ペプチドm3のアミノ酸配列:WYAYPSM(配列番号28)、
七量体ペプチドm4のアミノ酸配列:WYVAPSM(配列番号29)、
七量体ペプチドm5のアミノ酸配列:WYVYKSM(配列番号30)、
七量体ペプチドm6のアミノ酸配列:WYVYPAM(配列番号31)、及び、
七量体ペプチドm7のアミノ酸配列:WYVYPSA(配列番号32)。
【0185】
上記ペプチドのHRF結合親和性をELISAによって測定した結果、HRF結合親和性はp2、m6>m7>m3>m2>fm5>M1>m4であった。
<5−2>どのようにしてdTBP2がf−TCTPの活性を調節するかの根本的な機構の調査
モデリングに由来する構造によって同定されたf−dTCTPの受容体結合モデルでは、7−merペプチドであるdTBP2(実施例<5−1>p2)によるf−dTCTP活性の調節はFLによって影響を受けた。単量体型f−TCTPの場合、FLは自由に動くため、dTBP2の結合を遮る場合がある。二量体型f−dTCTPの場合、FLは方向性を有するため、dTBP2のH2ヘリックスとの結合を補助し得る(
図14、赤色のヘリックス部分)。f−dTCTP構造では、FLドメイン及びH2ドメインは受容体に直接結合すると予想された。モデリング構造に示されるように、dTBP2−f−dTCTP結合はFLドメイン及びH2ドメインによって媒介された。一方、FL及びH2によるf−dTCTPの受容体への結合は、阻害されたドメインであった。したがって、FLドメイン及びH2ドメインはシグナル伝達に対する阻害活性を呈すると予測することができる。そのため、本発明の結合阻害剤は、H2ドメイン又はdTBP2等のHRFの他の領域への結合による、HRFとその受容体の間の結合の間接的な阻害剤も含む。
実施例6:FLドメイン及びH2ドメインを認識し、それらに結合する抗体の構築
本発明者らは、HRF受容体結合ドメインであるFLドメイン又はH2ドメインに結合することによってHRF活性を阻害する抗体を構築した。FLドメイン及びH2ドメインを認識し、それらに特異的に結合する抗体を従来法に従ってAbClonにより構築した。ウサギ(ニュージーランドホワイト)を抗原として受容体結合ドメインペプチドによって免疫化し、特異的ポリクローナル抗体を産生した。産生された抗体は抗原特異的であることを試験した。受容体結合ドメインであるFL及びH2に結合するIgGを、抗原特異的アフィニティークロマトグラフィーによって精製した後、SDS−PAGEを行った(
図15)。
実施例7:オボアルブミンによって誘発される喘息及び鼻炎の動物モデルの構築
本発明者らは、HRF受容体結合ドメインであるFL及びH2、並びにそれらの抗体の喘息及び鼻炎に対する効果を評価するため、オボアルブミンを使用して喘息及び鼻炎の動物モデルを構築した。
【0186】
詳しくは、5週齢の特定病原体除去BALB/c雌性マウス(体重:およそ20g)をOrientbio Inc.(韓国ソウル)から購入した後、動物実験室で1週間安定化した。1.3mgの水酸化アルミニウム(Sigma、A8222)及び100μgのオボアルブミン(Sigma、A5503)を含有する200μlのPBSを、マウスに1週間間隔で2回腹腔内に注射した後、感作した。その後、そこに溶解された200μgのオボアルブミンを含有する20μlのPBSを14日目、16日目、及び18日目に鼻腔内滴下注入により投与して免疫応答を誘導した。陽性対照にPBSを投与し、FLドメイン及びH2ドメイン、並びにそれらの抗血清又は抗体を抗原投与の10分前に腹腔内注射によって投与した。15日目、17日目、及び19日目に、抗原投与を含まない腹腔内投与を行った。19日目、投与の2時間後に動物を屠殺した(
図16)。14日目、16日目及び18日目の抗原投与の30分前に、50μgの抗C末端IgGを鼻腔内滴下注入又は腹腔内注射によって投与した。最後の投与から24時間後に動物を屠殺した(
図26)。
実施例8:C末端ドメインを認識し、それに結合する抗体の構築
本発明者らは、HRF構造のC末端ドメインに結合することによってHRFの活性を阻害するための抗体を構築した。
【0187】
詳しくは、C末端ドメインを特異的に認識してそれに結合する抗体を従来法に従ってPeptronにより作製した。C末端ペプチド(Ac−FFKDGLEMEKC−NH
2)を抗原として使用して免疫応答を誘導することにより、特異的ポリクローナル抗体をウサギ(ニュージーランドホワイト)で産生した。産生された抗体が抗原特異的であるかどうかを確認した。プロテインAを使用して抗血清からIgGを分離し、精製した。
実験例1:BEAS−2B細胞におけるf−TCTP、Δ−dTCTP、及びDel−N11dTCTPによって媒介されるIL−8及びGM−CSFの分泌の分析
BEAS−2B細胞におけるf−TCTP、Δ−dTCTP、及びDel−N11dTCTPのIL−8及びGM−CSFの分泌活性を調べるため、本発明者らはBEAS−2B細胞におけるIL−8の分泌を測定することによって、f−TCTP、Δ−dTCTP、及びDel−N11dTCTPの活性を比較した。
【0188】
詳しくは、BEAS−2B細胞を培養密度が70%に達するまで48ウェルプレートで培養した。その後、細胞を1%ペニシリン−ストレプトマイシン/BEBM(Clonetics)で2回洗浄した。本発明の実施例1で分離されたΔ−dTCTPの各組換えタンパク質、並びに韓国特許出願公開第2006−0007663号に記載される方法によって構築されたf−TCTP及びDel−N11dTCTPを、1μg/ml、5μg/ml、又は10μg/mlの濃度でそれに添加した。24時間後、上清を得て、放出されたIL−8及びGM−CSFをELISAによって定量した。
【0189】
その結果、
図1及び
図2に示されるように、Del−N11dTCTPは、IL−8及びGM−CSFの分泌においてf−TCTP及びΔ−dTCTPよりもまさることが確認された(
図1及び
図2)。
実験例2:f−TCTP、Δ−dTCTP、及びDel−N11dTCTPのdTBP2に対する親和性の分析
本発明のf−TCTP、Δ−dTCTP、及びDel−N11dTCTPのdTBP2に対する親和性を調べるため、HRFに結合することが知られているdTBP2のCOOH末端にビオチンを接合させた後、精製した。精製タンパク質をストレプトアビジンで被覆したプラスチックウェルに固定化し、それにf−TCTP、Δ−dTCTP、及びDel−N11dTCTPを添加した。その後、各タンパク質の結合強度を調べた。
【0190】
詳しくは、0.01μm、0.1μm、1μm、及び10μmの種々の濃度でバッファー(TBS[25mM Tris、150mM NaCl、pH7.2]、0.1%BSA、0.05%Tween−20)に溶解された50μlのビオチン化dTBTP2をReacti−Bindストレプトアビジン被覆ポリスチレンプレート(PIERCE)に添加した後、室温で2時間反応させた。該プレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。f−TCTP、△−dTCTP、及びDel−N11dTCTPの各々を0.2μg/mlの濃度でTBSに溶解した。60μlの混合物を上記プレートの各ウェルに添加した後、1時間反応させた。該プレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。バッファーに希釈した(1:2000)100μlの抗HRFウサギ抗体(Bio-Rad)を上記プレートの各ウェルに添加し、室温で30分間置いた。該プレートを洗浄バッファーで3回、TBSで1回洗浄し、それにHRF接合抗ウサギ抗体(1:2000)を添加し(100μl/ウェル)、室温で30分間置いた。プレートを洗浄バッファーで3回、TBSで1回洗浄し、それにペルオキシダーゼ基質溶液であるTBS(PIERCE)を添加した(100μl/ウェル)。ELISAリーダー(Bio-Rad)を使用して450nm及び570nmで発色を測定し、その差によって親和性を特定した。
【0191】
その結果、
図3に示されるように、Del−N11dTCTPは、f−TCTP及びΔ−dTCTPよりも高いdTBP2親和性を有することが確認された(
図3)。
実験例3:FLドメイン、ヘリックス2ドメイン、及びヘリックス3ドメインのDel−N11dTCTP阻害活性の分析
FLドメイン、ヘリックス2ドメイン、及びヘリックス3ドメインのDel−N11dTCTPに対する阻害効果を調べるため、本発明者らは、NH
2末端アセチル化及びCOOH末端アミド化によって作製された合成ペプチドを使用してFLドメイン(Ac−SRTEGAIDDSLIGGNASAEGPEGEGTESTVVT−NH
2)(配列番号1)、ヘリックス2ドメイン(Ac−TKEAYKKYIKDYMKSLKGKLEEQKP−NH
2)(配列番号11)、及びヘリックス3ドメイン(Ac−KPERVKPFMTGAAEQIKHILANFN−NH
2)(配列番号22)を合成した後、精製を行った。
【0192】
詳しくは、実験例1に記載されるのと同じ方法によりBEAS−2B細胞をDel−N11dTCTP(70nM)で処理した。このとき、合成されたFLドメイン、ヘリックス2ドメイン、及びヘリックス3ドメインを種々のモル比(0〜1)で細胞に処理した後、30分間反応させた。その後、Del−N11dTCTPをそれに添加した。24時間後、上清を得て、放出されたIL−8をELISAによって定量した。
【0193】
その結果、
図4に示されるように、FLドメイン、ヘリックス2ドメイン、及びヘリックス3ドメインの存在下でDel−N11dTCTPによって媒介されるIL−8分泌の阻害を比較すると、Del−N11dTCTPによって誘導されるIL−8分泌は、ヘリックス3ドメインよりもFLドメイン及びヘリックス2ドメインによってより強く阻害することが確認された(
図4)。
実験例4:FLドメイン及びH2ドメインを認識するポリクローナル抗体のIL−8放出に対する阻害効果の分析
本発明の実施例6で構築されたFLドメイン及びH2ドメインを認識する抗体によるDel−N11dTCTP媒介IL−8分泌に対する阻害効果を、BEAS−2B細胞に上記抗体を処理することによって調べた。
【0194】
詳しくは、BEAS−2B細胞を種々の濃度の抗FL抗体及び抗(正:anti-)H2抗体で処理した。その後、Del−N11dTCTP誘導性IL−8分泌を比較した。48ウェルプレートで培養されたBEAS−2B細胞を1%ペニシリン−ストレプトマイシン/BEBM(Lonza)で2回洗浄した後、血清飢餓を7時間行った。1ng/ml及び10ng/mlの濃度でPBSに希釈した抗体を70μMのDel−N11dTCTPと37℃で2時間反応させた。反応混合物で上の細胞を処理した。20時間後、上清を得て、そこに放出されたIL−8をELISAにより定量した。
【0195】
その結果、
図5に示されるように、Del−N11dTCTPを含まない10ng/mlの抗体で処理されたNC(陰性対照)群において、IL−8分泌は検出されなかった。Del−N11dTCTP単独で処理された細胞群では、IL−8の分泌は増加した。1ng/ml及び10ng/mlの濃度でFLドメインを特異的に認識する抗体によって処理された群では、Del−N11dTCTP媒介IL−8分泌は減少した。したがって、上の抗体のIL−8分泌に対する阻害効果が確認された(
図5)。
【0196】
図6に示されるように、上に記載されるのと同じ方法によりH2ドメインを特異的に認識する抗体を使用して別の実験を行った。その結果、Del−N11dTCTP媒介IL−8分泌は減少し、この抗体がIL−8の分泌も阻害し得ることが示唆された(
図6)。
実験例5:喘息及び鼻炎のモデルにおけるFLドメイン及びH2ドメインの抗炎症効果の調査
実施例7で構築した喘息及び鼻炎のモデルを20mg/kgの濃度のFL及びH2ドメインで処理することで、これら2つのHRF受容体結合ドメインが喘息及び鼻炎の病態生理学的病変を抑制し得るかどうかを調べた。
<5−1>気管支肺胞洗浄液(BALF)の分析
FLドメイン及びH2ドメインで処理された喘息及び鼻炎の動物モデルの気管支肺胞洗浄液中に浸潤した炎症性細胞を調べるため、以下の実験を行った。
【0197】
詳しくは、実施例7で構築した動物モデルにおける心臓血液の採血の後、気管支肺胞洗浄を行った。気道を開いて、20ゲージの血管内チューブカテーテルを開放された気道を通して挿入し、そのカテーテルを通して2%FBSを含有するPBS 0.8mlを3回ゆっくりと注入した後、回収した。回収率は少なくとも80%であり、回収された洗浄溶液を4℃で15分間、1000×gで遠心分離した。得られた上清をIL−5等のサイトカインの検出又はTCTPタンパク質の検出に使用した。一方、2%FBSを含有するPBS 100μlに沈殿物を再懸濁した。洗浄溶液中に浸潤した炎症性細胞の数をHEMAVET 950FS(Drew Scientific)を使用して計数した。
【0198】
その結果、
図17及び
図18に示されるように、OVAによって誘発された気管支肺胞中の炎症性細胞浸潤は、PBS単独で処理された陽性対照群においてより頻繁であったのに対し、FLドメインで処理された群では、総細胞数及び白血球数が両方とも有意に少ないことが確認された(
図17a)。また、陽性対照と比較して、H2ドメインで処理された群では総細胞数が減少したことが確認された(
図17b及び
図17c)。
【0199】
代表的なTh2サイトカインであるIL−5のレベルは、陽性対照では高かったが、FLドメイン及びH2ドメインで処理されたいずれの群でも減少した(
図18)。
【0200】
上の結果より、FLドメインは特異的に有効であったことが確認された。後に、FLドメインを1mg/kg及び20mg/kgの濃度で喘息及び鼻炎の動物モデルに注射した後、FLドメインの抗炎症効果が用量依存的であるかどうかを調べた。
【0201】
その結果、
図20に示されるように、気管支肺胞洗浄液中に浸潤した炎症性細胞は、FLドメイン用量依存的に減少した(
図20a)。また、総細胞数及び白血球のレベルも20mg/kgのFLドメインで処理された群で有意に減少した(p<0.01、
図20b及び
図20c)。気管支肺胞洗浄液中のIL−5のレベルを測定した。その結果、FLドメインは、1mg/kgの低濃度であってもIL−5分泌を阻害可能であることが確認された(
図21)。
【0202】
さらに、FLドメインの抗炎症効果と細胞外に分泌されたTCTPとの関係を試験するため、TCTP特異的抗体を使用して気管支肺胞洗浄液を用いて免疫ブロッティングを行った。その結果、陽性対照では、TCTP二量体(およそ45kDa)が3匹全ての試験動物において検出された。一方、FLドメインで処理された群では、TCTP二量体のレベルは減少した(
図21)。
<5−2>血漿中のオボアルブミン特異的IgEの評価
喘息及び鼻炎の動物モデルの血漿中のオボアルブミン特異的IgEのレベルを確認するため、血液サンプリング及び血漿単離を以下の通り行った。
【0203】
詳しくは、実施例7の実験の完了の際、動物を屠殺するため、ゾレチル(250mg/kg)及びロムプン(50mg/kg)の混合物を腹腔内注射によってマウスに投与した。0.7mL〜0.8mLの血液を心臓から収集し、ヘパリン添加チューブに入れた。血液試料を室温で30分間〜1時間置いた後、1000×gで15分間遠心分離して血漿を得た。血漿中のオボアルブミン特異的IgEのレベルをELISAによって測定した。100μgのオボアルブミンを0.05Mの炭酸バッファー(pH9.6)に溶解し、それを96ウェルELISAプレートに分けた後、4℃で一晩コーティングを行った。該プレートを、1%BSAを含有するTBSと室温で30分間反応させることによって非特異的反応をブロックした。血漿試料を希釈(1:100)した後、室温で1時間反応させ、その後、0.1%Tween−20を含有するTBSで洗浄した。HRF接合抗マウスIgE(SouthernBiotech)を希釈(1:8000)した後、室温で1時間反応させた。その後、混合物を洗浄した。室温にてTMBでそれを処理した。10分後、0.2MのH
2SO
4を添加することによって反応を停止した。その後、ELISAリーダーによりOD
450を測定した。
【0204】
その結果、
図19に示されるように、血漿中のオボアルブミン特異的IgEのレベルは陽性対照では高かったが、FLドメインで処理された群では減少したことが確認された(
図19)。
【0205】
血漿中のオボアルブミン特異的IgEのレベルは陽性対照において最も高く、FLドメインの処理により用量依存的に減少したことから、抗原特異的IgE分泌に対するFLドメインの阻害効果が確認された(
図23)。
<5−3>肺組織の分析
喘息及び鼻炎の動物モデルにおける肺組織を分析するため、以下の実験を行った。
【0206】
詳しくは、実施例7で構築した喘息及び鼻炎の動物モデルから気管支肺胞洗浄液を収集した。胸部を切開し、肺を摘出して、4℃のPBSで洗浄した。肺を適切な大きさに切った。幾つかの肺小片を、4%パラホルムアルデヒド(PFA)を含有するPBS中、室温で一晩の固定により固定した。次の日、固定した組織を脱水してパラフィンブロックを作製した。その後、パラフィンを除去し、5μmの厚さの連続切片をスライド上に作製した後、杯細胞を染色するため過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色を行った。残りの肺組織を液体窒素中で急速凍結した。リシスバッファーを使用して組織中のタンパク質を抽出した後、免疫ブロッティングを行って肺組織中のホスホIκBα分子を検出した。
【0207】
その結果、
図22に示されるように、肺における炎症改善効果を評価するためにタンパク質を肺組織から抽出すると、陽性対照群においてホスホIκBαが最も豊富に検出された。FLドメイン処理群では、ホスホIκBαは減少した。したがって、本発明のペプチドは、IκBαリン酸化に対する阻害効果を有することが確認された(
図22)。
実験例6:IL−8放出に対するC末端ドメインを認識するポリクローナル抗体の阻害活性の分析
抗体がDel−N11dTCTP媒介IL−8分泌を阻害し得るかどうかを調べるため、BEAS−2B細胞を実施例8で構築したC末端ドメインを認識する抗体で処理した。
【0208】
詳しくは、BEAS−2B細胞を、実験例4に記載されるのと同じ方法によりDel−N11dTCTP(1μg/mL)で処理した。このとき、40nMの濃度でPBS中に希釈された抗体を1μg/mLのDel−N11dTCTPと室温で混合した後、10分間反応させた。反応混合物を上の細胞に処理した。20時間後、上清を得て、そこに分離されたIL−8をELISAによって定量した。
【0209】
その結果、
図24に示されるように、Del−N11dTCTPを含まないPBS又は40nMの抗体単独で処理された群では、IL−8の分泌は低かった。PBSと共にDel−N11dTCTPで処理された群では、IL−8分泌は増加した。Del−N11dTCTPと共にC末端ドメインを特異的に認識する抗体で処理された群では、Del−N11dTCTP媒介IL−8分泌は57.5%まで減少し、本発明の抗体がIL−8分泌に対して阻害効果を有することを示唆した(
図24)。
実験例7:喘息及び鼻炎の動物モデルにおけるFLドメイン及びC末端ドメインに対する抗血清の抗炎症効果の分析
実施例7で構築された喘息及び鼻炎の動物モデルをFLドメイン及びC末端ドメインに対する抗血清で処理してTCTP二量体の作用を抑制した後、喘息及び鼻炎の病態生理学的な病変がそれによって阻害されるかどうかを調べた。
【0210】
その結果、気管支肺胞洗浄液中のIL−5のレベルは、陰性対照群において高かった。一方、FLドメイン及びC末端ドメインに対する抗血清で処理された群は、IL−5レベルの減少を呈し、本発明の抗血清がIL−5分泌に対する阻害効果を有することを示唆した(
図25)。
実験例8:喘息及び鼻炎の動物モデルにおける抗C末端IgGの抗炎症効果の分析
実施例7で構築された喘息及び鼻炎の動物モデルに、鼻腔内(i.n)投与又は腹腔内(i.p)投与によりC末端ドメインに対するIgG抗体を投与した。上の2つの異なる経路による投与により、喘息及び鼻炎の病態生理学的な病変を免疫前IgGで処理された対照のものと比較した。
【0211】
その結果、
図26に示されるように、OVAによって誘発される炎症性細胞の浸潤は、免疫前IgGが注入された陰性対照と比較して抗C末端ドメインIgG抗体で処理された群の気管支肺胞において減少した。2つの異なる投与経路を比較すると、炎症性細胞の浸潤は、腹腔内投与群[C末端(腹腔内)]と比較して、鼻腔内投与群[C末端(鼻腔内)]において著しく減少した(
図26〜
図28)。
【0212】
気管支肺胞洗浄液中のIL−5レベルは、C末端ドメインに対するIgG抗体で処理された群において減少した。気管支肺胞中に分泌されたIL−5のレベルは、鼻腔内投与群において63.6%、腹腔内投与群で13.3%であり、腹腔内投与経路がIL−5の減少により効果的であることを示唆した(
図29)。
実験例9:CIA(コラーゲン誘発関節炎)マウスモデルにおけるdTBP2による関節リウマチに対する予防効果の確認
本発明の七量体ペプチド(7−merペプチド)であるdTBP2(配列番号24によって表されるp2)は、HRFに結合することによってHRFの活性を阻害し、関節リウマチに対する予防効果をもたらすことが本発明において確認された。
【0213】
詳しくは、CIAを誘発させるため、26匹の7週齢の雄性DBA1/jマウスを購入し、少なくとも1週間順応させた。ウシ2型コラーゲン(2mg/mg、Chondrex)と完全フロイントアジュバント(2mg/mlの結核菌を含有するCFA、Chondrex)とを1:1の比率で混合した。150μlの混合物を、尾の付け根の下2cmに皮内注射によってゆっくりと注入した(0日目)。3週間後、2回目の注射を行った。このとき、CFAに代えて不完全フロイントアジュバント(IFA)をウシ2型コラーゲン溶液と1:1の比率で混合した。100μlの混合物を、尾の付け根に皮内注射によってゆっくりと注入した。9匹のマウスにビヒクル単独を投与し、8匹のマウスに5mgのdTBP2を投与し、9匹のマウスに25mgのdTBP2を投与した。投与のため1.5mgのdTBP2を1mlのPBSに溶解した。関節炎が発症する21日前から、投与を1週間に3回行った。毎週2回各足について関節炎臨床スコア0ポイント〜4ポイント(合計0ポイント〜16ポイント)を判断した。同時に、電子ノギスを使用して両足関節の厚さを測定し、厚さの変化を最初の測定における厚さに対する相対パーセントとして提示した。
【0214】
その結果、
図30に示されるように、関節リウマチの発症は、ビヒクル単独又は5mgのdTBP2のいずれかで処理された群よりも25mgのdTBP2で処理された群においてより有意に阻害された。31日目、ビヒクル単独又は5mgのdTBP2で処理された群と比較して、25mgのdTBP2で処理された群において発症率が少なくとも50%阻害された。46日目、ビヒクル単独又は5mgのdTBP2で処理された群と比較して、25mgのdTBP2で処理された群において発症率が少なくとも70%阻害された。関節炎の臨床症状インデックスである関節厚さの測定の結果より、関節厚さは、ビヒクル単独又は5mgのdTBP2で処理された群において41日目まで持続的に増加し、41日目から46日目に急速に増加した。一方、関節厚さは25mgのdTBP2で処理された群において46日目まで正常な関節厚さとほぼ同じであり、本発明のdTBP2が関節リウマチに対して予防効果を有することを示唆した(
図30)。
実験例10:CIAマウスモデルを使用する関節リウマチにおけるdTBP2の治療効果の確認
七量体ペプチド(7−merペプチド)である本発明のdTBP2がHRFに結合した場合、HRF活性化を抑制し、関節リウマチに対する治療効果をもたらすことが確認された。
【0215】
詳しくは、実験例9に記載されるのと同じ方法によって、DBA1/jマウスにおいてCIAを誘発した。平均関節炎臨床スコア5に基づいて、dTBP2を41日目から投与した。このとき、4匹のマウスにビヒクル単独を投与し、5匹のマウスに5mgのdTBP2を投与し、5匹のマウスに25mgのdTBP2を投与した。投与のため1.5mgのdTBP2を1mlのPBSに溶解した。投与を1週間に3回行い、測定を1週間に2回行った。
【0216】
その結果、
図31に示されるように、ビヒクル単独又は5mgのdTBP2で処理された群と比較して、25mgのdTBP2で処理された群において臨床スコアは低くなりつつあり、上記症状が改善されたことが示唆され、したがって関節リウマチに対する治療効果が確認された。臨床症状インデックスである関節厚さの測定より、厚さは、41日後、継続的に25mgのdTBP2で処理された群で減少したのに対し、ビヒクル単独又は5mgのdTBP2で処理された群では、関節厚さは継続して増加したことが確認され、本発明のdTBP2が関節リウマチに対する治療効果を有することを示唆した(
図31)。
実験例11:アトピー性皮膚炎マウスモデルにおけるアトピー性皮膚炎に対するdTBP2の効果の確認
本発明のdTBP2は、HRFに結合することによって、HRFとその受容体との間の結合、又はその活性化を阻害することができ、それにより(正:so that)アトピー性皮膚炎を治療することができることが本発明において確認された。
【0217】
詳しくは、5週齢の特定病原体除去の雌性NC/NgaマウスをOrientbio Inc.(韓国ソウル)から購入し、1週間順応させた。脱毛剤で脱毛した後、Biostir(商標) AD軟膏(日本のBiostir)を使用して背部の皮膚にアトピー性皮膚炎を誘発させた。すなわち、マウスの背部から毛を除去し、そこにPBS中に溶解した4%のSDS 150μlを塗布した。2時間〜3時間自然乾燥させた後、100mgのBiostir(商標) ADクリームをマウス背部の皮膚及び耳の皮膚に均一に塗布した。1週間に2回、3週間で合計6回、クリームを塗布した。マウスの表皮層は厚くなり、背部皮膚にケラチンが形成されたことを確認した。
【0218】
アトピー性皮膚炎誘発マウスにおけるアトピー性皮膚炎に対するdTBP2の効果を調べるため、陽性対照にPBSを投与し、比較実験群にプロトピック軟膏(米国のAstellas Pharma Manufacturing Inc.)を投与し、実験群をdTBP2で処理した。0日目、PBS(皮下注射、25mg/kg)、プロトピック軟膏(皮膚塗布、100mg/マウス)、及びdTBP2(皮下注射、25mg/kg)をそれぞれ適用した。1日目、100mgのBiostir(商標) ADクリームをそこに塗布した。2日目及び3日目、0日目に行われたのと同じ方法でPBS、プロトピック軟膏、及びdTBP2をそこに処理した。4日目、100mgのBiostir(商標) ADクリームをそこに塗布した。5日目、0日目に行われたのと同じ方法でPBS、プロトピック軟膏、及びdTBP2をそこに処理した。
【0219】
その結果、
図32aに示されるように、プロトピック軟膏及びdTBP2で処理されたマウスは、対照群よりも程度の低いアトピーを有することが視覚的に確認された(
図32a)。
【0220】
アトピー性症状を観察し、紅斑、乾燥、掻破痕、浮腫、及びびらん等のアトピー性インデックスに従うポイントとして提示して、それに基づいてグラフを作成した(
図32b、0:症状なし、1:弱い症状、2:中間の症状、3:強い症状)。アトピーは、対照と比較して、プロトピック軟膏及びdTBP2で処理された群において軽微であることがグラフから確認された。
【0221】
ヒスタミン放出因子であるdTCTP(46kDa)は、Biostir ADクリームを使用するアトピー性アレルギーによって誘導された陽性対照群、PBSで処理された群、プロトピック軟膏で処理された群、及びdTBP2で処理された群の皮膚組織において著しく増加したことが、ウェスタンブロットによって確認された(
図33)。
【0222】
アトピー性アレルギーが誘発されると、角質層及び表皮層が厚くなり、炎症性細胞の浸潤が増す。組織学的評価のため、ヘマトキシリン/エオシン染色及びトルイジンブルー染色を行った。皮膚の厚さ及び免疫関連炎症性細胞の浸潤を顕微鏡下で観察した。その結果、PBS単独で処理された対照群と比較して、プロトピック軟膏及びdTBP2で処理された群において、厚い角質層を含むアトピー性症状が改善された(
図34a及び
図34b)。また、肥満細胞の浸潤は、陽性対照群と比較して、プロトピック軟膏及びdTBP2で処理された群において有意に減少した(
図34c及び
図34d)。
【0223】
リンパ節重量の変化を観察することによって抗原又は薬物の効果を試験するリンパ節アッセイを行って、皮膚の感作物質によって誘発される炎症反応を調べた。PBSで処理された群のリンパ節は、正常なリンパ節と比較して重量及び大きさの両方が増加し、プロトピック軟膏又はdTBP2で処理された群のリンパ節は、PBS処理群よりも重量及び大きさがいずれも小さかった(
図35)。
【0224】
ヒスタミンレベルの調査より、dTCTPを阻害することによってdTBP2が抗アレルギー活性を有することが確認された。ヒスタミンレベルは、PBS処理群よりもプロトピック軟膏又はdTBP2で処理された群において低かった(
図36)。
【0225】
代表的なアトピー関連Th2細胞サイトカインであるIL−4及びIL−13を、mRNAレベルで測定した。その結果、IL−4及びIL−13は、PBSで処理された群と比較して、dTBP2及びプロトピック軟膏で処理された群でその順で有意に減少した(
図37a及び
図37b)。
【0226】
Th17細胞もまたアトピー性アレルギーに関与し、Th2細胞サイトカインのうちTh17Aがアトピーに密接に関係することを示す最近の報告により、Th17Aに対するdTBP2の効果を調べた。その結果、Th17Aのレベルは、PBSで処理された群と比較して、dTBP2及びプロトピック軟膏で処理された群においてその順で低下し、本発明のdTBP2がTh17Aに対する阻害効果も同様に有することを示唆した(
図38)。
実験例12:関節リウマチに対するdTCTP(HRF)の効果の確認
TCTPが関節リウマチ(RA)に関与するかどうかは最近非常に関心が持たれている。本発明者らは、TCTP二量体(dTCTP:HRF)がアレルギー反応を引き起こすヒスタミン放出因子であることを最初に開示したことから、本発明者らは、慢性炎症性疾患の1つである関節リウマチにdTCTP(HRF)が関与するという予測に基づいて更に以下の実験を行った。
【0227】
詳しくは、正常な(陰性の)人々、変形性関節炎(OA)患者、初期の関節リウマチ(ERA)患者、及び後期の関節リウマチ(LRA)患者から関節液を得た。炎症反応に関与するdTCTP(HRF)のレベルを調べるため、TCTP欠失ELISA(抗体−タンパク質−ELISAキット、米国カリフォルニア州のMYBioSource)を上で得られた関節液を用いて行った。dTCTP(HRF)自体を検出することは困難であった。しかしながら、TCTP単量体がTCTP二量体であるdTCTPを形成する構成要素の1つであることから、TCTP単量体の増加は、二量体型であるdTCTPの増加をもたらす。
【0228】
上の見解に基づいて、実験を行った。その結果、正常な人々及び変形性関節炎の患者から得られた試料においてTCTPはほとんど検出されなかった。一方、TCTPのレベルは、初期関節リウマチ患者及び後期関節リウマチ患者において疾患が進行するにつれて増加した(
図39)。
【0229】
さらに、IHC(免疫組織化学)に基づいて、各患者の関節におけるTCTP局在及び発現を顕微鏡下で観察した。
図40に示されるように、褐色に染色された領域がTCTPを表す。TCTPは、変形性関節炎(OA)患者の関節組織よりも後期関節リウマチ(RA)患者の関節組織でより豊富であった(
図40)。
製造例1:医薬配合物の調製
<1−1>粉末の調製
HRF受容体結合阻害剤 2g
ラクトース 1g
粉末を、上記の成分を全て混合することにより作製した。この粉末を、従来の粉末調製方法に従い気密パックに充填した。
【0230】
<1−2>錠剤の調製
HRF受容体結合阻害剤 100mg
コーンスターチ 100mg
ラクトース 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
錠剤を、従来の錠剤調製方法に従って上記の成分を全て混合することにより作製した。
【0231】
<1−3>カプセルの調製
HRF受容体結合阻害剤 100mg
コーンスターチ 100mg
ラクトース 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
カプセルを上記の成分を全て混合することによって作製し、そのカプセルを従来のカプセル調製方法に従いゼラチンカプセルに充填した。
【0232】
<1−4>ピルの調製
HRF受容体結合阻害剤 1g
ラクトース 1.5g
グリセリン 1g
キシリトール 0.5g
ピルを、従来のピル調製方法に従い上記の成分を全て混合することによって作製した。ピルはそれぞれ混合物を4g含有した。
【0233】
<1−5>顆粒の調製
HRF受容体結合阻害剤 150mg
大豆抽出物 50mg
グルコース 200mg
デンプン 600mg
上記の全ての成分を混合し、これに100mgの30%エタノールを添加した。混合物を60℃にて乾燥させ、調製した顆粒をパックに充填した。
【0234】
当業者であれば、上記の明細書に開示された概念及び具体的な実施形態が、本発明と同じ目的で実施される他の実施形態を改変又は設計する基礎として容易に利用し得ることが理解されるだろう。当業者であれば、このような同等の実施形態が添付の特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨及び範囲から逸脱することがないことも理解されるだろう。