特許第6643380号(P6643380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643380
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】放射性医薬品の生産
(51)【国際特許分類】
   G21G 1/10 20060101AFI20200130BHJP
   G21K 1/00 20060101ALI20200130BHJP
   H05H 13/00 20060101ALI20200130BHJP
   H05H 6/00 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20200130BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   G21G1/10
   G21K1/00 R
   H05H13/00
   H05H6/00
   A61K49/04
   G05B19/418 Z
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-42217(P2018-42217)
(22)【出願日】2018年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-151385(P2018-151385A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年9月28日
(31)【優先権主張番号】15/455,618
(32)【優先日】2017年3月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593063105
【氏名又は名称】シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】イオアニス アクロティリアナキス
(72)【発明者】
【氏名】アミット チャクラボーティ
(72)【発明者】
【氏名】トッド プトヴィンスキー
(72)【発明者】
【氏名】エリック グリーサー
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン ジグラー
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−271239(JP,A)
【文献】 特開2003−185749(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0263545(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/04
G21K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客現場によってなされた注文の総需要を満たすために、前記顧客現場における核イメージングに使用するための放射性医薬品を生産する生産施設において生産されるべき放射性医薬品の最適化量を決定するためのコンピュータ実装される方法であって、
前記生産施設が、1つ又はそれ以上のサイクロトロンを運用しており、ここで、前記放射性医薬品の生産は、ターゲットの放射性核種先駆体材料に荷電粒子を衝突させて放射性核種材料生産するサイクロトロンボンバードメントプロセス段階;ターゲット抜き取りプロセス段階;前記放射性核種材料が、前記ターゲット抜き取りプロセス段階から、前記放射性核種材料が放射性医薬品に変換される化学プロセス段階へ、移される放射性核種移送プロセス段階;品質管理試験のために前記放射性医薬品の試料採取が行なわれる品質管理プロセス段階;及び、前記放射性医薬品が、前記顧客現場への引き渡しのための個別の用量に分配される用量分配プロセス段階を包含し、
前記コンピュータによって実行される前記方法が、
前記生産施設における生産段階t(但し、t=1からNPRD)の用量分配プロセスの終了時に、NCYCL基のサイクロトロン及びNTRG個のターゲットによって生産が望まれる放射性核種QDSPの総量を決定することを包含し、ここで、QDSPは、前記顧客現場によってなされた放射性医薬品の注文の総量CUSTを満たすに充分である一方、前記放射性核種の過剰生産を最小化し、それによってQDSPが、次に示す条件付き制約(23)を満たし、
【数1】
(23)
ここで、
σ≧1であり、qは、1つ又はそれ以上の注文を行なった顧客現場iの総放射能需要であり、
={2,...,NSITES}であり、ここで、NSITESは、生産段階tによってその要求が満たされるべき注文を行なった前記顧客現場の数であり、
λは、前記放射性核種の放射性崩壊速度であり、
itINJは、生産段階tによってその要求が満たされるべき顧客現場iによってなされた前記1つ又はそれ以上の放射性医薬品の注文のうちの最先の注文についての時間であり、
DSPは、生産段階tにおける前記用量分配プロセスの開始時間であり、次に示す式(22)によって定義され、
【数2】
(22)
ここで、
DSPは、次に示す式(21)を解くことによって決定され、
【数3】
(21)
ここで、
EOUは、EOU(生産段階tにおける全てのターゲットの抜き取りプロセスの終了時間)において生産される合計放射能であり
FRは、前記ターゲット抜き取りプロセスの間に失われる放射能の割合であり、
PYは、前記化学プロセスの放射能のパーセント収率であり、
QSは、前記品質管理プロセスで試料に使用される生産物の割合であり、
TRANは、生産段階tにおいて、前記1つ又はそれ以上のサイクロトロンの前記放射性核種移送プロセスの完了に要する時間量であり、
CHEMは、生産段階tにおいて、前記1つ又はそれ以上のサイクロトロンの前記化学プロセスに要する時間であり、
QCは、生産段階tにおいて、前記1つ又はそれ以上のサイクロトロンの前記品質管理プロセスに要する時間であり、
EOUは、次に示す式(20)を解くことによって決定され、
【数4】
(20)
ここで、
考慮される生産段階の数をNPRDとするとき、T={1,...,NPRD}であり、
前記生産施設内において利用可能なサイクロトロンの数をNCYCLとするとき、C={1,...,NCYCL}であり、
前記生産施設内に存在する全てのサイクロトロン内において利用可能なターゲットの数をNTRGとするとき、G={1,...,NTRG}であり、
BCijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのビーム流であり、
SYijは、サイクロトロンi及びターゲットjの飽和収量であり、
ENijは、サイクロトロンi及びターゲットjにおける前記放射性核種先駆体材料の富化であり、
EOBijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの終了時間であり、
BOBijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの開始時間であり、
EOUは、生産段階tにおける全てのターゲットの抜き取りプロセスの終了時間であり、
(EOBijt−BOBijt)は、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの持続時間であり、次に示す式(13)によって最小化され、
【数5】
(13)
ここで、
式(13)は、以下に示す制約(14)から(19)を条件とし、
【数6】
(14)
ここで、
BMBminは、最短ボンバードメント時間、TBMBmaxは、最長ボンバードメント時間であり、
【数7】
(15)
ここで、
BCmin及びBCmaxは、サイクロトロンiのために使用されるビーム流の、それぞれ、下限及び上限であり、BCijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのビーム流であり、
【数8】
(16)
ここで、
EOBi1tは、生産段階tにおけるターゲット1に関するサイクロトロンiのボンバードメントの終了時間であり、制約(16)は、いずれのサイクロトロンについても、全ての前記ターゲットの前記ボンバードメントの終了が同時に生じることを規定し、
【数9】
(17)
ここで、
ijUNLDは、サイクロトロンiにおけるターゲットjの抜き取り時間であり、EOUは、生産段階tにおける全てのターゲットの抜き取りプロセスの終了時間であり、制約(17)は、いずれの生産段階tにおいても、サイクロトロンi内の各ターゲットjが、前記ボンバードメントプロセスの前記終了後に順次抜き取られることを規定し、
【数10】
(18)
ここで、
BOBij1は、生産段階1におけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの開始時間を定義し、TINITは、前記ボンバードメント開始前に必要な合計時間量を表し、TSTARTは、前記生産プロセスが開始する時間を午前零時から経過した分の数で表し、TCYCL−INITは、サイクロトロンiの初期化に必要な時間量であり、TTRG−LOADは、ターゲットjの装填に要する時間量であり、TTUNE−BEAMは、サイクロトロンiのビーム流のチューニングに要する時間量であり、
【数11】
(19)
ここで、
EOUt−1は、生産段階t−1におけるターゲットjの抜き取りの終了を表わす時点であり、TPREPは、次の生産段階のためにサイクロトロンiを準備するために要する時間量であり、制約(19)は、生産段階tにおける前記ボンバードメントの前記開始が直前の段階t−1における前記分配プロセスの後に生じなければならないことを規定する、方法。
【請求項2】
BMBmin=30分であり、かつTBMBmax=4時間即ち240分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
BCmin=40μAであり、かつBCmax=80μAである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
顧客現場によってなされた注文の総需要を満たすために、前記顧客現場における核イメージングに使用する用量を準備するための、最適化量の放射性医薬品を生産するための方法であって、
前記放射性医薬品が、1つ又はそれ以上のサイクロトロンを運用する生産施設において生産され、前記放射性医薬品の生産が、ターゲットである放射性核種先駆体材料に荷電粒子を衝突させて放射性核種材料生産するサイクロトロンボンバードメントプロセス段階;ターゲット抜き取りプロセス段階;前記放射性核種材料が、前記ターゲット抜き取りプロセス段階から、前記放射性核種材料が放射性医薬品に変換される化学プロセス段階へ、移される放射性核種移送プロセス段階;品質管理試験のために前記放射性医薬品の試料採取が行なわれる品質管理プロセス段階;及び、前記放射性医薬品が、前記顧客現場への引き渡しのための個別の用量に分配される用量分配プロセス段階を包含し、
当該方法、コンピュータを使用して、前記生産施設における生産段階t(但し、t=1からNPRD)の用量分配プロセスの終了時に、NCYCL基のサイクロトロン及びNTRG個のターゲットによって生産が望まれる放射性核種QDSPの総量を決定することを包含し、ここで、QDSPは、前記顧客現場によってなされた放射性医薬品の注文の総量CUSTを満たすに充分である一方、前記放射性核種の過剰生産を最小化し、それによってQDSPは、次に示す条件付き制約(23)を満たし、
【数12】
(23)
ここで、
σ≧1であり、qは、1つ又はそれ以上の注文を行なった顧客現場iの総放射能需要であり、
={2,...,NSITES}であり、ここで、NSITESは、生産段階tにおいて要求が満たされるべき注文を行なった前記顧客現場の数であり、
λは、前記放射性核種の放射性崩壊速度であり、
itINJは、生産段階tによってその要求が満たされるべき顧客現場iによってなされた前記1つ又はそれ以上の放射性医薬品の注文のうちの最先の注文についての時間であり、
DSPは、生産段階tにおける前記用量分配プロセスの開始時間であり、次に示す式(22)によって定義され、
【数13】
(22)
ここで、
DSPは、次に示す式(21)を解くことによって決定され、
【数14】
(21)
ここで、
EOUは、EOU(生産段階tにおける全てのターゲットの抜き取りプロセスの終了時間)において生産される合計放射能であり
FRは、前記ターゲット抜き取りプロセスの間に失われる放射能の割合であり、
PYは、前記化学プロセスの放射能のパーセント収率であり、
QSは、前記品質管理プロセスで試料に使用される生産物の割合であり、
TRANは、生産段階tにおいて、前記1つ又はそれ以上のサイクロトロンの前記放射性核種移送プロセスの完了に要する時間量であり、
CHEMは、生産段階tにおいて、前記1つ又はそれ以上のサイクロトロンの前記化学プロセスに要する時間であり、
QCは、生産段階tにおいて、前記1つ又はそれ以上のサイクロトロンの前記品質管理プロセスに要する時間であり、
EOUは、次に示す式(20)を解くことによって決定され、
【数15】
(20)
ここで、
考慮される生産段階の数をNPRDとするとき、T={1,...,NPRD}であり、
前記生産施設内において利用可能なサイクロトロンの数をNCYCLとするとき、C={1,...,NCYCL}であり、
前記生産施設内に存在する全てのサイクロトロン内において利用可能なターゲットの数をNTRGとするとき、G={1,...,NTRG}であり、
BCijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのビーム流であり、
SYijは、サイクロトロンi及びターゲットjの飽和収量であり、
ENijは、サイクロトロンi及びターゲットjにおける前記放射性核種先駆体材料の富化であり、
EOBijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの終了時間であり、
BOBijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの開始時間であり、
EOUは、生産段階tにおける全てのターゲットの抜き取りプロセスの終了時間であり、
(EOBijt−BOBijt)は、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの持続時間であり、次に示す式(13)によって最小化され、
【数16】
(13)
ここで、
式(13)は、以下に示す制約(14)から(19)を条件とし、
【数17】
(14)
ここで、
BMBminは、最短ボンバードメント時間、TBMBmaxは、最長ボンバードメント時間であり、
【数18】
(15)
ここで、
BCmin及びBCmaxは、サイクロトロンiのために使用されるビーム流の、それぞれ、下限及び上限であり、BCijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのビーム流であり、
【数19】
(16)
ここで、
EOBi1tは、生産段階tにおけるターゲット1に関するサイクロトロンiのボンバードメントの終了時間であり、制約(16)は、いずれのサイクロトロンについても、全ての前記ターゲットの前記ボンバードメントの終了が同時に生じることを規定し、
【数20】
(17)
ここで、
ijUNLDは、サイクロトロンiにおけるターゲットjの抜き取り時間であり、EOUは、生産段階tにおける全てのターゲットの抜き取りプロセスの終了時間であり、制約(17)は、いずれの生産段階tにおいても、サイクロトロンi内の各ターゲットjが、前記ボンバードメントプロセスの前記終了後に順次抜き取られることを規定し、
【数21】
(18)
ここで、
BOBij1は、生産段階1におけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの開始時間を定義し、TINITは、前記ボンバードメント開始前に必要な合計の時間量を表し、TSTARTは、前記生産プロセスが開始する時間を午前零時から経過した分の数で表し、TCYCL−INITは、サイクロトロンiの初期化に必要な時間量であり、TTRG−LOADは、ターゲットjの装填に要する時間量であり、TTUNE−BEAMは、サイクロトロンiのビーム流のチューニングに要する時間量であり、
【数22】
(19)
ここで、
EOUt−1は、生産段階t−1におけるターゲットjの抜き取りの終了を表わす時点であり、TPREPは、次の生産段階のためにサイクロトロンiを準備するために要する時間量であり、制約(19)は、生産段階tにおける前記ボンバードメントの前記開始が直前の段階t−1における前記分配プロセスの後に、生じなければならないことを規定し、
更に、前記サイクロトロンのボンバードメントプロセスが時間BOBijtにおいて開始し、かつ時間EOBijtにおいて終了して、前記制約(14)−(19)に従って、前記用量分配プロセスの前記終了時に、前記決定された量のQDSP前記放射性医薬品を生産する適切な量の前記放射性核種が生産されるように、生産段階t内においてターゲットjを用いてサイクロトロンiのそれぞれを運用することを包含する方法。
【請求項5】
BMBmin=30分であり、かつTBMBmax=4時間、即ち240分である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
BCmin=40μAであり、かつBCmax=80μAである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
顧客現場によってなされた注文の総需要を満たすために、前記顧客現場における核イメージングに使用するための放射性医薬品を生産する放射性医薬品生産施設の運用を制御するための制御システムであって、
前記生産施設は、1つ又はそれ以上のサイクロトロンを運用し、前記放射性医薬品の生産が、ターゲットの放射性核種先駆体材料に荷電粒子を衝突させて放射性核種材料生産するサイクロトロンボンバードメントプロセス段階;ターゲット抜き取りプロセス段階;前記放射性核種材料が、前記ターゲット抜き取りプロセス段階から前記放射性核種材料が放射性医薬品に変換される化学プロセス段階に、移される放射性核種移送プロセス段階;品質管理試験のために前記放射性医薬品の試料採取が行なわれる品質管理プロセス段階;及び、前記放射性医薬品が前記顧客現場への引き渡しのための個別の用量に分配される用量分配プロセス段階、を包含し、
当該制御システム
コンピュータプログラムコードがエンコードされた不揮発性の機械可読ストレージ媒体を有するプロセッサを包含し、
前記コンピュータプログラムコードを実行する前記プロセッサが、前記生産施設における生産段階t(但し、t=1からNPRD)の用量分配プロセスの終了時に、NCYCL基のサイクロトロン及びNTRG個のターゲットによって生産が望まれる放射性核種QDSPの総量を決定するステップを包含する方法を実行し、ここで、QDSPは、前記顧客現場によってなされた放射性医薬品の注文の総量CUSTを満たすに充分である一方、前記放射性核種の過剰生産を最小化し、それによってQDSPは、次に示す条件付き制約(23)を満たし、
【数23】
(23)
ここで、
σ≧1であり、qは、1つ又はそれ以上の注文を行なった顧客現場iの総放射能需要であり、
={2,...,NSITES}であり、ここで、NSITESは、生産段階tにおいて要求が満たされるべき注文を行なった前記顧客現場の数であり、
λは、前記放射性核種の放射性崩壊速度であり、
itINJは、生産段階tによってその要求が満たされるべき顧客現場iによってなされた前記1つ又はそれ以上の放射性医薬品の注文のうちの最先の注文についての時間であり、
DSPは、生産段階tにおける前記用量分配プロセスの開始時間であり、次に示す式(22)によって定義され、
【数24】
(22)
ここで、
DSPは、次に示す式(21)を解くことによって決定され、
【数25】
(21)
ここで、
EOUは、EOU(生産段階tにおける全てのターゲットの抜き取りプロセスの終了時間)において生産される合計放射能であり
FRは、前記ターゲット抜き取りプロセスの間に失われる放射能の割合であり、
PYは、前記化学プロセスの放射能のパーセント収率であり、
QSは、前記品質管理プロセスで試料に使用される生産物の割合であり、
TRANは、生産段階tにおいて、前記1つ又はそれ以上のサイクロトロンの前記放射性核種移送プロセスの完了に要する時間量であり、
CHEMは、生産段階tにおいて、前記1つ又はそれ以上のサイクロトロンの前記化学プロセスに要する時間であり、
QCは、生産段階tにおいて、前記1つ又はそれ以上のサイクロトロンの前記品質管理プロセスに要する時間であり、
EOUは、次に示す式(20)を解くことによって決定され、
【数26】
(20)
ここで、
考慮される生産段階の数をNPRDとするとき、T={1,...,NPRD}であり、
前記生産施設内において利用可能なサイクロトロンの数をNCYCLとするとき、C={1,...,NCYCL}であり、
前記生産施設内に存在する全てのサイクロトロン内において利用可能なターゲットの数をNTRGとするとき、G={1,...,NTRG}であり、
BCijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのビーム流であり、
SYijは、サイクロトロンi及びターゲットjの飽和収量であり、
ENijは、サイクロトロンi及びターゲットjにおける前記放射性核種先駆体材料の富化であり、
EOBijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの終了時間であり、
BOBijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの開始時間であり、
EOUは、生産段階tにおける全てのターゲットの抜き取りプロセスの終了時間であり、
(EOBijt−BOBijt)は、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの持続時間であり、次に示す式(13)によって最小化され、
【数27】
(13)
ここで、
式(13)は、以下に示す制約(14)から(19)を条件とし、
【数28】
(14)
ここで、
BMBminは、最短ボンバードメント時間、TBMBmaxは、最長ボンバードメント時間であり、
【数29】
(15)
ここで、
BCmin及びBCmaxは、サイクロトロンiのために使用されるビーム流の、それぞれ、下限及び上限であり、BCijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのビーム流であり、
【数30】
(16)
ここで、
EOBi1tは、生産段階tにおけるターゲット1に関するサイクロトロンiのボンバードメントの終了時間であり制約(16)は、いずれのサイクロトロンについても、全ての前記ターゲットの前記ボンバードメントの終了が同時に生じることを規定し、
【数31】
(17)
ここで、
ijUNLDは、サイクロトロンiにおけるターゲットjの抜き取り時間であり、EOUは、生産段階tにおける全てのターゲットの抜き取りプロセスの終了時間であり制約(17)は、いずれの生産段階tにおいても、サイクロトロンi内の各ターゲットjが、前記ボンバードメントプロセスの前記終了後に順次抜き取られることを規定し、
【数32】
(18)
ここで、
BOBij1は、生産段階1におけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの開始時間を定義し、TINITは、前記ボンバードメント開始前に必要な合計時間量を表し、TSTARTは、前記生産プロセスが開始する時間を午前零時から経過した分の数で表し、TCYCL−INITは、サイクロトロンiの初期化に必要な時間量であり、TTRG−LOADは、ターゲットjの装填に要する時間量であり、TTUNE−BEAMは、サイクロトロンiのビーム流のチューニングに要する時間量であり、
【数33】
(19)
ここで、
EOUt−1は、生産段階t−1におけるターゲットjの抜き取りの終了を表わす時点であり、TPREPは、次の生産段階のためにサイクロトロンiを準備するために要する時間量であり制約(19)は、直前の段階t−1における前記分配プロセスの後に生産段階tにおける前記ボンバードメントの前記開始が生じなければならないことを規定する、制御システム。
【請求項8】
BMBmin=30分であり、かつTBMBmax=4時間、即ち240分である、請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
BCmin=40μAであり、かつBCmax=80μAである、請求項7に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、概して陽電子放射断層撮影のための短寿命放射性医薬品の生産に関する。
【背景技術】
【0002】
陽電子放射断層撮影(PET)等の核医学イメージングに使用されるフルデオキシグルコース(FDG)等の放射性医薬品は、サイクロトロン内において、ターゲット物質に対する荷電粒子による衝撃により生産される。サイクロトロンは、真空チャンバ内において、大型の磁石の2つの極の間に載置された金属製の2つのD形状の電極を含有する粒子加速器である。典型的には、負に荷電された粒子(陰イオン)が高電圧イオン源を介してチャンバの中心に注入される。2つの電極間に印加される高周波交流電圧が、粒子の運動エネルギを劇的に上昇させ、強い磁場によって、粒子がビームとして真空チャンバの中心から周縁に向かって螺旋を描いて進み、そこでビームがストリッピングフォイルと相互作用する。この相互作用は、加速された粒子から電子を奪い、それらを正荷電粒子に転換する結果をもたらす。粒子の正電荷は、加速されたビームの軌道を変更し、加速されたビームが真空チャンバから出て、ターゲットの含有物と衝突して放射性核種を放射する陽電子を生み出す。フッ素−18の生産の場合は、加速される粒子は、通常、水素(プロチウム)であり、ターゲット物質は、典型的には富化水の形式の、酸素−18となる。このプロセスは、ボンバードメントと呼ばれ、それが長く持続するほど、より多くのフッ素−18が生産され、これが、より大量のFDGの合成に使用されることになる。
【0003】
その不安定な性質に起因して、フッ素−18放射性核種は、ボンバードメントプロセス段階において生み出された直後から放射性崩壊を受けて、フッ素−18に起因する放射能の量を減少させる。放射能が初期の量の半分になるまでの時間的な長さは、半減期と呼ばれ、フッ素−18の場合は109.771分である。この比較的長い半減期により、フッ素−18は、主に次の2つの理由から、医用イメージングにとって理想的な放射性核種となる:(a)生産施設、即ちラジオファーマシー、から相当な距離を輸送することが可能であり、また、(b)約10時間後に、患者の身体から実質的に除去される。
【0004】
あらゆるラジオファーマシーにおける基本的な実践は、FDGのバッチ生産及び対応する患者用量へのFDGの分配のための日課表作成である。個別のバッチは、患者に注入するための40まで又はそれ以上の個別の用量に充分な放射能を提供できる。バッチが提供できる用量の数は、ラジオファーマシーから顧客、即ち核イメージングセンタ又は病院、までの間の距離をはじめ、各用量の実際の注入時間に依存する。ラジオファーマシーから顧客までの距離が遠くなる程、より多くの放射能を生産する必要があり、従って、サイクロトロン内のボンバードメントプロセスがより長く持続する必要がある。従って、地理的に分散している多数の顧客のFDGに対する需要に応じるために生産すべき放射能の量を正確に決定することが重要になる。
【0005】
現在のところ、殆どのラジオファーマシーにおいて、FDG生産のための日課表が放射線薬剤師による手作業で作成されている。放射線薬剤師は、豊富な専門知識及び経験を有しているが、手作業によるスケジュール作成は、時間を要するプロセスであり、必要以上の過剰なフッ素−18の生産又は不充分な量のフッ素−18のいずれかを招く最適とはいえない生産スケジュールを生じることがあり得る。この結果、過剰な労働コスト及び資源を浪費し生産コストを増加させる過剰な量の放射能の廃棄がもたらされるか、又は医用イメージングセンタ及び/又は病院から指定された需要を完全に満たすことができない。従って、FDGが需要を満たす充分な量で生産され、しかも過剰に生産されることなく無駄が最小化されるように、FDG等の放射性医薬品のための生産スケジュールを作成する改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この開示の一側面によれば、生産施設において生産されるべき放射性医薬品の最適化量を決定するためのコンピュータ実装される方法が開示される。放射性医薬品は、医用イメージングセンタ又は病院等の顧客現場における核イメージングのために使用される。最適化量の放射性医薬品は、顧客現場からの注文の総需要を満たすことになり、このとき、放射性医薬品の量が、当該総需要を満たすに充分である一方、放射性医薬品の過剰な生産を最小化する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施態様によれば、顧客現場における核イメージングに使用する用量の準備のための最適化量の放射性医薬品を生産するためのコンピュータ実装される方法が開示される。最適化量の放射性医薬品は、顧客現場からの注文の総需要を満たすことになる一方、放射性医薬品の過剰な生産を最小化する。放射性医薬品は、1つ又はそれ以上のサイクロトロンを運用する生産施設において生産される。いくつかの実施態様によれば、その種の放射性医薬品生産施設の運用を制御するための制御システムも、また、開示される。
【0008】
全ての図面は、略図であり、必ずしも縮尺に忠実ではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】放射性医薬品生産施設の概略図である。
図2】放射性医薬品生産プロセスのためのワークフローを図解した概略図である。
図3】開示されている放射性医薬品生産プロセスの概要を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この例示的な実施態様の説明は、明細書の一部をなすと見做される添付図面と関連して読まれることが意図されている。この開示の一側面によれば、放射性医薬品のための最適化された生産スケジュールを自動的に決定するシステム及び方法が開示される。
【0011】
最初に、本発明者らは、FDGの生産プロセスに必然的に伴う主要な決定を統合する柔軟な最適化モデルを開発した。最適化モデルは、ボンバードメント及び放射性核種の崩壊プロセスに関係する制約、FDGの需要を満たす適正な量の放射能を生産するために必要なサイクロトロン及びターゲットの数の選択に必要とされる二元決定を考慮する。生産スケジュールの立案は、1日を水平に延ばし、それをいくつかの時間的な期間に分割することができる。各イメージングセンタの需要は、前もって知ることができるが、異なる時間的期間によって変動し得る。最適解決策は、3つの主要な決定を伴う:(a)ボンバードメント時間の長さ、(b)充分な放射能の生産に使用されるべきサイクロトロン及びターゲットの数、及び(c)各時間的期間内における総需要を満たすために生産されるべき放射能の量である。
【0012】
概して言えば、FDG等の放射性医薬品の生産は、複雑な装置の使用を必要とする。放射性医薬品生産施設200の一例を図1に略図的に図解する。放射性医薬品生産施設200は、フッ素−18を生産するための1つ又はそれ以上のサイクロトロン210;1つ又はそれ以上の放射性医薬品合成器220;全ての品質保証試験(例えば、無菌性、化学的純度、重金属汚染等についてのバッチ試験)が実施される分析ラボラトリ230;及びFDGの総量を、その後、イメージングセンタに引き渡される単位用量に分割する役割を担うディスペンサ240を含む。図1においては、サイクロトロン210がCYCLとして示されているが、ここでiは、サイクロトロンの番号を示す。生産施設200のこれらの構成要素の操作は、コンピュータシステム300によって可能になる。FDGの生産のための典型的なワークフローの概要は、図2から理解できる。プロセスは、多くの段階を有する。各段階の完了時間は、(網点のボックスによって示されている)ボンバードメント段階を除いて、前もって知られている。ボンバードメント段階に必要とされる時間は、以下で定義される最適化モデルによって決定される。図2の生産ワークフローは、それぞれ2つのターゲットを採用する2つのサイクロトロンを伴う例に関する。
【0013】
[放射性崩壊]
現在実践されている手作業による放射性医薬品生産スケジューリングにおいて、放射性医薬品の生産のための放射性核種の生産のスケジューリング及びプランニングが、非常に非効率な結果をもたらす理由の状況を提供する背景として、放射性崩壊の簡単な概要を説明する。
【0014】
放射性核種は、陽子又は中性子のいずれかの過剰が原因で、原子核をまとまった形で保持するに充分な結合エネルギを有していない不安定な原子核を有する。安定化する過程において、放射性核種は、エネルギ及び/又は物質を原子核から放出して、しばしば新しい元素に転じる。放射性崩壊は、確率論的なプロセスであり、従って、個別の放射性核種が崩壊する時期の蓋然性を決定できるに過ぎない。しかしながら、放射性核種の群について、全体としての崩壊速度を決定することが可能である。放射性核種の群の半減期(t1/2によって示される)は、平均において、当該群の半分が崩壊し、その群の放射能が初期のレベルの半分になるまでに掛かる時間である。放射性同位体の平均寿命(τによって示される)は、それが崩壊するまでの平均時間である。崩壊定数(λによって示される)は、平均寿命の逆数(即ち、λ=1/τ)であり、特定の時間的期間内に原子核が経験する遷移の確率を表わす。半減期と崩壊定数の間の関係は、式(1)によって記述される。
【0015】
【数1】
(1)
【0016】
ここで、フッ素−18の半減期が109.771分であったことを思い出せば、式(1)を使用して、その崩壊定数の値としてλ=0.006311(/分)を決定することができる。
【0017】
特定の放射性同位体の所定の試料について、短い時間的間隔dt=t−tにおいて生じることが期待される崩壊事象の数は、dQによって示され、原子の数の差、dQ=Qt1−Qt0、に比例し、式(2)によって表される。
【0018】
【数2】
(2)
【0019】
ここで、マイナスの符号は、放射性原子の数が減少することを示す。つまり、Qt0>Qt1である。この式(2)における比例関係は、崩壊定数λを使用することによって次の等式(3)に変形できる。
【0020】
【数3】
(3)
【0021】
この等式を、時間区間[t,t]において積分すれば、式(4)を得る。
【0022】
【数4】
(4)
【0023】
ここで、Qt0及びQt1は、時点t及びtにおける放射性原子核の数を表わす。
【0024】
等式(4)は、放射性崩壊の法則として知られ、放射性医薬品の生産及び分配における基本的な役割を担う。等式(4)に基づけば、時間的な間隔に亘って失われて放射性崩壊する放射能の量を決定することが可能である。ボンバードメントプロセスの終了時(TEOBによって示される時点)における放射能の量をQEOBとすれば、注入時TINJにおける放射能の量QINJは、式(5)によって定義される。
【0025】
【数5】
(5)
【0026】
等式(5)をQEOBの項について解くことによって、式(6)により、ボンバードメントの終了時に生産されている必要がある放射能の量を決定することが可能である。
【0027】
【数6】
(6)
【0028】
[サイクロトロン及びターゲット設定]
単一のターゲットのボンバードメントの間に生産される放射能の量Qは、式(7)によって定義される。
【0029】
【数7】
(7)
【0030】
ここで、BCは、(衝撃粒子束として定義される)ビーム流を表し、ENは、水中の酸素−18富化を表し、SYは、飽和収率であり、項(1−e−λ(TBMB)とともに、フッ素−18の生産率を定義し、TBMBは、TBMB=TEOB−TBOB、即ちボンバードメント終了を意味する時点とボンバードメントの開始を意味する時点の間の差として定義されるボンバードメント時間であり、λは、放射性崩壊定数である。
【0031】
ビーム流は、10から80マイクロアンペア(μA)の範囲に亘ることがある。ボンバードメント終了(EOB)は、ビーム流がゼロにセットされると生じる。充分な量のフッ素−18の生産を可能とするためには、少なくとも85%まで酸素−18を富化した水をフッ素−18の生産に使用することが重要である。フッ素−18の生産速度は、結果として生じる核種も、やはり、放射性であること、及び、その崩壊が、生産後随時開始することが予想されるという事実によっても影響を受ける。生産速度と崩壊速度とは、充分に長いボンバードメント時間の後に、最終的に平衡に達することになる。これは、等式(7)の最後の項から演繹可能であり、それによれば、ボンバードメント期間の初期段階(即ち、TBMBが小さいとき)においては生産速度が高い一方、ボンバードメント時間TBMBが大きくなるに従って、項(1−e−λ(TBMB)がゼロに近づき、生産速度が非常に低くなることが理解できる。ターゲットの飽和収量は、ターゲットによって生産され得るフッ素−18イオンの理論的最大量を表わす。飽和収量は、サイクロトロンのビームエネルギに依存し、70から260mCi/μAの範囲に亘ることがある。
【0032】
[ターゲット抜き取りプロセス段階]
各ターゲットによって生産されたフッ素−18イオンは、抜き取りプロセスの間に単一生成物に統合される。これを達成するため、各ターゲットが、順次、(Vバイアルとして知られている)収集バイアルに抜き取られる。各ターゲットの抜き取りは同時にすることができない。各ターゲットについて、抜き取りの時点が異なることがあり得る。最後のターゲットの抜き取りが完了した時点が、抜き取り終了(EOU)として定義される。フッ素−18の連続崩壊の結果、最後のターゲットの抜き取りが完了した後のフッ素−18の総量は、式(8)によって決定される。
【0033】
【数8】
(8)
【0034】
ここで、QEOUは、EOUに対して崩壊補正されたフッ素−18イオンの総量を表し、QF1は、最後のターゲットの抜き取り時におけるフッ素−18の量を表し、QF2、QF3及びQF4は、より早期のターゲット抜き取り終了時におけるフッ素−18の量を表し、T、T及びTは、より早期のターゲット抜き取りの時点とEOUが完了した時点TEOUの間の時間的な間隔を表わす。
【0035】
[別のボンバードメントのための準備におけるターゲットの再装填プロセス段階]
抜き取りプロセスの完了後、別のボンバードメントのための準備において、直ちにターゲットを再装填することができる。再装填プロセスのために必要とされる時間は、最初のターゲット装填プロセスのための時間と同じである。ターゲットが再装填された後、ターゲットに向けてビームを開始し、ビームチューニングプロセスの後に次のボンバードメントを実施してよい。これは、次のボンバードメント期間のためにターゲットが利用可能になる最も早い時間を表わす。
【0036】
[フッ素−18イオン移送プロセス段階]
ターゲット抜き取りプロセスが完了した後は、生産されたフッ素−18イオンの入ったバイアルが、化学モジュールに移送される。使用されるターゲットの数によらず、生産された生成物の各バッチのための移送プロセスは1つしかない。移送プロセスの間において、全体のフッ素−18イオンから僅かな割合が失われる。移送プロセスが完了する時点が、合成開始(BOS)として定義される。BOSにおけるフッ素−18イオンの量は、式(9)によって与えられる。
【0037】
【数9】
(9)
【0038】
ここで、QBOSは、BOSにおけるフッ素−18イオンの量を表し、nは、ターゲットの数を表し、FRは、抜き取りプロセスの間に失われる割合であり、TTRANは、ターゲット抜き取りプロセスの完了とBOSとの間の時間的な間隔である(即ち、TTRAN=TBOS−TEOUである)。放射能が失われる割合及び移送時間は、所定の生産施設において、全てのターゲットに関して同一である。
【0039】
化学プロセス段階−−フッ素−18イオンの移送プロセスが完了した後、化学モジュールが、利用可能なフッ素−18イオンを対象のPETドラッグ(この場合の例においては、FDG)に変換する。化学プロセスの間には、一定の割合のフッ素−18イオンが失われる。この割合は、化学プロセスのパーセント収率と呼ばれる。化学プロセスが完了した時点が、合成終了(EOS)として定義される。EOSにおける生成物の量は、式(10)によって与えられる。
【0040】
【数10】
(10)
【0041】
ここで、QEOSは、EOSにおける生成物の量を表し、PYは、化学プロセスのパーセント収率を表し、TCHEMは、化学プロセスによって必要とされる時間間隔(即ち、TCHEM=TBOS−TEOS)であり、化学時間とも呼ばれる。各PETドラッグ生成物は、特異的なパーセント収率及び合成時間を有する。パーセント収率及び合成時間は、各生産施設において異なることがあり得るが、特定の生成物の各バッチについて常に一定である。化学プロセスのための材料及び労働のコストは、生産及び品質管理試験に関連するコストを含む。生産施設は、1つ以上の化学モジュールを有していてよい。化学モジュールは、最大で4バッチの生成物を作成する能力を有し得る。
【0042】
[生成物の試料採取及び品質管理段階]
化学プロセスが完了した後、品質管理(QC)試験の目的で生成物の試料採取が行なわれる。この試料は、化学プロセスの終了時に存在する生成物の割合である。生成物の残りの量は、用量分配(DSP)に利用可能であり、式(11)によって与えられる。
【0043】
【数11】
(11)
【0044】
ここで、QDSPは、用量分配のために利用可能な生成物の量を表し、QSは、試料に使用される生成物の割合を表わす。各PETドラッグは、特異的な試料割合及び試料採取時間を有する。試料割合及び試料採取時間は、各生産施設において異なることがあり得るが、生産施設における生成物の各バッチについて一定である。試料が生成物から取り除かれた後、QCプロセスが実行され、残りの生成物QDSPに関して用量分配プロセスを開始することができる。各PETドラッグは、特異的なQCプロセス時間を有するが、これは、それぞれの生産施設ごとに異なり得る。
【0045】
[用量分配段階]
用量分配プロセスは、QCプロセスと同時に実行することができる。分配された用量は、QCプロセスが完了して、バッチが全てのQCリリース基準に適合するまで生産施設からリリースすることはできない。分配後の全ての用量の崩壊補正後の総量がQDSPを超えることはあり得ない。この関係は、式(12)によって与えられる。
【0046】
【数12】
(12)
【0047】
ここで、QDOSEiは、個別の用量iに含まれる生成物の量を表し、TDOSEiは、用量iの注入時間TINJiとEOSとの間の時間的間隔であり(つまり、TDOSEi=TINJi−TEOSであり)、総和は、そのバッチに割り当てられた全ての用量NDOSESに関する。
【0048】
上述の放射性医薬品生産モデルは、1日を少数の期間に分割する多期間プロセスと考える例に適用される。生産段階tにおいて生じる生成物は、続く段階t+1において、顧客であるイメージングセンタに輸送される。ここで、1日に考慮される生産段階の数をNPRDとする。問題の性質上、その複雑性は、期間の数が増加するに従って、ますます大きなものとなる。典型的には、1日に2乃至3の生産及び輸送の期間が存在する。
【0049】
[決定変数]
未知の量であるが、意志決定者が制御可能であり、かつ最適の値を決定する必要がある決定変数が存在する。例えば、開示されているモデルの適用において、充分な放射能を生産し、1日の間に出される放射性医薬品の注文を全て満たすために必要なサイクロトロン及びターゲットの数は未定である。しかしながら、意志決定者は、使用に関連付けされるコストが存在することから、必要とされるサイクロトロン及び/又はターゲットの最少数を知ることを望む。生産プロセスに関連付けされる変数は、以下の定義のセクションに提供されている。
【0050】
「生産変数」
ここで、生産段階tにおけるサイクロトロンiでのターゲットjのボンバードメントの開始及び終了を、それぞれ、BOBijt、EOBijtとする。生産段階tにおいてサイクロトロンi内のターゲットjに印加されるビーム流をBCijtとする。更に、特定の時間期間内においてターゲットが使用されているか又は使用されていないことを表わす2値変数Zijtを使用する。より具体的に述べれば、生産段階tの間にサイクロトロンiにおいてターゲットjが使用されていれば、2値変数Zijは、1に等しくなり、そうでなければZijtが0になる。例えば、最初の生産段階において1番目のサイクロトロンの2番目のターゲットが使用されない場合には、Z121=0となる。
【0051】
生産段階tにおけるターゲット抜き取りプロセスの直近の時点をEOUとし、その時点における放射能レベルをQEOUとする。生産段階tにおける用量の分配が開始する時点をTDSPとし、その時点における合計の放射能をQDSPとする。
【0052】
完全な生産最適化モデルは、以下に示す等式(13)から(24)によって定義される。
生産施設において生産されるべき放射性医薬品の最適化量を決定するために、(EOBijt−BOBijt)、即ち、その生産施設における生産段階tにおけるサイクロトロンi、ターゲットjのボンバードメントの持続時間が次の式(13)によって最小化される。
【0053】
【数13】
(13)
【0054】
ここで、EOBijtは、生産段階tにおけるサイクロトロンi、ターゲットjのボンバードメントの終了時間であり、BOBijtは、生産段階tにおけるサイクロトロンi、ターゲットjのボンバードメントの開始時間であり、以下の制約を受ける。
【0055】
【数14】
(14)
【0056】
ここで、TBMBminは、最短ボンバードメント時間、TBMBmaxは、最長ボンバードメント時間、C={1,...,NCYCL}、但し、NCYCLは、生産施設(ラジオファーマシー)において利用可能なサイクロトロンの数、G={1,...,NTRG}、但し、NTRGは、生産施設内に存在する全てのサイクロトロンにおいて利用可能なターゲットの数、T={1,...,NPRD}、但し、NPRDは、そのモデル内において考慮される生産段階の数である。
【0057】
【数15】
(15)
【0058】
ここで、BCminは、サイクロトロンのビーム流に関する下限、BCijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのビーム流、BCmaxは、ビーム流の上限である。
【0059】
【数16】
(16)
【0060】
ここで、EOBi1tは、生産段階tにおけるターゲット1に関するサイクロトロンiのボンバードメントの終了時間であり、制約(16)は、いずれのサイクロトロンについても、全てのターゲットのボンバードメントの終了が同時に生じることを規定する。
【0061】
【数17】
(17)
【0062】
ここで、TijUNLDは、サイクロトロンiにおけるターゲットjの抜き取り時間であり、EOUは、生産段階tにおける全ての抜き取りプロセスが完了する最も遅い時間であり、制約(17)は、いずれの生産段階tにおいても、サイクロトロンi内の各ターゲットjが、ボンバードメントプロセスの終了後に順次抜き取られることを規定する。
【0063】
【数18】
(18)
【0064】
ここで、BOBij1は、生産段階1(即ち、最初の生産期間)におけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの開始時間を定義し、TINITは、ボンバードメントが開始するまでに必要な合計時間量を表し、TSTARTは、生産プロセスが開始する時間(例えば、生産プロセスが01:15に開始するのであれば、TSTART=75(即ち、午前零時から75分後))を表し、TCYCL−INITは、サイクロトロンiの初期化に必要な時間量であり、TTRG−LOADは、ターゲットjの装填に要する時間量であり、TTUNE−BEAMは、サイクロトロンiのビーム流のチューニングに必要とされる時間量である。
【0065】
【数19】
(19)
【0066】
ここで、EOUt−1は、生産段階t−1(即ち、生産段階tの1つ手前の生産段階)におけるターゲットjの抜き取りの終了を表わす時点であり、TPREPは、次の生産段階のためにサイクロトロンiを準備するために要する時間量である。
【0067】
【数20】
(20)
【0068】
ここで、QEOUは、EOUにおいて生産される合計放射能、BCijtは、生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのビーム流であり、SYijは、サイクロトロンi内におけるターゲットjの飽和収量であり、ENijは、サイクロトロンi内におけるターゲットjによるO18水の富化である。
【0069】
【数21】
(21)
【0070】
ここで、TTRANは、ターゲットの抜き取りプロセスを完了するために必要な時間であり、TCHEMは、化学プロセスを完了するために必要な時間であり、TQCは、品質管理試験を完了するために必要な時間である。
【0071】
【数22】
(22)
【0072】
ここで、TDSPは、生産段階tにおいて用量分配が開始する時間であり、
【0073】
【数23】
(23)
【0074】
ここで、σは1以上(≧1)の定数、H={2,...NSITES}、但し、NSITESは、生産段階tにおいて要求が満たされるべき注文を行なった顧客現場の数であり、qは、顧客(即ち、イメージングセンタ)iの放射能需要であり、TitINJは、生産段階tにおける顧客iによって出された全ての注文のうち最も早い注入時間である。
【0075】
【数24】
(24)
【0076】
任意の所定のラジオファーマシーについて、目的は、顧客、即ちイメージングセンタの全ての需要を満たす一方、生産コストが最小化されるような効率的な放射性医薬品の生産を実施することである。言い換えると、過剰生産を伴うことなく、全ての需要をちょうど満たせるに充分な放射性医薬品を生産するということである。
【0077】
この開示によれば、目的関数が、ラジオファーマシーのための最小生産コストを見つけ出す式(13)によって定義され、ここで、iは、生産のためにそのラジオファーマシーに利用可能なサイクロトロンのセットCのうちの或るサイクロトロンを表し、jは、各サイクロトロンに利用可能なターゲットのセットGのうちの或るターゲットを表し、tは、所定の日内の複数の生産段階のセットTのうちの或る生産段階を表わす。生産コストは、生産局面のあらゆる段階において必要とされる複数のボンバードメント時間として定義される。
【0078】
制約の不等式(14)によって定義される制約により、サイクロトロンi内におけるターゲットjのボンバードメント時間を特定の時間間隔内にすることが必要となり、ここで、TBMBmin及びTBMBmaxは、それぞれ、最短及び最長許容ボンバードメント時間である。典型的には、TBMBmin=30分、TBMBmax=4時間又は240分である。
【0079】
同様に、制約の不等式(15)は、サイクロトロンに使用されるビーム流の下限及び上限を扱い、ここで、BCmin及びBCmaxは、それぞれ、下側及び上側の境界である。典型的な値は、使用されるサイクロトロンのタイプに依存するが、BCmin=40μAであり、BCmax=80μAである。両方程式(14)及び(15)における2値変数Zijtの使用により、ターゲットが実際に使用されている場合に、ボンバードメント時間及びビーム流が許容可能な区間内に維持されていることが保証される。使用されないターゲットについては、これらの間隔は、自動的にゼロになる。
【0080】
制約(16)により、いずれのサイクロトロンにおいても、ターゲットのためのボンバードメントの終了が、同じ時点において生じることが保証される。いずれの生産段階においても、サイクロトロン内の各ターゲットが、ボンバードメントの終了後に順次抜き取られるとする要件は、制約(17)によって記述される。これらの制約が、異なるサイクロトロンのボンバードメントの終了が異なる時点において生じることを許容することに留意せよ。それにも拘わらず、抜き取りの終了は、全ての利用可能なサイクロトロンについて共通する時点において生じる。これに対し、制約(19)は、段階tにおけるボンバードメントの開始が、直前の段階t−1における分配時間の後に生じなければならないことを規定する。この制約により、生産が連続する段階として結合される。
【0081】
生産段階tにおける抜き取りの終了時に生産が終了している放射能の量を定義する制約は、式(20)に記述されている。最初の指数項は、全ての利用可能なサイクロトロン内の全ての利用可能なターゲットのボンバードメントの間に生産される総放射能を定義することに留意せよ。一旦、ターゲットのボンバードメントが終了すると、放射性崩壊プロセスが開始する。この崩壊プロセスが、等式(20)の2番目の指数項によってモデル化されている。
【0082】
全てのターゲットが抜き取られた後、放射性物質が、化学モジュールに移送され、そこでフッ素−18イオンをPETドラッグ(FDG)に変換するための合成プロセスが行なわれる。合成の終了に続いて、FDG生成物が、試料採取され、品質管理プロセスが開始する。放射性崩壊は、上記3つの段階の全てを通じて進む。移送、化学及び品質管理のプロセスが完了した後の放射能の量を測定する式が、制約(21)に記述されている。更に、制約(22)は、各段階におけるEOUと分配時間の間のタイムラインを接続する。
【0083】
制約(23)は、分配時に生産されなければならない放射能の総量と、イメージングセンタから、生産段階tの間に使用に供するように注文された放射能の総量とを結びつける。ここで、qは、イメージングセンタiによって注文された放射能であり、qi*e−λ(●)(但し、●=TitINJ−TDSP)は、生産段階tの分配ステップにおいて、イメージングセンタiのために必要とされる量である。QDSPは、各段階の分配時において、注文された総放射能より多くなる必要がある。この理由のため、ここでは、注文された総放射能に定数σ≧1が乗じられている。例えば、注文された総放射能より10%多く放射能を生産することを欲するのであれば、σ=1.1を設定する。
【0084】
最後に、Zijtを除く全ての変数は、連続量である。これらの要件は、モデル内の最後の制約(24)によって記述されている。
【0085】
[演算結果]
【0086】
このモデルの効率及び実用性を立証するために、最初に、ラジオファーマシーにおける典型的な日の間のFDG生産の注文を記述するケーススタディを呈示する。このモデルは、FICO−Xpress最適化パッケージの使用によって実行された。このパッケージは、強力なモデリング言語(Mosel)並びに整数及び連続変数をはじめ、線形及び非線形の制約を伴う問題を解決することが可能な効率的なソルバを含む。
【0087】
ケーススタディのため、C1からC10によって示される10の医用イメージングセンタからなる典型的な平日を選択した。これらのセンタは、合計で47用量を要求していた。その日は、2つの期間に分割された。表1は、それらの注文及びどのようにそれらがこれら2つの異なる期間に振り分けられたかについて、更なる詳細を示す。生産現場(ラジオファーマシー)は、C0によって示されている。表1から、多くの用量を注文している顧客がいること、それらの注文が、注入時間に基づいて異なる期間に設定されていることが分かる。その日のより遅くに注入される必要のある注文は、2番目の期間内に設定されている。
【0088】
【表1】
【0089】
表2は、生産最適化モデルの多様なパラメータのために使用した値をまとめたものである。これらの値は、ユーザの好み及び各生産施設における資源の可用性に基づいて変更することが可能であることに言及しておく。
【0090】
【表2】
【0091】
表3及び4は、生産段階1及び2の間における放射能の生産についての結果をまとめたものである。段階1のための生産は、01:00に開始され、それが完了すると、段階2のための生産が開始された。このケーススタディのために、生産施設が2つのサイクロトロンを有し、それぞれのサイクロトロンが最大で2つのターゲットを使用することができるように設定した。モデルは、段階1において全ての利用可能な資源を使用することを決定したが、このことは、両方のサイクロトロン及び4つ全てのターゲットが、段階1のイメージングセンタの需要を満たすに充分な放射能の生産に使用されることを意味した。4つのターゲットそれぞれのためのボンバードメント時間は、60分であった。これは、4つの放射能生産時間の合計が、1時間の持続時間内に達成されたことを意味する。ボンバードメントプロセスの開始前の準備時間(即ち、サイクロトロン初期化時間(15分)、ターゲット装填時間(10分)、及びビームチューニング時間(5分))を考慮に入れて、モデルは、各ターゲットのためのボンバードメントの開始を01:30に決定し、02:30に終了する必要があるとした。その時点において、全てのターゲットによって生産される総放射能は、9,189.47mCiである。02:30以降は、生産された放射性物質が崩壊を開始することになる。各ターゲットのボンバードメントが完了すると、ターゲットが抜き取られる。抜き取りプロセスは、完了に2×7=14分を要し、これは、抜き取りプロセスが02:44に完了し、その時点における放射能が8,412.38mCiであることを意味する(崩壊プロセスのせいで、放射能の量がボンバードメントの終了時の量と比較して減少していることに留意せよ)。移送及び化学プロセスの間に亘って放射能の崩壊は続き、分配の時点においては、放射能が、3,933.51mCiとなっており、分配時における合計の顧客放射能需要、即ち3,575.92mCi、に比べて、10%増となっている。
【0092】
【表3】
【0093】
全てのターゲットが抜き取られた後、段階2の需要を満たす必要がある放射能の生産を開始することが可能になる。ボンバードメントに先行する30分の準備時間を考慮に入れると、段階2におけるボンバードメントの開始は03:14である。ここでは、モデルが、段階2の需要をカバーするために1つのターゲットを使用することを決定した。ボンバードメント時間は、03:16(各生産段階の間に2分のギャップが見込んでいる。)から05:40までの間である。言い換えると、144分(即ち、2時間24分)に亘る単一ターゲットのボンバードメントによって、必要な量の放射能が生産され、いずれのイメージングセンタおいてもFDG需要が満たされる。段階2におけるFDG需要は、段階1のそれより少なく、従って、1つのターゲットのみの使用が適当となることに留意せよ。ボンバードメントの終了時における放射能は、3,614.2mCiであり、これは、段階1において生産された対応する放射能よりかなり少ない。こ、れは、次に挙げる要因に帰せられるであろう:(a)段階2における顧客(イメージングセンタ)がラジオファーマシーからより近い、(b)注入時間が段階2におけるボンバードメントの開始に、より近い、及び(c)顧客数がより少なく、また、FDG需要がより小さい。単一ターゲットの抜き取り終了時及び分配時における放射能は、それぞれ3,458.01mCi及び1,616.92mCiまで減少する。分配時における合計の顧客放射能需要は、1,469.92mCiである。
【0094】
【表4】
【0095】
定義
I.この開示に使われている指数
C={1,...,NCYCL}、ここで、NCYCLは、生産施設(ラジオファーマシー)内において利用可能なサイクロトロンの数である。
T={1,...,NPRD}、ここで、NPRDは、モデル内において考慮される生産段階の数である。
G={1,...,NTRG}、ここで、NTRGは、生産施設内に存在する全てのサイクロトロン内において利用可能なターゲットの数である。
={2,...,NSITES}、ここで、NSITESは、全ての顧客現場(即ち、イメージングセンタ、病院等)の数である。

II.パラメータ
BCmin:サイクロトロンのビーム流の下限。
BCmax:ビーム流の上限。
EN:O18水の富化。
FR:抜き取りプロセスの間に失われる放射能の割合。
PY:抜き取りプロセスの放射能のパーセント収率。
:顧客(イメージングセンタ)iの放射能需要。
QS:品質管理試験の間に試験試料として使用される生成物の割合。
SY:飽和収量。
SYCL:各サイクロトロンの初期化時間。
BMBmin:最短ボンバードメント時間。
BMBmax:最長ボンバードメント時間。
CHEM:化学プロセスのために必要とされる時間。
INJ:顧客iによってなされた全ての注文のうちの最も早い注入時間。
PREP:次の時間期間のためのサイクロトロンの準備に必要とされる時間量。
START:全体の生産プロセスが開始する時間。
CYCL−INIT:サイクロトロンの初期化に要する時間。
TRG−LOAD:ターゲットの装填に要する時間。
TUNE−BEAM:サイクロトロンのビーム流のチューニングに要する時間。
QC:品質管理試験の完了に要する時間。
TRAN:ターゲットの抜き取りプロセスの完了に要する時間。
UNLD:各サイクロトロンにおける各ターゲットの抜き取り時間。
λ:放射性医薬品の放射性崩壊速度(FDGの場合の値は0.006311)。

III.連続決定変数
BCijt:生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのビーム流。
BOBijt:生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの開始時間。
EOBijt:生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの終了時間。
EOU:生産段階tにおけるターゲットの抜き取りプロセスの終了を表わす時点。
EOUt−1:生産段階tの1つ手前の生産段階におけるターゲットの抜き取りプロセスの終了を表わす時点。
EOU:EOUにおいて生産された総放射能。
DSP:生産段階tにおける分配の開始時間。
DSP:TDSPにおいて生産された総放射能。

IV.2値的決定変数
ijt:生産段階tにおいてサイクロトロンi及びターゲットjが使用されているか否かを示し、使用されていればZijt=1、使用されていなければZijt=0となる。
【0096】
この開示のいくつかの実施態様によれば、生産施設において生産されるべき放射性医薬品の最適化量を決定するためのコンピュータ実装方法が開示される。放射性医薬品は、顧客現場によってなされた注文の総需要を満たすために、顧客現場における核イメージングに使用するためのものである。生産施設は、1つ又はそれ以上のサイクロトロンを運用している。
【0097】
図3に示されているフローチャート100を参照すると、放射性医薬品の生産は、ターゲット材料(放射性核種先駆体)に荷電粒子を衝突させて放射性核種材料が生産されるサイクロトロンボンバードメントプロセス110と、ターゲット抜き取りプロセス120と、放射性核種材料がターゲット抜き取りプロセスから化学プロセスモジュールに移送される放射性核種移送プロセス130と、放射性核種材料が放射性医薬品に変換される化学プロセス140と、品質管理試験のために放射性医薬品の試料採取が行なわれる品質管理プロセス150と、放射性医薬品が個別の用量に分配される用量分配プロセス160と、顧客現場への引き渡し170と、を包含する。
【0098】
図1を参照すると、放射性医薬品生産施設200の運用を制御するコンピュータシステム300は、ここで開示した方法をも実行する。コンピュータシステム300は、生産施設において生産されるべき放射性医薬品の最適化量を決定するプロセスを実行する。コンピュータシステムは、また、生産施設の運用も制御する。生産施設において生産されるべき放射性医薬品の最適化量を決定するための方法は、コンピュータシステム300によって実行され:
生産段階t(但し、t=1からNPRDまで)の用量分配プロセスの終了時に、その生産施設におけるNCYCL基のサイクロトロン及びNTRG個のターゲットによって生産が望まれる放射性核種QDSPの総量を決定することを包含し、ここで、QDSPは、顧客現場によってなされた放射性医薬品の注文の総量QCUSTを満たすに充分である一方、放射性核種の過剰生産を最小化し、それによってQDSPは、上で定義した条件付き制約(23)を満たし、QDSPは、上で定義した制約(21)を解くことによって決定され、ここでQEOUは、上で定義した式(20)を解くことによって決定され、ここで、(EOBijt−BOBijt)、即ち生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiのボンバードメントの持続時間が、上で呈示した制約(14)乃至(19)に従って式(13)によって最小化され、ここで、制約(19)は、生産段階tにおけるボンバードメントの開始が、直前の生産段階t−1における分配プロセスの後に生じなければならないことを規定する。
【0099】
式(13)によって表されるFDG生産モデルは、整数及び連続変数を伴う大規模非線形最適化であるので、放射性医薬品生産施設200の運用を制御して最適解をもたらすコンピュータシステム300は、このモデルのために必要とされる演算を実行するだけの充分な演算能力を有するものである。FDGのための注文数が増加するに従って、生産の日を分割する時間期間の数も、また、増加する。その結果、制約及び(2値及び連続)変数が対応して増加することになる。その種の最適化問題の最適解を決定するために、コンピュータシステム300は、演算能力を提供する1つ又はそれ以上のプロセッサを有する強力なコンピュータであることが好ましい。いくつかの実施態様においては、コンピュータシステム300を、最適化モデルの解決専用に充てられるコンピュータの数が増加することから演算時間の短縮が得られる並列コンピュータとすることが可能である。コンピュータシステム300に対する入力は、イメージングセンタによって提供される注文の詳細(例えば、注入時における放射能の量、FDG用量が患者の身体に注入されることになる時間、その生産施設において利用可能なサイクロトロン及びターゲットの数等)とすることができる。コンピュータの出力は、特定の日の間の各期間のための需要を満足するに必要とされるFDGの総量になる。また、各時間期間について、コンピュータシステムは、分配及びイメージングセンタ又は病院への輸送のためにFDGの準備が整う時期を提供する。
【0100】
生産施設において生産されるべき放射性医薬品の最適化量を決定するための方法のいくつかの実施態様においては、TBMBmin=30分、TBMBmax=4時間又は240分となる。いくつかの方法の実施態様においては、BCmin=40μAであり、BCmax=80μAである。
【0101】
いくつかの実施態様によれば、顧客現場によってなされた注文の総需要を満たすために、顧客現場における核イメージングに使用する用量を準備するための、最適化量の放射性医薬品を生産するためのコンピュータ実装される方法が開示される。放射性医薬品は、NCYCL基のサイクロトロン及びNTRD個のターゲットを運用する生産施設において生産される。放射性医薬品の生産は、図3に示されているフローチャートに図解されているステップを包含する。この開示の一側面によれば、コンピュータ化された生産施設によって実行される最適化量の放射性医薬品を生産するための方法は、
生産段階t(但し、t=1からNPRDまで)の用量分配プロセスの終了時に、その生産施設においてNCYCL基のサイクロトロン及びNTRG個のターゲットによって生産が望まれる放射性核種QDSPの総量を決定するステップを包含し、ここで、QDSPは、顧客現場によってなされた放射性医薬品の注文の総量QCUSTを満たすに充分である一方、放射性核種の過剰生産を最小化し、それによってQDSPは、上で定義した条件付き制約(23)を満たし、ここで、QDSPは、上で定義した式(21)を解くことによって決定され、ここで、QEOUは、生産段階tにおいて、1つ又はそれ以上のサイクロトロンのターゲット抜き取りプロセスの終了時に生産されている放射性核種の総量であり、上で定義した式(20)を解くことによって決定され、ここで上記変数は、上に定義されているとおりであり、ここで、(EOBijt−BOBijt)、即ち生産段階tにおけるターゲットjに関するサイクロトロンiについてのボンバードメントの持続時間が、上で定義した制約(14)乃至(19)に従って、上で定義した式(13)によって最小化され、その場合の制約(19)は、生産段階tにおけるボンバードメントの開始が、直前の生産段階t−1における分配プロセスの後に生じなければならないことを規定するものであり、更に、この方法は、サイクロトロンのボンバードメントプロセスが時点BOBijtにおいて開始し、かつ時点EOBijtにおいて終了して、制約(14)−(19)に従って、用量分配プロセスの終了時に、所定量のQDSPの放射性医薬品を生産する適切な量の放射性核種が生産されるように、生産段階t内においてターゲットjを用いてサイクロトロンiのそれぞれを運用するステップを包含する。
【0102】
放射性医薬品の最適化量を生産するための方法のいくつかの実施態様においては、TBMBmin=30分、TBMBmax=4時間、即ち240分となる。放射性医薬品の最適化量を生産するための方法のいくつかの実施態様においては、BCmin=40μAであり、BCmax=80μAである。
【0103】
いくつかの実施態様によれば、顧客現場によってなされた注文の総需要を満たすために、顧客現場における核イメージングに使用するための放射性医薬品を生産する生産施設の運用を制御するための制御システムが開示され、ここで、当該生産施設は、1つ又はそれ以上のサイクロトロンを運用し、ここで、放射性医薬品の生産は、ターゲットの放射性核種先駆体に荷電粒子を衝突させて放射性核種材料が生産されるサイクロトロンボンバードメントプロセス段階と;ターゲット抜き取りプロセス段階と;放射性核種材料がターゲット抜き取りプロセス段階から、放射性核種材料が放射性医薬品に変換される化学プロセス段階に移される放射性核種移送プロセス段階と;品質管理試験のために放射性医薬品の試料採取が行なわれる品質管理プロセス段階と;放射性医薬品が、顧客現場への引き渡しのための個別の用量に分配される用量分配プロセス段階と、を包含する。そのような制御システムの一例が図1のコンピュータシステム300である。この制御システムは、コンピュータプログラムコードがエンコードされた非一過性の機械可読ストレージ媒体を有するプロセッサを包含可能であり、ここで、プロセッサが当該コンピュータプログラムコードを実行すると、プロセッサが、上述の生産施設によって生産されるべき放射性医薬品の最適化量を決定するためのコンピュータ実装された方法を実行する。
【0104】
以上の実施態様の説明は、当業者が開示を実施することが可能になるように提供された。これらの実施態様に対する多様な変更が、この分野の当業者には容易に明らかであろうが、この中で定義されている包括的な原理は、発明能力を用いることなく、そのほかの実施態様にも適用できる。この開示は、ここで示したこれらの実施態様に限定されることを意図しておらず、むしろこの中に開示されている原理及び新規の特徴と矛盾しない最も広い範囲に一致する。
図1
図2
図3