(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
顧客の収入に関する収入情報、顧客の支出に関する支出情報、顧客の資産に関する資産情報、及び顧客の負債に関する負債情報を包含する顧客総資産情報を取得して記憶する顧客情報記憶部と、
顧客の生活情報を取得するとともに前記顧客総資産情報に基づいて顧客の資産収支状態を算出する資産収支状態算出部と、
前記資産収支状態に対し補正情報を反映させて顧客の将来の資産収支状態を算出する補正算出部と、
前記資産収支状態と前記将来の資産収支状態との乖離量を算出して出力する出力部と、
前記顧客からの入力を通じて取得された前記収入情報、前記支出情報、前記資産情報、前記負債情報、及び前記生活情報を集約するデータアグリゲーション部と、
ウェブサイトをクローラしてウェブページを検出し前記ウェブページより前記収入情報、前記支出情報、前記資産情報、前記負債情報、及び前記生活情報に関する統計資料データを抽出して前記補正情報を生成する抽出生成部とを備え、
前記補正算出部における前記顧客の前記将来の資産収支状態の算出に際し、前記将来の資産収支状態には、前記顧客の計画通りの予測の時点における将来の資産収支状態と、前記顧客の現状の生活が続いた場合の時点の将来の資産収支状態とが含められ、
前記出力部は、前記乖離量に応じて顧客に対して現状の生活の見直しとしての注意喚起情報を出力する
ことを特徴とする資産算出システム。
前記資産収支状態を複数の顧客分集約して、前記複数の顧客の将来の資産収支状態を算出するとともに、前記複数の顧客の将来の資産収支状態より参考となる顧客の資産収支状態または参考となる顧客の将来の資産収支状態を抽出して提示する参考提示部が備えられる請求項1または2に記載の資産算出システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の資産算出システム1の構成は、
図1の模式図として表される。資産算出システム1において、インターネット回線10に当該資産算出システム1を運用(稼働)する事業者からのサービス提供を受ける顧客の端末11,12が接続される。同インターネット回線10に統計資料データの提供者21,22も接続される。そして、インターネット回線10に本発明の主要な処理を実行するためのコンピュータ部100が接続されている。このように、資産算出システム1では、有線または無線のネットワーク網を通じて各種の機器、顧客(端末)、サービス提供者、統計資料データ提供者が接続される。さらに、図示しないものの、各種情報を蓄積するサーバもインターネット回線10に接続される。図示の便宜上、顧客の端末、統計資料データの提供者は2個とした。現実的には、インターネット回線10への接続個数は図示に限らず複数である。
【0012】
端末11,12は、当該資産算出システム1を運用しサービス提供を行う事業者と契約する顧客の情報機器端末であり、具体的には、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、タブレット等の機器である。そこで、顧客は自由に事業者にアクセスして必要な情報の入力に加え、事業者からの各種の算出結果を取得することができる。すなわち、顧客は容易に自己の金銭面におけるライフプランニングの助言、支援を受けることができる。
【0013】
統計資料データの提供者21,22は、主に政府機関(財務省、経済産業省、国土交通省、総務省、国税庁等)、中央銀行(日本銀行)、民間金融機関(銀行、証券会社等)、シンクタンク、統計の調査機関、為替、証券取引場等である。そして、マクロ指標、ミクロ指標をはじめとする各種の経済統計、経済指標を当該機関のホームページ上に公開している各種の組織、機関、団体、会社、大学、大学院等である。
【0014】
インターネット回線10に接続されるコンピュータ部100は、ハードウェア的には、CPU、メインメモリ、その他のLSI、ROM、RAM等により構成される。またソフトウェア的には、メインメモリにロードされた資産算出プログラム等により実現される。コンピュータ部100は、パーソナルコンピュータ(PC)、メインフレーム、ワークステーション、クラウドコンピューティングシステム等、種々の電子計算機(計算リソース)を用いて実現できる。
【0015】
図1のコンピュータ部100の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、コンピュータ部100は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行することで実現される。このプログラムを格納する記録媒体は、「一時的でない有形の媒体」、例えば、CD、DVD、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、このプログラムは、当該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して資産算出システム1のコンピュータ部100に供給されてもよい。
【0016】
コンピュータ部100における各種の記憶部は、HDDまたはSSD等の公知の記憶装置である。また、各種の算出、演算等の演算実行する各機能部はCPU等の演算素子である。加えて、入出力インターフェース、キーボード、マウス等の入力装置、ディスプレイ等の表示装置、データ類を出力する出力装置等も適式のコンピュータ部100に備えられる。
【0017】
コンピュータ部100は、顧客情報記憶部110、資産収支状態算出部120、データアグリゲーション部130、抽出生成部140、補正算出部150、相互比較部160、参考提示部170、出力部180に対応する。コンピュータ部100に備えられる記憶部は、各種のデータ、情報、当該資産算出プログラム、同プログラムの実行に必要なデータ等を記憶する。
【0018】
資産算出システム1(コンピュータ部100)について、
図2以降の図面を交えて説明する。顧客情報記憶部110は、顧客の収入に関する収入情報(D1)、同顧客の支出に関する支出情報(D2)、同顧客の資産に関する資産情報(D3)、及び同顧客の負債に関する負債情報(D4)を包含する顧客総資産情報(D5)を取得して記憶する。収入情報(D1)、支出情報(D2)、資産情報(D3)、及び負債情報(D4)について、顧客は、
図1の端末11を通じて入力可能である。また、入力に際しては、後出のデータアグリゲーション部130も利用される。
【0019】
収入情報(D1)は、顧客の1年間(または所定の期間内)において労働対価、株式配当、不動産収益、金利等により取得可能な金額に関する情報である。この収入情報(D1)は主に顧客の過去の実績値に相当する。支出情報(D2)は、顧客の1年間(または所定の期間内)において家計から払い出される(消費される)金額に関する情報である。資産情報(D3)は、顧客が保有する現金(預金)、株式、債券、動産、不動産等に関する情報である。負債情報(D4)は、顧客の借入金、動産または不動産のローン等に関する情報である。むろん、これらの情報は例示であり、列記以外もあり得る。
【0020】
そこで、顧客情報記憶部110は、収入情報(D1)、支出情報(D2)、資産情報(D3)、及び負債情報(D4)を集約することにより、当該顧客の顧客総資産情報(D5)を生成する(
図2参照)。従って、顧客総資産情報(D5)は顧客個人における収入、支出、資産、及び負債をまとめた一覧表に相当する。
【0021】
資産収支状態算出部120は、顧客の生活情報(D6)を取得するとともに顧客総資産情報(D5)に基づいて顧客の資産収支状態(D7)を算出する。顧客の生活情報(D6)は、生活形態の変化に関する情報であり、例えば、顧客及びその家族における婚姻、出産、就学、就職、転職、退職、疾病、さらには動産(乗用車)、不動産(住宅)の購入等の顧客の資産収支に変化を生じさせる情報である。つまり、資産収支の正確な評価のために必要な情報である。資産収支状態(D7)は、顧客総資産情報(D5)に顧客の生活情報(D6)を加味し調整した情報であり、いわゆる顧客個人の損益計算書、貸借対照表等に相当する情報である。顧客は、生活情報(D6)についても
図1の端末11を通じて入力可能である。
【0022】
データアグリゲーション部130は、顧客からの入力を通じて取得された収入情報(D1)、支出情報(D2)、資産情報(D3)、負債情報(D4)、及び生活情報(D6)を集約する。加えて、当該データアグリゲーション部130はウェブスクレイピング(ウェブクローラ)、アプリケーションプログラミングインタフェース(API)等の活用により、顧客の銀行、保険会社、各種のポイント会社等のウェブサイトから前掲の必要な情報を取得し、集約することもできる。データアグリゲーション部130を備えることにより、顧客は逐一算出に必要な情報を入力する必要はなく(いわゆる自動入力となる。)、以前に入力した情報について変更のない限り、顧客に関する情報はそのまま引き継がれる。また、顧客毎、あるいは項目毎の集約も可能である。データアグリゲーション部130を備えることにより、情報集約の精度は高められる。また、顧客の情報の一元化により管理は軽減され、さらには情報保護のセキュリティも高まる。
【0023】
抽出生成部140は、
図1のウェブサイト25,26をクローラしてウェブページ27,28を検出するとともに、そのウェブページより収入情報(D1)、支出情報(D2)、資産情報(D3)、負債情報(D4)、及び生活情報(D6)に関する統計資料データ(D11,D12)を抽出して補正情報(D20;その個々の補正情報D21,D22)を生成する(
図2参照)。
【0024】
図1の模式図及び前述の統計資料データの提供者21,22はウェブサイト25,26上にウェブページ27,28を有している。そのウェブページ27,28には、マクロ指標、ミクロ指標をはじめとする各種の経済統計、経済指標も公開され、随時更新されている。従前、これら各種の統計、指標等を利用しようとする場合、人力により顧客に必要な資料等を閲覧し、抽出して入力する場面が多く見られた。そのため、資料の正確な入力、その確認等の作業者の労務負担が大きく、また、入力の誤りの根絶も容易とはいえない。
【0025】
これに対し、抽出生成部140は、クローラの機能を活用してウェブサイト25,26上のウェブページ27,28に存在する顧客に関連する情報(統計、指標)を自動的に取得する。そして取得した情報から必要な情報として統計資料データ(D11,D12)を抽出する。このため、クローラ機能による自動化に伴い、作業者の負担軽減及び正確さ、情報反映の即応性等において非常に効率が良くなる。統計資料データ(D11,D12)の種類、数は限定されず、ミクロ統計、マクロ統計、物価、地価、人口動態、家計における消費支出、エンゲル係数、教育費、税制(税率)、減価償却、保険料、疾病の治療等の顧客の生活に関連する統計、指標が広範に含まれる。
【0026】
さらに、抽出生成部140は、顧客の収入情報(D1)、支出情報(D2)、資産情報(D3)、負債情報(D4)、及び生活情報(D6)に、ウェブサイト上から収集、抽出した各種の統計資料データ(D11,D12)を組み合わせて補正情報(D20;D21,D22)を生成する(
図2参照)。補正情報(D20)の例として、例えば、収入情報(D1)の場合、年齢とともに年収は増加する傾向にある。従って、将来の収入予測に際しては、所定の乗数(1.05倍)等の数値である。また、支出情報(D2)の場合、所定期間内(1年間)の食費と食料品価格の推移等から導き出される等の乗数である。生活情報(D6)の場合、顧客の子供を進学させる学校の種類(私立、公立、海外留学)、期間(大学進学、大学院進学)等を考慮した費用発生の推定モデルである。むろん、これらは単なる例示であり、これ以外の事項も当然に含まれ、反映される。
【0027】
補正算出部150は、顧客の資産収支状態(D7)に対し補正情報(D20)を反映させて顧客の将来の資産収支状態(D30)を算出する。前述のとおり、顧客の資産収支状態(D7)は、顧客の収入情報(D1)、支出情報(D2)、資産情報(D3)、負債情報(D4)、及び生活情報(D6)を含む。すなわち、資産収支状態(D7)は、現在(顧客による入力時点、データアグリゲーション部による集約時点)を含む顧客の資産収支を反映している情報である。いわば、資産収支状態(D7)は将来を予測するための基準点となる情報である。
【0028】
補正情報(D20)は前述のとおり各種存在し、資産収支状態(D7)を構成する個々の情報(D1等)に対応する。そこで、現時点の資産収支状態(D7)を基準とし、この資産収支状態(D7)に包含される個々の情報について、補正情報(D20)に基づいて乗数倍、加減算等の必要な演算処理が実行される。その結果、現時点の資産収支状態(D7)から1年後、3年後、5年後等の所定の期間経過後の将来の資産収支状態(D30)が算出される。なお、長期(30年超)にわたる将来の資産収支状態の予測も可能ではある。この場合、前述の統計値の変化による調整、または、後述する前回の予測と実績値の比較による補正の双方が予測に利用される。
【0029】
例えば、後出の
図4の模式図のように、現時点の資産収支状態(D7)は棒グラフ左側である。そして、例として、5年後の将来の資産収支状態(D30)は棒グラフ右側である。この顧客は不動産を取得していて、将来の資産収支状態(D30)では、その後の地価の上昇等が予測に含まれる算出結果である。この場合、顧客の資産情報(D3)に地価を加味した補正情報(D20)が反映される。または、例えば、顧客が現在の借入金の借り換えを行うことにより、将来の返済金利は低下して現預金量の蓄積は現時点よりも高まり、総じて資産量の増加も予測することができる。この場合、負債情報(D4)に金融機関の返済金利を加味した補正情報(D20)が反映される。
【0030】
また、補正情報の活用形態として、ある時点{X時点}における補正情報(D20;その個々の補正情報D21,D22)を踏まえて、未来の時点{Y時点}における将来の資産収支状態等が予測される。ここで、X時点におけるY時点までの予測値(Sx)と、実際にY時点において判明した資産収支状態の実測値(Sy)が比較され、双方の差異が算出される。例えば、「Sy/Sx=1.1(つまり、1.1倍または110%)」の結果の場合、Y時点の補正情報(D20;その個々の補正情報D21,D22)から算出される将来の資産収支状態に対して1.1倍または110%の乗数が加算される。
【0031】
具体例を挙げると、X時点の予測における教育費の支出は100万円であった。次にY時点において、X時点からY時点までの実績値は110万円であった。Y時点における将来の予測値120万円に対し、乖離量の補正が行われる。この場合、110万円/100万円=1.1倍(110%)、または110万円−100万円=10万円が補正値となる。そこで、Y時点における将来予測の数値(例えば120万円)に対し、補正値を反映させることにより、Y時点の当初予測値120万円×1.1=132万円(補正値反映後予測値)、または120万円+(110万円−100万円)=132万円(補正値反映後予測値)のように、補正値を加味した算出が可能となる。
【0032】
さらに、補正算出部150における補正情報(D20)の生成について、
図3を用い説明する。
図3(a)において、紙面右方向は経過時間であり、同紙面縦向き(上向き)は資産収支状態(金額量)である。図中、太実線はある顧客の資産収支状態(金額量)時系列の推移である。
【0033】
時点T
0(過去の時点)における資産収支状態はM
oである。時点T
0から時点T
1(現在)に順当に推移したときの資産収支状態はM
pである。ところが、当該顧客によると、本来の予定よりも資産収支状態の増加は低くとどまっている。現実の資産収支状態はM
1である。すなわち、時点T
1においてM
pとM
1との間の差分量Δ
1が判明する。さらに、当該顧客の時点T
1における現実の資産収支状態M
1に基づいて、時点T
2の将来の資産収支状態M
2が予測される。すると、計画通りの予測の時点T
2の将来の資産収支状態M
qと、現状の生活の延長となる時点T
2の将来の資産収支状態M
2との間の差分量Δ
2も判明する。従って、何らの措置を講じなければ、時間経過とともに、差分量Δ
1は差分量Δ
2にまで拡大し、計画の推移と現状の延長との差は広がる。
【0034】
このことから明らかであるように、計画通りの予測の将来の資産収支状態と、現状の生活の延長の予測の将来の資産収支状態のより正確な予測が求められる。正確な予測が可能であれば、顧客の生活の見直し、助言等が効率的かつ的確となる。そこで、現在の時点T
1における資産収支状態(D7)が踏まえられ、将来の資産収支状態(D30)として、計画通りの予測の時点T
2における将来の資産収支状態M
qと、現状の生活が続いた場合の時点T
2の将来の資産収支状態M
2の両方は、補正情報(D20)を含めて予測される。
【0035】
図3(b)では、現在の時点T
1において、顧客の生活の見直し等が適切に図られる場合、計画通りの予測の時点T
3における将来の資産収支状態M
rに到達する様子を示している。破線Kは適切な見直しが行われると仮定した場合の資産収支状態の推移予測である。現在の時点T
1における資産収支状態とこれまでの推移が把握されて、近未来の将来の資産収支状態は補正情報とともに正確に予測される。そこで、生活に基づく資産収支状態が計画通りの予測の将来の資産収支状態と比較されて、資産収支状態は順調または改善の余地ありであるかについて、時系列の逐次の時点での判断、見直しが可能となる。当該資産算出システムを活用して顧客は資産収支状態を随時確認できることから、顧客に計画的に極端な無理を強いることなく、顧客は生活の見直しを続けて資産形成に役立つ。
【0036】
資産算出システムを活用した近未来予測に際し、補正算出部150が生成する補正情報(D20)を用いた将来の予測の手法として、一つ目に、複数の顧客分の資産収支状態の平均値が用いられる。対象とするある一人の顧客以外であり、当該ある一人の顧客と比較的近似した生活形態の複数名の顧客分の資産収支状態が集約され、これらより資産収支状態の平均値が求められる。この平均値が補正情報(D20)に組み入れられる。相対的に近似する顧客同士であれば、おおよそ資産収支状態の傾向も似ると考えられる。そこで、顧客毎の資産収支状態の変動が緩和される。
【0037】
二つ目に、同一の顧客における複数の資産収支状態の平均値が用いられる。具体的には、現在に至るまでの過去の時系列時点の資産収支状態が複数抽出され。その平均、特には移動平均値が求められる。例えば、毎月ごとに直近の6か月分、直近の12か月分等の月次の移動平均値である。この平均値(移動平均値)が補正情報(D20)に組み入れられる。当該平均値を用いると、同一顧客における収支の季節変動等の要因が緩和されて資産収支状態の傾向が把握されやすくなる。
【0038】
三つ目に、同一の顧客における資産収支状態の計画値が用いられる。この場合は、顧客の資産収支状態が時系列において自己申告等により計画され、各時点の計画値として設定される。この計画値が補正情報(D20)に組み入れられる。計画値を用いると、資産算出システムの算出する将来の資産収支状態(D30)とは別に、顧客に生活設計を意識させることができる。そこで、顧客は適切な範囲において支出の増減等を調整しやすくなる。顧客は計画値と現実の差異を知ることにより、顧客は計画値の見直しまたは現実の生活の改善等の動機づけを得る。なお、計画値の設定に際しては、不動産の購入、独立による個人事業主化等の生涯設計に関するシナリオモデルの類型も選択要素に含めることができる。
【0039】
出力部180は、主に現時点に資産収支状態(D7)と所定期間経過後の将来の資産収支状態(D30)との乖離量(D40)を算出して出力する。将来の資産収支状態(D30)は、一つの数値とは限られず、ある程度の幅のある範囲としても算出される。乖離量(D40)の出力は、当該資産算出システム1を使用する事業者からインターネット回線10を通じてサービス提供を受ける顧客の端末11,12への通知である。電子メール、チャット、専用ホームページの閲覧誘導等の適宜である。
図3の時系列の資産収支状態の推移、
図4の乖離量の表示については、具体的な数値とともにグラフ化等の視覚的に把握可能な図示も含まれる。
【0040】
図4の模式図によると、左右の棒グラフ間の差(矢印表記)が、ここでいう乖離量(D40)に相当する。すなわち、現在と予測される将来との差である。このように、ミクロ指標等を多く取り入れることにより、顧客の将来の資産収支状態の予測精度は高められる。そこで、顧客は現在と将来の比較、利害得失を明確に意識でき、日々の生活等にも反映可能である。また、将来に向けての金融資産の運用パターンに応じても複数種類想定できる。このため、どのような運用を選択するか(ローリスク・ローリターンの保守的運用、ハイリスク・ハイリターンの積極的運用の組み合わせ)、顧客の要望、顧客の生活形態等を踏まえた資産収支バランス、ポートフォリオ等の提案等も可能である。また、前掲の
図3の資産収支状態の時系列推移、資産収支状態の予測、差分量の情報も乖離量(D40)に含められる。
【0041】
さらに、出力部180は、乖離量(D40)に応じて顧客に対して注意喚起情報(D45)を出力する。例えば、顧客が現在の生活形態を続けた場合の収支の不均衡、借入金過剰による返済不能の危険性等の将来予測も可能である。つまり、資産等の増加の乖離量であれば、顧客には得である。逆に、将来の資産収支状態(D30)が現時点の資産収支状態(D7)よりも減少するようであれば、顧客は現在の生活を見直すべきである。すなわち、ここに改善の余地がある。そこで、現状の生活の見直しとして、注意喚起情報(D4)が出力される。例えば、頭金等が少ない状態で不動産(住宅)を購入しようとするのであれば、所定の現預金の増加まで待ってからの購入を勧める等である。あるいは、将来の資産状況の悪化傾向が予測されるようであれば、毎月一定額の節約を促す示唆も注意喚起情報に含められる。また、前述のとおり、借入金の一括返済、借入金の金利を下げるための借り換え等も注意喚起情報に含められる。
【0042】
資産算出システム1を運用する事業者は、
図1に示し前述のとおり、顧客の端末11,12を通じて顧客の種々の情報(D1等)を収集でき、さらに、資産算出システム1のアグリゲーション部130において、顧客の情報の一元化した管理が可能である。顧客の情報の一元化管理に際しては、端末を通じての取得に加え、例えば認証情報等をクラウドサーバ上に保存しておき、クラウドサーバ上から直接取得することも可能である。従って、当該資産算出システム1を運用する事業者の顧客または利用者同士の間においての比較も可能である。
【0043】
そこで、相互比較部160は、資産収支状態(D7)を複数の顧客分集約して、複数の顧客の資産収支状態(D7)の相互比較を実行する。例えば、
図5の模式図として表現可能である。同図は、複数の顧客a、顧客b、及び顧客cについて、顧客毎の資産収支状態(D7;個々のD7a,D7b,D7c)を円グラフにより図示化して示す。円内は、資産収支状態(D7)に包含される各顧客の収入情報(D1)、支出情報(D2)、資産情報(D3)、負債情報(D4)等に区分される。また、円の大きさは、資産収支状態(D7)の総量である。
【0044】
この相互比較部160は、顧客の世代、家族構成、収入、職種等の階層区分後の共通傾向の階層内に属する顧客間の比較(相対化)に効力を発揮する。
図5の模式図からは、まず顧客毎の円の大きさにより資産収支状態(D7)の総量が把握される。さらに、円内の区分バランスを通じて、資産収支状態(D7)は収入依存(労働収入型)または資産依存(不労所得優位型)等も把握される。さらに、顧客間の支出及び負債の多少も把握可能であるため、浪費傾向または節約傾向の分析も可能である。
【0045】
これらの相互比較の情報は個々の顧客に対して前述の出力部180を通じて出力される。ただし、個人情報保護の観点から、情報、図示は匿名化されて出力される。
【0046】
さらに、相互比較の機能を発展させて将来の資産収支状態の相互比較にも拡張可能である。そこで、参考提示部170は、資産収支状態(D7)を複数の顧客分集約して、複数の顧客の将来の資産収支状態(D30)を算出するとともに、複数の顧客の将来の資産収支状態(D30)より参考となる顧客の資産収支状態または参考となる顧客の将来の資産収支状態を抽出して提示する。
【0047】
図6の模式図の例において、左列はいわゆる現在の顧客a、顧客b、及び顧客cについての資産収支状態(D7;D7a,D7b,D7c)である。
図4と同様に円内は、資産収支状態(D7)に包含される各顧客の収入情報(D1)、支出情報(D2)、資産情報(D3)、負債情報(D4)等に区分される。また、円の大きさは、資産収支状態(D7)の総量である。
【0048】
右列は、経年後(例えば5年後等)の顧客a、顧客b、及び顧客cについて予測する資産収支状態(D30;D30a,D30b,D30c)である。それぞれの円の大きさ、その内部の区分割合の変化も生じている。前述のとおり、顧客a、顧客b、及び顧客cは共通傾向の階層内に属する顧客である。そうすると、本来的には、おおよそ類似する傾向に収斂すると考えられる。そこで、現在と将来の資産収支状態の経年比較を通じて他の顧客から相対的に著しく均衡を欠くようであれば、その顧客の生活等に何らかの問題点が指摘され得る。
【0049】
このような場合、参考提示部170を通じて、参考となる顧客の資産収支状態(D7)または参考となる顧客の将来の資産収支状態(D30)は提示される。そして、前述の出力部180を通じて出力される。ただし、個人情報保護の観点から、情報、図示は匿名化されて出力される。そして、顧客は、現状から参考となる他の顧客の将来の資産収支情報を目標に現在の資産収支の状態の改善、生活の見直しを図ることが可能となる。
【0050】
続いて、
図7のフローチャートを用い、本発明の資産算出方法を資産算出プログラムとともに説明する。本発明の資産算出方法は、資産算出プログラムに基づいて、資産算出システム1のコンピュータ部100により実行される。当該資産算出プログラムは、
図1のコンピュータ部100に対して、顧客情報記憶機能、資産収支状態算出機能、データアグリゲーション機能、抽出生成機能、補正算出機能、相互比較機能、参考提示機能、出力機能等の各種機能を実行させる。これらの各機能は図示の順に実行される。なお、各機能は前述の資産算出システム1の説明と重複するため、詳細は省略する。
【0051】
図7のフローチャートは資産算出方法の全体の流れであり、顧客情報記憶ステップ(S110)、資産収支状態算出ステップ(S120)、データアグリゲーションステップ(S130)、抽出生成ステップ(S140)、補正算出ステップ(S150)、相互比較ステップ(S160)、参考提示ステップ(S170)、出力ステップ(S180)の各種ステップを備える。その他、資産算出方法は、記憶、格納、呼び出し、演算、比較等の各種の図示しないステップも備える。
【0052】
顧客情報記憶機能は、顧客の収入に関する収入情報(D1)、顧客の支出に関する支出情報(D2)、顧客の資産に関する資産情報(D3)、及び顧客の負債に関する負債情報(D4)を包含する顧客総資産情報(D5)を取得して記憶する(S110;顧客情報記憶ステップ)。顧客情報記憶機能は、資産算出システム1のコンピュータ部100の顧客情報記憶部110(
図1参照)により実行される。
【0053】
資産収支状態算出機能は、顧客の生活情報(D6)を取得するとともに顧客総資産情報(D5)に基づいて顧客の資産収支状態(D7)を算出する(S120;資産収支状態算出ステップ)。資産収支状態算出機能は、コンピュータ部100の資産収支状態算出部120により実行される。
【0054】
データアグリゲーション機能は、顧客からの入力を通じて取得された収入情報(D1)、支出情報(D2)、資産情報(D3)、負債情報(D4)、及び生活情報(D6)を集約する(S130;データアグリゲーションステップ)。データアグリゲーション機能は、コンピュータ部100のデータアグリゲーション部130により実行される。
【0055】
抽出生成機能は、ウェブサイト25,26をクローラしてウェブページ27,28を検出しウェブページ27,28より収入情報(D1)、支出情報(D2)、資産情報(D3)、負債情報(D4)、及び生活情報(D6)に関する統計資料データ(D11,D12)を抽出して補正情報(D20)を生成する(S140;抽出生成ステップ)。抽出生成機能は、コンピュータ部100の抽出生成部140により実行される。
【0056】
補正算出機能は、資産収支状態(D7)に対し補正情報(D20)を反映させて顧客の将来の資産収支状態(D30)を算出する(S150;補正算出ステップ)。補正算出機能は、コンピュータ部100の補正算出部150により実行される。
【0057】
相互比較機能は、資産収支状態(D7)を複数の顧客分集約して、複数の顧客の資産収支状態(D7)の相互比較を実行する(S160;相互比較ステップ)。相互比較機能は、コンピュータ部100の相互比較部160により実行される。
【0058】
参考提示機能は、資産収支状態(D7)を複数の顧客分集約して、複数の顧客の将来の資産収支状態(D30)を算出するとともに、複数の顧客の将来の資産収支状態(D30)より参考となる顧客の資産収支状態(D7)または参考となる顧客の将来の資産収支状態(D30)を抽出して提示する(S170;参考提示ステップ)。参考提示機能は、コンピュータ部100の参考提示部170により実行される。
【0059】
出力機能は、資産収支状態(D7)と将来の資産収支状態(D30)との乖離量を算出して出力する(S180;出力ステップ)。出力機能は、コンピュータ部100の出力部180により実行される。