(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記舵板の上下方向に関して、前記舵板の前端とプロペラ軸心の延長線との交点の上方のプロペラ直径の40%以上で60%以下の第1上下範囲に、上側水流制御板を設け、
前記上側水流制御板と前記舵板とが交差する前端を含む上側水平断面において、前記上側水流制御板を前記上側水平断面に上下方向から投影したときに、
前記上側水平断面における長手方向に関して、前記上側水平断面における前記舵板のコード長を上側舵長さとし、前記上側水平断面における前記舵板の前端の後方の前記上側舵長さの3%以上でかつ15%以下の範囲を上側第1領域とし、前記上側水平断面における前記舵板の前端の後方の前記上側舵長さの25%以上でかつ45%以下の範囲を上側第2領域として、
前記上側水流制御板の前端を前記上側第1領域内に配置するとともに、
前記上側水流制御板の後端の投影位置を、前記上側第2領域内に配置し、
かつ、
前記上側水平断面における幅方向に関して、前記上側水流制御板の長手方向Xの少なくとも80%以上において、前記上側水平断面における前記上側水流制御板の投影幅を、その前後位置の前記上側水平断面における舵幅の3%以上でかつ20%以下にして、
前記上側水流制御板を形成していることを特徴とする請求項1に記載の船舶用舵。
前記舵板の上下方向に関して、前記舵板の前端とプロペラ軸心の延長線との交点よりも上の舵上方部分の前側部分と、この交点より下の舵下方部分の前側部分とを、互いに反対方向に捩じると共に、
前記舵板の上下方向の各水平断面における前記舵板の前後方向に関して、
その水平断面における舵の前端から後方の、その水平断面における舵長さの30%以上でかつ50%以下の範囲を中央第1領域として、
前記捩じり部分の前端を前記舵板の前端とするとともに、前記捩じり部分の後端をその水平断面における前記中央第1領域内に配置し、
前記舵上方部分の前側部分と前記舵下方部分の前側部分の捩じりに関しては、
プロペラが船体後方から見て時計回りのときにおいては、
前記舵上方部分の前側部分を左舷側に5度以上20度以下の範囲で捩じって形成するとともに、前記舵下方部分の前側部分を右舷側に5度以上20度以下の範囲で捩じって形成し、
プロペラが船体後方から見て反時計回りのときにおいては、
前記舵上方部分の前側部分を右舷側に5度以上20度以下の範囲で捩じって形成するとともに、前記舵下方部分の前側部分を左舷側に5度以上20度以下の範囲で捩じって形成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の船舶用舵。
【背景技術】
【0002】
船舶においては、船尾に配置されるプロペラの後方に舵を設けて、航行中に、操舵により舵を切って舵角を取ったときに生じる舵の横力により、船体を前進方向に対して回頭させて船体を旋回させている。
【0003】
この舵の種類の一つに、前縁部が半円形で、後縁部が魚尾後縁部(後端側で断面幅が最小幅に達した後方で徐々に増大する形状)の舵板(舵ブレード)に、整流板としての頂端板と底端板とを左右両舷側に張り出して取り付けた構造のシリング・ラダーがある。
【0004】
このシリング・ラダーでは、舵板の上端と下端に頂端板と底端板を設けて、この頂端板と底端板の間にプロペラから水流を封じ込めて効率よく舵板に誘導して、この水流を舵板に当てて偏向させることで大きな舵力を得ると共に、大きな舵角(例えば、最大で70度程度)まで舵力を発揮できる。
【0005】
このシリング・ラダーでは、頂端板と底端板は、大きな舵角を取った場合でも、プロペラ後流が舵板の外方に逸流することを防止して舵面に誘導するために、舵板の幅に比べて同程度まで左右に大きく張り出している(例えば、特許文献1〜6参照)。
【0006】
また、これらの船舶用舵の一つでは、この頂端板と底端板に変えて、舵ブレードの前縁部に前方へ張出し、かつ、舵ラダーの前半部のみに設けられている円盤状の頂部クラブフィンと底部クラブフィンを設けている(例えば、特許文献6参照)。
【0007】
また、この舵の種類の一つに、船体の後方から見て右回転(時計方向回転)のプロペラでは、プロペラ回転流により、舵の上方に対して左舷から右舷へ、舵下方に対しては逆に右舷から左舷に向かう流れが存在するため、舵板の上半分と下半分を逆方向に捩じり、水流に対して舵面の迎角が正になるようして、舵板に推力を発生させるリアクション舵がある。このようなリアクション舵では、舵板の上下の境目に、バルブとフィンを設けたリアクション舵も提案されている(例えば、特許文献7)。
【0008】
また、舵ブレードの前縁部に、プロペラボスの後端と対向するラダーバルブ(最大径がプロペラボス径の1.30倍以下)を設け、ハブ渦を生じるべき部位に水空間が存在しないようにすることで、ハブ渦の消去により推進効率を向上させたりこのラダーバルブに左右対称の水平フィンを設けて、この水平フィンの揚力により推進効率を向上させたりしている(例えば、特許文献5及び特許文献8参照)。
【0009】
このように、船舶用舵においては、舵を切って舵角を取ったときに大きな揚力を発生させて舵力を大きくすることが望ましく、様々な工夫がなされてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の構成の船舶用舵においては、舵を切って舵角を取った時の舵力を大きくすることができる反面、船体直進時における舵角が小さいときの抵抗が大きくなってしまうという問題がある。
【0012】
本発明者らは、多くの水槽実験や流体シミュレーション計算の結果から、船舶用舵の形状の工夫次第では、舵を切って舵角を取ったときの舵力をある程度確保しつつ、直進時の抗力を減少できるとの知見を得た。
【0013】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、舵を切って舵角を取ったときの舵力を比較的大きくできると共に、船舶の直進時における抵抗が小さく、省エネルギーを図ることができる船舶用舵及び船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の船舶用舵は、
舵板の舵下端面に下端渦流制御板を設け、前記舵下端面における長手方向に関して、前記舵下端面における前記舵板のコード長を下端舵長さとし、前記舵下端面の前端の後方の前記下端舵長さの5%以上でかつ15%以下の範囲を下端第1領域とし、前記舵下端面の最後端の前方の前記下端舵長さの5%以上でかつ50%以下の範囲を下端第2領域として、前記下端渦流制御板の前端を前記下端第1領域内に配置するとともに、前記下端渦流制御板の後端を前記下端第2領域内に配置し、かつ、前記舵下端面における幅方向に関して、前記下端渦流制御板の長手方向の少なくとも80%以上において、前記下端渦流制御板の幅を、その前後位置の前記舵下端面における舵幅の5%以上でかつ30%以下にして、前記下端渦流制御板を形成していることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、幅広の板で形成されて、プロペラ後流が舵板の外方に逸流することを防止して舵面に誘導するシリング・ラダーの底端板とは異なり、この底端板に比べて長さも短く、幅も狭い下端渦流制御板を舵板の下端面に設けているので、舵板の下端部分で発生する翼端渦の発生を制御することができ、直進時も舵を取った時も、舵板の抵抗を減少できるとともに、舵板で発生する揚力を大きくすることができ、この揚力の船体前後方向の成分から推進力を効果的に得ることができる。
【0016】
また、この下端渦流制御板は、シリング・ラダーの幅広の底端板よりも幅が狭く、厚さも構造的にも薄くて済むので、舵における抵抗の増加量が小さくて済み、舵全体としての抵抗が小さくなる。このように、この下端渦流制御板は、シリング・ラダーの幅広の底端板とはその構成もその構成が目的とする機能も異なるものである。
【0017】
つまり、この下端渦流制御板を舵板の前縁より後退して設置することで、抵抗の著しい増加を防ぐことができる一方で、推力の増加は後退していない場合と同程度に得ることができる。同様に下端渦流制御板を舵板の後縁より前進させて設けることで、抵抗の増加を防ぎつつ、推力の増加はそのまま得ることができる。
【0018】
上記の船舶用舵において、前記舵板の上下方向に関して、前記舵板の前端とプロペラ軸心の延長線との交点の上方のプロペラ直径の40%以上で60%以下の第1上下範囲に、上側水流制御板を設け、前記上側水流制御板と前記舵板とが交差する前端を含む上側水平断面において、前記上側水流制御板を前記上側水平断面に上下方向から投影したときに、前記上側水平断面における長手方向に
関して、前記上側水平断面における前記舵板のコード長を上側舵長さとし、
前記上側水平断面における前記舵板の前端の後方の前記上側舵長さの3%以上でかつ15%以下の範囲を上側第1領域とし、前記上側水平断面における前記舵板の前端の後方の前記上側舵長さの25%以上でかつ45%以下の範囲を上側第2領域として、前記上側水流制御板の前端を前記上側第1領域内に配置するとともに、前記上側水流制御板の後端の投影位置を、前記上側第2領域内に配置し、かつ、前記上側水平断面における幅方向に関して、
前記上側水流制御板の長手方向の少なくとも80%以上において、前記上側水平断面における前記上側水流制御板の投影幅を、その前後位置の前記上側水平断面における舵幅の3%以上でかつ20%以下にして、前記上側水流制御板を形成していると、次のような効果を得ることができる。
【0019】
この構成によれば、プロペラの先端部の回転円の最上端部分に設けた上側水流制御板により、プロペラ先端からの先端渦(チップボルテックス)などで乱れた水流を整流して、舵板の表面に流すことができるので、舵板の舵力を増加できると共に、舵板の抵抗を減少できる。また、上側水流制御板自体の抵抗も小さいので、舵全体の抵抗を小さくし、推進力を得ることができる。
【0020】
この上側水流制御板は、幅広の板で形成されて、プロペラ後流が舵板の外方に逸流することを防止して舵面に誘導するシリンダ・ラダーの頂端板とは異なり、長さも短く、幅も狭いので、直進時も舵を取った時も、舵板の抵抗を減少できる。つまり、この上側水流制御板は、シリンダ・ラダーの幅広の上端板とはその構成もその構成が目的とする機能も異なるものである。この上側水流制御板はシリンダ・ラダーの頂端板に比べて長さも幅も狭いが、有効に左右舵面の圧力差を高めて舵板で発生する揚力を大きくでき、結果的に揚力の船体前後方向の成分である推進力を得ることができる。
【0021】
この上側水流制御板を舵板の前縁より後退して設置することで、抵抗の著しい増加を防ぐことができる一方で、推力の増加は後退していない場合と同程度に得ることができる。同様に上側水流制御板を舵板の後縁より大きく前進させて設けることで、抵抗の増加を防ぎつつ、推力の増加はそのまま得ることができる。
【0022】
上記の船舶用舵において、
吊舵で構成すると共に、前記舵板の舵上端面に上端渦流制御板を設け、前記舵上端面における長手方向に関して、前記舵上端面におけるコード長を上端舵長さとし、前記舵上端面の前端の後方の前記上端舵長さの5%以上でかつ15%以下の範囲を上端第1領域とし、前記舵上端面の最後端の前方の前記上端舵長さの5%以上でかつ50%以下の範囲を上端第2領域として、前記上端渦流制御板の前端を前記上端第1領域内に配置するとともに、前記上端渦流制御板の後端を前記上端第2領域内に配置し、かつ、前記舵上端面における幅方向に関して、前記上端渦流制御板の幅を、その前後位置の前記舵上端面における舵幅の5%以上でかつ30%以下にして、前記上端渦流制御板を形成していると、次のような効果をえることができる。
【0023】
この構成によれば、幅広の板で形成されて、プロペラ後流が舵板の外方に逸流することを防止して舵面に誘導するシリング・ラダーの頂端板とは異なり、この頂端板に比べて長さも短く、幅も狭い上端渦流制御板を舵板の上端面に設けているので、舵板の上端部分で発生する翼端渦の発生を制御することができ、直進時も舵を取った時も、舵板の抵抗を減少できる。
【0024】
また、この上端渦流制御板は、シリング・ラダーの幅広の頂端板よりも幅が狭く、厚さも構造的にも薄くて済むので、舵における抵抗の増加量が小さくて済み、舵全体としての抵抗が小さくなる。このように、この上端渦流制御板は、シリング・ラダーの幅広の底端板とはその構成もその構成が目的とする機能も異なるものである。
【0025】
つまり、この上端渦流制御板を舵板の前縁より後退して設置することで、抵抗の著しい増加を防ぐことができる一方で、推力の増加は後退していない場合と同程度に得ることができる。同様に上端渦流制御板を舵板の後縁より前進させて設けることで、抵抗の増加を防ぎつつ、推力の増加はそのまま得ることができる。
【0026】
上記の船舶用舵において、前記舵板の上下方向に関して、前記舵板の前端とプロペラ軸心の延長線との交点よりも上の舵上方部分の前側部分と、この交点より下の舵下方部分の前側部分とを、互いに反対方向に捩じると共に、前記舵板の上下方向の各水平断面における前記舵板の前後方向に関して、その水平断面における舵の前端から後方の、その水平断面における舵長さの30%以上でかつ50%以下の範囲を中央第1領域として、前記捩じり部分の前端を前記舵板の前端とするとともに、前記捩じり部分の後端をその水平断面における前記中央第1領域内に配置し、前記舵上方部分の前側部分と、前記舵下方部分の前側部分の捩じりに関しては、プロペラが船体後方から見て時計回りのときにおいては、前記舵上方部分の前側部分を左舷側に5度(degree)以上20度以下の範囲で捩じって形成するとともに、前記舵下方部分の前側部分を左舷側に5度以上20度以下の範囲で捩じって形成し、プロペラが船体後方から見て反時計回りのときにおいては、前記舵上方部分の前側部分を右舷側に5度以上20度以下の範囲で捩じって形成するとともに、前記舵下方部分の前側部分を左舷側に5度以上20度以下の範囲で捩じって形成していると、次のような効果を得ることができる。
【0027】
この構成によれば、リアクション舵としての舵板の捩じりによる舵の揚力効果を得ることができる。また、上記の下端渦流制御板又は/及び上流水流制御板との組み合わせにより、これらの下端渦流制御板又は/及び上流水流制御板により、シリング・ラダーの底端板や頂端板で得られる「プロペラ後流の舵面への誘導効果」も得ることができる。そのため、上記の下端渦流制御板又は/及び上流水流制御板の効果をリアクション舵との組み合わせにより大きくすることができる。
【0028】
上記の船舶用舵において、
前記舵板の上下方向に関して、前記舵板の前端とプロペラ軸心の延長線との交点よりも上の舵上方部分の前側部分と、この交点より下の舵下方部分の前側部分とを、互いに反対方向に捩じると共に、前記舵板の上下方向の各水平断面における前記舵板の前後方向に関して、その水平断面における舵の前端から後方の、その水平断面における舵長さの30%以上でかつ50%以下の範囲を中央第1領域として、前記捩じり部分の前端を前記舵板の前端とするとともに、前記捩じり部分の後端をその水平断面における前記中央第1領域内に配置し、前記舵上方部分の前側部分と前記舵下方部分の前側部分の捩じりに関しては、プロペラが船体後方から見て時計回りのときにおいては、前記舵上方部分の前側部分を左舷側に5度以上20度以下の範囲で捩じって形成するとともに、前記舵下方部分の前側部分を右舷側に5度以上20度以下の範囲で捩じって形成し、プロペラが船体後方から見て反時計回りのときにおいては、前記舵上方部分の前側部分を右舷側に5度以上20度以下の範囲で捩じって形成するとともに、前記舵下方部分の前側部分を左舷側に5度以上20度以下の範囲で捩じって形成して構成し、さらに、前記舵板をラダーホーンで支持すると共に、前記ラダーホーンを前記舵上方部分の前側部分と同じ方向に捩じって形成していると、次のような効果を得ることができる。
【0029】
この構成によれば、舵板の前方に位置するラダーホーンを舵上方部分の前側部分と同じ方向に捩じって形成しているので、このラダーホーンの部分でも、舵上方部分の前側部分と同様に揚力を発生して舵全体における推力を増加させることができる。
【0030】
なお、ラダーホーンの捩じり角の大きさに関しては、舵上方部分の前側部分と同じ大きさにして形成すると、ラダーホーンの形状と舵上方部分の前側部分の形状とが段差なく連続するので、水流が円滑に流れて抵抗が少なくなる。
【0031】
また、プロペラの先端円より上側の水流が主に流入するラダーホーンにおいては、船底の影響で、この部位の水流は、舵上方部分の前側部分よりも回転方向の流速が遅くなっている場合が多いので、この部分の水流の方向に適合させて、ラダーホーンの捩じり角度を舵上方部分の前側部分より小さく形成したり、上方に行くにつれて小さくして形成したりすることが好ましい。
【0032】
また、上側水流整流板と組み合わせる場合は、舵板に対するラダーホーンの形状及び配置にもよるが、この上側水流整流板は、舵板でなく、ラダーホーンに設けられる場合もある。
【0033】
上記の船舶用舵において、前記舵板の上下方向に関して、前記舵板の前端とプロペラ軸心の延長線との交点からプロペラ直径の10%下の位置と10%上の位置との間の第2上下範囲に、右舷側フィンと左舷側フィンを設け、プロペラ軸の方向から見て、プロペラ軸心を中心する同心円で、プロペラ直径の15%の直径の円を第1円とし、プロペラ直径の22%の第2円とし、プロペラ直径の30%の直径の円を第3円とした場合に、プロペラが船体後方から見て時計回りのときにおいては、前記右舷側フィンを、その先端が前記第2円と前記第3円との間に入り、その前端が上がる5度以上でかつ10度以下の範囲の角度を有して形成し、前記左舷側フィンを、その先端が前記第1円と前記第2円との間に入り、その前端が上がる0度以上でかつ5度以下の範囲の角度を有して形成し、プロペラが船体後方から見て反時計回りのときにおいては、前記右舷側フィンを、その先端が前記第1円と前記第2円との間に入り、その前端が上がる0度以上でかつ5度以下の範囲の角度を有して形成し、前記左舷側フィンを、その先端が前記第2円と前記第3円との間に入り、その前端が上がる5度以上でかつ10度以下の範囲の角度を有して形成していると、次のような効果を得ることができる。
【0034】
この構成によれば、右舷側フィンと左舷側フィンの幅方向の長さを短くして、右舷側フィンと左舷側フィンの揚力による推進力の発生をある程度確保しつつも、これらの右舷側フィンと左舷側フィンによる抵抗増加を抑制でき、推進力の発生と抵抗増加とのバランスを適切なバランスにすることができる。また、船尾ビルジ渦とプロペラの回転流の干渉がプロペラ中央部に有り、右舷側フィンに比べて左舷側フィンの舵板の幅方向の長さを短くすることで有効に揚力を得て、推進力の発生を促すことができる。
【0035】
また、リアクション舵に適用した場合には、これらの右舷側フィンと左舷側フィンにより、プロペラ後流を舵上方部分への流れと舵下方部分への流れに切り分けて流すことができるようになるので、リアクション舵としての推力をより効率よく得られるようになる。
【0036】
上記の船舶用舵において、前記舵板のプロペラボスの後方部位にラダーバルブを設け、前記ラダーバルブの前部を平坦に形成すると共に、前記ラダーバルブの前方の外周の形状を、前記プロペラボスの直径の105%の直径を持つ内包円筒と、前記プロペラボスの直径の120%の直径を持つ外包円筒との間に収まる大きさに形成する。
【0037】
この構成によれば、比較的小さな径のラダーバルブにより、プロペラボスからの水流を整流しながら舵面に導くことができる。ボス径より大きい前部の平坦面の角にはハブ渦を消滅させる効果があり、プロペラ効率を向上させることができる。これにより、ハブ渦の発生を抑制しつつ、舵板における抵抗を減少できる。
【0038】
特に、ラダーバルブの前部の平坦面に対して、プロペラボスの後部を平坦面で形成し、互いの平坦面を対向させた構成では、プロペラボスとラダーバルブの間の距離を狭くして、この空間でハブ渦が発生することをより効果的に抑制できるので、船体全体としての抵抗を少なくすることができる。
【0039】
また、リアクション舵を採用している場合には、舵下方部分の前側部分と舵上方部分の前側部分とが接する水平断面において、舵板の形状の段差部が生じるが、この段差部をラダーバルブで覆うことができるので、この段差部で渦流が発生するのを回避でき、プロペラ後流の流れをラダーバルブの表面を経由してその後方の舵面に円滑に流すことができ、舵の抵抗を小さくすることができる。
【0040】
それらの効果と共に、ラダーバルブと右舷側フィンと左舷側フィン、下端渦流整流板、上側水流整流板、リアクション舵がプロペラの旋回流を回収し、推進力に変える相乗効果を生むことができる。
【0041】
上記のような目的を達成するための本発明の船舶は、上記の船舶用舵を備えていることを特徴とし、上記の船舶用舵の作用効果と同じ作用効果を発揮できる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の船舶用舵及び船舶によれば、舵を切って舵角を取ったときの舵力を比較的大きくできると共に、船舶の直進時における抵抗が小さく、プロペラの回転流を回収して推進力を得て、省エネルギーを図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に係る船舶用舵及び船舶について、図面を参照しながら説明する。なお、舵角をゼロとしたときの、船舶用舵及び船舶の前後方向をX方向(前方向がプラス)とし、左右方向をY方向(左舷方向がプラス)とし、上下方向をZ方向(上方向がプラス)とする。また、図面は模式的に示すもので、図面における寸法の比率は必ずしも実機とは同じでは無い。また、本発明の説明用の図であるため、必ずしも、全ての図面相互間で、寸法や寸法比等に整合性を維持できているとは限らない。
【0045】
本発明に係る第1の実施の形態の船舶用舵10は、
図1〜
図18に示すように、可動部の舵板11と非可動部のラダーホーン12とからなるマリナー型である。この船舶用舵10は、舵板11に下端渦流制御板21、上側水流制御板22、ラダーバルブ24、右舷側フィン25、及び、左舷側フィン26を設けて構成されている。
【0046】
この下端渦流制御板21は、
図9及び
図10に示すように、船舶用舵10の舵板11の舵下端面Sdに設けられている。この舵下端面Sdにおける長手方向Xに関して、舵下端面Sdにおける舵板11のコード長を下端舵長さLdとする。また、舵下端面Sdの前端11dfの後方の下端舵長さLdの5%以上でかつ15%以下の範囲、より好ましくは、7%以上でかつ10%以下の範囲を下端第1領域Rd1とする。さらに、舵下端面Sdの最後端11daの前方の下端舵長さLdの5%以上でかつ50%以下の範囲、より好ましくは、30%以上でかつ45%以下の範囲を下端第2領域Rd2とする。
【0047】
そして、この下端渦流制御板21は、その前端21fを下端第1領域Rd1内に配置するとともに、その後端21aを下端第2領域Rd2内に配置して構成される。
【0048】
さらに、
図10に示すように、舵下端面Sdにおける幅方向Yに関しては、下端渦流制御板21の長手方向Xの少なくとも80%以上かつ90%以下において、下端渦流制御板21の幅(張り出し量)Bdb(x)を、その前後位置xの舵下端面Sdにおける舵幅Bd(x)の5%以上でかつ30%以下、より好ましくは10%以上でかつ20%以下にして形成されている。つまり、「0.05×Bd(x)≦Bdb(x)≦0.30×Bd(x)」、より好ましくは「0.10×Bd(x)≦Bdb(x)≦0.20×Bd(x)」とする。なお、この下端渦流制御板21の長手方向Xの少なくとも80%以上かつ90%以下とするのは、下端渦流制御板21の前側と後側において徐々に幅が狭くなる形状では、「0.05×Bd(x)≦Bdb(x)」又は「0.10×Bd(x)≦Bdb(x)」を維持できなくなるので、これらの形状も含めるためである。
【0049】
この船舶用舵10の舵板11の舵下端面Sdに設けられている部材としては、従来技術のシリング・ラダーにおいて、舵が切られて、舵角が大きくなっても、プロペラ後流が舵板11の外方に逸流しないようにして舵面に誘導するための、幅広の板で形成されている底端板がある。この底端板は、舵板11の舵上端面に設ける頂端板と協働して、大きな舵角でも舵力を発揮させている。
【0050】
一方、この下端渦流制御板21は、この底端板に比べて長さも短く、幅も狭い形状をしており、その機能も、舵板の下端部分で発生する翼端渦の発生を制御することを目的とし、下端渦流制御板21の大きさが底端板に比べて小さく、直進時も舵を取った時も、舵全体として抵抗を比較的小さくしたままで、舵力を向上することができる。
【0051】
この下端渦流制御板21は、舵板11の下端から流出する翼端渦の発生の制御を目的としているため、舵板11よりも前後方向に関してはみ出ることなく、舵板11の前端11dfよりも後側の部位から、最後端11daよりも前側の部位までの間に設けられる。また、下端渦流制御板21の上下方向Zから見た平面の外形は、舵板11の翼形状の外周に沿って膨らんだ翼形に形成されている。
【0052】
この下端渦流制御板21における、比較的簡単に設計するための平面形状としては、下端渦流制御板21の長手方向Xの少なくとも80%以上かつ90%以下において、F1を0.05以上で0.30以下、より好ましくは0.10以上で0.20以下の間の一定の値として、Bdb(x)=F1×Bd(x)とする形状を選択し、前側と後側のBdb(x)をそれぞれゼロに漸近させていく形状がある。
【0053】
なお、「Bdb(x)<0.05×Bd(x)」となると、翼端渦の整流効果が小さくなり、また、0.30×Bd(x)<Bdb(x)」となると、舵板11の抵抗が大きくなり、翼端渦の整流効果と抵抗増加とのバランスが悪くなる。さらに、「0.10×Bd(x)≦Bdb(x)≦0.20×Bd(x)」とすると、翼端渦の整流効果と抵抗増加とのバランスを良い状態とすることができる。
【0054】
なお、この下端渦流制御板21に関しての長手方向Xに関しての配置位置、長さと幅Bdb(x)等は、右舷側と左舷側とで必ずしも同じである必要はない。これらの下端渦流制御板21の配置位置や長さや幅は実験的に求めることができる。
【0055】
そして、上側水流制御板22は、
図9及び
図11に示すように、舵板11の上下方向Zに関して、舵板11の前端11fとプロペラ軸心Pcの延長線Lcpとの交点P1の上方のプロペラ直径Dpの40%以上で60%以下、より好ましくは45%以上で50%以下の第1上下範囲Rz1に設けられている。これらの範囲を外れるとプロペラ先端渦の流出範囲から外れてしまい、上側水流制御板22による圧力分離効果が小さくなり、上側水流制御板22による抵抗増加のデメリットが大きくなってしまう。
【0056】
そして、上側水流制御板22と舵板11とが交差する前端22hfを含む上側水平断面Shにおいて、上側水流制御板22を上側水平断面Shに上下方向Zから投影したときに、上側水平断面Shにおける長手方向Xに関して、上側水平断面Shにおける舵板11のコード長を上側舵長さLhとする。
【0057】
また、
上側水平断面Shにおける舵板11の前端11fの後方の上側舵長さLhの3%以上でかつ15%以下、より好ましくは5%以上かつ8%以下の範囲を上側第1領域Rh1とし、上側水平断面Shにおける舵板11の前端11fの後方の上側舵長さLhの25%以上でかつ45%以下、より好ましくは30%以上でかつ40%以下の範囲を上側第2領域Rh2とする。
【0058】
また、上側水流制御板22の前端22hfを上側第1領域Rh1内に配置するとともに、上側水流制御板22の後端22aの投影位置22apを、上側第2領域Rh2内に配置する。なお、この第1の実施の形態の船舶用舵10においては、上側水流制御板22を水平に設けており、上側水流制御板22の後端22aと後端22aの投影位置22apは一致している。しかしながら、必ずしも水平に設ける必要は無く、水平面に対して前後方向Xである程度傾斜していてもよい。
【0059】
さらに、
図11に示すように、上側水平断面Shにおける幅方向Yに関しては、上側水流制御板22の長手方向Xの少なくとも80%以上かつ90%以下において、上側水平断面Shにおける上側水流制御板22の投影幅(張り出し量)Bhb(x)を、その前後位置の上側水平断面Shにおける舵幅Bh(x)の3%以上でかつ20%以下、より好ましくは10%以上でかつ15%以下にして、上側水流制御板22を形成して構成している。つまり、「0.03×Bh(x)≦Bhb(x)≦0.20×Bh(x)」、より好ましくは「0.10×Bh(x)≦Bhb(x)≦0.15×Bh(x)」とする。
【0060】
この船舶用舵10の舵板11の舵上端側に設けられている部材としては、従来技術のシリング・ラダーにおいて、舵が切られて、舵角が大きくなっても、プロペラ後流が舵板11の外方に逸流しないようにして舵面に誘導するための、幅広の板で形成されている頂端板がある。この頂端板は、舵板11の舵下端面に設ける底端板と協働して、大きな舵角でも舵力を発揮させている。
【0061】
一方、この上側水流制御板22は、この頂端板に比べて長さも短く、幅も狭い形状をしており、その機能も、プロペラ2の先端で発生する先端渦を整流することと、この上側水流制御板22の上と下における圧力分離を行うことを目的とし、上側水流制御板22の大きさが頂端板に比べて著しく小さく、直進時も舵を取った時も、舵全体として抵抗を比較的小さくしたままで、舵力を向上することができる。
【0062】
この上側水流制御板22は、舵板11よりも前方向にはみ出ることなく、舵板11の前側半分程度の範囲に配設される。また、上側水流制御板22の平面の外形は、舵板11の翼形状の外周に沿って膨らんだ翼形状に形成されている。
【0063】
この上側水流制御板22における、比較的簡単に設計するための平面形状としては、上側水流制御板22の長手方向Xの少なくとも80%以上かつ90%以下において、F2を0.03以上0.20以下、より好ましくは0.10以上0.15以下の間の一定の値として、Bhb(x)=F2×Bh(x)とする形状を選択し、前側と後側のBhb(x)をそれぞれゼロに漸近させていく形状がある。
【0064】
なお、「Bhb(x)<0.03×Bh(x)」となると、先端渦に対する整流効果が小さくなり、また、0.20×Bd(x)<Bdb(x)」となると、上側水流制御板22の抵抗が大きくなり、先端渦の整流効果と抵抗増加とのバランスが悪くなる。そして、「0.10×Bh(x)≦Bhb(x)≦0.15×Bh(x)」とすると、整流効果と抵抗増加とのバランスを良い状態とすることができる。
【0065】
なお、この上側水流制御板22に関しての長手方向Xに関しての配置位置、長さと幅Bhb(x)等は、右舷側と左舷側とで必ずしも同じである必要はない。これらの上側水流制御板22の配置位置や長さや幅は実験的に求めることができる。
【0066】
次に舵板11について説明する。この舵板11は次のような形状で形成されている。まず、舵板11の上下方向Zに関しては、
図12に示すように、舵板11の
前端11fとプロペラ軸心Pcの延長線Lcpとの交点P1より上の舵上方部分11aの前側部分(ハッチイング部分)11afと、この交点P1よりも下の舵下方部分11bの前側部分(ハッチイング部分)11bfとを、互いに反対方向に捩じったリアクション舵として形成されている。
【0067】
この実施の形態の船舶用舵10では、舵板11の水平断面形状の一例として、前縁部が半円形で、これに連続する中間部分が前後方向の後方(マイナスX方向)に向って流線形状で断面幅を徐々に増大して最大幅に達し、その後に徐々に断面幅を減じて最小幅に達し、その後に舵板11の後縁11aに至る比較的短い区間にわたって断面幅を徐々に増大する形状、いわゆる魚尾後縁部を持つ形状を図示しているが、本発明では、必ずしも、この形状に限定する必要はない。
【0068】
そして、舵板11の上下方向Zの高さzの位置の各水平断面S(z)における舵板11の前後方向xに関して、その水平断面S(z)における舵の前端11f(z)から後方の、その水平断面S(z)における舵長さL(z)の30%以上でかつ50%以下の範囲、より好ましくは35%以上でかつ45%以下の範囲を中央第1領域Rm1(z)とする。また、捩じり部分11af、11bfの前端を舵板11の前端11f(z)とするとともに、捩じり部分11af、11bfの後端11m(z)を中央第1領域Rm1(z)内に配置する。
【0069】
また、
図13に示すように、舵上方部分11aの前側部分11afと舵下方部分11bの前側部分11bfの捩じりに関しては、次のように構成する。プロペラ2が船体後方から見て時計回りのときにおいては、舵上方部分11aの前側部分11afを左舷側に5度(degree)以上20度以下の範囲(角度α)で捩じって形成するとともに、舵下方部分11bの前側部分11bfを右舷側に5度以上20度以下の範囲(角度β)で捩じって形成する。なお、
図13等の図面では捩じり角度α、βを分かり易くするために、実際よりも大きくして図示している。
【0070】
一方、プロペラ2が船体後方から見て反時計回りのときにおいては、図示しないが、舵上方部分11aの前側部分11afを
図13とは反対側の右舷側に5度以上20度以下の範囲で捩じって形成するとともに、舵下方部分11bの前側部分11bfを
図13とは反対側の左舷側に5度以上20度以下の範囲で捩じって形成する。
【0071】
この舵上方部分11aの前側部分11afと舵下方部分11bの前側部分11bfを捩じる構成によれば、リアクション舵としての舵板11の捩じりによる舵の揚力効果を得ることができる。また、この構成と下端渦流制御板21又は/及び上流水流制御板22との組み合わせにより、これらの下端渦流制御板21又は/及び上流水流制御板22により、シリング・ラダーの底端板や頂端板で得られる「プロペラ後流の舵面への誘導効果」も得ることができる。そのため、上記の下端渦流制御板21又は/及び上流水流制御板22の効果をこのリアクション舵の構成との組み合わせにより、より大きくすることができる。
【0072】
そして、舵板11をこの第1の実施の形態の船舶用舵10のようにラダーホーン12で支持している場合は、従来技術同じようにこのラダーホーン12を捩じることなく、左右面対称に形成してもよいが、
図7に示す船舶用舵10のように、プロペラ2により回転速度を伴うようになったプロペラ後流をより効率よく利用して少しでもラダーホーン12の揚力による推進力を得るために、このラダーホーン12を、
図7に示すように、舵上方部分11aの前側部分11afと同じ方向に捩じって形成する。
【0073】
なお、ラダーホーン12の捩じり角の大きさに関しては、舵上方部分11aの前側部分11afと同じ大きさにして形成すると、ラダーホーン12の形状と舵上方部分11aの前側部分11afの形状とが上下方向Zに段差なく連続するので、水流が円滑に流れて抵抗が少なくなる。
【0074】
また、プロペラ2の先端円Cpの上側の水流が主に流入するラダーホーン12においては、船底の影響で、この部位の水流の方向は、舵上方部分11aの前側部分11afの平均的な水流の方向と異なっている場合もあるので、この部分の水流の方向に適合させて、ラダーホーンの捩じり角度を設定することがより好ましい。
【0075】
また、上側水流整流板22と組み合わせる場合は、舵板11に対するラダーホーン12の形状及び配置にもよるが、この上側水流整流板22は、舵板11でなく、ラダーホーン12に設けられる場合もある。
【0076】
次に、ラダーバルブ24について説明する。この舵板11においては、ラダーバルブ24を舵板11のプロペラボス2bの後方部位に設けている。このラダーバルブ24の前部24fは平坦に形成されている。つまり、ラダーバルブ24の前端はプロペラ軸心Pcの延長線Lcpに垂直な平面となっている。
【0077】
それと共に、後述する右舷側フィン25と左舷側フィン26を設ける場合は、
図14に示すように、ラダーバルブ24の前方の外周24cの形状を、プロペラボス2bの直径Dbの105%の直径Dc1を持つ内包円筒C1と、プロペラボス2bの直径Dbの120%の直径Dc2を持つ外包円筒C2との間に収まる大きさに形成する。
【0078】
一方、ラダーバルブ24の後方の形状は、舵板11の前端11fの辺りから徐々に径が小さくなる回転楕円体等の回転体の形状に形成され、舵板11の舵面と交差している。舵板の前後方向Xに関して、このラダーバルブ24の最後端(舵板11との交点)の位置は、上側水流制御板22の後端22aと略同じ位置とする。
【0079】
この比較的小さな径のラダーバルブ24により、プロペラボス2bからの水流を整流しながら舵面に導くことができ、ハブ渦の発生を抑制しつつ、舵板11における抵抗を減少できる。また、ボス径より大きい前部24fの平坦面の角にはハブ渦を消滅させる効果が有り、プロペラ効率を向上させることができる。特に、ラダーバルブ24の前部24fの平坦面に対して、プロペラボス2bの後部を平坦面で形成し、互いの平坦面を対向させた構成では、プロペラボス2bとラダーバルブ24の間の距離を狭くすることができ、この平坦面の間の空間でハブ渦が発生することをより効果的に抑制できるので、船体全体としての抵抗を少なくすることができる。
【0080】
また、このようにリアクション舵を採用している場合には、舵上方部分11aの前側部分11afと舵下方部分11bの前側部分11bfとが接する水平断面において、舵板11の形状の段差部が生じるが、この段差部をラダーバルブ24で覆うことができるので、この段差部で渦流が発生するのを回避でき、プロペラ後流の流れをラダーバルブ24の表面を経由してその後方の舵面に円滑に流すことができ、舵の抵抗を小さくすることができる。そして、舵板11の舵上方部分11aと舵下方部分11bとの圧力差が有る部分を分離することで、舵上方部分11aと舵下方部分11bで異なる方向から流入する水流(プロペラの回転による)により生じる圧力差を有効に使い、揚力を発生し、結果的に推進力を引き出すことができる。また、ラダーバルブ24自体が比較的小さいので、舵全体としての抵抗増加を抑制でき、舵全体の抵抗を小さくすることができる。
【0081】
次に、右舷側フィン25と左舷側フィン26について説明する。
図15及び
図16に示すように、これらの右舷側フィン25と左舷側フィン26は、ラダーバルブ24からそれぞれ右舷側と左舷側に略水平方向に延びて設けられている。より詳細には、舵板11の上下方向Zに関して、舵板11の前端11fとプロペラ軸心Pcの延長線Lcpとの交点P1からプロペラ直径Dpの10%下の位置と10%上、より好ましくは5%下の位置と5%上の位置との間の第2上下範囲Rz2に、右舷側フィン25と左舷側フィン26が設けられている。これらの範囲を外れると、プロペラ後流における流れの方向がフィン根元部とフィン先端部とで変化してしまい、右舷側フィン25と左舷側フィン26の揚力による推進力の発生効果が小さくなり、右舷側フィン25と左舷側フィン26による抵抗増加のデメリットが大きくなってしまう。
【0082】
そして、
図15〜
図18に示すように、舵板11の長手方向Xに関して、右舷側フィン25と左舷側フィン26の設置位置の設置水平断面Sfにおける舵板11のコード長を設置舵長さLfとする。また、設置水平断面Sfの前端11fの後方の設置舵長さLfの0%以上でかつ60%以下の範囲を設置第1領域Rf1とする。そして、この設置第1領域Rf1内に右舷側フィン25と左舷側フィン26が配置される。
【0083】
また、
図18に示すように、プロペラ軸の方向Xから見て、プロペラ軸心Pcを中心するプロペラ直径Dpの15%の直径Dt1の円を第1円Ct1とし、プロペラ軸心Pcを中心するプロペラ直径Dpの22%の直径Dt2の第2円Ct2とし、プロペラ軸心Pcを中心するプロペラ直径Dpの30%の直径Dt3の円を第3円Ct3とする。
【0084】
そして、プロペラ2が船体後方から見て時計回りのときにおいては、
図17及び
図18に示すように、右舷側フィン25と左舷側フィン26は、次のように構成される。つまり、
図18に示すように、右舷側フィン25の先端25tが、第2円Ct2と第3円Ct3との間に入るように右舷側フィン25を形成する。また、左舷側フィン26の先端26tが、第1円Ct1と第2円Ct2との間に入るように左舷側フィン26を形成する。さらに、右舷側フィン25の幅方向長さを左舷側フィン26の幅方向長さよりも長く形成する。また、右舷側フィン25を、その前端25fが上がる5度以上でかつ10度以下の範囲の角度(迎角)γを有して形成する。また、左舷側フィン26を、その前端26fが上がる0度以上でかつ5度以下の範囲の角度(迎角)δを有して形成する。
【0085】
また、
図17に示すように、この右舷側フィン25は船舶用舵10の上下方向Zから見て、前端25fがプロペラ軸心Pcの延長線Lcpに対して70度〜90度の傾斜角(例えば80度)で延びており、先端25tがプロペラ軸心Pcの延長線Lcpに略平行になり、後端25aがプロペラ軸心Pcの延長線Lcpに対して40度〜70度の傾斜角(例えば、55度)を持つ台形形状に形成されている。
【0086】
また、左舷側フィン26も同様に、船舶用舵10の上下方向Zから見て、前端26fがプロペラ軸心Pcの延長線Lcpに対して60度〜90度の傾斜角(例えば75度)で延びており、先端26tがプロペラ軸心Pcの延長線Lcpに略平行になり、後端26aがプロペラ軸心Pcの延長線Lcpに対して40度〜70度の傾斜角(例えば、45度)を持つ台形形状に形成されている。
【0087】
そして、プロペラ2が船体後方から見て反時計回りのときにおいては、図示しないが、右舷側フィン25と左舷側フィン26は、次のように構成される。
【0088】
右舷側フィン25の先端25tが、第1円Ct1と第2円Ct2との間に入るように右舷側フィン25を形成する。また、左舷側フィン26の先端26tが、第2円Ct2と第3円Ct3との間に入るように左舷側フィン26を形成する。さらに、右舷側フィン25の幅方向長さを左舷側フィン26の幅方向長さよりも短く形成する。また、右舷側フィン25を、その前端25fが上がる0度以上でかつ5度以下の範囲の角度(迎角)γを有して形成する。また、左舷側フィン26を、その前端26fが上がる5度以上でかつ10度以下の範囲の角度(迎角)δを有して形成する。
【0089】
なお、この場合の右舷側フィン25は、船舶用舵10の上下方向Zから見て、前端25fがプロペラ軸心Pcの延長線Lcpに対して60度〜90度の傾斜角(例えば75度)で延びており、先端25tがプロペラ軸心Pcの延長線Lcpに略平行になり、後端25aがプロペラ軸心Pcの延長線Lcpに対して40度〜70度の傾斜角(例えば、45度)を持つ台形形状に形成される。
【0090】
また、左舷側フィン26は、船舶用舵10の上下方向Zから見て、前端26fがプロペラ軸心Pcの延長線Lcpに対して70度〜90度の傾斜角(例えば80度)で延びており、先端26tがプロペラ軸心Pcの延長線Lcpに略平行になり、後端26aがプロペラ軸心Pcの延長線Lcpに対して40度〜70度の傾斜角(例えば、55度)を持つ台形形状に形成される。
【0091】
この構成によれば、右舷側フィン25と左舷側フィン26の幅方向Yの長さを短くして、右舷側フィン25と左舷側フィン26の揚力による推進力の発生をある程度確保しつつも、これらの右舷側フィン25と左舷側フィン26による抵抗増加を抑制でき、推進力の発生と抵抗増加とのバランスを適切なバランスにすることができる。
【0092】
また、リアクション舵に適用した場合には、これらの右舷側フィン25と左舷側フィン26により、プロペラ後流を舵上方部分11aへの流れと舵下方部分11bへの流れに切り分けて流すことができるようになるので、リアクション舵としての推力をより効率よく得られるようになる。
【0093】
本発明に係る第2の実施の形態の船舶用舵10Aは、
図19〜
図25に示すように、舵板11を支柱13で支持する吊舵である。
【0094】
この第2の実施の形態の船舶用舵10Aでは、舵板11が支柱13で支持されているため、舵板11の上側に舵上端面Suが形成されている。この舵板11の舵上端面Suに上端渦流制御板23を設けていて、上側水流制御板22が設けられていない点が、第1の実施の形態の船舶用舵10の構成と異なるだけであり、他の構成は同じである。また、この上端渦流制御板23は、下端渦流制御板21と同じ考え方で設けられている。
【0095】
この上端渦流制御板23は、
図19及び
図20に示すように、船舶用舵10Aの舵板11の舵上端面Suに設けられている。この舵上端面Suにおける長手方向Xに関して、舵上端面Suにおける舵板11のコード長を上端舵長さLuとする。また、舵上端面Suの前端11fの後方の上端舵長さLuの5%以上でかつ15%以下、より好ましくは、5%以上でかつ10%以下の範囲の範囲を上端第1領域Ru1とする。さらに、舵上端面Suの最後端11uaの前方の上端舵長さLuの5%以上でかつ50%以下、より好ましくは、30%以上でかつ45%以下の範囲を上端第2領域Ru2とする。
【0096】
そして、この上端渦流制御板23は、その前端23fを上端第1領域Ru1内に配置するとともに、その後端23aを上端第2領域Ru2内に配置して構成される。
【0097】
さらに、
図20に示すように、舵上端面Suにおける幅方向Yに関しては、下端渦流制御板21の長手方向Xの少なくとも80%以上かつ90%以下において、上端渦流制御板23の幅(張り出し量)Bub(x)を、その前後位置xの舵上端面Suにおける舵幅Bu(x)の5%以上でかつ30%以下、より好ましくは10%以上でかつ20%以下にして形成されている。つまり、「0.05×Bu(x)≦Bub(X)≦0.30×Bu(x)」、より好ましくは「0.10×Bd(x)≦Bdb(x)≦0.20×Bd(x)」とする。なお、この下端渦流制御板21の長手方向Xの少なくとも80%以上かつ90%以下とするのは、下端渦流制御板21の前側と後側において徐々に幅が狭くなる形状では、「0.05×Bd(x)≦Bdb(x)」又は「0.10×Bd(x)≦Bdb(x)」を維持できなくなるので、これらの形状も含めるためである。
【0098】
この船舶用舵10の舵板11の舵上端面Suに設けられている部材としては、従来技術のシリング・ラダーにおいて、舵が切られて、舵角が大きくなっても、プロペラ後流が舵板11の外方に逸流しないようにして舵面に誘導するための、幅広の板で形成されている頂端板がある。この頂端板は、舵板11の舵下端面に設ける底端板と協働して、大きな舵角でも舵力を発揮させている。
【0099】
一方、この上端渦流制御板23は、この頂端板に比べて長さも短く、幅も狭い形状をしており、その機能も、舵板の上端部分で発生する翼端渦の発生を制御することを目的とし、上端渦流制御板23の大きさが頂端板に比べて小さく、直進時も舵を取った時も、舵全体として抵抗を比較的小さくしたままで、舵力を向上することができる。
【0100】
この上端渦流制御板23は、舵板11の上端から流出する翼端渦の発生の制御を目的としているため、舵板11よりも前後方向に関してはみ出ることなく、舵板11の前端11fよりも後側の部位から、最後端11uaよりも前側の部位までの間に設けられる。また、上端渦流制御板23の上下方向Zから見た平面の外形は、舵板11の翼形状の外周に沿って膨らんだ翼形に形成されている。
【0101】
この上端渦流制御板23における、比較的簡単に設計するための平面形状としては、上端渦流制御板23の長手方向Xの少なくとも80%以上かつ90%以下において、F3を0.05以上で0.30以下、より好ましくは0.10以上で0.20以下の間の一定の値として、Bub(x)=F3×Bu(x)とする形状を選択し、前側と後側のBub(x)をそれぞれゼロに漸近させていく形状がある。
【0102】
なお、「Bub(x)<0.05×Bu(x)」となると、翼端渦の整流効果が小さくなり、また、0.30×Bu(x)<Bub(x)」となると、舵板11の抵抗が大きくなり、翼端渦の整流効果と抵抗増加とのバランスが悪くなる。さらに、「0.10×Bu(x)≦Bub(x)≦0.20×Bu(x)」とすると、翼端渦の整流効果と抵抗増加とのバランスを良い状態とすることができる。
【0103】
なお、この上端渦流制御板23に関しての長手方向Xに関しての配置位置、長さと幅Bub(x)等は、右舷側と左舷側とで必ずしも同じである必要はない。これらの上端渦流制御板23の配置位置や長さや幅は実験的に求めることができる。
【0104】
上記の本発明の第1及び第2の実施の形態の船舶用舵10、10Aでは、上記の下端渦流制御板21、上側水流制御板22又は上端渦流制御板23、ラダーバルブ24、右舷側フィン25、及び、左舷側フィン26の全てを設けて構成されている。
【0105】
しかし、これらの構成の内のいずれか1つ又は、幾つかの組み合わせで構成してもよい。なお、ラダーバルブ24を設けずに、右舷側フィン25、又は/及び、左舷側フィン26を設ける場合は、舵板11に直接設けることになる。
【0106】
これらの構成の内のいずれか1つであっても上記したような効果を発揮でき、また、2つ以上の効果的な組み合わせ、例えば、下端渦流制御板21と、上側水流制御板22又は上端渦流制御板23の組み合わせや、ラダーバルブ24と、右舷側フィン25又は左舷側フィン26との組み合わせによっても、それぞれの効果を発揮できる。
【0107】
そして、本発明の実施の形態の船舶は、上記の船舶用舵10、10A及び上記の下端渦流制御板21、上側水流制御板22又は上端渦流制御板23、ラダーバルブ24、右舷側フィン25、及び、左舷側フィン26のいずれか1つ又はいくつかの組み合わせの構成を有する船舶用舵を備えて構成される。
【0108】
上記の構成の船舶用舵10、10A、及び、上記の下端渦流制御板21、上側水流制御板22又は上端渦流制御板23、ラダーバルブ24、右舷側フィン25、及び、左舷側フィン26のいずれか1つ又はいくつかの組み合わせの構成を有する船舶用舵、並びに、船舶1、1Aによれば、舵を切って舵角を取ったときの舵力を比較的大きくできると共に、船舶の直進時における抵抗が小さく、省エネルギーを図ることができる。
【0109】
特に、下端渦流制御板21、上側水流制御板22又は上端渦流制御板23を舵板11の前縁11fより後退して設置することで、抵抗の著しい増加を防ぐことができる一方で、推力の増加は後退していない場合と同程度に得ることができる。同様に下端渦流制御板21、上側水流制御板22又は上端渦流制御板23を舵板11の後縁11aより前進させて設けることで、抵抗の増加を防ぎ、推力の増加はそのまま得ることができる。