(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に基づく実施の形態1における昇降装置の使用例の説明図である。
【
図2】本発明に基づく実施の形態1における昇降装置の側面図である。
【
図3】本発明に基づく実施の形態1における昇降装置の正面図である。
【
図4】本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置の回転部材近傍部分の正面図である。
【
図5】本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置の回転部材近傍部分の側面図である。
【
図6】本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置の上昇運転時の様子の説明図である。
【
図7】本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置の下降運転時の様子の説明図である。
【
図8】本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置の爪部材が係合部に係合した状態の説明図である。
【
図9】本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置の第1の変形例の回転部材近傍部分の正面図である。
【
図10】本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置の第1の変形例の爪部材が係合部に係合した状態の説明図である。
【
図11】本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置の第2の変形例の回転部材近傍部分の正面図である。
【
図12】本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置の第2の変形例の爪部材が係合部に係合した状態の説明図である。
【
図13】本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置の第3の変形例の回転部材近傍部分の正面図である。
【
図14】本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置の第3の変形例の爪部材が係合部に係合した状態の説明図である。
【
図15】本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置の第4の変形例の回転部材近傍部分の正面図である。
【
図16】本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置の第4の変形例の爪部材が係合部に係合した状態の説明図である。
【
図17】本発明に基づく実施の形態2における速度制御装置の回転部材近傍部分の第1の説明図である。
【
図18】本発明に基づく実施の形態2における速度制御装置の回転部材近傍部分の第2の説明図である。
【
図19】本発明に基づく実施の形態2における速度制御装置の回転部材近傍部分の第3の説明図である。
【
図20】本発明に基づく実施の形態3における速度制御装置の回転部材近傍部分の第1の説明図である。
【
図21】本発明に基づく実施の形態3における速度制御装置の回転部材近傍部分の第2の説明図である。
【
図22】本発明に基づく実施の形態3における速度制御装置の回転部材近傍部分の第3の説明図である。
【
図23】本発明に基づく実施の形態3における速度制御装置の変形例の回転部材近傍部分の第1の説明図である。
【
図24】本発明に基づく実施の形態3における速度制御装置の変形例の回転部材近傍部分の第2の説明図である。
【
図25】本発明に基づく実施の形態3における速度制御装置の変形例の回転部材近傍部分の第3の説明図である。
【
図26】本発明に基づく実施の形態4における速度制御装置の爪第1部材の平面図である。
【
図27】本発明に基づく実施の形態4における速度制御装置の爪第1部材近傍の説明図である。
【
図28】本発明に基づく実施の形態4における速度制御装置の爪第1部材近傍の構造を単純化した第1の説明図である。
【
図29】本発明に基づく実施の形態4における速度制御装置の爪第1部材近傍の構造を単純化した第2の説明図である。
【
図30】本発明に基づく実施の形態4における速度制御装置の回転部材近傍部分の第1の説明図である。
【
図31】本発明に基づく実施の形態4における速度制御装置の回転部材近傍部分の第2の説明図である。
【
図32】本発明に基づく実施の形態4における速度制御装置の回転部材近傍部分の第3の説明図である。
【
図33】本発明に基づく実施の形態4における速度制御装置の回転部材近傍部分の第4の説明図である。
【
図34】本発明に基づく実施の形態4における速度制御装置の回転部材近傍部分の第5の説明図である。
【
図35】本発明に基づく実施の形態4における速度制御装置の回転部材近傍部分の第6の説明図である。
【
図36】本発明に基づく実施の形態5における昇降装置の側面図である。
【
図37】本発明に基づく実施の形態5における昇降装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
(構成)
図1〜
図8を参照して、本発明に基づく実施の形態1における速度制御装置について説明する。
【0016】
高所作業時に用いられる装置の一例を
図1に示す。ゴンドラ800に昇降装置801が接続されている。昇降装置801からはワイヤロープ1が出ている。ゴンドラ800はワイヤロープ1を以て吊り下げられている。ゴンドラ800は作業者が乗るためのものである。ゴンドラ800は作業者の他に荷物も載せるためのものであってもよい。昇降装置801は、他の目的の装置に接続されていてもよい。ここでは、一例としてゴンドラ800に作業者および荷物を載せるものであるとして以下説明を続ける。昇降装置801の働きにより、ワイヤロープ1が巻取りまたは巻戻しされ、ゴンドラ800が上または下に移動する。ここではゴンドラ800の左右両端に昇降装置801が取り付けられているが、ゴンドラ800のどの部分に昇降装置801を取り付けるかは、取付け位置に関しても取付け台数に関しても自由であり、ここで示した位置関係はあくまで一例である。
【0017】
昇降装置801を単独で取り出したところを、
図2に示す。昇降装置801を
図2における左側から見たところを
図3に示す。昇降装置801は、モータ部81と、減速機部82と、ワイヤロープ巻取り部83と、速度制御装置101と、端子箱84とを備える。ここで示す例では、モータ部81の内部に電磁ブレーキが組み付けられている。ただし、モータ部81の内部における電磁ブレーキは必須ではない。ワイヤロープ巻取り部83から上方へはワイヤロープ1が出ている。端子箱84からはケーブル85が延在している。
図2では、説明の便宜のために速度制御装置101の内部構造を示している。速度制御装置101の内部に、駆動軸3と、回転部材4と、外側部材5とが配置されている。駆動軸3は、モータ部81から速度制御装置101の内部まで一体的に延在しているものであってもよい。
【0018】
回転部材4の近傍の各部材を拡大したところを
図4に示す。外側部材5は開口部5aを有する。速度制御装置101の内部の詳細を
図5に示す。外側部材5は部分51と部分52とを含む。部分51の外周を部分52が取り囲んでいる。ここで示す例では、部分52は、部分51より薄くなっている。もっとも、部分52は部分51より薄くても厚くてもよい。
【0019】
速度制御装置101は、駆動軸3の回転に伴って駆動軸3と共に回転する回転部材4と、回転部材4の回転軸の方向から見たときに回転部材4の外側を取り囲むように配置された外側部材5と、回転部材4に固定された支持軸10を中心に回動可能なように支持された爪部材6とを備える。外側部材5は、係合部7を有する。たとえば昇降装置801における上昇の際には回転部材4は第1の向き91に回転し、下降の際には回転部材4は第2の向き92に回転する。
【0020】
係合部7は駆動軸3に向かって突出した形状を含む。係合部7はなだらかな斜面7aと切り立った面7bとを有する。係合部7は、回転部材4が第1の向き91に回転しているときには回転部材4の回転を妨げない。回転部材4が第1の向き91とは反対側の第2の向き92に回転しているときには係合部7は、爪部材6と係合することによって回転部材4の第2の向き92の回転を抑制する。
【0021】
爪部材6は、支持軸10を中心に回動することによって、係合部7に係合しないように内周側に振れた第1状態と、係合部7に係合可能なように外周側に振れた第2状態とをとり得る。爪部材6は、回転部材4が静止している状態においては弾性体8によって前記第1状態になるように付勢されており、爪部材6は、回転部材4の回転によって爪部材6に作用する遠心力が高まることによって弾性体8の付勢力に抗して前記第2状態になるように配置されている。
【0022】
昇降装置801の上昇運転時の様子を
図6に示す。この状態では、回転部材4が第1の向き91に回転している。
図6に示した状態では、爪部材6に作用する遠心力はあまり大きくないので、爪部材6は回転部材4の外周より内側に収まっている。回転速度が速くなって爪部材6に作用する遠心力がさらに大きくなった場合には弾性体8の付勢に打ち勝って爪部材6の先端が回転部材4の外周より外側にはみ出すことはありうるが、その場合も、爪部材6が係合部7の斜面7aに衝突することはあっても斜面7aはなだらかであるので、爪部材6が係合部7に引っ掛かることはなく、回転部材4は引き続き回転することができる。
【0023】
昇降装置801の下降運転時の様子を
図7に示す。この状態では、回転部材4が第2の向き92に回転している。
図7に示した状態では、爪部材6に作用する遠心力はあまり大きくないので、爪部材6は回転部材4の外周より内側に収まっている。これは、爪部材6が係合部7に係合しないように内周側に振れた第1状態に相当する。回転速度が速くなって爪部材6に作用する遠心力がさらに大きくなった場合には、爪部材6は、弾性体8の付勢に打ち勝って支持軸10を中心に回動し、爪部材6の先端が回転部材4の外周より外側にはみ出す。その結果、
図8に示すように、爪部材6が係合部7に引っ掛かる。
図8に示した例では、係合部7の面7bが爪部材6に当接している。これは、爪部材6が係合部7に係合可能なように外周側に振れた第2状態に相当する。爪部材6が係合部7に引っ掛かったこと、すなわち、爪部材6が係合部7に係合したことにより、回転部材4の回転は妨げられる。
【0024】
(作用・効果)
何らかの理由によりゴンドラ800が通常の速度より速く降下または落下した場合、回転部材4が第2の向き92に、通常より速い回転速度で回転することとなる。本実施の形態では、下降の向き、すなわち第2の向き92の回転速度が速くなりすぎた場合には、遠心力で回動する爪部材6が外側部材5の係合部7に係合することによって回転部材4の回転は妨げられるので、下降を停止することができる。この際には、爪部材6と係合部7との幾何学的係合によって停止が行なわれるので、発熱を避けることができる。停止作用は、面同士の摩擦力ではなく幾何学的形状の噛み合わせによって行なわれるので、潤滑油に与える負担を大幅に軽減することができる。本実施の形態における速度制御装置は、発熱を避けることができ、潤滑油の廃棄の頻度を減らすことができる。
【0025】
なお、
図5に示すように、外側部材5は回転部材4と同心状に回転可能であり、外側部材5はブレーキライニング21を備えることが好ましい。ブレーキライニング21は、外側部材5の部分52の両面に形成されている。さらに、速度制御装置101は、ブレーキばね23の力によりブレーキライニング21に対して当接することによって外側部材5の回転を抑制するブレーキ部材22a,22bを備えることが好ましい。この構成では、言い換えれば、外側部材5と、ブレーキばね23と、ブレーキライニング21と、ブレーキ部材22a,22bとによってディスクブレーキが構成されている。この構成を採用することにより、爪部材6が外側部材5の係合部7に係合した際にも、回転部材4の回転は急に完全に止まるのではなく、回転部材4の回転力によって外側部材5が若干は回転することができ、その後で停止する。すなわち、ブレーキライニング21とブレーキ部材22a,22bとの間で生じる摩擦力によって緩やかに回転は停止する。こうすることによって、大きな衝撃を生じさせることなく、衝撃を吸収しながら回転部材4の回転を停止して下降を停止させることができる。外側部材5とブレーキ部材22a,22bとの間の当接面は常時摩擦力が作用しているわけではなく、爪部材6が外側部材5の係合部7に係合した後で回転力が作用してこれに対抗して摩擦力が作用し始めるのみであるので、外側部材5、ブレーキライニング21およびブレーキ部材22a,22bには普段はほとんど負荷がかからない。したがって、発熱、潤滑油に与える負担、摩擦係数の低下を大幅に軽減することができる。ブレーキライニング21の交換の頻度も大幅に減らすことができる。
【0026】
本実施の形態で示したように、係合部7は内周側に向かって突出していることが好ましい。この構成を採用することにより、簡単な構造で係合部7を実現することができる。ここでは、係合部7は、なだらかな斜面7aと切り立った面7bとを有するものとしたが、これはあくまで一例であって、係合部7はこれ以外の形状を備えるものであってもよい。
【0027】
なお、本実施の形態では、1つの速度制御装置101が2つの爪部材6と2つの係合部7とを備える例を示したが、これはあくまで一例であって爪部材6の数および係合部7の数はこれに限らない。たとえば
図9に示すように、速度制御装置は1つの爪部材6と1つの係合部7とを備えるものであってもよい。
図9に示す速度制御装置の場合、回転部材4の第2の向き92の回転がある程度以上速くなったときには、
図10に矢印93で示すように、爪部材6が外側に振れて係合部7に係合し、回転部材4の回転は停止する。このように、1つの爪部材6と1つの係合部7とを備える構成とすることによって、速度制御装置の部品点数を少なくすることができる。
【0028】
爪部材6の数または係合部7の数は、3以上であってもよい。たとえば
図11に示すように、速度制御装置は3つの爪部材6と3つの係合部7とを備えるものであってもよい。
図11に示す速度制御装置の場合、回転部材4の第2の向き92の回転がある程度以上速くなったときには、
図12に矢印93で示すように、爪部材6が外側に振れて係合部7に係合し、回転部材4の回転は停止する。このように、3つの爪部材6と3つの係合部7とを備える構成とすることによって、3ヶ所の係合によって回転を止めることができるので、爪部材6および係合部7の1組当たりにかかる負荷を軽減することができる。
【0029】
爪部材6の数と係合部7の数とは異なっていてもよい。たとえば
図13に示すように、1つの速度制御装置が2つの爪部材6と1つの係合部7とを備えるものであってもよい。
図13に示す速度制御装置の場合、回転部材4の第2の向き92の回転がある程度以上速くなったときには、
図14に矢印93で示すように、複数ある爪部材6が外側に振れる。複数ある爪部材6のうちいずれか1つが係合部7に係合し、回転部材4の回転は停止する。
【0030】
たとえば
図15に示すように、1つの速度制御装置が1つの爪部材6と2つの係合部7とを備えるものであってもよい。
図15に示す速度制御装置の場合、回転部材4の第2の向き92の回転がある程度以上速くなったときには、
図16に矢印93で示すように、爪部材6が外側に振れる。爪部材6が複数ある係合部7のうちいずれか1つに係合し、回転部材4の回転は停止する。
【0031】
図1では、移動するゴンドラに昇降装置を設置した構成のものを例示したが、このような構成に限らず、たとえばゴンドラから離れた建物の屋上などに昇降装置801を設置した構成であってもよい。ゴンドラが使用される場所は、建物に限らず、船舶、タンクなどであってもよい。
【0032】
本実施の形態における昇降装置は、本実施の形態または以下の実施の形態のいずれかで説明する速度制御装置を備える。このような構成の昇降装置とすることにより、発熱を避けることができ、潤滑油の廃棄の頻度を減らすことができる。ブレーキライニングを備える構成の場合には、ブレーキライニングの摩擦係数の低下の影響を軽減することができる。ブレーキライニングの交換の頻度を減らすことができる。場合によっては、ブレーキライニングの交換が不要となることもありうる。
【0033】
(実施の形態2)
(着目した問題点)
実施の形態1で説明したような構成においては、回転部材4の第2の向き92の回転速度が徐々に上がっていったときには、爪部材6の先端と係合部7とが十分には噛み合わない状態で衝突を繰り返す場合がある。そのように衝突を繰り返すことで、爪部材6の先端または係合部7が損傷してしまう場合がある。衝突を繰り返すことにより爪部材6の先端または係合部7が摩耗したり変形したりしてしまうと、爪部材6の先端と係合部7とはますます噛み合いにくくなる。本発明に基づく実施の形態2では、そのような問題を克服することができる速度制御装置について説明する。
【0034】
(構成)
図17〜
図19を参照して、本発明に基づく実施の形態2における速度制御装置について説明する。
【0035】
本実施の形態における速度制御装置は、実施の形態1で説明した速度制御装置に比べて、基本的な構成は共通するが、以下の点で異なる。本実施の形態における速度制御装置では、爪部材6は、支持軸10によって回動可能に支持されている爪第1部材61と、爪第1部材61の支持軸10とは異なる位置に設けられたリンク軸11において爪第1部材61に対して回動可能に支持される爪第2部材62とを含む。回転部材4は案内突起14を備える。爪第2部材62は、案内突起14を収容することで従動リンクをなす案内突起収容部15を有する。弾性体8は、案内突起収容部15と支持軸10とを結ぶ直線距離を短くする向きに付勢するリンク弾性体18を含む。リンク軸11は案内突起収容部15と支持軸10との間に位置する。前記第1状態においては、リンク軸11は、案内突起収容部15と支持軸10とを結ぶ直線12よりも第1の側に位置する。本実施の形態においては、「第1の側」とは、回転部材4の外周側、すなわち駆動軸3から遠い側である。前記第2状態においては、リンク軸11は、直線12の、前記第1の側とは反対側である第2の側に位置する。本実施の形態においては、「第2の側」とは、回転部材4の内周側、すなわち駆動軸3に近い側である。第1状態を
図17に示し、第2状態を
図19に示す。
【0036】
第1状態では、リンク弾性体18の付勢により、爪第1部材61は矢印90に示すように内周側に振れようとする。
図17に示した例では、爪第1部材61はストッパ9に当接している。ストッパ9により、爪第1部材61の先端は一定のところで留まっている。
【0037】
回転部材4の第2の向き92の回転速度が速まっていくと、爪第1部材61に作用する遠心力が大きくなってくる。爪第1部材61は支持軸10を中心に回動可能であるので、爪第1部材61の先端が外周側に振れるように徐々に回動する。
図17に示した第1状態では、リンク軸11は、案内突起収容部15と支持軸10とを結ぶ直線12よりも第1の側すなわち外周側に位置していたが、爪第1部材61の先端が外周側に振れるように回動していくことによって、途中のある時点では
図18に示すようになる。すなわち、リンク軸11は、案内突起収容部15と支持軸10とを結ぶ直線12上に乗る。このとき、リンク軸11は、リンク弾性体18の中心軸に乗る。
図17に示す状態では、リンク弾性体18は、案内突起収容部15と支持軸10とを結ぶ直線距離を短くする向きに付勢しているので、
図17から
図18への爪第1部材61の回動は、リンク弾性体18の付勢に抗しながら進行する。爪第1部材61の回動が進行するには、リンク弾性体18の付勢に打ち勝つ程度の力が必要である。しかし、
図18に示した状態を越えてさらに回転部材4の第2の向き92の回転速度が速まった場合には、
図19に示すようになる。この状態では、リンク軸11は、直線12の、前記第1の側とは反対側である第2の側すなわち内周側にある。この状態においても、リンク弾性体18は案内突起収容部15と支持軸10とを結ぶ直線距離を短くする向きに付勢しているので、この状態では、リンク弾性体18の付勢力はむしろ爪第1部材61の回動を助長する側に働く。爪第1部材61は、リンク弾性体18の付勢力の助けを借りて、矢印93に示すように支持軸10を中心に瞬時に外側に振れ、爪第1部材61の先端は係合部7に係合する。
図19に示すように、係合部7の面7bが爪第1部材61の先端に当接する。
【0038】
図17に示した例では、爪第1部材61には軽量化のために孔27a,27bが設けられている。孔27a,27bは、爪第1部材61の重心位置調整のためのものであってもよい。このように何らかの理由により孔27a,27bが設けられていてもよい。ここでは、孔27a,27bはそれぞれ円形である。孔27a,27bは円形以外の形状であってもよい。
【0039】
(作用・効果)
本実施の形態においても、実施の形態1で説明した効果を得ることができる。さらに本実施の形態では、回転部材4の第2の向き92の回転速度が徐々に上がっていってある一定の水準を超えた時点で、リンク弾性体18は爪部材6の回動を助ける側に作用するようになるので、瞬時に爪部材6が回動し、爪部材6の先端と係合部7との係合が確実に行なえる。係合しない状態で繰り返し衝突する事態を避けることができるので、爪部材6の先端または係合部7の損傷を防止することもできる。
【0040】
実施の形態1,2で示したように、爪部材6および弾性体8は、駆動軸3の延長上を避けるように配置されていることが好ましい。この構成を採用することにより、駆動軸3をさらに延長して他の構成に接続することができる。たとえば駆動軸3の延長上に駆動軸3に作用する電磁ブレーキを配置することができる。
【0041】
(実施の形態3)
(構成)
図20〜
図22を参照して、本発明に基づく実施の形態3における速度制御装置について説明する。爪部材6および弾性体8は、駆動軸3の延長上に配置されていてもよい。本実施の形態では、そのような構成について例示する。
【0042】
図20に示す例では、爪部材6は、爪第1部材61と爪第2部材62とを含んでいる。爪第1部材61は、2つの部材を組み合わせたものである。
図20に示す例では、爪第1部材61に含まれる2つの部材は、2本のネジ13a,13bによって互いに固定されている。ただし、これはあくまで一例であって、爪第1部材61は2つの部材の組合せではなく一体形成された単一部材であってもよい。リンク軸11は、駆動軸3と重なる位置にある。弾性体8はリンク弾性体18を含んでおり、リンク弾性体18は駆動軸3と重なる位置にある。
図20では、第1状態を示す。リンク弾性体18の付勢により、爪第1部材61の先端は矢印90に示すように内周側に振れている。回転部材4が第2の向き92に回転しても爪部材6の全体は回転部材4の外周より内側に収まっているので、爪部材6のいずれの箇所も係合部7に引っ掛かることはなく、回転部材4は回転し続けることができる。
【0043】
回転部材4の第2の向き92の回転速度が上がると、
図21に示すように、リンク軸11がリンク弾性体18の中心軸に乗るようになる。さらに回転速度が上がると、
図22に示すようになり、この状態では、リンク弾性体18は爪部材6の矢印93の向きの回動を助ける側に作用するようになるので、瞬時に爪部材6が回動し、爪部材6の先端と係合部7との係合が確実に行なえる。
【0044】
(作用・効果)
本実施の形態では、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0045】
本実施の形態における速度制御装置の変形例として、
図23に示すような構成も考えられる。この変形例の速度制御装置は、爪部材6の他に爪第3部材63を備える。爪第3部材63は、回転部材4に固定された支持軸19を中心に回動可能なように支持されている。案内突起14は支持軸19に設けられている。爪第2部材62の端に設けられた案内突起収容部15は、支持軸19の案内突起14を収容している。爪第1部材61と爪第3部材63とは、爪リンク部材64a,64bによって接続されている。爪リンク部材64a,64bは、爪第1部材61に対しても爪第3部材63に対しても回動可能となっている。
図23には第1状態を示している。矢印90に示すように、爪第1部材61の先端および爪第3部材63の先端は内周側に振れている。回転部材4の第2の向き92の回転速度が上がると、
図24に示すようにリンク軸11がリンク弾性体18の中心軸に乗るようになる。さらに回転速度が上がると、
図25に示すようになる。
図25では、第2状態となっている。この状態では、リンク弾性体18は爪第1部材61の先端および爪第3部材63の先端が外周側に回動することを助ける側に作用するので、瞬時に爪第1部材61の先端および爪第3部材63の先端が外周側に回動し、爪第1部材61の先端および爪第3部材63の先端と係合部7との係合が確実に行なえる。
【0046】
(実施の形態4)
(着目した問題点)
たとえばゴンドラ用の昇降装置の速度制御装置においては、万一、何らかの要因でゴンドラが通常の速度より速く降下または落下した際には、速度制御装置が作動することによって、ゴンドラの降下を強制的に停止させ、事故を防ぐことが可能となる。このようにゴンドラの降下が強制的にロックされた状態で、何らかの方法で作業者の救出が行なわれる。このような状況においては、異常降下が発生した原因が明確になるまで、速度制御装置によるロックは解除されない。一方、点検整備時や法定検査時においては、速度制御装置が実際に実機を用いて正常に作動するか否かの確認が複数回繰返して行なわれる。その場合に、速度制御装置の動作によりゴンドラの降下を強制的に止めた後、短時間のうちにロック状態を解除する必要が生じる。しかし、その都度、カバーなどを取り外して爪部材などを操作してロック解除を行なうことは実用的でない。ましてや、これまで説明してきたような遠心力を利用して爪部材を係合させるブレーキ構造に加えて駆動軸の延長上にさらに電磁ブレーキが取り付けられた構造の速度制御装置においては、爪部材などを露出させることは困難であるので、分解してロックを解除するという方法は現実的ではない。速度制御装置が作動してロックがかかった状態を分解することなく容易に解除できることが求められる。本発明に基づく実施の形態4では、このような問題を克服することができる速度制御装置について説明する。
【0047】
(構成)
図26〜
図35を参照して、本発明に基づく実施の形態4における速度制御装置について説明する。本実施の形態における速度制御装置は、実施の形態2で説明した速度制御装置に比べて、基本的な構成は共通するが、以下の点で異なる。
【0048】
本実施の形態における速度制御装置に備わる爪第1部材61を取り出したところを
図26に示す。爪第1部材61は、張出部17を備える。
図27に示すように、張出部17は、回転部材4が第1の向き91に回転しているときに係合部7と衝突するように位置付けられている。
【0049】
爪第1部材61近傍の構造を単純化して
図28に示す。爪第1部材61は、部分61aと部分61bとを含む。部分61aと部分61bとは一体化しているので、部分61aと部分61bとがなす角度は不変である。昇降装置が異常に速く下降したことによりロックがかかった状態、すなわち、回転部材4が第2の向き92に一定以上の回転速度で回転した結果として到達する第2状態では、
図28に矢印93で示すように、爪第1部材61の先端は外周側に振れている。この状態で、爪部材6は係合部7に係合して止まっている。リンク弾性体18の付勢力は、爪第1部材61の先端が外周側に振れる向きに作用しているので、外部から操作を加えなければこの第2状態は維持される。本実施の形態では、このように第2状態で安定しているところから、第2状態を解除することが容易にできる。第2状態を解除するためには、ユーザは、昇降装置を上昇運転すればよい。上昇運転することによって、回転部材4は逆に第1の向き91(
図27参照)に回転し始める。回転部材4が第1の向き91に回転し、爪第1部材61の張出部17が係合部7と衝突すると、爪第1部材61は跳ね返って
図29に矢印90に示すように爪第1部材61の先端が内周側に振れる。
図28と
図29とを見比べて明らかなように、リンク弾性体18とリンク軸11との位置関係が入れ替わる。この状態では、リンク弾性体18は、爪第1部材61の先端が内周側に振れる向きに作用する。したがって、爪部材6と係合部7との係合はきわめて迅速に解除される。
【0050】
本実施の形態における速度制御装置の回転部材4および外側部材5の近傍の様子を
図30に示す。
図30では、第2状態を示している。この状態では、係合部7の面7bに第1部材61の先端が当接している。
【0051】
本実施の形態における速度制御装置では、爪部材6は張出部17を備える。張出部17は、回転部材4が前記第2状態にあって第1の向き91に回転しているときに、張出部17が外側部材5に衝突して跳ね返されることで爪部材6を前記第1状態に至らしめるように外周側に向かって張り出して配置されている。より具体的には、張出部17は、外側部材5の係合部7の斜面7aに衝突して跳ね返される。
【0052】
回転部材4が第1の向き91に回転することにより、
図31に示すように、爪第1部材61は係合部7の面7bから離れる。さらに回転部材4が第1の向き91に回転することにより、
図32に示すように、爪第1部材61の張出部17が係合部7の斜面7aに当接する。斜面7aはなだらかであるので、
図33に示すように、爪第1部材61の張出部17は係合部7の突出した部分に乗り上げる。この衝撃で、爪第1部材61に対して矢印90で示す向きの力が作用する。
図34に矢印90で示すように、爪第1部材61の先端は係合部7から離れて内周側に振れる。
図35に示すように、リンク弾性体18によって爪部材6は第1状態で安定し、回転部材4は第1の向き91に回転を続けることができる。
【0053】
(作用・効果)
本実施の形態においても、実施の形態2で説明した効果を得ることができる。さらに本実施の形態における速度制御装置では、第2状態になった後、逆回転させればリンク弾性体18の付勢力によって係合を解除することができる。したがって、昇降装置を上昇させることによって爪部材6と係合部7との係合を容易に迅速に解除することができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、係合部7の斜面7aがなだらかな面である例に基づいて説明したが、ここで示したのはあくまで一例である。係合部7の斜面7aは、なだらかな面以外であってもよい。
【0055】
(実施の形態5)
(構成)
図36〜
図37を参照して、本発明に基づく実施の形態5における昇降装置について説明する。昇降装置802を
図36に示す。昇降装置802を
図36における左側から見たところを
図37に示す。昇降装置802は、モータ部81と、減速機部82と、ワイヤロープ巻取り部83と、速度制御装置101と、電磁ブレーキ部201と、端子箱84とを備える。ここで示す例では、モータ部81には電磁ブレーキが組み付けられていない。ただし、モータ部81に電磁ブレーキが組み付けられた構成であってもよい。ワイヤロープ巻取り部83から上方へはワイヤロープ1が出ている。その他の構成は、実施の形態1で説明したものと同様である。駆動軸3は、モータ部81から速度制御装置101の内部まで一体的に延在しているものであってもよい。
図36に示すように、駆動軸3は、モータ部81から速度制御装置101の内部を貫通してさらに電磁ブレーキ部201の内部にまで一体的に延在しているものであってもよい。速度制御装置101の構成は、実施の形態1,2,4のいずれかで説明したとおりのものであってよい。
【0056】
(作用・効果)
本実施の形態においても、対応する各実施の形態で説明した効果を得ることができる。
【0057】
本実施の形態で示したように電磁ブレーキ部201を組み合わせた場合には、速度制御装置101を分解しにくいので、第2状態になった後に速度制御装置101を分解してロックを解除するということは行ないにくいが、実施の形態4で説明したような構造を採用すれば、速度制御装置101を分解することなく容易にロックを解除することができるので好ましい。
【0058】
なお、上記実施の形態のうち複数を適宜組み合わせて採用してもよい。
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。