(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、手帳やダイアリーのように長期間(例えば、一年間)に亘って製本物を利用する場合には、そのインデックス部に形成した保護膜の安定性が課題となる。即ち、インデックス部の保護膜は、耐油性、耐水性、及び耐蝕性(脆化し難いこと)を有するものであることが望ましい。ところが、その保護機能を高めようとすることによって、保護膜がインデックス部に定着し難くなる。このため、上記従来技術の製本物においては、用紙に対する印刷工程に加え、別途、専用のコーティング機を用いて、そのインデックス部となる部分に保護膜の形成素材を塗布した上で、硬化・乾燥させる工程が付加されている。そして、これが、その製造工程が煩雑化する一因になるとともに、作業環境の改善を図る上での妨げにもなっていることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、製造容易にインデックス部の耐久性を高めることのできる製本物及び製本物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する製本物は、印刷された用紙を製本してなる製本物であって、辺部にインデックス部が設けられたインデックス付きの頁を備えるとともに、前記インデックス部を保護するために該インデックス部に形成された保護印刷層と、前記保護印刷層を前記インデックス部に定着させるために前記保護印刷層の下層に形成された下地印刷層と、を備える。
【0009】
即ち、保護機能を有する保護印刷層をインデックス部に形成することで、このインデックス部の耐久性を高めることができる。また、この保護印刷層の下層に形成された下地印刷層が、その保護印刷層をインデックス部に定着させることで、製本物が利用される長期間に亘り、安定的に、その高い保護機能を維持することができる。更に、従来技術にみられるような専用の機械を用いたコーティング工程を廃して、製造工程の簡略化を図ることができる。その結果、生産効率を向上させることができる。加えて、作業環境の改善を図ることができる。そして、これにより、その製造を容易なものとすることができる。
【0010】
上記課題を解決する製本物は、前記下地印刷層及び前記保護印刷層が、前記インデックス部の両面に形成されていることが好ましい。
上記構成によれば、より一層、そのインデックス部の保護機能を高めることができる。
【0011】
上記課題を解決する製本物は、前記下地印刷層が、前記インデックス部に印刷されたインデックス表示に重ねて形成されていることが好ましい。
上記構成によれば、その下地印刷層をインデックス表示の保護膜として機能させることができる。
【0012】
上記課題を解決する製本物は、前記保護印刷層には、耐水性、耐油性、及び耐蝕性を有したインキ材料が用いられていることが好ましい。
即ち、インデックス部の保護機能を担保するこれらの特性を強めることで、その保護印刷層がインデックス部に定着し難くなる。従って、このような特性を有するインキ材料により形成される保護印刷層の下層に下地印刷層を形成することで、より顕著な効果を得ることができる。
【0013】
上記課題を解決する製本物は、前記保護印刷層を形成する前記インキ材料が、シリコン成分を含有するメジウムであることが好ましい。
上記構成によれば、その保護印刷層に、耐水性、耐油性、及び耐蝕性等、優れた保護機能を付与することができる。
【0014】
上記課題を解決する製本物は、積層された複数の前記保護印刷層を備えることが好ましい。
上記構成によれば、より高い保護機能を確保することができる。加えて、例えば、滑り性や触感等、優れた官能特性を付与することができる。
【0015】
上記課題を解決する製本物は、厚み方向に重ねて配置される複数の前記インデックス部を備えるとともに、当該各インデックス部の全てに前記下地印刷層及び前記保護印刷層が形成されていることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、製本物全体として、そのインデックス部に高い耐久性を確保することができる。
上記課題を解決する製本物の製造方法は、印刷された用紙を製本してなるとともに辺部にインデックス部が設けられたインデックス付きの頁を備える製本物の製造方法であって、前記インデックス部を保護するための保護印刷層を、オフセット印刷により前記インデックス部に形成する工程と、前記保護印刷層を形成する工程に先立ち、前記インデックス部に前記保護印刷層を定着させるための下地印刷層を、オフセット印刷により前記インデックス部に形成する工程と、を備える。
【0017】
上記構成によれば、製造容易に、高い耐久性を有したインデックス付きの頁を備える製本物を製造することができる。更に、印刷装置を変更することなく、連続的に、その下地印刷層及び保護印刷層の形成を行うことができる。そして、これにより、生産効率の向上を図ることができる。
【0018】
上記課題を解決する製本物の製造方法は、前記下地印刷層を形成する工程に先立ち、オフセット印刷により前記インデックス部にインデックス表示を印刷する工程を備えることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、印刷装置を変更することなく、連続的に、そのインデックス表示の印刷、下地印刷層及び保護印刷層の形成を行うことができる。そして、これにより、更なる生産効率の向上を図ることができる。
【0020】
上記課題を解決する製本物の製造方法は、前記保護印刷層を形成する工程は、複数回の前記オフセット印刷を重ねて行うものであることが好ましい。
上記構成によれば、効率よく、積層された複数層の保護印刷層を形成することができる。
【0021】
上記課題を解決する製本物の製造方法は、前記保護印刷層を形成する工程が、高感度UV印刷機を用いて行われることが好ましい。
上記構成によれば、大幅に生産効率を向上させることができる。更に、作業環境の改善を図ることができる。そして、これにより、より一層、その製造を容易なものとすることができるとともに、併せて、環境に優しい製品を世に送り出すことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、耐久性に優れたインデックス部を容易に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、製本物を手帳に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び
図2に示すように、製本物としての手帳1は、その見開き頁10の本文部分11に、図示しないペンや鉛筆等の筆記具を用いて書き込みを行うことが可能となっている。また、本実施形態の手帳1において、この書き込み可能な見開き頁10は、その辺部12にインデックス部13が設けられたインデックス付きの頁10Xとなっている。そして、本実施形態の手帳1は、これにより、その所望の頁10を開いて、速やかに記載内容を閲覧し、或いは新たな書き込みを行うことが可能となっている。
【0025】
詳述すると、本実施形態の手帳1は、例えば、一ヶ月の予定を見開き頁10(の本文部分11)の全面に表示する月間予定頁21(
図1参照)や、一週間の予定を見開き頁10の左側に表示するとともに右側がメモ欄となった週間予定頁22(
図2参照)等、を備えている。更に、本実施形態の手帳1においては、これらの月間予定頁21及び週間予定頁22を含む書込み可能な各見開き頁10が、それぞれインデックス付きの頁10Xとしての構成を有している。そして、本実施形態の手帳1は、これら各頁10Xのインデックス部13が、それぞれ、その対応する月毎に重ねて配置された構成になっている。
【0026】
具体的には、本実施形態の手帳1は、その前小口となる部分、詳しくはインデックス付きの各頁10X(21,22)が開かれた状態において、その右側の辺部12rとなる位置にインデックス部13を有している。また、本実施形態の手帳1において、これらの各インデックス部13は、見開き頁10(10X)の右端に位置する辺部12rの下側部分(地側部分)を切り欠くことにより、対応する月毎に異なる上下方向(天地方向)の長さを有するものとなっている。そして、本実施形態の手帳1は、これにより、その月毎に重ねられた各インデックス部13が階段状に配置される構成になっている。
【0027】
即ち、本実施形態の手帳1において、各月(1月〜12月)のインデックス部13は、それぞれ、当該インデックス部13の下端(地側の端部)部分に、先月のインデックス部13と重ならない非重複部分αを有している。更に、この非重複部分αには、その対応月を示すインデックス表示Idが印刷されている。そして、本実施形態の手帳1は、このインデックス表示Idに従って、その所望の頁10(21,22)を探すことができる構成になっている。
【0028】
尚、本実施形態の手帳1は、先頭月(本実施形態では「1月」)に対応するインデックス部13のみ、その表側紙面13aの全体が非重複部分αとなっている。そして、これら各インデックス部13の各非重複部分αには、それぞれ、対応月を示す数字(1〜12)が、そのインデックス表示Idとして印刷されている。
【0029】
また、
図3に示すように、本実施形態の手帳1は、これらの各インデックス部13を保護するために当該各インデックス部13に形成された薄膜状の保護印刷層31を備えている。具体的には、本実施形態の保護印刷層31は、この保護印刷層31に覆われた各インデックス部13のインデックス表示Idを視認することが可能な高い透明度(透光性)を有している。更に、本実施形態の手帳1において、この保護印刷層31は、耐油性、耐水性、及び耐蝕性を有するものとなっている。そして、本実施形態の手帳1は、これにより、その各インデックス部13に対して長期間の使用に耐えうる耐久性を付与する構成になっている。
【0030】
詳述すると、本実施形態の手帳1は、この保護印刷層31を各インデックス部13に定着させるために当該保護印刷層31の下層に形成された薄膜状の下地印刷層32を備えている。本実施形態の手帳1において、この下地印刷層32は、各インデックス部13に印刷されたインデックス表示Idに重ねるかたちで形成されている。そして、この下地印刷層32もまた、保護印刷層31と同様に高い透明度(透光性)を有している。
【0031】
具体的には、本実施形態の下地印刷層32は、メジウムをインキ材料に用いたオフセット印刷により形成されている。更に、本実施形態の手帳1においては、インデックス部13の表側紙面13aにインデックス表示Idを表すインデックス表示印刷層33もまた、オフセット印刷により形成されている。そして、本実施形態の保護印刷層31は、その下地印刷層32に重ねてオフセット印刷を行うことにより形成されている。
【0032】
さらに詳述すると、本実施形態の保護印刷層31は、シリコン成分を含有するメジウムをインキ材料に用いたオフセット印刷により形成されている。また、下地印刷層32の形成に用いるメジウムは、製本物である手帳1の用紙及び保護印刷層31を形成する上記特殊メジウムの双方に対して親和性の高い性質を有している。そして、本実施形態の手帳1は、これにより、この手帳1の用紙に対する一連のオフセット印刷工程において、そのインデックス部13となる部分にインデックス表示Idを印刷し、及び、このインデックス表示Idを覆うかたちで、安定的に、その保護印刷層31を形成することが可能になっている。
【0033】
また、本実施形態の手帳1においては、インデックス表示Idが印刷されたインデックス部13の表側紙面13aに対し、その全体を覆うかたちで、下地印刷層32及び保護印刷層31が形成されている。そして、インデックス部13の裏側紙面13b、即ち見開き頁10(10X)の左端に配置される部分の紙面に対しても(
図1及び
図2参照)、同様に、その全体を覆うかたちで、下地印刷層32及び保護印刷層31が形成されている。
【0034】
尚、本実施形態の手帳1においては、月間予定頁21及び週間予定頁22を構成するインデックス付きの各頁10Xの全てについて、そのインデックス部13に下地印刷層32及び保護印刷層31が形成されている。つまりは、階段状にずれた位置に配置される各月先頭頁のインデックス部13のみならず、その厚み方向に重ねて配置された月毎の各インデックス部13の全てに下地印刷層32及び保護印刷層31が形成されている。また、本実施形態では、これら下地印刷層32及び保護印刷層31の一部が、各頁10のインデックス部13から本文部分11に「はみ出す」かたちで設けられている。そして、本実施形態の手帳1は、これにより、各頁10Xのインデックス部13について、効果的に、その保護を図ることが可能になっている。
【0035】
(製造方法)
次に、上記のように構成された手帳1の製造方法について説明する。
図4のフローチャートに示すように、本実施形態の手帳1を製造する際には、先ず、その用紙に対する印刷が行われる(ステップ101,102)。そして、本実施形態の手帳1は、この印刷された用紙(刷本)を加工し、製本することにより製造される(ステップ103〜ステップ112)。
【0036】
即ち、その製本工程においては、先ず、印刷された用紙に対する断裁及び折加工が行われる(ステップ103)。また、その表紙に対する見返し貼りが行われる(ステップ104)。更に、その断裁及び折加工により仕上げられた「折丁」を並べて重ねる丁合が行われるとともに(ステップ105)、これら各折丁の「かがり(糸かがり)」が行われる(ステップ106)。そして、これにより一つにまとめられた「折丁の束」に対し、その「背固め」及び「表紙貼り」が行われる構成になっている(ステップ107及びステップ108)。
【0037】
また、本実施形態においては、この状態において、その製本物としての「天」「地」「前小口」となる三方の辺部を切り落とす断裁加工が行われる(三方断裁、ステップ109)。更に、その後、上記のように「前小口」となる部分の切り抜き加工を行いインデックス部13を形成することにより、そのインデックス付きの各頁10Xを形成する(インデックス抜き、ステップ110)。そして、これにより製本物としてのかたちに仕上げられた手帳1に対して、スピン(糸栞)を付与し(ステップ111)、その表紙にカバーをかける等の最終仕上げが行われる構成になっている(アッセンブリ、ステップ112)。
【0038】
更に、このような製本工程に先立つ印刷工程においては、二度に分けて、その用紙に対する両面印刷が行われる。そして、本実施形態の手帳1においては、これらの両面印刷一号刷り工程(ステップ101)及び両面印刷二号刷り工程(ステップ102)の実行により、インデックス表示Idの印刷に併せて、その各インデックス部13に対して下地印刷層32及び保護印刷層31の形成が行われる構成になっている。
【0039】
詳述すると、
図5に示すように、手帳1の用紙50に対する印刷工程は、4つの原色(BK:ブラック、C:シアン、M:マゼンダ、Y:イエロー)の重ね合わせによりフルカラー印刷を行う所謂4色刷りのオフセット両面印刷機60を用いて行われる。そして、本実施形態では、このオフセット両面印刷機60には、そのオフセット印刷により用紙50に転写したインキ材料をLEDランプを用いて速やかに乾燥(硬化)させることが可能なUV乾燥装置(硬化装置、図示略)を備えた高感度UV印刷機としてのLED−UV印刷機61が用いられている。
【0040】
さらに詳述すると、両面印刷一号刷り及び両面印刷二号刷り(
図4参照、ステップ101,102)は、それぞれ、その用紙50に対する裏側印刷(ステップ201〜ステップ204、ステップ301〜ステップ304)、表側印刷(ステップ205〜ステップ208、ステップ305〜ステップ308)の順に行われる。
【0041】
本実施形態では、その両面印刷一号刷りにおけるブラック印刷、シアン印刷、及びマゼンダ印刷(ステップ201〜ステップ203、及びステップ205〜ステップ207)に対応する各工程において、用紙50に対し、その手帳1の本文部分11に対するカレンダー表示やメモ欄の罫線等の印刷が行われる。そして、これに合わせ、その各インデックス部13に対するインデックス表示Idの印刷が行われる構成になっている。
【0042】
また、本実施形態では、両面印刷一号刷りのイエロー印刷に相当する工程(ステップ204,208)において、その各インデックス部13に対する下地印刷層32の形成が行われる。即ち、このイエロー印刷には、上記のように、そのオフセットインキ材料として、透明度の高いメジウムが用いられる。そして、この両面印刷一号刷りに続いて行われる両面印刷二号刷りにおいて、その保護印刷層31の形成が行われる構成になっている。
【0043】
具体的には、両面印刷二号刷りのブラック印刷、シアン印刷、マゼンダ印刷、イエロー印刷に対応する各工程(ステップ301〜ステップ308)において、それぞれ、上記のようなシリコン成分を含有する透明度の高い特殊メジウムが、そのオフセットインキ材料に用いられる。そして、本実施形態では、これにより、その手帳1の各インデックス部13となる部分(の両面)に対し、それぞれ、積層された4層の保護印刷層31a〜31dが形成される構成になっている。
【0044】
尚、
図3中、インデックス部13に形成された各印刷層(31〜33)の記載は、その概念を模式的に記載するものとなっている。そして、4層に積層された各保護印刷層31a〜31dの重なり状態についてもまた、その図示を省略したものとなっている。
【0045】
即ち、
図6のフローチャートに示すように、本実施形態では、手帳1の各インデックス部13となる部分に対し、先ず、そのインデックス表示Idの印刷が行われる(ステップ401)。また、このインデックス表示Idに重ねるかたちで、下地印刷層32の形成が行われる(ステップ402)。そして、この下地印刷層32に重ねるかたちで、保護印刷層31の形成が行われる構成になっている(ステップ403)。
【0046】
本実施形態の手帳1は、このようにして、その各インデックス部13に下地印刷層32及び保護印刷層31を形成する。そして、これにより、優れた耐油性、耐水性、及び耐蝕性を有する保護印刷層31を各インデックス部13に定着させて、この手帳1が利用される長期間に亘り、安定的に、その高い保護機能を維持することが可能となっている。
【0047】
次に、本実施形態の作用・効果について説明する。
(1)製本物としての手帳1は、印刷された用紙(刷本)を製本することにより形成される。また、この手帳1は、辺部12(12r)にインデックス部13が設けられたインデックス付きの頁10Xを備える。そして、この手帳1は、そのインデックス部13を保護するために当該インデックス部13に形成された保護印刷層31と、この保護印刷層31をインデックス部13に定着させるために保護印刷層31の下層に形成された下地印刷層32と、を備える。
【0048】
即ち、保護機能を有する保護印刷層31をインデックス部13に形成することで、このインデックス部13の耐久性を高めることができる。また、この保護印刷層31の下層に形成された下地印刷層32が、その保護印刷層31をインデックス部13に定着させることで、手帳1が利用される長期間に亘り、安定的に、その高い保護機能を維持することができる。更に、従来技術にみられるような専用の機械を用いたコーティング工程を廃して、製造工程の簡略化を図ることができる。特に、局所的なコーティング材の塗布及び紫外光の照射を行う周知のスポットUV加工(シルク塗布・UV乾燥)により保護膜を形成する方法との比較した場合には、大幅な生産効率の向上(例えば、数倍〜数十倍)を図ることができる。例えば、インキ材料の乾燥時間を短縮することにより設備回転数を向上させることができる。更に、局所的なコーティング材の塗布により生ずる用紙50の波打ちが抑えられることで、その取り扱いが容易になる(例えば、刷本としての折精度が向上する等)。加えて、その作業環境の改善を図ることができる。そして、これにより、その製造を容易なものとすることができるとともに、併せて、環境にやさしい製品を世に送り出すことができる。
【0049】
(2)下地印刷層32及び保護印刷層31が、インデックス部13の両面、即ち表側紙面13a及び裏側紙面13bの両方に形成されている。これにより、より一層、そのインデックス部13の保護機能を高めることができる。
【0050】
(3)下地印刷層32が、そのインデックス部13に印刷されたインデックス表示Idに重ねて形成されている。これにより、その下地印刷層32をインデックス表示Idの保護膜として機能させることができる。
【0051】
(4)保護印刷層31には、耐水性、耐油性、及び耐蝕性を有したインキ材料が用いられる。即ち、インデックス部13の保護機能を担保するこれらの特性を強めることで、その保護印刷層31がインデックス部13に定着し難くなる。従って、このようなものに上記(1)の構成を適用することで、より顕著な効果を得ることができる。
【0052】
(5)保護印刷層31を形成するインキ材料が、シリコン成分を含有するメジウムである。これにより、その保護印刷層31に、耐水性、耐油性、及び耐蝕性等、優れた保護機能を付与することができる。
【0053】
(6)手帳1は、そのインデックス部13に、積層された複数層(4層)の保護印刷層31(31a〜31d)を備える。これにより、より高い保護機能を確保することができる。加えて、例えば、その滑り性や触感等、優れた官能特性を付与することができる。
【0054】
(7)手帳1は、厚み方向に重ねて配置される複数のインデックス部13を備える。そして、これらの各インデックス部13の全てに、その下地印刷層32及び保護印刷層31が形成されている。これにより、その手帳1全体として、そのインデックス部13に高い耐久性を確保することができる。
【0055】
(8)手帳1は、階段状に配置される複数のインデックス部13を備える。
即ち、このような構成を有する製本物においては、多くの場合、その階段状に配置された各インデックス部13の表面をなぞるように指を動かすことで、所望の頁10を探すことになる。従って、このようなものに、上記各構成を適用することで、より顕著な効果を得ることができる。
【0056】
(9)保護印刷層31は、オフセット印刷により形成される。そして、下地印刷層32もまた、その保護印刷層31の形成に先立って、オフセット印刷により形成される。
上記構成によれば、製造容易に、高い耐久性を有したインデックス付きの頁10Xを備える製本物(手帳1)を製造することができる。更に、印刷装置を変更することなく、連続的に、その下地印刷層32及び保護印刷層31の形成を行うことができる。そして、これにより、生産効率の向上を図ることができる。
【0057】
(10)インデックス表示Idの印刷は、下地印刷層32の形成に先立って、オフセット印刷により行われる。
上記構成によれば、印刷装置を変更することなく、連続的に、そのインデックス表示Idの印刷、下地印刷層32及び保護印刷層31の形成を行うことができる。そして、これにより、更なる生産効率の向上を図ることができる。
【0058】
(11)保護印刷層31は、複数回(4回)のオフセット印刷を重ねて行うことにより形成される。これにより、効率よく、積層された複数層(4層)の保護印刷層31(31a〜31d)を形成することができる。
【0059】
(12)保護印刷層31の形成を含め、用紙50の印刷工程は、高感度UV印刷機としてのLED−UV印刷機61を用いて行われる。
上記構成によれば、用紙50に転写されたインキ材料の乾燥時間を大幅に短縮することができる。更に、用紙50の波打ちを抑えることができる。そして、これにより、生産効率の向上を図ることができる。
【0060】
特に、従来技術にみられるようなスポットUV加工(シルク塗布・UV乾燥)により保護膜を形成する方法と比較した場合には、そのコーティング材の塗布・乾燥により生ずる室温の上昇や環境に与える臭気の影響を大幅に抑制することができる。そして、これにより、作業環境の改善を図ることができる。その結果、環境にやさしい製品を世に送り出すことができる。
【0061】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
・上記実施形態では、製本物を手帳1に具体化したが、例えば、ダイアリー等、その他の製本物に適用してもよい。
・上記実施形態では、手帳1は、書込み可能な見開き頁10として、月間予定頁21及び週間予定頁22等を備える。そして、これらの各頁10が、そのインデックス付きの頁10Xとしての構成を有することとした。しかし、これに限らず、書込み可能な見開き頁10のレイアウトについては、例えば、その見開き頁の左右がそれぞれ、一日分の予定を記載可能なもの、或いは、その全面がメモ欄であるもの等、任意に変更してもよい。
【0063】
・また、必ずしも全ての頁10が書き込み可能でなくともよい。また、必ずしも全ての頁10がインデックス部13を有したインデックス付きの頁10でなくともよい。更に、必ずしも書き込み可能な頁10の全てがインデックス付きの頁10でなくともよい。そして、必ずしもインデックス付きの頁10Xの全てが書き込み可能でなくともよい。
【0064】
・上記実施形態では、手帳1は、インデックス付きの各頁10Xが開かれた状態において、その右側の辺部12rとなる位置にインデックス部13を有する、即ち、左綴じの構成を有することとした。しかし、これに限らず、右綴じの構成に適用してもよい。そして、両開きの製本物に適用してもよい。
【0065】
・更に、インデックス部13が、その前小口となる辺部12(12r)でなく、製本物としての「天」又は「地」となる位置の辺部に配置された構成であってもよい。そして、これら各辺部の二箇所以上に、そのインデックス部13が設けられた構成であってもよい。
【0066】
・上記実施形態では、インデックス部13の表側紙面13aにのみ、そのインデックス表示Idが印刷されることとしたが、裏側紙面13bにもインデックス表示Idが印刷される構成でもよい。つまりは、インデックス部13の両面にインデックス表示Idがあってもよい。また、インデックス表示Idは、数字に限らず、その他の文字や絵柄であってもよい。そして、異なる色彩によって、そのインデックス表示Idとしての識別機能を有するものであってもよい。
【0067】
・上記実施形態では、インデックス部13の両面(表側紙面13a及び裏側紙面13b)に下地印刷層32及び保護印刷層31が形成されることとしたが、例えば、表側紙面13aのみ等、インデックス部13の片面に、その下地印刷層32及び保護印刷層31が形成される構成であってもよい。
【0068】
・また、上記実施形態では、インデックス部13の表側紙面13a及び裏側紙面13bに対し、その全体を覆うかたちで、下地印刷層32及び保護印刷層31が形成されることとしたが、例えば、少なくとも非重複部分α、或いはインデックス表示Idを覆う部分等、部分的に、その下地印刷層32及び保護印刷層31が形成される構成であってもよい。
【0069】
・上記実施形態では、保護印刷層31を形成するインキ材料には、シリコン成分を含有するメジウムが用いられることとしたが、例えば、ニス等、その他のインキ材料を用いる構成としてもよい。尚、この場合においても、そのインデックス部13の保護機能を担保することが可能な耐油性、耐水性、及び耐蝕性を有するものであることが望ましい。そして、その透明度についてもまた任意に変更してもよい。
【0070】
・更に、下地印刷層32についてもまた、そのインキ材料は、任意に変更してもよい。尚、この場合もまた、インデックス部13を形成する用紙及び保護印刷層31を形成する上記特殊メジウムの双方に対して親和性の高い性質を有するものであることが望ましい。そして、その透明度についてもまた、任意に変更してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、4回のオフセット印刷を重ねて行うことにより4層の保護印刷層31を形成することとしたが、その保護印刷層31の積層数は任意変更してもよい。そして、その保護印刷層31が単層である構成であってもよい。
【0072】
・上記実施形態では、高感度UV印刷機としてのLED−UV印刷機61を用いることとしたが、所謂ハイブリッドUV印刷機を用いてもよい。
・上記実施形態では、オフセット両面印刷機60には、所謂4色刷りのものを用いることとしたが、その型式(色数)は任意に変更してもよい。また、その印刷工程を分割して実行する回数(刷り号数)もまた、任意に変更してもよい。そして、下地印刷層32の形成及び保護印刷層31の形成を、その何れの段階から行うかについてもまた、任意に変更してもよい。
【0073】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)階段状に配置される複数の前記インデックス部を備えること、を特徴とする製本物。
【0074】
即ち、このような構成を有する製本物においては、多くの場合、その階段状に配置された各インデックス部の表面をなぞるように指を動かすことで、所望の頁を探すことになる。従って、このようなものに、上記各構成を適用することで、より顕著な効果を得ることができる。