(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調節部材は、前記第1の取付部に保持される保持部と、前記保持部の端部に設けられ、前記第1の取付部と前記フレームとの間に形成される前記隙間に配置されるフランジ部とを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の自転車用コンポーネント。
前記第1の取付部の前記挿入孔は、前記調節部材が圧入される第1部分と、前記第1部分の内径よりも内径の小さい第2部分とを含み、前記第2部分に雌ねじが設けられる、請求項8〜12、14〜17のいずれか一項に記載の自転車用コンポーネント。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、自転車用コンポーネントの一例であるドライブユニットの構成、および、ドライブユニットとフレームとの取付構造について説明する。
【0028】
図1に示されるように、ドライブユニット10は、自転車のフレームの一部であるブラケット100に取り付けられる。ドライブユニット10は、クランク軸12と、クランク軸12を回転可能に支持するハウジング20とを含む。ブラケット100は、たとえばダウンチューブとシートチューブとに固定される。ブラケット100は、チェーンステイに接続されていてもよい。
【0029】
クランク軸12は、自転車の左右方向においてハウジング20の両側から突出するようにハウジング20を貫通した状態で延びている。
ハウジング20には、クランク軸12に与えられる人力駆動力をアシストするモータ14と、モータ14を制御する制御回路(図示略)とが収容されている。ハウジング20には、フロントスプロケットを取り付け可能な出力部(図示略)が設けられる。出力部は、クランク軸12と同軸に設けられる。モータ14は、クランク軸12から出力部までの間の駆動力伝達経路に、減速機を介してアシスト力を加えてもよい。ドライブユニット10は、クランク軸12の回転を変速して、出力部に与える変速機16をさらに備えている。ドライブユニット10は、人力駆動力をアシストする機能と自転車の変速比を変更する機能とを有する。変速機16の構成は、たとえば歯車を組み合わせて構成してもよく、遊星歯車機構によって構成されてもよく、スプロケットおよびチェーンを組み合わせて構成されてもよい。
【0030】
ドライブユニット10には、1または複数の配線が接続されており、本実施形態では第1の配線18Aと、第2の配線18Bとが接続されている。第1の配線18Aおよび第2の配線18Bは、それぞれ複数の電線を含む。第1の配線18Aは、たとえばバッテリホルダに接続可能な電線を含んでいてもよい。第2の配線18Bは、自転車の表示装置に接続可能なケーブル、後輪または後輪付近に設けられる電動変速機に接続可能なケーブル、および、前照灯に接続可能なケーブルを含んでいてもよい。各ケーブルは、電力および信号の少なくとも一方を電送する。第1の配線18Aおよび第2の配線18Bは、制御回路に電気的に接続されている。
【0031】
ハウジング20は、ハウジング本体22と、カバー24とを含む。ハウジング本体22の形状は、クランク軸12の軸線Cに平行な方向(以下、「クランク軸方向CA」)の一方側が開口した箱状である。モータ14の少なくとも一部、第1の配線18Aの一部、および、第2の配線18Bの一部がハウジング本体22に収容される。カバー24は、ハウジング本体22の開口を閉塞する。カバー24は、たとえばボルト26によってハウジング本体に固定されている。モータ14は、モータ軸の一部のみがハウジング本体22に収容されてもよい。ハウジング本体22には、制御回路に電気的に接続されるコネクタを設けてもよい。第1の配線18Aおよび第2の配線18Bは、ハウジング本体22に設けられるコネクタを介して、着脱可能に制御回路に接続されていてもよい。ハウジング本体にコネクタを設ける場合、カバー24とは異なるカバーによって、コネクタを覆うことが好ましい。
【0032】
ドライブユニット10は、ハウジング20に設けられ、自転車のフレームに取り付け可能な第1の取付部28と、クランク軸方向CAにおいて、第1の取付部28とは異なる位置でブラケット100に取り付け可能な第2の取付部30とを含む。第1の取付部28および第2の取付部30は、ドライブユニット10にそれぞれ複数設けられてもよい。第1の取付部28は、ハウジング20と一体に形成される。
【0033】
本実施形態のハウジング20には、3個の第1の取付部28および3個の第2の取付部30が設けられている。第1の取付部28および第2の取付部30は、対となり、ハウジング本体22の側壁22Aから外方に向けて突出している。3個の第1の取付部28はクランク軸方向CAにおいてカバー24側に位置し、3個の第2の取付部30はクランク軸方向CAにおいて第1の取付部28に対してカバー24側とは反対側に間隔を置いて位置している。複数の第1の取付部28および複数の第2の取付部30は、ハウジング20のクランク軸方向CAまわりの周方向に間隔を置いて位置している。
【0034】
ハウジング20には、第2の配線18Bが引き出される開口部22Bが形成されている。開口部22Bは、たとえば3個の第1の取付部28のうち、ハウジング20のクランク軸方向CAまわりの周方向における中間の第1の取付部28の基端部に形成されている。開口部22Bは、第2の配線18Bの各ケーブルにそれぞれ対応する開口を有する。各ケーブルは、各開口を通過するように配置され、各開口にはハウジング20とケーブルとの間の隙間から、水などの侵入を抑制するシール部材が設けられている。
【0035】
ドライブユニット10は、ボルト32により、ブラケット100に取り付け可能である。ブラケット100は、ドライブユニット10を上側から覆う上壁102と、クランク軸方向CAにおいて第1の取付部28および第2の取付部30と隣り合うように上壁102から延びる一対のフランジ104A,104Bとを備える。ブラケット100は、上壁102を有していなくてもよい。第1フランジ104Aおよび第2フランジ104Bは、それぞれのフランジの延びる方向において、分断して形成されていてもよい。
【0036】
上壁102は、第1の孔102Aおよび第2の孔102Bを有する。第1の孔102Aおよび第2の孔102Bは、フレームの前後方向において間隔を置いて位置している。第1の孔102Aは、ダウンチューブの内部空間に連なる。第2の孔102Bは、シートチューブの内部空間に連なる。
【0037】
第1フランジ104Aには、クランク軸方向CAにおいて3個の第1の取付部28と対向する箇所に貫通孔106がそれぞれ形成され、第2フランジ104Bには、クランク軸方向CAにおいて3個の第2の取付部30と対向する箇所に貫通孔(図示略)がそれぞれ形成されている。第1フランジ104Aは、第1の取付部28が複数ある場合、複数の第1の取付部28が離間する方向に離間して、複数対設けられてもよい。第1フランジ104Aが複数設けられる場合、各第1フランジ104Aに貫通孔が形成される。第2フランジ104Bは、第2の取付部30が複数ある場合、複数の第2の取付部30が離間する方向に離間して、複数設けられてもよい。第2フランジ104Bが複数設けられる場合、各第2フランジ104Bに貫通孔が形成される。
【0038】
図2に示されるように、第1フランジ104Aは、クランク軸方向CAの一方の外側から各第1の取付部28を覆い、第2フランジ104B(
図1参照)は、クランク軸方向CAの他方の外側から第2の取付部30を覆っている。すなわち、第1フランジ104Aと第2フランジ104Bとの間に、第1の取付部28および第2の取付部30が配置される。第1フランジ104Aにおけるクランク軸方向CAの外側端面は、ハウジング20のクランク軸方向CAの外表面よりも、ハウジング20のクランク軸方向CAの中央寄りに位置していることが好ましい。第2フランジ104Bにおけるクランク軸方向CAの外側端面は、ハウジング20のクランク軸方向CAの外表面よりも、ハウジング20のクランク軸方向CAの中央寄りに位置していることが好ましい。
【0039】
ドライブユニット10がブラケット100に取り付けられた状態において、開口部22Bから引き出された第2の配線18Bは、クランク軸方向CAにおいて第1の取付部28と第2の取付部30との間を通過するように配置可能である。第2の配線18Bは、ハウジング20のクランク軸方向CAまわりの周方向に延びて、ブラケット100とドライブユニット10との間に形成される空間から、ブラケット100の第2の孔102Bを通って外部に引き出される。第2の配線18Bは、フレームの内部空間を通るように配置されてもよい。
【0040】
ブラケット100とハウジング20との間の空間には、第3の配線18Cが配置されてもよい。第3の配線18Cは、たとえば第1の孔102Aおよび第2の孔102Bを通って、ブラケット100とハウジング20との間の空間に配置される。第3の配線18Cは、たとえばブレーキケーブル、変速ケーブルなどを含む。第3の配線18Cは、第2の配線18Bと同様に、クランク軸方向CAにおいて第1の取付部28と第2の取付部30との間に配置され、ハウジング20のクランク軸方向CAまわりの周方向に延びている。
【0041】
図3に示されるように、第1の取付部28は、クランク軸方向CAにおいて第1の取付部28を貫通する挿入孔28Aを有する。挿入孔28Aには、クランク軸方向CAに延びるローレット28Bが形成されていることが好ましい。
【0042】
ドライブユニット10は、第1の取付部28がブラケット100に取り付けられた状態において、第1の取付部28とブラケット100との間に形成される隙間に少なくとも一部が配置される調節部材34を含む。
【0043】
調節部材34は、第1の取付部28の挿入孔28Aに圧入されている。調節部材34は、金属製であってもよく、合成樹脂製であってもよい。調節部材34の形状は、円筒状が好ましいが、筒状であれば、軸線方向の断面の外形が多角形であってもよい。調節部材34は、ボルト32を挿入可能な孔36を有する。調節部材34の孔36には、ボルト32に連結可能な雌ねじ36Aが形成されている。調節部材34の外周部には、第1の取付部28に対する調節部材34の移動を抑制する抑制部38が設けられる。抑制部38は、調節部材34の外周部に形成されたローレット38Aを含む。ローレット38Aは、クランク軸方向CAに延びている。これにより、調節部材34が挿入孔28Aに圧入されたとき、調節部材34の軸線まわりの回転を抑制することができる。
【0044】
また調節部材34の軸線まわりの外周部には、調節部材34の周方向に延びるスリット40が形成されている。スリット40は、調節部材34の径方向に調節部材34の外周部から内周部まで貫通している。調節部材34は、スリット40に配置される緩み止め部材42を含む。緩み止め部材42は、調節部材34よりも硬度が低い材料によって形成される。緩み止め部材42は、たとえば樹脂製である。緩み止め部材42の形状は、スリット40を塞ぐように形成され、たとえば円弧状に形成される。緩み止め部材42は、調節部材34のスリット40に圧入されてもよく、接着剤によって調節部材34に接着されていてもよい。緩み止め部材42は、変形可能な材料で構成されることが好ましい。調節部材34の径方向における緩み止め部材42の厚みは、調節部材34の径方向におけるスリットの深さよりも大きくなるように形成される。
【0045】
図4に示されるように、調節部材34は、クランク軸方向CAの端面がブラケット100の第1フランジ104A(ともに
図5参照)に接触するように第1の取付部28からクランク軸方向CAにおいて突出している。すなわち、調節部材34の少なくとも一部分は、クランク軸方向CAにおいて、第1の取付部28に対して第2の取付部30(
図1参照)とは反対側に配置される。
【0046】
調節部材34が第1の取付部28の挿入孔28Aに圧入された状態において、緩み止め部材42の外周面42Aは、挿入孔28Aと接触している。緩み止め部材42の内周面42Bは、調節部材34の雌ねじ36Aと調節部材34の径方向において同じ位置か、雌ねじ36Aの内周面からわずかに突出して配置されている。
【0047】
図5に示されるように、第1の取付部28は、調節部材34の孔36に挿入されるボルト32によってブラケット100に取り付け可能である。具体的には、ボルト32は、調節部材34のクランク軸方向CAの端面がブラケット100の第1フランジ104Aに接触した状態、または、調節部材34のクランク軸方向CAの端面と第1フランジ104Aとの間に形成された隙間が微小な状態で調節部材34にねじ込まれている。このとき、ボルト32は、第1フランジ104Aの貫通孔106に挿入されている。ボルト32のボルト頭32Aは、貫通孔106において拡径された部分である収容部108に収容されている。ボルト32の雄ねじ32Bは、調節部材34の雌ねじ36Aにねじ込まれている。また雄ねじ32Bは、緩み止め部材42の内周面42Bに食い込んでいる。すなわち雄ねじ32Bは、緩み止め部材42の内周面42Bを塑性変形させた状態で緩み止め部材42に食い込んでいる。このように、緩み止め部材42の材料は、ボルト32の雄ねじ32Bが緩み止め部材42に食い込み可能なものであればよく、樹脂製以外にもたとえばアルミニウム製であってもよい。
【0048】
次に、
図6〜
図9を参照して、ドライブユニット10のブラケット100への取り付け手順について説明する。
なお、
図7〜
図9は、ドライブユニット10、または、ドライブユニット10およびブラケット100の関係を示す模式図である。また
図7〜
図9に示されるドライブユニット10およびブラケット100の形状は、説明の便宜上、
図1〜
図5におけるドライブユニット10およびブラケット100の形状とは異なるように示している。また
図7に示されるドライブユニット10とブラケット100との間の隙間G1、および、
図8に示される調節部材34の第1の取付部28からの突出量PD1は、説明の便宜上、
図1、
図4、および、
図5と比較して大きく示している。
【0049】
図6に示されるように、ドライブユニット10のブラケット100への取り付け手順は、第1の工程S1、第2の工程S2、第3の工程S3、第4の工程S4、および、第5の工程S5を含む。
【0050】
図7に示されるように、第1の工程S1では、ドライブユニット10がブラケット100に仮配置される。具体的には、調節部材34(
図8参照)が取り付けられる前の状態のドライブユニットがブラケット100に対して3個の第2の取付部30が第2フランジ104Bに接触するようにクランク軸方向CAの片側に寄せられた状態で配置される。
【0051】
第2の工程S2では、
図7に示されるように、各第1の取付部28と第1フランジ104Aとの間に形成された隙間G1が測定される。隙間G1が測定された後、調節部材34が取り付けられる前の状態のドライブユニットがブラケット100から取り出される。
【0052】
図8に示されるように、第3の工程S3では、各第1の取付部28に調節部材34が取り付けられる。各第1の取付部28に取り付けられた調節部材34は、クランク軸方向CAにおける各第1の取付部28からの突出量PD1が隙間G1(
図7参照)となるように調節される。突出量PD1は、「0」よりも大きくかつ隙間G1以下の範囲であれば、隙間G1よりも小さくてもよい。
【0053】
図9に示されるように、第4の工程S4では、ドライブユニット10がブラケット100に配置される。このとき、ドライブユニット10の各第2の取付部30が第2フランジ104Bに接触した状態、および、各調節部材34が第1フランジ104Aに接触した状態となる。なお、各調節部材34は、クランク軸方向CAにおいて第1フランジ104Aに対してわずかな隙間を置いて配置されていてもよい。
【0054】
そして
図9に示されるように、第5の工程S5では、3本のボルト32により各第2の取付部30が第2フランジ104Bに取り付けられ、他の3本のボルト32により各第1の取付部28が第1フランジ104Aに取り付けられる。
ここでは、組立時に調節部材34を第1の取付部28に取り付けているが、調節部材34は第1の取付部28に予め取り付けられていてもよい。調節部材34は、たとえば軸線方向において半分だけ挿入された状態としておく。ドライブユニット10をブラケット100に取り付けるとき、第1フランジ104Aと第2フランジ104Bとの間の距離Aを測定し、調節部材34の第2の取付部30とは反対側の端面と、第2の取付部30の第1の取付部28とは反対側の端面との距離Bが、距離Aと等しいか、距離Aよりもわずかに小さくなるように調節部材34を第1の取付部28に圧入する。後は第4の工程S4および第5の工程S5によって、ドライブユニット10をブラケット100に取り付けることができる。
【0055】
ドライブユニット10の作用および効果について説明する。
各第1の取付部28に取り付けられた調節部材34がクランク軸方向CAにおいて第1フランジ104Aに向けて各第1の取付部28から突出する。このため、第2の取付部30が第2フランジ104Bに接触した状態において、第1の取付部28と第1フランジ104Aとの間に形成された隙間G1が調節部材34により埋められる。調節部材34の第1の取付部28からの突出量を調整することによって、第1の取付部28と第1フランジ104Aとの間の隙間G1を調節部材34により適切に埋めることができる。したがって、ドライブユニット10がブラケット100に取り付けられたとき、ボルト32による締め付け力を高めることができ、クランク軸方向CAにおいてドライブユニット10がブラケット100に対してがたつくことが抑制される。
【0056】
本実施形態のドライブユニット10は、上記効果に加え、たとえば以下の効果を奏する。
(1)調節部材34の外周部にはローレット38Aが形成され、第1の取付部28の挿入孔28Aにはローレット28Bが形成されている。この構成によれば、調節部材34がその中心軸を中心として第1の取付部28に対して回転することが抑制される。このため、ボルト32が調節部材34の雌ねじ36Aにねじ込まれる際、調節部材34がボルト32とともに回転することが抑制される。このため、ボルト32の調節部材34へのねじ込み作業が容易となる。
【0057】
(2)調節部材34は、第1の取付部28の挿入孔28Aに圧入されている。このため、クランク軸方向CAにおいて調節部材34が第1の取付部28に対して移動することが抑制される。
【0058】
(3)調節部材34は、ボルト32が挿入可能な孔36を有する。孔36には、ボルト32が連結可能な雌ねじ36Aが形成されている。この構成によれば、調節部材34の雌ねじ36Aにボルト32の雄ねじ32Bが連結することによりドライブユニット10がブラケット100に取り付け可能となる。
【0059】
(4)ドライブユニット10は、ブラケット100の一対のフランジ104A,104Bのそれぞれとボルト32により取り付け可能な第1の取付部28および第2の取付部30を有する。このため、ドライブユニット10が一対のフランジ104A,104Bの一方のみに取り付けられる構成と比較して、ドライブユニット10をブラケット100に安定して保持させることができる。
【0060】
(5)調節部材34には、緩み止め部材42が取り付けられている。この構成によれば、ボルト32の雄ねじ32Bが緩み止め部材42に食い込むことにより、調節部材34の雌ねじ36Aに対するボルト32の雄ねじ32Bの緩みが抑制される。
【0061】
(第2実施形態)
図10および
図11を参照して、第2実施形態の自転車用コンポーネントの一例であるドライブユニット10の構成、および、ドライブユニット10とブラケット100との取付構造について説明する。本実施形態のドライブユニット10は、第1実施形態のドライブユニット10と比較して、次の2点が異なる以外は、第1実施形態のドライブユニット10と同様の構成を有する。1点目は、第1の取付部の形状が異なる点である。ドライブユニット10は、第1の取付部28に代えて第1の取付部29を備える。2点目は、調節部材34に代えて調節部材44が用いられる点である。以下、第1実施形態のドライブユニット10と異なる点について詳細に説明し、第1実施形態のドライブユニット10およびブラケット100と共通する構成については同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0062】
図10に示されるように、第1の取付部29は、ハウジング20において第1の取付部28(
図1参照)と同様の位置に設けられる。第1の取付部29は、外周に雄ねじ46Aを有する支持部46を含む。第1の取付部29は、ハウジング本体22の側壁22Aから外方に向けて突出している本体部29Aをさらに含む。本体部29Aは、第1の取付部28と同様の形状に形成されている。支持部46は、本体部29Aと一体的に形成され、本体部29Aからブラケット100の第1フランジ104Aに向けて延びている。すなわち、支持部46は、第2の取付部30とは反対側に向けて延びている。支持部46は、第1の取付部29とは個別に形成され、本体部29Aに形成された孔(図示略)に固定されてもよく、本体部29Aに溶接、接合、または、接着して固定されていてもよい。
【0063】
第1の取付部29は、ボルト32を挿入可能な孔48を有する。孔48は、クランク軸方向CAにおいて本体部29Aおよび支持部46を貫通している。孔48には、ボルト32に連結可能な雌ねじ48Aが形成されている。支持部46の雄ねじ46Aには、調節部材44が連結される。調節部材44には、クランク軸方向CAに貫通する孔50が形成されている。孔50には、雄ねじ46Aと連結する雌ねじ52が形成されている。このように、調節部材は、雌ねじ52を有するナットである。
【0064】
図11に示されるように、調節部材44は、支持部46に対する調節部材44のねじ込み量を変更することにより、第1の取付部29からの突出量を変更可能に、第1の取付部29に支持される。
図11に示される調節部材44は、ブラケット100の第1フランジ104Aに接触するように支持部46に対して第1フランジ104A側に突出している。
【0065】
そして調節部材44が第1フランジ104Aに接触した状態において、ボルト32が第1の取付部29の孔48にねじ込まれている。これにより、ボルト32の雄ねじ32Bと孔48の雌ねじ48Aが連結している。このように、第1の取付部29は、孔48に挿入されるボルト32によりブラケット100に取り付け可能である。調節部材44の支持部46からの突出量PD2の調整は、第1実施形態におけるドライブユニット10のブラケット100への取り付け手順と同様である。第1の取付部29と第1フランジ104Aとの間の隙間G2と一致するように、調節部材44が支持部46に取り付けられる。
【0066】
本実施形態のドライブユニット10は、第1実施形態の(4)の効果に準じた効果に加え、たとえば以下の効果を奏する。
(6)各第1の取付部29の支持部46に取り付けられた調節部材44がクランク軸方向CAにおいて第1フランジ104Aに向けて各支持部46から突出する。このため、第2の取付部30が第2フランジ104Bに接触した状態において、第1の取付部29と第1フランジ104Aとの間に形成された隙間G2が調節部材44により埋められる。したがって、ドライブユニット10がブラケット100に取り付けられたとき、ボルト32による締め付け力を高めることができ、クランク軸方向CAにおいてドライブユニット10がブラケット100に対してがたつくことが抑制される。
【0067】
(7)第1の取付部29の支持部46の雄ねじ46Aに調節部材44の雌ねじ52が連結するように調節部材44が支持部46にねじ込まれる。この構成によれば、調節部材44のねじ込み量が変更することによって、第1の取付部29からの調節部材44の突出量を容易に調節することができる。
【0068】
(8)第1の取付部29の孔48には、ボルト32の雄ねじ32Bが連結可能な雌ねじ48Aが形成されており、取付用のナットを別途用意する必要がないため、第1の取付部29が第1フランジ104Aに取り付けられやすい。
【0069】
(第3実施形態)
図12〜
図16を参照して、第3実施形態の自転車用コンポーネントの一例であるドライブユニット10の構成、および、ドライブユニット10とブラケット100との取付構造について説明する。本実施形態のドライブユニット10は、第1実施形態のドライブユニット10と比較して、次の2点が異なる以外は、第1実施形態のドライブユニット10と同様の構成を有する。1点目は、第1の取付部28に代えて、第1の取付部31を備える。2点目は、調節部材34に代えて、調節部材54を備える。調節部材54は、ワッシャである。本実施形態では、ワッシャとしてテーパーワッシャが用いられる。以下、第1実施形態のドライブユニット10と異なる点について詳細に説明し、第1実施形態のドライブユニット10およびブラケット100と共通する構成については同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0070】
図12に示されるように、第1の取付部31は、ハウジング20において第1の取付部28(
図1参照)と同様の位置に設けられる。クランク軸方向CAにおいて、第1の取付部31と第1フランジ104Aとの間には、調節部材54が挟み込まれる。調節部材54は、たとえば金属製であってもよく、樹脂製であってもよく、ゴム等の弾性部材により構成されてもよい。
調節部材54は、第1の取付部31と接触する第1の傾斜面56を有する。調節部材54は、薄板状に形成され、厚み方向において第1の傾斜面56とは反対側に位置する第1の平面58をさらに有する。第1の傾斜面56は、第1の平面58に対して傾斜する。調節部材54は、テーパー形状を有する。調節部材54の厚み方向は、ドライブユニット10とハウジング20との間に取り付けられた状態では、クランク軸方向CAに平行である。
【0071】
調節部材54には、ボルト32が挿入可能である。詳細には、調節部材54は、傾斜方向に延びる長孔60を有する。長孔60は、厚み方向に第1の傾斜面56および第1の平面58を貫通している。本実施形態では、調節部材54は、長孔60の延びる方向が長手方向となるように寸法が形成されている。
【0072】
図13の網掛けにより示されるように、第1の傾斜面56には、第1の取付部31(
図12参照)との間の摩擦抵抗を高める加工が施されていることが好ましい。この摩擦抵抗を高める加工として、たとえば第1の傾斜面56にはショットブラスト加工が施されている。なお、摩擦抵抗を高める加工は、第1の傾斜面56の概ね全体にわたり施されているのが好ましいが、第1の傾斜面56の一部のみに摩擦抵抗を高める加工が施されていてもよい。
【0073】
図12に示されるように、第1の取付部31は、ボルト32を挿入可能な孔62を有し、孔62に挿入されるボルト32によってブラケット100に取り付け可能である。孔62は、クランク軸方向CAにおいて第1の取付部31を貫通している。第1の取付部31の孔62には、ボルト32に連結可能な雌ねじ62Aが形成されている。
【0074】
図12の網掛けにより示されるように、第1の取付部31は、調節部材54の第1の傾斜面56と面接触する第2の傾斜面64を有する。第2の傾斜面64は、クランク軸方向CAに垂直な面に対して傾斜している。第2の傾斜面64は、第1の取付部31の基端部から先端部に向かう方向の延びる所定の軸まわりに対して傾斜していると好ましい。第2の傾斜面64には、調節部材54の第1の傾斜面56との間の摩擦抵抗を高める加工が施されていることが好ましい。この摩擦抵抗を高める加工として、たとえば第2の傾斜面64にはショットブラスト加工が施されている。なお、摩擦抵抗を高める加工は、第2の傾斜面64の全面にわたり施されることに限られず、第2の傾斜面64の一部のみに施されていてもよい。
【0075】
図14に示されるように、調節部材54の第1の傾斜面56が第1の取付部31の第2の傾斜面64とが対向し、第1の傾斜面56の傾斜方向と、第1の取付部31の第2の傾斜面64の傾斜方向とが平行になるように、第1の取付部31と第1フランジ104Aとの間に配置される。第1の傾斜面56と第2の傾斜面64とは、互いに面接触する。調節部材54が第1の取付部31と第1フランジ104Aとの間に挟み込まれた状態において、ボルト32が第1の取付部31の孔62にねじ込まれる。第1の取付部31の孔62にねじ込まれるボルト32は、第1フランジ104Aの貫通孔106および調節部材54の長孔60に挿入される。第2の傾斜面64のクランク軸の軸線に対する傾斜角度は、第1の傾斜面56の第1の平面58に対する傾斜角度と等しくなるように選ばれることが好ましい。
【0076】
図15に示されるように、ドライブユニット10のブラケット100への取り付け手順は、第1の工程S11、第2の工程S12、および、第3の工程S13を有する。
図16に示されるように、第1の工程S1では、ドライブユニット10がブラケット100に配置される。具体的には、ドライブユニット10は、ブラケット100の第2フランジ104Bに第2の取付部30が接触するようにクランク軸方向CAの片側に寄せられた状態で配置される。このとき、クランク軸方向CAにおいて第1の取付部31と第1フランジ104Aとの間に隙間G3が形成される。
【0077】
そして第2の工程S12では、ハウジング20のクランク軸方向CAまわりの周方向において、フレームの前後方向の両端となる第1の取付部31と第1フランジ104Aとの間の隙間G3のそれぞれに調節部材54が差し込まれる。なお、3個の第1の取付部31のうちの2個と、第1フランジ104Aとの間の隙間G3のそれぞれに調節部材54が差し込まれていればよく、調節部材34が差し込まれる2個の第1の取付部31の選択は任意の設定事項である。もちろん各第1の取付部31と第1フランジ104Aとの間に、調節部材54が差し込まれてもよい。第3の工程S13では、3本のボルト32により第1の取付部31と第1フランジ104Aとが固定され、他の3本のボルト32により第2の取付部30と第2フランジ104Bとが固定される。第2の工程S12と第3の工程S13とを、分離しないで、第1の取付部31と、第1フランジ104Aとの間に調節部材54が差し込まれる度に、ボルト32によって第1の取付部31と第1フランジ104Aとを固定してもよい。
【0078】
本実施形態のドライブユニット10は、第1実施形態の(4)および第2実施形態の(8)の効果に準じた効果に加え、たとえば以下の効果を奏する。
(9)ドライブユニット10は、第1の取付部31と第1フランジ104Aとの間に形成される隙間G3に配置される調節部材54を備える。調節部材54が第1の取付部31および第1フランジ104Aの両方に接触するため、ドライブユニット10がブラケット100に取り付けられたとき、ボルト32による締め付け力を高めることができ、クランク軸方向CAにおいてドライブユニット10がブラケット100に対してがたつくことが抑制される。
【0079】
(10)第1の取付部31と第1フランジ104Aとの間の隙間G3の大きさに応じて調節部材54の差し込み量を変更することができるため、隙間G3を埋める調節を容易に実行することができる。
【0080】
(11)調節部材54の第1の傾斜面56には、摩擦抵抗が高められる加工としてのショットブラスト加工が施されている。このため、第1の傾斜面56と面接触する第1の取付部31の第2の傾斜面64との間の摩擦抵抗が高くなる。したがって、ボルト32を締め付けるとき、および、ボルト32を締め付けた後に、調節部材54が第1の取付部31に対して移動しにくくなる。
【0081】
(12)第1の取付部31の第2の傾斜面64には、摩擦抵抗が高められる加工としてのショットブラスト加工が施されている。このため、第2の傾斜面64と調節部材54の第1の傾斜面56との間の摩擦抵抗がより高くなる。したがって、ボルト32を締め付けるとき、および、ボルト32を締め付けた後に、調節部材54が第1の取付部31に対して一層移動しにくくなる。
【0082】
(第4実施形態)
図17〜
図21を参照して、第4実施形態の自転車用コンポーネントの一例であるドライブユニット10の構成、ドライブユニット10とブラケット100との取付構造について説明する。本実施形態のドライブユニット10は、第1実施形態のドライブユニット10と比較して、次の2点が異なる以外は、第1実施形態のドライブユニット10と同様の構成を有する。1点目は、調節部材34に代えて、調節部材84を備える。2点目は、第1の取付部28に代えて、第1の取付部33を備える。以下、第1実施形態のドライブユニット10と異なる点について詳細に説明し、第1実施形態のドライブユニット10およびブラケット100と共通する構成については同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0083】
図17に示されるように、調節部材84は、第1の取付部33に保持される保持部86と、保持部86の端部に設けられるフランジ部88とを含む。保持部86およびフランジ部88は、一体に形成されていることが好ましいが、個別に形成された保持部86およびフランジ部88が互いに連結された構成であってもよい。調節部材84は、金属製であってもよく、合成樹脂製であってもよい。
【0084】
保持部86は、ボルト32を挿入可能な孔90を含む。孔90には、ボルト32に連結可能な雌ねじ90Aが形成されている。保持部86の形状は、円筒状が好ましいが、筒状であれば、軸線方向に垂直な断面の形状が多角形であってもよい。保持部86の外周部には、第1の取付部33に対する調節部材84の移動を抑制する抑制部86Aが設けられる。抑制部86Aは、調節部材84の外周部に形成されたローレット86Bを含む。ローレット86Bは、クランク軸方向CAに延びている。
【0085】
フランジ部88の外形の形状は、軸線方向から見て円形が好ましいが、多角形であってもよい。またフランジ部88は、保持部86の全周にわたり形成されることが好ましいが、保持部86の周方向の一部のみに形成されてもよい。
【0086】
図17および
図18に示されるように、第1の取付部33は、調節部材84の保持部86が圧入される挿入孔33Aを含む。挿入孔33Aは、調節部材84が圧入される第1部分33Bと、第1部分33Bの内径よりも内径の小さい第2部分33Cとを含む。
【0087】
第1部分33Bには、クランク軸方向CAに延びるローレット33Dが形成されていることが好ましい。調節部材84が第1部分33Bに圧入されるとき、第1部分33Bのローレット33Dと保持部86のローレット86Bとが噛み合うことにより、調節部材84の軸線まわりの回転を抑制することができる。
【0088】
第2部分33Cは、第1部分33Bのうちの調節部材84が挿入される開口33Eとは反対側の部分と連通している。第2部分33Cには、雌ねじ33Fが設けられている。第2部分33Cの内径は、調節部材84の孔90の内径よりも小さい。ボルト32(
図19参照)の軸線方向から見て、雌ねじ33Fは、第1部分33Bの孔の範囲内に設けられている。好ましくは、ボルト32の軸線方向から見て、雌ねじ33Fは、調節部材84の孔90の範囲内に設けられている。
【0089】
第1の取付部33は、調節部材84のフランジ部88を収容可能な凹部33Gをさらに含む。凹部33Gは、挿入孔33Aの開口33E周りに形成されている。凹部33Gの深さ寸法は、フランジ部88の厚さ寸法と等しいか、フランジ部88の厚さ寸法よりも大きいことが好ましいが、凹部33Gの深さ寸法は任意の設定事項である。
【0090】
図19は、調節部材84の孔90に挿入されるボルト32により、ドライブユニット10がブラケット100に取り付けられた状態を示す。
調節部材84のフランジ部88は、クランク軸方向CAの端面がブラケット100の第1フランジ104Aに接触するように、クランク軸方向CAにおいて第1の取付部33から突出している。すなわち、フランジ部88は、第1の取付部33とブラケット100(フレーム)との間に形成される隙間G4に配置されている。
【0091】
ボルト32を調節部材84にねじ込むことによって、調節部材84のフランジ部88のクランク軸方向CAの端面がブラケット100の第1フランジ104Aに接触した状態になる。このとき、ボルト32の雄ねじ32Bは、調節部材84の雌ねじ90Aにねじ込まれている。
【0092】
図20および
図21を参照して、ドライブユニット10のブラケット100への取り付け手順について説明する。なお、
図20を参照して説明するドライブユニット10およびブラケット100の各構成要素は、
図17〜
図19のドライブユニット10およびブラケット100の各構成要素を示す。
【0093】
本実施形態のドライブユニット10のブラケット100への取り付け手順は、第1実施形態のドライブユニット10のブラケット100への取り付け手順に対して、ステップS1〜S3の工程を省略し、各第1の取付部33および各第2の取付部30へのボルト32の取り付け順序を明確にしている。調節部材84は、第1の取付部33に予め圧入されており、フランジ部88が第1の取付部33に接触している状態となっている。
【0094】
図20に示されるように、第1の工程S21においてドライブユニット10をブラケット100に配置した後、第2の工程S22において各第2の取付部30と第2フランジ104B(ともに
図1参照)とをボルト32で取り付ける。そして第3の工程S23において各第1の取付部33と第1フランジ104Aとをボルト32で取り付ける。第1の取付部33と第1フランジ104Aとの間に隙間がある場合、第3の工程S23において、調節部材84が第1の取付部33から引き出されて、調節部材84が第1フランジ104Aに密着する。
【0095】
自転車(図示略)に取り付けられドライブユニット10を別の自転車(図示略)に載せ替える場合、各第1の取付部33からの調節部材84の突出量PD4が多く、別の自転車のブラケット100に挿入できない場合がある。このような場合、
図21に示されるように、調節部材84の孔90の内径よりも外径の小さい調節用ボルト92を用いて、調節部材84の突出量PD4を減らす。具体的には、調節用ボルト92が調節部材84の孔90に挿入されて、第2部分33Cの雌ねじ33Fと連結する。そして、調節用ボルト92が第2部分33Cにねじ込まれることにより、調節用ボルト92のボルト頭92Aが調節部材84のフランジ部88に接触し、調節部材84の突出量PD4を減らすように調節部材84を押し込む。
【0096】
本実施形態のドライブユニット10は、第1実施形態の(1)〜(4)の効果に加え、たとえば以下の効果を奏する。
(13)調節部材84のフランジ部88がブラケット100の第1フランジ104Aに接触するため、フランジ部88が省略された調節部材と比較して、調節部材84と第1フランジ104Aとの接触面積を大きくすることができる。このため、ブラケット100に加わる面圧を抑制することができる。
【0097】
(14)第1の取付部33にフランジ部88が収容可能な凹部33Gが設けられることにより、調節部材84の第1の取付部33からの突出量PD4をフランジ部88の厚さ寸法よりも小さい範囲で調節することができる。
【0098】
(15)調節用ボルト92が調節部材84の孔90に挿入されたうえで、第1の取付部33の第2部分33Cの雌ねじ33Fにねじ込まれることにより、調節部材84の第1の取付部33からの突出量PD4を減らすことができる。
【0099】
(16)各第2の取付部30と第2フランジ104Bとがボルト32により固定された後、各第1の取付部33と第1フランジ104Aとがボルト32により固定されることによって、調節部材84にモーメントが発生することが抑制される。これにより、調節部材84が挿入孔33Aに対して挿入孔33Aの径方向に押し付けられることが抑制される。
【0100】
(変形例)
上記各実施形態に関する説明は、本発明に従う自転車用コンポーネントが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う自転車用コンポーネントは、たとえば以下に示される上記各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0101】
・上記第1実施形態において、
図22に示されるように、ボルト32およびナット66により、ブラケット100の第1フランジ104Aに、ドライブユニット10の第1の取付部28が取り付けられてもよい。この場合、調節部材34は、雌ねじ36Aが省略された貫通孔68が形成される。ナット66は、クランク軸方向CAにおいて第1の取付部28に対して第1フランジ104Aとは反対側に配置され、第1の取付部28に接触する。なお、上記第2実施形態〜上記第4実施形態についてもボルト32およびナット66による第1の取付部28のブラケット100への取付構造に変更することができる。
【0102】
・上記第1実施形態において、第1の取付部28に対して調節部材34が回転することを抑制する機構(以下、「回転抑制機構」)として、キー溝とキー溝に嵌め込まれるキー部材とから構成されてもよい。たとえば、
図23に示されるように、回転抑制機構は、第1の取付部28の挿入孔28Aに形成された凹部28Cと、クランク軸方向CAと直交する平面方向において凹部28Cと対向する調節部材34の外周部に形成された凹部70と、凹部28C,70により形成された空間に嵌め込まれるキー部材72とから構成される。この場合、調節部材34のローレット38Aと、第1の取付部28のローレット28B(ともに
図3参照)とが省略されてもよい。なお、凹部70は、調節部材34の周方向において調節部材34のスリット40(
図3参照)と異なる位置に形成されることが好ましい。なお、凹部70およびキー部材72は、第1の取付部28に対する調節部材の移動を抑制する抑制部を構成する。なお、上記第4実施形態についても凹部28C,70により形成された空間と、その空間に嵌め込まれるキー部材72との構成に変更することができる。
【0103】
・上記第1実施形態および上記第1実施形態の各変形例において、調節部材34の周方向における緩み止め部材42の寸法および調節部材34の軸方向(クランク軸方向CA)における緩み止め部材42の寸法は任意の設定事項である。
・上記第1実施形態および上記第1実施形態の各変形例において、調節部材34の孔はクランク軸方向CAにおいて調節部材34を貫通していなくてもよい。
・上記第1実施形態および上記第1実施形態の各変形例において、調節部材34から緩み止め部材42を省略してもよい。この場合、調節部材34からスリット40が省略される。
・上記第1実施形態および上記第1実施形態の各変形例において、第1の取付部28の挿入孔28Aからローレット28Bが省略されてもよい。
・上記第4実施形態において、第1部分33Bからローレット33Dが省略されてもよく、調節部材84の外周部のローレット86Bが省略されていてもよく、その両方のローレット33Dおよび86Bが省略されていてもよい。
【0104】
・上記第2実施形態において、第1の取付部29の支持部46の内側に調節部材がねじ込まれた構成であってもよい。たとえば、
図24に示されるように、第1の取付部29の支持部46を含む孔48を拡径したうえで、第1の取付部29の雌ねじ48Aに調節部材74がねじ込まれる。調節部材74の形状は、たとえば円筒状である。調節部材74の外周部には雌ねじ48Aと連結される雄ねじ76が形成され、調節部材74の内周部にはボルト32が挿入可能な孔78が形成される。孔78には、ボルト32が連結可能な雌ねじ78Aが形成される。ボルト32は、調節部材74の孔78にねじ込まれる。第1の取付部29の外周部に形成される雄ねじは省略される。
【0105】
・
図24に示される変形例において、支持部46を省略してもよい。
・上記第2実施形態および
図24に示される変形例において、第1の取付部29の本体部29Aと支持部46とを個別に形成してもよい。この場合、たとえば支持部46の雄ねじ46Aが本体部29Aの孔48の雌ねじ48Aに連結される。そして、ボルト32は、支持部46の孔に形成された雌ねじ(図示略)に連結される。これにより、第1の取付部29は第1フランジ104Aに取り付けられる。
【0106】
・上記第3実施形態において、
図25に示されるように、調節部材54に代えて、第1の傾斜面56を有していないワッシャ80が第1の取付部31と第1フランジ104Aとの間の隙間G3に配置されてもよい。ワッシャ80はたとえば金属製または樹脂製である。
【0107】
・上記第3実施形態において、第1の取付部31から第2の傾斜面64が省略されてもよい。第1の取付部31から第2の傾斜面64が省略された場合、調節部材44として、テーパーワッシャを用いるよりも、一般的なワッシャを用いることが好ましい。一般的なワッシャとは、孔の軸方向の両端面が平行なワッシャである。この場合、複数のワッシャ80を積層して、第1の取付部31とブラケット100との間に配置してもよい。複数のワッシャの厚みは互いに異なってもよい。
【0108】
・上記第3実施形態および
図25の変形例において、調節部材54が複数のテーパーワッシャ、または、テーパーワッシャと一般的なワッシャとを含んでいてもよい。なお、テーパーワッシャおよび一般的なワッシャのそれぞれは、複数枚であってもよい。
【0109】
・上記第3実施形態における調節部材54の第1の傾斜面56および第1の取付部31の第2の傾斜面64の少なくとも一方に、摩擦抵抗を高める加工として、ゴム等の弾性部材を貼り付けてもよい。
【0110】
・上記第3実施形態において、第1の取付部31の第2の傾斜面64および調節部材54の第1の傾斜面56の少なくとも一方から、摩擦抵抗を高める加工を省略してもよい。
【0111】
・上記第3実施形態および
図25の変形例において、クランク軸方向CAから見た調節部材54およびワッシャ80の形状は、任意の設定事項である。たとえば、クランク軸方向CAから見た調節部材54およびワッシャ80の形状は、楕円形状である。
【0112】
・上記第2および第3実施形態、ならびに、上記第2および第3実施形態の各変形例において、第1の取付部29,31の孔48,62はクランク軸方向CAにおいて第1の取付部29,31を貫通していなくてもよい。
【0113】
・上記各実施形態および上記各変形例において、ドライブユニット10は、調節部材34,44,54,74,84、および、ワッシャ80が複数の第1の取付部28,29,31,33のうちの少なくとも1つに設けられる構成であってもよい。
【0114】
・上記各実施形態および上記各変形例において、ドライブユニット10のハウジング本体22と第1の取付部28,29,31,33とが個別に形成され、溶接、接合、または、接着などによってハウジング本体22に固定されてもよい。
・上記各実施形態および上記各変形例において、調節部材(調節部材34,44,54等)は、第1の取付部28,29,31,33におけるボルト32が挿入可能な孔(挿入孔28A、孔48、孔62、および、挿入孔33A)とは異なる位置に配置されてもよい。たとえば、
図26に示されるように、第1の取付部28には、クランク軸方向CAに直交する方向において挿入孔28Aとは異なる位置にボルト32が挿入可能な孔82が形成されている。孔82には、ボルト32と連結可能な雌ねじ82Aが形成されている。
図26に示されるように、変形例の調節部材34は、ボルト32が挿入可能な孔36が省略されてもよい。また調節部材34は、緩み止め部材42と、緩み止め部材42が取り付けられるスリット40とが省略されてもよい。
【0115】
・上記各実施形態および上記各変形例において、ドライブユニット10の第1の取付部28,29,31,33および第2の取付部30がブラケット100の一対のフランジ104A,104Bの外側に配置されてもよい。すなわち第1の取付部28,29,31,33および第2の取付部30の間に、一対のフランジ104A,104Bが配置されてもよい。この場合、たとえば、
図27に示されるように、調節部材34の少なくとも一部が第1の取付部28と第1フランジ104Aとの間の隙間G5に位置する。
図27の例では、第1の取付部28および第2の取付部30から、ボルト32に羅合する雌ねじが省略され、一対のフランジ104A,104Bにボルトに羅合する雌ねじが形成される。
・上記各実施形態および上記各変形例において、複数の第1の取付部28,29,31,33は互いに繋がって形成されてもよく、複数の第2の取付部30は、互いに繋がって形成されてもよい。
・上記各実施形態および上記各変形例において、第1の取付部28,29,31,33と、第2の取付部30とは、別々のボルトによってブラケット100に取り付けられているが、クランク軸方向CAで向かい合う第1の取付部28,29,31,33と第2の取付部30とを1本のボルトによって、ブラケット100に固定してもよい。この場合、第1の取付部28,29,31,33、第2の取付部30、および、調節部材34,44,54,74,84にはボルトに羅合する雌ネジを形成せず、ボルトとナットで、第1の取付部28,29,31,33と、第2の取付部30を、一対のフランジ104A,104Bと共に締め付ければよい。
【0116】
・上記各実施形態および上記各変形例において、ドライブユニット10は、モータおよび変速機の少なくともいずれか一方を備える構成であれば、どのような構成であってもよい。たとえばドライブユニット10から変速機16を省略してもよい。この場合、
図28に示されるように、ドライブユニット10は、クランク軸12に与えられる人力駆動力をアシストするモータ14を有するアシスト装置となる。たとえばドライブユニット10からモータ14およびモータ14に連結される減速機(図示略)を省略してもよい。この場合、ドライブユニット10は、自転車の変速比を変更する変速機となる。
【0117】
・上記第4実施形態において、各第1の取付部33から凹部33Gを省略してもよい。
・上記第4実施形態において、
図29に示されるように、調節部材84に代えて調節部材75が第1の取付部33の挿入孔33Aに圧入されてもよい。調節部材75は、調節部材75の軸方向に貫通しない穴75Aを有する。穴75Aには、ボルト32が連結される雌ねじ75Bが形成されている。
図29に示されるとおり、挿入孔33Aの第2部分33C側から調節用ボルト77をねじ込むことにより、調節用ボルト77が調節部材75の底部75Cを押す。これにより、調節部材75の第1の取付部33からの突出量PD4を増やすように調節することができる。なお、第1実施形態についても
図29と同様に変更することができる。
図29に示す形態において、雌ねじ33Fを省略してもよく、第2部分33Cを省略してもよい。第2部分33Cを省略する場合、第1部分33Bが第1の取付部33を貫通してもよく、第1部分33Bが第1の取付部33を貫通しなくてもよい。
【0118】
・上記第4実施形態において、調節部材84に緩み止め部材42を追加してもよい。この場合、調節部材84の保持部86には緩み止め部材42を取り付けるためのスリット(図示略)が形成される。
・上記第4実施形態において、第2部分33Cが形成されなくてもよい。第2部分33Cを省略する場合、第1部分33Bが第1の取付部33を貫通してもよく、第1部分33Bが第1の取付部33を貫通しなくてもよい。
【0119】
・上記第1〜第3実施形態において、第4実施形態と同様に、各第1の取付部28,29,31と第1フランジ104Aとをボルト32で取り付けた後、各第2の取付部30と第2フランジ104Bとをボルト32で取り付けてもよい。
【0120】
・上記第1実施形態において、
図30に示されるように、ハウジング20の外部には、クランク軸12の回転をリアホイール93に伝達するための出力回転体94が配置されてもよい。出力回転体94は、ドライブユニット10において、クランク軸12と同軸に配置され、クランク軸12が挿通する出力部(図示略)に連結されている。クランク軸12は、出力部に直接またはワンウェイクラッチを介して連結されている。出力部は、ハウジング20に対して回転可能である。このように、ハウジング20は、出力回転体94を回転可能に支持する。出力部は、たとえば円筒状に形成されてもよく、クランク軸12とは同軸に配置されていなくてもよい。
図30に示されるように、出力回転体94の一例は、リアホイール93の従動回転体93A(リアスプロケット)にチェーン95を介して接続されるフロントスプロケットである。なお、出力回転体94は、リアホイール93の従動回転体93A(リアプーリー)にベルト(図示略)を介して接続されるフロントプーリーであってもよい。
クランク軸方向CAにおいて、ハウジング20の第2の取付部30は、第1の取付部28よりも出力回転体94の近くに設けられる。
図9に示されるように、第2の取付部30は、ブラケット100の第2フランジ104Bに接触した状態でボルト32により第2フランジ104Bに固定されるため、ブラケット100に対するドライブユニット10の基準位置となる。このため、ハウジング20の第2の取付部30側に出力回転体94(
図30参照)が取り付けられることにより、ブラケット100に対する出力回転体94の位置が精度よく決められる。したがって、チェーンラインの精度を容易に確保することができる。なお、第2〜第4実施形態についても同様に出力回転体94を配置することができる。
【0121】
また、ハウジング20の外部には、チェーン95が出力回転体94から外れることを抑制するためのチェーンデバイス96が配置されてもよい。
図31に示されるように、チェーンデバイス96は、ハウジング20に取り付けられる取付部96A、チェーン95の一部を覆うガイド96B、および、取付部96Aとガイド96Bとを連結するアーム96Cを含む。ガイド96Bは、チェーン95が通過するスロット96J(
図30参照)を有する。スロット96Jの幅は、チェーン95の幅よりも大きく形成されている。ガイド96Bは、スロット96Jの両側に、チェーン95が出力回転体94から脱落することを阻止する一対の案内壁を有する。ガイド96Bの一対の案内壁のうち、チェーン95の進行方向上流側の端部96Dは、互いに連結されている。端部96Dには、チェーン95が接触したときにチェーン95を円滑に案内する機構が設けられていてもよい。この機構は、たとえば回転可能に取り付けられているローラであってもよく、外周面の少なくとも一部が円弧状に形成されていてもよい。取付部96Aには、クランク軸12周りの方向に延びる円弧状の複数の第1の孔96Eが形成されている。ハウジング20の側壁には、ボルト96Fを装着可能な雌ねじを有する孔が複数設けられている。取付部96Aは、複数の第1の孔96Eにボルト96Fが挿入されてハウジング20にねじ込まれることにより、クランク軸12周りの角度を調整した状態でハウジング20に取り付けられる。ガイド96Bには、第2の孔96Gが形成されている。第2の孔96Gは、長孔である。ガイド96Bは、第2の孔96Gにボルト96Hが挿入されてアーム96Cの先端にねじ込まれることにより、アーム96Cに対するガイド96Bの位置を調整した状態でアーム96Cに取り付けられている。
図32に示されるように、出力回転体94は、チェーンデバイス96のスロット96Jにその一部が配置されている。チェーンデバイス96は、出力回転体94の歯数に応じて、複数の第1の孔96Eの範囲においてクランク軸12周りで回転してガイド96Bの位置を調節可能である。また第2の孔96Gの範囲においてアーム96Cに対してガイド96Bの位置を変更することにより、チェーン95に対するガイド96Bの端部96Dの位置を調節可能である。ガイド96Bは、出力回転体94に対してチェーン95の進行方向上流側に設けられているが、出力回転体94に対してチェーン95の進行方向下流にも、設けられていてもよい。またガイド96Bの形状は、上記の構成に限らず、チェーン95が出力回転体94から離脱してしまうことを抑制するように、チェーン95をガイドするまたはチェーン95を押えつける構成であればよい。ガイド96Bの第2の孔96Gを雌ねじが形成される丸孔とし、アーム96Cに長孔を設けて、ガイド96Bをアーム96Cに対して移動可能に構成してもよい。
【0122】
また、クランク軸12の軸方向の両端部には、クランクアーム97がクランク軸12と一体に回転可能に固定されている。クランクアーム97とクランク軸12との固定構造の一例について
図33を用いて説明する。ドライブユニット10において、左右のクランクアーム97のクランク軸12への固定構造は、同じである。
クランクアーム97におけるクランク軸12が取り付けられる端部には、クランク軸12の端部が挿入される孔97Aと、クランクアーム97をクランク軸12に締め付けるための第1固定孔97Bおよび第2固定孔97Cとが形成されている。孔97Aの周方向の一部には、クランクアーム97の端部に向けて切り欠かれたスリット97Dが形成されている。第1固定孔97Bおよび第2固定孔97Cは、クランクアーム97をその幅方向に貫通している。クランクアーム97の幅方向は、クランク軸12に平行な方向およびクランクアーム97の長手方向に垂直な方向である。
クランクアーム97の孔97Aにクランク軸12の端部が挿入された状態で、第1締付ボルト98Aが第1固定孔97Bにねじ込まれ、第2締付ボルト98Bが第2固定孔97Cにねじ込まれることによりクランクアーム97がクランク軸12に向けて締め付けられることによって、クランクアーム97がクランク軸12に固定される。クランク軸12の両端部の孔(図示略)には、雌ねじが形成されている。雄ねじ99Aを有するキャップ99が、クランク軸12の両端部の孔に取り付けられる。
第4実施形態において、第1の取付部33の第2部分33Cの内径を調節部材84の孔90よりも大きく形成し、ボルト32の軸線方向から見て、調節部材84の雌ねじ90Aは、第2部分33Cの孔の範囲内に設けられてもよい。この場合、第2部分33Cの孔を通過して、調節用ボルト92を調節部材84の雌ねじ90Aにねじ込んで、調節部材84を第2部分33C側に移動させることができる。