特許第6643427号(P6643427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643427異種ゴム成分を含む電線用ポリオレフィン樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643427
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】異種ゴム成分を含む電線用ポリオレフィン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20200130BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20200130BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20200130BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20200130BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20200130BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   C08L23/10
   C08L23/16
   C08L23/08
   C08L53/00
   H01B3/44 G
   H01B7/02 Z
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-154804(P2018-154804)
(22)【出願日】2018年8月21日
(65)【公開番号】特開2019-104895(P2019-104895A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2018年8月21日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0170052
(32)【優先日】2017年12月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515253049
【氏名又は名称】ハンファ トータル ペトロケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】イ ウンウン
(72)【発明者】
【氏名】キム ボンソク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヨンソン
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−273001(JP,A)
【文献】 特開2000−185617(JP,A)
【文献】 特開2009−024054(JP,A)
【文献】 特開平09−235429(JP,A)
【文献】 特表2013−538244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L23/00−23/36
C08L53/00
C08K3/00−13/08
H01B3/44
H01B7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)プロピレン単独重合体、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体、及びエチレン−プロピレンブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1つのポリオレフィン樹脂29.8重量%〜80重量%と、
(B)エチレン−プロピレンゴム共重合体樹脂10重量%〜40重量%と、
(C)C〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(炭素数4〜8のα−オレフィンとエチレンとのゴム共重合体樹脂)10重量%〜40重量%と
を含み、
2.16kg荷重で230℃にて測定したメルトインデックスが0.5g/10分〜10g/10分で、曲げ弾性率が100MPa〜800MPaで、融解温度が140℃〜170℃で、体積抵抗が1015Ω・cm以上であり、
前記樹脂(B)と前記樹脂(C)との合計含有量が20重量%〜70重量%の範囲であり、
前記ポリオレフィン樹脂(A)は、2.16kg荷重で230℃にて測定したメルトインデックスが1g/10分〜10g/10分で、曲げ弾性率が500MPa〜2000MPaで、融解エンタルピーが40J/g〜100J/gであり、
前記エチレン−プロピレンゴム共重合体樹脂(B)は、2.16kg荷重で230℃にて測定したメルトインデックスが0.5g/10分〜15g/10分で、曲げ弾性率が100MPa以下で、融解エンタルピーが20J/g以下であり、
前記エチレン−プロピレンゴム共重合体樹脂(B)中のエチレンの含有量が、5重量%〜30重量%で、該エチレン−プロピレンゴム共重合体樹脂(B)中のプロピレンの含有量が、70重量%〜95重量%であ
ことを特徴とする、電線の絶縁層用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項2】
前記α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体を構成するα−オレフィン単量体が、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
前記α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体を構成する前記α−オレフィン単量体が、エチレンであることを特徴とする、請求項2に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項4】
前記α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体中の前記α−オレフィン単量体の含有量が、該α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体の融解温度が140℃〜170℃の範囲になるように選択されることを特徴とする、請求項2に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項5】
前記α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体中の前記α−オレフィン単量体の含有量が、該α−オレフィン単量体がエチレンの場合は2重量%〜20重量%であり、該α−オレフィン単量体が1−ブテンの場合は2重量%〜10重量%であることを特徴とする、請求項4に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項6】
前記エチレン−プロピレンブロック共重合体を構成するエチレンの含有量が、2重量%〜25重量%であり、該エチレン−プロピレンブロック共重合体を構成するプロピレンの含有量が、75重量%〜98重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項7】
前記C〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(C)を構成するC〜Cのα−オレフィン(炭素数4〜8のα−オレフィン)が、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、及び1−オクテンからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項8】
前記C〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(C)を構成する前記C〜Cのα−オレフィンが、1−ブテン、1−ヘキセン、又は1−オクテンであることを特徴とする、請求項に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項9】
前記C〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(C)中のα−オレフィン単量体の含有量が、該α−オレフィン単量体が1−ブテンの場合は20重量%〜45重量%であり、該α−オレフィン単量体が1−ヘキセンの場合は10重量%〜30重量%であり、該α−オレフィン単量体が1−オクテンの場合は5重量%〜20重量%であることを特徴とする、請求項に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項10】
前記C〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(C)は、2.16kg荷重で230℃にて測定したメルトインデックスが0.5g/10分〜20g/10分で、曲げ弾性率が100MPa以下で、融解エンタルピーが10J/g以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項11】
キシレン溶剤に溶解させて分析した組成として、30重量%〜75重量%のプロピレン単量体と、20重量%〜50重量%のエチレン単量体と、5重量%〜20重量%の他のα−オレフィン単量体とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項12】
酸化防止剤、中和剤、透明核剤、及び長期熱安定剤からなる群より選択される添加剤を1種以上さらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項13】
前記添加剤の含有量が、ポリオレフィン樹脂組成物の総重量を基準として0.2重量%〜1重量%の範囲であることを特徴とする、請求項12に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項14】
−40℃にて測定したアイゾット(IZOD)衝撃強度が、2.0kgf・cm/cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項15】
ゴム成分である溶剤抽出物の固有粘度が、1.0dl/g〜4.0dl/gであることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項16】
前記ポリオレフィン樹脂(A)を30重量%〜80重量%含む、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温衝撃強度、軟質性(softness)、及び熱安定性に優れたポリオレフィン樹脂組成物に関する。具体的には、本発明は、多量の異種ゴム相がポリオレフィン連続相に均一に分散されており、低温衝撃強度及び軟質性に優れているとともに、異種ゴム相とポリオレフィン連続相との安定した構造により、耐熱性にも優れているので、架橋構造を有していなくとも、電線の絶縁層材料として使用することができるポリオレフィン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンの一種であるポリプロピレンは、優れた機械的特性及び遮断性と、高い熱安定性とを有するのに対し、低温での衝撃強度が脆弱で剛性が高いので、軟質性を必要とする電線の絶縁材料として使用することは適切でない。このことにより、軟質性と耐寒性とを同時に必要とする送配電用の電力移送管の絶縁材料としては、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなど)が主に使用されている。
【0003】
ところが、ポリエチレンは融点が低く、高温での融解や分解が発生するので、常時稼動温度は90℃までに制限される。この常時稼動温度が上昇すると送配電線の電力移送効率が改善されるので、絶縁材料の耐熱性を改善するために、ポリエチレン、エチレン−プロピレンゴム共重合体、エチレン−プロピレン−ジエンゴム三元重合体などを架橋させて使用している。
【0004】
しかし、上記のごとき架橋ポリマーは、使用寿命に達した後のリサイクルが困難で、焼却や廃棄しなければならず、別途の設備に起因する追加コストが発生する。また、架橋過程で発生する架橋副産物による環境汚染の可能性が高く、水架橋させる場合には製品の乾燥過程を追加する必要があり、押出時に発生する熱によって過度に架橋される場合には加工性が制限されるという欠点がある。
【0005】
そこで、ポリプロピレンの耐熱性を確保すると同時に、軟質性及び耐寒性を改善するための研究が進められてきた。例えば、特許文献1には、3種のプロピレンゴム共重合体を連続反応させて軟質性及び透明度を改善したポリプロピレン組成物が開示されている。しかし、この組成物は、低温での衝撃強度の改善が微々たるもので、屋外での仮設置時あるいは気候に応じた設置又は移動の際に破壊する可能性があるので、電線の用途に適切ではない。さらにこの組成物は、融点が低いので耐熱性が低下し、電線の絶縁材料には適していない。
【0006】
特許文献2には、α−オレフィン共単量体とプロピレン共重合体とからなるゴム相を混合して軟質性を確保した熱可塑性高分子材料が開示されている。しかし、ゴム相の含有量が少ないと、該高分子材料の軟質性が低下するので、該高分子材料を絶縁材料とした電線の仮設置が困難になる。逆にゴム相の含有量が多いと、電線の機械的特性を大きく左右するポリプロピレンの利点がなくなるという問題が生じる。
【0007】
また、特許文献3には、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレンゴム、及びエチレン−α−オレフィン共重合体を含む、自動車の内装・外装材用の熱可塑性ポリオレフィン樹脂組成物が開示されている。しかし、この組成物は、メルトインデックスが12.7g/10分〜20.1g/10分の範囲と比較的高く、しかも熱変形温度が61℃〜75℃と低いので、電線の絶縁材料には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第9416207号明細書
【特許文献2】大韓民国特許出願公開第2014−0040082号公報
【特許文献3】大韓民国特許出願公開第1998−0009364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、低温での衝撃強度及び軟質性に優れるとともに、多量のゴム相を含むにもかかわらず、ポリオレフィン固有の耐熱性及び機械的特性を有するだけでなく、従来の材料と同様の絶縁特性をも有し、電線の絶縁層としての使用に適したポリオレフィン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明の一態様により、
(A)プロピレン単独重合体、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体、及びエチレン−プロピレンブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1つのポリオレフィン樹脂29.8重量%〜80重量%、好ましくは30重量%〜80重量%と、
(B)エチレン−プロピレンゴム共重合体樹脂10重量%〜40重量%と、
(C)C〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(炭素数4〜8のα−オレフィンとエチレンとのゴム共重合体樹脂)10重量%〜40重量%と
を含み、
2.16kg荷重で230℃にて測定したメルトインデックスが0.5g/10分〜10g/10分で、曲げ弾性率が100MPa〜800MPaで、融解温度が140℃〜170℃であり、
前記樹脂(B)と前記樹脂(C)との合計含有量が20重量%〜70重量%の範囲であるポリオレフィン樹脂組成物が提供される。
【0011】
好ましくは、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体を構成するα−オレフィン単量体が、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンからなる群より選択される1種以上である。
【0012】
より好ましくは、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体を構成するα−オレフィン単量体が、エチレンである。
【0013】
より好ましくは、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体中のα−オレフィン単量体の含有量が、該α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体の融解温度が140℃〜170℃の範囲になるように選択される。
【0014】
さらに好ましくは、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体中のα−オレフィン単量体の含有量が、該α−オレフィン単量体がエチレンの場合は2重量%〜20重量%であり、該α−オレフィン単量体が1−ブテンの場合は2重量%〜10重量%である。
【0015】
好ましくは、エチレン−プロピレンブロック共重合体を構成するエチレンの含有量が、2重量%〜25重量%であり、該エチレン−プロピレンブロック共重合体を構成するプロピレンの含有量が、75重量%〜98重量%である。
【0016】
好ましくは、ポリオレフィン樹脂(A)は、2.16kg荷重で230℃にて測定したメルトインデックスが1g/10分〜10g/10分で、曲げ弾性率が500MPa〜2000MPaで、融解エンタルピーが40J/g〜100J/gである。
【0017】
好ましくは、エチレン−プロピレンゴム共重合体樹脂(B)中のエチレンの含有量が、5重量%〜30重量%であり、該エチレン−プロピレンゴム共重合体樹脂(B)中のプロピレンの含有量が、70重量%〜95重量%である。
【0018】
好ましくは、エチレン−プロピレンゴム共重合体樹脂(B)は、2.16kg荷重で230℃にて測定したメルトインデックスが0.5g/10分〜15g/10分で、曲げ弾性率が100MPa以下で、融解エンタルピーが20J/g以下である。
【0019】
好ましくは、C〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(C)を構成するC〜Cのα−オレフィン(炭素数4〜8のα−オレフィン)が、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、及び1−オクテンからなる群より選択される1種以上である。
【0020】
より好ましくは、C〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(C)を構成するC〜Cのα−オレフィンが、1−ブテン、1−ヘキセン、又は1−オクテンである。
【0021】
さらに好ましくは、C〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(C)中のα−オレフィン単量体の含有量が、該α−オレフィン単量体が1−ブテンの場合は20重量%〜45重量%であり、該α−オレフィン単量体が1−ヘキセンの場合は10重量%〜30重量%であり、該α−オレフィン単量体が1−オクテンの場合は5重量%〜20重量%である。
【0022】
好ましくは、C〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(C)は、2.16kg荷重で230℃にて測定したメルトインデックスが0.5g/10分〜20g/10分で、曲げ弾性率が100MPa以下で、融解エンタルピーが10J/g以下である。
【0023】
好ましくは、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、30重量%〜75重量%のプロピレン単量体と、20重量%〜50重量%のエチレン単量体と、5重量%〜20重量%の他のα−オレフィン単量体とを含む。
【0024】
好ましくは、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、酸化防止剤、中和剤、透明核剤、及び長期熱安定剤からなる群より選択される添加剤を1種以上さらに含むことができる。
【0025】
より好ましくは、添加剤の含有量が、ポリオレフィン樹脂組成物の総重量を基準として0.2重量%〜1重量%の範囲である。
【0026】
好ましくは、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、−40℃にて測定したアイゾット(IZOD)衝撃強度が、2.0kgf・cm/cm以上である。
【0027】
好ましくは、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、体積抵抗が、1015Ω・cm以上である。
【0028】
好ましくは、本発明のポリオレフィン樹脂組成物において、ゴム成分である溶剤抽出物の固有粘度が、1.0dl/g〜4.0dl/gである。
【発明の効果】
【0029】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、多量の異種ゴム相がポリオレフィン連続相に均一に分散されており、低温衝撃強度及び軟質性に優れているとともに、ポリオレフィン連続相と異種ゴム相との相転移が起こらないので、機械的特性に優れており、異種ゴム相とポリオレフィン連続相との安定した構造により、耐熱性に優れ、かつ絶縁強度にも優れているので、架橋構造を有していなくとも、電線の絶縁層材料として使用することができ、リサイクル可能で環境に優しい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、実施例2及び3のポリオレフィン樹脂組成物、並びに、比較例3及び4のポリオレフィン樹脂組成物から製造された試片について、低温アイゾット(IZOD)衝撃強度を比較したグラフである。
図2図2は、実施例3のポリオレフィン樹脂組成物から製造された試片の断面を、走査電子顕微鏡で観察した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0032】
本発明の一態様によるポリオレフィン樹脂組成物は、
(A)プロピレン単独重合体、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体、及びエチレン−プロピレンブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1つのポリオレフィン樹脂29.8重量%〜80重量%、好ましくは30重量%〜80重量%と、
(B)エチレン−プロピレンゴム共重合体樹脂10重量%〜40重量%と、
(C)C〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂10重量%〜40重量%と
を含み、
2.16kg荷重で230℃にて測定したメルトインデックスが0.5g/10分〜10g/10分で、曲げ弾性率が100MPa〜800MPaで、融解温度が140℃〜170℃であり、
前記樹脂(B)と前記樹脂(C)との合計含有量が20重量%〜70重量%の範囲である。
【0033】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物において、連続相を構成するポリオレフィン樹脂(A)は、プロピレン単独重合体、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体、及びエチレン−プロピレンブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂である。
【0034】
ここで、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体を構成するα−オレフィン単量体の例としては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンなどが挙げられ、好ましくはエチレンである。
【0035】
α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体中のα−オレフィン単量体の含有量は、該α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体の融解温度が140℃〜170℃の範囲になるように選択することができ、例えば、該α−オレフィン単量体がエチレンの場合は2重量%〜20重量%で、該α−オレフィン単量体が1−ブテンの場合は2重量%〜10重量%であり得る。
【0036】
エチレン−プロピレンブロック共重合体を構成するエチレンの含有量は、2重量%〜25重量%であり、該エチレン−プロピレンブロック共重合体を構成するプロピレンの含有量は、75重量%〜98重量%であり得る。
【0037】
ポリオレフィン樹脂(A)は、2.16kg荷重で230℃にて測定したメルトインデックスが1g/10分〜10g/10分で、曲げ弾性率が500MPa〜2000MPaで、融解エンタルピーが40J/g〜100J/gであり得る。
【0038】
商業的に入手可能なポリオレフィン樹脂(A)の例としては、HF11PT(プロピレン100重量%からなるプロピレン単独重合体;ハンファトータル、韓国)、RF401(プロピレン98重量%とエチレン2重量%とからなるエチレン−プロピレンランダム共重合体;ハンファトータル、韓国)、CF330(プロピレン94重量%とエチレン6重量%とからなるエチレン−プロピレンブロック共重合体;ハンファトータル、韓国)、CF309(プロピレン94重量%とエチレン6重量%とからなるエチレン−プロピレンブロック共重合体;ハンファトータル、韓国)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物において、ゴム相を構成する1つの樹脂(B)は、エチレン−プロピレンゴム共重合体である。エチレン−プロピレンゴム共重合体樹脂(B)において、エチレンの含有量は5重量%〜30重量%で、プロピレンの含有量は70重量%〜95重量%であり得る。
【0040】
エチレン−プロピレンゴム共重合体樹脂(B)は、2.16kg荷重で230℃にて測定したメルトインデックスが0.5g/10分〜15g/10分で、曲げ弾性率が100MPa以下で、融解エンタルピーが20J/g以下であり得る。また、樹脂(B)をキシレン(xylene)に、1%の濃度で140℃にて1時間溶解させ、常温で2時間経過した後に抽出した溶剤抽出物の重量は、元の重量の75%〜100%であり、135℃のデカリン(decalin)溶液で、粘度計を用いて測定した溶剤抽出物の固有粘度は、1.0dl/g〜3.0dl/gであり得る。
【0041】
商業的に入手可能なエチレン−プロピレンゴム共重合体樹脂(B)の例としては、バーシファイ(Versify(登録商標);ダウケミカル社)、ビスタマックス(Vistamaxx(登録商標);エクソンモービル社)、タフマー(Tafmer(登録商標);三井化学(株))、KEP(錦湖石油化学社)などが挙げられるが、これらに限定されるものでではない。
【0042】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物において、ゴム相を構成する他の樹脂(C)は、少なくとも1つのC〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体である。
【0043】
〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(C)を構成するC〜Cのα−オレフィンの例としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、及び1−オクテンが挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、又は1−オクテンである。ここで、C〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(C)中のα−オレフィン単量体の含有量が、該α−オレフィン単量体が1−ブテンの場合は20重量%〜45重量%で、該α−オレフィン単量体が1−ヘキセンの場合は10重量%〜30重量%で、該α−オレフィン単量体が1−オクテンの場合は5重量%〜20重量%であり得る。
【0044】
〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(C)は、2.16kg荷重で230℃にて測定したメルトインデックスが0.5g/10分〜20g/10分で、曲げ弾性率が100MPa以下で、融解エンタルピーが10J/g以下であり得る。また、樹脂(C)をキシレンに、1%の濃度で140℃にて1時間溶解させ、常温で2時間経過した後に抽出した溶剤抽出物の重量は、元の重量の75%〜100%であり、135℃のデカリン溶液で、粘度計を用いて測定した溶剤抽出物の固有粘度は、1.0dl/g〜3.0dl/gで、ガラス転移温度は、−40℃以下であり得る。
【0045】
商業的に入手可能なC〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(C)の例としては、エンゲージ(Engage(登録商標);ダウケミカル社)、イグザクト(Exact(登録商標);エクソンモービル社)、Lucene(LG化学社)、タフマー(三井化学(株))、Solumer(登録商標;SKケミカル社)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物において、連続相を構成するポリオレフィン樹脂(A)の含有量は、29.8重量%〜80重量%、好ましくは30重量%〜80重量%である。ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が29.8重量%未満であると、連続相の構成が難しく、80重量%を超えると、曲げ弾性率が大きく、軟質性が低下する。
【0047】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物において、ゴム相を構成するエチレン−プロピレンゴム共重合体樹脂(B)及びC〜Cα−オレフィン−エチレンゴム共重合体樹脂(C)の含有量は、それぞれ10重量%〜40重量%である。樹脂(B)及び樹脂(C)それぞれの含有量が40重量%を超える場合は、1つのゴム相の成分が過量を占めるようになり、連続相であるポリプロピレン系樹脂の構造に依存する耐熱性、引張強度、曲げ弾性率等が低下する。また、樹脂(B)及び樹脂(C)それぞれの含有量が10重量%未満の場合は、ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が多く、曲げ弾性率が大きいので、軟質性が低下し、ゴム相を構成する樹脂(B)及び樹脂(C)に起因する低温衝撃強度の改善効果が期待できない。
【0048】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物において、ゴム相を構成する樹脂(B)と樹脂(C)との合計含有量は、20重量%〜70重量%の範囲である。両ゴム共重合体樹脂(B)と樹脂(C)との合計含有量が70重量%を超える場合は、全体のゴム相が過量を占めるようになり、連続相であるポリプロピレン系樹脂の構造に依存する耐熱性、引張強度、曲げ弾性率等が低下する。また、両ゴム共重合体樹脂(B)と樹脂(C)との合計含有量が20重量%未満の場合は、曲げ弾性率が大きいので、軟質性が低下し、樹脂(B)及び樹脂(C)に起因する低温衝撃強度の改善効果が期待できない。
【0049】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物をキシレン溶剤に溶解させて分析すると、該ポリオレフィン樹脂組成物には、30重量%〜75重量%のプロピレン単量体と、20重量%〜50重量%のエチレン単量体と、5重量%〜20重量%のその他のα−オレフィン単量体とが含まれる。このような組成比を有するポリオレフィン樹脂組成物は、連続相がプロピレンで構成され、耐熱性及び電気的特性に優れており、α−オレフィン単量体によってガラス転移温度が低く、低温衝撃強度が増大し、エチレン含有量による連続相内のゴム共重合体の含有量の増加により、軟質性が改善される。プロピレン単量体の含有量が前記下限値よりも少ないと、連続相が他の相で構成され、耐熱性が低下する。逆に、プロピレン単量体の含有量が前記上限値よりも多いと、曲げ弾性率が高く、設置性及び衝撃特性が低下する。
【0050】
一方、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、前記樹脂成分の他に、酸化防止剤、中和剤、透明核剤、長期熱安定剤などの添加剤を、本発明の特徴を阻害しない範囲内で含むことができる。
【0051】
例えば、酸化防止剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のペンタエリスリトールテトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシナメート;イルガノックス(Irganox(登録商標)1010)を用いることができる。また、触媒残渣を除去するための中和剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のハイドロタルサイト(Hycite(登録商標)713)を用いることができる。
【0052】
添加物の含有量は、好ましくは、ポリオレフィン樹脂組成物の総重量を基準として、0.2重量%〜1重量%の範囲であり得る。
【0053】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、2.16kg荷重で230℃にて測定したとき、0.5g/10分〜10g/10分の範囲のメルトインデックスを有する。ポリオレフィン樹脂組成物のメルトインデックスが0.5g/10分未満であると、押出加工の際に負荷が上昇し、生産性が低下する現象が現れる。逆に、ポリオレフィン樹脂組成物のメルトインデックスが10g/10分を超えると、該ポリオレフィン樹脂組成物の溶融張力が低く、加工時にたわみが生じて不均一な外観となり、電気的特性が大きく減少する。
【0054】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、100MPa〜800MPaの範囲の曲げ弾性率を有する。ポリオレフィン樹脂組成物の曲げ弾性率が前記下限値よりも低いと、ポリプロピレンの特徴である耐熱性及び強度が低下する。逆に、ポリオレフィン樹脂組成物の曲げ弾性率が前記上限値よりも高いと、剛性が高く曲げ難くなり、電線の輸送及び布設が困難になる。
【0055】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、140℃〜170℃の範囲の融解温度を有する。ポリオレフィン樹脂組成物の融解温度が140℃よりも低いと、瞬時過電圧が発生した際に、温度上昇により絶縁層の一部が溶解し、電線が破壊される現象が発生する。逆に、ポリオレフィン樹脂組成物の融解温度が170℃よりも高いと、曲げ弾性率が大きすぎて、軟質性を有する樹脂組成物への改善が困難である。
【0056】
一方、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、−40℃にてASTM D256に基づいて測定したアイゾット(IZOD)衝撃強度が2.0kgf・cm/cm以上であり得る。一般的なプロピレン単独重合体やエチレン−プロピレンブロック共重合体の低温衝撃強度は、連続相におけるプロピレンに対するエチレンの比率、及び、ゴム相におけるプロピレンに対するエチレンの比率によって決定される。エチレン含有量が高い場合は、低温衝撃強度が高くなるが、連続相をプロピレンで重合するとともにエチレン含有量を増加させる場合は、連続相にエチレンが重合され、連続相の耐熱性が低下する。したがって、商業的に用いられるポリプロピレン組成物の場合、ガラス転移温度が0℃〜10℃及び−30℃〜−20℃において現れ、−40℃ではゴムの含有量と衝撃強度との間に関係がなく、ゴム相の含有量が増加しても衝撃強度は向上しない。その結果、従来のポリプロピレン組成物の場合は、−40℃にてASTM D256に基づいて測定したアイゾット(IZOD)衝撃強度が、2.0kgf・cm/cm未満である。
【0057】
一方、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、多量の異種ゴム相がポリプロピレン連続相に均一に分散しており、また、α−オレフィン−エチレンゴムのエチレン含有量が多く、ガラス転移温度が−40℃以下で観察されるので、−40℃にて測定したアイゾット衝撃強度が、2.0kgf・cm/cm以上であり得る。
【0058】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物の体積抵抗は、好ましくは1015Ω・cm以上、より好ましくは1016Ω・cm以上であり、高圧電線の絶縁体としての使用に適している。ポリオレフィン樹脂組成物中のゴム相の含有量が過量になると、組成物の体積抵抗が1015Ω・cm未満となり、絶縁材料として不適合になる。
【0059】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物において、ゴム成分である溶剤抽出物の固有粘度は、1.0dl/g〜4.0dl/gであることが好ましい。溶剤抽出物の固有粘度が1.0dl/g未満であると、ゴム成分による衝撃強度が改善され難い。逆に、溶剤抽出物の固有粘度が4.0dl/gを超えると、加工性が低下し、白化が生じる場合がある。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例により、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を例示するためだけのものであり、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0061】
以下の実施例及び比較例において、使用した樹脂成分及び添加剤は次のとおりである。
A1:プロピレン100重量%からなるプロピレン単独重合体
(ハンファトータル社;HF11PT)
A2:プロピレン98重量%とエチレン2重量%とからなるエチレン−プロピレンランダム共重合体
(ハンファトータル社;RF401)
A3:プロピレン94重量%とエチレン6重量%とからなるエチレン−プロピレンブロック共重合体
(ハンファトータル社;CF330)
【0062】
B1:プロピレン75重量%とエチレン25重量%とからなるエチレン−プロピレンゴム共重合体
(メルトインデックス:2g/10分、Tm:160℃)
B2:プロピレン80重量%とエチレン20重量%とからなるエチレン−プロピレンゴム共重合体
(エクソンモービル社;ビスタマックス6202)
B3:プロピレン85重量%とエチレン15重量%とからなるエチレン−プロピレンゴム共重合体
(ダウケミカル社;バーシファイ2400)
【0063】
C1:1−ヘキセン15重量%とエチレン85重量%とからなる1−ヘキセン−エチレンゴム共重合体
(メタロセン触媒を前重合して炭化水素溶媒の不在下で、70℃〜80℃の温度及び10気圧〜30気圧の圧力で重合を行った)
(メルトインデックス:3g/10分、Tm:115℃)
C2:1−オクテン15重量%とエチレン85重量%とからなる1−オクテン−エチレンゴム共重合体
(ダウケミカル社;エンゲージ8842)
【0064】
酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシナメート
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ;イガノックス1010)
中和剤:ハイドロタルサイト
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ;Hycite713)
【0065】
<実施例1>
(A)74.8重量%のポリオレフィン樹脂A1と、(B)10重量%のゴム共重合体樹脂B1と、(C)15重量%のゴム共重合体樹脂C1と、0.2重量%の酸化防止剤及び中和剤とからなるポリオレフィン樹脂組成物を、以下の方法で製造した。
【0066】
3種類の上記樹脂(A)、(B)、及び(C)と、酸化防止剤及び中和剤とを、ヘンゼルミキサー(SSM−75)で30分間混合した後、プラテック(TEK−30)2軸押出機により230℃で溶融押出し、ペレタイザーを用いてペレット化した。このように製造された樹脂組成物ペレットから、150トン射出機(selexte150)を用いて、ASTM4号規定による試片を射出した。
【0067】
<実施例2〜4及び比較例1〜6>
組成物を構成する樹脂の種類及び含有量を下記表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって樹脂組成物を製造した。表1に記載された数字は、重量%基準の含有量を示す。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例1〜4及び比較例1〜6で製造された樹脂組成物の物性を、下記の方法及び基準に基づいて測定した。その結果を下記表2に示す。
【0070】
(1)メルトインデックス(melt index)
CEAST MF10装置を用いて、ASTM D1238の条件に基づいて、2.16kgの荷重で230℃にて測定した。
【0071】
(2)溶剤抽出物(xylene soluble)の含有量
ポリプロピレン系樹脂又は組成物を、キシレン(xylene)に1%の濃度で、140℃において1時間溶解させ、常温で2時間経過した後に抽出し、その重量を測定した。この抽出物の重量を、ポリプロピレン系樹脂又は組成物全体の重量に対する百分率で表示した。
【0072】
(3)溶剤抽出物の固有粘度
粘度計を用いて、135℃のデカリン(decalin)溶液で溶剤抽出物の固有粘度を測定した。
【0073】
(4)融解温度
TAインスツルメントQ2000示差走査熱量計(differential scanning calorimetry;DSC)を用いて、サンプルを200℃で10分間等温に維持して熱履歴を除去した後、200℃から30℃まで毎分10℃ずつ冷却して結晶化させ、同一熱履歴を有するようにした。その後、30℃で10分間等温に維持し、さらに毎分10℃ずつ昇温させ、ピーク温度から融解温度(melting temperature;Tm)を求めた。
【0074】
(5)曲げ弾性率(flexural modulus;FM)
ASTM D790に基づいて製造した試片を射出成形した後、23±2℃、50±5%RHの条件下で48時間放置後、72時間以内にUTM装置で測定した。試片の両支持台の地点間の距離は48mmであり、5mm/分の速度で測定した。
【0075】
(6)耐寒打撃
射出温度240℃において、長さ38mm、幅6mm、厚さ2mmの試片を射出した。KS C3004の方法に基づいて、−40℃で試片5個に対して耐寒打撃試験を行い、破壊された試片の数を確認した。破壊された試片が1個以下の場合を通過とし、1個を超える場合を失敗として評価した。
【0076】
(7)低温アイゾット(IZOD)衝撃強度(−40℃)
製造された射出試片を5個以上成形した後、23±2℃、50±5%RHの条件下で48時間放置後、72時間以内に測定した。ASTM D256に規定のノッチを有するサンプルを、−40℃に維持される冷凍貯蔵庫に2時間以上保管した後、30分以内に試験を行った。錘を指定の位置に固定した後、30kgの錘重量で回転運動を行い、破壊されたときの数値を記録した。これを5回繰り返し、平均値を算出した。実施例2及び3の樹脂組成物、並びに、比較例3及び4の樹脂組成物から製造された射出試片の低温アイゾット衝撃強度を、図1のグラフに示す。
【0077】
(8)加熱変形率
射出温度240℃において、長さ30mm、幅15mm、厚さ2mmの試片を射出した。KS C IEC60811−508の方法に基づいて、130℃にて6時間の間に1.6kgの荷重を加えた際の変形された厚さを求めた。この変形された厚さを初期の厚さで除して加熱変形率を得た。加熱変形率が50%未満の場合を通過とし、50%以上の場合を失敗として評価した。
【0078】
(9)交流絶縁破壊電圧
ポリプロピレン系樹脂又は組成物から製造された試片について、実験用押出機(HAAKE extruder)を用いて、厚さ200μmのシートを作製した。ASTM D149−92の方法に基づいて、直径12.7mmの球状電極(spherical electrodes)を用いて、シートの交流絶縁破壊電圧を常温で測定した。
【0079】
(10)体積抵抗
ASTM D257の方法に基づいて平坦なシートを作製し、三菱化学(株)のHIRESTA(登録商標)UX8000を用いて測定した。
【0080】
(11)ゴム相の分散状態
実施例3のポリオレフィン樹脂組成物から製造された試片について、キシレン溶剤を用いてゴム相を溶出させた後、その断面を走査電子顕微鏡で観察した。この顕微鏡写真を図2に示す。
【0081】
(12)引張強度及び伸び率
ASTM4号により射出した試片を、23±2℃、50±5%RHの条件下で48時間放置後、72時間以内にUTM装置により、50mm/分の速度で引張しながら負荷を測定した。破断引張強度及び伸び率は、引張された試片が切断した時点の負荷及び長さを測定して計算した。
【0082】
【表2】
【0083】
上記表2及び図1から分かるように、本発明の範囲に属する実施例によって製造されたポリオレフィン樹脂組成物は、低温衝撃強度及び軟質性に優れ、連続相とゴム相との相転移が起こらないので、機械的特性に優れており、異種ゴム相とポリオレフィン連続相との安定した構造により、耐熱性に優れるとともに、絶縁強度にも優れている。また、図2から分かるように、本発明の実施例によって製造されたポリオレフィン樹脂組成物では、異種ゴム相がポリオレフィン連続相に均一に分散されている。
【0084】
一方、本発明の範囲に属していない比較例によって製造されたポリオレフィン樹脂組成物は、前記特性及び物性のうち少なくとも1つに劣っていた。
図1
図2