特許第6643448号(P6643448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643448
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】ギャップ充填方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20200130BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20200130BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20200130BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20200130BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   G03F7/11 503
   C08G61/12
   C08L65/00
   G03F7/26 511
   G03F7/20 501
   G03F7/20 521
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-213372(P2018-213372)
(22)【出願日】2018年11月14日
(65)【公開番号】特開2019-91038(P2019-91038A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2018年11月22日
(31)【優先権主張番号】62/586,298
(32)【優先日】2017年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・エフ・キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】ケレン・ヅァン
(72)【発明者】
【氏名】リー・クイ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・グリーン
(72)【発明者】
【氏名】シンタロウ・ヤマダ
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−053155(JP,A)
【文献】 特開2009−088118(JP,A)
【文献】 特表2004−506797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板表面に充填されるべき複数のギャップを有するレリーフ像を有する半導体デバイス基板を提供することと、(b)前記レリーフ像にコーティング組成物を塗布し、前記ギャップを充填してコーティング層を提供することであって、前記コーティング組成物は、(i)2つ以上のシクロペンタジエノン部分を有する1つ以上の第1のモノマーと、芳香族部分および2つ以上のアルキニル部分を有する1つ以上の第2のモノマーとを重合単位として含む、ポリアリーレンオリゴマーであって、1000〜6000DaのM、1〜2のPDI、および1:>1の全第1のモノマー対全第2のモノマーのモル比を有する、ポリアリーレンオリゴマーと、(ii)1種以上の有機溶媒と、を含む、コーティング層を提供することと、(c)前記コーティング層を硬化させてポリアリーレン膜を形成することと、(d)前記ポリアリーレン膜上に無機ハードマスク層を配置することと、(e)前記無機ハードマスク層上にフォトレジスト層を配置することと、(f)前記フォトレジスト層にパターン形成することと、(g)前記パターンを前記フォトレジスト層から前記ポリアリーレン膜に転写することと、(h)次に、前記パターンを前記半導体デバイス基板に転写することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリアリーレンオリゴマーが2000〜3500DaのMを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリアリーレンオリゴマーが1.25〜1.75のPDIを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアリーレンオリゴマーが2〜3.75の重合度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記全第1のモノマー対全第2のモノマーのモル比が1:1.01〜1:1.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ハードマスク層と前記フォトレジスト層との間に有機反射防止剤(antireflectant)層を配置することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリアリーレンオリゴマーが、重合単位として1つ以上のエンドキャッピングモノマーをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの第1のモノマーは、式(1)に示す構造を有し、
【化1】
式中、各R10は、独立して、H、C1−6−アルキル、および任意に置換されたC5−20−アリールから選択され、Arは、5〜60個の炭素を有するアリール部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの第2のモノマーは、式(5)に示す構造を有し、
【化2】
式中、各ArおよびArは、独立して、C5−30−アリール部分であり、各Rは、独立して、Hおよび任意に置換されたC5−30−アリールから選択され、各Rは、独立して、C1−10−アルキル、C1−10−ハロアルキル、C1−10−ヒドロキシアルキル、C1−10−アルコキシ、CN、およびハロから選択され、各Yは、独立して、単共有化学結合(single covalent chemical bond)または−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−C(=O)−、(C(R−、C6−30−アリール、および−(C(RZ1−(C6−30−アリール)−(C(RZ2−から選択される二価の連結基であり、各Rは、独立して、H、ヒドロキシ、ハロ、C1−10−アルキル、C1−10−ハロアルキルおよびC6−30−アリールから選択され、a1=0〜4、各a2=0〜4、b1=1〜4、各b2=0〜2、a1+各a2=0〜6、b1+各b2=2〜6、d=0〜2、z=1〜10、z1=0〜10、z2=0〜10、およびz1+z2=1〜10である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリアリーレン膜を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリアリーレンオリゴマーと有機溶媒とを含む組成物であって、前記ポリアリーレンオリゴマーは、2つ以上のシクロペンタジエノン部分を有する1つ以上の第1のモノマーと、芳香族部分および2つ以上のアルキニル部分を有する1つ以上の第2のモノマーと、1つのジエノフィル部分を有する1つ以上のエンドキャッピングモノマーとを重合単位として含み、前記ポリアリーレンオリゴマーは、1000〜6000DaのM、1〜2のPDI、および1:>1の全第1のモノマー対全第2のモノマーのモル比を有する、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ポリアリーレン材料の分野に関し、より具体的には、エレクトロニクス用途に使用するためのポリアリーレンオリゴマーに関する。
【0002】
リソグラフィプロセスでは、レジストパターンが高すぎる(高アスペクト比)場合に使用される現像剤からの表面張力によってレジストパターンが崩壊することがよく知られている。高アスペクト比が望まれるパターン崩壊のこの問題に対処することができる多層レジストプロセス(3層および4層プロセスなど)が考案されている。そのような多層プロセスは、レジスト上層、1つ以上の中間層、および最下層(または下層)を使用する。このような多層レジストプロセスでは、レジストパターンを提供するために、上部フォトレジスト層を画像形成させ、典型的な様式で現像してレジストパターンを提供する。パターンは、典型的にはエッチングによって、1つ以上の中間層に転写される。各中間層は、異なるプラズマエッチングのような異なるエッチングプロセスが使用されるように選択される。最後に、パターンは、典型的にはエッチングによって下層に転写される。このような中間層は様々な材料から構成され、下層材料は典型的には高炭素含有材料から構成される。下層材料は、所望の反射防止特性、平坦化特性、およびエッチング選択性を提供するように選択される。
【0003】
下層のための現技術には、化学蒸着(CVD)炭素および溶液処理高炭素含有ポリマーが挙げられる。CVD材料は、高い所有コスト、基板上のトポグラフィ上に平坦化層を形成することができないこと、およびパターンアライメントに使用される633nmの高い吸光度を含むいくつかの大きな制限を有する。これらの理由から、業界は、下層として溶液処理高炭素含有材料に移行している。理想的な下層は、以下の特性:スピンコーティング法により基板上にキャストすることができ、低アウトガスおよび昇華で加熱して熱硬化させることができ、優れた装置互換性のために一般的な処理溶媒に溶解し、フォトレジストイメージングに必要な低反射率を付与するために、現在使用されているシリコンハードマスクおよび最下反射防止剤(bottom antireflectant)(BARC)層と組み合わせて使用するのに適切なn/k比を有し、後続のシリコン−オキシナイトライド(SiON)CVDプロセスの間に損傷しないように>400℃まで熱的に安定である、を満たす必要がある。
【0004】
比較的低分子量の材料は、比較的低い粘度を有し、ビアやトレンチなどの基板内のフィーチャに流れ込み、平坦化層を提供することはよく知られている。下層材料は、400℃までの比較的低いガス抜きで平坦化できなければならない。高炭素含有下層として使用するためには、任意の組成物を加熱して熱硬化させることが不可欠である。しかし、このような比較的低分子量の架橋添加剤は、硬化プロセス中に望ましくないガス抜きまたは昇華が起こりやすい。
【0005】
米国特許出願公開第2009/0081377号は、2つ以上のジエン基を有する化合物と2つ以上のジエノフィル基を有する化合物とのディールス・アルダー反応である光酸発生剤と架橋または架橋可能なポリフェニレンとを有する膜形成用組成物を開示する。この公開された特許出願は、2つ以上のジエン基を有する適切な化合物としてビスシクロペンタジエノンおよび2つ以上のジエノフィル基を有する化合物として多官能性アセチレンを開示している。これらの膜形成用組成物は、改善された機械的強度を示し、集積回路内の様々な永久集積誘電体層を形成する際に使用するために開示されている。
【0006】
ポリアリーレンポリマー、例えば、米国特許出願公開第2009/0081377号は、誘電体材料としてよく知られており、多くの望ましい特性を有する。しかし、ポリアリーレンオリゴマーは、エレクトロニクス産業において従来から使用されている有機溶媒への限られた溶解性が問題であり、これらのポリマーの使用が制限されることが知られている。例えば、The Dow Chemical Companyから商品名SiLK(登録商標)Gとして入手可能な市販のポリアリーレンポリマーの1つは、1:<1のモル比で、特定のビスシクロペンタジエノンモノマーと特定のポリエチニル置換芳香族化合物のディールス・アルダー重合から調製され、約3000〜3500のMおよび約1.3のPDIを有するが、エレクトロニクス産業において従来使用されている有機溶媒への限られた溶解性が問題である。このようなディールス・アルダー重合ポリアリーレンポリマーの溶解性を改善する試みがなされている。例えば、米国特許出願公開第2016/0060393号は、極性部分末端ポリアリーレンオリゴマーを開示し、米国特許出願公開第2017/0009006号は、1つ以上の極性部分を有する繰り返し単位を含む特定の極性部分含有ポリアリーレンポリマーを開示する。このような極性部分含有ポリアリーレンポリマーは、従来のポリアリーレンポリマーと比較してある種の有機溶媒における溶解性が改善されているが、これらのポリマーに含まれる多数の極性部分は、加熱時の膜収縮、誘電率、および吸水性などのポリマーの他の所望の特性に悪影響を与える可能性がある。
【0007】
業界では、ポリマー膜をキャストするためのスピンコーティングに通常使用される有機溶媒に十分に可溶性であり、ボイドなしにギャップを充填し、アウトガスを出さない、および400℃を超える処理温度で安定した硬化膜を形成する、有機ギャップ充填材料が依然として必要とされている。
【0008】
本発明は、(a)基板表面に充填されるべき複数のギャップを有するレリーフ像を有する半導体デバイス基板を提供することと、(b)レリーフ像にコーティング組成物を塗布し、ギャップを充填してコーティング層を提供することであって、コーティング組成物は、(i)2つ以上のシクロペンタジエノン部分を有する1つ以上の第1のモノマーと、芳香族部分および2つ以上のアルキニル部分を有する1つ以上の第2のモノマーとを重合単位として含む、ポリアリーレンオリゴマーであって、1000〜6000DaのM、1〜2のPDI、および1:>1の全第1のモノマー対全第2のモノマーのモル比を有する、ポリアリーレンオリゴマーと、(ii)1種以上の有機溶媒と、を含む、コーティング層を提供することと、(c)コーティング層を硬化させてポリアリーレン膜を形成することと、(d)ポリアリーレン膜上に無機ハードマスク層を配置することと、(e)無機ハードマスク層上にフォトレジスト層を配置することと、(f)フォトレジスト層にパターン形成することと、(g)パターンをフォトレジスト層からポリアリーレン膜に転写することと、(h)次に、パターンを半導体デバイス基板に転写することと、を含む、方法を提供する。
【0009】
また、本発明によって提供されるのはポリアリーレンオリゴマーと有機溶媒とを含む組成物であって、ポリアリーレンオリゴマーは、2つ以上のシクロペンタジエノン部分を有する1つ以上の第1のモノマーと、芳香族部分および2つ以上のアルキニル部分を有する1つ以上の第2のモノマーと、1つ以上のジエノフィル部分を有する1つ以上のエンドキャッピングモノマーとを重合単位として含み、ポリアリーレンオリゴマーは、1000〜6000DaのM、1〜2のPDI、および1:>1の全第1のモノマー対全第2のモノマーのモル比を有する、組成物である。
【0010】
本明細書全体にわたって使用される場合、以下の略語は、文脈上他に明確に示さない限り、以下の意味を有するものとする:℃=摂氏、g=グラム、mg=ミリグラム、L=リットル、mL=ミリリットル、Å=オングストローム、nm=ナノメートル、μm=ミクロン=マイクロメートル、mm=ミリメートル、sec.=秒、min.=分、hr.=時間、DI=脱イオン、ca.=約、Da=ダルトン。特に明記しない限り、すべての量は、重量パーセント(「wt%」)であり、すべての比は、モル比である。そのような数値範囲が合計100%になるように制限されることが明らかである場合を除き、すべての数値範囲は、包括的であり、任意の順序で組み合わせ可能である。冠詞「a」、「an」および「the」は単数形および複数形を指す。「アルキル」は、特に明記しない限り、直鎖、分枝および環状アルキルを指す。「アルキル」は、アルカンラジカルを指し、アルカンモノラジカル、ジラジカル(アルキレン)およびそれ以上のラジカルを含む。「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを指す。ある要素が他の要素の「上に」あると言及される場合、それは他の要素上に直接であり得るか、またはその間に介在要素が存在し得る。対照的に、ある要素が別の要素の「直接上に」あると言及される場合、介在要素は存在しない。本明細書で使用される場合、「ギャップ」とは、本コーティング組成物で充填することが意図される、トレンチ、ホール、ライン間の間隔などの、半導体基板上の任意のアパーチャを指す。
【0011】
本明細書中で使用される、「任意に置換された」部分は非置換部分および置換部分の両方を指し、例えば、「任意に置換されたアリール」は非置換アリールおよび置換アリールの両方を指す。部分が本明細書において「置換された」と記載されていない場合、そのような部分は、文脈上他に明確に示さない限り、「非置換」部分を指す。好ましくは、置換アリールは、1〜3個の置換基を有し、より好ましくは1または2個の置換基を有する。本明細書に含まれるいずれかの式中の芳香族環上の置換基の数が可能な置換基の数より少ない場合、残りの芳香族原子が水素で置換されていることは、当業者には理解されるであろう。「アリール」は、芳香族炭素環および芳香族複素環を指す。用語「アリール」は、芳香族ラジカルを指し、モノラジカル、ジラジカル(アリーレン)、およびそれ以上のラジカルを含む。アリール部分は芳香族炭素環であることが好ましい。「オリゴマー」という用語は、二量体、三量体、四量体およびさらなる硬化が可能な他の比較的低分子量のポリマー材料(すなわち、≦10kDaの、好ましくは≦6kDaのMを有する)を指す。用語「硬化」は、本発明のオリゴマーの全分子量を増加させる、重合または縮合のような任意のプロセスを意味する。「硬化性」とは、特定の条件下で硬化され得る任意の材料を指す。
【0012】
本発明のポリアリーレンオリゴマーは、2つ以上のシクロペンタジエノン部分を有する1つ以上の第1のモノマーおよび芳香族部分および2つ以上のアルキニル部分を有する1つ以上の第2のモノマーを有する重合単位を含む。必要に応じて、1つ以上の第1のモノマーおよび/または1つ以上の第2のモノマーは、1つ以上の、溶解性を高める極性部分、例えば米国特許出願公開第2017/0009006号に開示されている溶解性を高める部分のようなもので置換されていてもよい。適切な溶解性を高める極性部分には、ヒドロキシル、カルボキシル、チオール、ニトロ、アミノ、アミド、スルホニル、スルホンアミド部分、エステル部分、第四級アミノ部分などが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の溶解性を高める極性部分を有する例示的な第1のモノマーは、2017年10月27日に出願された米国特許出願第15/790,606号に開示されている。1つ以上の溶解性を高める極性部分を有する例示的な第2のモノマーは、米国特許出願公開第2017/0009006号に開示されているものである。好ましくは、1つ以上の第1のモノマーは、溶解性を高める極性部分を含まない。好ましくは、1つ以上の第2のモノマーは、溶解性を高める極性部分を含まない。より好ましくは、より多くの第1のモノマーおよび第2のモノマーの両方が、溶解性を高める極性部分を含まない。
【0013】
ディールス・アルダー反応を受けることができる2つ以上のシクロペンタジエノン部分を含むいずれの化合物も、本ポリアリーレンオリゴマーを調製するための第1のモノマーとして適切に使用することができる。あるいは、2つ以上の異なるシクロペンタジエノン部分をそれぞれ有する2つ以上の異なる第1のモノマーの混合物を、第1のモノマーとして使用することができる。好ましくは、1つの第1のモノマーのみが使用される。好ましくは、第1のモノマーは2〜4つのシクロペンタジエノン部分、より好ましくは2つのシクロペンタジエノン部分(本明細書ではビスシクロペンタジエノンとも呼ばれる)を有する。2つ以上のシクロペンタジエノン部分を有する適切な第1のモノマーは、当該技術分野において周知であり、例えば、米国特許第5,965,679号、同第6,288,188号および同第6,646,081号、ならびに国際特許公開第WO97/10193号、同第WO2004/073824号および同第WO2005/030848号に記載されている。
【0014】
また、第1のモノマーは、式(1)に示す構造を有することが好ましく、
【0015】
【化1】
【0016】
式中、各R10は独立してH、C1−6−アルキルおよび任意に置換されたC5−20−アリールから選択され、Arは、5〜60個の炭素を有するアリール部分である。式(1)において、「置換されたC5−20−アリール」は、ハロゲン、C1−10−アルキル、C5−20−アリール、−C≡C−C5−10−アリール、または0〜20個の炭素原子とO、SおよびNから選択される1つ以上のヘテロ原子とを有するヘテロ原子含有ラジカルのうちの1つ以上で、好ましくはハロゲン、C1−10−アルキル、C6−10−アリール、および−C≡C−C6−10−アリールからのもので、より好ましくはフェニルおよび−C≡C−フェニルからのもので、その水素のうちの1つ以上が置換されているC5−20−アリールを指す。本明細書で使用する「置換フェニル」は、ハロゲン、C1−10−アルキル、C5−10−アリール、−C≡C−C5−10−アリール、または0〜20個の炭素原子とO、SおよびNから選択される1個以上のヘテロ原子とを有するヘテロ原子含有ラジカルのうちの1つ以上で、好ましくはハロゲン、C1−10アルキル、C6−10−アリール、および−C≡C−C6−10−アリールのうちの1つ以上で、より好ましくはフェニルおよび−C≡C−フェニルからのもので置換されたフェニル部分を指す。0〜20個の炭素原子とO、SおよびNから選択される1個以上のヘテロ原子とを有する例示的なヘテロ原子含有ラジカルには、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、C1−20−アミド、C1−10−アルコキシ、C1−20−ヒドロキシアルキル、C1−30−ヒドロキシ(アルキレンオキシ)などが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、各R10は独立してC1−6−アルキル、フェニルおよび置換フェニルから選択され、より好ましくは各R10はフェニルまたは置換フェニルであり、さらに好ましくはフェニルまたは−C−C≡C−フェニルである。様々な芳香族部分がArとしての使用に適しており、例えば、米国特許第5,965,679号に開示されるものである。好ましくは、Arは5〜40個の炭素、より好ましくは6〜30個の炭素を有する。Arに有用な好ましいアリール部分は、ピリジル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、コロネニル、テトラセニル、ペンタセニル、テトラフェニル、ベンゾテトラセニル、トリフェニレニル、ペリレニル、ビフェニル、ビナフチル、ジフェニルエーテル、ジナフチルエーテル、下記式(2)において示される構造を有するものが挙げられ、
【0017】
【化2】
【0018】
式中、xは、1、2または3から選択される整数であり、yは、0、1または2から選択される整数であり、各Arは、独立して、
【0019】
【化3】
【0020】
【化4】
【0021】
から選択され、
各R11は、独立して、ハロゲン、C1−6−アルキル、C1−6−ハロアルキル、C1−6−アルコキシ、C1−6−ハロアルコキシ、フェニルおよびフェノキシから選択され、C3は、0〜4の整数であり、d3およびeの各々は0〜3の整数であり、各Zは、独立して単共有化学結合(single covalent chemical bond)、O、S、NR12、PR12、P(=O)R12、C(=O)、C(R13)(R14)およびSi(R13)(R14)から選択され、R12、R13、およびR14は、独立してH、C1−4−アルキル、C1−4−ハロアルキル、およびフェニルから選択される。xは1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。yは0または1であることが好ましく、1であることがより好ましい。好ましくは、各R11は独立して、ハロゲン、C1−4−アルキル、C1−4−ハロアルキル、C1−4−アルコキシ、C1−4−ハロアルコキシおよびフェニルから選択され、より好ましくはフルオロ、C1−4−アルキル、C1−4−フルオロアルキル、C1−4−アルコキシ、C1−4−フルオロアルコキシ、およびフェニルから選択される。より好ましくは、c3は0〜3であることが好ましく、さらに好ましくは0〜2、よりさらに好ましくは0または1である。d3およびeそれぞれは、独立して0〜2であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。一般式(4)において、d3+e=0〜4であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。各Zは、好ましくは、独立してO、S、NR12、C(=O)、C(R13)(R14)、およびSi(R13)(R14)から、より好ましくは、O、S、C(=O)、およびC(R13)(R14)から、さらに好ましくはO、C(=O)、およびC(R13)(R14)から選択される。各R12、R13、およびR14は、独立して、H、C1−4−アルキル、C1−4−フルオロアルキルおよびフェニルから選択されることが好ましく、より好ましくはH、C1−4−アルキル、C1−2−フルオロアルキルおよびフェニルから選択される。好ましくは、Arのアリール部分は、少なくとも1つのエーテル結合、より好ましくは少なくとも1つの芳香族エーテル結合、さらにより好ましくは1つの芳香族エーテル結合を有する。Arは、式(2)の構造を有することが好ましい。好ましくは、各Arは、式(3)を有し、より好ましくは、各Arは、式3を有し、Zは、Oである。
【0022】
ディールス・アルダー反応を起こすことができるアリール部分および2つ以上のアルキニル基を有するいずれの化合物も、本オリゴマーを調製するための第2のモノマーとして適切に使用され得る。好ましくは、第2のモノマーは、2つ以上のアルキニル基で置換されたアリール部分を有する。第2のモノマーとして、2〜4つ、より好ましくは2〜3つのアルキニル部分で置換されたアリール部分を有する化合物を使用することが好ましい。好ましくは、第2のモノマーは、ディールス・アルダー反応を受けることができる2または3つのアルキニル基で置換されたアリール部分を有する。適切な第2のモノマーは、式(5)のものであり、
【0023】
【化5】
【0024】
式中、各ArおよびArは、独立して、C5−30−アリール部分であり、各Rは、独立して、Hおよび任意に置換されたC5−30−アリールから選択され、各Rは、独立して、C1−10−アルキル、C1−10−ハロアルキル、C1−10−ヒドロキシアルキル、C1−10−アルコキシ、CN、およびハロから選択され、各Yは、独立して、単共有化学結合または−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−C(=O)−、(C(R−、C6−30−アリール、および−(C(RZ1−(C6−30−アリール)−(C(RZ2−から選択される二価の連結基であり、各Rは、独立して、H、ヒドロキシ、ハロ、C1−10−アルキル、C1−10−ハロアルキルおよびC6−30−アリールから選択され、a1=0〜4、各a2=0〜4、b1=1〜4、各b2=0〜2、a1+各a2=0〜6、b1+各b2=2〜6、d=0〜2、z=1〜10、z1=0〜10、z2=0〜10、およびz1+z2=1〜10である。各Rは、好ましくは、独立して、HおよびC6−20−アリールから選択され、より好ましくは、HおよびC6−10アリールから選択され、さらにより好ましくは、Hおよびフェニルから選択される。各Rは、独立して、C1−10−アルキル、C1−10−ハロアルキル、C1−10−ヒドロキシアルキル、C1−10−アルコキシ、およびハロから選択されることが好ましく、より好ましくはC1−10−アルキル、C1−10−ハロアルキルおよびハロから選択される。好ましくは、各Yは、独立して、単共有化学結合または−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−C(=O)−、−(C(R−、およびC6−30−アリールから選択される二価の連結基であり、より好ましくは単共有化学結合、−O−、−S−、−S(=O)−、−C(=O)−および−(C(R−である。各Rは、好ましくは、独立して、H、ハロ、C1−10−アルキル、C1−10−ハロアルキル、またはC6−30−アリールであり、より好ましくはフルオロ、C1−6−アルキル、C1−6−フルオロアルキル、またはC6−20−アリールである。好ましくは、a1=0〜3、より好ましくは0〜2である。各a2=0〜2であることが好ましい。好ましくは、a1+a2=0〜4、より好ましくは0〜3、さらに好ましくは0〜2である。b1=1〜3であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。各b2=0〜2であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。好ましくは、b1+各b2=2〜4、より好ましくは2または3である。d=0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。好ましくは、z=1〜6、より好ましくは1〜3、さらにより好ましくはz=1である。好ましくは、z1およびz2はそれぞれ0〜5である。z1+z2=1〜6であることが好ましく、2〜6であることがより好ましい。
【0025】
ArおよびArのための好適なアリール部分は、ピリジル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、コロネニル、テトラセニル、ペンタセニル、テトラフェニル、ベンゾテトラセニル、トリフェニレニル、ペリレニル、ビフェニル、ビナフチル、ジフェニルエーテル、ジナフチルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。式(5)中のArおよびArはそれぞれ独立してC6−20アリール部分であることが好ましい。ArおよびArの好ましいアリール部分は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、テトラセニル、ペンタセニル、テトラフェニル、トリフェニレニル、およびペリレニルである。
【0026】
式(5)の好ましい第2のモノマーは、式(6)および(7)のものであり、
【0027】
【化6】
【0028】
式中、Ar、R、R、a1およびb1は、式(5)について上で定義したとおりであり、a3は0または2であり、a4は0〜2であり、n1およびn2はそれぞれ、独立して0〜4であり、およびYは、単共有化学結合、O、S、S(=O)、C(=O)、C(CH、CF、およびC(CFである。式(7)中の括弧(「[ ]」)が、フェニル環に縮合した芳香族環の数を指すことは、当業者には理解されるであろう。したがって、n1(またはn2)=0である場合、芳香族部分はフェニルであり、n1(またはn2)=1である場合、芳香族部分はナフチルであり、n1(またはn2)=2である場合、芳香族部分はアントラセニルまたはフェナントリルであってもよく、n1(またはn2)=3である場合、芳香族部分はテトラセニル、テトラフェニル、トリフェニレニル、またはピレニルであってもよく、n1(またはn2)=4である場合、芳香族部分はペリレニルまたはベンゾテトラセニルであってもよい。式(6)において、a1は0〜2であることが好ましく、0であることがより好ましい。式(6)中のb1は1または2であることが好ましい。Rは好ましくはHまたはフェニルである。式(6)および(7)のそれぞれにおける各Rは、好ましくは、独立して、C1−10−アルキル、C1−10−ハロアルキル、C1−10−ヒドロキシアルキル、C1−10−アルコキシ、およびハロから選択され、より好ましくはC1−10−アルキル、C1−10−ハロアルキルおよびハロから選択される。式(6)中のArは、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、およびペリレニルであることが好ましく、フェニル、ナフチルおよびピレニルであることがより好ましく、フェニルであることがさらに好ましい。式(7)において、n1およびn2は独立して0、1、3、および4、より好ましくは0、1、および3、さらにより好ましくは1および3から選択されることが好ましい。n1=n2であることがさらに好ましい。式(7)において、Yは、好ましくは単共有化学結合、O、S(=O)、C(=O)、C(CH、CF、またはC(CF、およびより好ましくは単共有化学結合である。
【0029】
式(6)の特に好ましいモノマーは、式(8)〜(12)のモノマーである。
【0030】
【化7】
【0031】
式中、RおよびRは、式(6)について上に記載したとおりであり、a5=0〜2、a6、a7、a8およびa9のそれぞれは独立して0〜4であり、b5およびb6はそれぞれ1〜3から選択され、b7、b8およびb9はそれぞれ2〜4から選択される。好ましくは、a5=0または1、より好ましくは0である。a6は0〜3であることが好ましく、0〜2であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。好ましくは、a7〜a9のそれぞれは、独立して、0〜3であり、より好ましくは0〜2である。b5およびb6はそれぞれ1および2から選択されることが好ましい。好ましくは、b7、b8およびb9はそれぞれ2または3である。化合物(8)が特に好ましい。好ましくは、化合物(8)において、各Rは独立してHまたはフェニルであり、より好ましくは、各RはHまたはフェニルである。より好ましくは、式(8)〜(12)中、各Rは、独立して、C1−10−アルキル、C1−10−ハロアルキル、C1−10−ヒドロキシアルキル、C1−10−アルコキシ、およびハロから選択され、より好ましくはC1−10−アルキル、C1−10−ハロアルキルおよびハロから選択される。
【0032】
式(5)〜(12)のモノマーにおいて、任意の2つのアルキニル部分は、互いにオルト、メタまたはパラの関係を有していてもよく、好ましくは互いにメタまたはパラの関係を有していてもよい。好ましくは、式(5)〜(12)のモノマーにおけるアルキニル部分は、互いにオルトの関係を有さない。式(5)〜(12)のモノマーは、一般に市販されているものか、または当該技術分野で既知の方法によって調製され得る。
【0033】
例示的な第2のモノマーには、限定するものではないが、1,3−ジエチニルベンゼン、1,4−ジエチニルベンゼン、4,4´−ジエチニル−1,1´−ビフェニル、3,5−ジエチニル−1,1´−ビフェニル、1,3,5−トリエチニルベンゼン、1,3−ジエチニル−5−(フェニルエチニル)ベンゼン、1,3−ビス(フェニルエチニル)ベンゼン、1,4−ビス(フェニルエチニル)−ベンゼン、1,3,5−トリス(フェニルエチニル)ベンゼン、4,4´−ビス(フェニルエチニル)−1,1´−ビフェニル、4,4´−ジエチニル−ジフェニルエーテル、およびそれらの混合物が挙げられる。より好ましくは、式(5)のモノマーは、1,3−ジエチニルベンゼン、1,4−ジエチニルベンゼン、1,3,5−トリエチニルベンゼン、1,3,5−トリス−(フェニルエチニル)ベンゼン、4,4´−ジエチニル−1,1´−ビフェニル、1,3−ビス(フェニルエチニル)−ベンゼン、1,4−ビス(フェニルエチニル)ベンゼン、4,4´−ビス(フェニルエチニル)−1,1´−ビフェニル、およびそれらの混合物から選択される。さらにより好ましくは、第2のモノマーは、1,3−ジエチニルベンゼン、1,4−ジエチニルベンゼン、4,4´−ジエチニル−1,1´−ビフェニル、1,3,5−トリエチニルベンゼン、1,3,5−トリス(フェニルエチニル)ベンゼン、およびそれらの混合物から選択される。
【0034】
本発明のポリアリーレンオリゴマーは、1つ以上の式(1)の第1のモノマー、または2つ以上の異なる式(1)の第1のモノマーの混合物で構成することができる。本発明のポリアリーレンオリゴマーは、1つの式(5)の第2のモノマー、または2つ以上の異なる式(5)の第2のモノマーの混合物で構成することができる。式(6)のモノマーが、好ましい第2のモノマーである。本発明のオリゴマーは、1つ以上の式(1)の第1のモノマーと1つ以上の式(6)の第2のモノマーの重合単位を含むことが好ましい。別の好ましい実施形態では、本発明のオリゴマーは、1つ以上の式(1)の第1のモノマーと1つ以上の式(7)の第2のモノマーの重合単位で、またはさらに別の好ましい実施形態では、1つ以上の式(1)の第1のモノマー、1つ以上の式(6)の第2のモノマーおよび1つ以上の式(7)の第2のモノマーの重合単位で構成される。重合単位として、1つ以上の式(1)の第1のモノマーおよび1つ以上の式(5)の第2のモノマーを含むオリゴマーの混合物を適切に使用することができる。
【0035】
本発明のポリアリーレンオリゴマーは、任意に、重合単位として、1つ以上のエンドキャッピングモノマーをさらに含んでもよい。好ましくは、1つのエンドキャッピングモノマーのみが使用される。本明細書で使用される場合、用語「エンドキャッピングモノマー」は、単一のジエノフィル部分を有するモノマーを指し、そのようなジエノフィル部分は、オリゴマーのキャッピングされた末端がさらなるディールス・アルダー重合を行うことができないように、本発明のオリゴマーの1つ以上の末端をキャッピングするように機能する。好ましくは、ジエノフィル部分はアルキニル部分である。任意には、エンドキャッピングモノマーは、1つ以上の溶解性を高める極性部分を含むことができ、例えば、米国特許出願公開第2016/0060393号に開示されるようなものである。エンドキャッピングモノマーは、溶解性を高める極性部分を含まないことが好ましい。好ましいエンドキャッピングモノマーは、式(13)のものであり、
【0036】
【化8】
【0037】
式中、R20およびR21は、それぞれ独立して、H、C5−20−アリールおよびC1−20−アルキルから選択される。好ましくは、R20およびR21は、それぞれ独立して、H、C6−20−アリールおよびC1−20−アルキルから選択される。より好ましくは、R20はC5−20−アリール、さらにより好ましくはC6−20−アリールである。R21は、好ましくは、HまたはC1−20−アルキルである。使用される場合、そのようなエンドキャッピングモノマーは、典型的には、1:0.01〜1:1.2の第1のモノマー対エンドキャッピングモノマーのモル比で使用される。
【0038】
例示的なエンドキャッピングモノマーとしては、これらに限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ノルボルナジエン、エチニルピリジン、エチニルベンゼン、エチニルナフチレン、エチニルピレン、エチニルアントラセン、エチニルフェナントレン、ジフェニルアセチレン、4−エチニル−1,1´−ビフェニル、1−プロピニルベンゼン、プロピオル酸、1,4−ブチンジオール、アセチレンジカルボン酸、エチニルフェノール、1,3−ジエチニルベンゼン、プロパルギルアリールエステル、エチニルフタル酸無水物、ジエチニル安息香酸、および2,4,6−トリス(フェニルエチニル)アニソールが挙げられる。好ましいエンドキャッピングモノマーは、エチニルベンゼン、ノルボルナジエン、エチニルナフチレン、エチニルピレン、エチニルアントラセン、エチニルフェナントレン、および4−エチニル−1,1´−ビフェニルである。
【0039】
本発明のオリゴマーは、適切な有機溶媒中で、1つ以上の第1のモノマーと、1つ以上の第2のモノマーおよびいずれかの任意のエンドキャッピングモノマーとを反応させることによって調製される。全第1のモノマー対全第2のモノマーのモル比は、1:>1であり、好ましくは1:1.01〜1:1.5、より好ましくは1:1.05〜1:1.4、さらにより好ましくは1:1.2〜1:1.3である。使用される第2のモノマーの全モルは、使用される第1のモノマーの全モルよりも大きい。本オリゴマーを調製するのに有用な適切な有機溶媒は、(C−C)アルカンカルボン酸のベンジルエステル、(C−C)アルカンジカルボン酸のジベンジルエステル、(C−C)アルカンカルボン酸のテトラヒドロフルフリルエステル、(C−C)アルカンジカルボン酸のジテトラヒドロフルフリルエステル、(C−C)アルカンカルボン酸のフェネチルエステル、(C−C)アルカンジカルボン酸のジフェネチルエステル、芳香族エーテル、N−メチルピロリドン(NMP)およびγ−ブチロラクトン(GBL)である。好ましい芳香族エーテルは、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、(C−C)アルコキシ置換ベンゼン、ベンジル(C−C)アルキルエーテル、NMPおよびGBL、より好ましくは(C−C)アルコキシ置換ベンゼン、ベンジル(C−C)アルキルエーテル、NMP、およびGBLである。好ましい有機溶媒は、(C−C)アルカンカルボン酸のベンジルエステル、(C−C)アルカンジカルボン酸のジベンジルエステル、(C−C)アルカンカルボン酸のテトラヒドロフルフリルエステル、(C−C)アルカンジカルボン酸のジテトラヒドロフルフリルエステル、(C−C)アルカンカルボン酸のフェネチルエステル、(C−C)アルカンジカルボン酸のジフェネチルエステル、(C−C)アルコキシ置換ベンゼン、ベンジル(C−C)アルキルエーテル、NMPおよびGBLであり、より好ましくは(C−C)アルカンカルボン酸のベンジルエステル、(C−C)アルカンカルボン酸のテトラヒドロフルフリルエステル、(C−C)アルカンカルボン酸のフェネチルエステル、(C−C)アルコキシ置換ベンゼン、ベンジル(C−C)アルキルエーテル、ジベンジルエーテル、NMPおよびGBLであり、よりさらに好ましいのは(C−C)アルカンカルボン酸のベンジルエステル、(C−C)アルカンカルボン酸のテトラヒドロフルフリルエステル、(C−C)アルコキシ置換ベンゼン、ベンジル(C−C)アルキルエーテル、NMPおよびGBLである。例示的な有機溶媒は、限定するものではないが、ベンジルアセテート、ベンジルプロピオネート、テトラヒドロフルフリルアセテート、テトラヒドロフルフリルプロピオネート、テトラヒドロフルフリルブチレート、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、ジメトキシベンゼン、エチルアニソール、エトキシベンゼン、ベンジルメチルエーテル、およびベンジルエチルエーテルなどが挙げられ、好ましくは、ベンジルアセテート、ベンジルプロピオネート、テトラヒドロフルフリルアセテート、テトラヒドロフルフリルプロピオネート、テトラヒドロフルフリルブチレート、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、ジメトキシベンゼン、エチルアニソール、エトキシベンゼン、が挙げられる。
【0040】
本発明のオリゴマーは、それぞれ上記した、第1のモノマー、第2のモノマー、いずれかの任意のエンドキャッピングモノマー、および有機溶媒を、容器内で任意の順序で混合し、この混合物を加熱することによって調製することができる。好ましくは、本発明のオリゴマーは、それぞれ上記した、第1のモノマー、第2のモノマー、および有機溶媒を、容器内で任意の順序で混合し、混合物を加熱することによって調製される。あるいは、第1のモノマーを容器内で有機溶媒と最初に混合し、次に第2のモノマーを混合物に添加してもよい。1つの代替的な実施形態において、第1のモノマーおよび有機溶媒混合物は、第2のモノマーが添加される前に、最初に所望の反応温度に加熱される。第2のモノマーは、一度に添加してもよく、あるいは、発熱の形成を減少させるために、0.25〜6時間などの時間にわたって添加してもよい。第1のモノマーおよび有機溶媒混合物は、第2のモノマーが添加される前に、最初に所望の反応温度に加熱されてもよい。本発明のエンドキャッッピングされたオリゴマーは、まず、容器内で任意の順序で第1のモノマー、第2のモノマーおよび有機溶媒を混合し、混合物を加熱してオリゴマーを調製した後、オリゴマーを単離し、単離したオリゴマーと、エンドキャッピングモノマーとを有機溶媒中で混合し、一定時間混合物を加熱することにより調製することができる。あるいは、本発明のエンドキャッピングされたオリゴマーは、第1のモノマー、第2のモノマー、および有機溶媒を容器内で任意の順序で混合し、混合物を一定時間加熱して所望のオリゴマーを得て、次いで、エンドキャッピングモノマーをオリゴマー反応混合物に添加し、一定時間反応混合物を加熱することによって調製することができる。反応混合物は100〜250℃の温度に加熱する。好ましくは、混合物を150〜225℃の温度、より好ましくは175〜215℃の温度に加熱する。典型的には、反応時間は2〜20時間、好ましくは2〜8時間、より好ましくは2〜6時間であり、より短い反応時間では、比較的低分子量のオリゴマーが得られる。反応は酸素含有雰囲気下で行うことができるが、窒素などの不活性雰囲気が好ましい。反応後、得られたオリゴマーを反応混合物から単離してもよく、または基板をコーティングするためにそのまま使用してもよい。
【0041】
理論に束縛されることを意図するものではないが、本発明のポリアリーレンオリゴマーは加熱すると、第1のモノマーのシクロペンタジエノン部分と第2のモノマーのアルキニル部分とのディールス・アルダー反応によって形成されると考えられている。そのようなディールス・アルダー反応の間に、カルボニル架橋種が形成される。そのようなカルボニル架橋種がオリゴマー中に存在してもよいことは、当業者には理解されるであろう。さらに加熱すると、カルボニル架橋種は本質的に芳香族環系に完全に変換される。使用されるモノマーのモル比のために、本発明のオリゴマーは、以下の反応スキームに示されるように、オリゴマー主鎖にアリーレン環を含み、下記中、Aは第1のモノマーであり、Bは第2のモノマーであり、Phはフェニルである。
【0042】
【化9】
【0043】
本発明のポリアリーレンオリゴマーは、1000〜6000Da、好ましくは1000〜5000Da、より好ましくは1000〜4000Da、さらにより好ましくは1500〜4000Da、さらにはより好ましくは1500〜3500Da、またさらにより好ましくは1700〜3500Daの重量平均分子量(M)を有する。本発明のポリアリーレンオリゴマーは、典型的には1500〜3000Daの範囲の数平均分子量(M)を有する。本発明のポリアリーレンオリゴマーは、1〜2、好ましくは1〜1.99、より好ましくは1〜1.9、さらにより好ましくは1〜1.8、またさらにより好ましくは1.25〜1.75の多分散指数(PDI)を有する。PDI=M/Mである。本発明のポリマーのMおよびMは、1mL/分で溶離溶媒としてのアンインヒビテッドテトラヒドロフラン(THF)および示差屈折計検出器を使用して、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の従来技術によって決定される。本発明のオリゴマーは2〜5、好ましくは2〜4.5、より好ましくは2〜3.75、さらに好ましくは2〜3.5の範囲にある、重合度(DP)を有する。DPは、オリゴマーの分子量を、存在するエンドキャッピングモノマーを除いて、それぞれの反復単位の分子量で割ることによって計算される。本発明のオリゴマーは、1対≧1、好ましくは1:1.01〜1:1.5の比、より好ましくは1:1.05〜1:1.4の比、さらに好ましくは1:1.1〜1:1.3、よりさらに好ましくは1:1.15〜1:1.3、またさらに好ましくは1:1.2〜1:1.3の全第1のモノマー対全第2のモノマーのモル比を有する。第1のモノマーの全モル対第2のモノマーの全モルの比は、典型的にモノマーの供給比として計算されるが、従来のマトリックス支援レーザー脱離/イオン化法(MALDI)飛行時間型(TOF)質量分析法を用いて決定することもでき、トリフルオロ酢酸銀を試料に加えてイオン化を促進する。適切な機器は、窒素レーザ(波長337nm)を備えたBruker Daltonics Ultraflex MALDI−TOF質量分析計である。本発明の特に好ましいオリゴマーは、1700〜3500のM、1.25〜1.75のPDI、および1:1.2〜1:1.3の第1のモノマーの全モル対第2のモノマーの全モルの比を有するものである。
【0044】
ビスシクロペンタジエノンモノマーとポリアルキン置換芳香族モノマーとのディールス・アルダー反応から調製された従来のポリアリーレンポリマーまたはオリゴマーとは異なり、本発明のポリアリーレンオリゴマーは、半導体製造において従来から用いられている有機溶媒、例えば、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、メチル3−メトキシプロピオネート(MMP)、乳酸エチル、アニソール、NMP、GBL、エトキシベンゼン、ベンジルプロピオネート、およびそれらの混合物、に対して良好な溶解性を有する。本発明のオリゴマーの改善された溶解性は、極性部分をオリゴマー主鎖上またはエンドキャッピングモノマー上の置換基として使用することなく達成される。
【0045】
有機反応溶媒中の本発明のオリゴマーは、膜として直接キャストでき、コーティングとして塗布でき、または非溶媒に注いでオリゴマーを沈殿させることができる。水、メタノール、エタノール イソプロパノール、およびグリコールエーテルのような他の類似の極性液体、またはそれらの混合物は、オリゴマーを沈殿させるために使用することができる典型的な非溶媒である。固体オリゴマーは、上述の適当な有機溶媒から、または一般的にエレクトロニクス産業で使用される有機溶媒、例えばPGME、PGMEA、MMP、乳酸エチル、n−ブチルアセテート、アニソール、NMP、GBL、エトキシベンゼン、ベンジルプロピオネート、安息香酸ベンジル、プロピレンカーボネート、キシレン、メシチレン、クメン、リモネン、およびそれらの混合物から溶解および処理されることができる。有機溶媒の混合物が特に好ましく、例えば、アニソール、エトキシベンゼン、PGME、PGMEA、GBL、MMP、n−ブチルアセテート、ベンジルプロピオネートおよび安息香酸ベンジルのうちの1つ以上と、1種以上の追加の有機溶媒と組み合わせて含む混合物、およびより好ましくはアニソール、エトキシベンゼン、PGME、PGMEA、GBL、MMP、n−ブチルアセテート、ベンジルプロピオネート、キシレン、メシチレン、クメン、リモネン、安息香酸ベンジルのうちの2つ以上を含む混合物である。溶媒の混合物が使用される場合、溶媒の比は一般に重要ではなく、溶媒混合物が本発明のオリゴマーを溶解することができるならば、99:1〜1:99w/wの範囲で変わり得る。有機反応溶媒中のオリゴマーの濃度は、有機溶媒の一部を除去することにより、または所望によりより多くの有機溶媒を添加することによって調節することができることは、当業者には理解されるであろう。
【0046】
本発明のオリゴマーは、半導体デバイスの製造におけるフォトリソグラフィプロセスで、比較的高い炭素含有量の下層を形成するのに有用である。本発明のオリゴマーを使用する適切な方法は、(a)基板表面に充填されるべき複数のギャップを有するレリーフ像を有する半導体デバイス基板を提供することと、(b)レリーフ像にコーティング組成物を塗布し、ギャップを充填してコーティング層を提供することであって、コーティング組成物は、(i)2つ以上のシクロペンタジエノン部分を有する1つ以上の第1のモノマーと、芳香族部分および2つ以上のアルキニル部分を有する1つ以上の第2のモノマーとを重合単位として含む、ポリアリーレンオリゴマーであって、1000〜6000DaのM、1〜2のPDI、および1:>1の全第1のモノマー対全第2のモノマーのモル比を有する、ポリアリーレンオリゴマーと、(ii)1種以上の有機溶媒と、を含む、コーティング層を提供することと、(c)コーティング層を硬化させてポリアリーレン膜を形成することと、(d)ポリアリーレン膜上に無機ハードマスク層を配置することと、(e)無機ハードマスク層上にフォトレジスト層を配置することと、(f)フォトレジスト層にパターン形成することと、(g)パターンをフォトレジスト層からポリアリーレン膜に転写することと、(h)次に、パターンを半導体デバイス基板に転写することと、を含む。
【0047】
任意の適切な半導体デバイス基板を、本発明の方法において使用できる。そのような半導体デバイス基板は、典型的には、シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、シリコンゲルマニウム、ガリウムヒ素、アルミニウム、サファイア、タングステン、チタン、チタン−タングステン、ニッケル、銅、および金の1つ以上から構成される。好適な半導体デバイス基板は、集積回路などの製造で使用されるようなウエハの形態であり得る。本明細書で使用される場合、用語「ウエハ」は、「電子デバイス基板」、「半導体基板」、「半導体デバイス」、および様々なレベルの相互接続のための様々なパッケージ、例えばシングルチップウエハ、マルチチップウエハ、様々なレベルのパッケージ、またははんだ接続を必要とする他のアセンブリを包含することが意図されている。そのような基板は任意の好適なサイズであり得る。好ましいウエハ基板の直径は200mm〜300mmであるが、より小さい直径やより大きい直径を有するウエハを本発明に従って適切に使用することができる。本明細書で使用される場合、用語「半導体基板」は、半導体デバイスの活性部分または動作可能部分を任意に含み得る1つ以上の半導体層または構造を有する任意の基板を含む。半導体デバイスとは、少なくとも1つのマイクロ電子デバイスがその上にバッチ製造されているかまたはこれからバッチ製造される半導体基板を指す。パターン形成された半導体デバイス基板は、その基板の表面にレリーフ像を有する半導体デバイス基板であり、レリーフ像は、充填されるべき複数のギャップを有する。このような半導体デバイス基板は、当該技術分野において周知の方法によってパターン形成することができ、様々な寸法のラインおよびスペースから構成することができる。
【0048】
使用において、本発明のオリゴマーと有機溶媒を含むコーティング組成物は、パターン形成された半導体デバイスの基板上に任意の適切な方法によってコーティングしてもよい。組成物をコーティングするための適切な方法は、これらに限定されないが、スピンコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ドクターブレード、バーコーティング、ディップコーティング、スロットダイコーティング、および蒸着が含まれるが、とりわけ、好ましくはスピンコーティングによって基板上に配置される。エレクトロニクス製造業界では、スピンコーティングおよびスロットダイコーティングが、既存の装置およびプロセスを利用する好ましい方法である。スピンコーティングでは、組成物の固体含量は、塗布される表面上の組成物の所望の厚さを達成するために、回転速度と共に調節され得る。典型的には、本発明のポリマー組成物は、400〜4000rpmの回転速度でスピンコーティングされる。ウエハまたは基板上に分配される本発明の組成物の量は、組成物中の総固体含量、コーティングされる基板の大きさ、得られる層の所望の厚さ、および当業者に周知の他の因子に依存する。
【0049】
本発明のオリゴマー組成物は、スピンコーティングなどの特定の技術を用いてコーティングまたは膜を配置するために使用される場合、得られたコーティングは、一定の欠陥を受け得る。理論に拘束されることを望むものではないが、このような欠陥は、蒸発冷却による膜表面上の水分の凝縮に起因し、そのような水分は溶液からオリゴマーを押し出し、表面上にオリゴマーの不均一なコーティング表面をもたらす。このような欠陥に対処するために、水混和性でありかつ組成物に使用される有機溶媒と混和性である二次溶媒を、任意に本発明のオリゴマー組成物に添加することができる。このような二次溶媒は、オリゴマーコーティングの基材への配置中に水滴の形成を防止すると考えられている。そのような二次溶媒は、組成物の総重量に基づいて0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%などの任意の適切な量で本組成物に添加することができる。乳酸エチルおよびγ−ブチロラクトンは、このような二次溶媒の例である。必要に応じて、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性または両性であり得る界面活性剤のような、1つ以上の二次添加剤を本発明の組成物に添加することができる。そのような二次添加剤の各々は、0〜5重量%、好ましくは0〜2重量%の量で組成物に添加することができる。
【0050】
一般に、本発明のコーティング組成物は、それぞれ上述したように、本発明のポリアリーレンオリゴマー、有機溶媒、および任意の二次溶媒を含み、このオリゴマーは固形分1〜45%、好ましくは固形分5〜35%%の量で存在する。このような組成物を使用して、パターン形成された半導体デバイス基板上にオリゴマーコーティングを配置させることができ、オリゴマーコーティング層は、例えば10nm〜500μm、好ましくは100nm〜250μm、およびより好ましくは100nm〜125μmのような適切な厚さを有するが、そのようなコーティングは、特定の用途に応じてこれらの範囲より厚くても薄くてもよい。本発明の組成物は、パターン形成された半導体デバイス基板上の複数のギャップを実質的に充填し、好ましくは充填し、より好ましくは完全に充填する。本発明のオリゴマーの利点は、ボイドが実質的に形成されずに、好ましくはボイドを形成することなく、ギャップを平坦化し(パターン形成された基板上に平坦な層を形成し)、充填することである。
【0051】
好ましくは、パターン形成された半導体デバイス基板表面上にコーティングされた後に、オリゴマー組成物は加熱され(ソフトベークされ)、存在する有機溶媒を除去する。典型的なベーキング温度は80〜170℃であるが、他の好適な温度も使用され得る。残留溶媒を除去するためのこのようなベーキングは、典型的には約30秒〜10分間行われるが、より長いまたはより短い時間が適切に使用されてもよい。溶媒除去に続いて、基板表面上のオリゴマーの層、膜またはコーティングが得られる。好ましくは、オリゴマーは次に硬化されてポリアリーレンフィルムを形成する。そのような硬化は、典型的には、加熱することによって、例えば≧300℃、好ましくは≧350℃、より好ましくは≧400℃の温度に加熱することによって達成される。このような硬化工程は2〜180分、好ましくは10〜120分、より好ましくは15〜60分かけることができるが、他の適切な時間を使用してもよい。硬化すると、本発明のオリゴマーはさらに重合すると考えられている。このような硬化工程は、酸素含有雰囲気中または不活性雰囲気中で、好ましくは不活性雰囲気中で行うことができる。
【0052】
特定の用途では、特定の硬化ポリアリーレンフィルムが基板表面に十分な接着性を有さず、接着促進剤の使用を必要とすることがあることが知られており、例えば米国特許第5,668,210号に記載されている。そのような接着促進剤は、典型的には、ポリアリーレンオリゴマー層の配置の前に基板表面に塗布され、続いて硬化されて架橋ポリアリーレン膜を形成する。接着促進剤を使用することが望まれる場合には、ポリアリーレンフィルムについて当業界で既知の任意の適切な接着促進剤を使用することができ、例えばシラン、好ましくはオルガノシラン、例えばトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ヘキサメチルジシラザン[(CHSi−NH−Si(CH〕、またはγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノシランカップリング剤などである。特に適した接着促進剤には、Dow Electronic Materials(Marlborough, Massachusetts)から入手可能なAP3000、AP8000、およびAP9000Sの名称で販売されているものが含まれる。そのような接着促進剤は、ギャップ充填層が半導体デバイスの後続の処理の間に除去されるので、通常、ギャップ充填用途には使用されない。
【0053】
無機ハードマスク層をポリアリーレン膜上に配置する。半導体デバイスの製造に使用される任意の適切な無機ハードマスク層を使用することができる。そのような無機ハードマスク層は、典型的には、シリコン、チタン、タンタル、アルミニウムなどから選択される1つ以上の元素を含む。例示的なハードマスク層としては、シリカ、シロキサン、SiON、アルミナ、窒化チタン、窒化シリコン、および窒化タンタルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ハードマスク層はシリコンを含む。より好ましくは、そのようなハードマスク層は、反射防止剤部分をさらに含むシリコン含有層である。このようなハードマスク層は、蒸着またはスピンコーティング技術によって配置されてもよく、その両方が当該技術分野において周知である。ハードマスク層は、使用される特定の製造プロセスに応じて、様々な厚さで使用される。そのようなハードマスク層および使用される厚さの選択は、当業者の能力の範囲内である。スピンコートされたハードマスク層としての使用に適した材料は、一般に市販されている。
【0054】
任意に、有機反射防止剤層は、無機ハードマスク層の上に直接配置されてもよい。任意の適切な有機反射防止剤を使用することができる。本明細書で使用する「反射防止剤」という用語は、使用波長で化学線を吸収する部分または材料を指す。適切な有機反射防止剤は、Dow Electronic MaterialsによってAR(商標)ブランドで販売されているものである。使用される特定の反射防止剤は、使用される特定のフォトレジスト、使用される製造プロセス、および当業者の能力の十分な他の考慮事項に依存する。使用時には、有機反射防止剤は、典型的にはハードマスク表面上にスピンコートされ、続いて残留溶媒を除去するために加熱(ソフトベーキング)され、次いで硬化して有機反射防止剤層を形成する。そのようなソフトベーキングおよび硬化工程は、単一工程で実施することができる。
【0055】
次いで、フォトレジスト層が例えばスピンコーティングなどによって、ハードマスク層上に配置される。好ましい一実施形態では、フォトレジスト層は、ハードマスク層上に直接配置される(3層プロセスと呼ばれる)。別の好ましい実施形態では、フォトレジスト層は有機反射防止剤層上に直接配置される(4層プロセスと呼ばれる)。広範な様々なフォトレジストを適切に使用することができ、例えば193nmのリソグラフィで使用されるフォトレジスト、例えばDow Electronic Materials(Marlborough,Massachusetts)から市販されているEpic(商標)ブランドで販売されているようなフォトレジストを適切に使用することができる。好適なフォトレジストは、ポジ型現像またはネガ型現像レジストのいずれかであってもよい。
【0056】
任意には、1つ以上のバリア層を、フォトレジスト層上に配置してもよい。適切なバリア層は、トップコート層、上部反射防止剤コーティング層(またはTARC層)などを含む。好ましくは、フォトレジストが液浸リソグラフィを用いてパターン形成されるとき、トップコート層が使用される。そのようなトップコートは当該技術分野において周知であり、例えばDow Electronic Materialsから入手可能なOC(商標)2000のように一般に市販されている。有機反射防止剤層がフォトレジスト層の下に使用される場合、TARC層は必要ではないことは、当業者には理解されるであろう。
【0057】
コーティングに続いて、パターン形成された化学線を使用してフォトレジスト層を画像形成(露光)し、次いでその露光されたフォトレジスト層を適切な現像剤を使用して現像してパターン形成されたフォトレジスト層を提供する。フォトレジストは、当業者に周知の液浸リソグラフィプロセスを使用して好ましくパターン形成される。パターンは、次に、プラズマエッチングなどの当該技術分野で既知の適切なエッチング技術によって、フォトレジスト層から下層に転写され、3層プロセスのパターン形成されたハードマスク層および、4層プロセスのパターン形成された有機反射防止剤層が得られる。4層プロセスが使用される場合、パターンは、プラズマエッチングなどの適切なパターン転写技術を用いて、有機反射防止剤層からハードマスク層に転写される。ハードマスク層がパターン形成された後、ポリアリーレン膜の下層は、次にOまたはCFプラズマなどの適切なエッチング技術を用いてパターン形成される。残ったパターン形成されたフォトレジスト層および有機反射防止剤層は、ポリアリーレン膜下層のエッチング中に除去される。次に、残ったハードマスク層もまた除去する適切なエッチング技術によってパターンを半導体デバイス基板に転写した後、続いて残ったパターン形成されたポリアリーレン膜下層を除去して、パターン形成された半導体デバイス基板を提供する。次いで、パターン形成された半導体デバイス基板は、従来の手段に従って処理される。本明細書で使用する場合、「下層」という用語は、半導体デバイス基板とフォトレジスト層との間のすべての除去可能な処理層、すなわち任意の有機反射防止剤層、ハードマスク層、およびポリアリーレン膜を指す。
【0058】
本発明のオリゴマーはまた、自己整合ダブルパターニングプロセスにおいて使用することができる。そのようなプロセスでは、上記のオリゴマーコーティング組成物の層が、例えばスピンコーティングによって基板上にコーティングされる。残った有機溶媒は除去され、オリゴマーコーティング層は硬化されてポリアリーレン樹脂下層を形成する。シリコン含有ハードマスク層のような適切な中間層が、ポリアリーレン膜下層上にコーティングされる。適切なフォトレジストの層が、例えば、スピンコーティングによって、中間層上にコーティングされる。次いで、フォトレジスト層を、パターン形成された化学線を使用して画像化(露光)し、その露光されたフォトレジスト層を、適切な現像剤を使用して現像してパターン形成されたフォトレジスト層を提供する。パターンは、次に、適切なエッチング技術によってフォトレジスト層から中間層およびポリアリーレン樹脂下層に転写され、基板の一部が露出される。典型的には、そのようなエッチング工程中にフォトレジストも除去される。次に、コンフォーマルなシリコン含有層が、パターン形成されたポリアリーレン樹脂下層および基板の露出部分上に配置される。そのようなシリコン含有層は、典型的には、SiONまたはSiOのような無機シリコン層であり、従来CVDによって蒸着されている。そのようなコンフォーマルなコーティングは、基板表面の露出部分上ならびに下層パターンの上にシリコン含有層をもたらし、すなわち、そのようなシリコン含有層は、下層パターンの側面および上面を実質的に覆う。次に、シリコン含有層を部分的にエッチング(トリミング)して、パターン形成されたポリアリーレン樹脂下層の上面および基板の一部を露出させる。この部分エッチング工程に続いて、基板上のパターンは複数のフィーチャを含み、各フィーチャは、各ポリアリーレン樹脂下層フィーチャの側面に直接隣接するシリコン含有層を有するポリアリーレン樹脂下層のラインまたはポストを含む。次に、ポリアリーレン樹脂下層をエッチングなどにより除去して、ポリアリーレン樹脂下層パターンの下にある基板表面を露出させ、基板表面上にパターン形成されたシリコン含有層を提供し、パターン化されたポリアリーレン樹脂下層と比較してパターン形成されたシリコン含有層は2倍になる(すなわち、2倍のラインおよび/またはポスト)。
【0059】
本発明のポリアリーレンオリゴマーから形成された膜は、ビスシクロペンタジエノンモノマーとポリアルキン置換芳香族モノマーのディールス・アルダー反応から調製された従来のポリアリーレンポリマーまたはオリゴマーと比較して、重量損失により測定されるように、改善された熱安定性を示す。本発明のオリゴマーから形成された硬化膜は、450℃で1時間加熱した後に≦4%の重量損失、好ましくは<4%の重量損失を有する。このような硬化膜はまた、5%の重量損失によって決定される、>480℃、好ましくは>490℃分解温度も有する。より高い分解温度は、半導体デバイスの製造におけるより高い処理温度の使用に対応するために望ましい。
【実施例1】
【0060】
30.0gの3,3´−(オキシジ−1,4−フェニレン)ビス(2,4,5−トリフェニルシクロペンタジエノン)(DPO−CPD)、18.1gの1,3,5−トリス(フェニルエチニル)ベンゼン(TRIS)および102.2gのGBLを185℃で14時間加熱した。次いで、反応物を室温に冷却し、21.5gのGBLで希釈した。粗反応混合物を1.7Lのイソプロピルアルコール(IPA)/PGMEの1:1混合物に添加し、30分間撹拌した。真空濾過により固体を集め、IPA/PGMEの1:1混合物で洗浄した。この固体に水0.4Lを加え、スラリーを50℃に加熱し、50℃で30分間撹拌した。温スラリーを真空濾過により濾過した。ウェットケーキを70℃で2日間真空乾燥して、34.1gのオリゴマー1を収率71%で得た。オリゴマー1の分析は、3487DaのMおよび1.42のPDIを提供した。
【実施例2】
【0061】
30.0gのDPO−CPD、18.1gのTRISおよび102.2gのGBLの混合物を200℃で6時間加熱した。次いで、反応物を室温に冷却し、21.5gのGBLで希釈した。粗反応混合物を1.7LのIPA/PGMEの1:1混合物に添加し、30分間撹拌した。真空濾過により固体を集め、IPA/PGMEの1:1混合物で洗浄した。この固体に水0.4Lを加え、スラリーを50℃に加熱し、50℃で30分間撹拌した。温ラリーを真空濾過により濾過した。ウェットケーキを70℃で2日間真空乾燥させて、34.1gのオリゴマー2を収率71%で得た。オリゴマー2の分析は、3490DaのMおよび1.42のPDIを提供した。
【実施例3】
【0062】
実施例2の手順を繰り返して、オリゴマー3〜11を得た。反応容器に充填された各オリゴマーについての全第1のモノマー対全第2のモノマーのモル比(F/Sモル比)を表1に報告する。オリゴマー3〜11は、35℃で操作される示差屈折計を用いたAgilent GPC装置でのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析した。この研究で使用されたSECカラムセットは、Shodex−KF805と、Shodex−KF804と、Shodex−KF803とShodex−KF802とで連続して構成された。クロマトグラフィーは、流速1mL/分のアンインヒビテッド(uninhibited)THF中、162〜483,000Daのポリスチレンナロースタンダード(narrow standard)を用いて較正に用いて行った。各オリゴマー3〜11の測定されたMを以下の表1に報告し、多分散指数(PDI)および重合度(DP)を計算するために使用し、これらの各々を表1に報告する。
【0063】
【表1】
【実施例4】
【0064】
実施例3からのオリゴマー5(10g)を、還流冷却器、熱電対および窒素雰囲気を備えた100mLの一口丸底フラスコに入れ、続いてGBL(20g)を入れた。反応物を撹拌し、145℃に加温し、この時点でエンドキャッピングモノマーとしてフェニルアセチレン(1g)を添加した。反応は145℃で合計12時間保持され、その時点で反応は透明になった。以下の反応スキームに示すように、反応混合物を過剰の(200g)メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)中で沈殿させることによってエンドキャッッピングされたオリゴマーを単離して、エンドキャッッピングされたオリゴマーEC1を7g得た。
【0065】
【化10】
【実施例5】
【0066】
1Lの3つ口丸底フラスコにDPO−CPD(100g、0.128mol、1当量)およびTRIS(60.43g、0.160mol、1.25当量)を入れ、続いてGBL(374g、固形分30%)を入れた。溶液を撹拌し、30分以内に185℃に加熱し、さらに16時間加熱した。次いで、反応物を145℃に冷却し、フェニルアセチレン(17.8g、1.136当量)を添加した。反応物を145℃で合計12時間加熱した後、20℃に冷却した。得られたエンドキャッピングされたオリゴマーの単離は、MTBEとヘプタンの混合物(700mL+300mL)中での反応物の沈殿によって達成され、112gのエンドキャッピングされたオリゴマーEC2を得た。
【実施例6】
【0067】
フェニルアセチレンを以下のエンドキャッピングモノマーのそれぞれと置き換えたことを除いて、実施例4の手順を繰り返し、表2に報告するエンドキャッピングされたオリゴマーを得た。
【0068】
【表2】
【0069】
比較実施例1.GBL中の固体の30〜40重量%の濃度で、1:1.08のモル比のDPO−CPDとTRISとの混合物を、約8800DのMが得られるまで200℃の目標温度に加熱した(10〜15時間)。次いで、反応器を120℃に冷却して、さらなる反応を停止させた。シクロヘキサノンを加えてポリアリーレンポリマーを希釈して貯蔵溶液を形成した。貯蔵溶液1Lを10Lのイソプロパノールに30分かけて加えた。添加が完了した後、溶液を1時間撹拌し、その後、得られた沈殿物を濾過し、1LのIPAで2回洗浄し、次いで空気乾燥し、50℃で一晩真空乾燥して、327.3gの比較オリゴマー1を得た。比較オリゴマー1を、MALDI飛行時間型質量分析および実施例4によるGPCによって分析し、約7700のMw、2.04のPDI、および6.97のDPを有することが判明した。比較オリゴマー1は、The Dow Chemical Companyから市販されている製品であるSiLK(商標)Dに使用されるポリフェニレンに相当する。
【0070】
比較実施例2.DPO−CPD対TRISの比を1:0.88とした以外は、実施例2の手順を繰り返した。得られた比較オリゴマー2。比較オリゴマー2は、MALDI飛行時間型質量分析および実施例4によるGPCによって分析され、3300のMw、1.4のPDI、および2.99のDPを有することが判明した。
【実施例7】
【0071】
配合物は、オリゴマー3〜11ならびに比較オリゴマー1および2のそれぞれを約4重量%の固形分で、PGMEAおよび安息香酸ベンジルの混合物に溶解することにより調製して、配合物3〜11および比較配合物1および2をそれぞれ提供した。同様に、エンドキャッッピングされたオリゴマーEC1を用いて配合物12を調製した。得られた各配合物は、使用前に0.2μmポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)シリンジフィルターを通して濾過した。
【実施例8】
【0072】
実施例7からの配合物試料を、表3に示す半導体産業で一般的に使用される溶媒と混合し、それらの相溶性を、試料と溶媒を1:10の重量比で混合することによって評価した。得られた混合物の濁度をOrbeco−Hellige Co.のTurbidity meterで測定した。濁度センサーは、典型的には液体を透過する光の量を測定することにより、液体中の懸濁物質を測定する。濁度値が高いほど、液体中に懸濁している物質の量が多いことを示す。PGMEA/PGME(30/70w/w)中で1未満の濁度値を有する試料が合格したと考えられた。PGME中で25未満の濁度値を有する試料が合格と考えられた。これらの濁度測定の結果を表3に示す。本発明の配合物試料は、様々な従来のクリーンルームトラック溶媒との良好な相溶性を示したが、比較製剤サンプルは、限定された相溶性を示した。
【0073】
【表3】
【実施例9】
【0074】
実施例3の特定のオリゴマーの硬化膜の熱安定性は、TA−InstrumentsのQ500熱重量分析器(TGA)における熱重量分析によって評価した。膜を170℃で60秒間、350℃で60秒間、空気中で硬化させた。硬化膜をベアシリコンウエハ上に調製し、熱重量分析のためにウエハから掻き取った。各硬化膜の試料を分析して、以下の条件を用いて分解のために膜の5重量%が失われる温度(Td(5%))を決定した:窒素雰囲気下、10℃/分の勾配で150℃まで、150℃で10分間等温保持し、続いて10℃/分の勾配で700℃まで。各膜試料のTd(5%)を表4に報告する。各硬化膜の別の試料はまた、以下の条件を使用して熱重量分析により、450℃で1時間の等温保持中のパーセント重量損失を決定する:窒素雰囲気下、35℃で平衡化、5分間等温保持、100℃/分の勾配で450℃まで、続いて450℃で60分間等温保持する。450℃、1時間における各膜試料のパーセント重量損失は、表4に報告されている。
【0075】
【表4】
【0076】
表4のデータから分かるように、本発明のオリゴマーから形成される膜は450℃で1時間加熱すると改善された(より低い)体重減少およびより高い分解温度(Td(5%)の両方)が得られた。