特許第6643450号(P6643450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643450
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
   F16K31/04 K
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-222343(P2018-222343)
(22)【出願日】2018年11月28日
(62)【分割の表示】特願2017-211834(P2017-211834)の分割
【原出願日】2016年3月7日
(65)【公開番号】特開2019-32085(P2019-32085A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2018年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−217451(JP,A)
【文献】 特開2008−148494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ポートを有する弁室に対して該弁ポートと反対側に配置され該弁ポートの軸線と同軸に雄ネジ部が形成された支持部材と、
前記支持部材に形成された弁ガイド孔に挿通されるとともに、前記弁ポート側に弁体部が設けられたロータ軸と、
前記支持部材の前記雄ネジ部に螺合された雌ネジ部を有するとともに、前記ロータ軸に固定されて電動モータを構成するマグネットロータと、
前記支持部材に対する前記マグネットロータの下端位置を規制するストッパ機構と、を備え、
前記電動モータにて前記マグネットロータを回動し、該マグネットロータの前記雌ネジ部と前記支持部材の前記雄ネジ部とのネジ送り機構により、前記弁体部を前記弁ポートに対して進退させて、該弁ポートを通る流体の流量を制御する電動弁であって、
前記ストッパ機構が、前記支持部材の前記雄ネジ部に螺合されて前記軸線回りに回動可能で該軸線方向に移動可能な固定側ストッパ部材と、前記マグネットロータ側に設けられて、前記固定側ストッパ部材の円周上の一箇所に突出するストッパ当接部に、前記マグネットロータの下端位置にて当接可能な可動側ストッパとで構成され、
前記固定側ストッパ部材が前記支持部材の前記雄ネジ部の中間位置にて該支持部材に接合され、前記中間位置は当該電動弁に設定された所定の弁開度に応じた位置であるとともに、前記マグネットロータが、前記雄ネジ部に螺合する前記雌ネジ部が形成され摺動性を向上させる添加材が添加されたPPS樹脂からなるロータ本体と、外周部を多極に着磁されたマグネットと、を備えて構成されていることを特徴とする電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機や冷凍機などの冷凍回路の膨張弁など冷媒等の流体の流量を制御する電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機や冷凍機などの冷凍回路に用いられる電動弁として、例えば、特開2013−204613号公報(特許文献1)及び特許第5697909号公報(特許文献2)に開示された流量制御弁がある。この流量制御弁(電動弁)は、ステッピングモータ(電動モータ)のケース内にマグネットロータを配設し、マグネットロータに固着した雄ネジ軸の中心に、下部にニードル部(弁体部)を有する弁体が嵌挿されている。また、雄ネジ軸は弁本体側の支持部材の雌ネジとともにネジ送り機構を構成している。
【0003】
そして、マグネットロータを回転させてネジ送り機構によりニードル部で弁ポートを開閉するように構成されている。また、特許文献1のものでは、支持部材の上端の固定下端ストッパとマグネットロータ側の可動下端ストッパによりマグネットロータの回転範囲を規制するようにしている。また、特許文献2のものでは、ガイドブッシュと全閉下ストッパを組み合わせることでストッパ機構を構成し、全閉下ストッパがガイドブッシュの下方段部に当接させることで、マグネットロータの(及び弁体部)の下端位置を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−204613号公報
【特許文献2】特許第5697909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、空気調和機や冷凍機には省エネ性の向上が盛んに検討されており、その冷凍回路に使用される電動弁にも同様の性能が求められている。電動弁に求められる性能としては、例えば微小流量域の制御性の向上や、流量ばらつきの低減化などが挙げられる。
【0006】
特に大型の空気調和機(PAC、ビルマルチ等)では、電動弁を閉じなければならない用途がある。この場合、電動弁は弁閉状態から所定のパルス(弁開点)で弁開しなければならないが、電動弁の組立精度及び使用部品の精度により、弁開点が大きくばらつくことがある。空気調和機は省エネ性の向上を目的とした運転を行う場合、圧縮機やファン等の制御でこのばらつきを考慮して対処するしかない。弁開点が大きくばらつく場合、指定の弁開度における流量も大きくばらつくため、細かい制御性を損なうことが考えられる。このようなばらつきを解消することは、特に空気調和機で微小流量域での制御を行うにあたり、非常に重要な課題であり、空気調和機に使用する電動弁としても大きな課題となっている。
【0007】
本発明は、電動弁において、組立精度や使用部品の精度に影響されずに、弁開点のばらつきを低減して細かい制御性を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の電動弁は、弁ポートを有する弁室に対して該弁ポートと反対側に配置され該弁ポートの軸線と同軸に雄ネジ部が形成された支持部材と、前記支持部材に形成された弁ガイド孔に挿通されるとともに、前記弁ポート側に弁体部が設けられたロータ軸と、前記支持部材の前記雄ネジ部に螺合された雌ネジ部を有するとともに、前記ロータ軸に固定されて電動モータを構成するマグネットロータと、前記支持部材に対する前記マグネットロータの下端位置を規制するストッパ機構と、を備え、前記電動モータにて前記マグネットロータを回動し、該マグネットロータの前記雌ネジ部と前記支持部材の前記雄ネジ部とのネジ送り機構により、前記弁体部を前記弁ポートに対して進退させて、該弁ポートを通る流体の流量を制御する電動弁であって、前記ストッパ機構が、前記支持部材の前記雄ネジ部に螺合されて前記軸線回りに回動可能で該軸線方向に移動可能な固定側ストッパ部材と、前記マグネットロータ側に設けられて、前記固定側ストッパ部材の円周上の一箇所に突出するストッパ当接部に、前記マグネットロータの下端位置にて当接可能な可動側ストッパとで構成され、前記固定側ストッパ部材が前記支持部材の前記雄ネジ部の中間位置にて該支持部材に接合され、前記中間位置は当該電動弁に設定された所定の弁開度に応じた位置であるとともに、前記マグネットロータが、前記雄ネジ部に螺合する前記雌ネジ部が形成され摺動性を向上させる添加材が添加されたPPS樹脂からなるロータ本体と、外周部を多極に着磁されたマグネットと、を備えて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の電動弁によれば、固定側ストッパ部材は、そのストッパ当接部がマグネットロータの可動側ストッパに当接して、マグネットロータ及び弁体部を下端位置で停止させ、所定の弁開度が得られる。また、固定側ストッパ部材は、支持部材の雄ネジ部の中間位置にて接合されているので、この接合前は、固定側ストッパ部材は軸線方向に移動可能となっている。したがって、弁閉状態から設定開度だけ弁開となった位置にこの固定側ストッパ部材を固着することが可能となり、弁開度の設定が容易になる。この弁開度は、固定側ストッパ部材の軸線方向の位置のみによって設定されるので、部品精度の影響を受けずに弁開度を設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の製造方法によって製造された電動弁の縦断面図である。
図2】実施形態の電動弁の製造方法における本体アッセンブリの組立工程を示す図である。
図3】実施形態の電動弁の製造方法における弁体アッセンブリの組立工程を示す図である。
図4】実施形態の電動弁の製造方法における本体アッセンブリを弁体アッセンブリに装着する装着工程を示す図である。
図5】実施形態の電動弁の製造方法における弁閉工程と開仕様弁の設定工程を示す図である。
図6】実施形態の電動弁の製造方法におけるケースの組み付け工程を示す図である。
図7】実施形態の電動弁の製造方法における開仕様弁の設定工程を示す図である。
図8】実施形態における可動側ストッパの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の電動弁及びその製造方法の実施形態を図面を参照して説明する。図1は実施形態の製造方法によって製造された実施形態の電動弁の縦断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は図1の図面における上下に対応する。また、「右回り(時計回り)」及び「左回り(反時計回り)」の表現は、電動弁を上から見た状態での回転方向を示す。
【0012】
この電動弁は、ステンレスや真鍮等で金属部材の切削加工により形成された弁ハウジング1を有しており、弁ハウジング1はその内側に弁室1Aを有している。弁ハウジング1の外周片側には弁室1Aに導通される第1継手管11が接続されている。また、弁ハウジング1の下端には第2継手管12が接続されるとともに、弁ハウジング1の内底面には弁ポート13が形成されており、第2継手管12は弁ポート13を介して弁室1Aに導通される。なお、第1継手管11及び第2継手管12は、弁ハウジング1に対してろう付け等により固着されている。弁ハウジング1の弁ポート13と反対側には上端に開口する取り付け孔14が形成されており、この取り付け孔14には支持部材2が圧入により取り付けられている。
【0013】
支持部材2は略円柱状のホルダ部21と、このホルダ部21の弁ハウジング1寄りに形成されたフランジ部22とを有している。支持部材2のホルダ部21の外周には略中間部からフランジ部22にかけて雄ネジ部21aが形成されており、この雄ネジ部21aより上部には後述のマグネットロータ62をガイドする円筒状のロータガイド21bが形成されている。さらに、支持部材2の中心には、弁ポート13の軸線Lと同軸の弁ガイド孔21cが形成されており、このガイド孔21c内に「ロータ軸」としての弁棒3が挿通されている。また、支持部材2のホルダ部21には固定側ストッパ部材4が配設されている。
【0014】
弁棒3はステンレス等により形成され、下端の「弁体部」としてのニードル部31と、支持部材2のガイド孔21cに挿通される円柱部32と、円柱部32より径が小さい棒状のロッド部33とを有している。ロッド部33の周囲には円柱部32の段部32aとマグネットロータ62との間に付勢バネ5が圧縮した状態で配置されている。これにより、弁棒3は、マグネットロータ62に対して常時弁ポート13側に付勢されている。
【0015】
固定側ストッパ部材4は、ドーナツ盤状の形状をしており、その内側には弁ポート13の軸線Lと同軸の雌ネジ部4aが形成されている。また、固定側ストッパ部材4の軸線Lを中心とする円周上の一箇所には、マグネットロータ62側に突出するストッパ当接部4bが形成されている。そして、この固定側ストッパ部材4は、雌ネジ部4aが支持部材2側の雄ネジ部21aに螺合され、フランジ部22との間に隙間Gを設けて、例えば溶接等により支持部材2に接合(固着)されている。すなわち、この隙間Gがあることで、固定側ストッパ部材4は雄ネジ部21aの中間位置に接合されている。なお、この「中間位置」とは隙間Gができれば、雄ネジ部21aに対して軸線L方向のどの位置でもよく、この位置は設定する弁開度に応じて決まる。
【0016】
弁ハウジング1の上端には蓋15が取り付けられ、この蓋15に「電動モータ」としてのステッピングモータ6のケース61が溶接等によって気密に固定されている。ケース61内には外周部を多極に着磁されたマグネットロータ62が回転可能に設けられている。また、ケース61の外周には、ステータコイル63が配設されており、このステッピングモータ6は、ステータコイル63にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ62を回転させる。
【0017】
マグネットロータ62はロータ本体621とその外周に固着されたマグネット622とから構成されている。なお、ロータ本体621は摺動性を向上させる添加材が添加されたPPS樹脂からなる。マグネット622は、PPS等からなる母材に磁性粉を混入して型成形したものである。なお、マグネット622はフェライトからなる永久磁石でもよい。
【0018】
ロータ本体621の中心下方には、弁ポート13の軸線Lと同軸の雌ネジ部621aとそのネジ孔が形成されるとともに、ロータ本体621の中央には雌ネジ部621aのネジ孔の内周よりも径の小さな円筒状のスライド孔621bが形成されている。さらに、スライド孔621bの上方中心には、弁棒挿通孔621cが形成されている。また、マグネット622の下部一箇所には下に突出する可動側ストッパ62aが形成されている。
【0019】
弁棒3は支持部材2のガイド孔21cに挿通され、ロータ本体621の弁棒挿通孔621cに弁棒3の端部3a(ロッド部33の端部)が挿通されている。また、マグネットロータ62は、スライド孔621bに支持部材2のロータガイド21bを挿通されるとともに、このマグネットロータ62側の雌ネジ部621aが支持部材2側の雄ネジ部21aに螺合されている。そして、弁棒3の端部3aに、固定部材7が圧入され、固定部材7は溶接により弁棒3と一体に固着されている。
【0020】
なお、雄ネジ部21aと雌ネジ部621aはネジ送り機構であるが、この実施形態では、雄ネジ部21aと雌ネジ部621aは右ネジである。また、ケース61とマグネットロータ62との間には、マグネットロータ62を弁閉方向に付勢する圧縮バネ64が配設されているが、雄ネジ部21aと雌ネジ部621aとのバックラッシュを除去することで、マグネットロータ62の作動音を低減する役割をする。
【0021】
以上の構成により、マグネットロータ62が回転すると、雌ネジ部621aと雄ネジ部21aのネジ送り作用により、マグネットロータ62が軸線L方向(上下)に移動する。ニードル部31が弁ポート13に着座していない状態では、付勢バネ5の付勢力により固定部材7がマグネットロータ62に当接する状態となり、弁棒3がマグネットロータ62と共に移動し、弁棒3のニードル部31が弁ポート13に対して進退する。これにより、弁ポート13の開度を変化させ、第1継手管11から第2継手管12へ流れる冷媒の流量、または第2継手管12から第1継手管11へ流れる冷媒の流量が制御される。
【0022】
また、ニードル部31が流量を制御する制御範囲にあって、マグネットロータ62が回転して下降するときは、可動側ストッパ62aは固定側ストッパ部材4のストッパ当接部4bの上を通過する。さらに、マグネットロータ62が回転して下降し、可動側ストッパ62aが固定側ストッパ部材4のストッパ当接部4bに当接すると、回転が規制される。すなわち、この可動側ストッパ62aと固定側ストッパ部材4のストッパ当接部4bがマグネットロータ62の下端位置を規制するストッパ機構を構成している。以上のように、ストッパ機構によりマグネットロータ62の回動が停止され、可動側ストッパ62aが固定側ストッパ部材4のストッパ当接部4bに当接した瞬間位置を「ロータ起点」という。
【0023】
ここで、実施形態の電動弁は、概略以下の2通りの仕様に設定できる。第1に、マグネットロータ62が右回りして可動側ストッパ62aが固定側ストッパ部材4のストッパ当接部4bに当接したとき、すなわち「ロータ起点」で、ニードル部31が弁ポート13を閉じないような仕様、これを「開仕様弁」という。第2に、上記「ロータ起点」で、ニードル部31が弁ポート13を閉じてさらに付勢バネ5が圧縮された状態となる仕様、これを「閉仕様弁」いう。勿論、「ロータ起点」で丁度弁閉となるようにもできる。
【0024】
図2乃至図7は実施形態の電動弁の製造方法及び組立工程を示す図である。なお、図2乃至図7において、符号は要部部材のみに付してその他の部材は符号を省略する。また、断面を示す斜線を一部省略するとともに、各工程で動作に関する部位及び組立られた部品につては斜線で示している。
【0025】
まず、図2(A)に示すように、第1継手管11、第2継手管12及び蓋15を取り付けた弁ハウジング1に対して、その取り付け孔14に支持部材2を圧入し、ハウジング1に支持部材2を取り付ける。次に、図2(B)に示すように、支持部材2のホルダ部21の雄ネジ部21aに対して、固定側ストッパ部材4を適宜の位置までねじ込む。これにより、図2(C)に示す本体アッセンブリ10とする。
【0026】
一方、図3(A)に示すように、付勢バネ4を装着した弁棒3のロッド部33にマグネットロータ62と、固定部材7を装着し、図3(B)に示すように、固定部材7を弁棒3の端部3aに溶接、圧入等により接合する。これにより、マグネットロータ62と弁棒3を一体にした弁体アッセンブリ20とする。
【0027】
次に、図4(A)に示すように、弁体アッセンブリ20を本体アッセンブリ10に装着する。すなわち、支持部材2の雄ネジ部21aに対して、マグネットロータ62の雌ネジ部621aをねじ込み、弁体アッセンブリ20を右回りさせる。この右回りは「第1回転方向」である。これにより、図4(B)に示すように、マグネットロータ62の可動側ストッパ62aを固定側ストッパ部材4のストッパ当接部4bに当接させた状態とする。
【0028】
次に、例えば第1継手管11側に流量計(または圧力計)を設置しておき、図5(A)に示すように、第2継手管12から弁ポート13を介して第1継手管11に空気(流体)を流しながら、可動ストッパ62aをストッパ当接部4bに当接させた状態で、弁体アッセンブリ20を右回りさせる。そして、第1継手管11から流れ出る空気の流量(または圧力)が0となった点で、弁棒3のニードル部31が弁ポート13に着座した状態、すなわち弁閉状態を保持する。次に、図5(B)に示すように、第2継手管12から弁ポート13を介して第1継手管11に空気(流体)を流しながら、固定側ストッパ部材4を左に回す。この左回りは「第2回転方向」である。このとき、固定側ストッパ部材4はマグネットロータ62の可動ストッパ62aに当接しているため、弁体アッセンブリ20も追従して回り、ニードル部31が弁ポート13から上昇し、弁が開き始める。
【0029】
そして、第1継手管11から流れ出る空気の流量(または圧力)が所定設定値となった時点で弁体アッセンブリ20及び固定側ストッパ部材4を止め、図5(C)に示すように、その位置で固定側ストッパ部材4を支持部材2に対して溶接等により接合する。これにより、マグネットロータ62の可動ストッパ62aが固定側ストッパ部材4に当接する最下端位置での弁開度を設定することができる。この設定は、「開仕様弁」の設定である。なお、この固定側ストッパ部材4の接合には、溶接や接着等、支持部材2に対して接合する方法であれば、どのような方向でもよい。
【0030】
そして、固定側ストッパ部材4の接合が完了したら、図6のように、弁体アッセンブリ20の上部に圧縮バネ64を配設してケース61を被せ、溶接等によりケース61と弁ハウジング1とを接合する。これにより、図1に示す電動弁が完成する。
【0031】
以上の例では、第1継手管11側に流量計(または圧力計)を設置し、流体(例えば空気)を第2継手管12から流入させるようにしているが、第2継手管12側に流量計(または圧力計)を設置し、流体(例えば空気)を第1継手管11から流入させるようにしてもよい。また、ニードル部31が弁ポート13に着座した状態、すなわち弁閉状態を、流量や圧力が0となることで検出しているが、例えば弁棒3と弁ポート13(弁ハウジング1)との間の電気的な導通状態を検出することで、弁閉状態をを検出するようにしてもよいし、その他の方法でもよい。
【0032】
また、上記の例では、空気の流量(または圧力)が所定設定値となるまで、弁体アッセンブリ20と共に固定側ストッパ部材4を回転させる例について説明したが、以下のようにしてもよい。空気の流量(または圧力)が所定設定値となるまで、弁体アッセンブリ20だけを回転させ、この所定設定値になった後、弁体アッセンブリ20を弁ハウジング1に対して固定した状態で、固定側ストッパ部材4を回転させる。そして、この固定側ストッパ部材4のストッパ当接部4bが可動ストッパ62aに当接した位置で、固定側ストッパ部材4を支持部材2に対して溶接等により接合するようにしてもよい。
【0033】
次に、「閉仕様弁」の設定は以下のようにする。まず、弁閉状態とするまでは前記同様に弁体アッセンブリ20を右回り(第1回転方向に回転)させる。弁閉状態となったら、その回転位置を基準として、図7(A)に示すように、固定側ストッパ4をさらに右回りさせ、図7(B)に示すように、所定回転量だけ回転した位置で、固定側ストッパ部材4を支持部材2に対して溶接等により接合する。なお、図7(B)は固定側ストッパ部材4を支持部材2に対して接合した状態で、弁体アッセンブリ20を右回りさせて、可動ストッパ62aが固定側ストッパ部材4のストッパ当接部4bに当接した状態を示している。また、弁閉状態から弁体アッセンブリ20を右回りさせると、弁体アッセンブリ20において固定部材7とマグネットロータ62のロータ本体621との間に隙間ができる。
【0034】
以上の例では、固定側ストッパ4を所定回転量だけ回転させる場合について説明したが、この固定側ストッパ4を所定回転量だけ回転させるとき、弁体アッセンブリ20を回転させることで、この弁体アッセンブリ20に追従させて固定側ストッパ4を回転させるようにしてもよい。
【0035】
以上のように、「開仕様弁」の設定時には、弁体アッセンブリ20のマグネットロータ62に対して固定側ストッパ部材4を当接させた状態で、固定側ストッパ部材4を回転させ、弁ポート13を流れる流体の流量が設定流量となる時点で、固定側ストッパ部材4と弁体アッセンブリ20の位置を設定している。また、「閉仕様弁」の設定時には、弁閉状態から固定側ストッパ4(あるいは弁体アッセンブリ20)を所定回転量だけ回転させて、固定側ストッパ部材4の位置を設定している。したがって、部品精度への依存性を低減して、弁開度の調整を正確に行うことができる。また、部品精度をラフにできるので、部品コストも低減できる。
【0036】
なお、「開仕様弁」の設定工程では、弁閉工程により弁閉状態としてから、弁開方向に調整するようにしているので、微小な弁開度の設定を迅速に行うことができるが、ある程度の弁開状態から弁閉方向に調整して弁開度を設定することもできる。
【0037】
以上の実施形態では、マグネットロータ62側の可動側ストッパ62aを、マグネット622の下部に形成するようにしているが、例えば、図8に示すように、ロータ本体621の下部に可動側ストッパ62aを形成するようにしてもよい。この場合も、可動側ストッパ62aは、マグネットロータ62が回転して下降すると、固定側ストッパ部材4のストッパ当接部4bに当接する。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 弁ハウジング
1A 弁室
11 第1継手管
12 第2継手管
13 弁ポート
2 支持部材
21 ホルダ部
21a 雄ネジ部
3 弁棒(ロータ軸)
31 ニードル部(弁体部)
4 固定側ストッパ部材(ストッパ機構)
4a 雌ネジ部
4b ストッパ当接図
6 ステッピングモータ(電動モータ)
62 マグネットロータ
62a 可動側ストッパ(ストッパ機構)
621a 雌ネジ部
10 本体アッセンブリ
20 弁体アッセンブリ
L 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8