【文献】
FEMS MICROBIOLOGY LETTERS,2012年,Vol. 332,pp.131-136
【文献】
JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY,2008年,Vol. 46, No. 8,pp.2605-2612
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、LPO O25b保有株により引き起こされる大腸菌感染症の予防または治療に使用するための、改良された特異性を備えた、大腸菌MDR株を指向する抗体を提供することである。さらに本発明の目的は、MDR大腸菌を迅速に信頼性をもって診断できる手段および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、本発明の主題により解決される。
【0015】
本発明によれば、多剤耐性(MDR)大腸菌株のO25b抗原に特異的に結合する単離された抗体が提供される。
【0016】
具体的には、抗体はモノクローナル抗体である。
【0017】
具体的には、抗体はO25b抗原のみを特異的に結合し、あるいはO25a抗原とO25b抗原に共通のエピトープを交差特異的に結合する。
【0018】
具体的観点によれば、抗体はO25b抗原およびO25またはO25a抗原を交差特異的に、たとえば同等の、同等より大きい、類似の、または異なるアフィニティーで結合する。
【0019】
具体的には、本発明の抗体は大腸菌のO25a抗原と対比してO25b抗原に優先的に結合するか、あるいは両抗原に対して少なくとも同等のアフィニティーで結合する。
【0020】
具体的態様によれば、抗体はO25a抗原と比較してO25b抗原の結合について少なくとも2倍大きなアフィニティーをもつ;具体的には、O25bまたはO25aのいずれかの抗原の結合において少なくとも2倍、または少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍の差、または少なくとも10倍もの差、たとえばアフィニティー(親和性)および/またはアビディティー(結合活性)の差をもつ。
【0021】
具体的観点によれば、O25bへの特異的結合は、イムノアッセイ、好ましくはイムノブロット法、ELISAまたは他の免疫学的方法により判定して、O25b抗原の結合について、O25またはO25a大腸菌株に対して産生されたポリクローナル血清によるO25b抗原の結合と比較してより大きなアフィニティーを特徴とする。このより高い結合アフィニティーは、具体的には少なくとも2倍、または少なくとも3倍、または少なくとも4倍、または少なくとも5倍の差、または少なくとも10倍もの差をもつ。
【0022】
具体的には、本発明の抗体がターゲティングするO25b抗原はST131株のうち1種類以上に広く存在し、より具体的には大部分に存在する。
【0023】
具体的には、抗体により認識されるエピトープは莢膜保有および無莢膜ST131−O25b:H4株、たとえば変異株の表面に存在する。
【0024】
さらなる具体的観点によれば、抗体は全長モノクローナル抗体の結合部位をもち、または結合部位を含んだ少なくとも1つの抗体ドメインを含むその抗体フラグメントをもち、その抗体は好ましくは下記のものからなる群から選択される抗体である:ネズミ、ラマ(lama)、ウサギ、ヤギ、ウシ、キメラ、ヒト化またはヒト抗体、重鎖抗体、Fab、Fd、scFv、および単一ドメイン抗体、たとえばVH、VHHまたはVL、好ましくはヒトIgG抗体、またはネズミIgG抗体。
【0025】
さらなる具体的観点によれば、抗体は、具体的にはモノマー状態においてO25b抗原を10
−7M未満、好ましくは10
−8M未満のKdで結合するアフィニティーをもつ。
【0026】
さらなる具体的観点によれば、抗体は生菌野生型MDR大腸菌株を含む血清試料においてインビトロ殺菌効力を示す。
【0027】
さらなる具体的観点によれば、抗体はインビトロで食細胞による生菌野生型MDR大腸菌株の取込みを刺激する。
【0028】
さらなる具体的観点によれば、抗体は8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体と同じエピトープを結合する。
【0029】
さらなる具体的観点によれば、抗体は8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体と同じ結合部位を含む。
【0030】
具体的観点によれば、本発明は、多剤耐性(MDR)大腸菌株のO25b抗原に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体であって、抗体8D5−1G10の抗原結合部位を含むか、または抗体8D5−1G10に由来し、または抗体8D5−1G10の機能活性バリアントである抗体を提供し、好ましくは抗体8D5−1G10は
a)DSM 26763で寄託された宿主細胞により産生される抗体軽鎖の可変領域;および/または
b)DSM 26762で寄託された宿主細胞により産生される抗体重鎖の可変領域;あるいは
c)(a)および/または(b)の機能活性バリアントを使用すること
を特徴とする。
【0031】
具体的態様によれば、抗体は8D5−1G10抗体またはその機能活性バリアントである。
【0032】
本発明のさらに他の抗体であって、6D1−1B2および8A1−1G8と命名されたものを本明細書に例示する。これらは8D5−1G10に類似するCDR配列をもつクローンであり、本明細書中では機能活性CDRバリアントとも解釈される。
【0033】
具体的には、8D5−1G10と命名された抗体は、DSM 26763で寄託された大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドのコード配列によりコードされる可変領域を含む抗体軽鎖、およびDSM 26762で寄託された大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドのコード配列によりコードされる可変領域を含む抗体重鎖から構成される。
【0034】
さらなる具体的観点によれば、抗体は8D5−1G10抗体に由来し、その際、
−抗体軽鎖の可変領域は、DSM 26763で寄託された大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドによりコードされるか、またはその機能活性バリアントである;ならびに/あるいは
−抗体重鎖の可変領域は、DSM 26762で寄託された大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドによりコードされるか、またはその機能活性バリアントである。
【0035】
さらなる具体的観点によれば、抗体は下記の抗体に由来する:
−抗体軽鎖の可変領域は、DSM 26763で寄託された大腸菌宿主細胞により産生されるか、またはその機能活性バリアントである;ならびに/あるいは
−抗体重鎖の可変領域は、DSM 26762で寄託された大腸菌宿主細胞により産生されるか、またはその機能活性バリアントである。
【0036】
他の具体的観点によれば、本発明は、単離されたモノクローナル抗体であって、O25aおよびO25b抗原に共通のエピトープを交差特異的に結合し、抗体8D10−C8の抗原結合部位を含むか、または抗体8D10−C8に由来し、または抗体8D10−C8の機能活性バリアントである抗体を提供し、好ましくは抗体8D10−C8は
a)DSM 28171で寄託された宿主細胞により産生される抗体軽鎖の可変領域;および/または
b)DSM 28172で寄託された宿主細胞により産生される抗体重鎖の可変領域;あるいは
c)(a)および/または(b)の機能活性バリアントを使用すること
を特徴とする。
【0037】
具体的態様によれば、抗体は8D10−C8抗体またはその機能活性バリアントである。
【0038】
具体的には、8D10−C8と命名された抗体は、DSM 28171で寄託された大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドのコード配列によりコードされる可変領域を含む抗体軽鎖、およびDSM 28172で寄託された大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドのコード配列によりコードされる可変領域を含む抗体重鎖から構成される。
【0039】
さらなる具体的観点によれば、抗体は8D10−C8抗体に由来し、その際、
−抗体軽鎖の可変領域は、DSM 28171で寄託された大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドによりコードされるか、あるいはその機能活性バリアントである;および/または
−抗体重鎖の可変領域は、DSM 28172で寄託された大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドによりコードされるか、あるいはその機能活性バリアントである。
【0040】
さらなる具体的観点によれば、抗体は下記の抗体に由来する:
−抗体軽鎖の可変領域は、DSM 28171で寄託された大腸菌宿主細胞により産生されるか、あるいはその機能活性バリアントである;および/または
−抗体重鎖の可変領域は、DSM 28172で寄託された大腸菌宿主細胞により産生されるか、あるいはその機能活性バリアントである。
【0041】
具体的には、機能活性バリアントはCDRバリアントであり、たとえばそれは少なくとも60%の配列同一性、好ましくは少なくとも70%、80%または90%の配列同一性をもつアミノ酸配列を備えたCDR、より具体的にはCDRループ配列を含む。
【0042】
具体的には、抗体はそのような抗体から、それぞれのCDR配列、またはCDR変異体を用いて誘導され、変異体には機能活性CDRバリアント、たとえば1つのCDRループ内に1、2または3つの点変異をもつものが含まれる。
【0043】
具体的には、機能活性バリアントは、アミノ酸配列における、好ましくはCDRにおける、少なくとも1つの点変異において親抗体と異なり、その際、それぞれのCDRアミノ酸配列中の点変異の数は0、1、2または3のいずれかである。
【0044】
さらなる具体的観点によれば、本発明は下記のヌクレオチド配列を含むプラスミドを提供する:
A
−DSM 26763で寄託された宿主細胞に含まれる8D5−1G10−LCと命名された抗体軽鎖の可変領域をコードする配列;および/または
−DSM 26762で寄託された宿主細胞に含まれる8D5−1G10−HCと命名された抗体重鎖の可変領域をコードする配列;
あるいは
B
−DSM 28171で寄託された宿主細胞に含まれる8D10−C8−LCと命名された抗体軽鎖の可変領域をコードする配列;および/または
−DSM 28172で寄託された宿主細胞に含まれる8D10−C8−HCと命名された抗体重鎖の可変領域をコードする配列。
【0045】
さらなる具体的観点によれば、本発明は、本発明の抗体の軽鎖および/または重鎖を発現するコード配列を含む発現カセットであって、発現カセットまたはコード配列が本発明
のプラスミドからなる群から選択されるプラスミドに由来するものを提供する。
【0046】
さらなる具体的観点によれば、本発明は本発明の抗体を調製する方法であって、本発明のプラスミドまたは本発明の発現カセットで宿主細胞を形質転換する方法を提供する。
【0047】
さらなる具体的観点によれば、本発明は本発明のプラスミドまたは本発明の発現カセットを含む宿主細胞を提供する。
【0048】
具体的には、宿主細胞は下記において寄託されている:
A
DSM 26763および/またはDSM 26762;あるいは
B
DSM 28171および/またはDSM 28172。
【0049】
具体的態様は、本発明の抗体を調製する方法であって、本発明の宿主細胞を、その抗体を産生する条件下で培養または維持する方法に関する。
【0050】
さらなる具体的観点によれば、本発明は、候補抗体を同定する方法であって、
(a)抗体または抗体産生細胞を含有する試料を用意し;そして
(b)試料中の抗体、または試料により産生される抗体と、8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体により認識されるエピトープとの結合を査定し、その際、抗体とエピトープの間の陽性反応によりその抗体を候補抗体と同定する
ことを含む方法を提供する。
【0051】
さらなる具体的観点によれば、本発明は、候補抗体を同定する方法であって、
(a)抗体または抗体産生細胞を含有する試料を用意し;そして
(b)試料中の抗体、または試料により産生される抗体と、ST131−O25b:H4株のO25b抗原および非MDR大腸菌株のO25抗原またはO25a抗原との結合を査定し、その際、O25抗原またはO25a抗原と対比して抗体とO25b抗原の間の特異的な陽性反応によりその抗体を候補抗体と同定する
ことを含む方法を提供する。
【0052】
具体的には、候補抗体は防御抗体の候補、たとえば療法用のもの、または診断抗体の候補である。
【0053】
さらに、さらなる具体的観点によれば、本発明は、本発明の抗体を調製する方法であって、
(a)本発明に従って同定した候補抗体を用意し;そして
(b)候補抗体のモノクローナル抗体、またはヒト化形もしくはヒト形、またはその誘導体であって候補抗体と同じエピトープ結合特異性を備えたものを調製する
ことを含む方法を提供する。
【0054】
他の具体的観点によれば、本発明は、本発明の抗体を調製する方法であって、
(a)非ヒト動物を8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体により認識されるエピトープで免疫化し;
(b)単離したB細胞から不死化細胞系を形成し;
(c)b)で得た細胞系をスクリーニングして、前記エピトープに結合するモノクローナル抗体を産生する細胞系を同定し;そして
(d)モノクローナル抗体、またはヒト化形もしくはヒト形の抗体、またはその誘導体であってモノクローナル抗体と同じエピトープ結合特異性を備えたものを調製する
ことを含む方法を提供する。
【0055】
他の具体的観点によれば、本発明は、本発明の抗体を調製する方法であって、
(a)非ヒト動物をST131−O25b:H4株のO25b抗原で免疫化して、抗体を産生するB細胞を単離し;
(b)単離したB細胞から不死化細胞系を形成し;
(c)これらの細胞系をスクリーニングして、大腸菌のO25抗原またはO25a抗原と対比してO25b抗原に優先的に結合するモノクローナル抗体を産生する細胞系を同定し;そして
(d)モノクローナル抗体、またはヒト化形もしくはヒト形の抗体、またはその誘導体であってモノクローナル抗体と同じエピトープ結合特異性を備えたものを調製する
ことを含む方法を提供する。
【0056】
さらなる観点によれば、本発明は、医療における本発明の抗体の使用を提供する。具体的には、MDR大腸菌感染のリスクをもつ対象またはそれに罹患している対象を処置する際の、対象における感染の制限またはその感染から生じる病的状態の改善に有効な量の抗体を対象に投与することを含む使用のための、好ましくは腎盂腎炎、続発性菌血症、敗血症、腹膜炎、髄膜炎、および人工呼吸器関連肺炎の治療または予防のための抗体が提供される。
【0057】
具体的には、MDR大腸菌、好ましくはST131−O25b:H4株を、その株が発現する莢膜多糖に関係なく殺菌するための抗体が提供される。
【0058】
具体的観点によれば、さらに、MDR大腸菌感染のリスクをもつ対象またはそれに罹患している対象を処置する処置方法であって、対象における感染の制限またはその感染から生じる病的状態の改善に有効な量の抗体を対象に投与することを含む方法、好ましくは腎盂腎炎、続発性菌血症、敗血症、腹膜炎、髄膜炎、および人工呼吸器関連肺炎を治療または予防するための方法が提供される。
【0059】
具体的には、MDR大腸菌、好ましくはST131−O25b:H4株を、その株が発現する莢膜多糖に関係なく殺菌するための処置方法が提供される。
【0060】
具体的観点によれば、本発明の抗体を用いる免疫療法は、たとえば種々の動物モデルにおいて判定して、生菌攻撃に対して効果的に防御できる。
【0061】
この抗体は致死的な内毒素血症を特異的に中和することができる。そのような機能活性は適宜なインビボモデルにおいて判定できる(精製LPSによる攻撃)。
【0062】
この抗体は補体媒介による殺菌作用によりMDR大腸菌に対して特異的に有効であり、たとえばインビトロでの血清殺菌アッセイ(serum bactericidal assay)(SBA)により判定して、たとえば対照試料(抗体なし、または無関係な対照mAbを添加)より少なくとも20%高い死菌率をもつ。
【0063】
この抗体は抗体媒介による食菌作用によりMDR大腸菌に対して特異的に有効であり、たとえばインビトロでのオプソニン食作用殺菌アッセイ(opsonophagocytotic killing assay)(OPK)により判定して、たとえば対照試料(抗体なし、または無関係な対照mAbを添加)より少なくとも20%高い装入細菌取り込み、あるいは少なくとも20%低い最終cfuカウントをもつ。
【0064】
この抗体は内毒素中和機能によりMDR大腸菌に対して特異的に有効であり、たとえば
インビトロLAL活性またはトール様受容体4(TLR4)レポーターアッセイにより判定して、たとえば対照試料(抗体なし、または無関係な対照mAbを添加)に対する内毒素アクティビティエシン(activitiesin)比較が少なくとも20%低減する。
【0065】
具体的態様によれば、この抗体は非経口または粘膜用の配合物で投与される。
【0066】
さらなる観点によれば、本発明は、好ましくは非経口または粘膜用の配合物を含む、場合により医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤を含有する、本発明の抗体の医薬製剤を提供する。
【0067】
さらなる観点によれば、対象において、LPS O25b抗原を発現するMDR株により起きる大腸菌感染症、たとえば膀胱炎または尿道炎、上行性または血行性腎盂腎炎を含めた上部および下部尿路感染症を伴なう感染症、特に糖尿病患者におけるもの、ならびに菌血症、敗血症、腹膜炎または腸定着を伴なう感染症を検出または判定する診断に使用するための、本発明の抗体を提供する。
【0068】
具体的には、本発明に従って使用するための抗体が提供され、その際、対象の体液の試料を抗体と接触させることにより対象においてMDR大腸菌による全身感染をエクスビボ判定し、その際、抗体の特異的な免疫反応により感染を判定する。
【0069】
具体的には、体液の試料を特異的な免疫反応について試験し、その試料は尿、血液、血液分離物または血液培養物、吸引液、喀痰、挿管対象の洗浄液、および糞便からなる群から選択される。
【0070】
具体的には、本発明による診断用途は、臨床検体から回収した純大腸菌培養物から大腸菌の血清型をインビトロで判定することに関連する。
【0071】
さらなる観点によれば、本発明は、場合により標識付きの抗体、および/または標識付きのさらなる診断試薬、たとえば抗体もしくは抗体と各ターゲット抗原との免疫複合体を特異的に認識する試薬、および/または抗体と診断試薬のうち少なくとも1つを固定化するための固相を含む、本発明の抗体の診断用製剤を提供する。診断用製剤は組成物として、またはたとえば構成要素を含むパーツのキットとして提供でき、たとえば、構成要素は下記を含む:
a)診断用抗体製剤、および/または
b)さらなる診断試薬、
ならびに/あるいは抗体および診断試薬のうち少なくとも1つを固定化するための固相を、別個の構成要素として、あるいは前記a)および/またはb)のいずれかの構成要素のキャリヤーとして。
【0072】
本発明の好ましい診断アッセイは、たとえば、被験試料から得たO25b抗原を発現する細菌または遊離(または単離された)O25b抗原の、抗体による凝集を検査するために、固相、たとえばラテックスビーズ、金粒子などに固定化した本発明の抗体を含む。
【0073】
ある診断アッセイは、O25b抗原とO25a抗原を識別できるように、O25b抗原および/またはO25aを結合する異なる特異性および/またはアフィニティーを備えた2種類の異なる抗体を伴なうことができる。
【0074】
具体的観点によれば、本発明は、本発明の診断薬または本発明の診断方法によりMDR大腸菌による対象の感染を判定するためのコンパニオン診断薬を提供して、そのような感染症に対してたとえば免疫療法を用いる療法による処置、たとえば本発明の抗体による処
置の基礎を提供する。
【0075】
具体的観点によれば、本発明は、生菌の量が限られている場合に、たとえば臨床検体からの遊離LPSを測定することにより、MDR大腸菌による対象の感染を診断するための高感度ベッドサイド診断薬を提供する。そのようなアッセイの感度は、具体的には、100ng未満、好ましくは10ng未満のLPSである。
【0076】
さらなる観点によれば、本発明は、8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体により認識される単離されたエピトープを提供する。そのようなエピトープは、単一エピトープ、または8D5−1G10もしくは8D10−C8と命名された特異的抗体によりそれぞれ認識されるエピトープバリアントを含むエピトープ混合物からなることができる。具体的には、8D10−C8抗体のエピトープはO25bとO25aの両抗原に共通のものであり、広く存在するので、この抗体は交差特異性であると考えられるが、それでもなおO25b抗原を優先的に、少なくともO25a抗原を結合するのと同等に結合する。
【0077】
さらなる観点によれば、本発明は、下記のものを含む免疫原を提供する:
(a)本発明のエピトープ;
(b)場合により、(a)のエピトープと自然界での関連性がないさらなるエピトープ;および
(c)キャリヤー。
【0078】
具体的には、キャリヤーは医薬的に許容できるキャリヤーであり、好ましくは緩衝剤および/または佐剤(アジュバント)を含む。
【0079】
本発明の免疫原は、好ましくはワクチン配合物、好ましくは非経口用のものとして提供される。
【0080】
具体的には、本発明の免疫原は医療用として、具体的にはMDR大腸菌感染からの対象の保護またはその感染から生じる病的状態の阻止に有効な量の免疫原を対象に投与することにより対象を処置する際に使用するためのものとして提供される。
【0081】
具体的には、本発明の免疫原は防御免疫応答を誘発するために提供される。
【0082】
具体的観点によれば、さらに、MDR大腸菌感染のリスクをもつ対象を処置する処置方法が提供され、その方法は、対象における感染の予防、特に病原性MDR大腸菌に対する防御に有効な量の免疫原を対象に投与することを含む。
【0083】
さらなる観点によれば、本発明は、本発明の抗体をコードする、または本発明のエピトープをコードする、単離された核酸を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0085】
本明細書中で用いる用語“抗体”は、免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖の定常ドメインおよび/または可変ドメインとして理解されている抗体ドメインからなるかあるいはそれらのドメインを含み、リンカー配列を含むかまたは含まない、ポリペプチドまたはペプチドを表わすものとする。ポリペプチドは、抗体ドメイン構造の少なくとも2つのベータストランドがループ配列により連結されたものからなるベータ−バレル構造を含むならば、抗体ドメインであると解釈される。抗体ドメインは天然構造のものであってもよく、あるいはたとえば抗原結合特性または他のいずれかの特性、たとえば安定性、あるいはFc受容体であるFcRnおよび/またはFcガンマ受容体への結合性などの機能特性を改変するために、変異形成または誘導体化により修飾されていてもよい。
【0086】
本明細書中で用いる抗体は、1種類以上の抗原またはそのような抗原の1以上のエピトープを結合する特異的な結合部位をもち、それには具体的には下記のものが含まれる:単一可変抗体ドメイン、たとえばVH、VLもしくはVHHのCDR結合部位、または可変抗体ドメイン対(たとえば、VL/VH対)、VL/VHドメイン対および定常抗体ドメインを含む抗体、たとえばFab、F(ab’)、(Fab)
2、scFv、Fv、もしくは全長抗体の結合部位。
【0087】
本明細書中で用いる用語“抗体”は、特に下記のものを含むかあるいはそれからなる抗体フォーマットを表わものとする:単一可変抗体ドメイン、たとえばVH、VLもしくはVHH、あるいは可変抗体ドメインおよび/または定常抗体ドメインの組合わせであって連結配列またはヒンジ領域を含むかまたは含まないもの、これには可変抗体ドメイン対(たとえば、VL/VH対)、VL/VHドメイン対および定常抗体ドメインを含むかまたはそれからなる抗体、たとえば重鎖抗体、Fab、F(ab’)、(Fab)
2、scFv、Fd、Fv、または全長抗体、たとえばIgGタイプのもの(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgM抗体が含まれる。用語“全長抗体”は、少なくとも天然抗体モノマー中に一般にみられるFcドメインおよび他のドメインの大部分を含むいずれかの抗体分子を表わすために使用できる。この句は本明細書中で、その抗体分子が抗体フラグメントではないことを強調するために用いられる。
【0088】
用語“抗体”には、具体的には、単離された形の抗体、たとえば異なるターゲット抗原を指向するかまたは異なる構造様式の抗体ドメインを含む他の抗体を実質的に含まない抗体が含まれるものとする。それでもなお、単離された抗体は、単離された抗体と、たとえば少なくとも1種類の他の抗体、たとえば異なる特異性をもつモノクローナル抗体または抗体フラグメントとの組合わせを含有する組合わせ製剤中に含まれてもよい。
【0089】
用語“抗体”は、ヒト種を含む下記の動物に由来する抗体に適用されるものとする:たとえば、ヒト、ネズミ、ウサギ、ヤギ、ラマ、ウシおよびウマを含む哺乳類、または鳥類、たとえばニワトリ。
【0090】
用語“抗体”は、さらに、異なる種に由来する配列、たとえばネズミ由来の配列および
ヒト由来の配列をもつ、キメラ抗体に適用される。
【0091】
抗体に関して用いる用語“キメラ”は、重鎖および軽鎖の各アミノ酸配列の一部分は特定の種に由来するかまたは特定のクラスに属する抗体中の対応する配列と相同であり、一方、その鎖の残りのセグメントは他の種またはクラスの対応する配列と相同である抗体を表わす。一般に、軽鎖および重鎖の両方の可変領域は哺乳類の1つの種に由来する抗体の可変領域を模倣し、一方、定常部は他のものに由来する抗体の配列と相同である。たとえば、可変領域は現在知られている供給源からヒト以外のホスト生物に由来する容易に入手できるB細胞またはハイブリドーマを用いて得ることができ、これをたとえばヒト細胞調製物に由来する定常領域と組み合わせる。
【0092】
用語“抗体”は、さらにヒト化抗体に適用される。
【0093】
抗体に関して用いる用語“ヒト化”は、実質的にヒト以外の種からの免疫グロブリンに由来する抗原結合部位をもち、その分子の残りの免疫グロブリン構造はヒト免疫グロブリンの構造および/または配列をベースとする分子を表わす。抗原結合部位は、定常ドメインに融合した完全可変ドメイン、または相補性決定領域(CDR)のみが可変ドメイン中の適宜な枠組み構造領域に架橋したもののいずれかを含むことができる。抗原結合部位は野生型であってもよく、あるいはたとえば1以上のアミノ酸置換により修飾されたもの、好ましくはヒト免疫グロブリンにさらに近似させるために修飾されたものであってもよい。ある形態のヒト化抗体はすべてのCDR配列を保存している(たとえば、マウス抗体からの6つのCDRすべてを含むヒト化マウス抗体)。他の形態は、元の抗体に対して変更された1以上のCDRをもつ。
【0094】
用語“抗体”は、さらにヒト抗体に適用される。
【0095】
抗体に関して用いる用語“ヒト”は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域をもつ抗体を含むと解釈される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列がコードしないアミノ酸残基(たとえば、インビトロでランダムもしくは部位特異的な変異形成により、またはインビボで体細胞変異により導入された変異)を、たとえばCDR中に含むことができる。ヒト抗体には、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1以上のヒト免疫グロブリンについてのトランスジェニック動物から単離された抗体が含まれる。
【0096】
この用語は、具体的にいずれのクラスまたはサブクラスの抗体にも適用される。抗体は、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの主クラスに配属でき、これらのうち幾つかはさらにサブクラス(イソ型)、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2に分類できる。
【0097】
この用語はさらにモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、具体的には組換え抗体に適用され、この用語には組換え手段で調製、発現、作成または単離されたすべての抗体および抗体構造体、たとえば異なる起源からの遺伝子または配列を含む動物、たとえばヒトを含めた哺乳動物を起源とする抗体、たとえばキメラ抗体、ヒト化抗体またはハイブリドーマ由来抗体が含まれる。さらなる例は、その抗体を発現するように形質転換した宿主細胞から単離された抗体、または抗体もしくは抗体ドメインの組換えコンビナトリアルライブラリーから単離された抗体、または抗体遺伝子配列を他のDNA配列へスプライスすることを伴なう他のいずれかの手段で調製、発現、作成もしくは単離された抗体に関係する。
【0098】
用語“抗体”は、抗体の誘導体、特に機能活性誘導体をも表わすと解釈される。抗体誘導体は、1以上の抗体ドメインもしくは抗体の組合わせ、および/または抗体のいずれかのドメインが他の1種類以上のタンパク質、たとえば他の抗体のいずれかの位置に融合していてもよい融合タンパク質、たとえば、CDRループ、レセプターポリペプチドを含むけれどもリガンド、足場タンパク質、酵素、毒素などをも含む結合構造体であると解釈される。抗体の誘導体は、種々の化学的手法、たとえば共有結合、静電相互作用、ジスルフィド結合などにより他の物質に会合または結合させることによって得ることができる。抗体に結合した他の物質は、脂質、糖質、核酸、有機および無機の分子、またはそのいずれかの組合わせであってもよい(たとえば、PEGまたは薬物)。具体的態様において、抗体は、生物学的に許容できる化合物と特異的に相互作用しうる追加タグを含む誘導体である。本発明に使用できるタグに関して、それが抗体のターゲットへの抗体の結合に負の影響をもたないかまたはその影響が耐容できる限り、明確な制限はない。適切なタグの例には、His−タグ、Myc−タグ、FLAG−タグ、Strep−タグ、カルモジュリン(Calmodulin)−タグ、GST−タグ、MBP−タグ、およびS−タグが含まれる。他の具体的態様において、抗体は標識を含む誘導体である。本明細書中で用いる用語“標識”は、“標識された”抗体が生成するように抗体に直接または間接的にコンジュゲートさせる検出可能な化合物または組成物を表わす。標識はそれ自体が検出可能なもの、たとえば放射性同位体標識または蛍光標識であってもよく、あるいは酵素標識の場合は基質である化合物または組成物の化学変化を触媒し、それが検出可能であってもよい。
【0099】
本明細書に記載する好ましい誘導体は、抗原結合に関して機能活性であり、好ましくは、たとえばSBA、OPKもしくはLALアッセイにおいて判定してMDR大腸菌およびそれの内毒素と闘う効力、または細菌攻撃に対して防御する効力、または致死的な内毒素血症を中和する効力をもつ。
【0100】
親抗体または親抗体配列から誘導した抗体は、本明細書中で特に、たとえばインシリコ(in silico)もしくは組換え工学により、または化学的な誘導体化もしくは合成により得
られた、変異体またはバリアントであると解釈される。
【0101】
具体的には、本発明の抗体から誘導した抗体は、O25b抗原への差示結合、たとえばO25b抗原の特異的または選択的結合において機能活性であるCDR領域またはそのCDRバリアントのうち少なくとも1つまたはそれ以上を含むことができる。
【0102】
用語“抗体”は、抗体のバリアントをも表わすと解釈される。
【0103】
用語“バリアント”は、特に変異抗体または抗体フラグメントなどの抗体であって、たとえば特に、特定の抗体アミノ酸配列もしくは領域を欠失させ、交換し、挿入配列を導入するために、またはアミノ酸配列を化学的に誘導体化するために、変異形成法により得られたものを表わすものとする;たとえば、定常ドメインにおいて抗体の安定性、エフェクター機能または半減期を工学的に操作するために、あるいは可変ドメインにおいて抗原結合特性を改善するために、たとえばアフィニティー成熟(affinity maturation)法により
得られたもの。いずれか既知の変異形成法を採用でき、それには、たとえばランダム化法により得られる目的位置での点変異が含まれる。ある場合には、たとえば抗体配列をランダム化するためにいずれか可能なアミノ酸または選択した好ましいアミノ酸を用いて、位置をランダムに選定する。用語“変異形成”は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列を変異させるための当技術分野で認知されているいずれかの手法を表わす。好ましいタイプの変異形成には、エラープローンPCR(error prone PCR)変異形成、飽和変異形
成(saturation mutagenesis)、または他の部位特異的変異形成が含まれる。
【0104】
用語“バリアント”は、具体的には機能活性バリアントを包含するものとする。
【0105】
本明細書中で用いる、抗体の“機能活性バリアント”という用語は、たとえば1個以上のアミノ酸を挿入、欠失または置換することによりこの配列(親抗体または親配列)を修飾することから得られた配列であって、たとえばアミノ酸配列中の1個以上のアミノ酸残基またはヌクレオチド配列内のヌクレオチドまたは配列の一方もしくは両方の末端の組換え法または化学的誘導体化などにより得られたものを意味し、その修飾がこの配列の活性に影響を及ぼすこと(特に、損なうこと)はない。選択したターゲット抗原に対する特異性をもつ結合部位の場合、抗体の機能活性バリアントは前決定された結合特異性をなお備えているであろう;ただし、これは、特異的エピトープに対する微細な特異性、アフィニティー、アビディティー、KonまたはKoff速度などを変化させるために、変化させることができる。具体的には、本発明の抗体の機能活性バリアントは、O25b抗原を結合する効力、および大腸菌の他の抗原と対比してO25b抗原に優先的に結合する特異性または選択性をもち、たとえば大腸菌のO25b抗原に結合し、O25a抗原には結合せず、またはO25a抗原に有意には結合せず、あるいは大腸菌のO25bおよびO25a両方の抗原を交差特異的に結合するけれども他の抗原には結合しない。
【0106】
機能活性バリアントは、たとえば親抗体の配列を変化させることにより得ることができる:たとえば、6D1−1B2、8A1−1G8、8D5−1G10もしくは8D10−C8と命名された抗体と同じ結合部位を含むけれども結合部位以外の抗体領域内に修飾をもつ抗体;または、6D1−1B2、8A1−1G8、8D5−1G10もしくは8D10−C8抗体のいずれかである親抗体から、結合部位内ではあるけれども抗原結合を損なわない修飾により誘導された抗体;それらは、好ましくは親抗体に類似する生物活性をもち、これにはO25b抗原を特異的または選択的に結合する能力、たとえば大腸菌のO25b抗原に結合し、O25a抗原には結合せず、またはO25a抗原を有意には結合しないこと、あるいは大腸菌のO25bおよびO25a両方の抗原を交差特異的に結合するけれども他の抗原には結合しないことが含まれる。場合により、機能活性バリアントは、さらにSBAアッセイにおける補体媒介殺菌効力を含むことができ、および/または場合によりさらにOPKアッセイにおける抗体媒介食菌効力を含むことができ、および/または場合によりさらにLALアッセイにおける内毒素中和機能を含むことができ、たとえばターゲットMDR大腸菌に対する特異的結合アッセイまたは機能試験により判定して実質的に同じ生物活性を備えている。
【0107】
たとえば、機能活性バリアントである抗体6D1−1B2および8A1−1G8は、8D5−1G10抗体と実質的に同じ類似の結合アフィニティーをもつ(次表を参照)。
【0109】
本明細書中で用いる用語“実質的に同じ生物活性”は、親抗体について測定された活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらに少なくとも100%、または少なくとも110%、または少なくとも120%、または少なくとも130%、または少なくとも140%、または少なくとも150%、または少なくとも160%、または少なくとも170%、または少なくとも180%、または少なくとも190%、たとえ
ば最大で200%であるのと実質的に同じ活性により示される活性を表わす。
【0110】
本明細書に記載する好ましいバリアントまたは誘導体は、抗原結合に関して機能活性であり、好ましくは大腸菌のO25b抗原を特異的に結合し、他の抗原には結合しない効力、たとえば大腸菌のO25b抗原に結合し、O25a抗原には結合せず、またはO25a抗原に有意には結合しない効力、あるいは大腸菌のO25bおよびO25a両方の抗原を交差特異的に結合する効力、たとえばO25aに対比してO25b抗原を優先的に結合し、またはO25(O25a)株に対して産生された現在のポリクローナルタイピング血清と比較してより高いアフィニティーでO25b抗原を結合する効力をもつ。好ましいバリアントは、大腸菌の他の抗原を結合せず、少なくとも2log、好ましくは少なくとも3logのKd値差をもち、場合によりさらにSBAアッセイにおいて、たとえばその抗体を含有しない対照試料と対比して有意の細菌数減少を達成する補体媒介殺菌効力を含み、および/または場合によりさらにOPKアッセイにおいて、その抗体を含有しない対照試料と対比して有意の細菌数減少を達成するような抗体媒介食菌効力を含み、および/または場合によりさらにLALもしくはTLR4シグナル伝達アッセイにおいて、その抗体を含有しない対照試料と対比して有意の遊離LPS減少を達成するような内毒素中和機能を含み、たとえばターゲットMDR大腸菌に対する特異的結合アッセイまたは機能試験により判定して実質的に同じ生物活性をもつ。種々のアッセイにおける分析体の有意の減少とは、一般に少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または98%、最大で約100%(±1%)の減少を意味する。
【0111】
好ましい態様において、親抗体の機能活性バリアントは、
a)その抗体の生物活性フラグメントであり、そのフラグメントは分子の配列の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%または99%を含む;
b)その抗体から少なくとも1個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失により誘導され、その際、機能活性バリアントは、抗体などの分子またはそれの一部に対して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、よりさらに好ましくは少なくとも90%、よりいっそう好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%または99%の配列同一性をもつ;ならびに/あるいは
c)抗体またはその機能活性バリアント、およびさらにそのポリペプチドまたはヌクレオチド配列に対してヘテロロガスな少なくとも1個のアミノ酸またはヌクレオチドからなる。
【0112】
本発明の好ましい1態様において、本発明による抗体の機能活性バリアントは前記のバリアントと本質的に同一であるが、それは異なる種の相同配列に由来するという点でそれのポリペプチドまたはヌクレオチド配列とそれぞれ異なる。これらは天然のバリアントまたはアナログと呼ばれる。
【0113】
用語“機能活性バリアント”には、変異体または他のいずれかの非天然バリアントのほか、天然の対立遺伝子バリアントも含まれる。当技術分野で知られているように、対立遺伝子バリアントは、ポリペプチドの生物学的機能を本質的に変化させることのない1個以上のアミノ酸の置換、欠失または付加をもつことを特徴とする別形態の(ポリ)ペプチドである。
【0114】
機能活性バリアントは、ポリペプチドまたはヌクレオチド配列の配列変更により、たとえば1以上の点変異により得ることができ、その際、本発明の組合わせに使用した場合、その配列変更により、変更されていないポリペプチドまたはヌクレオチド配列の機能は保
持されている。そのような配列変更には(保存的)な置換、付加、欠失、変異形成または挿入を含めることができるが、これらに限定されない。
【0115】
具体的な機能活性バリアントはCDRバリアントである。CDRバリアントには、CDR領域において少なくとも1個のアミノ酸により修飾されたアミノ酸配列が含まれ、その修飾はアミノ酸配列の化学的変更または部分的変更であってもよく、その修飾はバリアントが非修飾配列の生物学的特性を保持できるものである。CDRアミノ酸配列の部分的変更は、1個ないし数個のアミノ酸、たとえば1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の欠失もしくは置換によるもの、または1個ないし数個のアミノ酸、たとえば1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の付加もしくは挿入によるもの、または1個ないし数個のアミノ酸、たとえば1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の化学的誘導体化によるもの、またはその組合わせであってもよい。アミノ酸残基の置換は、保存的置換、たとえば1個の疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸に置換するものであってもよい。
【0116】
保存的置換は、それらの側鎖および化学的特性において関係があるアミノ酸のファミリー内で行なわれるものである。そのようなファミリーの例は、塩基性側鎖をもつアミノ酸、酸性側鎖をもつアミノ酸、非極性脂肪族側鎖をもつアミノ酸、非極性芳香族側鎖をもつアミノ酸、非荷電極性側鎖をもつアミノ酸、小さな側鎖をもつアミノ酸、大きな側鎖をもつアミノ酸などである。
【0117】
点変異は、特に、ポリヌクレオチドの工学操作であって、1以上の単一(非連続)アミノ酸またはアミノ酸対を異なるアミノ酸に置換または交換するか、欠失または挿入する際に、工学的に操作されていないアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列の発現をもたらすものであると解釈される。
【0118】
好ましい点変異は、同じ極性および/または電荷のアミノ酸の交換を表わす。これに関して、アミノ酸は、64のトリプレットコドンによりコードされる20種類の天然アミノ酸を表わす。これら20種類のアミノ酸は、中性電荷、正電荷および負電荷をもつものに分類できる:
“
中性”アミノ酸を、それらの各3文字コードおよび1文字コードならびに極性と共に以下に示す:
アラニン:(Ala,A) 非極性,中性;
アスパラギン:(Asn,N) 極性,中性;
システイン:(Cys,C) 非極性,中性;
グルタミン:(Gln,Q) 極性,中性;
グリシン:(Gly,G) 非極性,中性;
イソロイシン:(Ile,I) 非極性,中性;
ロイシン:(Leu,L) 非極性,中性;
メチオニン:(Met,M) 非極性,中性;
フェニルアラニン:(Phe,F) 非極性,中性;
プロリン:(Pro,P) 非極性,中性;
セリン:(Ser,S) 極性,中性;
トレオニン:(Thr,T) 極性,中性;
トリプトファン:(Trp,W) 非極性,中性;
チロシン:(Tyr,Y) 極性,中性;
バリン:(Val,V) 非極性,中性;および
ヒスチジン:(His,H) 極性,正(10%) 中性(90%)
“
正”電荷アミノ酸は下記のものである:
アルギニン:(Arg,R) 極性,正;および
リジン:(Lys,K) 極性,正
“
負”電荷アミノ酸は下記のものである:
アスパラギン酸:(Asp,D) 極性,負;および
グルタミン酸:(Glu,E) 極性,負。
【0119】
本明細書に記載する抗体配列およびホモログに関する“アミノ酸配列同一性パーセント(%)”は、配列をアラインさせ、必要であれば最大の配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入した後、保存的置換はいずれも配列同一性の一部ではないとみなして、特定のポリペプチド配列中のアミノ酸と同一である、候補配列中のアミノ酸残基のパーセントと定義される。当業者は、比較する配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するのに必要ないずれかのアルゴリズムを含めて、アラインメントを決定するのに適したパラメーターを決定できる。
【0120】
抗体バリアントは、具体的にはホモログ、アナログ、フラグメント、修飾体、または糖鎖工学的操作により調製された特定のグリコシル化パターンを備えたバリアントを含むと解釈され、これらは機能性であり、機能均等物として使用でき、たとえば特定のターゲットに結合し、機能特性を備えている。
【0121】
本発明の抗体は、Fcエフェクター機能を示してもよく、示さなくてもよい。好ましくは、抗体はFcエフェクター機能を示し、SBAおよび/またはOPKアッセイにおいて機能活性である。具体的抗体は、活性Fc部分を欠如していてもよく、したがって抗体のFc部分を含まないかまたはFcガンマ受容体結合部位を含まない抗体ドメインから構成され、あるいはたとえばFcエフェクター機能を低下させる修飾によりFcエフェクター機能を欠如した抗体ドメインを含む。別の抗体は、Fcエフェクター機能を増大させる修飾、特にOPKおよび/またはSBA活性を高める修飾を含むように工学操作されていてもよい。
【0122】
そのような修飾は、Fcエフェクター機能の低下または増大を達成するような変異形成、たとえばFcガンマ受容体結合部位における変異により、あるいは抗体フォーマットのADCCおよび/またはCDC活性を妨害する誘導体もしくは作用剤により、行なうことができる。
【0123】
Fcエフェクター機能の有意の低下とは、ADCCおよび/またはCDC活性により測定して、一般に非修飾(野生型)フォーマットの10%未満、好ましくは5%未満のFcエフェクター機能を表わすと解釈される。Fcエフェクター機能の有意の増大とは、ADCCおよび/またはCDC活性により測定して、一般に非修飾(野生型)フォーマットの少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%または50%のFcエフェクター機能増大を表わすと解釈される。
【0124】
抗体配列に関する用語“糖鎖工学的に操作された(glycoengineered)”は、糖鎖工学的
操作の結果として、改変された免疫原特性、ADCCおよび/またはCDCをもつグリコシル化バリアントを表わすものとする。すべての抗体が重鎖定常領域の保存された位置に糖質構造を含み、各イソ型は別個のN連結糖質構造のアレイを保有し、それらはタンパク質のアセンブリー、分泌または機能活性に多様な影響を及ぼす。IgG1タイプの抗体は、各CH2ドメインのAsn297に保存されたN連結グリコシル化部位をもつ糖タンパク質である。Asn297に結合した2つの複雑なバイ−アンテナ型(bi-antennary)オリゴ糖はCH2ドメイン間に埋め込まれてそのポリペプチド主鎖との広域接点を形成し、それらの存在は抗体がエフェクター機能、たとえば抗体依存性の補体媒介殺菌または食菌細胞による取込みを媒介するために必須である。N297のN−グリカンの除去(たとえば、N297をたとえばAに変異させることによる)またはT299のN−グリカンの除去により、エフェクター機能が低下した非グリコシル化抗体フォーマットになる。
【0125】
抗体グリコシル化の大きな相異が細胞間で生じ、微小な相異は異なる培養条件下で増殖した特定の細胞系についてすらみられる。細菌細胞での発現は、一般に非グリコシル化抗体を生成する。β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)、すなわちバイセクティング(bisecting)GIcNAcの形成を触媒する
グリコシルトランスフェラーゼの発現がテトラサイクリンで調節されたCHO細胞は、改善された機能(ADCC)活性をもつと報告された(Umana et al., 1999, Nature Biotech. 17: 176-180)。抗体の組換え産生に際してグリコシル化に影響を及ぼす要因には、宿
主細胞の選定のほかに、増殖様式、培地配合、培養密度、酸素供給、pH、精製スキームなどが含まれる。
【0126】
用語“抗原結合部位”または“結合部位”は、抗原結合に関与する抗体部分を表わす。抗原結合部位は、重(“H”)鎖および/または軽(“L”)鎖のN末端可変(“V”)領域あるいはその可変ドメインのアミノ酸残基により形成される。重鎖および軽鎖のV領域内に、“超可変領域”と呼ばれる多様性の高い3つの区域が、より保存された枠組み構造領域として知られるフランキング区域間に配置されている。抗原結合部位は結合したエピトープまたは抗原の三次元表面に対して相補的な表面を備えており、超可変領域は“相補性決定領域”、または“CDR”と呼ばれる。CDRに含まれる結合部位を、本明細書中で“CDR結合部位”とも呼ぶ。
【0127】
本明細書中で用いる用語“抗原”は、用語“ターゲット”または“ターゲット抗原”と互換性をもって用いられ、全ターゲット分子、またはそのような分子のフラグメントであって抗体の結合部位により認識されるフラグメントを表わすものとする。具体的には、抗原の下位構造体、たとえば一般に“エピトープ”とよばれるポリペプチドまたは糖質構造体、たとえば免疫関連のB細胞エピトープまたはT細胞エピトープを、そのような結合部位により認識できる。O25bまたはO25a抗原のような特異的抗原が、単離された抗原として、あるいは大腸菌または細胞画分の形で提供される。
【0128】
本明細書中で用いる用語“エピトープ”は、特に、抗体の結合部位に対して完全に特異的結合パートナーを構成するかまたは特異的結合パートナーの一部となることができる、分子構造体を表わすものとする。エピトープは天然または人工のいずれであってもよく、糖質、ペプチド構造体、脂肪酸、有機物、生化学的物質もしくは無機物、またはその誘導体、およびそのいずれかの組合わせから構成される。エピトープがペプチド構造体、たとえばペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質中に含まれるならば、それは通常は少なくとも3個のアミノ酸、好ましくは5〜40個のアミノ酸、より好ましくは約10〜20個のアミノ酸を含むであろう。エピトープは、線状または高次構造のいずれのエピトープであってもよい。線状エピトープは、ポリペプチドまたは糖鎖の一次配列の単一セグメントから構成される。線状エピトープは、連続的またはオーバーラップしたものであってもよい。高次構造エピトープは、ポリペプチドがフォールディングすることによって近づけられて三次構造を形成したアミノ酸または糖質から構成され、それらのアミノ酸は線状配列中では必ずしも互いに近接してはいない。具体的には、ポリペプチド抗原に関して、高次構造または不連続エピトープは、一次配列においては離れていたけれどもポリペプチドがフォールディングして天然タンパク質/抗原になった際に分子の表面でアセンブリングして統合された構造体になった2以上の別個のアミノ酸残基の存在を特徴とする。
【0129】
本明細書中で用語“エピトープ”は、特に、抗体により認識される単一エピトープ、またはターゲットを特異的に認識する抗体によりそれぞれ認識されるエピトープバリアントを含むエピトープ混合物を表わすものとする;たとえば、6D1−1B2、8A1−1G8、8D5−1G10および8D10−Cと命名された抗体からなる群から選択される抗体により特異的に認識されるエピトープ。具体的には、6D1−1B2、8A1−1G8
、8D5−1G10および8D10−Cと命名された抗体からなる群から選択される抗体によりターゲティングされるエピトープは糖質エピトープである。
【0130】
用語“発現”は、下記のように解釈される。たとえば本明細書に記載する抗体などの発現生成物の目的コード配列、および制御配列、たとえば作動可能な状態で連結したプロモーターを含む核酸分子を、発現の目的に使用できる。これらの配列で形質転換またはトランスフェクションした宿主は、コードされたタンパク質を産生できる。形質転換を行なうためには、発現系をベクターに導入することができる;しかし、関連DNAを宿主の染色体に組み込むこともできる。具体的には、この用語は、たとえばベクターが保有して宿主細胞に導入された外来DNAによりコードされるタンパク質の発現に適切な条件下における、宿主細胞および適合性ベクターに関するものである。
【0131】
コードDNAは、たとえば抗体などの特定のポリペプチドまたはタンパク質に関する特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列である。プロモーターDNAは、コードDNAの発現を開始、調節、または他の形で媒介または制御するDNA配列である。プロモーターDNAおよびコードDNAは同じ遺伝子または異なる遺伝子に由来するものであってよく、同じ生物または異なる生物に由来するものであってよい。組換えクローニングベクターは、しばしば、クローニングまたは発現のための1以上の複製システム、宿主における選択のための1以上のマーカー、たとえば抗生物質耐性、および1以上の発現カセットを含むであろう。
【0132】
本明細書中で用いる“ベクター”は、適切な宿主生物におけるクローン化された組換えヌクレオチド配列の(すなわち、組換え遺伝子の)転写およびそれらのmRNAの転写に必要なDNA配列と定義される。
【0133】
“発現カセット”は、発現生成物をコードするDNAコード配列またはDNAセグメントを表わし、それをベクターに既定の制限部位で挿入できる。カセット制限部位は、カセットを適正なリーディングフレーム内に確実に挿入するように設計される。一般に、外来DNAはベクターDNAの1以上の制限部位で挿入され、次いで伝達可能なベクターDNAと共にそのベクターにより宿主細胞内へ運ばれる。挿入または付加されたDNAを含むDNAのセグメントまたは配列、たとえば発現ベクターは、“DNA構築体”とも呼ばれる。
【0134】
発現ベクターは、発現カセットを含み、さらに通常は宿主細胞における自律複製のための起点、またはゲノム組込み部位、1以上の選択マーカー(たとえば、アミノ酸合成遺伝子、または抗生物質、たとえばゼオシン(zeocin)、カナマイシン、G418またはハイグロマイシンに対する耐性を付与する遺伝子)、多数の制限酵素開裂部位、適切なプロモーター配列、および転写ターミネーターを含み、これらの構成要素は互いに作動可能な状態で連結している。本明細書中で用いる用語“ベクター”には、自律複製ヌクレオチド配列、およびゲノム組込みヌクレオチド配列が含まれる。一般的なタイプのベクターは“プラスミド”であり、それは一般に追加(外来)DNAを容易に受容できる二本鎖DNAの自給(self-contained)分子であり、かつ適切な宿主細胞に容易に導入できる。プラスミドベクターは、しばしばコードDNAおよびプロモーターDNAを含み、かつ外来DNAの挿入に適した1以上の制限部位をもつ。具体的には、用語“ベクター”または“プラスミド”は、宿主を形質転換して導入配列の発現(たとえば、転写および翻訳)を促進するために、それによりDNAまたはRNA配列(たとえば、外来遺伝子)を宿主細胞に導入できるビヒクルを表わす。
【0135】
本明細書中で用いる用語“宿主細胞”は、特定の組換えタンパク質、たとえば本明細書に記載する抗体を産生させるために形質転換した初代対象細胞およびそのいずれかの後代
を表わすものとする。必ずしもすべての後代が親細胞と厳密に同一であるとは限らない(計画的もしくは偶発的な変異または環境差による)が、そのような変異した後代は、その後代が最初に形質転換した細胞と同じ機能性を保持する限りこれらの用語に含まれることを理解すべきである。用語“宿主細胞系”は、組換え抗体などの組換えポリペプチドを生成する組換え遺伝子を発現させるために用いる宿主細胞の細胞系を表わす。本明細書中で用いる用語“細胞系”は、長期間にわたって増殖する能力を獲得した特定の細胞タイプの樹立クローンを表わす。そのような宿主細胞または宿主細胞系を細胞培地において維持および/または培養して、組換えポリペプチドを産生させることができる。
【0136】
本明細書に記載する抗原またはエピトープを含む組成物、たとえば免疫原組成物(本明細書中で“免疫原”とも呼ばれる)またはワクチンに対する“免疫応答”は、ホストまたは対象における、着目する組成物またはワクチンに対する細胞性および/または抗体媒介性の免疫応答の発現である。通常は、そのような応答は、着目する組成物またはワクチンに含有される抗原(単数または複数)を特異的に指向する抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、および/または細胞傷害性T細胞を産生する対象で構成される。
【0137】
“防御免疫応答”は、療法免疫応答であると解釈され、病原体に由来する抗原に対する免疫応答を表わし、それは疾患の症状、副作用または進行を何らかの形で阻止し、改善し、治療し、または少なくとも部分的に停止する。具体的には、非免疫集団のものと比較して誘導感染もしくは自然感染または毒素攻撃の有意に良好な転帰をもたらす防御免疫応答が誘発される。
【0138】
免疫原または免疫原組成物は、通常は抗原またはエピトープおよびキャリヤーを含み、キャリヤーは具体的にはアジュバントを含むことができる。用語“アジュバント”は、抗原と併せて投与した際には抗原に対する免疫応答を増強および/または再指向するけれども単独で投与した際には抗原に対する免疫応答を発生しない化合物を表わす。アジュバントは、リンパ球動員、B細胞および/またはT細胞の刺激、ならびにマクロファージの刺激を含めた幾つかの機序で免疫応答を増強することができる。代表的キャリヤーは、リポソームまたはカチオン性ペプチドである;代表的アジュバントは、リン酸アルミニウムもしくは水酸化アルミニウム、MF59またはCpGオリゴヌクレオチドである。
【0139】
本明細書中で核酸、抗体または他の化合物に関して用いる用語“単離された”または“単離”は、それが自然状態で随伴していた環境から“実質的に純粋な”形で存在するのに十分なほど分離されている化合物を表わすものとする。“単離された”は、必ずしも他の化合物もしくは物質との人為的もしくは合成による混合物の除外、または基本的活性を妨害しない、たとえば不完全な精製のため存在する可能性のある不純物の存在の除外を意味するわけではない。特に、本発明の単離された核酸分子は化学合成されたものをも含むものとする。
【0140】
本発明の核酸に関して、用語“単離された核酸”を時に用いる。この用語は、DNAに適用した場合、それが由来する生物の天然ゲノム中のすぐ隣の配列から分離されたDNA分子を表わす。たとえば、“単離された核酸”は、ベクター、たとえばプラスミドベクターもしくはウイルスベクターに挿入された、または原核細胞もしくは真核細胞もしくは宿主生物のゲノムDNAに組み込まれた、DNA分子を含むことができる。RNAに適用した場合、用語“単離された核酸”は主に、上記に定義した単離されたDNA分子によりコードされるRNA分子を表わす。あるいは、この用語は、それが自然状態で(すなわち、細胞または組織において)随伴していたであろう他の核酸から十分に分離されたRNA分子を表わすことができる。“単離された核酸”(DNAまたはRNA)は、さらに生物学的手段または合成手段で直接調製され、そしてそれの調製に際して存在する他の成分から分離された分子を表わすことができる。
【0141】
ポリペプチドまたはタンパク質、たとえば本発明の抗体またはエピトープに関して、用語“単離された”は、具体的には、それが自然状態で随伴する物質、たとえばそれらの自然環境で、またはそのような調製物がインビトロもしくはインビボで実施された組換えDNA技術によるものである場合にはそれらが調製された環境(たとえば、細胞培養)で、それらと共にみられる他の化合物を含まないかまたは実質的に含まない化合物を表わすものとする。単離された化合物に希釈剤または佐剤(アジュバント)を配合することはでき、それでもなお実際の目的については単離されている−たとえば、診断または療法に用いる場合にはポリペプチドまたはポリヌクレオチドを医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤と混合することができる。特に、本発明の単離された抗体は単離および精製された形で提供され、好ましくは単離された抗体を唯一の有効物質として含む調製物で提供されるので、O25(a)株に対して産生されたポリクローナル血清調製物とは異なる。ただし、これは単離された抗体が限られた数のさらなる明確に規定された(単離された)抗体を含む組合わせ製剤で提供されることを除外しない。単離された抗体を固体、準液体または液体キャリヤー、たとえばビーズ上において提供することもできる。
【0142】
用語“中和する”または“中和”は、最も広い意味で本明細書において用いられ、中和が達成される機序に関係なく、MDR大腸菌などの病原体が対象に感染するのを阻害するいずれかの分子、または効力をもつタンパク質毒素を病原体が産生することにより感染症を促進するのを阻害すること、または毒素が対象においてターゲット細胞に損傷を与えるのを阻害することを表わす。中和は、たとえばMDR大腸菌の内毒素がターゲット細胞上のそれのコグネイト受容体と結合および/または相互作用する(たとえば、TLR4受容体と結合する)のを阻害する抗体により達成できる。中和はさらに、Fc媒介機能により内毒素分子を循環から排除することによって行なわれる可能性がある。
【0143】
中和効力は、一般に標準アッセイ、たとえばLAL試験により判定され、その際、内毒素の生物活性の阻害をたとえば比色法により測定する。
【0144】
本明細書中で用いる用語“MDR大腸菌”は、下記のように解釈される:有意部分がわずかこの10年で出現して広域に拡散した優性耐性クローンになったST131−O25b:H4クローン系列によるものである多剤耐性大腸菌感染症。多剤耐性大腸菌は、特に3クラス以上の抗生物質、たとえば下記の薬剤/グループに対して耐性を示す株であると解釈される:ペニシリン類、セファロスポリン類、カルバペネム類、アミノグリコシド類、テトラサイクリン類、フルオロキノロン類、ニトロフラントイン(nitrofurantoin)、トリメトプリム(trimethoprim)(およびそれの組合わせ)、ホスホマイシン(fosfomycin)、ポリミキシン類、クロラムフェニコール、アズトレオナム(azthreonam)、チゲサイクリン(tigecycline)。
【0145】
酸性の莢膜多糖(CPS)は、大部分の病原性大腸菌を取り囲む厚い粘膜様の層の多糖である。したがって、莢膜保有および無莢膜の両方のMDR大腸菌株において、本発明の抗体により認識される特異的エピトープに特異的に到達できることは意外である。
【0146】
MDR大腸菌と闘う、またはそれを中和する抗体は、病原体および病原性反応を妨害し、したがって感染を制限もしくは阻止し、および/またはそのような感染から生じる病的状態を改善し、またはMDR大腸菌の発病、特にホストの無菌の体内区画/部位内への播種およびそこでの複製を阻害することができる。これに関して“防御抗体”は、本明細書中で、感染因子に対する能動免疫または受動免疫にみられる免疫に関与する抗体であると解釈される。特に、本明細書に記載する防御抗体は、療法目的で、たとえば予防または治療のために用いて、病原体により誘発される疾患の症状、副作用または疾患進行を阻止し、改善し、治療し、または少なくとも部分的に停止することができる。具体的には、防御
抗体は、療法適用によって(すなわち、樹立した感染症に投与して)、たとえば血清の殺菌活性またはオプソニン食菌活性を誘発することにより、大腸菌生細胞を死滅させ、または複製を妨害し、あるいは全細菌細胞またはそのLPS分子を無菌身体部位から除去することができる。あるいは、予防的に適用した防御抗体は、前記または他の機序のうちのいずれかにより、感染の樹立(すなわち、非無菌部位から無菌の身体区画への大腸菌の拡散)を阻害する。
【0147】
用語“O25b抗原”は、本明細書において、実施例2および
図3(a)において解明した構造を備えたLPS O抗原であると解釈される。この構造はO25(a)抗原のものと類似するが、別個のものである。O25bは本明細書において、O25aと類似するけれども別個の血清型であると解釈される(
図3(a)を参照)。
【0148】
用語“O25抗原”は、本明細書において、Kenneら(Kenne L, Lindberg B, Madden JK, Lindberg AA, Gemski P Jr. Structural studies of the Escherichia coli O-antigen
25. Carbohydr Res. 28; 122(2): 249-56, 1983)が記載した五糖反復単位から形成され
る抗原であると解釈される。O25b抗原が同定される以前は、本明細書に記載するように、O25aの代わりに用語O25が用いられていた(
図3(b)を参照)。
【0149】
用語“O25a抗原”は、本明細書においてO25抗原と同義語であると解釈される。
【0150】
本明細書中で用いる用語“組換え”は、“遺伝子工学により調製されたか、あるいはその結果である”ことを意味するものとする。組換え宿主は、具体的には、発現ベクターまたはクローニングベクターを含むか、あるいは特に宿主にとって外来であるヌクレオチド配列を用いて組換え核酸配列を保有するように遺伝子工学的に操作されている。組換えタンパク質は、それぞれの組換え核酸を宿主において発現させることにより調製される。本明細書中で用いる用語“組換え抗体”には、組換え手段で調製、発現、作成または単離された抗体が含まれる;たとえば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックまたはトランスクロモゾーマル(transchromosomal)である動物(たとえば、マウス)またはそれから調製したハイブリドーマから単離された抗体、(b)その抗体を発現するように形質転換した宿主細胞から、たとえばトランスフェクトーマ(transfectoma)から単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアル ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列へスプライスすることを伴なう他のいずれかの手段で調製、発現、作成または単離された抗体。そのような組換え抗体は、たとえば抗体成熟に際して起きる再配列および変異を含むように工学的に操作された抗体を含む。
【0151】
本明細書中で用いる用語“特異性”または“特異的結合”は、ヘテロロガスな分子集団内の着目するコグネイトリガンドの決定要因である結合反応を表わす。したがって、指定された条件(たとえば、イムノアッセイ条件)下で、抗体はそれの特定のターゲットに特異的に結合し、試料中に存在する他の分子には有意量では結合しない。特異的結合は、ターゲットの同一性、選択した高い、中等度または低い結合アフィニティーまたはアビディティーに関して、結合が選択的であることを意味する。通常は、結合定数または結合力学値が少なくとも10倍の差(少なくとも1logの差であると解釈される)であれば選択的結合が達成され、好ましくは、その差は少なくとも100倍(少なくとも2logの差であると解釈される)、より好ましくは少なくとも1000倍(少なくとも3logの差であると解釈される)である。用語“特異性”または“特異的結合”は、1以上の分子に結合する結合因子、たとえば交差結合因子に適用されるとも解釈される。
【0152】
本発明の抗体は、具体的にはO25b抗原の結合のみにおいて選択的であり、あるいはO25a抗原と対比してO25b抗原を優先的に結合し、あるいはO25a株に対して産
生されたポリクローナル血清、すなわちO25b抗原に低いアフィニティーで結合する血清と比較して、より高いアフィニティーでO25bを結合する。したがって、本発明の抗体は、それらの抗原を差示的に結合する、たとえば少なくとも同等のアフィニティー、または同等より大きいアフィニティーで、たとえば少なくとも1log、好ましくは少なくとも2log、より好ましくは少なくとも3logのKd差をもつアフィニティー差で結合すると解釈できる。O25a抗原と対比してO25b抗原に選択的に結合するそのような抗体は、好ましくは診断または療法の目的に用いられる。ある診断目的には、具体的に、O25b抗原のみを結合する抗体を、検出可能な様式で使用する。
【0153】
用語“同じ特異性をもつ”、“同じ結合部位をもつ”、または“同じエピトープを結合する”の使用は、同等なモノクローナル抗体が同じまたは本質的に同じ、すなわち類似の免疫反応(結合)特性を示し、前選択したターゲット結合配列に対する結合について競合することを示す。特定のターゲットに対する抗体分子の相対的特異性は、たとえばHarlow, et al., ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988)に記載される競合アッセイによって相対的に判定でき
る。
【0154】
本明細書中で用いる用語“対象”は、温血哺乳動物、特にヒトを表わすものとする。特に、本発明の医療用途またはそれぞれの処置方法は、MDR大腸菌感染に関連する病的状態の予防もしくは処置を必要とする対象または初期もしくは後期疾患を含めた疾患に罹患している対象に適用される。用語“患者”は、予防処置または治療処置を受けるヒトおよび他の哺乳動物対象を含む。したがって、用語“処置”は、予防処置および治療処置の両方を含むものとする。
【0155】
対象を、たとえばMDR大腸菌による病的状態の予防または治療のために処置する。特に、そのような疾患の感染もしくは発症または疾患再発のリスクをもつ対象、あるいはそのような感染症および/またはそのような感染症に関連する疾患に罹患している対象を処置する。
【0156】
具体的には、用語“予防”は、防止措置を表わし、それは発病開始の防止または発病のリスクを低下させるための予防措置を包含するものとする。
【0157】
具体的には、本明細書に記載する対象の病的状態を処置、防止または遅延するための方法は、その状態の原因物質としてのMDR大腸菌の病原性を妨害することによる。
【0158】
本明細書中で用いる用語“実質的に純粋な”または“精製した”は、少なくとも50%(w/w)、好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%または95%の化合物、たとえば核酸分子または抗体を含む調製物を表わすものとする。純度はその化合物に適した方法により測定される(たとえば、クロマトグラフィー法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC分析など)。
【0159】
用語“療法有効量”、すなわち本明細書中で本発明の化合物、たとえば抗体または免疫原の“有効量”または“十分な量”と互換性をもって用いられる用語は、対象に投与した際に有益または希望する結果(臨床結果を含む)を生じるのに十分な量または活性であり、したがって、有効量またはその同義語はそれが適用される状況に依存する。
【0160】
有効量は、そのような疾患または傷害を治療、予防または阻害するのに十分な化合物量を意味するものとする。疾患に関して、療法有効量の本明細書に記載する抗体は、具体的にはMDR大腸菌の病原性、たとえば粘膜表面における付着および定着、無菌の身体部位内での無制御な複製、ならびに細菌産生物によるホスト細胞の中毒を阻害することが有益
となる疾患または状態を治療、調節、減弱、反転し、またはそれに影響を及ぼすために使用される。
【0161】
そのような有効量に相当する化合物量は、たとえばその薬物または化合物、医薬配合物、投与経路、疾患または傷害のタイプ、処置される対象またはホストの素性など多様な要因に応じて異なるであろうが、それにもかかわらず当業者がルーティンに決定できる。
【0162】
本発明の抗体または免疫原は、MDR大腸菌感染症の発症を阻害するために予防的に使用でき、あるいはMDR大腸菌感染症、特に治療抵抗性であることが知られているMDR大腸菌感染症、または特定の対象の場合には他の一般的な抗生物質療法による治療に対して治療抵抗性であることが証明されている感染症を治療するための療法に使用できる。
【0163】
本明細書に記載する抗体の療法有効量、たとえばその必要があるヒト患者に供給される量は、具体的には0.5〜500mg、好ましくは1〜400mgの範囲、よりさらに好ましくは最高300mg、最高200mg、最高100mgまたは最高10mgであってもよい;ただし、たとえば急性疾患状態を治療するためにはより高い用量を適用することができる。
【0164】
さらに、療法有効量の本発明抗体による対象の治療または予防計画は、単回投与からなることができ、あるいは一連の適用を含むことができる。たとえば、抗体を少なくとも1年に1回、少なくとも半年に1回、または少なくとも1か月に1回投与することができる。しかし、他の態様においては、その処置のためにほぼ週1回からほぼ1日1回の投与まで抗体を対象に投与することができる。処置期間の長さは、疾患の重症度、急性または慢性いずれの疾患であるか、患者の年齢、抗体フォーマットの濃度および活性など、多様な要因に依存する。特定の治療または予防計画のコースにわたって治療または予防に用いる有効量を増加または減少させることができることも認識されるであろう。用量の変更は、当技術分野で既知の標準的な診断アッセイにより得ることができ、かつ明らかになる。ある場合には、長期投与が必要になる可能性がある。
【0165】
本明細書に記載する免疫原の有効量、たとえばMDR大腸菌感染に関連する病的状態を発症するリスクをもつ患者に供給される量は、具体的には1回当たり1〜15mg/kgの範囲であってもよい。
【0166】
たとえば、MDR大腸菌感染症に対して持続する有効な免疫応答を誘発するための初回−追加免疫化計画に従って、免疫原を初回量として投与し、続いて一定の時間枠内で1回以上の追加免疫量を投与することができる。好ましいワクチン接種計画には3回の投与が含まれるであろう;たとえば1回目を0日目、2回目を5〜40日目、3回目を10〜100日目、好ましくは0、28および90日目。好ましい促進計画によれば、投与は0、7および14日目であってもよい。促進計画は予防のために、たとえば予定した手術に直面している患者のために適用できる。通常はミョウバン、たとえばリン酸塩または水酸化物をアジュバントとして用いる。
【0167】
したがって、本発明の主題は、O25bに対して高特異的なネズミmAbを見出したことに基づく。これらの抗体は、ST131系列に属するMDR株の同定のための診断試薬として大きな効力をもつ。さらに、特にヒト化によって、これらのmAbはST131−O25b:H4株により起きる大腸菌感染症の予防(たとえば、高リスクグループについて)および治療に用いるのに適切となる。
【0168】
O25bおよびO25(O25a)糖質抗原は、O25に対する免疫血清がO25b抗原を発現する大腸菌株の診断同定に際してルーティンに用いられるという事実に基づいて
、同一であるかまたはきわめて類似すると考えられていた。ST131株におけるO抗原合成の遺伝的バックグラウンドは完全に解明されてはいないが、rfbクラスター(O抗原合成をコードする)内の特定の遺伝子がPCRベースのO25b株同定の基礎をなす。さらに、O25(a)抗原とO25b抗原の相異を支持する構造データはこれまで無い。
【0169】
したがって、本発明の抗体がO25b抗原を特異的に結合し、O25b抗原とO25a抗原を特異的に識別することができるのは意外であった。
【0170】
O25b抗原を発現する大腸菌株とO25a抗原を発現する大腸菌株の遺伝的相異を確認するために、市販株81009(Szijarto et al, FEMS Microbiol Lett, 2012, 332: 131-6)から、保存されたフランキング遺伝子gndおよびgalFに対して特異的なオリ
ゴヌクレオチドから出発するプライマーウォーク法(primer walk method)を用いて、O抗原合成をコードするrfbクラスターを配列決定した。得られたrfbオペロンのコンティグ(contig)は11,300bpの長さであり、O25抗原合成酵素(NCBI寄託番号GU014554)をコードするものに対して部分的に相同であるにすぎない。このことから、O25b rfbオペロンの3’末端にある2043bp長さのセグメントはO25 rfbオペロンの対応する領域と相同ではなく、この場合はこのセグメントがフコースの合成および輸送をコードする6267bp長さの配列により置き換えられていることが分かった。
【0171】
大腸菌ST131から単離されたLPS中に存在するO−特異的PSの生物学的な反復単位(repeating unit)(RU)の構造を、1つの反復単位(RU)でコアOSを置換することにより構築された精製画分において詳細に分析した。LPS ST131のRUは、
図3に構造を示すO−アセチル化された五糖である。
【0172】
実際に、ST131 O−PSのRU構造は、Kenneら(Kenne, Lindberg et al., Carbohydr Res. 1983 Oct 28; 122(2): 249-56)により報告されたLPS O25 RUと異
なっており、本発明者らの知る限りそれは大腸菌リポ多糖中の新規なO−血清型である(Stenutz et al. FEMS Microbiol Rev. 2006 May; 30(3): 382-403. Review)。さらに、L
PS ST131から単離したコアオリゴ糖の予備的なMALDI−TOF質量分析および組成分析(糖およびメチル化の分析)の結果は、K−12タイプ、すなわち先にSzijarto V.らが遺伝子分析に基づいて報告したものを支持した(Szijarto et al, FEMS Microbiol Lett, 2012, 332: 131-6)。LPS ST131は2つの主要コアオリゴ糖(OS)
グリコフォーム(glycoform)からなる。グリコフォームのタイプはO−特異的多糖(PS
)の存否に依存する。非置換コアOSの優勢なグリコフォームはトランケート形のK−12コアオリゴ糖、すなわち→7)−α−Hepp−(1→6)−α−Glcp二糖が欠如したものである。その二糖の存在がO−PS置換コアOSと非置換コアOSの相異である。
【0173】
具体的観点によれば、下記の抗体が提供される:O25b特異的エピトープを選択的に結合する抗体、たとえば8D5−1G10抗体、または6D1−1B2もしくは8A1−1G8と命名されたいずれかの抗体、または8D10−C8抗体と同じエピトープに結合する抗体(この用語には、本質的に同じエピトープに結合するバリアントが含まれる);あるいは8D5−1G10抗体、または6D1−1B2もしくは8A1−1G8と命名されたいずれかの抗体、または8D10−C8抗体と同じ結合部位を含む抗体(この用語は、本質的に同じ結合部位を含むバリアントが含まれる)。6D1−1B2、8A1−1G8、8D5−1G10と命名された抗体は、特にO25b抗原とO25a抗原を特異的に識別してO25b抗原のみを結合する結合部位を含む。8D10−C8と命名された抗体は、特にO25bおよびO25a抗原を交差特異的に結合し、O25a抗原と比較してO25b抗原を優先的に結合する、結合部位を含む。
【0174】
抗体が交差競合し、したがってある時点では1種類の抗体のみがそのエピトープに結合できるならば、すなわち一方の抗体が他方の結合を阻止しまたは作用を変更するならば、それらの抗体は“同じエピトープに結合する”または“同じ結合部位を含む”または“本質的に同じ結合”特性をもつと言われる。
【0175】
本明細書中で抗体に関して用いる用語“競合する”または“交差競合する”は、第1抗体またはその抗原結合部が第2抗体またはその抗原結合部の結合に十分に類似する様式でエピトープに結合し、したがって第1抗体とそれのコグネイトエピトープとの結合の結果が、第2抗体の存在下では第2抗体の非存在下での第1抗体の結合と比較して検出可能なほど低減することを意味する。代わりに、第2抗体のエピトープへの第2抗体の結合も第1抗体の存在下で検出可能なほど低減する可能性はあるが、必ずしもそうではない。すなわち、第2抗体は第1抗体がそれのエピトープに結合するのを阻害することなく、第1抗体は第2抗体がそれの各エピトープに結合するのを阻害する可能性がある。しかし、各抗体が他の抗体とそれのコグネイトエピトープとの結合を検出可能なほど(同じ、より大きい、またはより少ない程度であっても)阻害する場合、それらの抗体はそれらの各エピトープ(単数または複数)の結合について互いに“交差競合する”と言われる。競合または交差競合する抗体は共に本発明に包含される。
【0176】
本明細書において、競合は、たとえば実施例のセクションに記載するように、競合ELISA分析により測定して約30%より大きな相対阻害を意味する。特定の状況において、たとえば意図するO25b結合機能をもつように設計された新規抗体を選択またはスクリーニングするために競合分析を用いる場合、競合の適切なレベルの基準としてより高い相対阻害閾値を設定することが望ましい可能性がある。したがって、抗体を十分に競合的であるとみなす前に、たとえば、少なくとも40%、または少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらには少なくとも100%の相対阻害が検出される場合に競合結合についての基準を設定することが可能である。
【0177】
具体的には、6D1−1B2、8A1−1G8、8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体のいずれの可変領域、特に6D1−1B2、8A1−1G8、8D5−1G10または8D10−C8抗体からなる群から選択される抗体のCDR配列のうち少なくとも1、好ましくは少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5もしくは少なくとも6つのCDR配列、またはその機能活性であるCDRバリアントを含む、抗体が提供される。より具体的には、6D1−1B2、8A1−1G8、8D5−1G10または8D10−C8と命名されたいずれの抗体が提供される。
【0178】
具体的には、8D5−1G10抗体もしくは8D10−C8抗体、またはそのいずれかの機能活性バリアントは、寄託された材料またはそれに含まれる各ヌクレオチド配列、たとえばプラスミドのうちの1つおよび/または寄託された宿主細胞のうちの1つを用いて調製することができる。
【0179】
具体的観点によれば、8D5−1G10抗体またはその機能均等バリアントは、DSM
26763および/またはDSM 26762で寄託された宿主細胞に取り込まれたいずれかのプラスミドによりコードされる可変領域を含む抗体から誘導できる;たとえば、寄託された材料の部分または(点)変異CDR配列を用いて、特異的抗体またはそのいずれかの機能活性バリアントを工学的に作成する。
【0180】
さらなる具体的観点によれば、8D5−1G10抗体またはその機能均等バリアントは、DSM 26763および/またはDSM 26762で寄託された宿主細胞により産
生された抗体の可変領域から、またはそれを用いて誘導できる;たとえば、寄託された材料の部分配列、たとえばCDR配列のうち1以上を用いて、特異的抗体またはそのいずれかの機能活性バリアントを工学的に作成する。
【0181】
具体的には、6D1−1B2または8A1−1G8抗体バリアントは、8D5−1G10抗体の機能活性CDRバリアントであり、たとえばCDR配列のうち少なくとも1つに部分的変更をもつ。
【0182】
具体的観点によれば、8D10−C8抗体またはその機能均等バリアントは、DSM 28171および/またはDSM 28172で寄託された宿主細胞に取り込まれたいずれかのプラスミドによりコードされる可変領域を含む抗体から誘導できる;たとえば、寄託された材料の部分または(点)変異CDR配列を用いて、特異的抗体またはそのいずれかの機能活性バリアントを工学的に作成する。
【0183】
さらなる具体的観点によれば、8D10−C8抗体またはその機能均等バリアントは、DSM 28171および/またはDSM 28172で寄託された宿主細胞により産生された抗体の可変領域から、またはそれを用いて誘導できる;たとえば、寄託された材料の部分配列、たとえばCDR配列のうち1以上を用いて、特異的抗体またはそのいずれかの機能活性バリアントを工学的に作成する。
【0184】
ある観点において、本発明は、重鎖および軽鎖を含み、その際、重鎖またはVH可変領域または各CDRがそれぞれの寄託されたプラスミドおよび/またはそれぞれの寄託された宿主細胞に由来するアミノ酸配列を含む、そのようなバリアント抗体、好ましくはモノクローナル抗体、最も好ましくはネズミ、ヒト化またはヒト抗体を提供する。
【0185】
ある観点において、本発明は、重鎖および軽鎖を含み、その際、軽鎖またはVL可変領域または各CDRがそれぞれの寄託されたプラスミドおよび/またはそれぞれの寄託された宿主細胞に由来するアミノ酸配列を含む、そのようなバリアント抗体、好ましくはモノクローナル抗体、最も好ましくはネズミ、ヒト化またはヒト抗体を提供する。
【0186】
ある観点において、本発明は、重鎖および軽鎖を含み、その際、重鎖および軽鎖、またはVH/VL可変領域、または各CDRがそれぞれの寄託されたプラスミドおよび/またはそれぞれの寄託された宿主細胞に由来するアミノ酸配列を含む、そのようなバリアント抗体、好ましくはモノクローナル抗体、最も好ましくはネズミ、ヒト化またはヒト抗体を提供する。
【0187】
ある観点において、本発明はまた、寄託された材料に由来するそれぞれの結合配列、たとえば可変配列および/またはCDR配列を含むそのようなバリアント抗体を提供し、その際、結合配列、たとえばいずれかのCDR配列は、寄託された材料に由来するアミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも99%の同一性をもつ配列を含み、そのバリアントは機能活性バリアントである。
【0188】
本明細書に記載するように、1観点において本発明は、O25b抗原への結合に対してモノクローナル抗体8D5−1G10または8D10−C8と競合する能力を特徴とする抗体分子を提供する。6D1−1B2、8A1−1G8、8D5−1G10抗体はいずれもネズミIgG3抗体であり、8D10−C8抗体はカッパ軽鎖を保有するネズミIgG2b抗体であり、これらを本発明者らが単離および特性解明した。8D5−1G10抗体または8D10−C8抗体の可変ドメインは、本明細書中に述べる寄託された材料により発現される。したがって、8D5−1G10抗体または8D10−C8抗体の軽鎖および
重鎖ならびにVL/VHドメインにより決定される結合特性を本明細書に十分に開示し、それを親抗体として、または本発明の機能活性バリアントもしくは競合抗体との比較に使用できるようにする。
【0189】
8D5−1G10の重鎖(8D5−1G10−HC)の成熟した可変ドメインは、たとえばDSM 26762の宿主細胞、またはそれに取り込まれたコードプラスミドの各配列情報を用いて調製できる。
【0190】
8D5−1G10の軽鎖(8D5−1G10−LC)の成熟した可変ドメインは、たとえばDSM 26763の宿主細胞、またはそれに取り込まれたコードプラスミドの各配列情報を用いて調製できる。
【0191】
8D10−C8の重鎖(8D10−C8−HC)の成熟した可変ドメインは、たとえばDSM 28172の宿主細胞、またはそれに取り込まれたコードプラスミドの各配列情報を用いて調製できる。
【0192】
8D10−C8の軽鎖(8D10−C8−LC)の成熟した可変ドメインは、たとえばDSM 28171の宿主細胞、またはそれに取り込まれたコードプラスミドの各配列情報を用いて調製できる。
【0193】
他の大腸菌抗原、たとえばO25抗原以外のいずれかの糖質抗原またはいずれかのコア抗原に対比してO25b抗原を優先的に結合する差示結合アフィニティーは、好ましくは少なくとも10倍高く(すなわち、少なくとも10のKd差をもつ)、好ましくは少なくとも100倍高く、より好ましくは少なくとも1000倍高い。
【0194】
O25b抗原を優先的に結合する差示結合アフィニティーは、市販のタイピング血清、たとえばStatens Serum Institutからの高力価大腸菌O25抗血清(#81369)と比較して、少なくとも5倍、または少なくとも6倍、または少なくとも7倍、または少なくとも8倍、または少なくとも9倍、または少なくとも10倍高い。
【0195】
O25a抗原と比較してO25b抗原を優先的に結合する差示結合アフィニティーは、具体的には少なくとも同等であるか、または同等より大きく、たとえば少なくとも1.5倍、または少なくとも2倍、または少なくとも3倍、または少なくとも4倍、または少なくとも5倍、または少なくとも6倍、または少なくとも7倍、または少なくとも8倍、または少なくとも9倍、または少なくとも10倍高い。
【0196】
本発明の好ましい抗体は、前記の個々の抗原のいずれか、特にO25b抗原を、高いアフィニティーで、特に高い結合速度および/または低い離脱速度で、あるいは高い結合アビディティーで結合する。抗体の結合アフィニティーは、通常は、抗原結合部位の半分が占有される抗体濃度、すなわち解離定数(Kd、またはK
D)として知られるものにより特性付けられる。通常は、Kd<10
−7M、ある場合には、たとえば療法目的にはより高いアフィニティー、たとえばKd<10
−8M、好ましくはKd<10
−9Mをもつ結合剤は高アフィニティー結合因子とみなされ、よりさらに好ましくはKd<10
−10Mである。
【0197】
さらに、特に好ましい態様において、たとえば少なくとも2つの抗原に結合する際に、個々の抗原結合アフィニティーは中等度アフィニティーのもの、たとえば10
−6M未満、最大10
−7MのKdをもつものである。
【0198】
中等度アフィニティーの結合因子は、本発明に従って、好ましくは必要ならばアフィニティー成熟法と組み合わせて提供できる。
【0199】
アフィニティー成熟法は、ターゲット抗原に対するアフィニティーが増大した抗体を調製する方法である。アミノ酸変異形成を含めた、または免疫グロブリン遺伝子セグメントの体細胞変異の結果としての抗体の構造変化を用いて、抗原への結合部位のバリアントを調製し、より大きなアフィニティーのものを選択する。アフィニティー成熟した抗体は、親抗体より数log倍大きなアフィニティーを示す可能性がある。単一の親抗体をアフィニティー成熟法で処理してもよい。あるいは、ターゲット抗原に対する類似の結合アフィニティーをもつ抗体のプールを親構造とみなし、それらを変異させてアフィニティー成熟した単一抗体またはアフィニティー成熟したそのような抗体のプールを得ることができる。
【0200】
本発明による抗体の好ましいアフィニティー成熟バリアントは、結合アフィニティーにおいて少なくとも10倍の増大、好ましくは少なくとも100倍の増大を示す。アフィニティー成熟法は、親分子の各ライブラリーを用いる選択作戦の過程で、中等度結合アフィニティーをもつ抗体について、結合アフィニティーKd<10
−7Mの特異的ターゲット結合特性をもつ本発明の抗体を得るために使用できる。あるいは、本発明による抗体のアフィニティー成熟によってアフィニティーをよりいっそう増大させて、10
−8M未満または10
−9M未満、好ましくは10
−10M未満、またはさらに10
−11M未満、最も好ましくはピコモル濃度範囲のKdに相当する高い数値を得ることすらできる。
【0201】
具体的観点は、特異的な抗細菌機能活性、たとえば補体媒介殺菌作用およびオプソニン食菌作用による取込みと殺菌を特徴とする、本発明の抗体に関する。
【0202】
食菌エフェクター細胞は、補体の活性化を用いる他の経路によって活性化することができる。微生物の表面抗原に結合する抗体はそれらのFc領域で補体カスケードの第1成分を引き付け、そして“古典的な”補体系の活性化を開始する。その結果、食菌エフェクター細胞が刺激され、それにより補体および抗体依存性の機序(CDC)によって最終的にターゲット細菌を死滅させる。
【0203】
具体的態様によれば、本発明の抗体は、標準SBAまたはOPKアッセイのいずれかにより測定して免疫エフェクター細胞の存在下で細胞傷害活性をもつ。対照と比較して殺菌率が有意に増大すれば、本発明の抗体についてSBAまたはOPKのいずれかのアッセイにより測定した細胞傷害活性を示すことができる。SBAまたはOPKに関連する殺菌活性は、好ましくは絶対パーセント増大として測定され、それは好ましくは5%より高く、より好ましくは10%より高く、よりさらに好ましくは20%、30%、40%または50%より高い。
【0204】
本発明の抗体は、ハイブリドーマ法を用いて同定または入手でき、そのような方法では、マウスまたは他の適切なホスト動物、たとえばハムスターを免疫化して、免疫化に用いたタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するかまたは産生できるリンパ球を誘導する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することができる。次いで適切な融合剤、たとえばポリエチレングリコールを用いてリンパ球を骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を作成する。
【0205】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培地を、その抗原を指向するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されたモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降法により、またはインビトロ結合アッセイ、たとえばラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELI
SA)により判定する。
【0206】
たとえば、本発明の抗体は、源(親)抗体、たとえばカナマイシン耐性をコードするカセットでkpsクラスター(莢膜合成をコードする)を置き換えることによる代表的ST131−O25b:H4株81009の無莢膜変異体(たとえば、81009Δkps::kan)でマウスを免疫化することにより得られた抗体から得ることができる。マウスから得た血清試料を次いで分析し、O25b抗原に対して最高IgG力価を示すマウス(ELISAおよびウェスタンブロット法による)の脾臓をハイブリドーマ作成に使用できる。サブクローニングの後、O25b抗原に対して特異的であり、O25b抗原を発現する生菌野生型大腸菌株の表面に結合する抗体を分泌する、ハイブリドーマクローンを選択することができる。これらのmAbを、O25b抗原の特異的結合について、および場合によりO25a抗原と対比してO25b抗原を優先的に結合するそれの差示結合アフィニティーについてさらに試験するために、またたとえば種々の診断または療法の目的で抗体を工学的に操作するために、次いでハイブリドーマ上清から精製することができる。
【0207】
差示結合抗体(本明細書中で選択抗体とも呼ぶ)は、ある場合には単一抗原に対するスクリーニングによって明らかになる。差示結合クローンの単離可能性を高めるためには、種々の抗原に対して進化的に(processively)スクリーニングすることにより多重選択圧をかけるであろう。特別なmAb選択方策は、O25bおよびO25a成分または他の大腸菌抗原を交互に用いる。
【0208】
抗体ライブラリー、たとえば酵母ディスプレイした抗体ライブラリーから抗体を選択するためには、組換え抗原(単数または複数)を使用できる。
【0209】
いずれの場合も、当技術分野で既知の抗体最適化法によって選択的結合をさらに改善することができる。たとえば、本明細書に記載する免疫グロブリン鎖の可変領域の特定領域に1以上の最適化方策を施すことができ、これには、選択したCDRまたは枠組み構造領域の軽鎖シャフリング(light chain shuffling)、デスティネイショナル(部位指定)変
異形成(destinational mutagenesis)、CDRアマルガメーション(融合)(CDR amalgamation)、定方向変異形成(directed mutagenesis)が含まれる。
【0210】
希望する選択的結合特性を備えた抗体を同定するためのスクリーニング法は、ディスプレイ技術により実施できる(ファージ、細菌、酵母または哺乳動物の細胞を使用)。反応性は、ELISA、ウェスタンブロット法、またはフローサイトメトリーを伴なう表面染色に基づいて、たとえば標準アッセイ法を用いて査定することができる。
【0211】
希望する特性を備えた差示結合抗体が同定されると、それらの抗体が認識した優性エピトープ(単数または複数)を決定できる。エピトープマッピングのための方法は当技術分野で周知であり、たとえばEpitope Mapping: A Practical Approach, Westwood and Hay,
eds., Oxford University Press, 2001に示されている。
【0212】
エピトープマッピングは、それに抗体が結合するエピトープの同定に関するものである。タンパク質上のエピトープの位置を決定するための多数の方法が当業者に知られており、これには抗体−抗原複合体の結晶学的分析、競合アッセイ、遺伝子フラグメント発現アッセイ、および合成ペプチドベースのアッセイが含まれる。基準抗体と“同じエピトープを結合する”抗体は、本明細書中で下記のように解釈される。2種類の抗体が同一エピトープまたは立体的にオーバーラップするエピトープを認識する場合、それらの抗体を同一エピトープまたは本質的に同一もしくは実質的に同一のエピトープを結合すると言う。2種類の抗体が同一エピトープまたは立体的にオーバーラップするエピトープに結合するかどうかを判定するために慣用される方法は競合アッセイであり、それは標識抗原または標
識抗体のいずれかを用いて多種多様なフォーマットで構成することができる。通常は、抗原を96ウェルプレートに固定化し、非標識抗体が標識抗体の結合をブロックする能力を放射性標識または酵素標識により測定する。
【0213】
希望する差示結合特性を備えた抗体が同定されると、それらの抗体(抗体フラグメントを含む)を当技術分野で周知の方法、たとえばハイブリドーマ法または組換えDNA法により調製できる。
【0214】
組換えモノクローナル抗体は、たとえば必要な抗体鎖をコードするDNAを単離し、周知の組換え発現ベクター、たとえば抗体配列をコードするヌクレオチド配列を含む本発明のプラスミドまたは発現カセット(単数または複数)を用いて、組換え宿主細胞を発現のためのコード配列でトランスフェクションすることにより調製できる。組換え宿主細胞は原核細胞および真核細胞、たとえば前記のものであってもよい。
【0215】
具体的観点によれば、ヌクレオチド配列を遺伝子操作に用いて、抗体をヒト化し、または抗体のアフィニティーもしくは他の特性を改善することができる。たとえば、抗体をヒトにおける臨床試験および処置に用いる場合、免疫応答を避けるために、定常領域をヒト定常領域にさらに近似するように工学的に操作することができる。ターゲットO25bに対してより大きなアフィニティーおよび大腸菌に対してより大きな有効性を得るために、抗体配列を遺伝子操作することが望ましい可能性がある。抗体に1以上のポリヌクレオチド変更を行なってもなおターゲットO25bに対するそれの結合能を維持できることは当業者に自明であろう。
【0216】
多様な手段による抗体分子の調製は一般に十分に理解されている。たとえば、US Patent 6331415 (Cabillyら)には抗体の組換え体の調製方法が記載され、その際、単一ベクタ
ーから、または単一細胞において2つの別個のベクターから、重鎖と軽鎖を同時に発現させている。Wibbenmeyer et al., (1999, Biochim Biophys Acta 1430(2): 191 -202)およびLee and Kwak (2003, J. Biotechnology 101: 189-198)には、別個の大腸菌培養において発現させたプラスミドを用いて別個に産生させた重鎖および軽鎖からのモノクローナル抗体の調製が記載されている。抗体の調製に関する多様な他の技術が、たとえばHarlow, et al., ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1988)に示されている。
【0217】
所望により、本発明の抗体、たとえば8D5−1G10抗体もしくは8D10−C8抗体、またはそれぞれの結合部位もしくはCDRを配列決定し、次いでポリヌクレオチド配列またはその配列バリアントもしくは変異体を発現または伝播のためのベクターにクローニングすることができる。抗体をコードする配列を宿主細胞においてベクター内に保持し、次いでその宿主細胞を増殖させ、将来使用するために凍結することができる。細胞培養における組換えモノクローナル抗体の調製は、当技術分野で既知の手段で抗体遺伝子をB細胞からクローニングすることにより実施できる。
【0218】
他の観点において、本発明は、本発明の組換え抗体の調製をコードする配列を含む、単離された核酸を提供する。
【0219】
他の観点において、本発明は、本発明の組換えエピトープまたは本発明のそのようなエピトープを含む分子の調製をコードする配列を含む、単離された核酸を提供する。しかし、本発明のエピトープは合成により、たとえば当技術分野で周知であるいずれかの合成法により調製することもできる。
【0220】
抗体またはエピトープをコードする核酸は、いずれか適切な特徴をもつことができ、い
ずれか適切な機構またはその組合わせを含むことができる。したがって、たとえば抗体またはエピトープをコードする核酸は、DNA、RNA、またはそのハイブリッドの形態であってもよく、自然界に存在しない塩基、修飾された主鎖、たとえば核酸の安定性を増進するホスホチオエート主鎖、または両方を含むことができる。その核酸を、有利にはターゲット宿主細胞(単数または複数)における希望する発現、複製および/または選択を増進する機構を含む本発明の発現カセット、ベクターまたはプラスミドに取り込ませることができる。そのような機構の例には、複製起点要素、選択遺伝子要素、プロモーター要素、エンハンサーエレメント要素、ポリアデニル化配列要素、終止要素などがが含まれ、それらの適切な例が多数知られている。
【0221】
本発明はさらに、本明細書に記載するヌクレオチド配列のうち1以上を含む組換えDNA構築体を提供する。これらの組換え構築体は、ベクター、たとえばプラスミド、ファージミド、ファージまたはウイルスベクターと併せて用いられ、開示したいずれかの抗体をコードするDNA分子がこれらに挿入される。
【0222】
モノクローナル抗体は、連続培養細胞系により抗体分子を調製するいずれかの方法を用いて調製される。モノクローナル抗体を調製するのに適した方法の例には、Kohler et al. (1975, Nature 256: 495-497)のハイブリドーマ法、およびヒトB細胞ハイブリドーマ
法(Kozbor, 1984, J. Immunol. 133: 3001;およびBrodeur et al., Monoclonal Antibody
Production Techniques and Applications pp 51-63 (Marcel Dekker, Inc., 1987))が
含まれる。
【0223】
本発明はさらに、本明細書に記載する抗体または免疫原および医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。これらの医薬組成物は、本発明に従ってボーラス注射もしくはボーラス注入として、または連続注入により投与される。そのような投与手段を容易にするのに適した医薬用キャリヤーは当技術分野で周知である。
【0224】
医薬的に許容できるキャリヤーには、一般にあらゆる適切な溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌薬および抗真菌薬、等張化剤ならびに吸収遅延剤など、本発明により提供される抗体または関連する組成物もしくは組合わせと生理的に適合するものが含まれる。医薬的に許容できるキャリヤーのさらに他の例には、無菌水、塩類溶液、リン酸緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそのいずれかの組合わせが含まれる。
【0225】
そのような1観点において、抗体は希望する投与経路に適切な1種類以上のキャリヤーと組み合わせることができ、抗体をたとえば乳糖、ショ糖、デンプン、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、アラビアゴム、ゼラチン、アルギネート、ポリビニルピロリジン、ポリビニルアルコールのいずれかと混和し、一般的な投与のために場合によりさらに打錠またはカプセル封入することができる。あるいは、抗体を塩類溶液、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、エタノール、トウモロコシ油、ラッカセイ油、綿実油、ゴマ油、トラガントゴム、および/または各種緩衝液に溶解することができる。他のキャリヤー、佐剤、および投与様式は、医薬技術分野で周知である。キャリヤーは制御放出物質または遅延物質、たとえばモノステアリン酸グリセリルもしくはジステアリン酸グリセリル(単独またはろうと共に)、または当技術分野で周知である他の物質を含有してもよい。
【0226】
他の医薬的に許容できるキャリヤーが当技術分野で知られており、たとえばREMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCESに記載されている。液状配合物は液剤、乳剤または懸濁液剤
であってもよく、懸濁化剤、可溶化剤、界面活性剤、保存剤およびキレート化剤などの添
加剤を含有することができる。
【0227】
本発明の抗体または免疫原および1種類以上の療法有効薬剤を配合した医薬組成物が考慮される。希望する純度をもつその免疫グロブリンを場合により医薬的に許容できるキャリヤー、賦形剤または安定剤と混合することにより、凍結乾燥配合物または水溶液の形態の、本発明の抗体または免疫原の安定な貯蔵用配合物を調製する。インビボ投与に使用するための配合物は、具体的には無菌であり、好ましくは無菌水溶液の形態である。これは、除菌メンブレンによる濾過または他の方法によって容易に達成できる。本明細書に開示する抗体および他の療法有効薬剤を、イムノリポソームとして配合し、および/またはマイクロカプセル内に封入してもよい。
【0228】
本発明の抗体または免疫原を含む医薬組成物の投与は、下記を含めた多様な方法で行なうことができる:経口、皮下、静脈内、鼻腔内、耳腔内、経皮、粘膜、局所、たとえばゲル剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤など、腹腔内、筋肉内、肺内、たとえば吸入法もしくは肺送達システムの使用、膣、非経口、直腸、または眼内。
【0229】
非経口投与に用いる代表的配合物には、皮下、筋肉内または静脈内注射に適したもの、たとえば無菌の液剤、乳剤または懸濁液剤が含まれる。
【0230】
1態様において、本発明の抗体または免疫原は、たとえば疾患の改善または予防のための単剤療法として対象に投与される唯一の療法有効薬剤である。
【0231】
あるいは、本発明の抗体または免疫原は、1種類以上の他の治療薬または予防薬と併せて投与され、それには標準処置、たとえば抗生物質、ステロイド系および非ステロイド系の炎症阻害薬、および/または他の抗体ベースの療法、たとえば抗細菌薬または抗炎症薬を用いるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0232】
併用療法は、特にたとえばMDR大腸菌感染症を処置するために用いられる標準計画を使用する。これには抗生物質、たとえばチゲサイクリン、リネゾリド(linezolide)、メチシリンおよび/またはバンコマイシンを含めることができる。
【0233】
併用療法においては、抗体を混合物として、または1以上の他の療法計画を併用して、たとえば併用療法の前、同時または後に投与することができる。
【0234】
ある場合には、本発明の免疫原を含むワクチン、すなわち単価ワクチンを免疫原の予防投与に使用できる。なお、同一または異なるターゲット病原体に対する免疫応答を誘発する異なる免疫原を含む多価ワクチンも使用できる。
【0235】
本発明の抗体、免疫原またはそれぞれの医薬製剤の生物学的特性は、エクスビボでの細胞実験、組織実験、および全生物実験において解明できる。当技術分野で知られているように、疾患もしくは疾患モデルに対する処置について薬物の有効性を判定するために、または薬物の薬物動態、薬力学、毒性および他の特性を判定するために、薬物はしばしばインビボで動物において試験され、これにはマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、およびサルが含まれるが、これらに限定されない。これらの動物を疾患モデルと呼ぶことができる。療法薬はしばしばマウスにおいて試験され、これにはヌードマウス、SCIDマウス、異種移植マウス、およびトランスジェニックマウス(ノックイン動物およびノックアウト動物を含む)が含まれるが、これらに限定されない。そのような実験は、能動または受動免疫療法における適切な半減期、エフェクター機能、(交差)中和活性および/または免疫応答を備えた治療薬または予防薬として使用する抗体の可能性を判定するために有意義なデータを提供できる。いずれかの生物、好ましくは哺乳動物を試験に使用でき
る。たとえば霊長類、サルは、それらが遺伝的にヒトと類似するので適切な療法モデルとなる可能性があり、したがって被験薬または被験組成物の有効性、毒性、薬物動態、薬力学、半減期または他の特性を試験するために使用できる。薬剤として承認されるにはヒトにおける試験が最終的に要求され、したがってもちろんこれらの実験が考慮される。したがって、本発明の抗体、免疫原またはそれぞれの医薬組成物をヒトにおいて試験して、治療または予防におけるそれらの有効性、毒性、免疫原性、薬物動態および/または他の臨床特性を判定することができる。
【0236】
本発明はまた、診断目的のための、たとえば生物液体試料における細菌負荷もしくはターゲットの濃度を検出および定量測定する方法に使用するための本発明の対象抗体、または免疫試薬としての抗体を提供する。
【0237】
本発明は、敗血症またはMDR大腸菌感染症の程度、たとえば試料のMDR大腸菌負荷を体液などの生物学的試料において検出するための方法であって、試料を本発明の抗体と接触させることを含む方法を提供する。本発明の抗体はいずれか既知のアッセイ法、たとえば競合結合アッセイ、直接および間接サンドイッチアッセイ、免疫沈降アッセイ、および酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)に使用できる。
【0238】
好ましい診断アッセイは下記のように実施される。ターゲット抗原特異的抗体をラテックスビーズに固定化し、それを体液試料中に存在する細菌または試料から単離した細菌と共にインキュベートする。細菌の表面に発現した対応するコグネイト抗原の存在下で有色ラテックスビーズが凝集するので、陽性反応は肉眼で検出できる。
【0239】
本発明に従って用いる体液には、対象の生体試料、たとえば組織抽出液、尿、血液、血清、糞便および粘液が含まれる。
【0240】
1態様において、この方法は、抗体が固体支持体の表面に結合できる条件下で、固体支持体を特異的にターゲットとの複合体を形成する過剰の特定タイプの抗体フラグメントと接触させることを含む。抗体が結合した得られた固体支持体を、次いで生物液体試料と接触させ、これにより生物液体試料中のターゲットを抗体に結合させ、ターゲット−抗体複合体を形成させる。この複合体を検出可能なマーカーで標識することができる。あるいは、複合体の形成前にターゲットまたは抗体のいずれかを標識しておくことができる。たとえば、検出可能なマーカー(標識)を抗体にコンジュゲートさせることができる。次いで複合体を検出および定量測定し、これにより生物液体試料中のターゲットを検出し、その濃度を定量測定することができる。
【0241】
特定の用途について、本発明の抗体を、有機分子、酵素標識、放射性標識、有色標識、蛍光標識、色素原標識、発光性標識、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、金属錯体、金属、金コロイド、およびその混合物からなる群から選択される標識またはレポーター分子にコンジュゲートさせる。標識またはレポーター分子にコンジュゲートした抗体は、たとえばアッセイ系または診断法において、たとえばMDR大腸菌感染症またはそれに関連する病的状態を診断するために使用できる。
【0242】
本発明の抗体を他の分子にコンジュゲートさせることができ、これによりそのコンジュゲートをたとえば結合アッセイ(たとえば、ELISA)および結合試験において簡単に検出できる。
【0243】
本発明の他の観点は、抗体を含むキットを提供し、これは1種類以上の抗体のほかに、多様な診断薬または療法薬を収容することができる。キットは、診断法または療法に使用するための指示も収容できる。そのような指示は、たとえばキットに収容されたデバイス
上に、たとえばMDR大腸菌負荷を測定して疾患を診断する前にたとえば診断目的で生体試料を調製するための、たとえば細胞および/またはタンパク質含有画分を分離するための、ツールまたはデバイス上に付与することができる。有利には、そのようなキットは、本明細書に記載する多様な診断法のうち1以上に使用できる抗体および診断薬または診断試薬を収容する。他の好ましい態様において、キットは、抗体をたとえば凍結乾燥形態で収容し、場合により、凍結乾燥品を再構成するための指示および媒体を含み、および/または近い将来投与する注射用組成物を形成するために使用前に混合しうる医薬的に許容できるキャリヤー(単数または複数)との組合わせで収容する。
【0244】
8D5−1G10および8D10−C8と命名された抗体、具体的には抗体軽鎖および/または重鎖のいずれかは、さらに、DSMZ - Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen, Mascheroder Weg 1b / Inhoffenstrasse 7B, 38124 Braunschweig (DE)に寄託された生物材料を特徴とする。
【0245】
これらの寄託物は形質転換された大腸菌培養物を表わし、それぞれ目的遺伝子の挿入配列でクローニングされたプラスミドを含む。目的遺伝子は、マウスモノクローナル抗体8D5−1G10(IgG3)の重鎖および軽鎖の可変ドメイン、ならびにマウスモノクローナル抗体8D10−C8(IgG2b)の重鎖および軽鎖の可変ドメインである。
【0246】
DSM 26763は、8D5−1G10軽鎖(8D5−1G10−LC)の可変ドメインコード配列を含むプラスミドで形質転換した大腸菌宿主細胞である。大腸菌8D5−1G10−VL=DSM 26763、寄託日:2013年1月15日;寄託者:Arsanis Biosciences GmbH,オーストリア、ウィーン。
【0247】
DSM 26762は、8D5−1G10重鎖(8D5−1G10−HC)の可変ドメインコード配列を含むプラスミドで形質転換した大腸菌宿主細胞である。大腸菌8D5−1G10−VH=DSM 26762、寄託日:2013年1月15日;寄託者:Arsanis Biosciences GmbH,オーストリア、ウィーン。
【0248】
DSM 28171は、8D10−C8軽鎖(8D10−C8−LC)の可変ドメインコード配列を含むプラスミドで形質転換した大腸菌宿主細胞である。大腸菌8D10−C8−VL=DSM 28171、寄託日:2013年12月11日;寄託者:Arsanis Biosciences GmbH,オーストリア、ウィーン。
【0249】
DSM 28172は、8D10−C8重鎖(8D10−C8−HC)の可変ドメインコード配列を含むプラスミドで形質転換した大腸菌宿主細胞である。大腸菌8D10−C8−VH=DSM 28172、寄託日:2013年12月11日;寄託者:Arsanis Biosciences GmbH,オーストリア、ウィーン。
【0250】
下記の定義の主題は本発明の態様とみなされる:
1. 多剤耐性(MDR)大腸菌株のO25b抗原に特異的に結合する、単離された抗体。
【0251】
2. O25bおよびO25抗原に共通のエピトープを交差特異的に結合し、ならびに/あるいは大腸菌のO25a抗原と比較してO25b抗原に優先的に結合し、好ましくはO25(現在はO25aとして知られ、本明細書中でそのように呼ぶ)大腸菌株に対して産生されたポリクローナル血清によるO25b抗原結合と比較して、O25a株に対して産生されたポリクローナルタイピング血清と比較したイムノアッセイにより測定して、より高いアフィニティーで結合し、好ましくはその際、イムノアッセイ、好ましくはイムノブロット法、ELISAまたは他の免疫学的方法により測定して、抗体はO25bおよび
O25a両抗原に対して少なくとも同等のアフィニティーをもつ、定義1に記載の抗体。
【0252】
3. O25b抗原が1種類以上のST131−O25b:H4株に広く存在する、定義1または2に記載の抗体。
【0253】
4. 抗体により認識されるエピトープが莢膜保有および無莢膜ST131−O25b:H4株の表面に存在する、定義1〜3のいずれかに記載の抗体。
【0254】
5. 全長モノクローナル抗体の結合部位を有し、または結合部位を含んだ少なくとも1つの抗体ドメインを含むその抗体フラグメントを有し、その抗体は好ましくはネズミ、ラマ、ウサギ、ヤギ、ウシ、キメラ、ヒト化またはヒト抗体、重鎖抗体、Fab、Fd、scFvおよび単一ドメイン抗体、たとえばVH、VHHまたはVL、好ましくはヒトIgG1抗体からなる群から選択される抗体である、定義1〜4のいずれかに記載の抗体。
【0255】
6. O25b抗原を10
−7M未満、好ましくは10
−8M未満のKdで結合するアフィニティーを有する、定義1〜5のいずれかに記載の抗体。
【0256】
7. 生菌野生型MDR大腸菌株を含む血清試料においてインビトロ殺菌効力を示し、および/またはインビトロで食細胞による生菌野生型MDR大腸菌株の取込みを刺激する、定義1〜6のいずれかに記載の抗体。
【0257】
8. 抗体が、8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体と同じエピトープを結合する、定義1〜7のいずれかに記載の抗体。
【0258】
9. 抗体が、8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体と同じ結合部位を含む、定義1〜8のいずれかに記載の抗体。
【0259】
10. 抗体が、下記の可変領域を特徴とする抗体に由来する、定義1〜9のいずれかに記載の抗体:
−DSM 26763および/またはDSM 26762で寄託された宿主細胞から得られるもの、またはその機能活性バリアント;
−DSM 28171および/またはDSM 28172で寄託された宿主細胞から得られるもの、またはその機能活性バリアント。
【0260】
11. 下記を含む、定義10に記載の抗体:
A
a)DSM 26763で寄託された宿主細胞により産生されるかもしくはそれから得られる抗体軽鎖の可変領域;および/または
b)DSM 26762で寄託された宿主細胞により産生されるかもしくはそれから得られる抗体重鎖の可変領域;あるいは
c)(a)および/または(b)の機能活性バリアント;
あるいは
B
a)DSM 28171で寄託された宿主細胞により産生されるかもしくはそれから得られる抗体軽鎖の可変領域;および/または
b)DSM 28172で寄託された宿主細胞により産生されるかもしくはそれから得られる抗体重鎖の可変領域;あるいは
c)(a)および/または(b)の機能活性バリアント。
【0261】
12. 機能活性バリアントが少なくとも60%の配列同一性をもつアミノ酸配列を備
えたCDRを含む、定義10または11に記載の抗体。
【0262】
13. 機能活性バリアントが、アミノ酸配列における、好ましくはCDRにおける、少なくとも1つの点変異において親抗体と異なり、その際、各CDRアミノ酸配列における点変異の数は0、1、2または3のいずれかである、定義10〜12のいずれかに記載の抗体。
【0263】
14. 下記のヌクレオチド配列を含むプラスミド:
A
−DSM 26763で寄託された宿主細胞に含まれる8D5−1G10−LCと命名された抗体軽鎖の可変領域をコードする配列;および/または
−DSM 26762で寄託された宿主細胞に含まれる8D5−1G10−HCと命名された抗体重鎖の可変領域をコードする配列;
あるいは
B
−DSM 28171で寄託された宿主細胞に含まれる8D10−C8−LCと命名された抗体軽鎖の可変領域をコードする配列;および/または
−DSM 28172で寄託された宿主細胞に含まれる8D10−C8−HCと命名された抗体重鎖の可変領域をコードする配列。
【0264】
15. 請求項1〜13のいずれかに記載の抗体の軽鎖および/または重鎖を発現するコード配列を含む発現カセットであって、発現カセットまたはコード配列が定義14に記載のプラスミドに由来する、発現カセット。
【0265】
16. 定義1〜13のいずれかに記載の抗体を調製する方法であって、宿主細胞を請求項14に記載のプラスミドまたは定義15に記載の発現カセットで形質転換する方法。
【0266】
17. 定義14に記載のプラスミドまたは定義15に記載の発現カセットを含む宿主細胞。
【0267】
18. 下記で寄託された定義17に記載の宿主細胞:
A
− DSM 26763および/またはDSM 26762;
あるいは
B
− DSM 28171および/またはDSM 28172。
【0268】
19. 定義1〜13のいずれかに記載の抗体を調製する方法であって、請求項17または18に記載の宿主細胞を、その抗体を産生する条件下で培養または維持する方法。
【0269】
20. 候補抗体を同定する方法であって、
(a)抗体または抗体産生細胞を含有する試料を用意し;そして
(b)試料中の抗体、または試料により産生される抗体と、8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体により認識されるエピトープとの結合を査定し、その際、抗体とエピトープの間の陽性反応によりその抗体を候補抗体と同定する
ことを含む方法。
【0270】
21. 候補抗体を同定する方法であって、
(a)抗体または抗体産生細胞を含有する試料を用意し;そして
(b)試料中の抗体、または試料により産生される抗体と、ST131−O25b:H
4株のO25b抗原および非MDR大腸菌株のO25a抗原との結合を査定し、その際、O25a抗原と対比して抗体とO25b抗原との間の特異的な陽性反応によりその抗体を候補抗体と同定する
ことを含む方法。
【0271】
22. 定義1〜13のいずれかに記載の抗体を調製する方法であって、
(a)定義20または21に従って同定した候補抗体を用意し;そして
(b)候補抗体のモノクローナル抗体、またはヒト化形もしくはヒト形、またはその誘導体であって候補抗体と同じエピトープ結合特異性を備えたものを調製する
ことを含む方法。
【0272】
23. 定義1〜13のいずれかに記載の抗体を調製する方法であって、
(a)非ヒト動物を8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体により認識されるエピトープで免疫化し;
(b)単離したB細胞から不死化細胞系を形成し;
(c)b)で得た細胞系をスクリーニングして、前記エピトープに結合するモノクローナル抗体を産生する細胞系を同定し;そして
(d)モノクローナル抗体、またはヒト化形もしくはヒト形の抗体、またはその誘導体であってモノクローナル抗体と同じエピトープ結合特異性を備えたものを調製する
ことを含む方法。
【0273】
24. 定義1〜13のいずれかに記載の抗体を調製する方法であって、
(a)非ヒト動物をST131−O25b:H4株のO25b抗原で免疫化して、抗体を産生するB細胞を単離し;
(b)単離したB細胞から不死化細胞系を形成し;
(c)これらの細胞系をスクリーニングして、大腸菌のO25a抗原と対比してO25b抗原に優先的に結合するモノクローナル抗体を産生する細胞系を同定し;そして
(d)モノクローナル抗体、またはヒト化形もしくはヒト形の抗体、またはその誘導体であってモノクローナル抗体と同じエピトープ結合特異性を備えたものを調製する
ことを含む方法。
【0274】
25. MDR大腸菌感染のリスクをもつ対象またはそれに罹患している対象を処置する際の、対象における感染の制限またはその感染から生じる病的状態の改善に有効な量の抗体を対象に投与することを含む使用のための、好ましくは腎盂腎炎、続発性菌血症、敗血症、腹膜炎、髄膜炎、および人工呼吸器関連肺炎の治療または予防のための、定義1〜13のいずれかに記載の抗体。
【0275】
26. MDR大腸菌、好ましくはST131−O25b:H4株を、その株が発現する莢膜多糖に関係なく殺菌するための、定義25に記載の使用のための抗体。
【0276】
27. 抗体を非経口または粘膜用の配合物中において投与する、定義25または26に記載の使用のための抗体。
【0277】
28. 好ましくは非経口または粘膜用の配合物を含む、場合により医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤を含有する、定義1〜13のいずれかに記載の抗体の医薬製剤。
【0278】
29. 対象において、LPS O25bを発現するMDR株により起きる大腸菌感染症、たとえば膀胱炎または尿道炎、上行性または血行性腎盂腎炎を含めた上部および下部尿路感染症を伴なう感染症、特に糖尿病患者におけるもの、ならびに菌血症、敗血症、腹
膜炎または腸定着を伴なう感染症を判定する診断に使用するための、定義1〜13のいずれかに記載の抗体。
【0279】
30. 対象の体液の試料を抗体と接触させることにより対象においてMDR大腸菌による全身感染をエクスビボ判定し、その際、抗体の特異的な免疫反応により感染を判定する、定義29に記載の使用のための抗体。
【0280】
31. 体液の試料を特異的な免疫反応について試験し、その試料は尿、血液、血液分離物または血液培養物、吸引液、喀痰、挿管対象の洗浄液、および糞便からなる群から選択される、定義29または30に記載の使用のための抗体。
【0281】
32. 臨床検体から回収した純大腸菌培養物から大腸菌の血清型をインビトロで判定する、定義29〜31のいずれかに記載の使用のための抗体。
【0282】
33. 場合により、標識付きの抗体、および/または標識付きのさらなる診断試薬、および/または抗体と診断試薬のうち少なくとも1つを固定化するための固相を含有する、定義29〜31のいずれかに記載の抗体の診断用製剤。
【0283】
34. 8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体により認識される単離されたエピトープ。
【0284】
35. 下記のものを含む免疫原:
(a)定義34に記載のエピトープ;
(b)場合により、(a)のエピトープと自然界での関連性がないさらなるエピトープ;および
(c)キャリヤー。
【0285】
36. キャリヤーが、好ましくは緩衝剤および/または佐剤を含む医薬的に許容できるキャリヤーである、定義35に記載の免疫原。
【0286】
37. 好ましくは非経口用のワクチン配合物中における、定義35または36に記載の免疫原。
【0287】
38. MDR大腸菌感染からの対象の保護またはその感染から生じる病的状態の阻止に有効な量の免疫原を投与することにより対象を処置する際に使用するための、定義35〜37のいずれかに記載の免疫原。
【0288】
39. 防御免疫応答を誘発するための、定義38に記載の免疫原。
【0289】
40. 定義1〜13のいずれかに記載の抗体または定義35に記載のエピトープをコードする、単離された核酸。
【0290】
以上の記載は以下の実施例を参照するとさらに十分に理解されるであろう。ただし、そのような実施例は本発明の1以上の態様を実施する方法の代表例にすぎず、本発明の範囲を限定すると解釈すべきではない。
【実施例】
【0291】
実施例1:O25b特異的抗体
カナマイシン耐性をコードするカセットでkpsクラスター(莢膜合成をコードする)を置き換えることにより、代表的なST131−O25b:H4 81009株の無莢膜
変異体(81009Δkps::kan,[Szijarto et al, FEMS Microbiol Lett, 2012, 332: 131-6])を作成した。致死量未満のこの変異株の生細胞またはホルムアルデヒド不活化細胞を用いて、2週間隔で4回、マウスを免疫化した。その後、それらのマウスから得た血清試料を分析し、O25b抗原に対して最高IgG力価を示すマウス(ELISA、イムノブロット法、および表面染色において)の脾臓をハイブリドーマ作成に用いた。サブクローニングに続いて、精製O25b抗原に特異的でありかつO25b抗原を発現する生菌野生型大腸菌株に結合する抗体を分泌する、数種類のハイブリドーマクローンを選択した。これらのmAbをさらに試験するためにハイブリドーマ上清から精製した。
【0292】
図1に示すように、発現する莢膜多糖(K5、K2、または未知のKタイプ)に関係なくST131−O25b:H4株であると判定された数種類の異なる臨床分離株にすべての抗体が結合した。O25a抗原を発現する株への結合に関して、2タイプのmAbが同定された。mAb 8D5−1G10により代表される1グループはO25a株の表面に結合しなかったが、8D10−C8により代表される他方のmAbグループはO25a株に交差反応性であった。しかし、無関係の抗原、すなわちO2.(
図1)または他のO−タイプ(示していない)を発現するいずれかの大腸菌株に結合できるmAbはなかった。
【0293】
精製LPSを用いるイムノブロット分析によりmAbの特異性をさらに確認した(
図2)。しかし、O25b抗原を含むST131株からのLPS分子を認識したmAbは、O25a LPS抗原に対するそれらの交差反応効力において異なっていた。mAb 8D5−1G10は専らO25b抗原に対して反応したが、mAb 8D10−C8はO25aに対して交差反応性であった。この観察された交差反応性を、ST131:O25b株の検出にルーティンに用いられる市販のO25タイピング血清(Statens Serum Institut,高力価大腸菌O25抗血清,#81369)により示されたものと比較した。この市販のウサギ血清は、O25b LPSと対比して明らかにO25a抗原への結合に対する優先性を示した。これに対し、ネズミmAb 8D10−C8は少なくともO25a分子と同じ強度でO25b LPS分子と反応した。その後の定量分析により、mAb 8D10−C8の場合は市販のタイピング血清と比較してO25b対O25aの結合強度比が少なくとも10倍高いことが明らかになった。
【0294】
以上のデータは、合わせて2タイプのO25b特異的mAb、すなわちO25bに対して高特異的なもの、およびO25a抗原とO25b抗原に共通のエピトープを認識するものがあることを示唆する。その結果、本発明者らのデータによりO25bの構造が古典的O25(すなわち、O25a)抗原と実際に異なることが確認された。O25bサブユニットの新規な構造を実施例2に記載したように解明した。
【0295】
O25b特異的mAbの重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を、変性した重鎖および軽鎖のプライマーによるRT−PCRを用いてハイブリドーマクローンから増幅し、配列決定した。IgデータベースについてのBLAST、およびIMGT/V−QUESTで配列を分析し、CDR領域をKabat命名法に従って決定した。
【0296】
mAb 8D5−1G10の軽鎖および重鎖の可変部の配列を各ベクター内へクローニングし、それらを用いて大腸菌宿主細胞を形質転換し、DSMZに寄託番号:DSM 26763およびDSM 26762で寄託した。
【0297】
mAb 8D10−C8の軽鎖および重鎖の可変部の配列を各ベクター内へクローニングし、それらを用いて大腸菌宿主細胞を形質転換し、DSMZに寄託番号:DSM 28171およびDSM 28172で寄託した。
【0298】
実施例2:O25b抗原の構造分析
大腸菌ST131のLPSを熱フェノール/水法により単離し、透析、プロテイナーゼK消化および超遠心により精製した。LPS調製物の平均収率は乾燥細菌質量の2.61%であった。LPSをSDS−PAGEにより分析して、種々の数のオリゴ糖反復単位(RU)で置換されたコアオリゴ糖(OS)および非置換コアオリゴ糖からなる画分が示された。O−特異的多糖(O−PS)および種々のオリゴ糖成分を緩和な酸加水分解により放出させ、Bio−Gel P−10でのゲル濾過により単離した。それらの画分を糖およびメチル化の分析、NMR分光分析、ならびにMALDI−TOF質量分析(MS)により分析した。
【0299】
O−PS RUの構造を、1つの単一RUで置換されたコアOSからなる画分を用いて決定した。単糖分析は、Rha、Glc、Gal、Hep、およびより少量のGlcNの存在を示した。等モル量の末端Rhap、末端Glcp、3,6−置換Glcp、3−置換Rhapの誘導体が、痕跡量の3−置換GlcpNと共に同定され、O−PS RUと命名された。残りの7−置換Hepp、6−置換Glcp、2−置換Glcp、末端Galp、3,6−置換Glcp、および末端Heppの部分メチル化アルジトールアセテートが、K−12タイプのコアオリゴ糖を構成していた。3,4−置換Hepp、3,4,7−置換HeppおよびKdoの誘導体は、それぞれPおよびPPEtnによる置換ならびにカルボキシル基の存在のため、標準メチル化および糖分析に際して検出できなかった。
【0300】
LPS ST131のO−特異的PSのRUの構造を、NMR分光法を用いて決定した。COSY、TOCSYおよびNOESY、ならびにHSQC−DEPT、HMBCおよびHSQC−TOCSY実験から得られた情報を合わせることにより、O−PS
1Hおよび
13C共鳴の完全配属が達成された。
1H、
13C HSQC−DEPTスペクトルは、13のアノマープロトンおよび炭素、ならびに1つのKdoスピン系についての信号を含んでいた。これらの信号はコアオリゴ糖から、およびO−特異的PSの1つのRUに由来していた。高磁場領域はO−アセチル基のCH
3の1つの信号、N−アセチル基のCH
3の1つの信号、および6−デオキシ糖(Rha)に特徴的なCH
3の2つの高磁場信号を含んでいた。このスペクトルは、被験オリゴ糖の14糖構造を示した。P、PPおよびPEtに関係する高い不均一性のため、非還元末端の8つの糖の全スピン系が完全に消散し(resolved)、RU構造、およびK−12コアOSへのそれの連結が強調された。
【0301】
隣接糖残基の間の残基間連結性がNOESYおよびHMBC実験により観察された。HMBCスペクトルは、連結位置のアノマープロトンと炭素の間、および連結位置のアノマー炭素とプロトンの間のクロスピークを示し、これによりこの多糖の非還元領域の糖残基の配列が確認された。
【0302】
これらの測定に基づいて、O25b−特異的PSの反復単位が決定された(
図3(a));これは、コアOSの第1残基:→7)−α−Hepp(残基L)に代わるRU残基として→3)−β−GlcpNAc(残基K)を含む五糖である。より長いPS画分が混入している可能性があるため、第1RUがO−特異的鎖の後続RUにより置換された位置を同定することはできなかった。さらに、これらの画分をそれ以上詳細に構造分析することなく、後続の反復単位におけるα−アノマーとしてのGlcNAcの存在(ある大腸菌多糖類について以前に報告されたもの)は除外できた。
【0303】
コアOS、1つのRUで置換されたコアOS、および最後にO−PS RUの分子量を、MALDI−TOF MSを用いて確認した(データを示していない)。すべてのスペクトルを、ここで解明したLPS ST131のRUの構造および以前に同定されたK−12コアOSのグリコフォーム(Duda et al. Microbiology. 2011 Jun; 157(Pt 6): 1750-60. doi: 10.1099/mic.0.046912-0. Epub 2011 Mar 3; Muller-Loennies et al. J Biol
Chem. 2003 Sep 5; 278(36): 34090-101. Epub 2003 Jun 20)に基づいて解釈した。より短いO−PSで置換されたコアOSからなる画分の低分解能スペクトルのMALDI−MS分析は、下記の優勢なイオンを含むイオンクラスターを示した:m/z 2797.2、m/z 3659.6、m/z 4522.0、およびm/z 5383.6(PおよびPPEtnを含む);それぞれ1、2、3、および4つのRUで置換されたコアOSに帰属する。これらのイオン間の平均質量差は862.1Daであり、O−特異的PSのRUの平均質量計算値(861.8Da,RU−H2O)と一致した。
【0304】
RUの分子量を考慮に入れ、MS結果を他の画分についての結果を比較して、本発明者らは第1RU(
図3(a))による置換位置として外側コア領域の→7)−α−Hepp−(1→6)−α−Glcp二糖からなるより長いコアOSグリコフォームの存在を示した。LPS ST131が2つの主コアOSグリコフォームからなることが示された。グリコフォームのタイプは、O−特異的PSの存在に依存する。非置換コアOSの優勢なグリコフォームは、→7)−α−Hepp−(1→6)−α−Glcp二糖を欠如したトランケート型のK−12コアオリゴ糖である。そのような二糖がO−PS置換されたコアOSと非置換コアOSの相異である。
【0305】
実施例3:大腸菌O25b特異的診断アッセイ
O25b特異的mAb 8D5−1G10を、1μm直径のラテックスビーズ(Polysciences)に調製業者の指示に従って結合させた。ラテックス結合ビーズをそれらが種々の大腸菌株を凝集させる効力について試験した。白金耳1杯分の細菌(約10
8cfu)を、PBS中の1% mAb結合ラテックスビーズ懸濁液10μlと混合した。
図4に示すように、O25b抗原を発現する大腸菌株は、数秒間の穏やかな撹拌後に強い凝集パターンを示した。これに対し、O25aまたはO2抗原を発現する大腸菌株は、同じ試薬で凝集しなかった。したがって、この推定診断試薬は、O25b(およびO25a)陽性大腸菌の検出に現在用いられている技術水準の凝集試薬(すなわち、O25に対するポリクローナルウサギ血清)より特異的であると考えられる。
【0306】
さらに、市販の抗O25血清は加熱殺菌した(すなわち、細胞溶解した)大腸菌細胞について凝集アッセイに使用することが推奨されているので、O25b mAb −精製またはラテックスビーズ結合したもの− がより高い感度をもつかどうか、すなわちそれらが無傷の莢膜多糖の存在下で大腸菌生細胞を凝集できるかどうかを試験した。大パネルのO25b臨床分離株を試験し、若干の代表株についての結果を表Iに提示する。2つの点で感度の改善がみられた:i)代表株#1および#2は、加熱殺菌していない(すなわち、寒天平板から直接採取した生菌)形態において、遊離またはビーズ結合したO25b特異的mAbの両方で凝集できたが、市販のO25ウサギ血清による凝集には細菌を予め加熱溶解する必要があった、ii)代表株#3および#4は加熱殺菌した形態ですら市販の血清で凝集できなかったのに対し、同じ細胞溶解物が精製mAb 8D5−1G10では陽性結果を与えた。重要なことに、同じ抗体をラテックスビーズに結合させると、生菌細胞ですら凝集を生じた。これらの結果は、凝集アッセイにおけるビーズ結合mAbの卓越した感度を指摘し、これはこれまでに試験したすべてのO25b陽性大腸菌株が何ら前処理なしに(すなわち、加熱殺菌溶解物を調製せずに)この試薬で陽性凝集を与えたという事実によって確証される。さらに、この試薬をO25b発現細菌の検出のための診断ツールとして用いることは、実際にターゲット抗原を発現している細菌についてのみ陽性結果を与えるという、PCRベースの方法に優る利点をもつ。たとえば、表Iの代表株#5は、診断にルーティンに用いられるO25b特異的遺伝子についてPCR陽性であったが、いずれの凝集アッセイにおいても陰性であった。この株は未完成の(rough)LPS表現型
を示す(O抗原を発現しない)ことが証明されているので、このPCR結果は偽陽性とみなすことができる。そのようなアッセイをコンパニオン診断として用いる場合には、すなわちO25b特異的療法が有益となる可能性のあるO25b発現大腸菌株に感染している
患者を選定するためには、そのような偽陽性を避けることはきわめて重要である。
【0307】
遊離O25b LPS分子をラテックスビーズ結合mAbにより検出する効力も試験した。1〜1000ngの範囲の種々の量の高度精製O25b LPSを、PBS中の1%ビーズ懸濁液10μlと共にインキュベートした。
図5に示すように、用量依存性の凝集パターンがみられた:最良の結果は100ngの遊離LPSについて得られ、1000または10ngでもなお凝集を検出できたが、1ngの遊離O25b LPSでは検出できなかった。
【0308】
【表2】
【0309】
実施例4:O25b特異的mAbの抗細菌効果
O25b特異的mAb(O25aに対する交差反応性をもつもの、またはもたないもの)の潜在防御効果を、致死性ネズミ菌血症モデルにおいて試験した。マウス5匹のグループに100μgの精製した8D5−1G10または8D10−C8を腹腔内投与した。24時間後にマウスを致死量(パイロット実験で予め決定)のO25b抗原発現性大腸菌株81009(2×10
8CFU/マウス)により静脈内攻撃した。マウスの致死性を1日1回、3週間モニターした。
図6は、類似の転帰をもつ2つの独立した実験の結果を合わせて示す。PBSで模擬免疫化したマウスのうち90%が感染したが、被験mAbは両方とも、モニターした感染後3週間の期間にわたって統計的に(Logrank検定)有意の生存率増大をもたらした。
【0310】
このインビボデータを確証するために、精製mAbの殺菌効果をインビトロでも試験した。大腸菌株81009の対数期中間培養物2mlをPBS中で2回洗浄し、再懸濁して最終濃度5×10
5CFU/mlにした。10μlのこの細菌懸濁液を4℃で15分間、3%のヒトアルブミンを補充した40μlのRPMI−1640緩衝液中に希釈した4μgの各mAbと共にプレインキュベートした。その後、50μlのプールしたヒト血清(予め大腸菌株81009を吸着したもの)を反応に添加し、37℃で1、2および3時間インキュベートした。反応の最終CFUおよび抗体濃度は、合計100μlの体積でそれぞれ5×10
4CFU/mlおよび40μg/mlであった。特定時点でコロニー計数の
ために10μlアリコートをTSBプレートに播種した。
【0311】
図7に示すように、試験した両方のmAbが3時間の試験期間にわたって有意にCFUを低下させることができた。これに対し、無関係なmAbと混合した細菌または無抗体の細菌はこの培地で定常的な増殖を示した。血清試料中の補体を不活性化した場合(56℃で30分間のインキュベーションによる)、いずれのmAbによっても殺菌作用はみられなかった(データを示していない)。これらの結果は、両方のO25b特異的mAbが補体媒介による殺菌作用を誘発できることを証明する。
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1]多剤耐性(MDR)大腸菌(E. coli)株のO25b抗原に特異的に結合する、単離された抗体。
[態様2]モノクローナル抗体である、態様1に記載の抗体。
[態様3]O25aおよびO25b抗原に共通のエピトープを交差特異的に結合する、態様1または2に記載の抗体。
[態様4]大腸菌のO25a抗原に対比してO25b抗原に優先的に結合するか、あるいは両抗原に対して少なくとも同等のアフィニティーで結合する、態様1〜3のいずれか1に記載の抗体。
[態様5]全長モノクローナル抗体の結合部位を有し、または結合部位を含んだ少なくとも1つの抗体ドメインを含むその抗体フラグメントを有し、好ましくはO25b抗原を10
−7M未満、好ましくは10
−8M未満のKdで結合するアフィニティーを有する、態様1〜4のいずれか1に記載の抗体。
[態様6]抗体が、8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体と同じエピトープを結合し、好ましくは8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体と同じ結合部位を含む、態様1〜5のいずれか1に記載の抗体。
[態様7]多剤耐性(MDR)大腸菌(E. coli)株のO25b抗原に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体であって、抗体8D5−1G10の抗原結合部位を含むか、または抗体8D5−1G10であるかもしくはそれに由来し、または抗体8D5−1G10の機能活性バリアントであり、好ましくは抗体8D5−1G10が
a)DSM 26763で寄託された宿主細胞により産生される抗体軽鎖の可変領域;および/または
b)DSM 26762で寄託された宿主細胞により産生される抗体重鎖の可変領域;あるいは
c)(a)および/または(b)の機能活性バリアントである可変領域
によって特徴付けられる、前記抗体。
[態様8]多剤耐性(MDR)大腸菌(E. coli)株のO25b抗原に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体であって、O25aおよびO25b抗原に共通のエピトープを交差特異的に結合し、抗体8D10−C8の抗原結合部位を含むか、または抗体8D10−C8であるかもしくはそれに由来し、または抗体8D10−C8の機能活性バリアントであり、好ましくは抗体8D10−C8が
a)DSM 28171で寄託された宿主細胞により産生される抗体軽鎖の可変領域;および/または
b)DSM 28172で寄託された宿主細胞により産生される抗体重鎖の可変領域;あるいは
c)(a)および/または(b)の機能活性バリアントを使用すること
によって特徴付けられる、前記抗体。
[態様9]下記のヌクレオチド配列を含むプラスミド:
A
−DSM 26763で寄託された宿主細胞に含まれる8D5−1G10−LCと命名された抗体軽鎖の可変領域をコードする配列;および/または
−DSM 26762で寄託された宿主細胞に含まれる8D5−1G10−HCと命名された抗体重鎖の可変領域をコードする配列;
あるいは
B
−DSM 28171で寄託された宿主細胞に含まれる8D10−C8−LCと命名された抗体軽鎖の可変領域をコードする配列;および/または
−DSM 28172で寄託された宿主細胞に含まれる8D10−C8−HCと命名された抗体重鎖の可変領域をコードする配列。
[態様10]態様1〜8のいずれか1に記載の抗体の軽鎖および/または重鎖を発現するコード配列を含む発現カセットであって、その発現カセットまたはコード配列が態様9に記載のプラスミドに由来する、発現カセット。
[態様11]態様9に記載のプラスミドまたは態様10に記載の発現カセットを含む、宿主細胞。
[態様12]態様1〜8のいずれか1に記載の抗体を調製する方法であって、態様10に記載の宿主細胞を、その抗体を産生する条件下で培養または維持する方法。
[態様13]候補抗体を同定する方法であって、
(a)抗体または抗体産生細胞を含有する試料を用意し;そして
(b)試料中の抗体、または試料により産生される抗体と、8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体により認識されるエピトープとの結合を査定し、その際、抗体とエピトープの間の陽性反応によりその抗体を候補抗体と同定する
ことを含む方法。
[態様14]候補抗体を同定する方法であって、
(a)抗体または抗体産生細胞を含有する試料を用意し;そして
(b)試料中の抗体、または試料により産生される抗体と、ST131−O25b:H4株のO25b抗原および非MDR大腸菌(E. coli)株のO25a抗原との結合を査定し、その際、O25a抗原と対比して抗体とO25b抗原の間の特異的な陽性反応によりその抗体を候補抗体と同定する
ことを含む方法。
[態様15]態様1〜8のいずれか1に記載の抗体を調製する方法であって、
(a)態様13または14に従って同定した候補抗体を用意し;そして
(b)候補抗体のモノクローナル抗体、またはヒト化形もしくはヒト形、またはその誘導体であって候補抗体と同じエピトープ結合特異性を備えたものを調製する
ことを含む方法。
[態様16]MDR大腸菌(E. coli)感染のリスクをもつ対象またはそれに罹患している対象を処置する際の、対象における感染の制限またはその感染から生じる病的状態の改善に有効な量の抗体を対象に投与することを含む使用のための、好ましくは腎盂腎炎、続発性菌血症、敗血症、腹膜炎、髄膜炎、および人工呼吸器関連肺炎の治療または予防のための、態様1〜8のいずれか1に記載の抗体。
[態様17]好ましくは非経口または粘膜用の配合物を含む、場合により医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤を含有する、態様1〜8のいずれか1に記載の抗体の医薬製剤。
[態様18]対象において、LPS O25bを発現するMDR株により起きる大腸菌感染症である、膀胱炎または尿道炎、上行性または血行性腎盂腎炎を含めた上部および下部尿路感染症を伴なう感染症、特に糖尿病患者におけるもの、ならびに菌血症、敗血症、腹膜炎または腸定着を伴なう感染症を判定する診断に使用するための、態様1〜8のいずれか1に記載の抗体。
[態様19]場合により、標識付きの抗体、および/または標識付きのさらなる診断試薬、および/または抗体と診断試薬のうち少なくとも1つを固定化するための固相を含有する、態様1〜8のいずれか1に記載の抗体の診断用製剤。
[態様20]8D5−1G10または8D10−C8と命名された抗体により認識される単離されたエピトープ。
[態様21]下記のものを含む免疫原:
(a)態様20に記載のエピトープ;
(b)場合により、(a)のエピトープと自然界での関連性がないさらなるエピトープ;および
(c)キャリヤー。
[態様22]態様1〜8のいずれか1に記載の抗体または態様20に記載のエピトープをコードする、単離された核酸。