【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで記載した磁石アーマチャ、とりわけ独立請求項1に記載の磁石アーマチャでは、このような切り替え過程が可能になる。これ以外の請求項は、アーマチャの有利な構成を示す。
【0006】
磁石アーマチャは、第1バネ剛性k1を有する第1バネ部材と、第2剛性k2を有する第2バネ部材と、静止位置と、終端位置と、静止位置と終端位置との間にある中間位置とを具備する。第1バネ部材は、静止位置から中間位置への移行時の切り替え過程の間には弾性変形するが、中間位置から終端位置への移行時には弾性変形しないように設けられている。第2バネ部材は、中間位置から終端位置への移行時には弾性変形するが、静止位置から中間位置への移行時には弾性変形しないように設けられている。
【0007】
静止位置、中間位置および終端位置は、この際、例えば電磁スイッチ内での磁石アーマチャのその周囲に対する相対的な位置となる。中間位置は、必ずしも、静止位置と終端位置とから等しい距離がとられているには及ばない。この際、静止位置とは、磁力が磁石アーマチャにかけられていない際に磁石アーマチャがある位置を示す。終端位置とは、スイッチを閉じるために設けられた磁力が磁石アーマチャに作用し、閉じられるべき電気接点が持続的に閉じられている際の平衡位置を示す。
【0008】
第1バネ部材の第1剛性k1と、第2バネ部材の第2剛性k2とは、様々でありえる。磁石アーマチャが、静止位置から中間位置へ移動する際に、第1バネ部材の復元力に抗して移動し、かつ、中間位置から終端位置へ移行する際に、第2の部材のバネ力に抗して移動することにより、切り替え時間の低減が達成可能になる。とりわけ第1バネ部材のバネ剛性k1が、第2バネ部材のバネ剛性k2よりも小さい場合に、磁石アーマチャは、引き付け時により小さい抵抗力に抗して動き、その結果、より大きい加速、したがって切り換え時間の短縮が達成される。
【0009】
磁石アーマチャがその終端位置にある場合には、磁石アーマチャへの磁力がなくなると(すなわち、スイッチが開くと)、実質的に第2バネ部材の復元力により、迅速な開き動作がなされる。
【0010】
したがって、開閉時の抵抗力が単純な線形ではない磁石アーマチャが示される。むしろ、これにかけられる抵抗力が、バネ剛性が異なることによって順次上昇しうる磁石アーマチャが示される。
【0011】
第1バネ部材と第2バネ部材とは直列で配置されていることが可能である。直列に配置されたバネ部材では、組み合わされた2つのバネのバネ剛性が結果として生じ、その逆数は、個々のバネ剛性の逆数の合計に相当するとの結果になる。2つの直列に配置されたバネ部材は、したがって、対応する代替的な剛性を備えた個々のバネ部材のように挙動する。一方では、静止位置から中間位置への移動段階時の、および、中間位置から終端位置への移動時の第2の段階時の活性時に、磁石アーマチャが異なるバネ剛性を知覚するように、追加的な技術的な措置、例えば以下で述べるような機械的ストッパおよび/または個々のバネ部材をバネ付勢することおよび/または摺動可能なブッシュの設置が必須である。
【0012】
したがって、磁石アーマチャが、追加的にブッシュを具備し、これが、第1バネ部材と第2バネ部材との間に配置されていることが可能である。この場合、このブッシュは、このブッシュの方向を向いた第1バネ部材の端部およびこのブッシュの方向を向いた第2バネ部材の端部と接触可能である。
【0013】
磁石アーマチャは、さらに円筒形状部分を具備することが可能である。第1バネ部材と、ブッシュと、第2バネ部材とが、この円筒形状部分(または、必要な場合、異なる半径を備えたそれぞれ独自の円筒形状部分)を同軸で取り囲む。ブッシュの方向を向く第1バネ部材の端部は、静止位置から中間位置への移行時には、円筒形状部分に対して相対的に移動するが、中間位置から終端位置への移行時には、円筒形状部分に対して相対的に移動しないように設けられている。ブッシュと、ブッシュの方向を向く第2バネ部材の端部とは、中間位置から終端位置への移行時には、円筒形状部分に対して相対的に移動するが、静止位置から中間位置への移行時には、円筒形状部分に対して相対的に移動しないように設けられている。
【0014】
静止位置から終端位置への移行の変位は、区間h=h1+h2に相当し、この際hの長さが、1.5mm〜2.5mmでありうる。
【0015】
静止位置から終端位置への区間hは、この際、接触器の2つの電極を接触ピストンと接触させるために、磁石アーマチャが活性化された際に進む全行程である。
【0016】
この行程hは、例えば2mmでありえる。
磁石アーマチャの静止位置からその中間位置への移行の変位は、区間h1に相当し、この区間は、全行程h=h1+h2の0.4倍〜0.6倍の間隔であることが可能である。
【0017】
換言すれば、中間位置は、全行程hの40%〜60%の間隔でありえる。
静止位置から中間位置への区間h1と中間位置から終端位置への区間h2との部分行程は等しくてもよく、h1=h2=h/2でありうる。
【0018】
双方のバネ部材のうちの1つのバネ剛性は、他方のバネ剛性のそれぞれ約3.3〜3.6倍であることが可能である。この際、第2バネ部材は、より大きなバネ剛性を有しえ、3.3≦k2/k1≦3.6でありえる。
【0019】
具体的には、第1バネ部材のバネ剛性が、0.5N/mm〜0.9N/mmであることが可能である。第2バネ部材のバネ剛性が、2.3N/mm〜2.7N/mmであることが可能である。
【0020】
磁石アーマチャが、少なくとも1つの円筒形状部分以外に、さらに、接触ピストンおよび/または磁化可能な材料を具備することが可能である。この接触ピストンは、アーマチャの領域の一端で、1つまたは複数の円筒形状部分を備えて配置されている。任意選択可能な磁化可能な材料は、対向する端部に配置可能である。接触ピストンは、導電材料を含み、かつ磁石アーマチャの終端位置で2つの電気接点を接続するように設けられていて、磁化可能な材料は、鉄、コバルトおよび/もしくはニッケルを含む、または鉄、コバルトもしくはニッケルからなることが可能である。磁化可能な材料を介して、磁石アーマチャは磁気的に周囲(例えば、くびき状部中にある隣接する磁石コイル)と相互作用し、これにより、とりわけ3つの位置間での変位、すなわち、接触ピストンを用いた切り替えが可能になる。
【0021】
円筒形状部分は、第1の一部分と、第2の一部分とを具備することが可能である。第1の一部分は第1直径を有しえ、第2の一部分は第2直径を有しうる。双方の一部分間には、円筒形状部分が段を有し、したがって直径が段を有しうる。この双方の一部分間の段は、とりわけブッシュ用の第4ストッパとなりうる。
【0022】
ブッシュは、静止位置から中間位置(MP)への移行時には、第4ストッパに接触するが、中間位置から終端位置への移行時には、第4ストッパに接触しないことが可能である。
【0023】
これにより、ブッシュは、双方のバネを少なくとも1つの位置で例えば静止位置で、または、中間位置から静止位置に移行する際に減結合することが可能になり、これにより、これに対応して構成された接触器の切り替え挙動が改良される。
【0024】
接触器は、双方のバネ部材間にあるブッシュを備えた上述のような磁石アーマチャと、コイルが統合されたくびき状部と、第1機械的ストッパを備えたガイド部とを具備しうる。磁石アーマチャとくびき状部とは電磁アクチュエータを形成し、この電磁アクチュエータは、磁石アーマチャを、くびき状部に対しておよびガイド部に対して相対的に移動するように設けられている。静止位置と中間位置との間の位置では、ブッシュが第1機械的ストッパに接触しない。中間位置と終端位置との間の位置では、ブッシュが第1機械的ストッパに接触する。
【0025】
したがって、中間位置は、閉じる間にブッシュがこのストッパが接触し始める位置として定義される。静止位置から中間位置までは、実質的に第1バネ部材が閉じる力に対抗する。磁石アーマチャがその静止位置から中間位置まで動くと、実質的に第1バネ部材が圧縮される。第2バネ部材は、この際予負荷で付勢されていることができ、これは、中間位置で第1バネ部材にかけられる応力より大きい。これにより、第2バネ部材は静止位置から中間位置への移行時には圧縮されない。
【0026】
ブッシュがこの機械的ストッパに当たると、第1バネ部材への応力がこれ以上高まることができないが、この理由は、力がブッシュおよびこの機械的ストッパを介してガイド部に出力されるからである。この結果、中間位置から終端位置へのさらなる移動は、第2バネ部材を圧縮することにより可能になる。
【0027】
接触器がくびき状部中に1つまたは複数のコイルを具備し、これらが、磁場を生成し、アーマチャの磁化可能な材料と共に電磁石を形成することが可能である。
【0028】
接触器は、さらに中空空間を具備することができ、この中で接触ピストンが、磁石アーマチャおよび互いに間隔をとった2つの電極に接して配置されている。この中空空間は、気体例えば希ガスで充填されていることができる。電極と接触ピストンとの間の間隔は、好ましくは磁石アーマチャの全行程hの長さよりも短い。
【0029】
磁石アーマチャは、これに加えてさらなるバネ部材を有しうるが、これは、電極と接触ピストンとの間の製造許容誤差を補償することができ、かつ独自の接触力を生成する。この点は、高電力で切り替え過程が繰り返されることにより、電極または接触ピストンの材料が剥離される場合にとりわけ重要である。
【0030】
この種の接触器の電磁石は、12V、24V、48Vの作動電圧またはこれ以外の利用可能であるすべての電圧により作動可能でありうる。
【0031】
接触器は、中空空間、例えば不活性ガスを充填した中空空間を有することができ、この中に、切り替えられるべき接点が存在する。気体で充填された中空空間を備えた接触器は、通常GFC(Gas Filled Contactor、ガス充填接触器)とも称される。この種の接触器は、とりわけ高電圧を切り替えるのに適切であるので、HVC(HVC=High Voltage Contactor、高電圧接触器)としても公知である。
【0032】
非線形の対抗力により高められた寿命は、中空空間中にガスを充填することによりさらに高められうる。
【0033】
接触器は、第3ストッパを備えたガイド部を有することが可能である。第3ストッパは、磁石アーマチャの移動の制限となりえる。この磁石アーマチャは、その静止位置で第3ストッパと接触することができる。
【0034】
この際、第3ストッパは、とりわけ静止位置における第1バネの力を受け止める。これにより、第3ストッパの位置が、静止位置におけるガイド部に対する磁石アーマチャの相対的な位置、すなわち規定された静止位置を決める。
【0035】
規定された値h1を、バネ定数の割合には依存せずに実現するために、かつ、バネ力を減結合するために、円筒状部分が第4機械的ストッパを有するべきであるが、これは、上述のように円筒状部分における2つの異なる直径と、これに応じた段とにより実現されうる。これにより、例えばより硬い第2バネ部材を、例えばより柔らかい第1バネ部材には依存しないサイズとすることができ、かつ、ブッシュと第4機械的ストッパとを介して規定の予負荷で組み入れることができる。
【0036】
バネ定数の割合は制限されていない。この数値(例えば、より硬いバネのバネ剛性は0.5N/mmであり、より柔らかいバネのバネ剛性は3N/mmである)は、なかんずく構築サイズに依存していて、これらの数値は、一例として理解されるべきである。
【0037】
双方のバネ部材を直列接続することは可能ではあるが、必須ではない。機械的ストッパ、とりわけ第1および第4ストッパは、バネを減結合しうる。
【0038】
電磁石と、接触ピストンと、第1バネ部材とを有する電磁接触器を切り替える方法は、以下の工程、すなわち、
・静止位置にある電磁石を活性化させる工程と、
・接触ピストンを、第1バネ部材の復元力に抗して、中間位置まで加速させる工程と、
・接触ピストンを、第2バネ部材の復元力に抗して、終端位置まで移動させる工程と
を含む。
【0039】
電磁石と、接触ピストンと、第1バネ部材と、第2バネ部材とを有する電磁接触器を切り替える方法は、以下の工程、すなわち、
・静止位置にある電磁石を活性化させる工程と、
・接触ピストンを、第1バネ部材の復元力に抗して、中間位置まで加速させる工程と、
・接触ピストンを、第2バネ部材の復元力に抗して、終端位置まで移動させる工程と
を含む。
【0040】
以下に、概略的な図を用いて、機能原理および例示的な実施形態を示し、より詳細に説明する。