特許第6643456号(P6643456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643456磁石アーマチャ、磁石アーマチャを備えた接触器および接触器を切り替える方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643456
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】磁石アーマチャ、磁石アーマチャを備えた接触器および接触器を切り替える方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/54 20060101AFI20200130BHJP
   H01H 50/38 20060101ALI20200130BHJP
   F02N 11/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   H01H50/54 D
   H01H50/38 A
   F02N11/00 R
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-503178(P2018-503178)
(86)(22)【出願日】2016年6月22日
(65)【公表番号】特表2018-522382(P2018-522382A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】EP2016064467
(87)【国際公開番号】WO2017012816
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2018年3月14日
(31)【優先権主張番号】102015112052.6
(32)【優先日】2015年7月23日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102015121033.9
(32)【優先日】2015年12月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボベルト,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ベステッベ,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ベルナー,フランク
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−019148(JP,A)
【文献】 特開2005−276592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/54
F02N 11/00
H01H 50/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石アーマチャ(MA)であって、
・第1剛性k1を有する第1バネ部材(F1)と、
・第2剛性k2を有する第2バネ部材(F2)と、
・静止位置(RP)と、終端位置(EP)と、前記静止位置(RP)と前記終端位置(EP)との間にある中間位置(MP)とを具備し、
・前記第1バネ部材(F1)は、前記静止位置(RP)から前記中間位置(MP)への移行時には弾性変形するが、前記中間位置(MP)から前記終端位置(EP)への移行時には弾性変形しないように設けられていて、
・前記第2バネ部材(F2)は、前記中間位置(MP)から前記終端位置(EP)への移行時には弾性変形するが、前記静止位置(RP)から前記中間位置(MP)への移行時には弾性変形しないように設けられており、
前記第2バネ部材(F2)は、前記終端位置(EP)にあるとき前記磁石アーマチャ(MA)に対して復元力を生成する、磁石アーマチャ(MA)。
【請求項2】
前記第1バネ部材(F1)と前記第2バネ部材(F2)とは直列で配置されている、請求項1に記載の磁石アーマチャ。
【請求項3】
さらに、前記第1バネ部材(F1)と前記第2バネ部材(F2)との間に、ブッシュ(B)を具備する、請求項2に記載の磁石アーマチャ。
【請求項4】
・さらに、前記第1バネ部材(F1)と、前記ブッシュ(B)と、前記第2バネ部材(F2)とが同軸で取り囲む円筒形状部分(ZA)を具備し、
・前記ブッシュ(B)の方向を向く前記第1バネ部材(F1)の端部は、前記静止位置(RP)から前記中間位置(MP)への移行時には、前記円筒形状部分(ZA)に対して相対的に移動するが、前記中間位置(MP)から前記終端位置(EP)への移行時には、前記円筒形状部分(ZA)に対して相対的に移動しないように設けられていて、
・前記ブッシュ(B)と、前記ブッシュ(B)の方向を向く前記第2バネ部材(F2)の端部とは、前記中間位置(MP)から前記終端位置(EP)への移行時には、前記円筒形状部分(ZA)に対して相対的に移動するが、前記静止位置(RP)から前記中間位置(MP)への移行時には、前記円筒形状部分(ZA)に対して相対的に移動しないように設けられている、請求項3に記載の磁石アーマチャ。
【請求項5】
・前記静止位置(RP)から前記終端位置(EP)への移行の変位は、区間h=h1+h2に相当し、前記区間は、1.5〜2.5mmの長さであり、
・前記静止位置(RP)から前記中間位置(MP)への移行の変位はh1で表され、
・前記中間位置(MP)から前記終端位置(EP)への移行の変位はh2で表される、請求項1から4のいずれか1項に記載の磁石アーマチャ。
【請求項6】
前記静止位置(RP)から前記中間位置(MP)への移行の変位は、区間h1に相当し、前記区間は、前記静止位置(RP)から前記終端位置(EP)への変位の前記区間h=h1+h2の0.4倍〜0.6倍である、請求項1から5のいずれか1項に記載の磁石アーマチャ。
【請求項7】
3.3≦k2/k1≦3.6
である、請求項1から6のいずれか1項に記載の磁石アーマチャ。
【請求項8】
0.5N/mm≦k1≦0.9N/mm、かつ、2.3N/mm≦k2≦2.7N/mmである、請求項1から7のいずれか1項に記載の磁石アーマチャ。
【請求項9】
・円筒形状部分(ZA)を具備し、さらに、
・接触ピストン(KS)と磁化可能な材料(M)とを具備し、
・前記接触ピストン(KS)は、導電材料を含み、かつその終端位置(EP)で2つの電気接点(EL1、EL2)を接続するように設けられていて、
・前記磁化可能な材料(M)は、鉄、コバルトおよび/またはニッケルを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の磁石アーマチャ。
【請求項10】
・前記円筒形状部分(ZA)は、第1直径を有する第1の一部分(ZA1)と、第2直径を有する第2の一部分(ZA2)と、前記双方の一部分(ZA1、ZA2)間の段を有し、
・前記双方の一部分(ZA1、ZA2)の間の前記段は、第4ストッパ(A4)であり、
・前記第4ストッパ(A4)は、前記ブッシュ(B)用のストッパである、請求項1から9のいずれか1項に記載の磁石アーマチャ。
【請求項11】
・前記ブッシュ(B)は、前記静止位置(RP)から前記中間位置(MP)への移行時には、前記第4ストッパ(A4)に接触し、かつ、
・前記ブッシュ(B)は、前記中間位置(MP)から前記終端位置(EP)への移行時には、前記第4ストッパ(A4)に接触しない、請求項10に記載の磁石アーマチャ。
【請求項12】
・前記ブッシュ(B)は、前記双方のバネ(F1、F2)少なくとも1つの位置(RP、MP、EP)で減結合する、請求項11に記載の磁石アーマチャ。
【請求項13】
さらに、接触ピストン(KS)と、接触力を与えるために前記接触ピストンに配置される更なるバネ部材(FTA)とを具備する、請求項1に記載の磁石アーマチャ。
【請求項14】
前記更なるバネ部材(FTA)は、前記接触ピストン(KS)と絶縁性材料(IM)との間に位置づけられ、前記絶縁性材料(IM)は、前記更なるバネ部材(FTA)と前記第1バネ部材(F1)との間に位置づけられる、請求項13に記載の磁石アーマチャ。
【請求項15】
接触器(SCH)であって、
・請求項1から14のいずれか1項に記載の磁石アーマチャ(MA)であって、前記双方のバネ部材(F1、F2)の間にブッシュ(B)を備えた磁石アーマチャ(MA)と、
・くびき状部(J)と、
・機械的ストッパ(A1)を備えたガイド部(FU)とを具備し、
・前記磁石アーマチャ(MA)と前記くびき状部(J)とは、電磁アクチュエータを形成し、前記電磁アクチュエータは、前記磁石アーマチャ(MA)を、前記くびき状部(J)に対して、および前記ガイド部(FU)に対して相対的に移動させるように設けられていて、
・前記静止位置(RP)と前記中間位置(MP)との間の位置では、前記ブッシュ(B)が前記機械的ストッパ(A1)に接触せず、
・前記中間位置(MP)と前記終端位置(EP)との間の位置では、前記ブッシュ(B)が前記機械的ストッパ(A1)に接触する、接触器(SCH)。
【請求項16】
・前記ガイド部(FU)は、第3ストッパ(A3)を有し、
・前記第3ストッパ(A3)は、前記磁石アーマチャ(MA)の移動の制限となり、
・前記磁石アーマチャ(MA)は、その静止位置(RP)で前記第3ストッパ(A3)と接触する、請求項15に記載の接触器。
【請求項17】
電磁石と、接触ピストン(KS)と、第1バネ部材(F1)と、第2バネ部材(F2)とを備えた電磁接触器(SCH)を切り替える方法であって、以下の工程、すなわち、
・静止位置(RP)にある前記電磁石を活性化させる工程と、
・前記接触ピストン(KS)を、前記第1バネ部材(F1)の復元力に抗して、中間位置(MP)まで加速させる工程と、
・前記接触ピストン(KS)を、前記第2バネ部材(F2)の復元力に抗して、終端位置(EP)まで移動させる工程とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石アーマチャ、例えば電磁接触器用の磁石アーマチャ、磁石アーマチャを備えた接触器、および、接触器を切り替える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁的に作動可能な接触器で、一般に、磁石アーマチャは、接触ピストンを変位させることにより2つの電極を導電接続可能にする可動部分となる。接触器は、大電流および/または高電圧を、必要な場合には保護気体雰囲気中で切り替えるために用いられる。スイッチを直接開閉する過程およびその際に生じるアークは、切り替えられるべき電力が大きい場合には、とりわけ電極および接触ピストンの材料にとって大きな負荷となる。切り替え過程数が増すに従って、これらの電気接点が接着してしまう危険性が高まる。
【0003】
閉じ時間を低減させるためのいわゆるブースタ回路を備えた接触器が公知である。この際、引き付け力を高めるために、電磁石には、オンの際に短時間、すなわち数ミリ秒間、過電圧がかけられる。
【0004】
したがって、電極材料にとって負荷を減らした切り替え過程が望まれ、とりわけ接点の接着の危険性が低減された切り替え過程が望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで記載した磁石アーマチャ、とりわけ独立請求項1に記載の磁石アーマチャでは、このような切り替え過程が可能になる。これ以外の請求項は、アーマチャの有利な構成を示す。
【0006】
磁石アーマチャは、第1バネ剛性k1を有する第1バネ部材と、第2剛性k2を有する第2バネ部材と、静止位置と、終端位置と、静止位置と終端位置との間にある中間位置とを具備する。第1バネ部材は、静止位置から中間位置への移行時の切り替え過程の間には弾性変形するが、中間位置から終端位置への移行時には弾性変形しないように設けられている。第2バネ部材は、中間位置から終端位置への移行時には弾性変形するが、静止位置から中間位置への移行時には弾性変形しないように設けられている。
【0007】
静止位置、中間位置および終端位置は、この際、例えば電磁スイッチ内での磁石アーマチャのその周囲に対する相対的な位置となる。中間位置は、必ずしも、静止位置と終端位置とから等しい距離がとられているには及ばない。この際、静止位置とは、磁力が磁石アーマチャにかけられていない際に磁石アーマチャがある位置を示す。終端位置とは、スイッチを閉じるために設けられた磁力が磁石アーマチャに作用し、閉じられるべき電気接点が持続的に閉じられている際の平衡位置を示す。
【0008】
第1バネ部材の第1剛性k1と、第2バネ部材の第2剛性k2とは、様々でありえる。磁石アーマチャが、静止位置から中間位置へ移動する際に、第1バネ部材の復元力に抗して移動し、かつ、中間位置から終端位置へ移行する際に、第2の部材のバネ力に抗して移動することにより、切り替え時間の低減が達成可能になる。とりわけ第1バネ部材のバネ剛性k1が、第2バネ部材のバネ剛性k2よりも小さい場合に、磁石アーマチャは、引き付け時により小さい抵抗力に抗して動き、その結果、より大きい加速、したがって切り換え時間の短縮が達成される。
【0009】
磁石アーマチャがその終端位置にある場合には、磁石アーマチャへの磁力がなくなると(すなわち、スイッチが開くと)、実質的に第2バネ部材の復元力により、迅速な開き動作がなされる。
【0010】
したがって、開閉時の抵抗力が単純な線形ではない磁石アーマチャが示される。むしろ、これにかけられる抵抗力が、バネ剛性が異なることによって順次上昇しうる磁石アーマチャが示される。
【0011】
第1バネ部材と第2バネ部材とは直列で配置されていることが可能である。直列に配置されたバネ部材では、組み合わされた2つのバネのバネ剛性が結果として生じ、その逆数は、個々のバネ剛性の逆数の合計に相当するとの結果になる。2つの直列に配置されたバネ部材は、したがって、対応する代替的な剛性を備えた個々のバネ部材のように挙動する。一方では、静止位置から中間位置への移動段階時の、および、中間位置から終端位置への移動時の第2の段階時の活性時に、磁石アーマチャが異なるバネ剛性を知覚するように、追加的な技術的な措置、例えば以下で述べるような機械的ストッパおよび/または個々のバネ部材をバネ付勢することおよび/または摺動可能なブッシュの設置が必須である。
【0012】
したがって、磁石アーマチャが、追加的にブッシュを具備し、これが、第1バネ部材と第2バネ部材との間に配置されていることが可能である。この場合、このブッシュは、このブッシュの方向を向いた第1バネ部材の端部およびこのブッシュの方向を向いた第2バネ部材の端部と接触可能である。
【0013】
磁石アーマチャは、さらに円筒形状部分を具備することが可能である。第1バネ部材と、ブッシュと、第2バネ部材とが、この円筒形状部分(または、必要な場合、異なる半径を備えたそれぞれ独自の円筒形状部分)を同軸で取り囲む。ブッシュの方向を向く第1バネ部材の端部は、静止位置から中間位置への移行時には、円筒形状部分に対して相対的に移動するが、中間位置から終端位置への移行時には、円筒形状部分に対して相対的に移動しないように設けられている。ブッシュと、ブッシュの方向を向く第2バネ部材の端部とは、中間位置から終端位置への移行時には、円筒形状部分に対して相対的に移動するが、静止位置から中間位置への移行時には、円筒形状部分に対して相対的に移動しないように設けられている。
【0014】
静止位置から終端位置への移行の変位は、区間h=h1+h2に相当し、この際hの長さが、1.5mm〜2.5mmでありうる。
【0015】
静止位置から終端位置への区間hは、この際、接触器の2つの電極を接触ピストンと接触させるために、磁石アーマチャが活性化された際に進む全行程である。
【0016】
この行程hは、例えば2mmでありえる。
磁石アーマチャの静止位置からその中間位置への移行の変位は、区間h1に相当し、この区間は、全行程h=h1+h2の0.4倍〜0.6倍の間隔であることが可能である。
【0017】
換言すれば、中間位置は、全行程hの40%〜60%の間隔でありえる。
静止位置から中間位置への区間h1と中間位置から終端位置への区間h2との部分行程は等しくてもよく、h1=h2=h/2でありうる。
【0018】
双方のバネ部材のうちの1つのバネ剛性は、他方のバネ剛性のそれぞれ約3.3〜3.6倍であることが可能である。この際、第2バネ部材は、より大きなバネ剛性を有しえ、3.3≦k2/k1≦3.6でありえる。
【0019】
具体的には、第1バネ部材のバネ剛性が、0.5N/mm〜0.9N/mmであることが可能である。第2バネ部材のバネ剛性が、2.3N/mm〜2.7N/mmであることが可能である。
【0020】
磁石アーマチャが、少なくとも1つの円筒形状部分以外に、さらに、接触ピストンおよび/または磁化可能な材料を具備することが可能である。この接触ピストンは、アーマチャの領域の一端で、1つまたは複数の円筒形状部分を備えて配置されている。任意選択可能な磁化可能な材料は、対向する端部に配置可能である。接触ピストンは、導電材料を含み、かつ磁石アーマチャの終端位置で2つの電気接点を接続するように設けられていて、磁化可能な材料は、鉄、コバルトおよび/もしくはニッケルを含む、または鉄、コバルトもしくはニッケルからなることが可能である。磁化可能な材料を介して、磁石アーマチャは磁気的に周囲(例えば、くびき状部中にある隣接する磁石コイル)と相互作用し、これにより、とりわけ3つの位置間での変位、すなわち、接触ピストンを用いた切り替えが可能になる。
【0021】
円筒形状部分は、第1の一部分と、第2の一部分とを具備することが可能である。第1の一部分は第1直径を有しえ、第2の一部分は第2直径を有しうる。双方の一部分間には、円筒形状部分が段を有し、したがって直径が段を有しうる。この双方の一部分間の段は、とりわけブッシュ用の第4ストッパとなりうる。
【0022】
ブッシュは、静止位置から中間位置(MP)への移行時には、第4ストッパに接触するが、中間位置から終端位置への移行時には、第4ストッパに接触しないことが可能である。
【0023】
これにより、ブッシュは、双方のバネを少なくとも1つの位置で例えば静止位置で、または、中間位置から静止位置に移行する際に減結合することが可能になり、これにより、これに対応して構成された接触器の切り替え挙動が改良される。
【0024】
接触器は、双方のバネ部材間にあるブッシュを備えた上述のような磁石アーマチャと、コイルが統合されたくびき状部と、第1機械的ストッパを備えたガイド部とを具備しうる。磁石アーマチャとくびき状部とは電磁アクチュエータを形成し、この電磁アクチュエータは、磁石アーマチャを、くびき状部に対しておよびガイド部に対して相対的に移動するように設けられている。静止位置と中間位置との間の位置では、ブッシュが第1機械的ストッパに接触しない。中間位置と終端位置との間の位置では、ブッシュが第1機械的ストッパに接触する。
【0025】
したがって、中間位置は、閉じる間にブッシュがこのストッパが接触し始める位置として定義される。静止位置から中間位置までは、実質的に第1バネ部材が閉じる力に対抗する。磁石アーマチャがその静止位置から中間位置まで動くと、実質的に第1バネ部材が圧縮される。第2バネ部材は、この際予負荷で付勢されていることができ、これは、中間位置で第1バネ部材にかけられる応力より大きい。これにより、第2バネ部材は静止位置から中間位置への移行時には圧縮されない。
【0026】
ブッシュがこの機械的ストッパに当たると、第1バネ部材への応力がこれ以上高まることができないが、この理由は、力がブッシュおよびこの機械的ストッパを介してガイド部に出力されるからである。この結果、中間位置から終端位置へのさらなる移動は、第2バネ部材を圧縮することにより可能になる。
【0027】
接触器がくびき状部中に1つまたは複数のコイルを具備し、これらが、磁場を生成し、アーマチャの磁化可能な材料と共に電磁石を形成することが可能である。
【0028】
接触器は、さらに中空空間を具備することができ、この中で接触ピストンが、磁石アーマチャおよび互いに間隔をとった2つの電極に接して配置されている。この中空空間は、気体例えば希ガスで充填されていることができる。電極と接触ピストンとの間の間隔は、好ましくは磁石アーマチャの全行程hの長さよりも短い。
【0029】
磁石アーマチャは、これに加えてさらなるバネ部材を有しうるが、これは、電極と接触ピストンとの間の製造許容誤差を補償することができ、かつ独自の接触力を生成する。この点は、高電力で切り替え過程が繰り返されることにより、電極または接触ピストンの材料が剥離される場合にとりわけ重要である。
【0030】
この種の接触器の電磁石は、12V、24V、48Vの作動電圧またはこれ以外の利用可能であるすべての電圧により作動可能でありうる。
【0031】
接触器は、中空空間、例えば不活性ガスを充填した中空空間を有することができ、この中に、切り替えられるべき接点が存在する。気体で充填された中空空間を備えた接触器は、通常GFC(Gas Filled Contactor、ガス充填接触器)とも称される。この種の接触器は、とりわけ高電圧を切り替えるのに適切であるので、HVC(HVC=High Voltage Contactor、高電圧接触器)としても公知である。
【0032】
非線形の対抗力により高められた寿命は、中空空間中にガスを充填することによりさらに高められうる。
【0033】
接触器は、第3ストッパを備えたガイド部を有することが可能である。第3ストッパは、磁石アーマチャの移動の制限となりえる。この磁石アーマチャは、その静止位置で第3ストッパと接触することができる。
【0034】
この際、第3ストッパは、とりわけ静止位置における第1バネの力を受け止める。これにより、第3ストッパの位置が、静止位置におけるガイド部に対する磁石アーマチャの相対的な位置、すなわち規定された静止位置を決める。
【0035】
規定された値h1を、バネ定数の割合には依存せずに実現するために、かつ、バネ力を減結合するために、円筒状部分が第4機械的ストッパを有するべきであるが、これは、上述のように円筒状部分における2つの異なる直径と、これに応じた段とにより実現されうる。これにより、例えばより硬い第2バネ部材を、例えばより柔らかい第1バネ部材には依存しないサイズとすることができ、かつ、ブッシュと第4機械的ストッパとを介して規定の予負荷で組み入れることができる。
【0036】
バネ定数の割合は制限されていない。この数値(例えば、より硬いバネのバネ剛性は0.5N/mmであり、より柔らかいバネのバネ剛性は3N/mmである)は、なかんずく構築サイズに依存していて、これらの数値は、一例として理解されるべきである。
【0037】
双方のバネ部材を直列接続することは可能ではあるが、必須ではない。機械的ストッパ、とりわけ第1および第4ストッパは、バネを減結合しうる。
【0038】
電磁石と、接触ピストンと、第1バネ部材とを有する電磁接触器を切り替える方法は、以下の工程、すなわち、
・静止位置にある電磁石を活性化させる工程と、
・接触ピストンを、第1バネ部材の復元力に抗して、中間位置まで加速させる工程と、
・接触ピストンを、第2バネ部材の復元力に抗して、終端位置まで移動させる工程と
を含む。
【0039】
電磁石と、接触ピストンと、第1バネ部材と、第2バネ部材とを有する電磁接触器を切り替える方法は、以下の工程、すなわち、
・静止位置にある電磁石を活性化させる工程と、
・接触ピストンを、第1バネ部材の復元力に抗して、中間位置まで加速させる工程と、
・接触ピストンを、第2バネ部材の復元力に抗して、終端位置まで移動させる工程と
を含む。
【0040】
以下に、概略的な図を用いて、機能原理および例示的な実施形態を示し、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】磁石アーマチャMAのある単純な実施形態において磁石アーマチャMAがその静止位置にある状態を示す断面図である。
図2】ある単純な実施形態において磁石アーマチャMAがその中間位置にある状態を示す断面図である。
図3】接触器のある単純な実施形態において磁石アーマチャMAがその終端位置にある状態を示す断面図である。
図4】許容誤差を補償するためのバネ部材と接触ピストンとを備えた磁石アーマチャのある実施形態の断面図である。
図5】気体が充填された中空空間中に、磁石アーマチャと、接触ピストンと、第1電極と、第2電極とを備えた接触器の断面図で、図5および/または図6の例に対応した図である。
図6】第3ストッパA3と第4ストッパA4とを備えた磁石アーマチャMAのある実施形態の断面図である。
図7図6の実施形態が中間位置にある状態を示す断面図である。
図8図6の実施形態が終端位置にある状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、磁石アーマチャMAのある単純な実施形態で、磁石アーマチャMAがその静止位置RPにある際の断面図である。磁石アーマチャMAは、第1バネ部材F1と第2バネ部材F2とを有する。双方のバネ部材F1、F2は、磁石アーマチャの静止位置からその終端位置への移行時の復元力を決める。とりわけ第1バネ部材F1は、静止位置から中間位置への移行時の復元力を決める。中間位置から終端位置への移行時の復元力は、第2バネ部材F2のバネ剛性により決められる。この際、h1は、静止位置から中間位置への移行時に進む区間の長さである。この際、h=h1+h2は、静止位置から終端位置への移行時に進む区間の長さである。
【0043】
図1は、磁石アーマチャMAに加えてガイド部FUを示すが、これは、位置間の移行時に、アーマチャの移動を軸に沿った変位に制限するための物である。ガイド部FUは、したがって、第1ストッパA1を備えたガイド部レールとなる。第1バネ部材F1と第2バネ部材F2との間には、ブッシュBが配置されている。この磁石アーマチャMAは、円筒形状部分ZAを有する。第1バネ部材F1、第2バネ部材F2およびブッシュBは、円筒形状部分ZAの周りに同軸で配置されている。円筒形状部分ZAの一端には、接触ピストンKSが配置されている。円筒形状部分ZAの他端には、磁化可能な材料Mが配置されている。横たわるように図示された磁石アーマチャMAがガイド部FUに対して相対的に左方向に動くと、実質的により小さいバネ剛性を有するバネ部材、この場合は第1バネ部材F1が、圧縮される。第2バネ部材F2が明らかにより高いバネ剛性を有すると、または第2バネ部材F2が、第1バネ部材F1が中間位置にあるときの応力より大きな予負荷下にあると、第2バネ部材F2は、静止位置RPから中間位置MPへの移行時に圧縮されないまたは実質的には圧縮されない。静止位置RPから中間位置MPへの移行時には、ブッシュBが第1ストッパA1に当たるまでに、ブッシュBが区間h1だけ動く。この移動段階時には、磁石アーマチャMAに作用する復元力は、実質的に第1バネ部材F1のバネ剛性によって、またはこれのみにより与えられる。
【0044】
図2は、磁石アーマチャがその中間位置MPにある状態を示す図である。この際、ブッシュBは、第1ストッパA1に接触する。磁石アーマチャがさらにガイド部FUに対して相対的に左方向に移動すると、ブッシュBが第1ストッパA1で支えられ、その結果、第1バネ部材F1は、これ以上圧縮されえない。さらなる移動時には、必然的に第2バネ部材F2が圧縮される。
【0045】
これに対応して、図3は、磁石アーマチャがその終端位置EPにある状態を示す。この際、第2バネ部材F2は、磁石アーマチャがその終端位置に到達するまで圧縮されるが、この終端位置は、例えば第2機械的ストッパA2により予め決められうる。
【0046】
ここで、磁石アーマチャは、接触ピストンが2つの電極と接触することにより、磁石アーマチャに関連する電気スイッチが閉じられた位置にある。
【0047】
閉じる際には、閉じ時間を短くすることが達成できるが、この理由は、とりわけ非常に重要な初期段階において、電磁石が第1バネ部材F1の弱い復元力のみに抗して働かねばならず、これにより迅速に加速することができるからである。電気スイッチを迅速に開くのは、電磁石の不活性化時に、第2バネ部材F2のより強い第2復元力が直接作用することにより達成される。
【0048】
したがって、全体として、迅速に閉じかつ迅速に開くことが可能で、とりわけ生じるアークの燃焼期間を短くし、接点の接着の危険性を低減した磁石アーマチャが示される。
【0049】
図4は、磁石アーマチャMAのある実施形態を示すが、この場合も同様に第1のバネ剛性k1を有する第1バネ部材と第2のバネ剛性k2を有する第2バネ部材との間に摺動可能なブッシュBが配置されている。磁石アーマチャMAの後端は、接触ピストンKSの方向で、接触ピストンの円筒形状部分の周りで同軸に配置されている円錐形状の隆起部分を有する。これに対応するガイド部は、これに応じて形成された、アーマチャの端部の方向に向かう円錐形状の凹部を有する。したがって、スイッチを閉じる際には、自身で中心合わせをしたガイド部が得られる。接触ピストンKSとアーマチャMAの残りの部分との間にはさらなるバネ部材FTAが配置されていて、これが高さの許容誤差を補償することができ、実際の接触力を作り出す。さらなるバネ部材FTAとアーマチャの残りの部分との間には、絶縁性の材料IMからなる部分が配置されていて、これにより、接触ピストンKSを介して切り替えられうる電気接点と磁石アーマチャとが、電気的に絶縁される。
【0050】
図5は、接触器SCHのある可能な実施形態で、この接触器がその静止位置RPにある状態での断面図である。磁化可能な材料Mを備えた磁石アーマチャに加えて、接触器SCHは、くびき状部Jを有し、この中に、コイルSPの電気巻線が配置されている。図5は、追加的に中空空間HRを示し、この中で、第1電極と第2電極との端部が、接触ピストンKSに相対している。磁石アーマチャは、まず第1バネ部材の抵抗力に対抗し、続いて第2バネ部材のより強い抵抗力に対抗して動き、このようにして、接触ピストンKSは双方の電極EL1、EL2の端部を押圧し、これにより双方の電極EL1、EL2は互いに接続される。とりわけ、接点が開く際に、可能な限り迅速にアークを消し、電極および接触ピストンKSの材料を保護するために、中空空間HR中には、気体例えば希ガスが含有されている。
【0051】
図6は、第4ストッパA4を備えた磁石アーマチャMAの実施形態と第3ストッパA3を備えた接触器SCHの実施形態とが、それぞれ静止位置RPにある状態を示す図である。静止位置RPにあるアーマチャMAとガイド部FUとの位置は第3ストッパA3により決められる。
【0052】
図7は、第4ストッパA4を備えた磁石アーマチャMAの実施形態と第3ストッパA3を備えた接触器SCHの実施形態とが中間位置MPにある状態を示す図である。この位置は、移動の経過において第2バネ部材F2が活性状態になる瞬間を示している。
【0053】
図8は、第4ストッパA4を備えた磁石アーマチャMAの実施形態と第3ストッパA3を備えた接触器SCHの実施形態とが終端位置EPにある状態を示す図である。終端位置EPにあるアーマチャMAとガイド部FUとの位置は第2ストッパA2により決められる。
【0054】
図6、7および8からは、以下が明らかになる。すなわち、h1の規定の値を、バネ定数の割合には依存せずに実現するために、かつ、バネ力を減結合するために、円筒状部分ZAは、第4機械的ストッパA4を、直径の段の形態で有する。これにより、第2バネ部材F2と第1バネ部材F1とは、活性化時に接触器SCHの中間位置に至るまでの段階で減結合される。とりわけ第1機械的ストッパA1と、第4機械的ストッパA4とが、バネF1、F2を減結合する。
【0055】
磁石アーマチャが複雑な構造を有するにも拘わらず、電気性能が改良された接触器が示され、この接触器は、通常の幾何学的な寸法を維持することができ、したがって既存の外側回路環境中に統合可能である。
【0056】
磁石アーマチャも接触器も接触器を切り替える方法も、図示した実施形態に限定されない。追加的なストッパを備えた磁石アーマチャ、とりわけ第2バネ部材を付勢する装置、および、接触器の電極の負荷を下げるさらなる方策は、本発明の対象物を示す。
【符号の説明】
【0057】
A1 第1機械的ストッパ
A2 第2機械的ストッパ
A3 第3機械的ストッパ
A4 第4機械的ストッパ
B ブッシュ
EL1 第1電極
EL2 第2電極
EP 終端位置
F1 第1バネ部材
F2 第2バネ部材
FTA 許容誤差補償用のバネ部材
FU ガイド部
h 静止位置から終端位置への移行の長さ区間
h1 静止位置から中間位置への移行の区間
h2 中間位置から終端位置への移行の区間の長さ
HR 中空空間
IM 絶縁性の材料
J くびき状部
KS 接触ピストン
M 磁化可能な材料
MA 磁石アーマチャ
MP 中間位置
RP 静止位置
SCH 接触器
ZA 円筒形状部分
ZA1 第1の一部分
ZA2 第2の一部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8