(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643459
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】燃料噴射システム内のインジェクタ弁を制御するための制御方法、および燃料噴射システム
(51)【国際特許分類】
F02D 41/22 20060101AFI20200130BHJP
F02M 55/02 20060101ALI20200130BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20200130BHJP
F02D 17/04 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
F02D41/22
F02M55/02 360K
F02D41/04
F02D17/04 F
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-508660(P2018-508660)
(86)(22)【出願日】2016年4月14日
(65)【公表番号】特表2018-523782(P2018-523782A)
(43)【公表日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】EP2016058205
(87)【国際公開番号】WO2017028965
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2018年4月16日
(31)【優先権主張番号】102015215683.4
(32)【優先日】2015年8月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トビアス リッチュ
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ ツァービヒ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス バウアー
【審査官】
▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−106414(JP,A)
【文献】
特開2010−116881(JP,A)
【文献】
特開2012−229623(JP,A)
【文献】
特開2011−163220(JP,A)
【文献】
特開2013−002309(JP,A)
【文献】
特開2009−257277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 − 45/00
F02M 39/00 − 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃料噴射システム(10)内の少なくとも1つのインジェクタ弁(42)を制御するための制御方法において、
燃料噴射システム(10)を用意するステップであって、前記燃料噴射システム(10)は、圧力室(22)内で動作中に下死点(UT)と上死点(OT)との間で移動する、燃料に高圧を印加するためのポンプピストン(32)を備える燃料高圧ポンプ(14)と、前記高圧が印加された燃料を蓄えるため、かつ前記少なくとも1つのインジェクタ弁(42)に前記高圧が印加された燃料を供給するための高圧領域(16)とを有する、ステップと、
前記高圧領域(16)内の所定の開弁圧力(Poeff)に達したときに前記高圧領域(16)から前記燃料高圧ポンプ(14)の前記圧力室(22)に燃料をリリーフする圧力制限弁(46)を用意するステップと、
前記ポンプピストン(32)が前記上死点(OT)に位置するOT時点を識別し、第1のOT時点と第2のOT時点との間に4つの均等に分布された象限(Q1,Q2,Q3,Q4)を有する1つの周期期間(tp)を特定するステップと、
前記高圧領域(16)内の前記所定の開弁圧力(Poeff)を上回っている、前記燃料噴射システム(10)内の障害状況を識別するステップと、
前記障害状況が識別された場合に、前記インジェクタ弁(42)の開弁時点(Toeff)が、前記周期期間(tp)の第2の象限(Q2)および/または前記周期期間(tp)の第3の象限(Q3)に亘っている開弁期間内に位置するように、前記インジェクタ弁(42)を制御するステップと、
を有する、制御方法。
【請求項2】
前記障害状況を、前記高圧領域(16)内に配置された高圧センサ(44)によって識別する、
請求項1記載の制御方法。
【請求項3】
前記圧力制限弁(46)の前記開弁圧力(Poeff)を、前記高圧領域(16)内で最大限に許容可能な最大圧力(Pmax)よりも低く調整し、
前記最大圧力(Pmax)を、500バールを上回る範囲に規定する、
請求項1または2記載の制御方法。
【請求項4】
前記インジェクタ弁(42)を、前記内燃機関による燃料要求が存在する場合にのみ開弁するように制御する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の制御方法。
【請求項5】
前記障害状況が識別された後に、前記高圧領域(16)内の前記所定の開弁圧力(Poeff)を下回っている、前記燃料噴射システム(10)の通常モードに突入したことが識別された場合に、前記インジェクタ弁(42)の前記開弁時点(Toeff)が前記4つの均等に分布された象限(Q1,Q2,Q3,Q4)のうちの任意の1つの象限内に位置するように、前記インジェクタ弁(42)を制御する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の制御方法。
【請求項6】
前記ポンプピストン(32)が前記上死点(OT)に位置する前記OT時点を識別するために、前記上死点(OT)に前記内燃機関の所定のクランク角度を対応付けている特性マップ(K1)を保存する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の制御方法。
【請求項7】
前記ポンプピストン(32)が前記上死点(OT)に位置する前記OT時点を識別するために、前記内燃機関のクランク角度を検出する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の制御方法。
【請求項8】
前記内燃機関の少なくとも2つの動作状態を用意し、
惰行モードでは、前記インジェクタ弁(42)による前記内燃機関の燃焼室への燃料の噴射を実施せず、
噴射モードでは、前記インジェクタ弁(42)による前記内燃機関の燃焼室への燃料の噴射が少なくとも1回実施し、
前記障害状況では、前記内燃機関の前記惰行モードを非作動化して、前記内燃機関を前記噴射モードのみで動作させる、
請求項1から7までのいずれか1項記載の制御方法。
【請求項9】
前記障害状況における、前記内燃機関の前記惰行モードの非作動化の後の前記噴射モードにおいて、前記高圧領域(16)内で最大限に許容可能な最大圧力(Pmax)よりも低く、かつ、前記圧力制限弁(46)の開弁圧力(Poeff)に相当する高圧が、前記高圧領域(16)内で発生するような量の燃料を、前記インジェクタ弁(42)によって噴射する、
請求項8記載の制御方法。
【請求項10】
内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射システム(10)において、
前記燃料噴射システム(10)は、請求項1から9までのいずれか1項記載の制御方法を実施するように構成されており、
前記燃料噴射システム(10)は、
圧力室(22)内で動作中に下死点(UT)と上死点(OT)との間で移動する、燃料に高圧を印加するためのポンプピストン(32)を備える燃料高圧ポンプ(14)と、
前記高圧が印加された燃料を蓄えるため、かつ高圧領域(16)内に配置された前記少なくとも1つのインジェクタ弁(42)に前記高圧が印加された燃料を供給するための高圧領域(16)と、
前記高圧領域(16)内の所定の開弁圧力(Poeff)に達したときに前記高圧領域(16)から前記燃料高圧ポンプ(14)の前記圧力室(22)に燃料をリリーフするように構成された、前記高圧領域(16)内に配置された圧力制限弁(46)と、
制御装置(26)と
を有し、前記制御装置(26)は、
前記ポンプピストン(32)が前記上死点(OT)に位置するOT時点を識別し、
第1のOT時点と第2のOT時点との間に4つの均等に分布された象限(Q1,Q2,Q3,Q4)を有する1つの周期期間(tp)を特定し、
前記高圧領域(16)内の前記所定の開弁圧力(Poeff)を上回っている、前記燃料噴射システム(10)内の障害状況を識別し、
前記障害状況が識別された場合に、前記インジェクタ弁(42)の開弁時点(Toeff)が、前記周期期間(tp)の第2の象限(Q2)および/または前記周期期間(tp)の第3の象限(Q3)に亘っている開弁期間内に位置するように、前記インジェクタ弁(42)を制御する
ように構成されている、燃料噴射システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射システム内のインジェクタ弁を動作させることができる制御方法と、とりわけ制御方法を実施するために適した燃料噴射システムとに関する。
【0002】
燃料噴射システム、例えばガソリン直噴システムは、簡略的に説明すると、燃料に高圧を印加するための燃料高圧ポンプを有すると共に、蓄圧器、いわゆるレールと、高圧が印加された燃料を内燃機関の対応する燃焼室に噴射するための少なくとも1つのインジェクタ弁とを備える高圧領域を有する。上述した構成要素は、高圧管路を介して互いに接続されている。
【0003】
燃料噴射システムを動作させるために、大抵の場合、相応のソフトウェアを有する制御装置、いわゆるECUが設けられている。制御装置によって、例えば燃料高圧ポンプの圧送出力を適合させることができる。このために、例えば燃料高圧ポンプには、例えばいわゆるデジタル吸入弁として構成され得る弁が配置されている。このデジタル吸入弁は、例えば「非通電開(常時開)」、すなわち非通電時に開弁する実施形態で設けることができるが、他の実施形態も可能であり、周知である。さらに、インジェクタ弁に必要な噴射圧力を調整するために、燃料噴射システム内に高圧センサが配置されており、この高圧センサは、通常、蓄圧器に取り付けられており、いわゆるシステム圧力を検出するために使用される。このシステム圧力は、燃料としてガソリンを使用する場合には、典型的には150バール〜500バールの範囲にあり、燃料としてディーゼルを使用する場合には、典型的には1500バール〜3000バールの範囲にある。高圧センサの信号を検出し、制御装置によって信号を処理し、デジタル吸入弁によって燃料高圧ポンプの圧送出力を変更することによる圧力調整が、一般的に実施される。燃料高圧ポンプは、通常、内燃機関自体によって、例えばカムシャフトを介した仲介によって機械的に駆動される。
【0004】
デジタル吸入弁を有する上述した燃料高圧ポンプでは、燃料高圧ポンプの圧送出力の望ましくない増加を引き起こす障害状況が生じることがある。例えばこのことは、燃料高圧ポンプの吸入弁を完全に開弁または閉弁することがもはや不可能となることによって引き起こされる可能性がある。例えば、吸入弁におけるばねの破損−または別の障害の可能性−に起因して、圧送出力を制御することがもはや不可能となるということも考えられる。
【0005】
このような障害状況では、内燃機関の回転数と、燃料噴射システム内の温度とに依存して、燃料高圧ポンプのための体積流が発生する。この場合、この体積流は、少なくとも1つのインジェクタ弁の噴射量よりも多くなることがある。例えば、内燃機関の典型的な動作状態、いわゆる惰行モードでは、インジェクタ弁を介した噴射が実施されないか、またはわずかな噴射しか実施されない。したがって、燃料高圧ポンプが過大な体積流を供給すると、燃料噴射システム内に望ましくない圧力増加が生じることとなる。
【0006】
燃料噴射システムの高圧領域内における望ましくない高圧を低減することができるようにするために、通常、圧力を限定または制限することができる機械的な安全弁、いわゆる圧力制限弁が燃料高圧ポンプに設けられている。
【0007】
圧力制限弁の典型的なp−Q特性は、蓄圧器内に、通常モード時におけるインジェクタ弁の定格圧力を上回る最大圧力が発生するように設計されている。
【0008】
障害状況の後には、燃料高圧ポンプの数回のポンプストロークの間に、高圧領域内で発生する最大圧力まで圧力が増加する。
【0009】
圧力制限弁は、多くの場合、燃料高圧ポンプの圧力室にリリーフするように構成されており、したがって、燃料高圧ポンプの供給段階の間は液圧によってブロックされている。このことは、圧力制限弁は、燃料高圧ポンプの吸入段階でのみ開弁して、高圧領域から燃料をリリーフすることができるということを意味する。このような圧力制限弁は、液圧ブロック式の圧力制限弁と呼ばれる。
【0010】
インジェクタ弁の構造的な性質に基づいて、インジェクタ弁は、多くの場合、蓄圧器内の圧力に対抗して開弁する。この場合、インジェクタ弁を開弁して噴射を開始可能にするために、内燃機関の動作状態に依存して、インジェクタ弁を制御するための制御プロファイルが使用される。
【0011】
多数のインジェクタ弁は、障害状況における最大圧力のために設計されているわけではなく、通常モードのために設計されている。これによって、高圧領域内の圧力が過度に高くなっている障害状況では、インジェクタ弁はもはや開弁することができず、したがって内燃機関は、動作することがもはや不可能となる。したがって、内燃機関によって駆動される車両が故障してしまうおそれがある。
【0012】
したがって、本発明の課題は、障害状況においても内燃機関の故障を阻止することができる、燃料噴射システム内のインジェクタ弁を制御するための制御方法と、対応する燃料噴射システムとを提案することである。
【0013】
上記の課題は、独立請求項1に記載の特徴を有する制御方法によって解決される。
【0014】
とりわけ制御方法を実施するために構成された燃料噴射システムは、さらなる独立請求項の対象である。
【0015】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0016】
内燃機関の燃料噴射システム内の少なくとも1つのインジェクタ弁を制御するための制御方法において、まず始めに、燃料噴射システムが用意され、前記燃料噴射システムは、圧力室内で動作中に下死点と上死点との間で移動する、燃料に高圧を印加するためのポンプピストンを備える高圧燃料ポンプと、前記高圧が印加された燃料を蓄えるため、かつ前記少なくとも1つのインジェクタ弁に前記高圧が印加された燃料を供給するための高圧領域とを有する。さらに、前記高圧領域内の所定の開弁圧力に達したときに前記高圧領域から前記燃料高圧ポンプの前記圧力室に燃料をリリーフする圧力制限弁が用意される。前記高圧領域内の前記所定の開弁圧力を上回っている場合に存在する、前記燃料噴射システム内の障害状況が識別される。さらに、前記ポンプピストンが前記上死点に位置するOT時点が識別され、ここから、第1のOT時点と第2のOT時点との間に4つの均等に分布された象限を有する1つの周期期間が特定される。前記インジェクタ弁の開弁時点が、前記周期期間の第2の象限および/または前記周期期間の第3の象限に亘っている開弁期間内に位置するように、前記インジェクタ弁が制御される。
【0017】
圧力制限弁は、燃料高圧ポンプの圧力室にリリーフし、したがって、燃料高圧ポンプの供給段階ではブロックされており、燃料高圧ポンプの吸入段階でのみ開弁することができる。圧力制限弁のこのような開弁特性に基づいて、高圧領域内では圧力ピークおよび圧力トラフを有する圧力振動が発生する。この場合、圧力ピークは、圧力制限弁が液圧によってブロックされているので開弁することができず、高圧領域内の高圧がさらに増加し得るという状況に対応している。圧力トラフは、燃料高圧ポンプの吸入段階に対応しており、この吸入段階では、圧力制限弁が開弁して、燃料を燃料高圧ポンプの圧力室内にリリーフすることができ、これによって燃料と、ひいては圧力とが高圧領域から取り出され、高圧領域内の圧力が低減される。ポンプピストンが上死点に移動した時点にそれぞれ対応する、2つの隣り合う圧力ピークの間の期間は、高圧領域内の圧力振動の周期期間である。この周期期間内に4つの時間的に均等に分布された象限を規定する場合、圧力トラフは、第2の象限と第3の象限との間の境界に正確に位置する。
【0018】
インジェクタ弁は、高圧領域内の高圧に対抗して開弁しなければならないように構成されている。インジェクタ弁が圧力ピークの間に開弁することを試みる場合、インジェクタ弁は、圧力トラフでの圧力よりも高い圧力に対抗して開弁しなければならない。この差は、例えば約50バールとすることができる。ここで、インジェクタ弁の開弁時点を、第2の象限および/または第3の象限に亘っている開弁期間内に位置するようにシフトさせると、開弁時点が圧力トラフの領域内に位置することとなり、これによってインジェクタ弁は、圧力ピークの領域内の圧力よりも低い圧力に対抗して開弁すればよくなる。これにより、障害状況においてもインジェクタ弁を引き続き開弁させることが可能となり、内燃機関を引き続き動作させることが可能となる。
【0019】
有利には、前記障害状況は、前記高圧領域内に配置された高圧センサによって識別される。このような高圧センサは、有利には燃料噴射システムの高圧領域内にいずれにせよ設けられており、したがって、燃料噴射システム内の障害状況を通知するために使用することができる。
【0020】
有利には、前記圧力制限弁の前記開弁圧力は、前記高圧領域内で最大限に許容可能な最大圧力よりも低く調整される。この場合、最大限に許容可能な最大圧力とは、インジェクタ弁が、この圧力に対抗してちょうどまだ開弁することができるような圧力のことであると理解されるべきである。圧力制限弁の開弁圧力を最大圧力よりも格段に低く選択すると、インジェクタ弁をさらに確実に開弁させることが可能である。前記最大圧力は、例えば500バールを上回る範囲に規定される。圧力制限弁の開弁圧力は、例えば300バール〜450バールの間の範囲とすることができ、したがって、200バール〜280バールの間の範囲にある通常モード時のインジェクタ弁の定格圧力を格段に上回ることができる。
【0021】
好ましくは、前記インジェクタ弁は、前記内燃機関による燃料要求が存在する場合にのみ開弁するように制御される。このことは、実際に燃料が必要とされる場合にのみ燃料が内燃機関の燃焼室に噴射されることを意味する。
【0022】
有利な実施形態では、前記高圧領域内の前記所定の開弁圧力を再び下回っている、前記燃料噴射システムの通常モードに再び突入したことが識別された場合に、前記インジェクタ弁の前記開弁時点が前記4つの象限のうちの任意の1つの象限内に位置するように、前記インジェクタ弁が制御される。すなわち、燃料噴射システム内で再び通常モードが有効になっている場合に、内燃機関からの燃料要求が実際に存在し、燃料が実際に必要とされる正にそのときに、インジェクタ弁が開弁される。開弁時点は、圧力振動の有利な領域にシフトされない。すなわち、燃料要求と開弁時点との間に時間遅延が存在しない。
【0023】
前記ポンプピストンが前記上死点に位置する前記OT時点を識別するために、有利には、前記上死点に前記内燃機関の所定のクランク角度を対応付けている特性マップが保存される。燃料高圧ポンプが内燃機関、とりわけ内燃機関のクランクシャフトに機械的に結合されていることに基づき、ポンプピストンの上死点の位置は既知である。このポンプピストンの上死点を特性マップに保存しておくことができ、これによって、特性マップから周期期間を容易に特定することが可能となる。
【0024】
好ましくは、前記ポンプピストンが前記上死点に位置する前記OT時点を識別するために、前記内燃機関のクランク角度が検出される。これによって、実際に存在するクランク角度のデータと、特性マップのデータとに基づいて、周期期間の特定をさらにより確実に実施することが可能となる。
【0025】
さらに有利には、前記内燃機関の少なくとも2つの動作状態が用意され、惰行モードでは、前記インジェクタ弁による前記燃焼室への燃料の噴射が実施されず、噴射モードでは、前記インジェクタ弁による前記燃焼室への燃料の噴射が少なくとも1回実施され、前記障害状況では、前記内燃機関の前記惰行モードが非作動化されて、前記内燃機関が前記噴射モードのみで動作される。
【0026】
これによって、インジェクタ弁の開弁能力をさらに支援することが可能となる。なぜなら、高圧領域内の圧力を目標通りに低減することができるからである。というのも、惰行モードでは、インジェクタ弁における燃料の取り出しがないので圧力を低減することができないからである。
【0027】
有利には、前記最大圧力よりも低く、とりわけ前記圧力制限弁の開弁圧力に相当する高圧が、前記高圧領域内で発生するような量の燃料が、前記インジェクタ弁によって噴射される。これによって、インジェクタ弁を、高圧領域内の高圧に対抗して確実に開弁させることが可能となる。
【0028】
内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射システムは、とりわけ上述した制御方法を実施するように構成されている。この場合、前記燃料噴射システムは、圧力室内で動作中に下死点と上死点との間で移動する、燃料に圧力を印加するためのポンプピストンを備える燃料高圧ポンプと、前記高圧が印加された燃料を蓄えるため、かつ高圧領域内に配置された前記少なくとも1つのインジェクタ弁に前記高圧が印加された燃料を供給するための高圧領域とを有する。さらに、前記高圧領域内の所定の開弁圧力に達したときに前記高圧領域から前記燃料高圧ポンプの前記圧力室に燃料をリリーフするように構成された、前記高圧領域内に配置された圧力制限弁が設けられている。さらに、前記燃料噴射システムは、制御装置を有し、前記制御装置は、前記高圧領域内の前記所定の開弁圧力を上回っている場合に存在する、前記燃料噴射システム内の障害状況を識別するように構成されている。さらに、前記制御装置は、前記ポンプピストンが前記上死点に位置するOT時点を識別し、第1のOT時点と第2のOT時点との間に4つの均等に分布された象限を有する1つの周期期間を特定するように構成されている。さらに、前記制御装置は、前記インジェクタ弁の開弁時点が、前記周期期間の第2の象限および/または前記周期期間の第3の象限に亘っている開弁期間内に位置するように、前記インジェクタ弁を制御するように構成されている。
【0029】
本発明の有利な実施形態を、添付の図面に基づいて以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射システムの概略図である。
【
図2】障害状況における
図1の燃料噴射システムの高圧領域内の圧力振動を示す圧力−時間−線図である。
【
図3】第1の実施形態による、障害状況における
図1の燃料噴射システムを動作させるための動作方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図4】
図3の動作方法を実施するように構成された制御装置の概略図である。
【
図5】第2の実施形態における、障害状況における
図1の燃料噴射システムを制御するための制御方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図6】
図5の制御方法を実施するように構成された制御装置の概略図である。
【
図7】燃料噴射システムの障害状況における
図1の燃料噴射システムのインジェクタ弁を制御するための制御方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図8】
図7の制御方法を実施するように構成された制御装置を示す図である。
【0031】
図1は、内燃機関の燃焼室に燃料を噴射することができる燃料噴射システム10を示す。このために燃料噴射システム10は、例えばタンクのような燃料貯蔵器12と、燃料高圧ポンプ14と、燃料高圧ポンプ14の下流に位置する高圧領域16とを有する。燃料は、燃料貯蔵器12から例えばタンクポンプ18によって低圧管路20に汲み上げられ、これにより燃料高圧ポンプ14の圧力室22へと圧送される。燃料高圧ポンプ14の圧送出力を調整することができるようにするために、低圧管路20では、圧力室22の上流にデジタル吸入弁24が接続されている。圧力室22内で燃料高圧ポンプ14によって高圧が印加される燃料量を調整するために、このデジタル吸入弁24を制御装置26によって制御することができる。燃料貯蔵器12からの燃料を浄化するために、他方では、低圧管路20内の脈動を減衰させるために、低圧管路20にはフィルタ28および減衰器30のような追加的な構成要素が配置されている。
【0032】
圧力室22内では、ポンプピストン32が往復の並進運動を行い、このときに圧力室22の容積を拡大または縮小させる。ポンプピストン32は、カムシャフト34によって並進運動を行うように駆動される。この場合、カムシャフト34は、例えば内燃機関のクランクシャフトに連結されており、したがって内燃機関自体によって駆動される。圧力室22内でポンプピストン32が移動する際には、ポンプピストン32は、圧力室22の容積が最小となる瞬間に上死点OTに達し、圧力室22の容積が最大となる瞬間に容積に下死点UTに達する。したがって、これらに対応する時点は、OT時点およびUT時点である。
【0033】
高圧が印加された燃料は、次いで、排出弁36を介して燃料高圧ポンプ14から高圧領域16に放出され、高圧管路38を介して蓄圧器40に導かれ、そして、この高圧が印加された燃料は、蓄圧器40に配置されたインジェクタ弁42によって内燃機関の燃焼室に噴射されるまで、この蓄圧器40内で蓄えられる。
【0034】
燃料高圧ポンプ14の圧送出力を調整するために、蓄圧器40内の圧力を監視する高圧センサ44が蓄圧器40に配置されている。高圧センサ44は、制御装置26に信号を送信し、次いで、制御装置26は、この信号に基づいて吸入弁24を制御することにより、蓄圧器40内の高圧を調整することができる。
【0035】
障害状況では、燃料高圧ポンプ14の圧送出力が増加して、通常モード時の調整圧力よりも格段に高い圧力が蓄圧器40内で発生する場合がある。このような状況のために、高圧管路38には圧力制限弁46が設けられており、この圧力制限弁46は、高圧領域16から燃料をリリーフし、これによって高圧領域16内の圧力を低減する。この場合、圧力制限弁46は、燃料を燃料高圧ポンプ14の圧力室22にリリーフする。圧力制限弁46は、通常、逆止弁として構成されているので、燃料高圧ポンプ14が供給段階にある場合、すなわち圧力室22内で燃料に高圧が印加される場合には、液圧によってロックされており、この場合には、排出弁36を介して高圧領域16への排出が行われる。しかしながら、燃料高圧ポンプ14が吸入段階にある場合には、ポンプピストン32は、自身の下死点UTに向かって移動し、圧力室22内の容積が解放され、圧力制限弁46が開弁されて、圧力室22に燃料をリリーフすることができる。
【0036】
この場合、開弁圧力P
oeffは、高圧領域16内で最大限に許容可能な最大圧力P
maxよりも低くなるように調整されている。なお、この最大圧力P
maxでは、インジェクタ弁42は、この高圧に対抗して開弁して、燃料を燃焼室に噴射することがぎりぎりまだ可能である。例えば、このような最大圧力P
maxは、500バールを上回っている。したがって、圧力制限弁46の開弁圧力P
oeffは、有利には300バール〜500バールの間の範囲に調整される。この範囲は、インジェクタ弁42が問題なく動作することができる通常モード時の約250バールという定格圧力を上回っている。
【0037】
例えば吸入弁24のばね破損に起因する上述したような障害状況において、またはポンプの圧送出力の調整を阻止する他の障害状況においても、燃料高圧ポンプ14は、いわゆる完全圧送の状態に陥ってしまい、妨げられることなく燃料を高圧領域16に圧送する。圧力制限弁46は、燃料高圧ポンプ14の吸入段階にしか燃料を圧力室22にリリーフすることができないので、高圧領域16内の高圧は、数回のポンプストロークの間に、発生する最大値まで増加する。
【0038】
このことを、
図2の線図を参照しながら簡単に説明する。この線図は、圧力−時間−線図であり、燃料高圧ポンプ14がポンプストロークを実施している時間tに対して、高圧領域16内の圧力pがプロットされている。
【0039】
ここで、時点t1に障害状況が発生する。見て取れるように、高圧領域16内の圧力pは、時点t1の後、時点t2に圧力制限弁46の開弁圧力P
oeffに達するまで連続的に増加する。
【0040】
この場合、
図2の線図は、燃料高圧ポンプ14が完全圧送に移行される障害状況の後の圧力増加を示す。圧力制限弁46の開弁圧力P
oeffに達する速度は、燃料高圧ポンプ14の回転数に依存しており、燃料高圧ポンプ14の回転数は、内燃機関のクランクシャフトの回転数に依存している。さらに、圧力増加は、燃料噴射システム10内の温度にも依存している。
図2には、内燃機関が惰行モードにある状況、すなわちインジェクタ弁42によって燃料が燃焼室に噴射されない動作状態にある状況が図示されている。
【0041】
圧力制限弁46は、圧力室22内の圧力が高圧領域16内の圧力よりも低い場合にしか圧力室22にリリーフすることができないので、高圧領域16内では圧力振動が発生する。この圧力振動は、圧力制限弁46のリリーフ時に高圧領域16内の高圧が低下し、その後、圧力制限弁46が液圧によってブロックされると再び増加するということを特徴としている。したがって、圧力制限弁46が液圧ブロック式の圧力制限弁として構成されていることに基づき、燃料高圧ポンプ14が供給段階にある場合には、
図2に図示された圧力ピーク48を有する特徴が発生し、燃料高圧ポンプ14が吸入段階にある場合には、
図2に図示された圧力トラフ50を有する特徴が発生する。
【0042】
したがって、燃料高圧ポンプ14の過剰圧送または完全圧送を引き起こす障害状況が発生した場合には、蓄圧器40内の最大圧力は、とりわけ惰行モードにおいて、または噴射量が少ない動作状態において、内燃機関の現在の回転数と、燃料噴射システム10内の温度とに依存して増加する。最大限に許容可能なインジェクタ開弁圧力P
maxよりも圧力が高くなると、内燃機関の失火が発生するおそれがあるか、またはそれどころか、内燃機関によって駆動される車両の故障さえも発生するおそれがある。
【0043】
インジェクタ弁42に印加される圧力が、インジェクタ弁42がまだ開弁される最大圧力P
maxを上回ることを阻止するために、以下に説明する方法を実施することができる。以下に、対抗措置として実施することができる3つの異なる方法を説明するが、これらの方法は、それぞれ個別に使用することも、または組み合わせてすることも可能である。制御装置26は、これら3つの方法のうちのそれぞれを実施するようにそれぞれ構成されている。複数の方法が同時に実施される場合には、制御装置26はそれ相応に構成されている。
【0044】
しかしながら、以下では明瞭化のために、これらの方法が個別に実施される方法であるものとして説明する。
【0045】
内燃機関の運転停止を阻止することができる第1の対抗措置は、いわゆる惰行非作動化であり、これについて
図3および
図4を参照しながら以下に説明する。
【0046】
図3は、このような惰行非作動化を実施するための動作方法のステップをフローチャートに基づいて概略的に示し、その一方で、
図4は、
図3の動作方法を実施するように構成された制御装置26を概略的に示す。
【0047】
内燃機関は、制御装置26によって少なくとも2つの動作状態で、すなわち惰行モードおよび噴射モードで動作される。惰行モードでは、インジェクタ弁42によって燃料が内燃機関の燃焼室に噴射されず、その一方で、噴射モードでは、インジェクタ弁42によって燃料が燃焼室に少なくとも一回噴射される。
【0048】
本動作方法では、第1のステップにおいて、まず始めに高圧センサ44によって高圧領域16内の圧力pが検出される。このために制御装置26は、高圧センサ44と通信する圧力検出手段52を有する。制御装置26内にはさらに、圧力制限弁46の開弁圧力P
oeffも保存されている。
【0049】
したがって、本動作方法の次のステップでは、制御装置26の障害識別手段54によって、圧力pが圧力制限弁46の開弁圧力P
oeff以上であるかどうかが判定される。これが該当する場合には、障害識別手段54は、障害状況が存在することを識別する。この場合には、内燃機関の惰行モードが、制御装置26内の惰行非作動化手段56によって非作動化される。このことは、インジェクタ弁42が内燃機関にこれ以上の燃料を噴射しないようにするインジェクタ弁42の惰行時フューエルカットオフが禁止され、ファイアドオーバーラン、すなわち内燃機関の噴射モードだけが依然として制御装置26によって許可されるということを意味している。これによって、常にある程度の燃料量がインジェクタ弁42によって吐出され、ひいては高圧領域16から取り出されることが保証される。この場合、高圧領域16内の圧力レベルは、インジェクタを開弁するための臨界である圧力P
maxを下回るように維持され、好ましくはそれどころか、圧力制限弁46の開弁圧力p
oeffの範囲に移行するまで低減される。
【0050】
したがって、燃料高圧ポンプ14の制御不能な圧送を引き起こす障害状況が識別された後には、燃料が噴射されない惰行モードが禁止され、その代わりに少なくとも少量の噴射量を行う動作状態が許可され、実施もされる。この場合、対応する機能は、制御装置26に格納されている。
【0051】
しかしながら、本動作方法において、高圧領域16内の圧力pが圧力制限弁46の開弁圧力P
oeff以上でないことが識別された場合には、障害識別手段54が、障害状況が存在しないことを識別し、内燃機関の惰行モードは、引き続き許可されたまま維持される。惰行モードの許可後と、惰行モードの非作動化後との両方において、高圧領域16内の圧力pが繰り返し検出され、圧力制限弁46の開弁圧力P
oeff以上であるかどうかがチェックされる。
【0052】
惰行モードの非作動化後に、高圧領域16内の圧力pが開弁圧力P
oeffを下回っている状況が発生すると、障害識別手段54によって、燃料噴射システム10が再び通常モードに突入したことが識別される。その場合には、惰行モードを再び作動させることができる。このことは、燃料噴射システム10内の圧力条件に応じて、機能を任意に再び取り消すことができるということを意味する。
【0053】
以上をまとめると、本動作方法によれば、内燃機関によって駆動される車両の故障の危険性が低減される。この場合、障害状況は、排気ガスには関連していない。起こり得る出力損失は、障害状況においては許容され得る。
【0054】
以下では、上述した惰行非作動化に代えてまたはこれに加えて実施することができる、燃料噴射システム10を制御するための制御方法を、
図5および
図6を参照しながら説明する。本制御方法では、ポンプピストン32に対するカムシャフト34のカムシャフト角度が、燃料噴射システム10に設けられたカムシャフト調節器58によって目標通りに調節される。
【0055】
カムシャフト34は、カムシャフト軸線60を中心にして回転し、規則的な間隔でカム62がポンプピストン32に接触して、ポンプピストン32が上死点OTに向かって移動する。カムシャフト34がさらに回転すると、カム62は再びポンプピストン32から遠ざかり、ポンプピストン32が下死点UTの方向に移動する。したがって、カム62によって動かされるポンプピストン32は、周期的な間隔で交互に上死点OTおよび下死点UTに位置する。しかしながら、ここで、カムシャフト34の動作中にポンプピストン32とカムシャフト34との間の角度を調節すると、2つの連続する上死点OTの間の間隔は、例えば
図2の線図に図示されているように均一にはもはやならず、上死点OTのOT時点が変化することとなる。
【0056】
カムシャフト34の角度の調節を、制御装置26によって、制御装置26に配置されたカム角度調節手段64を介して誘導することもできる。
【0057】
例えば、インジェクタ弁42のための開弁時点t
oeffが制御装置26内の開弁時点設定手段66によって設定されることにより、インジェクタ弁42が燃焼室への燃料の噴射を開始する噴射時点t
Iが既知である場合には、この噴射時点t
Iが、
図2に示された圧力トラフに位置するように、カムシャフト角度調節手段64によってカムシャフト34を調節することができる。
【0058】
このために、
図5のフローチャートによれば、まず始めに高圧領域16内の圧力振動の周期期間t
pが特定される。この周期期間t
pは、ポンプピストン32が第1の上死点OTに達する時点と、次の回にポンプピストン32が上死点に達する時点との間の期間に相当する。燃料高圧ポンプ14が内燃機関に機械的に結合されていることに基づき、カムシャフト34の位置と、ひいてはポンプピストン32の上死点OTとは既知であり、制御装置26内の第1の特性マップK1に保存されている。特性マップK1は、それぞれのクランク角度にポンプピストン32の位置を対応付けている。制御装置26にはさらに、クランク角度検出手段68が配置されており、このクランク角度検出手段68によって制御装置26は、目下のクランク角度を検出することができる。したがって、OT識別手段70は、第1の特性マップK1のデータと、クランクシャフト検出手段68のデータとから、ポンプピストン32が上死点OTに位置する時点を識別することができる。この情報は、評価手段72に供給され、この評価手段72は、制御装置26に配置されており、この情報から周期期間t
pを特定する。評価手段72はさらに、周期期間t
pを、4つの均等に分布された象限Q1,Q2,Q3,およびQ4に分割する。
【0059】
その後、本制御方法でも、惰行非作動化と同様に、燃料噴射システム10内に障害状況が存在するかどうかが識別される。障害状況が存在する場合には、燃料要求識別手段74が、内燃機関からの燃料要求が存在するかどうか、すなわちインジェクタ弁42による噴射が必要とされているかどうかを識別するまで、まず始めに待機される。これが該当する場合には、まず始めに噴射時点t
Iが任意の時点に設定される。その後、予め設定された噴射時点t
Iが、
図2の圧力振動の圧力トラフにくるように、すなわち第2の象限Q2または第3の象限Q3の期間内にくるように、カムシャフト角度調節手段64によって駆動されるカムシャフト調節器58によってポンプピストン32に対するカムシャフト34の角度が調節される。
【0060】
しかしながら、燃料要求が存在しない場合には、インジェクタ弁42による噴射は実施されない。
【0061】
カムシャフト角度を目標通りに調節することができるようにするために、制御装置26内に第2の特性マップK2が保存されている。第2の特性マップは、ポンプピストン32に対するカムシャフト34のそれぞれのカムシャフト角度に、ポンプピストン32が上死点OTに位置する所定の時点を対応付けている。制御装置26にはさらに、現在のカムシャフト角度を記憶する記憶手段76が配置されている。カムシャフト角度を目標通りに調節することができるようにするために、特性マップK2と、記憶手段76のデータとが、カムシャフト角度調節手段64に供給される。カムシャフト角度調節手段64はさらに、インジェクタ弁42による噴射を開始すべき時点に関する情報、すなわち設定されている噴射時点t
Iに関する情報が存在する場合にのみ、カムシャフト調節器58に信号を出力する。カムシャフト調節器58は、実際に障害状況が存在する場合にのみ、カムシャフト34の角度を調節し、この場合、カムシャフト角度調節手段64には、圧力トラフ50が目下位置している場所に関する評価手段72の情報が、追加的に供給される。
【0062】
障害識別手段54が、障害状況が存在しないことを識別し、燃料要求識別手段74が、内燃機関によって燃料が要求されていることを検出した場合には、インジェクタ弁42によって燃料が完全に正常にそれぞれの燃焼室に噴射される。しかしながら、燃料要求が存在しない場合には、インジェクタ弁42は開弁されない。
【0063】
噴射時点t
Iを圧力トラフ50に移動させるためにカムシャフト角度が調節される本方法もまた、連続的に実施され、これにより、燃料噴射システム10が再び通常モードに突入したかどうか、高圧領域16内の圧力pが再び開弁圧力P
oeffを下回っているかどうかが識別される。この場合には、カムシャフト34の調節は、設定されている噴射時点t
Iに基づいて終了される。
【0064】
したがって、角度調節器を有するカムシャフト34を介して、すなわち液圧動作式または電気動作式のいわゆるカムシャフト調節器58を有するカムシャフト34を介して、燃料高圧ポンプ14が機械的に駆動される場合には、障害状況が識別されると、噴射開始、すなわち噴射時点t
Iが負の振幅にくるように、すなわち
図2のレール圧力振動の圧力トラフ50にくるように、カムシャフト調節器58によってカムシャフト34が調節される。これによってインジェクタ弁42は、蓄圧器40内の平均圧力がインジェクタを開弁するための臨界である圧力P
maxを上回っている場合であっても、依然として開弁することが可能となる。したがって、インジェクタ弁42の噴射開始が、圧力的に有利な領域、すなわち圧力トラフに移動されるように、カムシャフト調節器58によってカムシャフト34を調節できるようにする機能が提案される。この機能もまた、制御装置26内に保存されており、燃料噴射システム10内の圧力条件に応じて任意に再び取り消すことができる。
【0065】
以下では、
図7および
図8を参照しながら、燃料噴射システム10の障害状況においてもインジェクタ弁42の開弁を可能なまま維持することが求められる第3の方法について説明する。この方法は、惰行非作動化に加えて、およびカムシャフト34の調整に代えて、実施することができる。ここでも、圧力ピーク48の間に開弁することを試みるインジェクタ弁42は、圧力トラフ50において開弁を実施する場合よりも高い圧力に対抗して開弁を実施しなければならない、という現象が利用される。圧力ピーク48と圧力トラフ50との間の差は、システムに依存しており、例えば50バールとすることができる。
【0066】
それぞれのインジェクタ弁42が圧力トラフ50において開弁する場合には、内燃機関が動作可能な温度範囲および回転数範囲は、圧力ピーク48の間における噴射に比べて拡大する。これに代えて、より低コストでよりロバストな構成の圧力制限弁46を使用することもでき、その結果として最大圧力P
maxがより高くなり、場合によっては内燃機関の同等の動作を有することができる。
【0067】
既に説明したように、高圧領域16内の圧力ピーク48は、燃料高圧ポンプ14の上死点OTと相関しており、この場合、排出弁36から燃料噴射システム10を通る燃料の所要時間も込みで考慮すべきである。燃料高圧ポンプ14が内燃機関に機械的に結合されていることに基づき、上死点OTの位置は既知である。他の方法の場合と同様に、高圧センサ44によって高圧領域16内の望ましくない高圧が検出されることにより、障害状況が識別される。
【0068】
インジェクタ弁42の噴射開始は、特性マップとして制御装置26内に保存されている。
【0069】
カムシャフト角度を調節するための方法の場合と同様に、ポンプピストン32の2つのOT時点の間の周期期間t
pが特定され、この周期期間t
pが、大きさの等しい4つの象限Q1〜Q4に分割される。次いで、インジェクタ弁42の開弁時点T
oeffが、第2の象限Q2および第3の象限Q3に亘っている開弁期間内に位置するように、インジェクタ弁42が制御される。このことは、カムシャフト34が調節されることを意味するのではなく、インジェクタ弁42の開弁時点T
oeffが能動的にシフトされるということを意味する。開弁時点T
oeffを、しかも障害状況が検出された後にのみ、圧力トラフ50へとシフトさせることによって、上述した利点を利用することが可能となる。内燃機関の動作中における開弁時点T
oeffのシフトは、排気には関連していない。なぜなら、障害状況であるからである。
【0070】
したがって、本方法では、カムシャフト34の調節の場合と同様に、まず始めに周期期間t
pが特定され、その後、障害状況が存在するか否かが識別される。
【0071】
ここでも、インジェクタ弁42は、内燃機関の燃料要求が実際に存在する場合にのみ制御される。これが該当する場合には、開弁期間T
oeffが、周期期間t
pの第2の象限Q2または第3の象限Q3へとシフトされる。しかしながら、燃料要求が存在しない場合には、噴射は実施されない。
【0072】
開弁時点T
oeffがシフトされた後には、燃料噴射システム10が引き続き障害状況にあるかどうかが再びチェックされる。なぜなら、ここでも、燃料噴射システム10が再び通常モードに突入した場合には、機能を任意に再び取り消すことができるからである。この場合、周期期間t
pにおける噴射は、内燃機関による燃料要求の直後に、任意に4つの象限Q1〜Q4のうちの1つにおいて実施される。
【0073】
したがって、高圧領域16内の圧力増加が付随する障害状況が検出された後に、通常モードのためのインジェクタ弁42の既存の開弁時点T
oeffを、内燃機関の緊急運転のためにより最適な領域へとシフトさせる機能が、制御装置26内に格納されている。このために、例えばインジェクタ弁42の開弁時点T
oeffを、圧力トラフに位置するようにシフトさせる開弁時点設定手段66の形態で、対応する特性マップを制御装置26内に保存することができる。特性マップは、内燃機関の圧力および/または温度および/または回転数に基づいて任意に構成することができる。
【0074】
開弁時点T
oeffのシフトは、システム内の圧力条件に応じて任意に再び取り消すことができる。