【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、本発明により、スパイラル原理による容積移送式機械に関しては請求項1の対象により、容積移送式機械を駆動するための方法に関しては請求項13又は14の対象により、車両空調設備に関しては請求項17の対象により、及び車両に関しては請求項19及び/又は請求項20の対象により解決される。
【0006】
スパイラル原理による本発明による容積移送式機械、又は容積移送式機械若しくは本発明による車両空調設備を駆動するための本発明による方法の有利で目的に適った構成が従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明の思想は、高圧室と、低圧室と、周回する容積移送式スパイラルとを有し、容積移送式スパイラルは、容積移送式スパイラルと対向スパイラルとの間に作動媒体を受容するための圧縮室が形成されるように対向スパイラル内に突入係合している、スパイラル原理による容積移送式機械、特にスクロール圧縮機又はスクロール膨張機を提示することである。低圧室と容積移送式スパイラルとの間には背圧室が形成されている。
【0008】
本発明により、演算器によって指定された目標値を用いて背圧室と低圧室との間の差圧を調整する、背圧室と流体接続している圧力制御装置が形成されている。そうすることにより圧力制御装置及び演算器によって指定された目標値を用いて、背圧室内の圧力を可変動作点に調整できる。
【0009】
本発明の一実施態様において、容積移送式スパイラルと対向スパイラルとの間に半径方向内方に移動するチャンバが形成されて、低圧室から作動媒体、特に冷媒を受容し、特に吸い込んで圧縮し、高圧室内に吐き出す。本発明のこの実施態様では、容積移送式機械は特にスクロール圧縮機として働く。この容積移送式機械は、換言すればスクロールコンプレッサである。
【0010】
本発明の別の実施態様において、容積移送式スパイラルと対向スパイラルとの間に半径方向外方に移動するチャンバが形成されて、作動媒体、特に作動流体、特に熱媒を高圧室から受容して膨張させ、低圧室内に押し出す。本発明のこの図示された実施態様によれば、スパイラル原理による容積移送式機械は、特にスクロール膨張機として働く。スクロール膨張機との関連で述べる作動形態若しくはプロセスはクラウジウス・ランキン・プロセスと呼ぶこともできる。本発明による容積移送式機械を用いて実施可能なプロセスは、有機ランキン・サイクル(ORC)としても知られており、有機成分は例えばエタノールであることができる。
【0011】
圧力制御装置は好ましくは電気的に操作可能な制御弁を含んでいる。さらに、圧力制御装置は、電気的に操作可能な制御弁並びにスロットルを含んでいることが可能である。電気的に操作可能な制御弁は背圧室を高圧室又は低圧室と流体接続することが可能である。換言すれば、背圧室は容積移送式機械の構成に応じて電気的に操作可能な制御弁によって高圧室か、又は低圧室と流体接続している。
【0012】
電気的に操作可能な制御弁は、電磁的に操作できる摺動可能なニードル弁体を含んでいることが好ましい。摺動可能なニードル弁体は摺動可能なプランジャーと呼ぶこともできる。摺動可能なニードル弁体は電気的に操作可能な制御弁のハウジングに対して、例えば円環を調整でき、この円環によって背圧室から高圧室への流体接続又は背圧室から低圧室への流体接続が形成されている。ニードル弁体は好ましくは磁気コイル内に配置されており、磁気コイルに作用する制御電流によりニードル弁体に及ぼす電磁力が調整可能である。
【0013】
本発明の一実施態様において、電気的に操作可能な制御弁は、制御弁が背圧室と低圧室とを流体接続するように容積移送式機械内に配置されており、高圧室と背圧室との間には圧力制御装置に包囲されたスロットルが配置されている。
【0014】
本発明のこの実施態様において、容積移送式機械をスクロール圧縮機として構成した場合にスロットルの作用によって、高圧室から背圧室に流入する作動媒体は最初に圧力に関して低下する。作動媒体は背圧室から出て電気的に操作可能な制御弁によって低圧室に流入する。
【0015】
本発明の別の及び/又は代替的な実施態様において電気的に操作可能な制御弁は、当該制御弁が高圧室と背圧室を流体接続するように配置されており、背圧室と低圧室との間にはスロットルが配置されている。
【0016】
容積移送式機械がスクロール圧縮機として形成されている場合、電気的に操作可能な制御弁によって高圧室と背圧室との間に流体接続が生じて、作動媒体は高圧室から背圧室に流入できる。電気的に操作可能な制御弁を用いて、特に摺動可能なニードル弁体とハウジング部分との間の円環を調整することにより、作動媒体の高圧側から背圧室への流入を調整できる。
【0017】
好ましくは、容積移送式スパイラルは軸方向で対向スパイラルに対して相対的に可動である。そのため周回する、つまり回動可能な容積移送式スパイラルは、軸方向で追加的に可動である。この場合に容積移送式スパイラルは対向スパイラルに向かい、及び対向スパイラルから離れる方向に動くことができる。対向スパイラルは容積移送式機械内に完全に固定して組み込まれていることが好ましい。換言すれば、対向スパイラルは軸方向で移動することも回動することもできない。
【0018】
容積移送式スパイラルから対向スパイラルに軸方向で作用する押圧力は、背圧室内に存在する圧力により調整可能であることが好ましい。換言すれば、容積移送式スパイラルから軸方向で対向スパイラルに作用する力は、好ましくは背圧室内に存在する圧力によって引き起こされる。容積移送式スパイラルから対向スパイラルに軸方向で作用する押圧力は、調整できる。
【0019】
本発明による容積移送式機械は、電気的及び/又は電磁的に駆動される容積移送式機械、又は機械的駆動装置を有する容積移送式機械として構成され得る。
【0020】
作動媒体は、例えばCO
2及び/又はR134a及び/又はR1234yf及び/又はブタン及び/又はエタノール及び/又はシクロペンタンであることができる。
【0021】
本発明の従属的な態様は、容積移送式機械を駆動するための、特に上述したような本発明による容積移送式機械を駆動するための方法に関する。本発明により容積移送式機械を駆動するための方法は、
a)容積移送式機械の高圧領域又は容積移送式機械が組み込まれているシステムの高圧領域における圧力値P
Dを求めるステップと、
b)求めた圧力値P
Dと圧力値P
Sを演算器に転送するステップと、
c)求めた圧力値P
Dと圧力値P
Sを用いて特性曲線及び/又は特性図に基づき、背圧室内に存在する背圧P
BPと低圧室内に存在する低圧P
Sとの間の差圧値ΔP
BPを確定するステップであって、特性曲線及び/又は特性図は演算器に保存されている、ステップと、
d)磁気コイルに印加される制御電流により圧力制御装置、特に電気的に操作可能な制御弁を操作して、差圧値ΔP
BPを電気的制御弁によって自動調節するステップとを含む。
【0022】
容積移送式機械の高圧領域とは、例えば容積移送式機械の高圧室であってよい。代替的及び/又は追加的に、圧力値P
Dを容積移送式機械が組み込まれているシステム、例えば空調設備及び/又は車両の高圧領域で求め若しくは測定することが考えられる。本発明による容積移送式機械は、上述した方法に従い、高圧領域、特に高圧室は高圧室内の圧力値を検出するためのセンサを有する。
【0023】
求めた圧力値P
Dに基づいて特性曲線及び/又は特性図によって差圧値ΔP
BPを確定できる。換言すれば、特性曲線及び/又は特性図で求めた圧力値P
Dに理想的な若しくは調整されるべき差圧値ΔP
BPが割り当てられている。差圧値ΔP
BPは、背圧室と低圧室との間に形成されている。
【0024】
換言すれば、求めた圧力値を用いて圧力制御装置、特に電気的に操作可能な制御弁が操作される。このために特に電気的に操作可能な制御弁の磁気コイルが励磁される。これは好ましくは、演算器内の特性曲線及び/又は特性図に保存されて磁気コイルに印加される制御電流によって行われる。
【0025】
求めた圧力値P
Dと関係のある制御電流を磁気コイルに印加することにより、確定された差圧値ΔP
BPが自動的に電気的制御弁によって調節され得ることが可能である。
【0026】
電気的に操作可能な制御弁とは、好ましくは機械的に自動制御する弁である。この機械的な自動制御は平衡した圧力収支に基づき、若しくは換言すれば補償された力の平衡によって行われる。
【0027】
確定された差圧値ΔP
BPとそれに伴う確定された制御電流を用いて、電磁力は電気的に操作可能な制御弁のニードル弁体に調節される。ニードル弁体にはばね力及び背圧室の力若しくは圧力と並んで、磁気コイルを通して電磁力も作用する。本発明による容積移送式機械を駆動するための方法は、図示された実施態様により、何よりも背圧室と低圧室とを流体接続する電気的に操作可能な制御弁を有する容積移送式機械に応用される。これによりニードル弁体には圧力若しくは低圧室の力も作用する。
【0028】
磁気コイルに負荷される制御電流に基づいて、低圧室の力と背圧室の力に対抗する電磁力が調節される。平衡した力の収支を達成するために、電気的に操作可能な制御弁は背圧室の力を低圧室の圧力に応じて自動的に調節する。制御弁のニードル弁体とハウジング部分との間に環状面として形成される貫流断面は、電気的に操作可能な制御弁によって自動的に調節される。換言すれば、低圧室の圧力と背圧室の圧力との間の貫流断面は、電気的に操作可能な制御弁によって自動的に調節される。
【0029】
本発明の別の従属的な態様は、容積移送式機械、特に上述したような本発明による容積移送式機械を駆動するための方法に関する。本発明による方法は、
容積移送式機械、特に請求項1から12のいずれか1項に記載の容積移送式機械を駆動するための方法において、
a)容積移送式機械の高圧領域、又は容積移送式機械が組み込まれているシステムの高圧領域における圧力値P
Dと、容積移送式機械の低圧室における圧力値P
Sとを求めるステップと、
b)求めた圧力値P
Dと圧力値P
Sを演算器に転送するステップと、
c)求めた圧力値P
Dと圧力値P
Sを用いて特性曲線及び/又は特性図に基づき、背圧室内に存在する背圧P
BPと低圧室内に存在する低圧P
Sとの間の差圧値ΔP
BPを確定するステップであって、特性曲線及び/又は特性図は演算器に保存されている、ステップと、
d)磁気コイルに印加される制御電流により圧力制御装置、特に電気的に操作可能な制御弁を操作して、差圧値ΔP
BPを電気的制御弁によって自動調節するステップとを含む。
【0030】
この本発明による方法は、好ましくは高圧室と背圧室とを流体接続する電気的に操作可能な制御弁を有する本発明による容積移送式機械を用いて実施され、背圧室と低圧室との間にスロットルが配置されている。容積移送式機械の高圧領域で求める圧力値P
Dは、例えば容積移送式機械の高圧室内で求めることができる。代替的及び/又は追加的に、圧力値P
Dを容積移送式機械が組み込まれているシステム、例えば車両及び/又は空調設備の高圧領域で求めることが可能である。
【0031】
これに関して付属している本発明による容積移送式機械は、容積移送式機械の高圧領域、特に容積移送式機械の高圧室内に圧力値P
Dを検出するための圧力センサを有する。圧力値P
Dとは、好ましくは容積移送式機械内に存在する高圧若しくは容積移送式機械が組み込まれているシステムの周囲に存在する高圧である。
【0032】
低圧室内で測定される圧力P
Sに関して、本発明による容積移送式機械は低圧室内に、低圧P
Sを検出する圧力センサを有している。したがって低圧P
Sとは、低圧室内に存在する低圧である。
【0033】
求めた圧力値P
DとP
Sを用いて、即ち低圧P
Sに関して求めた値と高圧P
Dに関して求めた値とを用いて差圧値ΔP
BPが確定される。確定された差圧値ΔP
BPは、圧力制御装置、特に電気的に操作可能な制御弁の磁気コイルに負荷される確定された制御電流と関連している。制御弁にはばね力、背圧室の力若しくは圧力、並びに高圧室の力若しくは圧力が作用する。さらにこの電気的に操作可能な制御弁には磁気コイルの電磁力が作用し、その電磁力は制御電流によって調整可能である。
【0034】
容積移送式機械を駆動するための従属的な両方法との関連で、圧力制御装置、特に電気的に操作可能な制御弁を操作する際に、確定された差圧値ΔP
BPが、弁要素、特に磁気コイル内に配置されているニードル弁体を操作するための電流強度に対応しているようにすることができる。
【0035】
弁要素の磁気コイルは、好ましくは電流強度によって負荷されて、ニードル弁体に作用する電磁力が調整される。
【0036】
本発明による容積移送式機械を駆動するための方法を用いて、背圧室内の圧力を可変な動作点に調整することが可能である。圧力は指定により非常に正確に調整できる。このことは特に背圧室と低圧室との間の差圧値の調節によって行われる。
【0037】
本発明の別の従属的な態様は、本発明による容積移送式機械、特に本発明によるスクロール圧縮機を有する車両空調設備に関する。既に本発明による容積移送式機械及び/又は本発明による容積移送式機械を駆動するための方法との関連で記述したのと同様の利点が得られる。
【0038】
車両空調設備は冷媒を含んでおり、この冷媒は例えばCO
2及び/又はR134a及び/又はR1234yf及び/又はブタン及び/又はエタノール及び/又は水である。
【0039】
冷媒として特にハイドロフルオロカーボン(HFC)を使用できる。R134aは典型的なヒドロフルオロカーボンである。さらにハイドロフルオロオレフィン(HFO)を冷媒として使用することが可能である。これに関して例としてR1234yfの参照を求める。ハイドロカーボン(HC)も冷媒として車両空調設備に使用できる。典型的なハイドロカーボンはプロパン若しくはブタンである。同様に挙げたCO
2、エタノール若しくは水は独自の作動媒体である。
【0040】
本発明の別の従属的態様は、本発明による容積移送式機械及び/又は本発明による車両空調設備を有する車両、特にハイブリッド車両に関する。既に本発明による容積移送式機械及び/又は本発明による容積移送式機械を駆動するための方法との関連で、及び/又は本発明による車両空調設備との関連で提示されたのと同様の利点が明らかとなる。特に本発明による車両は、電気ハイブリッド車両である。
【0041】
本発明の別の従属的な態様は、本発明による容積移送式機械、特に発明によるスクロール膨張機を有する車両、特にトラックに関する。既に本発明による容積移送式機械及び/又は本発明による容積移送式機械を駆動するための方法との関連で提示されたのと同様の利点が明らかとなる。トラックの分野においてスクロール膨張機は、好ましくは排気回収若しくはエネルギー回収との関連で使用される。この場合、機械的駆動装置を有するスクロール膨張機も、電気的及び/又は電磁的に駆動されるスクロール膨張機も使用することが可能である。
【0042】
以下に本発明を添付の概略図面を参照して実施態様に基づいて詳細に説明する。