特許第6643469号(P6643469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643469スパイラル原理による容積移送式機械、容積移送式機械を駆動するための方法、車両空調設備及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643469
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】スパイラル原理による容積移送式機械、容積移送式機械を駆動するための方法、車両空調設備及び車両
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20200130BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20200130BHJP
   F01C 1/02 20060101ALI20200130BHJP
   F01C 21/08 20060101ALI20200130BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20200130BHJP
   F25B 1/04 20060101ALI20200130BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20200130BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   F04C18/02 311X
   F04C18/02 311J
   F04B39/00 A
   F01C1/02 A
   F01C21/08
   F16K31/06 330
   F25B1/04 Y
   F25B1/00 396D
   F25B1/00 396H
   F25B1/00 396A
   F04C29/00 U
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-518680(P2018-518680)
(86)(22)【出願日】2016年11月18日
(65)【公表番号】特表2019-504231(P2019-504231A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】EP2016078141
(87)【国際公開番号】WO2017085256
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2018年5月28日
(31)【優先権主張番号】102015120151.8
(32)【優先日】2015年11月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516382847
【氏名又は名称】オーエーテー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ロマン レッサー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュメルツル
(72)【発明者】
【氏名】ウーベ ブイツ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ブッシュ
(72)【発明者】
【氏名】フランク オブリスト
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102013020762(DE,A1)
【文献】 特開2006−214379(JP,A)
【文献】 特開2005−140016(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102013021250(DE,A1)
【文献】 特開2010−150967(JP,A)
【文献】 特開2014−228002(JP,A)
【文献】 特開2010−185299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04B 39/00
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル原理による容積移送式機械あって、高圧室(40)と、低圧室(30)と、圧力制御装置(60)と、周回する容積移送式スパイラル(31)とを有しており、容積移送式スパイラル(31)は、容積移送式スパイラル(31)と対向スパイラル(32)との間に作動媒体を受容するためのチャンバが形成されるように対向スパイラル(32)内に突入係合しており、低圧室(30)と容積移送式スパイラル(31)との間に背圧室(50)が形成されており、さらに背圧室(50)と流体接続している圧力制御装置(60)は、演算器(80)によって指定された目標値を用いて背圧室(50)と低圧室(30)との間の差圧を調整し、作動媒体はCO2及び/又はR134a及び/又はR1234yf及び/又はブタン及び/又はエタノール及び/又はシクロペンタンであり、圧力制御装置(60)は電気的に操作可能な制御弁(61)とスロットル(62)を含んでおり、電気的に操作可能な制御弁(61)は電磁的に操作できる摺動可能なニードル弁体(64)を含んでいる、容積移送式機械。
【請求項2】
容積移送式スパイラル(31)と対向スパイラル(32)との間に半径方向内方に移動するチャンバが形成されており、低圧室(30)から作動媒体吸い込んで圧縮して高圧室(40)内に吐き出すことを特徴とする、請求項1に記載の容積移送式機械。
【請求項3】
容積移送式スパイラル(31)と対向スパイラル(32)との間に半径方向外方に移動するチャンバが形成されており、高圧室(40)から作動媒体受容し、膨張させて低圧室(30)内に押し出すことを特徴とする、請求項1に記載の容積移送式機械。
【請求項4】
電気的に操作可能な制御弁(61)が背圧室(50)を高圧室(40)又は低圧室(30)と流体接続することを特徴とする、請求項に記載の容積移送式機械。
【請求項5】
電気的に操作可能な制御弁(61)が背圧室(50)と低圧室(30)とを流体接続しており、高圧室(40)と背圧室(50)との間にスロットル(62)が配置されていることを特徴とする、請求項のいずれか1項に記載の容積移送式機械。
【請求項6】
電気的に操作可能な制御弁(61)が高圧室(40)と背圧室(50)とを流体接続しており、背圧室(50)と低圧室(30)との間にスロットル(62)が配置されていることを特徴とする、求項1〜のいずれか1項に記載の容積移送式機械。
【請求項7】
容積移送式スパイラル(31)は軸方向で対向スパイラル(32)に対して相対的に可動であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の容積移送式機械。
【請求項8】
容積移送式スパイラル(31)から対向スパイラル(32)に軸方向で作用する押圧力は、背圧室(50)内に存在する圧力によって調整可能であることを特徴とする、請求項に記載の容積移送式機械。
【請求項9】
電気的及び/又は電磁的に駆動される容積移送式機械又は機械的駆動装置を有する容積移送式機械として構成することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の容積移送式機械。
【請求項10】
求項1〜のいずれか1項に記載の容積移送式機械を駆動するための方法において、
前記方法は、
a)容積移送式機械の高圧領域、又は容積移送式機械が組み込まれているシステムの高圧領域における圧力値PDを求めるステップと、
b)求めた圧力値PDを演算器(80)に転送するステップと、
c)求めた圧力値PDを用いて特性曲線及び/又は特性図(81)に基づき、背圧室(50)内に存在する背圧PBPと低圧室(30)内に存在する低圧PSとの間の差圧値ΔPBPを確定するステップであって、特性曲線及び/又は特性図(81)は演算器(80)に保存されている、ステップと、
d)磁気コイル(63)に印加される制御電流により気的に操作可能な制御弁(61)を操作して、差圧値ΔPBP電気的に操作可能な制御弁(61)によって自動調節するステップと、を含む方法。
【請求項11】
求項1からのいずれか1項に記載の容積移送式機械を駆動するための方法において、
前記方法は、
a)容積移送式機械の高圧領域、又は容積移送式機械が組み込まれているシステムの高圧領域における圧力値PDと、容積移送式機械の低圧室(30)における圧力値PSとを求めるステップと、
b)求めた圧力値PDと圧力値PSを演算器(80)に転送するステップと、
c)求めた圧力値PDと圧力値PSを用いて特性曲線及び/又は特性図(81)に基づき、背圧室(50)内に存在する背圧PBPと低圧室(30)内に存在する低圧PSとの間の差圧値ΔPBPを確定するステップであって、特性曲線及び/又は特性図(81)は演算器(80)に保存されている、ステップと、
d)磁気コイル(63)に印加される制御電流により気的に操作可能な制御弁(61)を操作して、差圧値ΔPBP電気的に操作可能な制御弁(61)によって自動調節するステップと、を含む方法。
【請求項12】
気的に操作可能な制御弁(61)を操作する際に、確定された差圧値ΔPBPは、気コイル(63)内に配置されているニードル弁体(64)を操作するための電流強度に対応していることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
気的に操作可能な制御弁(61)の磁気コイル(63)が電流強度によって負荷されて、ニードル弁体(64)に作用する電磁力が調整されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜のいずれか1項に記載の容積移送式機械有する車両空調設備。
【請求項15】
車両空調設備がCO2及び/又はR134a及び/又はR1234yf及び/又はブタン及び/又はエタノール及び/又は水を冷媒として含んでいることを特徴とする、請求項14に記載の車両空調設備。
【請求項16】
請求項1〜のいずれか1項に記載の容積移送式機械は請求項14又は15に記載の車両空調設備を有する車
【請求項17】
請求項1〜のいずれか1項に記載の容積移送式機械有する車
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイラル原理による容積移送式機械、特にスクロール圧縮機又はスクロール膨張機であって、高圧室と、低圧室と、周回する容積移送式スパイラルとを有しており、容積移送式スパイラルは、容積移送式スパイラルと対向スパイラルとの間に作動媒体を受容するためのチャンバが形成されるように対向スパイラル内に突入係合しており、低圧室と容積移送式スパイラルとの間に背圧室が形成されているものに関する。さらに本発明は、容積移送式機械、特に本発明による容積移送式機械を駆動するための方法に関する。さらに本発明は、本発明による容積移送式機械を有する車両空調設備並びに車両に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機及び/又はスクロール膨張機は、先行技術により十分知られている。これらは高圧室、低圧室及び周回する容積移送式スパイラルを含んでいる。周回する容積移送式スパイラルは、ある特許文献に記載されているように、容積移送式スパイラルと対向スパイラルとの間に作動媒体を受容するためのチャンバが形成されるように対向スパイラル内に突入係合している(例えば、特許文献1参照。)。低圧室と容積移送式スパイラルとの間には受容室、即ち背圧室が形成されている。そのような背圧室は、バックプレッシャー室という概念でも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2806164A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、背圧室内の圧力を可変な動作点に調整でき及び/又は極めて極端に調整できるように改良することである。本発明の課題はさらに、スパイラル原理による容積移送式機械を駆動するための改良された方法を提示することである。さらに課題は、スパイラル原理による改良された容積移送式機械を有する車両空調設備及び/又は車両を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、本発明により、スパイラル原理による容積移送式機械に関しては請求項1の対象により、容積移送式機械を駆動するための方法に関しては請求項13又は14の対象により、車両空調設備に関しては請求項17の対象により、及び車両に関しては請求項19及び/又は請求項20の対象により解決される。
【0006】
スパイラル原理による本発明による容積移送式機械、又は容積移送式機械若しくは本発明による車両空調設備を駆動するための本発明による方法の有利で目的に適った構成が従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明の思想は、高圧室と、低圧室と、周回する容積移送式スパイラルとを有し、容積移送式スパイラルは、容積移送式スパイラルと対向スパイラルとの間に作動媒体を受容するための圧縮室が形成されるように対向スパイラル内に突入係合している、スパイラル原理による容積移送式機械、特にスクロール圧縮機又はスクロール膨張機を提示することである。低圧室と容積移送式スパイラルとの間には背圧室が形成されている。
【0008】
本発明により、演算器によって指定された目標値を用いて背圧室と低圧室との間の差圧を調整する、背圧室と流体接続している圧力制御装置が形成されている。そうすることにより圧力制御装置及び演算器によって指定された目標値を用いて、背圧室内の圧力を可変動作点に調整できる。
【0009】
本発明の一実施態様において、容積移送式スパイラルと対向スパイラルとの間に半径方向内方に移動するチャンバが形成されて、低圧室から作動媒体、特に冷媒を受容し、特に吸い込んで圧縮し、高圧室内に吐き出す。本発明のこの実施態様では、容積移送式機械は特にスクロール圧縮機として働く。この容積移送式機械は、換言すればスクロールコンプレッサである。
【0010】
本発明の別の実施態様において、容積移送式スパイラルと対向スパイラルとの間に半径方向外方に移動するチャンバが形成されて、作動媒体、特に作動流体、特に熱媒を高圧室から受容して膨張させ、低圧室内に押し出す。本発明のこの図示された実施態様によれば、スパイラル原理による容積移送式機械は、特にスクロール膨張機として働く。スクロール膨張機との関連で述べる作動形態若しくはプロセスはクラウジウス・ランキン・プロセスと呼ぶこともできる。本発明による容積移送式機械を用いて実施可能なプロセスは、有機ランキン・サイクル(ORC)としても知られており、有機成分は例えばエタノールであることができる。
【0011】
圧力制御装置は好ましくは電気的に操作可能な制御弁を含んでいる。さらに、圧力制御装置は、電気的に操作可能な制御弁並びにスロットルを含んでいることが可能である。電気的に操作可能な制御弁は背圧室を高圧室又は低圧室と流体接続することが可能である。換言すれば、背圧室は容積移送式機械の構成に応じて電気的に操作可能な制御弁によって高圧室か、又は低圧室と流体接続している。
【0012】
電気的に操作可能な制御弁は、電磁的に操作できる摺動可能なニードル弁体を含んでいることが好ましい。摺動可能なニードル弁体は摺動可能なプランジャーと呼ぶこともできる。摺動可能なニードル弁体は電気的に操作可能な制御弁のハウジングに対して、例えば円環を調整でき、この円環によって背圧室から高圧室への流体接続又は背圧室から低圧室への流体接続が形成されている。ニードル弁体は好ましくは磁気コイル内に配置されており、磁気コイルに作用する制御電流によりニードル弁体に及ぼす電磁力が調整可能である。
【0013】
本発明の一実施態様において、電気的に操作可能な制御弁は、制御弁が背圧室と低圧室とを流体接続するように容積移送式機械内に配置されており、高圧室と背圧室との間には圧力制御装置に包囲されたスロットルが配置されている。
【0014】
本発明のこの実施態様において、容積移送式機械をスクロール圧縮機として構成した場合にスロットルの作用によって、高圧室から背圧室に流入する作動媒体は最初に圧力に関して低下する。作動媒体は背圧室から出て電気的に操作可能な制御弁によって低圧室に流入する。
【0015】
本発明の別の及び/又は代替的な実施態様において電気的に操作可能な制御弁は、当該制御弁が高圧室と背圧室を流体接続するように配置されており、背圧室と低圧室との間にはスロットルが配置されている。
【0016】
容積移送式機械がスクロール圧縮機として形成されている場合、電気的に操作可能な制御弁によって高圧室と背圧室との間に流体接続が生じて、作動媒体は高圧室から背圧室に流入できる。電気的に操作可能な制御弁を用いて、特に摺動可能なニードル弁体とハウジング部分との間の円環を調整することにより、作動媒体の高圧側から背圧室への流入を調整できる。
【0017】
好ましくは、容積移送式スパイラルは軸方向で対向スパイラルに対して相対的に可動である。そのため周回する、つまり回動可能な容積移送式スパイラルは、軸方向で追加的に可動である。この場合に容積移送式スパイラルは対向スパイラルに向かい、及び対向スパイラルから離れる方向に動くことができる。対向スパイラルは容積移送式機械内に完全に固定して組み込まれていることが好ましい。換言すれば、対向スパイラルは軸方向で移動することも回動することもできない。
【0018】
容積移送式スパイラルから対向スパイラルに軸方向で作用する押圧力は、背圧室内に存在する圧力により調整可能であることが好ましい。換言すれば、容積移送式スパイラルから軸方向で対向スパイラルに作用する力は、好ましくは背圧室内に存在する圧力によって引き起こされる。容積移送式スパイラルから対向スパイラルに軸方向で作用する押圧力は、調整できる。
【0019】
本発明による容積移送式機械は、電気的及び/又は電磁的に駆動される容積移送式機械、又は機械的駆動装置を有する容積移送式機械として構成され得る。
【0020】
作動媒体は、例えばCO2及び/又はR134a及び/又はR1234yf及び/又はブタン及び/又はエタノール及び/又はシクロペンタンであることができる。
【0021】
本発明の従属的な態様は、容積移送式機械を駆動するための、特に上述したような本発明による容積移送式機械を駆動するための方法に関する。本発明により容積移送式機械を駆動するための方法は、
a)容積移送式機械の高圧領域又は容積移送式機械が組み込まれているシステムの高圧領域における圧力値PDを求めるステップと、
b)求めた圧力値PDと圧力値PSを演算器に転送するステップと、
c)求めた圧力値PDと圧力値PSを用いて特性曲線及び/又は特性図に基づき、背圧室内に存在する背圧PBPと低圧室内に存在する低圧PSとの間の差圧値ΔPBPを確定するステップであって、特性曲線及び/又は特性図は演算器に保存されている、ステップと、
d)磁気コイルに印加される制御電流により圧力制御装置、特に電気的に操作可能な制御弁を操作して、差圧値ΔPBPを電気的制御弁によって自動調節するステップとを含む。
【0022】
容積移送式機械の高圧領域とは、例えば容積移送式機械の高圧室であってよい。代替的及び/又は追加的に、圧力値PDを容積移送式機械が組み込まれているシステム、例えば空調設備及び/又は車両の高圧領域で求め若しくは測定することが考えられる。本発明による容積移送式機械は、上述した方法に従い、高圧領域、特に高圧室は高圧室内の圧力値を検出するためのセンサを有する。
【0023】
求めた圧力値PDに基づいて特性曲線及び/又は特性図によって差圧値ΔPBPを確定できる。換言すれば、特性曲線及び/又は特性図で求めた圧力値PDに理想的な若しくは調整されるべき差圧値ΔPBPが割り当てられている。差圧値ΔPBPは、背圧室と低圧室との間に形成されている。
【0024】
換言すれば、求めた圧力値を用いて圧力制御装置、特に電気的に操作可能な制御弁が操作される。このために特に電気的に操作可能な制御弁の磁気コイルが励磁される。これは好ましくは、演算器内の特性曲線及び/又は特性図に保存されて磁気コイルに印加される制御電流によって行われる。
【0025】
求めた圧力値PDと関係のある制御電流を磁気コイルに印加することにより、確定された差圧値ΔPBPが自動的に電気的制御弁によって調節され得ることが可能である。
【0026】
電気的に操作可能な制御弁とは、好ましくは機械的に自動制御する弁である。この機械的な自動制御は平衡した圧力収支に基づき、若しくは換言すれば補償された力の平衡によって行われる。
【0027】
確定された差圧値ΔPBPとそれに伴う確定された制御電流を用いて、電磁力は電気的に操作可能な制御弁のニードル弁体に調節される。ニードル弁体にはばね力及び背圧室の力若しくは圧力と並んで、磁気コイルを通して電磁力も作用する。本発明による容積移送式機械を駆動するための方法は、図示された実施態様により、何よりも背圧室と低圧室とを流体接続する電気的に操作可能な制御弁を有する容積移送式機械に応用される。これによりニードル弁体には圧力若しくは低圧室の力も作用する。
【0028】
磁気コイルに負荷される制御電流に基づいて、低圧室の力と背圧室の力に対抗する電磁力が調節される。平衡した力の収支を達成するために、電気的に操作可能な制御弁は背圧室の力を低圧室の圧力に応じて自動的に調節する。制御弁のニードル弁体とハウジング部分との間に環状面として形成される貫流断面は、電気的に操作可能な制御弁によって自動的に調節される。換言すれば、低圧室の圧力と背圧室の圧力との間の貫流断面は、電気的に操作可能な制御弁によって自動的に調節される。
【0029】
本発明の別の従属的な態様は、容積移送式機械、特に上述したような本発明による容積移送式機械を駆動するための方法に関する。本発明による方法は、
容積移送式機械、特に請求項1から12のいずれか1項に記載の容積移送式機械を駆動するための方法において、
a)容積移送式機械の高圧領域、又は容積移送式機械が組み込まれているシステムの高圧領域における圧力値PDと、容積移送式機械の低圧室における圧力値PSとを求めるステップと、
b)求めた圧力値PDと圧力値PSを演算器に転送するステップと、
c)求めた圧力値PDと圧力値PSを用いて特性曲線及び/又は特性図に基づき、背圧室内に存在する背圧PBPと低圧室内に存在する低圧PSとの間の差圧値ΔPBPを確定するステップであって、特性曲線及び/又は特性図は演算器に保存されている、ステップと、
d)磁気コイルに印加される制御電流により圧力制御装置、特に電気的に操作可能な制御弁を操作して、差圧値ΔPBPを電気的制御弁によって自動調節するステップとを含む。
【0030】
この本発明による方法は、好ましくは高圧室と背圧室とを流体接続する電気的に操作可能な制御弁を有する本発明による容積移送式機械を用いて実施され、背圧室と低圧室との間にスロットルが配置されている。容積移送式機械の高圧領域で求める圧力値PDは、例えば容積移送式機械の高圧室内で求めることができる。代替的及び/又は追加的に、圧力値PDを容積移送式機械が組み込まれているシステム、例えば車両及び/又は空調設備の高圧領域で求めることが可能である。
【0031】
これに関して付属している本発明による容積移送式機械は、容積移送式機械の高圧領域、特に容積移送式機械の高圧室内に圧力値PDを検出するための圧力センサを有する。圧力値PDとは、好ましくは容積移送式機械内に存在する高圧若しくは容積移送式機械が組み込まれているシステムの周囲に存在する高圧である。
【0032】
低圧室内で測定される圧力PSに関して、本発明による容積移送式機械は低圧室内に、低圧PSを検出する圧力センサを有している。したがって低圧PSとは、低圧室内に存在する低圧である。
【0033】
求めた圧力値PDとPSを用いて、即ち低圧PSに関して求めた値と高圧PDに関して求めた値とを用いて差圧値ΔPBPが確定される。確定された差圧値ΔPBPは、圧力制御装置、特に電気的に操作可能な制御弁の磁気コイルに負荷される確定された制御電流と関連している。制御弁にはばね力、背圧室の力若しくは圧力、並びに高圧室の力若しくは圧力が作用する。さらにこの電気的に操作可能な制御弁には磁気コイルの電磁力が作用し、その電磁力は制御電流によって調整可能である。
【0034】
容積移送式機械を駆動するための従属的な両方法との関連で、圧力制御装置、特に電気的に操作可能な制御弁を操作する際に、確定された差圧値ΔPBPが、弁要素、特に磁気コイル内に配置されているニードル弁体を操作するための電流強度に対応しているようにすることができる。
【0035】
弁要素の磁気コイルは、好ましくは電流強度によって負荷されて、ニードル弁体に作用する電磁力が調整される。
【0036】
本発明による容積移送式機械を駆動するための方法を用いて、背圧室内の圧力を可変な動作点に調整することが可能である。圧力は指定により非常に正確に調整できる。このことは特に背圧室と低圧室との間の差圧値の調節によって行われる。
【0037】
本発明の別の従属的な態様は、本発明による容積移送式機械、特に本発明によるスクロール圧縮機を有する車両空調設備に関する。既に本発明による容積移送式機械及び/又は本発明による容積移送式機械を駆動するための方法との関連で記述したのと同様の利点が得られる。
【0038】
車両空調設備は冷媒を含んでおり、この冷媒は例えばCO2及び/又はR134a及び/又はR1234yf及び/又はブタン及び/又はエタノール及び/又は水である。
【0039】
冷媒として特にハイドロフルオロカーボン(HFC)を使用できる。R134aは典型的なヒドロフルオロカーボンである。さらにハイドロフルオロオレフィン(HFO)を冷媒として使用することが可能である。これに関して例としてR1234yfの参照を求める。ハイドロカーボン(HC)も冷媒として車両空調設備に使用できる。典型的なハイドロカーボンはプロパン若しくはブタンである。同様に挙げたCO2、エタノール若しくは水は独自の作動媒体である。
【0040】
本発明の別の従属的態様は、本発明による容積移送式機械及び/又は本発明による車両空調設備を有する車両、特にハイブリッド車両に関する。既に本発明による容積移送式機械及び/又は本発明による容積移送式機械を駆動するための方法との関連で、及び/又は本発明による車両空調設備との関連で提示されたのと同様の利点が明らかとなる。特に本発明による車両は、電気ハイブリッド車両である。
【0041】
本発明の別の従属的な態様は、本発明による容積移送式機械、特に発明によるスクロール膨張機を有する車両、特にトラックに関する。既に本発明による容積移送式機械及び/又は本発明による容積移送式機械を駆動するための方法との関連で提示されたのと同様の利点が明らかとなる。トラックの分野においてスクロール膨張機は、好ましくは排気回収若しくはエネルギー回収との関連で使用される。この場合、機械的駆動装置を有するスクロール膨張機も、電気的及び/又は電磁的に駆動されるスクロール膨張機も使用することが可能である。
【0042】
以下に本発明を添付の概略図面を参照して実施態様に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】第1の実施態様により本発明による容積移送式機械、特にスクロール圧縮機の縦断面図である。
図2】第2の実施態様により本発明による容積移送式機械、特にスクロール圧縮機の縦断面図である。
図3】電気的に操作可能な制御弁による縦断面図である。
図4】本発明による容積移送式機械を駆動するための方法の第1の実施態様に関する原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に、本発明による容積移送式機械に関する2つの実施態様を詳細に説明するが、図示された実施態様はスクロール圧縮機である。ここで指摘しておくと、本発明による容積移送式機械はスクロール膨張機として構成されてよく、スクロール膨張機として運転されることができる。
【0045】
以下に同じ部材及び同じ作用を有する部材には同一の参照符号を使用する。
【0046】
図1及び図2との関連で詳述されるスクロール圧縮機10は、例えば車両空調設備の圧縮機として作用する。車両空調設備、例えば炭酸ガス車両空調設備は、典型的に気体冷却器、内部熱交換器、スロットル、気化器及び圧縮機を有している。したがって圧縮機は図示されたスクロール圧縮機10であることができる。スクロール圧縮機とは、換言すればスパイラル原理による容積移送式機械である。
【0047】
図示されたスクロール圧縮機は、ベルトプーリの形式による機械的駆動装置11を有する。ベルトプーリ11は、使用中電気モーター又は内燃機関と接続されている。代替として、スクロール圧縮機10は電気的及び/又は電動的にされることも可能である。
【0048】
スクロール圧縮機10は、さらにスクロール圧縮機10の高圧側を閉鎖するハウジング上部21を備えたハウジング20を含んでいる。ハウジング20内には、低圧室30を限定するハウジング中間壁22が形成されている。低圧室30は吸込み室と呼ぶこともできる。ハウジング底部23には、駆動軸12が貫通する貫通口が設けられている。ハウジング20の外部に配置された軸端部13は、連行部材14と一緒に回転するように結合されており、連行部材14はハウジング20に回転可能に支持されたベルトプーリに突入係合していて、ベルトプーリからトルクを回転駆動軸12に伝えることができる。
【0049】
駆動軸12は、一方ではハウジング底部23内に、他方ではハウジング中間壁22内に回転可能に支持されている。駆動軸12のシーリングは、ハウジング底部23に対しては第1の軸密封装置24によって行われ、ハウジング中間壁22に対しては第2の軸密封装置25によって行われる。
【0050】
スクロール圧縮機10は、さらに可動の、特に周回する容積移送式スパイラル31と、対向スパイラル32を含んでいる。容積移送式スパイラル31と対向スパイラル32は互いに突入係合している。対向スパイラル32は好ましくは周方向にも半径方向にも動かないように固定されている。駆動軸12と連結された可動容積移送式スパイラル31は円形軌道を描き、この運動によってそれ自体公知の方式で複数の気体ポケット又は圧縮室が形成されて容積移送式スパイラル31と対向スパイラル32との間を半径方向内方に移動する。この周回運動により作動媒体、特に冷媒が吸い込まれて、さらにスパイラル運動とそれに伴う圧縮室の縮小によって圧縮される。作動媒体、特に冷媒は、半径方向外側から半径方向内側へ、例えば直線的に増大して圧縮されて、対向スパイラル32の中央で高圧室40内に吐き出される。
【0051】
容積移送式スパイラル31の周回運動を生み出すために、偏心ピン27を介して駆動軸12と結合された偏心軸受26が設けられている。偏心軸受26と容積移送式スパイラル31は対向スパイラル32に対して偏心的に配置されている。気体室は、容積移送式スパイラル31が対向スパイラル32に当接することにより互いに圧力密に分離されている。容積移送式スパイラル31と対向スパイラル32との間の半径方向押圧力は、偏心性によって調節される。
【0052】
容積移送式スパイラル31の回転運動を避けるために、ガイドピンとガイド孔が設けられている。
【0053】
図1図2に示されたスクロール圧縮機はクラッチレスである。それにもかかわらず圧縮機の出力を変えられるようにするために、スクロール圧縮機は接続及び遮断可能である。このために、容積移送式スパイラル31は軸方向で、即ち駆動軸12に対して平行な方向で可動にされている。そうすることによって容積移送式スパイラル31は対向スパイラル32に向かって移動できる。容積移送式スパイラル31が対向スパイラル32上に載っていない限り、スクロール圧縮機10の開放位置が形成されている。この開放位置で容積移送式スパイラル31と対向スパイラル32との間に圧力補償ギャップが生じ、これが容積移送式スパイラル31と対向スパイラル32との間で半径方向で互いに分離している気体室を接続する。このように形成された圧力補償ギャップを通して圧縮された気体がさらに内側に配置されたチャンバから半径方向外側に流れ、それによって圧力補償が行われる。スクロール圧縮機10の出力はそうすることによってゼロか、少なくともほとんどゼロまで低下する。
【0054】
流動方向で対向スパイラル32の後に高圧室40が配置されており、図示されていない排出口を通して対向スパイラル32と流体接続している。この排出口は好ましくは対向スパイラル32の中心に正確に配置されておらず、容積移送式スパイラル31と対向スパイラル32との間の最も内側のチャンバの領域で偏心位置にある。そうすることにより、排出口が偏心軸受26の軸受ブシュ28によって覆われず、最終的に圧縮された作動媒体が高圧室40内に吐き出され得ることが達成される。
【0055】
対向スパイラル32の後壁33は部分的に高圧室40の底部をなしている。後壁33は高圧室40より幅が広い。高圧室40は側方が側壁41によって限定されている。対向スパイラル32の後壁33に向いた側壁41の端部内に凹部42が形成されており、その中にシールリング43が配置されている。側壁41は、対向スパイラル32のストッパをなす周壁である。高圧室40はハウジング上部21に形成されている。これは回転対称形の断面を有する。
【0056】
高圧室40に集められて圧縮された作動媒体は、高圧室40から排出口44を通って、ここではサイクロンセパレータとして構成されているオイルセパレーター45内に流入する。圧縮された作動媒体、特に圧縮された冷媒ガスは、オイルセパレーター45と開口部46を通って、例として空調設備の循環路に流入する。
【0057】
容積移送式スパイラル31を対向スパイラル32に向かって又は反対方向で軸方向に案内することは、容積移送式スパイラル31の後壁34が相応の圧力で負荷されることによって実現される。このために、バックプレッシャー室と呼ぶこともできる背圧室50が、スクロール圧縮機10の高圧側、特に高圧室40と流体接続している。背圧室50内には偏心軸受26がある。
【0058】
背圧室50は容積移送式スパイラル31の後壁34とハウジング中間壁22によって限定されている。
【0059】
背圧室50は既述した第2の軸密封装置25によって低圧室30から流体密に分離されている。滑りリングシール29はハウジング中間壁22に設けた環状溝内に座着している。ハウジング中間壁22と容積移送式スパイラル31の間には(図示されていない)ギャップが形成されている。それゆえ容積移送式スパイラル31は軸方向で滑りリングシール29に支持されて、その上を滑動する。
【0060】
これまでの説明は、図1に示された実施態様と、図2に示された実施態様によるスクロール圧縮機10に関するものである。
【0061】
図1にはさらに、圧力制御装置60が背圧室50と流体接続していることが表示されている。圧力制御装置60を用いて背圧室50と低圧室30との間の差圧を調整できる。圧力制御装置60は、電気的に操作可能な制御弁61を含んでいる。この電気的に操作可能な制御弁は、背圧室50と低圧室30との間の流体接続を作り出す。電気的に操作可能な制御弁61は、図3により詳細に表示されている。
【0062】
高圧室40と背圧室50との間にスロットル62が配置されている。そのため圧力制御ユニット60は、スロットル62と電気的に操作可能な制御弁61を含んでいる。背圧室50は、スクロール圧縮機10の高圧側、特に高圧室40に接続されている。第1の管路部分51と第2の管路部分52を介して、背圧室50はオイルセパレーター45と接続されている。第1の管路部分51と第2の管路部分52との間に、スロットル62が形成されている。第1の管路部分51はハウジング20内、特にハウジング上部21内に形成されている。第2の管路部分52も部分的に同様にハウジング20内、特に周壁15内に形成されている。
【0063】
第2の管路部分の最後の部分、即ち第2の管路部分52の、背圧室50内で終わる部分は、ハウジング中間壁22内の貫通路として形成されている。背圧室50内にある作動媒体を用いて、特にそこに存在する圧力に応じて、容積移送式スパイラル31は対向スパイラル32に向かって軸方向に移動できる。容積移送式スパイラル31から対向スパイラル32に軸方向で作用する押圧力は、背圧室50内に存在する圧力によって調整可能である。
【0064】
このために追加的に制御弁61が設けられている。これはハウジング20の周壁15内にも同様に形成されている。第1の排出管路部分53もまたハウジング中間壁22内に形成されている。第1の排出管路部分53は、周壁15内に形成された管路部分により電気的に操作可能な制御弁61内で終わっている。周壁15内にはさらに制御弁61と低圧室30との間の接続を作り出す第2の排出管路部分54が形成されている。
【0065】
背圧室50内に存在する圧力を制御するために、及び/又は背圧室50内に存在する圧力を可変動作点に調整するために、スクロール圧縮機10の高圧領域、特に高圧室40内で、最初に圧力値PDを求める。次にこの値を演算器に転送する。求めた圧力値PDに基づき演算器において、背圧室50内に存在する背圧PBPと低圧室30内に存在する低圧PSとの間で作用する差圧PBPが確定される。このことは好ましくは求めた圧力値PDを用いて特性曲線及び/又は特性図に基づいて行われる。特性曲線及び/又は特性図は演算器に保存されている。
【0066】
圧力制御装置60、特に電気的に操作可能な制御弁は確定された差圧値ΔPBPに基づいて操作される。このことは制御弁61の磁気コイル63に印加される制御電流によって行われる。
【0067】
確定された差圧値ΔPPBが弁要素61を操作するための電流強度に対応しているので、ニードル弁体64に作用する電磁力を調整できる。
【0068】
ニードル弁体64には、ばね(これについては図3参照)から出るばね力も、背圧室50の力若しくは圧力、並びに低圧室30の力若しくは圧力も作用する。追加的にニードル弁体64には、磁気コイル63によって生成された電磁力が作用する。
【0069】
磁気コイル63に作用する制御電流によって、背圧室50の圧力及び低圧室30の圧力に対抗する電磁力が調節される。制御弁61は補償された圧力収支によって若しくは力の平衡によって自動的に制御される。補償された圧力収支を得るために、弁61は低圧室30内に存在する力若しくは圧力に応じて自動的に背圧室の圧力50を調整する。このために制御弁61のニードル弁体64とハウジング65との間の貫流断面若しくは環状面が調節される(これについては図3参照)。
【0070】
図2にはスクロール圧縮機10の別の実施態様が表示されている。このスクロール圧縮機10も同様に圧力制御装置60を有している。圧力制御装置60は同様に制御弁61並びにスロットル62を含んでいる。電気的に操作可能な制御弁61は、高圧側、特に高圧室40と背圧室50との間の流体接続を作り出す。高圧室40と背圧室50との間の流体接続は、オイルセパレーター45を介して間接的に行われる。
【0071】
このために開口部46の近傍には、第1の管路部分71が設けられている。これはハウジング上部21内に形成されている。その後にハウジング20の周壁15内に形成された第2の管路部分72が続く。制御弁61を介して背圧室50に作動媒体、特に冷媒が供給可能であり、高圧室40からオイルセパレーター45を通って背圧室50に流入する。
【0072】
制御弁61と背圧室50との間では、ハウジング中間壁22内に供給管路73が形成されている。これに対して低圧室30と背圧室50との間では、スロットル62が形成されている。背圧室50とスロットル62には排出管路部分74が形成されている。背圧室50と低圧室30との間の流体接続は、排出管路部分74並びにスロットル62を介して行われる。
【0073】
この本発明の実施態様において、背圧室50と低圧室30との間の差圧は調整可能である。このために圧力値PD、特にスクロール圧縮機の高圧領域における、特にスクロール圧縮機10の高圧室40内の高圧値を求める。追加的に圧力値、特にスクロール圧縮機10の低圧領域における、特に低圧室30内の低圧PSを求める。これらの両値は演算器に転送される。背圧室50内に存在する背圧PBPと低圧室30内に存在する低圧PSとの間の差圧値ΔPBPも同様に求めた圧力値を用いて特性曲線に基づいて求めることができる。このために特性曲線又は特性図は演算器に保存されている。
【0074】
続いて磁気コイル63に印加された制御電流により圧力制御装置60、特に電気的に操作可能な制御弁61の操作が行われる。この場合、制御弁61のニードル弁体64にはばね力、背圧室50の圧力PBP若しくは力、並びに高圧室40の圧力PD若しくは力、及び磁気コイル63によって生成される電磁力が作用する。差圧値ΔPBPは、制御弁61のニードル弁体64とハウジング65との間の貫流断面を調節することによって調整できる。それにより高圧室40の高圧PBPと背圧室50の背圧PBPとの間の流動断面は制御弁61内で自動的に制御弁61によって調節される。
【0075】
図3に制御弁61、特に図1の実施態様により必要とされる制御弁61が表示されている。制御弁61内にはニードル弁体64が形成されている。同様にニードル弁体64に力を及ぼすばね66も見て取れる。ニードル弁体64は磁気コイル63の内部に配置されている。磁気コイル63は供給管路67を通して電流で負荷できるので、供給管路67を通って磁気コイル63に流れる制御電流に応じて調整可能である電磁力がニードル弁体64に作用する。
【0076】
破線により、制御弁61が背圧室50への供給管路と、低圧室30への供給管路とを有していることが見て取れる。
【0077】
ニードル弁体64の頭部69は、ハウジング65と頭部69との間に円環68が形成されるように、ハウジング部分65に当接できる。円環68の大きさに応じて背圧室50と低圧室30との間の差圧ΔPBPを調整できる。
【0078】
背圧室50内に背圧PBPが存在するのに対して、低圧室30内では低圧PSが作用する。
【0079】
図4には図1による実施態様との関連で必要な方法が模式的に表示されている。
【0080】
これによると高圧室40内には100バールの圧力PDが存在する。この圧力が測定されて演算器80に読み取られ、若しくは演算器80に転送される。100バールの圧力はスロットル62によって45バールに低下するので、高圧室40から背圧室50に流入する作動媒体は背圧室50内で45バールの圧力PBPを有する。
【0081】
背圧室50と低圧室30との間に制御弁61が配置されている。制御弁61は機械的に自動制御する弁であり、制御弁61の中にある磁気コイル(ここでは表示されていない)が演算器80によって制御される。このために演算器80において差圧値ΔPBPが確定される。各差圧値ΔPBPには制御電流Iが対応しており、圧力値PDと演算器80に保存されている特性図81に基づいて磁気コイルに対する制御電流Iを求める。
【0082】
演算器80から制御電流Iの値が制御弁61の磁気コイルに転送される。制御電流Iに基づいて弁要素61の磁気コイルに電流強度が負荷され、ニードル弁体64に作用する電磁力を調整できる。
【符号の説明】
【0083】
10 スクロール圧縮機
11 機械的駆動装置
12 駆動軸
13 軸端部
14 連行部材
15 周壁
20 ハウジング
21 ハウジング上部
22 ハウジング中間壁
23 ハウジング底部
24 第1の軸密封装置
25 第2の軸密封装置
26 偏心軸受
27 偏心ピン
28 軸受ブシュ
29 滑りリングシール
30 低圧室
31 容積移送式スパイラル
32 対向スパイラル
33 対向スパイラル後壁
34 容積移送式スパイラル後壁
40 高圧室
41 側壁
42 凹部
43 シールリング
44 排出口
45 オイルセパレーター
46 開口部
50 背圧室
51 第1の管路部分
52 第2の管路部分
53 第1の排出管路部分
54 第2の排出管路部分
60 圧力制御装置
61 制御弁
62 スロットル
63 磁気コイル
64 ニードル弁体
65 ハウジング
66 ばね
67 供給管路
68 円環
69 頭部
71 第1の管路部分
72 第2の管路部分
73 供給管路
74 排出管路部分
80 演算器
81 特性図
I 制御電流
D 高圧領域の圧力
Ps 低圧領域の圧力
BP 背圧
ΔPBP 差圧値
図1
図2
図3
図4