(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の様々な特定の実施形態およびバージョンが、好ましい実施形態および本明細書で採用される定義を含めて、これから説明される。以下の発明の詳細な説明は特定の好ましい実施形態を与えるけれども、当業者はこれらの実施形態は例示のためだけであり、本発明が他の方法でも実施されることができることを理解するであろう。「本発明」へのどのような言及も、特許請求の範囲によって定義された実施形態の1つ以上であるが必ずしも全てではないものを指していてもよい。標題の使用は便宜のみの目的のためにあり、本発明の範囲を限定しない。
【0018】
本明細書に記載されているのは、ルーフィング用途、特にルーフィング膜に適しているプロピレンに基いたエラストマーを含んでいる組成物である。好ましい実施形態では、組成物は、本明細書に記載されたリアクターブレンドされたポリマーであるプロピレンに基いたエラストマーを含んでいる。好ましい実施形態では、組成物はポリアルファオレフィンをさらに含んでいる。組成物は、広範囲の温度にわたる特性のバランスを提供する。たとえば、組成物は−40℃〜40℃の温度での柔軟性および高められた温度での改善された特性を示す。
【0019】
本明細書の発明の詳細な説明および特許請求の範囲内の全ての数値は、「約」または「およその」表示された値によって修飾されており、当業者によって予期されるであろう実験誤差および変動量を考慮に入れている。
【0020】
本明細書で使用される用語「コポリマー」とは、2種以上のモノマーを有するポリマー、任意的に他のモノマーも有するポリマーを含むことが意図されており、インターポリマー、ターポリマー等のことを言うこともある。本明細書で使用される用語「ポリマー」としては、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー等、またこれらのアロイおよびブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される用語「ポリマー」としてはまた、インパクト、ブロック、グラフト、ランダムおよび交互コポリマーも挙げられる。用語「ポリマー」はさらに、特に明記されない限り、全ての可能な幾何学的配置を包含するものとする。そのような配置としては、アイソタクチック、シンジオタクチックおよびアタクチックの対称が挙げられる。本明細書で使用される用語「ブレンド」とは、2種以上のポリマーの混合物を指す。用語「エラストマー」とは、ある程度の弾性を示す任意のポリマーを意味するものとし、弾性とは力(たとえば、引き伸ばしによる力)によって変形されていた材料がその力が取り除かれるとその元の寸法に少なくとも部分的に戻る能力である。
【0021】
本明細書で使用される用語「モノマー」または「コモノマー」とは、ポリマーを形成するために使用されたモノマー、すなわち重合の前の形状をしている未反応化学化合物を言うことができ、またそれがポリマー中に組み入れられた後のモノマーを言うこともでき、後者の場合には本明細書では「[モノマー]由来単位」とも呼ばれる。様々なモノマー、たとえばプロピレンモノマー、エチレンモノマーおよびジエンモノマーが本明細書で検討される。
【0022】
本明細書で使用される「リアクターグレード」とは、ポリマーの平均分子量、分子量分布または粘度を変えることを目的とした、重合の後で化学的または機械的処理やブレンドをされていないポリマーを意味する。リアクターグレードと表現されるこのようなポリマーから特に除外されるのは、ビスブレーキングされたものや、過酸化物等のプロデグラダントで他様に処理されまたはコーティングされたものである。しかし、本開示発明の目的のためには、リアクターグレードポリマーは、リアクターブレンドであるポリマーを包含する。
【0023】
本明細書で使用される「リアクターブレンド」とは、1種以上のモノマーが逐次的または並列の重合をして1つのポリマーが別のポリマーの存在下に形成される結果としてその場で(in situ)製造された、または並列のリアクター中で別々につくられたポリマーを溶液ブレンドすることによって製造された、2種以上のポリマーが高度に分散された機械的に分離できないブレンドを意味する。リアクターブレンドは、単一リアクター、直列リアクターまたは並列リアクターの中で製造されてもよく、リアクターグレードブレンドである。リアクターブレンドは、任意の重合方法、たとえばバッチ、半連続または連続の装置によって製造されてもよい。「リアクターブレンド」ポリマーから特に除外されるのは、ポリマーが外部で(ex situ)、たとえばミキサー、押出機または他の類似の装置の中で物理的にまたは機械的にブレンドされた2種以上のポリマーのブレンドである。
ポリマーブレンド
【0024】
ルーフィング膜組成物のポリマーブレンドは、プロピレンに基いたエラストマーおよびエチレンコポリマーを含んでいる。1つの実施形態では、ポリマーブレンドは、プロピレンに基いたエラストマーとエチレンコポリマーとのリアクターブレンドである。
【0025】
本明細書における「リアクターブレンド」は「物理的ブレンド」とは区別され、後者は、一緒に混合されまたは他様に組み合わされる前に、既に形成されて回収されており、そしてその後に一緒に組み合わされる2種以上のポリマーの組み合わせであって、たとえば、残りの重合混合物(たとえば、未反応のモノマーおよび/または溶媒)の一部または全てから分離されている(分離は、好ましくは脱揮発性成分されることも含むことになる。)ものである。
【0026】
用語「リアクターブレンド」は、互いにある量または程度まで反応した2種の成分、たとえば一方が全体としてまたはその一部が他方から誘導された反応生成物である場合を(別段の記載がある場合を除き)排除しない。また、用語「リアクターブレンド」は、一緒に混合されているが、形成後に従来の手段(たとえば、分別)によって分離されることができる、したがって、はっきりと区別できる2種のポリマーであると特定されることができる2種の成分、たとえば、はっきりと異なる融点(Tm)を有する半結晶性ポリマーと低い融点(Tm)を有するかあるいは融点を有しないアタクチックまたは無定形のエチレンエラストマーとの2種の成分も排除しない。
【0027】
本明細書で使用される用語「リアクターブレンド」は、ある実施形態では均質(たとえば、単相)の材料のことを言ってもよく、また他の実施形態では多相ブレンド(たとえば、2つ以上のはっきりと区別できる相)のことを言ってもよい。融解物ブレンドをすることによって形成されたブレンドは物理的ブレンドである。
【0028】
リアクターブレンド組成物は、好ましくは少なくともプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーを含んでいる。もっとも、エチレンポリマーは、いくつかの場合には推論によっておよび/または分別によって特定可能である。ある実施形態では、リアクターブレンドは、主要重量部分(50重量%超)のプロピレンに基いたエラストマーおよび少量部分(50重量%未満)のエチレンコポリマーを含んでいる。
【0029】
リアクターブレンドのある実施形態では、第1のポリマーおよび第2のポリマーは実質的に均質のリアクターブレンドを形成し、このことは、第1のポリマーおよび第2のポリマーが同じ相の一部であり、またはその中にあり、またはそれを占有することを意味する。この場合には、第1および第2のポリマー成分は熱力学的に混和性である。リアクターブレンドの他の実施形態では、第1のポリマーおよび第2のポリマーは、多相組成物の別個の相を形成する。ある多相の実施形態では、リアクターブレンドは連続相(第1のポリマーまたは第2のポリマーのいずれか)およびおよび不連続相(第1のポリマーまたは第2のポリマーのいずれか)を含んでおり、連続相は分散相(分散物)であってもよく、不連続相はマトリクス相であってもよい。これらの実施形態では、連続相または分散相のいずれかが、リアクターブレンドの主要部分を表してもよく、2種のポリマーは熱力学的に非混和性である。また、リアクターブレンドの少なくとも1つの実施形態は、リアクターブレンドの少量部分として第1のポリマーを含んでいる連続相および主要部分として第2のポリマーを含んでいる分散相を有する多相組成物である。さらに、上記の実施形態のいずれでも、第2のポリマーは架橋されることができる。上で特定された範囲にある様々なポリマー分割比、すなわち全ポリマーの分率としての1つのポリマーの割合が使用されてもよい。
多段重合
【0030】
プロピレンに基いたエラストマーとエチレンコポリマーとのリアクターブレンドを含んでいるポリマーブレンドは、バッチ式あるいは連続式の「多段重合」で形成され、「多段重合」とは2つの(またはそれよりも多い)異なる重合(または重合段階)が行われることを意味する。より具体的には、多段重合は2つの(またはそれよりも多い)逐次的な重合(本明細書では「直列プロセス」とも呼ばれる。)あるいは2つ以上の並列重合(本明細書では「並列プロセス」とも呼ばれる。)を含んでいてもよい。好ましくは、重合は並列プロセスで行われる。
【0031】
連続式の複数のリアクター溶液プラントのそれぞれのリアクターでつくられたポリマーは、溶液中にあるときに溶媒からその前に分離されることなく混合される。ブレンドは直列リアクター操作の結果であってもよく、この場合には第1のリアクターの流出物が第2のリアクターに入り、第2のリアクターの流出物が揮発性成分除去を含む仕上げ工程に提供されることができる。この場合には、第1のリアクターでつくられたポリマー鎖は、第2のリアクター中でさらに成長するかまたは停止されることができる。ブレンドはまた、並列リアクター操作の結果であってもよく、この場合には両方のリアクターの流出物は一緒にされ、仕上げ工程に提供される。この場合には、流出物流れを一緒にする前に、重合は両方のリアクター中で完了している。どちらの選択肢も、揮発性成分除去されたブレンド中にポリマーの緊密な付加混合物を提供する。どちらの場合も、種々様々なポリマー分割比が生成されることが可能になり、それによってそれぞれのリアクター中で製造されるポリマー量の割合が広範囲に変えらることができる。
【0032】
リアクターブレンド組成物を構成するプロピレンに基いたエラストマーおよびエチレンコポリマーが、以下でおよび引き続いて並列プロセスについての章で検討される。
プロピレンに基いたエラストマー
【0033】
本明細書に記載されるポリマーブレンドは、1種以上のプロピレンに基いたエラストマー(「PBE」)を含んでいる。PBEは、プロピレンと、エチレンおよび/またはC
4〜C
12のα−オレフィンから選ばれた1種以上のコモノマー約5〜約30重量%と、任意的に1種以上のジエンとを含んでいる。たとえば、コモノマー単位は、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、オクテンまたはデセンに由来してもよい。好ましい実施形態では、コモノマーはエチレンである。いくつかの実施形態では、プロピレンに基いたエラストマー組成物は、プロピレンおよびエチレン由来単位から本質的に成り、またはプロピレンおよびエチレン由来単位のみから成る。以下に記載されたいくつかの実施形態では、コモノマーとしてエチレンに関して検討されているが、これらの実施形態は、他の高級α−オレフィンコモノマーを有するコポリマーにも等しく適用可能である。この点では、コポリマーはα−オレフィンとしてエチレンを参照して単にPBEと呼ばれることがある。
【0034】
PBEは、PBEの全重量に基いて少なくとも約5重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約9重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約12重量%、少なくとも約13重量%、少なくとも約14重量%、少なくとも約15重量%または少なくとも約16重量%のα−オレフィン由来単位を含んでいてもよい。PBEは、PBEの全重量に基いて約30重量%まで、約25重量%まで、約22重量%まで、約20重量%まで、約19重量%まで、約18重量%または約17重量%までのα−オレフィン由来単位を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、PBEは、PBEの全重量に基いて約5〜約30重量%、約6〜約25重量%、約7重量%〜約20重量、約10〜約19重量%、約12重量%〜約19重量%または約15重量%〜約18重量%または16重量%〜約18重量%のα−オレフィン由来単位を含んでいてもよい。
【0035】
PBEは、PBEの全重量に基いて少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約78重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約81重量%、少なくとも約82重量%または少なくとも83重量%のプロピレン由来単位を含んでいてもよい。PBEは、PBEの全重量に基いて約95重量%まで、約93重量%まで、約91重量%まで、約90重量%まで、約88重量%または約87重量%までまたは約86重量%までまたは約85重量%までまたは約84重量%までのプロピレン由来単位を含んでいてもよい。
【0036】
PBEは融点(Tm)によって特性付けられることができ、融点(Tm)は示差走査熱量測定(DSC)によって測定されることができる。本明細書に記載されたDSC試験方法を使用すると、融点は、サンプルがプログラムされた速度で連続的に加熱されたときに、サンプルの融解温度の範囲内の最大の熱吸収ピークに対応して記録された温度である。単一の融解ピークが観察される場合は、そのピークが「融点」であると見なされる。複数のピーク(たとえば主ピークおよび2次ピーク)が観察される場合は、融点はそれらのピークの中で最大のものであると見なされる。多くのPBEが低い結晶化度であるが故に、融点ピークは低い温度にあることがありかつ比較的平たいことがあり、正確なピーク位置を決定することが困難であることが注記される。この文脈での「ピーク」とは、吸熱反応が正のピークで示されるようにDSC曲線(熱流量対温度の曲線)がプロットされる場合に、DSC曲線の全般的な傾きが、ベースラインの変化なしに正から負に変わり最大値を形成するものと定義される。
【0037】
PBEのTm(DSCによって測定されたもの)は約120℃未満、約115℃未満、約110℃未満、約105℃未満、約100℃未満、約90℃未満、約80℃未満、約70℃未満、約65℃未満または約60℃未満であってもよい。いくつかの実施形態では、PBEは約20〜約110℃、約30〜約110℃、約40〜約110℃または約50〜約105℃のTmを有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PBEは約40〜約70℃または約45〜約65℃または約50〜約60℃のTmを有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PBEは約80〜約110℃または約85〜約110℃または約90〜約105℃のTmを有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0038】
PBEは、DSCによって測定されたその融解熱(Hf)によって特性付けられる。PBEは、少なくとも約0.5J/g、少なくとも約1.0J/g、少なくとも約1.5J/g、少なくとも約3.0J/g、少なくとも約5.0J/g、少なくとも約7.0J/g、少なくとも約10.0J/gまたは少なくとも約12J/gであるHfを有してもよい。PBEは、約75J/g未満、約65J/g未満、約60J/g未満、約55J/g未満、約50J/g未満、約40J/g未満、約35J/g未満、約30J/g未満、約25J/g未満、約20J/g未満、約17J/g未満または15J/g未満のHfによって特性付けられてもよい。いくつかの実施形態では、PBEは、約1.0〜約40J/g、約3.0〜約30J/gまたは約5.0〜約20J/gのHfを有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PBEは、約1.0〜約15J/gまたは約3.0〜約10J/gのHfを有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PBEは、5.0〜約30J/g、約7.0〜約25J/gまたは約12〜約20J/gのHfを有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0039】
TmおよびHfを測定するための本明細書で使用されるDSC測定手順は以下のとおりである。ポリマーは、加熱されたプレスで約200℃〜約230℃の温度でプレスされ、得られたポリマーシートは周囲条件の下でアニールされ、空気中で冷却される。約6〜10mgのポリマーシートがパンチダイで取り分けられる。この6〜10mgのサンプルは室温で約80〜100時間アニールされる。この時間が終わると、サンプルはDSC(Perkin Elmer社製Pyris One熱分析システム)に入れられ、約−30℃〜約−50℃に冷却され、この温度に10分間保持される。サンプルは次に10℃/分で加熱され、約200℃の最終温度に達する。サンプルは200℃で5分間保持される。それから第2の冷却−加熱サイクルが実施され、このサイクルでサンプルは約−30℃〜約−50℃に冷却され、その温度に10分間保持され、そして次に10℃/分で約200℃の最終温度まで再加熱される。両方のサイクルでの事象が記録される。熱出力はサンプルの融解ピークの下の面積として記録され、これは典型的には約0℃〜約200℃の間で生じる。これはジュール単位で測定され、ポリマーのHfの測定値である。
【0040】
好ましくは、PBEは、非結晶領域によって中断された結晶領域を有する。非結晶領域は、非結晶化可能なプロピレンセグメントの領域、コモノマー単位の取り込みまたはこれらの両方に由来する場合がある。1つ以上の実施形態では、PBEはプロピレンに由来する結晶化度を有し、これはアイソタクチック、シンジオタクチックまたはこれらの組み合わせである。好ましい実施形態では、PBEはアイソタクチック連鎖を有する。アイソタクチック連鎖の存在は、アイソタクチックに配置された2個以上のプロピレン由来単位を示すNMR測定結果によって決定されることができる。いくつかの場合には、このようなアイソタクチック連鎖は、アイソタクチックに配置されていないプロピレン単位によって、またはアイソタクチック連鎖に由来する結晶化度を他様に妨害する他のモノマーによって中断されることがある。立体規則性の差異の他に、PBEポリマーはまた位置特異的な欠陥構造も有する。
【0041】
PBEは、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、95%以上または97%以上の
13C NMRによって測定された、3個のプロピレン単位のトリアド立体規則性(mmm立体規則性)を有することができる。1つ以上の実施形態では、トリアド立体規則性は約75〜約99%、約80〜約99%、約85〜約99%、約90〜約99%、約90〜約97%または約80〜約97%の範囲であってもよい。トリアド立体規則性は米国特許第7,232,871号に記載された方法によって測定される。
【0042】
PBEは、4または6の下限から8または10または12の上限までの範囲にある立体規則性指数m/rを有してもよい。本明細書で「m/r」と表現される立体規則性指数は、
13C核磁気共鳴(「NMR」)によって測定される。立体規則性指数m/rはMacromolecules、第17巻、1950〜1955頁(1984年)においてH.N.Chenによって規定されたように計算され、同文献は参照によって本明細書に組み込まれる。記号「m」または「r」は、連続する一対のプロピレン基の立体化学を記述し、「m」はメソを表し「r」はラセミを表す。1.0のm/r比は一般にシンジオタクチックポリマーを記述し、また2.0のm/r比はアタクチック材料を記述する。アイソタクチック材料は理論的には無限大に近づく比を有してもよく、また多くのアタクチックポリマー副生成物は十分なアイソタクチック含有量を有して50を超える比を有することになる。
【0043】
PBEは、DSC測定手順によって測定された約0.5%〜約40%、約1%〜約30%または約5%〜約25%の結晶化度パーセントを有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。結晶化度は、サンプルのHfを結晶化度100%のポリマーのHfで割ることによって決定されてもよく、結晶化度100%のポリマーのHfはアイソタクチックポリプロピレンの場合189J/gであると仮定される。
【0044】
ポリマーのコモノマー含有量および連鎖分布は、当業者に周知の方法によって
13C核磁気共鳴(NMR)を使用して測定されることができる。離散的な分子量範囲のコモノマー含有量は、当業者に周知の方法、たとえばWheelerおよびWillis、Applied Spectroscopy、1993年、第47巻、1128〜1130頁に記載されているようにGPCによるサンプルとともにフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)を使用して測定されることができる。75重量%超のプロピレンを含有するプロピレンエチレンコポリマーの場合は、そのようなポリマーのコモノマー含有量(エチレン含有量)は以下のように測定されることができる:薄い均質のフィルムが約150℃以上の温度でプレスされ、Perkin Elmer社製PE 1760型赤外線分光光度計に搭載される。600cm
−1〜4000cm
−1のサンプルの全スペクトルが記録され、エチレンのモノマー重量パーセントが以下の式によって計算されることができる:エチレン重量%=82.585−111.987X+30.045X
2。この式でXは、1155cm
−1のピーク高さと722cm
−1あるいは732cm
−1のいずれか、より高い方のピーク高さとの比である。75重量%以下のプロピレン含有量を有するプロピレンエチレンコポリマーの場合は、WheelerおよびWillisの文献に記載された手順を使用して測定されることができる。米国特許第6,525,157号が参照され、これはGPCの測定、NMRおよびDSCの測定によるエチレン含有量の決定についてのより多くの詳細を含んでいる。
【0045】
PBEは、ASTM D−1505試験方法によって測定された室温での約0.84g/cm
3〜約0.92g/cm
3、約0.85g/cm
3〜約0.90g/cm
3または約0.85g/cm
3〜約0.87g/cm
3の密度を有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0046】
PBEは、約10g/10分以下、約8.0g/10分以下、約5.0g/10分以下または約3.0g/10分以下または約2.0g/10分以下のメルトインデックス(MI)(ASTM D−1238、2.16kg@190℃)を有することができる。いくつかの実施形態では、PBEは、約0.5〜約3.0g/10分または約0.75g/10分〜約2.0g/10分のMIを有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0047】
PBEは、約0.5g/10分超、約1.0g/10分超、約1.5g/10分超、約2.0g/10分超または約2.5g/10分超のASTM D−1238(2.16kg荷重@230℃)によって測定されたメルトフローレート(MFR)を有してもよい。PBEは、約25g/10分未満、約15g/10分未満、約10g/10分未満、約7g/10分未満または約5g/10分未満のMFRを有してもよい。いくつかの実施形態では、PBEは、約0.5〜約10g/10分、約1.0〜約7g/10分または約1.5〜約5g/10分のMFRを有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0048】
PBEは、0.95以上または少なくとも0.97または少なくとも0.99のg’指数を有してもよく、g’はベースラインとしてアイソタクチックポリプロピレンの固有粘度を使用してポリマーのMwで測定される。本明細書で使用される場合、g’指数は以下のように定義され、
【化1】
この式で、η
bはポリマーの固有粘度であり、η
lはそのポリマーと同じ粘度平均分子量(Mv)の直鎖状ポリマーの固有粘度である。η
l=KMvαであり、Kおよびαは直鎖状ポリマーについての測定値であり、g’指数に使用された測定器と同じ測定器から得られなければならない。
【0049】
PBEは、約100,000〜約500,000g/モル、約125,000〜約400,000g/モル、約150,000〜約350,000g/モル、約200,000〜約300,000g/モルまたは約210,000〜約250,000g/モルのMALLSによって測定された重量平均分子量(Mw)を有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PBEは、約175,000〜約260,000g/モル、約190,000〜約250,000g/モル、約200,000〜約250,000g/モルまたは約210,000〜約240,000g/モルのMwを有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0050】
PBEは、約50,000〜約500,000g/モル、約60,000〜約300,000g/モル、約80,000〜約250,000g/モル、約90,000〜約200,000g/モルまたは約100,000〜約150,000g/モルのDRIによって測定された数平均分子量(Mn)を有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PBEは、約90,000〜約130,000g/モル、約95,000〜約125,000g/モルまたは約100,000〜約120,000g/モルのMnを有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0051】
PBEは、約50,000〜約1,000,000g/モルまたは約75,000〜約500,000g/モルまたは約100,000〜約400,000g/モル、約200,000〜約375,000g/モルまたは約300,000〜約360,000g/モルのMALLSによって測定されたZ平均分子量(Mz)を有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0052】
PBEの分子量分布(MWD、Mw/Mnと同等)は、約0.5〜約10、約0.75〜約5、約1.0〜約5、約1.5〜約4または約1.8〜約3であってもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0053】
PBEは、約50未満、約45未満、約40未満、約35未満または約20未満のショアD硬度(ASTM D2240)を有してもよい。
【0054】
PBEは、約100未満、約95未満、約90未満、約85未満、約80未満、約75未満または70未満のショアA硬度(ASTM D2240)を有してもよい。いくつかの実施形態では、PBEは、約10〜約100、約15〜約90、約20〜約80または約30〜約70のショアA硬度を有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、PBEは、以下の特性のうちの少なくとも4種、または少なくとも5種、または少なくとも6種、または少なくとも7種、または少なくとも8種、または全ての9種を有するプロピレン−エチレンコポリマーである:
(i)PBEの重量に基いて約10〜約25重量%、または約12〜約20重量%、または約16重量%〜約17重量%のエチレン由来単位;
(ii)80〜約110℃、または約85〜約110℃、または約90〜約105℃のTm;
(iii)約75J/g未満、または50J/g未満、または30J/g未満、または約1.0〜約15J/g、または約3.0〜約10J/gのHf;
(iv)約0.5〜約3.0g/10分、または約0.75〜約2.0g/10分のMI;
(v)約0.5〜約10g/10分、または0.75〜約8g/10分、または約0.75〜約5g/10分のMFR;
(vi)約175,000〜約260,000g/モル、または約190,000〜約250,000g/モル、または約200,000〜約250,000g/モル、または約210,000〜約240,000g/モルのMw;
(vii)約90,000〜約130,000g/モル、または約95,000〜約125,000g/モル、または約100,000〜約120,000g/モルのMn;
(viii)約1.0〜約5、または約1.5〜約4、または約1.8〜約3のMWD;および/または
(ix)30未満、または25未満、または20未満のショアD硬度。
いくつかの実施形態では、このようなPBEは本明細書に記載されたリアクターブレンドされたPBEである。
【0056】
任意的に、PBEはまた、1種以上のジエンを含んでいてもよい。用語「ジエン」とは、2個の不飽和部位を有する炭化水素化合物、すなわち炭素原子を結合する2個の2重結合を有する化合物と定義される。文脈によって、本明細書で使用される用語「ジエン」は、重合前のジエンモノマー、たとえば重合媒体の一部を形成するもの、あるいは重合が既に開始した後のジエンモノマー(ジエンモノマー単位またはジエン由来単位とも呼ばれる。) を広く指す。いくつかの実施形態では、ジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB);1,4−ヘキサジエン;5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB);1,6−オクタジエン;5−メチル−1,4−ヘキサジエン; 3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;1,3−シクロペンタジエン;1,4−シクロヘキサジエン;ビニールノルボルネン(VNB); ジシクロペンタジエン(DCPD)およびこれらの組み合わせから選ばれてもよい。プロピレンに基いたポリマーがジエンを含んでいる実施形態では、ジエンは、PBEの全重量に基いて0.05重量%〜約6重量%、約0.1重量%〜約5.0重量%、約0.25重量%〜約3.0重量%または約0.5重量%〜約1.5重量%のジエン由来単位で存在してもよい。
【0057】
任意的に、PBEは1種以上のグラフトモノマーを使用してグラフトされて(すなわち、「官能化されて」)いてもよい。本明細書で使用される用語「グラフトする」とは、プロピレンに基いたポリマーのポリマー鎖にグラフトモノマーが共有結合することを意味する。グラフトモノマーは、少なくとも1種のエチレン性不飽和カルボン酸または酸誘導体、たとえば酸無水物、エステル、塩、アミド、イミド、アクリレート等であることができまたはこれらを含んでいることができる。例示的なグラフトモノマーとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ(2.2.2)オクテン−2,3−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10−オクタヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−オキサ−1,3−ジケトスピロ(4.4)ノネン、ビシクロ(2.2.1)ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレオピマル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、ハイミック酸無水物、メチルハイミック酸無水物および5−メチルビシクロ(2.2.1)ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物。他の適当なグラフトモノマーとしては、アクリル酸メチルおよびアクリル酸高級アルキル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸高級アルキル、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸ヒドロキシ高級アルキルおよびメタクリル酸グリシジルが挙げられる。無水マレイン酸は好ましいグラフトモノマーである。グラフトモノマーが無水マレイン酸である実施形態では、グラフトされたポリマー中の無水マレイン酸濃度は、好ましくは約1重量%〜約6重量%の範囲、少なくとも約0.5重量%または少なくとも約1.5重量%である。
【0058】
好ましい実施形態では、PBEは上で定義されたリアクターグレードまたはリアクターブレンドされたポリマーである。すなわち、好ましい実施形態では、PBEは、第1のポリマー成分と第2のポリマー成分とのリアクターブレンドである。したがって、PBEのコモノマー含有量は、第1のポリマー成分のコモノマー含有量を調節することによって、第2のポリマー成分のコモノマー含有量を調節することによって、および/またはPBE中に存在する第1のポリマー成分と第2のポリマー成分との比を調節することによって調節されることができる。
【0059】
PBEがリアクターブレンドされたポリマーである実施形態では、第1のポリマー成分のα−オレフィン含有量(「R
1」)は、第1のポリマー成分の全重量に基いて5重量%超、7重量%超、10重量%超、12重量%超、15重量%超または17重量%超であってもよい。第1のポリマー成分のα−オレフィン含有量は、第1のポリマー成分の全重量に基いて30重量%未満、27重量%未満、25重量%未満、22重量%未満、20重量%未満または19重量%未満であってもよい。いくつかの実施形態では、第1のポリマー成分のα−オレフィン含有量は、5重量%〜30重量%、7重量%〜27重量%、10重量%〜25重量%、12重量%〜22重量%、15重量%〜20重量%または17重量%〜19重量%の範囲であってもよい。好ましくは、第1のポリマー成分はプロピレン由来単位およびエチレン由来単位を含んでおり、またはプロピレン由来単位およびエチレン由来単位から本質的に成る。
【0060】
PBEがリアクターブレンドされたポリマーである実施形態では、第2のポリマー成分のα−オレフィン含有量(「R
2」)は、第2のポリマー成分の全重量に基いて1.0重量%超、1.5重量%超、2.0重量%超、2.5重量%超、2.75重量%超または3.0重量%超のα−オレフィンであってもよい。第2のポリマー成分のα−オレフィン含有量は、第2のポリマー成分の全重量に基いて10重量%未満、9重量%未満、8重量%未満、7重量%未満、6重量%未満または5重量%未満であってもよい。いくつかの実施形態では、第2のポリマー成分のα−オレフィン含有量は、1.0重量%〜10重量%、1.5重量%〜9重量%また2.0重量%〜8重量%または2.5重量%〜7重量%または2.75重量%〜6重量%たは3重量%〜5重量%の範囲であってもよい。好ましくは、第2のポリマー成分はプロピレン由来単位およびエチレン由来単位を含んでおり、またはプロピレン由来単位およびエチレン由来単位から本質的に成る。
【0061】
PBEがリアクターブレンドされたポリマーである実施形態では、PBEは、PBEの重量に基いて1〜25重量%の第2のポリマー成分、3〜20重量%の第2のポリマー成分、5〜18重量%の第2のポリマー成分、7〜15重量%の第2のポリマー成分または8〜12重量%の第2のポリマー成分を含んでいてもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。PBEは、PBEの重量に基いて75〜99重量%の第1のポリマー成分、80〜97重量%の第1のポリマー成分、85〜93重量%の第1のポリマー成分または82〜92重量%の第1のポリマー成分を含んでもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0062】
PBEは、好ましくは均一の条件、たとえば連続溶液重合プロセスを使用して調製される。いくつかの実施形態では、PBEは並列の溶液重合リアクター中で次のように調製される。すなわち、第1のリアクター成分が第1のリアクター中で調製され、第2のリアクター成分が第2のリアクター中で調製され、第1および第2のリアクターからのリアクター流出物は一緒にされブレンドされて単一のリアクター流出物を形成し、それから最終のPBEが分離される。PBEを調製するための典型的な方法は、米国特許第6,881,800号、第7,803,876号、第8,013,069号および第8,026,323号および国際出願第WO 2011/087729号、第WO 2011/087730号および第WO 2011/087731号に見出されることができ、これらの内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0063】
本発明に使用されるのに適したPBEは、ExxonMobilChemical社から市販されているVistamaxx(商標)ポリマーである。本発明は、PBEとしてVistamaxx(商標)を使用することに限定されない。
エチレンコポリマー
【0064】
本明細書に記載されたポリマーブレンドは、1種以上のエチレンに基いたコポリマーを含んでいる。有用である得るエチレンに基いたコポリマーとしては、エチレン由来単位と、プロピレンおよびC
4〜C
20オレフィン(好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセンおよび/または1−オクテン)から選ばれた1種以上のオレフィンとを含んでいるものが挙げられる。エチレンに基いたコポリマーは、エチレンに基いたコポリマーの重量に基いて約70重量%以上、約70〜約95重量%、約75〜約90重量%または約75〜約85重量%のエチレン含有量を有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0065】
有用なエチレンに基いたコポリマーは、以下の特性のうちの1種以上を有してもよい:
1)0.85g/cm
3、0.86g/cm
3、0.87g/cm
3、0.88g/cm
3または0.885g/cm
3の最低値から0.91g/cm
3、0.905g/cm
3または0.902g/cm
3の最高値までの密度。いくつかの実施形態では、エチレンに基いたプラストマーは、0.85〜0.91g/cm
3、または0.86〜0.91g/cm
3、または0.87〜0.91g/cm
3、または0.88〜0.905g/cm
3、または0.88〜0.902g/cm
3、または0.885〜0.902g/cm
3の範囲の密度を有してもよく、望ましい範囲が任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよいもの;
2)90J/g以下、70J/g以下、50J/g以下または30J/g以下の融解熱(Hf)。いくつかの実施形態では、エチレンに基いたプラストマーは10〜70J/g、または10〜50J/g、または10〜30J/gのHfを有してもよく、望ましい範囲が任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよいもの;
3)5重量%の最低値から40%、30%または20%の最高値までの結晶化度であって、望ましい範囲が任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよいもの;
4)100℃以下、95℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下または50℃以下の融点(Tm、最初の融解時のピーク);
5)90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下または40℃以下の結晶化温度(Tc、ピーク);
6)−20℃以下、−30℃以下または−40℃以下のガラス転移温度(Tg);
7)30〜2,000kg/モル、50〜1,000kg/モルまたは90〜500kg/モルのMwであって、望ましい範囲が任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよいもの;
8)1〜5、1.4〜4.5、1.6〜4、1.8〜3.5または1.8〜2.5のMw/Mnであって、望ましい範囲が任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよいもの;
9)0.1〜100g/10分、0.3〜60g/10分、0.5〜40g/10分または0.7〜20g/10分のメルトインデックス(MI、2.16kg@190℃)であって、望ましい範囲が任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよいもの;および/または
10)25〜40muまたは30〜35muのムーニー粘度(ML、(1+4)@125℃)であって、望ましい範囲が任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよいもの。
ムーニー粘度は、米国特許第6,686,415号に記載された定義および測定手順によって定義され、測定されることになり、その内容はその全体が参照によって組み込まれる。
熱可塑性樹脂
【0066】
本明細書に記載された組成物は、1種以上のオレフィン性熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。「オレフィン性熱可塑性樹脂」は、本明細書に記載された「プロピレンに基いたエラストマー」または「エチレンに基いたポリマー」ではない任意の材料であってもよい。たとえば、この熱可塑性樹脂は、本来的に熱可塑性であると当業者によって見なされるポリマーまたはポリマーブレンド、たとえば熱に曝露されると軟化し、室温に冷却されるとその元の状態に戻るポリマーであってもよい。オレフィン性熱可塑性樹脂成分は、1種以上のポリオレフィン、たとえばポリオレフィンホモポリマーまたはポリオレフィンコポリマーを含んでいてもよい。別段に規定される場合を除き、用語「コポリマー」とは2種以上のモノマーに由来するポリマー(ターポリマー、テトラポリマー等を含む。)を意味し、用語「ポリマー」とは1種以上の異なるモノマーからの繰り返し単位を有する任意の炭素含有化合物を言う。
【0067】
実例となるポリオレフィンは、モノオレフィンモノマー、たとえば2〜7個の炭素原子を有するモノマー、例としてエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、これらの混合物およびこれらのコポリマーから調製されてもよいが、これらに限定されない。好ましくは、オレフィン性熱可塑性樹脂は加硫されておらずまたは架橋さていない。
【0068】
好ましい実施形態では、オレフィン性熱可塑性樹脂はポリプロピレンを含んでおりまたはポリプロピレンから成る。本明細書で使用される用語「ポリプロピレン」とは、当業者によって「ポリプロピレン」と見なされる任意のポリマーを広く意味し、プロピレンのホモ、インパクトおよびランダムコポリマーを包含する。好ましくは、本明細書に記載される組成物に使用されるポリプロピレンは、110℃超の融点を有しており、かつ少なくとも90重量%のプロピレン由来単位を含んでいる。ポリプロピレンはまた、アイソタクチック、アタクチックまたはシンジオタクチック連鎖を含んでいてもよく、好ましくはアイソタクチック連鎖を含んでいる。ポリプロピレンは、プロピレンモノマーに専ら由来するもの(すなわち、プロピレン由来単位のみを有するもの)か、あるいは少なくとも90重量%または少なくとも93重量%または少なくとも05重量%または少なくとも97重量%または少なくとも98重量%または少なくとも99重量%のプロピレン由来単位を含んでおり、残余がオレフィン、たとえばエチレンおよび/またはC
4〜C
10α−オレフィンに由来するものである。
【0069】
オレフィン性熱可塑性樹脂は、DSCによって測定された少なくとも110℃、または少なくとも120℃、または少なくとも130℃の融解温度を有してもよく、また融解温度は110℃から170℃以上の範囲でもよい。
【0070】
熱可塑性樹脂は、約0.1〜100g/10分の、230℃および2.16kg重量でのASTM D1238によって測定されたメルトフローレート「MFR」を有してもよい。いくつかの実施形態では、熱可塑性樹脂は非常に小さい(fractional)MFRを有してもよく、そのようなポリプロピレンは約2g/10分未満または約1.5g/10分未満または約1g/10分未満の非常に小さい(fractional)MFRを有する。いくつかの実施形態では、熱可塑性樹脂は約25、26、27、28、29、30、31、32または33g/10分の最小値から約37、38、39、40、41、42、43、44または45g/10分の最大値までのMFRを有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。いくつかの実施形態では、熱可塑性樹脂、たとえばポリプロピレンは、約5、10または15g/10分の最小値から約20、25または30g/10分の最大値までのMFRを有してもよく、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
フィラーおよび添加物
【0071】
本明細書に記載された組成物はまた、様々な添加物を取り込んでもよい。添加物としては、強化性および非強化性フィラー、酸化防止剤、安定剤、プロセス油、相溶化剤、潤滑剤(たとえば、オレアミド)、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、ワックス、フィラーおよび/または顔料用のカップリング剤、顔料、難燃剤、酸化防止剤および当該技術分野で公知の他の加工助剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、添加物は、ルーフィング組成物の約65重量%まで、または約60重量%まで、または約55重量%まで、または約50重量%までを構成してもよい。いくつかの実施形態では、添加物は、ルーフィング組成物の少なくとも5重量%、または少なくとも10重量%、または少なくとも15重量%、または少なくとも20重量%、または少なくとも25重量%、または少なくとも30重量%、または少なくとも35重量%、または少なくとも40重量%を構成してもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、ルーフィング組成物はフィラーおよび着色剤を含んでいてもよい。典型的な材料としては、無機フィラー、たとえば炭酸カルシウム、クレー、シリカ、タルク、二酸化チタンまたはカーボンブラックが挙げられる。任意のタイプのカーボンブラック、たとえばチャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が使用されることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、ルーフィング組成物は、難燃剤、たとえば炭酸カルシウム、水和水を含有する無機クレー、例として三水和アルミナ(「ATH」)または水酸化マグネシウムを含んでいてもよい。たとえば、炭酸カルシウムまたは水酸化マグネシウムは、熱可塑性樹脂、たとえばポリプロピレンまたはポリエチレン、例として直鎖状低密度ポリエチレンとともにマスターバッチ中に予めブレンドされてもよい。たとえば、難燃剤は、ポリプロピレン、インパクトポリプロピレン−エチレンコポリマーまたはポリエチレンと予めブレンドされてもよく、その場合にマスターバッチは、マスターバッチの重量に基いて少なくとも40重量%、または少なくとも45重量%、または少なくとも50重量%、または少なくとも55重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも65重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも75重量%の難燃剤を含んでいる。難燃剤マスターバッチは次に、ルーフィング組成物の少なくとも5重量%、または少なくとも10重量%、または少なくとも15重量%、または少なくとも20重量%、または少なくとも25重量%を構成してもよい。いくつかの実施形態では、ルーフィング組成物は、5重量%〜40重量%、または10重量%〜35重量%、または15重量%〜30重量%の難燃剤マスターバッチを含んでおり、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、ルーフィング組成物はUV安定剤、たとえば二酸化チタンまたはTinuvin(商標)XT−850を含んでいてもよい。UV安定剤は、マスターバッチの一部としてルーフィング組成物中に導入されてもよい。たとえば、UV安定剤は、熱可塑性樹脂、たとえばポリプロピレンまたはポリエチレン、例として直鎖状低密度ポリエチレンとともにマスターバッチ中に予めブレンドされてもよい。たとえば、UV安定剤は、ポリプロピレン、インパクトポリプロピレン−エチレンコポリマーまたはポリエチレンと予めブレンドされてもよく、その場合にマスターバッチは、マスターバッチの重量に基いて少なくとも5重量%、または少なくとも7重量%、または少なくとも10重量%、または少なくとも12重量%、または少なくとも15重量%のUV安定剤を含んでいる。UV安定剤マスターバッチは次に、ルーフィング組成物の少なくとも5重量%、または少なくとも7重量%、または少なくとも10重量%、または少なくとも15重量%を構成してもよい。いくつかの実施形態では、ルーフィング組成物は5重量%〜30重量%、または7重量%〜25重量%、または10重量%〜20重量%の難燃剤マスターバッチを含んでおり、望ましい範囲は任意の下限から任意の上限までの範囲を含んでもよい。
【0075】
さらに他の添加物として、酸化防止剤および/または熱安定剤が挙げられてもよい。典型的な実施形態では、加工時および/または使用時熱安定剤として、BASF社から市販のIRGANOX(商標)B−225および/またはIRGANOX(商標)1010が挙げられてもよい。
ルーフィング組成物
【0076】
本明細書に記載されたルーフィング組成物は、ルーフィング用途、たとえば熱可塑性ポリオレフィンルーフィング膜用途に特に有用である。ルーフィング組成物から製造された膜は、特性の有益な組み合わせを示すことができ、特に、−40℃〜40℃の温度での柔軟性と、高い温度、たとえば40℃〜100℃での安定性との改善されたバランスを示すことができる。
【0077】
本明細書に記載されたルーフィング組成物は、ポリマー製造プロセス、たとえばバンバリーミキサーまたは2軸スクリュー押出機を使用して、予め複合化することによって、あるいはその場で(in−situ)複合化することによってつくられてもよい。組成物はその後、ルーフィング膜へと形成されてもよい。ルーフィング膜は、商用のルーフィング用途、たとえば水平な、傾斜の緩いまたは傾斜の急な基板上のルーフィング用途に特に有用であることができる。
【0078】
ルーフィング膜は、ルーフィング基板の上に当該技術分野で知られた任意の手段によって、たとえば接着剤、バラスト材料、スポットボンディングまたは機械的なスポット留め具によって固定されてもよい。たとえば、膜は、端部シートに沿って置かれた機械的な留め具およびプレートを使用して取り付けられ、そして膜を通して固定されてルーフデッキとされてもよい。隣接する柔軟な膜のシートは、留め具およびプレートを覆って重ね合わされ、たとえば好ましくは熱風溶接を用いて接合されてもよい。膜はまた、接着剤を使用して絶縁材料またはデッキ材料に完全に接着されまたは自己接着されてもよい。絶縁材料が典型的には機械的な留め具でデッキに固定され、柔軟な膜がその絶縁材料に接着させられる。
【0079】
ルーフィング膜は任意のタイプのスクリムで強化されてもよく、スクリムとしては、ポリエステル、繊維ガラス、繊維ガラス強化ポリエステル、ポリプロピレン、織布もしくは不織布の織物(たとえば、ナイロン(商標))またはこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。好ましいスクリムは繊維ガラスおよび/またはポリエステルである。
【0080】
いくつかの実施形態では、膜の上面および/または底面の表面層は、様々なパターンで粗い質感を与えられてもよい。粗い質感は、膜の表面積を増加させ、ぎらつきを低減し、膜表面を滑りにくくする。質感の様式の例としては、多角形の基盤および共通の頂点で接する三角形の面を備えた多面体、たとえばピラミッド形の基盤;円形または楕円形配置を有する円錐形配置;およびランダムパターン配置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
有用なルーフィング膜は、0.1〜5mmまたは0.5〜4mmの厚さを有してもよい。
【0082】
本明細書に記載されたルーフィング膜組成物は、プロピレンに基いたエラストマーと、熱可塑性樹脂と、少なくとも1種の難燃剤と、少なくとも1種の紫外線安定剤とのブレンド組成物を含んでいる。いくつかの実施形態では、ブレンド組成物はポリアルファオレフィンをさらに含んでいる。
【0083】
ブレンド組成物は、約10〜約50重量%のプロピレンに基いたエラストマーを含んでいてもよい。たとえば、ブレンド組成物は、少なくとも20重量%、または少なくとも25重量%、または少なくとも30重量%、または少なくとも35重量%、または少なくとも40重量%のプロピレンに基いたエラストマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ブレンド組成物は45重量%未満のプロピレンに基いたエラストマーを含んでいる。
【0084】
プロピレンに基いたエラストマーは、本明細書に記載されたもののいずれかであってもよい。しかし、いくつかの好ましい実施形態では、プロピレンに基いたエラストマーは、プロピレンに基いたエラストマーの重量に基いて5〜30重量%のエチレン含有量を有してもよく、その場合にプロピレンに基いたエラストマーは第1のポリマー成分および第2のポリマー成分のリアクターブレンドであり、第1のポリマー成分は第1のポリマー成分の全重量に基いて5重量%超から30重量%未満までのエチレン含有量R
1を有し、第2のポリマー成分は第2のポリマー成分の全重量に基いて1重量%超から10重量%未満までのエチレン含有量R
2を有する。いくつかの好ましい実施形態では、プロピレンに基いたエラストマーは、16〜18重量%のエチレン含有量、120℃未満の融解温度および75J/g未満の融解熱を有する。
【0085】
ブレンド組成物は、約5〜約40重量%の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。たとえば、ブレンド組成物は、少なくとも7重量%、少なくとも10重量%、または少なくとも12重量%の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。たとえば、ブレンド組成物は35重量%未満、または30重量%未満、または25重量%未満、または20重量%未満の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
【0086】
熱可塑性樹脂は、本明細書に記載されたもののいずれかであってもよい。しかし、好ましい実施形態では、熱可塑性樹脂は、ポリプロピレンまたはインパクトプロピレンコポリマーを含んでいる。たとえば、有用なポリプロピレンとしては、5g/10分超、または25g/10分超、または30g/10分超のMFR(230℃、2.16kg)を有するものが挙げられる。たとえば、有用なインパクトプロピレンコポリマーとしては、30g/10分未満、または10g/10分未満、または5g/10分未満のMFR(230℃、2.16kg)を有するものが挙げられる。
【0087】
ブレンド組成物は、約1重量%〜約40重量%の難燃剤を含んでいてもよい。たとえば、ブレンド組成物は、少なくとも3重量%、または少なくとも5重量%、または少なくとも7重量%、または少なくとも10重量%、または少なくとも12重量%、または少なくとも15重量%、または少なくとも17重量%、または少なくとも20重量%の1種以上の難燃剤を含んでいてもよい。たとえば、ブレンド組成物は40重量%未満、または35重量%未満、または30重量%未満、または25重量%未満の1種以上の難燃剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ブレンド組成物は、少なくとも10〜30重量%、または15〜25重量%の1種以上の難燃剤を含んでいる。
【0088】
ブレンド組成物は、約1重量%〜約15重量%の少なくとも1種の紫外線安定剤を含んでいてもよい。たとえば、ブレンド組成物は、12重量%未満、または10重量%未満、または7重量%未満、または5重量%未満の紫外線安定剤を含んでいてもよい。
【0089】
ブレンド組成物は、エチレンに基いたポリマーをさらに含んでいてもよい。たとえば、ブレンド組成物は、−40〜−50℃のガラス転移温度(Tg)を有するエチレンに基いたプラストマーをさらに含んでいてもよい。
【0090】
ブレンド組成物は、10g/10分未満、または7g/10分未満、または5g/10分未満のMFR(230℃、2.16kg)を有してもよい。
【0091】
ブレンド組成物は、
以下の特性のうちの少なくとも3種、または少なくとも4種、または少なくとも5種、または少なくとも6種、または少なくとも7種、または少なくとも8種、または9種の全てを有してもよい:
(i)2.5x10
10未満、または2.4x10
10未満、または2.3x10
10未満、または2.2x10
10未満、または2.1x10
10ダイン/cm
2未満の−40℃での貯蔵弾性率(E’);
(ii)1.5x10
10未満、または1.4x10
10未満、または1.3x10
10ダイン/cm
2未満の−30℃での貯蔵弾性率(E’);
(iii)5x10
9未満、または4.5x10
9未満、または4x10
9ダイン/cm
2未満の−20℃での貯蔵弾性率(E’);
(iv)2x10
9ダイン/cm
2未満の0℃での貯蔵弾性率(E’);
(v)1.5x10
9未満、または1.4x10
9未満、または1.3x10
9ダイン/cm
2未満の20℃での貯蔵弾性率(E’);
(vi)6.5x10
8超、または7x10
8超、または7.5x10
8ダイン/cm
2ダイン/cm
2超の40℃での貯蔵弾性率(E’);
(vii)4x10
8超、または4.1x10
8超、または4.2x10
8超、または4.3x10
8超、または4.4x10
8ダイン/cm
2超の60℃での貯蔵弾性率(E’);
(viii)2x10
8超、または2.2x10
8超、または2.3x10
8超、または2.5x10
8超、または2.6x10
8ダイン/cm
2超の80℃での貯蔵弾性率(E’);または
(ix)1x10
8超、または1.2x10
8超、または1.3x10
8超、または1.4x10
8超、または1.5x10
8ダイン/cm
2超の100℃での貯蔵弾性率(E’)。
[実施例]
【0092】
これまでの検討のよりよい理解に供するために、以下の非限定的な実施例が提供される。これらの実施例は特定の実施形態を対象にしていることがあるけれども、いかなる特定の点においてもそれらは本発明を限定していると見なされてはならない。特に指示がない限り、全ての部、割合およびパーセントは重量による。
【0093】
実施例で使用された試験方法は、下の表1に示される。
【表1】
【0094】
実施例でつくられたサンプルについて動的機械熱分析(「DMTA」)試験が行われ、温度の関数としてのサンプルの小歪み機械応答についての情報が提供された。サンプル試料は、デュアルカンチレバー試験装置を備えた市販のDMA測定器(たとえば、TA Instruments社製DMA 2980またはRheometrics社製RSA)を使用して試験された。試料は−130℃に冷却され、次に2℃/分の速度で60℃にまで加熱され、その間0.1%の歪みおよび6.3ラジアン/秒の周波数で振動変形に付された。DMTA試験の出力は、貯蔵弾性率(E’)および損失弾性率(E”)である。貯蔵弾性率は弾性応答、すなわち材料がエネルギーを貯蔵する能力を表し、損失弾性率は粘性応答、すなわち材料がエネルギーを逸散する能力を表す。タンジェントデルタとは、損失弾性率と貯蔵弾性率との比(E”/ E’)である。ガラス転移温度(Tg)とは、ピーク損失弾性率(E”)あるいはタンジェントデルタのピークに関連する温度であると定義される。
【0095】
実施例において、「PP3155」とは、ExxonMobil Chemical社から入手可能なExxonMobil(商標)PP3155ポリプロピレンである。PP3155は、0.9g/ccの密度および36g/10分(ASTM D1238)のメルトマスフローレート(MFR)(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレンホモポリマーである。
【0096】
実施例において、「PP7032」は、ExxonMobil Chemical社から入手可能なExxonMobil(商標)PP7032E2ポリプロピレンである。PP7032は、0.9g/ccの密度および4.0g/10分(ASTM D1238)のメルトマスフローレート(MFR)(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレンインパクトコポリマーである。
【0097】
実施例において、「PP8244」は、ExxonMobil Chemical社から入手可能なExxonMobil(商標)PP8244E1ポリプロピレンである。PP8244は、0.9g/ccの密度および29.0g/10分(ASTM D1238)のメルトマスフローレート(MFR)(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレンインパクトコポリマーである。
【0098】
実施例において、「PP7143」は、ExxonMobil Chemical社から入手可能なExxonMobil(商標)PP7143KNE1ポリプロピレンである。PP7143は、0.9g/ccの密度および24.5g/10分(ASTM D1238)のメルトマスフローレート(MFR)(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレンインパクトコポリマーである。
【0099】
Hifax(商標)CA10AはLyondell/Basell Industries社から入手可能なリアクター熱可塑性ポリオレフィンである。Hifax(商標)CA10Aは、0.88g/ccの密度、0.6g/10分のメルトフローレ−ト(230℃、2.16kg)、60℃のビカット軟化温度、142℃の融解温度および30のショアD硬度を有する。比較例の配合物はHifax(商標)CA10Aを含んでいる。
【0100】
実施例において、「Vistamaxx(商標)6102」はExxonMobil Chemical社から入手可能なVistamaxx(商標)6102「プロピレンに基いたエラストマー」である。Vistamaxx(商標)6102は、16重量%のエチレン由来単位を含んでいるプロピレン−エチレンコポリマーであり、以下の典型的な特性を有する:0.862g/cc(ASTM D1505)の密度、1.4g/10分(ASTM D1238)のメルトインデックス(190℃、2.16kg)、3g/10分(ASTM D1238)のメルトマスフローレート(MFR)(230℃、2.16kg)、66のショアAジュロメーター硬度(ASTM D224)および52.2℃のビカット軟化温度。比較例の配合物はVM6102を含んでいる。
【0101】
実施例で使用された難燃剤濃縮物は、LLDPEと80%の炭酸カルシウムとのマスターバッチ濃縮物であり、1.92g/ccの密度を有する。
【0102】
実施例で使用されたUV安定剤濃縮物は、UV安定剤添加物、白色顔料としての二酸化チタンおよび担体樹脂を含んでいるマスターバッチであり、このマスターバッチは1.04g/ccの密度を有する。
【0103】
実施例において、「Vistamaxx(商標)6100」はExxonMobil Chemical社から入手可能なVistamaxx(商標)6100「プロピレンに基いたエラストマー」である。Vistamaxx(商標)6100は、16重量%のエチレン由来単位を含んでいるプロピレン−エチレンコポリマーであり、以下の典型的な特性を有する:0.862g/ccの密度(ASTM D1505)および3g/10分のメルトマスフローレート(MFR)(230℃、2.16kg)(ASTM D1238)。
【0104】
実施例において、E−1およびE−2は、単一のリアクター中でメタロセン触媒によって調製されたエチレンとプロピレンとのコポリマーである。E−1の調製に使用された触媒は1,1’−ビス(4-トリエチルシリルフェニル)メチレン−(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−第3ブチル−9−フルオレニル)ハフニウムジメチルであり、活性剤はジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。E−2の調製に使用された触媒はジメチルシリルビス(インデニル)ハフニウムジメチルであり、活性剤はジメチルアニリニウムテトラキス(ヘプタフルオロナフチル)ボレートである。E−1およびE−2は本明細書に記載されたプロセスによって重合された。共重合は、単相で液充満の撹拌槽型リアクター中で実施され、供給原料は装置に連続流れで供給され、製品は平衡条件の下で連続的に抜き出された。全ての重合は、可溶性のメタロセン触媒および共触媒として個別性の非配位性ボレートアニオンを使用して、一般にヘキサン溶媒と呼ばれている主としてC
6アルカンを含んでいる溶媒中で行われた。ヘキサン中のトリ−n−オクチルアルミニウムの均一な希薄溶液が、反応を維持するのに適当な濃度で捕捉剤として使用された。水素が、分子量を調節するために必要により加えられた。ヘキサン溶媒は、3Aモレキュラーシーブおよび塩基性アルミナの床上で精製された。エチレン以外の全ての供給原料は、定量ポンプによってリアクター中に送り込まれ、エチレンは質量流量計/調節器を通してガスとして流入させられた。リアクター温度は、供給原料の調節された冷却によっておよびリアクターを加熱する重合熱を使用して断熱的に調節された。リアクターは、反応物混合物の蒸気圧を超える圧力に維持されて、反応物を液相に維持した。このようにして、リアクターは均一の単一相の液充満で操作された。エチレンおよびプロピレンの供給原料は1つの流れへと一緒にされ、それから予め冷却されたヘキサン流れと混合された。トリ−n−オクチルアルミニウム捕捉剤のヘキサン溶液が、あり得る触媒毒の濃度をさらに低減させるために、溶媒およびモノマーの一緒にされた流れがリアクターに入る直前でその流れに加えられた。溶媒中の触媒成分の混合物は、リアクターに別個に送られ、別個のポートを通して入れられた。反応混合物は、3方向に対向する傾斜パドルの撹拌機セットを備えたマグナドライブ装置を使用して約750rpmまで激しく撹拌されて、溶液粘度の広い範囲にわたって完全な混合がもたらされた。流量は、リアクター中の平均滞留時間が約10分に維持されるように設定された。リアクターを出た後、コポリマー混合物は、クエンチ工程、一連の濃縮工程、加熱および真空ストリッピングおよびペレット化に付された。これらの一般的な条件は国際特許出願第WO 99/45041号に記載されており、この内容は参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。E−1およびE−2の重合プロセスのさらなるプロセス条件が下の表2に示される。
【表2】
【0105】
E−1は、約78重量%の全エチレン含有量を有し、残余はプロピレン由来単位であった。E−1は、約36MUの125℃でのムーニー粘度ML(1+4)および約0.876g/ccの密度(ASTM D1505)を有していた。E−2は、約85重量%の全エチレン含有量を有し、残余はプロピレン由来単位であった。E−2は、約31MUの125℃でのムーニー粘度ML(1+4)および約0.876g/ccの密度(ASTM D1505)を有していた。
【0106】
1つの実施形態では、Vistamaxx(商標)6100は残りの成分とコンパウンドされる前にE−1/E−2とブレンドされる。1つの実施形態では、Vistamaxx(商標)6100はE−1/E−2とリアクターブレンドされる。1つの実施形態では、Vistamaxx(商標)6100はE−1/E−2と物理的にブレンドされる。
【0107】
下の表3〜12は、実施例1〜5の配合物のサンプルおよび試験する特性を報告する。下のこれらの表のルーフィング配合物は、シートダイを備えた1.5インチの単軸押出機でコンパウンドされた。これらの配合物は、最初に13kgのバッチ重量にタンブルブレンドされ、押出機のホッパーに直接、導入された。融解物温度は約200℃に維持された。シート断面は8〜9インチ(20〜23mm)の範囲の幅および40〜60ミル(1.0〜1.5mm)の範囲の厚さで製造された。ダイギャップは、断面幅にわたる厚さの均一性を維持するように適当に調節された。押出機速度およびロール引き取り速度は、所要範囲内の厚さを維持するように適当に調節された。シート断面は機械方向(MD)および横方向(CD)の両方について試験された。
【0108】
より高いインパクトコポリマー含有量の追加のルーフィング配合物が、シートダイが取り付けられたHAAKE単軸押出機でコンパウンドされた。シート断面は50mmの幅および40〜60ミル(1.0〜1.5mm)の範囲の厚さで製造され、残りのプロセス条件は上記されたものと同様であった。シート断面はMDおよびCDの両方について試験された。
【実施例1】
【0109】
実施例1では、表3の配合物のサンプルが調製された。配合物の各成分の量は、表3に配合物の全重量に基いて重量パーセントで示されている。C1、C2およびC3は比較例のサンプルであり、サンプル1、2、3および4は実施例である。得られたサンプルは様々な特性について試験され、結果が表4に示される。
【表3】
【表4】
【0110】
表3および4は、ポリプロピレンホモポリマーであるExxonMobil(商標)PP 3155樹脂を含んでいるTPO配合物を示す。パーセントで表されるポリマー分割比は、エチレンコポリマー(E−1またはE−2)と、エチレンコポリマーおよびPBE樹脂の合計ポリマー成分と、の比として定義される。本発明の実施例1〜4では、ポリマー分割比は10〜20%で変わる。比較例の配合物C1はエチレンコポリマーを含んでいない組成物である。比較例C2は、Vistamaxx(商標)6102PBEとHifax(商標)CA 10Aとのブレンドを含んでいる組成物である。比較例C3はHifax(商標)CA 10Aポリマーを含んでいる配合物である。機械方向の引き裂き強さは、実施例1〜4の方が比較例C1と比較して高い。比較例C3との関係では、本発明の配合物の100%弾性率はより低く、これはこれらの組成物の柔軟性を反映している。さらに、少量のエチレンプロピレンコポリマーの存在は、このコポリマーを含んでいない配合物(比較例C1における−45℃の脆化温度)と比較して、改善された低温特性(実施例1における−53℃の脆化温度)を与える。
【0111】
図1は、弾性率E’と温度とのプロットを示す。実施例1および4は、20℃までは比較例C3と同様の弾性率特性を示し、他方、実施例2は全温度領域にわたって組成物C3に近い弾性率応答を示す。比較例C2およびC3と比較して100℃において実施例1および実施例4に見られるより高い弾性率値は、周囲条件に長期間曝露された後のロールのブロッキングを軽減するのに役立つことができる。
【実施例2】
【0112】
実施例2では、表5の配合物のサンプルが調製された。配合物の各成分の量は、表5に配合物の全重量に基いて重量パーセントで示されている。C4、C2およびC3は比較例のサンプルであり、サンプル5、6、7および8は実施例である。得られたサンプルは様々な特性について試験され、結果が表6に示される。
【表5】
【表6】
【0113】
表5および6は、ポリプロピレンインパクトコポリマーであるExxonMobil(商標)PP 7032樹脂を含んでいるTPO配合物を示す。パーセントで表されるポリマー分割比は、エチレンコポリマー(E−1またはE−2)と、エチレンコポリマーおよびPBE樹脂の合計ポリマー成分と、の比として定義される。本発明の実施例5〜8では、ポリマー分割比は10〜20%で変わる。比較例の配合物C4はエチレンコポリマーを含んでいない組成物である。比較例C2は、Vistamaxx(商標)6102PBEとHifax(商標)CA 10Aとのブレンドを含んでいる組成物である。比較例C3はHifax(商標)CA 10Aポリマーを含んでいる配合物である。MDおよびCDの両方における引き裂き強さは、実施例5〜8の方が比較例C4と比較して高い。比較例C3との関係では、本発明の配合物の100%弾性率はより低く、これはこれらの組成物の柔軟性を反映している。少量のエチレンプロピレンコポリマーの存在は、このコポリマーを含んでいない配合物(比較例C4における−46℃の脆化温度)と比較して、改善された低温特性(実施例5における−53℃の脆化温度)を与える。
【0114】
図2は、弾性率E’と温度とのプロットを示す。実施例5〜8は、全温度領域にわたって比較例C3よりも低い弾性率特性を示す。他方、実施例2は全温度領域にわたって組成物C3に近い弾性率応答を示す。これらの配合物中のインパクトコポリマー成分の存在は、比較例C2に類似した改善された柔軟性を与える。より低い弾性率はルーフィング用途のための望ましい属性である。
【実施例3】
【0115】
実施例3では、表7の配合物のサンプルが調製された。配合物の各成分の量は、表7に配合物の全重量に基いて重量パーセントで示されている。C5およびC6は比較例のサンプルであり、サンプル9、10、11および12は実施例である。得られたサンプルは様々な特性について試験され、結果が表8に示される。
【表7】
【表8】
【0116】
表7および8は、ポリプロピレンインパクトコポリマーであるExxonMobil(商標)PP 7032樹脂を含んでいるTPO配合物を示す。これらの配合物はHAAKE単軸押出機でコンパウンドされた。パーセントで表されるポリマー分割比は、エチレンコポリマー(E−1)と、エチレンコポリマーおよびPBE樹脂の合計ポリマー成分と、の比として定義される。本発明の実施例9〜12では、ポリマー分割比は10〜20%で変わる。比較例の配合物C5はエチレンコポリマーを含んでいない組成物である。比較例C6は、Hifax(商標)CA 10Aポリマーを含んでいる配合物である。本発明の実施例9〜12では、脆化温度は比較例C5よりも低い。少量成分としてのエチレンコポリマーの存在は、本発明の配合物の低温特性を改善する。
【0117】
図3は、表7に示された配合物についての弾性率E’と温度とのプロットを示す。エチレンコポリマー成分を含んでいる実施例9は、−40℃〜40℃の使用温度範囲において比較例C5の弾性率に匹敵しており、また高い温度(80℃〜100℃)ではより高い弾性率を示す。高い温度でのより高い弾性率は、倉庫に保管中のロールのブロッキングを軽減する上で望ましい属性である。本発明の配合物10〜12は、高い温度で比較例C6と比較してより高い弾性率を示す。このことは、配合物中のより高いポリプロピレン含有量から生じている。
【実施例4】
【0118】
実施例4では、表9の配合物のサンプルが調製された。配合物の各成分の量は、表9に配合物の全重量に基いて重量パーセントで示されている。C7およびC6は比較例のサンプルであり、サンプル13、14および15は実施例である。得られたサンプルは様々な特性について試験され、結果が表10に示される。
【表9】
【表10】
【0119】
表9および10は、ポリプロピレンインパクトコポリマーであるExxonMobil(商標)PP 8244樹脂を含んでいるTPO配合物を示す。これらの配合物はHAAKE単軸押出機でコンパウンドされた。パーセントで表されるポリマー分割比は、エチレンコポリマー(E−1)と、エチレンコポリマーおよびPBE樹脂の合計ポリマー成分と、の比として定義される。本発明の実施例13〜15では、ポリマー分割比は20%である。比較例の配合物C7はエチレンコポリマーを含んでいない組成物である。比較例C6は、Hifax(商標)CA 10Aポリマーを含んでいる配合物である。
【0120】
図4は、表9に示された配合物についての弾性率E’と温度とのプロットを示す。本発明の配合物13〜15は、それぞれ比較例C7およびC6と比較して高い温度(80℃〜100℃)においてより高い弾性率を示す。高い温度でのより高い弾性率は、倉庫に保管中のロールのブロッキングを軽減する上で望ましい属性である。
【実施例5】
【0121】
実施例5では、表11の配合物のサンプルが調製された。配合物の各成分の量は、配合物の全重量に基いて重量パーセントで表11に示されている。C8およびC6は比較例のサンプルであり、サンプル16、17および18は実施例である。得られたサンプルは様々な特性について試験され、結果が表12に示される。
【表11】
【表12】
【0122】
表11および12は、ポリプロピレンインパクトコポリマーであるExxonMobil(商標)PP 7143樹脂を含んでいるTPO配合物を示す。これらの配合物はHAAKE単軸押出機でコンパウンドされた。パーセントで表されるポリマー分割比は、エチレンコポリマー(E−1)と、エチレンコポリマーおよびPBE樹脂の合計ポリマー成分と、の比として定義される。本発明の実施例16〜18では、ポリマー分割比は20%である。比較例の配合物C8はエチレンコポリマーを含んでいない組成物である。比較例C6は、Hifax(商標)CA 10Aポリマーを含んでいる配合物である。
【0123】
図5は、表11に示された配合物についての弾性率と温度とのプロットを示す。本発明の配合物16〜18は、それぞれ比較例C8およびC6と比較して高い温度(80℃〜100℃)においてより高い弾性率を示す。高い温度でのより高い弾性率は、倉庫に保管中のロールのブロッキングを軽減する上で望ましい属性である。
【0124】
特定の実施形態および特徴が、1組の数値上の上限および1組の数値上の下限を使用して記載されてきた。特に指定のない限り、任意の下限から任意の上限までの範囲が目論まれていることが理解されなければならない。全ての数値は「約」または「おおよそ」表示された値であり、また当業者によって予測される実験誤差および変動を考慮に入れている。
【0125】
本明細書で使用される句「実質的に・・・ない」および「実質的に含んでいない」とは、対象の項目がいかなる量においても意図的には使用されないまたは加えられないが、環境上またはプロセス条件に起因する不純物として存在する非常に少量で存在することがあることを意味するように意図されている。
【0126】
特許請求の範囲で使用される用語が上で定義されていない限度において、それは当業者がその用語に与えた、少なくとも一つの印刷された刊行物または発行された特許に反映されているような最も広い定義が与えられなければならない。その上、本出願で引用された全ての特許、試験方法等の文書は参照によって本明細書に組み込まれるが、そのような開示内容が本出願と矛盾せず、その組み込みが許される全ての法管轄区域での目的のためを限度とする。
【0127】
これまでの記載は本発明の実施形態に関するものであるけれども、本発明のそれ以外のおよびさらなる実施形態が、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく考案されることができ、またその範囲は、以下に続く特許請求の範囲によって決定される。