特許第6643476号(P6643476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643476α−フェトプロテイン由来糖ペプチドの質量分析法を用いる肝臓がんの診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643476
(24)【登録日】2020年1月8日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】α−フェトプロテイン由来糖ペプチドの質量分析法を用いる肝臓がんの診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20060101AFI20200130BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   G01N27/62 V
   G01N27/62 X
   G01N33/68
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-524438(P2018-524438)
(86)(22)【出願日】2017年4月27日
(65)【公表番号】特表2019-516064(P2019-516064A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(86)【国際出願番号】KR2017004484
(87)【国際公開番号】WO2018194203
(87)【国際公開日】20181025
【審査請求日】2018年5月10日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0051054
(32)【優先日】2017年4月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514248879
【氏名又は名称】コリア ベーシック サイエンス インスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジョン シン
(72)【発明者】
【氏名】キム,クァン ヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュ ヨン
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/007764(WO,A1)
【文献】 Hyunsoo Kim,Measurement of Glycosylated Alpha-Fetoprotein Improves Diagnostic Power over the Native Form in Hepatocellular Carcinoma,PLOS ONE,2014年10月,Vol.9/Iss.10,PP.1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60−70、92
G01N 33/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法であって、以下の工程:
1)対象から得られたサンプルからα−フェトプロテイン(AFP)を抗AFP抗体を用いて分離すること;
2)工程1)で分離されたAFPを加水分解することによってAFP糖ペプチドを得ること;
3)工程2)で得られたAFP糖ペプチドの質量および数量を分析すること;
4)Val-Asn-Phe-Thr-Glu-Ile-Gln-Lys(VNFTEIQK、配列番号1)から構成される配列を含み、および2600.1±0.5、2746.2±0.5、2891.2±0.5、3037.2±0.5、3182.3±0.5または3328.3±0.5Daの分子量を有する糖ペプチドを選択すること;および
5)工程4)で選択された糖ペプチドのフコシル化率を計算し、およびその計算結果を肝硬変または肝炎を有する対象から分離されたサンプルのもの比較すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
サンプルが、組織、細胞、細胞培養液、血液、および血清からなる群から選択される1種以上の材料である、請求項1に記載の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法。
【請求項3】
抗AFP抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法。
【請求項4】
抗AFP抗体が、磁気ビーズと抱合している、請求項に記載の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法。
【請求項5】
磁気ビーズの表面が、トシル化またはエポキシ化されている、請求項に記載の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法。
【請求項6】
磁気ビーズが、ストレプトアビジン、プロテインG、またはプロテインAと結合している、請求項に記載の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法。
【請求項7】
工程2)の加水分解が、arg−C、asp−N、glu−C、キモトリプシン、およびトリプシンからなる群から選択される1種以上の酵素を用いて行われる、請求項1に記載の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法。
【請求項8】
工程3)の質量の分析が、並列反応モニタリング(PRM)、多重反応モニタリング(MRM)、または単一反応モニタリング(SRM)によって行われる、請求項1に記載の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法。
【請求項9】
工程3)の量的分析が、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC−MS)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI−MS)、または直接注入法によって行われる、請求項1に記載の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法。
【請求項10】
工程2)で得られた糖ペプチドを濃縮する工程が、工程3)の前に付加的に含まれる、請求項1に記載の肝臓がん診断に有用な情報を提供するための方法。
【請求項11】
工程5)のフコシル化率の計算が、並列反応モニタリング(PRM)、多重反応モニタリング(MRM)、または単一反応モニタリング(SRM)によって行われる、請求項1に記載の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法。
【請求項12】
工程3)で分析された糖ペプチドの分子量が、2891.2±0.5、3037.2±0.5、3182.3±0.5、または3328.3±0.5Da以内(within)である場合、1つの前駆イオンからイオン化された3つのプロダクトイオンについての量的結果が、以下のとおり:
964.7 → 1181.6、1118.5、および1037.5
1013.4 → 1181.6、1191.5、および1110.5
1061.8 → 1181.6、1118.5、および1264.0
1110.5 → 1181.6、1191.5、および1337.1.
に示され得る、請求項1に記載の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法。
【請求項13】
工程2)で得られた糖ペプチドに対して脱シアリル化酵素を処置する工程が、付加的に含まれる、請求項1に記載の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法。
【請求項14】
工程3)で分析された糖ペプチドの分子量が、2600.1±0.5または2746.2±0.5Da以内(within)である場合、1つの前駆イオンからイオン化された3つのプロダクトイオンについての量的結果が、以下のとおり:
867.7 → 1181.6、1118.5および1037.5
916.4 → 1181.6、1191.5および1110.5.
に示され得る、請求項13に記載の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−フェトプロテイン(AFP)由来糖ペプチドの質量分析法を用いる肝臓がんの診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖タンパク質は、人体の様々な生命活動に関する因子である。したがって、糖タンパク質の機能的変化を理解することは重要である。細胞内で産生されたタンパク質は、それらの機能に従って翻訳され、次いで修飾され(これは「翻訳後修飾」である)、これによりそれらは、多様な糖鎖構造を有し、従って種々の独特な機能を有する種々の糖タンパク質となる。グリコシル化は、最も代表的なタンパク質修飾である。がん細胞に由来する分泌タンパク質または細胞膜の表面タンパク質は、がん遺伝子により非特異的にグリコシル化され、それによってがんを引き起こす。がんの進展(development)とグリコシル化との関係は、広く研究されており、その結果は、がん特異的なグリコシル化によって、がんが進展され得たことを確認している(Salome S. et al., Nature Reviews Cancer, 2015, 15(9):540-550)。
【0003】
糖タンパク質における異常なグルコシル化は、フコシル化、シアリル化およびポリラクトサミンなどである。かかる異常なグルコシル化の分析は、がんの診断および予後のための臨床情報を集めるために用いられ得る。かかる臨床的に有用な情報を与え得る糖タンパク質は、がんバイオマーカーとして用いられ得る。がんバイオマーカーの開発および検証(validation)のための有効な方法が開発されつつある。がん関連情報を提供することができる糖タンパク質は、がん細胞の培養培地、がん組織の溶解物または血液中の糖タンパク質を検出することによって、がんを診断するために用いることができる。このとき、サンプルとして容易に集められる血液が主に用いられる。したがって、血液サンプル中の糖タンパク質、がんバイオマーカーを分析することが重要である。しかしながら、血液中の糖タンパク質の量は、有効な分析のためには非常に少ないので、高い感受性および正確性を伴う効果的な方法が求められている。
【0004】
がんを診断するために、健常人からがん患者を明確に判別することができる技術が重要である。とくに、がん診断のためのタンパク質グルコシル化を分析するために様々な分析方法が、開発されてきている。それらの方法の間で、特定の糖鎖と反応するレクチンタンパク質を用いて、分析すべき標的糖鎖を分離および濃縮するための分析方法が最も広く用いられている。分析サンプルとして用いられる血液は、いくぶん複雑な組成を有しているので、レクチンタンパク質を用いる糖タンパク質を分離および濃縮する方法は、特定の糖鎖構造の分析に対して、より効率的なようである。分離および濃縮された糖タンパク質は、最終結果を得るために分光法によって分析され得る。
【0005】
レクチンブロッティングは、レクチンタンパク質を用いる糖タンパク質分析方法の例である。この方法は、特定の糖鎖構造を有する糖タンパク質へ選択的に結合する特異的抗体を用いるイムノブロッティングに基づく。レクチンブロッティング法は、糖タンパク質の糖鎖構造に対して選択的に結合し得るレクチンを用いて、特定の糖鎖構造を有するマーカー糖タンパク質を選択的に分離および濃縮できる。前記の方法において、ConA(コンカナバリンA)、WGA(コムギ胚芽アグルチニン)、ジャカリン、SNA(サンブクス・ニグラアグルチニン)、AAL(アリューリア・アウランティアレクチン)、LPHA(フィトヘムアグルチニン−L)、PNA(ピーナッツアグルチニン)、LCA(レンズクリマリスアグルチニン−A)、DSA(ダツラ・ストラモニウムアグルチニン)などの様々なレクチンタンパク質が、分離および濃縮すべき糖鎖の構造にしたがって用いられ得る(Yang Z. et al., J. Chromatography, 2001, 1053:79-88; Wang Y. et al., Glycobiology, 2006, 16:514-523)。しかしながら、レクチンブロッティング法は、ゲルベースの分析技術であるので、分析速度および結果の信頼性が限定的であるかもしれない。
【0006】
不満足な分析速度および信頼性は、サンドイッチアレイをベースとするレクチン/酵素結合免疫吸着法(レクチン/ELISA)を用いて改善し得る(Forrester S. et al., Cancer Mol. Oncol., 2007, 1(2):216-225)。サンドイッチアレイは、分析のため、一次および二次抗体を用いる。このとき、二次抗体の交差反応性により非特異的反応が起こり得、これは結果の不十分な再現性をもたらす可能性がある。この方法は、2つの抗体を用いるのであまり経済的ではない。
【0007】
一方、質量分析器を用いる高速/高感度の質的/量的分析もまた糖タンパク質の分析に用いられる。とくに、多重反応モニタリング質量分析法(MRM)は、タンパク質の加水分解から産生されたペプチドの定量化を促進し、これは高度に信頼できる。この方法は、複雑な組成を有する血液サンプルからの比較的素早くおよび正確な分析結果とできる。MRMによれば、標的糖タンパク質の加水分解から生成される標的ペプチドは、少なくとも1回の液体クロマトグラフィーおよび少なくとも2回の前駆体の質量選択およびプロダクトイオン選択によって分析され、血液のようなサンプルを用い高感度で選択的分析が可能になる。
【0008】
近年、並列反応モニタリング(PRM)技術が知られている(Peterson et al., Mol. Cell Proteomics, 2012, 11(11):1475-1488)。MRMと違って、この方法は、トラップおよび飛行時間質量分析器(trap and time-of-flight mass analyzer)を備えた質量分析計(mass spectrometer)を用いるので、ペプチドのプロダクトイオンスペクトルを得ることができ、ペプチドの量的および質的分析を同時に可能にする。この方法は、高い再現性および優れた感度で低いシグナルを示す微量(trace)糖タンパク質を分析することができる(Kim et al., Analytica Chimica acta., 2015(882):38-48)。
【0009】
質量分析計を用いる特定の糖鎖を分析する方法には、糖タンパク質から分離した糖鎖の分析に基づく方法、糖鎖結合糖ペプチドの分析に基づく方法、および、糖鎖結合糖タンパク質の分析に基づく方法が包含される。修飾によりタンパク質に結合した糖鎖は、様々な構造を有し、同じアミノ酸の位置で同じ時間に、様々な構造を有する糖鎖の不均一性(heterogeneity)を示す。糖鎖が結合し得るアミノ酸の位置は変化することもまた予想され、位置に依存して糖鎖の役割が変化する。したがって、糖ペプチドを部位特異的に分析することが重要である。
【0010】
タンパク質は、疾患診断のためのサンプルとして用いられている血清中に豊富である。それらの間で、約10種の高濃度タンパク質が血液の全質量のおよそ90%を占める。しかしながら、よく知られているバイオマーカータンパク質は比較的低濃度でサンプル中の正確な検出を困難にする(Anderson N.L. et al., Cell Proteomics, 2002, 1:845-867)。したがって、血清の複雑さを最小化する前処置プロセスが血清中のバイオマーカーを分析するために求められる。そうするために、高濃度タンパク質を除去するための枯渇および標的タンパク質を選択的に濃縮するための抗体ベースの免疫沈降のような方法が用いられ得る。とくに、選択されたバイオマーカーががんの場合として知られている場合、バイオマーカーに対する有効な抗体を選択することによって免疫沈降法を用いることが効率的である。
【0011】
肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)は、全ての肝臓がんの約76%を占める。肝細胞癌の原因には、慢性B型肝炎、慢性C型肝炎、肝硬変、アルコール性肝臓疾患および糖尿病性肝臓疾患が包含される。とくに、B型肝炎は高い危険因子であり、これは韓国における全ての肝細胞癌の原因のうち72%である。肝細胞癌は、肝硬変を有する患者の約3分の1に起きる。肝臓疾患から肝細胞癌への進行を診断することができるがんバイオマーカーを開発することが大きく求められる。肝細胞癌は、著しく進行するまで病徴を示さない。そうであるから、定期検査が必要とされ、そうでなければ処置が極めて限定される。効率的である処置のために、早期の診断技術が求められる。
【0012】
したがって、がんの診断に有用なバイオマーカーを同定するための研究の過程で、本発明者らは、肝臓がん患者および、肝硬変患者または肝炎患者のような肝疾患患者が、AFP糖ペプチドのフコシル化率を計算することによって判別できることを確認し、本発明の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、サンプルから分離したAFP糖ペプチドのフコシル化率を計算することによる肝臓がんの診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明は、肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法であって、以下の工程:対象から得られたサンプルからα−フェトプロテイン(AFP)を分離すること;前記で分離されたAFPを加水分解することによってAFP糖ペプチドを得ること;得られたAFP糖ペプチドの質量および数量を分析すること;Val-Asn-Phe-Thr-Glu-Ile-Gln-Lys(VNFTEIQK、配列番号1)から構成された配列を含み、2600.1±0.5、2746.2±0.5、2891.2±0.5、3037.2±0.5、3182.3±0.5または3328.3±0.5Daの分子量を有する糖ペプチドを選択すること;および、選択された糖ペプチドのフコシル化率を計算し、計算結果と肝硬変または肝炎を有する対象から分離されたサンプルの結果とを比較することを含む、前記方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のAFP糖ペプチドの分析方法は、Val-Asn-Phe-Thr-Glu-Ile-Gln-Lysを含む配列を含有する糖ペプチドのフコシル化率を分析するので、肝臓がんをその早期の進展グレード(its early developmental grade)で診断することができる。他の肝疾患の患者と比べて、肝臓がん患者はより高いフコシル化率を示す。したがって、本発明の方法は、他の肝臓疾患から肝臓がんを診断することおよび判別することに効果的に用いることができる。
本発明の好適な態様の応用は、添付の図面を参照して最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、肝臓がん患者および肝疾患の患者から分離されたAFP糖ペプチドのフコシル化率の比較を示すグラフである。
図2図2は、肝臓がん患者(グレード1、グレード2およびグレード3)および肝疾患の患者から分離されたAFP糖タンパク質のフコシル化率の比較を示すグラフである。
図3図3は、肝臓がん患者および肝疾患の患者から分離されたAFP糖ペプチドのフコシル化率の比較に基づくROC(受容体作動特性)曲線およびAUC(ROC曲線下の面積)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を詳細に記載する。
本発明は、肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法であって、以下の工程:対象から得られたサンプルからα−フェトプロテイン(AFP)を分離すること;前記で分離されたAFPを加水分解することによってAFP糖ペプチドを得ること;得られたAFP糖ペプチドの質量および数量を分析すること;Val-Asn-Phe-Thr-Glu-Ile-Gln-Lys(VNFTEIQK、配列番号1)から構成された配列を含み、2600.1±0.5、2746.2±0.5、2891.2±0.5、3037.2±0.5、3182.3±0.5または3328.3±0.5Daの分子量を有する糖ペプチドを選択すること;および、選択された糖ペプチドのフコシル化率を計算し、計算結果と肝硬変または肝炎を有する対象から分離されたサンプルの結果とを比較することを含む、前記方法を提供する。
【0018】
本発明の肝臓癌診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法は、対象から得られたサンプルからAFPを分離する工程を含む。
【0019】
ここでのサンプルは、肝臓がんの存在または進行に関する情報を含むタンパク質を包含してもよい。この本発明の分析方法に用いられる糖ペプチドは、行為が完了した場合に細胞または組織から一般的に分泌されるから、サンプルはがん細胞培養培地または患者の血液を包含し得る。とりわけ、ここでのサンプルは、組織、細胞、細胞培養液、血液および血清からなる群から選択される1種以上の材料、より好ましくは血液または血清であり得る。本発明の好ましい態様において、サンプルは血清である。
【0020】
AFPの分離は、微量で血清中のAFPの存在を分析するために、血清サンプルの複雑さを低減するための前処置であり得る。とりわけ、AFPの分離は、全血清の少なくとも90%を占めるアルブミン、免疫グロブリンGおよび免疫グロブリンAを除去することを実現する。分離は、当業者に知られたAFPを選択的に分離することができるいずれの方法によって行うことができる。AFPの分離は、微量で血清中に存在するAFPの検出限界および定量限界を改善することができる。本発明の好ましい態様において、分離は免疫沈降によって行われた。
【0021】
例として、分離は、抗AFP抗体を用いることによって行うことができる。ここでの抗AFP抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体またはそれらの混合物、または抗体フラグメントであり得る。ここでの抗体フラグメントは、標的抗原との連結能を含む抗体分子の機能的フラグメントであり得る。とりわけ、ここでの抗体フラグメントは、Fab、F(ab’)、F(ab’)2およびFvを含み得る。抗体は、当業者に知られている従来技術によって容易に構築し得る。
【0022】
前記の抗AFP抗体は、磁気ビーズへ連結し得る。磁気ビーズの表面は、トシル化またはエポキシ化、とくにトシル化されていてもよい。ここでの磁気ビーズは、好ましくは、ストレプトアビジン、プロテインGまたはプロテインAと組み合わせられている。
【0023】
本発明の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法は、分離されたAFPを加水分解することによってAFP糖ペプチドを得る工程を含む。
【0024】
この工程において、より大きな分子量を有するAFPの質量分析法の効率を向上させるため、より小さな糖ペプチドのフラグメントを加水分解によって得ることができる。加水分解に用いることができる酵素は、アルギニンC(arg−C)、アスパラギン酸N(asp−N)、グルタミン酸C(glu−C)、キモトリプシンおよびトリプシンからなる群から選択される1種以上の酵素である。本発明の好ましい態様において、加水分解に用いられる酵素はトリプシンである。
【0025】
本発明の方法において、加水分解は、標的糖ペプチドの分析効率を改善するため、当業者による変性、還元およびシステインのアルキル化のような前処置の後に行われる。
【0026】
本発明の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法は、得られたAFP糖ペプチドの質量および数量を分析する工程を含む。
【0027】
AFP糖ペプチドの質量は、同じグリコシル化部位において様々な糖鎖の構造を共有するグリカンの微小不均一性(microheterogeneity)によるグリコシル化部位を包含する糖ペプチドを分析することによって決定することができる。質量は、質量分析計を用いて分析することができる。
【0028】
質量分析は、並列反応モニタリング質量分析法(PRM)、多重反応モニタリング質量分析法(MRM)または単一反応モニタリング質量分析法(SRM)によって行うことができる。正確には、質量分析はPRMによって行うことができる。一方で、量的分析は、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC−MS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MALDI−MS)または直接注入法を用いた質量分析法によって行うことができる。
【0029】
前記PRMは、質量分析計を用いた量的分析法の1つであり、高い解像度のイオン選択性およびプロダクトイオンの結果に基づく高い信頼性を有する結果を与え得る。この方法は、血液のように複雑な組成を有するサンプルなどからの標的材料の迅速および高感度な分析を容易にする。
【0030】
MRMは、低い解像度の三連四重極型質量分析計を配置することにより、標的イオンだけを選択的に分析する方法である。この方法は、微量材料の正確な分析を容易にする。
【0031】
分析の感度および正確さを高めるために、AFP糖ペプチドの質量および数量を分析する前に、付加的に、糖ペプチドは濃縮され得る。濃縮は、当業者によって選択される適当な方法によって行うことができる。
【0032】
得られた糖ペプチドは、質量および数量を分析する前に、付加的に、脱シアリル化酵素で処置することができる。ここでの脱シアリル化酵素は、α2−3ノイラミニダーゼまたはα2−3,6,8ノイラミニダーゼであり得る。
【0033】
本発明の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法は、Val-Asn-Phe-Thr-Glu-Ile-Gln-Lys(VNFTEIQK、配列番号1)から構成された配列を含み、2600.1±0.5、2746.2±0.5、2891.2±0.5、3037.2±0.5、3182.3±0.5または3328.3±0.5Daの分子量を有する糖ペプチドを選択する工程を含む。
【0034】
糖ペプチドの分子量が、2891.2±0.5、3037.2±0.5、3182.3±0.5または3328.3±0.5Da以内(within)であるとき、1つの前駆イオンからイオン化された3つのプロダクトイオンの量的結果を以下:
964.7 → 1181.6、1118.5、および1037.5
1013.4 → 1181.6、1191.5、および1110.5
1061.8 → 1181.6、1118.5、および1264.0
1110.5 → 1181.6、1191.5、および1337.1.
として示すことができる。
【0035】
糖ペプチドの分子量が、2600.1±0.5または2746.2±0.5Da以内(within)であるとき、1つの前駆イオンからイオン化された3つのプロダクトイオンの量的結果を以下:
867.7 → 1181.6、1118.5、および1037.5
916.4 → 1181.6、1191.5、および1110.5.
として示すことができる。
【0036】
本発明の肝臓がん診断に有用な情報を提供するためのAFP糖ペプチドを分析するための方法は、選択された糖ペプチドのフコシル化率を計算し、計算結果と肝硬変または肝炎を有する対象から分離されたサンプルの結果とを比較する工程を含む。
【0037】
これまでに記載したとおり、フコシル化率は、並列反応モニタリング質量分析法(PRM)、多重反応モニタリング質量分析法(MRM)、または単一反応モニタリング質量分析法(SRM)によって得ることができ、より好ましくは、PRMによって得ることができる。
【0038】
前記の比較は、AFPオリゴペプチドのフコシル化率を、肝硬変または肝炎を有する対象のものと比較することによって達成される。正確には、AFPグリコシル化率が有意に増大する場合、肝臓がんとして診断されるであろう。そうであるから、本発明の方法は、肝臓がん患者を他の肝臓疾患の患者と判別するのに有用であり得る。
【0039】
本発明の好ましい態様において、血液サンプルを肝臓がん患者および肝臓疾患の患者から得て、AFP糖タンパク質を、得られた血液サンプルから、磁気ビーズと抗AFP抗体との複合体を用いて分離した。AFP糖ペプチドをAFP糖タンパク質から単離し、分離されたAFP糖ペプチドの質量および数量を分析した。次いで、フコシル化率を計算した。結果として、配列VNFTEIQK(配列番号1)から構成されるAFP糖ペプチドを得た。AFP糖ペプチドのフコシル化率が、肝臓がん患者において、他の肝臓疾患の患者におけるものと比べて、有意に増大していることが確認された(図1参照)。とくに、フコシル化率は、グレード1の肝臓がん患者においてさえも有意に増大した。したがって、本発明の方法は、他の肝臓疾患の患者から、早期のグレードにおける肝臓がん患者を診断するのに有用であることが確認された(図2参照)。
【実施例】
【0040】
本発明の実際的および現在の好ましい態様は、以下の例において示すように例示される。
しかしながら、当業者が、この開示を考慮し、本発明の精神および範囲内で改変および改善を行うかもしれないことが認識されるであろう。
【0041】
例1:血液サンプルの調製
38人の肝臓がん患者および21人の他の肝臓疾患の患者(対照)から血液サンプルを得て、これから血清を実験サンプルとして分離した。とりわけ、肝臓がん患者を、肝臓細胞がんの分化の程度をEdmondson-steinerレベルに従って、グレード1、グレード2、およびグレード3に分けた。血液サンプルは、15人のグレード1の患者、15人のグレード2の患者および8人のグレード3の患者から得た。一方、対照のサンプルは、8人の肝炎患者および13人の肝硬変患者から得た。
【0042】
例2:AFP糖タンパク質の分離
免疫沈降によって血清からAFP糖タンパク質を分離した。
<2−1>磁気ビーズと抗AFP抗体との抱合体(conjugate)の調製
最初に、磁気ビーズと抗AFP抗体との抱合体を免疫沈降のために調製した。とりわけ、5mgのトシル活性化磁気ビーズ(Thermo Fisher Scientific、米国)をビーズ洗浄用の500μlの0.1Mホウ酸ナトリウムに添加した。混合物をe-tubeローテーターを用いて振とうした。次いで、磁気ビーズ混合物をe-tubeマグネットを用いてホウ酸ナトリウム溶液および磁気ビーズに分離し、その後、ホウ酸ナトリウムを除去した。前記の手順を繰り返して4回ビーズを洗浄し、それに250μgの抗AFP抗体(Ab frontier、韓国)(免疫沈降用に調製したAFP特異的ユニバーサルモノクローナル抗体)を添加した。混合物を37℃にて16時間反応させた。このとき、50μlの硫酸アンモニウムを前記反応混合物に加え、抗AFP抗体が磁気ビーズと反応するための条件とするため、反応混合物のpHを9.5に維持した。反応が完了し次第、磁気ビーズ/抗AFP抗体抱合体を、0.1%(w/v)BSAおよび0.05%(v/v)ツィーン20を含むPBS(pH7.4)で洗浄した。洗浄のため、洗浄バッファーおよび磁気ビーズをe-tubeマグネットを用いて分離し、次いで溶液を捨てて、これを3回繰り返した。洗浄した結合物を、使用まで、0.1%(w/v)BSA、0.05%(v/v)ツィーン20および0.02%(w/v)アジ化ナトリウムを含む貯蔵バッファー(pH7.4)に4℃で貯蔵した。
【0043】
<2−2>血清からのAFP糖タンパク質の分離
例<2−1>で構築した磁気ビーズ/抗AFP抗体抱合体を用いて、以下のように、血清からAFP糖タンパク質を分離した。
とりわけ、10μgの抗体を含む磁気ビーズ/抗AFP抗体抱合体を得て、50mM重炭酸アンモニウムおよびPBSでそれぞれ3回洗浄した。洗浄のため、洗浄バッファーおよび磁気ビーズをe-tubeマグネットを用いて分離し、次いで溶液を捨てて、これを3回繰り返した。洗浄した磁気ビーズ/抗AFP抗体結合物に24μlの血清を加え、室温で2時間反応させた。反応が完了し次第、磁気ビーズ/抗AFP抗体抱合体をPBSで3回洗浄した。抗体が抱合されたAFP糖タンパク質を分離するために、それに40μlの0.1Mグリシンバッファー(pH2)を加えた。より正確には、分離は以下の工程:磁気ビーズをe-tubeローテーターを用いて40μlの0.1Mグリシンバッファーと混合し、次いで磁気ビーズおよび40μlの0.1Mグリシンバッファーをe-tubeマグネットを用いて分離し、溶液のみを取り出すことによって行った。分離したAFP糖タンパク質を減圧下で乾燥させ、次いで、100μlの50mM重炭酸アンモニウムに懸濁した。タンパク質を変性させるため懸濁液を95℃に加熱した。次いで、それに5mMジチオスレイトールを加え、付加的に、変性のため60℃で1時間反応させた。20mMヨード酢酸を前記の反応混合物に加え、1時間アルキル化した。これに10μgのトリプシンを加え、37℃で加水分解した。加水分解されたAFP糖タンパク質を脱塩のためC18カートリッジで処置した。得られた最終サンプルを、質量分析法に用いるまで、−20℃で貯蔵した。
【0044】
例3:AFP糖タンパク質由来の糖ペプチドの確認
<3−1>液体クロマトグラフィー(LC)/MRM
例2において得られたサンプルを用いてAFP糖タンパク質由来の糖ペプチドの質量を分析するため、以下のようにLC/MRMを行った。とりわけ、C18(5μm、300mm×5mm)をトラップカラムとして用い、C18(5μm、75μm×5mm)を分析カラムとして用いた。カラムをTripleTOF質量分析計(SCIEX)(エレクトロスプレーイオン化の原理をベースに作動する質量分析計(ESI))に接続し、LC/MRMを行った。分析は、4μlのサンプルを400nl/minの流速で注入することによって行った。このとき、0.1%(v/v)ギ酸を含む水溶液を移動相Aとして用い、0.1%(v/v)ギ酸を含むアセトニトリル溶液を移動相Bとして用いた。分析は、以下の表1に示す移動相濃度勾配条件下で60分間行った。
【0045】
【表1】
【0046】
LC/MRMの結果を、PeakViewソフトウェアを用いて分析した。結果として、6種類のAFP糖ペプチドが肝臓がんバイオマーカーとして選択され、それらを表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示すように、VNFTEIQKのアミノ酸配列から構成されるAFP糖タンパク質由来のオリゴペプチドが選択された。選択されたオリゴペプチドは、N−糖鎖構造を形成する4種類の主要な単糖、ヘキソース(Hexose)_HexNAc(N−アセチルヘキソースアミン)_フコース(Fucose)_NeuAc(N−グリコリルノイラミン酸)の順に連結することができ、各単糖の数を表に示した。結果として、全ての選択された糖ペプチドは、5つのヘキソースおよび4つのHexNAcを含んでいた。フコースとNeuAcとの組み合わせの数に従い、それらは、VNFTEIQK_5_4_0_1、VNFTEIQK_5_4_1_1、VNFTEIQK_5_4_0_2およびVNFTEIQK_5_4_1_2と提示された。脱シアリル化酵素であるα2−3ノイラミニダーゼおよびα2−3,6,8ノイラミニダーゼを用いて糖鎖のNeuAcを糖ペプチドから除去し、2つのタイプの糖鎖結合糖ペプチドであるVNFTEIQK_5_4_0_0およびVNFTEIQK_5_4_1_0となり、付加的に選択された。
【0049】
例4:選択されたAFP糖ペプチドのフコシル化率の確認
例3で選択された6種類の糖ペプチドは、肝臓がんおよび肝臓疾患特異的AFP由来糖ペプチドとして知られる。フコシル化の百分率(Fuc%)は、3つの非フコシル化糖ペプチドおよび3つのフコシル化糖ペプチドの比較によって計算した。
【0050】
とりわけ、LC/MRM質量分析を例3に記載のされたのと同じように3回行った。そこから得られたクロマトグラフィーの結果に基づいて、ピーク面積を計算した。下記数式1に従って得られたピーク面積からフコシル化率(Fuc%)を計算した。このとき、5_4_1_1および5_4_1_2をフコシル化糖ペプチドとして用い、5_4_0_1および5_4_0_2を非フコシル化糖ペプチドとして用いた。一方、脱シアリル化酵素によって付加的に選択された糖ペプチドの場合、5_4_1_0をフコシル化糖ペプチドとして用い、5_4_0_0を非フコシル化糖ペプチドとして用いた。
【0051】
【数1】
【0052】
結果として、選択された糖ペプチドにおいて、4つの種々の糖鎖が、VNFTEIQKのアミノ酸配列を有する糖ペプチドのアスパラギン(N)部位に連結していることが観察された。各糖ペプチドを用いる質量分析計において、最も高い感度を示す3の電荷を有する前駆イオン、m/z 867.7、916.4、964.7、1013.4、1061.8および1110.5、をLC/MRMに進めた。MS/MSの結果に基づき、表2において示すとおり、3種類のプロダクトイオンをLC/MRMのために選択した。これらのプロダクトイオンは、それらの質量分析法の結果および感度に対応するイオンと比較した。
【0053】
選択されたプロダクトイオンは、糖鎖を有するAFP糖ペプチドから産生される。それらの間で、Y1(1181.6)は、いずれのAFP糖ペプチドにも含まれていた。Y1プロダクトイオンは、VNFTEIQKのアスパラギン(N)部位において、唯一のHexNAcの形態で分析される前駆イオンに対し、高度に特異的な糖ペプチドである。他の2つのタイプに対し、各糖鎖の構造に特異的なプロダクトイオンを選択した。とりわけ、Y6(1037.5)およびY7(1118.5)は、糖ペプチドVNFTEIQK_5_4_0_1から選択した。Y7(1110.5)およびY8(1191.5)は、VNFTEIQK_5_4_1_1から選択した。Y7(1118.5)およびY8(1264.0)は、VNFTEIQK_5_4_0_2から選択した。Y8(1191.5)およびY9(1337.1)は、VNFTEIQK_5_4_1_2から選択した。一方、Y6(1037.5)およびY7(1118.5)は、VNFTEIQK_5_4_0_0から選択し、Y7(1110.5)およびY8(1191.5)は、VNFTEIQK_5_4_1_0から選択した。
【0054】
1つの糖ペプチドから特異的に得られた3つのプロダクトイオンのLC/MRMの結果に基づいてピーク面積を計算した。全ての結果を一緒に組み合わせて、各前駆イオンに対応する1つのクロマトグラフィーの結果を得た。このとき、1つの前駆イオンから得られた3つのプロダクトイオンを、分析感度を向上させるために用いた。得られた最終ピーク面積値を数式1に代入してフコシル化率を計算した。平均値は3回繰り返して得た。結果から、各肝臓がんおよび肝臓疾患(肝炎または肝硬変)の散布図を作成し、図1および図2に示した。ROC曲線を図3に示す。
【0055】
図1および2に示されるように、肝臓がん患者群から分離された血清中のAFP糖ペプチドのフコシル化率は、肝臓疾患の患者群のものと比較して有意に増大した(図1)。とりわけ、肝臓疾患群の平均値は8.8%であり、肝疾患の患者の少なくとも90%におけるフコシル化率は最大20%であった。一方、肝臓がん患者群の平均値は46.0%であり、肝臓がん患者のおよそ87%におけるフコシル化率は少なくとも20%であった。図2に示すとおり、グレード1の肝臓がん群およびグレード3の肝臓がん群のフコシル化率は、それぞれ肝臓疾患群のものより約6倍よりも高く、グレード2の肝臓がん群において約4倍よりも高く増大した(図2)。
【0056】
ROC曲線を図1の結果に基づいて作成した。結果として、AUROC(ROCの下面積)は0.949であり、前記の方法は、85.7%のマーカー特異性および92.1%の感度を有することが示唆された。
したがって、本発明の方法は肝臓がん患者を他の肝臓疾患の患者から判別するのに効率的であることが確認された。とりわけ、グレード1の肝臓がん患者において、他の肝臓疾患の患者と比べて、AFP糖ペプチドのフコシル化率が有意に高いので、本方法は、早期のグレードの肝臓がんの診断に極めて有用であることが確認された。
【0057】
当業者は、上記の記載において開示された概念および特定の態様が、本発明の同じ目的を実施するために他の態様を改変または設計するための基礎として容易に利用できることを認識するであろう。当業者はまた、かかる均等な態様が添付の特許請求の範囲に記載された発明の精神および範囲から逸脱しないことを認識するであろう。
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]