(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1つ以上のポリエーテルポリオール、アルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンの重量平均分子量が、200〜5000に及ぶ、請求項1に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート用の流動化剤として有用な、ポリ(メタクリル酸)のアルキルキャップしたポリ(エチレングリコール)エステルなど、ポリカルボキシラートエーテル(PCE)またはポリカルボキサミドエーテルのくし型高分子を生成するためのハイソリッドな方法に関する。
【0002】
流動化剤は、(メタ)アクリル酸などの酸官能単量体と、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリラートなどの、付加単量体のポリエーテルまたはオリゴエーテルエステルまたはアミドとの付加共重合を介して生成することができる。流動化剤は、ポリメタクリル酸(pMAA)などの、現に入手可能なポリカルボキシラート溶液重合体のエステル化またはアミノポリグリコールアミド化である、アルキルキャッピングまたはメチルキャッピングしたポリグリコール、例えば、Carbowax(商標)(The Dow Chemical Co.,Midland,MI)を介して生成することもできる。
【0003】
既知のエステル化法またはアミド化法は、酸官能重合体(ポリ酸)及びポリエーテルからなる反応混合物から、先にポリ酸を反応させながら、溶媒支援型蒸留、真空除去または不活性ガス注入によって水を除去することを含む。概して、第1の工程は、ポリカルボキシラート/ポリグリコール混合物から水を蒸留することを含む。このようなプロセスは、時間がかかり、当該反応のために特別に装備される真空反応炉または蒸留タワーなど、高価な装置を必要とする。
【0004】
Shawlらに対する米国特許第5,985,989号は、酸単量体を重合させて、ポリカルボキシラートを形成し、そこへポリエーテルをグラフト重合させる、PCEのワンポット合成を開示している。Shawlにおいて、ポリエーテルは、単官能または二官能のポリエーテルを含み得、いくつかの二官能ポリエーテルは、エステル化またはアミド化の成功確率を高めるために存在する。さらに、Shawlは、酸重合の後に付加されかつポリエーテルの総重量に基づく0.1〜1重量%のレベルで0未満のpKaを有する強酸触媒の使用を開示している。強酸は、このプロセスにおいて開裂を受ける1〜25重量%のポリエーテルを結果的に生じるモノエーテル鎖の部分的開裂を促進する。あるいは、Shawlは、二官能ポリエーテル、または3:1〜25:1の範囲で維持された重量比単官能ポリエーテルと二官能ポリエーテルとの組み合わせの付加を開示している。二官能ポリエーテルは、架橋を促進するので望ましくない。さらに、Shawlは、迅速なエステル化を提供する二官能ポリエーテルまたは強酸触媒を欠失しているPCE合成プロセスを提供していない。
【0005】
本発明者らは、ポリカルボキシラートエーテルくし型高分子を生成するために強酸触媒または水の過剰な蒸留を必要とすることなく、流動化剤、レオロジー改質剤及びコロイド安定剤として使用されるものなど、当該ポリカルボキシラートエーテルくし型高分子を生成するためにより効率的な方法を提供するための問題の解決策を模索している。
【0006】
本発明の陳述
1.本発明に従って、ポリカルボキシラートまたはポリカルボキサミドのくし型高分子を生成する方法は、湿式反応混合物の総重量に基づく15〜60重量%、または好ましくは20重量%以上、または好ましくは30〜55重量%、より好ましくは32〜55重量%の1つ以上のエチレン不飽和酸またはその塩、好ましくはメタクリル酸、その塩、メタクリル酸とアクリル酸との混合物、またはその塩と、湿式反応混合物の総重量に基づく37〜76.99重量%、または好ましくは42〜64.99重量%の1つ以上のポリエーテルポリオール、アルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンと、を含む反応混合物の80〜99重量%、または好ましくは90〜99重量%、またはより好ましくは95重量%以上の固体量を有する湿式反応混合物を、(i)水の中の反応混合物(湿式反応混合物)の総重量に基づく、0.01〜1重量%、または0.05〜0.5重量%の1つ以上の水溶性ラジカル開始剤または酸化還元対の存在下で、かつ(ii)次亜リン酸ナトリウムなどの次亜リン酸塩、または有機亜リン酸塩から選択される化合物を含有する、湿式反応混合物の総重量に基づく、2〜22重量%、または、好ましくは、6〜15重量%の1つ以上のリン酸化物の存在下で、80〜100℃、または好ましくは95〜99℃の温度へ、5〜300分間、または好ましくは30〜240分間、またはより好ましくは60〜180分間の第1の時間加熱した後、連続して、好ましくは10〜300mm/Hgまたは10〜100mm/Hgの部分真空の下で、150〜250℃、好ましくは160〜200℃の第2の温度へ、30〜600分間、または好ましくは60〜300分間、または好ましくは240分未満の第2の時間加熱して、くし型高分子を形成することを含む。
【0007】
2.先の項目1における本発明の方法に従って、ジオールまたは二官能アミンである1つ以上のポリエーテルポリオール、アルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンの当該の総量は、当該1つ以上のポリエーテルポリオール、アルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンの総重量に基づく、3重量%以下、または好ましくは2重量%以下、またはより好ましくは1重量%以下である。
【0008】
3.先の項目1または2のいずれか1項における本発明の方法に従って、1つ以上のポリエーテルポリオール、アルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンの重量平均分子量は、200〜5000、または好ましくは500〜3000、またはより好ましくは600〜2500に及ぶ。
【0009】
4.先の項目1、2、または3のいずれか1項における本発明の方法に従って、当該方法は、加熱する前に、容器または湿式反応混合物へ、当該1つ以上のポリエーテルポリオール、アルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンの全部及び当該1つ以上のリン酸化物含有混合物の全部を、水の少なくとも一部と共に充填することと、それに続いて、当該1つ以上のエチレン不飽和酸または塩、当該1つ以上のラジカル開始剤または1つ以上の酸化還元対を供給して、湿式反応混合物を形成することと、当該湿式反応混合物をある温度で第1の時間反応させて、ポリ酸高分子を形成した後、結果として生じるポリ酸高分子混合反応混合物(最終湿式反応混合物)を第2の時間、第2の温度で加熱することと、をさらに含む。
【0010】
5.先の項目1、2、3、または4のいずれか1項におけるような本発明の方法に従って、総湿式反応混合物におけるエチレン不飽和酸のカルボキシル基またはカルボキシラート基のモル数とアミン基またはヒドロキシル基のモル数との比は、9:1〜1:1、または好ましくは6:1〜2.6:1に及ぶ。
【0011】
6.先の項目1、2、3、4、または5のいずれか1項における本発明の方法に従って、容器または湿式反応混合物へ当該1つ以上のリン酸化物含有化合物を添加することは、総リン酸化物含有化合物の全部を当該湿式反応混合物または容器へ、加熱する前に充填することを含む。
【0012】
7.先の項目1、2、3、4、5、または6のいずれか1項におけるような本発明の方法に従って、結果として生じるくし型高分子は、6,000〜160,000、または好ましくは20,000〜60,000、またはより好ましくは最大60,000の重量平均分子量を有する。
【0013】
8.先の項目1、2、3、4、5、6、または7のいずれか1項におけるような本発明の方法に従って、当該湿式反応混合物または当該湿式反応混合物を含有する容器は、添加された有機溶媒を含まない。
【0014】
9.いずれかの先の項目におけるような本発明の方法に従って、第2の温度へ加熱することは、30分間〜60日間、または好ましくは5〜45日間の遅延後に実施する。
【0015】
本明細書で使用する場合、「酸性重合単位」という用語は、カルボン酸無水物、カルボン酸及びこれらの塩を指す。メタクリル酸のカルボン酸無水物は、隣接する酸性重合単位の酸性官能性から単一のテロマー鎖に沿って、遠位酸性重合単位の酸性官能性から単一のテロマー鎖に沿って、または別個のテロマー鎖の酸性官能性から形成することができる。
【0016】
本明細書で使用する場合、リン酸化物という用語は、+3または+1の酸化状態におけるリンの何らかの酸化物を指す。
【0017】
本明細書で使用する場合、「平均粒径(average particle size)」という用語は、レーザー回折粒径分析によって測定される平均粒径(mean average particle size)の平均値を指す。
【0018】
本明細書で使用する場合、「単量体の総重量に基づく」という用語は、付加単量体、例えば、メタクリル酸及びビニル単量体などの総重量を指す。
【0019】
本明細書で使用する場合、湿式反応混合物の「反応物の総重量」という用語は、当該高分子を生成するのに使用されるエチレン不飽和酸、ポリエーテルポリオール、アルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンと、リン酸化物含有化合物との総固体重量である。
【0020】
本明細書で使用する場合、別段の記載がない限り、ポリ酸高分子に対する「分子量」または「Mw」という用語は、ポリアクリル酸標準物質に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量を指し、くし型高分子に対しては、当該用語は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)から算出される重量平均分子量を指す。
【0021】
本明細書で使用する場合、「重量%」という用語は、重量百分率を表す。
【0022】
列挙される範囲はすべて、包含的であり及び組み合わせ可能である。例えば、80〜100℃、好ましくは95〜99℃という開示された温度は、80〜100℃、80〜95℃、80〜99℃、95〜100℃、または好ましくは95〜99℃の温度を含むであろう。
【0023】
別段の記載がない限り、温度及び圧力の単位はすべて、「雰囲気条件」とも呼ばれる室温(〜20−22℃)及び標準圧(STP)である。
【0024】
括弧を含む句はすべて、括弧のついた物質が含まれている場合かそうでない場合かのいずれかまたはその両方を示す。例えば、「(共)重合体」という句は、選択肢において重合体、共重合体及びこれらの混合物を含む。
【0025】
本発明者らは、単一の容器中でポリカルボキシラートエーテル(PCE)及びポリカルボキサミドエーテルの共重合体を、蒸留装置なしで、かついかなる強プロトン酸触媒も添加される有機溶媒もなしで生成する、より効率的な方法を発見した。本発明に従って、当該反応混合物は、リン酸化物含有化合物から重合体結合した触媒を形成して、ポリグリコールまたはポリエーテルの開裂を最小限にし、それにより、当該反応混合物の元の特徴を保存する。本発明の方法において、何らかの触媒をいかなる反応の開始時にもまたは開始前にも添加することができる。第1の時間に加熱することにより、ハイソリッドな媒体中でポリ酸高分子を生じ、第2の温度へ加熱することにより、くし型高分子が生成される。
【0026】
第2の温度へ加熱することが遅延する場合、本発明は、後の処理のためにポリ酸高分子を搬送または保存して、PCEまたはポリカルボキサミドを生成することを可能にする。
【0027】
本発明のポリカルボキシラートまたはポリカルボキサミドは、11〜39%のエステル化またはアミド化した酸基のグラフト密度、または好ましくは13〜35重量%のグラフト密度を重合体骨格上に有するポリ酸高分子を含む。
【0028】
本発明の湿式反応混合物におけるエチレン不飽和酸または塩の重合は、好ましくは1つ以上の開始剤の熱分解を用いることによって、例えば、酸化還元反応(oxidation−reduction reaction)(「酸化還元反応(redox reaction)」)を用いて、フリーラジカルを生成し、重合をもたらすことによるなど、当該技術分野で既知の種々の方法によって開始することができる。このような重合のための方法、媒質及び試薬は、Clamenらに対する米国特許第7,766,975号において開示されるようにポリ酸高分子を生成するために使用されるものであり得る。
【0029】
本発明の生成物であるポリカルボキシラートまたはポリカルボキサミドのエーテルの分子量は、連鎖転移剤(CTA)として作用する1つ以上のリン酸化物含有化合物によっても制御される。
【0030】
好ましくは、ポリカルボキシラートまたはポリカルボキサミドのエーテルのポリ酸高分子骨格の分子量を制御するために、ポリエーテルポリオール、アルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンの付加を、過硫酸ナトリウムなど、当該技術分野で既知の1つ以上の水溶性ラジカル開始剤または酸化還元対の存在下で、エチレン不飽和酸単量体の少なくとも一部の重合後に生じるよう実施する。
【0031】
好ましくは、ポリカルボキシラートまたはポリカルボキサミドのエーテルのくし型高分子の骨格は、Clamenらに対する米国特許第7,766,975号において開示されたように水中での漸次的付加溶液重合によって形成される。
【0032】
本発明に従ってくし型高分子を形成するとき、当該反応は、酸素非含有条件または酸素欠乏条件下で、好ましくは不活性雰囲気下で、またはより好ましくは、リン+1などのリン酸化物含有化合物、例えば、次亜リン酸ナトリウム、及び開始剤の存在下で実施される。
【0033】
好ましくは、本発明の反応に従った方法は、例えば、押出成形機、連続撹拌タンク反応炉などの連続反応炉において、もしくは交換カラムにおいて、または固相コンビナトリアル合成によって行う。
【0034】
本発明の湿式反応混合物において有用な適切なエチレン不飽和カルボン酸または無水物は、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、2−メチルイタコン酸、α−メチレングルタル酸、モノアルキルマレアート、及びモノアルキルフマラート、ならびにこれらの塩;例えば、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、アクリル酸無水物、及びメタクリル酸無水物、ならびにこれらの塩など、エチレン不飽和無水物を含む。いかなる無水物基を含有するエチレン不飽和酸単量体も、湿式反応混合物において酸を形成するであろう。
【0035】
好ましくは、エチレン不飽和酸は、(メタ)アクリル酸及びマレイン酸、ならびにこれらの塩を含む。
【0036】
本発明のエチレン不飽和酸単量体は、湿式反応混合物中のエチレン不飽和酸または塩の単量体の総重量に基づく、1〜100重量%のメタクリル酸またはその塩を含むことができる。
【0037】
本発明の方法は、湿式反応混合物において使用される単量体の総重量に基づく最高20重量%、または好ましくは、0〜10重量%、またはより好ましくは、0〜1重量%の、C
1〜C
18アルキル(メタ)アクリラート及びスチレンのようなビニル単量体などの非酸基含有単量体を含む湿式反応混合物を使用して実施され得る。
【0038】
本発明の湿式反応混合物における使用に適したポリエーテルポリオール、アルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンは、1〜113個、好ましくは90個以下もしくは6個以上、または好ましくは10〜66個のオキシアルキレン基を有し得る。側鎖のアルコキシ基は、2〜4個の炭素原子を有し得る。
【0039】
くし型高分子を形成するのに有用な適切なアルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンは、式I、II、IIIまたはIVの1つ以上の化合物であり得、
【0040】
【化1】
【0041】
式中、R
1は、C
1−C
50アルキルから選択され、R
2及びR
3は独立して、H、メチルまたはエチルから選択され、かつR
4は独立して、C
1−C
50アルキル、ヒドロキシエチル、アセトキシエチル、ヒドロキシ−イソプロピル、またはアセトキシ−イソプロピルから選択され、かつnは1〜113の整数である。
【0042】
式(I)の化合物の例は、350の分子量を有するメチルポリエチレングリコール、500の分子量を有するメチルポリエチレングリコール、750の分子量を有するメチルポリエチレングリコール、1000の分子量を有するメチルポリエチレングリコール、1500の分子量を有するメチルポリエチレングリコール、2000の分子量を有するメチルポリエチレングリコール、500〜5,000の分子量を有するメチルポリエチレングリコール、及び1,000〜5,000の分子量を有するブチルポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
式I及び式IIのアルキルポリエーテルポリオールならびに式III及び式IVのアルキルポリエーテルアミンは、くし型高分子の調製においてアンモニアまたはアミンと共に使用することができる。
【0044】
適切なアミンは、例えば、最高2000のモル質量を有するアルキルアミン、最高1,000のモル質量を有するジアルキルアミン、例えば、エチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン;例えば、ステアリルアミン、獣脂脂肪アミン及びパルミチルアミンなどの脂肪アミン;不飽和脂肪アミン、例えば、オレイルアミン;2−メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミンなどのアルコキシアルキルアミン;アルコキシル化したアルキルアミンまたはアルコキシル化したジアルキルアミン;ならびにN,Nジメチルエタノールアミン、またはN,Nジエチルエタノールアミンなどの、エタノールアミン及びジエタノールアミンなどのアミノアルコールである。
【0045】
アルコキシ(ポリ)オキシアルキレン側鎖を生じる化合物の例は、CARBOWAX(商標)の下でThe Dow Chemical Company(Midland,MI)から、ならびにM型及びB11/D21ポリグリコールとしてClariant(Clariant Corp.,Charlotte,NC)から入手可能である。
【0046】
本発明に従って、湿式反応混合物は、湿式反応混合物の総重量に基づく2〜22重量%、または好ましくは6重量%以上、または好ましくは、15重量%以下の次亜リン酸塩含有化合物または亜リン酸塩含有化合物から選択されるリン酸化物含有化合物を含む。このようなリン酸化物含有化合物は、C
1〜C
4ジアルキルもしくはトリアルキルまたは亜リン酸フェニルもしくは亜リン酸ジフェニル;オルトリン酸もしくはその塩またはジ亜リン酸化合物もしくはその塩、例えば次亜リン酸ナトリウムなどを含み得る。
【0047】
本発明のくし型高分子生成物組成物は、好ましくは40〜60重量%以上、またはより好ましくは、45〜55重量%の固体量を有する油、例えば、植物油、グリコール、ポリグリコール、エーテル、グリコールエーテル、グリコールエステル及びアルコールなど、非水性担体におけるその懸濁液を含み得る。
【0048】
本発明の生成物であるポリカルボキシラートまたはポリカルボキサミドのエーテル組成物は、例えば、吹付け乾燥または押出成形によってさらに乾燥することができる。
【0049】
本発明の生成物であるポリカルボキシラートまたはポリカルボキサミドのエーテルは、ポリ酸高分子骨格における炭素原子へ結合した平均して少なくとも1個のリン原子を有し、このことは、末端としてまたは高分子骨格内で適宜、P
31NMRによって測定することができる。高分子骨格における少なくとも1個のリンは、2個の炭素原子へ、亜リン酸塩、例えば、亜リン酸ジアルキルとして結合することができる。このような高分子の構造の例は、Fiarmanらに対する米国特許第5,294,686号において説明されるとおりである。
【0050】
本発明の方法から調製されるくし型高分子の、広範な種々の適用における多くの使用が存在する。このようなくし型高分子は、特に側鎖のアルコキシ基が1〜4個の炭素原子を有する場合に、流動化剤としての使用が見出される。このようなくし型高分子は、洗剤組成物、特に液体洗剤組成物におけるビルダーとして特に有用である。さらに、このようなくし型高分子は、種々のコーティング適用物のための顔料分散剤などの高分子分散剤、流体媒質中に粒子状物質材料を懸濁するための懸濁剤、及びこれらに類するものとして使用することができる。さらに、くし型高分子によって、建築用コーティング、船舶コーティング、紙コーティング、缶コーティング、繊維及び不織性材料のための結合剤及びコーティング、回転コーティング、ならびにこれらに類するものなどのための、種々のコーティング適用物のための高分子結合剤としての使用が見出される。さらに、くし型高分子は、特に側鎖のアルコキシ基が8〜20個の炭素原子を有して疎水性である場合に、皮革製造用のなめし剤としての、ならびにレオロジー改質剤及び増粘剤としての使用が見出される。
【0051】
以下の実施例は、本発明を説明する。別段の記載がない限り、部分及び百分率はすべて重量によるものであり、温度はすべて、摂氏度(℃)におけるものである。
【0052】
以下の実験検査法を使用した。
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC):Agilent 1100モデル均一濃度ポンプ、オートサンプラー、脱気装置(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)、及びWaters 410モデル示差屈折率計(Waters Corp.,Milford,MA)とからなる、雰囲気温で作動する液体クロマトグラフにおいて分離を実施した。システム制御、データ獲得、及びデータ解析は、Cirrus(登録商標)ソフトウェア(Polymer Laboratories,Agilentの子会社,Church Stretton,UK)の第3.1版を用いて実施した。SEC分離は、a)pH=7の20mM NaH
2PO
4における2つの分析用Plaquagel−OH(商標)30Aカラム(300×7.5mmID(内径)+ガードカラム(50×7.5mmID)(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)、b)MeOH中の100mM NH4Acにおける3つのShodex Asahipak(商標)GF−310HQ+GF−510HQ+GF−710HQカラム(300×7.8mmID)(Showa Denko KK,Kawasaki,Japan)を用いて実施した。別段の記載がない限り、100μLの試料溶液をSEC分離のためにカラムセット中へと注入した。
【0053】
実施例1の合成:mPEG2,000中で生成された、半分が充填され半分が供給される9重量%の連鎖転移剤(CTA)を有するpMAA高分子
窒素掃引下にある5Lの反応ケトルへ、以下の表1に示されるリン酸化物含有化合物、及び2,000の分子量を有する示されたメチルポリエチレングリコール (mPEG2000)全部を充填し、これを97℃へ加熱しながら融解させておき、融解したとき、撹拌を開始し、次に、示されたリン酸化物含有化合物である次亜リン酸ナトリウム(NaHP)を充填した。次に、示された開始剤である
過硫酸ナトリウム(NaPS)及びメタクリル酸(MAA)単量体をこのケトルへ120分間かけて供給し、ケトル内容物の表面上にこの単量体を供給した。同時に、並行して、示されたリン酸化物含有化合物(NaHP)を95分間という時間をかけて供給した。反応温度は、供給の間に97℃で維持した。供給終了時に、温度を97℃でさらに20分間保持した。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例2の合成:mPEG2,000中で生成された、半分が充填され半分が供給される連鎖転移剤(CTA)を有するpMAA高分子:
窒素掃引下にある5Lの反応ケトルへ、以下の表2に示されるリン酸化物含有化合物の半分を充填し、2,000の分子量を有する示されたメチルポリエチレングリコール(mPEG2000)を充填し、これを97℃へ加熱しながら融解させておき、融解したとき、撹拌を開始した。次に、示された開始剤及びメタクリル酸(MAA)単量体をこのケトルへ120分間かけて供給し、ケトルの内容物の表面上にこの単量体を供給した。同時に、並行して、示されたリン酸化物含有化合物(NaHP)を105分間という時間をかけて供給した。反応温度は、この供給の間に、97℃に維持した。供給全体の終了時に、温度を97℃でさらに20分間保持した。
【0056】
【表2】
【0057】
実施例3PCEの合成:mPEG2,000中で生成された9%連鎖転移剤(CTA)を有するpMAA高分子:
窒素掃引下にある5Lの反応ケトルへ、以下の表3に示される、2,000の分子量を有するメチルポリエチレングリコール(mPEG2000)、及び示されたリン酸化物含有化合物全部を充填した。このmPEGを97℃へ加熱しながら融解させておき、融解したとき、撹拌を開始した。次に、示された開始剤及びメタクリル酸(MAA)単量体をこのケトルへ120分間かけて供給し、ケトル内容物の表面上にこの単量体を供給した。同時に、並行して、示された開始剤を120分間という時間をかけて供給した。反応温度は、供給の間に97℃で維持した。1.5時間の重合後、15グラムの脱イオン水を充填し、さらに10グラムの脱衣イオン水を1.75時間で充填したが、このことは、以下の表3における希釈用水として列挙している。ポリ酸の重合後、さらに1435グラムのmPEG2,000を添加し、この混合物を180℃へ3時間、20inHgの真空下で加熱した。
【0058】
【表3】
【0059】
合成実施例4PCE:mPEG2,000中で生成された9%連鎖転移剤(CTA)を有するpMAA高分子:窒素掃引下にある5Lの反応ケトルへ、2,000の分子量を有する示されたメチルポリエチレングリコール(mPEG2000)、ポリプロピレングリコール2000、及び以下の表4に示されるリン酸化物含有化合物(NaHP)全部を充填した。mPEGを97℃へ加熱しながら融解させておき、融解したとき、撹拌を開始した。次に、示された開始剤及びメタクリル酸(MAA)単量体をこのケトルへ120分間かけて供給し、ケトル内容物の表面上にこの単量体を供給した。同時に、並行して、示された開始剤を120分間という時間をかけて供給した。反応温度は、供給の間に97℃で維持した。ポリ酸の重合後、混合物を20inHgの真空下で180℃へ2.75時間加熱した。粘度の有意な上昇によって特筆されるような過剰な架橋により、この反応を終止させた。
【0060】
【表4】
【0061】
合成実施例1、2、3、及び4から、初回の加熱から結果として生じるポリ酸高分子についてのGPC重量平均分子量データは、次のとおりである:
【0062】
【表5】
【0063】
先の表5から、すべての実施例において、湿式反応混合物が初回の時間に加熱される方法からポリ酸高分子が結果的に生じることは明らかである。したがって、本発明に従って、非常にわずかな水でポリ酸高分子を形成することができ、それにより、第2の温度でくし型高分子またはPCEの経済的な形成が可能となる。実施例1は、より小さな、より制御された分子量を生じる、ポリエーテル含有化合物の量に対するエチレン不飽和酸の量を増加させる利点を示す。実施例3は、エチレン不飽和酸を供給して第1の時間に加熱する前に、リン酸化物含有化合物全部をポリエーテル含有化合物と共に充填し、それにより本発明の実施例1と比較して小さな分子量のポリ酸高分子を生じる利点を示す。
【0064】
適用検査:実施例3及び実施例4における方法から生成されたくし型高分子(PCE)をコンクリートにおいて検査した。PCEはすべて、PCE固体に関して1.0重量%のDeefo(商標)PI−35消泡剤(Munzing,Bloomfield,NJ)を有する、セメントに関して42重量%の定常水レベルでの砂とセメント(50−30 Unimin(商標)砂(Unimin Corp.,New Canaan,CT)及びI型Grey Portland Cement)との3:1の混合物中に配合した。混合直後、ウェットモルタル試料を動力のついたフロー台のプレート上で、真鍮製フロー鋳型(直径10cmベース)の中に入れて充填した。充填後、ウェットモルタルから鋳型を外し、鋳型を外した試料を25個の台上への滴下へ供した。滴下プロセスが完了した後、フロー差について、試料をモルタル直径確認ノギスで測定し、記録した。許容され得る結果は、対照よりも少なくとも10%大きな直径である。検査法ASTM−1437−13(2013)の手引きである水硬セメントモルタルのフローを用いて実施した。
【0065】
以下の表6は、PCEを添加しない場合、及び二官能にするポリエーテルの開裂が必要とされる他の既知の方法と比較した、本発明の方法の結果を示す。表6は、アルキルポリエーテルモノオールを用いるよりもむしろ、ジオール(PEG)または開裂したアルキルポリエーテルを用いて生成した比較実施例4が、いかなるPCEも有しない対照と比較して、スランプもセメント流も提供しなかったことを示す。その一方で、アルキルポリエーテルモノオールを用いて生成した本発明の実施例3の高分子は、PCEとしてうまく挙動し、セメント流を改善した。
【0066】
【表6】
(態様)
(態様1)
ポリカルボキシラートまたはポリカルボキサミドのエーテルを生成するための方法であって、
水中での反応混合物(湿式反応混合物)の総重量に基づく15〜60重量%の1つ以上のエチレン不飽和酸またはその塩と、前記湿式反応混合物の総重量に基づく37〜76.99重量%の1つ以上のポリエーテルポリオール、アルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンと、を含む前記反応混合物の80〜99重量%の固体量を有する前記湿式反応混合物を、(i)前記湿式反応混合物の総重量に基づく0.01〜1重量%の1つ以上の水溶性ラジカル開始剤または酸化還元対の存在下で、かつ(ii)次亜リン酸ナトリウムなどの次亜リン酸塩、または有機亜リン酸塩から選択される化合物を含有する、前記湿式反応混合物の総重量に基づく2〜22重量%の1つ以上のリン酸化物の存在下で、80〜100℃の温度へ5〜300分間の第1の時間加熱した後、連続して、150〜250℃の第2の温度へ30〜600分間の第2の時間加熱して、くし型高分子を形成することを含む、方法。
(態様2)
前記湿式反応混合物の前記固体量が、90〜99重量%に及ぶ、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記第2の時間における前記加熱することが、10〜300mm/Hgの部分真空の下で実施される、態様1に記載の方法。
(態様4)
前記1つ以上のエチレン不飽和酸が、メタクリル酸、その塩、またはメタクリル酸とアクリル酸との混合物から選択される、態様1に記載の方法。
(態様5)
ジオールまたは二官能アミンである1つ以上のポリエーテルポリオール、アルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンの前記の総量が、前記1つ以上のポリエーテルポリオール、アルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンの総重量に基づく3重量%以下である、態様1に記載の方法。
(態様6)
前記1つ以上のポリエーテルポリオール、アルキルポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミンまたはアルキルポリエーテルアミンの重量平均分子量が、200〜5000に及ぶ、態様1に記載の方法。
(態様7)
前記総湿式反応混合物におけるエチレン不飽和酸のカルボキシル基またはカルボキシラート基のモル数とアミン基またはヒドロキシル基のモル数との比が、9:1〜1:1に及ぶ、態様1に記載の方法。
(態様8)
前記くし型高分子が、6,000〜160,000の重量平均分子量を有する、態様1に記載の方法。
(態様9)
前記湿式反応混合物が、添加された有機溶媒を含まない、態様1に記載の方法。
(態様10)
加熱前に、前記湿式反応混合物または容器の中へ、前記総リン酸化物含有化合物の全部を充填することを含む、態様1に記載の方法。