特許第6643546号(P6643546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東亞合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6643546-(メタ)アクリレートの製造方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643546
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】(メタ)アクリレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/03 20060101AFI20200130BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20200130BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20200130BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200130BHJP
【FI】
   C07C67/03
   C07C69/54 Z
   B01J31/22 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-505289(P2017-505289)
(86)(22)【出願日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】JP2016056687
(87)【国際公開番号】WO2016143677
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2018年10月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-46655(P2015-46655)
(32)【優先日】2015年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163120
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 嘉弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直樹
【審査官】 石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/148903(WO,A1)
【文献】 特開2003−171345(JP,A)
【文献】 特開2001−316328(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/159611(WO,A1)
【文献】 Mudassir K. Munshi, et al,1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene (DBU): A highly efficient catalyst in glycerol carbonate synthesi,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,2014年 4月24日,Vol.391,PP.144-149
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/03
C07C 69/54
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含む(メタ)アクリレートの製造方法。
(反応工程1)下記触媒A及び下記触媒Bを併用して、アルコールと単官能(メタ)アクリレートとをエステル交換反応させて、(メタ)アクリレートを製造する工程。
触媒A:アザビシクロ構造を有する環状三級アミン又はその塩若しくはその錯体からなる群から選ばれる一種以上の化合物。
触媒B:亜鉛を含む化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物。
(触媒回収工程)前記反応工程1で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物から触媒A及び/又は触媒Bを含む固体を分離する工程。
(反応工程2)前記触媒回収工程で回収された触媒A及び/又は触媒Bを含む固体を、触媒又は触媒の一部として使用し、アルコールと単官能(メタ)アクリレートとをエステル交換反応させて、(メタ)アクリレートを製造する工程。
【請求項2】
前記アルコールが3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールである請求項1に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項3】
前記アルコールがトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物、トリス(2-ヒロドキシエチル)イソシアヌレート、トリエタノールアミン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジグリセリン、ジグリセリンのアルキレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物、キシリトール、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物、D−ソルビトール、ポリグリセリンのいずれかである請求項1又は請求項2に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項4】
前記アルコールがペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項5】
前記単官能(メタ)アクリレートがメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレートのいずれかである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項6】
前記単官能(メタ)アクリレートが2−メトキシエチルアクリレートである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項7】
前記触媒Aがキヌクリジン、3−ヒドロキシキヌクリジン、トリエチレンジアミン、2−(ヒドロキシメチル)トリエチレンジアミンのいずれかである請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項8】
前記触媒Bが下記一般式(2)若しくは下記一般式(3)で表される亜鉛を含む化合物、又は亜鉛アセチルアセトナートである請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
【化1】

(式中、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、若しくは、炭素数5〜20のシクロアルキル基であり、置換基を有していてもよい。但し、R及びRはハロゲン原子を有しない。)
【化2】

(式中、R、R、R、R、R及びR10は、同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、若しくは、炭素数5〜20のシクロアルキル基であり、置換基を有していてもよい。)
【請求項9】
前記触媒Aがトリエチレンジアミンであり、前記触媒Bが上記一般式(2)で表される亜鉛を含む化合物である請求項8に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリレートの製造方法に関する。詳しくは、アルコールと単官能(メタ)アクリレートとをエステル交換反応させて、(メタ)アクリレートを得ることを特徴とする(メタ)アクリレートの製造方法に関する。特には、使用する触媒の回収再利用に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリレートは、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射により、又は加熱によって硬化するため、塗料、インキ、接着剤、光学レンズ、充填剤及び成形材料などの配合物の架橋成分として、又は反応性希釈剤成分として大量に使用されている。
【0003】
特に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能(メタ)アクリレートは、その硬化物が高い硬度と優れた耐磨耗性を発現するため、ハードコート塗料の配合成分として大量に使用されている。
当該多官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートなどが知られている。
【0004】
これらの(メタ)アクリレートは、対応するアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応や、エステル交換反応により製造されている。
エステル化反応による(メタ)アクリレートの製造では、触媒として硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などのスルホン酸が使用される。しかし、エステル化反応終了後に得られる反応粗生成物から該スルホン酸を除去するために、アルカリ水溶液で抽出洗浄を行う必要があり、工程が煩雑になり生産性の低下が著しい。また、該抽出操作において目的の(メタ)アクリレートの一部がけん化されることにより、収率が低下するという問題がある。
【0005】
一方、エステル交換反応による(メタ)アクリレートの製造では、スルホン酸を使用することなく反応を進めることもできる。例えば、有機錫化合物を触媒とする方法(特許文献1参照)、亜鉛化合物と有機リン化合物を併用して触媒とする方法(特許文献2参照)、特定の金属原子を含む金属化合物に配位する構造を持つホスホニウム構造を有するゲル状スチレン系重合体又はゲル状ポリシロキサン系重合体を触媒とする方法(特許文献3参照)などが知られている。これらの方法においては、経済性及び環境負荷の観点から、触媒を回収し、再利用することが求められている。
【0006】
エステル交換反応による(メタ)アクリレートの製造において、触媒を回収・再利用する方法として、有機錫化合物を触媒とする方法(特許文献1参照)が開示されている。しかし、特許文献1においては、触媒を回収するために温水による抽出操作を複数回施した後、さらに脱水操作を行わなければならず、工程が煩雑になり生産性の低下が著しい。
また、特許文献3においては、反応終了後に触媒をろ過により分離できると記載されている。しかし、特殊な構造を有する重合体を煩雑な工程を経て調製しなければならず、経済的に有利な製造方法とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−190819号公報
【特許文献2】特許第4656351号公報
【特許文献3】特開2003−286226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、(メタ)アクリレートの製造において触媒を回収し、該回収触媒を再び(メタ)アクリレートの製造に用いる方法であって、煩雑な回収操作や特殊な重合体の調製を必要とせず、極めて簡便な方法で触媒を回収・再利用し、経済的に有利な方法で(メタ)アクリレートを収率よく得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、アルコールと単官能(メタ)アクリレートとをエステル交換反応させて(メタ)アクリレートを製造するに際し、下記触媒A及び触媒Bを併用することにより、エステル交換反応後の反応生成物から触媒A及び/又は触媒Bを固体として極めて簡便な操作で分離回収できることを見出した。さらには、分離回収した固体を触媒又は触媒の一部として用いて、アルコールと単官能(メタ)アクリレートとのエステル交換反応を行っても、触媒性能の低下が見受けられず、経済的に有利な方法で(メタ)アクリレートが収率よく得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、次の工程を含む(メタ)アクリレートの製造方法である。
(反応工程1)下記触媒A及び触媒Bを併用して、アルコールと単官能(メタ)アクリレートとをエステル交換反応させて、(メタ)アクリレートを製造する工程。
触媒A:アザビシクロ構造を有する環状三級アミン又はその塩若しくはその錯体からなる群から選ばれる一種以上の化合物。
触媒B:亜鉛を含む化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物。
(触媒回収工程)前記反応工程1で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物から触媒A及び/又は触媒Bを含む固体を分離する工程。
(反応工程2)前記触媒回収工程で得られた触媒A及び/又は触媒Bを含む固体を触媒又は触媒の一部として使用し、アルコールと単官能(メタ)アクリレートとをエステル交換反応させて、(メタ)アクリレートを製造する工程。
【0011】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは、反応工程1又は反応工程2において得られた反応生成物中に含まれる、目的とする(メタ)アクリレートを意味する。得られる(メタ)アクリレートは、用いるアルコールの水酸基数に応じて、単官能、2官能又は多官能となる。本発明において「単官能(メタ)アクリレート」とは、原料として用いる(メタ)アクリレートを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、(メタ)アクリレートを収率よく得ることができるとともに、触媒を簡便な方法で回収し、触媒性能の低下を起こさずに再利用することができる。本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリレートは、塗料、インキ、接着剤、光学レンズ、充填剤及び成形材料などの配合物の架橋成分として、又は反応性希釈剤成分として各種工業用途に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明における(メタ)アクリレートの製造方法の反応機構を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、次の工程を含む(メタ)アクリレートの製造方法である。
(反応工程1)下記触媒A及び触媒Bを併用して、アルコールと単官能(メタ)アクリレートとをエステル交換反応させて、(メタ)アクリレートを製造する工程。
触媒A:アザビシクロ構造を有する環状三級アミン又はその塩若しくはその錯体からなる群から選ばれる一種以上の化合物。
触媒B:亜鉛を含む化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物。
(触媒回収工程)前記反応工程1で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物から触媒A及び/又は触媒Bを含む固体を分離する工程。
(反応工程2)前記触媒回収工程で得られた触媒A及び/又は触媒Bを含む固体を触媒又は触媒の一部として使用し、アルコールと単官能(メタ)アクリレートとをエステル交換反応させて、(メタ)アクリレートを製造する工程。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
最初に反応工程1について説明する。
【0016】
本発明の製造方法における反応工程1において、原料として使用するアルコールは、分子中に少なくとも1個以上のアルコール性水酸基を有する脂肪族アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、多価アルコールエーテルなどである。該アルコールは、分子内にその他の官能基や結合、例えばフェノール性水酸基、ケトン基、アシル基、アルデヒド基、チオール基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、ニトロ基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、イミド結合、ペプチド結合、ウレタン結合、アセタール結合、ヘミアセタール結合、ヘミケタール結合などを有してもよい。
【0017】
1個のアルコール性水酸基を有する1価アルコールの具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノメチルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノエチルエーテル、テトラメチレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチレングリコールモノエチルエーテル、ポリテトラメチレングリコールモノメチルエーテル、ポリテトラメチレングリコールモノエチルエーテル、グリシドール、2−(2−クロロエトキシ)エタノール、2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノール、2−エチルヘキシルアルコールのアルキレンオキサイド変性物等の分子内にエーテル結合を有する一価アルコール;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(別名:エチレングリコールモノビニルエーテル)、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、ポリテトラメチレングリコールモノビニルエーテル1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、イソソルビドモノビニルエーテル、p−キシレングリコールモノビニルエーテル、m−キシレングリコールモノビニルエーテル、o−キシレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体モノビニルエーテル等の分子内にビニル基とエーテル結合を有する一価アルコール;トリシクロ[5.2.1.02,6]デセノール(別名:ヒドロキシジシクロペンタジエン)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセニルオキシエタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシエタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセニルオキシプロパノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシプロパノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセニルオキシエトキシエタノ−ル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシエトキシエタノール、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、オキセタニルメタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロピラニルアルコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノメチルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノメチルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノメチルエーテル、イソソルビドモノメチルエーテル、イソソルビドモノエチルエーテル、2,3−O−sec−ブチリデングリセロール、5−エチル−5−(ヒドロキシルメチル)−1,3−ジオキサン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、グリセロール1,2−カルボナート、1,3−ジオキソラン−4−イルメタノール、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール、β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、α−ヒドロキシメチル−γ−ブチロラクトン、β−ヒドロキシメチル−γ−ブチロラクトン等の環構造を有する一価アルコール;ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、p−キシレングリコールモノメチルエーテル、m−キシレングリコールモノメチルエーテル、o−キシレングリコールモノメチルエーテル、フェノールのアルキレンオキサイド変性物、o−フェニルフェノールのアルキレンオキサイド変性物、パラクミルフェノールのアルキレンオキサイド変性物、ノニルフェノールのアルキレンオキサイド変性物等の芳香環を有するアルコールなどが挙げられる。
【0018】
2個のアルコール性水酸基を有する2価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジオキサングリコール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−tert−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、m−トリルジエタノールアミン、p−トリルジエタノールアミン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、N−ニトロソジエタノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ラクトアミド、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)オキサミド、3−モルホリノ−1,2−プロパンジオール、2,6−ピリジンジメタノール、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、アロキサンチン二水和物、(+)−N,N,N’,N’−テトラメチル−L−酒石酸ジアミド、(−)−N,N,N’,N’−テトラメチル−D−酒石酸ジアミド、N−プロピル−N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ペルフルオロ−n−オクチルスルホンアミド、チミジン、クロラムフェニコール、チアンフェニコール、D−エリスロノラクトン、メチル4,6−O−ベンジリデン−α−D−グルコピラノシド、フェニル4,6−O−ベンジリデン−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンニトール、1,2−O−イソプロピリデン−α−D−キシロフラノース、2,6−ジ−O−パルミトイル−L−アスコルビン酸、イソソルビド及びこれらのアルキレンオキサイド付加物、さらにはハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、チオビスフェノール、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC及びビスフェノールZなどのフェノール性水酸基を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物、ポリカーボネートジオール等のカーボネート結合を有するアルコールなどが挙げられる。
【0019】
3個のアルコール性水酸基を有する3価アルコールの具体例としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリス(2-ヒロドキシエチル)イソシアヌレート、ヘキサントリオール、オクタントリオール、デカントリオール、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、1−[ビス2−(ヒドロキシエチル)アミノ]−2−プロパノール、D−パンテノール、DL−パンテノール、ウリジン、5−メチルウリジン、シチジン、イノシン、アデノシン、ロイコマイシンA3、ロイコマイシンA4、ロイコマイシンA6、ロイコマイシンA8、塩酸クリンダマイシン一水和物、プレドニゾロン、メチルβ−D−アラビノピラノシド、メチルβ−L−フコピラノシド、メチルα−L−フコピラノシド、D−ガラクタール、4−メトキシフェニル3−O−アリル−β−D−ガラクトピラノシド、4−メトキシフェニル3−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシド、1,6−アンヒドロ−β−D−グルコース、α−クロラロース、β−クロラロース、4,6−O−エチリデン−α−D−グルコピラノース、D−グルカール、1,2−O−イソプロピリデン−α−D−グルコフラノース、D−グルクロノ−6,3−ラクトン、2−デオキシ−D−リボース、メチルβ−D−リボフラノシド、D−(+)−リボノ−1,4−ラクトン、メチル−β−D−キシロピラノシド、6−O−パルミトイル−L−アスコルビン酸、6−O−ステアロイル−L−アスコルビン酸、3−O−エチル−L−アスコルビン酸及びこれらのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0020】
4個のアルコール性水酸基を有する4価アルコールの具体例としては、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミド、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)ブタンジアミド、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)ヘキサンジアミド、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)ヘキサンジアミド、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N−ヘキサノイル−D−グルコサミン、N−バレリル−D−グルコサミン、N−トリフルオロアセチル−D−グルコサミン、N−ベンゾイル−D−グルコサミン、5−アセトアミド−N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨードイソフタルアミド、スピラマイシン、クラリスロマイシン、ロイコマイシンA1、ロイコマイシンA5、ロイコマイシンA7、ロイコマイシンA9、ロイコマイシンA13、リンコマイシン塩酸塩一水和物、ジアゾリジニル尿素、D−(−)−アラビノース、DL−アラビノース、L−(+)−アラビノース、meso−エリトリトール、D−(+)−フコース、L−(−)−フコース、アリルα−D−ガラクトピラノシド、メチルβ−D−ガラクトピラノシド、メチルα−D−ガラクトピラノシド一水和物、4−メトキシフェニルβ−D−ガラクトピラノシド、2−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシド、4−ニトロフェニルα−D−ガラクトピラノシド、4−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシド、フェニルβ−D−ガラクトピラノシド、N−アセチル−D−ガラクトサミン水和物、D−(+)−ガラクトサミン塩酸塩、アルブチン、2−デオキシ−D−グルコース、エスクリン1.5水和物、D−(+)−グルコノ−1,5−ラクトン、D−グルクロンアミド、ヘリシン、メチルα−D−グルコピラノシド、メチルβ−D−グルコピラノシド0.5水和物、4−メトキシフェニルβ−D−グルコピラノシド、4−ニトロフェニルβ−D−グルコピラノシド一水和物、4−ニトロフェニルα−D−グルコピラノシド、ノニルβ−D−グルコピラノシド、n−オクチルβ−D−グルコピラノシド、フェニルβ−D−グルコピラノシド水和物、フロリジン水和物、ピセイド、プエラリン、N−アセチル−D−グルコサミン、N−ベンゾイル−D−グルコサミン、D−(+)−グルコサミン塩酸塩、N−ヘキサノイル−D−グルコサミン、N−バレリル−D−グルコサミン、L−(+)−グロン酸γ−ラクトン、D−(−)−リキソース、L−(+)−リキソース、3,4−O−イソプロピリデン−D−マンニトール、メチルα−D−マンノピラノシド、D−マンノノ−1,4−ラクトン、4−メトキシフェニルα−D−マンノピラノシド、N−アセチル−D−マンノサミン一水和物、D−(−)−リボース、L−リボース、D−(+)−キシロース、DL−キシロース、L−(−)−キシロース、D−アラボアスコルビン酸、L−アスコルビン酸、L−トレイトール及びこれらのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0021】
5個のアルコール性水酸基を有する5価アルコールの具体例としては、トリトリメチロールエタン、トリトリメチロールプロパン、トリグリセリン、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタキス(2−ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン、ミグリトール、エリスロマイシン、アジスロマイシン二水和物、D−(+)−アラビトール、DL−アラビトール、L−(−)−アラビトール、D−(−)−フルクトース、L−(+)−フルクトース、D−(+)−ガラクトース、L−(−)−ガラクトース、β−D−グルコース、D−(+)−グルコース、L−(−)−グルコース、D−グルコースジエチルメルカプタール、サリシン、L−グロース、D−(+)−マンノース、L−(−)−マンノース、リビトール、L−(−)−ソルボース、D−タガトース、キシリトール、スクラロース、アスコルビン酸グリセリル及びこれらのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0022】
6個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの具体例としては、ポリトリメチロールエタン、ポリトリメチロールプロパン、ポリグリセリン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、イオヘキソール、ガラクチトール、D−ソルビトール、L−ソルビトール、myo−イノシトール、scyllo−イノシトール、D−マンニトール、L−マンニトール、イカリイン、アミグダリン、D−(+)−セロビオース、ジオスミン、2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸、ヘスペリジン、D−(+)−ラクトース一水和物、ラクツロース、D−(+)−マルトース一水和物、D−(+)−メリビオース一水和物、メチルヘスペリジン、マルチトール、ナリンギン水和物、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン水和物、パラチノース水和物、ルチン水和物、D−(+)−スクロース、ステビオシド、D−(+)−ツラノース、D−(+)−トレハロース(無水)、D−(+)−トレハロース二水和物、D−(+)−メレチトース水和物、D−(+)−ラフィノース五水和物、レバウジオシドA、スタキオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、デンプン、ポリビニルアルコール及びこれらのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0023】
本発明の製造方法における反応工程1においては、これらのアルコールを単独で又は二種以上を任意に組み合わせて使用できる。これらのアルコールの中では、3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールが好ましく、特にトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物、トリス(2-ヒロドキシエチル)イソシアヌレート、トリエタノールアミン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジグリセリン、ジグリセリンのアルキレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物、キシリトール、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物、D−ソルビトール、ポリグリセリンが好ましい。なお、これらのアルコールについて、その水和物又は溶媒和物が存在する場合には、該水和物及び溶媒和物も本発明の製造方法におけるアルコールとして使用できる。
【0024】
本発明の製造方法における反応工程1において、原料として使用する単官能(メタ)アクリレートは、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、例えば、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0025】
【化1】
【0026】
式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは炭素数1〜50の有機基を表す。
【0027】
上記一般式(1)におけるRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−又はi−プロピル基、n−、i−又はt−ブチル基、n−、s−又はt−アミル基、ネオペンチル基、n−、s−又はt−ヘキシル基、n−、s−又はt−ヘプチル基、n−、s−又はt−オクチル基、2−エチルヘキシル基、カプリル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、セチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、ノナデシル基、アラキル基、セリル基、ミリシル基、メリシル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、クロチル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基、2−メチルブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オレイル基、リノール基、リノレン基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−t−ブチルシクロヘキシル基、トリシクロデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基、シンナミル基、ナフチル基、アントラニル基、メトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、メトキシエトシキエトキシエチル基、3−メトキシブチル基、エトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、シクロペントキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、シクロペントキシエトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエトキシエチル基、ジシクロペンテニルオキシエチル基、フェノキシエチル基、フェノキシエトキシエチル基、グリシジル基、β−メチルグリシジル基、β−エチルグリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル基、2−オキセタンメチル基、3−メチル−3−オキセタンメチル基、3−エチル−3−オキセタンメチル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロフルフリル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキサゾラニル基、ジオキサニル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、N,N−ジエチルアミノエチル基、N,N−ジメチルアミノプロピル基、N,N−ジエチルアミノプロピル基、N−ベンジル−N−メチルアミノエチル基、N−ベンジル−N−メチルアミノプロピル基などが挙げられる。
【0028】
本発明の製造方法における反応工程1においては、これらの単官能(メタ)アクリレートを単独で又は二種以上を任意に組み合わせて使用できる。これらの単官能(メタ)アクリレートの中では、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルアクリレートが好ましい。特に、殆どのアルコールに対して良好な反応性を示し、入手が容易なメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレートが好ましい。さらに、アルコールの溶解を促進し、極めて良好な反応性を示す2−メトキシエチルアクリレートがより好ましい。
【0029】
本発明の製造方法における反応工程1において、アルコールと単官能(メタ)アクリレートとの使用割合は特に制限はないが、好ましくはアルコールの水酸基1モルに対して単官能(メタ)アクリレートを0.4〜10.0モル、より好ましくは0.6〜5.0モル使用する。単官能(メタ)アクリレートが0.4モルより少ないと、副反応が多くなる。また、10.0モルよりも多いと、(メタ)アクリレートの生成量が少なく、生産性に劣る。
【0030】
本発明の製造方法における反応工程1は、溶媒を使用せずに実施することもできるが、必要に応じて溶媒を使用してもよい。溶媒の具体例としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、アミルベンゼン、ジアミルベンゼン、トリアミルベンゼン、ドデシルベンゼン、ジドデシルベンゼン、アミルトルエン、イソプロピルトルエン、デカリン、テトラリンなどの炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジエチルアセタール、ジヘキシルアセタール、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、トリオキサン、ジオキサン、アニソール、ジフェニルエーテル、ジメチルセロソルブ、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどのエーテル類;18−クラウン−6などのクラウンエーテル類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、グリセリンなどのアルコール類;安息香酸メチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、ベンゾフェノンなどのケトン類;スルホランなどのスルホン類;ジメチルスルホキサイドなどのスルホキサイド類;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネートなどのカーボネート化合物;尿素類又はその誘導体;トリブチルホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド類;イミダゾリウム塩、ピペリジニウム塩、ピリジニウム塩などのイオン液体;シリコンオイル、水などが挙げられる。これらの溶媒の中では、炭化水素類、エーテル類、アルコール類、カーボネート化合物、イオン液体が好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよく、二種以上を任意に組み合わせて混合溶媒として使用してもよい。
【0031】
本発明の製造方法における反応工程1において、触媒Aはアザビシクロ構造を有する環状三級アミン又はその塩若しくはその錯体からなる群から選ばれる一種以上の化合物である。
上記アザビシクロ構造を有する環状三級アミン又はその塩若しくはその錯体の具体例としては、1−アザビシクロ[1,1,0]ブタン、1,3−ジアザビシクロ[1,1,0]ブタン、1−アザビシクロ[2,1,0]ヘプタン、1,3−ジアザビシクロ[2,1,0]ヘプタン、1,4−ジアザビシクロ[2,1,0]ヘプタン、1−アザビシクロ[2,2,0]ヘキサン、1,3−ジアザビシクロ[2,2,0]ヘキサン、1−アザビシクロ[2,1,1]ヘキサン、1,3−ジアザビシクロ[2,1,1]ヘキサン、1−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1,3−ジアザビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1−アザビシクロ[3,2,0]ヘプタン、1,3−ジアザビシクロ[3,2,0]ヘプタン、1,4−ジアザビシクロ[3,2,0]ヘプタン、1,6−ジアザビシクロ[3,2,0]ヘプタン、1,3−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1−アザビシクロ[3,2,1]オクタン、1,3−ジアザビシクロ[3,2,1]オクタン、1,4−ジアザビシクロ[3,2,1]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[3,2,1]オクタン、1,6−ジアザビシクロ[3,2,1]オクタン、1−アザビシクロ[4,1,1]オクタン、1,3−ジアザビシクロ[4,1,1]オクタン、1,4−ジアザビシクロ[4,1,1]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4,1,1]オクタン、1,6−ジアザビシクロ[4,1,1]オクタン、1,7−ジアザビシクロ[4,1,1]オクタン、1−アザビシクロ[4,2,0]オクタン、1,3−ジアザビシクロ[4,2,0]オクタン、1,4−ジアザビシクロ[4,2,0]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4,2,0]オクタン、1,7−ジアザビシクロ[4,2,0]オクタン、1−アザビシクロ[3,3,1]ノナン、1,3−ジアザビシクロ[3,3,1]ノナン、1,4−ジアザビシクロ[3,3,1]ノナン、1,5−ジアザビシクロ[3,3,1]ノナン、1−アザビシクロ[3,2,2]ノナン、1,3−ジアザビシクロ[3,2,2]ノナン、1,4−ジアザビシクロ[3,2,2]ノナン、1,5−ジアザビシクロ[3,2,2]ノナン、1,6−ジアザビシクロ[3,2,2]ノナン、1,8−ジアザビシクロ[3,2,2]ノナン、1−アザビシクロ[4,3,0]ノナン、1,3−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナン、1,4−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナン、1,6−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナン、1,7−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナン、1,8−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナン、1−アザビシクロ[4,2,1]ノナン、1,3−ジアザビシクロ[4,2,1]ノナン、1,4−ジアザビシクロ[4,2,1]ノナン、1,5−ジアザビシクロ[4,2,1]ノナン、1,6−ジアザビシクロ[4,2,1]ノナン、1,7−ジアザビシクロ[4,2,1]ノナン、1−アザビシクロ[5,2,0]ノナン、1,3−ジアザビシクロ[5,2,0]ノナン、1,3−ジアザビシクロ[5,2,0]ノナン、1,4−ジアザビシクロ[5,2,0]ノナン、1,5−ジアザビシクロ[5,2,0]ノナン、1,6−ジアザビシクロ[5,2,0]ノナン、1,7−ジアザビシクロ[5,2,0]ノナン、1,8−ジアザビシクロ[5,2,0]ノナン、1−アザビシクロ[5,1,1]ノナン、1,3−アザビシクロ[5,1,1]ノナン、1,4−アザビシクロ[5,1,1]ノナン、1,5−アザビシクロ[5,1,1]ノナン、1,6−アザビシクロ[5,1,1]ノナン、1,7−アザビシクロ[5,1,1]ノナン、1−アザビシクロ[6,1,0]ノナン、1,3−ジアザビシクロ[6,1,0]ノナン、1,4−ジアザビシクロ[6,1,0]ノナン、1,5−ジアザビシクロ[6,1,0]ノナン、1,6−ジアザビシクロ[6,1,0]ノナン、1,7−ジアザビシクロ[6,1,0]ノナン、1,8−ジアザビシクロ[6,1,0]ノナン、1−アザビシクロ[7,1,0]デカン、1,9−ジアザビシクロ[7,1,0]デカン、1−アザビシクロ[6,2,0]デカン、1,8−ジアザビシクロ[6,2,0]デカン、1−アザビシクロ[6,1,1]デカン、1,8−ジアザビシクロ[6,1,1]デカン、1−アザビシクロ[5,3,0]デカン、1,7−ジアザビシクロ[5,3,0]デカン、1−アザビシクロ[5,2,1]デカン、1,7−ジアザビシクロ[5,2,1]デカン、1−アザビシクロ[4,3,1]デカン、1,6−ジアザビシクロ[4,3,1]デカン、1−アザビシクロ[4,2,2]デカン、1,6−ジアザビシクロ[4,2,2]デカン、1−アザビシクロ[5,4,0]ウンデカン、1,7−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカン、1−アザビシクロ[5.3.1]ウンデカン、1,7−ジアザビシクロ[5,3,1]ウンデカン、1−アザビシクロ[5,2,2]ウンデカン、1,7−ジアザビシクロ[5,2,2]ウンデカン、1−アザビシクロ[4,4,1]ウンデカン、1,7−ジアザビシクロ[4,4,1]ウンデカン、1−アザビシクロ[4,3,2]ウンデカン、1,7−ジアザビシクロ[4,3,2]ウンデカン、1−アザビシクロ[3,3,0]オクタン、1−アザビシクロ[4,3,0]ノナン、キヌクリジン、ルピナン、ルピニン、キノリジジン、3−ヒドロキシキヌクリジン、3−キヌクリジノン、キンコリン、キンコリジン、シンコニジン、シンコニン、キニジン、キニン、クプレイン、イボガイン、スワインソニン、カスタノスペルミン、ミアンセリン、ミルタザピン、カナジン、トレーガー塩基、1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン−3−カルボン酸、トリエチレンジアミン(別名DABCO)、2−(ヒドロキシメチル)トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、3−キノリジノン塩酸塩、3−クロロ−1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン塩酸塩、シンコニジン二塩酸塩、シンコニン塩酸塩水和物、シンコニジン硫酸塩二水和物、ヒドロキニジン塩酸塩、シンコニン硫酸塩二水和物、キニン塩酸塩二水和物、硫酸キニーネ二水和物、キニンリン酸塩、キニジン硫酸塩二水和物、ミアンセリン塩酸塩、1,1'−(ブタン−1,4−ジイル)ビス[4−アザ−1−アゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン]ジブロミド、1,1'−(デカン−1,10−ジイル)ビス[4−アザ−1−アゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン]ジブロミド、ビス(トリメチルアルミニウム)−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン付加物、ビスムチン、キヌクリジン塩酸塩、3−キヌクリジノン塩酸塩、3−ヒドロキシキヌクリジン塩酸塩、DABCO塩酸塩、2−(ヒドロキシメチル)トリエチレンジアミン塩酸塩、キヌクリジン酢酸塩、3−キヌクリジノン酢酸塩、3−ヒドロキシキヌクリジン酢酸塩、DABCO酢酸塩、2−(ヒドロキシメチル)トリエチレンジアミン酢酸塩、キヌクリジンアクリル酸塩、3−キヌクリジノンアクリル酸塩、3−ヒドロキシキヌクリジンアクリル酸塩、DABCOアクリル酸塩、2−(ヒドロキシメチル)トリエチレンジアミンアクリル酸塩などが挙げられる。
【0032】
本発明の製造方法における反応工程1では、これらの触媒Aを単独で又は二種以上を任意に組み合わせて使用できる。これらの触媒Aの中では、キヌクリジン、3−キヌクリジノン、3−ヒドロキシキヌクリジン、DABCO、2−(ヒドロキシメチル)トリエチレンジアミンが好ましく、特に殆どのアルコールに対して良好な反応性を示し、入手が容易な3−ヒドロキシキヌクリジン、DABCO、2−(ヒドロキシメチル)トリエチレンジアミンが好ましい。
【0033】
本発明の製造方法における反応工程1において、触媒Aの使用量は特に制限はないが、好ましくはアルコールの水酸基1モルに対して触媒Aを0.0001〜0.5モル使用することが好ましく、0.0005〜0.2モル使用することがさらに好ましい。0.0001モルより少ないと目的の(メタ)アクリレートの生成量が少なく、0.5モルより多いと副生成物が多くなり、反応液の着色が増すため、反応終了後の精製工程が煩雑となる。
【0034】
本発明の製造方法における反応工程1において、触媒Bは亜鉛を含む化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物であり、下記一般式(2);
【0035】
【化2】
【0036】
(式中、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、若しくは、炭素数5〜20のシクロアルキル基であり、置換基を有していてもよい。但し、R及びRはフッ素及び塩素等のハロゲン原子を有しない。)で表される有機酸亜鉛を含む化合物;
【0037】
下記一般式(3);
【0038】
【化3】
【0039】
(式中、R、R、R、R、R及びR10は、同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、若しくは、炭素数5〜20のシクロアルキル基であり、置換基を有していてもよい。)で表される亜鉛ジケトンエノラートを含む化合物;蓚酸亜鉛などが挙げられる。
【0040】
上記一般式(2)で表される亜鉛を含む化合物の具体例としては、酢酸亜鉛、酢酸亜鉛二水和物、プロピオン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、シクロヘキサン酪酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、t−ブチル安息香酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛などが挙げられる。なお、これらの亜鉛を含む化合物について、その水和物、溶媒和物、又は触媒Aとの錯体が存在する場合には、該水和物、該溶媒和物、及び触媒Aとの錯体も本発明の製造方法における触媒Bとして使用できる。
【0041】
上記一般式(3)で表される亜鉛を含む化合物の具体例としては、亜鉛アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート水和物、ビス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)亜鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)亜鉛、ビス(5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオナト)亜鉛などが挙げられる。なお、これらの亜鉛を含む化合物について、その水和物、溶媒和物、又は触媒Aとの錯体が存在する場合には、該水和物、溶媒和物、及び触媒Aとの錯体も本発明の製造方法における触媒Bとして使用できる。
【0042】
触媒Bにおける、有機酸亜鉛及び亜鉛ジケトンエノラートとしては、前記した化合物を直接使用することができるが、反応系内でこれら化合物を発生させて使用することもできる。例えば、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、塩化亜鉛及び硝酸亜鉛等の他の亜鉛化合物を原料として使用し、有機酸亜鉛の場合は、これらの亜鉛化合物と有機酸とを反応させる方法、亜鉛ジケトンエノラートの場合は、これらの亜鉛化合物と1,3−ジケトンとを反応させる方法等が挙げられる。
【0043】
本発明の製造方法における反応工程1では、これらの触媒Bを単独で又は二種以上を任意に組み合わせて使用できる。これらの触媒Bの中では、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナートが好ましい。特に、殆どのアルコールに対して良好な反応性を示し、入手が容易な酢酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナートが好ましい。
【0044】
本発明の製造方法における反応工程1において、触媒Bの使用量は特に制限はないが、好ましくはアルコールの水酸基1モルに対して触媒Bを0.0001〜0.5モル使用することが好ましく、0.0005〜0.2モル使用することがさらに好ましい。0.0001モルより少ないと目的の(メタ)アクリレートの生成量が少なく、0.5モルより多いと副生成物が多くなり、反応液の色調が悪化するため、反応終了後の精製工程が煩雑となる。
【0045】
本発明の製造方法における反応工程1において、触媒Aと触媒Bの使用割合は特に制限はないが、好ましくは触媒Bを1モルに対して触媒Aを0.005〜10.0モル使用することが好ましく、0.05〜5.0モル使用することがさらに好ましい。0.005モルよりも少ないと目的の(メタ)アクリレートの生成量が少なく、10.0モルよりも多いと副生成物が多くなり、反応液の色調が悪化するため、反応終了後の精製工程が煩雑となる。
【0046】
本発明の製造方法における反応工程1において、併用する触媒Aと触媒Bは、触媒AがDABCOであり、触媒Bが酢酸亜鉛及び/又はアクリル酸亜鉛である組み合わせが最も好ましい。この組み合わせは、(メタ)アクリレートを収率よく得られることに加え、反応終了後の色調に優れることから、色調が重要視される各種工業用途に好適に使用できる。さらには、この組み合わせは、比較的安価に入手可能な触媒であることから経済的に有利となる。
【0047】
本発明の製造方法における反応工程1において、エステル交換反応は図1に示す反応機構によって進行すると推測している。先ず、触媒Aが単官能(メタ)アクリレートのβ位炭素に付加することでカルボニル酸素原子上の電子密度が増し、これがさらに別の単官能(メタ)アクリレートのカルボニル炭素を攻撃することで図1に示す反応中間体を生じる。その後、該中間体がアルコールとエステル交換反応を起こすことで、目的の(メタ)アクリレートが生成すると推測している。この際、ルイス酸性を有する触媒Bは、(メタ)アクリロイル基を活性化することで、図1に示す反応機構を促進すると推測している。
【0048】
本発明の製造方法における反応工程1において、使用する触媒A及び触媒Bは、上記反応の最初から添加してもよいし、途中から添加してもよい。また、所望の使用量を一括で添加してもよいし、分割して添加してもよい。また、触媒A及び/又は触媒Bが固体の場合には、溶媒で溶解した後に添加してもよい。
【0049】
本発明の製造方法における反応工程1において、反応温度は40〜180℃であることが好ましく、60〜160℃であることが特に好ましい。反応温度が40℃未満では反応速度が極めて遅く、180℃超えると(メタ)アクリロイル基の熱重合が起きたり、反応液の色調が悪化したりするため、反応終了後の精製工程が煩雑となる。
【0050】
本発明の製造方法における反応工程1において、反応圧力は所定の反応温度を維持できれば特に制限はなく、減圧状態で実施してもよく、加圧状態で実施してもよい。通常、0.000001〜10MPa(絶対圧力)である。
【0051】
本発明の製造方法における反応工程1においては、エステル交換反応の進行に伴い、原料として使用した単官能(メタ)アクリレートに由来する1価アルコールが副生する。該1価アルコールは反応系内に共存させたままでもよいが、該1価アルコールを反応系外に排出することにより、エステル交換反応の進行をより促進することができる。
【0052】
本発明の製造方法における反応工程1においては、反応液の色調を良好に維持する目的で系内にアルゴン、ヘリウム、窒素及び炭酸ガスなどの不活性ガスを導入してもよい。また、(メタ)アクリロイル基の重合を防止する目的で系内に含酸素ガスを導入してもよい。含酸素ガスの具体例としては、空気、酸素と窒素の混合ガス、酸素とヘリウムの混合ガスなどが挙げられる。含酸素ガスの導入方法としては、反応液中に溶存させたり、反応液中に吹込む(いわゆるバブリング)方法がある。
【0053】
本発明の製造方法における反応工程1においては、(メタ)アクリロイル基の重合を防止する目的で、系内に重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、フェノチアジン、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルなどの有機系重合禁止剤;塩化銅、硫酸銅及び硫酸鉄などの無機系重合禁止剤;ジブチルジチオカルバミン酸銅、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩などの有機塩系重合禁止剤が挙げられる。重合禁止剤は、一種を単独で添加しても二種以上を任意に組み合わせて添加してもよい。また、重合禁止剤は、反応の最初から添加してもよいし、途中から添加してもよい。さらには、重合禁止剤は、所望の使用量を一括で添加してもよいし、分割して添加してもよい。重合禁止剤は、精留塔を経由して連続的に添加してもよい。重合禁止剤の添加量としては、反応液中に5〜30,000質量ppmが好ましく、25〜10,000質量ppmがより好ましい。5質量ppmより少ないと重合禁止効果が不充分であり、30,000質量ppmより多いと反応液の色調が悪化したり、得られる(メタ)アクリレートの硬化速度が低下するため、反応終了後の精製工程が煩雑となる。
【0054】
本発明の製造方法における反応工程1の反応時間は、触媒の種類と使用量、反応温度、反応圧力などにより異なるが、通常0.1〜150時間、好ましくは0.5〜80時間である。
【0055】
本発明の製造方法における反応工程1は、回分式、半回分式、連続式のいずれの方法によっても実施できる。回分式の一例としては、反応器にアルコール、単官能(メタ)アクリレート、触媒、重合禁止剤を仕込み、含酸素ガスを反応液中にバブリングさせながら所定の温度で撹拌する。その後、エステル交換反応の進行に伴い、原料として使用した単官能(メタ)アクリレートに由来する1価アルコールが副生する。該1価アルコールは、所定の圧力で反応器から抜き出すことで、目的の(メタ)アクリレートを生成させることができる。
【0056】
本発明の製造方法における反応工程1において得られた反応生成物に対して、冷却晶析、濃縮晶析などの晶析操作;加圧ろ過、吸引ろ過、遠心ろ過などのろ過操作;単式蒸留、分別蒸留、分子蒸留、水蒸気蒸留などの蒸留操作;固液抽出、液液抽出などの抽出操作;デカンテーションなどを組み合わせた分離精製操作を施すことにより、目的の(メタ)アクリレートを純度よく得ることができる。該分離精製操作においては溶媒を使用してもよい。また、本発明で使用した触媒及び/又は重合禁止剤を中和するための中和剤や、吸着除去するための吸着剤、副生成物を分解又は除去するための酸及び/又はアルカリ、色調を改善するための活性炭、ろ過効率及びろ過速度を向上するためのケイソウ土などを使用してもよい。
【0057】
次に触媒回収工程について説明する。
【0058】
本発明の製造方法における触媒回収工程は、前記反応工程1で得られた反応生成物から触媒A及び/又は触媒Bを含む固体を分離する工程である。分離方法は特に制限はないが、冷却晶析、濃縮晶析などの晶析操作;加圧ろ過、吸引ろ過、遠心ろ過などのろ過操作;単式蒸留、分別蒸留、分子蒸留、水蒸気蒸留などの蒸留操作;固液抽出、液液抽出などの抽出操作;デカンテーションなどの分離精製操作が挙げられる。これらは、単独で実施してもよく、二種以上を任意に組み合わせて実施してもよい。これら分離精製操作の中では、ろ過操作、固液抽出、デカンテーションが好ましく、特に操作が最も簡便なろ過操作がより好ましい。
【0059】
本発明の製造方法における触媒回収工程において、固体とは、反応工程1で得た反応生成物を、フィルターを設置したろ過器へ投入し、ろ過操作を実施した後にフィルター上に残渣として捕集される物質を意味する。
【0060】
本発明の製造方法における触媒回収工程は、溶媒を使用せずに実施することもできるが、必要に応じて溶媒を使用してもよい。反応工程1と同様の溶媒を使用することができ、また、反応工程1の原料である単官能(メタ)アクリレートを溶媒として使用することもできる。これらの溶媒は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意に組み合わせて混合溶媒として使用してもよい。
【0061】
本発明の製造方法における触媒回収工程の実施温度は、−30℃から150℃であることが好ましい。反応温度が−30℃未満では目的の(メタ)アクリレートが析出し、触媒A及び/又は触媒Bを含む固体との分離操作が煩雑となることがある。150℃を超えると(メタ)アクリロイル基の熱重合が起きたり、回収した該触媒を反応工程2で使用する場合に反応生成物の色調が悪化することがある。
【0062】
本発明の製造方法における触媒回収工程の実施圧力は、所定の反応温度を維持できれば特に制限はなく、減圧状態で実施してもよく、加圧状態で実施してもよい。通常、0.000001〜10MPa(絶対圧力)である。
【0063】
本発明の製造方法における触媒回収工程では、反応液の色調を良好に維持する目的で系内にアルゴン、ヘリウム、窒素及び炭酸ガスなどの不活性ガスを導入してもよい。また、(メタ)アクリロイル基の重合を防止する目的で系内に含酸素ガスを導入してもよい。含酸素ガスの具体例としては、空気、酸素と窒素の混合ガス、酸素とヘリウムの混合ガスなどが挙げられる。該ガスの導入方法としては、反応生成物中に吹込む(いわゆるバブリング)方法や、加圧ろ過や吸引ろ過などのろ過操作の際に気相部に導入する方法が挙げられる。
【0064】
本発明の製造方法における触媒回収工程では、(メタ)アクリロイル基の重合を防止する目的で系内に重合禁止剤を添加してもよい。反応工程1と同様の重合禁止剤を使用することができ、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0065】
本発明の製造方法における触媒回収工程の実施時間は、特に制限はないが、通常0.1〜100時間、好ましくは0.5〜70時間である。
【0066】
本発明の製造方法における触媒回収工程は、回分式、半回分式、連続式のいずれの方法によっても実施できる。回分式ろ過操作の一例としては、反応工程1で得られた反応生成物を、下部にフィルターを付けた回分式加圧ろ過器へ上部から投入し、気相部に含酸素ガスを導入してろ過器内の圧力を上昇させた後、ろ過器底部の抜出管からフィルターを介して液部を抜出す。これにより、フィルターに捕集された触媒A及び/又は触媒Bを含む固体を容易に分離回収することができる。
【0067】
本発明の製造方法における触媒回収工程において分離回収された触媒A及び/又は触媒Bを含む固体は、そのまま反応工程2で使用してもよいが、溶媒でリンスしたり、加熱乾燥や真空乾燥などの乾燥処理を施した後に反応工程2で使用してもよい。
【0068】
次に反応工程2について説明する。
【0069】
本発明の製造方法における反応工程2においては、反応工程1と同様のアルコール、単官能(メタ)アクリレート及び溶媒を使用することができる。好ましいアルコール、好ましい単官能(メタ)アクリレート、好ましい溶媒、及びそれらの好ましい使用割合などについても、反応工程1と同様である。
【0070】
本発明の製造方法における反応工程2においては、触媒回収工程で分離回収された触媒A及び触媒Bを含む固体を触媒として、又は触媒A及び/又は触媒Bを含む固体を触媒の一部として使用する。触媒回収工程を経ていない新たな触媒A及び/又は触媒Bを追加して実施してもよい。使用できる触媒A及び触媒Bは反応工程1と同様であり、好ましい触媒A、好ましい触媒B及びそれらの好ましい使用割合と添加方法についても、反応工程1と同様である。触媒A及び/又は触媒Bは、触媒回収工程を経た回収触媒を10質量%以上使用することが好ましく、40質量%以上使用することがより好ましく、60質量%以上使用することが特に好ましい。
【0071】
本発明の製造方法における反応工程2は、反応工程1と同様の反応温度、反応圧力及び反応時間で実施できる。好ましい反応温度、好ましい反応圧力及び好ましい反応時間についても、反応工程1と同様である。また、エステル交換反応の進行に伴い副生した1価アルコールについても、反応工程1と同様に、反応系内に共存させたままでもよいし、反応系外に排出することにより、エステル交換反応の進行を促進してもよい。
【0072】
本発明の製造方法における反応工程2においては、反応工程1と同様に、系内にガスを導入してもよいし、重合禁止剤を添加してもよい。使用できるガスの種類、重合禁止剤の種類、好ましい重合禁止剤の種類と添加量及び添加方法についても、反応工程1と同様である。
【0073】
本発明の製造方法における反応工程2は、反応工程1と同様に、回分式、半回分式、連続式のいずれの方法によっても実施できる。また、反応生成物に対して、反応工程1と同様の分離精製操作を施すことにより、目的の(メタ)アクリレートを純度よく得ることができる。該分離精製操作においては溶媒を使用してもよいし、本発明で使用した触媒及び/又は重合禁止剤を中和するための中和剤や、吸着除去するための吸着剤、副生成物を分解又は除去するための酸及び/又はアルカリ、色調を改善するための活性炭、ろ過効率及びろ過速度を向上するためのケイソウ土などを使用してもよい。
【0074】
本発明の製造方法は繰返し行うことができる。すなわち、反応系から触媒A及び/又は触媒Bを含む固体を分離回収する触媒回収工程と、該回収した触媒A及び/又は触媒Bを用いて(メタ)アクリレートを製造する反応工程2と、を繰返し行うことができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」の表示は「質量部」を意味し、「%」の表示は「質量%」を意味する。
【0076】
実施例及び比較例における反応収率は、エステル交換反応の進行に伴い副生した1価アルコール(原料として使用した単官能(メタ)アクリレートに由来する)を定量し、下記式を用いて算出した。なお、1価アルコールの定量は、示差屈折率検出器を備えた高速液体クロマトグラフ(カラム:日本ウォーターズ株式会社製 Atlantis(Part No.186003748、カラム内径4.6mm、カラム長さ250mm)、溶媒:純水又は10容量%イソプロパノール水溶液)を使用し、内部標準法にて実施した。
反応収率(モル%)=エステル交換反応の進行に伴い副生した1価アルコールのモル数/(原料として使用したアルコールのモル数×原料として使用したアルコール分子の有するアルコール性水酸基数)×100
【0077】
実施例及び比較例における精製収率は、エステル交換反応終了後の反応生成物に対して、蒸留、晶析、ろ過などの分離精製操作を施した後に得られる、目的の(メタ)アクリレートを含む精製処理物の質量を用いて算出した。
精製収率(%)=目的の(メタ)アクリレートを含む精製処理物(部)/(原料として使用したアルコールの有するアルコール性水酸基が全て(メタ)アクリレート化された場合に生成する(メタ)アクリレートの分子量×原料として使用したアルコールのモル数)×100
【0078】
実施例及び比較例において目的の(メタ)アクリレートが反応生成物及び精製処理物中に含まれることの確認は、UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフ(カラム:日本ウォーターズ株式会社製 ACQUITY UPLC BEH C18(Part No.186002350、カラム内径2.1mm、カラム長さ50mm)、検出波長:210nm、溶媒:0.03質量%トリフルオロ酢酸水溶液とメタノールの混合溶媒)を用いて行った。
【0079】
実施例の触媒回収工程において分離回収した触媒A及び/又は触媒Bを含む固体の分析方法について以下に記す。
H−NMR測定は、Bruker社製AVANCEIIIを用いて実施した。周波数は400MHz、測定温度は23℃、測定溶媒は重DMSOを使用した。
CHN元素分析は、ヤナコテクニカルサイエンス株式会社製CHNコーダーMT−5を用いて実施した。
Znの含有量の分析は、スペクトロ社製SPECTRO ARCOS SOPを用いたICP発光分析により行った。
【0080】
<実施例1>
(反応工程1及び触媒回収工程)
撹拌機、温度計、ガス導入管、精留塔及び冷却管を取付けた1リットルのフラスコに、ペンタエリスリトールを69.33部(0.51モル)、2−メトキシエチルアクリレートを690.05部(5.30モル)、触媒AとしてDABCOを2.038部(0.018モル)、触媒Bとして酢酸亜鉛を3.260部(0.018モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテルを1.56部(仕込んだ原料の総質量に対して2036質量ppm)仕込み、含酸素ガス(酸素を5容量%、窒素を95容量%)を液中にバブリングさせた。反応液温度105〜120℃の範囲で加熱撹拌させながら、反応系内の圧力を130〜760mmHgの範囲で調整し、エステル交換反応の進行に伴い副生した2−メトキシエタノールと2−メトキシエチルアクリレートとの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出した。また、該抜出液と同質量部の2−メトキシエチルアクリレートを反応系に随時追加した。反応系からの抜出液に含まれる2−メトキシエタノールを定量した結果、加熱撹拌開始から30時間後に反応収率は88%に到達したので、反応液の加熱を終了するとともに、反応系内の圧力を常圧に戻して抜出を終了した。
得られた反応生成物に対して、触媒回収工程として反応液を室温まで冷却後、3.89部の固体を加圧ろ過により分離した。ろ過後のろ液に乾燥空気をバブリングさせながら、温度70〜95℃、圧力0.001〜100mmHgの範囲で8時間の減圧蒸留を行い、未反応の2−メトキシエチルアクリレートを含む留出液を分離した。UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフを用いて減圧蒸留後の釜液の組成分析を行った結果、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートを主要成分として含むことを確認した。該釜液を精製処理物とみなして算出した精製収率は96%であった。結果を表1に示す。
【0081】
反応工程1に伴う触媒回収工程のろ過分離で得た固体を分析したところ、該固体の主成分は、触媒AであるDABCOと上記一般式(2)で表される亜鉛を含む化合物である触媒Bとが1:2(モル比)の割合で形成した錯体であることを確認した。分析結果及び該錯体の構造式(4)を記す。
H−NMR分析(重DMSO):δ6.03ppm(m、6H、CH=CHCO−)、δ5.55ppm(m、3H、CH=CHCO−)、δ2.85ppm(s、12H、N−CHCH−N)、δ1.78ppm(s、3H、CHCO−)
元素分析:Calcd.for C1724Zn:C,39.64;H,4.70;O,24.85;N,5.44;Zn,25.38%. Found:C,39.80;H,4.80;O,25.44;N,5.70;Zn,24.26%.
【0082】
【化4】
【0083】
(反応工程2及び触媒回収工程)
撹拌機、温度計、ガス導入管、精留塔及び冷却管を取付けた1リットルのフラスコに、ペンタエリスリトールを69.33部(0.51モル)、2−メトキシエチルアクリレートを690.05部(5.30モル)、触媒AとしてDABCOを1.233部(0.011モル)、触媒Bとして酢酸亜鉛を0.625部(0.003モル)、触媒回収工程で得た固体を3.699部(触媒Aとして0.007モル、触媒Bとして0.014モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテルを1.56部(仕込んだ原料の総質量に対して2035質量ppm)仕込み、含酸素ガス(酸素を5容量%、窒素を95容量%)を液中にバブリングさせた。反応液温度105〜120℃の範囲で加熱撹拌させながら、反応系内の圧力を130〜760mmHgの範囲で調整し、エステル交換反応の進行に伴い副生した2−メトキシエタノールと2−メトキシエチルアクリレートとの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出した。また、該抜出液と同質量部の2−メトキシエチルアクリレートを反応系に随時追加した。反応系からの抜出液に含まれる2−メトキシエタノールを定量した結果、加熱撹拌開始から30時間後に反応収率は89%に到達したので、反応液の加熱を終了するとともに、反応系内の圧力を常圧に戻して抜出を終了した。
得られた反応生成物に対して、触媒回収工程として反応液を室温まで冷却後、3.98部の固体を加圧ろ過により分離した。ろ過後のろ液に乾燥空気をバブリングさせながら、温度70〜95℃、圧力0.001〜100mmHgの範囲で8時間の減圧蒸留を行い、未反応の2−メトキシエチルアクリレートを含む留出液を分離した。UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフを用いて減圧蒸留後の釜液の組成分析を行った結果、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートを主要成分として含むことを確認した。該釜液を精製処理物とみなして算出した精製収率は97%であった。結果を表1に示す。
【0084】
反応工程2に伴う触媒回収工程のろ過分離で得た固体を分析したところ、該固体の主成分は触媒AであるDABCOと上記一般式(2)で表される亜鉛を含む化合物である触媒Bが1:2(モル比)の割合で形成した錯体であることを確認した。分析結果及び該錯体の構造式(5)を記す。
また、該固体を触媒として使用し、反応工程2及び触媒回収工程を繰返した結果を表1に示す。
H−NMR分析(重DMSO):δ6.03ppm(m、8H、CH=CHCO−)、δ5.55ppm(m、4H、CH=CHCO−)、δ2.85ppm(s、12H、N−CHCH−N)
元素分析:Calcd.for C1824Zn:C,41.01;H,4.59;O,24.28;N,5.31;Zn,24.81%.Found:C,41.18;H,4.69;O,24.86;N,5.57;Zn,23.71%.
【0085】
【化5】


【0086】
【表1】
【0087】
<実施例2>
(反応工程1及び触媒回収工程)
撹拌機、温度計、ガス導入管、精留塔及び冷却管を取付けた1リットルのフラスコに、ジペンタエリスリトールを86.33部(0.34モル)、2−メトキシエチルアクリレートを690.05部(5.30モル)、触媒AとしてDABCOを4.077部(0.036モル)、触媒Bとして酢酸亜鉛を6.520部(0.036モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテルを1.63部(仕込んだ原料の総質量に対して2061質量ppm)仕込み、含酸素ガス(酸素を5容量%、窒素を95容量%)を液中にバブリングさせた。反応液温度120〜145℃の範囲で加熱撹拌させながら、反応系内の圧力を250〜760mmHgの範囲で調整し、エステル交換反応の進行に伴い副生した2−メトキシエタノールと2−メトキシエチルアクリレートの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出した。また、該抜出液と同質量部の2−メトキシエチルアクリレートを反応系に随時追加した。反応系からの抜出液に含まれる2−メトキシエタノールを定量した結果、加熱撹拌開始から24時間後に反応収率は86%に到達したので、反応液の加熱を終了するとともに、反応系内の圧力を常圧に戻して抜出を終了した。得られた反応生成物に対して、触媒回収工程として反応液を室温まで冷却後、8.38部の固体を加圧ろ過により分離した。ろ過後のろ液に乾燥空気をバブリングさせながら、温度70〜95℃、圧力0.001〜100mmHgの範囲で8時間の減圧蒸留を行い、未反応の2−メトキシエチルアクリレートを含む留出液を分離した。UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフを用いて減圧蒸留後の釜液の組成分析を行った結果、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを主要成分として含むことを確認した。該釜液を精製処理物とみなして算出した精製収率は99%であった。結果を表2に示す。
【0088】
反応工程1に伴う触媒回収工程のろ過分離で得た固体を分析したところ、該固体の主成分は触媒AであるDABCOと上記一般式(2)で表される亜鉛を含む化合物である触媒Bが1:2(モル比)の割合で形成した錯体であることを確認した。また、該錯体は上記構造式(5)であることを確認した。
【0089】
(反応工程2及び触媒回収工程)
撹拌機、温度計、ガス導入管、精留塔及び冷却管を取付けた1リットルのフラスコに、ジペンタエリスリトールを86.33部(0.34モル)、2−メトキシエチルアクリレートを690.05部(5.30モル)、触媒AとしてDABCOを2.382部(0.021モル)、触媒Bとして酢酸亜鉛を0.975部(0.005モル)、触媒回収工程で得た固体を7.965部(触媒Aとして0.015モル、触媒Bとして0.030モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテルを1.63部(仕込んだ原料の総質量に対して2059質量ppm)仕込み、含酸素ガス(酸素を5容量%、窒素を95容量%)を液中にバブリングさせた。反応液温度120〜145℃の範囲で加熱撹拌させながら、反応系内の圧力を250〜760mmHgの範囲で調整し、エステル交換反応の進行に伴い副生した2−メトキシエタノールと2−メトキシエチルアクリレートの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出した。また、該抜出液と同質量部の2−メトキシエチルアクリレートを反応系に随時追加した。反応系からの抜出液に含まれる2−メトキシエタノールを定量した結果、加熱撹拌開始から24時間後に反応収率は87%に到達したので、反応液の加熱を終了するとともに、反応系内の圧力を常圧に戻して抜出を終了した。得られた反応生成物に対して、触媒回収工程として反応液を室温まで冷却後、8.38部の固体を加圧ろ過により分離した。ろ過後のろ液に乾燥空気をバブリングさせながら、温度70〜95℃、圧力0.001〜100mmHgの範囲で8時間の減圧蒸留を行い、未反応の2−メトキシエチルアクリレートを含む留出液を分離した。UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフを用いて減圧蒸留後の釜液の組成分析を行った結果、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを主要成分として含むことを確認した。該釜液を精製処理物とみなして算出した精製収率は99%であった。結果を表2に示す。
【0090】
反応工程2に伴う触媒回収工程のろ過分離で得た固体を分析したところ、反応工程1に伴う触媒回収工程のろ過分離で得た固体と同様に、上記構造式(5)で表される錯体を主成分とすることを確認した。該固体を触媒として使用し、反応工程2及び触媒回収工程を繰返した結果を表2に示す。

【0091】
【表2】
【0092】
<実施例3>
(反応工程1及び触媒回収工程)
撹拌機、温度計、ガス導入管、精留塔及び冷却管を取付けた300ミリリットルのフラスコに、ジエチレングリコールモノビニルエーテルを85.00部(0.64モル)、メチルアクリレートを110.67部(1.29モル)、触媒AとしてDABCOを1.082部(0.010モル)、触媒Bとしてアクリル酸亜鉛を4.004部(0.019モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.053部(仕込んだ原料の総質量に対して265質量ppm)、フェノチアジンを0.025部(仕込んだ原料の総質量に対して123質量ppm)仕込み、含酸素ガス(酸素を5容量%、窒素を95容量%)を液中にバブリングさせた。反応液温度85〜105℃の範囲で加熱撹拌を行い、エステル交換反応の進行に伴い副生したメタノールとメチルアクリレートの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出した。また、該抜出液と同質量部のメチルアクリレートを反応系に随時追加した。反応系からの抜出液に含まれるメタノールを定量した結果、加熱撹拌開始から25時間後に反応収率は90%に到達したので、反応液の加熱を終了した。得られた反応生成物に対して、触媒回収工程として反応液を室温まで冷却後、4.32部の固体を加圧ろ過により分離した。ろ過後のろ液に乾燥空気をバブリングさせながら、温度70〜80℃、圧力0.001〜700mmHgの範囲で8時間の減圧蒸留を行い、未反応のメチルアクリレートを含む留出液を分離した。UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフを用いて減圧蒸留後の釜液の組成分析を行った結果、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレートを主要成分として含むことを確認した。該釜液を精製処理物とみなして算出した精製収率は98%であった。結果を表3に示す。
【0093】
反応工程1に伴う触媒回収工程のろ過分離で得た固体を分析したところ、該固体の主成分は触媒AであるDABCOと上記一般式(2)で表される亜鉛を含む化合物である触媒Bとが1:2(モル比)の割合で形成した錯体であることを確認した。また、該錯体は上記構造式(5)であることを確認した。
【0094】
(反応工程2及び触媒回収工程)
撹拌機、温度計、ガス導入管、精留塔及び冷却管を取付けた300ミリリットルのフラスコに、ジエチレングリコールモノビニルエーテルを85.00部(0.64モル)、メチルアクリレートを110.67部(1.29モル)、触媒AとしてDABCOを0.195部(0.002モル)、触媒Bとしてアクリル酸亜鉛を0.721部(0.003モル)、触媒回収工程で得た固体を4.170部(触媒Aとして0.008モル、触媒Bとして0.016モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.053部(仕込んだ原料の総質量に対して265質量ppm)、フェノチアジンを0.025部(仕込んだ原料の総質量に対して123質量ppm)仕込み、含酸素ガス(酸素を5容量%、窒素を95容量%)を液中にバブリングさせた。反応液温度85〜105℃の範囲で加熱撹拌を行い、エステル交換反応の進行に伴い副生したメタノールとメチルアクリレートの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出した。また、該抜出液と同質量部のメチルアクリレートを反応系に随時追加した。反応系からの抜出液に含まれるメタノールを定量した結果、加熱撹拌開始から25時間後に反応収率は91%に到達したので、反応液の加熱を終了した。得られた反応生成物に対して、触媒回収工程として反応液を室温まで冷却後、4.37部の固体を加圧ろ過により分離した。ろ過後のろ液に乾燥空気をバブリングさせながら、温度70〜80℃、圧力0.001〜700mmHgの範囲で8時間の減圧蒸留を行い、未反応のメチルアクリレートを含む留出液を分離した。UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフを用いて減圧蒸留後の釜液の組成分析を行った結果、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレートを主要成分として含むことを確認した。該釜液を精製処理物とみなして算出した精製収率は98%であった。結果を表3に示す。
【0095】
反応工程2に伴う触媒回収工程のろ過分離で得た固体を分析したところ、反応工程1に伴う触媒回収工程のろ過分離で得た固体と同様に、上記構造式(5)で表される錯体を主成分とすることを確認した。該固体を触媒として使用し、反応工程2及び触媒回収工程を繰返した結果を表3に示す。

【0096】
【表3】
【0097】
実施例にて反応工程とそれに伴う触媒回収工程を5回繰返した結果を示すが、極めて簡便なろ過操作により触媒を回収し、該回収触媒を用いて反応工程を繰返しても触媒性能の低下なく目的の(メタ)アクリレートが収率よく得られることが分かる。また、回収触媒を使用せず、新しい触媒A及びBのみを使用して反応工程1を5回実施した場合と比較すれば、必要とする触媒A及び触媒Bの総量は大幅に少なく、本発明の製造方法が従来技術と比較して経済的に極めて有利な方法であることが分かる。
【0098】
<比較例1>
(反応工程1及び触媒回収工程)
撹拌機、温度計、ガス導入管、精留塔及び冷却管を取付けた1リットルのフラスコに、ペンタエリスリトールを97.07部(0.71モル)、2−メトキシエチルアクリレートを668.81部(5.14モル)、触媒AとしてN−メチルイミダゾールを2.479部(0.030モル)、触媒Bとして酢酸亜鉛を6.155部(0.034モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテルを1.22部(仕込んだ原料の総質量に対して1573質量ppm)仕込み、含酸素ガス(酸素を5容量%、窒素を95容量%)を液中にバブリングさせた。反応液温度105〜120℃の範囲で加熱撹拌させながら、反応系内の圧力を130〜760mmHgの範囲で調整し、エステル交換反応の進行に伴い副生した2−メトキシエタノールと2−メトキシエチルアクリレートとの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出した。また、該抜出液と同質量部の2−メトキシエチルアクリレートを反応系に随時追加した。反応系からの抜出液に含まれる2−メトキシエタノールを定量した結果、加熱撹拌開始から20時間後に反応収率は89%に到達したので、反応液の加熱を終了するとともに、反応系内の圧力を常圧に戻して抜出を終了した。
得られた反応生成物に対して、触媒回収工程として反応液を5℃まで冷却したが、固体の生成を確認できなかった。さらに反応液にn−ヘキサンを100g投入したが、やはり固体の生成を確認できず、触媒を回収することができなかった。
【0099】
<比較例2〜3>
触媒A、触媒Bを変えて比較例1と同様の方法で反応工程1及び触媒回収工程を実施した。反応工程1でエステル交換反応は進行したが、触媒回収工程で固体の生成を確認できず、触媒を回収することができなかった。結果を表4に示す。

【0100】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の方法によれば、アルコールと単官能(メタ)アクリレートとから(メタ)アクリレートを収率よく得ることができる。本発明の方法により得られた(メタ)アクリレートは、塗料、インキ、接着剤、光学レンズ、充填剤及び成形材料などの配合物の架橋成分として、又は反応性希釈剤成分として各種工業用途に好適に使用できる。

図1