特許第6643550号(P6643550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643550胚体内胚葉を分化させるための因子を同定する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643550
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】胚体内胚葉を分化させるための因子を同定する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/073 20100101AFI20200130BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20200130BHJP
【FI】
   C12N5/073ZNA
   C12N5/0735
【請求項の数】9
【全頁数】87
(21)【出願番号】特願2017-168632(P2017-168632)
(22)【出願日】2017年9月1日
(62)【分割の表示】特願2017-134828(P2017-134828)の分割
【原出願日】2005年6月23日
(65)【公開番号】特開2018-33458(P2018-33458A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2017年10月2日
(31)【優先権主張番号】60/586,566
(32)【優先日】2004年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/587,942
(32)【優先日】2004年7月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11/021,618
(32)【優先日】2004年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11/115,868
(32)【優先日】2005年4月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503431792
【氏名又は名称】ヴィアサイト,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】ダムール,ケヴィン アレン
(72)【発明者】
【氏名】アグルニック,アラン ディー
(72)【発明者】
【氏名】エリアゼル,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ベートゲ,エマニュエル
【審査官】 鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−504834(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/018760(WO,A1)
【文献】 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, Vol.97, No.21, pp.11307-11312
【文献】 Development, 2004.04, Vol.131, pp.1651-1662
【文献】 Nature, 2003, Vol.423, pp.448-452
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00−5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト胚体内胚葉細胞を製造するインビトロの方法であって、
ヒト多能性胚性幹細胞を含むヒト細胞集団を得る工程、並びに、
前記ヒト細胞集団に、アクチビンAを供給することにより、ヒト胚体内胚葉細胞を製造する工程であって、前記ヒト細胞集団は、血清代替物を含まない培地に存在し、少なくとも30ng/mlのアクチビンAが前記ヒト細胞集団に供給される、工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記細胞集団からアクチビンAを除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヒト多能性胚性幹細胞の少なくとも15%が胚体内胚葉細胞に分化する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞集団に、Wntファミリー成員を供給することをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記Wntファミリー成員がWnt3aである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも100ng/mlのアクチビンAが前記細胞集団に供給される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記胚性幹細胞が、桑実胚及び胚の内部細胞塊からなる群から選ばれる組織に由来する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
血清を前記細胞集団に供給することをさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ヒト胚体内胚葉細胞を製造するインビトロの方法であって、
ヒト多能性胚性幹細胞を含むヒト細胞集団を得る工程、並びに、
前記ヒト細胞集団に、アクチビンA及びアクチビンBを供給することにより、ヒト胚体内胚葉細胞を製造する工程であって、前記ヒト細胞集団は、血清代替物を含まない培地に存
在し、少なくとも30ng/mlのアクチビンAが前記ヒト細胞集団に供給される、工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、医学及び細胞生物学の分野に関する。特に、本発明は、胚体内胚葉細胞を他の細胞型へ分化させるのに有用な因子の同定に関する。
【0002】
[関連出願]
本出願は、2004年4月27日に出願されたPDX 1発現内胚葉(PDX 1 EXPRESSING ENDODERM)という表題の米国仮特許出願第60/566,293号、2004年7月14日に出願された胚体内胚葉の単離のためのケモカイン細胞表面受容体(CHEMOKINE CELL SURFACE RECEPTOR FOR THE ISOLATION OF DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米国仮特許出願第60/587,942号及び2004年7月9日に出願された胚体内胚葉の単離のためのケモカイン細胞表面受容体(CHEMOKINE CELL SURFACE RECEPTOR FOR THE ISOLATION OF DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米国仮特許出願第60/586,566号の通常の出願として米国特許法第119条(e)項のもと、優先権を主張する2005年4月26日に出願されたPDX 1発現内胚葉(PDX 1 EXPRESSING ENDODERM)という表題の米国特許出願第11/115,868号の一部継続出願である。本出願はまた、2004年7月14日に出願された胚体内胚葉の単離のためのケモカイン細胞表面受容体(CHEMOKINE CELL SURFACE RECEPTOR FOR THE ISOLATION OF DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米国仮特許出願第60/587,942号及び2004年7月9日に出願された胚体内胚葉の単離のためのケモカイン細胞表面受容体(CHEMOKINE CELL SURFACE RECEPTOR FOR THE ISOLATION OF DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米国仮特許出願第60/586,566号、並びに2003年12月23日に出願された胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米
国仮特許出願第60/532,004号に対する通常の出願として米国特許法第119条(e)項のもと、優先権を主張する2004年12月23日に出願された胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米国特許出願第11/021,618号の一部継続出願
である。
【背景技術】
【0003】
[背景]
ヒト多能性幹細胞、例えば胚性幹(ES)細胞及び胚性生殖(EG)細胞は、1994年に線維芽細胞フィーダーを含有しない(Bongso et al., 1994)そして線維芽細胞フィー
ダーを含有する(Hogan, 1997)培養物中でまず単離された。後に、Thomson、Reubinoff
及びShamblottは、有糸分裂不活性化マウスフィーダー層を用いたヒトES及びEG細胞
の連続培養を確立した(Reubinoff et al., 2000;Shamblott et al., 1998;Thomson et
al., 1998)。
【0004】
ヒトES及びEG細胞(hESC)は、ヒト発達の早期段階を研究するための、並びにいくつかの疾患状態、例えば真性糖尿病及びパーキンソン病における療法的介入のための独特の機会を提供する。例えばhESC由来のインスリン生産β細胞の使用は、糖尿病の治療のためにドナー膵臓からの細胞を利用する一般的細胞治療方法を上回る膨大な改善を提供する。しかしながら現在、hESCからインスリン生産β細胞を生成する方法は分かっていない。したがって、ドナー膵臓からの島細胞を利用する真性糖尿病のための一般的細胞治療の処置は、移植に必要とされる高品質の島細胞の不足により制限される。単一I型糖尿病患者のための細胞療法は、約8×108個の膵臓島細胞の移植を要する(Shapiro et al., 2000;Shapiro et al., 2001a;Shapiro et al., 2001b)。したがって、少なく
とも2つの健常ドナー器官が、首尾よい移植のために十分な島細胞を得るために必要とされる。ヒト胚性幹細胞は、ヒト細胞療法のための相当量の高品質分化細胞を発達させるた
めの出発物質の供給源を提供する。
【0005】
hESCを細胞療法用途に独特に適合させる2つの特性は、多能性、並びに長期間培養中にこれらの細胞を保持する能力である。多能性は、3つの一次胚葉(内胚葉、中胚葉、外胚葉)すべての誘導体に分化し、次に胚体外組織(例えば胎盤)及び生殖細胞のほかに、成熟生物体のすべての体細胞型を形成するhESCの能力により確定される。多能性はhESCに並外れた有用性を付与するが、しかしこの特性は、これらの細胞及びそれらの誘導体の研究及び操作のための独特の好機も有する。hESC培養物を分化するに際して生じ得る非常に種々の細胞型のために、膨大な数の細胞型が極めて低い効率で産生される。さらに、任意の所定の細胞型の産生を評価する場合の結果は、適切なマーカーの測定に応じて決定的に決まる。効率的な指示分化は、hESCの療法的用途のために大きな重要性を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
細胞療法用途で有用である細胞を生成するための出発材料としてhESCを使用するためには、上述の問題を克服することは好適である。さらに、細胞療法に有用な細胞型へのhESCに由来する前駆細胞の分化を促進する因子を同定することは有益である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[発明の概要]
本発明の実施形態は、胚体内胚葉細胞のようなPDX1陽性(PDX1発現)内胚葉細胞及び/又はPDX1陰性内胚葉細胞(PDX1を有意に発現しない内胚葉細胞)を含む細胞集団における細胞を、細胞療法に有用である細胞へ分化させるのに有用である1つ又は複数の分化因子を同定する方法に関する。例えば、本明細書中に記載する方法のいくつかの実施形態は、膵臓、肝臓、肺、胃、腸、甲状腺、胸腺、咽頭、胆嚢及び膀胱(これらに限定されない)を包含する組織及び/又は器官に関する前駆体である細胞への胚体内胚葉細胞の分化を促進することが可能な因子を同定する方法に関する。いくつか実施形態では、かかる前駆体細胞はPDX1陽性内胚葉細胞である。他の実施形態では、かかる前駆体細胞は、PDX1を有意に発現しない内胚葉細胞である。
【0008】
本明細書中に記載する方法のいくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞の細胞培養物又は細胞集団は、候補(試験)分化因子と接触するか、或いはそうでなければ候補(試験)分化因子を供給される。好ましい実施形態では、胚体内胚葉細胞は、ヒト胚体内胚葉細胞である。より好ましい実施形態では、ヒト胚体内胚葉細胞は、腸管又はそれに由来する器官の細胞へ分化することができる多分化能細胞である。
【0009】
本明細書中に記載する方法の他の実施形態では、PDX1陽性内胚葉細胞の細胞培養物又は細胞集団は、候補分化因子と接触するか、或いはそうでなければ候補分化因子を供給される。好ましい実施形態では、PDX1陽性内胚葉細胞は、ヒトPDX1陽性内胚葉細胞である。或る特定の実施形態では、ヒトPDX1陽性内胚葉細胞は、PDX1陽性前腸/中腸内胚葉細胞である。より好ましい実施形態では、ヒトPDX1陽性内胚葉細胞は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞である。他の好ましい実施形態では、ヒトPDX1陽性内胚葉細胞は、前腸の後方部分のPDX1陽性内胚葉細胞である。特に好ましい実施形態では、ヒトPDX1陽性前腸内胚葉細胞は、腸管の前方部分に由来する細胞、組織又は器官へ分化することができる多分化能細胞である。
【0010】
本明細書中に記載する方法に関連する場合、候補分化因子は、細胞分化を引き起こすことが既知であるもの、或いは細胞分化を引き起こすことが未知であるものであり得る。或る特定の実施形態では、候補分化因子は、成長因子のようなポリペプチドであり得る。いく
つかの実施形態では、成長因子としては、FGF10、FGF4、FGF2、Wnt3A又はWnt3Bが挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、候補分化因子は、小分子であり得る。特定の実施形態では、小分子は、レチノイン酸のようなレチノイド化合物である。或いは、いくつかの実施形態では、候補分化因子は、レチノイドでなく、前腸分化因子でなく、或いはTGFβスーパーファミリーの成員ではない。他の実施形態では、候補分化因子は、レチノイド化合物、前腸分化因子又は成長因子であるTGFβスーパーファミリーの成員(例えば、アクチビンA及びB)以外の任意の分子である。さらなる他の実施形態では、候補分化因子は、胚体内胚葉細胞の分化を引き起こすことがこれまでに知られていない因子である。
【0011】
本明細書中に記載する方法のさらなる実施形態は、複数の濃度で候補分化因子を試験することに関する。例えば、候補分化因子は、或る特定の閾値を越える濃度のみで、胚体内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性内胚葉細胞の分化を引き起こし得る。さらに、候補分化因子は、低濃度で供給される場合に第1の細胞型へ、また高濃度で供給される場合に第2の細胞型へ、同一細胞を分化させることができる。いくつかの実施形態では、候補分化因子は、約0.1ng/ml〜約10mg/mlの範囲の1つ又は複数の濃度で供給される。
【0012】
胚体内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性内胚葉細胞を含む細胞培養物或いは細胞集団を、候補分化因子と接触させるか、或いはそうでなければ候補分化因子を供給する前に、或いはそれとほぼ同時に、その発現を測定するために、少なくとも1つのマーカーが選択及び評価される。この工程は、第1のマーカー評価工程と称され得る。或いは、この工程は、第1の時点でのマーカーの発現測定と称され得る。マーカーは、細胞分化をモニタリングするのに有用ないずれのマーカーであり得るが、好ましいマーカーとしては、性決定領域Y−ボックス17(SOX17)、膵臓−十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX1)、アルブミン、肝細胞特異的抗原(HAS)、プロスペロ関連ホメオボックス1(PROX1)、甲状腺転写因子1(TITF1)、ビリン、αフェトプロテイン(AFT)、シトクロムP450 7A(CYP7A)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)
、肝細胞核因子4a(HNF4a)、CXC型ケモカイン受容体4(CXCR4)、フォンウィルブランド因子(VWF)、血管細胞接着分子−1(VACM1)、アポリポタンパク質A1(APOA1)、グルコース輸送体−2(GLUT2)、α−1−アンチトリプシン(AAT)、グルコキナーゼ(GLUKO)並びにヒト造血発現ホメオボックス(hHEX)及びCDX2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
胚体内胚葉細胞及び/又はPDX−1陽性内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団を、候補分化因子と接触させるか、或いはそうでなければ候補分化因子を供給してから十分な時間が経過した後、細胞培養物又は細胞集団における少なくとも1つのマーカーの発現が再び評価される。この工程は、第2のマーカー評価工程と称され得る。或いは、この工程は、第2の時点でのマーカーの発現測定と称され得る。好ましい実施形態では、第1の時点及び第2の時点で評価されるマーカーは、同一マーカーである。
【0014】
本明細書中に記載する方法のいくつかの実施形態では、第2の時点での少なくとも1つのマーカーの発現が、第1の時点でのこのマーカーの発現と比較して増大又は減少されたかがさらに判定される。少なくとも1つのマーカーの発現の増大又は減少は、候補分化因子が、胚体内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性内胚葉細胞の分化を促進することが可能であることを示す。胚体内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団を、候補分化因子と接触させるか、或いはそうでなければ候補分化因子を供給することと、第2の時点で少なくとも1つのマーカーの発現を測定することとの間の十分な時間は、約1時間程度と短いものから約10日間程度と長いものまであり得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのマーカーの発現は、胚体内胚葉細胞及び/又はPDX1陽性内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団を、候補分化因子と接触させるか、或い
はそうでなければ候補分化因子を供給した後に複数回評価される。或る特定の実施形態では、マーカー発現は、Q−PCRにより評価される。他の実施形態では、マーカー発現は、免疫細胞化学により評価される。
【0015】
本発明のさらなる実施形態は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞の分化を促進することが可能な分化因子を同定する方法に関する。かかる方法では、PDX1陰性胚体内胚葉細胞は、候補分化因子と接触させられて、候補分化因子との接触後の細胞集団におけるPDX1発現が、候補分化因子との接触前の細胞集団におけるPDX1発現と比較して増大されたかどうかが判定される。細胞集団におけるPDX1発現の増大は、候補分化因子が、PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞の分化を促進することが可能であることを示す。いくつかの実施形態では、PDX1発現は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)により測定される。上述の方法のいくつかの実施形態は、候補分化因子との接触前及び後で、細胞集団におけるHOXA13及び/又はHOXC6遺伝子の発現を測定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、候補分化因子は、小分子、例えばレチノイド(例えば、RA)である。他の実施形態では、候補分化因子は、ポリペプチド、例えば成長因子(例えば、FGF−10)である。
【0016】
本発明のさらなる他の実施形態は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞の分化を促進することが可能な分化因子を同定する方法に関する。かかる方法では、PDX−1陽性前腸内胚葉細胞は、候補分化因子と接触させられて、細胞集団におけるマーカーの発現が、候補分化因子との接触後に、候補分化因子との接触前の細胞集団における同一マーカーの発現と比較して増大又は減少されているかが判定される。マーカーの発現の増大又は減少は、候補分化因子が、PDX1陽性前腸内胚葉細胞の分化を促進することが可能であることを示す。いくつかの実施形態では、マーカー発現は、Q−PCRにより測定される。いくつかの実施形態では、候補分化因子は、小分子、例えばレチノイド(例えば、RA)である。他の実施形態では、候補分化因子は、ポリペプチド、例えば成長因子(例えば、FGF−10)である。
【0017】
本発明のさらに他の実施形態は、本明細書中に記載する方法により分化される細胞に関する。かかる細胞としては、膵臓、肝臓、肺、胃、腸、甲状腺、胸腺、咽頭、胆嚢及び膀胱の前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細胞は最終分化され得る。本明細書中に記載する他の実施形態は、上述の細胞を含む細胞培養物及び/又は細胞集団に関する。
【0018】
或る特定の法域では、「を含む」という用語の任意の一般的に認められている定義が存在しない場合がある。本明細書中で使用する場合、「を含む」という用語は、任意のさらなる要素の包含を容認する「規制のない」文言を表すと意図される。このことを念頭におき、本発明のさらなる実施形態を以下の番号がふられた項目を参照して説明する。
【0019】
1.ヒト細胞を含む細胞集団におけるヒト胚体内胚葉細胞の分化を促進することが可能な分化因子を同定する方法であって、(a)ヒト胚体内胚葉細胞を含む細胞集団を得る工程と、(b)候補分化因子を上記細胞集団へ供給する工程と、(c)第1の時点で上記細胞集団におけるマーカーの発現を測定する工程と、(d)第2の時点で上記細胞集団における同一マーカーの発現を測定する工程と、(e)上記第2の時点での上記細胞集団における上記マーカーの発現が、上記第1の時点での当該細胞集団における当該マーカーの発現と比較して増大又は減少されているかを判定する工程とを含み、当該第2の時点が上記第1の時点の後であり、また当該第2の時点が上記細胞集団に上記候補分化因子を供給することの後であり、当該細胞集団における当該マーカーの発現の増大又は減少は、上記候補分化因子が、上記ヒト胚体内胚葉細胞の分化を促進することが可能であることを示す、前記方法。
【0020】
2.上記ヒト胚体内胚葉細胞が、上記細胞集団におけるヒト細胞の少なくとも約10%を構成する、項目1に記載の方法。
【0021】
3.ヒトフィーダー細胞が上記細胞集団中に存在し、当該フィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約10%が胚体内胚葉細胞である、項目1に記載の方法。
【0022】
4.上記ヒト胚体内胚葉細胞が、上記細胞集団におけるヒト細胞の少なくとも約90%を構成する、項目1に記載の方法。
【0023】
5.上記ヒトフィーダー細胞が上記細胞集団中に存在し、上記フィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約90%が胚体内胚葉細胞である、項目1に記載の方法。
【0024】
6.上記ヒト胚体内胚葉細胞が、上記候補分化因子に応答して、腸管に由来する細胞、組織又は器官へ分化する、項目1に記載の方法。
【0025】
7.上記ヒト胚体内胚葉細胞が、上記候補分化因子に応答して、膵臓前駆体細胞へ分化する、項目1に記載の方法。
【0026】
8.上記マーカーが、膵臓−十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX1)、ホメオボックスA13(HOXA13)及びホメオボックスC6(HOXC6)から成る群から選択される、項目7に記載の方法。
【0027】
9.上記ヒト胚体内胚葉細胞が、上記候補分化因子に応答して、肝臓前駆体細胞へ分化する、項目1に記載の方法。
【0028】
10.上記マーカーが、アルブミン、プロスペロ関連ホメオボックス1(PROX1)及び肝細胞特異的抗原(HSA)から成る群から選択される、項目9に記載の方法。
【0029】
11.上記ヒト胚体内胚葉細胞が、上記候補分化因子に応答して、肺前駆体細胞へ分化する、項目1に記載の方法。
【0030】
12.上記マーカーが、甲状腺転写因子1(TITF1)である、項目11に記載の方法。
【0031】
13.上記ヒト胚体内胚葉細胞が、上記候補分化因子に応答して、腸前駆体細胞へ分化する、項目1に記載の方法。
【0032】
14.上記マーカーが、ビリン及びコーダル型(caudal type)ホメオボックス転写因子2
(CDX2)から成る群から選択される、項目13に記載の方法。
【0033】
15.上記第1の時点が、上記候補分化因子を上記細胞集団へ供給することより前である、項目1に記載の方法。
【0034】
16.上記第1の時点が、上記候補分化因子を上記細胞集団へ供給するのとほぼ同時である、項目1に記載の方法。
【0035】
17.上記第1の時点が、上記候補分化因子を上記細胞集団へ供給することの後である、項目1に記載の方法。
【0036】
18.上記マーカーの発現が増大される、項目1に記載の方法。
【0037】
19.上記マーカーの発現が減少される、項目1に記載の方法。
【0038】
20.上記マーカーの発現が、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)により測定される、項目1に記載の方法。
【0039】
21.上記マーカーの発現が、免疫細胞化学により測定される、項目1に記載の方法。
【0040】
22.上記マーカーが、膵臓−十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX1)、ホメオボックスA13(HOXA13)及びホメオボックスC6(HOXC6)から成る群から選択される、項目1に記載の方法。
【0041】
23.上記マーカーが、アルブミン、プロスペロ(prospero)関連ホメオボックス1(PROX1)及び肝細胞特異的抗原(HSA)から成る群から選択される、項目1に記載の方法。
【0042】
24.上記マーカーが、ビリン及びコーダル型(caudal type)ホメオボックス転写因子2
(CDX2)から成る群から選択される、項目1に記載の方法。
【0043】
25.上記マーカーが、甲状腺転写因子1(TITF1)である、項目1に記載の方法。
【0044】
26.上記分化因子が前腸分化因子を含む、項目1に記載の方法。
【0045】
27.上記分化因子が小分子を含む、項目1に記載の方法。
【0046】
28.上記分化因子がレチノイドを含む、項目1に記載の方法。
【0047】
29.上記分化因子がレチノイン酸を含む、項目1に記載の方法。
【0048】
30.上記分化因子がポリペプチドを含む、項目1に記載の方法。
【0049】
31.上記分化因子が成長因子を含む、項目1に記載の方法。
【0050】
32.上記分化因子がFGF−10を含む、項目1に記載の方法。
【0051】
33.上記分化因子がFGF−2を含む、項目1に記載の方法。
【0052】
34.上記分化因子がWnt3Bを含む、項目1に記載の方法。
【0053】
35.上記分化因子が前腸分化因子ではない、項目1に記載の方法。
【0054】
36.上記分化因子がレチノイドではない、項目1に記載の方法。
【0055】
37.上記分化因子がレチノイン酸ではない、項目1に記載の方法。
【0056】
38.上記分化因子が、約0.1ng/ml〜約10mg/mlの濃度で上記細胞集団へ供給される、項目1に記載の方法。
【0057】
39.上記分化因子が、約1ng/ml〜約1mg/mlの濃度で上記細胞集団へ供給さ
れる、項目1に記載の方法。
【0058】
40.上記分化因子が、約10ng/ml〜約100μg/mlの濃度で上記細胞集団へ供給される、項目1に記載の方法。
【0059】
41.上記分化因子が、約100ng/ml〜約10μg/mlの濃度で上記細胞集団へ供給される、項目1に記載の方法。
【0060】
42.上記分化因子が、約1μg/mlの濃度で上記細胞集団へ供給される、項目1に記載の方法。
【0061】
43.上記分化因子が、約100ng/mlの濃度で上記細胞集団へ供給される、項目1に記載の方法。
【0062】
上記の方法及び組成物は、in vitroで培養される細胞に関する、と理解される。
しかしながら上記のin vitro分化細胞組成物は、in vivo用途に用いられ得る。
【0063】
本発明の付加的な実施形態は、2003年12月23日に出願された胚体内胚葉細胞(DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米国特許仮出願第60/532,004号;2004
年4月27日に出願された内胚葉を発現するPDX1(PDX1 EXPRESSING ENDODERM)という表題の米国特許仮出願第60/566,293号;2004年7月9日に出願された胚体内胚葉細胞の単離のためのケモカイン細胞表面受容体(CHEMOKINE CELL SURFACE RECEPTOR FOR THE ISOLATION OF DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米国特許仮出願第60/586,566号;2004年7月14日に出願された胚体内胚葉細胞の単離のためのケモカイン細胞表面受容体(CHEMOKINE CELL SURFACE RECEPTOR FOR THE ISOLATION OF DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米国特許仮出願第60/587,942号;2004年12月23日に出願された胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米国特許出
願第11/021,618号;及び2005年4月26日に出願された内胚葉を発現するPDX1(PDX1 EXPRESSING ENDODERM)という表題の米国特許出願第11/115,868号にも見出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1は、hESCからのβ細胞の産生に関して提唱される分化経路の概略図である。経路における第1の工程は、ES細胞から胚体内胚葉系列へ委ね、また膵臓内胚葉、内分泌内胚葉又は膵臓島/β細胞へのさらなる分化事象に先立つ第1の工程を表す。経路における第2の工程は、PDX1陽性前腸内胚葉へのSOX17陽性/PDX1陰性胚体内胚葉の変換を示す。これらの移行を媒介するのに有用ないくつかの因子は、イタリック体で表示している。標的細胞を規定するための関連マーカーには下線を付している。
図2図2は、保存モチーフの位置を表示し、且つGENOVACによる免疫化手順に使用される領域を強調するヒトSOX17cDNAの図である。
図3図3は、SOX17が、SOX7に、また幾分劣るがSOX18に最も密接に関連することを示す相関系統樹である。SOX17タンパク質は、同種内のSOX F群サブファミリーの他の成員に対するよりも種相同体間でより密接に関連する。
図4図4は、ラット抗SOX17抗体でプロービングしたウェスタンブロットである。このブロットは、線維芽細胞において過剰発現されるヒトSOX17タンパク質に関するこの抗体の特異性(レーン1)及びEGFPとの免疫反応性の欠如(レーン2)或いは最も密接に関連するSOXファミリー成員であるSOX7(レーン3)を実証する。
図5図5A及び図5Bは、相当数のAFP+同時標識細胞を表示するSOX17+細胞のクラスター(A)を示す顕微鏡写真である。これは、AFP+細胞がほとんど又は全く観察されないSOX17+クラスター(B)と著しく対照している。
図6図6A図6Cは、壁側内胚葉及びSOX17を示す顕微鏡写真である。パネルAは、hES細胞の無作為に分化された培養物における壁内胚葉細胞の細胞表面上に位置するヒトトロンボモジュリン(TM)タンパク質に関する免疫細胞化学を示す。パネルBは、TM及びSOX17に関して二重標識されたAで示されるのと同一野である。パネルCは、DAPI標識された核を伴う同野の位相差画像である。DAPI標識された核とSOX17ラベリングの完全な相関に注目されたい。
図7図7A及び図7Bは、定量的PCR(Q−PCR)によるSOX17遺伝子発現及びSOX17特異的抗体による抗SOX17陽性細胞を示す棒グラフである。パネルAは、未分化対照培地(SR20)に対して、アクチビンAがSOX17遺伝子発現を増大させる一方で、レチノイン酸(RA)はSOX17遺伝子発現を強力に抑制することを示す。パネルBは、これらの変化の同一パターン並びに類似した規模が、SOX17+細胞数に反映されることを示しており、SOX17遺伝子発現のQ−PCR測定は、単一細胞レベルでの変化を大きく反映することを示す。
図8図8Aは、アクチビンAの存在下での分化hESCの培養は、低レベルのAFP遺伝子発現を維持するのに対して、10%ウシ胎児血清(FBS)中で無作為に分化することが可能とされる細胞は、AFPの強力なアップレギュレーションを示すことを示す棒グラフである。発現レベルの差異は、およそ7倍である。図8B及び図8Cは、10%FBS単独(上部)に対するアクチビンA処理状態(下部)で観察されるAFP+細胞の非常に希少且つ小さなクラスターにより示されるように、アクチビンAによるAFP発現の抑制もまた単一細胞レベルで明白であることを示す2つの顕微鏡写真の画像である。
図9図9A及び図9Bは、フローサイトメトリーを使用したAFP+細胞数の定量化を示す比較画像である。この図は、アクチビンAの存在(右パネル)及び非存在(左パネル)下でのAFP遺伝子発現の変化の規模(図8A)がAFP+細胞の数に正確に対応することを実証し、さらに個々の細胞レベルで起こる変化を示すためのQ−PCR分析の有用性を支持する。
図10図10A図10Fは、ノーダル、アクチビンA及びアクチビンB(NAA)へのhESCの暴露が、5日間にわたってSOX17+細胞の数の著しい増大をもたらすことを示す顕微鏡写真である(A〜C)。DAPI染色された核により示されるように(D〜F)、SOX17+細胞の相対存在量を、各野に存在する細胞の総数と比較することにより、すべての細胞のおよそ30〜50%が、NAAによる5日の処理後にSOX17に対して免疫反応性であることを観察することができる。
図11図11は、アクチビンA(0、10、30又は100ng/ml)は、分化hESCにおけるSOX17遺伝子発現を用量依存的に増大させることを実証する棒グラフである。増大された発現は、接着培養上での3日間の処理後にすでに強健であり、同様に続く1、3及び5日の懸濁培養まで継続する。
図12図12A図12Cは、MIXL1(パネルA)、GATA(パネルB)及びHNF3b(パネルC)の発現に対するアクチビンAの影響を実証する棒グラフである。アクチビンA用量依存的増大はまた、胚体内胚葉の3つの他のマーカーであるMIXL1、GATA4及びHNF3bに関しても観察される。アクチビン用量に応答した増大された発現の規模は、SOX17に関して観察される規模と際立って類似しており、アクチビンAが、4つすべての遺伝子を同時発現する細胞の集団(SOX17+、MIXL1+、GATA4+及びHNF3b+)を特定していることを強力に示している。
図13図13A図13Cは、AFP(パネルA)、SOX7(パネルB)及びSPARC(パネルC)の発現に対するアクチビンAの影響を実証する棒グラフである。臓側内胚葉マーカーAFPの発現においてアクチビンA用量依存的減少が見られる。原始内胚葉(SOX7)及び壁側内胚葉(SPARC)のマーカーは、依然として未変化のままであるか、或いはいくつかの時点で抑制を示し、アクチビンAが、これらの胚体外内胚葉細胞型を特定するように作用しないことを示している。このことはさらに、SOX17、MIXL1、GATA4及びHNF3bの増大された発現が、アクチビンAに応答した胚体内胚葉細胞の数の増大に起因し得るという事実を支持する。
図14図14A及び図14Bは、ZIC1(パネルA)及びブラキュリ発現(パネルB)に対するアクチビンAの影響を示す棒グラフである。神経マーカーZIC1の一貫した発現は、神経分化に対するアクチビンAの用量依存的影響が見られないことを実証する。ブラキュリの減少された発現により示されるように、100ng/mlのアクチビンA処理により媒介される中胚葉分化の顕著な抑制が見られる。これは、中内胚葉前駆体からの胚体内胚葉の増大された特定の結果である可能性が高い。より低レベルのアクチビンA処理(10及び30ng/ml)は、未処理対照培養物に対して分化のより後期の時点でブラキュリの発現を維持する。
図15図15A及び図15Bは、アクチビンによる処理に応答した減少された壁側内胚葉分化を示す顕微鏡写真である。TMhi壁側内胚葉の領域は、血清単独中で分化される場合、培養物の至るところで見られる(A)のに対して、アクチビンが包含される場合、TM+細胞の分化は乏しく(B)、TM免疫反応性の全体的な強度はより低い。
図16図16A図16Dは、アクチビンA及びアクチビンBによる処理に応答したマーカー発現を示す顕微鏡写真である。hESCは、アクチビンA及びアクチビンBにより連続4日間処理して、SOX17、AFP及びTM抗体で三重標識した。パネルA−SOX17、パネルB−AFP、パネルC−TM及びパネルD−相/DAPI。AFP(B)及びTM(C)免疫反応性の完全な非存在と関連した無数のSOX17陽性細胞(A)に注目されたい。
図17図17は、hESCからのin vitroでの胚体内胚葉及び臓側内胚葉の出現を示す顕微鏡写真である。臓側内胚葉の領域はAFPhi/SOX17lo/-により同定される一方で、胚体内胚葉は、完全に反対のプロファイルであるSOX17hi/AFPlo/-を示す。この野は、これらの2つの領域の互いに対する近接性に起因して選択的に選択された。しかしながら、何度もSOX17hi/AFPlo/-領域がAFPhi細胞の任意の領域からの絶対的な単離で観察され、これは臓側内胚葉細胞とは別個の胚体内胚葉細胞の起点を示唆する。
図18図18は、TGFβファミリーのリガンド及び受容体を表す図である。AR smad及びBR smadを活性化する因子は、ヒト胚性幹細胞からの胚体内胚葉の産生に有用である(J Cell Physiol. 187: 265-76を参照)。
図19図19は、個々のTGFβ因子及びTGFβ因子の組合せによる処理の結果として、経時的にSOX17発現の誘導を示す棒グラフである。
図20図20は、TGFβ因子の組合せによる処理の結果として、経時的にSOX17+細胞数の増大を示す棒グラフである。
図21図21は、TGFβ因子の組合せによる処理の結果として、経時的にSOX17発現の誘導を示す棒グラフである。
図22図22は、アクチビンAが、SOX17+細胞数の用量依存的増大を誘導することを示す棒グラフである。
図23図23は、アクチビンA及びアクチビンB処理培養物へのWnt3aの添加が、アクチビンA及びアクチビンB単独により誘導されるレベルを上回ってSOX17発現を増大させることを示す棒グラフである。
図24図24A図24Cは、胚体内胚葉への分化が低FBS状態で増強されることを示す棒グラフである。2%FBSを含有する培地中(2AA)でのアクチビンA及びBによるhESCの処理は、10%FBS培地(10AA)中での同じ処理と比較して、2〜3倍高いレベルのSOX17発現をもたらす(パネルA)。胚体内胚葉マーカーMIXL1の誘導(パネルB)はまた、同じ方法で影響を及ぼされ、AFP(臓側内胚葉)の抑制(パネルC)は、10%FBS状態よりも2%FBSにおいて高い。
図25図25A図25Dは、SOX17+細胞が培養中に分裂していることを示す顕微鏡写真である。SOX17免疫反応性細胞は、hESCコロニーの分化中の縁に存在し(C、D)、増殖細胞核抗原(PCNA)で標識される(パネルB)が、OCT4では今のところ標識されていない(パネルC)。さらに、明確な有糸分裂の外観が、SOX17+細胞(矢印)並びにOCT4+の未分化hESC(矢じり)の両方において核のDAPIラベリングにより観察することができる(D)。
図26図26は様々な培地条件下での分化hESCにおけるCXCR4の相対的な発現レベルを示す棒グラフである。
図27図27A図27Dは、胚体内胚葉マーカーのパネルが、どのようにして図26で示されるのと同じ分化処理にわたってCXCR4と非常に類似した発現のパターンを共有するかを示す棒グラフである。
図28図28A図28Eは、中胚葉(ブラキュリ、MOX1)、外胚葉(SOX1、ZIC1)及び臓側内胚葉(SOX7)に関するマーカーが、どのようにして図26で示されるのと同じ処理にわたってCXCR4発現に対する逆相関を表すかを示す棒グラフである。
図29図29A図29Fは、図26図28で示される3つの培地条件にわたってSOX17免疫反応性細胞における相対的な差異を示す顕微鏡写真である。
図30図30A図30Cは、分化培地に添加されるアクチビンAの増大濃度によるCXCR4+細胞数の増大を実証するフローサイトメトリードットプロットである。
図31図31A図31Dは、高用量アクチビンA処理から単離されるCXCR4+細胞(A100−CX+)が、母集団(A100)よりも胚体内胚葉マーカーに関してさらに一層富化されることを示す棒グラフである。
図32図32は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を使用して単離されるCXCR4+細胞及びCXCR4-細胞からの遺伝子発現、並びに母集団における遺伝子発現を示す棒グラフである。これは、CXCR4+細胞が各母集団に存在する本質的にすべてのCXCR4遺伝子発現を含有し、またCXCR4-集団がCXCR4遺伝子発現をほとんど含有しないか、或いは全く含有しないことを実証する。
図33図33A図33Dは、これらの非胚体内胚葉マーカーの発現においてすでに抑制されている高用量アクチビンA処理から単離されるCXCR4+細胞における中胚葉(ブラキュリ、MOX1)、外胚葉(ZIC1)及び臓側内胚葉(SOX7)遺伝子発現の欠乏を実証する棒グラフである。
図34-1】図34A図34Fは、胚体内胚葉細胞を同定するのに使用することができるマーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。前述した系統マーキング遺伝子であるSOX17、SOX7、SOX17/SOX7、TM、ZIC1及びMOX1の発現分析は、それぞれパネルA〜Fに示される。パネルA〜Fそれぞれに関して、hESCと分類した欄は、精製ヒト胚性幹細胞からの遺伝子発現を示し、2NFは、2%FBSで処理した細胞(アクチビン添加無し)を示し、0.1A100は、0.1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示し、1A100は、1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示し、2A100は、2%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す。
図34-2】図34G図34Lは、胚体内胚葉細胞を同定するのに使用することができるマーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。胚体内胚葉マーカーであるFGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1の発現分析は、それぞれパネルG〜Lに示される。パネルG〜Lそれぞれに関して、hESCと分類した欄は、精製ヒト胚性幹細胞からの遺伝子発現を示し、2NFは、2%FBSで処理した細胞(アクチビン添加無し)を示し、0.1A100は、0.1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示し、1A100は、1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示し、2A100は、2%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す。
図34-3】図34Mは、胚体内胚葉細胞を同定するのに使用することができるマーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。パネルMは、CXCR4の発現分析を示す。パネルMに関して、hESCと分類した欄は、精製ヒト胚性幹細胞からの遺伝子発現を示し、2NFは、2%FBSで処理した細胞(アクチビン添加無し)を示し、0.1A100は、0.1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示し、1A100は、1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示し、2A100は、2%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す。
図35図35は、4日目に添加されるレチノイン酸(RA)及び線維芽細胞成長因子−10(FGF−10)の存在下での、アクチビン有り及び無しでの4日及び6日後のhESCの培養物におけるPDX1遺伝子の相対発現を示すグラフである。
図36図36A図36Fは、4日目に添加されるレチノイン酸(RA)及び線維芽細胞成長因子−10(FGF−10)の存在下での、アクチビン有り及び無しでの4日及び6日後のhESCの培養物におけるマーカー遺伝子の相対発現を示すグラフである。パネルは、以下のマーカー遺伝子:(A)SOX17、(B)SOX7、(C)AFP、(D)SOX1、(E)ZIC1及び(F)NFMの発現の相対レベルを示す。
図37図37A図37Cは、4日目に添加されるレチノイン酸(RA)、線維芽細胞成長因子−10(FGF−10)及び線維芽細胞成長因子−4(FGF−4)の存在下又は非存在下での、アクチビン有り及び無しでの4日及び8日後のhESCの培養物におけるマーカー遺伝子の相対発現を示すグラフである。パネルは、以下のマーカー遺伝子:(A)PDX1、(B)SOX7及び(C)NFMの発現の相対レベルを示す。
図38図38A図38Gは、4日目に添加される1μM、0.2μM又は0.04μMのレチノイン酸(RA)と組み合わせて50ng/ml FGF−10と接触させた胚体内胚葉細胞の培養物におけるマーカー遺伝子の相対発現を示すグラフである。パネルは、以下のマーカー遺伝子:(A)PDX1、(B)HOXA3、(C)HOXC6、(D)HOXA13、(E)CDX1、(F)SOX1及び(G)NFMの発現の相対レベルを示す。
図39図39A図39Eは、レチノイン酸(RA)、線維芽細胞成長因子−10(FGF−10)及び以下の:血清代替物(SR)、ウシ胎児血清(FBS)又はB27のうちの1つの組合せの存在下での、アクチビン有り及び無しでの4日及び8日後のhESCの培養物におけるマーカー遺伝子の相対発現を示すグラフである。パネルは、以下のマーカー遺伝子:(A)PDX1、(B)SOX7、(C)AFP、(D)ZIC1及び(E)NFMの発現の相対レベルを示す。
図40図40A図40Bは、6日後(RAの添加の直前)及び9日目(RAへの暴露の3日後)のhESCの培養物における膵臓(PDX1、HNF6)及び肝臓(HNF6)に関するマーカー遺伝子の相対発現を示すグラフである。25ng/ml(A25)又は50ng/ml(A50)のいずれかのアクチビンAの存在下で、10ng/ml(a10)、25ng/ml(a25)又は50ng/ml(a50)の用量でアクチビンBの添加を比較するために、様々な条件が包含された。そのアクチビンA又はアクチビンB無しの条件(NF)は、胚体内胚葉及びPDX1陽性内胚葉産生に関する陰性対照として作用する。パネルは、以下のマーカー遺伝子:(A)PDX1及び(B)HNF6の発現の相対レベルを示す。
図41図41A図41Cは、5日目(レチノイン酸の添加の直前)並びにRA暴露の2、4及び6日後(それぞれ7、9及び11日目)の、100ng/ml(A100)、50ng/ml(A50)を有する、又はアクチビンA無し(NF)のhESCの培養物におけるマーカー遺伝子の相対発現を示すグラフである。各棒の真下のパーセント表示は、3〜5日の分化中のFBS用量を示す。7日目に開始して、RA(R)で処理した細胞を、0.5%FBSを含むRPMI培地中で成長させた。RA濃度は、7日目に2μM、9日目に1μM及び11日目に0.2μMであった。パネルは、以下のマーカー遺伝子:(A)PDX1、(B)ZIC1、(C)SOX7の発現の相対レベルを示す。
図42図42A図42Bは、まず胚体内胚葉を誘導させるために低FBS中でアクチビンAで(5日目)、続いてPDX1発現内胚葉を誘導させるために25ng/mlアクチビンA及びRAを含む新鮮な(A25R)培地、又は様々な条件培地(MEFCM、CM#2、CM#3及びCM#4)及びRAで処理したhESCの培養物におけるマーカー遺伝子の相対発現を示すグラフである。マーカー発現は、5、6、7、8及び9日目に測定された。パネルは、以下のマーカー遺伝子:(A)PDX1、(B)CDX1の発現の相対レベルを示す。
図43図43は、まず胚体内胚葉を誘導させるために低FBS中でアクチビンAで、続いてアクチビンA及びレチノイン酸を含む新鮮な培地(A25R)、又は新鮮な培地中へ希釈される条件培地中の様々な量のRAで処理したhESCの培養物におけるPDX1の相対発現を示すグラフである。培地の総容量は、すべての場合で5mlである。
図44図44は、RA及び50ng/ml アクチビンAの添加の3日後(d8)及び4日後(d9)のRA処理した胚体内胚葉細胞から免疫沈降されるPDX1を示すウェスタンブロットである。
図45図45は、PDX1プロモーターの制御下にあるEGFPレポーターで遺伝的にタグ付けしたPDX1陽性前腸内胚葉細胞の蛍光標示式細胞分取(FAC)の結果を表示する略式チャートである。
図46】生細胞(Live)、EGFP陰性細胞(Neg)及びEGFP陽性細胞(GFP+)の分取された集団に関するハウスキーピング遺伝子に対して標準化した相対PDX1発現レベルを示すグラフである。
図47】生存細胞(Live)、EGFP陰性細胞(Neg)、最低のEGFPシグナル強度を有するEGFP陽性細胞集団の半数(Lo)及び最高のEGFPシグナル強度を有するEGFP陽性細胞集団の半数(Hi)の分取された集団に関するハウスキーピング遺伝子に対して正規化した相対PDX1発現レベルを示すグラフである。
図48】生細胞(Live)、EGFP陰性細胞(Neg)及びEGFP陽性細胞(GFP+)の分取された集団における5つの膵臓内胚葉マーカーのハウスキーピング遺伝子に対して正規化した相対発現レベルを示すグラフである。パネル:A−NKX2.2、B−GLUT2、C−HNF3β、D−KRT19及びE−HNF4α。
図49図49は、生細胞(Live)、EGFP陰性細胞(Neg)及びEGFP陽性細胞(GFP+)の分取された集団における2つの非膵臓内胚葉マーカーのハウスキーピング遺伝子に対して正規化した相対発現レベルを示すグラフである。パネル:A−ZIC1及びB−GFAP。
図50図50A図50Dは、免疫低下マウスの腎臓被膜下に移植される胚体内胚葉細胞のin vitro分化を示す。パネル:A−腸管様構造を示すヘマトキシリン−エオシン染色、B−肝細胞特異的抗原に対する抗体免疫反応性(肝臓)、C−ビリンに対する抗体免疫反応性(腸)及びD−CDX2に対する抗体免疫反応性(腸)。
図51図51A図51Cは、5〜10日目に20ng/mlでのWnt3B、5ng/mlでのFGF2又は100ng/mlでのFGF2と接触させた細胞における肝臓(アルブミン及びPROX1)及び肺(TITF1)組織に関するマーカーの正規化した相対発現レベルを示すグラフである。DEは、胚体内胚葉を指す。パネル:A−アルブミン、B−PROX1及びC−TITF1。
図52-1】図52A図52Lは、5〜10日目に20〜50ng/mlでのWnt3A、5ng/mlでのFGF2又は100ng/mlでのFGF2、並びに9日目及び10日目にBMP4と接触させた細胞における肝臓(AFP、AAT、hHEX、GLUT2、APOA1及びVCAM1)及び肺(VWF及びCXR4)組織に関するマーカーの正規化した相対発現レベルを示すグラフである。DEは、胚体内胚葉を指す。パネル:A−AFP、B−AAT、C−GLUKO、D−hHEX、E−TAT及びF−hNF4a。
図52-2】図52A図52Lは、5〜10日目に20〜50ng/mlでのWnt3A、5ng/mlでのFGF2又は100ng/mlでのFGF2、並びに9日目及び10日目にBMP4と接触させた細胞における肝臓(AFP、AAT、hHEX、GLUT2、APOA1及びVCAM1)及び肺(VWF及びCXR4)組織に関するマーカーの正規化した相対発現レベルを示すグラフである。DEは、胚体内胚葉を指す。パネル:G−CYP7A、H−GLUT2、I−APOA1、J−VCAM1、K−VWF及びL−CXCR4。
【発明を実施するための形態】
【0065】
[詳細な説明]
原腸形成と呼ばれる初期ヒト発達におけるきわめて重大な段階は、受精後2〜3週間で起こる。原腸形成は、3つの一次胚葉が最初に特定化され、そして器官形成されるのがこの時期であるため、非常に有意である(Lu et al., 2001;Schoenwolf and Smith, 2000)
。外胚葉は、身体の外被及び全神経系の終局的形成に関与するが、一方、心臓、血液、骨、骨格筋及びその他の結合組織は中胚葉に由来する。胚体内胚葉は、食道、胃並びに小腸及び大腸を含む全腸管、並びに腸管に由来する器官、例えば肺、肝臓、胸腺、上皮小体及び甲状腺、胆嚢及び膵臓の形成に関与する胚葉として定義される(Grapin-Botton and Melton, 2000;Kimelman and Griffin, 2000;Tremblay et al., 2000;Wells and Melton,
1999;Wells and Melton, 2000)。非常に重要な区別は、胚体内胚葉と原始内胚葉と呼
ばれる細胞の完全に別個の系統との間でなされるべきである。原始内胚葉は主として、胚体外組織、主に胎盤卵黄嚢の壁側及び臓側内胚葉部分、並びにライヘルト膜の細胞外マトリックス物質である。
【0066】
原腸形成中、胚体内胚葉形成のプロセスは、中内胚葉細胞(中胚葉又は内胚葉を形成するための細胞構成成分)が原始線条と呼ばれる構造を介して移動する細胞移動事象で開始する。胚体内胚葉は、線条の前部分を通して、そして結節(線条の最前領域での特殊化された構造)を通して移動する細胞に由来する。移動が起こると、胚体内胚葉はまず最前腸管に存在し、そして腸管の後端の形成に伴って終了する。
【0067】
胚体内胚葉細胞及びそれらに由来する内胚葉細胞は、胚体内胚葉系統に由来する最終分化された組織及び/又は器官を構成する細胞の派生に関する重要な多分化能開始点を表す。かかる細胞、組織及び/又は器官は、細胞療法において極めて有用である。したがって、胚体内胚葉細胞系統に由来する他の細胞型への胚体内胚葉細胞及び/又はPDX1発現内胚葉細胞の分化を引き起こすことが可能な分化因子を同定するための本明細書中に記載する方法は、細胞療法の向上に有益である。
【0068】
特に、本発明のいくつかの実施形態は、膵臓、肝臓、肺、胃、腸、甲状腺、胸腺、咽頭、胆嚢及び膀胱を包含する(これらに限定されない)組織及び/又は器官に関する前駆体である細胞への胚体内胚葉細胞の分化を促進することが可能である細胞へPDX1陽性内胚葉細胞及び/又は胚体内胚葉細胞を含む細胞集団における細胞を分化させるのに有用である1つ又は複数の分化因子を同定する方法に関する。
【0069】
胚体内胚葉細胞、PDX1陽性内胚葉の組成物、並びにかかる細胞を産生するのに有用な方法及び組成物に関するさらなる態様もまた本明細書中に記載される。
【0070】
定義
本出願全体を通して用いられるような或る特定のいくつかの用語及び語句は、以下のように提示される意味を有する:
【0071】
本明細書中で用いる場合、「胚性」とは、単一受精卵で開始し、発達した配偶子細胞以外の多能性又は全能性細胞をもはや含まない多細胞構造で終わる生物体の一連の発達段階を指す。配偶子融合により得られる胚のほかに、「胚性」という用語は、体細胞核移植により得られる胚を指す。
【0072】
本明細書中で用いる場合、「多分化能」又は「多分化能細胞」は、限られた数の他の特定細胞型を生じ得る細胞型を指す。
【0073】
本明細書中で用いる場合、「発現」とは、材料又は物質の産生、並びに材料又は物質の産
生のレベル又は量を指す。したがって特定マーカーの発現の測定は、発現されるマーカーの相対量又は絶対量の検出、或いは単にマーカーの存在又は非存在の検出を指す。
【0074】
本明細書中で用いる場合、「マーカー」とは、観察され得るか又は検出され得る任意の分子を指す。例えばマーカーとしては、核酸、例えば特定遺伝子の転写体、遺伝子のポリペプチド産物、非遺伝子産物ポリペプチド、糖タンパク質、炭水化物、糖脂質、脂質、リポタンパク質又は小分子(例えば10,000amu未満の分子量を有する分子)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
細胞培養物及び/又は細胞集団に関連して用いられる場合、「部分」という用語は、単細胞から細胞培養物又は細胞集団全体の範囲である任意のゼロでない量の細胞培養物又は細胞集団を意味する。
【0076】
細胞培養物中又は細胞集団中の細胞に関して、「〜を実質的に含有しない」という語句は、細胞培養物又は細胞集団を含有しない特殊化細胞型が、細胞培養物又は細胞集団中に存在する細胞の総数の約5%未満の量で存在する、ということを意味する。
【0077】
本明細書中で使用する場合、「レチノイド」は、レチノール、レチナール又はレチノイン酸、並びにこれらの化合物のいずれかの誘導体を指す。
【0078】
「条件培地」とは、基本培地と比較して変更される培地を意味する。
【0079】
本明細書中で使用する場合、「前腸/中腸」は、腸管の前方部分の細胞並びに腸管の中間部分の細胞(前腸/中腸接合部を含む)を指す。
【0080】
胚体内胚葉細胞及びそれらに関連するプロセス
本明細書中に記載する実施形態は、幹細胞のような多能性細胞を、多分化能胚体内胚葉細胞へ分化させることによる培養物中での胚体内胚葉細胞の産生のための新規規定プロセスに関する。上述したように、胚体内胚葉細胞は、外胚葉又は中胚葉から産生される組織へ分化するのではなく、腸管並びに腸管に由来する器官へ分化する。或る特定の好ましい実施形態では、胚体内胚葉細胞は、hESCに由来する。かかるプロセスは、膵臓、肝臓、肺、胃、腸、甲状腺及び胸腺のような組織に由来するヒト内胚葉の効率的な産生に関する基盤を提供することができる。例えば、胚体内胚葉の産生は、機能的なインスリン生産β細胞への幹細胞の分化における第1の工程であり得る。有用な量のインスリン生産β細胞を得るためには、膵臓島/β細胞最終結果物に到達する前に起きる分化工程それぞれに関して、高効率の分化が望まれる。胚体内胚葉細胞への幹細胞の分化は、機能的な膵臓島/β細胞の産生に対しておそらく一番初めの工程を表す(図1に示されるように)ため、この工程での高効率の分化が特に望まれる。
【0081】
胚体内胚葉細胞への多能性細胞の効率的な分化の望ましさに鑑みて、本明細書中に記載される分化プロセスのいくつかの態様は、胚体内胚葉細胞への多能性細胞の転換が約50〜80%で生じるin vitro方法に関する。典型的には、このような方法は、限定的
及び一時的に特定された様式での培養及び成長因子条件の適用を包含する。胚体内胚葉細胞に関する細胞集団のさらなる富化は、胚体内胚葉細胞と特異的に結合する試薬を用いることにより、集団中の他の細胞からの胚体内胚葉細胞の単離及び/又は精製により達成され得る。
【0082】
細胞培養物又は細胞集団中の胚体内胚葉細胞の量を測定するため、培養物中又は集団中の他の細胞からこの細胞型を区別する方法が望まれる。したがって、本明細書中に記載される或る特定の実施形態は、その存在、非存在及び/又は相対発現レベルが胚体内胚葉に特
異的である細胞マーカー、並びにこのようなマーカーの発現を検出し、測定するための方法に関する。
【0083】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、マーカーの存在、非存在及び/又は発現レベルは、定量的PCR(Q−PCR)により測定される。例えば或る特定の遺伝子マーカー、例えばSOX17、CXCR4,OCT4、AFP,TM、SPARC、SOX7、MIXL1、GATA4、HNF36、GSC、FGF17、VWF,CALCR、FFOXQ1、CMKOR1、CRIP1、並びに本明細書中に記載される他のマーカーにより産生される転写体の量が、定量的Q−PCRにより測定される。他の実施形態では、免疫組織化学を用いて、上記遺伝子により発現されるタンパク質を検出する。さらに他の実施形態では、Q−PCR及び免疫組織化学的技法が、このようなマーカーの量又は相対的割合を同定すると共に測定するために用いられる。
【0084】
1つ又は複数の適切なマーカーの発現を測定するための上述に記載したような方法を使用することにより、胚体内胚葉細胞を同定すること、並びに細胞培養物又は細胞集団における胚体内胚葉細胞の比率を測定することが可能である。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、産生される胚体内胚葉細胞又は細胞集団は、非胚体内胚葉細胞型又は細胞集団よりも約2桁大きいレベルでSOX17及び/又はCXCR4遺伝子を発現する。他の実施形態では、産生される胚体内胚葉細胞又は細胞集団は、非胚体内胚葉細胞型又は細胞集団よりも2桁を超えるレベルでSOX17及び/又はCXCR4遺伝子を発現する。さらに他の実施形態では、産生される胚体内胚葉細胞又は細胞集団は、非胚体内胚葉細胞型又は細胞集団よりも約2桁以上大きいレベルでSOX17、CXCR4、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1から成る群から選択されるマーカーの1つ又は複数を発現する。本明細書中に記載するいくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞は、PDX1を実質的に発現しない。
【0085】
本明細書中に記載される実施形態は、胚体内胚葉組成物にも関する。例えばいくつかの実施形態は胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物に関するが、一方、他の実施形態は、胚体内胚葉細胞中に富化された細胞集団に関する。いくつかの好ましい実施形態は、細胞培養物中の細胞の少なくとも約50〜80%が胚体内胚葉細胞である胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物に関する。特に好ましい実施形態は、細胞培養物中のヒト細胞の少なくとも約50〜80%が胚体内胚葉細胞であるヒト細胞を含む細胞培養物に関する。分化手法の効率は、或る特定のパラメーター、例えば細胞成長条件、成長因子濃度及び培養工程の時機(これらに限定されない)を修正することにより調整され得るため、本明細書中に記載される分化手法は、胚体内胚葉細胞への多能性細胞の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約95%より多い転換を生じ得る。他の好ましい実施形態では、実質的に純粋な胚体内胚葉細胞集団への多能性細胞集団、例えば幹細胞集団の転換が意図される。
【0086】
本明細書中に記載される組成物及び方法は、いくつかの有用な特徴を有する。例えば胚体内胚葉を含む細胞培養物及び細胞集団、並びにこのような細胞培養物及び細胞集団を産生する方法は、ヒト発達の初期をモデリングするのに有用である。さらに、本明細書中に記載される組成物及び方法は、疾患状態、例えば糖尿病における治療的介入にも役立ち得る。例えば胚体内胚葉は限られた数の組織のためだけの供給源として役立つため、それは純粋組織又は細胞型の発達に用いられ得る。
【0087】
多能性細胞からの胚体内胚葉の産生
胚体内胚葉を含む細胞培養物及び富化された細胞集団を産生するように多能性細胞を分化させるプロセスは、以下に、そして2004年12月23日に出願された胚体内胚葉(DEF
INITIVE ENDODERM)という表題の米国特許第11/021,618号に記載されている。
これらのプロセスのいくつかでは、出発材料として使用される多能性細胞は、幹細胞である。或る特定のプロセスでは、胚体内胚葉細胞を含む胚体内胚葉細胞培養物及び富化された細胞集団は、胚性幹細胞から産生される。胚体内胚葉細胞を派生させる好ましい方法は、胚体内胚葉産生のための出発材料として、ヒト胚性幹細胞を利用することである。かかる多能性細胞は、桑実胚に由来する細胞、胚の内部細胞塊又は胚の生殖隆起に由来する細胞であり得る。ヒト胚性幹細胞は、当該技術分野で既知の方法を使用して、実質的な分化無しで多能性状態で培養物中で維持されることができる。かかる方法は、例えば米国特許第5,453,357号、同第5,670,372号、同第5,690,926号、同第5,843,780号、同第6,200,806号及び同第6,251,671号に記載されている。
【0088】
胚体内胚葉細胞を産生するためのいくつかのプロセスにおいて、hESCは、フィーダー層上に保持される。このようなプロセスでは、hESCを多能性状態に保持させる任意のフィーダー層が用いられ得る。ヒト胚性幹細胞を培養するために一般的に用いられる1つのフィーダー層は、マウス線維芽細胞の層である。さらに近年、ヒト線維芽細胞フィーダー層が、hESCの培養に用いるために開発された(米国特許出願第2002/0072117号参照)。胚体内胚葉を産生するための代替的プロセスは、フィーダー層の使用を伴わずに多能性hESCの保持を可能にする。フィーダーを使用しない条件下での多能性hESCの保持方法は、米国特許出願第2003/0175956号に記載されている。
【0089】
本明細書中で用いられるヒト胚性幹細胞は、血清を含有するか又は含有しない培養物中に保持され得る。いくつかの胚性幹細胞保持手法では、血清代替物が用いられる。他の場合には、無血清培養技法、例えば米国特許出願第2003/0190748号に記載される技法が用いられる。
【0090】
幹細胞は、それらが胚体内胚葉へ分化されることを望まれるまで、ルーチンの継代培養により多能性状態で培養物中で維持される。いくつかのプロセスでは、胚体内胚葉への分化は、胚体内胚葉への分化を促進するのに十分な量でTGFβスーパーファミリーの成長因子を幹細胞培養物へ供給することにより達成される。胚体内胚葉の産生に有用であるTGFβスーパーファミリーの成長因子は、ノーダル/アクチビン又はBMPサブグループから選択される。いくつかの好ましい分化プロセスでは、成長因子は、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB及びBMP4から成る群から選択される。さらに、成長因子Wnt3a及び他のWntファミリー成員は、胚体内胚葉細胞の産生に有用である。或る特定の分化プロセスでは、上述の成長因子のいずれかの組合せが使用され得る。
【0091】
胚体内胚葉細胞への多能性幹細胞の分化のためのプロセスのいくつかに関しては、胚体内胚葉細胞への幹細胞の少なくとも一部の分化を促すのに十分な濃度で成長因子が培養物中に存在するように、上記成長因子が細胞に提供される。いくつかのプロセスでは、上記成長因子は、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約1000ng/ml、少なくとも約2000ng/ml、少なくとも約3000ng/ml、少なくとも約4000ng/ml、少なくとも約5000ng/ml又は約5000ng/mlより高い濃度で細胞培養物中に存在する。
【0092】
胚体内胚葉細胞への多能性幹細胞の分化のための或る特定のプロセスでは、上記の成長因子は、それらの付加後、細胞培養物から除去される。例えば成長因子は、それらの付加後、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、又は約
10日以内に除去され得る。好ましいプロセスでは、成長因子は、それらの付加後約4日で除去される。
【0093】
胚体内胚葉細胞の培養物は、低血清又は無血清を含有する培地中で増殖され得る。或る特定の培養条件下では、血清濃度は約0.05%(v/v)〜約20%(v/v)の範囲であり得る。例えばいくつかの分化プロセスでは、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約2%(v/v)未満、約3%(v/v)未満、約4%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、約6%(v/v)未満、約7%(v/v)未満、約8%(v/v)未満、約9%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、又は約15%(v/v)未満又は約20%(v/v)未満であり得る。いくつかのプロセスでは、胚体内胚葉細胞は、血清を用いずに、又は血清代替物を用いずに増殖される。さらに他のプロセスでは、胚体内胚葉細胞はB27の存在下で増殖される。このようなプロセスでは、B27サプリメントの濃度は、約0.1%(v/v)〜約20%(v/v)の範囲であり得る。
【0094】
胚体内胚葉への多能性細胞の分化のモニタリング
胚体内胚葉へのhESC培養の進行は、胚体内胚葉に特徴的なマーカーの発現を測定することによりモニタリングされ得る。いくつかのプロセスでは、或る特定のマーカーの発現は、マーカーの存在又は非存在を検出することにより測定される。或いは或る特定のマーカーの発現は、マーカーが細胞培養物又は細胞集団の細胞中に存在するレベルを測定することにより判定され得る。このようなプロセスでは、マーカー発現の測定は、定性的又は定量的であり得る。マーカー遺伝子により産生されるマーカーの発現を定量する一方法は、定量的PCR(Q−PCR)の使用による。Q−PCRを実施する方法は、当該技術分野で既知である。当該技術分野で既知である他の方法は、マーカー遺伝子発現を定量するためにも用いられ得る。例えばマーカー遺伝子産物の発現は、当該マーカー遺伝子産物に特異的な抗体を用いることにより検出され得る。或る特定のプロセスでは、胚体内胚葉に特徴的なマーカー遺伝子の発現並びにhESC及び他の細胞型に特徴的なマーカー遺伝子の有意の発現の欠如が判定される。
【0095】
以下の実施例でさらに記載するように、胚体内胚葉の信頼性の大きいマーカーは、SOX17遺伝子である。したがって、本明細書中に記載するプロセスにより産生される胚体内胚葉細胞は、SOX17マーカー遺伝子を発現し、それによりSOX17遺伝子産物を産生する。胚体内胚葉の他のマーカーは、MIXL1、GATA4、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1である。胚体内胚葉細胞は、原始及び臓側内胚葉の特徴であるSOX7マーカー遺伝子のレベルよりも高いレベルでSOX17マーカー遺伝子を発現する(表1を参照)ため、いくつかのプロセスでは、SOX17及びSOX7の両方の発現がモニタリングされる。他のプロセスでは、hESCの特徴であるSOX17マーカー遺伝子及びOCT4マーカー遺伝子の両方の発現がモニタリングされる。さらに、胚体内胚葉細胞は、AFP、SPARC又はトロンボモジュリン(TM)マーカー遺伝子のレベルよりも高いレベルでSOX17マーカー遺伝子を発現するため、これらの遺伝子の発現もまたモニタリングされ得る。
【0096】
胚体内胚葉の別のマーカーは、CXCR4遺伝子である。CXCR4遺伝子は、細胞表面ケモカイン受容体をコードし、そのリガンドは、化学誘引物質SDF−1である。成体におけるCXCR4受容体保有細胞の主要な役割は、骨髄への造血細胞の遊走、リンパ球輸送並びに様々なB細胞及びマクロファージ血液細胞系統の分化であると考えられる[Kim,
C., and Broxmeyer, H.J. Leukocyte Biol. 65, 6-15 (1999)]。CXCR4受容体はま
た、T細胞へのHIV−1の進入のための共受容体として機能する[Feng, Y., et al. Science, 272, 872-877 (1996)]。[McGrath, K.E. et al. Dev. Biology 213, 442-456 (1999)]により実施される広範囲の一連の研究では、ケモカイン受容体CXCR4及びその特有のリガンドであるSDF−1[Kim, C., and Broxmyer, H., J. Leukocyte Biol. 65, 6-15 (1999)]の発現は、マウスにおいて初期発達及び成体期中に示された。発達に
おけるCXCR4/SDF1相互作用は、いずれかの遺伝子がトランスジェニックマウスで崩壊される[Nagasawa et al. Nature, 382, 635-638 (1996), Ma, Q., et al Immunmity, 10, 463-471 (1999)]場合、それが後期胚致死性をもたらしたことが実証された際に明らかとなってきた。McGrath他は、CXCR4は、RNアーゼ保護及びin situハイブリッド形成方法論の組合せを使用して初期原腸形成胚(E7.5)中に検出される最も豊富なケモカイン受容体メッセンジャーRNAであることを実証した。原腸形成胚では、CXCR4/SDF−1シグナル伝達は、原始線条胚葉細胞の遊走を誘導することに主に関与されるようであり、この時期に存在する胚体内胚葉、中胚葉及び胚体外中胚葉上で発現される。E7.2−7.8マウス胚では、CXCR4及びα−フェトプロテインは、相互排他的であり、臓側内胚葉における発現の欠如を示している[McGrath, K.E. et al.
Dev. Biology 213, 442-456 (1999)]。
【0097】
多能性細胞を分化させることにより産生される胚体内胚葉細胞は、CXCR4マーカー遺伝子を発現するため、胚体内胚葉細胞の産生を追跡するために、CXCR4の発現をモニタリングすることができる。さらに、本明細書中に記載する方法により産生される胚体内胚葉細胞は、SOX17、MIXL1、GATA4、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1を包含する(これらに限定されない)胚体内胚葉の他のマーカーを発現する。胚体内胚葉細胞は、SOX7マーカー遺伝子のレベルよりも高いレベルでCXCR4マーカー遺伝子を発現するため、CXCR4及びSOX7の両方の発現がモニタリングされ得る。他のプロセスでは、CXCR4マーカー遺伝子及びOCT4マーカー遺伝子の両方の発現がモニタリングされる。さらに、胚体内胚葉細胞は、AFP、SPARC又はトロンボモジュリン(TM)マーカー遺伝子のレベルよりも高いレベルでCXCR4マーカー遺伝子を発現するため、これらの遺伝子の発現もまたモニタリングされ得る。
【0098】
内胚葉細胞におけるCXCR4の発現は、SOX17の発現を妨げないことが理解されよう。したがって、本明細書中に記載するプロセスにより産生される胚体内胚葉細胞は、SOX17及びCXCR4を実質的に発現するが、AFP、TM、SPARC又はPDX1を実質的に発現するものではない。
【0099】
SOX17及び/又はCXCR4マーカーの発現は、分化条件に応じて、胚体内胚葉細胞において多種多様なレベルにわたって誘導されることが理解されよう。したがって、本明細書中に記載するいくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞又は細胞集団におけるSOX17マーカー及び/又はCXCR4マーカーの発現は、非胚体内胚葉細胞又は細胞集団(例えば、多能性幹細胞)におけるSOX17マーカー及び/又はCXCR4マーカーの発現よりも少なくとも約2倍〜少なくとも約10,000倍高い。他の実施形態では、胚体内胚葉細胞又は細胞集団におけるSOX17マーカー及び/又はCXCR4マーカーの発現は、非胚体内胚葉細胞又は細胞集団(例えば、多能性幹細胞)におけるSOX17マーカー及び/又はCXCR4マーカーの発現よりも、少なくとも約4倍高いか、少なくとも約6倍高いか、少なくとも約8倍高いか、少なくとも約10倍高いか、少なくとも約15倍高いか、少なくとも約20倍高いか、少なくとも約40倍高いか、少なくとも約80倍高いか、少なくとも約100倍高いか、少なくとも約150倍高いか、少なくとも約200倍高いか、少なくとも約500倍高いか、少なくとも約750倍高いか、少なくとも約1000倍高いか、少なくとも約2500倍高いか、少なくとも約5000倍高いか、少なくとも約7500倍高いか、或いは少なくとも約10,000倍高い。いくつかの実施
形態では、胚体内胚葉細胞又は細胞集団におけるSOX17マーカー及び/又はCXCR4マーカーの発現は、非胚体内胚葉細胞又は細胞集団(例えば、多能性幹細胞)におけるSOX17マーカー及び/又はCXCR4マーカーの発現よりも飛躍的に高い。
【0100】
同様に、本明細書中に記載するいくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞又は細胞集団におけるGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1から成る群から選択されるマーカーの発現は、非胚体内胚葉細胞又は細胞集団におけるGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1の発現と比較して増大されていることが理解されよう。
【0101】
さらに、胚体内胚葉細胞中でのSOX7マーカーの発現レベルと、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現レベルとの間に一定の差が存在する、と理解される。同様に、胚体内胚葉細胞中でのCXCR4マーカーの発現レベルと、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現レベルとの間に一定の差が存在する。このようなものとして、本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、SOX7マーカー又はCXCR4マーカーの発現は、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現レベルより少なくとも約2倍〜少なくとも約10,000倍高い。他の実施形態では、SOX7マーカー又はCXCR4マーカーの発現は、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現レベルより少なくとも約4倍高い、少なくとも約6倍高い、少なくとも約8倍高い、少なくとも約10倍高い、少なくとも約15倍高い、少なくとも約20倍高い、少なくとも約40倍高い、少なくとも約80倍高い、少なくとも約100倍高い、少なくとも約150倍高い、少なくとも約200倍高い、少なくとも約500倍高い、少なくとも約750倍高い、少なくとも約1000倍高い、少なくとも約2500倍高い、少なくとも約5000倍高い、少なくとも約7500倍高いか又は少なくとも約10,000倍高い。いくつかの実施形態では、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーは、胚体内胚葉細胞中で有意に発現されない。
【0102】
同様に、本明細書中に記載するいくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞におけるGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1から成る群から選択されるマーカーの発現は、胚体内胚葉細胞におけるOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7の発現と比較して増大されていることが理解されよう。
【0103】
胚体内胚葉の富化、単離及び/又は精製
上述のプロセスのいずれかにより産生される胚体内胚葉細胞は、かかる細胞に特異的である親和性タグを使用することにより、富化、単離及び/又は精製することができる。胚体内胚葉細胞に特異的な親和性タグの例は、胚体内胚葉細胞の細胞表面上に存在するが、本明細書中に記載する方法により産生される細胞培養物中に見出されるであろう他の細胞型上には実質的に存在しないマーカー分子(例えば、ポリペプチド)に特異的である抗体、リガンド又は他の結合剤である。いくつかのプロセスでは、CXCR4に結合する抗体は、胚体内胚葉細胞の富化、単離又は精製用の親和性タグとして使用される。他のプロセスでは、ケモカインSDF−1又はSDF−1に基づく他の分子もまた、親和性タグとして使用され得る。かかる分子としては、SDF−1フラグメント、SDF−1融合体又はSDF−1模倣体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
抗体を作製し、また細胞単離のためにそれらを使用する方法は当該技術分野で既知であり、かかる方法は、本明細書中に記載する抗体及び胚体内胚葉細胞を用いた使用に実施することができる。一プロセスでは、CXCR4に結合する抗体を磁気ビーズへ結合させた後
、細胞間接着及び基材接着を低減させるように酵素的に処理した細胞培養物において胚体内胚葉細胞へ結合させる。続いて、ビーズ結合された胚体内胚葉細胞と未結合細胞を分離するのに使用される可動性磁界中へ細胞/抗体/ビーズ複合体をさらす。いったん胚体内胚葉細胞が培養物において他の細胞と物理的に分離されると、抗体結合は崩壊されて、細胞は、適切な組織培養培地中で再度平板培養される。
【0105】
富化、単離又は精製された胚体内胚葉細胞培養物又は集団を得るためのさらなる方法もまた使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、CXCR4抗体を、細胞間接着及び基材接着を低減させるように処理した胚体内胚葉含有細胞培養物とともにインキュベートさせる。続いて、細胞を洗浄して、遠心分離して、再懸濁させる。次に、細胞懸濁液を、一次抗体に結合することが可能な二次抗体(例えば、FITC接合化抗体)とともにインキュベートさせる。続いて、細胞を洗浄して、遠心分離して、緩衝液中に再懸濁させる。次に、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を使用して、細胞懸濁液を分析及び選別する。CXCR4陽性細胞を、CXCR4陰性細胞と分離して収集して、それによりかかる細胞型を単離する。望ましい場合、単離細胞組成物は、代替的な親和性ベースの方法を使用することにより、或いは胚体内胚葉に特異的な同じか、又は異なるマーカーを使用したさらなる一連の選別によりさらに精製することができる。
【0106】
さらに他のプロセスでは、胚体内胚葉細胞は、CXCR4に結合するリガンド又は他の分子を使用して、富化、単離及び/又は精製される。いくつかのプロセスでは、分子は「SDF−1又はそれらのフラグメント、融合体又は模倣体である。
【0107】
好ましいプロセスでは、胚体内胚葉細胞は、幹細胞培養物が胚体内胚葉系統へと分化するように誘導された後、他の非胚体内胚葉細胞から富化、単離及び/又は精製される。上述の富化、単離及び精製手法は、分化の任意の段階でかかる培養物を用いて使用することができると理解されよう。
【0108】
直前で記載された手法に加えて、胚体内胚葉細胞は、細胞単離のための他の技法によっても単離され得る。さらに胚体内胚葉細胞は、胚体内胚葉細胞の選択的生存又は選択的拡大を促す増殖条件で連続継代培養する方法によっても、富化されるか又は単離され得る。
【0109】
本明細書中に記載する方法を使用して、胚体内胚葉細胞及び/又は組織の富化、単離及び/又は精製された集団は、少なくともいくつかの分化を受けた多能性細胞培養物又は細胞集団(例えば、幹細胞培養物又は集団)からin vitroで産生することができる。
いくつかの方法では、細胞は、無作為な分化を受ける。しかしながら、好ましい方法では、細胞は、主として胚体内胚葉へ分化するように指示される。いくつかの好ましい富化、単離及び/又は精製方法は、ヒト胚性幹細胞からの胚体内胚葉のin vitro産生に
関する。本明細書中に記載する方法を使用して、細胞集団又は細胞培養物は、未処理の細胞集団又は細胞培養物と比較した場合、少なくとも約2〜約1000倍、胚体内胚葉含有量が富化され得る。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞は、未処理の細胞集団又は細胞培養物と比較した場合、少なくとも約5〜約500倍富化され得る。他の実施形態では、胚体内胚葉細胞は、未処理の細胞集団又は細胞培養物と比較した場合、少なくとも約10〜約200倍富化され得る。さらに他の実施形態では、胚体内胚葉細胞は、未処理の細胞集団又は細胞培養物と比較した場合、少なくとも約20〜約100倍富化され得る。さらなる他の実施形態では、胚体内胚葉細胞は、未処理の細胞集団又は細胞培養物と比較した場合、少なくとも約40〜約80倍富化され得る。或る特定の実施形態では、胚体内胚葉細胞は、未処理の細胞集団又は細胞培養物と比較した場合、少なくとも約2〜約20倍富化され得る。
【0110】
胚体内胚葉細胞を含む組成物
上記の方法により産生される細胞組成物としては、胚体内胚葉を含む細胞培養物、並びに胚体内胚葉を富化された細胞集団が挙げられる。例えば、培養物中の細胞の少なくとも約50〜80%が胚体内胚葉細胞である胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物が産生され得る。分化プロセスの効率は、或る特定のパラメーター、例えば細胞成長条件、成長因子濃度及び培養工程の時機(これらに限定されない)を修正することにより調整され得るため、本明細書中に記載される分化手法は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約95%以上の多能性細胞の胚体内胚葉への転換を生じ得る。胚体内胚葉細胞の単離が用いられるプロセスでは、例えばCXCR4受容体と結合する親和性試薬を用いることにより、実質的に純粋な胚体内胚葉細胞集団が回収され得る。
【0111】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、多能性細胞、例えば幹細胞と、胚体内胚葉細胞の両方を含む細胞集団及び細胞培養物のような組成物に関する。例えば本明細書中に記載される方法を用いて、hESC及び胚体内胚葉細胞の混合物を含む組成物が産生され得る。いくつかの実施形態では、約95個の多能性細胞につき少なくとも約5個の胚体内胚葉細胞を含む組成物が産生される。他の実施形態では、約5個毎の多能性細胞に関して少なくとも約95個の胚体内胚葉細胞を含む組成物が産生される。さらに、他の割合の胚体内胚葉細胞対多能性細胞を含む組成物が意図される。例えば約1,000,000個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約100,000個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約10,000個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約1000個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約500個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約100個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約10個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約5個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約2個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約2個の胚体内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約5個の胚体内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約10個の胚体内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約20個の胚体内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約50個の胚体内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約100個の胚体内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1000個の胚体内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約10,000個の胚体内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約100,000個の胚体内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1,000,000個の胚体内胚葉細胞を含む組成物が意図される。いくつかの実施形態では、多能性細胞はヒト多能性幹細胞である。或る特定のいくつかの実施形態では、幹細胞は、桑実胚、胚の内部細胞塊、又は胚の生殖隆起に由来する。或る特定の他の実施形態では、多能性細胞は、胚期が終わって発達した多細胞構造の生殖腺又は胚組織に由来する。
【0112】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、少なくとも約5%の胚体内胚葉細胞から少なくとも約95%の胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団に関する。いくつかの実施形態では、細胞培養物又は細胞集団は、哺乳類細胞を含む。好ましい実施形態では、細胞培養物又は細胞集団はヒト細胞を含む。例えば或る特定の特異的な実施形態は、ヒト細胞の少なくとも約5%から少なくとも約95%が胚体内胚葉細胞であるヒト細胞から成る細胞培養物に関する。他の実施形態は、ヒト細胞の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約
90%、又は90%より多くが胚体内胚葉細胞であるヒト細胞から成る細胞培養物に関する。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団中のヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0113】
本明細書中に記載されるさらなる実施形態は、ヒト細胞、例えばヒト胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、この場合、SOX17マーカー又はCXCR4マーカーのいずれかの発現は、少なくとも約5%のヒト細胞では、OCT4、SPARC、α−フェトプロテイン(AFP)、トロンボモジュリン(TM)及び/又はSOX7マーカーの発現より多い。他の実施形態では、SOX17マーカー又はCXCR4マーカーの発現は、少なくとも約10%のヒト細胞では、少なくとも約15%のヒト細胞では、少なくとも約20%のヒト細胞では、少なくとも約25%のヒト細胞では、少なくとも約30%のヒト細胞では、少なくとも約35%のヒト細胞では、少なくとも約40%のヒト細胞では、少なくとも約45%のヒト細胞では、少なくとも約50%のヒト細胞では、少なくとも約55%のヒト細胞では、少なくとも約60%のヒト細胞では、少なくとも約65%のヒト細胞では、少なくとも約70%のヒト細胞では、少なくとも約75%のヒト細胞では、少なくとも約80%のヒト細胞では、少なくとも約85%のヒト細胞では、少なくとも約90%のヒト細胞では、少なくとも約95%のヒト細胞では、又は95%より多くのヒト細胞では、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現より多い。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団中のヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0114】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態は、ヒト胚体内胚葉細胞のようなヒト細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、ここでGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1から成る群から選択される1つ又は複数のマーカーの発現は、少なくとも約5%から少なくとも約95%を上回るヒト細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きいことが理解されよう。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記パーセントは、細胞培養物又は細胞集団におけるヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0115】
本明細書中に記載するさらに他の実施形態は、ヒト胚体内胚葉細胞のようなヒト細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、ここでSOX17及びCXCR4マーカーの両方の発現は、少なくとも約5%のヒト細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きい。他の実施形態では、SOX17及びCXCR4マーカーの両方の発現は、少なくとも約10%のヒト細胞において、少なくとも約15%のヒト細胞において、少なくとも約20%のヒト細胞において、少なくとも約25%のヒト細胞において、少なくとも約30%のヒト細胞において、少なくとも約35%のヒト細胞において、少なくとも約40%のヒト細胞において、少なくとも約45%のヒト細胞において、少なくとも約50%のヒト細胞において、少なくとも約55%のヒト細胞において、少なくとも約60%のヒト細胞において、少なくとも約65%のヒト細胞において、少なくとも約70%のヒト細胞において、少なくとも約75%のヒト細胞において、少なくとも約80%のヒト細胞において、少なくとも約85%のヒト細胞において、少なくとも約90%のヒト細胞において、少なくとも約95%のヒト細胞において、或いは少なくとも約95%を上回るヒト細胞において、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きい。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記パーセントは、細胞培養物又は細胞集団におけるヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0116】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態は、ヒト胚体内胚葉細胞のようなヒト細胞を含
む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、ここでGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1マーカーの発現は、少なくとも約5%から少なくとも約95%を上回るヒト細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きいことが理解されよう。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記パーセントは、細胞培養物又は細胞集団におけるヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0117】
本明細書中に記載するさらなる実施形態は、ヒト内胚葉細胞のような哺乳類内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、ここでSOX17又はCXCR4マーカーのいずれかの発現は、少なくとも約5%の内胚葉細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きい。他の実施形態では、SOX17又はCXCR4マーカーのいずれかの発現は、少なくとも約10%の内胚葉細胞において、少なくとも約15%の内胚葉細胞において、少なくとも約20%の内胚葉細胞において、少なくとも約25%の内胚葉細胞において、少なくとも約30%の内胚葉細胞において、少なくとも約35%の内胚葉細胞において、少なくとも約40%の内胚葉細胞において、少なくとも約45%の内胚葉細胞において、少なくとも約50%の内胚葉細胞において、少なくとも約55%の内胚葉細胞において、少なくとも約60%の内胚葉細胞において、少なくとも約65%の内胚葉細胞において、少なくとも約70%の内胚葉細胞において、少なくとも約75%の内胚葉細胞において、少なくとも約80%の内胚葉細胞において、少なくとも約85%の内胚葉細胞において、少なくとも約90%の内胚葉細胞において、少なくとも約95%の内胚葉細胞において、或いは少なくとも約95%を上回る内胚葉細胞において、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きい。
【0118】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態は、哺乳類内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、ここでGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1から成る群から選択される1つ又は複数のマーカーの発現は、少なくとも約5%から少なくとも約95%を上回る内胚葉細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きいことが理解されよう。
【0119】
本明細書中に記載するさらなる他の実施形態は、ヒト内胚葉細胞のような哺乳類内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、ここでSOX17及びCXCR4マーカーの両方の発現は、少なくとも約5%の内胚葉細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きい。他の実施形態では、SOX17及びCXCR4マーカーの両方の発現は、少なくとも約10%の内胚葉細胞において、少なくとも約15%の内胚葉細胞において、少なくとも約20%の内胚葉細胞において、少なくとも約25%の内胚葉細胞において、少なくとも約30%の内胚葉細胞において、少なくとも約35%の内胚葉細胞において、少なくとも約40%の内胚葉細胞において、少なくとも約45%の内胚葉細胞において、少なくとも約50%の内胚葉細胞において、少なくとも約55%の内胚葉細胞において、少なくとも約60%の内胚葉細胞において、少なくとも約65%の内胚葉細胞において、少なくとも約70%の内胚葉細胞において、少なくとも約75%の内胚葉細胞において、少なくとも約80%の内胚葉細胞において、少なくとも約85%の内胚葉細胞において、少なくとも約90%の内胚葉細胞において、少なくとも約95%の内胚葉細胞において、或いは少なくとも約95%を上回る内胚葉細胞において、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きい。
【0120】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態は、哺乳類内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細
胞集団のような組成物に関するが、ここでGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1マーカーの発現は、少なくとも約5%から少なくとも約95%を上回る内胚葉細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きいことが理解されよう。
【0121】
本明細書中に記載される方法を用いて、他の細胞型を実質的に含有しない胚体内胚葉細胞を含む組成物が産生され得る。本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法により産生される胚体内胚葉細胞集団又は細胞培養物は、OCT4、SOX7、AFP、SPARC、TM、ZIC1又はBRACHマーカー遺伝子を有意に発現する細胞を実質的に含有しない。
【0122】
一実施形態では、マーカー遺伝子の発現に基づいた胚体内胚葉細胞の説明は、SOX17高、MIXL1高、AFP低、SPARC低、トロンボモジュリン低、SOX7低及びCXCR4高である。
【0123】
発達中のPDX1遺伝子発現
PDX1(STF−1、IDX−1及びIPF−1とも呼ばれる)は、膵臓及び吻側十二指腸の発達に必要な転写因子である。PDX1はまず、マウスにおけるE8.5に始まって、後方前腸内胚葉から生じ、且つ外分泌細胞及び内分泌細胞の両方を産生する膵臓内胚葉で発現される。後に、PDX1は、膵臓内分泌部のβ細胞及びいくつかのデルタ細胞に制限されるようになる。この発現パターンは、成体において維持される。PDX1はまた、発達初期に、形成中の膵臓に隣接している十二指腸内胚葉で、続いて十二指腸細胞及び腸内分泌細胞で、胃洞で、並びに総胆管、胆嚢管及び胆管で発現される。この発現領域もまた、膵臓での発現が制限されるようになる時点で、大部分が吻側十二指腸へ制限されるようになる。
【0124】
PDX1陽性細胞及びそれに関連するプロセス
本明細書中に記載する他の分化プロセスの実施形態は、PDX1陽性内胚葉細胞の産生のための新規に規定されたプロセスに関し、ここでPDX−1陽性内胚葉細胞は、腸管の前腸/中腸領域に由来する細胞、組織又は器官へ分化することができる多分化能細胞(PDX−1陽性前腸/中腸内胚葉)である。いくつかの好ましい実施形態は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞の産生のためのプロセスに関する。いくつかの実施形態では、これらのPDX1陽性前腸内胚葉細胞は、腸管の前方部分に由来する細胞、組織又は器官へ分化することができる多分化能細胞(PDX−1陽性前腸内胚葉)である。さらなる好ましい実施形態は、前腸の後方部分のPDX1陽性内胚葉細胞の産生のためのプロセスに関する。いくつかの実施形態では、これらのPDX1陽性内胚葉細胞は、腸管の前腸領域の後方部分に由来する細胞、組織又は器官へ分化することができる多分化能細胞である。
【0125】
本明細書中に記載する方法により産生されるもののようなPDX1陽性前腸内胚葉細胞は、完全に分化されたインスリン生産β細胞を産生するのに使用することができる。いくつかの実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を形成するように、PDX1を実質的に発現しない胚体内胚葉細胞(PDX1陰性胚体内胚葉細胞、本明細書中で胚体内胚葉とも称される)を分化させることにより産生される。PDX1陰性胚体内胚葉細胞は、本明細書中に記載するように、或いは任意の他の既知の方法により、胚性幹細胞のような多能性細胞を分化させることにより調製することができる。多能性細胞からPDX1陰性胚体内胚葉を産生する利便性の高く且つ非常に効率的な方法は、すでに本明細書中で、及び2004年12月23日に出願された胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米国特許第11/021,618号に記載されている。
【0126】
PDX1陽性前腸内胚葉細胞を産生するプロセスは、多能性細胞からの腺房細胞、導管細胞及び島細胞のような膵臓組織の効率的な産生に関する基盤を提供する。或る特定の好ましい実施形態では、ヒトPDX1陽性前腸内胚葉細胞は、ヒトPDX1陰性胚体内胚葉細胞に由来し、またヒトPDX1陰性胚体内胚葉細胞は、hESC細胞に由来する。続いて、これらのヒトPDX1陽性前腸内胚葉細胞は、機能的インスリン生産β細胞を産生するのに使用することができる。有用な量のインスリン生産β細胞を得るためには、膵臓島/β細胞最終形に到達する前に起きる分化工程それぞれに関して、高い効率の分化が望ましい。PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉の分化は、機能的膵臓島/β細胞の産生に対して初期工程を表す(図1に示されるように)ため、この工程での高効率の分化が特に望ましい。
【0127】
PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞の効率的な分化の望ましさを考慮して、本明細書中に記載するプロセスのいくつかの態様は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞のおよそ2〜25%の変換をもたらすin vi
tro方法論に関する。通常、かかる方法は、規定され、且つ時間的に指定された形式での培養及び成長因子条件の適用を包含する。PDX1陽性前腸内胚葉細胞に関する細胞集団のさらなる富化は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞へ特異的に結合する試薬を使用することにより、集団における他の細胞からのPDX1陽性前腸内胚葉細胞の単離及び/又は精製により達成することができる。代替法として、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、PDX1発現の検出を可能にするように、緑色蛍光タンパク質(GFP)のようなレポーター遺伝子で標識することができる。続いて、かかる蛍光標識された細胞は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)により精製することができる。本発明のさらなる態様は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物及び富化細胞集団、並びにPDX1陽性前腸内胚葉への及びPDX1陽性前腸内胚葉からの分化に有用な因子を同定する方法に関する。
【0128】
細胞培養物又は細胞集団におけるPDX1陽性前腸内胚葉細胞の量を測定するためには、培養物又は集団においてこの細胞型を他の細胞と識別する方法が望ましい。したがって、本明細書中に記載する或る特定の実施形態は、その存在、非存在及び/又は相対発現レベルが、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を示す細胞マーカー、並びにかかるマーカーの発現を検出及び測定する方法に関する。
【0129】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態では、マーカーの存在、非存在及び/又は発現のレベルは、定量的PCR(Q−PCR)により測定される。例えば、PDX1、SOX17、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、α−フェトプロテイン(AFP)、ホメオボックスA13(HOXA13)、ホメオボックスC6(HOXC6)及び/又は本明細書中に記載する他のマーカーのような或る特定の遺伝子マーカーにより産生される転写物の量は、Q−PCRにより測定される。他の実施形態では、免疫組織化学は、上述の遺伝子により発現されるタンパク質を検出するのに使用される。さらに他の実施形態では、Q−PCR及び免疫組織化学的技法がともに、かかるマーカーの量又は相対比率を同定及び測定するのに使用される。
【0130】
本明細書中に記載する分化方法及び検出方法を使用することにより、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を同定すること、並びに細胞培養物又は細胞集団におけるPDX1陽性前腸内胚葉細胞の比率を測定することが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、産生されるPDX1陽性前腸内胚葉細胞又は細胞集団は、PDX1陰性細胞又は細胞集団よりも少なくとも約2桁大きいレベルでPDX1遺伝子を発現する。他の実施形態では、産生されるPDX1陽性前腸内胚葉細胞又は細胞集団は、PDX1陰性細胞又は細胞集団よりも約2桁を超えるレベルでPDX1遺伝子を発現する。さらに他の実施形態では、産生されるPDX1陽性前腸内胚葉細胞又は細胞集団は、PDX1陰性胚体内胚葉細胞型又は細胞集団よりも約2桁もしくは2桁以上大きいレベルでPDX1、SOX17、HOXA13及
びHOXC6から成る群から選択されるマーカーの1つ又は複数を発現する。
【0131】
本明細書中に記載する組成物及び方法は、いくつかの有用な特徴を有する。例えば、PDX1陽性内胚葉を含む細胞培養物及び細胞集団、並びにかかる細胞培養物及び細胞集団を産生する方法は、ヒト発達における初期段階をモデル化するのに有用である。さらに、本明細書中に記載する組成物及び方法はまた、真性糖尿病のような疾患状態において治療的介入に役立ち得る。例えば、PDX1陽性前腸内胚葉は、限定数の組織のみで供給源として作用するため、PDX1陽性前腸内胚葉は、純粋な組織又は細胞型の発達に使用され得る。
【0132】
PDX1陰性胚体内胚葉からのPDX1陽性前腸内胚葉の産生
本明細書中に記載されるPDX1陽性前腸内胚葉細胞を含むPDX1陽性前腸内胚葉細胞培養物及び集団は、上述されたような多能性細胞から生成されるPDX1陰性胚体内胚葉から産生される。好ましい方法は、出発材料としてヒト胚性幹細胞を利用する。一実施形態では、hESCはまず、PDX1陰性胚体内胚葉細胞へ変換されて、続いてPDX1陽性前腸内胚葉細胞へ変換される。しかしながら、PDX1陽性前腸内胚葉の産生のための出発材料は、多能性細胞分化方法を使用して産生される胚体内胚葉細胞に限定されるものではないことが理解されよう。むしろ、任意のPDX1陰性胚体内胚葉細胞は、それらの起源にかかわらず、本明細書中に記載する方法で使用することができる。
【0133】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態では、PDX1陰性胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物及び/又は富化細胞集団へのさらなる分化に使用することができる。例えば、ヒトPDX1陰性SOX17陽性胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団を使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞培養物又は細胞集団はまた、先の分化工程(すなわち、多能性細胞を胚体内胚葉細胞へ分化させる工程)から残存している分化因子(例えば、アクチビン、ノーダル及び/又はBMP)を含んでもよい。他の実施形態では、先の分化工程で利用される因子は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性SOX17陽性胚体内胚葉細胞の分化に使用される因子の添加に先立って、細胞培養物又は細胞集団から除去される。他の実施形態では、PDX1陰性SOX17陽性胚体内胚葉細胞に関して富化された細胞集団が、PDX1陽性前腸内胚葉細胞の産生のための供給源として使用される。
【0134】
培養物におけるPDX1陰性胚体内胚葉細胞は、PDX1陰性SOX17陽性胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物へ、PDX1陽性前腸内胚葉細胞への細胞の分化を促進する分化因子(前腸分化因子)を供給することにより、PDX1陽性内胚葉細胞へ分化される。本発明のいくつかの実施形態では、前腸分化因子は、レチノイン酸(RA)のようなレチノイドである。いくつかの実施形態では、レチノイドは、線維芽細胞成長因子(例えば、FGF−4又はFGF−10)と併用される。他の実施形態では、レチノイドは、成長因子のTGFβスーパーファミリー及び/又は条件培地と併用される。
【0135】
上記で定義するように、「条件培地」という語句は、基本培地と比較して変更された培地を指す。例えば、培地の条件付けは、栄養分及び/又は成長因子のような分子を、基本培地に見られる元のレベルに添加してもよく、或いは元のレベルから除去してもよい。いくつかの実施形態では、培地は、或る特定の型の細胞を、或る特定の期間、或る特定の条件下で培地中で成長又は維持させることにより条件付けされる。例えば、培地は、規定温度で規定時間、規定組成を有する培地中で拡張、分化又は維持させることにより条件付けすることができる。当業者に理解されるように、細胞、培地型、所要時間及び環境条件の無数の組合せを使用して、ほぼ無限の一連の条件培地を産生することができる。本発明のいくつかの実施形態では、培地は、分化された多能性細胞を、血清濃度約1%〜約20%を含む培地中で成長又は維持させることにより条件付けされる。他の実施形態では、培地は
、分化された多能性細胞を、約1ng/ml〜約1000ng/mlのアクチビンAを含む培地中で成長又は維持させることにより条件付けされる。さらに他の実施形態では、培地は、分化された多能性細胞を、約1ng/ml〜約1000ng/mlのBMP4を含む培地中で成長又は維持させることにより条件付けされる。好ましい実施形態では、条件培地は、分化されたhESCを、約25ng/mlのアクチビンA及び約2μMのRAを含む培地(例えば、RPMI)中で24時間、成長又は維持させることにより調製される。
【0136】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態では、培地を条件付けするのに使用され、且つPDX1陽性前腸内胚葉へのPDX1陰性胚体内胚葉の分化を増強するのに使用される細胞は、血清約0%〜約20%及び/又は1つ又は複数のTGFβスーパーファミリーの成長/分化因子を含むRPMIのような培地中で約5日間にわたって、hESCのような多能性細胞から分化される細胞である。アクチビンA及びBMP4のような分化因子は、約1ng/ml〜約1000ng/mlの範囲の濃度で供給される。本発明の特定の実施形態では、培地を条件付けするために使用される細胞は、低血清RPMIで約5日間にわたってhESCから分化される。いくつかの実施形態によれば、低血清RPMIは、低血清含有培地を指し、ここでは血清濃度が規定期間にわたって徐々に増大される。例えば、一実施形態では、低血清RPMIは、細胞成長の1日目に約0.2%ウシ胎児血清(FBS)、細胞成長の2日目に約0.5%FBS、及び細胞成長の3日〜5日目に約2%FBSの濃度を含む。別の実施形態では、低血清RPMIは、1日目に約0%、2日目に約0.2%、及び3日〜6日目に約2%の濃度を含む。或る特定の好ましい実施形態では、低血清RPMIは、アクチビンA及びBMP4のような1つ又は複数の分化因子が補充される。培地を条件付けするのに使用される細胞を調製する際の使用に加えて、低血清RPMIは、PDX1陰性胚体内胚葉細胞からのPDX1陽性前腸内胚葉細胞の分化のための培地として使用することができる。
【0137】
条件培地は、かかる培地がPDX1陽性前腸内胚葉細胞の成長又は維持を妨害しなければ、RPMI以外の培地から調製することができることが当業者には理解されよう。同様に、培地を条件付けするのに使用される細胞は様々なタイプであり得ることが理解されよう。分化したばかりの細胞が、培地を条件付けするのに使用される実施形態では、培地がかかる細胞の成長又は維持を妨害しなければ、かかる細胞をRPMI以外の培地中で分化させることができる。さらに、条件付けの所要期間も条件付けに使用される細胞の調製の所要期間も、他の期間であっても本明細書中に報告される効果を達成するのに十分であるため、それぞれ24時間又は5日である必要がないことは当業者に理解されよう。
【0138】
概して、線維芽細胞成長因子、成長因子のTGFβスーパーファミリーの成員、条件培地又はこれらの前腸分化因子のいずれかの組合せと併せたレチノイドの使用は、レチノイド単独の使用よりも、PDX1陽性前腸内胚葉へのPDX1陰性胚体内胚葉のより多くの分化を引き起こす。好ましい実施形態では、RA及びFGF−10はともに、PDX1陰性胚体内胚葉細胞培養物へ供給される。別の好ましい実施形態では、PDX1陰性胚体内胚葉細胞は、条件培地、アクチビンA、アクチビンB及びRAを含む培養物中で分化される。
【0139】
本明細書中に記載する分化プロセスの実施形態のいくつかに関して、上述の前腸分化因子は、これらの因子が、PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞培養物又は細胞集団の少なくとも一部の分化を促進するのに十分な濃度で、細胞培養物又は細胞集団中に存在するように、細胞へ供給される。先に定義したように、細胞培養物及び/又は細胞集団に関連して使用される場合、「一部」という用語は、細胞培養物又は細胞集団の1つの細胞から細胞培養物又は細胞集団の全体までの任意のゼロではない量を意味する。
【0140】
本明細書中に記載するプロセスのいくつかの実施形態では、レチノイドは、レチノイドが少なくとも約0.01μM、少なくとも約0.02μM、少なくとも約0.04μM、少なくとも約0.08μM、少なくとも約0.1μM、少なくとも約0.2μM、少なくとも約0.3μM、少なくとも約0.4μM、少なくとも約0.5μM、少なくとも約0.6μM、少なくとも約0.7μM、少なくとも約0.8μM、少なくとも約0.9μM、少なくとも約1μM、少なくとも約1.1μM、少なくとも約1.2μM、少なくとも約1.3μM、少なくとも約1.4μM、少なくとも約1.5μM、少なくとも約1.6μM、少なくとも約1.7μM、少なくとも約1.8μM、少なくとも約1.9μM、少なくとも約2μM、少なくとも約2.1μM、少なくとも約2.2μM、少なくとも約2.3μM、少なくとも約2.4μM、少なくとも約2.5μM、少なくとも約2.6μM、少なくとも約2.7μM、少なくとも約2.8μM、少なくとも約2.9μM、少なくとも約3μM、少なくとも約3.5μM、少なくとも約4μM、少なくとも約4.5μM、少なくとも約5μM、少なくとも約10μM、少なくとも約20μM、少なくとも約30μM、少なくとも約40μM又は少なくとも約50μMの濃度で存在するように、細胞培養物の細胞へ供給される。好ましい実施形態では、レチノイドはレチノイン酸である。
【0141】
本明細書中に記載するプロセスの他の実施形態では、線維芽細胞成長因子ファミリーの1つ又は複数の分化因子は、細胞培養物中に存在する。例えば、いくつかの実施形態では、FGF−4は、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml又は少なくも約1000ng/mlの濃度で細胞培養物中に存在し得る。さらなる実施形態では、FGF−10は、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml又は少なくも約1000ng/mlの濃度で細胞培養物中に存在する。いくつかの実施形態では、FGF−4又はFGF−10(しかし、両方ではない)は、RAと共に細胞培養物へ供給される。好ましい実施形態では、RAは、1μMで細胞培養物中に存在し、FGF−10は、50ng/mlの濃度で存在する。
【0142】
本明細書中に記載するプロセスのいくつかの実施形態では、TGFβスーパーファミリーの成長因子及び/又は条件培地は、細胞培養物中に存在する。これらの分化因子は、RA及び/又は他の中−前腸分化因子(FGF−4及びFGF−10を包含するが、これらに限定されない)と併用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、アクチビンA及び/又はアクチビンBは、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml又は少なくも約1000ng/mlの濃度で細胞培養物中に存在し得る。さらなる実施形態では、条件培地は、総培地の少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は少なくも約100%の濃度で細胞培養物中に存在する。いくつかの実施形態では、アクチビンA、アクチビンB及び条件培地は、RAと共に細胞培養物へ供給される。好ましい実施形態では、PDX−1陰性胚体内胚葉細胞は、約1μM RA、約25ng/mlのア
クチビンA及び分化されたhESCにより約24時間条件付けした低血清RPMI培地(ここで、分化されたhESCは、約100ng/mlのアクチビンAを含む低血清RPMI中で約5日間分化させたものである)を含む培養物中で、PDX1陽性前腸内胚葉細胞
へ分化される。別の好ましい実施形態では、アクチビンB及び/又はFGF−10もまた、それぞれ25ng/ml及び50ng/mlで培養物中に存在する。
【0143】
本明細書中に記載するプロセスの或る特定の実施形態では、上述の前腸分化因子は、それの添加後に細胞培養物から除去される。例えば、前腸分化因子は、それらの添加後、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日又は約10日以内に除去され得る。
【0144】
PDX1陽性前腸内胚葉細胞の培養物は、低減された血清を含有する培地中で成長させることができる。血清濃度は、約0.05%(v/v)〜約20%(v/v)の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、血清代替物を用いて成長させる。例えば、或る特定の実施形態では、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約2%(v/v)未満、約3%(v/v)未満、約4%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、約6%(v/v)未満、約7%(v/v)未満、約8%(v/v)未満、約9%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、約15%(v/v)未満又は約20%(v/v)未満であり得る。いくつかの実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、血清を用いずに成長させる。他の実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、血清代替物を用いて成長させる。
【0145】
さらに他の実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、B27の存在下で成長させる。かかる実施形態では、B27は、約0.1%(v/v)〜約20%(v/v)の範囲の濃度で、或いは約20%(v/v)を上回る濃度で、培養培地へ供給され得る。或る特定の実施形態では、培地中のB27の濃度は、約0.1%(v/v)、約0.2%(v/v)、約0.3%(v/v)、約0.4%(v/v)、約0.5%(v/v)、約0.6%(v/v)、約0.7%(v/v)、約0.8%(v/v)、約0.9%(v/v)、約1%(v/v)、約2%(v/v)、約3%(v/v)、約4%(v/v)、約5%(v/v)、約6%(v/v)、約7%(v/v)、約8%(v/v)、約9%(v/v)、約10%(v/v)、約15%(v/v)又は約20%(v/v)である。或いは、添加されるB27サプリメントの濃度は、市販のB27ストック溶液強度の倍数でもって測定され得る。例えば、B27は、50倍ストック溶液としてInvitrogen(Carlsbad, CA)から入手可能である。十分な容量の成長培地へこのストック溶液を十分量添加することにより、所望の量のB27を補充した培地が生じる。例えば、成長培地90mlへ50倍B27ストック溶液10mlを添加することにより、5倍B27を補充した成長培地が生じる。培地中のB27サプリメントの濃度は、約0.1倍、約0.2倍、約0.3倍、約0.4倍、約0.5倍、約0.6倍、約0.7倍、約0.8倍、約0.9倍、約1倍、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍及び約20倍以上であり得る。
【0146】
PDX1陽性内胚葉へのPDX1陰性胚体内胚葉の分化のモニタリング
多能性細胞からの胚体内胚葉細胞の分化と同様に、PDX1陰性SOX17陽性胚体内胚葉からPDX1陽性前腸内胚葉への分化の進行は、これらの細胞型の特徴的なマーカー発現を測定することによりモニタリングすることができる。かかるモニタリングにより、様々な条件(例えば、1つ又は複数の分化因子濃度及び環境条件)下での所望の量のPDX1陽性前腸内胚葉の産生に十分な時間を判定することが可能となる。好ましい実施形態で
は、所望の量のPDX1陽性前腸内胚葉の産生に十分な時間は、PDX1の発現を検出することにより測定される。いくつかの実施形態では、或る特定のマーカーの発現は、マーカーの存在又は非存在を検出することにより測定される。或いは、或る特定のマーカーの発現は、マーカーが細胞培養物又は細胞集団の細胞中に存在するレベルを測定することにより判定することができる。かかる実施形態では、マーカー発現の測定は、定性的又は定量的であり得る。上述したように、マーカー遺伝子により産生される発現マーカーを定量化する好ましい方法は、Q−PCRの使用によるものである。特定の実施形態では、Q−PCRは、PDX1陽性前腸内胚葉に特徴的なマーカー遺伝子の発現及び他の細胞型に特徴的なマーカー遺伝子の発現の欠如を定量化することにより、PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性SOX17陽性胚体内胚葉培養物の細胞の進行をモニタリングするのに使用される。同様に、当該技術分野で既知の他の方法を使用して、マーカー遺伝子発現を定量化することができる。例えば、マーカー遺伝子産物の発現は、そのマーカー遺伝子産物に特異的な抗体を使用することにより検出することができる。いくつかの実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉に特徴的なマーカー遺伝子の発現並びにPDX1陰性胚体内胚葉であるhESC及び他の細胞型に特徴的なマーカー遺伝子の有意な発現の欠如が判定される。
【0147】
以下の実施例でさらに記載されるように、PDX1は、PDX1陽性前腸内胚葉に関連するマーカー遺伝子である。したがって、本明細書中に記載するプロセスのいくつかの実施形態では、PDX1の発現が測定される。他の実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉において発現される他のマーカー(SOX17、HOXA13及び/又はHOXC6を包含するが、これらに限定されない)の発現もまた測定される。PDX1はまた或る特定の他の細胞型(すなわち、臓側内胚葉及び或る特定の神経外胚葉)により発現され得るため、本明細書中に記載するいくつかの実施形態は、臓側内胚葉及び/又は神経外胚葉に関連するマーカー遺伝子発現の非存在又は実質的な非存在を実証することに関する。例えば、いくつかの実施形態では、臓側内胚葉及び/又は神経細胞において発現されるマーカーの発現(SOX7、AFP、SOX1、ZIC1及び/又はNFMを包含するが、これらに限定されない)が測定される。
【0148】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載する方法により産生されるPDX1陽性前腸内胚葉細胞培養物は、SOX7、AFP、SOX1、ZIC1又はNFMマーカー遺伝子を発現する細胞を実質的に含まない。或る特定の実施形態では、本明細書中に記載するプロセスにより産生されるPDX1陽性前腸内胚葉細胞培養物は、臓側内胚葉、壁側内胚葉及び/又は神経細胞を実質的に含まない。
【0149】
PDX1陽性前腸内胚葉の富化、単離及び/又は精製
本明細書中に記載されるプロセスのさらなる態様に関しては、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は富化され、単離され且つ/又は精製され得る。いくつかの実施形態では、このような細胞を細胞培養物から単離することにより、PDX1陽性前腸内胚葉細胞に関して富化された細胞集団が産生される。
【0150】
本明細書中に記載されるプロセスのいくつかの実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は蛍光標識され、次に蛍光標示式細胞分取器(FACS)を用いることにより標識されていない細胞から単離される。このような実施形態では、グリーン蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸、又は発現可能蛍光マーカー遺伝子をコードする別の核酸を用いて、PDXI陽性細胞を標識する。例えばいくつかの実施形態では、GFPをコードする核酸又はその生物学的に活性な断片の少なくとも1つのコピーは、GFP遺伝子産物又はその生物学的に活性な断片の発現がPDX1プロモーターの制御下にあるよう、PDX1プロモーターの下流で、多能性細胞、好ましくはヒト胚性幹細胞中に導入される。いくつかの実施形態では、PDX1をコードする核酸の全コード領域は、GFPをコードする核酸
又はその生物学的に活性な断片により置き換えられる。他の実施形態では、GFPをコードする核酸又はその生物学的に活性な断片は、フレーム内で、PDX1をコードする核酸の少なくとも一部分と融合され、それにより融合タンパク質を生成する。このような実施形態では、融合タンパク質は、GFPと類似の蛍光活性を保持する。
【0151】
蛍光標識される細胞、例えば上記の多能性細胞は、上記のように胚体内胚葉に、次にPDX1陽性前腸内胚葉に分化される。PDX1陽性前腸内胚葉細胞は蛍光マーカー遺伝子を発現する一方、PDX1陰性細胞は発現しないため、これら2つの細胞型が分離され得る。いくつかの実施形態では、蛍光標識PDX1陽性細胞及び非標識PDX1陰性細胞の混合物を含む細胞懸濁液は、FACSを用いて選別される。PDX1陽性細胞は、PDX1陰性細胞と別個に収集され、それによりこのような細胞型が単離される。所望により、単離細胞組成物はさらに、PDX1陽性前腸内胚葉に特異的である同一の又は異なるマーカーを用いて、さらに数回選別することにより精製され得る。
【0152】
直前で記載された手法のほかに、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、細胞単離のための他の技法によっても単離され得る。さらにPDX1陽性前腸内胚葉細胞は、該PDX1陽性前腸内胚葉細胞の選択的生存又は選択的拡大を促す増殖条件で連続継代培養する方法によっても、富化されるか又は単離され得る。
【0153】
上記の富化、単離及び精製手法は、分化の任意の段階で、このような培養物とともに用いられ得る、と理解される。
【0154】
本明細書中に記載される方法を用いて、PDX1陽性前腸内胚葉細胞及び/又は組織の富化、単離及び/又は精製集団が、少なくともいくらかの分化を受けたSOX1陽性胚体内胚葉細胞培養物又は細胞集団からin vitroで産生され得る。いくつかの実施形態
では、細胞は無作為分化を受ける。しかしながら好ましい実施形態では、細胞は主としてPDX1陽性前腸内胚葉細胞に分化するよう指図される。いくつかの好ましい富化、単離及び/又は精製方法は、ヒト胚性幹細胞からのPDX1陽性前腸内胚葉細胞のin vi
tro産生に関する。
【0155】
本明細書中に記載される方法を用いて、細胞集団又は細胞培養物は、未処理細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約2倍〜約1000倍、PDX1陽性前腸内胚葉細胞含有物を富化され得る。いくつかの実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、未処理細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約5倍〜約500倍、富化され得る。他の実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、未処理細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約10倍〜約200倍、富化され得る。さらに他の実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、未処理細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約20倍〜約100倍、富化され得る。さらに他の実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、未処理細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約40倍〜約80倍、富化され得る。或る特定のいくつかの実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、未処理細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約2倍〜約20倍、富化され得る。
【0156】
PDX1陽性前腸内胚葉を含む組成物
本明細書中に記載するいくつかの実施形態は、PDX1陽性内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような細胞組成物に関し、ここでPDX1陽性内胚葉細胞は、腸管の前方部分に由来する細胞、組織又は器官へ分化することができる多分化能細胞(PDX1陽性前腸内胚葉)である。或る特定の実施形態によれば、PDX1陽性前腸内胚葉は哺乳類細胞であり、好ましい実施形態では、これらの細胞はヒト細胞である。
【0157】
本明細書中に記載する他の実施形態は、hESC、PDX1陰性胚体内胚葉細胞、PDX
1陽性前腸内胚葉細胞及び中胚葉細胞から成る群から選択される1つ又は複数の細胞型の細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関する。いくつかの実施形態では、hESCは、培養物において総細胞の約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満又は約1%未満を構成する。他の実施形態では、PDX1陰性胚体内胚葉細胞は、培養物において総細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満又は約1%未満を構成する。さらなる他の実施形態では、中胚葉細胞は、培養物において総細胞の約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満又は約1%未満を構成する。
【0158】
本明細書中に記載するさらなる実施形態は、主要細胞型としてPDX1陽性前腸内胚葉を含む本明細書中に記載するプロセスにより産生される細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関する。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載するプロセスは、少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約97%、少なくとも約96%、少なくとも約95%、少なくとも約94%、少なくとも約93%、少なくとも約92%、少なくとも約91%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約54%、少なくとも約53%、少なくとも約52%又は少なくとも約51%のPDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物及び/又は細胞集団を産生する。好ましい実施形態では、細胞培養物又は細胞集団の細胞は、ヒト細胞を含む。他の実施形態では、本明細書中に記載するプロセスは、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約24%、少なくとも約23%、少なくとも約22%、少なくとも約21%、少なくとも約20%、少なくとも約19%、少なくとも約18%、少なくとも約17%、少なくとも約16%、少なくとも約15%、少なくとも約14%、少なくとも約13%、少なくとも約12%、少なくとも約11%、少なくとも約10%、少なくとも約9%、少なくとも約8%、少なくとも約7%、少なくとも6%、少なくとも5%、少なくとも4%、少なくとも約3%、少なくとも約2%又は少なくとも約1%のPDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物及び/又は細胞集団を産生する。好ましい実施形態では、細胞培養物又は細胞集団の細胞は、ヒト細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養物又は集団におけるPDX1陽性前腸内胚葉細胞のパーセントは、培養物中に存在するフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0159】
本明細書中に記載するさらに他の実施形態は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞及びPDX1陰性胚体内胚葉細胞の混合物を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関する。例えば、約95のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約5のPDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団が産生され得る。他の実施形態では、約5のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約95のPDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団が産生され得る。さらに、PDX1陰性胚体内胚葉細胞に対するPDX1陽性前腸内胚葉細胞の他の比を含む細胞培養物又は細胞集団も意図される。例えば、約1,000,000のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約1のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約100,000のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約1のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約10,000のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約1のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約1000のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約1のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約500のPD
X1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約1のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約100のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約1のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約10のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約1のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約5のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約1のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約4のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約1のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約2のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約1のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約1のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約1のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約1のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約2のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約1のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約4のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約1のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約5のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約1のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約10のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約1のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約20のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約1のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約50のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約1のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約100のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約1のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約1000のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、約1のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約10,000のPDX1陽性前腸内胚葉細胞、1のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約100,000のPDX1陽性前腸内胚葉細胞及び約1のPDX1陰性胚体内胚葉細胞に対して少なくとも約1,000,000のPDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む組成物が意図される。
【0160】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞が産生されるPDX1陰性胚体内胚葉細胞は、ヒト多能性幹細胞のようなヒト多能性細胞に由来する。或る特定の実施形態では、ヒト多能性細胞は、桑実胚、胚の内部細胞塊又は胚の生殖隆起に由来する。或る特定の他の実施形態では、ヒト多能性細胞は、胚期を過ぎて発達した多細胞構造の生殖腺組織又は胚組織に由来する。
【0161】
本明細書中に記載するさらなる実施形態は、ヒトPDX1陽性前腸内胚葉細胞を包含するヒト細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関し、ここでPDX1マーカーの発現は、少なくとも約2%のヒト細胞において、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも多い。他の実施形態では、PDX1マーカーの発現は、少なくとも約5%のヒト細胞において、少なくとも約10%のヒト細胞において、少なくとも約15%のヒト細胞において、少なくとも約20%のヒト細胞において、少なくとも約25%のヒト細胞において、少なくとも約30%のヒト細胞において、少なくとも約35%のヒト細胞において、少なくとも約40%のヒト細胞において、少なくとも約45%のヒト細胞において、少なくとも約50%のヒト細胞において、少なくとも約55%のヒト細胞において、少なくとも約60%のヒト細胞において、少なくとも約65%のヒト細胞において、少なくとも約70%のヒト細胞において、少なくとも約75%のヒト細胞のヒト細胞において、少なくとも約80%のヒト細胞において、少なくとも約85%のヒト細胞において、少なくとも約90%のヒト細胞において、少なくとも約95%のヒト細胞において、或いは少なくとも約98%のヒト細胞において、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも多い。いくつかの実施形態では、細胞培養物又は細胞集団におけるヒト細胞のパーセント(ここで、PDX1マーカーの発現は、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも多い)は、フィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0162】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態は、ヒトPDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、ここでSOX17、HOXA13及びHOXC6から成る群から選択される1つ又は複数のマーカーの発現は、少なくとも約2%〜少なくとも約98%を上回るヒト細胞において、AFP、SOX7、SOX1、ZI
C1及び/又はNFMマーカーの発現よりも多いことが理解されよう。いくつかの実施形態では、SOX17、HOXA13及びHOXC6から成る群から選択される1つ又は複数のマーカーの発現は、少なくとも約5%のヒト細胞において、少なくとも約10%のヒト細胞において、少なくとも約15%のヒト細胞において、少なくとも約20%のヒト細胞において、少なくとも約25%のヒト細胞において、少なくとも約30%のヒト細胞において、少なくとも約35%のヒト細胞において、少なくとも約40%のヒト細胞において、少なくとも約45%のヒト細胞において、少なくとも約50%のヒト細胞において、少なくとも約55%のヒト細胞において、少なくとも約60%のヒト細胞において、少なくとも約65%のヒト細胞において、少なくとも約70%のヒト細胞において、少なくとも約75%のヒト細胞のヒト細胞において、少なくとも約80%のヒト細胞において、少なくとも約85%のヒト細胞において、少なくとも約90%のヒト細胞において、少なくとも約95%のヒト細胞において、或いは少なくとも約98%のヒト細胞において、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも多い。いくつかの実施形態では、細胞培養物又は細胞集団におけるヒト細胞のパーセント(ここで、SOX17、HOXA13及びHOXC6から成る群から選択される1つ又は複数のマーカーの発現は、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも多い)は、フィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0163】
本明細書中に記載するさらなる実施形態は、ヒト内胚葉細胞のような哺乳類内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関し、ここでPDX1マーカーの発現は、少なくとも約2%の内胚葉細胞において、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも多い。他の実施形態では、PDX1マーカーの発現は、少なくとも約5%の内胚葉細胞において、少なくとも約10%の内胚葉細胞において、少なくとも約15%の内胚葉細胞において、少なくとも約20%の内胚葉細胞において、少なくとも約25%の内胚葉細胞において、少なくとも約30%の内胚葉細胞において、少なくとも約35%の内胚葉細胞において、少なくとも約40%の内胚葉細胞において、少なくとも約45%の内胚葉細胞において、少なくとも約50%の内胚葉細胞において、少なくとも約55%の内胚葉細胞において、少なくとも約60%の内胚葉細胞において、少なくとも約65%の内胚葉細胞において、少なくとも約70%の内胚葉細胞において、少なくとも約75%の内胚葉細胞において、少なくとも約80%の内胚葉細胞において、少なくとも約85%の内胚葉細胞において、少なくとも約90%の内胚葉細胞において、少なくとも約95%の内胚葉細胞において、或いは少なくとも約98%の内胚葉細胞において、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも多い。
【0164】
本明細書中に記載するさらに他の実施形態は、ヒト内胚葉細胞のような哺乳類内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関し、ここでSOX17、HOXA13及びHOXC6から成る群から選択される1つ又は複数のマーカーの発現は、少なくとも約2%の内胚葉細胞において、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも多い。他の実施形態では、SOX17、HOXA13及びHOXC6から成る群から選択される1つ又は複数のマーカーの発現は、少なくとも約5%の内胚葉細胞において、少なくとも約10%の内胚葉細胞において、少なくとも約15%の内胚葉細胞において、少なくとも約20%の内胚葉細胞において、少なくとも約25%の内胚葉細胞において、少なくとも約30%の内胚葉細胞において、少なくとも約35%の内胚葉細胞において、少なくとも約40%の内胚葉細胞において、少なくとも約45%の内胚葉細胞において、少なくとも約50%の内胚葉細胞において、少なくとも約55%の内胚葉細胞において、少なくとも約60%の内胚葉細胞において、少なくとも約65%の内胚葉細胞において、少なくとも約70%の内胚葉細胞において、少なくとも約75%の内胚葉細胞において、少なくとも約80%の内胚葉細胞において、少なくとも約85%の内胚葉細胞において、少なくとも約90%の内胚葉細胞において、少なくとも約95%の内胚
葉細胞において、或いは少なくとも約98%の内胚葉細胞において、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカーの発現よりも多い。
【0165】
本明細書中に記載するプロセスを使用して、他の細胞型を実質的に含まないPDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む組成物が産生され得る。本発明のいくつかの実施形態では、本明細書中に記載する方法により産生されるPDX1陽性前腸内胚葉細胞集団又は細胞培養物は、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1及び/又はNFMマーカー遺伝子を有意に発現する細胞を実質的に含まない。
【0166】
一実施形態では、マーカー遺伝子の発現に基づくPDX1陽性前腸内胚葉細胞の記述は、PDX1高、AFP低、SOX7低、SOX1低、ZIC1低且つNFM低である。
【0167】
SOX17陽性胚体内胚葉細胞におけるPDX1の発現の増大
本明細書中に記載するプロセスのいくつかの態様は、SOX17陽性胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団におけるPDX1遺伝子産物の発現を増大させる方法に関する。かかる実施形態では、SOX17陽性胚体内胚葉細胞を、PDX1遺伝子産物の発現を増大させるのに十分な量で、分化因子と接触させる。分化因子と接触するSOX17陽性胚体内胚葉細胞は、PDX1陰性であってもPDX1陽性であってもよい。いくつかの実施形態では、分化因子はレチノイドであり得る。或る特定の実施形態では、SOX17陽性胚体内胚葉細胞を、約0.01μM〜約50μMの範囲の濃度でレチノイドと接触させる。好ましい実施形態では、レチノイドはRAである。
【0168】
本明細書中に記載するプロセスの他の実施形態では、SOX17陽性胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団におけるPDX1遺伝子産物の発現は、SOX17陽性細胞を、線維芽細胞成長因子ファミリーの分化因子と接触させることにより増大される。かかる分化因子は、単独で、或いはRAと併用して使用され得る。いくつかの実施形態では、SOX17陽性胚体内胚葉細胞を、約10ng/ml〜約1000ng/mlの範囲の濃度で線維芽細胞成長因子と接触させる。好ましい実施形態では、FGF成長因子は、FGF−10である。
【0169】
本明細書中に記載するプロセスのいくつかの実施形態では、SOX17陽性胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団におけるPDX1遺伝子産物の発現は、SOX17陽性細胞をB27と接触させることにより増大される。この分化因子は、単独で、或いはレチノイド及びFGFファミリー分化因子の一方又は両方と併用して使用され得る。いくつかの実施形態では、SOX17陽性胚体内胚葉細胞を、約0.1%(v/v)〜約20%(v/v)の範囲の濃度でB27と接触させる。好ましい実施形態では、SOX17陽性胚体内胚葉細胞を、RA、FGF−10及びB27と接触させる。
【0170】
SOX17陽性胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団におけるPDX1遺伝子産物の発現を増大させる方法は、低減された血清を含有するか、或いは血清を含有しない成長培地中で実施され得る。いくつかの実施形態では、血清濃度は、約0.05%(v/v)〜約20%(v/v)の範囲である。いくつかの実施形態では、SOX17陽性細胞は、血清代替物を用いて成長する。
【0171】
胚体内胚葉細胞の分化を促進し得る因子の同定
本明細書中に記載される或る特定のスクリーニング方法は、胚体内胚葉細胞の分化を促進し得る少なくとも1つの分化因子を同定する方法に関する。これらの方法のいくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞、例えばヒト胚体内胚葉細胞を含む細胞集団が得られる。次に細胞集団は、候補分化因子を提供される。候補分化因子の提供の前であるか又はほぼ同じである第1の時点で、マーカーの発現が測定される。或いはマーカーの発現は、候補分
化因子の提供後に測定され得る。第1の時点の後であり、候補分化因子を細胞集団に提供する工程の後である第2の時点で、同一マーカーの発現が再び測定される。候補分化因子が胚体内胚葉細胞の分化を促進し得るか否かは、第1の時点でのマーカーの発現を、第2の時点でのマーカーの発現と比較することにより測定される。第2の時点でのマーカーの発現が、第1の時点でのマーカーの発現と比較して増大されるか又は減少される場合には、候補分化因子が胚体内胚葉細胞の分化を促進し得る。
【0172】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態は、ヒト胚体内胚葉細胞を含む細胞集団又は細胞培養物を利用する。例えば細胞集団は、ヒト胚体内胚葉細胞の実質的に精製された集団であり得る。或いは細胞集団は、ヒト胚体内胚葉細胞の富化集団であるが、この場合、細胞集団中のヒト細胞の少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、又は少なくとも約97%以上が、ヒト胚体内胚葉細胞である。本明細書中に記載される他の実施形態では、細胞集団は、ヒト細胞の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも85%以上がヒト胚体内胚葉細胞であるヒト細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、非ヒト細胞、例えば非ヒトフィーダー細胞を含む。他の実施形態では、細胞集団は、ヒトフィーダー細胞を含む。このような実施形態では、上記フィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約95%以上がヒト胚体内胚葉細胞である。本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、細胞集団は、いくつかのPDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む(これに限定されない)PDX1陽性内胚葉細胞をさらに含む。
【0173】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の実施形態では、細胞集団は、候補(試験)分化因子と接触されるか、そうでなければそれを提供される。候補分化因子は、ヒト胚体内胚葉細胞の分化を促進する能力を有し得る任意の分子を含み得る。本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、候補分化因子は、1つ又は複数の型の細胞に関する分化因
子であると知られている分子を含む。代替的な実施形態では、候補分化因子は、細胞分化を促進することが知られていない分子を含む。好ましい実施形態では、候補分化因子は、ヒト胚体内胚葉細胞の分化を促進することが知られていない分子を含む。
【0174】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、候補分化因子は、小分子を含む。好ましい実施形態では、小分子は、約10,000amu以下の分子量を有する分子である。いくつかの実施形態では、小分子はレチノイドを含む。いくつかの実施形態では、小分子はレチノイン酸を含む。
【0175】
本明細書中に記載される他の実施形態では、候補分化因子はポリペプチドを含む。ポリペプチドは、任意のポリペプチド、例えば糖タンパク質、リポタンパク質、細胞外マトリックスタンパク質、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモン、インターロイキン又は成長因子であり得るが、これらに限定されない。好ましいポリペプチドとしては、成長因子が挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、候補分化因子は、FGF10、FGF4、FGF2及びWnt3Bから成る群から選択される1つ又は複数の成長因子を含む
【0176】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、候補分化因子は、アンフィレグリン、Bリンパ球刺激剤、IL−16、サイモポイエチン、TRAIL/アポ−2、プレB細胞コロニー増強因子、内皮分化関連因子1(EDF1)、内皮単球活性化ポリペプチドII、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、ナチュラルキラー細胞強化因子(NKEFA)、骨形態形成タンパク質2、骨形態形成タンパク質8(骨原性タンパク質2)、骨形態形成タンパク質6、骨形態形成タンパク質7、結合組織成長因子(CTGF)、CGI−149タンパク質(神経内分泌分化因子)、サイトカインA3(マクロファージ炎症タンパク質1−α)、グリアブラストーマ細胞分化関連タンパク質(GBDR1)、肝細胞腫由来成長因子、ニューロメジンU−25前駆体、血管内皮増殖因子(VEGF)、血管内皮増殖因子B(VEGF−B)、T細胞特異的RANTES前駆体、胸腺樹状細胞由来因子1、トランスフェリン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−11(IL−11)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−13(IL−13)、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、エリスロポイエチン、トロンボポイエチン、ビタミンD3、表皮成長因子(EGF)、
脳由来神経栄養因子、白血病抑制因子、甲状腺ホルモン、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、aFGF、FGF−4、FGF−6、ケラチノサイト成長因子(KGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、血小板由来成長因子−BB、β神経成長因子、アクチビンA、形質転換増殖因子β1(TGF−β1)、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、腫瘍壊死因子−α、腫瘍壊死因子−β、バースト促進活性(BPA)、赤血球系促進活性(EPA)、PGE2、インスリン増殖因子−1(IG
F−1)、IGF−II、ニュートロフィン増殖因子(NGF)、ニュートロフィン−3、ニュートロフィン4/5、毛様体神経栄養因子、グリア由来ネキシン、デキサメタソン、β−メルカプトエタノール、レチノイン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、5−アザシチジン、アンフォテリシンB、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、イソブチルキサンチン、インドメタシン、β−グリセロホスフェート、ニコチンアミド、DMSO、チアゾリジンジオン、TWS119、オキシトシン、バソプレッシン、メラニン細胞刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、リポトロピン、ヒト甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、プロラクチン、黄体形成ホルモン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、濾胞刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、性腺刺激ホルモン放出因子、プロラクチン放出因子、プロラクチン放出抑制因子、成長ホルモン放出因子、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン放出因子、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、上皮小体ホルモン、グルカゴン様ペプチド1、グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、モチリン、血管作動性小腸ペプチド、サブスタンスP、膵臓ポリペプチド、ペプチドチロシン、神経ペプチドチロシン、インスリン、グルカゴン、胎盤ラクトゲン、レラキシン、アンギオテンシンII、カルシトリオール、心房性ナトリウム利尿ペプチド及びメラトニン、チロキシン、トリヨードチロニン、カルシトニン、エストラジオール、エストロン、プロゲステロン、テストステロン、コルチゾール、コルチコステロン、アルドステロン、エピネフリン、ノルエピネフェリン、アンドロスチエン(androstiene)、カル
シトリオール、コラーゲン、デキサメタソン、β−メルカプトエタノール、レチノイン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、5−アザシチジン、アンフォテリシンB、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、イソブチルキサンチン、インドメタシン、β−グリセロホスフェート、ニコチンアミド、DMSO、チアゾリジンジオン及びTWS119から成る群から選択される1つ又は複数の成長因子を含む。
【0177】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、候補分化因子は、1つ又は複数の濃度で、細胞集団に提供される。いくつかの実施形態では、候補分化因
子は、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度が約0.1ng/ml〜約10mg/mlの範囲であるよう、細胞集団に提供される。いくつかの実施形態では、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度は、約1ng/ml〜約1mg/mlの範囲である。他の実施形態では、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度は、約10ng/ml〜約100μg/mlの範囲である。さらに他の実施形態では、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度は、約100ng/ml〜約10μg/mlの範囲である。好ましい実施形態では、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度は、約5ng/ml、約25ng/ml、約50ng/ml、約75ng/ml、約100ng/ml、約125ng/ml、約150ng/ml、約175ng/ml、約200ng/ml、約225ng/ml、約250ng/ml、約275ng/ml、約300ng/ml、約325ng/ml、約350ng/ml、約375ng/ml、約400ng/ml、約425ng/ml、約450ng/ml、約475ng/ml、約500ng/ml、約525ng/ml、約550ng/ml、約575ng/ml、約600ng/ml、約625ng/ml、約650ng/ml、約675ng/ml、約700ng/ml、約725ng/ml、約750ng/ml、約775ng/ml、約800ng/ml、約825ng/ml、約850ng/ml、約875ng/ml、約900ng/ml、約925ng/ml、約950ng/ml、約975ng/ml、約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、約10μg/ml、約11μg/ml、約12μg/ml、約13μg/ml、約14μg/ml、約15μg/ml、約16μg/ml、約17μg/ml、約18μg/ml、約19μg/ml、約20μg/ml、約25μg/ml、約50μg/ml、約75μg/ml、約100μg/ml、約125μg/ml、約150μg/ml、約175μg/ml、約200μg/ml、約250μg/ml、約300μg/ml、約350μg/ml、約400μg/ml、約450μg/ml、約500μg/ml、約550μg/ml、約600μg/ml、約650μg/ml、約700μg/ml、約750μg/ml、約800μg/ml、約850μg/ml、約900μg/ml、約950μg/ml、約1000μg/mlであるか、又は約1000μg/mlより高い。
【0178】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の或る特定のいくつかの実施形態では、細胞集団は、前腸分化因子以外の任意の分子を含む候補分化因子を提供される。例えばいくつかの実施形態では、細胞集団は、レチノイド、成長因子のTGFβスーパーファミリーの一成員、FGF10又はFGF4以外の任意の分子を含む候補分化因子を提供される。いくつかの実施形態では、細胞集団は、レチノイン酸以外の任意の分子を含む候補分化因子を提供される。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるスクリーニング方法の工程は、第1の時点及び第2の時点での少なくとも1つのマーカーの発現を測定することを包含する。これらの実施形態のいくつかでは、第1の時点は、候補分化因子を細胞集団に提供する前、又はそれとほぼ同時期であり得る。或いはいくつかの実施形態では、第1の時点は、候補分化因子を細胞集団に提供した後である。いくつかの実施形態では、複数のマーカーの発現は、第1の時点で測定される。
【0180】
第1の時点での少なくとも1つのマーカーの発現を測定することのほかに、本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態は、第1の時点の後であり且つ候補分化因子を細胞集団に提供した後である第2の時点での少なくとも1つのマーカーの発現を測定することを意図する。このような実施形態では、同一マーカーの発現が、第1及び第2の時点の両方で測定される。いくつかの実施形態では、複数のマーカーの発現が、第
1及び第2の時点の両方で測定される。そのような実施形態では、同一の複数のマーカーの発現が、第1及び第2の時点の両方で測定される。いくつかの実施形態では、その各々が第1の時点の後であり、且つその各々が候補分化因子を細胞集団に提供した後である複数の時点で、マーカー発現が測定される。或る特定のいくつかの実施形態では、マーカー発現はQ−PCRにより測定される。他の実施形態では、マーカー発現は免疫細胞化学により測定される。
【0181】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の或る特定のいくつかの実施形態では、その発現が第1及び第2の時点で測定されるマーカーは、腸管由来である組織及び/又は器官を作り上げる細胞の前駆体である細胞へのヒト胚体内胚葉細胞の分化に関連するマーカーである。いくつかの実施形態では、腸管に由来する組織及び/又は器官は、最終分化細胞を含む。いくつかの実施形態では、マーカーは、膵臓細胞又は膵臓前駆体細胞を示す。好ましい実施形態では、マーカーは、膵臓−十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX1)である。他の実施形態では、マーカーはホメオボックスA13(HOXA13)又はホメオボックスC6(HOXC6)である。さらに、他の実施形態では、マーカーは肝細胞又は肝臓前駆体細胞を示す。或る特定の好ましい実施形態では、マーカーは、アルブミン、肝細胞特異的抗原(HSA)又はプロスペロ関連ホメオボックス1(PROX1)である。他の実施形態では、マーカーは、肺又は肺前駆体細胞を示す。いくつかの好ましい実施形態では、マーカーは、甲状腺転写因子1(TITF1)である。さらに他の実施形態では、マーカーは、腸又は腸前駆体細胞を示す。付加的な好ましい実施形態では、マーカーは、ビリン、グルコース輸送体−2(GLUT2)、アポリポタンパク質A1(APOA1)、血管細胞接着分子−1(VACM1)、フォンウィルブランド因子(VWF)、CXC型ケモカイン受容体4(CXCR4)又はコーダルタイプホメオボックス転写因子2(CDX2)である。さらに他の実施形態では、マーカーは、胃又は胃前駆体細胞を示す。付加的な好ましい実施形態では、マーカーは、VCAM1、VWF又はCXCR4である。他の実施形態では、マーカーは甲状腺又は甲状腺前駆体細胞を示す。そのような実施形態では、マーカーはTITF1である。さらなる他の実施形態では、マーカーは、胸腺又は胸腺前駆体細胞を示す。
【0182】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、候補分化因子を細胞集団に提供することと、第2の時点でのマーカー発現を測定することとの間に十分な時間を経過させる。候補分化因子を細胞集団に提供することと第2の時点でのマーカーの発現を測定することとの間の十分な時間は、約1時間という短い時間から、約10日間という長い時間までであり得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのマーカーの発現は、候補分化因子を細胞集団に提供した後の複数の時点で測定される。いくつかの実施形態では、十分な時間は、少なくとも約1時間、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約18時間、少なくとも約24時間、少なくとも約30時間、少なくとも約36時間、少なくとも約42時間、少なくとも約48時間、少なくとも約54時間、少なくとも約60時間、少なくとも約66時間、少なくとも約72時間、少なくとも約78時間、少なくとも約84時間、少なくとも約90時間、少なくとも約96時間、少なくとも約102時間、少なくとも約108時間、少なくとも約114時間、少なくとも約120時間、少なくとも約126時間、少なくとも約132時間、少なくとも約138時間、少なくとも約144時間、少なくとも約150時間、少なくとも約156時間、少なくとも約162時間、少なくとも約168時間、少なくとも約174時間、少なくとも約180時間、少なくとも約186時間、少なくとも約192時間、少なくとも約198時間、少なくとも約204時間、少なくとも約210時間、少なくとも約216時間、少なくとも約222時間、少なくとも約228時間、少なくとも約234時間又は少なくとも約240時間である。
【0183】
本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態では、第2の時点でのマーカーの発現
が、第1の時点でのこのマーカーの発現と比較して、増大したか又は減少したかがさらに測定される。少なくとも1つのマーカーの発現の増大又は減少は、候補分化因子が胚体内胚葉細胞の分化を促進し得る、ということを示す。同様に、複数のマーカーの発現が測定される場合、第2の時点での複数のマーカーの発現が、第1の時点でのこの複数のマーカーの発現と比較して、増大したか又は減少したかがさらに測定される。マーカー発現の増大又は減少は、第1及び第2の時点での細胞集団中のマーカーの量、レベル又は活性を測定するか又は評価することにより判定され得る。このような判定は、他のマーカー、例えばハウスキーピング遺伝子発現と相対的であるか、或いは絶対的であり得る。マーカー発現が第1の時点と比較して第2の時点で増大される或る特定のいくつかの実施形態では、増大の量は、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍であるか、又は少なくとも約100倍より多い。いくつかの実施形態では、増大の量は、2倍未満である。マーカー発現が第1の時点と比較して第2の時点で減少される実施形態では、減少の量は、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍であるか、又は少なくとも約100倍より多い。いくつかの実施形態では、減少の量は、2倍未満である。
【0184】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、候補分化因子を細胞集団に提供後、ヒト胚体内胚葉細胞は、胚体内胚葉系統の1つ又は複数の細胞型に分
化する。いくつかの実施形態では、候補分化因子を細胞集団に提供後、ヒト胚体内胚葉細胞は、腸管に由来する細胞に分化する。このような細胞としては、膵臓、肝臓、肺、胃、腸、甲状腺、胸腺、咽頭、胆嚢及び膀胱の細胞、並びにこのような細胞の前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、これらの細胞は、より高度な構造、例えば組織及び/又は器官にさらに発達し得る。
【0185】
上述の方法と類似したスクリーニング方法を使用して、ヒトPDX1陽性内胚葉細胞を含む細胞集団におけるヒトPDX1陽性内胚葉細胞の分化を促進することが可能な1つ又は複数の分化因子を同定することができることが理解されよう。或る特定の実施形態では、ヒトPDX1陽性内胚葉細胞は、PDX1陽性前腸/中腸内胚葉細胞である。好ましい実施形態では、ヒトPDX1陽性内胚葉細胞は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞である。他の好ましい実施形態では、ヒトPDX1陽性内胚葉細胞は、前腸の後方部分のPDX1陽性内胚葉細胞である。特に好ましい実施形態では、ヒトPDX1陽性前腸内胚葉細胞は、腸管の前方部分に由来する細胞、組織又は器官へ分化することができる多分化能細胞である。
【0186】
PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞の分化を促進することが可能な因子の同定
本明細書中に記載するスクリーニング方法の態様は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞の分化を促進することが可能な1つ又は複数の分化因子を同定する方法に関する。かかる方法では、PDX1陰性胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団が得られ、細胞培養物又は細胞集団におけるPDX1の発現が測定される。PDX1の発現を測定した後、細胞培養物又は細胞集団の細胞を、候補分化因子と接触させる。いくつかの実施形態では、PDX1の発現は、細胞を候補分化因子と接触させる時点で、或いは接触させた直後に測定される。続いて、PDX1発現は、細胞を候補分化因子と接触させた後の1つ又は複数の時点で測定される。PDX1の発現が、候補分化因子との接触前のPDX1発現と比較して、候補分化因子との接触後に増大されていれば、候補分化因子は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞の分化を促進す
ることが可能であるとして同定される。
【0187】
いくつかの実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞の分化を促進することが可能な因子を同定する上述の方法はまた、細胞培養物又は細胞集団におけるHOXA13遺伝子及び/又はHOXC6遺伝子の発現を測定することを包含する。かかる実施形態では、HOXA13及び/又はHOXC6の発現は、細胞を候補分化因子と接触させる前及び接触させた後の両方で測定される。PDX1及びHOXA13の発現が、候補分化因子との接触前のPDX1及びHOXA13発現と比較して、候補分化因子との接触後に増大されていれば、候補分化因子は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞の分化を促進することが可能であるとして同定される。同様に、PDX1及びHOXC6の発現が、候補分化因子との接触前のPDX1及びHOXC6発現と比較して、候補分化因子との接触後に増大されていれば、候補分化因子は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞の分化を促進することが可能であるとして同定される。好ましい実施形態では、候補分化因子は、細胞培養物又は細胞集団の細胞を候補分化因子と接触させる前及び接触させた後の両方で、PDX1、HOXA13及びHOXC6の発現を測定することにより、PDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞の分化を促進することが可能であるとして同定される。好ましい実施形態では、PDX1、HOXA13及び/又はHOXC6の発現は、Q−PCRにより測定される。
【0188】
いくつかの実施形態では、PDX1、HOXA13及びHOXC6の1つ又は複数の発現は、細胞を候補分化因子と接触させる前ではなく、細胞培養物又は細胞集団の細胞を候補分化因子と接触させる時点で、或いは接触させた直後に測定され得ることが理解されよう。かかる実施形態では、細胞を候補分化因子と接触させる時点での、或いは接触させた直後のPDX1、HOXA13及びHOXC6の1つ又は複数の発現は、細胞を候補分化因子と接触させた後の1つ又は複数の時点でのPDX1、HOXA13及びHOXC6の1つ又は複数の発現と比較される。
【0189】
上述の方法のいくつかの実施形態では、細胞を候補分化因子と接触させた後にPDX1発現が測定される1つ又は複数の時点は、約1時間〜約10日の範囲である。例えば、PDX1発現は、細胞を候補分化因子と接触させた約1時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約2時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約4時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約6時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約8時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約10時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約12時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約16時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約24時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約2日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約3日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約4日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約5日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約6日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約7日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約8日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約9日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約10日後に、或いは細胞を候補分化因子と接触させた約10日後より後に測定され得る。
【0190】
本明細書中に記載する方法における使用のための候補分化因子は、ポリペプチド及び小分子のような化合物から選択され得る。例えば、候補ポリペプチドとしては、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、細胞外マトリックスタンパク質及び合成ペプチドが挙げられ得るが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、成長因子は、FGFファミリー、例えばFGF−10に由来する。候補小分子としては、コンビナトリアル化学合成から生成される化合物及び天然産物(例えば、ステロイド、イソプレノイド、テルペノイド、フェニルプロパノイド、アルカロイド及びフラビノイド)が挙げられるが、これらに限定されない。何千もの天然及び合成小分子の種類が利用可能であり、本明細書中に記載する方
法における使用のために意図される小分子は、上記で例示した種類に限定されないことが当業者に理解されよう。通常、小分子は、10,000amu未満の分子量である。好ましい実施形態では、小分子は、レチノイド、例えばRAである。
【0191】
PDX1陽性前腸内胚葉細胞の分化を促進することが可能な因子の同定
本明細書中に記載するスクリーニング方法の他の態様は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞の分化を促進することが可能な1つ又は複数の分化因子を同定する方法に関する。かかる方法では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団が得られ、細胞培養物又は細胞集団におけるマーカーの発現が測定される。マーカーの発現を測定した後、細胞培養物又は細胞集団の細胞を候補分化因子と接触させる。いくつかの実施形態では、マーカーの発現は、細胞を候補分化因子と接触させる時点で、或いは接触させた直後に測定される。続いて、同一マーカーの発現は、細胞を候補分化因子と接触させた後の1つ又は複数の時点で測定される。マーカーの発現が、候補分化因子との接触前のマーカー発現と比較して、候補分化因子との接触後に増大又は減少された場合、候補分化因子は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞の分化を促進することが可能であるとして同定される。好ましい実施形態では、マーカーの発現は、Q−PCRにより測定される。
【0192】
上述した方法のいくつかの実施形態では、細胞を候補分化因子と接触させた後にマーカー発現が測定される1つ又は複数の時点は、約1時間〜約10日の範囲であり得る。例えば、マーカー発現は、細胞を候補分化因子と接触させた約1時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約2時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約4時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約6時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約8時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約10時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約12時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約16時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約24時間後に、細胞を候補分化因子と接触させた約2日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約3日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約4日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約5日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約6日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約7日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約8日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約9日後に、細胞を候補分化因子と接触させた約10日後に、或いは細胞を候補分化因子と接触させた約10日後より後に測定され得る。
【0193】
上述のように、本明細書中に記載する方法における使用のための候補分化因子は、ポリペプチド及び小分子のような化合物から選択され得る。
【0194】
本明細書中に開示する方法それぞれを、PDX1陽性前腸内胚葉細胞に関して記載してきたが、或る特定の実施形態では、これらの方法は、本明細書中に記載されるPDX1陽性前腸/中腸内胚葉細胞及び/又は本明細書中に記載される前腸の後方部分のPDX1陽性内胚葉細胞を含む組成物を産生するのに使用することができることが理解されよう。さらに、本明細書中に開示するPDX1陽性内胚葉細胞型のいずれかを本明細書中に記載するスクリーニング方法に利用することができる。
【0195】
本発明を一般的に記載してきたが、説明の目的のためにのみ本明細書中に提供される特定の実施例を参照することによりさらなる理解が得られるが、この実施例に限定されない。
【実施例】
【0196】
以下の実施例の多くは、多能性ヒト細胞の使用を記載する。多能性ヒト細胞を産生する方法は、当該技術分野で既知であり、多数の科学出版物、例えば米国特許第5,453,357号、第5,670,372号、第5,690,926号、第6,090,622号、第6,200,806号及び第6,251,671号、並びに米国特許出願公開第2004/0229350号に記載されている。
【0197】
[実施例1]
ヒトES細胞
内胚葉発達についてのわれわれの研究のために、多能性であり、そして正常核型を保持しながら培養中に外見上無限に分裂し得るヒト胚性幹細胞を用いた。単離のための免疫学的又は機械的方法を用いて、5日齢胚内部細胞塊からES細胞を得た。特にヒト胚性幹細胞株hESCyt−25を、患者によるインフォームドコンセント後に、in vitro
受精サイクルからの過剰凍結胚から得た。解凍時に、ES培地(DMEM、20%FBS、非必須アミノ酸、β−メルカプトエタノール、ITSサプリメント)中のマウス胚線維芽細胞(MEF)上に孵化胚盤胞をプレート化した。胚が培養皿に接着し、そして約2週間後、非分化hESCの領域を、MEFとともに新たな皿に移した。機械的に切断し、ディスパーゼで手短に消化し、その後、細胞クラスターを機械的に取り出して、洗浄し、再プレート化することにより移動を成し遂げた。誘導以来、hESCyt−25を、100回にわたって逐次継代した。胚体内胚葉の産生のための出発物質として、hESCyt−25ヒト胚性幹細胞株を用いた。
【0198】
幹細胞又は他の多能性細胞は本明細書中に記載される分化手法のための出発物質としても用いられ得る、と当業者により理解される。例えば当該技術分野で既知の方法により単離され得る胚性生殖腺隆起から得られる細胞は、多能性細胞出発物質として用いられ得る。
【0199】
[実施例2]
hESCyt−25特徴づけ
ヒト胚性幹細胞株hESCyt−25は、培養中に18ヶ月にわたって、正常形態学、核型、増殖及び自己再生特性を保持した。この細胞株は、OCT4、SSEA−4及びTRA−1−60抗原(これらはすべて、未分化hESCに特有である)に対する強い免疫反応性を示し、そしてアルカリ性ホスファターゼ活性、並びに他の確立されたhESC株と同一の形態学を示す。さらにヒト幹細胞株hESCyt−25は、懸濁液中で培養される場合、胚様体(EB)も容易に形成する。その多能性性質の実証として、hESCyT−25は、3つの主要胚葉を表わす種々の細胞型に分化する。ZIC1に関するQ−PCR、並びにネスチン及びより成熟したニューロンマーカーに関する免疫細胞化学(ICC)により、外胚葉産生を実証した。β−IIIチューブリンに関する免疫細胞化学染色を、初期ニューロンに特徴的な伸長細胞のクラスター中で観察した。予め、レチノイン酸で懸濁液中のEBを処理して、臓側内胚葉(VE)、胚体外系統への多能性幹細胞の分化を誘導した。処理細胞は、高レベルのα−フェトタンパク質(AFP)及びSOX7(VEの2つのマーカー)を54時間の処理により発現した。単層中で分化された細胞は、免疫細胞化学染色により実証されるように、散在性パッチ中でAFPを発現した。以下で記載するように、hESCyT−25細胞株は、AFP発現の非存在下でのSOX17に関するリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)及び免疫細胞化学により立証されるように、胚体内胚葉も形成し得た。中胚葉への分化を実証するために、分化中のEBを、いくつかの時点でのブラキュリ遺伝子発現に関して分析した。ブラキュリ発現は、実験経過中に漸進的に増大した。上記に鑑みて、三つの胚葉を表わす細胞を形成する能力により示されるように、hESCyT−25株は多能性である。
【0200】
[実施例3]
SOX17抗体の産生
hESC培養物における胚体内胚葉の同定に対する主要な妨害は、適切なツールの欠如である。したがって、本発明者等は、ヒトSOX17タンパク質に対して高められる抗体の産生に着手した。
【0201】
マーカーSOX17は、それが原腸形成中に形成する際に胚体内胚葉全体にわたって発現
し、その発現は、器官形成の開始まで腸管で維持される(しかし、発現のレベルは、A−P軸に沿って変化する)。SOX17はまた、胚体外内胚葉細胞のサブセットでも発現する。このタンパク質の発現はまた、中胚葉又は外胚葉では観察されていない。SOX17は、胚体外系統を排除するためのマーカーと併用される場合、胚体内胚葉系統に適切なマーカーであることが現在発見されている。
【0202】
本明細書中で詳述するように、SOX17抗体は、SOX17陽性胚体内胚葉細胞の産生を目的とした様々な処理及び分化手順の影響を具体的に検査するのに利用された。AFP、SPARC及びトロンボモジュリンに対しての他の抗体との反応性もまた、臓側及び壁側内胚葉(胚体外内胚葉)の産生を除外するのに使用された。
【0203】
SOX17に対する抗体を産生するために、SOX17タンパク質のカルボキシ末端におけるアミノ酸172〜414(配列番号2)に相当するヒトSOX17 cDNA(配列
番号1)の一部(図2)は、抗体産生会社GENOVAC(Freiberg, Germany)にて、そこで開発された手順に従って、ラットにおける遺伝子免疫化に使用した。遺伝子免疫化に関する手段は、米国特許第5,830,876号、同第5,817,637号、同第6,165,993号及び同第6,261,281号、並びに国際特許出願公開第WO00/29442号及び同第WO99/13915号に見出すことができる。
【0204】
遺伝子免疫化に関する他の適切な方法はまた、非特許文献にも記載されている。例えば、Barry他は、Biotechniques 16: 616-620, 1994において遺伝子免疫化によるモノクローナル抗体の産生について記載している。特異的タンパク質に対する抗体を産生するための遺伝子免疫化方法の具体例は、例えば、Costaglia et al., (1998) ヒト甲状腺刺激ホルモ
ン受容体に対する遺伝子免疫化は、甲状腺炎を引き起こし、且つ自然受容体を認識するモノクローナル抗体の産生を可能にする(Genetic immunization against the human thyrotropin receptor causes thyroiditis and allows production of monoclonal antibodies
recognizing the native receptor), J. Immunol. 160: 1458-1465、Kilpatrick et al (1998) 遺伝子銃送達されるDNAベースの免疫化は、Flt−3受容体に対するマウス
モノクローナル抗体の迅速な産生を媒介する(Gene gun delivered DNA-based immunizations mediate rapid production of murine monoclonal antibodies to the Flt-3 receptor), Hybridoma 17: 569-576、Schmolke et al., (1998) DNA免疫化により産生されるE2特異的モノクローナル抗体によるヒト血清におけるG型肝炎ウイルス粒子の同定(Identification of hepatitis G virus particles in human serum by E2-specific monoclonal antibodidesgenerated by DNA immunization), J. Virol. 72: 4541-4545、Krasemann et al., (1999) 異例の核酸ベースの免疫化戦略を用いたタンパク質に対するモノクロ
ーナル抗体の生成(Generation of monoclonal antibodides against proteins with an unconventional nucleic acid-based immunization strategy), J. Biotechnol. 73: 119-129、及びUlivieri et al, (1996) DNA免疫化によるヘリコバクター・ピロリ細胞空胞化毒素の規定部分に対するモノクローナル抗体の生成(Generation of a monoclonal antibody to a defined portion of the Heliobacterpylori vacuolating cytotoxinby DNA immunization), J. Biotechnol. 51: 191-194に見出すことができる。
【0205】
SOX7及びSOX18は、図3に示される相関系統樹に表されるようにSOX17に対する最も密接なSoxファミリー類縁体である。本発明者等は、遺伝子免疫化により産生されるSOX17抗体がSOX17に特異的であり、またその最も密接なファミリー成員と反応しないことを実証するために、陰性対照としてヒトSOX7ポリペプチドを用いた。特に、SOX7及び他のタンパク質は、ヒト線維芽細胞において発現させ、続いてウェスタンブロット及びICCによりSOX17抗体との交差反応性に関して分析した。例えば、SOX17、SOX7及びEGFP発現ベクターの産生、ヒト線維芽細胞へのそれらのトランスフェクション、並びにウェスタンブロットによる分析に関して以下の方法を利
用した。SOX17、SOX7及びEGFPの産生に用いられる発現ベクターは、それぞれpCMV6(OriGeneTechnologies, Inc., Rockville, MD)、pCMV−SPORT6(Invitrogen, Carlsbad, CA)及びpEGFP−N1(Clonetech, Palo Alto, CA)であった。タンパク質産生に関して、テロメラーゼ不死化MDXヒト線維芽細胞を、リポフェクタミン2000(Invitrogen Carlsbad, CA)の存在下で、スーパーコイルDNAで一過的にト
ランスフェクトした。総細胞溶解産物は、トランスフェクションの36時間後に、プロテアーゼ阻害剤のカクテル(Roche Diagnostics Corporation, Indianapolis, IN)を含有す
る50mM TRIS−HCl(pH8)、150mM NaCl、0.1% SDS、0
.5%デオキシコール酸中に収集した。NuPAGE(4〜12%ポリアクリルアミド勾配、Invitrogen, Carlsbad, CA)上でのSDS−PAGEにより分離され、且つPDVF
膜(Hercules, CA)上へのエレクトロブロッティングにより移入された細胞タンパク質100μgのウェスタンブロット分析は、10mM TRIS−HCl(pH8)、150m
M NaCl、10%BSA、0.05%Tween−20(Sigma, St. Louis, MO)中の
ラットSOX17抗血清の1/1000希釈で、アルカリホスファターゼ結合抗ラットIgG(Jackson ImmunoResearchLaboratories, West Grove, PA)によりプロービングして、ベクターブラックアルカリホスファターゼ染色(Vector Laboratories, Burlingame, CA)
により明らかにした。使用される標準サイズのタンパク質は、広範囲の色彩マーカー(Sigma, St. Louis, MO)であった。
【0206】
図4では、SOX17、SOX7又はEGFP cDNAで一過的にトランスフェクトさ
れたヒト線維芽細胞から作製されるタンパク質抽出物を、SOX17抗体によりウェスタンブロットでプロービングした。hSOX17トランスフェクト細胞からのタンパク質抽出物のみが、ヒトSOX17タンパク質の予測された46Kda分子量に近い約51Kdaのバンドを生じた。ヒトSOX7又はEGFPトランスフェクト細胞のいずれかから作製される抽出物に対してSOX17抗体の反応性は見られなかった。さらに、SOX17抗体は、hSOX発現構築でトランスフェクトしたヒト線維芽細胞の核を明らかに標識したが、EGFPのみでトランスフェクトした細胞は標識しなかった。したがって、SOX17抗体は、ICCによる特異性を示す。
【0207】
[実施例4]
胚体内胚葉のマーカーとしてのSOX17抗体の確認
部分的に分化させたhESCをSOX17及びAFP抗体で同時標識して、SOX17抗体がヒトSOX17タンパク質に特異的であること、さらに胚体内胚葉をマークすることを実証した。SOX17、SOX7(これは、SOX遺伝子ファミリーサブグループFの密接に関連する成員である(図3))及びAFPはそれぞれ、臓側内胚葉で発現されることが実証されている。しかしながら、AFP及びSOX7は、ICCにより検出可能なレベルでは、胚体内胚葉細胞では発現されず、したがってそれらは、真正の胚体内胚葉細胞に関する陰性マーカーとして用いることができる。SOX17抗体は、細胞の別個の分類として存在するか、或いはAFP陽性細胞と混合される細胞の集団を標識することが示された。特に、図5Aは、少数のSOX17細胞がAFPで同時標識されることを示すが、SOX17+細胞の区域においてAFP+細胞がほとんど存在しないか、或いは全く存在しない領域も見られた(図5B)。同様に、壁側内胚葉は、SOX17を発現することが報告されているため、壁側マーカーSPARC及び/又はトロンボモジュリン(TM)と共にSOX17による抗体同時標識を使用して、壁側内胚葉であるSOX17+細胞を同定
することができる。図6A図6Cに示されるように、トロンボモジュリン及びSOX17同時標識された壁側内胚葉細胞は、hES細胞の無作為分化により産生された。
【0208】
上記細胞標識実験を考慮して、胚体内胚葉細胞の独自性は、マーカープロフィールSOX17hi/AFPlo/[TMlo又はSPARClo]により確立され得る。換言すると、SOX17マーカーの発現は、臓側内胚葉の特徴であるAFPマーカー、及び壁側内胚葉の特
徴であるTM又はSPARCマーカーの発現よりも多い。したがって、SOX17に関して陽性であるが、AFPに対して陰性であり、且つTM又はSPARCに対して陰性である細胞は、胚体内胚葉である。
【0209】
胚体内胚葉の予測となるようなSOX17hi/AFPlo/TMlo/SPARCloマーカープロフィールの特異性のさらなる徴候として、SOX17及びAFP遺伝子発現が、抗体標識細胞の相対数と定量的に比較された。図7Aに示されるように、レチノイン酸(臓側内胚葉誘導物質)又はアクチビンA(胚体内胚葉誘導物質)で処理したhESCは、SOX17 mRNA発現のレベルにおいて10倍の差をもたらした。この結果は、SOX1
7抗体標識細胞数における10倍の差に反映している(図7B)。さらに、図8Aに示されるように、hESCのアクチビンA処理は、処理無しと比較して6.8倍分AFP遺伝子発現を抑制した。これは、図8B及び図8Cに示されるように、これらの培養物におけるAFP標識細胞の数の劇的な減少により可視的に反映された。これをさらに定量化するために、AFP遺伝子発現におけるこのおよそ7倍の減少は、フローサイトメトリーにより測定される場合のAFP抗体標識細胞数における同様の7倍の減少の結果であることが実証された(図9A及び図9B)。この結果は、Q−PCRにより観察されるような遺伝子発現の定量的変化は、抗体染色により観察されるような細胞型特定化における変化を反映することを示すという点で極めて有意である。
【0210】
ノーダルファミリー成員(ノーダル、アクチビンA及びアクチビンB−NAA)の存在下でのhESCのインキュベーションは、経時的にSOX17抗体標識細胞の有意な増大をもたらした。連続的なアクチビン処理の5日目までには、50%を超える細胞がSOX17で標識された(図10A図10F)。アクチビン処理の5日後にはAFPで標識された細胞はほとんど存在しなかったか、或いは全く存在しなかった。
【0211】
要約すると、ヒトSOX17タンパク質のカルボキシ末端の242個のアミノ酸に対して産生される抗体は、ウェスタンブロットでヒトSOX17タンパク質を同定したが、その最も密接なSoxファミリー類縁体であるSOX7を認識しなかった。SOX17抗体は、主としてSOX17+/AFPlo/-である分化hESC培養物における細胞のサブセッ
ト(95%を超える標識細胞)並びにSOX17及びAFP(臓側内胚葉)に関して同時標識する少量パーセント(5%未満)の細胞を認識した。アクチビンによるhESC培養物の処理は、SOX17遺伝子発現並びにSOX17標識細胞の顕著な増大をもたらし、AFP mRNAの発現及びAFP抗体で標識した細胞の数を劇的に抑制した。
【0212】
[実施例5]
Q−PCR遺伝子発現アッセイ
以下の実験では、リアルタイム定量的RT−PCR(Q−PCR)が、hESC分化に対する様々な処理の影響をスクリーニングするのに使用される主要なアッセイであった。特に、遺伝子発現のリアルタイム測定は、Q−PCRにより多数の時点で多数のマーカー遺伝子に関して分析した。細胞集団の全体的な動態のより良好な理解を得るために、所望の細胞型並びに望ましくない細胞型のマーカー遺伝子の特徴を評価した。Q−PCR分析の長所として、ゲノム配列が容易に入手可能である場合、その極度の感受性及び必要なマーカーを開発することが比較的容易であることが挙げられる。さらに、Q−PCRの極めて高い感受性により、相当大きな集団内での比較的少数の細胞からの遺伝子発現の検出が可能となる。さらに、非常に低レベルの遺伝子発現を検出する能力は、集団内の「分化の偏り」に関する指標を提供する。これらの細胞の表現型の顕在的な分化に先立つ特定の分化経路に対する偏りは、免疫細胞化学的技法を使用して認知することができない。このため、Q−PCRは、分化処理の成功をスクリーニングするための少なくとも補完的であり且つ免疫組織化学的技法よりも潜在的に相当優れている分析の方法を提供する。さらに、Q−PCRは、半ハイスループットスケール(semi-high throughput scale)の分析にて定量
的方式で分化プロトコルの成功を評価するメカニズムを提供する。
【0213】
本実施例で採用するアプローチは、Rotor Gene 3000機器(Corbett Research)上でのSYBR Green化学及び2段階RT−PCR方式を使用して相対定量を実
施することであった。かかるアプローチにより、今後のさらなるマーカー遺伝子の分析用のcDNAサンプルの積上げが可能となり、したがって、サンプル間の逆転写効率における可変性を回避した。
【0214】
プライマーは、これが混入ゲノムDNAからの増幅を排除すると実験的に確定されているため、エクソン間境界にわたって存在するか、又は可能であれば少なくとも800bpの長さのイントロンにまたがるように設計された。イントロンを含有しないマーカー遺伝子を使用したか、又はマーカー遺伝子がシュードジーンを保有した場合、RNAサンプルのDNアーゼI処理が実施された。
【0215】
本発明者等は、細胞サンプルにおける遺伝子発現の広範囲のプロファイル記述を提供するために、日常的にQ−PCRを使用して、標的及び非標的細胞型の多数のマーカーの遺伝子発現を測定した。hESC分化の初期(具体的には、外胚葉、中胚葉、胚体内胚葉及び胚体外内胚葉)に関連し、且つ確証されたプライマーセットが利用可能であるマーカーを以下の表1に提供する。これらのプライマーセットのヒト特異性もまた実証されている。hESCが多くの場合マウスフィーダー層上で成長するため、このことは重要な事実である。最も典型的には、三重反復サンプルが各条件に関して採取され、各定量的測定に関連した生物学的可変性を評価するために二重反復で個別に分析された。
【0216】
PCR鋳型を生成するために、総RNAは、RNeasy(Qiagen)を使用して単離されて、RiboGreen(Molecular Probes)を用いて定量化された。総RNA 350〜5
00ngからの逆転写は、オリゴdT及び無作為なプライマーのミックスを含有するiScript逆転写酵素キット(BioRad)を使用して実施した。続いて、反応物それぞれ20μLを総容量100μLにまで希釈して、3μlをそれぞれ400nM順方向プライマー及び逆方向プライマー並びに2×SYBR Greenマスターミックス(Qiagen) 5μLを含有するQ−PCR反応物10μLにおいて使用した。2段階サイクリングパラメータは、85〜94℃(具体的には各プライマー組に関するアンプリコンの融点に従って選択される)で5秒の変性、続く60℃での45秒のアニール/伸長を用いて使用された。各伸長段階の最後の15秒の間に、蛍光データを収集した。3点の10倍希釈シリーズを使用して、各実施に関する標準曲線を作成して、サイクル閾値(Ct)をこの標準曲線に基づいて定量値へ変換した。各サンプルに関する定量値は、ハウスキーピング遺伝子性能に対して標準化され、続いて平均値及び標準偏差は、三重反復サンプルに関して算出された。PCRサイクリングの終わりには、融解曲線分析を実施して、反応物の特異性を確かめた。単一の特異的産物は、そのPCRアンプリコンに適したTmでの単一ピークにより示
された。さらに、逆転写酵素無しで実施される反応は、陰性対照として役立ち、増幅しない。
【0217】
Q−PCR方法論を確立する際の第1の工程は、実験系における適切なハウスキーピング遺伝子(HG)の検証であった。HGは、RNAインプット、RNA完全性及びRT効率に関してサンプル全域で標準化するのに使用されるため、標準化が意味のあるものであるためには、HGがすべてのサンプル型において経時的に一定レベルの発現を示すことに重要性があった。本発明者等は、分化hESCにおけるサイクロフィリンG (cyclophilin G)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(hypoxanthine phosphoribosyl
transferase 1)(HPRT)、β−2−ミクログロブリン(beta-2-microglobulin)、ヒ
ドロキシメチルビランシンターゼ(hydroxymethylbiane synthase)(HMBS)、TAT
A結合タンパク質(TATA-binding protein)(TBP)及びグルクロニダーゼβ(glucoroni
dase beta)(GUS)の発現レベルを測定した。本発明者等の結果により、β−2−ミクログロブリン(bata-2-microglobulin)発現レベルが、分化の間に増大されることが示され、したがって本発明者等は、標準化に関してこの遺伝子の使用を排除した。他の遺伝子は、経時的に、並びに複数の処理にわたって不変的な発現レベルを示した。本発明者等は日常的に、サイクロフィリンG及びGUSの両方を使用して、すべてのサンプルに関して標準化因子を算出した。多数のHGの使用は、同時に標準化プロセスに固有の可変性を低減し、相対遺伝子発現値の信頼性を増大させる。
【0218】
標準化において使用するための遺伝子を獲得した後、続いてQ−PCRを利用して、種々の実験処理を施したサンプルにわたる多くのマーカー遺伝子の相対遺伝子発現レベルを測定した。用いたマーカー遺伝子は、それらが初期胚葉の代表的な特異的集団において富化を示すことから選択されており、特に胚体内胚葉及び胚体外内胚葉で差次的に発現される遺伝子の組に焦点を当てている。これらの遺伝子並びにそれらの関連富化プロファイルを表1に強調している。
【0219】

【表1】
【0220】
多くの遺伝子が、1つよりも多い胚葉で発現されるため、同じ実験内で多くの遺伝子の発現レベルを定量的に比較することが有用である。SOX17は、胚体内胚葉で、またより程度は低いが、臓側及び壁側内胚葉で発現される。SOX7及びAFPは、この初期発達時点で、臓側内胚葉で発現される。SPARC及びTMは、壁側内胚葉で発現され、ブラキュリは、初期中胚葉で発現される。
【0221】
胚体内胚葉細胞は、高レベルのSOX17 mRNA並びに低レベルのAFP及びSOX
7(臓側内胚葉)、SPARC(壁側内胚葉)及びブラキュリ(中胚葉)を発現すると予測された。さらに、ZIC1は、初期外胚葉の誘導をさらに除外するのに本明細書で使用された。最後に、GATA4及びHNF3bは、胚体及び胚体外内胚葉の両方で発現され、したがって、胚体内胚葉におけるSOX17発現と相関する(表1)。表1に記載するマーカー遺伝子が、様々なサンプル間でどのように互いに相関するかを実証し、したがって、胚体内胚葉及び胚体外内胚葉への、並びに中胚葉及び神経細胞型への分化の特異的パターンを強調する代表的な実験を図11図14に示している。
【0222】
上記データを考慮すると、アクチビン用量の増大が、SOX17遺伝子発現の増大をもたらしたことが明らかである。さらに、このSOX17発現は、胚体外内胚葉とは対照的に主として胚体内胚葉を表した。この結論は、SOX17遺伝子発現が、AFP、SOX7及びSPARC遺伝子発現と逆相関したという観察から生じる。
【0223】
[実施例6]
胚体内胚葉へのヒトES細胞の指示された分化
ヒトES細胞培養物は、それらの未分化状態を活性で維持しない条件下で培養される場合に、無作為に分化する。この不均一分化は、壁側及び臓側内胚葉の両方から構成される胚体外内胚葉細胞(AFP、SPARC及びSOX7発現)並びにZIC1及びネスチン(外胚葉)及びブラキュリ(中胚葉)発現によりマークされるような初期外胚葉誘導体及び中胚葉誘導体の産生をもたらす。胚体内胚葉細胞出現は、ES細胞培養物における特異的抗体マーカーの欠如に関して実験又は特定されていない。それ自体で、またデフォルトで、ES細胞培養物における初期胚体内胚葉産生は、十分研究されていない。胚体内胚葉細胞に関する満足のいく抗体試薬が入手不可能であったため、特徴づけの大部分が、外胚葉及び胚体外内胚葉に焦点を当ててきた。概して、無作為に分化されたES細胞培養物においてSOX17hi胚体内胚葉細胞と比較して、有意な多数の胚体外細胞型及び神経外胚葉細胞型が存在する。
【0224】
未分化hESCコロニーは線維芽細胞フィーダーの床上で拡大するため、コロニーの縁にある細胞は、コロニーの内部に存在する細胞とは異なった別の形態を呈する。これらの外側の縁細胞の多くが、それらのあまり一様ではない、より大きな細胞体の形態により、またより高いレベルのOCT4の発現により識別され得る。ES細胞が分化し始めると、ES細胞は、未分化ES細胞に関してのOCT4発現のレベルを上方又は下方へ変更させることが記載されている。未分化閾値を上回るか、又は下回るOCT4レベルの変更は、多能性状態から離れた分化の初期状態の表れであり得る。
【0225】
未分化コロニーがSOX17免疫細胞化学により検査される場合、時折SOX17陽性細胞の小さな10〜15個の細胞クラスターが、外縁上の無作為な位置で、また未分化hESCコロニー間の接合部で検出された。上述したように、外側コロニー縁のこれらの散在ポケットは、コロニーのサイズが拡大し、且つより混雑してくるため、古典的なES細胞形態から離れて分化するための第1の細胞のいくつかであるようであった。より若くてより小さな完全未分化コロニー(1mm未満、4〜5日齢)は、コロニー内で又はコロニーの縁でSOX17陽性細胞を示さなかったのに対して、より時間の経過したより大きなコロニー(直径1〜2mm、5日齢超)は、いくつかのコロニーの外縁で、或いは上述の古典的なhESC形態を示さない縁に対して内部の領域で、SOX17陽性AFP陰性細胞の散発的な単離パッチを有していた。これが有効なSOX17抗体の第1の発達であると考えると、かかる初期「未分化」ES細胞培養物で発達する胚体内胚葉細胞は、これまでに実証されていない。
【0226】
Q−PCRによるSOX17及びSPARC遺伝子発現レベルの逆相関に基づくと、これらのSOX17陽性AFP陰性細胞の大部分が、抗体同時標識による壁側内胚葉マーカーに関して陰性であろう。これは、図15A及び図15Bに示されるように、TM発現壁側内胚葉細胞に関して具体的に実証された。ノーダル因子であるアクチビンA及びBへの暴露は、TM発現の強度及びTM陽性細胞の数の劇的な減少をもたらした。アクチビン処理培養物に関するSOX17、AFP及びTM抗体を使用した三重標識により、AFP及びTMに関しても陰性であるSOX17陽性細胞のクラスターが観察された(図16A図16D)。これらは、分化hESC培養物におけるSOX17陽性胚体内胚葉細胞の第1の細胞の実証である(図16A図16D及び図17)。
【0227】
上述のSOX17抗体及びQ−PCRツールを用いて、本発明者等は、SOX17hi/AFPlo/SPARC/TMlo胚体内胚葉細胞となるようにhESCを効率的にプログラミングすることが可能な多数の手順を探究してきた。本発明者等は、SOX17遺伝子発現に関してQ−PCRにより集団レベルで、及びSOX17タンパク質の抗体標識により個々の細胞のレベルで測定される場合、これらの細胞の数及び増殖能力を増大させることを目的とした様々な分化プロトコルを適用した。
【0228】
本発明者等はまず、in vitro細胞培養物において胚性幹細胞から胚体内胚葉細胞
を創出するのに使用するためのノーダル/アクチビン/BMPのようなTGFβファミリー成長因子の影響を分析及び記載した。通常の実験では、アクチビンA、アクチビンB、BMP又はこれらの成長因子の組合せを未分化ヒト幹細胞系hESCyt−25の培養物へ添加して、分化プロセスを開始させた。
【0229】
図19に示されるように、100ng/mlでのアクチビンAの添加は、分化の4日目までに、未分化hESCに対して、SOX17遺伝子発現の19倍の誘導をもたらした。アクチビンAと共に、アクチビンファミリーの第2の成員であるアクチビンBを添加することにより、併用アクチビン処理の4日目までに、未分化hESCを上回る37倍の誘導がもたらされた。最後に、アクチビンA及びアクチビンBと共に、ノーダル/アクチビン由来のTGFβファミリーの第3の成員、並びにBMPサブグループであるBMP4を添加することにより、未分化hESCの誘導の57倍に誘導を増大させた(図19)。アクチビン及びBMPによるSOX17誘導を、因子無しの培地対照と比較した場合、5倍、10倍及び15倍の誘導が4日目の時点で生じた。アクチビンA、B及びBMPによる三重処理の5日目までに、SOX17は、hESCの70倍より高く誘導された。これらのデータは、ノーダル/アクチビン TGFβファミリー成員のより高い用量及びより長い処
理時間がSOX17の増大された発現をもたらすことを示している。
【0230】
ノーダル並びに関連分子アクチビンA、B及びBMPは、in vivo又はin vitroでSOX17の発現及び胚体内胚葉形成を促進する。さらに、BMPの添加は、おそらくノーダル補助受容体であるCriptoのさらなる誘導により、改善されたSOX17の誘導をもたらす。
【0231】
本発明者等は、BMP4と一緒のアクチビンA及びBの組合せが、SOX17誘導、したがって胚体内胚葉形成の相加的増大をもたらすことを実証している。アクチビンA及びBと組み合わせた長期間(4日を超える)のBMP4添加は、壁側及び臓側内胚葉並びに胚体内胚葉においてSOX17を誘導し得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、添加の4日以内に処理からBMP4を除去することは有益である。
【0232】
個々の細胞レベルでのTGFβ因子処理の影響を測定するために、経時的なTGFβ添加を、SOX17抗体標識を使用して検査した。すでに図10A図10Fで示したように、経時的にSOX17標識細胞の相対数の劇的な増大が見られた。相対定量化(図20)は、SOX17標識細胞の20倍を超える増大を示す。この結果は、細胞の数並びにSOX17遺伝子発現レベルの両方が、TGFβ因子暴露の時間とともに増大していることを示す。図21に示されるように、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB及びBMP4への暴露の4日後に、SOX17誘導のレベルは、未分化hESCに対して168倍に到達した。図22は、SOX17陽性細胞の相対数もまた、用量応答性であったことを示す。100ng/ml又はそれ以上のアクチビンA用量は、SOX17遺伝子発現及び細胞数を強力に誘導することが可能であった。
【0233】
TGFβファミリー成員のほかに、Wntファミリーの分子が、胚体内胚葉の特定化及び/又は維持において役割を果たし得る。Wnt分子の使用もまた、アクチビン単独を上回
るアクチビン+Wnt3aで処理したサンプルにおける増大したSOX17遺伝子発現により示されるように、胚体内胚葉へのhESCの分化に有益であった(図23)。
【0234】
上述の実験はすべて、添加因子を伴って10%血清を含有する組織培養培地を使用して実施した。驚くべきことに、図24A図24Cに示されるように、血清の濃度が、添加アクチビンの存在下でSOX17発現のレベルに対して影響することを本発明者等は発見した。血清レベルが10%から2%へ低減すると、SOX17発現は、アクチビンA及びBの存在下で3倍になった。
【0235】
最後に、本発明者等は、アクチビン誘導SOX17+細胞が、図25A図25Dに表さ
れるように培養物中で分裂することを実証した。矢印は、PCNA/DAPI標識有糸分裂プレートパターン及び位相差有糸分裂プロフィールにより明らかなように有糸分裂中であるSOX17/PCNA/DAPIで標識された細胞を示す。
【0236】
[実施例7]
ケモカイン受容体4(CXCR4)発現は、胚体内胚葉に関するマーカーと相関し、中胚葉、外胚葉又は臓側内胚葉に関するマーカーとは相関しない
上述したように、hESCは、TGFβファミリー、より具体的にはアクチビン/ノーダルサブファミリーのサイトカインの適用により、胚体内胚葉の胚葉へ分化するように誘導することができる。さらに、本発明者等は、分化培養培地におけるウシ胎児血清(FBS)の比率が、hESCからの胚体内胚葉分化の効率に影響を及ぼすことを示している。この影響は、培地においてアクチビンAの所定濃度で、より高いレベルのFBSが胚体内胚葉への最大限の分化を阻害するようなものである。外因性アクチビンAの非存在下では、胚体内胚葉系統へのhESCの分化は、非常に非効率であり、FBS濃度は、hESCの分化プロセスに対して相当穏やかに影響する。
【0237】
これらの実験では、0.5%、2.0%又は10%FBSを補充し、且つ100ng/mlのアクチビンAを伴うか、又は伴わないRPMI培地(Invitrogen, Carlsbad, CA;cat#61870−036)中で6日間成長させることにより、hESCを分化させた。さらに、分化の最初の3日間にわたる0.5%〜2.0%に及ぶFBSのグラジエントもまた、100ng/mlのアクチビンAと併用した。6日後に、反復サンプルを各培養条件から収集して、リアルタイム定量的PCRにより相対遺伝子発現に関して分析した。残存細胞は、SOX17タンパク質の免疫蛍光検出用に固定した。
【0238】
CXCR4の発現レベルは、使用した7つの培養条件にわたって劇的に変化した(図26)。概して、CXCR4発現は、アクチビンA処理培養物(A100)では高く、外因性アクチビンAを施さない培養物(NF)では低かった。さらに、A100処理培養物の中でも、CXCR4発現は、FBS濃度が最も低かった場合に最も高かった。相対発現が、アクチビンAを施さない条件(NF)により一致するように、10%FBS条件におけるCXCR4レベルの顕著な低減が見られた。
【0239】
上述したように、SOX17、GSC、MIXL1及びHNF3β遺伝子の発現は、胚体内胚葉としての細胞の特性化と一致する。7つの分化条件に関するこれらの4つの遺伝子の相対発現は、CXCR4の相対発現を反映する(図27A図27D)。このことは、CXCR4もまた胚体内胚葉のマーカーであることを実証する。
【0240】
外胚葉及び中胚葉系統は、各種マーカーのそれらの発現により胚体内胚葉と識別することができる。初期中胚葉は、遺伝子ブラキュリ及びMOX1を発現する一方で、新生神経外胚葉は、SOX1及びZIC1を発現する。図28A図28Dは、外因性アクチビンAを施さない培養物が、中胚葉及び外胚葉遺伝子発現に関して優先的に富化されたこと、及
びアクチビンA処理培養物の中でも、10%FBS条件がまた、中胚葉及び外胚葉マーカー発現の増大レベルを有したことを実証している。発現のこれらのパターンはCXCR4のパターンと反比例し、CXCR4が、この発達期間にhESCに由来する中胚葉又は外胚葉中ではそれほど高度に発現されないことを示した。
【0241】
哺乳類発達中の初期に、胚体外系統への分化もまた起こる。ここでは、SOX17を包含する胚体内胚葉と共通して多くの遺伝子の発現を共有する臓側内胚葉の分化が特に関連している。胚体内胚葉を胚体外臓側内胚葉と識別するためには、これらの2つの間を識別できるマーカーを検査するべきである。SOX7は、臓側内胚葉では発現されるが、胚体内胚葉系統では発現されないマーカーを表す。したがって、SOX7発現の非存在下での強健なSOX17遺伝子発現を示す培養条件は、胚体内胚葉を含有し、臓側内胚葉を含有しない可能性が高い。SOX7が、アクチビンAを施さない培養において高度に発現され、SOX7はまた、FBSが10%で包含される場合に、アクチビンAの存在下でさえ増大された発現を示したことが図28Eに示されている。このパターンは、CXCR4発現パターンの逆であり、CXCR4が、臓側内胚葉ではあまり高度に発現されないことを示唆する。
【0242】
上述の分化条件それぞれに存在するSOX17免疫反応性(SOX17+)細胞の相対数
もまた測定した。hESCは、高用量アクチビンA及び低FBS濃度(0.5%〜2.0%)の存在下で分化させた場合、SOX17+細胞は、培養物全体にわたって遍在的に分
布した。高用量アクチビンAを使用したが、FBSは10%(v/v)で包含された場合、SOX17+細胞は、相当低い頻度で出現し、培養物全体にわたって均一に分布される
のではなく、常に単離クラスターに出現した(図29A及び図29C、並びに図29B及び図29E)。外因性アクチビンAが使用されなかった場合に、SOX17+細胞のさら
なる減少が観察された。これらの条件下では、SOX17+細胞はまたクラスターに出現
し、これらのクラスターは、高アクチビンA低FBS処理で見出されるものよりも小さく、且つ相当稀であった(図29C及び図29F)。これらの結果は、CXCR4発現パターンが、各条件下で胚体内胚葉遺伝子発現に対応するだけでなく、胚体内胚葉細胞の数にも対応することを実証している。
【0243】
[実施例8]
胚体内胚葉に関して富化する分化条件は、CXCR4陽性細胞の比率を増大させる
アクチビンAの用量はまた、胚体内胚葉がhESCから得られ得る効率に影響を及ぼす。この実施例は、アクチビンAの用量を増大させることにより培養物におけるCXCR4+
細胞の比率が増大することを実証する。
【0244】
hESCは、0.5%〜2%FBS(分化の最初の3日にわたって0.5%から1.0%、そして2.0%へ増大される)及び0、10又は100ng/mlのアクチビンAを補充したRPMI培地中で分化させた。分化の7日後に、2%FBS及び2mM(EDTA)を含有するCa2+/Mg2+を伴わないPBS中で、室温で5分間、細胞を解離させた。細胞は、35μmナイロンフィルタに通して濾過して、計数して、ペレット化した。ペレットは、少容量の50%ヒト血清/50%正常ロバ血清中に再懸濁させて、氷上で2分間インキュベートして、非特異的抗体結合部位をブロックした。これに、50μl(およそ105個の細胞を含有する)当たりマウス抗CXCR4抗体(Abcam、cat# ab10
403−100)1μlを添加して、氷上で45分間ラベリングした。細胞は、2%ヒト血清を含有するPBS(緩衝液)5mlを添加することにより洗浄して、ペレット化した。緩衝液5mlによる第2の洗浄を完了させた後、細胞は、105個の細胞当たり緩衝液
50μl中に再懸濁させた。二次抗体(FITC結合ロバ抗マウス、Jackson ImmunoResearch、cat# 715−096−151)を最終濃度5μg/mlで添加して、30分
間標識させた後、上述のように緩衝液中で2回洗浄を行った。細胞は、緩衝液中に5×1
06個の細胞/mlで再懸濁させて、フローサイトメトリーの中心的な施設(The Scripps Research Institute)にてスタッフによりFACS Vantage(Beckton Dicklenson)を使用して分析及び選別した。細胞は、これに続くリアルタイム定量的PCRによる遺伝子発現分析用の総RNAの単離のために、RLT溶解緩衝液(Qiagen)へ直接収集した。
【0245】
フローサイトメトリーにより測定される場合のCXCR4+細胞の数は、アクチビンAの
容量が分化培養培地中で増大されると、劇的に増大することが観察された(図30A図30C)。CXCR4+細胞は、R4ゲート内に納まり、このゲートは、事象の0.2%
がR4ゲートに位置される二次抗体のみの対照を使用して設定された。CXCR4+細胞
の劇的に増大する数は、アクチビンA用量が増大される場合に、胚体内胚葉遺伝子発現における強健な増大と相関する(図31A図31D)。
【0246】
[実施例9]
CXCR4陽性細胞の単離は、胚体内胚葉遺伝子発現に関して富化し、また中胚葉、外胚葉及び臓側内胚葉のマーカーを発現する細胞を激減させる
上記実施例8で同定されるCXCR4+及びCXCR4-細胞を収集して、相対遺伝子発現に関して分析し、母集団の遺伝子発現を同時に測定した。
【0247】
CXCR4遺伝子発現の相対レベルは、アクチビンAの用量の増大に伴って劇的に増大した(図32)。これは、CXCR4+細胞のアクチビンA用量依存的増大と極めて強く相
関した(図30A図30C)。また、各集団からのCXCR4+細胞の単離は、この集
団におけるほぼすべてのCXCR4遺伝子発現を占めたことも明らかである。これは、これらの細胞を収集するためのFACS方法の効率を実証している。
【0248】
遺伝子発現分析により、CXCR4+細胞は、CXCR4遺伝子発現の大部分を含有する
だけでなく、CXCR4+細胞はまた、胚体内胚葉の他のマーカーに関する遺伝子発現も
含有することが明らかとなった。図31A図31Dに示されるように、CXCR4+細
胞はさらに、SOX17、GSC、HNF3B及びMIXL1に関して母A100集団を上回って富化した。さらに、CXCR4-分画は、これらの胚体内胚葉マーカーに関して
非常に少ない遺伝子発現を含有した。さらに、CXCR4+及びCXCR4-集団は、中胚葉、外胚葉及び胚体外内胚葉のマーカーに関して逆パターンの遺伝子発現を示した。図33A図33Dは、CXCR4+細胞が、A100母集団に対してブラキュリ、MOX1
、ZIC1及びSOX7の遺伝子発現に関して激減したことを示す。このA100母集団は、低用量条件又はアクチビンA無しの条件に対して、これらのマーカーの発現がすでに低かった。これらの結果は、高アクチビンAの存在下で分化されるhESCからのCXCR4+細胞の単離は、胚体内胚葉に関して高度に富化され、且つ実質的に純粋な胚体内胚
葉である集団を生じることを示す。
【0249】
[実施例10]
CXCR4を使用した細胞集団における胚体内胚葉細胞の定量化
本明細書中ですでに確定されるような、及び2003年12月23日に出願された「胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)」と題する米国仮特許出願第60/532,004号で測
定されるような細胞培養物又は細胞集団中に存在する胚体内胚葉細胞の比率の定量化を確認するために、CXCR4及び胚体内胚葉の他のマーカーを発現する細胞をFACSにより分析した。
【0250】
上記実施例に記載されるような方法を使用して、hESCを分化させて、胚体内胚葉を産生した。特に、分化細胞培養物における収率及び純度を増大させるために、培地の血清濃度を以下の通りに制御した:1日目には0.2%FBS、2日目には1.0%FBS及び3〜6日目には2.0%FBS。分化培養物は、3つの細胞表面エピトープであるE−カ
ドヘリン、CXCR4及びトロンボモジュリンを使用して、FACSにより選別した。続いて、選別した細胞集団をQ−PCRにより分析して、胚体及び胚体外内胚葉並びに他の細胞型に関するマーカーの相対発現レベルを測定した。最適に分化させた培地から採取されるCXCR4選別した細胞は、98%を超える純度の胚体内胚葉細胞の単離をもたらした。
【0251】
表2は、本明細書中に記載する方法を使用してhESCから分化させた胚体内胚葉培養物に関するマーカー分析の結果を示す。
【0252】
【表2】
【0253】
特に、表2は、CXCR4及びSOX17陽性細胞(内胚葉)が細胞培養物における細胞の70〜80%を構成したことを示す。これらのSOX17発現細胞のうち、2%未満がTM(壁側内胚葉)を発現し、1%未満がAFP(臓側内胚葉)を発現した。TM陽性細胞及びAFP陽性細胞の比率(組み合わせた壁側内胚葉及び臓側内胚葉、総計3%)をSOX17/CXCR4陽性細胞の比率から差し引きした後、細胞培養物の約67%〜約77%が胚体内胚葉であったことが観察され得る。およそ10%の細胞が、hESCに関するマーカーであるE−カドヘリン(ECAD)に関して陽性であり、細胞の約10〜20%が他の細胞型であった。
【0254】
FACS分離前に得られる分化細胞培養物における胚体内胚葉の純度は、5〜6日の分化手順全体にわたって0.5%以下でFBS濃度を維持することにより、上述の低血清手順と比較して改善させることができることを本発明者等は発見している。しかしながら、5〜6日の分化手順全体にわたって0.5%以下で細胞培養物を維持することはまた、産生される総胚体内胚葉細胞の数の低減をもたらす。
【0255】
本明細書中に記載する方法により産生される胚体内胚葉細胞は、それほどの分化を伴わずに50日よりも長い間、アクチビンの存在下で培養において維持及び拡大されている。かかる場合では、SOX17、CXCR4、MIXL1、GATA4、HNF3β発現は、培養期間にわたって維持される。さらに、TM、SPARC、OCT4、AFP、SOX7、ZIC1及びBRACHは、これらの培養物では検出されなかった。かかる細胞は、それほどの分化を伴わずに50日よりも実質的に長い間、培養において維持及び拡大させることができる可能性が高い。
【0256】
[実施例11]
胚体内胚葉細胞のさらなるマーカー
以下の実験では、精製された胚体内胚葉及びヒト胚性幹細胞集団からRNAを単離した。続いて、遺伝子発現は、各精製された集団からのRNAの遺伝子チップ分析により分析した。Q−PCRも実施して、胚体内胚葉に関するマーカーとして、胚体内胚葉では発現さ
れるが、胚性幹細胞では発現されない遺伝子の潜在性をさらに研究した。
【0257】
ヒト胚性幹細胞(hESC)は、20%ノックアウト血清代替物、4ng/mlの組換えヒト塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、0.1mM2−メルカプトエタノール、L−グルタミン、非必須アミノ酸及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM/F12培地中で維持された。hESCは、100ng/mlの組換えヒトアクチビンA、ウシ胎児血清(FBS)及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI培地中で5日間培養することにより胚体内胚葉へ分化させた。FBSの濃度は、毎日以下の通りに変化させた:0.1%(1日目)、0.2%(2日目)、2%(3〜5日目)。
【0258】
遺伝子発現分析のためにhESC及び胚体内胚葉の精製集団を得るために、細胞を蛍光標示式細胞分取器(FACS)により単離した。免疫精製は、hESCに関してはSSEA4抗原(R&D Systems、cat#FAB1435P)を使用して、また胚体内胚葉に関し
てはCXCR4(R&D Systems、cat#FAB170P)を使用して達成された。細胞
は、トリプシン/EDTA(Invitrogen、cat#25300−054)を使用して解離させて、2%ヒト血清を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄して、氷上で10分間100%ヒト血清中に再懸濁させて、非特異的結合をブロックした。染色は、ヒト血清800μl中で5×106個の細胞にフィコエリトリン結合抗体200μlを添加
することにより氷上で30分間実施した。細胞をPBS緩衝液8mlで2度洗浄して、同1ml中に再懸濁させた。FACS単離は、FACS Vantage(BD Biosciences)
を使用して、The Scripps Research Instituteの中心的な施設により実施された。細胞は、RLT溶解緩衝液へ直接収集して、RNAは、製造業者の指示書に従ってRNeasy(Qiagen)により単離した。
【0259】
精製されたRNAは、Affymetrixプラットフォーム及びU133 Plus2
.0高密度オリゴヌクレオチドアレイを使用して、発現プロフィールデータの作成のためにExpression Analysis(Durham, NC)へ正副2通提出した。提示されたデータは、2つの
集団、すなわちhESCと胚体内胚葉の間で差次的に発現する遺伝子を同定する群の比較である。hESCに見出される発現レベルを上回る発現レベルの頑強な上方変化を示す遺伝子は、胚体内胚葉の高度に特性化される新たな候補マーカーとして選択された。選択遺伝子は、上述のようにQ−PCRによりアッセイして、遺伝子チップ上に見られる遺伝子発現変化を確証し、またhESC分化の経時変化中のこれらの遺伝子の発現パターンを研究した。
【0260】
図34A図34Mは、或る特定のマーカーに関する遺伝子発現の結果を示す。結果は、100ng/mlアクチビンAの添加の1日後、3日後及び5日後に分析した細胞培養物、5日目の分化手順の終わりに精製されたCXCR4発現性胚体内胚葉細胞(CXDE)に関して、及び精製hESCにおいて表示される。図34C及び図34G図34Mの比較により、6つのマーカー遺伝子、すなわちFGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1が、互いにほぼ一致し、且つまたCXCR4の発現のパターン及びSOX17/SOX7の比と同一である発現パターンを示す。上述したように、SOX17は、胚体内胚葉並びにSOX7発現胚体外内胚葉の両方において発現される。SOX7は胚体内胚葉で発現されないため、SOX17/SOX7の比は、全体として集団において証明されるSOX17発現への胚体内胚葉の寄与の信頼性高い推定を提供する。パネルCに対するパネルG〜L及びMの類似性は、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1が、胚体内胚葉のマーカーである可能性が高いこと、及びそれらが胚体外内胚葉細胞で有意に発現されないことを示す。
【0261】
本明細書中に記載されるQ−PCRの結果は、ICCによりさらに確認することができることが理解されよう。
【0262】
[実施例12]
レチノイン酸及びFGF−10は、胚体内胚葉培養物において特異的にPDX1を誘導する
以下の実験は、RA及びFGF−10が胚体内胚葉細胞においてPDX1の発現を誘導することを実証する。
【0263】
ヒト胚性幹細胞をアクチビン有り又は無しで4日間培養した。4日目に、1μM RA及
び50ng/ml FGF−10を細胞培養物へ添加した。RA/FGF−10添加の4
8時間後に、PDX1マーカー遺伝子及び前腸内胚葉に特異的でない他のマーカー遺伝子の発現をQ−PCRにより定量した。
【0264】
胚体内胚葉細胞へのRAの適用は、臓側内胚葉(SOX7、AFP)、神経(SOX1、ZIC1)又はニューロン(NFM)遺伝子発現マーカーの発現を増大させずに(図36A図36F)、PDX1遺伝子発現の頑強な増大を引き起こした(図35を参照)。PDX1遺伝子発現は、1μM RA及び50ng/ml FGF−10への暴露の48時間後に、胚体内胚葉において観察されるものよりもおよそ500倍高いレベルまで誘導された。さらに、これらの結果は、実質的なPDX1誘導が、RA適用に先立ってアクチビンを施さない培養物に比べてアクチビン処理細胞培養物に見出される160倍高いPDX1発現により示されるように、胚体内胚葉(SOX17)に予め分化させた細胞培養物においてのみ起こったことを示す。
【0265】
[実施例13]
FGF−10は、RA単独を上回るPDX1発現のさらなる増大を提供する
この実施例は、RA及びFGF−10の組合せが、RA単独よりも大いにPDX1発現を誘導することを示す。
【0266】
これまでの実施例と同様に、hESCは、アクチビン有り又は無しで4日間培養した。4日目に、細胞を以下のうちの1つで処理した:1μM RA単独、FGF−4又はFGF
−10のいずれかと併用した1μM RA、或いはFGF−4及びFGF−10の両方と
併用した1μM RA。PDX1、SOX7及びNFMの発現は、RA又はRA/FGF
の96時間後に、Q−PCRにより定量された。
【0267】
アクチビン、これに続くレチノイン酸によるhESC培養物の処理は、PDX1遺伝子発現の60倍の増大を誘導した。RA処理へのFGF−4の添加は、わずかに多いPDX1を誘導した(RA単独に対しておよそ3倍)。しかしながら、FGF−10及びレチノイン酸を共に添加することにより、PDX1の誘導はさらに、RA単独に対して60倍増強された(図37Aを参照)。この非常に頑強なPDX1誘導は、アクチビン無し又はRA/FGF処理を用いた場合よりも1400倍超高かった。興味深いことに、FGF−4及びFGF−10の添加は、FGF−10の有益な効果を同時に根絶させて、FGF−4添加に起因して少量のPDX1の増大のみをもたらした。
【0268】
RA/FGF−4又はRA/FGF−10の組合せの添加は、RA/FGFの組合せに暴露させない細胞と比較した場合、前腸内胚葉に関連しないマーカー遺伝子の発現を増大させなかった(図37B及び図37Cを参照)。
【0269】
[実施例14]
レチノイン酸用量は、in vitroで前方−後方(A−P)位置に影響を及ぼす
RAの用量がin vitro細胞培養物のA−P位置に影響を及ぼすかどうかを判定す
るために、以下の実験を実施した。
【0270】
ヒト胚性幹細胞は、アクチビン有り又は無しで4日間培養した。4日目に、50ng/mlでのFGF−10は、0.04μM、0.2μM又は1.0μMで、RAを併用して培養物へ添加された。PDX1マーカー遺伝子の発現並びに前腸内胚葉に特異的でない他のマーカーの発現をQ−PCRにより定量化した。
【0271】
50ng/mlでのFGF−10と併用した様々な用量でのレチノイン酸の添加は、特異的な前方−後方位置的パターンと相関する差次的遺伝子発現パターンを誘導した。RAの最高用量(1μM)は、前方の内胚葉マーカー(HOXA3)の発現を優先的に誘導し
、またPDX1の最も頑強な増大をもたらした(図38A及び図38B)。RAの中間的な用量(0.2μM)は、中腸内胚葉マーカー(CDX1、HOXC6)を誘導した(図38C及び図41Eを参照)のに対して、RAの最小用量(0.04μM)は、後腸内胚葉のマーカー(HOXA13)を優先的に誘導した(図38Dを参照)。RA用量は、神経(SOX1)又はニューロン(NFM)マーカーのいずれかの相対発現に対して実質的に影響しなかった(図38F及び図38Gを参照)。この実施例は、in vitroで
モルフォゲンとしての、特に分化hESCの内胚葉誘導体のモルフォゲンとしてのRAの使用を強調する。
【0272】
[実施例15]
B27サプリメントの使用は、PDX1の発現を増強する
胚体内胚葉におけるPDX1発現は、多数の因子の使用及び細胞成長/分化状態により影響を与え得る。以下の実験では、B27サプリメントの使用が胚体内胚葉細胞においてPDX1の発現を増強することを示す。
【0273】
ヒト胚性幹細胞は、マウス胚線維芽細胞フィーダー上で成長させた未分化hES細胞を高用量のアクチビンA(0.5〜2%FBS/DMEM/F12中100〜200ng/ml)で4日間処理することにより胚体内胚葉へ分化するように誘導された。アクチビンA無しの対照に、アクチビンAを添加せずに0.5〜2%FBS/DMEM/F12を施した。4日目に、培養物に、2%FBS中のアクチビンA無し(無し)及び2%血清代替物中のアクチビンA無し(SR)、又は2%FBS/DMEM/F12中の2μM RA及
び50ng/ml FGF−10と共に50ng/mlのアクチビンA(無し、+FBS
、+B27)、並びに同様に2%血清代替物(SR)の2μM RA及び50ng/ml FGF−10と共に50ng/mlのアクチビンAのいずれかを施した。B27サプリメント(Gibco/BRL)は、2%FBS/DMEM/F12へ直接1/50希釈として添加した
(+B27)。二重反復細胞サンプルを各点に関して採取して、総RNAを単離して、上述のようにQ−PCRへ付した。
【0274】
図39A図39Eは、無血清サプリメントB27が、血清無しで成長させた細胞におけるかかるマーカー遺伝子発現と比較した場合、前腸内胚葉に特異的でないマーカー遺伝子の発現の増大を誘導することなく、PDX1遺伝子発現の誘導にさらなる有益性を提供することを示す。
【0275】
[実施例16]
PDX1の誘導を増強するためのアクチビンBの使用
この実施例は、アクチビンBの使用が、in vitro細胞培養物においてPDX1陽
性細胞へのPDX1陰性細胞の分化を増強することを示す。
【0276】
ヒト胚性幹細胞は、マウス胚線維芽細胞フィーダー上で成長させた未分化hES細胞を低血清/RPMI中の高用量のアクチビンA(50ng/ml)で6日間処理することにより胚体内胚葉へ分化するように誘導された。FBS用量は、1日目に0%、2日目に0.
2%、及び3〜6日目に2%であった。胚体内胚葉産生に関する陰性対照(NF)には、アクチビンAを添加せずに2%FBS/RPMIを施した。PDX1発現を誘導するために、培養物それぞれに、6日目に2%FBS/RPMI中で2μMにてレチノイン酸を施した。1日目〜5日目にアクチビンAで処置した培養物に、種々の投与組合せのアクチビンA及びアクチビンBを供給したか、或いは50ng/mlでのアクチビンA単独中の状態のままであった。アクチビンA無しの対照培養物(NF)にはアクチビンAもアクチビンBも供給しなかった。このRA/アクチビン処理は3日間実施して、3日目にPDX1遺伝子発現を二重反復細胞サンプルからのQ−PCRにより測定した。
【0277】
図40Aは、25ng/ml(A25)又は50ng/ml(A50)のアクチビンAの存在下での10〜50ng/ml(a10、a25及びa50)の範囲の用量でのアクチビンBの添加が、50ng/mlでアクチビンAのみを施した培養物を少なくとも2倍越えてPDX1発現を増大させたことを示す。アクチビンBの添加の結果としてのPDX1の増大は、発達におけるこの時点で肝臓並びに膵臓に関するマーカーであるHNF6発現の増大を伴わなかった(図40Bを参照)。この結果は、膵臓へ分化している細胞の比率が肝臓に比べて増大していることを示唆する。
【0278】
[実施例17]
PDX1の誘導を増強するための血清用量の使用
胚体内胚葉細胞におけるPDX1の発現は、分化プロセス全体にわたって細胞培養物中に存在する血清の量により影響を受ける。以下の実験は、PDX1陰性胚体内胚葉へのhESCの分化中の培養物における血清のレベルが、PDX1陽性内胚葉へのこれらの細胞のさらなる分化中のPDX1の発現に影響したことを示す。
【0279】
ヒト胚性幹細胞は、マウス胚線維芽細胞フィーダー上で成長させた未分化hESCを、低血清/RPMI中の高用量のアクチビンA(100ng/ml)で5日間処理することにより胚体内胚葉へ分化するように誘導された。FBS用量は、1日目に0.1%、2日目に0.5%、及び3〜5日目に0.5%、2%又は10%のいずれかであった。アクチビンA無しの対照(NF)には、毎日同じFBS/RPMI投与を施したが、アクチビンAは添加しなかった。PDX1発現は、RAの添加により6日目に開始して誘導した。6〜7日目中に、培養物に、0.5%FBS/RPMI中で2μMにて、8日目に1μMにて、及び9〜11日目に0.2μMにてレチノイン酸を施した。アクチビンAは、レチノイン酸処理中50ng/mlへ低減させて、アクチビンA無しの対照(NF)から取り去った。
【0280】
図41Aは、3日間の胚体内胚葉誘導(3日目、4日目及び5日目)中のFBS投与は、レチノイン酸処理中にPDX1遺伝子発現の誘導を変化させる持続的な能力を有したことを示す。これは、ZIC1(図41B)又はSOX7(図41C)遺伝子発現の発現パターンの有意な変更を伴わなかった。
【0281】
[実施例18]
PDX1の誘導を増強するための条件培地の使用
また、胚体内胚葉細胞におけるPDX1の発現に影響を与える他の因子及び成長条件を研究した。以下の実験は、PDX1陽性内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞の分化に対する条件培地の影響を示す。
【0282】
ヒト胚性幹細胞は、マウス胚線維芽細胞フィーダー上で成長させた未分化hES細胞を、低血清/RPMI中の高用量のアクチビンA(100ng/ml)で5日間処理することにより胚体内胚葉へ分化するように誘導された。FBS用量は、1日目に0.2%、2日目に0.5%、及び3〜5日目に2%であった。
【0283】
続いて、5日間のアクチビンA処理により生成された胚体内胚葉培養物は、25ng/mlでアクチビンAを含有する2%FBS/RPMI中でのRAの添加により、PDX1発現内胚葉へ分化するように4日間誘導させた。RAは、添加の最初の2日間に関しては2μM、3日目には1μM、及び4日目には0.5μMであった。PDX1誘導に関するこの基本培地は、新鮮な状態で(2A25R)或いは4つの異なる細胞集団のうちの1つにより24時間条件付けした後に供給された。条件培地(CM)は、マウス胚線維芽細胞(MEFCM)から、或いは3つの条件;i)3%FBS/RPMI(CM2)又はii)アクチビンA(CM3)又はiii)骨形態形成タンパク質4(BMP4)(CM4)のうちの1つによりまず5日間分化させたhESCから生成した。アクチビンA又はBMP4因子は、上述したものと同じFBS投与レジメン(0.2%、0.5%、2%)下で100ng/mlで供給された。これらの3つの異なる分化パラダイムは、PDX1誘導培地が条件付けられ得るヒト細胞の3つの非常に異なる集団を生じる。成長因子を添加しない3%FBS(NF)は、大部分が胚体外内胚葉、外胚葉及び中胚葉細胞で構成される不均一集団を生じる。アクチビンA処理培養物(A100)は、大部分の胚体内胚葉をもたらし、BMP4処理培養物(B100)は、主として栄養外胚葉及び幾らかの胚体外内胚葉をもたらす。
【0284】
図42Aは、PDX1が最初の2日間のRA処理にわたって新鮮な培地及び条件培地において同等に誘導されたことを示す。しかしながら、3日目までには、PDX1発現は、新鮮な培地及びMEF条件培地処理において減少し始めた。分化されたhESCは、維持、或いは新鮮な培地よりも3〜4倍高いレベルでPDX1遺伝子発現のさらなる増大をもたらす条件培地を生じた。hESC条件培地において高PDX1発現を維持する効果はさらに、RA処理の4日目に増幅されて、新鮮な培地よりも6〜7倍高いレベルを達成した。図42Bは、条件培地処理が、CDX1遺伝子発現の相当低いレベルをもたらし、遺伝子は、PDX1発現内胚葉の領域では発現されなかったことを示す。これは、PDX1発現内胚葉の全体的な純度が、分化されたhESC培養物から生成される条件培地で胚体内胚葉を処理することによりかなり増強されたことを示している。
【0285】
図43は、PDX1遺伝子発現が、胚体内胚葉細胞へ適用させる条件培地の量に対する明白な用量応答を示したことを示す。各プレートへ添加される培地の総容量は5mlであり、条件培地の指示容量(図43を参照)は、新鮮な培地(A25R)へ希釈した。新鮮な培地4mlへ添加される条件培地ちょうど1mlは、依然として新鮮な培地単独5mlよりも高いPDX1発現レベルを誘導及び維持することが可能であったことに注目されたい。これは、PDX1発現内胚葉の誘導に関する条件培地の有益な影響が、細胞から条件培地への幾らかの物質(単数又は複数)の放出に依存的であること、及びこの物質(単数又は複数)が、PDX1発現内胚葉の産生を用量依存的に増強することを示唆する。
【0286】
[実施例19]
PDX1へ結合する抗体の確証
PDX1へ結合する抗体は、細胞集団におけるPDX1発現の誘導をモニタリングするための有用なツールである。この実施例は、PDX1に対するウサギポリクローナル抗体及びIgY抗体を使用して、このタンパク質の存在を検出することができることを示す。
【0287】
第1の実験では、細胞可溶化物におけるPDX1と結合するIgY抗PDX1(IgY α−PDX1)抗体をウェスタンブロット分析により確証した。この分析で、MDX12ヒト線維芽細胞又はPDX1発現ベクターで予め24時間トランスフェクトしたMDX12細胞由来の総細胞可溶化物50μgへのIgY α−PDX1抗体の結合を比較した。
細胞可溶化物は、SDS−PAGEにより分離して、エレクトロブロッティングにより膜へ転写して、その後IgY α−PDX1一次抗血清で、それに続いてアルカリホスファ
ターゼ結合ウサギ抗IgY(Rb α−IgY)二次抗体でプロービングした。一次抗体
及び二次抗体の種々の希釈は、細長い膜を分離するために以下の組合せで適用した:A(500倍一次希釈、10,000倍二次希釈)、B(2,000倍、10,000倍)、C(500倍、40,000倍)、D(2,000倍、40,000倍)、E(8,000倍、40,000倍)。
【0288】
結合は、試験した抗体の組合せすべてにてPDX1発現ベクター(PDX1陽性)でトランスフェクトした細胞中で検出された。最高濃度の一次抗体及び二次抗体の両方を共に使用する場合(組合せA)で、結合は、トランスフェクトしていない(PDX1陰性)線維芽細胞において観察されるのみであった。かかる非特異的結合は、トランスフェクトした線維芽細胞及びトランスフェクトしていない線維芽細胞の両方においてPDX1よりもわずかに高い分子量でのさらなるバンドの検出を特徴とした。
【0289】
第2の実験では、PDX1へのポリクローナルウサギ抗PDX1(Rb α−PDX1)
抗体の結合を免疫組織化学により試験した。かかる実験用のPDX1発現細胞を産生するために、MS1−V細胞(ATCC#CRL−2460)をPDX1−EGFPの発現ベクター(pEGFP−N1(Clontech)を用いて構築した)で一過的にトランスフェクトした。続いて、トランスフェクトした細胞をRb α−PDX1及びα−EGFP抗血清で
標識した。トランスフェクトした細胞は、Cy5結合二次抗体の使用によるEGFP蛍光並びにα−EGFP免疫組織化学の両方により可視化した。PDX1免疫蛍光は、α−Rb Cy3結合二次抗体の使用により可視化した。
【0290】
Rb α−PDX1及びα−EGFP抗体の結合は、GPF発現と共局在化した。
【0291】
[実施例20]
ヒト膵臓組織の免疫組織化学
この実施例は、PDX1に対する特異性を有する抗体を使用して、免疫組織化学によりヒトPDX1陽性細胞を同定することができることを示す。
【0292】
第1の実験では、ヒト膵臓のパラフィン包埋切片を、1/200希釈でのモルモット抗インスリン(Gp α−Ins)一次抗体で、これに続いて1/100希釈でのCy2へ結
合されたイヌ抗モルモット(D α−GP)二次抗体でインスリンに関して染色した。第
2の実験では、ヒト膵臓の同じパラフィン包埋切片を、1/4000希釈でのIgY α
−PDX1一次抗体で、これに続いて1/300希釈でのAF555へ結合されたRbα−IgY二次抗体でPDX1に関して染色した。第1の実験及び第2の実験から収集した画像を併せた。第3の実験では、また、IgY α−PDX1抗体で染色した細胞をDA
PIでも染色した。
【0293】
ヒト膵臓切片の分析により、ランゲルハンス島の強力な染色の存在が明らかとなった。最強のPDX1シグナルは島(インスリン陽性)に出現したが、弱い染色は腺房組織(インスリン陰性)でも観察された。DAPI及びPDX1共染色は、PDX1が、大部分(しかし、排他的ではない)核へ局在化したことを示す。
【0294】
[実施例21]
レチノイン酸処理細胞からのPDX1の免疫沈降
RAの存在下で分化させた胚体内胚葉細胞におけるPDX1発現、及びRAを用いて分化させなかった胚体内胚葉細胞におけるPDX1の欠如をさらに確認するために、ウサギ抗PDX1(Rb α−PDX1)抗体を使用して、RA分化させた胚体内胚葉細胞及びR
A分化させていない胚体内胚葉細胞の両方からPDX1を免疫沈降させた。免疫沈降させたRAは、IgY α−PDX1抗体を使用してウェスタンブロット分析により検出した
【0295】
免疫沈降用の未分化の胚体内胚葉細胞可溶化物及び分化した胚体内胚葉細胞可溶化物を得るために、hESCを低血清中で100ng/mlでのアクチビンAで5日間処理した(胚体内胚葉)後、50ng/mlでのアクチビンA及び2μMのオールトランスRAで2日間(1μMで1日間、及び0.2μMで1日間)処理した(PDX1陽性前腸内胚葉)。陽性対照として、細胞可溶化物はまた、PDX1発現ベクターでトランスフェクトしたMS1−V細胞(ATCC#CRL−2460)からも調製した。PDX1は、Rb α
−PDX1及びウサギ特異的二次抗体を各可溶化液へ添加することにより免疫沈降させた。沈降物を遠心分離により収集した。免疫沈降物をSDS含有緩衝液中に溶解させた後、ポリアクリルアミドゲル上へ負荷した。分離後、タンパク質をエレクトロブロッティングにより膜へ転写し、その後IgY α−PDX1一次抗体、これに続いて標識Rb α−IgY二次抗体でプロービングした。
【0296】
MS1−V陽性対照細胞から収集した免疫沈降物並びに8日目(レーンd8、RA処理の開始の3日後)及び9日目(レーンd9、RAの開始の4日後)の細胞からの免疫沈降物は、PDX1タンパク質に関して陽性であった(図44)。未分化の胚体内胚葉細胞(すなわち、アクチビンAで処理した5日目の細胞−図44において(A)で示す)及び未分化のhESC(すなわち、未処理の5日目の細胞−図44において(NF)で示す)から得られた沈降物はPDX1に関して陰性であった。
【0297】
[実施例22]
PDX1プロモーター−EGFPトランスジェニックhESC系の生成
細胞単離に関してPDX1マーカーを使用するために、本発明者等は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を発現可能なレポーター遺伝子で遺伝的にタグ付けした。この実施例は、PDX1調節領域の制御下でレポーター遺伝子を含有するレポーターカセットを含むベクターの構築について記載する。この実施例はまた、このベクターでトランスフェクトした細胞(例えば、ヒト胚性幹細胞)、並びにそのゲノムに組み込まれたこのレポーターカセットを有する細胞の調製について記載する。
【0298】
レポーター遺伝子で遺伝的にタグ付けしたPDX1発現胚体内胚葉細胞系は、PDX1遺伝子の調節領域(プロモーター)の制御下にGFPレポーター遺伝子を配置させることにより構築された。まず、EGFP発現がヒトPDX1遺伝子プロモーターにより駆動されるプラスミド構築物は、ベクターpEGFP−N1(Clontech)のCMVプロモーターをPDX1転写開始部位の上流約4.4キロ塩基対(kb)から下流約85塩基対(bp)に及ぶヌクレオチド配列を含むヒトPDX1制御領域(Genbankアクセッション番号AF192496)で置き換えることにより生成された。この領域は、PDX1遺伝子の特徴とされる調節要素を含有し、トランスジェニックマウスにおいて正常なPDX1発現パターンを付与するのに十分である。得られたベクターにおいて、EGFPの発現は、PDX1プロモーターにより駆動される。いくつかの実験では、このベクターは、hESCへトランスフェクトすることができる。
【0299】
PDX1プロモーター/EGFPカセットを上記ベクターから切除して、続いてホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーターの制御下でネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を含有する選択ベクターへサブクローニングした。選択カセットは、カセットの除去を可能にするためにflpリコンビナーゼ認識部位に隣接された。この選択ベクターを線状化した後、標準的なリポフェクション方法を使用してhESCへ導入した。G418における選択の10〜14日後に、未分化のトランスジェニックhESCクローンを単離及び拡大させた。
【0300】
[実施例23]
PDX1陽性前腸内胚葉の単離
以下の実施例は、PDX1プロモーター/EGFPカセットを含むhESCがPDX1陽性内胚葉細胞へ分化され得て、これに続いて蛍光標示式細胞分取器(FACS)により単離され得ることを実証する。
【0301】
PDX1プロモーター/EGFPトランスジェニックhESCは、アクチビンA含有培地中で5日間、これに続いてアクチビンA及びRAを含む培地中で2日間分化させた。続いて、分化細胞は、トリプシン消化により収集して、Becton Dickinson FACS Diva上でRNA溶解緩衝液又はPBSへ直接選別した。単一の生細胞のサン
プルが、EGFPに関してゲーティングすることなく採取され(Live)、単一の生細胞は、EGFP陽性(GFP)及びGFP陰性(Neg)集団へゲーティングされた。一実験では、EGFP陽性分画は、蛍光強度に従って2つの同様のサイズの集団に分離された(Hi及びLo)。
【0302】
選別後、細胞集団は、Q−PCR及び免疫組織化学の両方により分析した。Q−PCRに関して、RNAは、Qiagen RNeasyカラムを使用して調製されて、その後c
DNAへ変換された。Q−PCRは、上述したように実施した。免疫組織化学分析に関して、細胞をPBS中に選別して、4%パラホルムアルデヒド中で10分間固定して、Cytospin遠心分離機を使用してスライドガラス上へ接着させた。サイトケラチン19(KRT19)に対する一次抗体はChemicon製であり、肝細胞核因子3β(HNF3β)に対する一次抗体はSanta Cruz製であり、グルコーストランスポーター2(GLUT2)に対する一次抗体はR&D systems製であった。FITC(緑色)又はローダミン(赤色)に結合させた適切な二次抗体を使用して、一次抗体の結合を検出した。
【0303】
分化細胞の典型的なFACS選別を図45に示す。この実施例における単離PDX1陽性細胞パーセントはおよそ7%であり、約1%〜約20%まで分化効率に応じて変化した。
【0304】
選別した細胞はさらに、Q−PCR分析に付した。分化細胞は、EGFP蛍光と内因性PDX1遺伝子発現との相関を示した。非蛍光性細胞と比較して、EGFP陽性細胞は、PDX1発現レベルの20倍を超える増大を示した(図46)。高及び低EGFP強度の細胞の分離は、EGFP発現レベルがPDX1発現レベルと相関することを示した(図47)。PDX1マーカー分析に加えて、選別した細胞は、膵臓内胚葉において発現されるいくつかの遺伝子のQ−PCR分析に付した。これらのマーカー遺伝子(NKX2.2、GLUT2、KRT19、HNF4α及びHNF3β)のそれぞれの産物はすべて、EGFP陽性分画で富化された(図48A図48E)。対照的に、神経マーカーZIC1及びGFAPは、選別されたEGFP発現細胞において富化されなかった(図49A及び図49B)。
【0305】
免疫組織化学により、事実上すべての単離PDX1陽性細胞が、KRT19及びGLUT2を発現するとみなされた。この結果は、膵臓内胚葉系統の細胞に関して予測される。これらの細胞の多くはまた、抗体染色によりHNF3β陽性であった。
【0306】
[実施例24]
マウス腎臓被膜下のヒト胚体内胚葉細胞の移植
本明細書中に記載される方法を用いて産生されたヒト胚体内胚葉細胞が、腸管由来の細胞を産生するよう分化因子に応答し得ることを実証するために、このようなヒト胚体内胚葉細胞をin vivo分化プロトコールに付した。
【0307】
ヒト胚体内胚葉細胞を、上記実施例に記載されたように産生した。このような細胞を収穫
し、標準手法を用いて免疫無防備状態マウスの腎臓被膜下に移植した。3週間後、マウスを屠殺し、移植組織を取り出して、切片にして、組織学的及び免疫細胞化学的分析に付した。
【0308】
図50図50Dは、移植後3週間目に、ヒト胚体内胚葉細胞は腸管由来の細胞及び細胞構造物に分化した、ということを示す。特に図50Aは、腸管様構造物に分化した移植ヒト胚体内胚葉組織のヘマトキシリン及びエオシン染色切片を示す。図50Bは、肝細胞特異的抗原(HSA)に対する抗体で免疫染色した移植ヒト胚体内胚葉切片を示す。この結果は、ヒト胚体内胚葉細胞が肝臓又は肝臓前駆体細胞に分化し得る、ということを示す。図50C及び図50Dはそれぞれ、ビリンに対する抗体及び尾型ホメオボックス転写因子2(CDX2)に対する抗体で免疫染色した移植ヒト胚体内胚葉切片を示す。これらの結果は、ヒト胚体内胚葉細胞が腸細胞又は腸細胞前駆体に分化し得る、ということを示す。
【0309】
[実施例25]
in vitroでヒト胚体内胚葉細胞の分化を促進することが可能な分化因子の同定
本明細書中に記載する分化因子のスクリーニング方法を例証するために、様々な時点で或る特定のマーカー遺伝子産物の標準化した発現レベルを測定しながら、本明細書中に記載する方法を使用して産生されるヒト胚体内胚葉細胞の集団に、いくつかの候補分化因子を別個に供給した。
【0310】
ヒト胚体内胚葉細胞は、上述の実施例に記載されるように産生した。簡潔に述べると、hESC細胞は、低血清RPMI培地中で100ng/mlのアクチビンAの存在下で4日間成長させ、ここで1日目のウシ胎児血清(FBS)濃度は0%であり、2日目のFBS濃度は0.2%であり、3〜4日のFBS濃度は2%であった。5日目に始まり、10日目に終了する胚体内胚葉の形成後に、0.2%FBS含有RPMI中での個々のプレートにおいて維持される細胞集団を、20ng/mlでのWnt3B、5ng/mlでのFGF2又は100ng/mlでのFGF2のうちの1つで処理した。アルブミン、PROX1及びTITF1に関するマーカー遺伝子産物の発現を、Q−PCRを使用して定量した。
【0311】
図51Aは、アルブミン遺伝子産物(肝臓前駆体及び肝細胞に関するマーカー)の発現が、5ng/mlでのFGF2に応答して、この分化因子で処理する前の4日目の胚体内胚葉細胞における発現と比較して9日目及び10日目で実質的に増大したことを示す。アルブミン遺伝子産物の発現はまた、20ng/mlのWnt3Bに応答して、未処理の胚体内胚葉細胞における発現と比較して9日目及び10日目で増大されたが、増大は、5ng/mlのFGF2処理で観察される増大ほど大きくなかった。アルブミン遺伝子産物の発現が、100ng/mlでのFGF2に応答して、4日目の胚体内胚葉細胞の発現と比較して9日目及び10日目で増大されなかったという観察は特に重要である。同様の結果が、図51Bに示されるように、PROX1マーカー(肝臓前駆体及び肝細胞に関する第2のマーカー)で観察された。図51Cは、100ng/mlのFGF2を供給した細胞集団では、TITF1マーカー遺伝子の発現が、この分化因子で処理する前の4日目の胚体内胚葉細胞における発現と比較して、7日目、9日目及び10日目に実質的に増大したが、5ng/mlでのFGF2は、未処理の胚体内胚葉と比較して、この遺伝子産物の発現に対してほとんど影響しなかったことを示す。総括すると、図51A図51Cに示される結果は、候補分化因子が細胞集団に供給される濃度が、in vitroでの胚体内胚
葉細胞の分化最終形に影響を及ぼし得ることを示す。
【0312】
[実施例26]
候補分化因子に応答したマーカーアップレギュレーション及びダウンレギュレーション
本明細書中に記載する分化因子スクリーニング方法をさらに例証するために、ヒト胚体内
胚葉細胞の集団を、実施例25に記載される手順に類似した手順を使用して候補分化因子を用いてスクリーニングした。
【0313】
ヒト胚体内胚葉細胞は、上述の実施例に記載されるように産生した。簡潔に述べると、hESC細胞は、低血清RPMI培地中で100ng/mlのアクチビンAの存在下で4日間成長させ、ここで1日目のウシ胎児血清(FBS)濃度は0%であり、2日目のFBS濃度は0.2%であり、3〜4日のFBS濃度は2%であった。5日目に始まり、10日目に終了する胚体内胚葉の形成後に、0.2%FBS含有RPMI中での個々のプレートにおいて維持される細胞集団を、20〜50ng/mlでのWnt3A、5ng/mlでのFGF2又は100ng/mlでのFGF2のうちの1つで処理した。胚体内胚葉形成後の5日目に(hESCからの分化の開始の9日後)、BMP4を50ng/mlで培養物すべてに添加した。αフェトプロテイン(AFP)、シトクロムP450 7A(CY
P7A)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、肝細胞核因子4a(HNF4a)、CXC型ケモカイン受容体4(CXCR4)、フォンウィルブランド因子(VWF)、血管細胞接着分子−1(VACM1)、アポリポタンパク質A1(APOA1)、グルコーストランスポーター−2(GLUT2)、α−1−アンチトリプシン(AAT)、グルコキナーゼ(GLUKO)及びヒト造血発現ホメオボックス(hHEX)に関するマーカー遺伝子産物(mRNA)の発現を、Q−PCRを使用して定量した。
【0314】
図52A及び図52Bは、AFP遺伝子産物(肝前駆体及び肝細胞に関するマーカー)及びAATの発現が、5ng/mlでのFGF2及び50ng/mlでのBMP4に応答して、4日目の胚体内胚葉細胞の発現と比較して、9日目及び10日目で実質的に増大したことを示す。AFP及びAATのmRNAの発現は、BMP4の存在下でさえ、より高濃度のFGF2(100ng/ml)により実質的に増大されなかった(図51A及び図51Bの9日目及び10日目)。上記の結果と対照的に、GLUKO、hHEX及びTATのmRNAの発現は、4日目の胚体内胚葉細胞の発現と比較して、9日目及び10日目に100ng/mlでのFGF2及び50ng/mlでのBMP4の存在下で実質的にアップレギュレートされた。GLUKOの場合、BMP4有り又は無しで、5ng/mlでのWnt3AもFGF2も、このマーカーの発現の増大を引き起こさなかった(図52C)。しかしながら、5ng/mlでのFGF2は、BMPの存在下での100ng/mlでのFGF2により引き起こされる増大を上回るか、或いはそれに等しい程度に、BMPの存在下でhHEXの発現の増大を引き起こした(図52D)。胚体内胚葉細胞における発現と比較する場合の9日目及び10日目のTATの発現は、試験される因子それぞれにより増大された(図52E)。さらに、或る特定の細胞マーカーは、Wnt3Aの存在下では胚体内胚葉細胞と比較して増大レベルで発現されたが、FGF/BMPの組合せに応答して発現されなかった。特に、hNF4aのmRNAの発現は、Wnt3A及びBMP4の組合せに応答して9日目及び10日目で有意に増大された(図52F)。さらに、CYP7Aは、10日目にWnt3A/BMP4に応答してわずかな増大を示した(図52G)。
【0315】
多数の異なる細胞型で発現されることが既知であるいくつかのマーカーも観察した。具体的には、マーカーAPOA1、GLUT2、VCAM1、VWF及びCXCR4を検査した。すでに、これらのマーカーそれぞれの発現が、以下に記載するように特定の細胞型と相関している:マーカーAPOA1及びGLUT2は、肝臓では高度に発現されて、十二指腸及び小腸では中程度に発現される。マーカーVCAM1は、肝臓では高レベルで発現され、胃、十二指腸及び小腸では中程度のレベルで発現され、肺及び膵臓ではより低レベルであるが、有意なレベルで発現される。対比して、マーカーVWF及びCXCR4は、肺では高レベルで発現されるが、肝臓ではほんの低レベルで発現される。VWF及びCXCR4の両方はまた、胃、膵臓、十二指腸及び小腸では中程度〜高レベルで発現される。
【0316】
上述のマーカーそれぞれの発現は、Wnt3、FGF2及びBMP4の組合せと接触させた胚体内胚葉細胞培養物においてモニタリングされた。上記の結果と一致して、図52H図52Jは、GLUT2、APOA1及びVCAM1 mRNA発現が、胚体内胚葉に
おける発現と比較して、9日目及び10日目に5ng/mlでのFGF2及びBMP4の組合せに応答して増大されたことを示す。これらのマーカーに関するmRNA発現は、100ng/mlでのFGF2及びBMP4の組合せに応答して実質的に増大されなかった。APOA1及びVCAM1マーカーmRNAの場合、9日目及び10日目の発現の最大の増大は、Wnt3A及びBMP4の組合せにより媒介された(図52I及び図52J)。
【0317】
上述の事項に加えて、或る特定のmRNAの発現は、胚体内胚葉における発現と比較して減少された。例えば、胚体内胚葉における発現と比較した場合、VWF及びCXCR4mRNA発現はともに、BMP4の存在下及び非存在下でのWnt3Aとの接触後に、並びにBMP4の存在下及び非存在下での5ng/mlでのFGF2との接触後に減少された(図52K及び図52L)。BMP4の非存在下及び存在下の両方における100ng/mlでのFGF2との接触は、これらの2つのマーカーの減少速度を大きく低減させた(図52K及び図52L)。実際に、CXCR4の発現は、10日目であっても実質的に維持された(図52L)。
【0318】
本明細書中に記載される方法、組成物及び装置は、目下、好ましい実施形態を代表するものであり、例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。その変更及びその他の使用は当業者に思い付かれ、これらは本発明の精神に包含され、そして開示の範囲により明確にされる。したがって本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、本明細書に開示される発明に種々の置換及び修正がなされ得るということは、当業者には明らかである。
【0319】
特許請求の範囲及び本開示全体を通して用いられる場合、「本質的に〜から成る」という語句は、当該語句の後ろに列挙される任意の要素を含むことを意味し、列挙した要素に関する開示において特定される活性又は作用を妨害しないか又は関与しない他の要素に限定される。したがって「本質的に〜から成る」という語句は、列挙した要素が必要とされるか又は必須であるが、しかし他の要素は任意であり、それらが列挙した要素の活性又は作用に影響を及ぼすか否かによって、存在することもあり、しないこともあり得る、ということを示す。
【0320】
[参考文献]
多数の文献及び特許参考文献を、本特許出願中で引用してきた。
【0321】
いくつかの参考文献に関しては、全引用が文書の本文中に存在する。他の参考文献に関しては、文書の本文中における引用は著者及び年で示しているが、全引用を以下に示す:

【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
図1
図2
図3
図4
図5
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図34-1】
図34-2】
図34-3】
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図48
図49
図50
図51
図52-1】
図52-2】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]